(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】金型収納装置
(51)【国際特許分類】
B21D 5/02 20060101AFI20240415BHJP
B21D 37/04 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B21D5/02 G
B21D37/04 P
B21D37/04 R
(21)【出願番号】P 2022165816
(22)【出願日】2022-10-14
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/212386(WO,A1)
【文献】特開2016-083673(JP,A)
【文献】特表2022-538367(JP,A)
【文献】特表2020-506807(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B21D 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工に用いられる複数の金型を第1方向に沿って搭載可能な第1ストッカと、
前記複数の金型を前記第1方向に沿って搭載可能であると共に、前記第1ストッカに対して前記第1方向と直交する第2方向に並設された少なくとも一つの第2ストッカと、
を備え、
前記第2ストッカは、前記第1方向及び前記第2方向とそれぞれ直交する第3方向に移動可能に構成されて
おり、
前記第2ストッカは、金型交換ロボットが前記第1ストッカにおいて金型交換を行う際に、前記金型交換ロボットのアーム部の非可働領域に移動する
金型収納装置。
【請求項2】
前記第1ストッカ及び前記第2ストッカは、前記第3方向に複数段設けられている
請求項1に記載の金型収納装置。
【請求項3】
前記第1ストッカ及び前記第2ストッカは、前記金型収納装置の前記第2方向の一方側に配置された
前記金型交換ロボットに対して、前記第2方向の遠い側から固定状態の前記第1ストッカ及び移動可能な前記第2ストッカの順に設けられている
請求項1又は2に記載の金型収納装置。
【請求項4】
前記第2ストッカは、前記第1ストッカの固定位置を基準として、前記第2方向において前記第1ストッカに重ならない位置に移動する
請求項
3に記載の金型収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレスブレーキ等に用いられる曲げ工具である金型を収納する金型収納装置が知られている。例えば、特許文献1には、
図11に示すように、プレスブレーキ101と、このプレスブレーキ101の正面側に配置された金型収納装置102と、プレスブレーキ101及び金型収納装置102の間に配置された金型交換ロボット103と、を備えた製造装置100が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の製造装置100では、例えば、プレスブレーキ101で用いる金型104は、上下方向(図中Z方向)に3段で構成され左右方向(図中X方向)に延びる工具ホルダ(固定棚)105に搭載された上で、金型収納装置102に格納されている。そして、金型交換の際には、金型交換ロボット103が金型収納装置102の工具ホルダ105から必要な金型104を取り外し、金型104を前後方向(図中Y方向)に移動させてプレスブレーキ101の金型搭載部106に装着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造装置100における金型収納装置102においては、工具ホルダ105への金型搭載数を増やす場合には、工具ホルダ105を左右方向に延ばして拡張する必要があるので、金型収納装置102の左右方向のスペースが拡がってしまう。そうすると、金型交換ロボット103の移動スペースも広くなってしまうので、結果的に無駄なスペースが増大するという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、簡易な構造及び小さいスペースで最大限の金型搭載数を確保することができる金型収納装置である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る金型収納装置は、曲げ加工に用いられる複数の金型を第1方向に沿って搭載可能な第1ストッカと、前記複数の金型を前記第1方向に沿って搭載可能であると共に、前記第1ストッカに対して前記第1方向と直交する第2方向に並設された少なくとも一つの第2ストッカと、を備え、前記第2ストッカは、前記第1方向及び前記第2方向とそれぞれ直交する第3方向に移動可能に構成されている。
【0008】
本発明の一態様に係る金型収納装置によれば、第1方向に沿って複数の金型を搭載可能な第1ストッカ及び第2ストッカのうち、第2ストッカが第1ストッカに対して第1方向と直交する第2方向に並設され、第1方向及び第2方向とそれぞれ直交する第3方向に移動することができるので、簡易な構造及び小さいスペースで最大限の金型搭載数を確保可能で、無駄なスペースの発生を極力抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、簡易な構造及び小さいスペースで最大限の金型搭載数を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る金型収納装置を有する曲げ加工システムを示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る金型収納装置を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る金型収納装置を示す斜視断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る金型収納装置における可動棚の退避状態を説明するための概略図である。
【
図5A】一実施形態に係る金型収納装置の動作を説明するための概略図である。
【
図5B】一実施形態に係る金型収納装置の動作を説明するための概略図である。
【
図5C】一実施形態に係る金型収納装置の動作を説明するための概略図である。
【
図6】一実施形態に係る金型反転装置を示す斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、一実施形態に係る金型反転装置の反転動作を説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、一実施形態に係る金型反転装置の反転動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、
図7Aの金型反転装置の所定位置の横断面の概略図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る金型反転装置に金型を搭載した状態を示す斜視図である。
【
図11】従来の金型収納装置を有する製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態に係る金型収納装置を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施形態において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、実施形態においては、各構成要素の配置、縮尺及び寸法等が誇張或いは矮小化されて、実際のものとは一致しない状態で示されている場合、並びに一部の構成要素につき記載が省略されて示されている場合がある。
【0012】
[金型収納装置を有する曲げ加工システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る金型収納装置を有する曲げ加工システムを示す概略斜視図である。
図1に示すように、一実施形態に係る曲げ加工システム1は、概略的には、プレスブレーキ2と、金型交換ロボット3と、金型収納装置10と、を備える。なお、プレスブレーキ2及び金型交換ロボット3の基本的な構造については既知であるので、概略のみを説明する。
【0013】
また、以下の説明において、図中矢印「X方向」は、例えば
図1における金型収納装置10の左右方向を意味し、図中矢印「Y方向」は、金型収納装置10の前後方向を意味し、図中矢印「Z方向」は、金型収納装置10の上下方向を意味する。また、「係合」とは、例えば物Aと物Bとが係わり合うことを意味し、「係止」とは、例えば物Aと物Bとが係わり合って止まることを意味する。本実施形態の曲げ加工システム1においては、プレスブレーキ2と金型収納装置10とは、前面側を金型交換ロボット3に向けた状態で、左右方向に並設配置されている。
【0014】
プレスブレーキ2は、上部テーブル2a及び下部テーブル2bの間で、各テーブル2a,2bに取り付けられたパンチとダイからなる曲げ加工用の金型9(
図1においては取付状態は図示せず)を用いて、被加工部材であるワーク(図示せず)の曲げ加工を実行する。
【0015】
金型交換ロボット3は、ロボット台座3f上で360°回転可能なアーム部3aを用いて、プレスブレーキ2及び金型収納装置10の間で金型9を交換する。アーム部3aは、例えば6軸の制御軸を有する多関節アームにより構成され得る。金型交換ロボット3は、床面上に敷設されたレール部3e、レール部3eに沿って移動可能なロボット台座3f、及びロボット台座3fと接続され金型収納装置10の前方側に配置されたケーブルベア(登録商標)3cを含む移動機構3bによって、プレスブレーキ2及び金型収納装置10の前面側を左右方向に移動可能に設けられている。
【0016】
金型収納装置10の前面側には、例えば、上述した移動機構3bのケーブルベア(登録商標)3c、金型交換ロボット3のアーム部3aの先端に取り付けられる金型把持用のツールグリッパ(図示せず)の格納部3d、及び格納部3dよりもプレスブレーキ2側に近い位置に設けられた金型反転装置20が配置されている。格納部3d及び金型反転装置20は、例えば金型収納装置10の前方側に配置された前方台座部19に設けられている。
【0017】
なお、一実施形態に係る曲げ加工システム1は、プレスブレーキ2と共に、金型交換ロボット3及び金型反転装置20を含む金型収納装置10を制御する制御装置(図示せず、以下同じ。)を備えて構成され得るもので、プレスブレーキ2及び金型収納装置10の金型交換も含めてワークの自動加工を実現可能に構成されている。
【0018】
[金型収納装置の詳細構成]
図2は、一実施形態に係る金型収納装置を示す斜視図である。
図3は、一実施形態に係る金型収納装置を示す斜視断面図である。なお、
図2及び
図3においては、
図1で示した格納部3d、金型反転装置20及び前方台座部19の図示は省略している。また、図示の金型9はグースネック型となっているが、これに限定されるものではない。
【0019】
図2及び
図3に示すように、金型収納装置10は、曲げ加工に用いられる複数の金型9(図示の例ではグースネック型)を左右方向(第1方向(X方向))に沿って搭載可能な固定棚(第1ストッカ)11と、複数の金型9を左右方向(第1方向)に沿って搭載可能であると共に、固定棚(第1ストッカ)11に対して左右方向(第1方向)と直交する前後方向(第2方向(Y方向))に並設された少なくとも一つの可動棚(第2ストッカ)12と、を備える。そして、可動棚(第2ストッカ)12は、左右方向(第1方向)及び前後方向(第2方向)とそれぞれ直交する上下方向(第3方向(Z方向))に移動可能に構成されている。
【0020】
本実施形態においては、金型収納装置10は、例えば一つの固定棚11の他に、2つの可動棚12(第1可動棚12A,第2可動棚12B)を備えている。これら固定棚(第1ストッカ)11及び可動棚(第2ストッカ)12は、上下方向(第3方向)に複数段(例えば、3段ずつ)設けられている。また、固定棚(第1ストッカ)11及び可動棚(第2ストッカ)12は、金型収納装置10の前後方向(第2方向)の一方側(例えば、前方側)に配置された金型交換ロボット3に対して、前後方向(第2方向)の遠い側から固定状態の固定棚(第1ストッカ)11及び移動可能な可動棚(第2ストッカ)12の順に設けられている。
【0021】
金型収納装置10は、左右一対のサイドフレーム13a,13a及びこれらを上方で繋ぐ天板フレーム13bにより筐体を構成するフレーム部13を備える。フレーム部13の前方側には、前方側の下部を閉塞する前方閉塞板14aが設けられている。フレーム部13の後方側には、後方側の下部を閉塞する後方閉塞板14b(例えば、
図3参照)が設けられている。なお、後方閉塞板14bは、後方側の全面を閉塞するように設けられていてもよい。金型収納装置10の前方閉塞板14aの上方は、開口部15となっている。
【0022】
固定棚11は、金型交換ロボット3がアーム部3aを用いて、開口部15からアクセス可能となるように、例えばフレーム部13の上方位置に固定配置されている。従って、固定棚11は、前後方向において開口部15から最奥部にて3段とも露出する状態で固定されている。固定棚11は、上下方向の下方から上方にかけて、第1棚11a、第2棚11b及び第3棚11cの順に設けられている。
【0023】
固定棚11において、第1棚11a、第2棚11b及び第3棚11cの左右方向の各両端部は、各サイドフレーム13a,13aの内側に設けられた上下方向に延びる左右一対の取付支柱13c,13c(片側のみ図示、以下同じ。)に取付固定されている。各棚11a~11cの上下方向の間隔は、金型9を金型交換ロボット3のアーム部3aによって、上下方向に移動させて取り付け及び取り外しを行う際に、他の棚に干渉することがないよう十分な間隔に設定されている。
【0024】
一方、可動棚12は、前方閉塞板14aの後方側から開口部15にかけて上下方向に移動可能となるよう可動配置されている。例えば、可動棚12は、前後方向において開口部15から固定棚11の前方側にて3段とも露出する状態、及び前後方向において前方閉塞板14aの後方側にて上段のみが露出する退避状態となるよう移動可能に配置されている。
【0025】
可動棚12のうちの第1可動棚12Aは、固定棚11の前方手前側に設けられ、第2可動棚12Bは、第1可動棚12Aの更に前方手前側に設けられている。第1可動棚12Aは、上下方向の下方から上方にかけて、第4棚12a、第5棚12b及び第6棚12cの順に設けられている。
【0026】
第1可動棚12Aにおいて、第4棚12a、第5棚12b及び第6棚12cの左右方向の各両端部は、左右一対のガイド支柱17a,17a(片側のみ図示、以下同じ。)にそれぞれ取付固定されている。各棚12a~12cの上下方向の間隔は、上述した固定棚11と同様に十分な間隔に設定されている。
【0027】
各ガイド支柱17a,17aの上端側には、昇降機構16a,16a(片側のみ図示、以下同じ。)がそれぞれ取り付けられている。これら昇降機構16a及びガイド支柱17aは、各サイドフレーム13a,13aの内側に設けられた上下方向に延びる左右一対の案内レール18a,18a(片側のみ図示、以下同じ。)に沿って、第4~第6棚12a~12cを上下方向に移動させる。昇降機構16a,16aは、例えば、エアシリンダや、ラックアンドピニオン及びモータ等の任意の機構を採用することができる。
【0028】
第2可動棚12Bは、上下方向の下方から上方にかけて、第7棚12d、第8棚12e及び第9棚12fの順に設けられている。第2可動棚12Bにおいて、第7棚12d、第8棚12e及び第9棚12fの左右方向の各両端部は、左右一対のガイド支柱17b,17b(片側のみ図示、以下同じ。)にそれぞれ取付固定されている。各棚12d~12fの上下方向の間隔は、上述した固定棚11と同様に十分な間隔に設定されている。
【0029】
各ガイド支柱17b,17bの上端側には、昇降機構16b,16b(片側のみ図示、以下同じ。)がそれぞれ取り付けられている。これら昇降機構16b及びガイド支柱17bは、各サイドフレーム13a,13aの内側に設けられた上下方向に延びる左右一対の案内レール18b,18b(片側のみ図示、以下同じ。)に沿って、第7~第9棚12d~12fを上下方向に移動させる。昇降機構16b,16bは、例えば、エアシリンダや、ラックアンドピニオン及びモータ等の任意の機構を採用することができる。
【0030】
上述した各昇降機構16a,16bは、昇降動作を制御する制御部(図示せず)を含んでいる。従って、可動棚12(第1可動棚12A,第2可動棚12B)は、例えば制御装置に含まれる棚制御部(図示せず)からの制御信号に基づく昇降機構16a,16bの制御部による制御によって、ガイド支柱17a,17bと共に上方に移動又は下方に移動されるよう構成されている。
【0031】
なお、可動棚(第2ストッカ)12は、固定棚(第1ストッカ)11の固定位置を基準として、前後方向(第2方向)において固定棚(第1ストッカ)11に重ならない位置に移動する。従って、可動棚12が上記のように上段のみが露出する退避状態となるよう移動した場合であっても、金型交換ロボット3による固定棚11の下段の第1棚11aへのアクセスを妨げることはない。
【0032】
図4は、一実施形態に係る金型収納装置における可動棚の退避状態を説明するための概略図である。
図4に示すように、金型収納装置10の可動棚(第2ストッカ)12は、金型交換ロボット3が固定棚(第1ストッカ)11において金型交換を行う際に、金型交換ロボット3のアーム部3aの非可動領域UMに退避するよう移動する。すなわち、左右方向から見て、例えば金型交換ロボット3がアーム部3aを動かしてアクセスすることができる領域を可動領域Mとした場合、金型収納装置10の下部側は、ケーブルベア(登録商標)3c及び前方台座部19が配置されているためアクセスすることができない領域(非可動領域UM)となる。
【0033】
この非可動領域UMは、そのままでは金型交換ロボット3がアクセスできない無駄なスペースとなってしまう。このため、ここに可動棚12を退避させるよう移動する構造を採用することで、開口部15を介して、固定棚11及び可動棚12のいずれへのアクセスも可能とすることができる。
【0034】
これにより、金型交換ロボット3は、金型収納装置10の最奥部の固定棚11にアクセスして金型交換を行うことは勿論のこと、可動棚12を上下動させて非可動領域UMに退避及び開口部15から露出させて、可動棚12にアクセスして金型交換を行うことができる。従って、固定棚11のみを用いる場合と比較して左右方向のスペースを拡張せずに前後方向のスペースを利用して金型9の搭載数をより多く確保することができる。
【0035】
なお、図示は省略するが、可動領域M及び非可動領域UMは、例えば金型交換ロボット3のロボット台座3f上でのアーム部3aの360°回転の回転中心を基準として、アーム部3aが届き得る球状の空間及びその一部により構成され得る。また、非可動領域UMは、上述したように金型収納装置10の下部側に形成されると限定されるものではなく、上部側に形成されてもよい。非可動領域UMが上部側に形成された場合は、可動棚12は固定棚11よりも上方側へ退避するよう移動すればよい。
【0036】
[金型収納装置の動作]
図5Aは、一実施形態に係る金型収納装置の動作を説明するための概略図である。
図5Bは、一実施形態に係る金型収納装置の動作を説明するための概略図である。
図5Cは、一実施形態に係る金型収納装置の動作を説明するための概略図である。なお、
図5Aは、可動棚12が退避状態にある場合を示し、
図5Bは、第1可動棚12Aが上昇した場合を示し、
図5Cは、第2可動棚12Bが上昇した場合を示している。また、
図5A~
図5Cにおいて、後方閉塞板14bは金型収納装置10の後方側の全面を閉塞していることとする。
【0037】
金型収納装置10は、例えば、固定棚11へのアクセスが可能な状態にする場合、
図5Aに示すように動作する。すなわち、固定棚11の第1~第3棚11a~11cが開口部15から前後方向において露出する状態となるように、可動棚12(第1可動棚12A,第2可動棚12B)は、下降して下方の退避位置に移動する(退避状態)。
【0038】
この退避状態のとき、金型交換ロボット3は、固定棚11の第1~第3棚11a~11cにおいて金型交換を行うことが可能となる。なお、退避状態のときに、例えば、第2可動棚12Bの第9棚12fが前方閉塞板14aの上方において開口部15から露出している場合は、第9棚12fも含めて金型交換を行うことも可能である。
【0039】
また、金型収納装置10は、例えば、可動棚12の第1可動棚12Aへのアクセスが可能な状態にする場合、
図5Bに示すように動作する。すなわち、第1可動棚12Aの第4~第6棚12a~12cが開口部15から前後方向において露出する状態となるように、第1可動棚12Aは、昇降機構16a及びガイド支柱17aと共に案内レール18a内を上昇して、固定棚11の前方側に位置するよう退避位置から上昇した位置に移動する。
【0040】
この状態のとき、金型交換ロボット3は、第1可動棚12Aの第4~第6棚12a~12cにおいて金型交換を行うことが可能となる。なお、この場合においても、例えば、第2可動棚12Bの第9棚12fが上述したように露出している場合は、第9棚12fも含めて金型交換を行うこともできる。
【0041】
更に、金型収納装置10は、例えば、可動棚12の第2可動棚12Bへのアクセスが可能な状態にする場合、
図5Cに示すように動作する。すなわち、第2可動棚12Bの第7~第9棚12d~12fが開口部15から前後方向において露出する状態となるように、第2可動棚12Bは、昇降機構16b及びガイド支柱17bと共に案内レール18b内を上昇して、固定棚11の前方側に位置するよう退避位置から上昇した位置に移動する。
【0042】
この状態のとき、金型交換ロボット3は、第2可動棚12Bの第7~第9棚12d~12fにおいて金型交換を行うことが可能となる。なお、
図5Cにおいては、第1可動棚12Aが退避位置に止まっている状態を示しているが、
図5Bに示す状態から第2可動棚12Bが上昇した位置に移動した場合は、第1可動棚12Aも上昇した位置に移動していてもよい。
【0043】
[一実施形態に係る金型収納装置の利点]
このように、本実施形態の金型収納装置10は、前後方向において固定棚11に並設された可動棚12が、昇降機構16a,16b、ガイド支柱17a,17b及び案内レール18a,18b等の簡易な構造で必要に応じて適宜上下に移動可能に構成される。これにより、金型収納装置10の左右方向にスペースを拡張することなく前後方向のスペースを利用して固定棚11及び可動棚12に搭載する金型9の金型搭載数を最大限確保することが可能となる。
【0044】
なお、金型収納装置10の固定棚11及び可動棚12に搭載される金型9は、例えば、表裏が決まっているものであればそのいずれかを開口部15側に向けて揃えて搭載される。このため、実際にプレスブレーキ2の上部テーブル2a及び下部テーブル2bの少なくとも一つに装着する際には、金型9の表裏を金型反転装置20で反転させてから金型交換ロボット3でピックアップする必要がある。以下、金型反転装置20について説明する。
【0045】
[金型反転装置の構成]
図6は、一実施形態に係る金型反転装置を示す斜視図である。
図7Aは、一実施形態に係る金型反転装置の反転動作を説明するための図である。
図7Bは、一実施形態に係る金型反転装置の反転動作を説明するための図である。
図8は、
図7Aの金型反転装置の所定位置の横断面の概略図である。
図9は、一実施形態に係る金型反転装置に金型を搭載した状態を示す斜視図である。
図10は、
図9の金型反転装置の所定位置の横断面の概略図である。
【0046】
図6に示すように、金型反転装置20は、金型収納装置10の前方閉塞板14aの上方側に設けられた前方台座部19の、例えばプレスブレーキ2側の端部に配置されている。なお、金型反転装置20の配置位置は、これに限定されるものではなく、装置の上下を逆転させた状態で、金型収納装置10の上方側に配置されたり、装置の上下を90°回転させた状態で、金型収納装置10の側方側に配置されたりしてもよい。
【0047】
金型反転装置20は、曲げ加工に用いられる金型9を搭載可能な金型搭載部21と、金型搭載部21を金型9の搭載方向(上下方向(Z方向))と交差する方向(左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向))に沿って回転させる回転機構29と、を備える。なお、回転機構29は、回転部25が、交差する方向と平行な水平面内で図中矢印で示すように回転するものであり、既知のいわゆる回転用のロータリシリンダ(ロータリアクチュエータ)等により構成され得るので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0048】
金型反転装置20の金型搭載部21は、一対の壁部22a,22a及び底部22bを構成する断面コの字状に形成され、金型9のシャンク部9a(
図7A及び
図7B参照)が挿入される搭載部本体22と、一対の壁部22a,22aのうちの少なくとも一つの内壁面22cに、交差する方向(例えば、左右方向(X方向)、以下同じ。)に延びてシャンク部9aの表面から突出する脱落防止部材(突起部)9d(
図8参照)に係合可能に設けられた係止溝部22dと、係止溝部22d内の所定位置に設けられ脱落防止部材(突起部)9dに対し交差する方向から係合する複数の係止片23と、を含む。
【0049】
本実施形態においては、係止溝部22dは、一対の壁部22a,22aの上端部近傍の内壁面22cにそれぞれ設けられている。また、複数の係止片23は、例えば、係止溝部22dの交差する方向における中央近傍に設けられている。更に、複数の係止片23は、例えば、係止溝部22dの交差する方向における端部近傍に設けられている。
【0050】
本実施形態の金型反転装置20では、複数の係止片23は、両壁部22a,22aの中央近傍に一組ずつ及び端部近傍に一組ずつの計8個設けられている。複数の係止片23は、壁部22a,22aの外壁面22eから取り付けられた取付ボルト28によって、係止溝部22dの中央近傍及び端部近傍にそれぞれ締結されている。
【0051】
なお、
図8及び
図10に示すように、例えば、複数の係止片23は、交差する方向における係止溝部22dの中央に向く面23aが、一対の壁部22a,22aのうちの他方の壁部22aに向かって溝底部22fから溝開口部22gにかけて中央から徐々に拡がるテーパ面を構成する。また、金型搭載部21の断面コの字状の搭載部本体22は、底部22bの表面に設けられたウレタンシート(摩擦付与手段)24を有する。ウレタンシート24は、底部22bに上方から取り付けられた取付ボルト24aによって、底部22bに一体的となるよう締結されている。
【0052】
図7A及び
図7Bに示すように、金型搭載部21に搭載される金型9は、幅が小さいタイプの既存の金型(図示の例では直剣型)である。この金型9は、例えばシャンク部9aと、型部9bと、加工部9cと、を含む。シャンク部9aには、脱落防止部材9dと連動するボタン部9eと、金型9の表裏に貫通する挿通穴9fと、ボタン部9eと表裏反対側に形成されたストッパ挿通穴9gと、が設けられている。
【0053】
シャンク部9aにおいて、ストッパ挿通穴9g内の奥部には、脱落防止部材9dのストッパ(図示せず)が取り付けられる。脱落防止部材9dとボタン部9eは、既知の構造であるため詳細は省くが、通常時は図示しないバネ等の付勢手段によって、シャンク部9aの表面から突出するよう付勢されている。挿通穴9fには、後述する既知のツールグリッパ等の金型把持手段が挿入される。
【0054】
一方、
図9及び
図10に示すように、金型搭載部21に搭載される金型9Aは、金型9と比べて幅が大きいタイプの既存の金型(図示の例では直剣型)である。この金型9Aは、シャンク部9a、型部9b及び加工部9cを含む点は、金型9と同様であるが、シャンク部9aの幅方向両端部側にも脱落防止部材9dが設けられている点、及び両端部側の脱落防止部材9dとボタン部9eとが連結プレート9hによって連動可能に連結されている点等が、金型9と相違している。その他の構成は金型9と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0055】
金型9,9Aは、挿通穴9fに挿入された金型把持手段のフック状の突起部(図示せず)とフックの先端部(図示せず)とで、シャンク部9aの表面とボタン部9eとを表裏両側から挟持することで、ボタン部9eと共に脱落防止部材9dがシャンク部9aの内部に向けて引っ込んだ状態となり、金型把持手段に把持される。金型9を金型搭載部21に着脱する際には、脱落防止部材9dはこのように引っ込められて、係止溝部22dとの係合状態が解除され得る。
【0056】
[金型反転装置の動作]
本実施形態の金型反転装置20は、金型交換ロボット3が、例えば金型収納装置10から取り外してきた金型9,9Aをプレスブレーキ2に装着する際、又はプレスブレーキ2から取り外してきた金型9,9Aを金型収納装置10に戻す際に、必要に応じて金型9,9Aの表裏を反転させるものである。
【0057】
これにより、個別の金型9,9Aの表裏を適宜反転可能となるので、従来よりも金型収納装置10の固定棚11及び可動棚12に搭載すべき金型9,9Aの個数を減少させ、搭載スペースを削減することが可能となる。換言すれば、従来と同じ搭載スペースにおいては、金型収納装置10への金型9,9Aの搭載数を増加させることが可能となる。
【0058】
例えば、金型9を金型反転装置20において反転させる場合、まず、金型交換ロボット3のアーム部3aの先端に装着された金型把持手段によって、例えばアーム部3a側が表面となるよう把持された金型9を、
図7Aに示すように、金型反転装置20の金型搭載部21の中央部分にシャンク部9aを挿入して搭載する。
【0059】
金型9が金型搭載部21に搭載された状態のときは、
図8に示すように、係止溝部22dの複数の係止片23のうち、例えば中央近傍に設けられた各係止片の面23aと、脱落防止部材9dの側面先端側の両方の角部とが、係止溝部22d内において点接触又は線接触する。そして、金型9の搭載後は、金型把持手段を離隔させる。
【0060】
金型把持手段を離隔させたら、図中矢印で示すように回転機構29により回転部25と共に金型搭載部21を、例えば180°回転させる。そうすると、金型9は、
図7Bに示すように、金型搭載部21に搭載された状態のまま表裏が反転される。金型9の表裏を反転させたら、再度金型把持手段を近接させて金型9を把持し、金型9を金型搭載部21から取り外す。
【0061】
なお、金型9Aの金型搭載部21への着脱も、金型把持手段によって上記と同様に行われるが、例えば金型9Aが金型搭載部21に搭載された状態のときは、
図10に示すようになる。すなわち、係止溝部22dの複数の係止片23のうち、例えば端部近傍に設けられた各係止片の面23aと、これらの面23aと対向する脱落防止部材9dの側面先端側の片方の角部とが、中央近傍における係止片23と脱落防止部材9dとの接触と併せて、係止溝部22d内において点接触又は線接触する。
【0062】
[一実施形態に係る金型反転装置の効果]
本実施形態の金型反転装置20は、上述したように、金型搭載部21の搭載部本体22の係止溝部22dと金型9,9Aの脱落防止部材9dとが係合することにより、金型搭載部21に搭載された金型9,9Aの上下方向の移動を規制することができる。また、係止溝部22d内の複数の係止片23と脱落防止部材9dとが接触することにより、シャンク部9aの一方の面(例えば、背面)が他方の壁部22aに押し付けられるため、前後方向の位置ズレを防止することができると共に、例えば反転時等の回転の慣性力による金型9,9Aの横方向(交差する方向)の揺動を抑制することができる。更に、底部22b上に設けられたウレタンシート24が、例えば金型9,9Aの中央の脱落防止部材9dを揺動支点としたときの左右方向へのぶれが生じた場合に、シャンク部9aの底部22b側の端部と摩擦可能に構成されているので、左右方向の揺動を抑制することができる。
【0063】
従って、金型反転装置20は、金型搭載部21に搭載した金型9,9Aに、左右方向、前後方向及び上下方向の如何なる方向へも位置ズレが発生するおそれを皆無にすることができる。そして、金型反転装置20は、金型搭載部21と回転機構29によりシンプルに構成することができるので、構造が簡単で部品点数が少なく、コストを抑えることが可能である。これと共に、装置の動作が回転部25の回転動作のみなので、金型9,9Aの反転処理に掛かるタクトタイムを短くすることができる。
【0064】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、一実施形態に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0065】
例えば、上述した一実施形態では、金型収納装置10の固定棚11が上下方向に第1棚11a~第3棚11cの1列3段で構成されているものとして説明したが、これに限定されない。例えば、固定棚11は、金型交換ロボット3の可動領域M内で、且つ可動棚12よりも前後方向の奥側にあれば、複数列、例えば前後方向の手前側の上方位置に1列1段で構成され、その奥側の下方位置に1列2段で構成されてもよい。
【0066】
また、可動棚12の列数も、上述した第1可動棚12A及び第2可動棚12Bの2列に限定されるものではなく、1列構成であっても、より多くの列構成であってもよい。更に、固定棚11及び可動棚12の段数も、上述した3段構成に限定されるものではなく、種々の段数構成を採用し得る。
【0067】
また、上述した一実施形態では、金型反転装置20の各係止片23の面23aが、テーパ面であるとして説明したが、これに限定されない。各係止片23は、金型搭載部21における金型9,9Aの搭載位置での脱落防止部材9dのクリアランス精度が高ければ、面23aがテーパ面である必要はない。
【0068】
また、搭載部本体22の底部22b上に、摩擦付与手段としてのウレタンシート24が設けられたものとして説明したが、摩擦付与手段は、これに限定されるものではなく、摩擦係数の高い塗料やシール部材等、種々の構成を採用し得る。
【0069】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 曲げ加工システム
2 プレスブレーキ
3 金型交換ロボット
9,9A 金型
10 金型収納装置
11 固定棚(第1ストッカ)
11a 第1棚
11b 第2棚
11c 第3棚
12 可動棚(第2ストッカ)
12a 第4棚
12b 第5棚
12c 第6棚
12d 第7棚
12e 第8棚
12f 第9棚
12A 第1可動棚
12B 第2可動棚
20 金型反転装置
21 金型搭載部
22 搭載部本体
22d 係止溝部
23 係止片
29 回転機構
【要約】
【課題】簡易な構造及び小さいスペースで最大限の金型搭載数を確保する。
【解決手段】金型収納装置は、曲げ加工に用いられる複数の金型を第1方向に沿って搭載可能な第1ストッカと、複数の金型を第1方向に沿って搭載可能であると共に、第1ストッカに対して第1方向と直交する第2方向に並設された少なくとも一つの第2ストッカと、を備え、第2ストッカは、第1方向及び第2方向とそれぞれ直交する第3方向に移動可能に構成されている。
【選択図】
図2