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特許7472232中枢神経系に沿って治療を行うためのシステム、カテーテル、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】中枢神経系に沿って治療を行うためのシステム、カテーテル、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20240415BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61M1/00 170
A61M25/14 514
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022171953
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2020519245の分割
【原出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2022186954
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】62/568,412
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/598,846
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/642,873
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/686,413
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514049601
【氏名又は名称】ミネトロニクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラッド、シバナンド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マッケイブ、アーロン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジテッラ バービック、ローラ マリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘドストローム、ブレイク
(72)【発明者】
【氏名】ストール、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】モンドリー、ジャック
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/023419(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0051801(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の細菌性髄膜炎の症状を改善するためのシステムにおいて、
脳脊髄液腔に導入されるカテーテルアセンブリであって、前記カテーテルアセンブリは内側シャフトおよび外側シャフトを含み、前記内側シャフトは内部に注入ルーメン及び複数の注入開口部を画成しており、前記内側シャフト及び前記外側シャフトの間には吸引ルーメンが画成されており、前記外側シャフトは内部に複数の吸引開口部を画成している、カテーテルアセンブリと、
前記吸引ルーメンおよび前記注入ルーメンの間に接続されて両ルーメン間で脳脊髄液の流れを誘導するポンプと、
前記吸引ルーメンおよび前記注入ルーメンの間に接続されて、脳脊髄液から髄膜炎を引き起こす病原性細菌を除去することにより脳脊髄液の状態調整を行うように構成される、フィルタアセンブリであって、脳脊髄液を第1の清浄な脳脊髄液経路と第1の廃棄物経路とに分離する第1フィルタと、第1の廃棄物流路を第2の清浄な脳脊髄液経路と第2の廃棄物経路とに分離する第2フィルタと、第1の清浄な脳脊髄液経路および第2の脳脊髄液経路に連通する返戻出口と、前記第2の廃棄物経路に沿って配置される流量計測装置とを含むフィルタアセンブリとを備え、
前記第1フィルタ及び前記第2フィルタの少なくとも一方は5kDaの接線流フィルタを含み、
前記返戻出口は前記注入ルーメンに連通している、システム。
【請求項2】
前記フィルタアセンブリは、前記脳脊髄液から1以上のエンドトキシンを除去するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フィルタアセンブリは、前記脳脊髄液から1以上のサイトカインを除去するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
第1フィルタは第1接線流フィルタを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
第2フィルタは第2接線流フィルタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
第1フィルタおよび第2フィルタの双方は接線流フィルタを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記フィルタアセンブリは1~500kDaの範囲の質量を有する物質を除去することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記フィルタアセンブリは0.1~5ミクロンの範囲の細孔径を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記フィルタアセンブリは、1以上のグラム陰性の病原性細菌を除去するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記フィルタアセンブリは、シュードモナス属細菌、アシネトバクター属細菌、クレブシエラ属細菌、又はこれらの組み合わせのうち1つ以上を除去するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記フィルタアセンブリは多剤耐性である髄膜炎を引き起こす病原性細菌を除去するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記カテーテルアセンブリは1個のカテーテルを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記カテーテルアセンブリは第1カテーテル及び第2カテーテルを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1カテーテルおよび第2カテーテルはそれぞれ、1個のルーメンを備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記内側シャフトは補強コイルを含み、前記複数の注入開口部は前記補強コイルの巻き間に配置されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経系に沿って治療を行うためのシステム、カテーテル、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々様々な医療用デバイスが医療用に開発されてきた。これらのデバイスのうちのいくつかは、ガイドワイヤ、カテーテルなどを備えている。これらのデバイスは様々な異なる製造方法のうち任意の1つによって製造され、かつ様々な方法のうち任意の1つに従って使用されうる。既知の医療用デバイス及び方法のうち、各々がある一定の長所及び欠点を有している。代替的医療用デバイス並びに医療用デバイスを製造及び使用するための代替法を提供することが、現在もなお必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
[概要]
本発明は、医療用デバイスのための設計、材料、製造方法、及び使用法の代替案を提供する。がんを治療するための一例の方法が開示される。該方法は、がん患者から脳脊髄液を取り出すステップと;脳脊髄液を、がん細胞を除去するための濾過システムを用いて濾過するステップと;及び、濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップと、を含む。
【0004】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、がん患者から脳脊髄液を取り出すステップは、患者の腰椎の脳脊髄腔から脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、がん患者から脳脊髄液を取り出すステップは、脳脊髄腔内にカテーテルシステムを配置することを含む。
【0005】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルシステムは、内側シャフトと外側シャフトとを有するカテーテルシャフトを備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
【0006】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、外側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された第1の複数の開口部を有し、外側シャフトは該シャフトに形成された第2の複数の開口部を有し、かつ第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0007】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは注入ルーメンを画成する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップは、濾過された脳脊髄液を、注入ルーメンを通じて返戻することを含む。
【0008】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、注入ルーメンを通じて化学療法剤を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、吸引ルーメンが内側シャフトと外側シャフトとの間に画成されている。
【0009】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、がん患者から脳脊髄液を取り出すステップは、吸引ルーメンを通じて脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、がん患者から脳脊髄液を取り出すステップは、腫瘍細胞を取り出すことを含む。
【0010】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、患者に化学療法剤を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、化学療法剤はメトトレキセートを含む。
【0011】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、患者に化学療法剤を注入するステップは、オマヤ貯留槽を移植することと、該オマヤ貯留槽を介して患者に化学療法剤を注入することとを含む。
【0012】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、患者に化学療法剤を注入するステップは、カテーテルシステムを用いて患者に化学療法剤を注入することを含む。
【0013】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルシステムを用いて患者に化学療法剤を注入することは、脳脊髄腔内に該カテーテルシステムを配置することを含む。
【0014】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、脳脊髄腔内にカテーテルシステムを配置することは、カテーテルシステムを腰部の脳脊髄液腔に配置することを含む。
【0015】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、頭蓋腔から脳脊髄液を取り出すステップをさらに含む。
【0016】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルを用いて頭蓋腔から脳脊髄液を取り出すステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、がん患者から脳脊髄液を取り出すステップは、第1のカテーテルを用いて第1の位置から脳脊髄液を取り出すことを含む。
【0017】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップは、濾過された脳脊髄液を、第1のカテーテルを用いて第1の位置に隣接する第1の領域に返戻することを含む。
【0018】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第2のカテーテルを用いて第2の位置から脳脊髄液を取り出すことをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過された脳脊髄液を、第2のカテーテルを用いて第2の位置に隣接する第2の領域に注入することをさらに含む。
【0019】
がんを治療するための方法が開示される。該方法は、がん患者の脳脊髄腔にカテーテルを配置するステップと;カテーテルを用いて患者から脳脊髄液を吸引するステップと;がん細胞を除去するための濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップと;濾過された脳脊髄液を、カテーテルを用いて患者に返戻するステップと、を含む。
【0020】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルを用いて患者から脳脊髄液を吸引するステップは、患者の腰部の脳脊髄腔から脳脊髄液を吸引することを含む。
【0021】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルは、内側シャフトと外側シャフトとを有するカテーテルシャフトを備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
【0022】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、外側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された第1の複数の開口部を有し、外側シャフトは該シャフトに形成された第2の複数の開口部を有し、かつ第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0023】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、患者に化学療法剤を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、化学療法剤はメトトレキセートを含む。
【0024】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、患者に化学療法剤を注入するステップは、オマヤ貯留槽を用いて患者に化学療法剤を注入することを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、患者に化学療法剤を注入するステップは、カテーテルを用いて患者に化学療法剤を注入することを含む。
【0025】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
がんを治療するための方法が開示される。該方法は、がん患者の脳脊髄腔にカテーテルを配置するステップと;カテーテルを用いて患者から脳脊髄液を吸引するステップと;濾過システムを用いて脳脊髄液の状態調整を行うステップと;濾過された脳脊髄液を、カテーテルを用いて患者に返戻するステップと、カテーテルを用いて脳脊髄腔に化学療法剤を注入するステップと、を含む。
【0026】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルを用いて患者から脳脊髄液を吸引するステップは、患者の腰部の脳脊髄腔から脳脊髄液を吸引することを含む。
【0027】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルは、内側シャフトと外側シャフトとを有するカテーテルシャフトを備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
【0028】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、外側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された第1の複数の開口部を有し、外側シャフトは該シャフトに形成された第2の複数の開口部を有し、かつ第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0029】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、オマヤ貯留槽を用いて患者に第2の化学療法剤を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、化学療法剤及び第2の化学療法剤は同じである。
【0030】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、化学療法剤、第2の化学療法剤、又は両方は、メトトレキセートを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
【0031】
がんを治療するためのシステムが開示される。該システムは、内側シャフトと外側シャフトとを備えたカテーテルであって;注入ルーメンが内側シャフト内に画成され;吸引ルーメンが内側シャフトと外側シャフトとの間に画成されている、カテーテル;内側シャフトの第1の複数の開口部であって、注入ルーメンと流体連通している第1の複数の開口部;外側シャフトの第2の複数の開口部であって、吸引ルーメンと流体連通している第2の複数の開口部;注入ルーメン及び吸引ルーメンと流体連通している濾過システムであって、脳脊髄液からがん細胞を濾別するように設計された1以上のフィルタを備えている濾過システム、を具備している。
【0032】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0033】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための方法が開示される。該方法は、ALS患者から脳脊髄液を取り出すステップと;脳脊髄液を、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれか一方を除去するための濾過システムを用いて濾過するステップと;濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップと、を含む。
【0034】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、ALS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、患者の腰部の脳脊髄腔から脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、ALS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、脳脊髄腔内にカテーテルシステムを配置することを含む。
【0035】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルシステムは、内側シャフトと外側シャフトとを有するカテーテルシャフトを備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
【0036】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、外側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された第1の複数の開口部を有し、外側シャフトは該シャフトに形成された第2の複数の開口部を有し、かつ第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0037】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは注入ルーメンを画成している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップは、濾過された脳脊髄液を、注入ルーメンを通じて返戻することを含む。
【0038】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、注入ルーメンを通じて薬物を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、吸引ルーメンが内側シャフトと外側シャフトとの間に画成されている。
【0039】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、ALS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、吸引ルーメンを通じて脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、がん患者から脳脊髄液を取り出すステップは、不溶性のスーパーオキシドジスムターゼ‐1(SOD1)、グルタメート、ニューロフィラメントタンパク質、及び抗GM1ガングリオシド抗体のうち1以上を取り出すことを含む。
【0040】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムはエレクトロフィルタを備えている。
【0041】
単純ヘルペス脳炎(HSE)を治療するための方法が開示される。該方法は、HSE患者から脳脊髄液を取り出すステップと;脳脊髄液を、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれか一方を除去するための濾過システムを用いて濾過するステップと;濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップとを含む。
【0042】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、HSE患者から脳脊髄液を取り出すステップは、患者の腰部の脳脊髄腔から脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、HSE患者から脳脊髄液を取り出すステップは、脳脊髄腔内にカテーテルシステムを配置することを含む。
【0043】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルシステムは、内側シャフトと外側シャフトとを有するカテーテルシャフトを備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
【0044】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、外側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された第1の複数の開口部を有し、外側シャフトは該シャフトに形成された第2の複数の開口部を有し、かつ第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0045】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは注入ルーメンを画成している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップは、濾過された脳脊髄液を、注入ルーメンを通じて返戻することを含む。
【0046】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、注入ルーメンを通じて薬物を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、吸引ルーメンが内側シャフトと外側シャフトとの間に画成されている。
【0047】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、HSE患者から脳脊髄液を取り出すステップは、吸引ルーメンを通じて脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
【0048】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムはエレクトロフィルタを備えている。
多発性硬化症(MS)を治療するための方法が開示される。該方法は、MS患者から脳脊髄液を取り出すステップと;脳脊髄液を、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれか一方を除去するための濾過システムを用いて濾過するステップと;濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップとを含む。
【0049】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、MS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、患者の腰部の脳脊髄腔から脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、MS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、脳脊髄腔内にカテーテルシステムを配置することを含む。
【0050】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルシステムは、内側シャフトと外側シャフトとを有するカテーテルシャフトを備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
【0051】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、外側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された第1の複数の開口部を有し、外側シャフトは該シャフトに形成された第2の複数の開口部を有し、かつ第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0052】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは注入ルーメンを画成している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップは、濾過された脳脊髄液を、注入ルーメンを通じて返戻することを含む。
【0053】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、注入ルーメンを通じて薬物を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、吸引ルーメンが内側シャフトと外側シャフトとの間に画成されている。
【0054】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、MS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、吸引ルーメンを通じて脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
【0055】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムはエレクトロフィルタを備えている。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を治療するための方法が開示される。該方法は、HIV陽性患者から脳脊髄液を取り出すステップと;脳脊髄液を、ウイルス性物質、酸化性物質、及び炎症性物質のうち少なくともいずれかを除去するための濾過システムを用いて濾過するステップと;濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップとを含む。
【0056】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、HIV陽性患者から脳脊髄液を取り出すステップは、患者の腰部の脳脊髄腔から脳脊髄液を取り出すことを含む。
【0057】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、HIV陽性患者から脳脊髄液を取り出すステップは、脳脊髄腔内にカテーテルシステムを配置することを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルシステムは、内側シャフトと外側シャフトとを有するカテーテルシャフトを備えている。
【0058】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、外側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
【0059】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された第1の複数の開口部を有し、外側シャフトは該シャフトに形成された第2の複数の開口部を有し、かつ第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0060】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは注入ルーメンを画成している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップは、濾過された脳脊髄液を、注入ルーメンを通じて返戻することを含む。
【0061】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、注入ルーメンを通じて薬物を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、吸引ルーメンが内側シャフトと外側シャフトとの間に画成されている。
【0062】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、HIV陽性患者から脳脊髄液を取り出すステップは、吸引ルーメンを通じて脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
【0063】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムはエレクトロフィルタを備えている。
ギラン‐バレー症候群(GBS)を治療するための方法が開示される。該方法は、GBS患者から脳脊髄液を取り出すステップと;脳脊髄液を、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれか一方を除去するための濾過システムを用いて濾過するステップと;濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップとを含む。
【0064】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、GBS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、患者の腰部の脳脊髄腔から脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、GBS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、脳脊髄腔内にカテーテルシステムを配置することを含む。
【0065】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルシステムは、内側シャフトと外側シャフトとを有するカテーテルシャフトを備えている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
【0066】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、外側シャフトは該シャフトに形成された複数の開口部を有する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは該シャフトに形成された第1の複数の開口部を有し、外側シャフトは該シャフトに形成された第2の複数の開口部を有し、かつ第1の複数の開口部のうち少なくともいくつかは、第2の複数の開口部のうち少なくともいくつかとは大きさ、形状、又は両方において異なっている。
【0067】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、内側シャフトは注入ルーメンを画成している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップは、濾過された脳脊髄液を、注入ルーメンを通じて返戻することを含む。
【0068】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、注入ルーメンを通じて薬物を注入するステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、吸引ルーメンが内側シャフトと外側シャフトとの間に画成されている。
【0069】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、GBS患者から脳脊髄液を取り出すステップは、吸引ルーメンを通じて脳脊髄液を取り出すことを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
【0070】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムはエレクトロフィルタを備えている。
脳脊髄液から物質を除去するためのシステムが開示される。該システムは、第1の位置で脳脊髄腔にアクセスするための第1のポート;第1のポートに結合された第1のカテーテルであって、第1の位置から脳脊髄液を取り出すように設計されている第1のカテーテル;第1のカテーテルに結合された濾過システムであって、第1の位置から取り出された脳脊髄液を濾過するように設計されている濾過システム;第2の位置で脳脊髄腔にアクセスするための第2のポート;及び、第2のポートに結合された第2のカテーテルであって、濾過された脳脊髄液を返戻するように設計されている第1のカテーテル、を具備している。
【0071】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第1の位置は患者の腰部領域である。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第2の位置は患者の頭蓋領域に隣接している。
【0072】
患者の細菌性髄膜炎の症状を改善するための方法が開示される。該方法は、細菌性髄膜炎の症状を有する患者を選択するステップと;患者の腰部の脳脊髄液腔の第1の位置から脳脊髄液を取り出すステップと;取り出された脳脊髄液から1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌をある流量で取り出すことにより、脳脊髄液の状態調整を行うステップと;状態調整がなされた脳脊髄液を、頚部の脳脊髄液腔、胸部の脳脊髄液腔、又は患者の脳室における、第2の位置で患者に返戻するステップと;を含んでなり、取り出すステップ及び返戻するステップは、各々が1以上のルーメンを具備している1以上のカテーテルを使用して同時に実施される、方法。
【0073】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、脳脊髄液は、該脳脊髄液が取り出されるのとほぼ同じ流量で患者に返戻される。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、取り出された脳脊髄液から1以上のエンドトキシンをその流量で取り出すステップをさらに含む。
【0074】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、取り出された脳脊髄液から1以上のサイトカインをその流量で取り出すステップをさらに含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌を取り出すステップは、1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌を除去するように特別に構成されたフィルタシステムを使用して達成される。
【0075】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上のエンドトキシンを取り出すステップは、1以上のエンドトキシンを除去するように特別に構成されたフィルタシステムを使用して達成される。
【0076】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上のサイトカインを取り出すステップは、1以上のサイトカインを除去するように特別に構成されたフィルタシステムを使用して達成される。
【0077】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタシステムは接線流濾過(TFF)フィルタを具備している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタシステムは、1~500kDaの範囲の質量を有する物質を除去することが可能なフィルタを具備している。
【0078】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタシステムは、0.1~5ミクロンの範囲の細孔径を有するフィルタを具備している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌はグラム陰性の病原性細菌である。
【0079】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌は、シュードモナス属細菌、アシネトバクター属細菌、クレブシエラ属細菌、又はこれらの組み合わせである。
【0080】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌は多剤耐性である。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上のカテーテルは、第1の位置にある第1の基端側ポートを備えた第1のルーメンと、状態調整を行う処理の少なくとも一部の間は第2の位置にある第2の先端側ポートを有する第2のルーメンとを具備している、単一のカテーテルを具備している。
【0081】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上のカテーテルは、第1の位置において挿入される第1のカテーテルと、状態調整を行う処理の少なくとも一部の間に第2の位置において挿入される第2のカテーテルとを具備している。
【0082】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第1のカテーテル及び第2のカテーテルは各々単一のルーメンを具備している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、流量は0.04ml/分~30ml/分の範囲内にある。
【0083】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、患者から取り出される脳脊髄液の体積は40mlを超過しない。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第2の位置は頚部の脳脊髄液腔内にある。
【0084】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第2の位置は脳の脳室内にある。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第2の位置は胸部の脳脊髄液腔内にある。
【0085】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、脳脊髄液を取り出しかつ返戻する流れ方向は、治療の一部の間にCSFが第1の位置に返戻されて第2の位置から取り出されるように周期的に反転される。
【0086】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、流れの反転は取り出しポート又は返戻ポートからデブリを取り除くためのパルスである。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、状態調整がなされた脳脊髄液が脳脊髄液腔に返戻されるときに、状態調整がなされた脳脊髄液を内在の脳脊髄液と混合するステップをさらに含む。
【0087】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、混合するステップは、状態調整がなされた脳脊髄液が返戻されるときに乱流を誘発することを含む。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、赤血球、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、及びエンドセリンのうち少なくとも1つを分離するステップをさらに含む。
【0088】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、状態調整を行うステップは、生体特異的親和性(biospecific affinity)、免疫親和性、陽イオン交換、陰イオン交換、疎水性、及びサイズ排除で構成されている群から選択された1以上の分離プロセスを含む。
【0089】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、状態調整を行うステップは、患者の身体の外部で実施される。
患者の細菌性髄膜炎の症状を改善するためのシステムが開示される。該システムは、先端側ポートを備えた第1のルーメンと基端側ポートを備えた第2のルーメンとを有しているカテーテルアセンブリであって、前記カテーテルはCSF腔に導入されるようになされており、かつ前記ポートは軸方向に離れて間隔を置いて配置されている、カテーテルアセンブリ;第1及び第2のルーメンの間のCSFの流れを誘導するために前記ルーメン間を接続可能なポンプ;並びに、第1及び第2のルーメンの間を接続可能なフィルタ要素であって、CSFから1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌を除去することにより脳脊髄液の状態調整を行うように構成されている、フィルタ要素、を具備している。
【0090】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素はCSFから1以上のエンドトキシンを除去するようにさらに構成されている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素はCSFから1以上のサイトカインを除去するようにさらに構成されている。
【0091】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は接線流濾過(TFF)フィルタを具備している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は、1~500kDaの範囲の質量を有する物質を除去することが可能である。
【0092】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は、0.1~5ミクロンの範囲の細孔径を有している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は、1以上のグラム陰性の病原性細菌を除去するように構成されている。
【0093】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は、シュードモナス属細菌、アシネトバクター属細菌、クレブシエラ属細菌、又はこれらの組み合わせのうち1以上を除去するように構成されている。
【0094】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は、多剤耐性である1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌を除去するように構成されている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルアセンブリは、第1の基端側ポートを備えた第1のルーメン及び第2の先端側ポートを有する第2のルーメンを具備している単一のカテーテルを具備している。
【0095】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルアセンブリは第1のカテーテル及び第2のカテーテルを具備している。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、第1のカテーテル及び第2のカテーテルは各々単一のルーメンを具備している。
【0096】
髄膜炎を治療するための方法が開示される。該方法は、髄膜炎患者から脳脊髄液を取り出すステップと;濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップであって、濾過システムは5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている、ステップと;濾過された脳脊髄液を患者に返戻するステップとを含む。
【0097】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップは、脳脊髄液から1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌を除去する。
【0098】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌にはグラム陰性の細菌が含まれる。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌には、シュードモナス属細菌、アシネトバクター属細菌、クレブシエラ属細菌、又はこれらの組み合わせが含まれる。
【0099】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップは、脳脊髄液から1以上の細菌エンドトキシンを除去する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップは、脳脊髄液から1以上の神経炎症性物質を除去する。
【0100】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップは、脳脊髄液から1以上の髄膜炎を引き起こす病原性真菌を除去する。
【0101】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、1以上の髄膜炎を引き起こす病原性真菌にはクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans )が含まれる。
【0102】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップは、脳脊髄液から1以上の真菌抗原を除去する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップは、脳脊髄液から1以上の炎症性物質を除去する。
【0103】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、濾過システムを用いて脳脊髄液を濾過するステップは、脳脊髄液から1以上のサイトカインを除去する。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、中枢神経系に薬物を送達するステップをさらに含む。
【0104】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、脳脊髄液に薬物を送達するステップをさらに含む。
患者の真菌性髄膜炎を治療するためのシステムが開示される。該システムは、先端側ポートを備えた第1のルーメンと基端側ポートを備えた第2のルーメンとを有するカテーテルであって、該カテーテルは脳脊髄液腔に導入されるように設計されており、かつポートは軸方向に離れて間隔をおいて配置されている、カテーテル;第1及び第2のルーメンの間の脳脊髄液の流れを誘導するために前記ルーメン間を接続可能なポンプ;並びに、第1及び第2のルーメンの間を接続可能なフィルタ要素であって、脳脊髄液から1以上の髄膜炎を引き起こす病原性真菌を除去することにより、脳脊髄液の状態調整を行うように構成されたフィルタ要素、を具備している。
【0105】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は脳脊髄液から1以上の真菌抗原を除去するようにさらに構成されている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は脳脊髄液から1以上の炎症性物質を除去するようにさらに構成されている。
【0106】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は脳脊髄液から1以上のサイトカインを除去するようにさらに構成されている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルは、患者から脳脊髄液を吸引速度で吸引し、状態調整がなされた脳脊髄液を患者に返戻速度で返戻するように設計されており;廃棄速度が吸引速度と返戻速度との間の差として定義され;かつ廃棄速度は、患者において生理学上適切な脳脊髄液体積及び頭蓋内圧を維持するように制御される。
【0107】
患者の真菌性髄膜炎を治療するためのシステムが開示される。該システムは、先端側ポートを備えた第1のルーメンと基端側ポートを備えた第2のルーメンとを有するカテーテルであって、該カテーテルは脳脊髄液腔に導入されるように設計されており、かつポートは軸方向に離れて間隔をおいて配置されている、カテーテル;第1及び第2のルーメンの間の脳脊髄液の流れを誘導するための前記ルーメン間を接続可能なポンプ;並びに、第1及び第2のルーメンの間を接続可能なフィルタ要素であって、脳脊髄液から1以上の髄膜炎を引き起こす病原性細菌を除去することにより、脳脊髄液の状態調整を行うように構成されたフィルタ要素、を具備している。
【0108】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は脳脊髄液から1以上の細菌エンドトキシンを除去するようにさらに構成されている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は脳脊髄液から1以上の炎症性物質を除去するようにさらに構成されている。
【0109】
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、フィルタ要素は脳脊髄液から1以上のサイトカインを除去するようにさらに構成されている。
上記の実施形態のうちいずれかの代替として、又は追加として、カテーテルは、患者から脳脊髄液を吸引速度で吸引し、状態調整がなされた脳脊髄液を患者に返戻速度で返戻するように設計されており;廃棄速度が吸引速度と返戻速度との間の差として定義され;かつ廃棄速度は、患者において生理学上適切な脳脊髄液体積及び頭蓋内圧を維持するように制御される。
【0110】
髄膜炎を治療するためのシステムが開示される。該システムは、先端側ポートを備えた第1のルーメンと基端側ポートを備えた第2のルーメンとを有するカテーテルであって、該カテーテルは脳脊髄液腔に導入されるように設計されており、かつポートは軸方向に離れて間隔をおいて配置されている、カテーテル;第1及び第2のルーメンの間の脳脊髄液の流れを誘導するための前記ルーメン間を接続可能なポンプ;並びに、第1及び第2のルーメンの間を接続可能なフィルタ要素であって、脳脊髄液から1以上の髄膜炎に関連した病原体を除去することにより、脳脊髄液の状態調整を行うように構成されたフィルタ要素、を具備している。
【0111】
髄膜炎を治療するためのシステムが開示される。該システムは、1以上の髄膜炎に関連した病原体を除去するための、濾過システムを備えたカテーテルを具備しており;該濾過システムは、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、又は両方を備えている。
【0112】
いくつかの実施形態についての上記概要は、開示される各実施形態又は本開示のすべての実装について説明するようには意図されていない。以降の図面及び[詳細な説明]は、これらの実施形態をより詳細に例示するものである。
【0113】
本開示は、添付の図面に関連する以降の詳細な説明を考慮すれば、より十分に理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1】ある実装による、カテーテルのYコネクタ部分、基端側サブアセンブリ、及び先端側サブアセンブリを例証する図。
図2図1のカテーテルの切断線A‐Aで示された部位から得られた断面図。
図3図1のカテーテルの切断線B‐Bで示された部位から得られた断面図。
図4図1のカテーテルのYコネクタの一部分を示す拡大詳細図。
図5】ある実装によるカテーテルのポジションマーカーの位置を示す図。
図6図5のカテーテルの切断線J‐Jで示された部位から得られた断面図。
図7】ある実装による、基端側サブアセンブリと先端側サブアセンブリとの接合部付近におけるカテーテルの一部分を示す図。
図8】ある実装による基端側サブアセンブリの一部分を示す図。
図9図8の基端側サブアセンブリの詳細図。
図10図8の基端側サブアセンブリの切断線A‐Aで示された部位から得られた断面図。
図11】線D‐Dの視点から得られた図9の基端側サブアセンブリの一部分の詳細図。
図12図8の基端側サブアセンブリの切断線E‐Eで示された部位から得られた断面図。
図13】ある実装による先端側サブアセンブリの一部分を示す図。
図14図13の先端側サブアセンブリの詳細部分を示す図。
図15図13の先端側サブアセンブリの詳細部分を示す図。
図16図13の先端側サブアセンブリの切断線A‐Aで示された部位から得られた断面図。
図17】一例のポンプシステムを概略的に例証する図。
【発明を実施するための形態】
【0115】
本開示には様々な改変形態及び代替形態が可能であるが、その具体像は図中に例として示されており、かつ詳細に説明されることになる。しかし当然のことながら、意図されているのは、本開示内容を、説明される特定の実施形態に限定することではない。それどころか、意図されているのは、本開示の趣旨及び範囲の内にある全ての改変形態、等価物、及び代替形態を対象とすることである。
【0116】
[詳細な説明]
脳脊髄液(CSF)は、脳内の脳室、具体的には脈絡叢で生産される、一般に透明で無色の流体である。脈絡叢は、1日に数回生じる毒素及び代謝産物を除去するためのCSFの洗い流し(flushing)又は再利用(recycling )に対応するために、毎日およそ500ミリリットルのCSFを生産する。脈絡叢から、CSFは流路(管)を通って脳及び脊柱を取り囲む空間に入り、その後身体内へと、ゆっくり流れる。CSFは、脳軟膜とクモ膜との間の、クモ膜下腔として知られる空間に見出される。CSFはさらに、脊髄の中心管と連続している脳内の脳室系の中及び周囲においても見出される。脳卒中又はその他の脳損傷の場合には、ある1つの位置(例えば脊柱の頚部、又は脳室)からCSFを取り出し、これを濾過し、かつそれを第2の位置(例えば脊柱の腰部)においてCSF腔に返戻することが望ましい可能性がある。しかしながら、CSF腔に医療機器を正確に送り込むことは非常に難易度が高い可能性がある。
【0117】
本開示は、脳脊髄液(CSF)の取り出し、交換及び再循環に関する。本明細書中に開示されるデバイス、システム及び方法は、CSFが身体を流れる場である脳及び脊髄並びにその周囲の空間(CSF腔としても知られる)を、安全かつ効率的に通行するために使用される。専用のデバイス及びシステムは、出入りが困難な場所であること、及びもし誤りがあれば生命を脅かす結果となる可能性から、CSF腔を通行するために有用であり場合によっては必須である。安全性及び効能の向上は、手術室で費やされる時間及び合併症の可能性を縮小する。
【0118】
Neurapheresis(商標)は、CSFからの物質(例えば微生物、細胞、ウイルス、外来物質、薬物、これらの組み合わせなど)の除去であると理解することができる。上記及びその他の治療技法は、多くの神経系の疾患又は状態、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、様々な原因による脳炎、様々な原因による髄膜炎、ギラン‐バレー症候群(GBS)、多発性硬化症(MS)、HIV関連神経認知障害、脊髄損傷、外傷性脳損傷、脳血管痙攣、卒中及びその他の疾患又は状態、を治療するために使用可能である。
【0119】
精製、状態調整、及び化合物除去のうち少なくともいずれかのスキーマは、具体的な疾患又は疾患群に合わせて適切に、例えば、大きさ、親和性、生化学的性質、温度、及びその他の特徴のようないくつかの特徴に基づいて、策定されることが可能である。精製スキーマは、拡散、サイズ排除、固定化された抗体又は抗体フラグメントを使用するex‐vivoの免疫療法、疎水性/親水性、陰イオン性/陽イオン性、高/低結合親和性、キレート化剤、抗菌性、抗ウイルス性、抗DNA/RNA/アミノ酸、酵素系、及び磁気系のシステム並びにナノ粒子を用いるシステムのうち少なくともいずれかに基づくことができる。該システムは、広範囲にわたる生物学的なパラメータ及び流動に対して調整可能となりうる。
【0120】
特にNeurapheresisシステムに関して、開示されるシステムは、CSF流の妨げを最小限として安全かつ迅速にCSF腔にアクセスするために使用可能である。本明細書中に開示されるシステム及びデバイスは、安全かつ迅速な流動回路を提供し、かつ濾過を提供する。
【0121】
Neurapheresisシステムは、安全かつ効率的に、CSFの交換、取り出し、及び再循環のうち少なくともいずれかを提供しなくてはならない。本明細書中に開示されるシステム及びデバイスは、Neurapheresisシステムにおいて使用可能である。
【0122】
本明細書中に開示されたシステム及びデバイスは、安全かつ効率的に、ある1つの位置(例えば脊柱の頚部、又は脳室)からCSFを取り出すためにCSF腔にアクセスし、該CSFを濾過又はその他の方法で処理し、そしてそれをCSF腔に、例えば第2の位置(例えば脊柱の腰部)において返戻するために使用可能である。様々な態様において、本明細書中に開示されたシステム及びデバイスは、内因性の頭蓋内又は脊髄内圧力を生理的範囲内に、例えば、約5~約20mmHg、又は約0~約10mmHg、又は約-5~約10mmHg、又は約-5~約25mmHgに、維持する。本システムはこのようにして、例えば水頭症(脳の脳室内におけるCSFの異常滞留)による脊髄性頭痛を軽減する。本システムはさらに、圧力低下(例えばドレナージ過剰、ヘルニア形成などに起因するもの)によって引き起こされた脊髄性頭痛を軽減するために使用されてもよい。いくつかの態様では、システムは、システム内の障害物又は遮断物を検知するためにカテーテル内又は流動回路内にセンサを備え、これにより閉ループの圧力制御を提供することができる。様々な態様において、本明細書中に開示されたシステム及びデバイスはさらに、再循環する流動ループの縮小又は削除によりシステムが効率的に働くのを支援する。システム及びデバイスは、入口と出口との間の間隔を、例えば約10cm~約40cmに維持する。ある実装では、間隔は約10cm~約30cmである。入口及び出口はCSF腔の中の適所に位置付けられて、ポンプの作動又はその他のシステム内における陽圧若しくは陰圧の生成が、カテーテル中に組織が引き込まれる原因となったり引き込まれるのを助長したりしないようになっている。いくつかの態様では、入口及び出口は、カテーテル中に組織が引き込まれるのを防止するために、腰椎頸椎槽(lumbar cervical cistern)の近くに設置される。いくつかの態様では、穴部をいくつか遮断している組織が存在する場合のために、冗長性を備えるため入口及び出口に沿って多数の穴部がさらに存在してもよい。ある実装では、カテーテル内のコイル巻ワイヤの特定のコイルピッチが、カテーテルのキンクを低減するために選択されてもよい。ある態様では、入口‐出口間隔は、患者の頚部のレベル未満にとどまりながら最大限となされるように選択されうる。ある態様では、入口‐出口間隔は椎骨の間隔に基づいて選択されてもよい。例えば、間隔は、入口‐出口間隔が椎骨およそ5個~椎骨およそ12個の長さであるように、選択可能である。ある実装では、椎骨およそ10個の間隔が選択されうるが;しかしながら、その他の構成(本明細書中他所に記述されるものなど)が利用されてもよい。そのような間隔を設計する場合、椎骨はおよそ2~3cmの長さであると仮定されてよいが、また一方でその他の計測値及び設計が使用されてもよい。ある実装では、ルーメンの特定の大きさ、形状、及び他の構成のうち少なくともいずれかは、カテーテルの障害物除去及びカテーテルが閉塞状態に抵抗する能力のうち少なくともいずれか一方を促進するように、選択可能である。例えば、およそ1.52ミリメートル(0.060インチ)~およそ1.78ミリメートル(0.070インチ)の、基端側のルーメン外径、及びおよそ0.635ミリメートル(0.025インチ)~1.52ミリメートル(0.060インチ)の基端側の内径が、選択されてもよいが;また一方で、その他の構成(本明細書中他所に記述されるものなど)が利用されてもよい。
【0123】
開示されたシステム及びデバイスは、CSF腔にアクセスするために使用され、かつ脊柱の頚部(C1‐C7)、胸部(T1‐T12)、又は腰部(L1‐L5)のうち任意のアクセスポイントで使用可能である。頚部のアクセス部位は、脳内の脳室系にアクセスするために使用可能である。1つの実施形態では、システム及びデバイスは腰部にアクセスするために使用される。いくつかの実施形態では、入口及び出口は、ドレナージのプロセスにより組織がカテーテル中に引き込まれることのないように、脊柱の適所に位置付けられる。例えば、患者が手術台に横たわっている場合、進入は、脊柱にアクセスするために例えば約90度のような適切な角度で行われるとよい。従来のカテーテルは、L4‐L6領域における90度の屈曲部を通して押し込まれるはずである。本明細書中に開示されたカテーテル及び関連する送達デバイスは、それらがこの角度をなした屈曲部についてより容易かつ効率的にアクセス及び通行することが可能であるように、湾曲していてもよい。
【0124】
図1~16は、ある実装によるカテーテル500の実施形態の、全体図、基端側サブアセンブリの図、及び先端側サブアセンブリの図を示している。図1は、Yコネクタ部分502、基端側サブアセンブリ540、及び先端側サブアセンブリ560を示す。Yコネクタ部分502は、コネクタ504、506、機構508、510、512、ポジションマーカー514、及びその他の構成要素を備えることができる。コネクタ504、506は様々な形態をとることができる。例えば、図示されるように、コネクタ504、506はそれぞれメス型及びオス型のルアーロック式コネクタである。機構508、510、512は、例えば、張力緩和かつ耐キンク性の機構60に関して上述されるような、張力緩和かつ耐キンク性の機構であってよい。機構508は、Yコネクタ502の中央合流点付近の部分におけるカテーテル500の撓み又は変形を可能にするように構成されうる。機構510、512は、コネクタ504、506の近くにおけるカテーテル500の撓み又は変形を可能にするように構成されうる。ある実装では、機構510、512は、コネクタ504、506がマルチルーメンカテーテルのどのルーメンに対応しているかを表示するために色分けされてもよい。ある実施形態では、機構508、510、512は、およそ3.18mm(1/8”)のポリオレフィン製熱収縮チューブの形態であってもよい。ポジションマーカー514は、ポジションマーカー100に関して上述されるようなポジションマーカーであってよい。
【0125】
カテーテル500の長さLはおよそ1,300mm、併せて作業長さLはおよそ1,150mmであってよい。作業長さLは様々な用途及び設計を考慮して規定されうる。図示されるように、作業長さLは、先端側サブアセンブリ560の先端部から機構508の先端部までの距離である。機構508の先端部からコネクタ506の基端部までの距離Dは、およそ150mmであってよい。機構508はおよそ35mmの長さLを有してもよく、機構510、512はおよそ7mmの長さLを有してもよい。ある実装では、カテーテル500はおよそ400mm~およそ1200mmの長さLと、併せて様々な度合で適宜変更される作業長さL及びその他の寸法を有することができる。
【0126】
図2は、カテーテル500の切断線A‐Aで示された部位から得られた断面図を示す。この図は、壁部516Bによって画成されたルーメン516Aを示している。ルーメン516A及び壁部516Bの特性及び性質は、本明細書中に記載された他の壁部及びルーメンに類似していてよい。図示されるように、壁部516Bはおよそ0.54mmの内径D及びおよそ1.14mmの外径Dを有する。
【0127】
図3は、カテーテル500の切断線B‐Bで示された部位から得られた断面図を示す。この図は、内側壁部518Bによって画成されたルーメン518A、及び内側壁部518Bと外側壁部520Bとの間の空間によって画成されたルーメン520Aを示している。ルーメン518A、520A及び壁部518B、520Bの特性及び性質は、本明細書中に記載された他の壁部及びルーメンに類似していてよい。内側壁部518Bは、およそ0.56mmの内径D及びおよそ0.71mmの外径Dを有しうる。外側壁部520Bは、およそ1.32mmの内径及びおよそ1.689mmの外径を有しうる。
【0128】
図4は、チューブ522、第1の分枝部524、及び第2の分枝部526を備えている、ある実装によるYコネクタ502の一部分の拡大詳細図を示している。チューブ522は、ハイポチューブ又はその他の管材料であってよい。チューブ522はおよそ10mmの長さLを有しうる。ある実装では、第1の分枝部524はルーメン520Aと流体接続しているコネクタ504を設置することが可能であり、第2の分枝部526はルーメン518Aと流体接続しているコネクタ506を設置することが可能である。
【0129】
図5は、カテーテル500の2つのポジションマーカー514の位置を示している。第1のポジションマーカー514の先端部は、カテーテル500の先端部からおよそ450mmの距離Dだけ離れて位置している。第2のポジションマーカー514の先端部は、カテーテル500の先端部からおよそ550mmの距離Dだけ離れて位置している。ポジションマーカー514の長さLはおよそ10mmである。ある実装では、バンド及びポジションマーカーのうち少なくともいずれか(例えばポジションマーカー514)は、PET製熱収縮チューブを含むことができる。
【0130】
図6は、カテーテル500の切断線J‐Jで示された部位から得られた断面図を示す。この図は、ポジションマーカー514の外側部分が壁部520Bの内側部分にほぼ隣接している実施形態を示している。従って、本実施形態のこの部分では、ルーメン520Aは、壁部518Bの外側部分及びポジションマーカー514の内側部分によって画成されている。図示されるように、外側壁部520Bはおよそ1.75mmの外径D10を有する。他の場合には、ポジションマーカー514は、壁部520Bの外側部分に沿って、壁部518Bの外側部分に沿って、又はカテーテル500の別の領域に沿って、配置されてもよい。
【0131】
図7は、バンド528A、528B、及び530A、開口部532A及び532B、並びにR形状のチップ530を備えている、カテーテル500の一部分を示す。バンド530Aの先端側部分は、バンド528Aの先端側部分からおよそ300mm(又は例えば患者の体格/身長に応じてそれ以上若しくはそれ以下)の距離D11だけ離れて位置することができる。この間隔により、局所的な再循環を低減すること、及び頚椎の中の敏感な神経構造を回避する助けとなること、のうち少なくともいずれかを支援することができる。バンド528Aの先端部は、R形状のチップ530の先端部からおよそ2mmの距離D12だけ離れて位置することができる。R形状のチップは、およそ0.28mmの半径Rを有しうる。
【0132】
図8は、基端側サブアセンブリ540の一部を示す。図示されるように、基端側サブアセンブリ540の先端部から基端側サブアセンブリ540の基端部までの距離Dはおよそ893mmである。マーカーバンド544Bの先端部からバンド530Aの先端部までの距離Dはおよそ248mmである。基端側サブアセンブリ540の基端部からバンド530Bの先端部までの距離Dはおよそ845mmである。マーカーバンド544Aの先端部からバンド530Aの先端部までの距離Dはおよそ148mmである。マーカーバンド544A、544Bはおよそ10mmの長さLを有しうる。基端側サブアセンブリ540の一部分は、およそ0.457mm(0.018”)のコイルピッチを有するコイル巻ワイヤ542Bを具備することができる。基端側サブアセンブリ540の一部分は、およそ2.41mm(0.095”)のコイルピッチを有するコイル巻ワイヤ542Aを具備することができる。ある実装では、ワイヤ542A、542Bは、304Vスプリングテンパー材のおよそ0.0762mm(0.003”)の丸形ワイヤスプールを具備することができる。
【0133】
ある実装では、カテーテル500の基端側サブアセンブリ540は、およそ1.52mm(0.06”)~およそ1.78mm(0.07”)の外径を有しうる。この構成は、座屈することなく所望のレベルのドレナージ及び吸引のうち少なくともいずれか一方を可能にするように組織の層の間のカテーテルの大きさを最大限にすることができる。カテーテル500の基端側サブアセンブリ540及びその他の部分の厚さは、コイル及びシースの1以上の層の設計に応じたものであってよい。厚さは、カテーテル500の剛性及び押し込み性(pushability )、並びに耐キンク性に影響しうる。ある実装では、カテーテル500の内側ルーメンの直径(例えば基端側サブアセンブリ540のルーメンの直径など)は、特定の解剖学的構造又は手技の制約のもとで最適なドレナージ及び吸引のうち少なくともいずれか一方を提供するために選択されることが可能である。例えば、基端側の内側ルーメンの最小径は、およそ0.635mm(0.025”)~およそ1.524mm(0.060”)であるように選択可能である。
【0134】
図9は、図8の基端側サブアセンブリ540の詳細図を示す。図示されるように、基端側サブアセンブリ540の一部分は複数の開口部532A(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10 11、12.13 14.15、16個又はそれ以上の開口部532A)を画成する。開口部532Aは、カテーテル500のルーメン520Aと流体接続することが可能であり、かつ少なくともいくつかの実例では、カテーテル500の対向する「上部」側及び「底部」側に配置構成されることが可能である。開口部532Aは、ワイヤ542Aのコイルピッチ2個分の間隔で間を置いて配置されてもよい。バンド530Bの先端部とバンド530Aの先端部との間の距離Dはおよそ45mmである。バンド530Aの先端部から基端側サブアセンブリ540の先端部までの距離Dはおよそ3mmであってよい。ある実装では、バンド530A、530Bは、およそ1.55mm(0.061”)の内径及びおよそ1.63mm(0.064”)の外径を有する放射線不透過性のバンドを含んでなることができる。
【0135】
図10は、ライナー546及び管材料548を備えている、基端側サブアセンブリ540の切断線A‐Aで示された部位から得られた断面図を示す。ライナー546及び管材料548は、管材料548がライナー546の内側にあるように配置構成されうる。コイル542Aはライナー546と管材料548との間に配置されてもよい。ある実装では、ライナー546はおよそ0.0254mm(0.001”)のWTのPTFE製ライナーを含んでなることができる。管材料548はおよそ0.102mm(0.004”)のWTのポリエーテルブロックアミド製管材料を含んでなることができる。管材料548及びライナー546の組み合わせの外径Dはおよそ1.69mmであってよい。前記組み合わせの内径Dはおよそ1.32mmであってよい。
【0136】
図11は、線D‐Dの視点で得られ、かつ開口部532Aのうちの1つを示している、基端側サブアセンブリ540の一部分の詳細図を示す。図示された開口部532Aは、およそ1.57mm×およそ0.56mmの寸法を有している。少なくともいくつかの実例では、開口部532Aは形状が楕円形であってよい。その他の形状も企図される。開口部532Aの形状は、基端側サブアセンブリ540の長さに沿って同じであってもよいし、又は開口部532Aの形状が基端側サブアセンブリ540の長さに沿って異なっていてもよい。少なくともいくつかの実例では、開口部532Aは開口部532Bよりも大きくてよい。
【0137】
図12は、基端側サブアセンブリ540の切断面E‐Eで示された部位から得られた断面図を示す。図示されるように、マーカーバンド544を含めたこの部分の外径Dは、およそ1.75mmである。
【0138】
図13は、先端側サブアセンブリ560の一部を示している。先端側サブアセンブリ560の長さLはおよそ302mmであってよい。先端側サブアセンブリ560の基端部からバンド528Bの先端部までの距離Dはおよそ270mmである。先端側サブアセンブリ560の一部分は、およそ0.813mm(0.032”)のコイルピッチを有しうるコイル巻ワイヤ562Bを具備することが可能である。カテーテル500の上記及びその他の部分は、内径がおよそ0.559mm(0.022”)であるおよそ0.0762mm(0.003”)のWTのナイロン12製の管材料、及び内径がおよそ1.02mm(0.04”)であるおよそ0.178mm(0.007”)のWTのPEBAX製の管材料を具備することができる。
【0139】
図14は、バンド528A、複数の開口部532B、バンド528B、ワイヤ562A、及びワイヤ562Bを備えている、先端側サブアセンブリ560の詳細部分を示している。ある実装では、ワイヤ562A、562Bは同じワイヤの異なる部分であってもよいし、又は別個のワイヤ部分であってもよい。図示されるように、ワイヤ562A及び562Bはバンド528Bによって分離されていてもよい。ワイヤ562Aは、およそ1.65mm(0.065”)のコイルピッチを有しうる。ワイヤ562A、562Bは先端側サブアセンブリ560の層の間に配置可能であり、かつおよそ0.0762mm(0.003”)の丸形ワイヤスプール304Vスプリングテンパー材を具備することができる。開口部532Bは、コイルピッチ2個分の間隔を置かれてカテーテル500の上部及び底部に配置構成されて、カテーテル500の内側ルーメン516Aと流体接続せしめられてもよい。少なくともいくつかの実例では、開口部532Bは円形又はほぼ円形であってよい。その他の形状も企図される。開口部532Bの形状は先端側サブアセンブリ560の長さに沿って同じであってもよいし、又は開口部532Bの形状は先端側サブアセンブリ560の長さに沿って異なっていてもよい。バンド528Bの先端部とバンド528Aの先端部との間の距離Dはおよそ30mmであってよい。ワイヤ562Aはこの領域内に配置されうる。バンド528A、528Bは、およそ0.813mm(0.032”)の内径及びおよそ0.864mm(0.034”)の外径を有しうる。バンド528A、528Bは放射線不透過性材料を備えることができる(例えば、バンド528A、528Bは、PT/10%IRのような材料を具備することができる)。バンド528A、528Bは先端側サブアセンブリ560の層の間に配置されてもよい。
【0140】
図15は、R形状のチップ530、バンド528A、及びワイヤ562Aを備えている、先端側サブアセンブリ560の詳細部分を示している。バンド528Aの先端部からR形状のチップ530の先端部の距離はおよそ2mmである。R形状のチップはおよそ0.28mmの半径Rを有しうる。
【0141】
図16は、先端側サブアセンブリ560の切断面A‐Aで示された部位から得られた断面図を示す。図示されるように、先端側サブアセンブリ560のこの断面はおよそ1.14mmの外径及びおよそ0.53mmの内径を有する。
【0142】
図17は、カテーテル500とともに利用可能なポンプ/濾過システム600を概略的に示している。カテーテル500は、ポンプ/濾過システム600の入口670に接続することができる。例えば、コネクタ504が直接又は仲介のチューブ若しくはメカニズムを通じて入口670に接続してもよい。入口670は第1のフィルタ672に通じることができる。いくつかの実例では、第1のフィルタ672は接線流フィルタである。例えば、第1のフィルタ672は、5kDaの接線流フィルタ(TFF)、100kDaのTFF、0.2μmのTFF、0.45μmのTFFなどを備えることができる。いくつかの実例では、第1のフィルタ672は、デッドエンド型フィルタ(例えば5kDaのデッドエンド型フィルタ)を備えてもよい。いくつかの実例では、第1のフィルタ672は、エレクトロフィルタ(例えば電荷に基づいて物質を除外するフィルタ)を備えてもよい。いくつかの実例では、1つのフィルタ(例えば第1のフィルタ672)のみが利用されてもよい。例えば、第1のフィルタ672は5kDaのフィルタであってよく、かつ第1のフィルタ672が唯一のフィルタであってよい。清浄なCSF676は経路678を進むことができる。CSFの廃棄物674は経路680を進むことができる。廃棄物の経路680は第2のフィルタ682に通じることができる。いくつかの実例では、第2のフィルタ682は接線流フィルタである。例えば、第2のフィルタ682は、5kDaのTFF、100kDaのTFF、0.2μmのTFF、0.45μmのTFFなどを備えることができる。いくつかの実例では、第2のフィルタ682はデッドエンド型フィルタ(例えば5kDaのデッドエンド型フィルタ)を備えてもよい。いくつかの実例では、第2のフィルタ682はエレクトロフィルタを備えてもよい。少なくともいくつかの実例では、第1のフィルタ672及び第2のフィルタ682は、大きさ及び種類のうち少なくともいずれか一方が同じである(例えば、第1のフィルタ672及び第2のフィルタ682はいずれも100kDaのTFFである)。他の実例では、第1のフィルタ672及び第2のフィルタ682は異なっている(例えば、第1のフィルタ672は5kDaのフィルタであり、第2のフィルタ682は100kDaのTFFフィルタである)。清浄なCSF684は経路686を進むことができる。CSFの廃棄物688は経路690を進むことができる。バルブ又は流量計測装置692が、廃棄物経路690に沿って、経路694及び収集装置696で終了する前に、配置されてもよい。経路678及び686は合流して返戻出口698となってよく、該返戻出口はカテーテル500のコネクタ506に(例えば直接、又は仲介のチューブを通じて)接続することができる。
【0143】
使用時、カテーテル500は、脳脊髄腔内に(例えば腰部の脳脊髄腔に沿って)配置可能である。CSFは、カテーテル500(例えばルーメン520Aを経由)及びポンプ/濾過システム600を使用して、採取/吸引されうる。吸引された流体はポンプ/濾過システム600を使用して濾過されることが可能であり、濾過/状態調整がなされたCSFは、カテーテル500(例えばルーメン518Aを経由)及びポンプ/濾過システム600を使用して、患者に返戻されることが可能である。いくつかの実例では、第2のカテーテル500(形態及び機能についてカテーテル500と類似していてよい)が、脳室内など頭蓋のCNSの一部分に配置されてもよい。第2のカテーテル500は、頭蓋領域(例えば脳室)から脳脊髄液を採取/吸引し、ポンプ/濾過システム600を使用して脳脊髄液の状態調整/濾過を行い、状態調整/濾過がなされた脳脊髄液を頭蓋領域又は隣接している領域に返戻するために、使用可能である。これらのうちのいくつか及びその他の実例では、第2のカテーテル500は、頭蓋領域へ薬物(例えばメトトレキセートのような化学療法薬)を注入するために使用可能である。カテーテル500(例えば脳脊髄腔内のもの)及び第2のカテーテル500(脳室内のもの)は一緒に使用されてもよいし、それらが交代で使用されてもよい。脳脊髄腔内及び脳室内の両方で、吸引及び注入の両方のためにカテーテル500を使用することにより、CNS全体にわたる脳脊髄液の循環を改善する可能性のある頭蓋‐腰部ループが形成されうる。
【0144】
カテーテル500(ポンプ/濾過システム600と併用)は、多くの状態を治療するために使用可能である。企図される状態のうちのいくつかには、がんが含まれる。例えば、軟膜転移(LM)は、原発性の固形腫瘍又は血液系腫瘍由来の細胞が転移し、クモ膜下腔(SAS)に侵入し、かつ脳脊髄液(CSF)全体に広がって、結果として中枢神経系(CNS)の表面に沿った軟膜への播種が生じる状態である。LMは、がんの進行の後期イベントに相当し、最も多く現れる症状には、多発性の脳神経障害、運動障害、精神状態の変化、頭痛、及び神経根痛が含まれる。LMの発生率はがん患者の3~5%と概算され、がん患者の全生存期間がより長くなることで増加してきた。LMは転移がん治療計画における困難な課題を提示し、有効な接近手段及び治療法が無いために悲惨な予後及び4か月の平均生存期間という結果をもたらす。メトトレキセート(MTX)、シタラビン及びチオテパなどの抗がん剤を用いた全身療法は、血液脳関門(BBB)の通過率が不十分なため効果的ではない。オマヤ貯留槽を含む髄腔内(IT)薬物送達システムは全生存期間をより長くしてきたが;しかしながら該システムは度重なる注射を必要とし、また受動拡散に依存している。CNS全体を対象とし、かつIT投与薬物の分布を増強する将来の治療法であれば、生存をさらに改善するということも考えられる。CSFはおよそ20ml/hrで生産され、全体積は~150mlであり、その結果として1日当たり平均で3回代謝回転する。CSFの生産速度は頭蓋内圧(ICP)に依存しない。LMはCSFの流出路を閉鎖する可能性があるので、患者は水頭症及びICP上昇の深刻なリスクに直面する。加えて、BBB及び血液‐CSF関門によりCSFが比較的孤立していることが、腫瘍生存のための特有の環境を提供する。
【0145】
カテーテル500は、CSF中の多数の病原体及び細胞を迅速に取り除き、またCSF中薬物送達を増強する能力を有しうる。例えば、カテーテル500は、LMの転帰を、1)SAS全体にわたる特定の抗がん剤(オマヤ貯留槽により、カテーテル500により、又は両方により送達されるMTX)の曝露及び循環の増強、(2)がんを広げている循環腫瘍細胞(CTC)を除去するためのCSFの局所的濾過、(3)CSFドレナージによるICPの制御、(4)腫瘍細胞(例えば、クモ膜顆粒及びリンパ系を介したCSFの自然な再吸収を妨げる場合のある生きた腫瘍細胞及び死んだ腫瘍細胞のうち少なくともいずれか)の濾別、によって改善するために、使用可能である。カテーテル500はさらに、CSF中の薬物(例えばメトトレキセートのような化学療法剤)の濃度を(例えば、過剰な薬物の除去、毒性の低減などを行うために)低減するために使用されてもよい。
【0146】
本明細書中で示唆されるように、患者に化学療法剤を注入することを含む治療方法が企図される。いくつかの実例では、化学療法剤はメトトレキセートである。その他の化学療法剤も企図される。化学療法剤は、これらの患者における標準治療と同じように、患者の脳室に移植されたオマヤ貯留槽(及び同様のデバイス(例えばリッカム(Rickham )デバイスなど)のうち少なくともいずれか一方)によってCNSに注入されてもよい。追加として、又は別例として、化学療法剤はカテーテル500を使用して患者に注入されてもよい。例えば、化学療法剤は、返戻用出口698へ、カテーテル500のポートのうちの1つへ、別個のデバイスに配置された作用薬を介してカテーテル500へ、又は他の適切な方法で、添加されることが可能である。カテーテル500及びポンプ/濾過システム600によるCSFの循環は、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれかの全体に化学療法剤を循環させるのを支援することができる。
【0147】
治療にカテーテル500を使用することが可能な別の企図される状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。例えば、ALSの病理は、グルタミン酸作動性の機能/経路の過剰刺激とこれに伴う興奮毒性、カルシウムレベルの上昇、及び活性酸素種の生成、のうち少なくともいずれかと相関している可能性がある。酸化ストレスは、細胞死に関連した酸化促進性化合物及び酸化還元活性鉄の放出、ミトコンドリアの機能不全、炎症、並びに興奮毒性を介して、ALSの病理学的メカニズムに関与している可能性がある。カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、CSFについて、ALSの病理に関連するもののような酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれか(例えば、フリーラジカル、サイトカイン、ケモカイン、白血球を含む)の低減/除去を行う助けとなるように、使用可能である。ALSの治療の一部として低減/除去されうる物質のいくつかの例には、不溶性のスーパーオキシドジスムターゼ‐1(SOD1)、グルタメート、ニューロフィラメントタンパク質、及び抗GM1ガングリオシド抗体のうち1以上が含まれうる。
【0148】
いくつかの実例では、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれかは電荷を帯びている場合がある。そのような物質の除去は、エレクトロフィルトレーション(例えば電荷を有するフィルタ)を利用して増強されうる。従って、少なくともいくつかの実例では、第1のフィルタ672、第2のフィルタ682、又は両方が、帯電フィルタ(エレクトロフィルタ)を備えていてもよい。上記のうちのいくつか、及びその他の実例において、第1のフィルタ672、第2のフィルタ682、又は両方は、免疫親和性カラム、サイズ排除カラム、陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラム、及びプロテインA又はプロテインGのカラムを備えていてもよい。
【0149】
CSF中にあるALS関連の病理学的メディエータの除去に加えて、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600はさらに、CSFに1以上の薬物を送達するために使用されてもよい。そのような治療は、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれかをさらに低減する助けとなりうる。いくつかの実例では、薬物は、返戻用出口698へ、カテーテル500のポートのうちの1つへ、別個のデバイスに配置された作用薬を介してカテーテル500へ、又は他の適切な方法で、添加されることが可能である。カテーテル500及びポンプ/濾過システム600によるCSFの循環は、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれかの全体に薬物を循環させるのを支援することができる。利用可能ないくつかの薬物の例には、リルゾール、エダラボンなどが挙げられる。
【0150】
治療にカテーテル500を使用することが可能な別の企図される状態は、単純ヘルペス脳炎(HSE)である。HSEは、重症の神経炎症、脳浮腫及び出血性壊死を引き起こしてその結果頭蓋内圧(ICP)の上昇を伴うことが知られている。医学的管理は標準化されているが、減圧開頭術及び側頭葉切除術のうち少なくともいずれか一方を含む積極的な内科的かつ外科的合同管理が、制御不良なICP、神経炎症及び脳浮腫に起因して実施されることが多い。活性酸素種(ROS)の生産は、ウイルス感染に対する自然防御の構成要素であるとも考えられている。しかしながら、CNSの脂質に富んだ環境は酸化損傷を受けやすいかもしれない。よって、酸化損傷はHSE感染と関連している可能性がある。
【0151】
カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、HSEの病理に関連するもののような酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれか(例えば、フリーラジカル、サイトカイン、ケモカイン、白血球を含む)を除去するために使用可能である。いくつかの実例では、酸化性物質及び炎症性物質のうち少なくともいずれかは電荷を帯びている場合がある。そのような物質の除去は、エレクトロフィルトレーション(例えば電荷を有するフィルタ)を利用して増強されうる。従って、少なくともいくつかの実例では、第1のフィルタ672、第2のフィルタ682、又は両方が、帯電フィルタ(エレクトロフィルタ)を備えていてもよい。
【0152】
治療にカテーテル500を使用することが可能な別の企図される状態は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及び後天性免疫不全システム(AIDS)である。CNSのHIV感染は、髄膜炎、急性炎症性多発根神経症(AIDP)、抗レトロウイルス療法の導入により引き起こされる免疫再構築症候群(IRIS)、慢性炎症性多発神経炎(CIDP)、糖尿病性多発神経障害(DSP)、進行性多巣性白質脳症(PML)、及びHIV関連神経認知障害(HAND)を含む多くの合併症をもたらす可能性がある。カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、CNSからいくつかの異なるHIV株を濾別/低減/除去するように設計されることが可能である。これにより、CSF中のウイルス負荷の低減及びCNS中のHIV感染に関連した合併症の低減のうち少なくともいずれか一方を行うことが可能である。加えて、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、CNSからHIVに関連した多くの様々な炎症性物質を濾別/低減/除去するために設計されてもよい。
【0153】
治療にカテーテル500を使用することが可能な別の企図される状態は、多発性硬化症(MS)である。2つのサブタイプすなわち臨床的に初発の段階(CIS)及び再発寛解型多発性硬化症(RRMS)は進行を伴わない疾患を表す一方、一次性進行型(PPMS)及び二次性進行型(SPMS)はそれぞれ発症時から又はRRMS後の、進行性疾患の患者を表している。多巣性病変の形成をもたらす神経炎症、脱髄、軸索損傷及び結果として生じる神経変性が、この疾患の特徴である。現行の治療は、(1)抗炎症性の天然に存在する分子(IFN‐β)、(2)分子であって抗炎症性の細胞の増殖を刺激するもの(グラチラマー酢酸塩)又は自己反応性の細胞の増殖を阻害するもの(テリフルノミド)、(3)免疫抑制性のモノクローナル抗体(ナタリズマブ)、(4)転写因子に結合して抗炎症メカニズムを増強するか又は炎症促進メカニズムを抑制する分子(フマル酸ジメチル)、及び(5)リンパ系組織からCNSへのリンパ球の移出を阻害する作用薬(フィンゴロモド(fingolomod))、などに分類されうる。いくつかの実例では、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、免疫細胞を含むMSに関連したいくつかの異なる炎症性作用因子(イムノグロビン(immunoglobin)、好中球、リンパ球、単球など)、MSの病理に関連するもののような酸化性及び炎症性のうち少なくともいずれかの作用因子(例えば、フリーラジカル、サイトカイン、ケモカイン、白血球など)、並びに同様のものを、濾別/低減/除去するために設計されてもよい。これにより、MSの治療及びMSの症状の改善のうち少なくともいずれかを支援することが可能である。
【0154】
治療にカテーテル500を使用することが可能な別の企図される状態は、ギラン‐バレー症候群(GBS)である。GBSは世界中の急性麻痺性神経障害の最も一般的な原因である。急性運動性軸索型神経障害(AMAN)及び急性炎症性脱髄性多発性神経障害(AIDP)が主要な表現型である。GBSは、宿主の遺伝学的要因及び環境要因と、先行するカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)及びジカウイルスなどの病原体による感染との組み合わせにより、個体において発症する可能性がある。広く知られている作用機序は、外来抗原とガングリオシド残基との分子相同性がその結果として、ミエリン又は軸索の構成成分を認識してマクロファージ及びリンパ球のうち少なくともいずれかの浸潤、補体沈着、並びにサイトカイン生産を含む炎症性免疫応答を開始させる自己抗体を発生せしめている、と暗に示している。CSFの分析は、患者の90%における、タンパク質の増加(>400mg/L)、及び細胞数増多の欠如を示す。その病理に関与する神経炎症性サイトカイン及びその他のタンパク質のレベル上昇については注目されてきたが、GBSのCSFの具体的な免疫タンパク質のプロファイルは不均一である。上記のうちのいくつかにおいて、及びその他の実例において、第2のカテーテル(例えば、形態及び機能においてカテーテル500、オマヤ貯留槽などに類似していてよい)が頭蓋領域に薬物を注入するために使用されてもよい。
【0155】
現行のGBS治療には、血漿交換療法(PE)又は免疫グロブリン静注療法(IVIg)に支持療法を伴うものが含まれうる。GBS患者におけるCSFのタンパク質異常、例えば高レベルの炎症性サイトカインTNF‐α及びIL‐6、抗ガングリオシド抗体、並びに補体成分の活性化に基づき、炎症性のものを低減/除去するためのCSFの濾過は、GBSシステムの低減及びGBSの治療のうち少なくともいずれか一方を行う助けとなりうる。いくつかの実例では、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、免疫細胞を含むGBSに関連したいくつかの異なる炎症性作用因子(イムノグロビン(immunoglobin)、好中球、リンパ球、単球など)、GBSの病理に関連するもののような酸化性及び炎症性のうち少なくともいずれかの作用因子(例えば、フリーラジカル、サイトカイン、ケモカイン、白血球など)を濾別/低減/除去するために設計されてもよい。これにより、GBSの治療及びGBSの症状の改善のうち少なくともいずれかを支援することが可能である。いくつかの実例では、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、GBSの治療に使用される時に5kDaのフィルタを備えることができる。本明細書中に開示されたものを含めてその他のフィルタサイズも企図される。例えば、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、5kDaの接線流フィルタ、100kDaの接線流フィルタ、エレクトロフィルタ、又はこれらの組み合わせを備えることができる。
【0156】
治療にカテーテル500を使用することが可能な別の企図される状態は、髄膜炎である。細菌性髄膜炎は、病原細菌がクモ膜下腔に入って化膿性の炎症反応を引き起こしたときに生じる。グラム陰性細菌性髄膜炎(GBM)は、グラム陰性細菌が中枢神経系(CNS)に侵入した場合に生じる悲惨な状態である。毎年GBMについては30,000の米国の症例及び世界で100万以上の症例がある。細菌感染がGBMとして現われる場合、GBMは、多くの場合30%を超える死亡率、及び病的状態という極めて重い負担を患者に与え、かつ標準的な抗生物質に弱い細菌によって引き起こされた場合ですら治療するのは臨床医にとって非常に困難である。GBMは、小児又は免疫不全の患者、例えばHIV患者、臓器移植処置後若しくは脳外科的処置後の患者などにおいて最も多く見られる。現行の治療ガイドラインには、少なくとも10日間~2週間のセファロスポリン又はカルバペネム又はポリマイシン(polymycin )の静脈内投与が含まれている。昔から外傷及び脳外科的処置を中心として生じている、グラム陰性の腸内細菌性髄膜炎が存在する状態では、耐性の高い細菌が疾患を引き起こす可能性がある。治療のためにはアミノグリコシド及びポリマイシン(polymycin )のような抗生物質が考えられるが、CNS疾患では全身に使用されるこれらの作用薬については治療‐毒性の比率が不十分であり、最適な治療は存在しないかもしれない。
【0157】
重要な優先事項と考えられてきた3種の主要なグラム陰性の病原体には、シュードモナス属菌、アシネトバクター属菌及びおよびクレブシエラ属菌(PAK)が含まれる。これらのグラム陰性細菌は、肺炎、血流感染及びとりわけ院内感染髄膜炎のような、重症かつ多くの場合致命的な感染症を引き起こす可能性がある。これらの細菌は、カルバペネム及び第3世代セファロスポリン(多剤耐性細菌性髄膜炎を治療するために利用可能な最高の抗生物質)を含む多くの抗生物質に対し耐性を獲得してきた。世界保健機関は、多面的な手法が必要であること、並びに、手を打たなければさらなる公衆衛生問題を引き起こして患者のケア及び生存に劇的な影響を与えるであろうことを、認めている。このことは、目下利用可能な抗生物質では治療できないGBM感染症の極めて現実的な見込みを提起している。この抗生物質発見以前の時代への逆戻りは、不幸にも世界の多くの地域において現実となっている。
【0158】
CSFの汚染生物体量の低減は、生存に影響を及ぼすただ一つの最も重要な要因であって、より良好な全体的臨床転帰に結びつく。最初の24時間におけるCSFの滅菌を用いる、CSFの汚染生物体量の迅速な低減は、重要である。抗生物質の効果の最適化は、存在する生物体負荷量に、及び感染初期に開始されようとしている抗生物質治療の直接的活性に、直に左右される。どの抗生物質製剤が最も有効であろうかを判定することは、PAKのような薬物耐性細菌に直面してますます困難となっている。細菌性髄膜炎のための新しい抗生物質についての臨床データは、耐性の出現に簡単に歩調を合わせてきたわけではなく、また新しい治療手法の開発は切に必要とされている。加えて、実験動物モデルは、細菌性髄膜炎の転帰がクモ膜下腔(SAS)における炎症の重症度と関係しており、炎症性反応の調節によって改善される可能性が考えられることを示している。
【0159】
カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、CSFへの直接的な接近手段を提供し、かつ標的病原体の除去と併せた能動的な循環を作り出す、革新的な新しい治療オプションを提供することができる。これは、CFU及びCSFの汚染細菌量を迅速に低減し、かつ細菌性髄膜炎の罹患率及び死亡率の低減につなげる、新規な治療手法を提供することができる。
【0160】
従って、本方法は、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600を使用してCSF中の病原性細菌及び/又は該細菌の関連するエンドトキシン及び/又はサイトカインのうち1以上の存在を低減又は排除することにより、細菌性髄膜炎の症状の改善又は低減をもたらす。該方法は、患者からCSFを取り出すステップ、病原性細菌、及び/又は該病原性細菌に関連したエンドトキシン、及び/又はサイトカイン、のうち少なくとも1つをCSFから取り出すステップ、並びに、この内生のCSFを患者に返戻するステップを含み、取り出すステップ及び返戻するステップは、治療の少なくとも一部分の間に同時に実施される。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL‐1ra、IL‐6、TNF、CRP、及びCXCL10、又はこれらの組み合わせで構成されている群から選択される。
【0161】
上記のうちのいくつかにおいて、及びその他の実例において、該方法は、脊柱のアクセス部位を通じて患者の脊柱のCSF腔の中へとカテーテル500を導入するステップ、脊柱のCSF腔を通して脳に向かってカテーテル500を、開口部532A及び532BがCSF腔の内部に、かつ予め選択された距離の間隔を置かれるか又は適切な距離に調整されて配置されるように、前進させるステップ、カテーテル500の開口部のうち少なくともいくつか(例えば開口部532A)を通してCSFを抜き出すステップ、抜き出したCSFからポンプ及び濾過システム600を用いて病原性細菌及び/又は該細菌の関連するエンドトキシン及び/又はサイトカインのうち少なくとも1つを取り出す(それによりCSFの状態調整を行う)ステップ、並びに、状態調整がなされたCSFをカテーテル500の開口部のうち他のもの(例えば開口部532B)を通して返戻するステップ、によって細菌性髄膜炎の症状の改善又は低減をもたらす。
【0162】
真菌性髄膜炎(FM)は、脳脊髄液(CSF)を介したクモ膜下腔(SAS)への任意の主要な真菌病原体の播種から生じる、中枢神経系の髄膜の感染症である。クリプトコックス性髄膜炎(CM)はクリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans )によって引き起こされ、成人における真菌性髄膜炎の最も一般的な原因である。真菌性髄膜炎の原因となる他の病原体には、C.ガッティ(C. Gattii )、ブラストミセス属菌、ヒストプラスマ属菌、コクシジオイデス属菌が含まれる。CMのための治療は、抗真菌剤を用いた導入、地固め、及び維持の手法に基礎を置いており、他所で明確に定められているが、罹患率及び死亡率は継続して高い。創薬の計画は、血液脳関門(BBB)の通過に乏しいため限定されている。このため、本発明者らは、感染したCSFの濾過のための、代替のカテーテルを用いる体外濾過システム(Neurapheresis療法)を開発した。ここで本発明者らは、感染したCSFからのC.ネオフォルマンス細胞、多糖類抗原、及び炎症伝達物質の濾別のための代替の機械的治療介入としての、Neurapheresis療法のin vitroの特徴解析について説明する。
【0163】
カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、CSFへの直接的な接近手段を提供し、かつ標的病原体の除去と併せた能動的な循環を作り出す、革新的な新しい治療オプションを提供することができる。これは、CFU及びCSFの汚染真菌量を迅速に低減し、かつ真菌性髄膜炎の罹患率及び死亡率の低下につなげる、新規な治療手法を提供することができる。少なくともいくつかの実例では、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、C.ネオフォルマンスのような真菌が通過することを全く許さないように設計された1以上のフィルタ(例えばフィルタ672/682)を備えることができる。上記のうちのいくつかにおいて、及びその他の実例において、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、真菌(例えばC.ネオフォルマンス)、関連する抗原、及び炎症性物質のうち少なくともいずれかを取り除くように設計された1以上のフィルタ(例えばフィルタ672/682)を備えることができる。少なくともいくつかの実例では、5kDaのTFF及び100kDaのTFFのうち少なくともいずれか一方をCSFが1回通過することが、CSF中のC.ネオフォルマンスを取り除くか又はそうでなければ(other )C.ネオフォルマンスのCFUを低減するのに十分である可能性がある。加えて、5kDaのTFF及び100kDaのTFFのうち少なくともいずれか一方は、CSFからC.ネオフォルマンス抗原を取り除くか又はそうでなければ低減するのに十分である可能性がある。更に、5kDa及び100kDaのうち少なくともいずれか一方のTFFはさらに、CSFからいくつかの神経炎症性物質、例えばIL‐1ra、IL‐6、TNF、CRP、及びCXCL10/IP‐10のうち少なくともいずれかを取り除くことも可能である。
【0164】
従って、本方法は、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600を使用して、CSF中の病原性真菌及び/又は該真菌の関連抗原(クリプトコックス抗原)及び/又はサイトカインのうち1以上の存在を低減又は排除することにより、真菌性髄膜炎の症状の改善又は低減をもたらす。該方法は、本明細書中に記載されるように患者からCSFを取り出すステップと;CSFから、病原体真菌、及び/又は該病原体真菌の関連抗原、及び/又はサイトカインのうち少なくとも1つを取り出すステップと、この内生のCSFを患者に返戻するステップと、を含み、取り出すステップ及び返戻するステップは、治療の少なくとも一部分の間に同時に実施される。いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL‐1ra、IL‐6、TNF、CRP、及びCXCL10、又はこれらの組み合わせで構成されている群から選択される。真菌及び/又は抗原及び/又はサイトカインは、1以上の濾過システムを使用してCSFから取り出すことが可能である。5kDa及び100kDaのうち少なくともいずれか一方のTFFはさらに、いくつかの神経炎症性物質、例えばIL‐1ra、IL‐6、TNF、CRP、及びCXCL10/IP‐10のうち少なくともいずれかを取り除くことも可能である。
【0165】
上記のうちのいくつかにおいて、及びその他の実例において、該方法は、脊柱のアクセス部位を通じて患者の脊柱のCSF腔の中へとカテーテル500を導入するステップ、脊柱のCSF腔を通して脳に向かってカテーテル500を、開口部532A及び532BがCSF腔の内部に、かつ予め選択された距離の間隔を置かれるか又は適切な距離に調整されて配置されるように、前進させるステップ、カテーテル500の開口部のうち少なくともいくつか(例えば開口部532A)を通してCSFを抜き出すステップ、抜き出したCSFからポンプ及び濾過システム600を用いて病原性真菌及び/又は該真菌の関連抗原及び/又はサイトカインのうち少なくとも1つを取り出す(それによりCSFの状態調整を行う)ステップ、並びに、状態調整がなされたCSFをカテーテル500の開口部のうち他のもの(例えば開口部532B)を通して返戻するステップ、によって真菌性髄膜炎の症状の改善又は低減をもたらす。
【0166】
少なくともいくつかの実例では、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600はCNSの一部に薬物を送達するために使用されてもよい。例えば、CMのためのいくつかの治療には、アムホテリシンB(AmB)及びフルシトシンのような静脈内及び経口用の抗真菌剤の投与が含まれうる。一般に、髄腔内(IT)AmBボーラス投与は、注射部位付近における神経に有毒な薬物濃度を伴う可能性がある。カテーテル500及びポンプ/濾過システム600の使用は、AmB及びその他の薬物のうち少なくともいずれかのIT注入を可能にするかもしれない。予想外にも、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、AmBのようないくつかの薬物を低減し、濾別し(例えば第1のフィルタ672、第2のフィルタ682、若しくは両方を用いる)、又はその他の方法で除去するために使用されることも可能である。このために、AmBの用量を、所望の用量まで正確に漸増することが可能である。AmBのレベルが望ましからぬレベル(例えば望ましからぬ高レベル)に達した場合、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、CSFから不要な量のAmBを迅速に除去するために使用することが可能である。
【0167】
カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、治療用量と毒性用量との差が比較的小さい薬物を含むいくつかの他の薬物を送達するために使用することも可能である。例えば、薬物はカテーテル500及びポンプ/濾過システム600を使用してCSFに注入されることが可能である。毒性の徴候が観察された場合、又はCSF中の薬物濃度の計測値が所望されるよりも高い場合、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600を、CSFから薬物を迅速に除去するために使用することが可能である。このように、カテーテル500及びポンプ/濾過システム600は、所望の通りに、患者のCSF中への制御された薬物送達及びCSFからの薬物の迅速な除去のために使用することが可能である。
【0168】
カテーテル500及びポンプ/濾過システム600はさらに、いくつかの状態に伴うICPを低減する助けとなることも可能である。例えば、いくつかの状態(例えば、がん、HSE、及びその他など)は、CSFの再吸収のための天然の経路を遮断するか、閉塞するか、又はその他のかたちで影響を与えている、細胞(例えば腫瘍細胞など)、炎症性物質、及び同様なものによる、ICPの上昇を伴う場合がある。カテーテル500及びポンプ/濾過システム600を使用することにより、天然の再吸収経路を遮断しているかもしれない物質を除去/低減せしめ、それによりCSFの体積に望ましい影響を及ぼしてICPを低減することが可能である。
【0169】
脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方に第1の位置でアクセスするための第1のポート、並びに脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方に第2の位置でアクセスするための第2のポートを利用するシステムも、企図される。そのようなポートは、急性期に移植されてもよいし、長期間にわたって移植されてもよい。いくつかの実例では、ポートは、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方への物質の注入、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方からの物質の除去、又は両方を可能にすることができる。ポートのうち一方又は両方が、オマヤ貯留槽であるか又はそうでなければオマヤ貯留槽に類似したものであってよい。ポートは、チューブ/カテーテル、カテーテル500、及びポンプ/濾過システム600のうち少なくともいずれかと共に使用されるように設計可能である。例えば、第1のチューブ及び第1のカテーテル500のうち少なくともいずれか一方はポートのうちの1つに接続されているか又はそうでなければ接続可能であってよく、かつ第2のチューブ及び第2のカテーテル500のうち少なくともいずれか一方は他方のポートに接続されているか又はそうでなければ接続可能であってよい。CSFは、患者から(例えば、チューブ、第1若しくは第2のカテーテル500のうちいずれか、又はその他同種のものを使用して)取り出されて、ポンプ/濾過システム600によって濾過されることが可能である。いくつかの実例では、濾過されたCSFは、同じチューブ/カテーテルを使用して患者に返戻されてもよい。他の実例では、濾過されたCSFは、別のチューブ/カテーテルを使用して患者に返戻されてもよい。換言すれば、CSFは第1のポートでカテーテルを使用して患者から取り出され、かつ次に第2のポートでカテーテルを使用して患者に返戻されることが可能である。これにより、脳脊髄腔及びCNSのうち少なくともいずれか一方を通してCSFを循環させる助けとなるループ様の経路を形成することができる。ポートは、CSFの循環を促進する助けとなるかたちで患者に沿って位置決めされることが可能である。例えば、ポートのうちの一方は患者の頭蓋に位置付けられてもよく(例えば、脳の脳室へのアクセスを提供することを含みうる)、他方は脊柱の腰部領域に沿って位置付けられてもよい(例えば、腰部脳脊髄腔に隣接する位置での脳脊髄腔へのアクセスを提供してもよい)。その他の位置も企図される。
【0170】
方向についての言及(例えば、基端側、先端側、上側、下側、上方向、下方向、左、右、側方、前方、後方、上部、底部、上方、下方、垂直、水平、時計回り、及び反時計回り)は全て、本開示についての読者の理解を助けるための識別を目的として使用されているにすぎず、特に本開示の配置状態、配向、又は使用に関して、限定を設けるものではない。接続についての言及(例えば、添着した、結合した、接続した、及び連結した)は広く解釈されるべきであり、かつ別途指示のないかぎり、一群の要素の間の媒介部材、及び要素間の相対的運動を含むことができる。そのため、接続についての言及は、2つの要素が直接接続されて互いに固定された関係にあることを必ずしも暗示するものではない。なお、送達用シース及び送達用カテーテルはこの説明の目的のためには互換的に使用可能である。例示の図面は単に例証を目的としており、本明細書に添付された図面において反映された寸法、配置状態、順序及び相対的大きさは、変更可能である。
【0171】
米国特許出願公開第2016/0051801号明細書は参照により本願に組込まれる。米国特許第8,435,204号明細書は参照により本願に組込まれる。米国特許出願第62/568,412号明細書(特許弁護士整理番号1421.1010100)は参照により本願に組込まれる。米国特許出願第62/598,846号明細書(特許弁護士整理番号1421.1011100)は参照により本願に組込まれる。
【0172】
上記の明細書、実施例及びデータは、以降の特許請求の範囲に示されるような開示内容の典型的な実施形態の構造及び使用についての完全な説明を提供する。特許請求の範囲に示されるような開示内容の様々な実施形態について、ある程度具体的に、又は1以上の個々の実施形態に関して、上述してきたが、当業者が、本開示の思想又は範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多くの変更を加えるということも考えられる。したがって他の実施形態も企図される。意図されているのは、上記の説明に含まれかつ添付図面に示されている全ての事柄は単に特定の実施形態の例証にすぎず、かつ限定的なものではない、と解釈されるべきであるということである。細部又は構造の変更は、本開示の基本的な要素を逸脱しなければ為されることが可能である。
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