(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】振動耐火試験方法及び試験体設置架台
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20240415BHJP
G01N 25/50 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01M7/02 Z
G01N25/50 D
(21)【出願番号】P 2022179818
(22)【出願日】2022-11-09
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 善美
(72)【発明者】
【氏名】田村 良太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 大祐
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0038602(KR,A)
【文献】特開2016-065360(JP,A)
【文献】特開2004-093298(JP,A)
【文献】特開2018-201630(JP,A)
【文献】伝統構法の土壁と現代モルタルの防火・耐震性能,安全な居住環境(防災的安全)[Online],2022年01月21日,https://web.archive.org/web/20220121022402/http://www.nissaren.or.jp/1298,[2023年10月24日検索]
【文献】2.指摘事項に対する回答 (3時間耐火ラッピング) No.95 ,女川原子力発電所2号炉内部火災について(審査会合コメント回答)[Online],2018年05月10日,P24,https://www.tohoku-epco.co.jp/electr/genshi/safety/topics/pdf/20180510_06.pdf,[2023年10月24日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 5/00- 7/08
E04B 1/62- 1/99
E06B 5/00- 5/20
G01N25/00-25/72
29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体設置架台に試験体を保持する工程と、
前記試験体設置架台を、加振装置に固定し、振動試験を行う工程と、
前記試験体設置架台を前記加振装置から取り外した後、耐火炉に固定し、耐火試験を行う工程と、を備える、振動耐火試験方法。
【請求項2】
前記試験体設置架台は、着脱可能に結合された第1架台と第2架台とを備え、前記第1架台に前記試験体が保持され、
前記振動試験を行う工程では、前記第2架台に設けられた第2取付部を、前記加振装置に設けられた固定部に固定し、振動試験を行い、
前記耐火試験を行う工程では、前記第1架台と前記第2架台とを分離した後、前記第1架台に設けられた第1取付部を、前記耐火炉に設けられた固定部に固定し、耐火試験を行う、請求項1に記載の振動耐火試験方法。
【請求項3】
前記第1架台は、前記第2架台の上部に結合されており、
前記試験体は、管状部材及び/又は索状部材を貫通させる状態で保持し、
前記試験体は、前記管状部材及び/又は前記索状部材が前記第1架台から前記第2架台に向けて垂れ下がる状態で前記第1架台に保持される、請求項2に記載の振動耐火試験方法。
【請求項4】
前記第1取付部の形状と、前記第2取付部の形状とが異なる、請求項2又は3に記載の振動耐火試験方法。
【請求項5】
前記第1架台は、前記第1取付部により前記第2架台に着脱可能に結合される、請求項2又は3に記載の振動耐火試験方法。
【請求項6】
前記振動試験を行った後、前記試験体が前記第1架台に対して相対移動可能に前記第1架台に保持される状態で、前記試験体設置架台又は前記第1架台を荷台に載せて、前記耐火炉まで移送する工程をさらに備える、請求項2又は3に記載の振動耐火試験方法。
【請求項7】
前記移送する工程では、前記第1架台と前記試験体とをダンパ部材で連結することで前記試験体を前記ダンパ部材によって吊り下げる状態で、前記試験体設置架台又は前記第1架台を前記荷台に載せる、請求項6に記載の振動耐火試験方法。
【請求項8】
前記試験体は、前記索状部材として複数の導線を含む導線部分を有するケーブル又は電線を保持しており、
前記試験体は、前記第1架台の上部に向けて延びる前記ケーブル又は電線の上部から折り曲げられた前記導線の一部を前記第1架台に引っ掛ける状態で前記第1架台に保持される、請求項3に記載の振動耐火試験方法。
【請求項9】
矩形の枠状の第1側ベース部、前記第1側ベース部から立ち上がる複数の第1側支柱部、および前記第1側支柱部上部に保持される第1側上方フレーム部を有する第1架台と、
矩形の枠状の第2側ベース部、前記第2側ベース部から立ち上がる複数の第2側支柱部、および前記第2側支柱部の上部に保持される矩形の枠状の第2側上方フレーム部を有する第2架台と、
前記第1側ベース部に設けられ、試験体を保持する保持部と、
前記第1側ベース部の四隅に設けられ、貫通孔を有する第1側下方取付部と、
前記第2側上方フレーム部の四隅に設けられ、貫通孔を有する第2側上方取付部と、
前記第2側ベース部の四隅に設けられ、貫通孔を有する第2側下方取付部と、を有し、
前記第1架台および前記第2架台は、前記第1側下方取付部および前記第2側上方取付部の貫通孔を介してボルトにより着脱可能に結合され、
前記第2架台は、前記第1架台と結合された状態で、前記第2側下方取付部の前記貫通孔を介してボルトにより加振装置の固定部に固定され、
前記第1架台は、前記第2架台と分離された状態で、前記第1側下方取付部の貫通孔を介してボルトにより耐火炉の開口部の周囲に設けられた固定部に固定される、試験体設置架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、振動耐火試験方法及び試験体設置架台に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の重要機器設置エリア等における躯体は、安全性確保の為に防火区画に指定されることがある。この場合、上記躯体を貫通する配管やケーブル電路等の貫通孔処理部分は、3時間の耐火性能を保有することが要求されることがある。
【0003】
上記耐火性能は、通常、耐火炉を使用した耐火試験により評価される。このような耐火試験では、耐火炉内の状態が、例えばISO834標準加熱曲線にしたがって調整される。そして、耐火合否の判定基準には、通常、一般社団法人建材試験センターの「防火区画を貫通する管の性能試験・評価業務方法書」に記載された基準が採用される。そして、このような耐火試験で一定以上の耐火性能を有するものと認められた工法が、上記防火区画において採用可能な貫通孔処理の工法として認定を受けられる。
【0004】
貫通孔処理としては、例えば、耐火用仕切り壁を貫通するバスダクトと、バスダクトに通されるバスバーとの間を難燃材または不燃材で埋める工法が知られている。
【0005】
上記のような貫通孔処理が施工された構造物(貫通孔処理部分)の耐火試験を行う場合には、一般に、耐火炉に設置可能なサイズの貫通孔処理部分を有する試験体が作製される。そして、試験体は、例えば耐火路の開口部と向き合い且つバスダクト及びバスバーが所定の長さだけ耐火炉内に位置するように耐火炉に設置され、その後、加熱される。そして、バスダクトとバスバーとの間の隙間又はバスダクトとその外周部分との間の隙間からの火又は熱の通過の有無等が加熱中又は加熱後において検証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、貫通孔処理部分を有する構造物では、例えば構造物に保持されたケーブルが地震発生時に大きく揺れることがあり、その結果、貫通孔処理部分に損傷が生じる虞がある。火災は地震が原因で生じることがあるが、これまで行われてきた耐火試験は、地震発生による火災を想定したものであるとは言えない。したがって、貫通孔処理部分が地震発生後の火災において十分な耐火性能を発揮するか否かまでは、これまでの通常の耐火試験では十分に検証できているとは言い難い場合がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、地震の影響を考慮した耐火試験を効率的に行うことができる振動耐火試験方法及び試験体設置架台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態において、振動耐火試験方法は、試験体設置架台に試験体を保持する工程と、前記試験体設置架台を、加振装置に固定し、振動試験を行う工程と、前記試験体設置架台を前記加振装置から取り外した後、耐火炉に固定し、耐火試験を行う工程と、を備える。
【0010】
また、一実施の形態において、試験体設置架台は、着脱可能に結合された第1架台と第2架台とを備え、前記第1架台は、試験体を保持する保持部と、耐火炉に設けられた固定部に固定される第1取付部と、を含み、前記第2架台は、加振装置に設けられた固定部に固定される第2取付部を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地震の影響を考慮した耐火試験を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態にかかる試験体設置架台の斜視図である。
【
図2】
図1に示す試験体設置架台の分解状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す試験体設置架台に保持された試験体に対して振動試験を行う際の様子を示す図である。
【
図4】
図3に示す振動試験後に試験体設置架台を分離する様子を示す図である。
【
図5】
図4に示した試験体設置架台の分離後に耐火試験を行う様子を示す図である。
【
図6】
図3に示す振動試験後に試験体設置架台を移送する様子を示す図である。
【
図7】
図6に示す移送時の試験体設置架台の概略的な側面図である。
【
図8】
図1に示す試験体設置架台における試験体の保持状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して一実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
<試験体設置架台>
図1は、一実施の形態にかかる試験体設置架台1の斜視図である。試験体設置架台1は、試験体30を保持している。試験体30は、後述する振動試験及び耐火試験の試験対象物である。本実施の形態で用いられる試験体30は、管状部材及び/又は索状部材としてのケーブル又は電線32を貫通させる状態で保持している。
【0015】
試験体30は、詳しくは、面状部材31と、面状部材31を貫通する状態で面状部材31に保持された複数のケーブル又は電線32と、を備える。ケーブル又は電線32は、一例として、本実施の形態では単芯電力ケーブルである。ケーブル又は電線32は、例えば、複数の導線を含む導線部分と、導線部分を覆う被覆材と、を含む。複数の導線は、撚り合わされたものでもよい。面状部材31とケーブル又は電線32の外周面とは密着され、面状部材31はケーブル又は電線32の外周面との間に隙間が形成されないようにケーブル又は電線32を保持している。なお、ケーブル又は電線32に代えて、面状部材31には、例えば配管材や、通信ケーブルが保持されてもよい。
【0016】
面状部材31は、例えば難燃性のプラスチックから形成されてもよい。また、面状部材31は、コンクリートや石膏ボードからなる耐火壁の一部でもよい。この場合、耐火壁に形成された貫通孔にケーブル又は電線32が通され、貫通孔とケーブル又は電線32との間に難燃性又は不燃性の材料が充填されてもよい。本実施の形態で使用される試験体30は、建造物の躯体や壁に形成された開口に組み込まれる、所謂貫通孔処理が施された構造物の一部を想定したものである。ただし、試験体30は特に限られるものではなく、面状部材31に配管部材を保持したものでもよい。また、試験体30は、ケーブルのような管状部材及び/又は索状部材を保持しないものでもよい。
【0017】
試験体設置架台1は、床等の設置面に接するその下端部から離れる状態で、言い換えると浮いた状態で試験体30を、詳しくは面状部材31を保持している。この保持状態において、試験体30のケーブル又は電線32は、下方に垂れ下がるとともに、試験体設置架台1の上部に向けて上方に延びる。図示の例では、試験体設置架台1が試験体30を保持した状態において、ケーブル又は電線32の下方の端部が試験体設置架台1の下端部から離れる。また、ケーブル又は電線32の上方の端部は、試験体設置架台1の上部を越える位置まで延びる。なお、
図1及び以下の説明する図においては、説明の便宜のために、複数のケーブル又は電線32のうちの一部の上部が破断されて示されている。
【0018】
試験体設置架台1は、後述する加振装置40及び後述する耐火炉50に固定される取付部(11A、21A)を備える。これにより、試験体設置架台1を加振装置40に固定することで、試験体設置架台1に保持された試験体30に対し振動試験を行うことが可能となる。また、試験体設置架台1を耐火炉50に固定することで、試験体設置架台1に保持された試験体30に対し耐火試験を行うことが可能となる。なお、厳密に説明すると、本実施の形態では、試験体設置架台1の一部が分離されて耐火炉50に固定される。
【0019】
本実施の形態に係る試験体設置架台1は、
図1及び
図2を参照し、着脱可能に結合された第1架台10と第2架台20とを備えている。そして、第2架台20の上部に第1架台10が着脱可能に結合され、第1架台10が試験体30を保持している。
【0020】
第1架台10は、例えば矩形の枠状の第1側ベース部11と、第1側ベース部11から立ち上がる複数の第1側支柱部12と、第1側支柱部12の上部に保持される第1側上方フレーム部13と、を含む。
【0021】
第2架台20は、例えば矩形の枠状の第2側ベース部21と、第2側ベース部21から立ち上がる複数の第2側支柱部22と、第2側支柱部22の上部に保持される第2側上方フレーム部23と、を含む。
【0022】
第2架台20における第2側ベース部21は床等の設置面に接する部分であり、試験体設置架台1の下端部を構成する。第2側ベース部21は、加振装置40における後述の固定部42(
図3参照)に固定される複数の第2側下方取付部21Aを含む。第2側下方取付部21Aは、例えばプレート状であり、複数の貫通孔21Bを有する。第2側下方取付部21Aは、例えば貫通孔21Bに通したボルトが固定部42に締結されることにより固定部42に固定される。第2側下方取付部21Aは、一例として矩形の枠状の第2側ベース部21の四隅に設けられるが、その位置や数は特に限られない。
【0023】
第2側支柱部22は、第2側下方取付部21Aから立ち上がるように設けられている。第2側支柱部22の下端から上端までの高さは、図示の例ではケーブル又は電線32における面状部材31から下方に垂れ下がる部分の長さよりも大きい。なお、第2側支柱部22の高さは、ケーブル又は電線32における面状部材31から下方に垂れ下がる部分の長さよりも小さくてもよい。ただし、この場合には、第2側支柱部22の高さと、第2側支柱部22の上端から試験体30の保持位置までの高さ寸法とを足した寸法を、ケーブル又は電線32における面状部材31から下方に垂れ下がる部分の長さよりも大きく設定することが好ましい。なお、第2側支柱部22の数や位置は特に限られない。
【0024】
また、第2側支柱部22の上部に保持された第2側上方フレーム部23は、第1架台10との結合のための複数の第2側上方取付部23Aを含んでいる。第2側上方取付部23Aは、一例として矩形の枠状の第2側上方フレーム部23の四隅に設けられるが、その数や位置は特に限られない。第2側下方取付部21Aは例えばプレート状であり、図示しないが、複数の貫通孔を有する。第2側上方取付部23Aは、例えば上記貫通孔に通したボルト及びこれに螺合されるナットにより第1架台10と結合する。
【0025】
第1架台10における第1側ベース部11は、上述した第2架台20における第2側上方取付部23Aに取り付けられる部分であるとともに、耐火炉50に固定される部分である。本実施の形態では、第1側ベース部11が、耐火炉50における後述の固定部52に固定されるとともに、第2側上方取付部23Aにも固定可能な複数の第1側下方取付部11Aを含む。
【0026】
第1側下方取付部11Aは、例えばプレート状であり、複数の貫通孔11Bを有する。第1側下方取付部11Aは、例えば貫通孔11Bに通したボルトが第2側上方取付部23A又は耐火炉50の固定部52(
図5参照)に締結されることにより、第2側上方取付部23A又は固定部52に固定される。
【0027】
第1側下方取付部11Aは、一例として矩形の枠状の第1側ベース部11の四隅に設けられるが、その数や位置は特に限られない。また、本実施の形態では第1側下方取付部11Aの形状と第2側下方取付部21Aの形状とが異なる。詳しくは、第1側下方取付部11Aが耐火炉50の固定部52に適合するように形成され、第2側下方取付部21Aが加振装置40の固定部42に適合するように形成されている。一例として、本実施の形態では、第1側下方取付部11Aの貫通孔11Bの配列パターンと、第2側下方取付部21Aの貫通孔21Bの配列パターンとが異なるが、大きさ等を含むその他の態様で第1側下方取付部11Aの形状と第2側下方取付部21Aの形状とが互いに異なってもよい。
【0028】
ただし、第1側下方取付部11Aが耐火炉50の固定部52に固定可能であり、第2側下方取付部21Aが加振装置40の固定部42に固定可能であれば、両者の形状は同じでもよい。また、本実施の形態では、第2側下方取付部21Aが第2架台20に固定可能であるとともに耐火炉50に固定可能であるが、第1架台10は、第2架台20に固定される取付部と、耐火炉50に固定される取付部とを別々に備えてもよい。
【0029】
また、本実施の形態における第1側ベース部11は、試験体30を保持する保持部11Cをさらに含んでいる。保持部11Cは、第1側ベース部11における第1側下方取付部11Aとは異なる位置に設けられている。本実施の形態では、一例として矩形の枠状をなす第1側ベース部11における互いに向き合う2辺を構成するフレーム状部分に保持部11Cが形成されているが、このような態様に限られるものではない。
【0030】
保持部11Cは、試験体30と一体化された試験体固定プレート14を介して試験体30を保持するように構成されている。詳しくは、保持部11Cは、試験体固定プレート14をその上面に載せることで試験体固定プレート14を支持する。そして、保持部11Cには、試験体固定プレート14を貫通するように通されたボルトを通す通し孔11D(
図2参照)が設けられ、当該ボルトをナットで締結することで試験体固定プレート14を固定する。すなわち、本実施の形態における第1架台10は、試験体30を試験体固定プレート14を介して保持部11Cに保持している。
【0031】
試験体固定プレート14は矩形の枠状に形成され、その上面に試験体30を載せる。試験体30と試験体固定プレート14との固定も、例えばボルト及びナットにより行われる。ただし、試験体30と試験体固定プレート14との固定態様は特に限られず、溶接等により行われてもよい。
【0032】
また、第1側支柱部12は、第1側下方取付部11Aから立ち上がるように設けられている。ただし、第1側支柱部12の数や位置は特に限られない。また、第1側上方フレーム部13は、本実施の形態では複数のフレーム部材13Aで構成される。本実施の形態では、4つのフレーム部材13Aが矩形の枠状をなすように配置されて、隣り合う第1側支柱部12の上部に結合されている。本実施の形態では、第1側上方フレーム部13が、各フレーム部材13Aに設けられたダンパ固定部13Bを含む。詳細は後述するが、本実施の形態では振動試験後に試験体30を保持した試験体設置架台1が耐火炉50まで移送される。この際、ダンパ固定部13Bに一端部を取り付けたダンパ部材60(
図6、7参照)の他端部が試験体固定プレート14に取り付けられる。
【0033】
なお、ダンパ固定部13Bは第1側支柱部12に設けられてもよいし、第1側上方フレーム部13及び第1側支柱部12の両方に設けられてもよい。また、ダンパ固定部13Bは設けられなくてもよい。また、第1架台10においては、第1側支柱部12及び第1側上方フレーム部13が無くもよい。ただし、第1側支柱部12及び第1側上方フレーム部13が設けられる場合には、上述のようなダンパ固定部13Bを設置すること可能になる等の機能の拡張の点で有利になる。
【0034】
<振動耐火試験方法>
以下、試験体設置架台1を用いた振動耐火試験方法について
図2~
図8を用いて説明する。
【0035】
図2においては、試験体設置架台1の第1架台10と第2架台20とが分離され、且つ試験体30が第1架台10に保持される前の状態が示されている。振動耐火試験方法を行う際には、まず、試験体30が第1架台10に保持される。
【0036】
図示の例では、試験体30に試験体固定プレート14が一体化された後、試験体30及び試験体固定プレート14が第2架台20から分離された状態の第1架台10に保持され、その後、第1架台10が第2架台20に結合される。ただし、このような態様は特に限られず、例えば第2架台20に一体化された第1架台10に試験体30が保持されてもよい。
【0037】
以上のように第1架台10が第2架台20に一体化された後、
図3に示すように試験体設置架台1が加振装置40に固定される。加振装置40は、少なくとも水平方向における一方向に移動可能に構成された設置テーブル41と、設置テーブル41に設けられた固定部42と、設置テーブル41に結合されたアクチュエータ43と、を含む。詳しくは、試験体設置架台1は、第2架台20における第2側下方取付部21Aが固定部42に締結されることにより、固定部42に固定される。そして、第2側下方取付部21Aが固定部42に固定された後、アクチュエータ43が設置テーブル41を変位させる。これにより、振動試験が行われる。図示の設置テーブル41は、水平方向と上下方向に移動可能となっており、アクチュエータ43は、設置テーブル41を水平方向に移動させる第1アクチュエータ43Aと、設置テーブル41を上下方向に移動させる第2アクチュエータ43Bとを含む。ただし、加振装置40の構成は特に限られるものではない。
【0038】
そして、上記振動試験が行われた後、試験体設置架台1は設置テーブル41から取り外される。そして、試験体設置架台1は、図示しない荷台に載せられ耐火炉50の近くまで移送され、
図4に示すように第1架台10が第2架台20から分離される。そして、
図5に示すように、試験体設置架台1における第1架台10が耐火炉50に固定される。図示の例では、耐火炉50の上壁に開口部51が形成され、開口部51の周囲に固定部52が設けられている。
【0039】
詳しくは、第1架台10は、第1側下方取付部11Aが固定部52に締結されることにより、固定部52に固定される。この際、第1架台10に保持された試験体30のケーブル又は電線32は、第1架台10から開口部51を通り、耐火炉50の内部に入り込んだ状態になる。その後、試験体30が耐火炉50の内部から火で炙られ且つ熱を受けることにより、耐火試験が行われる。耐火試験が終了すると、第1架台10は固定部52から取り外され、試験体30の検証が行われる。
【0040】
ところで、本実施の形態では、振動試験が行われた後に試験体設置架台1が耐火炉50の近くまで移送される。この際、移送時に生じる振動が試験体30に伝わるのを極力抑制することが望ましい。この点で、トラック等で試験体設置架台1を移送する場合には、エアサス仕様の車両等を用いることが好ましい。そして、本実施の形態では、さらに試験体30への振動の伝達を抑えるべく移送時にダンパ部材60も用いる。
【0041】
図6及び
図7は、ダンパ部材60を用いた移送状態の詳細を示す。
図6及び
図7では、保持部11Cと試験体固定プレート14との締結状態が緩められている。これにより、試験体固定プレート14及び試験体30は、第1架台10に対して相対移動可能に第1架台10に保持され状態で荷台に載せられている。なお、この際、試験体固定プレート14及び試験体30は第1架台10に対して上下及び水平方向に移動可能に保持されることが望ましい。そして、
図6及び
図7に示す状態では、さらに、第1架台10に設けられたダンパ固定部13Bに一端部を取り付けたダンパ部材60の他端部が試験体固定プレート14に取り付けられ、ダンパ部材60が試験体固定プレート14及び試験体30の荷重を支持している。詳しくは、第1架台10と試験体固定プレート14及び試験体30とをダンパ部材60で連結することで試験体固定プレート14及び試験体30をダンパ部材60によって吊り下げる。この状態で、試験体設置架台1が荷台に載せられている。
【0042】
以上のように試験体固定プレート14及び試験体30を第1架台10に対して相対移動可能に保持し、且つ試験体固定プレート14及び試験体30をダンパ部材60によって吊り下げる状態で保持した場合には、移送時の振動が試験体30に伝達することを効果的に抑制できる。これにより、その後、地震の影響を考慮した耐火試験を適正に行うことが可能となる。つまり、移送時に受けた振動による耐火性能への影響を可及的に排除した状態で、耐火試験を行うことが可能となる。
【0043】
また、上述した耐火試験においては、試験体30のケーブル又は電線32が第1架台10から開口部51を通り、耐火炉50の内部に入り込んだ状態とされる。この状態で耐火試験を行う場合、ケーブル又は電線32が面状部材31のみに保持された状態であると、実際の火災では生じることのないケーブル又は電線32の脱落が生じ、耐火試験を中止しなければいけない状況が生じ得る。このような耐火試験中のケーブル又は電線32の脱落は、ケーブル又は電線32の被覆材が焼損することで生じ得る。しかしながら、実際のケーブル又は電線32は例えば上下に延びる場合であっても、構造物のいずれかの箇所で固定等されるため、脱落することはない。
【0044】
そこで、本実施の形態では以上のような不所望なケーブル又は電線32の脱落を抑制するべく、
図8に示すように、第1架台10の上部に向けて延びるケーブル又は電線32の上部から導線32wの一部を折り曲げ、折り曲げられた導線32wの一部を、第1架台10に引っ掛けている。詳しくは、折り曲げられた導線32wの一部は、第1架台10の第1側上方フレーム部13に取り付けられた棒状部材15に引っ掛けられている。これにより、ケーブル又は電線32の被覆材が焼損したとしても、ケーブル又は電線32の脱落が抑制される。そして、適正な耐火試験を行うことが可能となる。
【0045】
以上に説明した本実施の形態によれば、試験体30を保持する試験体設置架台1が、試験体30を保持したまま加振装置40及び耐火炉50の両方に固定可能になっている。これにより、地震の影響を考慮した耐火試験を効率的に行うことができる。
【0046】
特に本実施の形態では、試験体設置架台1が、着脱可能に結合された第1架台10と第2架台20とを備え、第1架台10に試験体30が保持される。そして、第2架台20に設けられた第2側下方取付部21Aを、加振装置40に設けられた固定部42に固定し、その後、振動試験が行われる。また、第1架台10と第2架台20とを分離した後、第1架台10に設けられた第1側下方取付部11Aを、耐火炉50に設けられた固定部52に固定し、その後、耐火試験が行われる。この構成によれば、例えば第2側下方取付部21Aを加振装置40の固定部42に適合する構成とし、第1側下方取付部11Aを耐火炉50の固定部52に適合する構成によることにより、加振装置40及び耐火炉50への適正な固定を効率的に行うことができる。
【0047】
また、本実施の形態では第1架台10が、第2架台20の上部に結合される。そして、試験体30は、ケーブル又は電線32が第1架台10から第2架台20に向けて垂れ下がる状態で第1架台10に保持される。これにより、振動試験時に第2架台20に設けられた第2側下方取付部21Aが加振装置40の固定部42に固定された際、ケーブル又は電線32が加振装置40に接触しない状態又は過剰に接触しない状態で試験体30を加振でき、適正な振動試験を行うことができる。また、耐火試験時に第1架台10に設けられた第1側下方取付部11Aが耐火炉50の固定部52に固定された際に、ケーブル又は電線32を開口部51から耐火炉50の内部に垂れ下げることができる。これにより、適正な耐火試験を行うことができる。
【0048】
以上、実施の形態を説明したが、上記の実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態及びその他の変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…試験体設置架台
10…第1架台
11…第1側ベース部
11A…第1側下方取付部
11B…貫通孔
11C…保持部
11D…通し孔
12…第1側支柱部
13…第1側上方フレーム部
13A…フレーム部材
13B…ダンパ固定部
14…試験体固定プレート
15…棒状部材
20…第2架台
21…第2側ベース部
21A…第2側下方取付部
22…第2側支柱部
23…第2側上方フレーム部
23A…第2側上方取付部
30…試験体
31…面状部材
32…ケーブル又は電線
32w…導線
40…加振装置
41…設置テーブル
42…固定部
43…アクチュエータ
43A…第1アクチュエータ
43B…第2アクチュエータ
50…耐火炉
51…開口部
52…固定部
60…ダンパ部材
【要約】
【課題】地震の影響を考慮した耐火試験を効率的に行うことができる振動耐火試験方法を提案する。
【解決手段】一実施の形態によれば、振動耐火試験方法は、試験体設置架台1に試験体30を保持する工程と、試験体設置架台1を、加振装置40に固定し、振動試験を行う工程と、試験体設置架台1を加振装置40から取り外した後、耐火炉に固定し、耐火試験を行う工程と、を備える。
【選択図】
図3