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特許7472268単一のプリント回路基板上にガルバニック絶縁された給電電圧を有する車両用の電子制御ユニット
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  • 特許-単一のプリント回路基板上にガルバニック絶縁された給電電圧を有する車両用の電子制御ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】単一のプリント回路基板上にガルバニック絶縁された給電電圧を有する車両用の電子制御ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240415BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H02J7/00 302B
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
B60R16/02 645Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022507482
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2020071607
(87)【国際公開番号】W WO2021023640
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】19465542.9
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519453607
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥ ブネア
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ウルブリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト イストヴァン レーリンツ
(72)【発明者】
【氏名】カタリン プルデル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ベーメ
(72)【発明者】
【氏名】ヴラド カタリン ルクサンドゥ
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530060(JP,A)
【文献】特表2016-516389(JP,A)
【文献】特開2006-300038(JP,A)
【文献】国際公開第2012/172644(WO,A1)
【文献】特開2004-336907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の電子制御ユニット(ECU)(10)であって、第1の給電電圧(V12)で給電される電気負荷(50)を制御するように設計された12Vドメイン(20)と、第2の給電電圧(V48)で給電される電気負荷(40)を制御するように設計された48Vドメイン(30)とを備え、両方のドメイン(20,30)は、単一のプリント回路基板(PCB)上に配置されていて、半二重または全二重通信プロトコルにより前記ドメイン(20,30)間でデータを転送するように設計されてガルバニック絶縁されたデータインタフェース(11)により相互にガルバニック絶縁されかつ相互に接続されている、電子制御ユニット(ECU)(10)において、
前記48Vドメイン(30)は、48Vマイクロコントローラ(32)と、前記48Vマイクロコントローラ(32)に給電する48V電源(31)とを備え、前記48V電源(31)は、前記12Vドメイン(20)から前記第1の給電電圧(V12)により、ガルバニック絶縁された給電インタフェース(12)を介して給電され、
前記48Vマイクロコントローラ(32)は、前記第2の給電電圧(V48)がオンに切り替わる前に、前記48Vドメイン(30)における故障を検出するために診断試験を実行し、故障が検出された場合には、前記第2の給電電圧(V48)がオンに切り替わることを防止するように構成されている
ことを特徴とする、電子制御ユニット(ECU)(10)。
【請求項2】
前記48Vドメイン(30)は、前記第2の給電電圧(V48)の状態を検証するように設計された48V負荷制御部(33)および/または前記第2の給電電圧(V48)で給電される少なくとも1つの電気負荷を制御するように設計された48Vモータ制御部(34)を備え、前記48Vマイクロコントローラ(32)は、前記48V負荷制御部(33)および/または前記48Vモータ制御部(34)を制御するように配置されかつ構成されていることを特徴とする、請求項1記載のECU(10)。
【請求項3】
前記データインタフェース(11)は、デジタルデータを転送するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のECU(10)。
【請求項4】
前記データインタフェース(11)は、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)プロトコルおよび/またはシリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)プロトコルおよび/またはアイ・スクウェア・シー(IC)プロトコルをサポートするように構成されていることを特徴とする、請求項3記載のECU(10)。
【請求項5】
前記給電インタフェース(12)は、フライバックコンバータを備えることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のECU(10)。
【請求項6】
前記第1の給電電圧(V12)は12ボルトであり、前記第2の給電電圧(V48)は48ボルトであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のECU(10)。
【請求項7】
前記48Vマイクロコントローラ(32)は、前記第1の給電電圧(V12)がオンに切り替わるときに、前記48Vドメイン(30)のパワーオンテストを実行するように構成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のECU(10)。
【請求項8】
前記12Vドメイン(20)は、前記データインタフェース(11)を介して前記48Vマイクロコントローラ(32)に接続された12Vマイクロコントローラ(22)を備え、前記12Vマイクロコントローラ(22)はマスタとして構成されていて、前記48Vマイクロコントローラ(32)はスレーブとして構成されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のECU(10)。
【請求項9】
前記12Vドメイン(20)は、前記第1の給電電圧(V12)の状態を検証するように設計された12V負荷制御部(23)および/または前記第1の給電電圧(V12)で給電される少なくとも1つの電気負荷を制御するように設計された12Vモータ制御部(24)を備え、前記12Vマイクロコントローラ(22)は、前記12V負荷制御部(23)および/または前記12Vモータ制御部(24)を制御するように配置されかつ構成されている、請求項8記載のECU(10)。
【請求項10】
前記12Vドメイン(20)は、前記12Vマイクロコントローラ(22)に接続された12V-CANコントローラ(25)を備えることを特徴とする、請求項8または9記載のECU(10)。
【請求項11】
前記12Vマイクロコントローラ(22)は、前記車両の安全性に関連する動作を実行するように構成されており、前記48Vマイクロコントローラ(32)は、前記車両の安全性に関連しない動作を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項記載のECU(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一のプリント回路基板上にガルバニック絶縁された給電電圧を有する車両用の電子制御ユニットに関する。
【0002】
発明の背景
ハイブリッド車の電気システムは、複数の給電電圧、例えば12ボルトの第1給電電圧および48ボルトの第2給電電圧で給電される。従来技術によると、モータ駆動アクチュエータ、バルブ、またはヒータなどの、異なる電圧で給電される電気負荷を制御して、各給電電圧を検証および制御するために、ハイブリッド自動車には複数の電子制御ユニット(ECU)が設けられており、各ECUは単一の給電電圧専用である。
【0003】
また、異なる給電電圧専用のサブシステムまたはドメインを有するECUも知られており、これらのサブシステムは、デジタルおよび/またはアナログ信号の転送のために接続されている。
【0004】
発明の概要
本発明の目的は、異なる給電電圧を検証および/または制御しかつ異なる給電電圧で給電される電気負荷を検証および/または制御するための改善されたECUを提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1記載のECUにより達成される。
【0006】
本発明の例示的な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
車両用の電子制御ユニット(ECU)は、12Vドメインと48Vドメインとを有する。
【0008】
12Vドメインは、第1の給電電圧で給電される少なくとも1つの電気負荷を制御するように設計されている。また、12Vドメイン自体も、少なくとも部分的に第1の給電電圧で給電される。
【0009】
48Vドメインは、第2の給電電圧で給電される少なくとも1つの電気負荷を制御するように設計されている。また、48Vドメイン自体も、少なくとも部分的に第2の給電電圧で給電される。
【0010】
例示的な実施形態では、第1の給電電圧として12ボルトが選択され、第2の給電電圧として48ボルトが選択される。
【0011】
12Vドメインおよび48Vドメインはともに、単一のプリント回路基板(PCB)上に配置されている。これらは相互にガルバニック絶縁されている。好適には、これらは少なくとも1キロボルトの電圧差に耐えるように、ガルバニック絶縁されている。
【0012】
両ドメインはデータインタフェースにより接続されており、データインタフェースはガルバニック絶縁されていて、半二重または全二重通信プロトコルによるデータ転送のために構成されている。
【0013】
本発明によれば、48Vドメインは、48Vマイクロコントローラと、48Vマイクロコントローラに給電する48V電源とを備える。48V電源は、12Vドメインから第1の給電電圧により、ガルバニック絶縁された給電インタフェースを介して給電される。
【0014】
これにより、第2の給電電圧がオフでも48Vマイクロコントローラを動作させることができる。したがって、第2の給電電圧がオンに切り替わる前に48Vマイクロコントローラで診断試験を実行し、48Vマイクロコントローラ自体の故障を含む48Vドメインにおける故障を検出することができる。
【0015】
また、給電インタフェースによって提供されるガルバニック分離は、48V電源および48Vマイクロコントローラへと拡張され、これらの部品を保護する。
【0016】
両ドメインを単一のPCB上に配置することにより、設置面積および設置スペースを削減することができる。また、複数の別個のECUを備えた従来技術による解決手段と比較して、設計、製造、およびサービスにかかるコストも削減することができる。
【0017】
一実施形態では、48Vドメインは、第2の給電電圧の状態を検証するように設計された48V負荷制御部および/または第2の給電電圧で給電される少なくとも1つの電気負荷を制御するように設計された48Vモータ制御部を備える。
【0018】
この実施形態によれば、48Vマイクロコントローラは、48V負荷制御部および/または48Vモータ制御部を制御するように配置されかつ構成されている。
【0019】
この実施形態の利点は、測定値および命令を12Vドメインと48Vドメインとの間で転送する必要がないため、第2の給電電圧で給電される電気負荷のための制御ループを、特に低レイテンシで実行することができることである。第2の給電電圧を検証および/または制御する制御ループについても、同じ利点が言える。特に、本発明のこの実施形態により、第2の給電電圧で給電される電気負荷に対するより安定した制御ループを実行することができる。
【0020】
一実施形態によれば、データインタフェースは、デジタルデータを転送するように構成されている。この実施形態では、第2の給電電圧で給電される電気負荷から取得されたかまたは電気負荷に送信された全てのアナログ信号は、48Vマイクロコントローラによってデジタル化される。次いで、デジタル化された値は、48Vマイクロコントローラによって処理することができ、かつ/またはデジタルデータインタフェースを介して48Vマイクロコントローラと12Vマイクロコントローラとの間で転送することができる。
【0021】
デジタルデータは、ワイヤもしくはラインがより少なくて済むシリアルバスまたはプロトコルによって転送することができるので、データインタフェースの絶縁のための技術的負担が軽減される。さらに、デジタルデータは電磁干渉に対する感度がより低く、アナログ/デジタル変換(ADC)のための正確な基準電圧を必要としない。これにより、データインタフェースに沿って転送されるデータのロバスト性および精度が向上し、また、アナログ信号の変換が不要なので、データ損失が防止される。
【0022】
一実施形態によれば、データインタフェースは、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)プロトコルおよび/またはシリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)プロトコルおよび/またはアイ・スクウェア・シー(inter-integrated circuit; IC)プロトコルをサポートするように構成されている。このようなプロトコルは周知であり、入手可能な部品および回路によって実装することができるので、設計および製造上の負担が軽減される。
【0023】
一実施形態において、給電インタフェースは、フライバックコンバータ(flyback converter)を備える。フライバックコンバータは、電圧の直流電流(DC/DC)変換のための周知かつ容易に入手可能な部品であり、入力と出力との間に良好なガルバニック分離を提供する。
【0024】
一実施形態において、第1の給電電圧は12ボルトであり、第2の給電電圧は48ボルトである。この場合、ヒータまたは高出力ポンプモータのような相対的に消費電力の高い電気負荷は48ボルトで給電され、バルブまたはギア選択モータのような相対的に消費電力の低い電気負荷は12ボルトで給電される。これにより、全体の消費電力を最適化することができる。
【0025】
一実施形態によれば、48Vマイクロコントローラは、第1の給電電圧がオンに切り替わるときに、48Vドメインのパワーオンテストを実行するように構成されている。外部スイッチング方式により、第2の給電電圧がオンに切り替わる前に第1の給電電圧をオンにすることができる。パワーオンテスト中に48Vマイクロコントローラが故障を検出した場合、第2の給電電圧への切り替えを防止することができ、ECUをフェールセーフな状態にすることができる。これにより、ECUおよびECUにより制御される部品の安全性および保護を向上させることができる。
【0026】
一実施形態では、12Vドメインは、データインタフェースを介して48Vマイクロコントローラに接続された12Vマイクロコントローラを備え、12Vマイクロコントローラはマスタとして構成されていて、48Vマイクロコントローラはスレーブとして構成されている。第1の給電電圧がオンに切り替わるとき、12Vマイクロコントローラは、12Vドメインのパワーオンテストを実行することができる。12Vマイクロコントローラはマスタとして動作するため、12Vドメインのパワーオンテストが故障を示していないときに限り、12Vマイクロコントローラを、第2の給電電圧を有効にするように、かつ/または制御を48Vマイクロコントローラに引き渡すように、構成することができる。これにより、ECUおよびECUによって制御される部品の安全性および保護を向上させることができる。
【0027】
一実施形態では、12Vドメインは、第1の給電電圧の状態を検証するように設計された12V負荷制御部および/または第1の給電電圧で給電される少なくとも1つの電気負荷を制御するように設計された12Vモータ制御部を備え、12Vマイクロコントローラは、12V負荷制御部および/または48Vモータ制御部を制御するように配置されかつ構成されている。
【0028】
この実施形態の利点は、測定値および命令を12Vドメインと48Vドメインとの間で転送する必要がないため、第1の給電電圧で給電される電気負荷のための制御ループを、特に低いレイテンシで実行することができることである。第1の給電電圧を検証および/または制御する制御ループについても、同じ利点が言える。特に、本発明のこの実施形態により、第1の給電電圧で給電される電気負荷に対するより安定した制御ループを実行することができる。
【0029】
一実施形態によれば、12Vドメインは、CANバスを介してデータを転送するように設計されかつ12Vマイクロコントローラに接続された12V-CANコントローラを備える。これにより、12VドメインはCANバスを介して制御可能であり、前記CANバスに接続された他の車両制御ユニットとの間でデータおよびコマンドを交換することができる。また、データインタフェースを介して、48Vドメインは、CANバス上で通信してもよい。CANバスは車両において頻繁に使用される通信規格であるため、この実施形態によってECUの互換性が向上する。
【0030】
一実施形態によれば、12Vマイクロコントローラは、車両の安全性に関連する動作を実行するように構成されており、48Vマイクロコントローラは、車両の安全性に関連しない動作を実行するように構成されている。これにより、リスク制御対策に対する全般的な労力を低減し、ECUの信頼性を向上させることができる。
【0031】
本発明のさらなる適用範囲は、以下に挙げる詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の例示的な実施形態を示してはいるが、例としてのみ提示されていることを理解すべきである。なぜならば、本発明の本旨および範囲内の様々な変更および修正は、この詳細な説明から当業者にとって明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、詳細な説明および添付の図面から、より完全に理解されるものである。詳細な説明および添付の図面は例としてのみ提示されているため、本発明を限定することはない。
図1】従来技術による、絶縁されたCANノードを備えたハイブリッド電子制御ユニットの電子設計略図である。
図2】従来技術による、絶縁されたマイクロコントローラを備えたハイブリッド電子制御ユニットの電子設計略図である。
図3】12ボルトのドメインからガルバニック絶縁され、かつ前記12ボルトのドメインにより部分的に給電される48ボルトのドメインを備えたハイブリッド電子制御ユニットの電子設計略図である。
【0033】
全ての図面において、対応部分には同じ参照符号を付してある。
【0034】
詳細な説明
図1は、従来技術による、ハイブリッドカーにおいて使用されるハイブリッド電子制御ユニット(ECU)10の電子設計略図である。ECU10は、相互にガルバニック絶縁された12Vドメイン20と48Vドメイン30とを有する単一のプリント回路基板(PCB)上に実装されている。
【0035】
12Vドメイン20は、12ボルトの12V給電電圧V12と12VグランドG12とにより給電される。48Vドメイン30は、48ボルトの48V給電電圧V48と48VグランドG48とにより給電される。従来技術によれば、12V給電電圧V12は、48V給電電圧V48よりも前にオンに切り替えられる。
【0036】
12Vドメイン20は、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)ノードとして形成されている。これは、外部2線CANバスに接続可能な第1のCANピンCANHおよび第2のCANピンCANLを提供する。CANバスは、車両制御ユニット間のデータ転送の点でよく知られている。
【0037】
ECU10は、12Vドメイン20のCANピンCANL,CANHと、48Vドメイン30との間でデータを転送するように設計されたデータインタフェース11を有する。データインタフェース11は、12Vドメイン20に接続された12ボルト側11.12Vと、48Vドメイン30に接続された48ボルト側11.48Vとを有する。データインタフェース11の両側11.12V,11.48Vは、互いにガルバニック絶縁されている。図1による実施形態では、データインタフェース11の両側11.12V,11.48Vは、CANプロトコルをサポートするように設計され、かつ構成されており、したがって12Vドメイン20と48Vドメイン30との間にシリアルCANインタフェースを形成している。
【0038】
12Vドメイン20は、データインタフェース11の12ボルト側11.12Vに給電する12V電源21を有する。12V電源21は、12V給電電圧V12で給電される。
【0039】
48Vドメイン30は、データインタフェース11の48ボルト側11.48Vに給電する48V電源31を有する。48V電源31は、48V給電電圧V48で給電される。48V電源31は、48V電源31の状態を示す48V電源ステータスピン31.Sを有する。
【0040】
電源21,31は、5ボルトの電圧を与えて、データインタフェース11の各側11.12V,11.48Vに給電する。
【0041】
48Vドメイン30はさらに、48Vマイクロコントローラ32、48V負荷制御部33、および48Vモータ制御部34を有する。
【0042】
48V負荷制御部33は、48V給電電圧V48で給電され、第1および第2のプローブピンV48H,V48Lを介して、48ボルトの外部給電電圧の負荷状態を制御および/または検証するように設計されている。プローブピンV48H,V48Lは、それぞれ外部測定抵抗を介して、48V給電電圧V48および48VグランドG48に接続されている。
【0043】
48Vモータ制御部34は48V給電電圧V48で給電され、外部ブラシレス直流(BLDC)モータ40を制御するように設計されている。BLDCモータ40は、高出力ポンプモータのようなアクチュエータとして形成されてもよい。
【0044】
一実施形態によれば、48Vドメイン30は、48V給電電圧V48で給電され、外部の電気負荷、例えばヒータを制御するように設計されたコントローラをさらに有することができる。また、2つ以上の外部電気負荷を制御するコントローラは、従来技術から公知である。
【0045】
48Vマイクロコントローラ32は、48V電源31で給電される。一例として、48Vマイクロコントローラ32は、48V電源31によって与えられる5ボルトの電圧で給電される。
【0046】
48Vマイクロコントローラ32は、データインタフェース11の48ボルト側11.48V、48V電源31の48V電源ステータスピン31.S、48V負荷制御部33、および48Vモータ制御部34に接続されており、これにより、データインタフェース11、48V電源31、48V負荷制御部33、および48Vモータ制御部34の間で、データ、例えば状態の情報、取得した測定値、または制御信号などを転送することができる。前記接続部は、マルチワイヤ接続部として形成されてよい。
【0047】
特に、48Vマイクロコントローラ32は、データインタフェース11を介して命令を受信し、その命令を、48Vモータ制御部34を制御する制御信号に変換するように構成されている。48Vマイクロコントローラ32はさらに、48V電源31、48V負荷制御部33、および/または48Vモータ制御部34からの状態のデータのような診断データを取得し、このような診断データを、データインタフェース11を介してCANピンCANL,CANHひいては外部CANバスへと転送するように構成されている。48Vマイクロコントローラ32は、48V給電電圧V48で給電される周辺部品、例えば1つまたは複数のBLDCモータ40、ヒータ、または他のアクチュエータなどを制御する制御ループを実行するソフトウェアを動作させるように構成されていてもよい。
【0048】
従来技術から、12Vドメイン20が、CANピンCANL,CANHとデータインタフェース11の12ボルト側11.12Vとの間に配置されているCANコントローラを有する実施形態が知られている。
【0049】
また、図2に示されるように、12Vドメイン20は12Vマイクロコントローラ22を含んでいるが、48Vドメイン30は48Vマイクロコントローラ32を含んでいない実施形態も知られている。このような実施形態では、データ、例えば状態の情報、取得した測定値、または制御信号などが、12Vマイクロコントローラ22と、48Vドメイン30の様々な部品、例えば48V電源31、48V負荷制御部33、および48Vモータ制御部34との間で、データインタフェース11を介して転送される。12Vマイクロコントローラ22に外部CANバスへのアクセスを提供するために、このような実施形態は、CANピンCANH,CANLと12Vマイクロコントローラ22との間に配置された12V-CANコントローラ25を含んでもよい。
【0050】
したがって、これらの実施形態では、データインタフェース11をCANインタフェースなどのシリアルインタフェースとして形成するだけでは十分ではない。むしろ、データインタフェース11は、複数のデジタル信号および/またはアナログ信号の並列転送のために設計される。もちろん、ドメイン20,30のガルバニック絶縁を維持するためには、データインタフェース11の各信号線をガルバニック分離のために設計する必要がある。
【0051】
従来技術から公知のさらに別の実施形態では、48Vモータ制御部34は、12Vドメイン20において実装されるコントローラと、48Vドメイン30において実装されるパワートランジスタを有する電源回路とに置き換えられる。このような実施形態では、パワートランジスタのゲート電圧を制御するために、データインタフェース11に沿った追加の信号線を必要とする。このような実施形態では、ゲート電圧を正確に制御し、電磁適合性を高めるために、技術的負担がさらに高まる。
【0052】
また、従来技術から、12V給電電圧V12の状態を制御および/または検証するように構成された12V負荷制御部23が、12Vドメイン20に実装されている実施形態も知られている。
【0053】
図3には、同一PCB上に配置された12Vドメイン20および48Vドメイン30を有するECUが概略的に示されている。
【0054】
12Vドメイン20は、12ボルトの12V給電電圧V12と12VグランドG12とにより給電される。48Vドメイン30は、48ボルトの48V給電電圧V48と48VグランドG48とにより給電される。
【0055】
12Vドメイン20は、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)ノードとして形成される。これは、外部2線CANバスに接続可能な第1のCANピンCANHおよび第2のCANピンCANLを提供する。
【0056】
ECU10は、12Vドメイン20と48Vドメイン30との間でデータを転送するように設計されたデータインタフェース11を有する。データインタフェース11は、12Vドメイン20に接続された12ボルト側11.12Vと、48Vドメイン30に接続された48ボルト側11.48Vとを有する。データインタフェース11の両側11.12V,11.48Vは、絶縁が少なくとも1キロボルトの電圧に耐えるように互いにガルバニック絶縁されている。
【0057】
一実施形態によれば、データインタフェース11は、CANまたはシリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)といったデジタルデータのための標準化された全二重または半二重通信プロトコルに従って構成されている。一実施形態によれば、データインタフェース11およびドメイン20,30は、12Vドメイン20がマスタとして動作し、48Vドメイン30がスレーブとして動作するように構成されている。
【0058】
データインタフェース11は、12Vドメイン20と48Vドメイン30との間でデジタル化されたデータを伝送するように設計された複数のデータ線を有する。データインタフェース11の両側11.12V,11.48V間のガルバニック分離を維持するために、各データ線はガルバニック絶縁されている。
【0059】
12Vドメイン20は、データインタフェース11の12ボルト側11.12Vに給電する12V電源21を有する。12V電源21は、12V給電電圧V12で給電される。
【0060】
48Vドメイン30は、データインタフェース11の48ボルト側11.48Vに給電する48V電源31を有する。本発明によれば、48V電源31は、12Vドメイン20と48Vドメイン30との間に配置された給電インタフェース12を介して給電される。
【0061】
給電インタフェース12は、12Vドメイン20に接続された12ボルト側12.12Vと、48Vドメイン30に接続された48ボルト側12.48Vとを有する。給電インタフェース12の両側12.12V,12.48Vは、互いにガルバニック絶縁されている。
【0062】
給電インタフェース12は、自身の12ボルト側12.12Vにおいて、12ボルトの電力線、ひいては12ボルトの12V給電電圧に接続されている。
【0063】
給電インタフェース12は、自身の48ボルト側12.48Vにおいて、48V電源31に接続され、かつ給電する。
【0064】
一実施形態では、給電インタフェース12は、フライバックコンバータとして形成されてよい。しかし、出力から入力をガルバニック分離するDC/DCコンバータのような従来技術から公知の他の実施形態も使用することができる。
【0065】
48V電源31は、48V電源31の状態を示す48V電源ステータスピン31.Sを有する。
【0066】
電源21,31は、データインタフェース11の各側11.12V,11.48Vに5ボルトの電圧を与え、給電する。
【0067】
48Vドメイン30はさらに、48Vマイクロコントローラ32、48V負荷制御部33、および48Vモータ制御部34を有する。
【0068】
48V負荷制御部33は、48V給電電圧V48で給電され、第1および第2のプローブピンV48H,V48Lを介して、48ボルトの外部給電電圧の負荷状態を制御および/または検証するように設計されている。プローブピンV48H,V48Lは、それぞれ外部測定抵抗を介して48V給電電圧V48および48VグランドG48に接続されている。
【0069】
48Vモータ制御部34は、48V給電電圧V48で給電され、外部ブラシレス直流(BLDC)モータ40を制御するように設計されている。BLDCモータ40は、高出力ポンプモータのようなアクチュエータとして形成されてよい。
【0070】
一実施形態によれば、48Vドメイン30は、48V給電電圧V48で給電され、外部電気負荷、例えばヒータを制御するように設計されたコントローラをさらに有することができる。また、複数の外部電気負荷を制御するコントローラは、従来技術から公知である。
【0071】
48Vマイクロコントローラ32は、48V電源31で給電される。一例として、48Vマイクロコントローラ32は、48V電源31によって与えられる5ボルトの電圧で給電される。
【0072】
48Vマイクロコントローラ32は、データインタフェース11の48ボルト側11.48V、48V電源31の48V電源ステータスピン31.S、48V負荷制御部33、および48Vモータ制御部34に接続されており、これにより、データインタフェース11、48V電源31、48V負荷制御部33、および48Vモータ制御部34の間で、データ、例えば状態の情報、取得した測定値、または制御信号などを転送することができる。前記接続部は、マルチワイヤ接続部として形成されてよく、デジタル信号および/またはアナログ信号を伝えるように設計されてよい。
【0073】
特に、48Vマイクロコントローラ32は、データインタフェース11を介して命令を受信し、その命令を、48Vモータ制御部34を制御する制御信号に変換するように構成されている。48Vマイクロコントローラ32は、さらに、48V電源31、48V負荷制御部33、および/または48Vモータ制御部34からの状態のデータのような診断データを取得し、このような診断データを、データインタフェース11を介して12Vドメイン20に転送するように構成されている。48Vマイクロコントローラ32は、48V給電電圧V48で給電される周辺部品、例えば1つまたは複数のBLDCモータ40、ヒータ、または他のアクチュエータなどを制御する制御ループを実行するソフトウェアを動作させるように構成されていてもよい。
【0074】
12Vドメイン20は、従来技術から公知のような12V電源21で給電される12Vマイクロコントローラ22を有する。さらに、12Vドメイン20は、12V負荷制御部23、12Vモータ制御部24、および12V-CANコントローラ25を有する。
【0075】
12V-CANコントローラ25は、12V電源21から5ボルトの出力電圧で給電され、CANピンCANH,CANLに接続されている。12V-CANコントローラ25はさらに、12Vマイクロコントローラ22に接続されている。12V-CANコントローラ25は、CANピンCANH,CANLに接続されている場合、外部CANバスを駆動し、CANバスと12Vマイクロコントローラ22との間でデータを転送するように構成されている。
【0076】
12V負荷制御部23は、12V給電電圧V12で給電され、第1および第2のプローブピンV12H,V12Lを介して、外部から給電される12ボルトの電圧の負荷状態を制御および/または検証するように設計されている。プローブピンV12H,V12Lは、それぞれ外部測定抵抗を介して12V給電電圧V12および12VグランドG12に接続されている。
【0077】
12Vモータ制御部24は、12V給電電圧V12で給電され、低電力ブラシレス直流(BLDC)モータ50のような外部負荷を制御するように設計されている。低電力BLDCモータ50は、アクチュエータ、例えばギア選択モータまたはバルブとして形成されてよい。
【0078】
一般に、消費電力を最適化するために、消費電力が相対的に低い第1の負荷は12Vドメイン20によって駆動され、(上記の第1の負荷と比較して)消費電力が相対的に高いアクチュエータは、48Vドメイン30によって駆動される。
【0079】
一実施形態によれば、12Vドメイン20は、12V給電電圧V12で給電され、ヒータなどの外部電気負荷を制御するように設計されたコントローラをさらに有することができる。また、1つ以上の外部電気負荷を制御するコントローラは、従来技術から公知である。
【0080】
12Vマイクロコントローラ22は、データインタフェース11の12ボルト側11.12V、12V電源21の48V電源ステータスピン31.S、12V負荷制御部23、および12Vモータ制御部24に接続されており、これにより、データインタフェース11、12V電源21、12V負荷制御部23、および12Vモータ制御部24の間で、データ、例えば状態の情報、取得した測定値、または制御信号などを転送することができる。前記接続部は、マルチワイヤ接続部として形成されてよく、デジタル信号および/またはアナログ信号を伝えるように設計されてよい。
【0081】
特に、12Vマイクロコントローラ22は、接続されている場合、外部CANバスから12V-CANコントローラ25を介して命令を受信し、その命令を、12Vモータ制御部24を制御する制御信号に変換するように構成されている。
【0082】
12Vマイクロコントローラ22はさらに、12V-CANコントローラ25から受信した命令を、信号、好ましくはデジタル信号に変換し、この信号をデータインタフェース11へ、さらには48Vマイクロコントローラ32に引き渡すように構成されている。したがって、CANピンCANH,CANLに接続された外部CANバスから、12V-CANコントローラ25、12Vマイクロコントローラ22、およびデータインタフェース11を介して、48Vマイクロコントローラ32を制御することができる。
【0083】
12Vマイクロコントローラ22は、さらに、データインタフェース11を介して48Vマイクロコントローラ32から送られた信号、好ましくはデジタル信号を受信するように構成されている。したがって、例えば負荷制御診断データまたはモータ制御診断データなどのデータを48Vドメイン30の制御部33,34から取得する48Vマイクロコントローラ32上でソフトウェアプログラムを動作させ、そのデータを前処理および評価し、その前処理および評価の結果をデータインタフェース11を介して12Vマイクロコントローラ22へ、そしてさらに外部CANバス上へと転送することが可能である。
【0084】
利点としては、48Vマイクロコントローラ32上で動作するソフトウェアにおいて、厳密なタイミング制限を伴って48Vドメイン30の制御部33,34およびその他の周辺装置を制御する制御ループを実行することが可能である一方で、12Vマイクロコントローラ22上またはCANバスを介してECU10に接続された外部処理装置上で動作するソフトウェアに、より時間的制約の少ない動作をプログラミングすることが可能である。これにより、48Vドメイン30の周辺を制御する制御ループに対して、より低いレイテンシ、ひいては、向上した安定性を実現することができる。
【0085】
したがって、ソフトウェア機能をマイクロコントローラ22,32のいずれかに任意に割り当てることが一般的には可能であるが、好ましい実施形態では、安全性に関連した全ての機能が12Vマイクロコントローラ22に割り当てられ、マイクロコントローラ22,32は、データインタフェース11に沿った通信において、12Vマイクロコントローラ22が先導システム(マスタ)として動作し、48Vマイクロコントローラ32が追従システム(スレーブ)として動作するように構成されている。
【0086】
さらなる利点として、48Vドメイン30内の測定データなどのデータ、例えば48V負荷制御部33によって調べられる電圧を、48Vマイクロコントローラ32によってデジタル化することが可能である。付加的または代替的に、データインタフェース11を介して引き渡されるデジタルデータを48Vマイクロコントローラ32によってアナログ値に変換することが可能である。これにより、データインタフェース11がアナログ信号を転送する必要がなくなり、ドメイン20,30間における値転送の精度およびロバスト性が向上し、さらに、ECU10の電磁適合性(EMC)を向上させることができるか、またはEMCの要件を満たすための技術的措置を緩和することができる。
【0087】
12Vマイクロコントローラ22はさらに、12V電源21、12V負荷制御部23、および/または12Vモータ制御部24からの状態のデータのような診断データを取得し、このような診断データを、12V-CANコントローラ25を介して外部CANバスに転送するように構成されている。12Vマイクロコントローラ22は、12V給電電圧V12で給電される周辺部品、例えば1つまたは複数の低電力BLDCモータ50または他のアクチュエータなどを制御する制御ループを実行するソフトウェアを動作させるように構成されていてもよい。
【0088】
図3によるECU10のさらなる利点として、12V給電電圧V12が利用可能になると直ちに、48V電源31および48Vマイクロコントローラ32が給電される。これにより、48V給電電圧V48がオンに切り替わる前に、48Vマイクロコントローラ32のパワーオンセルフテスト(POST)などの診断テストを実行することができ、テストで故障が検出された場合、48V給電電圧V48がオンに切り替わることを防止することができ、ECU10全体をフェールセーフな状態にすることができる。これにより、ECU10の信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0089】
10 電子制御ユニット(ECU)
11 データインタフェース
11.12V 12ボルト側
11.48V 48ボルト側
12 給電インタフェース
12.12V 12ボルト側
12.48V 48ボルト側
20 12Vドメイン
21 12V電源
22 12Vマイクロコントローラ
23 12V負荷制御部
24 12Vモータ制御部
25 12V-CANコントローラ
30 48Vドメイン
31 48V電源
31.S 48V電源ステータスピン
32 48Vマイクロコントローラ
33 48V負荷制御部
34 48Vモータ制御部
40 ブラシレス直流(BLDC)モータ
50 低電力BLDCモータ
CANH 第1のCANピン
CANL 第2のCANピン
G12 12Vグランド
G48 48Vグランド
V12 12V給電電圧、第1の給電電圧
V48 48V給電電圧、第2の給電電圧
V48H 第1のプローブピン
V48L 第2のプローブピン
V12H 第1のプローブピン
V12L 第2のプローブピン
図1
図2
図3