(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】マトリクス光源を制御するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20240415BHJP
B60Q 1/04 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
B60Q1/04 E
(21)【出願番号】P 2022519241
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076636
(87)【国際公開番号】W WO2021058608
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-23
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】パトリス、ボワリン
(72)【発明者】
【氏名】フェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】エリック、ダナ
(72)【発明者】
【氏名】ウセム、コウキ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ、カルボネル
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142474(JP,A)
【文献】特開2004-214023(JP,A)
【文献】特開2014-094589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の照明モジュー
ルであって、
複数の要素光
源を一体にまとめたマトリクス光
源と、
照明セットポイン
トを受信するためのデータ受信ユニッ
トと、
前記照明セットポイントに応じて前記マトリクス光源を制御することが意図された制御ユニッ
トと、
メモリ要
素と、を備え、
前記制御ユニッ
トは、前記メモリ要素に対する読み取りアクセスを有し、
前記要素光
源の各々に固有の校正デー
タが、前記メモリ要素に記憶され、
前記制御ユニッ
トは、前記校正デー
タの少なくとも一部を、前記自動車用の制御モジュー
ルに送信するように構成され、
前記制御モジュー
ルは、前記校正データならびに前記自動車に関する車両データを使用することにより決定されるデフォルト照明セットポイントを生成し、
前記デフォルト照明セットポイントが、前記メモリ要素に記憶される、
ことを特徴とする照明モジュール。
【請求項2】
前記照明セットポイントは、要素光源毎に要素セットポイントを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明モジュール。
【請求項3】
前記照明セットポイントは、画像を備え、
前記画像の少なくとも1つのピクセルが、要素光
源に対応する、
ことを特徴とする請求項2に記載の照明モジュール。
【請求項4】
前記校正デー
タは、各要素源に対して、電荷電流の関数として発せられる光強度の表示、および/または発光可能な光ビームの幾何収差の表示を備える、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項5】
前記照明モジュールは、第2メモリ要素を備え、
前記照明モジュールを認証可能にする認証データが、前記第2メモリ要素に記憶される、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の照明モジュー
ル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の自動車用の照明モジュー
ルのマトリクス光源を制御するための制御方法であって、
a)前記自動車用の制御モジュー
ルにおいて、照明セットポイン
トを決定するステップと、
b)前記照明モジュール用の前記制御ユニッ
トであって、通信チャネルにより前記制御モジュー
ルに接続された前記制御ユニットにおいて、前記照明セットポイントと前記照明モジュールの前記メモリ要
素に記憶された前記校正デー
タとに応じて、前記照明モジュールの前記マトリクス光
源を制御するステップと、
を備える、ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
i)前記照明モジュール用の前記制御ユニッ
トにおいて、前記メモリ要
素に記憶された前記校正デー
タの少なくとも一部を、前記自動車用の前記制御モジュー
ルに送信する予備ステップを備え、
ステップa)は、
aaa)前記自動車用の前記制御モジュー
ルにおいて、決定された前記照明セットポイントを、受信した前記校正データを使用することにより補正し、補正された前記照明セットポイン
トを、前記照明モジュール用の前記制御ユニッ
トに送信するステップを備える、
ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記校正データならびに前記自動車に関する車両データを使用することにより決定されたデフォルト照明セットポイントを生成するステップと、
前記デフォルト照明セットポイントを前記照明モジュールのメモリ要素に記憶するステップと、を備える、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記照明モジュール用の前記制御ユニットからの前記校正データの受信に続いて、前記デフォルト照明セットポイントは、前記自動車用の前記制御モジュールにより生成され、
次いで、前記デフォルト照明セットポイントは、前記制御ユニットに送信され、前記制御ユニットは、これをメモリ要素に記憶する、
ことを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記照明モジュールおよび/または前記自動車用の前記制御モジュールにおいて障害が検出された場合、前記デフォルト照明セットポイントは、ステップa)で受信した前記照明セットポイントに代わる、
ことを特徴とする請求項8または9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記自動車用の前記制御モジュールと前記照明モジュール用の前記制御ユニットとの間で交換されるデータの少なくとも一部が、少なくとも1つの暗号鍵によって暗号化および/または記号化される、
ことを特徴とする請求項6~10のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項12】
前記データの復号化が不成功である場合、または前記記号化が検証できない場合、前記照明モジュールおよび/または前記自動車用の前記制御モジュールにおける障害が検出される、
ことを特徴とする請求項11に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の照明モジュールに関する。特に、本発明は、マトリクス光源を伴うこのようなモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、少なくとも1つの閾値強度を有する電流を受けると光を発光することができる半導体電子部品である。自動車の分野において、LED技術は、多くの光による信号伝達の解決法にますます利用されるようになっている。LEDマトリクスは、自動車照明の分野で特に重要になっている。マトリクス光源は、「レベリング」タイプの機能、すなわち、車両の姿勢や道路の形状に応じて発光される光ビームの高さを調節する機能に使用され得る。他の用途には、水平面内において道路に追従するように発光される光ビームの方向を調整することに対応するDBL(「digital bending light」)、他の道路利用者を煩わせないようにハイビームにより発光される光ビームにおいて陰影領域を生成する防眩機能に対応するADB(「adaptive drive beam」)、ならびにピクセル化された光ビームを使用して地面にパターンを投影する機能が含まれる。
【0003】
上述の照明用途のために異なるタイプの技術による光源を使用することが知られている。これは、例えばモノリシック技術を含む。モノリシック技術によれば、ピクセルに相当する多数のLEDタイプの要素光源が、共通の半導体基板にエッチングされる。集積電気接続部により、ピクセルを互いに独立して起動させることができる。他の知られた技術は、マイクロLEDに関するものであり、この技術により典型的には150μm未満の小型のLEDのマトリクスが製造される。また、均一なビームに対して強度変調器を使用する投影技術を伴うマイクロミラー、すなわちDMD(「digital micromirror device」)タイプのモジュールも存在する。圧電素子によって位置が制御されるマイクロミラーは、入射光ビームを選択的に反射するように配向されるため、各マイクロミラーは、このようにして作製されたピクセルマトリクスの要素源に対応する。光源からの光は、光学部品によりマイクロミラーのマトリクスに向けられる。したがって、この光は、光学部品および光源における配置や製造公差を理由として、モジュール毎に変化し得る分散を有する。これにより、任意のピクセルについて、最大強度はモジュール毎に変化し得る。この場合、各ピクセルは、これに送信されたコマンドに応じて異なる最大強度を有することとなる。このような照明装置は、大量生産方式を利用して設計されている。照明および/または信号伝達装置の構成要素間には、ある程度の遊びが必要である。これは、一方で組立を容易にするためであり、他方で、一般に部品は機械加工ではなく、生産コストを低減できるプラスチックで成形されるためである
【0004】
特に、マイクロミラーマトリクスと、一般に少なくとも1つのレンズを備える光学投影部とを完璧に位置合わせする難しさが、強調されるべきである。光軸からの横方向オフセットが数マイクロメートルに達する場合、投影機能に使用されるレンズの高い開口数を理由として、画像の投影品質が著しく低下する。したがって、従来技術の解決策では、投影画像の歪みが避けられないのが実情である。このタイプの各投影モジュールは、その独自の光学特性のセット、特に、光学的歪みおよび球面収差特性を含む幾何収差特性を有している。マイクロミラーの作製中に、幾何収差が導入され得る。これらの要素は全て、マトリクス光源の不均一な挙動の原因となる。
【0005】
上述のこれらのモジュールの全ては、部品の製造公差の組み合わせに関する独自の特性を有する。LEDやLEDマトリクス等の半導体部品の製造において、直流変動は、現在のところ避けられない。結果として、同一の電荷電流に対する任意のLEDマトリクスにおいて、LEDは、変化し得る不均一な強度を有する光ビームを発光する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの目標は、従来技術による問題の少なくとも1つを克服することである。より正確には、本発明の目的は、自動車のマトリクス光源において一体にまとめられた要素光源の発光および/または幾何学的挙動を校正できる照明モジュールおよび制御方法を提案することである。本目標は、照明モジュールに設置されたマトリクス光源の例とは無関係に、所定のセットポイントに適合する均一な光ビームを生成するための手段を提供することである。
【0007】
本発明の第1態様によれば、自動車用の照明モジュールが提案される。照明モジュールは、複数の要素光源を一体にまとめたマトリクス光源と、照明セットポイントを受信するためのデータ受信ユニットと、前記照明セットポイントに応じて前記マトリクス光源を制御することが意図された制御ユニットと、を備えている。照明モジュールは、メモリ要素を備え、制御ユニットは、メモリ要素に対する読み取りアクセスを有し、要素光源の各々に固有の校正データが、メモリ要素に記憶される点において注目される。
【0008】
受信ユニットは、好適には、自動車の内部のデータバスを介してデータを受信することができるネットワークインターフェースを備え得る。例えば、バスは、イーサネットバス、ギガビットマルチメディアシリアルリンク(GMSL)タイプのバス、またはFPD-Link IIIバス等の低電圧差動信号(LVDS)技術を利用するバスであり得る。
【0009】
制御ユニットは、好適には、マイクロコントローラ要素を備え得る。制御ユニットは、好適には、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または複合プログラマブルロジックデバイス(CPLD)タイプのチップを備え得る。これらの素子は、適切なコンピュータプログラムを使用して記載される機能を実現するように構成されている。
【0010】
マトリクス光源は、好適には、共通の基板にエッチングされた半導体素子であって、互いに独立して起動することができる半導体素子を有する要素発光光源を備えたモノリシック源を備え得る。
【0011】
マトリクス光源は、好適には、典型的には150μm未満の小型の発光ダイオード(LED)により作製された要素源からなるマトリクスを備えるマイクロLEDタイプマトリクスを備え得る。
【0012】
マトリクス光源は、好適には、マイクロミラーデバイス、DMD(digital micromirror device)を備え得る。この場合、要素源は、マトリクスにマイクロミラーを備え、マイクロミラーは、その位置に応じて入射光ビームを選択的に反射する。
【0013】
好適には、前記照明セットポイントは、要素光源毎に要素セットポイントを備え得る。
【0014】
前記照明セットポイントは、好適には、画像を備え得る。好適には、画像の少なくとも1つのピクセルが、要素光源に対応し得る。画像の解像度は、好適には、マトリクス光源の投影解像度よりも高い。好適には、画像のピクセルが、要素光源に対応し得る。
【0015】
好適には、前記校正データは、各要素源に対して、電荷電流の関数として発せられる光強度の表示を備え得る。
【0016】
好適には、校正データは、モジュールが発光可能な光ビームの幾何収差の表示を備え得る。
【0017】
制御ユニットは、好適には、前記校正データの少なくとも一部を用いて前記照明セットポイントを補正することにより、前記マトリクス光源を制御するように構成され得る。
【0018】
好適には、制御ユニットは、前記校正データの少なくとも一部を、自動車用の制御モジュールに送信するように構成され得る。
【0019】
照明モジュールは、好適には、第2メモリを備え得る。モジュールを認証可能にするデータが、第2メモリに記憶される。好適には、照明モジュールは、前記メモリ要素に記憶された暗号鍵によって、データを暗号化および/または記号化するようにプログラムされたプロセッサを備え得る。
【0020】
本発明の他の態様によれば、自動車用の照明装置が提案される。装置は、本発明の先行態様による少なくとも1つの光モジュールを備えている点において注目される。
【0021】
本発明の他の態様によれば、自動車用の照明モジュールのマトリクス光源を制御するための方法が提案される。照明モジュールは、本発明の一態様による。本方法は、以下のステップを備える点において注目される。
【0022】
a)自動車用の制御モジュールにおいて、照明セットポイントを決定するステップ。
【0023】
b)照明モジュール用の制御ユニットであって、通信チャネルにより制御モジュールに接続された制御ユニットにおいて、前記照明セットポイントとモジュールのメモリ要素に記憶された校正データとに応じて、照明モジュールのマトリクス光源を制御するステップ。
【0024】
好適には、本方法は、ステップa)とステップb)との間に、以下のステップを備え得る。
【0025】
aa)自動車用の制御モジュールにおいて、前記照明セットポイントを照明モジュール用の制御ユニットに送信するステップ。
【0026】
好適には、ステップb)は、以下のステップをさらに備え得る。
【0027】
bb)照明モジュール用の制御ユニットにおいて、前記照明セットポイントを受信するとともに、モジュールのメモリ要素に記憶された校正データを使用することにより、セットポイントを補正するステップ。
【0028】
好適には、前記校正データは、要素光源の各々についての光強度値を備え得る。
【0029】
好適には、本方法は、以下の予備ステップを備え得る。
【0030】
i)照明モジュール用の制御ユニットにおいて、メモリ要素に記憶された校正データの少なくとも一部を、自動車用の制御モジュールに送信するステップ。
【0031】
ステップa)は、以下のステップを備え得る。
【0032】
aaa)自動車用の制御モジュールにおいて、決定されたセットポイントを、受信した校正データを使用することにより補正し、補正された前記照明セットポイントを、照明モジュール用の制御ユニットに送信するステップ。
【0033】
好適には、自動車用の制御モジュールに送信される校正データの少なくとも一部は、幾何収差を示すデータを備え得る。
【0034】
制御方法は、好適には、前記校正データならびに自動車に関するデータを使用することにより決定されたデフォルト照明セットポイントを生成するステップと、デフォルト照明セットポイントを照明モジュールのメモリ要素に記憶するステップと、を備え得る。
【0035】
好適には、照明モジュール用の制御ユニットからの前記校正データの受信に続いて、前記デフォルト照明セットポイントは、自動車用の制御モジュールにより生成され得る。次いで、セットポイントは、前記制御ユニットに送信され、前記制御ユニットは、これをメモリ要素に記憶し得る。
【0036】
照明モジュールおよび/または自動車用の制御モジュールにおいて障害が検出された場合、デフォルトセットポイントは、好適には、ステップa)で受信した照明セットポイントに代わり得る。
【0037】
好適には、自動車用の制御モジュールと照明モジュール用の制御ユニットとの間で交換されたデータの少なくとも一部が、少なくとも1つの暗号鍵によって暗号化および/または記号化され得る。
【0038】
好適には、データの復号化が不成功である場合、または前記記号化が検証できない場合、照明モジュールおよび/または自動車用の制御モジュールにおける障害が検出され得る。
【0039】
本発明の他の態様によれば、本発明の一態様による自動車用の照明モジュールと、自動車用の制御モジュールとを対にするための方法が提案される。本方法は、以下のステップを備えている点で注目される。
【0040】
-照明モジュール用の制御ユニットにおいて、メモリ要素に記憶された校正データを自動車用の制御モジュールに送信するステップ。
【0041】
-制御モジュールにおいて、例えば、姿勢、照明モジュールの位置、または他の照明モジュールの位置等の自動車に関するデータを使用することにより、デフォルト照明セットポイントを生成し、これを照明モジュール用の制御ユニットに送信するステップ。
【0042】
-照明モジュール用の制御ユニットにおいて、デフォルトセットポイントをメモリ要素に保存するステップ。
【0043】
好適には、デフォルトセットポイントは、ロービームヘッドライト照明に対応する画像を備え得る。好適には、デフォルトセットポイントは、ロービームヘッドライトのカットオフを備え得る。
【0044】
本発明の他の態様によれば、一連の命令を備えるコンピュータプログラムが提案される。命令がプロセッサにより実行されると、命令は、プロセッサに、本発明の態様のうちの1つによる方法を実施させる。
【0045】
本発明の最終態様によれば、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体が提案される。媒体は、本発明の一態様によるコンピュータプログラムを記憶している。
【0046】
本発明により提案された手段を使用することにより、自動車の照明モジュールのマトリクス光源において一体にまとめられた要素光源の発光および/または幾何学的挙動を校正できる照明モジュールおよび制御方法を提供することが可能となる。本発明の態様によれば、照明モジュールに設置されたマトリクス光源の例とは無関係に、所定のセットポイントに適合する均一な光ビームを生成することが可能となる。このことを達成すべく、本発明の態様によれば、校正パラメータを照明モジュールに取り付けられたメモリに記憶することが提案される。前記パラメータは、例えば、マトリクス源の各ピクセルについての電流補正値もしくは輝度補正値、または光モジュールにより生成されるビームについての形状補正値を備える。このようにして、特に照明モジュールと自動車とを対にする際、モジュールに関連するデータをモジュールに物理的に取り付けることが保証される。これにより、パラメータ化のステップが追加されることが回避され得る。パラメータ化のステップは、照明モジュールを使用して車両のヘッドランプを組み立てるときにエラーを引き起こし得る。本発明の手段を利用することにより、ソフトウェアを操作することなくモジュールが組み立てられ得る、または変更され得る。例えば、自動車用のコントローラのメモリにおいて、モジュールに関するデータを転送または更新する必要がない。
【0047】
本発明の他の特徴および利点は、実施例の説明および図面を活用してより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、本発明の好適な一実施形態による光モジュールの説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の好適な一実施形態による光モジュールの説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の好適な一実施形態による方法の一連の主要ステップを示す。
【
図4】
図4は、本発明の好適な一実施形態による方法の一連の主要ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
別段の指定がない限り、1つの所定の実施形態について詳細に説明する技術的特徴は、例として説明する他の実施形態の文脈において説明される技術的特徴と制限なく組み合わせられ得る。本発明の種々の実施形態に亘る類似の概念を説明するために、類似の参照符号を使用するものとする。例えば、符号100および200は、本発明による照明モジュールの2つの実施形態を示す。
【0050】
本説明では、本発明の理解に必要な自動車用の照明モジュールの要素に焦点を当てる。既知の態様でこのようなモジュールの一部を形成する他の要素については、詳細に言及ないし説明しない。例えば、マトリクス光源への電力供給に関与するコンバータ回路の存在および動作は、それ自体既知であり、詳細に説明しない。これは、例えばレンズ等の光学素子についても同様である。
【0051】
図1の説明図は、第1実施形態による自動車用の照明モジュール100を示す。モジュールは、複数の要素光源112を一体にまとめたマトリクス光源110を備えている。図示例において、これは、複数のLEDのマトリクスであるが、本発明はこの例に限定されない。また、マトリクス光源は、各ミラーがマトリクスの1つの要素光ビームを生成するように設計されたマイクロミラーデバイスにより作製され得る。モジュールは、データ受信ユニット120を備えている。これは、例えば、CAN(Controller Area Network)バス等の自動車の内部のデータバスを介してメッセージを受信および復号することができるインターフェースである。データ受信ユニット120は、典型的には自動車用の制御モジュール(図示せず)により決定された照明セットポイント10を受信し得る。照明セットポイントは、例えば、所定のビット数でエンコードされ、要素光源112の各々により生成されるべきグレースケールレベル等の輝度値を備え得る。したがって、照明セットポイントは、デジタル画像であり得るとともに、特にビデオ信号を構成するこのような画像のストリームからのフレームであり得る。制御ユニット130は、前記照明セットポイントに応じて前記マトリクス光源を制御することが意図されている。制御ユニットは、要素光源112に対する電力供給部であって、セットポイント10を実現するように要素光源に電力を供給するように制御される電力供給部を駆動する回路に接続され得る、またはこれを備え得る。モジュール100は、フラッシュタイプのメモリ等のメモリ要素140をさらに備えている。制御ユニット130は、メモリ要素140に機能的に接続されるとともに、読み取りアクセスを有している。また、要素光源112の各々に固有の校正データ150が、メモリ要素140に記憶されている。一例として、データは、各要素光源112について、マトリクス源110の平均輝度に対する輝度差を示す値を、場合により電荷電流強度の範囲に亘って備え得る。均一な光強度を確保するために、制御ユニット130は、結果に応じて要素光源を制御する前に、それぞれの差をセットポイント値10に加算する、またはセットポイント値10から減算することにより、受信したセットポイント値10を調整する。しかしながら、データ150は、より複雑な光学的または幾何学的校正パラメータを、本発明の範囲から逸脱することなく備え得る。このような例において、単に各光源のレベルまたは各ピクセルのレベルで個別に作用することに代えて、セットポイント10の補正は、有利には、セットポイント全体のレベル、すなわち、投影すべき画像全体のレベル、またはこの画像の少なくとも一部または一領域のレベルでの補正を生成し得る。例えば、セットポイントの補正をせずに投影された画像は、投影領域の近傍における投影光学部品を原因として、凹状に湾曲した外観を呈する場合がある。投影光学部品による幾何学的変形を含む校正データを考慮して予め補正されたセットポイントを生成することにより、投影画像は、所望の非湾曲形状に近い形状を呈する。幾何収差についての補正を適用するために、変形をセットポイント画像10全体に適用する。これは離散化されるため、この変形は初期画像に含まれる情報の劣化を生じさせる。したがって、車両用の制御ユニットから制御ユニットに送信される基準画像が、光モジュールの投影解像度よりも高い解像度を有することが有利である。制御ユニット130は、セットポイント10またはセットポイントのストリームを、校正データ150をこれに適用することにより、リアルタイムで補正するのに十分な演算能力を有するマイクロコントローラ要素を備えている。
【0052】
図2の説明図は、第2実施形態による自動車用の照明モジュール200を示す。モジュールは、複数の要素光源212を一体にまとめたマトリクス光源210を備えている。モジュールは、データ受信/送信ユニット220、222を備えている。データ受信ユニット220は、典型的には自動車用の制御モジュール20により決定された照明セットポイント10を受信し得る。照明セットポイントは、例えば、所定のビット数でエンコードされ、要素光源212の各々により生成されるべきグレースケールレベル等の輝度値を備え得る。制御ユニット230は、前記照明セットポイントに応じて前記マトリクス光源を制御することが意図されている。モジュール200は、フラッシュタイプのメモリ等のメモリ要素240をさらに備えている。制御ユニット230は、メモリ要素240に機能的に接続されるとともに、読み取りアクセスを有している。また、先行する実施形態の文脈において説明した校正データ250であって、要素光源212の各々に固有の校正データ250が、メモリ要素240に記憶されている。一例として、データは、各要素光源212について、マトリクス源210の平均輝度に対する輝度差を示す値を、場合により電荷電流強度の範囲に亘って備え得る。図示の照明モジュールは、校正データ250の少なくとも一部、好適にはこのデータの全部を、制御モジュール20に送信するように構成されている。これは、例えば、照明モジュールを初期化するフェーズで実施される。均一な光強度を確保するために、制御モジュール20は、このようにして受信した校正値250を考慮して、セットポイント画像10を決定する。例えば、制御モジュール20は、結果を照明モジュール200に送信する前に、セットポイント値10をそれぞれの差を加算または減算することにより調整する。しかしながら、データ250は、より複雑な光学的または幾何学的校正パラメータを、本発明の範囲から逸脱することなく備え得る。本実施形態において、制御ユニット230は、セットポイントを補正するタスクから免れている。このタスクは、演算能力の劣る安価なマイクロコントローラ要素により実施され得る。
【0053】
図3は、
図1を参照して説明した第1実施形態によって実施される制御方法を概略的に示す。ステップa)において、照明セットポイント10が、自動車用の制御モジュールにより決定され、照明モジュールに送信される。これは、ステップa1)に対応する。セットポイント10を受信すると、制御ユニット130は、メモリ要素140に記憶された校正データ150を使用してセットポイント10を補正しつつ、マトリクス光源110を制御する。これはステップb)に対応する。
【0054】
図4は、
図2を参照して説明した第2実施形態によって実施される制御方法を概略的に示す。予備ステップi)において、メモリ要素240に記憶された校正データ250の少なくとも一部が、照明モジュール200から自動車用の制御モジュール20に送信される。ステップa)において、照明セットポイント10が、自動車用の制御モジュールにより決定されるとともに、受信した校正データ250に応じて補正され、そして照明モジュールに送信される。これは、ステップa2)に対応する。ステップb)において、照明モジュール200用の制御ユニット230は、前記照明セットポイントに応じて照明モジュールのマトリクス光源210を制御する。照明セットポイントは、現在既にメモリ要素240に記憶された校正データ250に依存している。
【0055】
光モジュール200と自動車用の制御モジュール20とを対にした後のこれらのモジュール間におけるデータ交換により、他の有利な用途が可能となる。特に、先験的に制御モジュール20においてのみ入手可能である車両に関するデータと校正データ250とを組み合わせることが提案される。車両に関するデータとは、例えば、車両の配向、位置もしくは姿勢パラメータ、または車両の他のヘッドライトにより発光される光束に関する情報である。校正データ250は、照明モジュール200で入手可能であり、照明モジュールに設置されたマトリクス源210に固有のものである。この情報は、デフォルト画像またはセットポイントを生成するために、自動車用の制御モジュール20により利用されることが典型的であるが、これに限定されない。具体的には、自動車用の制御モジュールは、一般に、照明モジュール用の制御ユニット230よりも高い演算能力を有している。あるいは、この演算は、一方の自動車用の制御ユニットと他方の照明モジュール用の制御ユニットとの間においてこの演算に必要なデータを対応して交換した後に、照明モジュール用の制御ユニット230により実施され得る。デフォルト画像とは、故障や障害が検出された場合に、モジュールにより投影される画像である。したがって、モジュールは、好適には、電子エラー検出回路、またはこの目的のために適切なコンピュータプログラムによりプログラムされたマイクロプロセッサを備え得る。エラー検出回路は、例えば、自動車用の制御モジュールが受信したデータが矛盾していること、または、自動車用の制御モジュールと照明モジュール200との接続がもはや信頼できないものであることを検出するように構成されている。このエラー検出に続いて、他の道路使用者を眩惑させるという可能性を回避することを目的として、セットポイント画像の代わりにデフォルト画像が投影される。デフォルト画像は、一方でマトリクス光源210の特異性を考慮しつつ、他方でマトリクス光源210が装備された車両の特異性を考慮するように生成される。したがって、デフォルト画像は、例えば、各自動車および車両に装備された各照明モジュールに対して正確かつ自動的に生成され得る。好適には、本方法から得られるデフォルト画像は、照明モジュールに送信され、照明モジュールはこれを専用のメモリ要素に恒久的に記憶する。自動車用の制御モジュール20と照明モジュール200との間で通信障害が発生した場合、デフォルトセットポイントは、マトリクス光源用の制御部として機能する。デフォルトセットポイントまたは画像は、例えば、ロービームヘッドライト照明に対応し得る。特に、この画像は、ロービームヘッドライトのカットオフに対応し得る。具体的には、カットオフは、現行の法規を満たすように、明確に定義されなければならない。
【0056】
以上のように定義され、
図4に示される、自動車用の制御モジュール20と照明モジュール200との間におけるデータの交換により、2つのモジュール20および200間にそれぞれ認証機能を追加することも可能となる。
【0057】
この認証機能は、校正機能、および/または校正/姿勢データの交換から独立して、かつ照明モジュール200にメモリ要素240が存在しなくても、実現され得ることに留意されたい。
【0058】
認証機能は、例えば、当該2つのモジュール間における公開暗号鍵の交換を備え得るため、対応する秘密暗号鍵によって記号化されたデータの信頼性の相互検証が可能となる。代替的または追加的に、照明モジュール200用の制御ユニット230は、受信したデータパケットについての受領確認を制御モジュール20に送信する。受領確認は、マイクロコントローラを認証可能にする一部を備えている。データパケットは、例えば、校正データ、および/またはデフォルト画像データ、および/またはデフォルト画像を生成するためのデータ、および/または画像および/または画像のグループの全部または一部、および/または圧縮されたビデオストリームからのパケットを含み得る。好適な一実施形態において、この認証は、パケットの全てに対して実施されるものではない。このようにして、対応する演算負荷が軽減されるとともに、経時的に平滑化される。さらに代替的に、認証機能は、自動車用の制御モジュール20から照明モジュール用の制御ユニット230に、送信されたデータパケットのヘッダを送信するステップを備え得る。ヘッダは、制御モジュール20を認証可能にする一部を備えている。データパケットは、以上に定義したものと同一のタイプである。有利には、この認証は、パケットの全てに対して実施されるものではない。このようにして、対応する演算負荷が軽減されるとともに、経時的に平滑化される。
【0059】
認証機能を実施するために、照明モジュール200および自動車用の制御モジュール20は、認証に使用されるヘッダまたは受領確認をそれぞれ生成するための演算手段を備えている。好適には、生成は、以下に応じて実施される。
【0060】
例えばミリ秒等の任意の時間単位で表現され得る時間または日付。
【0061】
または、交換または演算サイクルをカウントするカウンタ。
【0062】
または、交換回数とともに変化する他の要素であって、所定のサイズを超えるとリセットされ得る要素。
【0063】
コントローラとマイクロコントローラとの間の認証に障害が発生した場合、照明機能は、通信障害モードに移行し得る。有利には、障害モードは、認証障害が繰り返された場合にのみ起動される。これにより、例えば一時的な電磁干渉によりリンクが妨害された場合に障害モードが起動されることを回避することができる。これは、ヘッダまたは受領確認を利用する認証機能の場合に、特に有利である。
【0064】
制御ユニット230がコンピュータを備える場合、コンピュータはデータ交換暗号化機能を実施し得る。データ交換暗号化機能において、自動車用の制御モジュール20により暗号化されたデータが、このコンピュータにより復号化される。有利には、コンピュータは、ストリームが正しくデコードされたかどうかを判定するための方法を有する。ストリームが正しくデコードされなかった場合、コンピュータは、通信障害モードに移行し得る。通信障害モードは、以下の手順を、単独で、または組み合わせて伴い得る。
【0065】
-照明機能、またはデフォルト画像を投影する照明モジュールの停止。
【0066】
-車両の中央管理システムに送信される障害信号の制御モジュール20による生成。
【0067】
-コンピュータの認証モードへの移行。認証モードにおいて、コンピュータは、制御モジュール20用のコンピュータに対する認証手順を実施し続ける(またはその逆)。認証モードにおいて、データパケットの送信は中断され得る。
【0068】
当然ながら、上述の実施形態は、本発明の保護の範囲を限定するものではない。以上の説明を参照することにより、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を想定することができる。
【0069】
保護の範囲は、特許請求の範囲により規定される。