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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ポリホスファゼン薬物担体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/59 20170101AFI20240415BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240415BHJP
   C08G 79/025 20160101ALI20240415BHJP
【FI】
A61K47/59
A61K31/337
A61K9/14
A61P35/00
C08G79/025
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022533384
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2020062945
(87)【国際公開番号】W WO2021113403
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】62/942,978
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522220245
【氏名又は名称】オンセレックス ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン、アーネスト
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-512888(JP,A)
【文献】特表2009-531471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0047348(US,A1)
【文献】特表2009-532554(JP,A)
【文献】ChangJu Chun et al.,"Thermosensitive poly(organophosphazene)-paclitaxel conjugate gels for antitumor applications",Biomaterials,2009年,Vol.30,p.2349-2360
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
9/00-9/72
31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
C08G 79/025
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリホスファゼン系ポリマーおよび少なくとも1種の治療薬を含む、ポリマー薬物送達組成物であって、
前記治療薬が化学療法剤を含み、
前記化学療法剤がパクリタキセルを含み、かつ
前記パクリタキセルが1225~1750mg/m 2 で提供される
組成物
【請求項2】
前記ポリホスファゼン系ポリマーがナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリホスファゼン系ナノ粒子が、5nm~00nmの大きさを有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
薬剤として使用する、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
疾患の治療に用いる、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記疾患が癌または新生物増殖性疾患を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項に記載の組成物および前記組成物を被験体に投与するための説明書を含むキット。
【請求項8】
前記被験体がヒトを含む、請求項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ハイブリッドポリマー(例えば、ポリホスファゼン)系薬物送達プラットフォーム、およびそれを用いて製造、評価、投与、および被験体を治療する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、制御された分子量および/または多分散性を有する1つ以上のポリホスファゼンを含むポリホスファゼン系薬物送達プラットフォーム、ならびに1つ以上の治療薬(またはプロドラッグ)物質をポリホスファゼンに関連付けるための選択的方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリホスファゼン類は、繰り返し単位-(NPR2)-nに基づく広く知られたクラスの高分子であり、Rは幅広い有機または無機置換基から選択できる。1997年半ばまでに、約700種類のポリホスファゼンが合成および特性評価され、約2000件の出版物および特許が発行され、このクラスのポリマーについて年間170~200件の割合で開示が行われていると推定されている。(ポリホスファゼン,J.of Inorganometallic Polymers,1992,2(2),197-211参照)。
【0003】
これまでのポリホスファゼンへの主な経路は、塩化ホスホニトリルとも呼ばれるヘキサクロロシクロトリホスファゼン(環状三量体)から(ポリ(ニトリロジクロロホスホラントリイル)のIUPAC名を有する)ポリ(ジクロロホスファゼン)への熱重合によるものであった。この経路(ルート)を、次のスキーム1に示す。
【0004】
【化1】
【0005】
ポリ(ジクロロホスファゼン)は加水分解的に不安定なエラストマーであるが、広範な多種多様の求核剤との高分子求核置換反応により、幅広い誘導体に変換できる。以下のスキーム2に示すように、ポリ(有機ホスファゼン)は一般に、1つ以上の有機または有機金属求核剤(スキーム2のR)をポリ(ジクロロホスファゼン)と反応させることによって調製される。(例えば、Allcock et al.,Macromol 1986,19,1508,およびBlonsky et al.,J.Am.Chem.Soc.1984,106,6854を参照)。
【0006】
【化2】
【0007】
ポリマー主鎖(polymer backbone)の置換基は、主に、得られるポリマーの特性を決定する。置換基を適切に選択することにより、例えば、目標のガラス転移温度;製膜性などのターゲット物理的物性;オルガノゲルまたはヒドロゲルの挙動;所望の疎水性または親水性;非晶質または微結晶の特性;高度な液晶性、フォトクロミック、または非線形光学特性;を有するホスファゼンポリマーを得ることができる(Mark;JE;Allcock、HR;West、R.Inorganic Polymers Prentice Hall:Englewood Cliffs,NJ 1992 Chapter 3)。
【0008】
ポリホスファゼンを製造するためのさらに別の合成経路は、以下に示すNeilson-Wisian-Neilson反応である。(Nelson et al.,Chem.Rev.1988、88、541を参照)。
【0009】
【化3】
【0010】
Neilson-Wisian-Neilson経路の欠点は、重合温度が高いこと、モノマー合成が困難であること、限られた数のポリマーしか調製できないこと、および分子量制御が少ないことである。
【0011】
ポリホスファゼンを製造するためのFlindt-Rose Matyjaszewski経路は以下の反応を伴う。(Makromol.Chem.Macromol.Symp.1992,54155,13を参照)
【0012】
【化4】
【0013】
この反応の重合温度は90℃まで低くすることができる。この反応により、多分散性のかなり狭い(<1.4)ポリマーが製造される。しかし、この反応を用いて重要な合成ツールであるポリ(ジクロロホスファゼン)を調製することはできない。この反応を用いて、R1がハロゲン化アルコキシ基であり、R2が脂肪族またはアリール基である、[NP(OR12x[NP(OR1)(OR2)]y型のブロックコポリマーを調製することができる。この反応に必要なモノマーの合成は難しい場合がある。
【0014】
ポリホスファゼン合成へのさらに別の合成アプローチでは、HombackerおよびLi反応は次のスキームを提供する(スキーム5)
【0015】
【化5】
【0016】
ただし、Hombacker及びLi法では高温が必要であり、分子量を制御することはできない。生成物は狭い多分散性を持っていない。
【0017】
デジャガー(DeJaeger)合成は、次のプロトコルを用いてポリ(ジクロロホスファゼン)を提供する。(スキーム6)
【0018】
【化6】
【0019】
デジャガーはある程度の分子量制御を可能にするが、多分散性の狭いポリマーの生成に失敗する。さらに、この経路は高い反応温度を必要とし、化合物POCl3は非常に腐食性がある
【0020】
アジド前駆体は、ポリホスファゼンの調製にも使用されている。例えば、R2PCl+NaN3は-(N=PR2nを生成する。ただし、アジドは爆発性で有毒であるため、この経路は潜在的に危険である。さらに、この方法は分子量の制御に失敗し、ポリ(ジクロロホスファゼン)を生成できない。
【0021】
そのため、ポリホスファゼンを調製するための既存の経路の多くには、複雑なモノマー合成、困難なポリマー合成、または限られた範囲のポリマーしか生成できない高い重合温度など、1つ以上の欠点を有する。また、これらの方法の多くを使用して、重要なポリマーであるポリ(ジクロロホスファゼン)の分子量と多分散性を得る、または制御することも困難である。
【0022】
多分散性(多分散度)は、ポリマーサンプルの分子量の不均一性の尺度である。多分散性は、ポリマーの重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ることによってと算出する。Mw/Mnの値は、完全に単分散したポリマーの単位である。例えば、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンの熱重合により、分子量が105~106以上となる。これらのポリマーの多分散指数(PDI)は、通常2以上である。
【0023】
多分散性の狭いポリマーは、多分散性の広い同じポリマーよりも結晶化しやすく、ガラス転移温度が鋭く、所定の温度で急激に流動することが知られている。薬物送達に用いるポリマーの多分散性は、送達デバイスの加水分解および放出特性に影響を及ぼす。このため、米国食品医薬品局(FDA)は、薬物送達(ドラッグデリバリー)などの医療用途向けのポリマーの多分散性が非常に狭いことを要求している。
【0024】
ポリマーサンプルの絶対分子量もまた、分子量の範囲とは対照的に、産業および医療用途でのその挙動において最も重要である。最も重要な機械的特性は、重量平均分子量によって大きく異なる。例えば、分子量が大きくなるにつれて、臨界点に達するまで強度が急速に増加する。ポリマーをフィルム、シート、パイプ、繊維などの有用な物品に加工する能力は、分子量が大きくなるにつれて増加するが、粘度が高くなり始めた時点まである。したがって、強度と加工性を協調して最適化する、高いが特定の妥協した分子量を得ることがしばしば望ましい。これは、薬物送達プラットフォームとしての使用するために後続開発に適した、低い(または狭い)多分散性および制御された分子量を有する、十分に特性化され効率的に生成されるポリマー(例えば、ポリホスファゼン)を達成できるように、ポリマー合成中に分子量を制御する必要性を示す。
【0025】
制御された分子量および/または多分散性を有するポリホスファゼンなどのポリマーは、1つ以上の目的の薬物物質(drug substance)を付着させるための成功したスキームが開発できる限り、有用な薬物プラットフォームを提供すると見なされる。
【0026】
ポリホスファゼンを含むがこれらに限定されない様々なポリマーは、薬物送達ビヒクルとして有望であることが示されている。しかしながら、ポリマー薬物送達システムの大規模な採用は、適切な生体適合性、生分解性、および不十分な親水性、あるいは疎水性に関連するがこれらに限定されない、ポリマーまたは結果として生じる薬物送達システムの欠点のためにまだ達成されていない。
【0027】
したがって、必要なのは、ポリマー、特にポリホスファゼン、さらに特に、狭い多分散性および/または分子量を有するポリマー生成物を提供する、ポリ(ジクロロホスファゼン)(例えば、ポリホスファゼンおよびポリホスファゼンブロックコポリマーおよび/または3本腕星型ポリホスファゼン)の製造プロセスであり、これらは、後続的に誘導体化され、関連する患者集団において目的のある1つまたは治療物質(例えば、薬物)または診断物質の担体として使用することができる。
【発明の概要】
【0028】
本発明は、ポリマー合成および薬物送達システムの製造の分野であり、特に、分子量および多分散性が制御されたハイブリッドポリマー(例えば、ポリホスファゼン)を調製するための簡便でマイルドなプロセスを提供する。本発明はまた、モノマー、環状3量体、3本腕星型ポリホスファゼン、およびこれらのポリホスファゼンのブロックコポリマーを調製するための便利な経路を提供する。
【0029】
本発明のポリホスファゼンは、1つ以上の活性薬物物質(又はプロドラッグ物質)の会合(例えば、付着)に際して、被験体に目的の化合物を投与するための有用な送達プラットフォーム及び担体である。様々な実施形態において、薬物物質は、典型的には、被験体に治療上の利益を提供することを意図している。
【0030】
したがって、ある好ましい実施形態において、本発明は、ポリホスファゼン系薬物送達プラットフォーム、およびそれを用いて製造、評価、投与、および被験体を治療する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、制御された分子量および/または多分散性を有する1つ以上のポリホスファゼンを含むポリホスファゼン系薬物送達プラットフォーム、ならびに1つ以上の薬物物質(drug substance)をポリホスファゼンに関連付けるための選択的方法を提供する。
【0031】
主族又は遷移金属ハロゲン化物、または任意の鎖長の線状ホスファゼン塩を含む他の適切なハロゲン化物塩、または主剤又は遷移金属の塩化物を含む予め形成された非ホスファゼンポリマーを開始剤として用いて、ホスホラミンのカチオン溶液重合反応を含むポリホスファゼンを調製するためのプロセスを提供する。ある好ましい実施形態において、式N{RN(H)R’2P-(N=PR’2n3を有する3本腕星型ポリホスファゼンがこの方法によって調製される。また、反応物N(SiR33およびPX5からモノマーCl3P=NSiMe3および環状三量体N336を合成するための方法を提供する。
【0032】
好ましい実施形態において、薬物送達プラットフォームは、実質的に生体適合性、生分解性、および親水性、あるいは実質的に疎水性であるポリマー化合物である。特に好ましい実施形態において、薬物送達プラットフォームは、複数の交換可能な単一結合および二重結合を介して連結された窒素およびリンを含む主鎖(main chain)を有し、任意選択で1種以上の有利な側鎖(side-chain)をさらに含むハイブリッドポリマーを有する、ポリマー化合物を含む。適切なハイブリッドポリマー化合物は、排他的ではないが、ナノ粒子(例えば、ナノスフェア)、マイクロスフェア、ミセル、フィルム、またはヒドロゲルとして処方される幅広いクラスのポリホスファゼン化合物に優先的に見出される。本発明のポリホスファゼン化合物は、その後、または製造に付随して、1つ以上の活性薬物(またはプロドラッグ)物質で誘導体化される(例えば、ロードされる)。適切な薬物物質には、1つ以上の抗癌剤(例えば、化学療法剤、ホルモン療法剤、標的癌剤およびビスホスホネート、抗癌剤および/または抗腫瘍剤、抗増殖剤、血管新生阻害剤、抗転移剤、ネオアジュバント療法および薬剤、免疫療法剤(例えば、「チェックポイント阻害剤」)が含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
さらに実施形態において、適切なハイブリッドポリマー化合物は、排他的ではないが、1つ以上の抗癌剤または薬物などの1つ以上の活性薬物物質(またはプロドラッグ)物質で誘導体化される幅広いクラスのメトキシポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)(「mPEG-b-PCL」または「mPEG-PCL」)化合物に優先的に見出される。
【0034】
好ましい実施形態において、薬物担体に対する薬剤の濃度、負荷特性、吸着、吸収、またはその他の化学的会合(例えば、共有結合、イオン結合等)は、1H NMR、HPLC、GC、MS、GC-MS、および/または免疫学的手法によって分析される。
【0035】
薬物担体に対する治療薬(例えば、化学療法剤)の好ましい薬物負荷率は、約0.1%から約20%であり、より好ましくは、約5%から約10%であり、最も好ましくは、約7%の薬物/コポリマー比(w/w)である。負荷された治療薬が抗癌剤、例えば、パクリタキセルを含むがこれらに限定されない幾つかの特定の実施形態において、負荷率は、約4%から約10%であり、より好ましくは、約6%から約8%であり、最も好ましくは、約7%の薬物/コポリマー比(w/w)である。ある好ましい実施形態において、化学療法剤は、135~175mg/m2(すなわち、卵巣癌研究に関連する)の典型的な治療的に証明されたレベルで薬物送達組成物に負荷されたパクリタキセルを含む。他の実施形態において、パクリタキセルのレベルは、×2、×3、×4、および潜在的に×5が適応に対する典型的な治療レベルである。本発明は、特定のメカニズムに限定されないが、本発明の薬物送達システムを含む組成物および方法を使用する際に、多くの治療薬および化学療法剤を用いて、投与可能なレベルの化学療法剤(例えば、パクリタキセル)の増加が可能であると考えられる。
【0036】
好ましい組成物中の水溶性の範囲は、約1から10%であり、好ましくは約1%から約6%であり、より好ましくは、約3%から約4%である。
【0037】
別の実施形態において、1つ以上の標的化部分(例えば、葉酸、糖、および抗体など)を、ペンダント官能基などの薬物担体上の化学的に活性な部分または官能基に結合させることができる。例えば、少なくとも1つの標的化部分は、ペンダント官能基にコンジュゲートされ得、ここで、前記標的化部分は、ビタミン、糖、レクチン、抗体および抗体フラグメント、ペプチド、受容体、リガンド、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。他の実施形態において、組成物は、葉酸、糖、および抗体などを含む1つ以上の標的化部分を提供する。
【0038】
好ましい実施形態において、1つ以上の薬物または治療薬を搭載した場合の薬物送達システムは、任意選択でフリーズドライ(freeze-drying)および/または凍結乾燥(lyophilization)される。幾つかの実施形態において、フリーズドライ(freeze-drying)および/または凍結乾燥(lyophilization)された生成物に対して、1つ以上の凍結防止剤を任意選択で添加する。適切な凍結防止剤としては、多糖類(糖および糖アルコール)(例えば、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、ソルボース、タロース、タガトース、セドヘプツロース、マンノヘプツロース、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、メリビオース、アミラオース、およびマンナンなど)が挙げられるが、これらに限定されない。(例えば、Lee,M.K.,“Cryoprotectants for freeze drying of drug nano-suspensions:effect of freezing rate,”J.Pharm.Sci.,98(12)pp.4808-4817,2009を参照)。本発明は、フリーズドライ(freeze-drying)および/または凍結乾燥(lyophilization)処理中に薬物送達システムを安定化するために、1種以上の糖凍結防止剤の使用、より好ましくはスクロースの使用を企図している。特定の薬物送達システムにおける凍結防止剤のパーセンテージは、約0.001%から約10%以上、約0.01%から約10%以上、約0.1%から約10%以上、約0.001%から約5%以上、約0.01%から約5%以上、約0.1%から約5%以上、約0.5%から約5%以上、約0.5%から約10%以上、約1%から約10%以上、約2%から約8%以上、約3%から約7%以上、および4%から約6%以上の範囲、および約5%である。
【0039】
更なる実施形態において、本発明の薬物送達システムおよび組成物は、組成物と有害に反応しない、経腸または非経口での使用に適した1つ以上の賦形剤、例えば、薬学的または生理学的に許容される有機または無機の担体物質をさらに含む。
【0040】
本明細書で使用される「賦形剤」とは、コンジュゲートの投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類および澱粉の種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」または「薬物」とは、薬学的に許容され適切な担体および賦形剤などの他の化学成分、および任意選択で追加の活性(治療)剤を含む、本明細書に提示される薬物送達プラットフォームの調製物を指す。医薬組成物の目的は、被験体への組成物の投与を容易にすることである。
【0042】
以下、「薬学的に許容される担体」とは、生物への顕著な刺激を引き起こさず、投与されたコンジュゲートの生物学的活性および特性を無効にしない、担体または希釈剤を指す。限定されないが、薬学的に許容される担体の例には、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルジョン、および有機溶媒と水との混合物、ならびに固体(例えば、粉末)およびガス状担体がある。適切な薬学的に許容される担体には、水、塩溶液(リンゲル液など)、アルコール、油、ゼラチン、およびラクトース、アミロースまたはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリジンが含まれるが、これらに限定されない。このような調製物は、滅菌することができ、必要に応じて、ヒトに投与される組成物と有害に反応しない潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝液、着色剤および/または芳香物質などの補助剤と混合することができる。本発明のある方法は、効率を高めた薬物担体組成物および薬物送達プラットフォームを製造するための容易にスケーラブルな製造スキームを提供する。
【0043】
本発明のさらに他の実施形態は、それぞれ、臨床試験の材料と比較して、実験および非臨床試験の材料に関連する現在の優良試験所基準(グッド・ラボラトリー・プラクティス)(「cGLP」)および/または現在の適正製造基準(グッド・マニュファクチャリング・プラクティス)(「cGMP」)を維持しながら、ポリマー薬物送達プラットフォームを大規模に製造するための製造スキームを提供する。
【0044】
インスタント組成物の好ましい実施形態は、約5nm~約700nm、より好ましくは約100nm以下の大きさの範囲のナノ粒子(例えば、ナノスフェア)を含む薬物担体組成物を提供する。当技術分野で知られている、または当技術分野から容易に適応できる標準的な技術を用いて、ナノ粒子を濃縮および/または濾過することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図面には、以下に示す図に例示され、かつ限定されない幾つかの実施形態が示されている。
【0046】
図1】実施例14に記載のスキームによって生成されたポリホスファゼンを示す。
図2】本発明の実施形態において企図される例示的なポリホスファゼンパクリタキセル結合体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、一般に、ハイブリッドポリマー(例えば、ポリホスファゼン)系薬物送達プラットフォーム、およびそれを用いて製造、評価、投与、および被験体を治療する方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、制御された分子量および/または多分散性を有する1つ以上のポリホスファゼンを含むポリホスファゼン系薬物送達プラットフォーム、ならびに1つ以上の治療薬(またはプロドラッグ)物質をポリホスファゼンに関連付けるための選択的方法を提供する。
【0048】
主族又は遷移金属ハロゲン化物、または任意の鎖長の線状ホスファゼン塩を含む他の適切なハロゲン化物塩、または主剤又は遷移金属の塩化物を含む予め形成された非ホスファゼンポリマーを開始剤として用いて、ホスホラミンのカチオン溶液重合反応を含むポリホスファゼンを調製するためのプロセスが提供される。ある好ましい実施形態において、式N{RN(H)R’2P-(N=PR’2n3を有する3本腕星型ポリホスファゼンがこの方法によって調製される。また、反応物N(SiR33およびPX5からモノマーCl3P=NSiMe3および環状三量体N336を合成するための方法が提供される。
【0049】
主族又は遷移金属ハロゲン化物、または任意の鎖長の線状ホスファゼン塩を含む他の適切なハロゲン化物塩を開始剤として用いて、ホスホラニミン(phosphoranimine)のカチオン溶液重合反応を含むポリホスファゼンを調製するためのプロセスが提供される。このプロセスは、生成物の分子量に対する新しい制御度を与え、かつ多分散性の狭い生成物を与えるという点で、ポリホスファゼンの合成技術における重要な進歩を表す。この方法を用いることにより、多分散性が1.6以下のポリ(ジクロロホスファゼン)(例えば、1.4、1.2、1.1又は1.05以下)及び対応する多分散性が1.2以下のポリ(オルガノホスファゼン)を調製することができる。
【0050】
本発明は、以下の説明において開示され、実施例において説明される。実施例は、本発明の選択された特定の実施形態の単なる例示であり、その範囲を限定するように解釈されることを意図するものではない。本開示を前提として、当業者は、必要に応じて、または所望に応じて、プロセスを定期的に変更することができる。
【0051】
I.定義
本実施形態において、「生物活性剤」、「薬学的活性剤」、「薬物(ドラッグ)」、「プロドラッグ」などの用語は、相互交換可能に使用される。
【0052】
本明細書で使用される用語「治療薬」、「薬学的活性剤」、「生物活性剤」および「薬物」とは、哺乳動物、特にヒトなどの動物にインビボで投与された場合に生物学的メカニズムまたは事象を変化させ、阻害し、活性化し、その他の点で影響を及ぼす、ビタミンCおよびビタミンE、脂質、またはそれらの組合せおよび一部を含むがこれらに限定されない、タンパク質、糖類、オリゴ糖類、炭水化物、グリコポリマー、糖タンパク質、ステロイド、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)、cDNA、核酸、およびビタミンに結合されたタンパク質、多糖類、核タンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチド、小分子を含むかこれらに限定されない、小分子薬物および生体分子を含むがこれらに限定されない、有機および/または無機分子を指す。本明細書で使用されるこれらの用語は、さらに詳しくは、特定の実施形態において、抗真菌剤、薬剤(例えば、フルコナゾールおよびボリコナゾール)、抗てんかん薬(例えば、ルフィナミドおよびトピラメート)、免疫抑制剤、抗酸化剤、麻酔薬、化学療法剤、ステロイド(例えば、レチノイド、ホルモンなど)、抗生物質、抗ウイルス剤、抗増殖剤、抗ヒスタミン剤およびアレルギー治療(例えば、トリアムシノロンアセトニド)、抗凝固剤、抗光老化剤、生物学的薬剤(例えば、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、および核酸配列(例えば、DNAおよび/またはRNA、およびそれらの誘導体)、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質(例えば、治療用ペプチドおよびタンパク質、ならびに抗体およびその断片および誘導体など)、ビスホスホネート、メラノトロピックペプチド、非ステロイド性およびステロイド性抗炎症化合物、および標的化された抗癌剤を含むがこれらに限定されない、疾患、障害、または病状の治療、治癒、または予防のための、薬物、薬剤、または予防薬(すなわち、ワクチンおよび免疫学的活性組成物)として動物(例えば、ヒト)の内部または外部で使用される任意の物質をさらに指す。他の幾つかの実施形態において、適切な化学療法剤には、小分子化学療法剤および抗癌剤および/または抗腫瘍剤、抗増殖剤、血管新生阻害剤、抗転移剤、ネオアジュバント療法および薬剤、免疫療法剤(例えば、「チェックポイント阻害剤」))が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、本明細書に記載の薬物送達プラットフォームと関連付けることができる治療薬および/または生物活性剤は、典型的には抗癌生物活性剤であり、この抗癌生物活性剤は、すべての種類および段階の癌および癌治療(例えば、化学療法、増殖性、急性、遺伝性、自然発生等)に対する抗癌物質、抗増殖剤、化学増感剤、抗炎症剤(ステロイド性および非ステロイド性抗炎症剤、ならびに解熱剤を含むがこれらに限定されないもの)、抗酸化剤、ホルモン、免疫抑制剤、酵素阻害剤、細胞増殖阻害剤および抗付着分子、DNA、RNAまたはタンパク質合成の阻害剤、抗血管新生因子、抗分泌因子、放射性薬剤および造影剤を含むがこれらに限定されない。本発明で使用するのに適した例示的な薬物のより包括的なリストは、AxelKleemannおよびJurgenEngelによる「Pharmaceutical Substances: Syntheses,Patents,Applications」(Thieme Medical発行、1999年);Susan Budavari et al.により編集された「MerckIndex:An Encyclopedia of Chemicals,Drugs,and Biologicals」(CRCプレス、1996年);およびメリーランド州ロックビル所在のthe United States Pharmcopeial Convention,Inc.により発行された「United States Pharmacopeia-25/National Formulary-20」(2001年);で見出すことができる。
【0054】
本明細書で使用される用語「小分子」とは、天然に存在するか人工的に作成されるか(例えば、化学合成を介して)、比較的低分子量を有する分子を指す。通常、小分子は単量体であり、分子量が約1500Da未満である。好ましい小分子は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトにおいて局所的または全身的効果を生み出すという点で生物学的に活性である。ある好ましい実施形態において、小分子は薬物(ドラッグ)である。好ましくは、必ずしもそうではないが、この薬物は、適切な政府機関や機関による使用に対して安全かつ効果的であると既に見なされているものである。例えば、ヒトの使用に対する薬物は、FDAによる、21 C.F.R.§§330.5、331~361、および440~460にリストされており、獣医学使用に対する薬物は、FDAによる、21 C.F.R.§§500~589にリストされていて、いずれも本発明に従って使用することが許容されると見なされる。
【0055】
本発明の幾つかの実施形態による抗癌剤には、アモナフィド、カンプトテシン、コルヒチン、クロラムブシル、シタラビン、ドキソルビシン、3-(9-アクリジニルアミノ)-5-(ヒドロキシメチル)アニリン、アザトキシン、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール塩酸塩、アクロニン、アドリアマイシン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、ビザントレン塩酸塩、ビスナフィドジメシレート、ビゼレシン、ブレオマイシン硫酸塩、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、カルビシン塩酸塩、カルゼレシン、セデフィンゴール、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン塩酸塩、ドロロキシフェン、ドロロキシフェンクエン酸塩、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキサート、エフロルニチン塩酸塩、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、エピルビシン塩酸塩、エルブロゾール、エソルビシン塩酸塩、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、エトポシドリン酸塩、エトプリン、ファドロゾール塩酸塩、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、フルダラビンリン酸塩、フルオロウラシル、フルオロシタビン、ホスキドン、ホストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、ヒドロキシウレア、イダルビシン塩酸塩、イホスファミド、イルモホシン、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-nl、インターフェロンアルファ-n3、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンガンマ-Ib、イプロプラチン、イリノテカン塩酸塩、ランレオチド酢酸塩、レトロゾール、ロイプロリド酢酸塩、リアロゾール塩酸塩、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロソキサントロン塩酸塩、マソプロコル、メイタンシン、メクロレタミン塩酸塩、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスペル、ミトタン、ミトキサントロン塩酸塩、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペプロマイシン硫酸塩、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、ピロキサントロン塩酸塩、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、プロカルバジン塩酸塩、ピューロマイシン、ピューロマイシン塩酸塩、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、サフィンゴール塩酸塩、セムスチン、シムトラゼン、スパルホサートナトリウム、スパルソマイシン、スピロゲルマニウム塩酸塩、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、タキソール、テコガランナトリウム、テガフール、テロキサントロン塩酸塩、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフイリン、チラパザミン、トポテカン塩酸塩、トレミフェンクエン酸塩、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、トリメトレキサートグルクロン酸塩、トリプトレリン、ツブロゾール塩酸塩、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ビンデシン、ビンデシン硫酸塩、ビネピジン硫酸塩、ビングリシナート硫酸塩、ビンレウロシン硫酸塩、ビノレルビン酒石酸塩、ビンロシジン硫酸塩、ビンゾリジン硫酸塩、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、およびゾルビシン塩酸塩が含まれるが、これらに限定されない。さらなる抗腫瘍剤および抗癌剤には、Goodman and Gilman’s“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Eighth Edition,1990,McGraw-Hill,Inc.(Health Professions Division)のAntineoplastic Agents(Paul Calabresi and Bruce A.Chabner)の第52章およびその序論、1202-1263に開示されているものが含まれる。
【0056】
幾つかの本実施形態において使用される抗癌化学療法剤の非限定的な例としては、ダウノルビシン、ドキソルビシン、N-(5,5-ジアセトキシペンチル)ドキソルビシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、マイトマイシンA、9-アミノアミノペルチン、アンチノマイシン、N-アセチルスペルミジン、1-(2-クロロエチル)-1,2-ジメタンスルホニルヒドラジン、ブレオマイシン、タリソマイシン、およびそれらの誘導体などの、アミノ含有化学療法剤;エトポシド、イリノテカン、トポテカン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エスペラマイシン、1,8-ジヒドロキシ-ビシクロ[7.3.1]トリデカ-4-エン-2,6-ジイン-13-オン、アングイジン、モルホリノ-ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、ならびにそれらの誘導体などの、ヒドロキシ含有化学療法剤;スルフヒドリル含有化学療法剤;およびカルボキシル含有化学療法剤;が挙げられる。さらなる化学療法剤には、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミンおよびメチルメラミン、アルキルスルホン酸塩、ニトロソウレア、ならびにトリアゼンなどの、アルキル化剤;葉酸アナログ、ピリミジンアナログ、およびプリンアナログなどの、代謝拮抗剤;ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、酵素、タキサン、および生物学的反応修飾物質などの、天然産物;白金配位錯体、アントラセンジオン、アントラサイクリン、置換ウレア、メチルヒドラジン誘導体、または副腎皮質抑制剤などの、種々の薬剤;あるいは、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ、ブレオマイシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、4-OHシクロホスファミドおよびシスプラチンなどの、ホルモンまたはアンタゴニスト;が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
複数の治療薬が本明細書に記載の薬物送達プラットフォームと関連している幾つかの実施形態によれば、これらの組成物は、それぞれの薬剤の単独で、または薬剤の混合物としての組み合わせで、それぞれの第一の、またはそれ以上の各々の治療活性よりも大きい治療活性を特徴とする。そのメンバーの治療活性に関して、コンジュゲートによって発揮されるこのより大きな治療活性は、本明細書では相乗的治療活性と呼ばれる。
【0058】
幾つかの実施形態によれば、任意選択で、本明細書での使用が企図される1つの治療薬は、1つ以上の薬物承認機関(例えば、FDA)による使用が承認されているが、低または中程度の抗癌活性を特徴とする。「低または中程度の抗癌治療活性」とは、そのような薬物の使用が、標的細胞に有害なレベルであることによって治療されている状態の症状の1つ以上をある程度緩和し、標的細胞のライフサイクルに混乱を引き起こすためには、十分ではないと見なされることを意味する。或いは加えて、薬物は、標的細胞に対して細胞毒性であるが標的細胞に対して十分に特異的ではない場合、および/または非標的細胞に対して毒性である場合、低または中程度の抗癌治療活性を有すると見なされる。そのような薬物は標的細胞を殺すのに効果的であるが、それらは有害で毒性の影響のためにそれらの治療的に有効な量では役に立たないかもしれない。
【0059】
本明細書で使用される用語「治療有効量」とは、治療されている医学的状態の病状の1つ以上をある程度緩和する活性剤の投与量を表す。本実施形態において「治療有効量」とは、標的細胞に対して細胞毒性を示す量の組成物を投与し、及び/又は標的細胞に対して有害なレベルで治療することにより治療中の状態の症状の1つ以上をある程度緩和し、標的細胞のライフサイクルを乱す量を表す。幾つかの実施形態において、標的細胞は癌細胞である。
【0060】
本明細書で使用される用語「脂肪族」とは、アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分のいずれか又は組み合わせを含み得、また、直鎖、分岐、または環状、又はそれらの組み合わせである、炭化水素を典型的にはC1~C20で表したものである。低級脂肪族基は、典型的にはC1~C5である。
【0061】
本明細書で使用される用語「アルキル」とは、特に定めのない限り、飽和直鎖、分岐、または環状の第一級、第二級、または第三級炭化水素、好ましくはC1~C20の炭化水素をいい、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、および2,3-ジメチルブチルを含む。アルキル基は、任意選択で、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、硫酸塩、ホスホン酸、リン酸塩、またはホスホン酸塩からなる群から選択される1つ以上の部分で置換することができ、当業者に知られているように、例えば、グリーンらで教示されているように、必要に応じて無保護または保護されて行われる(「Protective Groups in Organic Synthesis」,John Wiley and Sons, Second Edition,1991)。本明細書で使用される用語「低級アルキル」とは、C1~C5のアルキル基を指す。
【0062】
「アルキルアミノ」または「アリールアミノ」とは、それぞれ1つまたは2つのアルキルまたはアリール置換基を有するアミノ基を指す。
【0063】
本明細書で使用される用語「保護された」とは、他に定義されない限り、酸素または窒素が存在する分子中の他の部分の誘導体化の過程でそれ以上の反応を防ぐために酸素または窒素原子に加えられる基を指す。有機合成の技術に熟練した当業者には、多種多様な酸素および窒素保護基が知られている。
【0064】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」とは、天然または合成アミノ酸を指し、これにはアラニル、バリニル、ロイシニル、イソロイシニル、プロリニル、フェニルアラニニル、トリプトファニル、メチオニニル、グリシニル、セリニル、スレオニニル、システイニル、チロシニル、アスパラギニル、グルタミニル、アスパルトイル、グルタオイル、リシニル、アルギニニル、およびヒスチジニルが含まれるが、これらに限定されない。用語「アミノ酸エステル」とは、天然または合成アミノ酸の脂肪族、アリールまたはヘテロ芳香族カルボン酸エステルを指す。
【0065】
本明細書で使用される用語「アリール」とは、特に定めのない限り、フェニル、ビフェニル、又はナフチル、好ましくはフェニルを指す。アリール基は、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、硫酸塩、ホスホン酸、リン酸塩、またはホスホン酸塩からなる選択される1つ以上の部分で置換することができ、当業者に知られているように、例えば、グリーンらで教示されているように、必要に応じて無保護または保護されて行われる(「Protective Groups in Organic Synthesis」,John Wiley and Sons,Second Edition,1991)。
【0066】
本明細書で使用される用語「ハロ」とは、クロロ、ブロモ、ヨード、およびフルオロを含む。
【0067】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」とは、芳香環に少なくとも1つの硫黄、酸素又は窒素を含む芳香族部分を指す。非限定的な例には、フリル、ピリジル、ピリミジル、チエニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチエニル、イソベンゾフリル、ピラゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、プリニル、カルボゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、キナゾリニル、ピリダジニル、ピラジニル、シノリニル、フタラジニル、キノキサリニル、キサンチニル、ヒポキサンチニル、プテリジニル、5-アザシチジニル、5-アザウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロピリジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、アデニン、N6-アルキルプリン、N6-アシルプリン(アシルはC(O)(アルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキル))、N6-ベンジルプリン、N6-ハロプリン、N6-ビニルプリン、N6-アセチレンプリン、N6-アシルプリン、N6-ヒドロキシアルキルプリン、N6-チオアルキルプリン、チミン、シトシン、6-アザピリミジン、2-メルカプトピリミジン、ウラシル、N5-アルキルピリミジン、N5-ベンジルピリミジン、N5-ハロピリミジン、N5-ビニルピリミジン、N5-アセチレンピリミジン、N5-アシルピリミジン、N5-ヒドロキシアルキルプリン、およびN5-チオアルキルプリン、ならびにイソキサゾリルがある。複素環塩基の機能性酸素および窒素基を、反応シーケンス中に必要に応じて、または所望に応じて保護することができる。適切な保護基は、当業者に周知であり、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t-ブチルジメチルシリル、およびt-ブチルジフェニルシリル;トリチル;アルキル基;アセチルやプロピオニルなどのアシル基;メチルスルホニル;およびp-トルイルスルホニルを含む。
【0068】
用語「アルキルヘテロ環」または「アルキルヘテロ芳香族」とは、アルキル基がヘテロ芳香族に共有結合している部分を指し、好ましくはC1~C4アルキルヘテロ芳香族、より好ましくはCH2ヘテロ芳香族である。
【0069】
本明細書で使用される用語「アラルキル」とは、アルキル置換基を有するアリール基を指す。
【0070】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」とは、特に定めのない限り、-O-アルキル構造の一部を指す。
【0071】
本明細書で使用される用語「アルキニル」とは、少なくとも1つの三重結合を有するC2~C10の直鎖状または分岐状の炭化水素を指す。
【0072】
用語「保護オキシ」とは、当業者に周知の酸素保護基のいずれかとの望ましくない反応から保護された酸素原子を指し、例えば、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル等の3置換シリル基;トリチル;アルキル基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、p-NO2-ベンゾイル等のアシル基;トルイル;メチルスルホニル;またはp-トルイルスルホニルを含むがこれらに限定されない。
【0073】
本明細書で使用される用語「ヘテロアルキル」とは、炭素鎖中に酸素、硫黄または窒素(水素または酸素により完成した原子価を有する)などのヘテロ原子を含むアルキル基、または炭素鎖を末端とするアルキル基を指す。これらの化合物の例には、酸素、硫黄または窒素などのヘテロ原子によって遮断された一連の低級アルキルが含まれ、それには、アルキル基が部分内で変化できる-O-[(アルキル)O]x-CH2)NH2が含まれ、その部分には、アルキル基が部分内で変化できる-O-[(CH2xO]y-CH2xNH2;-O-[(CH2xO]yCH2xNH(CH2xSO3H、および-O-[(アルキル)-O]y-(アルキル)が含まれ、その部分には、xが1~8(部分内で変化できる)であり、yが1~40の整数である-O-[(CH2xO]y-(アルキル)が含まれる。これらの化合物の具体例には、(メトキシエトキシ)エトキシ、エトキシエトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。ヘテロアルキル基は、-OCH2CF3などのようにハロゲン化することもできる。
【0074】
本明細書で使用される用語「方法」とは、所定のタスクを達成するための方法、手段、技術および手順であって、化学、薬学、生物学、生化学および医学の各分野の専門家によって既知の、または既知の方法、手段、技術および手順から容易に発展した方法、手段、技術および手順を含むがこれらに限定されない。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく照らすことを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲を制限するものではない。明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠であるとしてクレームされていない要素を示すと解釈されるべきではない。本明細書中のいかなる言語も、請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0075】
本明細書で使用される用語「治療する」とは、状態の進行を無効化する、実質的に阻害する、遅らせる、または逆転させる、状態の臨床的または審美的症状を実質的に改善する、または状態の臨床的または審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0076】
用語「約(about)」または「約/おおよそ(approximately)」とは、当業者によって決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約(about)」は、当技術分野の慣行に従って、1以内または1を超える標準偏差を意味することができる。
【0077】
この文書では、用語「a」または「an」とは、特許文書で一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の他の例や使用法とは無関係に、1つまたは複数を含むために使用されている。この文書では、用語「または(OR)」とは、非排他的ORを指し、別段の指示がない限り、「AまたはB」は「AはBではない」、「BはAではない」、「AおよびB」を含むことを指す。添付の特許請求の範囲において、用語「含む(including)」および「そこで(in which)」とは、それぞれの用語「含む/備える(comprising)」および「そこにおいて(wherein)」の平易な英語の同等物として使用されている。また、以下の特許請求の範囲において、用語「含む(including)」および「含む/備える(comprising)」は、オープンエンドである:すなわち、特許請求の範囲においてそのような用語の前にリストされている要素に加えて、その要素を含む構成、物品又はプロセスは、依然として当該特許請求の範囲内に属すると見なされる。さらに、以下の特許請求の範囲において、用語「第1」、「第2」、及び「第3」などは、単に識別として使用されているにすぎず、それらの対象に数値的な要件を課そうとするものではない。
【0078】
用語「任意選択で/場合により/必要に応じて(optionally)」又は「代わりに/あるいは(alternatively)」とは、「幾つかの実施形態で提供されるが、他の実施形態では提供されないこと」を意味するために本明細書で使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特性が矛盾しない限り、複数の「任意選択の/場合による(optional)」特性を含み得る。
【0079】
本明細書における値の範囲の詳述は、範囲内に収まる各個別の値をそれぞれに参照する簡略的な方法としての機能のためだけのものであり、各個別の値は、特に記載がない限り、本明細書に個別に記されているかのように明細書に組み込まれる。
【0080】
本明細書において別段の定めのない限り、本発明に関連して使用される科学技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有するものとする。該用語の意味および範囲は明白であるはずであるが、潜在的両義性がある場合は、いずれの辞書の定義または外的定義よりも本明細書に示した定義が先行される。本出願書類において、「または(or)」の使用は、特に記載のない限り「および/または(and/or)」を意味する。
【0081】
本発明の実施形態は、具体的な実施形態を参照して説明されてきたが、本発明の実施形態のより広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の改変及び変更がこれら実施形態になされてよいことは明白であろう。したがって、明細書及び図面は、制限的趣旨よりもむしろ、例示的なものとみなされるべきである。本明細書の一部を形成する添付図面は、本発明が実施される具体的な実施形態の説明のために示されており限定を目的としたものではない。図示の実施形態は、当業者が本明細書に開示された教示を実施できる程度十分に詳細に説明されている。他の実施形態は、そこから利用及び派生可能であり、この開示の範囲から逸脱することなしに、構造上及び論理上の置換及び変更がなれる。詳細な説明は、従って、限定的趣旨とみなされず、種々の実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって定義され、特許請求の範囲が請求する特徴の同等物の全範囲に従う。
【0082】
本発明の主題のそのような実施形態は、本明細書においては個別および/または集合的に、「発明」という用語で称されるが、これは、単に便宜のためであり、事実上1つ以上が開示されたとしても、いかなる単一の発明または発明概念について本願の範囲を自ら制限することを意図するものではない。したがって、特定の実施例が本明細書で例示および説明されてきたが、開示された特定の実施形態の代わりに、同じ目的の達成を意図する任意の変更を施すことができることを理解すべきである。本開示は、様々な実施形態の任意の及び全ての適合又は変形に及ぶように意図されている。上記実施形態、及び本明細書にて具体的に記載されていないその他の実施形態の組み合わせは、上記説明を検討すると当業者には明らかである。
【0083】
II.ホスホラニミンの選択
ポリホスファゼンの調製では、モノマーとしてホスホラニミンが使用される。好ましい実施形態において、ホスホラニミンは、R3P=NSi(R’)3の構造を有し、ここで、少なくとも1つのR置換基は、クロロ、フルオロ、ブロモ、またはヨードであり、好ましくはクロロであり、残りのRおよびR’置換基は、重合プロセスに悪影響を及ぼす官能部分を含まない基である。
【0084】
好ましい実施形態において、少なくとも2つのR置換基はハロであり、好ましくはクロロである。好ましいホスホラニミンは、トリクロロ(トリメチルシリル)ホスホラニミン、Cl3P=NSiMe3である。重合プロセスに悪影響を与える部分の例には、-NH、-OH、酸性基、塩基、不安定なフッ素原子、有機リチウム試薬、およびグリニャール試薬が含まれる。これらの部分の少なくとも一部は、従来の保護によって非干渉基に変換され、その後、適切なタイミングで脱保護される可能性がある。干渉基は、通常、伝播性の末端基、おそらくPCl3 +・PCl6 -ユニットと反応する基である。
【0085】
一実施形態において、Rは、独立して(そして必要に応じて保護されて)、クロロ、ブロモ、ヨード、脂肪族(アルキル、アルケニル、またはアルキニルを含む);
アラルキル、アルカリル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、シアノ、アミノ酸エステル、カルボン酸エステル、-オキシアリール(-オキシフェニル-p-メチル、保護-オキシフェニルCO2H、保護-オキシフェニルSO3H、-オキシフェニルヒドロキシルおよび-オキシフェニルPO3Hを含むがこれらに限定されない);
オキシ脂肪族(-オキシアルキル、-オキシ(脂肪族)CO2H、-オキシ(脂肪族)SO2H、-オキシ(脂肪族)PO3H、および、-オキシ(アルキル)ヒドロキシルを含む-オキシ(脂肪族)ヒドロキシルを含む);
-オキシアルカリル、-オキシアラルキル、-チオアリール、-チオ脂肪族(-チオアルキル、-チオアルカリール、脂肪族およびアリールケトン、ホスフィンオキシドまたはホスホリル化合物(P=O)、エーテル、スルホンおよびスルホキシドを含む)である。
【0086】
リン原子に結合しているR基がかさばる場合、ポリマーの立体規則性に影響を与える可能性がある。例えば、R基を適切に選択することにより、シンジオタクチックまたはアイソタクチックポリホスファゼンを得ることができる。アリール基やナフチル基などのかさばる基は、シンジオタクチック配列で重合することがある。大きなグループは、立体的相互作用を最小限に抑えるために、それらが存在するリンの側を優先的に交替することがある。
【0087】
R’は、好ましくは独立して脂肪族であり、好ましくは低級アルキル、アリール、アラルキル、またはアルカリルである。好ましい実施形態において、R’は低級アルキルである。-Si(R’)3部分の非限定的な例には、トリメチルシリル、トリフェニルシリル、アリールジアルキルシリル、およびt-ブチルジメチルシリルが含まれる。
【0088】
反応中に、ホスホラニミンのリン上のR基の1つ、典型的には塩素などのハロゲンが除去され、リン原子上の残りの2つのR基が、得られるポリホスファゼン上の置換基になる。例えば、-PCl3部分がホスホラニミンに存在する場合、ポリ(ジクロロホスファゼン)が生成される。例えば、-PCl2アルキル基または-PCl2アリール基が存在する場合、それぞれ-[N=P(Cl(アルキル)]n-または-[N=P(Cl(アリール)]n-が生成される。
【0089】
三量体化に対して安定なホスホラニミンを選択する必要がある。置換基が集合的に大きすぎる場合は、ポリマーよりも三量体が優先される。しかしながら、開始剤が3つの繰り返し単位より長い線状ホスファゼンである場合、分子は三量体化できない。しかし、特定の状況下では、このサイズの開始剤が重合を阻害する可能性がある。
【0090】
一実施形態において、キラル重合を促進するために、キラルである少なくとも1つのR’基が選択される。アニオンがキラルであり、鎖末端との密接な会合を維持している場合、アニオンはポリマー鎖の立体規則性に影響を与える可能性がある。一例はPCl4Rであり、ここでRはキラルである。ホスホラニミンはCl(R)(R’)P=NTMSであり、ここでRはR’と等しくない。ホスホラニミンは、既知の方法に従って調製することができる。
【0091】
III.イニシエータ(開始剤)の選択
重合開始剤は、ハロゲン化物対イオン、好ましくは塩化物を含むカチオン種であり、これは、ホスホラニミンからの-Si(R’)3の除去を容易にする。一実施形態において、反応開始剤は、主族又は遷移金属ハロゲン化物、または他の適切なハロゲン化物塩である。例えば、開始剤は、MXnmまたはEXnmであり得、ここで、Mは、遷移金属元素(V、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、W、Mo、Mn、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、D、Pd、Pt、Cu、Zn、Cd、Hgを含むがこれらに限定されない)、Eは主族元素(P、Si、As、Sb、Geを含むがこれらに限定されない)、Xは、ハロゲン化物、Yは、開始または重合反応に悪影響を及ぼさない任意の無機または有機置換基(アルキルやアリールなどの脂肪族を含むがこれらに限定されない)、nは、MまたはEの原子価状態に対して1であり、mは、原子価状態からnを引いたものである。例えば、五塩化リン(PCl5)では、リンの原子価状態は5であり、WX6では、Wの原子価状態は6である。例としては、PCl5;TiCl4(分岐ポリマーにつながる可能性がある);TaCl5(PCl5より遅い);SO2Cl2;AlCl3;VCl4;BF3;SnCl4;SbCl5、ZnCl4;(Ph)3CPF6;(Ph)3CSbF6;(Ph)3CPCl6;(Ph)3CSbCl6;POCl3、CrO2Cl、SOCl2およびVOCl3などのオキシハロゲン化物;がある開始剤として使用できる線状ホスファゼン塩の非限定的な例は、Cl3P=N-PCl3 +-であり、ここで、Aは、反応に悪影響を及ぼさない任意の対イオンであり(ハロ、PX6 -を含むがこれに限定されない)、好ましくは塩化物またはPCl6 -;(R)Cl2P=N-(PCl3+-、例えば、RCl2P=N-PCl3 +PCl6 31である。
【0092】
別の実施形態において、線状ホスファゼン塩は、それ自体がオリゴマーである開始剤として使用される。例えば、塩[Cl3P=N-PCl3+[PCl6-は、選択した当量比のCl3P=NSiMe3と反応してより長いカチオン性P-N鎖を生成することができる。7つの単量体単位の線状ホスファゼン塩は、通常、単一の生成物として得られるオリゴマー系列の中で最も高いものである。これを超えると、通常、この上に、9と11、または11と13、または11、13と15のメンバーチェーンの混合物が得られる。一連の付加反応により、ClSiMe3を除去することにより、さまざまなP-N塩を段階的にクリーンに合成できる。3、5、および7のメンバーチェーンを得るためには、一度に1当量を追加する。ただし、より大きなチェーンを得るために、同等のものをすべて一度に追加し得る。[RCl2P=N-PCl3 +]A+およびR3P-[N=P(R’)2zN=PR’2Cl+-(ここで、zは1~7)などの他のオリゴメリックホスファゼン塩も同様に調製することができる。線状オリゴメリックホスファゼン塩を開始剤として使用することは、ポリホスファゼンブロックコポリマーを調製するための1つの方法を表す。
【0093】
線状ホスファゼン塩を使用する利点の中には、金属塩よりも精製が容易であり、官能化が容易である。さらに、鎖長を所望の長さまで長くすることにより、ホスファゼン塩の溶解性を高めることができる。
【0094】
実施例1
トリクロロ(トリメチルシリル)ホスホラニミンの調製
トリクロロ(トリメチルシリル)ホスホラニミンCl3P=N-SiMe3の合成は、Honeyman,C., Route to New Inorganic Rings and Polymersで報告されている;Cl2RP=NSiMe3(R=ClまたはPh)と主族および遷移金属塩化物との反応、MS論文、トロント大学、化学科、1992年。合成は、ヘキサン中のPCl5の活発に撹拌されたコールド(-78℃)スラリーに、ヘキサン中のLiN(SiMe32の1当量を滴下して添加することを含む。Cl3P=N-SiMe3を高純度で得ることが大きな課題であったこの経路(route)により形成されたモノマーは、CH2Cl2 1H NMRスペクトルと質量分析(CI-MS)で微量のPCl5を処理したとき、再現性よく重合せず、副生成物として(Me3Si)2NCIの存在が明らかになった。この種は重合を阻害すると考えられる。この化合物はCl3P=N-SiMe3と同様の温度と圧力で蒸留するため、多重蒸留では(Me3Si)2NClは除去されなかった。純粋なCl3P=N-SiMe3は、CH2Cl2中でPPh3((Me3Si)2NClに対して過剰または化学量論量)で混合物を処理してPh3P=NSiMe3およびMe3SiClを形成することにより得られた。次に、得られた混合物を減圧下で蒸留して純粋なCl3P=N-SiMe3を得た。反応生成物を蒸留により精製することにより、透明で無色の湿気感受性液体蒸留物が得られた。
【0095】
また、追加の精製ステップを回避するために、ヘキサン中のPCl5とN(SiMe33の-78℃での反応からCl3P=N-SiMe3も得られた。この合成では(Me3Si)2NCl不純物は生成されなかったが、この経路を介して生成されたCl3P=N-SiMe3の収率は最適化されなかった。
【0096】
実施例2
N(SiMe33とPCl5との反応によるCl3P=NSiMe3の形成
トリス(トリメチルシリル)アミンは、文献ですでに報告されたように合成された。マグネチックスターラーで撹拌し、氷浴で冷却したテトラヒドロフラン中のリチウムビス(トリメチルシリルアミド)に、クロロトリメチルシランを徐々に加えた。全てのクロロトリメチルシランを添加した後、反応物を48時間加熱して還流させた。反応物を室温まで冷却した後、形成されたLiClをエアレスフリット漏斗を用いて濾過した。ドライアイス/アセトントラップを用いて、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで、残った固形物を昇華させて、無色透明の生成物を得た。
【0097】
五塩化リン(22.29g)をヘキサン(300mL)中で0℃で撹拌した。ヘキサン(200mL)に溶解したトリス(トリメチルシリル)アミン(25.00g)を溶液に滴下した。反応物をゆっくりと室温まで温め、24時間撹拌し、そして濾過した。室温および減圧での濾液の分別蒸留により、Cl3P=NSiMe3が30%の収率で得られた。
【0098】
実施例3
N(SiMe33とPCl5との反応によるN33Cl6の形成
トリス(トリメチルシリル)アミン(34.00g)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、マグネチックスターラーで撹拌し、加熱して還流させた。ジクロロメタン(300mL)に溶解した五塩化リン(30.31g)を溶液に滴下した。すべての溶液を加えた後、溶媒を真空下で除去して、76%の三量体、4%の四量体、3%の五量体、および13%より高い環状およびオリゴマーである固体材料を得た。
【0099】
三量体N33Cl6の形成を促進するために重要なのは、塩化メチレンなどの極性溶媒中で還流しながらPCl5をN(SiMe33に非常にゆっくりと添加して、線状のCl3PNP(Cl)2NPCl3 +PCl6 -塩をN(SiMe33と反応させて環状の三量体を形成させることであるPCl5の添加が速すぎると、熱力学的に有利な四量体が主な生成物となる。
【0100】
実施例4
ジクロロ(フェニル)(トリメチルシリル)ホスホラニミンCl2PhP=N-SiMe3の調製
この化合物を調製するために使用された手順は、以下を除いて、Cl3P=N-SiMe3について実施例1に記載された手順と類似していた。-78℃でヘキサン(1000ml)中のテトラクロロフェニルホスホラン(80g、0.32mol)に、ヘキサン(500ml)中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミド、LiN(SiMe32(53g、0.32mol)溶液を、機械的に攪拌しながら滴下した。無色透明な生成物が蒸留され(bp53℃、0.02mmHg)、Cl3PhP=N-SiMe3として同定された。収率47.0g(55%)。31P NMR(CH2Cl2)Δ-11.8ppm;13C NMR(CDCl3)Δ133.2ppm(Δ,4JCP=4Hz,p-Ph),Δ130.7ppm(Δ,3JCP-13Hz,m-Ph),Δ128.7ppm(Δ2CP=19Hz,o-Ph),Δ1.9PPM(Δ,4CP=7Hz,CH3),ipso-Phは観察されない;1H NMR(CDCl3)d8.0ppm(Δ,ofΔ,3HP=19Hz,2HH(om)=Hz,2H,o-Ph),Δ,7.5ppm(br.,3H,p-andm-Ph),Δ0.2ppm(Δ,4HP=3Hz,9H,CH3)。
【0101】
実施例5
2当量のPCl5と1当量のCl3=N-SiMe3との反応による[Cl3P=N-PCl3][PCl6]の調製
2当量の五塩化リン(3.6g、17ミリモル)をジクロロメタン(50ml)に溶解し、得られた撹拌溶液を-78℃に冷却した。1当量のCl3P=N-SiMe3(2.0g、9mmol)をシリンジにすばやく加え、反応混合物をすぐに室温まで温めた。溶媒を真空で除去すると、[Cl3P=N-PCl3][PC16]として同定された微細な白色粉末が得られた。収率4.3g(90%)。31P NMR(CH2Cl2)Δ22.4ppm(=PCl3),Δ-293.6([PCl6-)。
【0102】
実施例6
1当量の[Cl3P=N-PCl3+[PCl6-と1当量のCl3P=N-SiMe3との反応による[Cl3P=N-PCl2-N=PCl3+-[PCl6-の調製
塩[Cl3P=N-PCl3+[PCl6-(1.5g、3mmol)をジクロロメタン(50ml)に溶解し、得られた撹拌溶液を-78℃に冷却した。Cl3P=N-SiMe3(2.0g、9mmol、leq.)をシリンジですばやく加え、反応混合物をすぐに室温まで温めた。溶媒を真空で除去すると、[Cl3P=N-PCl2-N=PCl3+[PCl6-として同定された微細な白色粉末が得られた。収率1.8g(92%)。31P NMR(CH2Cl2)Δ14.6ppm(d,2PP 45Hz)=PCl3,Δ-10.5ppm(t,2PP 45Hz)-PCl2,-,Δ-293.6ppm[PCl6-
【0103】
IV.重合の条件
ポリホスファゼンを調製するための開示された経路は、ポリマーの分子量および構造を制御する機会を提供し、また狭い多分散性を有するポリホスファゼンへのアクセスを可能にする。本明細書に記載の合成経路は、オリゴマーから高分子量ポリマーまでの範囲の生成物を製造することができる。ポリマーの典型的な分子量範囲は約103~106であるが、この範囲外の他のものも調製できる。重要なことは、このプロセスが周囲温度またはその付近で実行できるということである。
【0104】
ポリホスファゼンの調製のために本明細書に記載されている経路は、現在利用可能な代替物のどれよりも必要とされる化学物質および必要とされる温度の点で、かなり複雑でなく、より安価である。さらに、比較的容易な調製と新しいポリホスファゼンへのアクセスは、学術的にも産業的にもポリホスファゼン化学の分野で基本的に重要である。
【0105】
この方法により、経済的および環境的に重要なClSiMe3のリサイクルが可能になるこれは、出発物質であるClSiMe3およびPCl5またはRPCl4の大規模な利用可能性とともに、ポリホスファゼンの大規模な合成、およびポリ(ホスファゼン)の利用可能性と有用性の著しい拡大に有利な見通しを提供する。
【0106】
溶液反応を行うための手順は非常に簡単であり、製造スケールで達成するのは容易である。選択したホスホラニミンを溶媒と混合し、次に少量の開始剤を加え、溶液を撹拌する。
【0107】
狭いPDIを得るためには、反応混合物が均一な溶液であることが重要である。開始剤、およびホスホラニミン、形成された最初のオリゴマー、およびポリマー生成物は、分子量制御および狭いPDIを維持するために可溶性であるべきである。そのため、溶解性がモノマーと開始剤の選択を制限する。反応を行う前に、ガラスまたはグラスライニング反応容器をClSiMe3などのシリル化試薬で前処理することが好ましい。
【0108】
反応は、重合反応に悪影響を及ぼさない、すなわち、反応条件下で不活性でなければならない任意の有機溶媒中で実施される。また、乾燥しているはずである。ジクロロメタンおよび他のハロゲン化不活性溶媒は、ポリ(ジクロロホスファゼン)の溶液合成に好ましい溶媒である。他の適切な溶媒には、グリム、ジグリム、トルエン、アセトニトリル、ジオキサン、およびシクロヘキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
溶媒の選択は、生成物の分子量分布に影響を与える。ジオキサンを使用すると、マルチモーダルGPCトレースを取得できる。溶媒の使用量が少なすぎると(例えば、すべての反応物を溶液に入れるには十分でない場合)、重合は、ニート(すなわちバルク)条件下で発生するものと類似しており、マルチモーダルGPCトレースが得られる。
【0110】
反応は、反応物または生成物に過度に影響を及ぼさない任意の所望の温度で行うことができる。重要なことに、ほとんどの重合反応は熱を全く必要としない。反応は通常、20~23℃の範囲の温度で行われる。
【0111】
生成物の分子量は、例えば、開始剤の選択、モノマー/開始剤比、予備形成された活性鎖またはリビング鎖へのモノマーの添加、または反応時間の制御によって制御することができる。
【0112】
開始剤に対するホスホラニミンの任意の比率を用いて、所望の生成物を提供することができる。一実施形態において、1モルの開始剤に対して100~5モルのモノマーを使用し、好ましくは、20~5モルのモノマーを使用する。ホスホラニミンに対する開始剤の比率が増加するにつれて、生成物の分子量は減少する。PCl5およびCl3PNPCl3 +-が好ましい開始剤である
【0113】
反応は、所望の生成物を提供する任意の時間にわたって行われる。通常、約6時間~24時間の反応時間が一般的であるが、重合反応は2時間以内に完了する場合がある。
【0114】
反応は、出発物質および生成物に応じて、周囲圧力または減圧下で、空気中またはN2などの不活性雰囲気中で行うことができる。
【0115】
この方法を用いて得られる分子量の制御および非常に狭い多分散性は、実施例7でより詳細に説明されるように、対応するバルク(すなわち、溶媒なし)方法とは区別される。
【0116】
実施例7
ホスホラニミンのバルク重合と溶液重合の比較
Cl3P=NSiMe3を微量のPCl5で処理すると、高分子量のポリ(ジクロロホスファゼン)が得られ、PCl5に対するホスホラニミンの比率を制御することで、生成されるポリマーの分子量を制御できると仮定された。純粋なCl3P=NSiMe3(1.0g)に微量のPCl5(約10mg)を室温で添加すると、5日後に二相混合物が形成された。両方の相は無色透明であるが、1H NMR分光法により、上部のより流動的な層が主にMe3SiClで構成されていることがわかった。全体チューブ含量の31PNMRスペクトルは、主にポリ(ジクロロホスファゼン)の鋭い一重項特性を示した。したがって、Cl3P=NSiMe3の線状ポリマーへの変換は本質的に定量的であった。ポリ(ジクロロホスファゼン)生成物を過剰のNaOCH2CF3で処理し、得られたポリマーは、公知のポリマー[N=P(OCH2CF32n31P NMR信号特性を与えた。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によるこのポリマーの分析は、それがポリスチレン標準に対してMw=2.1×105および多分散性指数(PDI=Mw/Mn)=1.8を有する高分子量画分のみを有することを示した。しかし、同じ無溶媒条件でPCl5のモノマーに対する比率を増やすことによって低分子量のポリ(ジクロロホスファゼン)を得ようとする後続の試みでは、開始剤と最初のカチオン生成物は主に不溶性のままであった。生成されたポリマーの分子量値は上記の実験よりも低かったが、このポリマーのGPCトレースはマルチモーダルであった。結果は、プロセスの不均一な性質のために、無溶媒システムにおける分子量制御の欠如を示唆した。
【0117】
これに対し、Cl3P=NSiMe3と塩化メチレン溶液中での微量のPCl5との反応は、多分散度の非常に狭いポリ(ジクロロホスファゼン)(31P NMR分光法およびトリフルオロエトキシ誘導体[N=P(OCH2CF32nのGPC分析により推定)への定量的な変換を生じた。以下の表1に示すように、溶液中のPC15に対するホスホラニミンの比率が増加すると、分子量が増加するが、狭いPDI値は保持された。
【0118】
【表1】
【0119】
室温でバルク状態の微量のPC15とPhCl2P=NSiMe3の間の類似の反応も、ポリマー生成物を生成した。この場合、重合により、ポリ[アリール(クロロ)ホスファゼン]、[N=P(Ph)Cl]nが形成され、これは、Mn=8.0×104および多分散性1.4を有する既知の高分子(macromolecule)[N=P(Ph)(OCH2CF3)]に変換された。Cl3P=N-SiMe3の分子量重合の開始剤比に対するモノマーの影響を調べた。結果(以下の表2を参照)は、溶液中のPC15に対するホスホラニミンの比率の増加が分子量の増加をもたらしたが、それでも狭いPDI値を保持していることを示している。
【0120】
【表2】
【0121】
実施例8
トリクロロ(トリメチルシリル)ホスホラニミンからのポリ(ジクロロホスファゼン)の調製
トリクロロ(トリメチルシリル)ホスホラニミンの溶液重合を以下の一般的な手順に従って行った。すべてのガラスウェアをヘキサン中の5%ClSiMe3で前処理し、真空下で乾燥させた。Cl3P=NSiMe3を使用前に昇華させ、窒素下で保存した。CH2Cl2(10mL)中のPC15(100mg)の溶液を、窒素下でCH2Cl2(35mL)中のCl3P=NSiMe3(1.0g、4モル)の撹拌溶液に加えた。溶液を24時間撹拌した。生成物を31P NMRにより分析した。
【0122】
分析は、以下に示す技術と機器を使用して行った。1H NMR(360.0MHz)、13C NMR(90.0 20 MHz)、および3P NMR(145.8MHz)スペクトルは、ブルカー(Bruker)社製のWM-360MHz分光計を使用して取得した。化学シフトは、プロトンおよび炭素のδ=0でテトラメチルシランに対して相対的である。リンの化学的シフトは、δ=0における85%のH3PO4に対して相対的であり、基準からダウンフィールドにおける正のシフト値を有する。全てのヘテロ核NMRスペクトルをプロトンデカップルした。
【0123】
分子量は、HP1037A屈折率検出器およびポリマー・ラボラトリー(Polymer Laboratories)製のPLゲル10μmカラムを備えたヒューレット・パッカード(Hewlett Packard)製のHP1090ゲル・パーミエーション・クロマトグラフを用いて測定した。サンプルは、THF中の臭化テトラ-n-ブチルアンモニウムの0.1重量%溶液で溶出した。GPCカラムは、ポリスチレン標準(Waters)で較正され、結果は表1に示されている。
【0124】
実施例9
ジクロロ(フェニル)(トリメチルシリル)ホスホラニミンからのポリクロロ(フェニル)ホスファゼンの調製
ポリクロロ(フェニル)ホスファゼンは、Cl3P=NSiMe3の代わりにCl2PhP=NSiMe3を使用して、実施例7に記載のバルク重合法に従って調製した。このポリマーをナトリウムトリフルオロエトキシドで処理すると、文献の報告と同じポリマーが得られた。重量平均分子量は3.0×104で、多分散性(Mw/Mn)は1.4であった。
【0125】
実施例10
大凝結の証拠
モノマーの完全な変換の直後にハロゲン置換を受けず、代わりに置換前に25℃で数日間保持したポリ(ジクロロホスファゼン)のサンプルは、分子量分布に変化を示した。GPCクロマトグラムは、予想どおりの単一の鋭いピークではなく、高分子量のショルダーを持つピークで構成されていた。ショルダーは元のピークの分子量の約2倍に相当した。これは、数種のモノマーと開始剤の比率で発生し、2つのポリマー鎖が結合して分子量の2倍の単一ポリマーを形成するマクロ縮合反応を示唆した。この現象を研究するために、23:11:PCl5比のサンプルを用いて重合実験を行った。重合溶液は2つの等しい部分に分けられた。第1のサンプルは、モノマーをポリマーに変換した直後に、ジオキサン中のNaOCH2CF3で処理した。この置換ポリマー2のGPCクロマトグラムは、Mn=2.0×104およびPDI=1.09の値に対応する1つの鋭いピークを含んでいた。第2のサンプルは置換せず、[N=PCl2nの形で25℃で20日間攪拌した。次に、ジオキサン中のNaOCH2CF3で処理して、Mn=2.2×104およびPDI=1.17のポリマーを得た。しかし、このポリマーのGPCクロマトグラムは、最初のポリマー分子量の約2倍で追加の高分子量ショルダーを有した。これは、[N=PCl2nマクロ凝縮が時間の経過とともに発生する可能性があることを示唆している。このプロセスで考えられるメカニズムでは、2つのポリマー鎖を加水分解してカップリングさせて、元の2倍の分子量を有する高分子を得ることができる。別の可能性としては、2つの中性鎖端(Cl3P=N-)を結合して二量体を形成することである。したがって、制御された分子量のポリマーを得るには、モノマーを完全に変換した直後にポリマーを置換するか、0℃以下で保存することが必須である。
【0126】
V.エンドキャップ
このプロセスで成長するポリマーの鎖末端は、重合の持続時間全体にわたって活性であり、またモノマーの総消費後にも活性である。「活性(active)」とは、末端が反応状態にあり、具体的にはカチオン状態にあることを意味する。したがって、それらは、重合または誘導体化のための付加反応部位として利用可能である。
【0127】
一実施形態において、所望の部分をカチオン性ポリマー末端と反応させて、溶解度、ガラス転移温度、親油性、形態クリープ、結晶性、バルク弾性率、粘度、導電率、屈折率または熱安定性などのポリマーの物理的特性に影響を与える。鎖の末端は、例えば、酸素源または求核剤により、任意の適切な方法で非活性化することができる。ポリマーは、例えば、SO3、NaOR、またはNH2Rと反応させることができ、ここで、Rは脂肪族または芳香族基である。SO3は、エンドグループと選択的に反応して伝播を無効にできる。NaORおよびNH2Rは、末端基およびポリマー鎖と無差別に反応できる。しかし、ポリマーの製造にこれらの化合物を使用すると、これらの便利な選択が可能になる。水素化物源はまた、末端基と選択的に反応することができる。
【0128】
一実施形態において、部分(moiety)は、別の所望の部分をポリマーに連結するために使用され得る官能基を含むカチオン性ポリマー末端と反応する。本明細書において、用語「官能基」、「反応性基」または「反応性官能基」とは、結合形成を通常もたらす化学反応を受けることができる化学基を表すために互換的に使用される。結合は、本発明の幾つかの実施形態によれば、好ましくは共有結合である。結合形成をもたらす化学反応には、環化付加反応(例えば、ディールス・アルダー反応、1,3-双極子環化付加反応(ヒュスゲン反応)、および同様の「クリック反応」)、凝縮、求核性および求電子性付加反応、求核性および求電子性置換、付加および脱離反応、アルキル化反応、転位反応、および反応性基を含むその他の既知の有機反応が含まれるが、これらに限定されない。活性官能基の非限定的な例としては、アミン、イミン、アルキルシロキシシラン、ヒドロキシル、カルボン酸、カルボン酸塩化物、カルボン酸無水物、アミド、エステル、スルホン酸、スルフィニル、スルホンアミド、スルホン酸塩、スルホン酸塩化物、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩化物、ハロゲンまたはアシルハライドまたはアルキルハライド、アルコキシ、アリールオキシ、アジド、アルキン、エーテル、アルデヒド、ケトン、ヘテロ芳香族化合物(ピリジン、イミノ、ニトロ、亜硝酸塩、アンモニウム塩、シラン、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオカルバメート、チオカルボニル、チオヒドロキシ、チオ尿素および尿素を含む)が挙げられるがこれらに限定されない(必要に応じて保護される)。
【0129】
別の実施形態において、カチオン電荷(例えば、組織付着のためのポリリジンまたは他の正電荷を有する種)などのポリマーに特定の生物学的特性を付与する、または生物学的に活性な分子の結合のための部位を提供する部分を、ポリマーに加えることができ、その生物学的に活性な分子は、抗体、抗原、タンパク質、多糖類、ヌクレオタンパク質、リポタンパク質、合成ポリペプチド、またはタンパク質に結合した小分子、ステロイド、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)、cDNA、核酸、または遺伝子を含むがこれらに限定されない。
【0130】
別の実施形態において、活性鎖は、式R’3P=NSiR3を有するトリス(オルガノ)ホスホラニミンでエンドキャップされていてもよい。R’は、独立して、とりわけ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アリールオキシであり得る。トリス(オルガノ)ホスホラニミンの具体例は、(CF3CH2O)3P=NSiMe3であり、ここで、SiMe3基が存在する場合に高分子カチオンと反応可能になり、リンに塩素単位が存在しない場合に終止する。例えば、CH2Cl2中の2%モル当量のPCl5で開始したCl3P=N-SiMe3の重合溶液を、重合中に一定の間隔で微量の(CF3CH2O)3P=NSiMe3で処理すると、31P NMR分光法で観察したように、高分子カチオンの成長をクエンチした。NaOCH2CF3による塩素置換後に得られたポリマーのGPC検査では、エンドキャップ重合に対して一定の分子量の範囲を示した(表3参照)。残念ながら、エンドキャップされたポリマーに末端-N=P(OCH2CF33基が存在することは、Cl3P=N-SiMe3を20%モル当量のPCl5で処理して合成したポリ(ジクロロホスファゼン)のオリゴマーサンプルの31P NMRスペクトルからは確認できなかった。末端の-N=P(OCH2CF33種の共鳴は、おそらくオリゴ(ジクロロホスファゼン)種の共鳴によって隠された。このようなエンドキャッピング基の存在を確認するためのさらなる努力において、Cl3P=N-SiMe3を10%モル当量のPCl5で処理することにより合成した[N=PCl2nのオリゴマーサンプルを、Me2(CF3CH2O)P=NSiMe3で処理した。31P NMR分光法によるこのエンドキャップされた種の検査で、9.4ppmでのダブレット共鳴から末端-N=PMe2(OCH2CF3)種が明らかになった。このエンドキャップされたオリゴマーのMnは、NaOCH2CF3による高分子置換後、5.9×103(GPCによるPDI=1.05)であることがわかった。
【0131】
【表3】
【0132】
実施例11
成長するポリホスファゼン鎖の活性
ポリ(ジクロロホスファゼン)の成長するポリマー鎖の活性を調べた。ポリ(ジクロロホスファゼン)のCH2Cl2溶液を調製し、31PNMR分光法で測定した全てのホスホラニミンをポリマーに変換した。その一部をハロゲン置換し、Mw=1.1×104、PDI=1.04のトリフルオロエトキシ置換ポリマーを得た。元の(非置換)溶液の残りにホスホラニミンをさらに添加すると、48時間にわたってCl3P=NSiMe3からポリマーへの変換が続いた。この溶液からのトリフルオロエトキシ誘導体化ポリマーのGPCトレースは、Mw=9.2×105、PDI=1.71のポリマーの存在を示した。したがって、活性鎖末端は、モノマーの添加量が増えると鎖の成長を再開できるように見える。これにより、鎖長を制御したり、鎖末端(chain end)を他のモノマーやポリマーに結合したりするための多くの可能性が開かれる。
【0133】
VI.ポリホスファゼンのブロック共重合
本明細書に開示されるポリホスファゼンの調製方法は、多種多様なホスファゼンブロックコポリマーへの経路を初めて提供する。従来の方法では、既知のブロックコポリマーは[NP(OR12x[NP(OR1)(OR2)]yのみであり、ここで、R1はハロゲン化アルコキシであり、R2は脂肪族またはアリール部分である。これらの限定されたポリマー以外のブロックコポリマーを得ることが可能になった。
【0134】
ポリホスファゼンのブロックコポリマーは、少なくとも3つの異なる方法を使用して調製することができる。第1の実施形態において、ブロックコポリマーは、ポリホスファゼンの活性末端基によって開始されるモノマーのカチオン重合によって調製される。カチオン性部位と反応できる任意のモノマーまたはポリマーを使用することができる。カチオンメカニズムにより反応するモノマーの例としては、エポキシド、オキシラン、エピスルフィド、トリオキサン、テトラヒドロフラン、ビニルエーテル、アクロレイン、およびカチオン重合が可能な他のオレフィン、例えば、1-アルキルオレフィン(α-オレフィン)、1,1-ジアルキルオレフィン、1,3-ジエン、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン、ならびにアルデヒドおよびケトンなどが挙げられる。さらに、他のホスファゼンモノマーを使用してホスファゼン-ホスファゼンブロックを作成することができる。次に、活性有機ブロックを、第1のホスファゼンポリマーブロックで使用されるものと同一または異なる追加のホスホラニミンモノマーと反応させることができる。この手順は、任意の種類のカチオン性有機およびホスホラニミンモノマー、または有機ブロックのない異なるホスホラニミンモノマーを使用して、必要な限り継続することができる。置換によって鎖末端が非アクティブになる可能性があるため、置換の前にブロックを追加する必要がある。
【0135】
ポリホスファゼンのブロックコポリマーを製造するための第2の実施形態では、官能化化合物を、カチオン重合以外の反応メカニズム(例えば、アニオンまたはラジカル開始)を開始する部分を有する活性ポリホスファゼン末端と反応させる。ポリマー鎖の末端に付着することができ、第2のブロックに組み込まれる任意の開始剤を使用することができる。例えば、ブロモフェニル部分を有するエンドキャップを適切な有機金属種、例えばグリニャールまたは有機リチウム試薬に変換して、適切なモノマーのアニオン重合を開始することができる。アルケン部分はメタセシス反応に使用できる。必要に応じて、適切な時期に、アニオン性末端を、カチオン重合を開始可能な基を有するモノマーまたはポリマーと反応させて、別のポリホスファゼンブロックを追加することができる。これらのモノマーの例としては、ビニルエーテルおよびブタジエンが挙げられる。このようにホスファゼン-有機-ホスファゼンのABAブロック形成を行うために、モノマーは、リビング重合を経る必要がある。例えば、ハロアルキルまたはハロアリール部分、例えばブロモフェニル部分を含むエンドキャップの使用は、グリニャールまたは有機リチウム試薬などの適切な有機金属試薬に変換して、スチレンシロキサン、エチレンアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどのアニオンメカニズムを介して重合するモノマーのアニオン重合を可能にすることができる。必要に応じて、適切な時期に、アニオン性末端を、カチオン重合を開始して基を有するモノマーまたはポリマーと反応させて、別のポリホスファゼンブロックを追加することができる。ホスホラニミンでキャップされ、活性P=NP+塩アミノまたはヒドロキシル末端ポリマーに変換できる反応性末端基を有する予備形成ポリマーは、PCl6Cl3+-N=PR2-ポリマー-R2P=NPCl3 +PCl6 -タイプのマクロ開始剤の合成のためのテンプレートとして使用できる。したがって、マルチブロックコポリマーの合成は、プレポリマー鎖末端からの成長を介して可能である。
【0136】
ブロックコポリマーの調製のための第3の実施形態において、ホスファゼン重合のための開始剤は、他のポリマーシステムに含まれ得る。例えば、N=PR3末端基を有する有機ポリマーを用いて、ホスファゼン重合を開始することができる。
【0137】
実施例12
有機ポリマー/ポリホスファゼンブロックコポリマーの調製
市販の高分子二座アミンNH2-PEG-NH2[ここで、PEG=-CH2CH2O(CH2CH2O)n-CH2CH2-、Mn3400]を、NEt3の存在下で(CF3CH2O)2rP=NSiMe3と混合し、ホスホラニミンNH(R2P=NSiMe3)-(CH2CH2O)n-CH2CH2N(H)(R2P=NSiMe3)を生成した。続いて、ホスホラニミンをCH2Cl2中で-78℃で2モル当量のPCl5と反応させ、マクロ開始剤NH(R2P=NPCl3 +)PC16-(CH2CH2O)n-CH2CH2N(H)[R2P=NPCl3 +]PCl6 -を形成した。次に、このマクロ開始剤を30倍過剰のCl3P=NSiMe3で処理し、25℃で3時間後、31P NMR分光法による反応混合物の検査により、新しい形態のポリ(ジクロロホスファゼン)、NHR2P-(N=PCl2m-(CH2CH2O)n-CH2CH2N(H)Cl2P[N=PR2mに完全に変換することが分かった。この生成物をジオキサン溶液中の過剰のトリフルオロエトキシドナトリウムで処理して、塩素原子をトリフルオロエトキシ基で置換し、かつR=OCH2CF3で加水分解的に安定なブロックコポリマーNHR2P-(N=PR2)-(CH2CH2O)n-CH2CH2N(H)R2P[N=PR2mを生成した。このブロックコポリマーをTHF中のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により分析したところ、ポリスチレン標準に対して、1.5×104のMnおよび1.16の多分散性指数を有することがわかった。
【0138】
VII.3本腕星型ポリホスファゼン
実施例13
3本腕星型ポリホスファゼンN{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P-[N=P(OCH2CF32n3の合成
このようなホスホラニミンは、アルコキシド又はアミンの存在下で置換反応を容易に行い、(CF3CH2O)2RP=NSiMe3種(R=RO-またはRNH-)を生成することができる。そこで、三座第1級アミンN(CH2CH2NH23を、NEt3の存在下で(CF3CH2O)2BrP=NSiMe3と混合し、三官能性ホスホラニミンN{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P=NSiMe33を生成した。その後、CH2Cl2中で-78℃で、N{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P=NSiMe33と6モル当量のPCl5とを反応させることにより、三官能性カチオン種[N{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P=N-PCl3 +3][PCl6 -3を形成した。次に、この種を、CH2Cl2中の30倍過剰(反応部位あたり)のCl3P=NSiMe3で処理した。25℃で3時間後、31P NMR分光法による反応混合物の検査により、[N{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P=N-PCl3 +3][PCl6 -3に対してダブレット共鳴の損失に伴う-17ppmの特徴的な共鳴に基づいて、Cl3P=N-SiMe3が新しい形態のポリ(ジクロロホスファゼン)、(N=PCl2)nに完全に変換することが明らかになった。また、スターポリマーN{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P=N-PCl2N=PCl2[N=PCl2]n}3の存在と一致する、約8.2ppmでのダブレット共鳴および-14.5と-15.5ppmでのトリプレット共鳴が検出された。スターポリマーに関連する31P NMR共鳴の統合は、初期反応物比に基づく理論値と一致した。この生成物を過剰のトリフルオロエトキシドナトリウムで処理して、塩素原子をトリフルオロエトキシ基で置換し、加水分解的に安定なスターポリマーN{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P-[N=P(OCH2CF32]n}3を生成した。このポリマーをゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により分析したところ、ポリスチレン標準に対して、2.1×104のMnおよび1.03の多分散性指数を有することが分かった。これらのスターポリマーの分子量は、モノマー:開始剤の比率を変えることで制御できる。(表4を参照)。31P NMR分光法による末端基(end-group)分析は、末端基単位(end-group unit)[-N-P(OCH2CF32 -]が検出可能である場合の分子量推定値を提供するためにも使用された。
【0139】
【表4】
【0140】
N{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P-[N=P(OCH2CF32]n}3の低分子量サンプルの物性を、同程度の分子量(1.2×104)の線状アナログ[N=P(OCH2CF32nと予備比較した結果、線状ポリマーが容易に膜を形成する結晶性の白い繊維状材料であるのに対し、3本腕星型ポリマーは淡黄色の粘性ガムであることが明らかになった。1.7×104を超える分子量を有する対応する星型および線状ポリマーは、同様の物理的特性を示す。また、Mnが2.1×104を超えるN{CH2CH2NH(CF3CH2O)2P-[N=P(OCH2CF32n3のGPCクロマトグラムは、分子量を過小評価しており、その分岐性の間接的な証拠を提供しているようである。ポリホスファゼンのよく知られている難燃性のゆえに、これらの制御された分子量のスターポリマーは、可燃性有機ポリマーへの添加剤として有用であることが証明される。
【0141】
実施例14
制御された分子量及び多分散性を有するポリホスファゼンを合成するための一般的なスキーム
本実施例は、当技術分野で知られている方法の使用および日常的な適応に基づいて、制御された分子量および多分散性を有するポリホスファゼン組成物を製造するための一般化されたスキームについて説明する。(例えば、Allcock H.R.,et al.,「『Living』Cationic Polymerization of Phosphoranimines as an Ambient Temperature Route to Polyphosphazenes with Controlled Molecular Weights」,Macromolecules,29:24,pp.7740-7747,1996年11月18日;Wang B.,「Development of a One-Pot in Situ Synthesis of Poly(dichlorophosphazene) from PCl3」,Macromolecules,38(2),pp.643-645,2005年12月24日;Allcock,H.R.,「Synthesis,Structures,and Emerging Uses for Poly(organophosphazenes)」,Polyphosphazenes in Biomedicine,Engineering,and Pioneering Synthesis,Ch.1,pp.3-26,2018年8月2日; and Gabino A.,et al.,「Designed Synthesis of Polyphosphazene Block Copolymers for Self-Assembly」,Polyphosphazenes in Biomedicine,Engineering,and Pioneering Synthesis,Ch.10,pp.211-240,2018年8月2日参照)。
【0142】
当技術分野では、この実施例で参照するように、周囲温度でポリ(ジクロロホスファゼン)を合成するための様々な方法を認識している。一般に、これらの方法は、CH2Cl2中の少量のPCl5でCl3P=NSiMe3を開始して、制御された(狭い)多分散性を有するポリ(ジクロロホスファゼン)、(NPCl2nを得ることを含む。これらのタイプの方法では、PBr5、SbCl5、およびPh3C[PF6]は、室温でCH2Cl2での効果的な開始剤である。ポリ(ジクロロホスファゼン)の分子量は、開始剤に対するモノマーの比率を変えることによって制御することができる。モノマーをさらに添加すると高分子量のポリマーが形成されるため、ポリマー鎖は鎖の伝播後に活性化される。これらの反応の1Hおよび31P NMRスペクトル分析により、モノマー濃度に関して一次反応速度論に従う重合を示すことができる。微量のMe2(CF3CH2O)P=NSiMe3または(CF3CH2O)3P=NSiMe3を添加することにより、活性ポリマー鎖をクエンチまたはエンドキャップすることができる。
【0143】
上記の1996年のAllcockらは、以下に示すように、一般的に適用可能な1つの反応概略図を提供する。
生成物「J」(図1参照)の目標分子量は、日常的な実験と方法の設計によって制御することができる。最後に、精製と定量化のステップを理解し、熟練した技術者が日常的に利用できるようにする。
【0144】
実施例15
ポリホスファゼン-パクリタキセルコンジュゲートの合成
[NP(MPEG550)3(Lys-OEt)(AA)(PTX)]n
この実施例は、適切なポリホスファゼンを合成し、続いてそれに目的の薬物物質(すなわち、パクリタキセル、「PTX」)をコンジュゲートする方法を提供する。
【0145】
ポリホスファゼン担体ポリマー[NP(MPEG550)3(Lys-OEt)]nの合成
A.Cl3P=NSiMe3の調製
LiN(SiMe32(4.94g、29.5mmol)をペンタン(100mL)に溶解し、氷アセトン浴を使用して溶液を0℃に冷却した。次に、PCl3(3.98g、29mmol)を10分間かけて滴下した。得られた混合物を0℃で30分間撹拌して、白色の懸濁液を得た。次に、SO2Cl2(4.18g、31mmol)を0℃の懸濁液に10分かけて滴下した。反応は0℃で30分間進行させた。次いで、混合物をセライトでろ過し(使用前に約120℃以下で48時間以上乾燥)、ペンタン(2×20mL)で洗浄した。得られた淡黄色の濾液から揮発性物質を真空下(20mmHg、0℃)で除去してCl3P=NSiMe3(5.2g、78%)にし、次のステップで使用するのに十分純粋な淡黄色の液体を得た。
【0146】
B.ポリホスファゼン担体ポリマー[NP(MPEG550)3(Lys-OEt)]nの調製
ポリ(ジクロロホスファゼン)は、Allcockらの方法(Allcock H.R.,et al.,1996年11月18日,infra)に従って、触媒としてのPCl5の存在下でCl3P=NSiMe3から調製した。典型的な合成手順は次のとおりである:脱気したCH2Cl2(20mL)中のPCl5(74mg、0.356mmol)の溶液を、窒素雰囲気下で50mL RBFに入れ、マグネチックスターラーを用いて攪拌した。次に、脱気したCH2Cl2(40mL)中のCl3P=NSiMe3(4g、17.81mmol)の溶液を、攪拌しながらフラスコに加えた。反応混合物を1H-NMR分光法でモニターした。4時間後、Cl3P=NSiMe3は完全にポリマーに変換された。揮発性物質を減圧下で除去して、ポリ(ジクロロホスファゼン)([NPCl2n)(2.0g)を得た。
【0147】
MPEG550のナトリウム塩は、MPEG550(14.22g、25.85mmol)と過剰量の金属ナトリウム(1.2g、52.17mmol)を乾燥トルエン中で還流温度で12時間反応させることにより調製した。得られた溶液を濾過して過剰のナトリウム金属を除去した後、濾液を、-5℃~0℃で乾燥THF(100mL)に溶解したポリ(ジクロロホスファゼン)([NPCl2]n)(2.0g、17.26mmol)の溶液にゆっくりと滴下した。反応混合物を-5℃~0℃で2時間撹拌し、さらに室温で16~18時間撹拌して、PEG化ポリホスファゼンを得た。
【0148】
Boc-リジンエチルエステル(Nα-Boc-Lys-OEt、3.7g、13.5mmol)を乾燥クロロホルム(100mL)に溶解し、乾燥トリエチルアミン(Et3N、13.6g、134.4mmol)で中和した。この溶液を上記で調製したPEG化ポリマー溶液にゆっくりと加え、室温で24時間反応させた。反応混合物を濾過して副生成物(Et3N.HClまたはNaCl塩)を除去し、濾液を真空下で濃縮して、褐色の濃厚な油として高分子ホスファゼンを得た。
【0149】
上記の残留物をCH2Cl2(20mL)とTFA(20mL)の混合溶液に溶解することにより、高分子ホスファゼンからt-Boc保護基を除去した。反応混合物を室温で6時間撹拌し、溶媒を真空下で蒸発させた。生成物をNaHCO3溶液で中和し、再生セルロース膜(MWCO:3.5kDa)を使用して水中で24時間透析した。
【0150】
透析した溶液を凍結乾燥して純粋な担体ポリマー[NP(MPEG550)3(Lys-OEt)]nを得、これを25および100kDaの分画分子量を有するセルロース膜を用いて蒸留水中で分画した。収率:4.0g(MWCO:25kDa);1.0g(MWCO:100kDa)。
【0151】
実施例16
静脈毒性試験
この試験の目的は、スプラグドーリー(Sprague-Dawley)ラットに薬物送達組成物を単回非経口投与(この場合は静脈内(IV)注射)し、続いて7日間の経過観察を行い、試験動物の最大耐量を決定することであった。
【0152】
試験薬物送達組成物
この実施例にこいて、薬物送達組成物は、活性化学療法剤パクリタキセル(約5%のPTX)を運び、送達するように最適化された(下記の表5を参照)。簡単に説明すると、層流キャビネット内の滅菌条件下で、形成および注入目的の滅菌水を適切な量の薬物送達組成物に加え、350、817、1167、および1750mg/mLの濃度を得た。希釈した薬物送達組成物を、十分な分配を達成するために、必要に応じて撹拌、混合、またはボルテックスした。調製された薬物送達組成物を周囲温度で光から保護して保存した。各濃度の最終製剤を、投与前に0.2μmフィルターを通過させた。各投与量に対して調製された目標体積は1.55mLであった。フィルタリング後にディスペンスされた実際の量が記録された。投与用の最終製剤は、調製後4時間まで使用できる。
【0153】
動物被験体
この実施例における被験体は、無傷の雄のSprague-Dawleyラットの体重を量るのに適した年齢で構成されていた。Sprague-Dawleyラットの様々な商業的供給源は、被験動物の供給のために受け入れられる。投与開始時の被験体の最大体重は330gmで、最小体重は260gmであった。被験動物は飼育され、餌を与えられ、水を適宜与えられ、標準的な動物飼育プロトコルに従って観察された。試験結果に影響を及ぼす可能性のある観察可能な疾患または傷害の被験動物は除外された。
【0154】
被験動物は、ベンダーから受け取った日から安楽死されるまで、以下のような(しかし、これらに限定されない)身体的および行動的属性について1日2回(BID;bis in die)観察した:1)体重減少(例えば、投与前の値から体重の20%以上);2)瀕死状態(例えば、うつ病、完全な食欲不振および低体温、昏睡状態/蒼白/冷え性が長期間続くこと);3)立ち上がれないこと又は極端に気が進まないこと(例えば、24時間持続すること);4)中枢神経系(CNS)障害(例えば、持続的な頭の傾き、協調運動障害、運動失調、震え、痙攣、発作、旋回、または1時間より長い不全麻痺);5)制御できない痛み/苦痛;6)長期間にわたる痛みおよび/または苦痛の兆候;7)その他の状態(例えば、下痢、便秘、または嘔吐、長期化して衰弱および/または衰弱につながる場合、長期または激しい利尿が重度の脱水につながること);および8)試験特異的活動に関連する可能性のある合併症(例えば、カテーテルの脱落、切開出血など)。
【0155】
重大な異常が臨床観察で認められた場合、管理獣医は警告を受け、安楽死を含む疼痛および/または苦痛を軽減するために必要と判断して治療を行う。
【0156】
薬物送達組成物の投与テスト
簡単に説明すると、表5に示すように、被験体1は、薬物送達組成物の0日目に緩徐(1mL/分)ボーラス静射(IV injection)により1750mg/kg(投与量5mL/kg)を投与された。被験体2は、以前に投薬された被験体1を観察してから約1時間後、薬物送達組成物の0日目に緩徐(1mL/分)ボーラス静注により4083mg/kg(投与量5mL/kg)を投与された。被験体3は、以前に投薬された被験体2を観察してから約1時間後、薬物送達組成物の0日目の緩徐(1mL/分)ボーラス静注により5833mg/kg(投与量5mL/kg)を投与された。最後に、被験体4は、以前に投薬された被験体3を観察してから約1時間後、薬物送達組成物の0日目に緩徐(1mL/分)ボーラス静注により8750mg/kg(投与量5mL/kg)を投与された。全ての被験動物を薬物送達組成物の投与後7日間観察した。活性薬物送達組成物の投与後に有害な臨床事象が認められた場合、投与を中止した。7日目に、動物を人道的に安楽死させ、剖検した。
【0157】
【表5】
【0158】
臨床観察(Clinical Observations)
動物被験体は、ベンダーから受け取った日から安楽死されるまで、下記の表6に定める投与後のスケジュールで上記のような(しかし、これらに限定されない)身体的および行動的属性について1日2回(BID)観察した。
【0159】
【表6】
【0160】
臨床結果
第1群から第3群の被験動物は、それぞれの投与に十分耐え、観察された有害反応や臨床的に有意な所見が試験全体を通して記録されることがなかった。第1群から第3群の動物には有意な身体的変化は見られなかった。第4群の動物は、病的状態が観察されたため、投与から20時間後に安楽死させた。
【0161】
第1群から第3群の動物は、7日目の予定された終了まで生存した。予定の/予定外の終了後、全ての動物は標的肉眼的剖検処置を受けた。第1群から第3群は、臨床観察に基づいて全体的に良好な健康状態であった。注目に値する体重減少を示した動物はいなかった。第4群は、0日目および1日目に赤/ピンク/緑の変色と尾部の壊死性の外観が見られた。異常な観察および肉眼的剖検所見の部位に基づくと、異常な臨床観察は8750mg/kgの組成物の投与によるものと考えられる。全ての動物に対いて行われた標的剖検(心臓、肺、肝臓、腎臓、および脾臓)に異常な組織は認められなかった。これらの発見に基づいて、投与組成物が組織/器官に及ぼす全身的効果の成功基準を満たした。
【0162】
投与された組成物の1750、4083、および5833mg/kgの単回低速ボーラス静射で処置された動物では、有意な全身的または局所的効果は観察されなかった。8750mg/kg(第4群)の組成物の投与は、赤/ピンク/緑の変色と尾部の壊死性外観に起因していた。
【0163】
例示的な治療剤および化学療法剤
本発明の薬物送達組成物およびプラットフォームは、いかなる特定のメカニズムまたは作用メカニズムに限定されることを意図しているが、即効性組成物は、多数の其々の治療剤、および治療剤と薬物のクラスの送達に使用することを見出すと考えられる。
【0164】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本明細書に記載の薬物送達プラットフォームに関連する治療剤は、吸収、分布、代謝、排泄および毒性(ADME-Tox)についてのそれらの個々の薬物動態および薬理学パラメータに従って選択され、総称してADME-Toxパラメータと呼ばれる。これらのADME-Toxパラメータは、薬剤の治療効果の一部を支配するため、一部の薬物はin vitroで非常に強力である可能性があるが、それらのADME-Toxパラメータは、吸収および/または分布の遅延、および/または代謝および/または排泄の急速な進行のために有効性を低下させる可能性がある。
【0165】
幾つかの実施形態において、抗癌剤は、アルキル化剤またはアルキル化抗腫瘍剤である。アルキル化剤は、タンパク質、RNA、DNAを含む幅広い分子をアルキル化する能力を示す化学療法剤のクラスを構成し、それらのアルキル基を介してDNAに共有結合するこの能力が、抗癌効果の主な原因である。DNAは2本の鎖(strand)からなり、分子はDNAの1本の鎖に2回結合するか(鎖内架橋)、両方の鎖に1回結合する(鎖間架橋)ことができる。細胞が細胞分裂中に架橋DNAを複製しようとしたり、修復しようとしたりすると、DNA鎖が切断される可能性があり、これは、アポトーシスと呼ばれるプログラムされた細胞死の形態につながる。アルキル化剤は細胞周期のどの時点でも作用するため、細胞周期に依存しない薬剤として知られている。このため、細胞への影響は用量に依存する;死ぬ細胞の割合は、薬剤の投与量に正比例する。アルキル化剤のサブタイプには、ナイトロジェンマスタード(窒素マスタード)、ニトロソウレア、テトラジン、アジリジン、シスプラチンおよび誘導体、および非古典的アルキル化剤が含まれる。ナイトロジェンマスタードには、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロランブシル、イホスファミド、ブスルファンが含まれる。ニトロソウレアには、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)およびセムスチン(MeCCNU)、フォテムスチンおよびストレプトゾトシンが含まれる。テトラジンには、ダカルバジン、ミトゾロミド、およびテモゾロミドが含まれる。アジリジンには、チオテパ、ミトマイシン、ジアジクオン(AZQ)が含まれる。シスプラチンおよび誘導体には、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンが含まれ、それらは、生物学的に重要な分子のアミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、およびリン酸基と共有結合を形成することにより、細胞機能を損なう。非古典的アルキル化剤には、プロカルバジンおよびヘキサメチルメラミンが含まれる。
【0166】
幾つかの実施形態において、抗癌剤(anticancer drug)は、抗代謝剤(anti-metabolism agent)または代謝拮抗剤(antimetabolite)である。代謝拮抗剤は、DNAおよびRNAの合成を妨げる分子のグループである;それらの多くは、DNAおよびRNAの構成成分(ビルディングブロック)に類似した構造を有する。構成成分はヌクレオチド;ヌクレオ塩基、糖及びリン酸基を含む分子である。ヌクレオ塩基は、プリン(グアニン及びアデニン)及びピリミジン(シトシン、チミン及びウラシル)に分けられる。代謝拮抗剤は、ヌクレオ塩基又はヌクレオシド(リン酸基を伴わないヌクレオチド)のいずれかと類似するが、変更された化学基を有する。これらの薬物は、DNA合成に必要とされる酵素を遮ることにより、又は、DNA又はRNA中に組み込まれることのいずれかによりその効果を発揮する。代謝拮抗剤は、DNA合成に関与する酵素を阻害することでDNAが自らを複製できなくするため、有糸分裂を防止する。また、分子をDNA中に誤って取り込ませた後で、DNAの損傷を発生させることができ、プログラム化された細胞死(アポトーシス)が誘導される。アルキル化剤とは異なり、代謝拮抗剤は、細胞周期依存性であり、これは、代謝拮抗剤が、細胞周期の特定部分、このケースではS相(DNA合成相)中にのみ治療的生物学的活性を発揮することを意味する。このため、ある用量で効果は横ばいとなり、用量が増加するにつれて、細胞死はもはや比例的に発生しなくなる。代謝拮抗剤のサブタイプは、抗葉酸剤、フルオロピリミジン、デオキシヌクレオシド類似体及びチオプリンである。抗葉酸剤の例は、メトトレキサート及びペメトレキセドを含む。メトトレキサートは、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)という、ジヒドロフォレートからテトラヒドロフォレートを再生成させる酵素を阻害する。酵素がメトトレキサートにより阻害された場合、葉酸補酵素の細胞レベルは下がる。葉酸補酵素は、チミジレート及びプリンの生成に必要とされ、そのいずれもDNA合成及び細胞分裂に不可欠である。ペメトレキセドは、プリン及びピリミジン生成に影響を与え、したがって、DNA合成も阻害する別の代謝拮抗剤である。ペメトレキセドは、主に、酵素であるチミジル酸シンターゼを阻害するが、DHFR、アミノイミダゾールカルボキサミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ及びグリシンアミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼに対する効果も有する。代謝拮抗剤のフルオロピリミジンファミリーは、フルオロウラシル及びカペシタビンを含み、ここで、フルオロウラシルは、細胞で代謝されて、少なくとも2つの活性生成物[5-フルオロウリジンモノホスフェート(FUMP)及び5-フルオロ-2’-デオキシウリジン5’-ホスフェート(fdUMP)]を形成するヌクレオ塩基類似体である。FUMPは、RNAに組み込まれ、fdUMPは、酵素であるチミジル酸シンターゼを阻害し;このいずれも、細胞死を引き起こす。カペシタビンは、本発明の幾つかの実施形態において、5-フルオロウラシルのプロドラッグとして使用できるが、コンジュゲートから放出されると、カペシタビンは、細胞内で崩壊し、活性薬物(active drug)5-フルオロウラシルを生成する。デオキシヌクレオシド類似体は、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビン、ビダザ(Vidaza)、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン及びペントスタチンを含む。チオプリンは、チオグアニン及びメルカプトプリンを含む。
【0167】
幾つかの実施形態において、抗癌剤は、抗微小管剤(anti-microtubular agent)または抗微小管(anti microtubule)である。抗微小管剤は、微小管機能を防止することにより細胞分裂を遮断する、植物に由来の化学物質である。微小管は、2つのタンパク質であるa-チューブリン及びb-チューブリンで構成される重要な細胞構造であり、a-チューブリン及びb-チューブリンは、細胞機能の中でも、細胞分裂に必要とされる、中空桿状の構造である。微小管は、動的構造であり、これは、微小管が永続的に重合(assembly)及び脱重合(disassembly)の状態にあることを意味する。ビンカアルカロイド及びタキサンは、抗微小管剤の2つの主な群であり、これらの薬物群のいずれも微小管の機能不全を引き起こすが、これらの薬物群の作用メカニズムはまったく正反対である。ビンカアルカロイドは、微小管の形成を防止する一方、タキサンは、微小管分解を防止する。そのようにすることで、これらは、癌細胞の有糸分裂完了を防止する。これに続き、プログラム化された細胞死(アポトーシス)を誘導する細胞周期停止が発生する。また、これらの薬物は、血管増殖(腫瘍が増殖して転移するために利用する不可欠なプロセス)に影響を与え得る。ビンカアルカロイドは、ビンカアルカロイドは、マダガスカルツルニチニチソウ(Madagascar periwinkle)に由来する。それらはチューブリンの特定の部位に結合し、チューブリンの微小管への集合を阻害する。オリジナルのビンカアルカロイドは、ビンクリスチンとビンブラスチンを含む完全に天然の化学物質である。これらの薬の成功に続いて、半合成のビンカアルカロイドが生成された:ビノレルビン、ビンデシン、およびビンフルニン。これらの薬は細胞周期に特異的である。それらはS相においてチューブリン分子に結合し、M相に必要とされる微小管の形成を適正に防止する。
【0168】
タキサンは天然および半合成の抗癌薬である。それらのクラスの最初の薬であるパクリタキセルは、元々太平洋イチイ(Pacific yew)であるタクサス・ブレビフォリア(Taxus brevifolia)から抽出された。ドセタキセルなどのこれらの薬物の幾つかは、別のイチイの木であるTaxus baccataの樹皮で見出された化学物質から半合成で生成される。これらの薬物は、微小管の安定性を促進し、微小管の分解を防止する。パクリタキセルは、G2-Mの境界で細胞周期を防止する一方、ドセタキセルは、S相中で効果を発揮する。タキサンは、水中における可溶性に乏しいため、薬物としての製剤には問題があり、本発明の幾つかの実施形態によれば、そのコンジュゲートへのテザリング(tethering)は、この薬物の有用性を向上させ得る。
【0169】
抗微小管ポドフィロトキシンは、主にアメリカメイアップル(ポドフィルムペルタツム(Podophyllum peltatum))及びヒマラヤメイアップル(ポドフィルムヘキサンドルム(Podophyllum hexandrum)又はポドフィルムエモジ(Podophyllum emodi))から得られる抗腫瘍性リグナン(抗癌剤)である。このポドフィロトキシンは、抗微小管活性を有し、そのメカニズムは、それらがチューブリンに結合し、微小管形成を阻害するという点で、ビンカアルカロイドのものと同様である。ポドフィロトキシンは、異なる作用メカニズムを有する2つの他の薬物であるエトポシド及びテニポシドを生成するために使用される。
【0170】
幾つかの実施形態において、抗癌剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。トポイソメラーゼ阻害剤は、2つの酵素であるトポイソメラーゼI及びトポイソメラーゼIIの活性に影響を与える薬物である。DNA複製又は転写中に、DNA二本鎖らせんが巻き戻されると、例えば、ねじれたロープの真ん中を開くように、開かれていない隣接したDNAがよりきつく巻き付けられる(スーパーコイル)。この効果によって引き起こされるストレスは、トポイソメラーゼという酵素により部分的に補助される。この酵素は、一本鎖又は二本鎖切断を起こしてDNAにし、DNA鎖の張力を低下させる。これにより、DNAの正常な巻き戻しが、複写又は転写中に発生し、トポイソメラーゼI又はIIの阻害は、これらのプロセスの両方に干渉する。
【0171】
2つのトポイソメラーゼI阻害剤、イリノテカン及びトポテカンは、カンプトテシンに半合成的に由来し、カンプトテンシンは、中国の観賞用樹木カンプトテカアクミナータ(Camptotheca acuminata)から得られる。トポイソメラーゼIIを標的とする薬物は、2つの群に分けられる。トポイソメラーゼIIの毒は、DNAに結合する酵素のレベルの増大を引き起こす。これにより、DNA複製及び転写が防止され、DNA鎖切断が生じ、プログラム化された細胞死(アポトーシス)が引き起こされる。これらの作用剤は、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン及びテニポシドを含む。第2の群である、触媒阻害剤は、トポイソメラーゼIIの活性を遮り、したがって、DNAが適正に巻き戻せなくなるため、DNA合成及び翻訳を防止する薬物である。この群は、他の有意な作用機構も有するノボビオシン、メルバロン及びアクラルビシンを含み、これらは、生物学的活性の他の重要なメカニズムも持っている。幾つかの実施形態において、抗癌剤は、細胞毒性抗生物質(cytotoxic antibiotic agent)または細胞毒性抗生物質(cytotoxic antibiotics)である。細胞毒性抗生物質は、生物学的活性(治療作用)の様々なメカニズムを有するさまざまな薬物群である。この群は、アントラサイクリン、並びに、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン及びマイトマイシンを含む他の薬物を含む。ドキソルビシン及びダウノルビシンは、最初の2つアントラサイクリンであり、細菌ストレプトマイセスピウセチウス(Streptomyces peucetius)から得られた。これらの化合物の誘導体は、エピルビシン及びイダルビシンを含む。アントラサイクリン群における他の臨床的に使用される薬物は、ピラルビシン、アクラルビシン及びミトキサントロンである。アントラサイクリンの生物学的活性のメカニズムは、DNAインターカレーション(DNAの2つの鎖間における分子の挿入)、細胞内分子を損傷する反応性の高いフリーラジカルの生成、及びトポイソメラーゼの阻害を含む。アクチノマイシンは、DNAをインターカレーションし、RNA合成を防止する錯体分子である。ストレプトマイセスベルチシルス(Streptomyces verticillus)から単離されたグリコペプチドであるブレオマイシンもDNAをインターカレーションするが、DNAに損傷を与えるフリーラジカルを生成する。これは、ブレオマイシンが金属イオンに結合し、化学的に還元されて酸素と反応する場合に発生する。マイトマイシンは、DNAをアルキル化する能力を有する細胞毒性抗生物質である。
【0172】
本発明のポリマー薬物担体および送達システムの好ましい実施形態は、以下のような、しかしそれらに限定されない1つ以上の抗癌剤または抗腫瘍剤または物質を送達するために配合および最適化される:アベマシクリブ、酢酸アビラテロン、アカラブルチニブ、アドリアマイシン、ジマレイン酸アファチニブ、アフィニトール(エベロリムス)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(アレクチニブ)、アレクチニブ、アリムタ(ペメトレキセド二ナトリウム)、アリコパ(コパンリシブ塩酸塩)、アロキシ(パロノセトロン塩酸塩)、アルペリシブ、アルンブリグ(ブリガチニブ)、アメルズ(アミノレブリン酸塩酸塩)、アミホスチン、アミノレブリン酸塩酸塩、アナストロゾール、アパルタミド、アプレピタント、アレディア(パミドロン酸二ナトリウム)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ・エルウィニア・クリサンテミ、アスパラス(Asparlas)、(カラスパルガーゼペゴル-mknl)、アキシカブタジンシロルーセル、アキシチニブ、アザシチジン、アゼドラ(ヨーベングアンI 131)、バルバーサ(エルダフィチニブ)、ベレオダック(ベリノスタット)、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩,ベンデカ、(ベンダムスチン塩酸塩)、ベキサロテン、ビカルタミド、Bicnu(カルムスチン)、ビニメチニブ、ブレオマイシン硫酸塩、ボシュリフ(ボスチニブ)、ビラフトビ(エンコラフェニブ)、ブリガチニブ、ブメル、ブスルファン、カバジタキセル、カボメティックス(カボザンチニブ-S-リンゴ酸)、カボザンチニブ-S-リンゴ酸、カラスパルガーゼペゴル-mknl、カルケンス(アカラブルチニブ)、カンプトサール(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、カソデックス(ビカルタミド)、セリチニブ、セルビジン(ダウノルビシン塩酸塩)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クロラール(クロファラビン)、コビメチニブ、コメトリク、(カボザンチニブ-S-リンゴ酸)、コパンリシブ塩酸塩、コピクトラ(デュベリシブ)、コスメゲン(ダクチノマイシン)、コテリック(コビメチニブ)、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダブラフェニブメシル酸塩、ダカルバジン、ダコーゲン(デシタビン)、ダコミチニブ、ダクチノマイシン、ダロルタミド、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウリスモ(マレイン酸グラスデギブ)、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、デフィテリオ(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンジフチトックス、デキサメサゾン、デクスラゾキサン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩、デュベリシブ、エリガード(リュープロレリン酢酸塩)、エリテク(ラスブリカーゼ)、エレンス(エピルビシン塩酸塩)、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルトロムボパグ・オラミン、Elzonris(tagraxofusp-erzs)、イメンド(アプレピタント)、エナシデニブメシル酸塩,エンコラフェニブ,エンザルタミド,エピルビシン塩酸塩、エルダフィチニブ、リブリンメシル酸塩、エリべッジ(ビスモデギブ)、エルレダ(アパルタミド)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(アスパラギナーゼ・エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia Chrysanthemi))、エチオール(アミホスチン)、エトポフォス(エトポシドリン酸塩)、エトポシド、エトポシドリン酸塩、エベロリムス、エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩)、エボメラ(メルファラン塩酸塩)エキセメスタン、ファレストン(トレミフェン)、ファスロデックス(フルベストラント)、フェドラチニブ塩酸塩、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、ファーマゴン(デガレリクス)、フルダラビンリン酸塩、フルタミド、フォロチン(プララトレキサート)、フォスタマチニブ二ナトリウム、フルベストラント、フシレフ(ロイコボリンカルシウム)、ゲフィチニブ(ゲムシタビン塩酸塩)、ゲムザール(ゲムシタビン塩酸塩)、ジロトリフ(アファチニブジマレイン酸塩)、ギルテリチニブフマル酸塩、グラスデギブマレイン酸塩、グリベック(イマチニブメシル酸塩)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、グラニセトロン、グラニセトロン塩酸塩、グラニックス(フィルグラスチム)、ハラベン(メシル酸エリブリン)、ヘマンジオール(塩酸プロプラノロール)、ヒカムチン(塩酸トポテカン)、ヒドリア(ヒドロキシウレア)、ヒドロキシウレア、イブランス(パルボシクリブ)、イブルチニブ、イクルシグ(ポナチニブ塩酸塩)、イダマイシンPFS(イダルビシン塩酸塩)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ、Idhifa(エナジニブメシル酸塩)、Ifex(イホスファミド)、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミキモド、イムリジック(タリモジンラヘルパレプベク)、イグリタ(アキシチニブ)、インレビン(フェドラチニブ塩酸塩)、ヨーベングアン1 131、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イストダックス(ロミデプシン)、イボシデニブ、イクサベピロン、クエン酸イクサゾミブ、イクセンプラ(イクサベピロン)、ジャカフィ(ルキソリチニブリン酸)、ジェブタナ(カバジタキセル)、ケピバンス(パリフェルミン)、キスカリ(リボシクリブ)、キムリア(チサゲンレクロイセル)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ランレオチド酢酸塩、ラパチニブジトシレート、ラロトレクチニブ硫酸塩、レナリドミド、レンバチニブメシル酸塩、レンビマ(レンバチニブメシル酸塩)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイケラン(クロラムブシル)、ロイプロリド酢酸塩、レブランケラスティック(アミノレブリン酸)、ロムスチン、ロンサーフ(トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩)、ロルブレナ(ロルラチニブ)、ロルラチニブ、ルタセラ(ルテチウムLu177-ドタテート)、ルテチウム(Lu177-ドタテート)、リンパルザ(オラパリブ)、マルキボ(ビンクリスチン硫酸リポソーム)、マツラン(塩酸プロカルバジン)、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、メキニスト(トラメチニブ)、メクトビ(ビニメチニブ)、メルファラン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、臭化メチルナルトレキソン、ミドスタウリン、マイトマイシンC、塩酸ミトキサントロン、モゾビル(プレリキサフォル)、ムスタゲン(メクロレタミン塩酸塩)、ミレラン(ブスルファン)、ナベルビン、(ビノレルビン酒石酸塩)、ネララビン、マレイン酸ネラチニブ、ネルリンクス(マレイン酸ネラチニブ)、ノイラスタ(ペグフィルグラスチム)、ニューポジェン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブトシレート)、ニランドロン(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、ニンラロ(クエン酸イクサゾミブ)、ニラパリブトシレート一水和物、エヌプレート(ロミプロスチム)、ニュベクオ(ダロルタミド)、オドムゾ(ソニデジブ)、オラパリブ、オマセタキシンメペスクシナート、オンカスパー(ペガスパルガーゼ)、オンダンセトロン塩酸塩、オンタク(デニロイキンジフチトックス)、オシメルチニブメシル酸塩,オキサリプラチン、パクリタキセル(「PTX」)(タキソール)、(5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10,13α-ヘキサヒドロキシタックス11-en-9-オン4,10-ジアセテート2-ベンゾエート13-エステルと(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリン)、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パノビノスタット、パゾパニブ塩酸塩、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレックス二ナトリウム、ピクレイ(アルペリシブ)、プレリキサフォル、ポマリドミド、ポマリスト(ポポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、塩酸プロプラノロール、プロベンジ(シプロイセルT)、プリネトール(メルカプトプリン)、プリキサン(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラスブリカーゼ、レゴラフェニブ、レリストール(臭化メチルナルトレキソン)、レブリミド(レナリドミド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リボシクリブ、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブリン酸塩、リダプト(ミドスタウリン)、サンクソ(グラニセトロン)、セリネクサー、シプルーセル-T、ソニデギブ、ソラフェニブトシレート、スプリセル(ダサチニブ)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、リンゴ酸スニチニブ、サストール(グラニセトロン)、ステント(スニチニブリンゴ酸塩)、シンリボ(オマセタキシンメプコハク酸塩)、タブロイド(チオグアニン)、タフィンラー(ダブラフェニブメシル酸塩)、タグラクソフスプ-Erzs、タグリッソ(オシメルチニブメシル酸塩)、タラゾパリブトシル酸塩、タリモジーン・ラハーパレプベック、タルゼナ(タラゾパリブトシル酸塩)、タモキシフェンクエン酸塩、タルセバ(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ニロチニブ)、タバリセ(フォスタマチニブ二ナトリウム)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、チオグアニン、チオテパ、チブソボ(イボシデニブ)、チサゲンレクロイセル、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トリセル(テムシロリムス)、トテクト(デクスラゾキサン塩酸塩)、トラベクテジン、トラメチニブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トレキサール(メトトレキサート)、トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩、トリセノックス(三酸化ヒ素)、タイケルブ(ラパチニブトシル酸塩)、三酢酸ウリジン、バルルビシン、バルスター(バルルビシン)、バンデタニブ、バルビ(ロラピタント塩酸塩)、VeIP、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベムラフェニブ、ベンクレキセタ(Venclexta)(ベネトクラクス)、ベネトクラクス、ベージニオ(アベマシクリブ)、ビダザ(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ビノレルビン酒石酸塩、ビスモデギブ、ビストガード(ウリジン三酢酸)、ビトラクビ(ラロトレクチニブ硫酸塩)、ビジンプロ(ダコミチニブ)、ボラキサゼ(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ塩酸塩)、ザーコリ(クリゾチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、ゾスパタ(フマル酸ギルテリチニブ)、Xpovio(セリネクソール)、イクスタンジ(エンザルタミド)、イエスカルタ(アキシカブタジンシロルーセル)、ヨンデリス(トラベクテジン)、ザルトラップ(Ziv-アフリベルセプト)、ザルシオ(フィルグラスチム)、ゼジュラ(ニラパリブトシレート一水和物)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ザインカード(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、ゾフラン(塩酸オンダンセトロン)、ゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、ザイデリグ(イデラリシブ)、ザイカディア(セリチニブ)、およびザイティガ(アビラテロン酢酸塩)など。
【0173】
本発明の組成物の様々な実施形態は、特定のタイプの腫瘍または癌、または特定の臓器、組織、または構造の腫瘍または癌に関して、その転移を治療、改善または遅延させるために配合および最適化され、以下を含むがそれらに限定されない:急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連癌(例えば、カポジ肉腫(軟部肉腫)、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌及び消化管カルチノイド腫瘍、星状細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、皮膚の基底細胞癌、胆管癌(例えば、胆管細胞癌)、膀胱癌、骨癌(例えば、ユーイング肉腫および骨肉腫および悪性線維性組織球腫)、脳腫瘍、乳癌(例えば、非浸潤性乳管癌)、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルシノイド腫瘍、原発不明の癌、心臓腫瘍、中枢神経系腫瘍、髄芽細胞腫および他のCNS胚性腫瘍、生殖細胞腫瘍、中枢神経系原発性リンパ腫、子宮頸癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫(例えば、菌状息肉症およびセザリー症候群)、胎児性腫瘍(例えば、髄芽腫)、子宮内膜癌(子宮癌)、上衣腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌(例えば、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫)、卵管癌、骨の線維性組織球腫、悪性腫瘍および骨肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)(軟部肉腫)、卵巣胚細胞腫瘍、精巣癌、妊娠性絨毛性疾患、有毛細胞白血病、喉頭癌、肝細胞(肝臓)癌、組織球症、ランゲルハンス細胞、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、膵島細胞腫瘍、膵臓神経内分泌腫瘍、腎臓(腎細胞)癌、ランゲルハンス細胞組織球症、および口腔および口癌、肝臓癌、非小細胞および小細胞肺癌、骨及び骨肉腫の悪性線維性組織球腫、黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、転移癌、潜在性原発性転移性扁平上皮頸癌、正中線癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、中咽頭癌、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、膵臓癌、膵臓神経内分泌腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫、前立腺癌、直腸癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、小腸癌、皮膚扁平上皮癌、潜在性原発性扁平上皮頸癌、T細胞リンパ腫、皮膚病(例えば、菌状息肉症およびセザリー症候群)、精巣癌、胸腺腫癌および胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮肉腫、腟癌、外陰部癌、血管腫瘍、およびウィルムス腫瘍など。
【0174】
本発明のポリマー薬物担体および送達システムの好ましい実施形態は、以下のようなしかしそれらに限定されない1つ以上の抗癌剤または抗腫瘍剤または物質を送達するために配合および最適化される:アベマシクリブ、アビラテロン酢酸塩、アカラブルチニブ、アドリアマイシン、ジマレイン酸アファチニブ、アフィニトール(エベロリムス)、アルダラ(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(アレクチニブ)、アレクチニブ、アリムタ(ペメトレキセド二ナトリウム)、アリコパ(コパンリシブ塩酸塩)、アロキシ(パロノステロン塩酸塩)、アルペリシブ、アルンブリッグ(ブリガチニブ)、アメルズ(アミノレブリン酸塩酸塩)、アミホスチン、アミノレブリン酸塩酸塩、アナストロゾール、アパルタミド、アプレピタント、アレディア(パミドロネート二ナトリウム)、アリミデックス(アナストロゾール)、アロマシン(エキセメスタン)、アラノン(ネララビン)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼイネ株腐病菌(Erwinia chrysanthemi)、アスパラス(カラスパルガーゼペゴル-Mknl)、アキシカブタジンシロルーセル、アキシチニブ、アザシチジン、アゼドラ(イオベングアンI131)、バルベルサ(エルダフィチニブ)、ベレオダク(ベリノスタト(Belinostat))、ベリノスタト、ベンダムスチン塩酸塩、ベンデカ(ベンダムスチン塩酸塩)、ベキサロテン、ビカルタミド、Bicnu(カルムスチン)、ビニメチニブ、ブレオマイシン硫酸塩、ボルテゾミブ、ボスリフ(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブラフトビ(エンコラフェニブ)、ブリガチニブ、ブメル、ブスルファン、カバジタキセル、カボメティクス(カボザンチニブ-S-マレート)、カボザンチニブ-S-マレート、カラスパルガーゼペゴル-Mknl、カルクエンス(アカラブルチニブ)、カンプトサール(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、カソデックス(ビカルタミド)、セリチニブ、セルビジン(ダウノルビシン塩酸塩)、ダコーゲン(デシタビン)、ダコミチニブ、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウリスモ(グラスデギブマレイン酸塩)、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、デフィテリオ(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンジフチトックス、デキサメタゾン、エリガード(ロイプロリド酢酸塩)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エレンス(エピルビシン塩酸塩)、エロキサチン(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、エルゾンリス(タグラクソフスプ-Erzs)、イメンド(アプレピタント)、エルダフィチニブ、エリブリンメシル酸塩、エルビッジ(ビスモデギブ)、エルレダ(アパルタミド)、エルロチニブ塩酸塩、エルウィナーゼ(アスパラギナーゼ・エルウィニア・クリサンテミ)、エチオール(アミホスチン)、エトポフォス(エトポシドリン酸塩)、エトポシド、エトポシドリン酸塩、エベロリムス、エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩)、エボメラ(メルファラン塩酸塩)エキセメスタン、ファレストン(トレミフェン)、ファスロデックス(フルベストラント)、フェドラチニブ塩酸塩、フェマーラ(レトロゾール)、フィルグラスチム、ファーマゴン(デガレリクス)、フルダラビンリン酸塩、フルタミド、フォロチン(プララトレキサート)、フォスタマチニブ二ナトリウム、フルベストラント、フシレフ(ロイコボリンカルシウム)、ゲフィチニブ(ゲムシタビン塩酸塩)、ゲムザール(ゲムシタビン塩酸塩)、ジロトリフ(アファチニブジマレイン酸塩)、ギルテリチニブフマル酸塩、グラスデギブマレイン酸塩、グリベック(イマチニブメシル酸塩)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、グラニセトロン、グラニセトロン塩酸塩、グラニックス(フィルグラスチム)、ハラベン(メシル酸エリブリン)、ヘマンジオール(塩酸プロプラノロール)、ヒカムチン(塩酸トポテカン)、ヒドリア(ヒドロキシウレア)、ヒドロキシウレア、イブランス(パルボシクリブ)、イブルチニブ、イクルシグ(ポナチニブ塩酸塩)、イダマイシンPFS(イダルビシン塩酸塩)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ、Idhifa(エナジニブメシル酸塩)、Ifex(イホスファミド)、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、イムブルビカ(イブルチニブ)、イミキモド、イムリジック(タリモジンラヘルパレプベク)、イグリタ(アキシチニブ)、インレビン(フェドラチニブ塩酸塩)、ヨーベングアン1 131、イレッサ(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イストダックス(ロミデプシン)、イボシデニブ、イクサベピロン、クエン酸イクサゾミブ、イクセンプラ(イクサベピロン)、ジャカフィ(ルキソリチニブリン酸)、ジェブタナ(カバジタキセル)、ケピバンス(パリフェルミン)、キスカリ(リボシクリブ)、キムリア(チサゲンレクロイセル)、カイプロリス(カルフィルゾミブ)、ランレオチド酢酸塩、ラパチニブジトシレート、ラロトレクチニブ硫酸塩、レナリドミド、レンバチニブメシル酸塩、レンビマ(レンバチニブメシル酸塩)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、ロイケラン(クロラムブシル)、ロイプロリド酢酸塩、レブラン・ケラスチク(アミノレブリン酸塩酸塩)、ロムスチン、ロンサーフ(トリフルリジンおよび塩酸チピラシル)、ロルブレナ(ロルラチニブ)、ロラチニブ、ルタテラ(ルテチウムLu 177-ドタテート)、ルテチウム(Lu 177-ドタテート)、リンパルザ(オラパリブ)、マツラン(塩酸プロカルバジン)、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、メキニスト(トラメチニブ)、メクトビ(ビニメチニブ)、メルファラン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、臭化メチルナルトレキソン、ミドスタウリン、マイトマイシンC、塩酸ミトキサントロン、モゾビル(プレリキサフォル)、ムスタゲン(メクロレタミン塩酸塩)、ミレラン(ブスルファン)、ナベルビン、(ビノレルビン酒石酸塩)、ネララビン、マレイン酸ネラチニブ、ネルリンクス(マレイン酸ネラチニブ)、ノイラスタ(ペグフィルグラスチム)、ニューポジェン(フィルグラスチム)、ネクサバール(ソラフェニブトシレート)、ニランドロン(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、ニンラロ(クエン酸イクサゾミブ)、ニラパリブトシレート一水和物、エヌプレート(ロミプロスチム)、ニュベクオ(ダロルタミド)、オドムゾ(ソニデジブ)、オラパリブ、オマセタキシンメペスクシナート、オンカスパー(ペガスパルガーゼ)、オンダンセトロン塩酸塩、オンタク(デニロイキンジフチトックス)、オシメルチニブメシル酸塩,オキサリプラチン、パクリタキセル(「PTX」)(タキソール)、(5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10,13α-ヘキサヒドロキシタックス11-en-9-オン4,10-ジアセテート2-ベンゾエート13-エステルと(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリン)、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パノビノスタット、パゾパニブ塩酸塩、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレックス二ナトリウム、ピクレイ(アルペリシブ)、プレリキサフォル、ポマリドミド、ポマリスト(ポポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(アルデスロイキン)、プロマクタ(エルトロンボパグオラミン)、塩酸プロプラノロール、プロベンジ(シプロイセルT)、プリネトール(メルカプトプリン)、プリキサン(メルカプトプリン)、二塩化ラジウム223、ラロキシフェン塩酸塩、ラスブリカーゼ、レゴラフェニブ、レリストール(臭化メチルナルトレキソン)、レブリミド(レナリドミド)、リウマトレックス(メトトレキサート)、リボシクリブ、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、リン酸ルキソリチニブ、リダプト(ミドスタウリン)、サンクソ(グラニセトロン)、セリネクサー、シプロイセル-T、ソニデギブ、ソラフェニブトシレート、スプリセル(ダサチニブ)、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブリン酸塩、リダプト(ミドスタウリン)、サンクソ(グラニセトロン)、セリネクサー、シプルーセル-T、ソニデギブ、ソラフェニブトシレート、スプリセル(ダサチニブ)、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブリン酸塩、リダプト(ミドスタウリン)、サンクソ(グラニセトロン)、セリネクサー、シプルーセル-T、ソニデギブ、ソラフェニブトシレート、スプリセル(ダサチニブ)、スチバーガ(レゴラフェニブ)、リンゴ酸スニチニブ、サストール(グラニセトロン)、ステント(スニチニブリンゴ酸塩)、シンリボ(オマセタキシンメプコハク酸塩)、タブロイド(チオグアニン)、タフィンラー(ダブラフェニブメシル酸塩)、タグラクソフスプ-Erzs、タグリッソ(オシメルチニブメシル酸塩)、タラゾパリブトシル酸塩、タリモジーン・ラハーパレプベック、タルゼナ(タラゾパリブトシル酸塩)、タモキシフェンクエン酸塩、タルセバ(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(ベキサロテン)、タシグナ(ニロチニブ)、タバリセ(フォスタマチニブ二ナトリウム)、テモダール(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(サリドマイド)、チオグアニン、チオテパ、チブソボ(イボシデニブ)、チサゲンレクロイセル、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トリセル(テムシロリムス)、トテクト(デクスラゾキサン塩酸塩)、トラベクテジン、トラメチニブ、トレアンダ(ベンダムスチン塩酸塩)、トレキサール(メトトレキサート)、トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩、トリセノックス(三酸化ヒ素)、タイケルブ(ラパチニブトシル酸塩)、三酢酸ウリジン、バルルビシン、バルスター(バルルビシン)、バンデタニブ、バルビ(ロラピタント塩酸塩)、VeIP、ベルケイド(ボルテゾミブ)、ベムラフェニブ、ベンクレキセタ(Venclexta)(ベネトクラクス)、ベージニオ(アベマシクリブ)、ビダザ(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩、ビノレルビン酒石酸塩、ビスモデギブ、ビストガード(ウリジン三酢酸)、ビトラクビ(ラロトレクチニブ硫酸塩)、ビジンプロ(ダコミチニブ)、ボラキサゼ(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ヴォトリエント(パゾパニブ塩酸塩)、ザーコリ(クリゾチニブ)、ゼローダ(カペシタビン)、ゾーフィゴ(二塩化ラジウム223)、ゾスパタ(フマル酸ギルテリチニブ)、Xpovio(セリネクソール)、イクスタンジ(エンザルタミド)、イエスカルタ(アキシカブタジンシロルーセル)、ヨンデリス(トラベクテジン)、ザルトラップ(Ziv-アフリベルセプト)、ザルシオ(フィルグラスチム)、ゼジュラ(ニラパリブトシレート一水和物)、ゼルボラフ(ベムラフェニブ)、ザインカード(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、ゾフラン(塩酸オンダンセトロン)、ゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(ボリノスタット)、ゾメタ(ゾレドロン酸)、ザイデリグ(イデラリシブ)、ザイカディア(セリチニブ)、およびザイティガ(アビラテロン酢酸塩)など。
【0175】
本発明の組成物の様々な実施形態は、特定のタイプの腫瘍または癌、または特定の器官、組織、または構造の腫瘍または癌に関して、その転移を治療、改善、または遅延させるために配合および最適化され、以下を含むがそれらに限定されない:急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連癌(例えば、カポジ肉腫(軟部肉腫)、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌及び消化管カルチノイド腫瘍、星状細胞腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、皮膚の基底細胞癌、胆管癌(例えば、胆管細胞癌)、膀胱癌、骨癌(例えば、ユーイング肉腫および骨肉腫および悪性線維性組織球腫)、脳腫瘍、乳癌(例えば、非浸潤性乳管癌)、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発不明癌、心臓腫瘍、中枢神経系腫瘍、髄芽細胞腫およびその他のCNS胚性腫瘍、胚細胞腫瘍、中枢神経系原発性リンパ腫、子宮頸癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、大腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫(例えば、菌状息肉症およびセザリー症候群)、胎児性腫瘍(例えば、髄芽腫)、子宮内膜癌(子宮癌)、上衣腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌(例えば、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫)、卵管癌、骨の線維性組織球腫、悪性腫瘍および骨肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)(軟部肉腫)、卵巣胚細胞腫瘍、精巣癌、妊娠性絨毛性疾患,有毛細胞白血病、喉頭癌、肝細胞(肝臓)癌、組織球症、ランゲルハンス細胞、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、膵島細胞腫瘍、膵臓神経内分泌腫瘍、腎臓(腎細胞)癌、ランゲルハンス細胞組織球症、唇および口腔および口癌、肝臓癌、非小細胞および小細胞肺癌、骨及び骨肉腫の悪性線維性組織球腫、黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、転移癌、潜在性原発性転移性扁平上皮頸癌、正中管癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄増殖性腫瘍、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、中咽頭癌、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、膵臓癌、膵臓神経内分泌腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、小腸癌、皮膚扁平上皮癌、潜在性原発性扁平上皮頸癌、T細胞リンパ腫、皮膚病(例えば、菌状息肉症、セザリー症候群)、精巣癌、胸腺癌および胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮肉腫、腟癌、外陰癌、血管腫瘍、及びウィルムス腫瘍など。
【0176】
例示的な製剤、投与量、および投与方法
本発明の実施は、別段の定めがない限り,医薬製剤を調製する従来の技術、ならびに当技術分野でよく知られている投与および投薬技術を採用する。一般に、本発明の薬物送達システムおよび組成物の最終投与可能な製剤は、任意選択で、当技術分野における標準的な手段によって調製することができる。調製および製剤の考慮事項に関して、多くの標準的なテキストが当技術分野で知られている例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照)。
【0177】
ある実施形態において、本開示の薬物送達システムおよび組成物は、無菌であり、任意選択で、防腐剤フリー製剤として提供される。他の実施形態において、薬物送達システムおよび組成物は、無菌であり、任意選択で防腐剤フリーであり、単回使用または単位用量の形式で処方される。さらに別の実施形態において、無菌製剤は、1つ以上の保存剤、安定剤、糖類、または糖アルコールを含む。
【0178】
本発明の方法および薬物送達システムおよび組成物は、本明細書に記載された1つ以上の組成物の有効量の投与によって被験体に医学的または治療的利益を与えるために、被験体における癌および他の増殖性疾患の治療を提供する。本発明の化合物を投与する方法は、定量的投与量によるか、1つ以上の制御放出装置によるものであり得る。組成物は、正確な投与量の単回投与に適した単位投与形態であり得る。
【0179】
幾つかの実施形態において、本発明の薬物送達システムおよび組成物において提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物の濃度は、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、または0.0001%w/w、w/v、またはv/v未満である。
【0180】
さらに幾つかの他の実施形態において、本発明の薬物送達システムおよび組成物において提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物の濃度は、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19.75%、19.50%、19.25%、19%、18.75%、18.50%、18.25%、18%、17.75%、17.50%、17.25%、17%、16.75%、16.50%、16.25%、16%、15.75%、15.50%、15.25%、15%、14.75%、14.50%、14.25%、14%、13.75%、13.50%、13.25%、13%、12.75%、12.50%、12.25%、12%、11.75%、11.50%、11.25%、11%、10.75%、10.50%、10.25%10%、9.75%、9.50%、9.25%、9%、8.75%、8.50%、8.25%、8%、7.75%、7.50%、7.25%、7%、6.75%、6.50%、6.25%、6%、5.75%、5.50%、5.25%、5%、4.75%、4.50%、4.25%、4%、3.75%、3.50%、3.25%、3%、2.75%、2.50%、2.25%、2%、1.75%、1.50%、125%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%、または0.0001%w/w、w/v、またはv/v超である。
【0181】
さらに幾つかの他の実施形態において、本発明の薬物送達システムおよび組成物において提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物の濃度は、約0.0001%~約50%、約0.001%~約40%、約0.01%~約30%、約0.02%~約29%、約0.03%~約28%、約0.04%~約27%、約0.05%~約26%、約0.06%~約25%、約0.07%~約24%、約0.08%~約23%、約0.09%~約22%、約0.1%~約21%、約0.2%~約20%、約0.3%~約19%、約0.4%~約18%、約0.5%~約17%、約0.6%~約16%、約0.7%~約15%、約0.8%~約14%、約0.9%~約12%、約1%~約10%w/w、w/v、またはv/vの範囲内にある。
【0182】
幾つかの実施形態において、本発明の薬物送達システムおよび組成物において提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物の濃度は、約0.001%~約10%、約0.01%~約5%、約0.02%~約4.5%、約0.03%~約4%、約0.04%~約3.5%、約0.05%~約3%、約0.06%~約2.5%、約0.07%~約2%、約0.08%~約1.5%、約0.09%~約1%、約0.1%~約0.9%w/w、w/v、またはv/vの範囲内にある。
【0183】
幾つかの他の実施形態において、本発明の薬物送達システムおよび組成物において提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物の量は、10g、9.5g、9.0g、8.5g、8.0g、7.5g、7.0g、6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g、4.0g、3.5g、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002g、または0.0001g以下である。
【0184】
幾つかの実施形態において、本発明の薬物送達システムおよび組成物において提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物の量は、0.0001g、0.0002g、0.0003g、0.0004g、0.0005g、0.0006g。0.0007g、0.0008g、0.0009g、0.001g、0.0015g、0.002g、0.0025g、0.003g、0.0035g、0.004g、0.0045g、0.005g、0.0055g、0.006g、0.0065g、0.007g、0.0075g、0.008g、0.0085g、0.009g、0.0095g、0.01g、0.015g、0.02g、0.025g、0.03g、0.035g、0.04g、0.045g、0.05g、0.055g、0.06g、0.065g、0.07g、0.075g、0.08g、0.085g、0.09g、0.095g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.45g、0.5g、0.55g、0.6g、0.65g、0.7g、0.75g、0.8g、0.85g、0.9g、0.95g、1g、1.5g、2g、2.5、3g、3.5、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、7.5g、8g、8.5g、9g、9.5g、または10g超である。
【0185】
他の実施形態において、本発明の薬物送達システムおよび組成物において提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物の量は、0.0001~10g、0.0005~9g、0.001~8g、0.005~7g、0.01~6g、0.05~5g、0.1~4g、0.5~4g、1~3g、または1~10gの範囲内にある。
【0186】
目標用量は、単回投与で投与することができる。あるいは、目標用量は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、またはそれ以上の用量で投与されてもよい。
【0187】
投与スケジュールは、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で知られている任意の投与スケジュールを含む、任意の処方されたレジメンに従って繰り返されてもよい。本発明の薬物送達システムおよび組成物に提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物は、1回の投与または複数回投与されてもよい。投与の最も効果的な手段および投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、使用される特定の組成物、使用の目的、接触される標的細胞または組織、および治療される被験体によって異なる。1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、または50以上、分、時間、日、週、月、または年からの過程での単回または複数回の投与(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、または50以上の投与)を行う。
【0188】
幾つかの特に好ましい実施形態において、組成物の1回の投与は、医師によって規定される、または治療上の便益のために必要と考えられる1~3、1~7、1~10、1~12、1~14、1~28、1~30、またはより多くの、日毎に行われる。投与は、治療を行う医師が選択した投与量レベルとパターンで行うことができる。化合物薬物動態における被験体間の変動性(intersubject variability)のゆえに、最適な治療には投与レジメンの個別化が必要であることが当技術分野で知られている。本発明の組成物の投薬は、即時の開示および当業者にとって、日常的な実験によって見出され得る。
【0189】
さらに、医薬および薬学的化学の分野で記載されたアプローチと同様に、適切な医薬製剤はまた、任意選択で、本発明の1つ以上の化合物に加えて、以下を含むがこれらに限定されない他の薬剤を含み得ることに留意されたい:賦形剤、希釈剤、増量剤、安定剤、着色剤、香味料、配合剤(例えば、ゲルおよび増粘剤)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クエン酸、EDTA、リン酸、アスコルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、酒石酸、第三級ブチルヒドロキノン)、防腐剤、無菌水溶液、緩衝液、糖などの一般的に知られており、受け入れられているもの。
【0190】
他の実施形態において、1つ以上の追加の小分子薬物および/または生物学的薬剤を、本発明の薬物送達システムおよび組成物に提供される1つ以上の活性薬物または治療化合物との混合物で優先的に組み合わせて(または同時に投与して)、被験体における有益な、またはさらに相乗的な結果を達成することができる。
【0191】
本発明の組成物は、被験体の口腔内への送達(例えば、摂取、口腔内および/または舌下沈着)のために配合され得る。他の実施形態において、組成物は、注射(例えば、筋肉内、皮膚内、髄腔内、腹腔内、動脈内、および/または皮下など)、注入(例えば、骨内および/または静脈内など)、灌注、点滴注入(例えば、滴下点滴注入)などのために配合される。さらに別の実施形態において、局所送達(例えば、眼科、膣、直腸、鼻腔内など)のために配合される。ある場合において、所望の製剤の送達は、マイクロニードルおよびパッチ、シリンジ、ポンプ、カテーテル、ポート、吸入送達装置、生体送達装置などの1つ以上の機械的装置によって支援される。
【0192】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0193】
幾つかの実施形態によれば、組成物は包装材で包装され、コンジュゲートを形成するために連結された薬物の少なくとも1つによって治療可能な病状の治療に使用するために、包装材の内部または表面において印刷で特定される。
【0194】
本発明の修正および変更は、本発明の前述の説明から当業者にとって明白であろう。そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図するものである。
【0195】
参照による組み込み
本明細書で言及されるすべての米国特許出版物、米国特許出願、および米国特許、具体的に米国特許第5,698,664号明細書および第5,914,388号号明細書の全体が、参照によって明示的かつ具体的に本明細書に組み込まれる。
図1
図2