(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240415BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240415BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240415BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20240415BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240415BHJP
C08K 7/16 20060101ALI20240415BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240415BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08K3/08
C08K7/00
C08K7/02
C08K7/16
H01B1/22 A
H01B1/24 A
(21)【出願番号】P 2022539398
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2021055434
(87)【国際公開番号】W WO2021175976
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】102020106131.5
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラウス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ベノ シュミート
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン シュマルツェル
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ズッター
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-219521(JP,A)
【文献】特開平06-179481(JP,A)
【文献】特開2006-049106(JP,A)
【文献】特開2004-168966(JP,A)
【文献】特開2010-153364(JP,A)
【文献】特開2017-145403(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005204(WO,A1)
【文献】特表2012-518056(JP,A)
【文献】国際公開第2014/186460(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0236613(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0372230(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0246628(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0200527(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
H01B 1/00- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性バインダー(A)と導電性フィラー(B)とを含む導電性ペーストであって、前記導電性フィラー(B)が、次の成分:少なくとも1つのビーズ状導電性フィラー(B1)、少なくとも1つのフレーク状導電性フィラー(B2)および少なくとも1つのロッド状導電性フィラー(B3)を含
み、
前記導電性ペーストの全重量に対する前記フィラー(B)の割合は、0.03重量%~30重量%であることを特徴とする、導電性ペースト。
【請求項2】
前記ビーズ状フィラー(B1)は、ISO 21501-2:2019-11に準拠して測定された、最大200μ
mの平均粒子径を有する、請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性ペーストの全重量に対する前記ビーズ状フィラー(B1)の割合は、0.1~50重量
%である、請求項1または2記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記フレーク状フィラー(B2)のアスペクト比は、少なくとも1/10でかつ1/10^6未満である、請求項1から3までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記フレーク状フィラー(B2)は、ISO 21501-2:2019-11による、最大150μ
mの平均粒子径を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記導電性ペーストの全重量に対する前記フレーク状フィラー(B2)の割合は、0.5~50重量
%である、請求項1から5までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記ロッド状フィラー(B3)は、少なくとも0.
1の平均アスペクト比を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項8】
前記導電性ペーストの全重量に対する前記ロッド状フィラー(B3)の割合は、0.01~10重量
%である、請求項1から7までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項9】
前記導電性ペーストの全重量に対する前記バインダー(A)の割合は、50重量%~99重量
%である、請求項1から
8までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項10】
前記弾性バインダー(A)は、熱可塑性エラストマーを含
む、請求項1から
9までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項11】
規格EN ISO 527-1(2012年2月)に準拠して測定された延伸率が、少なくとも30
%である、請求項1から
10までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項12】
エラストマー基材に施与されている、請求項1から
11までのいずれか1項記載の導電性ペースト。
【請求項13】
エラストマー基材に施与するための、請求項1から
12までのいずれか1項記載の導電性ペーストの使用。
【請求項14】
導電性ペーストの製造方法であって、以下の方法ステップ:
a)弾性バインダー(A)を含む分散液を製造または提供するステップ、
b)前記分散液に導電性フィラー(B)を導入し、その際、前記導電性フィラー(B)は、以下の成分:
少なくとも1つのビーズ状導電性フィラー(B1)、
少なくとも1つのフレーク状導電性フィラー(B2)および
少なくとも1つのロッド状導電性フィラー(B3)
を含むものとするステップ
を含
み、
前記導電性ペーストの全重量に対する前記フィラー(B)の割合は、0.03重量%~30重量%である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性バインダー(A)と導電性フィラー(B)とを含む導電性ペーストに関する。本発明はさらに、該導電性ペーストの製造方法、およびエラストマー基材に施与するためのその使用に関する。
【0002】
導電性構造体を形成するための導電性ペーストは当技術分野で知られており、一般に金属粒子、メタライズ粒子または炭素粒子を充填したバインダーを含む。これらのペーストの欠点は、通常、わずかにしかまたはまったく延伸しないことである。
【0003】
欧州特許出願公開第3021329号明細書からは、樹脂中に導電性フィラーを均一に分散させた導電性ペーストが知られており、樹脂はゴムであり、導電性フィラーは平均粒径0.5~10μmの金属粉末である。アスペクト比が10~10,000の導電材料が得られる。このコンパウンドは、加硫プロセスによって製造される。好ましくは、金属粉末は、フレーク、ビーズ、デンドライト状物、アグリゲート(ビーズ状の一次粒子が三次元形状に凝集したもの)として存在する。このペーストの欠点は、使用される導電性粒子の材料の組み合わせが、十分な数の導電パスを形成するために高い充填度を必要とし、そのため充填度を高めないと高い導電性が得られないことである。良好な導電性を得るためには、非常に高い充填度が必要となるため、複合材料の、例えば100%という高い延伸率は得られない。
【0004】
米国特許出願公開第2019/0043638号明細書には、溶媒と、分子内に不飽和結合を含まないバインダー樹脂と、バインダー樹脂に分散された導電性フィラーとしての銀コート樹脂粒子とを含む導電性ペーストが記載されている。銀コート樹脂粒子は、シリコーンゴム粒子を含む樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子の表面を覆う銀コート層とを含む。添加剤の固形分は35~75重量%である。このコーティングの欠点は、延伸挙動が良好でないことである。さらに、シリコーンコートに焦点が当てられている。
【0005】
米国特許第9,761,349号明細書(東洋紡株式会社)には、樹脂中に導電性フィラーを均一に分散させた導電性ペーストであって、樹脂が、硫黄原子を含むゴムであり、かつ/またはニトリル基を含むゴムである導電性ペーストが記載されている。導電性フィラーは、平均粒径0.5~10μmの金属粉末、ならびにメルカプト基、アミノ基およびニトリル基から選択される基を表面に有する導電材料である。このコーティングの欠点は、添加剤を高い含有量で使用しなければならないことである(実施例では75重量%の範囲)。最大延伸率は80%である。
【0006】
国際公開第2018/134411号/Francisco Alberto S.A.Uには、延伸性、熱成形性および柔軟性のある基材およびテキスタイルに電気回路を印刷するのに適した延伸性導電インクが記載されている。該インクは水性であり、導電材料、EVAコポリマー、補助溶媒および分散剤を含む。このコーティングの欠点は、添加剤を高い含有量で使用しなければならないことである。さらに、最大延伸率は80%である。
【0007】
本発明の課題は、低充填度でも高い導電性を得ることができ、これにより高い延伸性を有する導電性ペーストを提供することである。
【0008】
この課題は、弾性バインダー(A)と導電性フィラー(B)とを含む導電性ペーストであって、導電性フィラー(B)が、次の成分:少なくとも1つのビーズ状導電性フィラー(B1)、少なくとも1つのフレーク状導電性フィラー(B2)および少なくとも1つのロッド状導電性フィラー(B3)を含む、導電性ペーストにより解決される。
【0009】
驚くべきことに、本発明によれば、弾性バインダー(A)と、少なくとも1つのビーズ状フィラー(B1)、少なくとも1つのフレーク状フィラー(B2)および少なくとも1つのロッド状フィラー(B3)を含む導電性フィラー(B)との特定の組み合わせにより、低い充填度でも導電性が高く、ひいては延伸性の高い導電性ペーストを提供できることが判明した。
【0010】
ある機序に確定するものではないが、これは以下のような機序により可能であると考えられる。フレーク状フィラー(B2)は、その大きな表面積により導電性の「島」を形成し、これがあらゆる空間方向への高い導電性を実現することができる。ロッド状フィラー(B3)は、その細長い構造により、これらの島々の間に導電性ブリッジを形成し、それによりバインダーマトリックス中に導電性の三次元ネットワークが形成される。これにより、導電性フィラー(B)の割合を低く抑えることができるため、ペーストの延伸性を高くすることができる。ビーズ状フィラー(B1)は、フレーク状フィラー(B2)やロッド状フィラー(B3)の表面に付着することができ、またその形態ゆえにバインダーの空隙を塞ぐことができる。これにより、フィラーの接触点が全体的に増え、ネットワーク内の導電パスの数が増加する。ビーズ状フィラー(B1)は、個々にまたはアグロメレートとして集積し、バインダー中の空隙を占有することもできる。これには、変形時の支障が少ないという利点がある。また、接触点の数が多いため、乾燥後であっても導電性を損なわずにペーストを変形させることができる。そのため、異なる3種類のフィラーのネットワークは、その特殊な構造により、バインダーが変形しても導電性を損なうことなくその動きに対応することができる。
【0011】
本発明によれば、ビーズ状フィラー(B1)とは、ほぼ球状の形状を有する微粒子であると理解される。これには、不規則で理想的でない球状の粒子も含まれる。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態では、ビーズ状フィラー(B1)は、ISO 21501-2:2019-11(光散乱式液中パーティクルカウンタ)に準拠して測定された、最大200μm、好ましくは0.02μm~200μm、さらにより好ましくは最大100μm、例えば0.02μm~100μm、さらにより好ましくは0.02μm~50μm、特に0.02μm~10μmの平均粒子径を有する。
【0013】
平均粒子径が大きすぎると、良好な導電性を得るために高い充填度が必要となる。また、大きすぎる粒子は、導電パスの小さな空隙に入り込むことができない。平均粒子径が小さすぎると、ポリマーマトリックスにうまく取り込むことができない。
【0014】
好ましくは、ビーズ状フィラー(B1)は、金属、特に遷移金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびそれらの塩、メタライズガラス、メタライズセラミックス、炭素、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される材料を有する。特に、炭素粒子が好ましい。特に好ましくは、ビーズ状フィラー(B1)は、前述の材料、好ましくは炭素を、特に90重量%超、特に95重量%超の割合で含む。
【0015】
さらに好ましくは、導電性ペーストの全重量に対するビーズ状フィラー(B1)の割合は、0.1~50重量%、さらにより好ましくは1~15重量%、さらにより好ましくは1~10重量%、さらにより好ましくは1~8重量%、特に1~5重量%である。
【0016】
本発明によれば、フレーク状フィラー(B2)とは、実質的に平坦な微粒状のフィラーを意味すると理解される。特にこれは、少なくとも1/10でかつ1/10^6未満のアスペクト比を有する平坦なフィラーを意味すると理解される。フレーク状フィラー(B2)はまた、層状に配置された状態で存在することもできる。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態では、フレーク状フィラー(B2)は、ISO 21501-2:2019-11(光散乱式液中パーティクルカウンタ)に準拠して測定された、最大150μm、例えば0.02~150μm、さらにより好ましくは最大100μm、例えば2μm~100μm、特に5~80μmの平均粒子径を有する。これらの粒子径、特に5μm~80μmの粒子径(B2)において、コーティングの延伸性が特に良好である。平均粒子径が大きすぎると、良好な導電性を得るために高い充填度が必要となる。
【0018】
フレーク状フィラー(B2)は、好ましくは、金属、特に遷移金属、特にメタライズガラス、メタライズセラミックス、炭素、およびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。特に好ましくは、フレーク状フィラーは、前述の材料、特にメタライズガラスを、好ましくは75重量%超、特に95重量%超の割合で含む。特に好ましいのは、フレーク状の炭素粒子および/またはメタライズガラスである。
【0019】
炭素系フレーク状フィラー(B2)、特にフレーク状炭素粒子の場合、好ましい平均粒子径は、ISO 21501-2:2019-11(光散乱式液中パーティクルカウンタ)に準拠して測定した場合に、最大2μm、例えば2μm~0.01μm、特に最大0.8μm、例えば0.8μm~0.02μmである。
【0020】
さらに好ましくは、導電性ペーストの全重量に対するフレーク状フィラー(B2)の割合は、0.5~50重量%、さらにより好ましくは5~40重量%、特に10~25重量%である。
【0021】
ロッド状フィラー(B3)とは、直径に対して長さが大きい粒子から構成されるフィラーであると理解される。フレーク状フィラーの表面は、空隙、隆起、窪みを有していてもよく、また実質的に平滑であってもよい。また、分岐状、枝状、湾曲状、樹状のロッド形状も考えられる。
【0022】
本発明の好ましい一実施形態では、ロッド状フィラー(B3)は、少なくとも0.1、例えば1/10~1/10^8、特に少なくとも10^2~10^8の平均アスペクト比を有する。平均アスペクト比が高すぎると、良好な導電性を得るために高い充填度が必要となる。
【0023】
好ましくは、ロッド状フィラー(B3)は、金属、特に遷移金属、メタライズガラス、炭素、特に単層、好ましくはグラフェン様および多層のカーボンナノチューブ、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される材料を含む。特に好ましくは、ロッド状フィラーは、前述の材料、特にカーボンナノチューブを、好ましくは90重量%超、特に95重量%超の割合で含む。
【0024】
導電性ペーストの全重量に対するロッド状フィラー(B3)の割合は、好ましくは0.01~10重量%、さらにより好ましくは0.01~5重量%、特に0.1~3重量%である。
【0025】
好ましい一実施形態では、導電性ペーストの全重量に対するフィラー(B)の割合は、0.03重量%~30重量%、さらにより好ましくは0.03重量%~25重量%、特に0.03重量%~20重量%である。さらに好ましくは、フィラー(B)は、導電性ペースト中に均一に分散している。フィラーの均一な分布は、光学評価(電子顕微鏡)により判断する。面積1mm2中のアグロメレートの割合がフィラー割合の20%未満であれば、均一な分布が得られていることになる。
【0026】
本発明によれば、弾性バインダー(A)とは、力の作用により形状が変化し、作用力が除去されると実質的に元の形状に戻ることができるバインダーであると理解される。好ましくは、バインダー(A)は、規格ISO 527(2018-06-29)に準拠して測定された、少なくとも100%、例えば100~700%、さらにより好ましくは少なくとも200%、例えば200~700%、特に少なくとも300、例えば300~700%の延伸率を有する。
【0027】
さらに好ましくは、導電性ペーストの全重量に対するバインダー(A)の割合は、50重量%~99重量%、さらにより好ましくは60重量%~80重量%、特に65重量%~80重量%である。
【0028】
さらなる好ましい一実施形態では、弾性バインダー(A)は、熱可塑性エラストマーを含み、この熱可塑性エラストマーは、好ましくは、シリコーン、ウレタン、エポキシド、アミド、エステルまたはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
さらなる好ましい一実施形態では、弾性バインダー(A)は、非導電性である。本実施形態では、弾性バインダーAは、好ましくは、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニルエーテル、ポリスチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリブチルテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フルオロポリマー、ゴム、特にNR(天然ゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、BIIR(イソブテン-イソプレンゴム)、CM(クロロゴム)、EP(D)M(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)、EU、NBR(ニトリル-ブタジエンゴム)、IIR(ブチルゴム)、CIIR(塩素化ブチルゴム)、CSM(クロロスルホン化エチレンゴム)、AU(ポリウレタンゴム)、ECO(エピクロロヒドリンゴム)、HNBR(水添ニトリルブタジエンゴム)、ACM(アクリレートゴム)、FKM(フッ素ゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、EAM=AEM(エチレンアクリレートゴム)、FFKMパーフルオロゴムTFE+PFVE共重合体テトラフルオロエチレン+パーフルオロアルキルビニルエーテル、FVMQ(ポリトリフルオロプロピルビニルメチルシロキサン)、EVA(エチレン酢酸ビニルゴム)、ポリエステル、アセタール、ポリメチルアクリレート、それらの共重合体およびブレンドの群から選択されるバインダーを含む。バインダー(A)中の上記バインダーの割合は、好ましくは50重量%超であり、例えば50~100重量%である。
【0030】
本発明の好ましい一実施形態では、導電性ペーストは、規格EN ISO 527-1(2012年2月)に準拠して測定された、少なくとも30%、例えば30%~400%、さらにより好ましくは少なくとも40%、例えば40%~300%、特に少なくとも60%、例えば80%~150%の延伸率を有する。
【0031】
導電性ペーストは、基材、特にエラストマー基材に施与することができる。好ましい基材は、それ自体が弾性特性を持つ、あるいは延伸可能であることから、ゴムである。好ましいゴムの種類は、NR(天然ゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、BIIR(イソブテン-イソプレンゴム)、CM(クロロゴム)、EP(D)M(エチレン-プロピレン-ジエンゴム)、EU、NBR(ニトリル-ブタジエンゴム)、IIR(ブチルゴム)、CIIR(塩素化ブチルゴム)、CSM(クロロスルホン化エチレンゴム)、AU(ポリウレタンゴム)、ECO(エピクロロヒドリンゴム)、HNBR(水添ニトリルブタジエンゴム)、ACM(アクリレートゴム)、FKM(フッ素ゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、EAM=AEM(エチレンアクリレートゴム)、FFKMパーフルオロゴムTFE+PFVE共重合体テトラフルオロエチレン+パーフルオロアルキルビニルエーテルおよび/またはFVMQ(ポリトリフルオロプロピルビニルメチルシロキサン)である。
【0032】
好ましい一実施形態は、エラストマー基材に施与するための導電性ペーストの使用を含む。
【0033】
本発明による導電性ペーストは、例えば、以下の方法ステップを含む方法によって製造することができる:
A)弾性バインダー(A)を含む分散液を製造または提供するステップ、
B)分散液に導電性フィラー(B)を導入し、その際、導電性フィラー(B)は、以下の成分:少なくとも1つのビーズ状導電性フィラー(B1)、少なくとも1つのフレーク状導電性フィラー(B2)および少なくとも1つのロッド状導電性フィラー(B3)を含むものとするステップ。
【0034】
ここで、導電性ペースト、弾性バインダー(A)、導電性フィラー(B)、ビーズ状導電性フィラー(B1)、少なくとも1つのフレーク状導電性フィラー(B2)および/またはロッド状導電性フィラー(B3)、特にそれらの好ましい実施形態は、本明細書中で定義されている通りに準用される。
【0035】
ステップA)における分散液の製造は、好ましくは、弾性バインダー(A)を水または溶媒、例えばアルカン、アルコール、酸、エーテル、エステル、芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、ハロゲン化溶媒、水およびそれらの混合物に分散させることにより行われる。分散は、好ましくは、混合装置、例えば、スピードミキサーで行われる。
【0036】
ステップB)における分散液への導電性フィラー(B)の導入は、好ましくは混合プロセス、例えば静的および動的混合システムによって行われる。これらは、超音波による混合プロセスで支援することができる。
【0037】
本発明のさらなる主題は、導電性構造体、例えばセンサーまたはアクチュエーターの製造への本ペーストの使用である。これらの用途では、導電性と延伸性が等しく要求されるため、導電性でかつ延伸性の表面が特に重要である。
【0038】
以下に、いくつかの例により、本発明をより詳細に説明する。
【0039】
例1:本発明による導電性ペーストの製造(ペーストBの処方)
Impranil DLU分散液(水中固形分60重量%のポリウレタン、バインダーA)を、バッチサイズに適したスピードミキサー容器にはかり入れる(11g)。次に、フィラー(B)の成分として、分散フィラー(Rhenofit(登録商標)CNT(フィラーB3)、5.5g)、C-Sperse(登録商標)またはBirla Conductex SC Ultra(登録商標)(フィラーB1、1.49g)から始め、次いで固体フィラー(eConduct CuまたはeConduct Glass(フィラーB2)、1.75g)を添加して木べらでざっと混ぜる。スピードミキサーにて2300rpmで1分間混合し、木べらでかき混ぜ、再度スピードミキサー(2300rpmで1分間)で混合する。このペーストをエラストマー(TPUフィルム)上に施与した後、60℃で2時間乾燥させる。
【0040】
ペーストBが得られる。固化したペースト(B)の4点測定により電気抵抗を測定する。その結果、860[Ω]という値が得られ、これは、フィラー割合が少ない割には非常に低い値である。
【0041】
上記のBirla Conductex SC Ultra炭素分散液を製造するために、89重量%の水をスピードミキサー容器に装入し、テクニカルグレードの1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加え、スピードミキサーにて2300rpmで15秒間予備混合する。
【0042】
その結果、本発明によるペーストBが得られる。固化したペースト(B)の4点測定により電気抵抗を測定する。その結果、860[Ω]という値が得られる。
【0043】
その後、分散させる炭素粉末を振動させてはかり入れ、スピードミキサーで再度混合する。その後、使用する前に毎回、分散液をへらで混ぜ、スピードミキサーで撹拌(2300rpmで1分間)する。
【0044】
例2:本発明による複数の導電性ペースト(A、C、D、E)および比較ペースト(F、G、H)の製造
例1で説明した手順と同様に、本発明によるペースト(A、C、D、E)および本発明によらないペースト(F、G、H)を製造する。用いた量比率は、下表のとおりである。
【0045】
【0046】
Impranil DLUには、それぞれ上表に記載したフィラーが分散されている。ここで、これらの処方は、Impranil DLU分散液100g中の重量%で示されている。
【0047】
例3:本発明によるペーストおよび比較ペーストの電気抵抗の測定
本発明によるペーストおよび比較ペーストの電気抵抗を、4点測定により測定する。その結果を下表に示す。
【0048】
【0049】
上に示した表から明らかであるように、本発明によるペーストは、本発明によらない比較ペーストよりも有意に低い抵抗を示す。このことは特に特筆すべき点である。なぜならば、本発明によるペーストは、充填度の低さゆえ、本発明によらないペーストと同等の延伸性を示すためである。さらに、抵抗が低いことも特筆すべき点である。なぜならば、通常であればこれには非常に多くのフィラーが必要とされるためである。
【0050】
本明細書中で規格に言及している場合、特に断りのない限り、それぞれ出願日に有効であった規格が適用される。