IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 平田機工株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】試験方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240415BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240415BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240415BHJP
   H01M 50/209 20210101ALN20240415BHJP
   H01M 50/262 20210101ALN20240415BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/04 Z
H02J7/00 Q
H02J7/00 301E
H01M50/209
H01M50/262 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022545227
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032755
(87)【国際公開番号】W WO2022044292
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391032358
【氏名又は名称】平田機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊彦
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-038832(JP,A)
【文献】特開2013-177213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 - 10/04
H01M 10/06 - 10/34
H01M 10/42 - 10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 50/20 - 50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセルの試験方法であって、
装置により、複数のバッテリセルが配列されて収納されたマガジンを、試験用トレイに載置する載置工程と、ここで前記試験用トレイは前記マガジンに収納された前記複数のバッテリセルを配列方向に押し付ける加圧機構を有し、
前記加圧機構により、前記マガジンに収納された前記複数のバッテリセルを前記配列方向に押し付ける加圧工程と、
前記載置工程にて前記マガジンが前記試験用トレイに載置される準備エリア、及び前記複数のバッテリセルの試験が行われる試験エリアとの間で前記マガジンが収納された前記試験用トレイを移送する移送工程と、
前記試験エリアにおいて、前記複数のバッテリセルが前記加圧機構により加圧された状態で、前記複数のバッテリセルの充放電に関する試験を行う試験工程と、を含む、
試験方法。
【請求項2】
前記加圧機構により加圧された前記複数のバッテリセルの加圧状態を解除する解除工程をさらに備える請求項1に記載の試験方法。
【請求項3】
前記試験エリアに複数設けられた試験部のそれぞれの試験状況に関する情報を管理する試験管理工程と、
前記試験管理工程で管理される前記試験状況に基づいて、前記試験用トレイの移送先となる前記試験部を決定する決定工程と、をさらに備える、
請求項1又は2に記載の試験方法。
【請求項4】
前記移送工程は、
前記加圧機構により加圧された、試験前の前記複数のバッテリセルが載置された前記試験用トレイを、前記準備エリアから前記試験エリアへと移送する第1移送工程と、
試験後の前記複数のバッテリセルが載置された前記試験用トレイを、前記試験エリアから前記準備エリアへと移送する第2移送工程と、を含む、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の試験方法。
【請求項5】
前記試験工程における前記試験の終了後、前記試験用トレイから前記マガジンを取り出す取出工程をさらに備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の試験方法。
【請求項6】
前記複数のバッテリセルが配列されて収納された前記マガジンが前記準備エリアに移送される第3移送工程をさらに備える請求項1ないし5のいずれか1項に記載の試験方法。
【請求項7】
バッテリセルの製造方法であって、
バッテリセルを形成する形成工程と、
装置により、前記形成工程にて形成された複数のバッテリセルが配列して収納されたマガジンを、試験用トレイに載置する載置工程と、ここで前記試験用トレイは前記マガジンに収納された前記複数のバッテリセルを配列方向に押し付ける加圧機構を有し、
前記加圧機構により、前記マガジンに収納された前記複数のバッテリセルを前記配列方向に押し付ける加圧工程と、
前記載置工程にて前記マガジンが前記試験用トレイに載置される準備エリア、及び前記複数のバッテリセルの試験が行われる試験エリアとの間で前記マガジンが収納された前記試験用トレイを移送する移送工程と、
前記試験エリアにおいて、前記複数のバッテリセルが前記加圧機構により加圧された状態で、前記複数のバッテリセルの充放電に関する試験を行う試験工程と、を含む、
製造方法。
【請求項8】
前記加圧機構により加圧された前記複数のバッテリセルの加圧状態を解除する解除工程をさらに備える請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記試験エリアに複数設けられた試験部のそれぞれの試験状況に関する情報を管理する試験管理工程と、
前記試験管理工程で管理される前記試験状況に基づいて、前記試験用トレイの移送先となる前記試験部を決定する決定工程と、をさらに備える、
をさらに備える請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記移送工程は、
前記加圧機構により加圧された、試験前の前記複数のバッテリセルが載置された前記試験用トレイを、前記準備エリアから前記試験エリアへと移送する第1移送工程と、
試験後の前記複数のバッテリセルが載置された前記試験用トレイを、前記試験エリアから前記準備エリアへと移送する第2移送工程と、を含む、
請求項7ないし9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記試験工程における前記試験の終了後、前記試験用トレイから前記マガジンを取り出す取出工程をさらに備える請求項7ないし10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記形成工程にて形成された前記複数のバッテリセルが配列されて収納された前記マガジンを前記準備エリアへと移送する第3移送工程とをさらに含む請求項7ないし11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記形成工程は、
正極と負極とがセパレータを介して複数積層して電極積層体を構成する積層工程と、
前記積層工程にて構成された前記電極積層体を、外装部材に収容する外装工程と、
前記外装部材の注入口から電解液を注入する注液工程と、
前記注液工程にて電解液が注入された前記外装部材を封止する封止工程と、
の少なくともいずれかを含む、
請求項7ないし12のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリセルの試験方法及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車やその他の電子機器等に用いられるバッテリには、用途によって複数のバッテリを並べてそれぞれの電極を接続し、一つのバッテリ体として用いられるものがある。このバッテリセルは、バッテリセルを組み立てる工程や、組み立てられたバッテリセルの充放電試験等の試験を行う工程等、複数の工程を経て製造される(特許文献1-3参照)。組み立て後のバッテリセルは、バッテリセルの保護や移送効率等の観点から、複数のバッテリセルを収容可能な容器を用いて移送されることがある。また、バッテリセルの性能等の試験は、複数のバッテリセルを並べて加圧した状態で行われることがある。特許文献1には、容器に収容されたバッテリセルを押し付ける加圧マガジンにより、バッテリセルの移送及び試験時のバッテリセルの加圧を行うことが記載されている。また、特許文献2には、電池の充放電試験を行う充放電ステージの側に電池を押圧する機構が設けられ、充放電ステージにて複数のバッテリセルを並べることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-106930号公報
【文献】特許第6644230号公報
【文献】特表2013-178903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリセルの充放電試験等の試験以外の工程では、バッテリセルの加圧を必要としない。しかしながら、特許文献1では、バッテリセルを加圧する機構が移送用のマガジンに設けられるため、バッテリセルの加圧を必要としない工程であっても上記機構が設けられたマガジンが用いられる。したがって、試験以外の工程を含めた各工程間において不要な機構を備えたマガジンが移送用として大量に使用されると、マガジンの製造にかかる工数やコストが増加してしまうことになる。また、特許文献2では、電池が充放電ステージに一つずつ搬入され、複数配置された後に電池の加圧を行い、電池の加圧状態を開始してから試験を行い、試験完了後、電池の加圧を解除し、電池を充放電ステージから一つずつ搬出する必要があるため、試験効率が低下してしまうことがある。
【0005】
本発明は、バッテリセルの移送用マガジンの構造を簡素化しつつ、試験効率の低下を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
バッテリセルの試験方法であって、
装置により、複数のバッテリセルが配列されて収納されたマガジンを、試験用トレイに載置する載置工程と、ここで前記試験用トレイは前記マガジンに収納された前記複数のバッテリセルを配列方向に押し付ける加圧機構を有し、
前記加圧機構により、前記マガジンに収納された前記複数のバッテリセルを前記配列方向に押し付ける加圧工程と、
前記載置工程にて前記マガジンが前記試験用トレイに載置される準備エリア、及び前記複数のバッテリセルの試験が行われる試験エリアとの間で前記マガジンが収納された前記試験用トレイを移送する移送工程と、
前記試験エリアにおいて、前記複数のバッテリセルが前記加圧機構により加圧された状態で、前記複数のバッテリセルの充放電に関する試験を行う試験工程と、を含む、
試験方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バッテリセルの移送用マガジンの構造を簡素化しつつ、試験効率の低下を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る試験システムの概略を説明する平面図。
図2図1の試験システムの正面図。
図3】移載装置の概略を示す斜視図。
図4A】作業部の構成例を説明する平面図。
図4B】作業部の構成例を説明する正面図。
図5】試験システムのハードウェアの構成例を示すブロック図。
図6】マガジン及び試験用トレイの概略を示す斜視図。
図7A】試験用トレイの各状態を示す平面図。
図7B】試験用トレイの各状態を示す平面図。
図7C】試験用トレイの各状態を示す平面図。
図8】バッテリセルの製造工程の一部についての概略を示すフローチャート。
図9】バッテリセル形成工程の具体例を示すフローチャート。
図10】試験システムの制御例を示すフローチャート。
図11A】第2実施形態に係る試験用トレイの構成を説明する平面図。
図11B】第2実施形態に係る試験用トレイの構成を説明する平面図。
図12A】第2実施形態に係る試験用トレイの加圧移動規制部による規制動作を説明する図。
図12B】第2実施形態に係る試験用トレイの加圧移動規制部による規制動作を説明する図。
図13】第3実施形態に係る試験用トレイの構成を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち、二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。なお、各図においてX方向及びY方向を水平方向、Z方向を鉛直方向とする。また、図面の見易さのため、一部の符号の図示を省略する場合がある。
【0010】
<第1実施形態>
<試験システムの概要>
図1は、第1実施形態に係る試験システムSYの概略を説明する平面図である。また、図2は、図1の試験システムSYの正面図である。試験システムSYは、バッテリセルの製造において、組み立てられたバッテリセルの試験を行うシステムである。試験システムSYは、試験エリア1と移送部2と準備エリア3とを含む。
【0011】
試験エリア1は、後述する試験用トレイ9の載置部91に載置されたマガジン8に収納された、複数のバッテリセル7の試験を行うエリアである。本実施形態では、試験エリア1では、バッテリセル7の充放電試験が行われる。試験エリア1は、試験部11と、排気部12と、試験部の制御装置10とを含む。本実施形態では、試験エリア1には複数の試験部11が設けられ、各試験部11においてバッテリセル7の試験が行われる。試験部11の移送部2側には開閉可能なシャッタ111が設けられており、シャッタ111を開くことで試験用トレイ9を試験部11に搬入することができる。なお、本実施形態では、試験部11は、4行×4列の16個設けられているが、試験部11の数や配置は適宜設定可能である。具体的に本実施形態は、試験部11が4行×2列の8個を一組とする試験部群として構成され、その組が合計二組配置されている。排気部12は、一組の試験部群を構成する4行×1列の一方の試験部11と他方の試験部11との間に配置され、それぞれの試験部11と接続されることで試験部11内部の排気を行う。試験部の制御装置10は、試験部11及び排気部12を制御する。一例として、試験部の制御装置10は、シャッタ111の開閉や、試験時のバッテリセル7の充放電および試験、排気部12に設けられる排気用のファン(不図示)の駆動等を制御する。
【0012】
試験システムSYの試験エリア1および準備エリア3は、本実施形態においては、移送部2の一方側に配置され、移送部2によって試験用トレイ9の移送が試験エリア1と準備エリア3との間で行われる。また、試験エリア1または準備エリア3のいずれか一方を移送部2の他方側に配置させても良い。また、試験エリア1または準備エリア3を複数配置させても良い。これらの配置は、試験効率に応じて適宜決定し、配置させても良い。
【0013】
移送部2は、マガジン8が載置された状態の試験用トレイ9を、試験エリア1に移送する。本実施形態では、移送部2は、いわゆるスタッカクレーンであり、準備エリア3でマガジン8が載置された試験用トレイ9を試験エリア1の試験部11へと移送する。移送部2は、保持部21と、昇降部22と、走行部23とを含む。移送部2の移動経路には、移送部2の移動をガイドする経路ガイド部が設けられる。
【0014】
経路ガイド部は、移送部2の下部が係合可能な走行レール24が走行方向となるX方向に延設される。また、経路ガイド部は、移送部2の上方に設けられ、移送部2の上部が係合可能な上部レール25が走行レール24と同じく走行方向となるX方向に延設される。走行レール24および上部レール25は、走行方向に配置される試験部11および準備エリア3との間で試験用トレイ9の移送が可能な長さを有する。
【0015】
保持部21は、試験用トレイ9を保持する。本実施形態では、保持部21は、試験用トレイ9が載置される板状の部材である。また、保持部21は、試験部11に対して試験用トレイ9の出し入れを行うためのフォーク移動機構を含みうる。例えば、試験用トレイ9が保持部21の板状の部材に載置された状態で試験エリア1の所定の試験部11の前まで移送された後に、フォーク移動機構に含まれる移動体を試験部に移動させることにより試験用トレイ9が試験部に搬入される。
【0016】
昇降部22は、保持部21の鉛直方向(Z方向)の昇降移動をガイドする。昇降部22は、後述する昇降レール23bに沿って移動可能に支持される。
【0017】
走行部23は、X方向に延びる走行レール24に沿って移動可能に支持される走行体23aと、昇降部22の昇降方向への移動をガイドする昇降レール23b,23bと、を含む昇降支持体と、走行体23aを移動させる走行移動機構および昇降部22を移動させる昇降移動機構を含む移動機構部23dと、を備える。走行体23aは、走行レール24に係合する不図示の係合部および車輪が含まれる。
【0018】
昇降支持体231は、走行体23aの上部に支持され、上方に所定の長さで延設される支持部材であり、昇降部22の昇降移動をガイドする昇降レール23bが延設される。本実施形態では、昇降支持体231は、試験部11の高さより高い長さを有する。また、昇降レール23bは、昇降部22に支持される試験用トレイ9の試験部11への搬入または、試験部11からの搬出が可能な昇降方向の長さを有する。
【0019】
不図示のフォーク移動機構、昇降移動機構および走行移動機構は、それぞれの移動方向の任意の位置で停止可能に構成され、所定の試験部11への試験トレイ9の移送及び所定の試験部11からの試験トレイ9の取出しが可能である。なお、これらの具体的な構成については周知の技術を適用可能である。
【0020】
また、走行部23は、上部レール25に係合し、ガイドされる上部支持部23cを備える。上部支持部23cが上部レール25に移動可能に支持されることで、昇降支持体の揺れを防止し、安定して移動することを可能にする。
【0021】
また、移送部2は、保持部21、昇降部22及び走行部23の動作を制御する移送部の制御装置20を有する。移送部の制御装置20は、後述するホストコンピュータ5の指示に基づいて、保持部21、昇降部22及び走行部23を制御し、所定の試験部11および準備エリア3に試験トレイ9の移送制御を行う。
【0022】
準備エリア3は、試験エリア1で行われる試験の準備をするエリアであり、本実施形態ではマガジン8を試験用トレイ9の載置部91に移載する。準備エリア3は、走行レール24に沿って配置される。本実施形態では、以下で詳細に説明する移載装置3aによりマガジン8の移載が行われる。
【0023】
<移載装置>
図3は、移載装置3aの概略を示す斜視図である。移載装置3aは、準備エリア3に設けられ、マガジン8を試験用トレイ9の載置部91に移載する。移載装置3aは、マガジン搬送部31と、試験用トレイ搬送部32と、作業部33と、移載部34と、を含む。
【0024】
マガジン搬送部31は、マガジン8を試験システムSYの範囲外から試験システムSYの範囲内へ搬送する。また、マガジン搬送部31は、マガジン8を試験システムSYの範囲内から試験システムSYの範囲外へ搬送する。また、本実施形態では、マガジン搬送部31は、マガジン8を作業部33へ搬送する。具体的には、マガジン搬送部31は、試験前のバッテリセル7が収納されたマガジン8を試験システムSYの準備エリア3に設けられる作業部33に搬入する搬入コンベヤ311と、試験済みのバッテリセル7が収納されたマガジン8を試験システムSYの準備エリア3に設けられる作業部33から搬出する搬出コンベヤ312とを含む。複数のコンベヤが設けられることにより、マガジン8の移載がより効率的に行われる。本実施形態では、2レーン分のコンベヤが設けられる。
【0025】
試験用トレイ搬送部32は、試験用トレイ9を作業部33へ搬送する。また、試験用トレイ搬送部32は、試験用トレイ9を作業部33から搬送する。本実施形態では、試験用トレイ搬送部32は試験用トレイ9をX方向に搬送可能なコンベヤである。移載装置3aには、作業部33を挟むように搬入部35及び搬出部36が試験用トレイ搬送部32の搬送経路上に設けられる。搬入部35は、試験トレイ9が試験エリア1から準備エリア3へ搬送される際に移送部2により試験トレイ9の載置が行われる部分である。搬出部36は、試験トレイ9が準備エリア3から試験エリア1へ搬送される際に移送部2により試験トレイ9の取出しが行われる部分である。試験用トレイ搬送部32は、作業部33と搬入部35と搬出部36との間で試験用トレイ9を搬送する。
【0026】
図4A及び図4Bをあわせて参照する。図4Aは、作業部33の構成例を説明する平面図、図4Bは作業部33の構成例を説明する正面図である。
【0027】
作業部33は、試験用トレイ9へのマガジン8の移載作業や試験用トレイ9に設けられる加圧機構92の操作が行われる。これらの作業は、試験用トレイ搬送部32の上方に形成される作業領域330において行われる。作業部33は、昇降ユニット331と、操作ユニット332と、規制ユニット333と、支持部材334とを含む。
【0028】
昇降ユニット331は、試験用トレイ9の昇降を行う。また、昇降ユニット331は、試験トレイ9の支持を行う。昇降ユニット331は、試験用トレイ9を載置する載置部331aと、載置部を昇降させる昇降機構を含む昇降部331bと、を備える。本実施形態では、試験用トレイ9を、試験用トレイ搬送部32の搬送路と、その上部の作業領域330との間で昇降可能に構成される。昇降ユニット331には、電動シリンダ等の周知の技術を適用可能である。
【0029】
操作ユニット332は、試験用トレイ9に設けられる加圧機構92の操作を行う。操作ユニット332は、加圧機構92の操作部材9211に係合する係合部3321と、係合部3321を操作可能に駆動する駆動部3322とを含む。操作ユニット332の操作については後述する。
【0030】
規制ユニット333は、移載作業が行われる移載位置において試験用トレイ9の位置決めを行う。本実施形態では、作業領域330において昇降ユニット331に支持される試験トレイ9が規制部3331及び規制部3332により、移載位置における移動が規制され、試験用トレイ9が移載位置に位置決めされる。規制部3331及び規制部3332は、例えば試験用トレイ9を支持する支持部と、支持部を駆動する駆動部等により構成される。この場合の駆動部には、例えば電動又はエアシリンダ等、周知のアクチュエータを適用可能である。
【0031】
支持部材334は、操作ユニット332及び規制ユニット333を支持する。本実施形態では、試験用トレイ搬送部32の上方に設けられた支持部材334は板状の部材であり、その上面に作業領域330が形成される。また、支持部材334には、試験用トレイ9の外形サイズより大きい開口3341が形成されており、試験用トレイ9が昇降ユニット331により試験用トレイ搬送部32から作業領域330へ開口3341を介して移動される。
【0032】
移載部34は、作業部33に配置された試験用トレイ9にマガジン8を移載する。また、作業部33に配置された試験用トレイ9からマガジン8を移載する。より具体的には、移載部34は、搬入コンベヤ311から作業部33に配置された試験用トレイ9に未試験のバッテリセル7が収納されたマガジン8を移載する。また移載部34は、作業部33に配置された試験用トレイ9から搬出コンベヤ312に試験済みのバッテリセル7が収納されたマガジン8を移載する。
【0033】
また、移載部34は、保持ユニット341と、移動ユニット342とを含む。保持ユニット341は、マガジン8を保持する。本実施形態では、保持ユニット341は、マガジン8を保持する保持部材3411,3411と、保持部材3411,3411がお互いに接近・離間可能に移動させる移動機構を備える駆動部3412とを含む。保持部材3411は、マガジン8に設定される保持部に係合・離脱可能な係合部(不図示)を含み、駆動部3412が駆動することでマガジン8の保持および保持の解除を行う。
【0034】
移動ユニット342は、保持ユニット341を移動させる。移動ユニット342は、保持ユニット341を昇降方向と平行な方向に延びる昇降軸HCを中心に回転させる回転機構3421と、回転機構3421を昇降させる昇降機構3422と、昇降機構3422を昇降方向と直交する第一の水平方向となるX方向に移動させるX方向移動機構3423と、X方向移動機構3423を昇降方向およびX方向と直交する第二の水平方向となるY方向に移動させるY方向移動機構3424とを含む。
【0035】
回転機構3421は、保持ユニット341が固定される回転体3421aと、回転体3421aを昇降機構3422の昇降軸HC周りに回転移動させる回転移動機構を含む回転駆動部3421bと、を含む。回転駆動部3421bが駆動することで回転体3421aが昇降軸HCを中心に回転し、保持ユニット341を昇降軸HC周りに回転移動させる。昇降機構3422は、回転機構3421が固定される昇降移動体3422aと、昇降移動体3422aを昇降方向に移動させる昇降駆動部3422bと、を含む。昇降駆動部3422bが駆動することで昇降移動体3422aが昇降移動し、回転機構3421と共に保持ユニット341を昇降移動させる。X方向移動機構3423は、昇降機構3422が固定されるX方向移動体3423aと、X方向移動体3423aをX方向に移動させる第一水平駆動部3423bと、を含む。第一水平駆動部3423bが駆動することでX方向移動体3423aがX方向に往復移動し、昇降機構3422と共に保持ユニット341をX方向に水平移動させる。Y方向移動機構3424は、X方向移動機構3423がX方向に移動可能に係合する所定の長さのガイド部が設けられ、X方向に所定の長さで形成されるY方向移動体342aと、Y方向移動体3424aをY方向に移動させる第二水平駆動部3424bと、を含む。第二水平駆動部3424bが駆動することでY方向移動体3424aがY方向に往復移動し、X移動機構3423と共に保持ユニット341をY方向に水平移動させる。これらの機構には、例えば、モータを駆動源としたボールねじ機構、ラックピニオン機構、ベルト伝動機構等の機構を適用可能である。
【0036】
搬入部35は、試験用トレイ搬送部32の搬送路上に設けられ、試験用トレイ9が移送部2により搬入される場所である。本実施形態では、搬入部35には昇降ユニット351が設けられ、昇降ユニット351が試験用トレイ搬送部32の上方において試験用トレイ9を移送部2から受け取り可能に構成される。昇降ユニット351は、試験用トレイ9を載置する載置部351aと、載置部351aを昇降させる昇降機構を含む昇降部351bと、を備える。これにより、試験用トレイ搬送部32と移送部2の保持部21に設けられたフォーク等との間において試験用トレイ9の受け取りを容易に行うことができる。
【0037】
搬出部36は、試験用トレイ搬送部32の搬送路上に設けられ、試験用トレイ9が、移送部2により搬出されるのを待機する場所である。本実施形態では、搬出部36には昇降ユニット361が設けられ、昇降ユニット361が試験用トレイ搬送部32の上方において試験用トレイ9を移送部2に受け渡し可能に構成される。昇降ユニット361は、試験用トレイ9を載置する載置部361aと、載置部を昇降させる昇降機構を含む昇降部361bと、を備える。これにより、試験用トレイ搬送部32と移送部2の保持部21に設けられたフォーク等との間において試験用トレイ9の受け渡しを容易に行うことができる。
【0038】
また、移載装置3aは、移載部34を支持する移載支持部37と、作業部33を支持する作業支持部38とを含む。移載支持部37及び作業支持部38は、ベース部39に一体的に支持される。これにより、作業部33及び移載部34の相対位置が規定されるので、マガジン8の移載をより精度良く行うことができる。また、試験用トレイ搬送部32と作業部33との位置合わせを行うことで作業領域330の設定が可能となり、試験用トレイ搬送部32に対する移載装置3aの配置を容易に行うことができる。
【0039】
<ハードウェア構成例>
図5は、試験システムSYのハードウェアの構成例を示すブロック図である。試験システムSYは、上位装置であるホストコンピュータ5により統括的に制御される。例えば、ホストコンピュータ5が試験部の制御装置10、移送部の制御装置20及び準備の制御装置30に制御信号をそれぞれ送信すると、各制御装置10,20,30はホストコンピュータ5から受信した情報に基づいて各制御装置10,20,30がそれぞれ制御する制御範囲に含まれる各構成要素を制御する。なお、ホストコンピュータ5は、試験システムSYだけでなく、試験の上流工程であるバッテリセルの形成工程に関する装置も含めて、バッテリセル7の製造ライン全体を統括的に制御してもよい。
【0040】
ホストコンピュータ5は、処理部51と、記憶部52と、I/F部53とを含む。処理部51は、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサであり、記憶部52に記憶されたプログラムを実行して試験システムSYの各構成要素を統括的に制御する。記憶部52は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶デバイス(記憶手段)であり、処理部51が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/F部53(インタフェース部53)は、処理部51と外部デバイスとの間の信号の送受信をするインタフェースである。I/F部53は、例えばI/O(Input/Output)インタフェースや通信インタフェースを含み得る。本実施形態では、I/F部53は通信インタフェースを含み、通信回線54を介して他の装置と通信を行う通信デバイスであり、処理部51は通信インタフェースを介して各試験部の制御装置10,20,30と情報の送受信を行う。なお、管理の制御装置5(以下ホストコンピュータ5と称する)の全部又は一部がPLC(Programmable Logic Controller)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)で構成されてもよい。
【0041】
また、試験部の制御装置10は、処理部101と記憶部102とI/F部103とを含む。移送部の制御装置20は、処理部201と記憶部202とI/F部203とを含む。準備の制御装置30は、処理部301と記憶部302とI/F部303とを含む。これらは、ホストコンピュータ5の処理部51、記憶部52及びI/F部53とそれぞれ同様の構成を有しうる。
【0042】
<マガジン>
図6は、マガジン8及び試験用トレイ9の概略を示す斜視図である。
【0043】
マガジン8は、複数のバッテリセル7を配列して収納する容器である。マガジン8は、収納部81と支持部材82と複数の仕切部材83とを含む。複数のバッテリセル7がマガジン8に収納されることにより、バッテリセル7の製造工程においてバッテリセル7を効率的に移送することができる。
【0044】
収納部81は、バッテリセル7が配列されて収納される部分であり、収納部81の配列方向の一方側に設けられる前壁801と、収納部81の配列方向の他方側に設けられる後壁802と、前壁801と後壁802との間に設けられ、前壁801および後壁802の下端部に連結される底壁803と、底壁803の上方に離間して設けられ、前壁801と後壁802とを連結する一対の支持ガイド部材824,824と、を備える。一対の支持ガイド部材824,824は、配列方向と直交する水平方向に離間してそれぞれ配置され、前壁801および後壁802の配列方向と直交する水平方向のそれぞれの側端部に連結される。一対の支持ガイド部材824,824は、仕切部材83の配列方向への移動をガイドし、移動可能に支持する。本実施形態では、バッテリセル7は厚さ方向に薄肉な偏平形状を有しており、収納部81は複数のバッテリセル7が厚さ方向に配列されて収納される際に、複数の仕切部材83にそれぞれ支持され、収納部81に収納される。一対の支持ガイド部材824,824は、支持部材82の配列方向への移動をガイドし、移動可能に支持する。以下、厚さ方向をバッテリセル7の配列方向と称することがある。なお、バッテリセル7の厚さサイズは、種類に応じて異なることがあり、収納部81が収納可能なバッテリセル7の数はその厚さサイズに応じて適宜設定可能である。
【0045】
支持部材82は、バッテリセル7を配列方向に支持する部材であり、配列方向の一方側に配置される一方の支持部材82aと、配列方向の他方側に配置される他方の支持部材82bとが設けられる。それぞれの支持部材82a、82bは、配列方向の一方側から他方側に、もしくは、配列方向の他方側から一方側に、一対の支持ガイド部材824,824にそれぞれ支持され、移動可能に構成される。また支持部材82aは、一対の支持ガイド部材824,824にそれぞれ係合し、配列方向に移動可能に支持される一対の係合部82at,82atを備える。支持部材82aは収納部81に収納されるバッテリセル7の仕切部材83と前壁801との間に配列方向に設けられる。支持部材82aは、配列方向の一方側の面がバッテリ7を押圧する押圧面として設けられ、配列方向の他方側の面が後述する押圧部926に押圧される被押圧面として設けられる。また支持部材82bは、一対の支持ガイド部材824,824にそれぞれ係合し、配列方向に移動可能に支持される一対の係合部82bt,82btを備える。また、支持部材82bは収納部81に収納されるバッテリセル7の仕切部材83と後壁802との間に配列方向に設けられる。支持部材82bは、配列方向の一方側の面が後壁802と当接する一方当接面として設けられ、配列方向の他方の面が加圧機構92によって配列方向の一方向となる加圧方向に移動されるバッテリセル7(具体的には、後述の仕切部材83)と当接する他方当接面として設けられる。支持部材82bは、加圧機構92によって配列方向の一方向に移動されるバッテリ7が支持部材82bの他方当接面に当接することでバッテリ7と共に配列方向の一方向に移動される。
【0046】
また、配列方向の一方向に移動される支持部材82bは、支持部材82b一方当接面が後壁802と当接することで配列方向の一方向への移動が規制される。配列方向の一方向への移動が規制されることでマガジン8に対する支持部材82bの配列方向の位置が後壁802を基準に規定される。移動が規制された支持部材82bの他方当接面とバッテリセル7とが当接することで配列方向の一方向への移動が規制されると共に、マガジン8におけるバッテリセル7の配列方向の位置が支持部材82bを基準に規定される。また、移動が規定されるバッテリセル7が加圧機構92の加圧動作によって更に配列方向の一方向へ押し付けて移動させようとすることで圧力がバッテリセル7に付与される。本実施形態では、支持部材82aを介して加圧機構92からバッテリセル7へと圧力が付与される。
【0047】
仕切部材83は、収納部81に収納された複数のバッテリセル7の間に設けられる仕切部83aと、バッテリセル7を支持する支持部83bと、を含む。また仕切部材83は、一対の支持ガイド部材824,824にそれぞれ係合し、配列方向に移動可能な一対の係合部83c,83cを備える。複数の仕切部材83は、収納部81に収納される各バッテリセル7をそれぞれ支持すると共に仕切る部材である。仕切部材83は、収納部81に対してバッテリセル7の配列方向に摺動可能に設けられている。
【0048】
前壁801は、配列方向に貫通する孔として複数の開口84が形成される。前壁801の開口84は、マガジン8外部から支持部材82aに配列方向の力を付与するための開口である。配列方向の力は、後述する押圧部926が開口84を通過して支持部材82aを押し付けることで支持部材82aに付与される。前壁801には、押圧部926から支持部材82aに付与される圧力が均一になるように複数の開口84が所定の間隔で形成される。前壁801に設けられる開口84は、本実施形態では6つ形成される。しかし、支持部材82aの外形サイズより小さいサイズであれば、大きい一つの開口84が形成されてもよい。また、押圧部926から支持部材82aに付与される圧力が均一に付与されれば、2つ以上の開口84が形成されてもよい。また前壁801は、試験用トレイ9に載置された状態で配列方向の他方向へ移動された際に試験用トレイ9に設けられる後述の取出位置規定部9273に当接し、配列方向の他方向への移動が規制される。また底壁803は、試験用トレイ9に載置された状態で配列方向へ移動可能に後述する複数の幅方向規定部9271により配列方向と直交する水平方向への移動が規制される。
【0049】
<試験用トレイ>
試験用トレイ9は、バッテリセル7の充放電試験等に用いられ、マガジン8に収納されたバッテリセル7を押し付ける。試験用トレイ9は、壁部90と、載置部91と、加圧機構92とを有する。
【0050】
壁部90(図7A等参照)は、載置部91を間に挟んで配列方向の一方側に前壁901が、配列方向の他方側に後壁902が配置される。また、壁部90には、前壁901及び後壁902のそれぞれの下部と連結し、配列方向に延びる底壁903が含まれる。また、壁部90は、配列方向と直交する方向の前壁901、後壁902および底壁903のそれぞれの一方側および他方側と、連結する側壁904を含むと共に、上方が開口した箱状の形状を有する。なお、側壁904が設けられない構成も採用可能である。
【0051】
載置部91(図7A等参照)は、マガジン8を載置する部分であり、底壁903に設けられる。本実施形態では、複数のバッテリセル7が配列されて収納されるマガジン8が載置部91に載置される。
【0052】
加圧機構92は、載置部91に載置されたマガジン8に収納された複数のバッテリセル7を配列方向に押し付ける機構である。本実施形態では、加圧機構92は、配列方向の一方側となるマガジン8の前壁801側から、支持部材82aを移動させ、配列方向の一方向へ押し付けることでマガジン8に収納されたバッテリセル7を押し付ける。加圧機構92は、操作部921と伝達部材922と移動体923とガイド部材924と付与部材925(図7A等参照)と押圧部926とを含む。
【0053】
操作部921は、外部からの加圧機構92の操作を受け付けるものであり、前壁901の外側に設けられている。本実施形態では、操作部921は作業部33の操作ユニット332からの加圧機構92の操作を受け付ける。操作ユニット332が操作部921を配列方向に移動させることで移動体923も配列方向に移動される。操作部921は、操作部材9211を含む。操作部材9211は、操作ユニット332によって加圧機構92が操作される際に操作ユニット332と係合する部分である。本実施形態の操作部材9211は、伝達部材922の一方端部に設けられ、伝達部材922から配列方向と交差する方向に延出する円形状のフランジ部材である。
【0054】
伝達部材922は、操作部材9211と移動体923の板状部材9231とを接続する棒状の部材である。伝達部材922は、前壁901に形成された開口を通して設けられており、前壁901に対して相対移動可能に設けられる。
【0055】
伝達部材922には、操作規制部9221が形成されている。操作規制部9221は、後述する付与部材925により力が付与される向き(前壁901を基準として、板状部材9231が前壁901から離間する向き)に移動される伝達部材922の移動を規制する。本実施形態では、操作規制部9221は前壁901の外側の伝達部材922に設けられた鍔状の部材であり、前壁901の外面に当接することにより伝達部材922の移動を規制する。操作規制部9221により、操作部材9211と前壁901とを所定の間隔に離間した状態にし、操作ユニット332と操作部材9211との係合を可能にする。
【0056】
移動体923は、複数のバッテリセル7の配列方向に移動する部材である。移動体923は、操作部921が外部から操作されることで伝達部材922を介して伝達されることによって移動する。移動体923は、伝達部材922に接続する板状部材9231と、ガイド部材924に対して摺動可能な摺動体9232とを有する。板状部材9231は、伝達部材922が接続される接続部9231aと、摺動体9232が設けられる摺動支持部9231bと、押圧部926が設けられる押圧支持部9231cと、を備える。接続部9231aは、板状部材9231の中央部に設けられる。摺動体9232は、押圧方向と直交する方向の板状部材9231の一方端部および他方端部にそれぞれ2つずつ、合計4つが設けられ、上下方向に間隔を空けて構成される。
【0057】
ガイド部材924は、移動体923の移動を配列方向にガイドする。ガイド部材924は、バッテリセル7の配列方向に延びる棒状の部材であり、移動体923の摺動体9232がガイド部材924に沿って摺動可能なように設けられている。ガイド部材924は、配列方向と直交する前壁901および後壁902の一方端部および他方端部にそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられる。また、一方端部に設けられる2つのガイド部材924および他方端部に設けられる2つのガイド部材924はそれぞれ、上下方向に間隔を空けて平行に設けられる。ガイド部材924は、本実施例においては、断面円形の部材が採用される。
【0058】
付与部材925は、移動体923に対してバッテリセル7の配列方向の力を付与する。付与部材925は、例えばバネ等の弾性部材を含み得る。本実施形態では、付与部材925は、圧縮バネであり、前壁901と板状部材9231との間で伝達部材922との間に設けられている。
【0059】
押圧部926(図7A等参照)は、移動体923の板状部材9231に接続して設けられ、マガジン8の被押圧部である支持部材82aを押圧する。押圧部926は、載置部91に載置されたマガジン8の前壁801に形成された開口84の位置に対応する位置に一致するように板状部材9231の押圧支持部9231cに設けられる。押圧部926は、板状部材9231から配列方向に延びる所定の長さを有する棒状の部材である。押圧部926は、板状部材9231がマガジン8に近接する側に移動することにより、開口84を通過して支持部材82aを押圧することができる。
【0060】
規定部927は、載置部91に載置されたマガジン8の位置を規定する。本実施形態では、載置部91に設けられる複数の規制部927に画定される範囲が載置位置91a(二点鎖線)として設定される。マガジン8が載置部91の載置位置91aに載置された状態で加圧機構92によりマガジン8に収納されたバッテリセル7を押し付ける。そのため、規定部927によって加圧機構92に対するマガジン8の相対位置が規定される。また、規定部927は、マガジン8の取り出し時には、加圧機構92のよる加圧状態が解除され、移載部34によってマガジン8が載置位置91aの範囲内に設定される取り出し可能な位置でマガジン8を規定する。規定部927は、幅方向規定部9271と、取出位置規定部9273(図7A等参照)とを含む。また、規定部927は、加圧位置規定部9272を含み得る。
【0061】
幅方向規定部9271は、載置部91と水平な幅方向のマガジン8の位置を規定するべく、バッテリセル7の配列方向と交差する方向に間隔を空けて複数設けられる。本実施形態では、幅方向規定部9271は、底壁903から上方に突出して設けられ、規制部を備える直方体状の形状を有する部材である。この部材の規制部にマガジン8の側部が当接することによりマガジン8の位置が規定される。本実施形態においては、直方体状の幅方向規制部材9271を幅方向に間隔を空けて複数底壁903上に設けられる。
【0062】
加圧位置規定部9272は、マガジン8が加圧機構92により加圧される際の載置部91におけるマガジン8の配列方向の位置を規定する。本実施形態では、加圧位置規定部9272は、後壁902から加圧機構92側に突出するように設けられている。載置部91に載置されたマガジン8は、加圧機構92の加圧動作によって配列方向の一方側に移動され、加圧位置規定部9272とマガジン8の後壁802とが当接することにより載置部91におけるマガジン8の加圧位置が規定される。
【0063】
取出位置規定部9273は、マガジン8が載置部91から取り出される際のマガジン8の配列方向の位置における取り出し位置を規定する。本実施形態では、取出位置規定部9273は、底壁903から突出して設けられ、規定部を備える直方体状の形状を有する部材である。この部材の規定部にマガジン8の前壁801が当接することにより載置部91におけるマガジン8の取り出し位置が規定される。
【0064】
<マガジンの載置位置>
図7A図7Cは、試験用トレイ9の各状態を示す平面図である。図7Aは、試験用トレイ9にマガジン8が載置される前の試験用トレイ9の状態を示す図である。図7Bは、試験用トレイ9にマガジン8が載置されており、加圧機構92によるバッテリセル7の加圧が解除されている状態を示す図である。図7Cは、試験用トレイ9にマガジン8が載置されており、加圧機構92によりバッテリセル7が加圧されている状態を示す図である。
【0065】
図7Aで示す状態では、操作ユニット332(図4A参照)が操作部921を操作して移動体923を前壁901側に引っ張ることにより、圧縮バネである付与部材925が縮められ、押圧部926が載置位置91aの範囲外に配置されている。これにより、移載部34は、マガジン8が移動体923と干渉することなくマガジン8を載置部91の載置位置91aの範囲内に載置することができる。
【0066】
図7Bで示す状態では、マガジン8の位置が載置位置91aの範囲内に配置されている。移載部34がマガジン8を載置する場合、あるいは載置されているマガジン8を取り出す場合、マガジン8の前壁801及び後壁802に保持部材3411,3411を係合させることで保持することとなる。マガジン8を載置部91に載置する際には、載置位置91aの範囲内にマガジン8を載置し、マガジン8の前壁801及び後壁802と保持部材3411,3411との係合を解除することにより、マガジン8が載置91に載置される。また、マガジン8を試験用トレイ9から取り出す際には、マガジン8の位置を取出位置規定部9273で規定される載置位置91aの範囲内に移動させることにより、後壁802と加圧位置規定部9272との当接状態が解除され、マガジン8を上方へ移動させることが可能となる。
【0067】
図7Cで示す状態は、マガジン8が加圧位置規定部9272により規定されている。マガジン8は、付与部材925により力が付与された押圧部926によって後壁902側へと移動され、加圧位置規定部9272によりマガジン8の移動が規制されることで押圧されている。これにより、マガジン8に収納されているバッテリセル7に対して支持部材82aを介して圧力が付与される。すなわち、バッテリセル7が加圧状態となる。なお、本実施形態では、圧縮バネである付与部材925は、その自然長が図7Cで示す状態よりも長いものが用いられる。具体的には、圧縮バネである付与部材925の自然長は、押圧部926の長さより長いものが用いられる。これにより、付与部材925の弾性力により、バッテリセル7に対して圧力が付与される。
【0068】
また、加圧位置規定部9272により加圧状態における試験用トレイ9に対するマガジン8の相対位置が規定される。よって、試験用トレイ9が試験部11に移送された際、試験部11に対する試験用トレイ9の位置決めがなされると試験部11に対するマガジン8の位置も規定される。これにより、試験用トレイ9が試験部11に移送された際のマガジン8の位置決めを容易に行うことができる。よって、試験部11に設けられる試験ユニットの接触子の位置と、試験用トレイ9に載置されるマガジン8に収容されるそれぞれのバッテリセル7の電極の位置とを一致させることができる。
【0069】
<バッテリセルの製造工程の概略>
バッテリセル7の製造工程では、バッテリセル7を形成した後にバッテリセル7の試験を行う。図8は、バッテリセル7の製造工程の一部についての概略を示すフローチャートである。本実施形態では、バッテリセル7の製造工程には、バッテリセル形成工程(S1)、バッテリセル収納工程(S2)及びバッテリセル試験工程(S3)が含まれる。バッテリセル形成工程は、バッテリセル7を形成するバッテリセル収納工程は、バッテリセル形成工程で形成したバッテリセル7をマガジン8に収納する。バッテリセル試験工程は、バッテリセル収納工程でマガジン8に収納されたバッテリセル7の試験を行う。このように、本実施形態では、前述した試験システムSYによりバッテリセル7の試験が行われる前に、バッテリセル7の形成及び形成されたバッテリセル7のマガジン8への収納が行われる。
【0070】
図9は、図8のバッテリセル形成工程(S1)の具体例を示すフローチャートである。
【0071】
S101の電極積層工程では、正極、負極及びセパレータを順次積層することにより、電極積層体を形成する。例えば、正極は、集電体となるアルミニウム箔の両面に正極活物質をバインダを含むスラリとして塗布し、乾燥かつ圧延して所定の厚みの活物質層を形成したものであってもよい。積層された複数の正極の集電体端部は、互いに重ねられ、端子となる正極タブが超音波溶接され得る。また例えば、負極は、集電体となる銅箔の両面に負極活物質をバインダを含むスラリとして塗布し、乾燥かつ圧延して所定の厚みの活物質層を形成したものであってもよい。積層された複数の負極の集電体端部は、互いに重ねられ、端子となる負極タブが超音波溶接され得る。さらに例えば、セパレータは、正極と負極との間の短絡を防止すると同時に電解液を保持する機能を有するものであってもよく、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の合成樹脂の微多孔性膜あるいは不織布から構成され得る。
【0072】
S102の外装工程では、S101で形成された電極積層体が、可撓性を有するフィルム状の外装体の中に配置される。外装体は、例えば、アルミニウム箔の内側に合成樹脂製の熱融着層を、外側に合成樹脂製の保護層をそれぞれラミネートしてなる三層構造を有するラミネートフィルムで構成され得る。一例として、外装体は、電極積層体の下面側に配置される1枚のラミネートフィルムと上面側に配置される他の1枚のラミネートフィルムとにより構成される。そして、これら2枚のラミネートフィルムの間に電極積層体を配置し、周囲の四辺のうち一辺を注入口として残した上で、他の三辺を重ね合わせて互いに熱融着してもよい。
【0073】
S103の注液工程では、外装体の注液口から電解液の注液が行われる。例えば、注液は、所定の減圧状態で複数回に分けて行われる。これにより、外装体の内部に残存する空気を除去しつつ電解液の注液を行うことができる。
【0074】
S104の封止工程では、注入口を熱融着等により封止する。一実施形態において、ここでの封止はいわゆる仮封止である。後述する充放電後に、充電に伴って発生したガスを抜くために注入口、あるいはその近傍、が開封されるため、そのガス抜き後に最終的な封止が行われる。以上の工程により、バッテリセル7が形成される。
【0075】
<試験システムの制御例>
試験システムSYの制御例について説明する。図10は、試験システムSYの制御例を示すフローチャートであり、図8のS3の具体例を示す。例えば、本フローチャートは、ホストコンピュータ5又は各制御装置10,20,30のCPUがROM等に記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、各制御装置10,20,30が試験システムSYのそれぞれの制御範囲に含まれる各構成要素の動作を制御することで実現される。また例えば、本フローチャートによる試験システムSYの各構成要素の動作は、試験エリア1において試験を行うバッテリセル7が収納されたマガジン8に対して実行される。
【0076】
S300は、マガジン8が試験システムSYの範囲内へ移送される第1のマガジン移送工程であり、試験システムSYの範囲外でバッテリセル7を収納したマガジン8、すなわち未試験のバッテリセル7を収納したマガジン8が試験システムSYの範囲内に移送される。本実施形態では、不図示の移送装置等によって、マガジン搬送部31の搬入コンベヤ311に未試験のバッテリセル7を収納したマガジン8が移送される。
【0077】
S301は、第2のマガジン移送工程であり、搬入コンベヤ311は試験システムSYの外部から試験システムSYの範囲内に移送されてきたマガジン8を作業部33の近傍まで搬送する。例えば、ホストコンピュータ5の処理部51は、準備の制御装置30に対してマガジン8の搬送指示を行い、指示を受け付けた準備の制御装置30がマガジン搬送部31を制御し、マガジン8を搬送させる。
【0078】
S302は、マガジン載置工程であり、移載部34は搬入コンベア311に設定されるマガジン取出部に待機されるマガジン8を保持し、マガジン取出部から取り出して予め作業領域330に待機する試験用トレイ9に移載し、載置する。マガジン載置工程は、作業領域330において試験用トレイ9を支持し、規制ユニット333が動作することで試験用トレイ9が位置決めされる試験トレイ位置決め工程を含む。またマガジン載置工程は、作業領域330で位置決めされる試験用トレイ9の加圧機構92を操作ユニット332が動作することで操作し、加圧機構92の加圧状態を解除し、試験用トレイ9の載置部91へマガジン8の載置を可能にするマガジン載置準備工程を含む。また、マガジン載置工程は、試験用トレイ9の載置部91へマガジン8が載置され、移載部34がマガジン8の保持を解除するマガジン載置完了工程を含む。
【0079】
S303は、加圧工程であり、操作ユニット332が動作することで加圧機構92は試験用トレイ9に載置されたマガジン8に収納されたバッテリセル7を配列方向の一方側に押し付け、マガジン8と共にバッテリセル7を試験用トレイ9に保持する。加圧工程は、操作ユニット332を動作させることで加圧機構92を操作し、試験用トレイ9に載置されたマガジン8に収容されバッテリセル7を配列方向の一方側へ押し付けることで試験用トレイ9に対する所定の位置にマガジン8を移動させると共に、バッテリセル7をマガジン8に対する所定の位置に移動させる加圧移動工程と、配列方向に移動されたバッテリセル7をマガジン8の配列方向の所定の位置に位置決めすると共に試験用トレイ9に載置されるマガジン8を試験用トレイ9の配列方向の所定の位置に位置決めし、保持する加圧保持工程と、を含む。
【0080】
S304は、試験管理工程であり、処理部51は、試験エリア1の各試験部11の試験状況に関する情報を取得する。例えば、処理部51は、各試験部11の空き状況情報や、試験の完了予定時刻等の試験時間状況情報を試験部の制御装置10から取得する。試験管理工程は、各試験部11の試験状況の情報を収集する試験情報収集工程を含む。
【0081】
S305は、試験決定工程であり、処理部51は、試験管理工程で取得した試験状況の情報に基づいて、マガジン8を載置した試験用トレイ9の搬送先となる試験部11を決定する。試験決定工程は、各試験部11のそれぞれの試験情報を比較する試験情報比較工程と、比較したそれぞれの試験情報を基に試験用トレイ9の移送先となる試験部11を抽出する移送先抽出工程と、を含む。これにより、複数の試験部11の状況に応じて効果的に試験用トレイ9の移送を行うことができる。なお、処理部51は、本フローチャートで説明する処理とは別に、試験部11の試験状況に関する情報を取得し、管理してもよい。この場合には、処理部51は、試験管理工程の処理を省略し、管理している情報を元に搬送先となる試験部11を決定してもよい。なお、処理部51は、試験部11の情報を定期的に取得してもよい。また、試験部11の状況が更新された場合にその都度試験部の制御装置10から処理部51に更新された情報が送信されるように試験情報更新工程を含めてもよい。
【0082】
S306は、第1の試験用トレイ移送工程であり、試験用トレイ9を準備エリア3から試験エリア1に移送する。第1の試験用トレイ移送工程は、作業領域330にある試験用トレイ9を昇降ユニット331が動作することでその下方の試験用トレイ搬送部32に移動させ、搬送部32に移動された試験用トレイ9を試験用トレイ搬送部32により搬出部36まで搬送させる試験用トレイ搬出工程を含む。また第1の試験用トレイ移送工程は、搬出部36に移送された試験用トレイ9を移送部2のフォーク等により回収可能なように、昇降ユニット361が動作することで試験用トレイ9を搬送部32から持ち上げ、その後、試験決定工程で決定された試験部11まで移送部2が試験用トレイ9を移送する試験部移送工程を含む。本実施形態では、加圧工程でバッテリセル7を配列方向の一方側に予め押し付け、所定の位置に位置決めした状態に準備しているため、試験部11には、試験用トレイ9に対するマガジン8の位置およびマガジン8に対するバッテリセル7の位置が規定され、保持された加圧状態で試験用トレイ9が移送される。
【0083】
S307は、充放電試験実施工程であり、バッテリセル7の充放電に関する試験を予め設定される試験プロセスに基づいて実施する。試験プロセスとしては、初期充電、エージング、放電等の工程が含まれる。
【0084】
S308は、第2の試験用トレイ移送工程であり、試験管理工程の処理に基づき試験用トレイ9を試験エリア1から準備エリア3に移送する。第2の試験用トレイ移送工程は、移送部2が、試験用トレイ9を準備エリア3の搬入部35まで移送し、搬入部35の上方で昇降ユニット351に載置させ、昇降ユニット351が動作することでその下方に試験用トレイ9を移動させて試験用トレイ搬送部32に載置させる試験用トレイ搬入工程を含む。また第2の試験用トレイ移送工程は、試験用トレイ搬送部32に載置された試験用トレイ9を試験用トレイ搬送部32により作業部33に移動させ、作業部33に移送された試験用トレイ9を昇降ユニット331が動作することで上方の作業領域330に移動させる作業部移送工程を含む。
【0085】
S309は、加圧解除工程であり、試験用トレイ9の加圧機構92により加圧されたバッテリセル7の加圧状態を解除する。搬入部35に移送されてきた試験用トレイ9は、試験用トレイ搬送部32により作業部33の近傍まで搬送される。その後、試験用トレイ9は、移載部34により作業部33の作業領域330に移載される。操作ユニット332は、作業領域330に移送されてきた試験用トレイ9の操作部921を操作することにより、バッテリセル7の加圧状態を解除する。
【0086】
S310は、マガジン取出工程であり、移載部34は、試験用トレイ9の載置部91に載置されているマガジン8を試験用トレイ9から取り出す。移載部34は取り出したマガジン8を搬出コンベヤ312に移載する。マガジン8は搬出コンベヤ312により搬出位置まで搬送される。搬出位置の試験済バッテリセル7が収納されるマガジン8は不図示の搬送装置等によって下流工程が行われる場所まで運ばれる。本実施形態においては、例えば、再び封止工程に移送され、最終的な封止が行われる。
【0087】
なお、マガジン8が取り出された後の試験用トレイ9には、搬入コンベヤ311によって作業部33に搬送されてきた後続のマガジン8が載置される。このように、作業部33では、試験用トレイ9に載置されるマガジン8の入替が行われる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態では、加圧機構92を有する試験用トレイ9が試験を行う試験エリアでのみ使用され、試験工程の前後の工程においては加圧機構を有しないマガジン8によりバッテリセル7の搬送が行われる。したがって、加圧機構を有するマガジン8に比べてマガジン8の構成を簡素化することができる。これにより、部品点数の削減によるマガジン8のコスト低減が可能となる。また、本実施形態では、試験の前後の工程においてはマガジン8によりバッテリセル7が移送されるため、試験用トレイ9の必要数を低減することができ、製造設備全体における製造コストを低減することができる。
【0089】
また、本実施形態では、準備エリア3でマガジン8に収納される複数のバッテリセル7を配列方向の一方側に位置付けつつ、加圧状態とした上で試験用トレイ9が試験部11へと搬送される。したがって、例えばマガジン8にバッテリセル7の加圧機構を設けず試験部11で押し付ける機構を設けた場合と比べて試験効率の低下を抑制することができる。すなわち、試験部11にバッテリセル7を押し付ける機構を設けた場合、バッテリセル7の加圧動作及び加圧状態の解除動作を試験部11にて行う必要がある。よって、本実施形態の試験方法では、試験用トレイ9が試験部11を占有する一回あたりの時間を短縮することができるため、複数の試験部11を備える試験システムSY全体で見た場合の試験効率の低下を抑制することができる。
【0090】
<第2実施形態>
第2実施形態では、加圧機構が加圧移動規制部を有する等、加圧機構の構造が第1実施形態と異なる。以下、図11A図12Bを参照して第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する場合がある。
【0091】
図11A及び図11Bは、第2実施形態に係る試験用トレイ9の構成を説明する平面図である。図11Aはマガジン8に収納されたバッテリセル7が加圧されていない状態、図11Bはマガジン8に収納されたバッテリセル7が加圧されている状態をそれぞれ示している。
【0092】
加圧機構95は、操作部951と伝達部材952と移動体953とガイド部材924と付与部材955と押圧部926とを含む。加圧機構95の操作部951は、操作部材9511と、加圧移動規制部9512と、を有する。操作部材9511は、伝達部材952の一方端部に設けられ、伝達部材952から配列方向と交差する方向に延出する矩形状のフランジ部材である。加圧移動規制部9512は、付与部材955により力が付与される向きと反対向き(板状部材9531を基準として、操作部材9511が板状部材9531から離間する向き:X方向の正の向き)に移動される移動体953の移動を規制する。本実施形態では、加圧移動規制部9512は、伝達部材952の移動方向と交差する方向に突出して操作部材9511と板状部材9531との間に設けられる凸状の部材である。
【0093】
また、本実施形態では、付与部材955は、伝達部材952に設けられたフランジ部9522と移動体953の板状部材9531との間に設けられている。また、移動体953の板状部材9531は、フランジ部9522とフランジ部9523との間を摺動可能に設けられている。図12Aに示す状態においては、移動体953は、付与部材955の弾性力によってフランジ部9522を基準としてフランジ部9523側に押し付けられた状態で伝達部材952に構成されている。
【0094】
図12Aは、加圧移動規制部9512による規制動作を説明する図であって規制前の状態を示す図である。図12Bは、加圧移動規制部9512による規制動作を説明する図であって規制時の状態を示す図である。
【0095】
本実施形態では、伝達部材952は、操作部材9511と移動体953の板状部材9531とを接続する棒状の部材である。伝達部材952は、前壁901に形成された開口93を通して設けられており、前壁901に対して相対移動可能に設けられる。また、伝達部材952は、板状部材9531に形成された不図示の開口を通して設けられており、伝達部材952の他方端部には、伝達部材952から配列方向と交差する方向に延出する円形状のフランジ部9523が設けられ、伝達部材952と板状部材9531とが相対移動可能に構成される。伝達部材952は、操作ユニット332による操作部951の操作によって、軸方向に移動可能であるとともに移動体953に対して配列方向に延設される伝達部材952の軸心周りに回転可能に設けられる。
【0096】
また、開口93は、伝達部材952が挿通される中心開口93aと、伝達部材952の軸心周りに伝達部材952を所定の回転角度に移動させることで加圧移動規制部9512が通過可能なキー形状のキー開口93b,93bと、を有している。図12Aの例では、開口93のキー開口93b,93bは、中心開口93aから載置部91の載置面と平行な水平方向(Y方向)に延びる長い形状の開口が形成される。よって、伝達部材952から周方向に突出して設けられる加圧移動規制部9512をキー開口93b,93bと一致させることで開口93を通過させることができる。
【0097】
一方、加圧移動規制部9512が前壁901一方側から(図12Aの状態から)前壁901の他方側へ開口93を通過させた後、伝達部材952を回転させる(図12Bの例では90度回転させる)ことで加圧移動規制部9512とキー開口93b,93bとの位相が不一致となり、配列方向の他方側から一方側への移動体923の移動が前壁901により規制される。このため、伝達部材952に接続して設けられる移動体953の移動も規制される。
【0098】
バッテリセル7が加圧された状態で充放電等の試験が実施されると、バッテリセル7が膨張することがある。バッテリセル7が膨張すると、移動体953にはX方向の正の向き(後壁902を基準として前壁901側向き)の力が加わる。本実施形態では、加圧移動規制部9512によりバッテリセル7の膨張に起因する移動体953の移動を所定の移動範囲内に抑制することができる。
【0099】
<第3実施形態>
第3実施形態では、付与部材の構成が第1及び第2実施形態と異なる。以下、図13を参照して第3実施形態について説明するが、第1及び第2実施形態と同様の構成については説明を省略する場合がある。
【0100】
図13は、第3実施形態に係る試験用トレイ9の構成を説明する平面図である。第1及び第2実施形態の付与部材は、前壁901と移動体923との間に設けられ、反発力を付与する圧縮バネであるが、本実施形態の付与部材975は収縮力を付与する引っ張りバネである。
【0101】
加圧機構97の付与部材975は、ガイド部材924の周囲を取り巻くように設けられている。付与部材975は、一端が移動体923の摺動体9232に取り付けられており、もう一方の端部が後壁902に取り付けられている。そして、引っ張りバネである付与部材975が縮もうとする力により、移動体923が後壁902側(X方向の負の向き)に引っ張られる。この収縮力により、押圧部926によってマガジン8に収納されたバッテリセル7を押圧することができる。
【0102】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 試験エリア、2 移送部、3 準備エリア、7 バッテリセル、8 マガジン、9 試験用トレイ、SY 試験システム
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13