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特許7472301断熱パッド及びその製造方法、組電池及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】断熱パッド及びその製造方法、組電池及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20240415BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240415BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240415BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20240415BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20240415BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240415BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240415BHJP
【FI】
H01M10/658
C08J5/18
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/6555
H01M50/204 401H
H01M50/293
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022552289
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 CN2022077500
(87)【国際公開番号】W WO2022183953
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】202110236896.3
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522021826
【氏名又は名称】江▲蘇▼▲時▼代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.1000 Chengbei Road, Kunlun Street, Liyang City, Changzhou, Jiangsu 213300, China
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼智明
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼全
(72)【発明者】
【氏名】▲廖▼柏翔
(72)【発明者】
【氏名】郭▲海▼建
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/054229(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107141531(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52 - 10/667
H01M 50/20 - 50/298
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池に用いられる断熱パッドであって、
シリコンゴム及び前記シリコンゴム中に分散されたエアロゲルを含み、
前記エアロゲルが無機酸化物エアロゲル、炭素系エアロゲル、有機高分子エアロゲルから選択される一種又は複数種であり、
前記断熱パッドは、前記断熱パッドの片側表面が0.9MPaの圧力で600℃の高温面と5分間接触した後に圧力を解放し、さらに600℃の高温面と20min接触した後、前記断熱パッドの前記片側表面と前記片側表面に対向する他方側表面との間の温度差が≧150℃であることを満たす、
断熱パッド。
【請求項2】
前記温度差が200℃~465℃である、請求項1に記載の断熱パッド。
【請求項3】
前記断熱パッドの100℃での熱伝導率が0.022W/(m・K)~0.09W/(m・K)である、請求項1又は2に記載の断熱パッド。
【請求項4】
前記断熱パッドの圧縮強度が1MPa~30MPaである、請求項1~3のいずれか一項に記載の断熱パッド。
【請求項5】
前記断熱パッドの圧縮弾性率が5MPa~40MPaである、請求項1~4のいずれか一項に記載の断熱パッド。
【請求項6】
前記エアロゲルは、粒子の粒径が1.8mm~2.2mmであるエアロゲル、粒子の粒径が0.8mm~1.2mmであるエアロゲル、及び粒子の粒径が0.4mm~0.6mmであるエアロゲルを含み、且つ、
前記粒子の粒径が1.8mm~2.2mmであるエアロゲルと、前記粒子の粒径が0.8mm~1.2mmであるエアロゲルと、前記粒子の粒径が0.4mm~0.6mmであるエアロゲルとの体積比が、(25~40):(5~10):(1~3)である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の断熱パッド。
【請求項7】
記無機酸化物エアロゲルは酸化ケイ素エアロゲル、酸化アルミニウムエアロゲル、酸化ジルコニウムエアロゲル、酸化イットリウムエアロゲルから選択される一種又は複数種である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱パッド。
【請求項8】
前記エアロゲルの表面にポリマーが修飾される
請求項1~7のいずれか一項に記載の断熱パッド。
【請求項9】
前記ポリマーは、ポリエン酸類、ポリエン酸エステル類、ポリエーテル類、ポリアルコール類、ポリオレフィン類及びそれらの誘導体、それらの共重合体から選択される一種又は複数種である、請求項8に記載の断熱パッド。
【請求項10】
前記シリコンゴムは、縮合型シリコンゴム又は付加型シリコンゴムを採用する、請求項1~のいずれか一項に記載の断熱パッド。
【請求項11】
前記シリコンゴムは二成分付加型シリコンゴムを採用する、
請求項10に記載の断熱パッド。
【請求項12】
前記シリコンゴムは、シリコーンゴム、メチルビニルシリコンゴム、フェニルメチルビニルシリコンゴム、ニトリルシリコンゴム、シラザンゴムのうちの一種又は複数種を含む、
請求項11に記載の断熱パッド。
【請求項13】
前記シリコンゴムが発泡シリコンゴムを含む、請求項10に記載の断熱パッド。
【請求項14】
配列して設置された複数の電池セルを含む組電池であって、
少なくとも二つの隣接する前記電池セルの間に請求項1~13のいずれか一項に記載の断熱パッドが設置された、
組電池。
【請求項15】
請求項14に記載の組電池を含む、電力消費装置。
【請求項16】
断熱パッドの製造方法であって、
エアロゲルを液状シリコンゴムに分散して膜状体に製造するステップと、
膜状体を加硫成形して断熱パッドを得るステップと、を含み、
前記エアロゲルが無機酸化物エアロゲル、炭素系エアロゲル、有機高分子エアロゲルから選択される一種又は複数種であり、
前記断熱パッドは、前記断熱パッドの片側表面が0.9MPaの圧力で600℃の高温面と5分間接触した後に圧力を解放し、さらに600℃の高温面と20min接触した後、前記断熱パッドの前記片側表面と前記片側表面に対向する反対側表面との間の温度差が≧150℃であることを満たす、
断熱パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年3月3日に提出された「断熱パッド及びその製造方法、組電池及び装置」という名称の中国特許出願202110236896.3の優先権を主張し、該出願の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、エネルギー貯蔵装置の技術分野に属し、具体的に断熱パッド及びその製造方法、組電池及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池はエネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、汚染がなく、かつメモリ効果がないなどの利点を有するため、様々な消費用電子製品及び例えば電動車両、エネルギー貯蔵システムなどの大型装置の分野に広く応用されている。例えば、環境保護の問題が日増しに重視されるにつれて、新エネルギー電気自動車が日増しに普及している。
【0004】
電気自動車の航続距離の需要を満たすために、組電池は通常に複数の電池セルが直並列されて組み合わせることを採用する。組電池のうちの一つ又は複数の電池セルが熱暴走した時、組電池内の熱暴走の伝播を引き起こしやすく、潜在的な安全リスクをもたらす。組電池の安全性能は電気自動車と乗客の安全に直接影響を与えるため、如何に組電池の安全性能を効果的に改善するかは早急に解決すべき技術的問題となる。
【発明の概要】
【0005】
背景技術に存在する技術的問題に鑑み、本願は、断熱パッド及びその製造方法、組電池及び装置を提供して、組電池の安全性能を効果的に改善することを目的とする。
【0006】
本願の第1の態様は、組電池に用いられる断熱パッドであって、
シリコンゴム及びシリコンゴム中に分散されたエアロゲルを含み、
ここで、断熱パッドは、断熱パッドの片側表面が0.9MPaの圧力で600℃の高温面と5分間接触した後に圧力を解放し、さらに600℃の高温面と20min接触した後、断熱パッドの前記片側表面と前記片側表面に対向する他方側表面との間の温度差が≧150℃であることを満たす、断熱パッドを提供する。
【0007】
本願に係る断熱パッドはシリコンゴムとエアロゲルで複合して形成され、かつ高温面に加圧接触する表面と反対側の表面との間の温度差が≧150℃であることを満たす。これにより、断熱パッドを組電池に応用すると、電池セル間の熱伝導を効果的に遮断して組電池内に熱暴走の伝播を大幅に減少することを実現することができ、それにより組電池の安全性能を向上させる。
【0008】
いくつかの実施例において、前記温度差は≧200℃である。いくつかの実施例において、前記温度差は≧300℃である。いくつかの実施例において、前記温度差は200℃~465℃である。いくつかの実施例において、前記温度差は300℃~465℃である。
【0009】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、断熱パッドは、100℃での熱伝導率が≦0.13W/(m・K)であり、選択的に0.022W/(m・K)~0.09W/(m・K)であり、さらに選択的に0.023W/(m・K)~0.05W/(m・K)である。断熱パッドの熱伝導率が低いと、電池セル間の熱伝導に対する遮断効果を向上させることに有利であり、それにより組電池の安全性能を向上させる。断熱パッドの熱伝導率は適切な範囲内にあれば、組電池の安全性能を改善することができるだけでなく、組電池に長いサイクル寿命を持たせることができる。
【0010】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、断熱パッドの圧縮強度は1MPa~30MPaであり、選択的に3MPa~25MPaであり、さらに選択的に5MPa~20MPaである。断熱パッドの圧縮強度は適切な範囲内にあれば、電池セルの循環膨張力の作用で破裂又は降伏が発生しにくいことを確保することができ、それにより断熱及び循環膨張を緩衝する作用を長期に効果的に発揮することができる。
【0011】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、断熱パッドの圧縮弾性率は1MPa~40MPaであり、選択的に5MPa~40MPaであり、さらに選択的に10MPa~30MPaであり、よりさらに選択的に15MPa~25MPaである。断熱パッドは優れた圧縮弾性率を有し、電池セルの循環膨張の応力を緩衝することができ、それにより組電池の安全性能をさらに改善することができ、かつ組電池が高い循環容量保持率を有することに有利である。
【0012】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、断熱パッドの厚さは1mm~10mmであり、選択的に2mm~6mmである。断熱パッドの厚さが適切な範囲内にあれば、電池は高い安全性能及び高い体積エネルギー密度又は重量エネルギー密度を取得することができる。
【0013】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、エアロゲルは球形又は略球形の粒子である。エアロゲルは球状又は略球状の形態を有すると、圧力を受けた時の応力集中の現象を減少させることができ、これにより粒子が破裂しにくいことかつ粒子内部の孔隙構造が破壊しにくいことを確保し、それにより断熱パッドが高い長期断熱性能を有することができる。
【0014】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、エアロゲルの粒子の粒径は0.1mm~5mmであり、選択的に0.3mm~3mmである。エアロゲルの粒子の粒径は適切な範囲内にあれば、エアロゲル粒子の分散均一性を向上させるだけでなく、断熱パッドが高いエアロゲルの体積割合を有することも確保するため、断熱パッドが高い断熱性能を得ることができる。
【0015】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、エアロゲルは粒子の粒径が1.8mm~2.2mmであるエアロゲル、粒子の粒径が0.8mm~1.2mmであるエアロゲル、及び粒子の粒径が0.4mm~0.6mmであるエアロゲルを含む。粒子の粒径を適宜に組み合わせることにより、断熱パッドにおけるエアロゲルの体積割合をさらに向上させることができる。同時に、粒子の空隙の間に多くのシリコンゴムが出現して発生可能なヒートブリッジ現象を減少させることができ、それにより断熱パッドの断熱効果をさらに向上させる。
【0016】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、エアロゲルにおける粒子の粒径が1.8mm~2.2mmであるエアロゲルと、粒子の粒径が0.8mm~1.2mmであるエアロゲルと、粒子の粒径が0.4mm~0.6mmであるエアロゲルとの体積比は(25~40):(5~10):(1~3)である。粒子の粒径の組み合わせをさらに改善することにより、断熱パッドの断熱性能をさらに向上させることができる。
【0017】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、エアロゲルの孔径は1nm~500nmであり、選択的に10nm~100nmであり、さらに選択的に30nm~50nmである。エアロゲルはサイズが適切なナノスケールの多孔質構造を有し、断熱パッドの断熱性能をさらに向上させることができる。
【0018】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、エアロゲルは無機酸化物エアロゲル、炭素系エアロゲル、有機高分子エアロゲルから選択される一種又は複数種である。いくつかの実施例において、エアロゲルは無機酸化物エアロゲルから選択される。選択的に、エアロゲルは酸化ケイ素エアロゲル、酸化アルミニウムエアロゲル、酸化ジルコニウムエアロゲル、酸化イットリウムエアロゲルから選択される一種又は複数種である。
【0019】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、エアロゲル粒子の表面にポリマーが修飾された。ポリマーはポリエン酸類、ポリエン酸エステル類、ポリエーテル類、ポリアルコール類、ポリオレフィン類及びそれらの誘導体、それらの共重合体のうちから選択される一種又は複数種。いくつかの実施例において、ポリマーはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン及びそれらの誘導体、それらの共重合体から選択される一種又は複数種である。ポリマーで修飾されたエアロゲルを採用することにより、断熱パッドは断熱効果をよりよく発揮することができる。
【0020】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、シリコンゴムは縮合型シリコンゴム又は付加型シリコンゴムを採用し、選択的に二成分付加型シリコンゴムを採用する。二成分付加型シリコンゴムは加硫過程において収縮しにくく、かつ得られた断熱パッドの構造強度が高い。
【0021】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、シリコンゴムはシリコーンゴム、メチルビニルシリコンゴム、フェニルメチルビニルシリコンゴム、ニトリルシリコンゴム(nitrile silicone rubber)、シラザンゴム(silazane rubber)のうちの一種又は複数種を含む。いくつかの実施例において、シリコンゴムは二成分付加型シリコーンゴムを含む。
【0022】
本願の第1の態様のいずれかの実施形態において、シリコンゴムは発泡シリコンゴムを含む。
【0023】
本願の第2の態様は組電池を提供し、組電池は配列して設置された複数の電池セルを含み、少なくとも二つの隣接する電池セルの間に断熱パッドが設置され、少なくとも一つの断熱パッドは本願に係る断熱パッドである。本願の組電池は本願に係る断熱パッドを採用するため、少なくとも高い安全性能を得ることができる。
【0024】
本願の第3の態様は本願に係る組電池を含む電力消費装置を提供する組電池。本願の電力消費装置は本願に係る組電池を採用するため、少なくとも高い安全性能を得ることができる。
【0025】
本願の第4の態様は、断熱パッドの製造方法であって、エアロゲルを液状シリコンゴムに分散して膜状体に製造するステップと、膜状体を加硫成形して断熱パッドを得るステップと、を含み、ここで、前記断熱パッドは、断熱パッドの片側表面が0.9MPaの圧力で600℃の高温面と5分間接触した後に圧力を解放し、さらに600℃の高温面と20min接触した後、断熱パッドの前記片側表面と前記片側表面に対向する他方側表面との間の温度差が≧150℃であることを満たす、断熱パッドの製造方法を提供する。
【0026】
本願の第2の態様のいずれかの実施形態において、液状シリコンゴムがエアロゲルに対する質量比は1:(0.2~2)である。
【0027】
本願の第2の態様のいずれかの実施形態において、液状シリコンゴムがエアロゲルに対する体積比は50:50~8:92であり、選択的に30:70~10:90である。
【0028】
本願の第2の態様のいずれかの実施形態において、液状シリコンゴムの粘度は0.1Pa・s~50Pa・sであり、選択的に0.3Pa・s~25Pa・sであり、さらに選択的に0.5Pa・s~15Pa・sである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下に本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に記載の図面は本願のいくつかの実施例に過ぎない。当業者であれば、創造的労働をしない前提で、さらに図面に基づいて他の図面を取得することができる。説明すべきこととして、図面は実際の比率で描かれない。
図1】本願の一つの実施例に係る車両の模式図である。
図2】本願の一つの実施例に係る組電池の分解概略図である。
図3】本願の一つの実施例に係る別の組電池の構造概略図であり、ここで、組電池の外装及び他の部品を省略する。
図4】本願の一つの実施例に係る断熱パッドの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願の発明目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下に実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。理解すべきこととして、本明細書に記載の実施例は本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではない。
【0031】
簡単のために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを明確に開示した。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。また、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。同様に、任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はいずれも当該範囲内に含まれている。したがって、各点又は単一の数値は自体の下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0032】
本明細書の説明において、説明すべきこととして、特に説明しない限り、「~」で示される数値範囲は二つの端値、及び二つの端値の間にある任意の数値を含む。例えば、「1~30」は、1、30、及び1と30との間にある任意の数値(例えば4.5、5、7、10、13、15、16.3、20、23等)を含む。「いくつかの」の意味は一つ又は一つ以上である。「複数/複数種」の意味は二つ/二種以上(二つ/二種を含む)である。「以上」、「以下」は本数自体を含む。用語「上」、「下」、「内」、「外」等の指示された方位又は位置関係は、図面に基づいて示された方位又は位置関係であるが、説明を簡略化し又は容易にするためだけであり、その装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構造して操作しなければならないことを指示するか又は暗示するものではない。したがって、それが本明細書を限定するものと理解すべきではない。
【0033】
本願の説明において、さらに説明すべきこととして、他に明確な規定及び限定がない限り、用語「取り付け」、「連結」、「接続」を広義に理解すべきである。例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能に接続されてもよく、又は一体的に接続されてもよい。直接的に接続されてもよく、中間媒体を介して間接的に接続されてもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0034】
上記した本願の発明の概要は、本願の各実施形態や各実施形態を説明するためのものではない。以下、本実施形態をより具体的に例示的に説明する。出願全体の複数箇所において、一連の実施例により教示を提供し、これらの実施例は様々な組み合わせ形式で使用することができる。各実施例において、代表的なグループのみを列挙し、網羅的に解釈すべきではない。
【0035】
本願の実施例に記載の装置は電池を使用する任意の装置であってもよい。装置の例は携帯機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン、携帯機器など)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、バッテリーカー、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電動工具(例えば電動ドリル、電動グラインダ、電動レンチ、電動ドライバ、電動ハンマ、インパクトドリル、コンクリート振動子、電気平削りなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであるが、これらに限定されない。
【0036】
装置は、本願の実施例に係る組電池を含む。組電池は装置の電源として用いられることができ、装置に電気エネルギーを供給するために用いられ、装置のエネルギー貯蔵ユニットとしてあってもよい。
【0037】
図1は一例としての装置の概略構成図である。当該装置は電動車両1であり、純粋な電気自動車、ハイブリッド自動車又は航続距離延長型自動車等であってもよい。電動車両1の内部には、組電池10が設けられてもよい。組電池10は、電動車両1の電源として用いられ、装置に動力を提供し、又は、例えばナビゲーション、空気調和装置、オーディオ等の他の動作電力消費需要を満たすために用いられる。組電池10に含まれる電池セルの数量および組電池10の取付位置は、実際の需要に応じて調整することができる。例として、組電池10は電動車両1の底部に設置されてもよく、かつ車頭又は車尾に位置してもよい。電動車両1にコントローラ20及びモータ30をさらに設置することができ、コントローラ20は、組電池10がモータ30に電力を供給するように制御する。
【0038】
組電池10は、高電圧及び高容量の需要を満たすように、複数の電池セルを含む。複数の電池セルの間は、直列、並列、または直列と並列とが混在して接続されていてもよい(直並列ともいう)。組電池10は、電池パック又は電池モジュールであってもよい。
【0039】
図2は、一例としての組電池10の分解模式図である。組電池10は、電池パックである。図2に示すように、電池パックは直列、並列又は直列された複数の電池セル60を含むことができる。電池パックは、筐体(または、カバー体ともいう)をさらに有することができる。筐体は、第1の筐体51及び第2の筐体52を含むことができ、第1の筐体51と第2の筐体52は互いに嵌合して密閉チャンバを有する筐体を形成することができる。複数の電池セル60は、筐体内に収容される。組電池に含まれる電池セル60の数量は、実際の需要に応じて調節することができる。
【0040】
図3は本願に係る別の組電池10の構造概略図である。組電池10は、電池モジュール40である。図3に示すように、電池モジュール40は直列、並列又は直並列されかつ並設された複数の電池セル60を備える。電池モジュール40に含まれる電池セル60の数量は、実際の需要に応じて調節することができる。本願において、電池セル60はリチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、リチウム硫黄電池、ナトリウムリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池などから選択することができるが、本願はこれを限定しない。電池セル60は円柱体、扁平体、直方体又は他の形状等を呈することができるが、本願はこれも限定しない。
【0041】
電池モジュール40において、少なくとも二つの隣接する電池セル60の間に本願のいずれかの実施例に係る断熱パッド70が設置されている。断熱パッド70は、熱を遮断する役割を果たす。いくつかの実施例において、複数の電池セル60は電池モジュール40の長手方向に沿って配列して設置され、かつ隣接する二つの電池セル60の間は最大側面が対向している。ここで、最大側面とは、電池セルの外表面における面積が最も大きい側面を意味する。隣接する二組の電池セル60の間には、断熱パッド70が設けられている。断熱パッド70は、電池セル60と面接触していてもよいし、接触していなくてもよい。各組の電池セル60に含まれる電池セル60の数量は1個又は複数であってもよく、例えば1~5個、又は2~4個等であり、さらに例えば1個、2個、又は3個等である。
【0042】
電池モジュール40は複数の電池セル60を固定するために用いられる固定組立体(図示せず)をさらに備えることができる。例として、固定組立体は、収容空間及び収容空間に連通する開口を有するケースと、蓋体とを備えることができる。電池セル60を収容空間内に配置し、かつ開口を密封するように蓋体をケースにカバーする。当然のことながら、固定組立体は本分野で既知の他の電池セル60を固定できる構造を採用することもできる。
【0043】
次に、本願の実施例に係る断熱パッド70について詳細に説明する。
【0044】
図4は、一例としての断熱パッド70の模式図である。図4に示すように、本願の実施例に係る断熱パッド70はシリコンゴム71と、シリコンゴム71内に分散されたエアロゲル72とを含む。ここで、断熱パッド70は、断熱パッド70の片側表面が0.9MPaの圧力で600℃の高温面と5分間接触した後に圧力を解放し、さらに600℃の高温面と20分間接触した後、断熱パッド70の片側表面およびその片側表面に対向する他方側表面との間の温度差が≧150℃であることを満たす。
【0045】
高温面は熱伝導板を採用することができる。熱伝導板は、既知の0.9MPaの圧力及び600℃の温度に耐えることができ、かつ良好な熱伝導性を有する板から選択することができる。例えば、熱伝導板は合金鋼板を採用することができる。熱伝導板の形状は断熱パッド70の形状と同じであり、かつそれらの縁部が整列する。熱伝導板の厚さは10mm~30mmであってもよく、例えば26mmである。
【0046】
断熱パッド70は厚さ方向に対向する二つの表面を有し、一つの表面が一枚の熱伝導板に面接触し、他の表面が他の熱伝導板に面接触する。上記温度差は当該二つの表面の間の温度差である。
【0047】
例として、断熱パッド70は二枚の熱伝導板の間に挟持されて積層体を形成し、積層体に0.9MPaの圧力を印加し、かつ断熱パッド70の片側の熱伝導板を600℃に加熱して5分間保持した後に圧力を解放し、さらに断熱パッド70を600℃の熱伝導板と20分間接触させた後、断熱パッド70における600℃の熱伝導板と接触する表面と前記表面の反対側の表面との間の温度差が≧150℃である。
【0048】
より具体的な例として、断熱パッド70自体の厚さ方向での片側表面を合金鋼板の表面と面接触しかつ縁部を整列し、断熱パッド70自体の厚さ方向での他方側表面を他の合金鋼板の表面と面接触しかつ縁部を整列し、断熱パッド70が二枚の合金鋼板の間に挟持された積層体を形成する。当該積層体に積層方向(即ち断熱パッド70の厚さ方向)に沿って0.9MPaの圧力を印加する。次に、断熱パッド70の片側の合金鋼板を600℃に加熱して5分間保温保圧した後に圧力を解放する。断熱パッド70が600℃の合金鋼板と20分間接触した後、断熱パッド70の600℃の合金鋼板と接触する片側表面の温度(即ち、断熱パッド70の高温面温度)T1、及び片側表面と対向する他方側表面の温度(即ち、断熱パッド70の冷面温度)T2を測定し、ここではT1-T2≧150℃を満たす。
【0049】
断熱パッド70の形状は特に限定されず、電池セル60の形状及び構造に応じて選択することができる。例として、断熱パッド70は円形、長方形又は他の多角形のシート状体であってもよい。
【0050】
本願に係る断熱パッド70はシリコンゴム71とエアロゲル72で複合して形成される。エアロゲル72は、ナノポーラス構造且つ熱伝導率が低いという優れた性能を有する。シリコンゴム71は、優れた耐熱性を有するため高温で分解しにくいことを確保するだけでなく、その自体の分子構造の特徴により断熱パッド70が優れた圧縮力学的性質を有する。発明者は、断熱パッド70の上記温度差が断熱パッド70の熱伝導率、厚さ、圧縮力学的性質等の総合表現であり、断熱パッド70が組電池10において熱暴走電池セル60の熱伝導を遮断する性能指標とすることができることを発見した。断熱パッド70は上記温度差が適切な範囲内にあることを満たす場合、断熱パッド70を組電池10に応用すると、熱暴走が発生した電池セル60から隣接する電池セル60への熱伝導をより効果的に遮断し、組電池10内の熱暴走を大幅に遅延することができ、それにより組電池10の安全性能を向上させる。
【0051】
いくつかの実施例において、前記温度差は≧200℃、≧300℃、≧350℃、又は≧400℃である。選択的に、前記温度差は150℃~500℃、200℃~480℃、200℃~465℃、270℃~470℃、300℃~465℃、350℃~465℃、310℃~450℃、又は320℃~400℃である。断熱パッド70の前記温度差は適切な範囲内にあれば、断熱パッド70が低い熱伝導率を有するだけでなく、電池セル60の循環膨張応力に耐えることができ、それにより断熱作用をよりよく発揮することができ、組電池10が高い安全性能を取得できる。
【0052】
いくつかの実施例において、断熱パッド70の100℃での熱伝導率は≦0.13W/(m・K)である。断熱パッド70の熱伝導率が小さいほど、断熱性能が高く、それにより電池の安全性能をさらに改善することができる。いくつかの実施例において、断熱パッド70の100℃での熱伝導率は0.022W/(m・K)~0.09W/(m・K)であり、選択的に0.022W/(m・K)~0.085W/(m・K)、0.025W/(m・K)~0.065W/(m・K)、0.023W/(m・K)~0.05W/(m・K)、0.03W/(m・K)~0.06W/(m・K)、又は0.03W/(m・K)~0.05W/(m・K)などである。断熱パッド70の熱伝導率が適切な範囲内にあれば、それが含有するシリコンゴム71及びエアロゲル72の割合がより適切であり、高い断熱性能を有すると同時に、高い圧縮弾性率及び圧縮強度を有することができ、それにより組電池10は高い安全性能及び長いサイクル寿命を有することができる。
【0053】
いくつかの実施例において、断熱パッド70の圧縮強度は1MPa~45MPaであり、選択的に1MPa~30MPa、2MPa~26MPa、3MPa~25MPa、4MPa~22MPa、又は5MPa~20MPaである。組電池10の使用過程において、電池セル60は大きな循環膨張力を発生する。断熱パッド70の圧縮強度は適切な範囲内にあれば、それが電池セル60の循環膨張力の作用で破裂又は降伏が発生しにくいことを確保することができ、それにより断熱及び緩衝循環膨張の作用を長期に効果的に発揮することができる。
【0054】
いくつかの実施例において、断熱パッド70の圧縮弾性率は1MPa~40MPa、5MPa~40MPa、3MPa~30MPa、10MPa~30MPa、4MPa~28MPa、5MPa~25MPa、6MPa~20MPa、10MPa~25MPa、10MPa~20MPa、又は15MPa~25MPa等である。断熱パッド70の圧縮弾性率は適切な範囲内にあれば、良好な断熱効果を発揮すると同時に、電池セル60の膨張需要を満たし、特に電池セル60の循環膨張を効果的に緩衝することができるため、コア内部の応力を制御することができ、それによりコアが押圧されることによる電池セル60内の短絡又は液漏れの問題を低減させることができ、さらに電池セル60内の過大な内圧が防爆弁を破るリスクも低減させることができるため、組電池10の安全性能をさらに改善することができる。
【0055】
また、断熱パッド70は電池セル60の循環膨張応力を低下させ、さらにコア内部の電解液の十分な浸潤に有利であり、コア内に良好なイオン伝導界面を保持させ、それにより組電池10が高い循環容量保持率を有することにも有利である。
【0056】
いくつかの実施例において、断熱パッド70の厚さは1mm~10mmであり、選択的に1mm~8mm、1.5mm~5mm、2mm~6mm、又は2mm~4mm等である。断熱パッド70の厚さは適切な範囲内にあれば、熱を効果的に遮断し且つ膨張応力を緩衝することができると同時に、組電池10がより小さい体積又は重量を有することに有利であり、それにより電池がより高い安全性能及びより高い体積エネルギー密度又は重量エネルギー密度を得ることができる。
【0057】
いくつかの実施例において、エアロゲル72は球状又は略球状の粒子である。選択的に、エアロゲルの球形度≧0.8である。真球度は、粒子における複数(例えば5個)の異なる配向径の平均値(最大径を含む)が最大径に対する比である。粒子の直径は本分野の既知の方法、例えばノギスを用いて測定することができる。球形度が1に近いほど、粒子形態が球形に近似する。エアロゲル72は球形又は略球形の形態を有し、圧力(例えば断熱パッド70の製造におけるプレス成形の圧力、又は使用中に受けた電池セル60の循環膨張力)を受ける時に応力分布が均一になり、応力集中現象を減少させることができ、これにより粒子が破裂にくくかつ粒子内部の孔隙構造が破壊しにくいことを確保し、それにより断熱パッド70が高い長期断熱性能を有することができる。また、球状又は略球状の形態のエアロゲル72粒子自体は良好な流動性を有し、シリコンゴム71に均一に分散されることに有利であり、かつシリコンゴム71と大きな接触面積を有して粉落ちの発生を回避するため、断熱パッド70全体は良好な力学的性能の一致性及び高い断熱効果を有することができる。
【0058】
いくつかの実施例において、エアロゲル72の粒子の粒径は0.1mm~5mmであり、選択的に0.2mm~4mm、0.3mm~3mm、又は0.5mm~2mm等である。エアロゲル72の粒子の粒径は適切な範囲内にあれば、エアロゲル72の粒子の分散均一性がよくなるだけでなく、断熱パッド70が高いエアロゲル72の体積割合を有することを確保するため、断熱パッド70が高い断熱性能を得ることができる。また、エアロゲル72の粒子の粒径が適切な範囲内にあれば、さらに断熱パッド70の製造成形に有利であり、断熱パッド70が高いエアロゲル72の体積割合での接着性を有することを確保し、それにより粒子に粉落ちや脱落が発生しにくい。
【0059】
いくつかの実施例において、エアロゲル72は粒子の粒径が1.8mm~2.2mmであるエアロゲル、粒子の粒径が0.8mm~1.2mmであるエアロゲル、及び粒子の粒径が0.4mm~0.6mmのエアロゲルを含む。粒子の粒径を適宜に組み合わせることにより、断熱パッド70におけるエアロゲル72の体積割合をさらに向上させることができ、同時に粒子の空隙の間に多くのシリコンゴム71が出現して発生可能なヒートブリッジ現象を減少させることができ、それにより断熱パッド70の断熱効果をさらに向上させる。
【0060】
いくつかの実施例において、エアロゲル中の粒子の粒径が1.8mm~2.2mmのエアロゲル、粒子の粒径が0.8mm~1.2mmのエアロゲル、粒子の粒径が0.4mm~0.6mmのエアロゲルの体積比は(25~40):(5~10):(1~3)であり、選択的に、(28~37):(6~10):(1.5~3)、又は(30~35):(7~9):(1.5~2.5)である。例えば、当該体積比は32:8:2である。粒子の粒径の組み合わせをさらに最適化することにより、断熱パッド70の断熱性能をさらに向上させることができる。
【0061】
いくつかの実施例において、エアロゲル72の孔径は1nm~500nmであり、選択的に10nm~100nm、10nm~70nm、15nm~50nm、又は30nm~50nmである。エアロゲル72はサイズが適切なナノスケールの多孔質構造を有し、空気分子を「ロック」することで熱対流を減少させることができ、それにより断熱パッド70の熱伝導率をさらに低下させることができるため、断熱性能をさらに向上させる。また、エアロゲル72の孔径は適切な範囲内にあれば、断熱パッド70の製造過程において液状シリコンゴムの浸透を構造的に防止することができ、粒子の孔隙構造が破壊されることを回避し、それにより断熱パッド70が高い断熱性能を得ることに有利である。
【0062】
いくつかの実施例において、エアロゲル72は無機酸化物エアロゲル、炭素系エアロゲル、有機高分子エアロゲルのうちから選択される一種又は複数種である。いくつかの実施例において、エアロゲル72は無機酸化物エアロゲルから選択される。例として、無機酸化物エアロゲルは酸化ケイ素エアロゲル、酸化アルミニウムエアロゲル、酸化ジルコニウムエアロゲル、酸化イットリウムエアロゲルのうちから選択される一種又は複数種である。選択的に、エアロゲル72は酸化ケイ素エアロゲルであり、又はそれを含んでもよい。炭素系エアロゲルの例としては、グラフェンエアロゲル、カーボンナノチューブエアロゲルのうちの一種又は複数種を含む。有機高分子エアロゲルのれいとしては、フェノール樹脂エアロゲルを含む。適切なエアロゲル72は低い熱伝導率を有し、断熱パッド70に高い断熱性能を有させることができる。
【0063】
いくつかの実施例において、エアロゲル72の表面にポリマーが修飾された。ここで、修飾とは、エアロゲル72粒子表面にポリマーが被覆されていてもよい。ポリマーはポリエン酸類、ポリエン酸エステル類、ポリエーテル類、ポリアルコール類、ポリオレフィン類及びそれらの誘導体、それらの共重合体のうちから選択される一種又は複数種である。選択的に、ポリマーはポリエン酸類、ポリエン酸エステル類から選択される一種又は複数種である。具体的な例として、ポリマーはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン及びそれらの誘導体、それらの共重合体から選択される一種又は複数種である。いくつかの実施例において、ポリマーはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチルから選択される一種又は複数種である。
【0064】
ポリマーを採用してエアロゲル72を表面修飾すると、エアロゲル72粒子が高い強度を有して圧力を受ける過程において破裂しにくいだけでなく、エアロゲル72と液状シリコンゴムとの複合過程において粒子の孔隙構造が破壊されないように保護することができる。同時に、エアロゲル72粒子とシリコンゴム71との接着性を向上させることもできる。したがって、ポリマーで修飾されたエアロゲル72を採用することにより、断熱パッド70は断熱効果をよりよく発揮することができる。
【0065】
本願において、断熱パッド70の断熱及び緩衝作用を明らかに損なわない状況で、実際の応用需要に応じてシリコンゴム71を選択することができる。いくつかの実施例において、シリコンゴム71は縮合型シリコンゴム又は付加型シリコンゴムを採用することができる。縮合型シリコンゴムは、一成分縮合型シリコンゴム又は二成分縮合型シリコンゴムであってもよい。付加型シリコンゴムは一成分付加型シリコンゴム又は二成分付加型シリコンゴムであってもよい。いくつかの実施例において、シリコンゴム71は二成分付加型シリコンゴムを採用する。二成分シリコンゴムは断熱パッド70の製造過程における制御可能性が高く、操作に有利である。二成分付加型シリコンゴムは、加硫過程において収縮が発生しにくく、かつ得られた断熱パッド70の構造強度が高い。
【0066】
いくつかの実施例において、シリコンゴム71はシリコーンゴム、メチルビニルシリコンゴム、フェニルメチルビニルシリコンゴム、ニトリルシリコンゴム、シラザンゴムのうちの一種又は複数種を採用することができる。選択的に、シリコンゴム71は二成分付加型シリコーンゴムを採用する。シリコーンゴムは、低熱伝導性、高強度、及び良好な密着性を有するという利点がある。二成分付加型シリコーンゴムは、加硫過程において収縮率が低いという利点も有する。
【0067】
いくつかの実施例において、シリコンゴム71は発泡シリコンゴムを含む。例えば、上記シリコンゴム71に発泡剤を添加することができる。発泡シリコンゴムを採用することにより、断熱パッド70のシリコンゴム71のベースに閉鎖孔隙を形成することができ、それにより断熱パッド70の熱伝導率をさらに低下させることができるため、断熱性能をさらに向上させる。例として、二成分シリコンゴム中の一つの成分に1~8重量%の加硫剤及び0超え5重量%以下の発泡剤を含む。加硫剤及び発泡剤は、当該分野で公知の種類を採用できる。加硫剤及び発泡剤の割合を適宜に制御することにより、断熱パッド70の製造過程において、発泡速度を加硫速度と一致させることができ、適切な孔径の閉鎖孔隙を形成すると同時に、得られた断熱パッド70が高い構造強度を有させる。
【0068】
本願において、断熱パッドの圧縮弾性率は本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば、電子万能テスト機(例えばCMT4204型)。テストはGB/T7757-2009を参照することができる。例示的なテスト方法としては、長さ幅=80mm80mmの断熱パッド試料を切り取り、CMT4204型電子万能テスト機を使用し、25℃の温度で、2mm/minの圧縮速度で断熱パッドの厚さ方向に沿って断熱パッドを圧縮し、歪みが50%になるまで停止し、応力-歪み曲線図を取得した。線形区間の応力を歪みで割って計算して断熱パッドの圧縮弾性率を取得する。テスト結果をより正確にするために、断熱パッドの圧縮弾性率として複数(例えば10個)の試料のテスト結果の平均値を求めることができる。
【0069】
本願において、断熱パッドの圧縮強度は本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば、電子万能テスト機(例えばCMT4204型)。テストはGB/T7757-2009を参照することができる。例として、圧縮弾性率のテスト方法を参照して断熱パッドを圧縮し、断熱パッドが破裂するか又は降伏する時に受けられた最大圧縮応力を取得することができ、断熱パッドの圧縮強度とする。
【0070】
本願において、断熱パッドの熱伝導率は本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば、二重平板熱伝導率測定器(例えばWNK-200D型)。テストはGB/T10294-2008を参照することができる。例示的なテスト方法としては、直径が100mmの断熱パッド試料を切り取り、WNK-200D型二重平板熱伝導率測定器を使用し、100℃のテスト温度で断熱パッドの熱伝導率をテストする。
【0071】
本願において、断熱パッドの厚さは本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば、厚さゲージを利用することができる。
【0072】
本願において、エアロゲルの粒子の粒径は本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例示的なテスト方法としては、メッシュで粒子を篩い分け、その後にノギスで粒子の粒径を測定する。テスト結果をより正確にするために、エアロゲルの粒子の粒径として複数(例えば20個)の粒子のテスト結果の平均値を求めることができる。断熱パッド中のエアロゲルの粒子の粒径は走査型電子顕微鏡でSEM図を撮影して測定することができる。テストはJY/T010-1996を参照することができる。例示的なテスト方法として、走査型電子顕微鏡でテスト試料のSEM画を撮影し、SEM画に基づいてエアロゲルの粒子の粒径を算出した。
【0073】
本願において、エアロゲルの孔径は本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば、孔隙率分析装置(例えばASAP2020)を利用することができる。
【0074】
本願は、エアロゲルを液状シリコンゴムに分散して膜状体を製造するステップと、膜状体を加硫成形して断熱パッドを得るステップと、を含む、断熱パッドの製造方法をさらに提供する。
【0075】
物理的混合法を採用してエアロゲルを液状シリコンゴムに分散し、エアロゲルと液状シリコンゴムを十分に粘着させて膜状体に製造することができる。例として、機械的混合の方式を利用してエアロゲルと液状シリコンゴムを混合することができる。機械的混合の方式は撹拌混合であってもよい。その後に混合物を金型に添加してプレス成形する。
【0076】
別の例として、エアロゲルを単層又は多層で金型に広げ、液状シリコンゴムをエアロゲル粒子の隙間にさらに注入することができる。注入過程は多位置の注射方式を採用することができる。このようにして液状シリコンゴムがエアロゲル粒子の各箇所の隙間に均一に注入することに有利であり、それにより粒子を効果的に接着することができ、全体の構造強度を著しく向上させる同時に、断熱パッドが良好な圧縮弾性率有する。シリコンゴムを注入した後にプレス成型する。プレス成形はダイカスト成形プロセスを採用することができる。プレス、特に熱間プレスにより、構造全体がより平坦になり、かつシリコンゴムが粒子間の隙間にさらに浸透し、接着及び強度の支持効果を達成することができる。例として、液状シリコンゴムが注射方式で注入されることができる。
【0077】
いくつかの実施例において、液状シリコンゴムがエアロゲルに対する質量比は1:(0.2~2)であり、選択的に1:(1~2)、又は1:(1.5~2)である。
【0078】
いくつかの実施例において、液状シリコンゴムがエアロゲルに対する体積比は50:50~8:92であり、選択的に30:70~10:90、40:60~10:90、40:60~20:80、又は30:70~20:80である。
【0079】
液状シリコンゴムがエアロゲルに対する比率が適切な範囲内にあれば、得られた断熱パッドは高い断熱性能だけでなく、同時に高い圧縮弾性率及び圧縮強度も有する。
【0080】
いくつかの実施例において、液状シリコンゴムの粘度は0.1Pa・s~50Pa・sであり、選択的に0.3Pa・s~25Pa・s、0.5Pa・s~15Pa・s、0.5Pa・s~10Pa・s、1Pa・s~20Pa・s、又は1Pa・s~10Pa・s等である。液状シリコンゴムの粘度が適切な範囲内にあれば、エアロゲルと液状シリコンゴムとの均一的混合に有利であり、エアロゲルの接着性を向上させる同時に断熱パッドが高い圧縮強度及び圧縮弾性率を有することができる。
【0081】
任意の実施例において、プレス成形の温度は0℃~150℃、20℃~100℃、50℃~100℃、60℃~80℃、又は70℃~75℃であってもよい。プレス成形の圧力は0.05MPa~2MPa、0.08MPa~1MPa、0.1MPa~0.5MPa、又は0.1MPa~0.3MPaであってもよい。
【0082】
液状シリコンゴムの種類及びその加硫メカニズムにより、膜状体が加硫成形される温度及び時間を決定することができる。いくつかの実施例において、膜状体の加硫成形の温度は20℃~150℃、100℃~150℃、25℃~120℃、50℃~100℃、又は80℃~100℃等であってもよい。硫化時間は20min~300min、30min~200min、50min~150min、80min~240min、80min~150min、80min~120min、又は100min~200min等であってもよい。
【0083】
製造方法において、エアロゲル及びシリコンゴムは上記説明したような種類を採用することができ、ここでは説明を省略する。また、エアロゲル及び液状シリコンゴムはいずれも市販から得られる。
【0084】
いくつかの実施例において、エアロゲルは以下の方法で製造されることができる。
【0085】
ケイ素源、水、アルコール及び酸を混合して混合溶液を得る。いくつかの実施例において、混合溶液中のケイ素源、水、アルコール及び酸の質量比は1:(3~5):(4~7):(1.5×10-3~2×10-3)であってもよく、例えば、1:4:6:2×10-3である。例として、ケイ素源は、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸ブチルから選択されることができる。アルコールはエタノール、プロパノール、ブタノールから選択することができる。酸は酢酸、塩酸又は硫酸から選択することができる。
【0086】
混合溶液を加水分解反応させ、シリカゾルを形成する。いくつかの実施例において、加水分解反応の温度は20℃~30℃であってもよく、又は25℃~30℃であってもよい。加水分解反応の時間は5h~15h、又は8h~12hであってもよい。
【0087】
シリカゾルをアンモニア水と混合し、混合系のpHを7~8.5、又は7.5~8に調整する。いくつかの実施例において、アンモニア水の体積はシリカゾルの体積の2~3倍であってもよく、例えば2.5倍である。アンモニア水の濃度は0.3mol/L~0.5mol/Lであってもよい。
【0088】
混合系を油相に注入し、油相においてゾルが迅速にゲル化し、球形又は略球形のシリカゲルを形成して油相の表面に懸濁する。いくつかの実施例において、油相は植物油、鉱物油、合成油のうちから選択される一種又は複数種であることができる。例として、油相は大豆油、落花生油、パラフィン油、グリセリンのうちから選択される一種又は複数種であることができる。当該方法を採用して製造されたエアロゲル自体は、多くの親水性官能基が内部に向かい、シリコンゴムの成分がエアロゲルの孔隙を浸透して破壊する可能性を低下させ、それにより孔隙構造の完全性を保護することができ、エアロゲルが低い熱伝導率を有させる。同時に、得られたエアロゲルは自体の形態をさらに保持し、構造の破裂による応力集中を減少させ、断熱パッド全体の構造強度を確保することができる。
【0089】
ゲルをエタノールでエージングする。いくつかの実施例において、エージングの時間は2~4日であってもよく、例えば3日である。
【0090】
エージングした後のゲルに超臨界乾燥を行い、シリカエアロゲルを得る。超臨界乾燥を採用すると、液体の蒸発による孔隙への破壊を減少させ、エアロゲルの孔隙構造の完全性を保護し、熱伝導率を低下させることができる。いくつかの実施例において、超臨界乾燥は二酸化炭素の超臨界乾燥を採用することができる。超臨界乾燥の圧力は10MPa~20MPa、又は12MPa~16MPa等であってもよい。超臨界乾燥の温度は50℃~80℃であってもよく、又は60℃~70℃であってもよい。超臨界乾燥の時間は100min~500min、150min~600min、又は300min~500minである。適切な超臨界乾燥条件は、エアロゲル細孔構造の完全性をさらに保護することができる。
【0091】
エアロゲルの製造実施例において、反応物の濃度及び配合比率、加水分解反応の温度、加水分解反応の時間、エージングの時間、超臨界乾燥の時間等を調整することにより、得られたハイドロゲルはより優れた孔径構造を得ることができる。例えば、エアロゲルの孔径は10nm~100nmであり、特に15nm~50nmであり、さらに30nm~50nmである。
【0092】
いくつかの実施例において、さらにエアロゲルにポリマー修飾を行うステップを選択的に含む。例として、エアロゲルをシランカップリング剤溶液と混合し、混合系にポリマーのモノマーを添加して開始剤の存在下でモノマーの重合反応を開始させ、濾過、洗浄、乾燥を経て、ポリマーで表面被覆されたエアロゲルを得る。
【0093】
エアロゲルとシランカップリング剤溶液の混合ステップにおいて、シランカップリング剤溶液はシランカップリング剤、水及びアルコールの混合溶液であってもよい。シランカップリング剤は、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(KH-570)から選択することができる。アルコールはエタノール、プロパノール、ブタノールから選択することができる。シランカップリング剤溶液におけるシランカップリング剤、水及びアルコールの質量比は1:3~5:7~9であり、例えば1:4:8である。エアロゲルとシランカップリング剤溶液の比率は10g/L~40g/Lである。
【0094】
エアロゲルとシランカップリング剤溶液の混合は撹拌混合を採用することができ、例えば機械撹拌、磁気撹拌、超音波撹拌などである。撹拌の時間は10h~24hであってもよい。
【0095】
混合系にポリマーのモノマーを添加する時、モノマーの添加量はエアロゲルの質量の1~5倍であってもよく、又は3~4.5倍であってもよい。
【0096】
モノマーが重合反応する時、開始剤の種類は特に限定されず、本分野の通常の選択であってもよい。重合条件及び開始剤の使用量は特に限定されず、モノマー及び開始剤の具体的な種類に応じて選択することができる。一つの具体的な実施例によれば、モノマーはメタクリル酸メチルMMAであり、開始剤は過硫酸カリウムKPSであり、100重量部のモノマーに対して、開始剤の使用量は0.1~0.5重量部であってもよい。重合は、保護性雰囲気下で行うことができる。保護性雰囲気としては、窒素ガス雰囲気又は不活性ガス雰囲気であってもよい。重合温度は60℃~80℃である。重合は常圧(大気圧)で行う。重合時間は4h~8hである。
【0097】
洗浄は本分野で既知の方法を採用することができる。例えば脱イオン水で洗浄する。乾燥の温度は60℃~100℃であってもよく、例えば70℃~80℃である。
【0098】
本願において、異なる粒径範囲を有するエアロゲルの組み合わせに、異なる粒径範囲を有するエアロゲルの割合の例示的なテスト方法は以下のとおりである。電子秤を利用して各粒径区間のエアロゲルの重量m、m、……mを測定し、ここで、nは3以上の整数である。(m/ρ):(m/ρ):…:(m/ρ)に基づいて異なる粒径区間を有するエアロゲルの割合を計算し、ここで、ρ、ρ、……、ρは各粒径区間のエアロゲルの密度を表し、エアロゲル粒子の重量/体積に基づいて計算して得ることができる。ここで、球体の体積計算式に基づいてエアロゲル粒子の体積を計算することができる。計算結果をより正確にするために、各粒径区間に複数(例えば32個)の粒子に対してそれぞれ密度を計算し、当該粒径区間のエアロゲルの密度として平均値を求めることができる。
【0099】
本願において、液状シリコンゴムがエアロゲルに対する質量比は本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば、電子秤を用いてそれぞれシリコンゴム及びエアロゲルの質量を測定し、次に質量比を計算する。
【0100】
本願において、液状シリコンゴムがエアロゲルに対する体積比は本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば、計量カップを用いて液状シリコンゴムの体積を測定することができる。上記方法に応じてエアロゲルの体積を測定し、次に体積比を計算する。
【0101】
本願において、液状シリコンゴムの粘度は本分野の公知の意味であり、本分野の既知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば、粘度測定器を利用することができる。また、例えば、JJAVD型粘度平均分子量測定装置。
実施例
【0102】
下記実施例は本願に開示された内容をより具体的に説明し、これらの実施例は例示的に説明するためのものに過ぎない。本願に開示された内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比率はいずれも重量基準である。実施例に使用された全ての試薬はいずれも市販されるか又は従来の方法に従って合成して取得され、かつさらに処理する必要がなく直接使用されることができる。また、実施例に使用された装置はいずれも市販される。
一 組電池の製造
1.1 エアロゲルの調製
【0103】
(1)ケイ酸エチル:水:エタノール:HCl=1:4:6:2×10-3の質量比に応じて混合溶液を得て、混合溶液を25℃で12h加水分解反応させ、シリカゾルを形成した。
【0104】
(2)シリカゾルにシリカゾルの体積の2.5倍に相当するアンモニア水を添加し、混合系のpHを7.5~8に調整した。
【0105】
(3)混合系を油相(大豆油)に迅速に注入し、油相においてゾルが迅速にゲル化し、球形のシリカゲルを形成して油相の表面に懸濁した。
【0106】
(4)シリカゲルをエタノールに浸漬して3日間エージングした。
【0107】
(5)圧力が14MPaであり、温度が60℃である条件で、エージングした後のシリカゲルに二酸化炭素の超臨界乾燥を500min行い、シリカエアロゲルボールを得る。エアロゲルの孔径は15nm~50nmである。
1.2 エアロゲルの改質
【0108】
(1)10gのシリカエアロゲルを400mLのシランカップリング剤MPS溶液(質量比でMPS:水:エタノール=1:4:8)に添加し、24h撹拌した。
【0109】
(2)ステップ(1)の混合系に43gのメタクリル酸メチル(MMA)を添加し、窒素ガスを導入し、かつ0.2gの過硫酸カリウムKPSを開始剤として添加し、75℃の撹拌条件で6h重合反応させた。
【0110】
(3)反応が終了した後、濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に80℃で乾燥させて、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)で被覆されたエアロゲルを得る。
2 断熱パッドの作製
【0111】
(1)粒子の粒径が2±0.2mmであるPMMA被覆された改質シリカエアロゲル、粒子の粒径が1±0.2mmであるPMMA被覆された改質シリカエアロゲル、粒子の粒径が0.5±0.1mmであるPMMA被覆された改質シリカエアロゲルを32:8:2の体積比に応じて混合した。混合後のエアロゲルと粘度が1Pa・sであるシリコーンゴム(Pt触媒の二成分付加成型)を物理的撹拌且つ直接混合の方式で均一に混合した。
【0112】
(2)ステップ(1)で得られた混合物を金型内に均一に広げ、ダイカスト成形の方式を採用し、75℃及び0.1MPaの圧力の条件下で、混合物を厚さが均一である板材にプレス成形した。
【0113】
(3)成形された板材を80℃の条件下で150min硬化させ、断熱パッドを得る。断熱パッドの厚さは4mmである。
3 電池セルの製造
正極シートの製造
【0114】
正極活物質LiNi0.5Co0.2Mn0.3、導電剤Super-P、接着剤のポリフッ化ビニリデンPVDFを95:2:3の重量比で溶媒NMPに分散させ、十分に撹拌して均一に混合して正極スラリーを得る。正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の対向する二つの表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスした後、正極シートを得る。正極膜層の片面の塗布密度は18.83mg/cm(溶媒を含まない)であり、圧密度は3.25g/cmである。
負極シートの製造
【0115】
負極活物質の天然黒鉛、導電剤Super-P、接着剤のスチレンブタジエンゴムSBR及び増粘剤カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Naを93:3:2:2の重量比に応じて溶媒脱イオン水に分散させ、均一に撹拌混合した後に負極スラリーを得る。その後に負極スラリーを負極集電体である銅箔の対向する二つの表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスした後、負極シートを得る。負極膜層の片面の塗布密度は11.62mg/cm(溶媒を含まない)であり、圧密度は1.45g/cmである。
電解液の調製
【0116】
エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びジメチルカーボネート(DMC)を1:1:1の重量比で均一に混合し、有機溶媒を得る。さらにリチウム塩LiPFを上記有機溶媒に溶解させ、均一に混合し、電解液を得て、そのうちLiPFの濃度は1mol/Lである。
電池セルの作製
【0117】
正極シート、セパレータ、負極シートを巻き取ってコアを得る。コアを外装に入れ、電解液を注入してパッケージし、電池セルを得る。
4 組電池の作製
【0118】
複数の電池セルを一列に並べ、かつ隣接する二つの電池セルの間は最大側面で対向している。かつ、各隣接する二つの電池セルの間に断熱パッドが設置された。断熱パッドは、隣接する電池セルに面接触している。固定組立体を用いて電池セルを固定し、組電池を得る。ここで、固定組立体は組電池の両端に位置する端板を含む。
【0119】
実施例1~7及び比較例1は上記製造方法に応じて組電池を製造し、ここで、各実施例の相違点は断熱パッドにおけるエアロゲル及びシリコンゴムの割合を調整することであり、詳細は表1に示すようにである。
【0120】
実施例8~13は実施例1~6と類似し、相違点はポリマー改質を行わないエアロゲルを採用することである。
二 テスト部分
1 断熱パッドのテスト
【0121】
(1)前記方法を採用して断熱パッドの各パラメータをテストする。
(2)圧縮応力の保持率のテスト
【0122】
圧縮保持率のテストは、GB/T 1685-2008に参照した規格外のテストである。長さ幅=80mm80mmの断熱パッド試料を切り取り、試料を治具に入れた後、治具の圧力を調整して試料の圧縮を20%の圧縮量に保持し、かつ圧力値を記録した。この圧縮量を常温で30日間保持し、30日後に同様の圧縮量での圧力値を記録し、最終的に30日後の圧縮応力の保持率の実験結果を得る。
2 組電池の性能テスト
(1)温度差のテスト
【0123】
長さ幅=140mm70mmの断熱パッド試料を切り取し、試料を二枚の長さ厚さ=140mm*70mm*26mmである合金鋼板の間に挟持し、サンドイッチ構造である積層体を形成し、ここで、断熱パッド試料が合金鋼板の表面に接触しかつ縁部が整列している。積層体に0.9MPaの圧力を印加し、かつ断熱パッドの片側の合金鋼板を600℃に加熱し、5分間保持した後に圧力を解放し、試料を600℃の合金鋼板に20分間接触させ続けた後、断熱パッドの高温面の温度T1及び低温面の温度T2を測定し、温度差T1-T2を計算した。テストは圧力センサで圧力を監視し、温度センサで温度を監視する。
(2)組電池に熱暴走の安全性能テスト
【0124】
組電池を100%SOC(State of charge、充電状態)まで充電する。組電池中の一つの電池セルを熱暴走させ(例えば、当該電池セルに針刺し又は加熱を行い、電池セルの温度が60℃を超えて急激に上昇すると、熱暴走が発生すると判定する)、熱暴走した当該電池セルに隣接する電池セルに熱暴走が発生した時間t(min)を記録した。すなわち、他の降温手段がない場合、一番目の電池セルが熱暴走した時から計算し始め、二番目の電池セルが熱暴走した時間はtである。当該時間tが長いほど、組電池の熱暴走の安全性能が高い。
(3)組電池のサイクル性能テスト
【0125】
組電池の応力シミュレーションソフトウェアAbaqusを用いて組電池が循環膨張した後の端部の最大応力F(組電池の端部が受けた最大力を端板面積で割る)をシミュレーションする。良好な組電池のサイクル寿命を保持するために、組電池が循環膨張した後の端部の最大応力Fは<215MPaである必要がある。シミュレーションパラメータは以下のとおりである。組電池に5000Nのプリロード力を印加する。25℃で、組電池を5%SOCから3Cレートで50%SOCまで定電流充電し、次に2Cレートで70%SOCまで定電流充電し、さらに1Cレートで80%SOCまで定電流充電し、その後に1C定電流で5%SOCまで放電した。これは、一つの充放電サイクルである。組電池を2500サイクルに充放電した。
【0126】
【表1】
【0127】
前記温度差は断熱パッドの熱伝導率、厚さ、圧縮力学的性質の総合表現である。表1のデータから分かるように、前記温度差が適切な範囲内にあれば、断熱パッドは低い熱伝導率を有するだけでなく、適切な圧縮強度、圧縮弾性率及び圧縮応力の保持率を有する。当該断熱パッドは組電池に応用され、熱暴走した電池セルから隣接する電池セルへの熱伝導を効果的に遮断し、組電池の安全性能を向上させることができる。
【0128】
さらに、ポリマーを用いてエアロゲルに表面修飾すると、断熱パッドの圧縮強度、圧縮弾性率及び圧縮応力の保持率をさらに改善することができる。断熱パッドは組電池の循環膨張力の作用下で破裂又は降伏が発生しにくく、それにより断熱作用を長期に効果的に発揮することができる。同時に、断熱パッドはさらに長い時間範囲内で電池の循環膨張応力を緩衝する作用を果たすことができるため、組電池の安全性能をさらに改善することができ、かつ組電池が長い循環耐用年数を有することに有利である。
【0129】
【表2】
【0130】
表2の結果から分かるように、本願の断熱パッドを採用すると、組電池内の熱暴走した電池セルが隣接する電池セルに熱拡散を行うことを大幅に遅延することができ、それにより電池の安全性能を効果的に向上させることができる。同時に、本願の断熱パッドは、さらに組電池の循環膨張を緩衝する作用を果たすことができ、組電池の良好な循環耐用年数を保持することに有利である。
【0131】
上記説明は本願の具体的な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲はこれに限定されない。当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内で、様々な等価の修正又は置換を容易に想到することができ、且つこれらの修正又は置換はいずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は請求項の保護範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3
図4