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  • 特許-液圧装置を作動させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】液圧装置を作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20240415BHJP
   F16D 48/02 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
F04B49/06 321A
F04B49/06 321B
F16D48/02 640U
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022552943
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 DE2021100177
(87)【国際公開番号】W WO2021175366
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】102020105820.9
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユンファン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー リンク
(72)【発明者】
【氏名】カーステン マイヤー
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0108977(US,A1)
【文献】特開2018-003786(JP,A)
【文献】特開2002-031079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F16D 48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク伝達装置(12)に液圧供給を行う液圧装置(10)であって、
前記トルク伝達装置(12)に第1の流体圧力(p)及び第2の流体圧力(p)を供給するための流体路(14)と、
第1のポンプ(P1)及び第2のポンプ(P2)を有する電動式ポンプ装置(P)であって、前記第1のポンプ(P1)は、前記流体路(14)に前記第1の流体圧力(p)を供給するための一次ポンプ回転速度(n)を有する第1の動作状態において有効であり、前記第2のポンプ(P2)は、前記流体路(14)に前記第2の流体圧力(p)を供給するための二次ポンプ回転速度(n)を有する第2の動作状態において有効である、電動式ポンプ装置(P)と、
前記第2の流体圧力(p)と第2の流体圧力目標値(p2,min、p2,max)との間の比率に依存する様態で、必要に応じて、かつ反復的に、前記第2の動作状態をとる切替工程(U、U、U)を開始する制御ユニット(S)と、を有する、液圧装置(10)を作動させる方法であって、
前記液圧装置(10)の動作中、次の切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)を、少なくとも、先行する切替工程(U)における前記ポンプ装置(P)の電動ポンプ電力を含む第1の電力値(P)に依存する様態で、予め設定することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記次の切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)を予め設定することは、前記先行する切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)と比較して減少又は増大させることによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記次の切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)は、前記先行する切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)及び回転速度変更値(Δn)に依存する値に予め設定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電力値(P)は、基準期間における平均化された電動ポンプ電力として計算されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基準期間は、前記先行する切替工程(U)の完了と、それに更に先行する切替工程(U)の完了との間の時間間隔であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記次の切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)は、前記第1の電力値(P)と、前記先行する切替工程(U)に更に先行する前記切替工程(U)における前記ポンプ装置(10)の前記電動ポンプ電力を含む第2の電力値(P)とに依存する様態で予め設定されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記次の切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)は、少なくとも、前記先行する切替工程(U)における二次ポンプ回転速度(n)に依存する様態で予め設定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記次の切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)は、少なくとも、前記先行する切替工程(U)における前記二次ポンプ回転速度(n)と、前記先行する切替工程(U)に更に先行する前記切替工程(U)における二次ポンプ回転速度(n)とに依存する様態で、予め設定されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記先行する切替工程(U)は、前記次の切替工程(U)のすぐ前であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記流体路(14)は、前記トルク伝達装置(12)に前記第1の流体圧力(p)を供給するための第1の流体分岐路(16)と、前記第1の流体分岐路(16)から少なくとも部分的に分離されている、前記トルク伝達装置(12)に前記第2の流体圧力(p)を供給するための第2の流体分岐路(18)と、を有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載された、液圧装置を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トルク伝達装置のための液圧装置を作動させる方法は、例えば、特許文献1に記載されている。トルク伝達装置は、ダブルクラッチとして構成されており、第1のクラッチ及び第2のクラッチを有し、各クラッチを流体圧力によって作動させることができ、各クラッチは、流体圧力を供給するポンプ装置に流体路を介して液圧的に接続されている。各クラッチの作動は、個々のクラッチに割り当てられたクラッチバルブによって制御される。更に、第1及び第2のクラッチを冷却するための冷却装置が配置されている。ポンプ装置は、第1のポンプ及び第2のポンプを有する。第1のポンプは、第1及び第2のクラッチを冷却するために必要な第1の流体圧力を供給し、第2のポンプは、クラッチを作動させるために必要な第2の流体圧力を供給する。
【0003】
第2のポンプを繰り返し間欠的に運転して流体路内の第2の流体圧力の損失を補償することによって、第2の流体圧力が維持される。このポンプ後工程(post-pump process)は、第2のポンプの所定の二次ポンプ回転速度において行われ、第2の流体圧力が第2の流体圧力目標値に達するまで継続されることが知られている。
【0004】
第2のポンプを最も省エネかつ機能的に安全に運転するという要件下で設定される二次ポンプ回転速度の決定は、温度、圧力漏れ、ポンプ効率などいくつかの影響に依存するため、複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第10 2019 130 158.0号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液圧装置をより省エネかつ高い信頼性で作動させることである。二次ポンプ回転速度は、できる限り効率的に、高い信頼性で、かつ外部の影響を受けずに設定されるべきである。ポンプ装置は、より省エネで動作させるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的の少なくとも1つは、請求項1に記載の特徴を有する、液圧装置を作動させる方法によって達成される。これによりポンプ装置のエネルギ消費を低減することができる。液圧装置は、要求される第2の流体圧力を、より迅速かつより正確に、更には外部の影響からより独立して、設定することができる。トルク伝達装置を、より良好に、かつより高いエネルギ効率で制御することができる。トルク伝達装置の動作中に、二次ポンプ回転速度を適応的に予め設定することができる。
【0008】
作動は、液圧装置の開ループ制御及び/又は閉ループ制御を含むことができる。
【0009】
トルク伝達装置は、車両、特に自動車のドライブトレインに配置することができる。トルク伝達装置は、クラッチ及び/又はブレーキを有することができる。クラッチは、多段クラッチ、特にダブルクラッチとすることができる。トルク伝達装置は、摩擦式トルク伝達を提供することができる。トルク伝達装置は、少なくとも1つの摩擦的に係合するトルク伝達要素を含むことができる。トルク伝達装置は、パワーシフト可能なeアクスルにおいて有効であり得る。eアクスルは、少なくとも2つの切替え可能なギア比を有することができる。トルク伝達装置は、入力側で電気モータに接続することができる。
【0010】
クラッチは、第1のクラッチ及び第2のクラッチを有することができる。第1のクラッチ及び第2のクラッチは、独立して作動可能とすることができる。第1のクラッチの作動を制御するため、第1のクラッチバルブを第1のクラッチに割り当てることができる。第2のクラッチの作動を制御するため、第2のクラッチバルブを第2のクラッチに割り当てることができる。第1のクラッチバルブ及び/又は第2のクラッチバルブは、流体路においてポンプ装置と特定のクラッチとの間に配置することができる。
【0011】
トルク伝達装置は、トルク伝達装置、特に第1のクラッチ及び/又は第2のクラッチを冷却流体で冷却するための冷却装置を有することができる。冷却装置は、他の構成要素(例えば電気モータ)を冷却するためにも有効であり得る。冷却装置には、第1の流体圧力を供給することができる。
【0012】
ポンプ装置は、第1の流体圧力を供給する第1のポンプと、第2の流体圧力を供給する第2のポンプとを含むことができる。第1のポンプ及び第2のポンプは、共通の電気モータによって動作可能とすることができる。ポンプ装置の第1の回転方向は、第1の流体圧力を提供することができ、ポンプ装置の反対の第2の回転方向は、第2の流体圧力を提供することができる。電気モータは、クラッチの回転速度とは無関係に動作させることができる。これにより、十分なポンプ回転速度を適用することができる。第1のポンプ及び第2のポンプは、タンデム構成で配置することができる。
【0013】
液圧装置は、液圧蓄圧器(hydraulic capacitor)として少なくとも1つのばね圧力アキュムレータ(spring pressure accumulator)を有することができる。ばね圧力アキュムレータは、2つのクラッチのうちの一方に割り当てることができる。各クラッチに、自身のばね圧力アキュムレータを割り当てることもできる。
【0014】
液圧装置は、少なくとも1つのチェックバルブを有することができる。チェックバルブは、2つのクラッチのうちの一方に割り当てることができる。各クラッチに、自身のチェックバルブを割り当てることもできる。
【0015】
切替工程はポンプ後工程とすることができ、二次ポンプ回転速度はポンプ後回転速度とすることができる。切替工程以外では、一次ポンプ回転速度を適用する、又はポンプ装置を停止させることができる。
【0016】
特に好ましくは、次の切替工程時に、この目的のために設けられるポンプ装置の電動ポンプ電力を低減する仕様で、二次ポンプ回転速度が設定される。
【0017】
次の切替工程のために計算される、予め設定される二次ポンプ回転速度は、最小二次ポンプ回転速度と最大二次ポンプ回転速度との間の値の範囲に狭められる。一時停止される一次ポンプ回転速度の期間を限定するために、最小二次ポンプ回転速度を定義することが有用である。例えば、ポンプ装置は、切替工程が開始されると、第1の流体圧力の供給を一時停止することができる。この中断は、好ましくは短時間であるべきである。最大二次ポンプ回転速度を指定することは、ポンプ装置の回転速度コントローラの負荷を軽減するため、及び/又は、ポンプ装置の最大許容ポンプ回転速度を回避するために、有利であり得る。
【0018】
次の切替工程が動作開始後の最初の切替工程である液圧装置の起動動作時には、予め設定される二次ポンプ回転速度が、予め設定される初期値に対応することができる。初期値は、定数として指定する、又はルックアップテーブルから取得することができる。ルックアップテーブルは、第2の流体圧力及び/又は温度に対する初期値の依存性を示すことができる。
【0019】
第2の流体圧力目標値は、第2の流体圧力最小値又は第2の流体圧力最大値とすることができる。第2の流体圧力が第2の流体圧力最小値を下回ったとき、又は第2の流体圧力最小値に達したときに、切替工程を開始することができる。第2の流体圧力が第2の流体圧力最大値を上回ったとき、又は第2の流体圧力最大値に達したときに、切替工程を設定することができる。
【0020】
電動ポンプ電力は、電動ポンプ電圧及び電動ポンプ電流から計算することができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、次の切替工程における二次ポンプ回転速度を予め設定することは、先行する切替工程における二次ポンプ回転速度と比較して減少又は増大させることによって行われる。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、次の切替工程における二次ポンプ回転速度は、先行する切替工程における二次ポンプ回転速度及び回転速度変更値に依存する値に、予め設定される。回転速度変更値は、予め設定する、特に固定することができる。例えば、回転速度変更値は、200rpmとすることができる。回転速度変更値は、液圧装置の動作中、特に個々の切替工程の間で適応的に変更可能とすることができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、第1の電力値は、基準期間における平均化された電動ポンプ電力として計算される。
【0024】
本発明の特定の実施形態では、基準期間は、先行する切替工程の完了と、それに更に先行する切替工程の完了との間の時間間隔である。基準期間は、第1の動作状態における運転を含むことができる。基準期間を、先行する切替工程の継続時間のみに限定することもできる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、次の切替工程における二次ポンプ回転速度は、第1の電力値と、先行する切替工程に更に先行する切替工程におけるポンプ装置の電動ポンプ電力を含む第2の電力値とに依存する様態で、予め設定される。次の切替工程における二次ポンプ回転速度は、第1の電力値が第2の電力値以上であるかどうかに依存する様態で、計算することができる。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、次の切替工程における二次ポンプ回転速度は、少なくとも、先行する切替工程における二次ポンプ回転速度に依存する様態で、予め設定される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、次の切替工程における二次ポンプ回転速度は、少なくとも、先行する切替工程における二次ポンプ回転速度と、先行する切替工程に更に先行する切替工程における二次ポンプ回転速度とに依存する様態で、予め設定される。次の切替工程における二次ポンプ回転速度は、先行する切替工程における二次ポンプ回転速度が、先行する切替工程に更に先行する切替工程における二次ポンプ回転速度以上であるかどうかに依存する様態で、計算することができる。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、先行する切替工程は、次の切替工程のすぐ前である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、流体路は、トルク伝達装置に第1の流体圧力を供給するための第1の流体分岐路と、第1の流体分岐路から少なくとも部分的に分離されている、トルク伝達装置に第2の流体圧力を供給するための第2の流体分岐路と、を有する。第2の流体圧力は、第1の流体圧力より大きくてもよい。
【0030】
本発明の更なる利点及び有利な実施形態は、図の説明及び図面から明らかになるであろう。
【0031】
本発明は、図面を参照しながら以下に詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の特定の実施形態における方法を実行するための、トルク伝達装置のための液圧装置のブロック図を示している。
図2】本発明の更なる特定の実施形態における方法を実施するときの様々なパラメータの曲線図を示している。
図3】本発明の特定の実施形態における方法のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の特定の実施形態における方法を実行するための、トルク伝達装置12のための液圧装置10のブロック図を示している。トルク伝達装置12は、ダブルクラッチとして構成されており、車両、特に自動車のドライブトレインに配置されており、駆動要素、例えば内燃機関及び/又は電気モータと、トランスミッションとの間で交互にトルク伝達するための液圧作動可能な第1のクラッチK1及び液圧作動可能な第2のクラッチK2を有する。トルク伝達装置12は、好ましくは、車両のパワーシフト可能なeアクスルに配置される。
【0034】
更に、トルク伝達装置12は、2つのクラッチK1、K2の少なくとも一方を冷却するための液圧作動式の冷却装置Cを備えている。第1のクラッチK1と、第2のクラッチK2と、更に冷却装置Cは、流体路14を介して液圧装置10に液圧的に接続されている。
【0035】
液圧装置10は、第1のポンプP1及び第2のポンプP2を有する電動式ポンプ装置Pを備えている。第1のポンプP1及び第2のポンプP2は、共通の電気モータEによって駆動される。第1のポンプP1には第1の流体分岐路16が割り当てられており、第2のポンプP2には第2の流体分岐路18が割り当てられている。第1のポンプP1は、第1の流体圧力pを提供するための一次ポンプ回転速度を有する、ポンプ装置Pの第1の動作状態において有効であることができる。第2のポンプは、第2の流体圧力pを提供するための二次ポンプ回転速度を有する、ポンプ装置Pの第2の動作状態において有効であることができる。
【0036】
更に、システム圧力バルブSVが設けられており、その下流には、第1のクラッチK1に割り当てられた第1のクラッチバルブKV1と、第2のクラッチK2に割り当てられており第1のクラッチバルブKV1に並列に配置された第2のクラッチバルブKV2とが配置されている。
【0037】
第1のポンプP1は、冷却装置Cによるクラッチ冷却に必要な第1の流体圧力pを、第1の流体路16を介して供給することができる。第2のポンプP2は、第1のクラッチK1及び第2のクラッチK2を作動させるのに必要な第2の流体圧力pを、第2の流体路18を介して供給することができる。第1のクラッチバルブKV1は、第1のクラッチK1のクラッチ作動を制御するように作動可能であり、第2のクラッチバルブKV2は、第2のクラッチK2のクラッチ作動を制御するように作動可能である。
【0038】
第1のクラッチバルブKV1及び第2のクラッチバルブKV2の両方の上流には、液圧蓄圧器として、それぞれ1つのばね圧力アキュムレータSCが接続されている。個々のばね圧力アキュムレータSCの上流には、それぞれチェックバルブRVが配置されている。これにより、第2のポンプP2が第2の流体分岐路18における第2の流体圧力を上昇させ、それによってばね圧力アキュムレータSCをチャージすることができ、ここで、第2のポンプP2に向かう流体圧力低下は、対応するチェックバルブRVによって低減される。
【0039】
しかしながら、圧力漏れによっても、第2の流体圧力pの小さな圧力低下が発生することがある。制御ユニットSは、第2の流体圧力pと第2の流体圧力目標値との間の比率に依存する様態で、必要に応じて、かつ反復的に、第2の動作状態をとる切替工程を開始することができる。この点において、第1の動作状態を、一時的に第2の動作状態に置き換えることができる。切替工程は、第2の流体圧力pが目標圧力レベルに戻されるポンプ後工程とすることができる。この場合、二次ポンプ回転速度は、第2のポンプP2のポンプ後回転速度とすることができる。
【0040】
図2は、本発明の更なる特定の実施形態における方法の実行に関する様々なパラメータの曲線図を示している。図2a)は、第2の流体圧力pの時間的経過、図2b)は、ポンプ装置の電気エネルギEの時間的に対応する経過、図2c)は、ポンプ回転速度nの時間的に対応する経過、図2d)は、ポンプ装置の電動ポンプ電力Pの時間的に対応する経過を示している。
【0041】
液圧装置の動作中、第2の流体圧力pが第2の流体圧力目標値(この場合は第2の流体圧力最小値p2,min)を下回った時点でただちに切替工程を開始することによって、二次ポンプ回転速度nが設定される。第2の流体圧力pが第2の流体圧力最大値p2,maxに達するか超えたときに、特定の切替工程が設定される。
【0042】
液圧装置の動作中に時点tが存在するとき、少なくとも1つの先行する切替工程Uと、これに更に先行する切替工程Uと、時点tに続く次の切替工程Uとが存在する。切替工程Uは時点tにおいて完了し、切替工程Uは時点tにおいて完了する。
【0043】
次の切替工程Uを対象として、記載されている方法では、液圧装置の動作中に、次の切替工程Uのために設定すべき二次ポンプ回転速度nを、少なくとも、先行する切替工程Uにおけるポンプ装置の電動ポンプ電力Pを特徴付ける第1の電力値Pに依存する様態で、計算する。その結果、ポンプ装置のエネルギ消費を低減することができ、液圧装置は、必要な第2の流体圧力pをより迅速かつ正確に設定することができる。このように、二次ポンプ回転速度nは、トルク伝達装置の動作中に適応的に予め設定される。これにより第2の流体圧力pは、外部の影響を受けにくくなる。
【0044】
次の切替工程Uにおいて、この目的のために設けられるポンプ装置の電動ポンプ電力Pを低減する仕様で、二次ポンプ回転速度nが設定され、次の切替工程Uにおける二次ポンプ回転速度nは、先行する切替工程Uの二次ポンプ回転速度nとは回転速度変更値Δnだけ異なるように、すなわち必要に応じて低く、又は高く、設定される。回転速度変更値Δnは、例えば200rpmとすることができる。
【0045】
第1の電力値Pは、基準期間における平均化された電動ポンプ電力として、次のように計算される。
【数1】
ここで、Eは、時点tにおけるポンプ装置によって消費された電気エネルギであり、Eは、時点tにおけるポンプ装置によって消費された電気エネルギである。
【0046】
基準期間は、先行する切替工程Uの完了と、それに更に先行する切替工程Uの完了との間の時間間隔t-tである。
【0047】
第1の電力値Pを求める前に、時点tまでの比較可能な期間における平均化された電動ポンプ電力に対応する第2の電力値Pが、同様の方法ですでに計算されている。
【0048】
次の切替工程Uに使用される二次ポンプ回転速度nの計算は、例えば、図3のフローチャートに従ってケースごとに場合分けして実行することができる。ここで、最初に、第1の電力値Pを(1)に従って計算する。次に、第1の電力値Pと第2の電力値Pを比較する。二次ポンプ回転速度nの次の判定は、第1の電力値Pが第2の電力値Pよりも小さいか大きいかによって場合分けされる。
【0049】
例えば、第2の電力値Pが第1の電力値Pよりも小さい場合、次に、切替工程Uにおける二次ポンプ回転速度nが切替工程Uにおける二次ポンプ回転速度nよりも大きいかどうかを判定する。この条件が満たされる場合、次の切替工程Uの二次ポンプ回転速度nは、先行する切替工程Uの二次ポンプ回転速度nよりも回転速度変更値Δnだけ高く設定される。
【0050】
この点において、次の切替工程Uのために計算される、予め設定される二次ポンプ回転速度nは、最小二次ポンプ回転速度n2,minと最大二次ポンプ回転速度n2,maxとの間の値の範囲に狭められる。最小二次ポンプ回転速度n2,minを決定することは、切替工程を時間的に制限するのに役立つ。最大二次ポンプ回転速度n2,maxを指定することは、ポンプ装置の速度コントローラの負荷を軽減するため、及び/又は、ポンプ装置の最大許容二次ポンプ回転速度を回避するために、有利であり得る。
【0051】
例えば、第2の電力値Pが第1の電力値Pよりも小さく、切替工程Uにおける二次ポンプ回転速度nが切替工程Uにおける二次ポンプ回転速度n以下である場合、次の切替工程Uの二次ポンプ回転速度nは、後退する切替工程Uの二次ポンプ回転速度nよりも回転速度変更値Δnだけ低く設定される。
【0052】
場合分けにおける他の可能な条件時の次の切替工程Uの二次ポンプ回転速度nの変更は、図から明らかである。
【符号の説明】
【0053】
10 液圧装置
12 トルク伝達装置
14 流体路
16 第1の流体分岐路
18 第2の流体分岐路
C 冷却装置
E 電気モータ
K1 第1のクラッチ
K2 第2のクラッチ
KV1 第1のクラッチバルブ
KV2 第2のクラッチバルブ
P ポンプ装置
P1 第1のポンプ
P2 第2のポンプ
S 制御装置
SC ばね圧力アキュムレータ
SV システム圧力バルブ
第1の流体圧力
第2の流体圧力
2,min 第2の流体圧力最小値
2,max 第2の流体圧力最大値
P 電動ポンプ電力
第1の電力値
第2の電力値
一次ポンプ回転速度
二次ポンプ回転速度
2,min 最小二次ポンプ回転速度
2,max 最大二次ポンプ回転速度
Δn 回転速度変更値
切替工程
切替工程
次の切替工程
図1
図2
図3