(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
A61M25/09 530
(21)【出願番号】P 2022554994
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2020037807
(87)【国際公開番号】W WO2022074723
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】矢沼 豊
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-543937(JP,A)
【文献】特表2002-543938(JP,A)
【文献】特開2016-202231(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168762(WO,A1)
【文献】特表2021-529580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤを挿通可能なルーメンと、前記ルーメンに連通する遠位端開口を有する遠位端部分と、前記ルーメンに連通する近位端開口を有する近位端部分と、近位端が前記近位端開口に連なり、前記遠位端部分に向かって長手軸方向に沿って延びるスリットと、を有するシース
と、
前記シースを内部に挿通可能であり、前記シースの前記近位端開口に対応する位置に設けられ、側面に設けられた貫通孔と、前記長手軸方向に沿って延びるスリットと、を有するファンネル管と、
を有し、
前記ファンネル管は、前記シースに対して前記長手軸回りに回転することで、前記ガイドワイヤが前記シースの前記スリットへの進入を規制される第一状態と、前記ガイドワイヤが前記シースの前記スリットに進入可能な第二状態と、を切替え可能に構成されている、内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記ファンネル管は、
前記長手軸方向に貫通するシース挿通路を形成し、側面に前記貫通孔を有する筒体と、
前記筒体の側面に突出して設けられ、前記筒体の前記貫通孔に連通する近位開口を有するファンネル部と、を有し、
前記筒体と前記ファンネル部にはそれぞれスリットが形成されている、請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記第一状態のとき、前記シースの前記スリットと、前記筒体及び前記ファンネル部の前記スリットとは周方向の位置が異なり、
前記第二状態のとき、前記シースの前記スリットと、前記筒体及び前記ファンネル部の前記スリットとは周方向の位置が略等しい、
請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記第一状態及び前記第二状態のとき、前記シースの前記近位端開口と前記筒体の前記貫通孔とは連通している、請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の管腔臓器に関わる疾患の治療時、処置具を処置対象の管腔臓器に挿入するために、内視鏡を用いてガイドワイヤを管腔臓器に挿入する場合がある。このような内視鏡操作の場合、体内に内視鏡を挿入し、内視鏡の挿通路に挿入したカニューラを用いて体外から処置対象の管腔臓器までガイドワイヤを留置する。その後、留置されたガイドワイヤに沿って処置具を管腔臓器に挿入する。治療時、例えば、造影剤の供給、拡張用バルーン、切開具等、複数の処置具を順次交換する操作を行う場合がある。従来、処置具を交換する度に、各処置具用のカテーテルを挿抜していた。
【0003】
これに対し、例えば、特許文献1には、シャフトの近位部にCチャンネルスリットが形成され、操作部の近傍に設けられたガイドワイヤポートとCチャンネルスリットとが連通しているカテーテルが開示されている。特許文献1のカテーテルでは、Cチャンネル内にガイドワイヤが挿入され、ガイドワイヤポートから露出している。特許文献1のカテーテルでは、ガイドワイヤポートからガイドワイヤが引き出せるように構成されており、内視鏡挿入部に対して、ガイドワイヤを容易に挿抜させることができる。この結果、ガイドワイヤをカテーテルのガイドワイヤルーメン内に残留させながらガイドワイヤの挿入ツールからガイドワイヤを除去可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処置時、例えば、ガイドワイヤを管腔臓器内で前進させる操作を行う場合がある。このとき、特許文献1のカテーテルでは、操作者はガイドワイヤをガイドワイヤルーメン内で前進させるために、ガイドワイヤを押し込む。この操作に対し、ガイドワイヤの露出部分がガイドワイヤポートよりも遠位側のスリットおよびカテーテルのCチャンネルのスリットに対して前進し、ガイドワイヤルーメン内でガイドワイヤを円滑に前進させることが出来ない場合がある。さらに、ガイドワイヤポートよりも遠位側およびCチャンネルのスリットにガイドワイヤが挟まると、ガイドワイヤを進退操作可能な状態に戻す操作が必要となり、処置時間短縮の妨げとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内視鏡用処置具は、ガイドワイヤを挿通可能なルーメンと、前記ルーメンに連通する遠位端開口を有する遠位端部分と、前記ルーメンに連通する近位端開口を有する近位端部分と、近位端が前記近位端開口に連なり、前記遠位端部分に向かって長手軸方向に沿って延びるスリットと、を有するシースと、前記シースを内部に挿通可能であり、前記シースの前記近位端開口に対応する位置に設けられ、側面に設けられた貫通孔と、前記長手軸に沿って延びるスリットと、を有するファンネル管と、を有し、前記ファンネル管は、前記シースに対して前記長手軸回りに回転することで、前記ガイドワイヤが前記シースの前記スリットへの進入を規制される第一状態と、前記ガイドワイヤが前記シースの前記スリットに進入可能な第二状態と、を切替え可能に構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内視鏡用処置具は、ガイドワイヤを円滑に進退操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る内視鏡用処置具の使用態様を示した斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係る内視鏡用処置具の一部の側面図である。
【
図3】第一実施形態に係る内視鏡用処置具の一部の側面図である。
【
図6】実施形態に係る内視鏡用処置具の遠位部分を示す側面図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII線の断面図である。
【
図9】実施形態に係る内視鏡用処置具の使用態様を示す模式図である。
【
図10】実施形態に係る内視鏡用処置具の使用態様を示す模式図である。
【
図11】第一実施形態の変形例の内視鏡用処置具の一部の斜視図である。
【
図14】第二実施形態に係る内視鏡用処置具の一部の側面図である。
【
図16】第二状態における抑制部の
図14のXV-XV線の断面図である。
【
図17】第二実施形態の変形例の内視鏡用処置具の一部の斜視図である。
【
図18】第二実施形態の変形例の内視鏡用処置具の一部の斜視図である。
【
図19】第二実施形態の変形例の内視鏡用処置具の一部の斜視図である。
【
図20】第三実施形態に係る内視鏡用処置具の一部の側面図である。
【
図23】第三実施形態の変形例の内視鏡用処置具の一部の斜視図である。
【
図24】第四実施形態に係る内視鏡用処置具の一部の斜視図である。
【
図26】抑制部の第二状態における
図24のXXV-XXV線の断面図である。
【
図27】第四実施形態の変形例の内視鏡用処置具の一部の斜視図である。
【
図28】第五実施形態の変形例の内視鏡用処置具の一部の側面図である。
【
図30】第六実施形態に係る内視鏡用処置具の抑制部における断面図である。
【
図31】第六実施形態に係る内視鏡用処置具の抑制部における断面図である。
【
図32】第七実施形態に係る内視鏡用処置具の抑制部の側面図である。
【
図33】第七実施形態に係る内視鏡用処置具の抑制部の側面図である。
【
図34】内視鏡用処置具の変形例を示す側面図である。
【
図35】内視鏡用処置具の変形例を示す側面図である。
【
図36】内視鏡用処置具の使用方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
以下、本実施形態に係る内視鏡用処置具および内視鏡用処置具の使用方法を
図1から
図10を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る内視鏡用処置具1を内視鏡装置100の処置具チャンネル105に挿入して使用する態様を示す全体図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る内視鏡用処置具1は、体内において生体組織の切開をするために内視鏡装置100とともに使用される医療器具である。本実施形態に係る内視鏡装置100は、体内に挿入される内視鏡挿入部101に能動湾曲部107を有している。能動湾曲部107は、操作部103の操作により湾曲動作可能に構成されている。
【0012】
本実施形態では、十二指腸乳頭を観察するために適した側視型の内視鏡装置100に内視鏡用処置具1(以下、「処置具1」と記載する。)が挿入されて使用される例を示す。側視型の内視鏡装置100は、例えば、内視鏡挿入部101と、把持部102と、鉗子栓104と、処置具チャンネル105と、不図示の起上台および撮像部を備える。内視鏡挿入部101は体内に挿入される部分である。操作部103は、操作者が操作する部位である。以下の説明において、内視鏡装置100における操作部103が設けられている側を近位側Pと称し、内視鏡挿入部101の端部であって内視鏡用処置具1が突出する側を遠位側Dと称する。同様に、後述する処置具1の操作部9側を近位側Pと称し、操作部9と長手方向の反対側の端部であって体内に挿入されるシース2の端部側を遠位端と称する。
【0013】
把持部102は、内視鏡挿入部101の近位端に配されている。鉗子栓104は、把持部102の一部に配されている。処置具チャンネル105は、鉗子栓104と連通し内視鏡挿入部101の内部に形成されている。起上台は、処置具チャンネル105の遠位端において処置具チャンネル105から突出される内視鏡用処置具1等の向きを内視鏡挿入部101の中心軸に対して直交する方向へと変えるために設けられている。撮像部は、内視鏡挿入部101の遠位端に設けられている。
【0014】
処置具1は、鉗子栓104から処置具チャンネル105に挿入され、内視鏡挿入部101の遠位端から突没可能に配置されて使用される。処置具1は、シース2と操作部9と、基部4と、連結部5と、を有する。操作部9は、処置具1の近位端に設けられている。シース2は、処置具1の遠位側Dに設けられている。シース2と操作部9とは、基部4および連結部5を介して接続されている。
【0015】
シース2は、処置具チャンネル105に挿入される細長い部材である。シース2は、可撓性を有する細長い部材である。本実施形態ではシース2は樹脂製である。
図4および
図5に示すように、シース2は、ガイドワイヤルーメン21が形成されている。
図6から
図8に示すように、ガイドワイヤルーメン21はシース2の近位端の近位端開口22からシース2の遠位端の遠位端開口24までシース2の全長にわたって形成されている。ガイドワイヤルーメン21は、ガイドワイヤGWが進退可能な大きさのルーメンである。
図7及び8に示すように、ガイドワイヤルーメン21は、シース2の径方向外側に切り欠かれており、長手軸に直交する断面形状が略C字型のCチャンネル構造を有する。Cチャンネル部分には、シーススリット23が形成されている。シーススリット23は、シース2の遠位端開口24の近傍からシース2の近位端開口22にかけて形成されている。シーススリット23は弾性変形可能である。またシーススリット23の幅は、処置具1と組み合わせて使用するガイドワイヤGWの外径よりわずかに小さい。シース2は、ガイドワイヤルーメン21内に挿入されたガイドワイヤGWが弾性変形可能なシーススリット23からシース2の外部に引き出し可能に構成されている。遠位端開口24が配置されている部分を含む領域をシース2の遠位端部分と称する。近位端開口22が配置されている部分を含む領域をシース2の近位端部分と称する。
【0016】
図7および
図8に示すように、シース2には、ガイドワイヤルーメン21の他に、1以上のルーメン29が形成されている。ルーメン29は、造影剤の注入路、バルーンへの流体の注入路として機能する場合や、ナイフワイヤの素線の挿通路として機能する。
【0017】
操作部9は、操作者がシース2内に挿入される他の処置具を操作するための入力が行われる部位である。操作部9は、軸部91とスライダ部92とを有する。軸部91は、基部4に固定されており、長手軸に沿って直線状に延びている。スライダ部92は、軸部91の長手軸に沿ってスライド可能に設けられている。
【0018】
スライダ部92は、例えば、高周波電源装置に接続可能なコネクタ93と、指掛け部94を有してもよい。コネクタ93には、例えば、後述するナイフワイヤの近位端が電気的に接続可能である。指掛け部94には、操作者の指を通すことができる。
【0019】
基部4には、挿入ポート41が設けられている。挿入ポート41は、後述するシースのルーメンに連通している。挿入ポート41は、例えば、造影剤やバルーン用の流体をルーメン29に注入したり、ナイフワイヤが挿入される。
【0020】
連結部5は、連結本体53と、近位連結部51と、フック52と、シース連結部54とを有する。連結本体53の近位端に近位連結部51が設けられている。近位連結部51は、基部4と連結本体53とを接続している。連結本体53の遠位部には、シース連結部54およびフック52が設けられている。シース連結部54は、操作部9および近位連結部51の遠位側Dに長手軸に沿って設けられている。
図2および
図3に示すように、フック52は、シース連結部54の側方に突出して設けられている。フック52は、把持部102に係止可能な係止部である。
図1に示すように、フック52が把持部102に係止されると、処置具1の連結部5よりも近位側Pの部分が内視鏡装置100の長手軸に交差する方向に保持される。
【0021】
図1から
図3に示すように、シース連結部54には、シース2の近位部が挿入されている。シース連結部54にはガイドワイヤ挿入口55が開口している。ガイドワイヤ挿入口55の遠位端551から、シース連結部54の遠位端までスリット56が形成されている。スリット56は、抑制スリットの一例である。スリット56の幅は組み合わせて使用するガイドワイヤGWの外径よりわずかに大きい。ガイドワイヤ挿入口55は、ガイドワイヤルーメン21と連通している。
図3から
図5に示すように、スリット56はシーススリット23と近接配置され、各スリット56,23の周方向の位置が略等しい位置に配置されている。
【0022】
シース連結部54には、抑制部7が設けられている。抑制部7は、ガイドワイヤ挿入口55から突出されたガイドワイヤGWがスリット56内への進入を抑制するために設けられている。抑制部7は、スリット56およびガイドワイヤ挿入口55の遠位端551の少なくとも一方を覆う。スリット56はシーススリット23と対応する位置に配置され、ガイドワイヤ挿入口55は、シース2の近位端開口22と対応する位置に配置されている。したがって、抑制部7は、シーススリット23および近位端開口22の少なくとも一方を覆う。本実施形態では、抑制部7は、スリット56を覆う位置に設けられている。
【0023】
図4は、
図2のIV-IV線の断面図であり、第一状態の抑制部7を示している。
図5は
図3のV-V線の断面図であり、第二状態の抑制部7を示している。
図4及び
図5に示すように、抑制部7は、シース連結部54との固定部79と、カバー本体71と、係止爪73と、把持突起72とを有する。カバー本体71は、シース連結部54の外周面に沿う円弧形状の部位である。カバー本体71の円弧部の周方向の端部に固定部79と、係止爪73とが設けられている。把持突起72は、シース連結部54の外面に突出して設けられている。把持突起72は、操作者が指で把持可能な大きさおよび形状を有し、操作者が把持可能な位置に設けられていればよい。係止爪73は、カバー本体71の円弧部の内側に向かって突出している。係止爪73は、シース連結部54の外周面に設けられた凹部541に係止可能に構成されている。
【0024】
抑制部7は、固定部79を起点として、シース連結部54に対して開閉可能に設けられている。
図4に示すように、抑制部7がスリット56を覆い、係止爪73がシース連結部54の凹部541に係止された状態を第一状態と称する。第一状態では、抑制部7がシーススリット23とガイドワイヤ挿入口55の遠位端551の少なくとも一方を覆う。
図5に示すように、カバー本体71がシース連結部54から離れる方向に固定部79を中心に回動し、スリット56が開放された状態を第二状態と称する。抑制部7は、回動動作により第一状態と第二状態とに切り替え可能に構成されている。
【0025】
抑制部7は、スリット56およびガイドワイヤ挿入口55の遠位端551の少なくとも一方を覆う位置に設けられていればよい。
図4および
図5に示す例の他、例えば、スリット56の近位部およびガイドワイヤ挿入口55の遠位端551を覆う位置に抑制部が設けられていてもよい。抑制部7は、ガイドワイヤ挿入口55におけるガイドワイヤGWの進退を妨げず、かつ、ガイドワイヤGWがスリット56およびシーススリット23内への進入を防ぐ位置に設けられていればよい。
【0026】
次に、処置具1の使用方法について
図9、
図10および
図36を参照しながら説明する。処置具1は、シース2が鉗子栓104から挿入され、処置具チャンネル105内に挿通されて内視鏡挿入部101の遠位端から突出される。シース2の遠位部は、能動湾曲部107の湾曲に倣って湾曲可能である。シース2の遠位端は、
図1に示すように、起上台により更に湾曲可能に構成されている。
【0027】
図9および
図10に処置具1の使用態様を示す。処置具1は
図9に示すように二人の操作者U1,U2で使用される場合と、
図10に示すように、一人の操作者U1で使用される場合とがある。二人の操作者U1,U2で使用する場合、
図9に示すように、フック52の内視鏡装置100への係合が解除される。操作者U1が、内視鏡装置100を持って内視鏡装置100を操作する。操作者U2が、処置具1の操作部9を持って操作する。操作者U2はガイドワイヤGWを把持し、処置内容に応じて、ガイドワイヤGWの位置を保持する操作と、進退させる操作とを行う。
図10に示すように、一人の操作者U1が操作する場合、フック52を内視鏡挿入部101の把持部102に係止させて内視鏡装置100に対する処置具1の位置を保持することで、操作者U1が一人で内視鏡装置100の操作と処置具1の操作のすべてを一人で行う。処置具1を操作する操作者U1,U2はガイドワイヤGWを把持し、処置内容に応じて、ガイドワイヤGWの位置を保持する操作と、進退させる操作とを行う。
【0028】
最初に、シーススリット23および近位端開口22の遠位端の少なくとも一方を抑制部で閉塞する(第一ステップS1)。ガイドワイヤGWはガイドワイヤ挿入口55から挿入される。ガイドワイヤGWの遠位端は、シース2の遠位端開口24から突出し、管腔器官内に挿入される。
【0029】
次に、シース2のシーススリット23および近位端開口22の遠位端の少なくとも一方を閉塞した状態で、ルーメン21内でガイドワイヤGWを前進または後退させる(第二ステップS2)。すなわち、第一状態でガイドワイヤGWを進退させる。ガイドワイヤGWの近位部は、シース2の近位端開口22およびガイドワイヤ挿入口55から引き出され、シース2の外部に露出して延びている。ガイドワイヤGWは、ガイドワイヤルーメン21内を進退自在に挿通されている。そのため、ガイドワイヤ挿入口55から引き出されているガイドワイヤGWを操作者が前進又は後退させると、ガイドワイヤGWはガイドワイヤルーメン21内を進退する。
【0030】
体内に挿入されているシース2の湾曲状態や、造影剤の注入後、ルーメン29に造影剤が残留している場合等、シース2の状態により、ガイドワイヤルーメン21の遠位領域内におけるガイドワイヤGWの進退動作が円滑に行えない場合がある。この状態で、ガイドワイヤGWを操作する操作者がガイドワイヤGWを前進させると、ガイドワイヤGWの近位領域には押し込まれる方向の力が作用するが、ガイドワイヤGWの遠位領域は円滑に前進しない。この結果、ガイドワイヤGWがガイドワイヤ挿入口55の外側で曲がる。この状態でガイドワイヤGWを押し続けると、ガイドワイヤGWがガイドワイヤ挿入口55の遠位端551からスリット56およびシーススリット23内に進入する方向に移動する。ガイドワイヤGWがスリット56の近位部よりも遠位側Dで、ガイドワイヤルーメン21の外部に露出すると、ガイドワイヤGWをガイドワイヤ挿入口55内に戻す操作に時間を要する。しかし、本実施形態では、抑制部7が第一状態に配置されていると、抑制部7がスリット56を覆って、スリット56を閉塞している。このため、連結部5側においてガイドワイヤGWのスリット56への進入が抑制部7により妨げられる。この結果、抑制部7が第一状態のときに、ガイドワイヤGWを前進させると、ガイドワイヤGWが第二操作者の意図に反して、スリット56内へ進入することを防止できる。
【0031】
第二ステップS2の後に、シーススリット23の近位端および近位端開口22の遠位端の両方を開放する(第三ステップS3)。すなわち、抑制部7を第二状態に切り替える。例えば、造影剤注入後、ナイフワイヤに交換する場合等、ガイドワイヤGWを体内に留置した状態を保持しながら、シース2を内視鏡挿入部101から抜去することがある。この操作時、
図3に示すように、処置具1を操作する操作者は、把持突起72を把持しながら抑制部7を回動させ、カバー本体71がスリット56を覆わないように、抑制部7を第二状態に切り替える。
【0032】
ついでガイドワイヤGWをスリット56およびシーススリット23内に進入させて、ガイドワイヤGWを体内に留置した状態を保持しながら、シース2を剥き出し、処置具1を内視鏡挿入部101から抜去する(第四ステップS4)。第四ステップS4を詳細に説明する。まずガイドワイヤGWをスリット56およびシーススリット23内に進入させ続け、シース2の近位端開口22から引き出されたガイドワイヤGWを内視鏡装置100の鉗子栓104の近傍まで移動させる。引き出されたガイドワイヤGWが鉗子栓104の近傍まで移動したら、ガイドワイヤGWを鉗子栓104近傍で内視鏡装置100に固定する。その後ガイドワイヤGWを鉗子栓104近傍に固定した状態を保ち、基部4、つまり処置具1を近位側Pに引く。フック52を把持部102に係止させて使用している場合は、フック52の把持部102への係合を解除した後近位側Pに引く。このとき、ガイドワイヤGWの引き出された位置はシーススリット23の遠位端側に移動していく。処置具1を処置具チャンネル105から引き抜いていきガイドワイヤGWの引き出された位置がシーススリット23の遠位端まで移動したら、つまりシーススリット23の遠位端が鉗子栓104近傍まで移動したら、処置具1の引きぬきを一旦止めてガイドワイヤGWの鉗子栓104近傍への固定を解除する。ガイドワイヤGWの固定を解除した後、ガイドワイヤGWが内視鏡装置100に対して動かないように保持しながら、処置具1だけを更に処置具チャンネル105から引き抜く。シース2の遠位端が鉗子栓104から完全に引き抜かれたら、再度ガイドワイヤGWを鉗子栓104近傍に固定し、処置具1をガイドワイヤGWから完全に引き抜く。
【0033】
本実施形態に係る処置具1および処置具の使用方法によれば、シース2に対してガイドワイヤGWを前進操作する際、ガイドワイヤGWがスリット56およびシーススリット23内に進入することを防ぎ、円滑にガイドワイヤGWをシース2に対して前進させることができる。
【0034】
抑制部7は、第一状態と第二状態とに切り替え可能に構成されているため、シース2を内視鏡挿入部101から抜去する際は抑制部7を第二状態に切り替えることにより、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去できる。この結果、手術時間の短縮に寄与する。
【0035】
処置具1の態様は上記態様に限定されない。
図11から
図13に変形例の処置具1Aを示す。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成等については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図11から
図13に示す変形例では、連結部の構成が上記実施形態と異なる。処置具1の連結部5は第一実施形態の構成例に限定されない。例えば、フック52は必須の構成ではない。本変形例の処置具1Aのように、ファンネル管8にシース2を挿入し、ガイドワイヤGWをシース2の外部に引き出す構成であってもよい。
【0036】
ファンネル管8は、筒体81と、ファンネル部82と、抑制部7Aとを有する。筒体81は長手軸方向に貫通するシース挿通路が形成されており、シース2が挿入されている。ファンネル部82は、筒体81の長手方向の中間部の外面に突出して設けられている。
【0037】
筒体81およびファンネル部82には、スリット83、85が形成されている。スリット83,85と、シース2のシーススリット23とは周方向の位置が同じ位置に設けられている。ファンネル部82の内側において、筒体81の側面に開口87が形成されている。筒体81の側面の開口87は、シース2の近位端開口22と対応する位置に設けられている。筒体81の側面の開口87は、近位端開口22を介してシース2のガイドワイヤルーメン21と連通している。
【0038】
ファンネル部82よりも遠位側Dにおける筒体81に抑制部7Aが設けられている。
図12および
図13に示すように、抑制部7Aは、筒体81内に挿入されているシース2の近位端開口22の遠位端およびシーススリット23の近位端を覆う位置に設けられている。抑制部7Aは、筒体81に対して回動可能に連結されている。抑制部7Aは、カバー本体71Aでスリット85を覆う第一状態と、スリット85を開放する第二状態とに切り替え可能に構成されている。抑制部7Aの態様は第一実施形態の抑制部7と同様に固定部79とファンネル管8との接続部分を軸として回動する。
【0039】
ガイドワイヤGWは、シース2のガイドワイヤルーメン21から筒体81の側面の開口を経由してファンネル部82に挿通されている。ガイドワイヤGWは、ファンネル部82の近位開口84から処置具1の外部に引き出されている。
【0040】
抑制部7Aが第一状態でガイドワイヤGWを前進させるとき、処置具1の操作者がガイドワイヤGWを前進操作させてもガイドワイヤGWの遠位領域が前進しない場合、ガイドワイヤGWは、抑制部7Aによりスリット85の遠位端よりも遠位側Dに進入することが防止できる。この結果、シーススリット23の近位端よりも遠位側DにガイドワイヤGWが進入することが防止できる。
【0041】
一方、ガイドワイヤGWを体内に留置した状態を保持しながら、処置具1Aを内視鏡挿入部101から抜去する場合、抑制部7Aを回動操作して第二状態に切り替える。その後、第二操作者がガイドワイヤGWをファンネル部82の近位開口84からスリット83に進入させ、スリット85を通過させる。この状態で、ファンネル管8を近位側Pに引くと、ガイドワイヤGWがシーススリット23内を進入し、ガイドワイヤルーメン21からシース2の外部にガイドワイヤGWが引き出される。
【0042】
変形例の処置具1Aは、第一実施形態と同様に、シース2に対してガイドワイヤGWを進退操作する際、ガイドワイヤGWがシーススリット23内に進入することを防ぎ、円滑にガイドワイヤGWをシース2に対して前進させることができる。
【0043】
抑制部7Aは、第一状態と第二状態とに切り替え可能に構成されているため、シース2を内視鏡挿入部101から抜去する際は抑制部7Aを第二状態に切り替えることにより、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去できる。この結果、手術時間の短縮に寄与する。
【0044】
(第二実施形態)
図14から
図16を参照して、第二実施形態に係る処置具1Bを説明する。第二実施形態に係る処置具1Bは、抑制部7Bの構成が第一実施形態と異なる例である。抑制部7Bは、シース連結部54に対して回転可能に設けられている。
図15は、
図14のXV-XV線の断面図であり、第一状態の抑制部7Bを示している。
図16は、
図14のXV-XV線の断面図であり、第二状態の抑制部7Bを示している。
図15および
図16に示すように、抑制部7Bは、長手軸に直交する断面形状が略C字型の部材である。抑制部7Bは、長手軸に直交する断面形状が円形のシース連結部54の外側に周方向に回転可能装着されている。
図15に第一状態における抑制部7Bの断面図を示している。
図16に第二状態における抑制部7Bの断面図を示している。
【0045】
抑制部7Bはスリット74Bを有する。スリット74Bは、シーススリット23およびスリット56と同じかやや広い開口幅を有するスリットである。
図16に示すように第二状態では、抑制部7Bのスリット74Bは、シーススリット23およびシース連結部54のスリット56と周方向の位置と略等しい位置に配置される。
図15に示すように、抑制部7Bが第一状態に配置されたとき、シーススリット23およびシース連結部54のスリット56が抑制部7Bにより覆われる。
【0046】
本実施形態の様に、抑制部7Bは、シース連結部54に対して相対回転動作により、第一状態と第二状態とを切り替え可能に構成されていてもよい。
【0047】
本実施形態の処置具1Bによれば、第一実施形態と同様に、シース2に対してガイドワイヤGWを進退操作する際、ガイドワイヤGWがスリット56およびシーススリット23内に進入することを防ぎ、円滑にガイドワイヤGWをシース2に対して前進させることができる。
【0048】
抑制部7Bは、第一状態と第二状態とに切り替え可能に構成されているため、シース2を内視鏡挿入部101から抜去する際は抑制部7Bを回転させて第二状態に切り替えることにより、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去できる。この結果、手術時間の短縮に寄与する。
【0049】
処置具の態様は上記態様に限定されない。
図17から
図19に変形例の処置具1C、1D、および1Fを示す。
図17に示す変形例の処置具1Cは、
図11と同様にファンネル管8を備える。ファンネル管8の遠位端部に、第二実施形態と同様の構成を備える抑制部7Cが設けられている。抑制部7Cは、ファンネル管8に対して回転可能に取り付けられている。
図17では、第一状態の抑制部7Cを示す。
図17に示すように第一状態では、シーススリット23および筒体81のスリット85が抑制部7Cにより覆われる。抑制部7Bが第二状態に配置されたときは、抑制部7Dのスリット74Cがシーススリット23および筒体81のスリット85と周方向の位置が略等しい位置に配置される。この結果、ガイドワイヤGWがファンネル部82のスリット83を通過して筒体81のスリット85およびシーススリット23に進入可能となり、ガイドワイヤGWが留置された状態で、処置具1Cが抜去可能となる。
【0050】
図18に示す変形例の処置具1Dは、抑制部7Dの位置が
図17の変形例の処置具1Cと異なる。本変形例の処置具1Dは、ファンネル部82の近位部に抑制部7Dが設けられている。ファンネル部82には、抑制部7Dが係止される係止溝86が形成されている。係止溝86は、抑制部7Dの大きさおよび形状に沿って形成されている。抑制部7Dは、係止溝86内に配置され、係止溝86内を周方向に回転可能に設けられている。抑制部7Dは、係止溝86内を周方向に回転させることにより、第一状態と第二状態とに切り替えられる。
図18では、第一状態における抑制部7Dを示す。第一状態において、ファンネル部82のスリット83の近位部の一部が抑制部7Dに覆われる。ファンネル部82のスリット83の近位部の一部が抑制部7Dにより覆われると、スリット83の遠位側DへのガイドワイヤGWの進入が抑制される。抑制部7Dは、シーススリット23の近位部よりも近位側Pに設けられているため、ガイドワイヤGWがシーススリット23に進入することが防止される。操作者により抑制部7Dが回転操作されて第二状態に配置されたとき、ファンネル部82のスリット83と抑制部7Dのスリット74Dの周方向の位置が略等しい位置に配置される。ガイドワイヤGWがファンネル部82のスリット83を通過して筒体81のスリット85およびシーススリット23に進入可能となる。この結果、ガイドワイヤGWが留置された状態で、処置具1Cが抜去可能となる。
【0051】
図19に示す変形例の処置具1Fは、ファンネル管8Fがシース2に対して回転可能に設けられ、抑制部7Fとして機能する例である。
図19では、第一状態における抑制部7Fを示す。操作者がファンネル管8をシース2に対して中心軸回りに回転操作することにより、抑制部7Fを第一状態と第二状態とに切り替え可能である。シース2には、周方向に長いガイドワイヤ挿通口22Fが形成されている。ファンネル管8Fの筒体81Fには、ガイドワイヤ挿通口22Fとファンネル部82とに連通する貫通孔が形成されている。抑制部7Fが第一状態のときも第二状態のときも、ガイドワイヤ挿通口22Fと貫通孔とは連通しており、ガイドワイヤGWが進退可能である。第一状態のとき、ガイドワイヤGWは、シーススリット23への進入が規制されている。操作者によりファンネル管8Fが回転操作されて第二状態に配置されたとき、ファンネル部82のスリット83と抑制部7Dのスリット74Dと、シーススリット23との周方向の位置が略等しい位置に配置される。この結果、ガイドワイヤGWがファンネル部82のスリット83を通過して筒体81のスリット85およびシーススリット23に進入可能となり、ガイドワイヤGWが留置された状態で、処置具1Cが抜去可能となる。
【0052】
図17から
図19に示した変形例の処置具1C,1D,1Fによれば、第二実施形態に係る処置具1Bと同様に、シース2に対してガイドワイヤGWを進退操作する際、ガイドワイヤGWがスリット85およびシーススリット23内に進入することを防ぎ、円滑にガイドワイヤGWをシース2に対して前進させることができる。
【0053】
抑制部7C,7D,7Fは、第一状態と第二状態とに切り替え可能に構成されているため、シース2を内視鏡挿入部101から抜去する際は抑制部7C,7D,7Fを回転させて第二状態に切り替えることにより、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去できる。この結果、手術時間の短縮に寄与する。
【0054】
(第三実施形態)
図20から
図22を参照して、第三実施形態に係る処置具1Gを説明する。第三実施形態に係る処置具1Gは、抑制部7Gの構成が第一実施形態と異なる例である。
図21から
図22に示すように、抑制部7Gのカバー本体71Gがシース連結部54のスリット56およびガイドワイヤ挿入口55の遠位端551Gを覆う位置に設けられている。
【0055】
図21および
図22は、
図20のXXI-XXI線における断面図である。
図21および
図22に示すように、連結部5Gは、筒形状を有し、シース2の近位部が挿入されている。連結部5Gにはガイドワイヤ挿入口55が開口している。ガイドワイヤ挿入口55の遠位端551Gから、連結部5Gの遠位端までスリット56Gが形成されている。
【0056】
抑制部7Gは、シーススリット23から径方向外側に離間した位置でシーススリット23を覆うように設けられている。抑制部7Gは、ガイドワイヤGWがシーススリット23からスリット56Gに移動可能な程度に、シース2の外周面から離間している。連結部5Gのスリット56Gは、シーススリット23の位置から周方向にずれた位置に設けられている。つまり、抑制部7Gは、シース2の周方向において、シーススリット23の開口位置と異なる位置に開口となるスリット56Gが形成されている。
【0057】
図22に示すように、シーススリット23から取り出されたガイドワイヤGWが抑制部7Gの内側の隙間Sを通過してスリット56Gから外部に取り出し可能に構成されている。操作者がガイドワイヤGWを前進させる操作を行ったときにガイドワイヤGWの遠位領域が前進しない場合、ガイドワイヤGWは、ガイドワイヤ挿入口55内で連結部5Gの径方向外側に動く。このとき、ガイドワイヤ挿入口55の遠位端551Gが抑制部7Gで覆われているため、ガイドワイヤGWは、ガイドワイヤ挿入口55の遠位端551Gに接触し、連結部5Gのスリット56Gおよびシーススリット23への進入が遮られる。一方、操作者がガイドワイヤGWをガイドワイヤルーメン21から取り出したい場合、
図20に二点鎖線で示すように、操作者はガイドワイヤGWをシース2の径方向外側に持ち上げながら周方向に引く。
図22に示すように、ガイドワイヤGWがシーススリット23から抑制部7Gの内側の隙間Sを通過してスリット56Gから抑制部7Gの外部に露出する。つまり、ガイドワイヤGWが抑制部7Gを避けてスリット56Gの遠位側Dに進入可能になる。この結果、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去でき、手術時間の短縮に寄与する。
【0058】
本実施形態に係る処置具1Gによれば、シース2に対してガイドワイヤGWを進退操作する際、ガイドワイヤGWがスリット56Gおよびシーススリット23内に進入することを防ぎ、円滑にガイドワイヤGWをシース2に対して前進させることができる。
【0059】
図23に第三実施形態の変形例の処置具1Hを示す。
図23に示す変形例の処置具1Hでは、連結部の構成が上記実施形態と異なる。例えば、第三実施形態の抑制部7Gの構成を、ファンネル管8にも適用可能である。本変形例の処置具1Hでは、ファンネル管8の筒体81の遠位部に、抑制部7Hが一体に形成されている。ファンネル部82のスリット83と筒体81のスリット85との間に、平板状の抑制部7Hが設けられている。
図23に示すように、ファンネル部82よりも遠位側Dにおいて、筒体81のスリット85と交差する位置で、筒体81の周方向に沿って延びている。抑制部7の周囲にスリット74Hが形成されている。スリット74Hは、曲折して形成されている。スリット74Hは、ファンネル部82のスリット83および筒体81のスリット85と連通している。抑制部7Hは、第三実施形態と同様に、シース2から径方向外側に離間して、シーススリット23を覆う位置に設けられている。
【0060】
カバー本体71Hが設けられていることにより、操作者の意図に反して、ガイドワイヤGWがファンネル部82のスリット83よりも遠位側Dに移動した場合に、ガイドワイヤGWがシーススリット23に進入することを防止できる。一方、ガイドワイヤGWをガイドワイヤルーメン21から取り外す場合は、ガイドワイヤGWをファンネル部82のスリット83内に進入させ、抑制部7Hまで引出して露出させた後、ガイドワイヤGWをスリット74Hに沿うようにシース2の周方向に動かすと、処置具1Gと同様に抑制部7Hの内側の隙間Sを通過して、ガイドワイヤGWがスリット74Hからファンネル管8の外部に露出する。
【0061】
処置具1Hによれば、シース2に対してガイドワイヤGWを進退操作する際、ガイドワイヤGWがスリット85の遠位端およびシーススリット23内に進入することを防ぎ、円滑にガイドワイヤGWをシース2に対して前進させることができる。一方、処置具1Hによれば、抑制部7Hのスリット74HからガイドワイヤGWを引き出せば、ガイドワイヤGWをシーススリット23内に進入可能となり、ガイドワイヤGWをシース2のガイドワイヤルーメン21から抜去できる。
【0062】
(第四実施形態)
図24から
図26を参照して、第四実施形態に係る処置具1Iを説明する。第四実施形態に係る処置具1Iは、抑制部7Iの構成が上記各実施形態と異なる例である。抑制部7Iは、シース連結部54の遠位部に設けられている。抑制部7Iは、一対のつまみ片75と、一対のカバー本体71Iと、一対の突起76とを有する。抑制部7Iは、シース連結部54のスリット56に沿って、スリット74Iが形成されている。スリット74Iの両側に一対のカバー本体71Iおよび一対のつまみ片75がそれぞれ一体に形成されている。抑制部7Iは、シース連結部54と一体に形成されている。カバー本体71Iは、シース2およびシース連結部54の上方を覆うように設けられている。つまみ片75は、カバー本体71Iの端部からシース連結部54の側方(
図25の下方)に傾斜して延びている。つまみ片75は、カバー本体71Iと連続して形成されている。シース連結部54の外周面のうち、つまみ片75の裏面に対向する位置に、一対の突起76が設けられている。つまみ片75は、カバー本体71Iより硬い。カバー本体71Iはカバー部の一例である。つまみ片75は切替部材の一例である。
【0063】
図25及び
図26は、
図24のXXV-XXV線の断面図である。
図25は、第一状態の抑制部7Iを示している。
図26は、第二状態の抑制部7Iを示している。一対のつまみ片75に外力が加わらない自然状態では、
図25に示すように、一対のカバー本体71Iが互いに近接配置され、シーススリット23が覆われた第一状態となる。抑制部7Iが第一状態であるとき、操作者がガイドワイヤGWを前進操作させてもガイドワイヤGWの遠位領域が前進しない場合、ガイドワイヤGWは、抑制部7Iによりスリット56の遠位端よりも遠位側Dのシーススリット23に進入することを防止できる。
【0064】
図26に示すように、一対のつまみ片75の下端部が互いに近付く方向に力が加わると、つまみ片75の裏面752が突起76に当接し、カバー本体71Iが傾き、スリット74Iが開く。この結果、シーススリット23の上方が覆われない第二状態となる。シース連結部54のスリット56を挟んだ両側に対称に設けられている。第二状態で、シース連結部54を近位側Pに引くと、ガイドワイヤGWがシーススリット23内に進入し、ガイドワイヤルーメン21からシース2の外部にガイドワイヤGWが引き出される。ガイドワイヤGWが体内に留置された状態を保ちながら処置具1Iが内視鏡挿入部101から抜去される。つまみ片75への外力が解除されると、一対のつまみ片75の下端部が互いに離れる方向に移動し、第一状態に復元する。
【0065】
本実施形態に係る処置具1Iによれば、抑制部7Iは、第一状態と第二状態とに切り替え可能に構成されているため、シース2を内視鏡挿入部101から抜去する際は抑制部7Iを第二状態に切り替えることにより、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去できる。この結果、手術時間の短縮に寄与する。
【0066】
図27に第四実施形態の変形例の処置具1Jを示す。
図27に示す変形例の処置具1Jでは、連結部の構成が上記実施形態と異なる。例えば、第四実施形態の抑制部7Iの構成を、ファンネル管8にも適用可能である。本変形例の処置具1Jでは、ファンネル管8の遠位部に抑制部7Jが設けられている。抑制部7Jの基本構成は、第四実施形態の抑制部7Iと同様である。抑制部7Jは、シーススリット23の近位端を覆う位置に配置されている。抑制部7Jが第一状態のとき、ガイドワイヤGWは、ファンネル部82のスリット83から外方に露出しても抑制部7Aによりスリット85の遠位端よりも遠位側Dに進入することが防止できる。この結果、シーススリット23の近位端からガイドワイヤGWが進入することが防止できる。
【0067】
一方、ガイドワイヤGWを体内に留置した状態を保持しながら、処置具1Jを内視鏡挿入部101から抜去する場合、抑制部7Jの一対のつまみ片75Jを挟み、一対のカバー本体71Jを開閉操作して第二状態に切り替える。その後、操作者がガイドワイヤGWをファンネル部82の近位開口84からスリット83に進入させ、スリット85を通過させる。この状態で、ファンネル管8を近位側Pに引くと、ガイドワイヤGWがシーススリット23内に進入し、ガイドワイヤGWがシーススリット23からシース2の外部に引き出される。
【0068】
本変形例の処置具1Jによれば、抑制部7Jは、第一状態と第二状態とに切り替え可能に構成されているため、第一状態のときは、ガイドワイヤGWが操作者の意図に反してシーススリット23に進入することが防止される。シース2を内視鏡挿入部101から抜去する際は抑制部7Jを第二状態に切り替えることにより、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去できる。この結果、手術時間の短縮に寄与する。
【0069】
(第五実施形態)
第五実施形態に係る処置具1Kを
図28および
図29を参照して説明する。本実施形態に係る処置具1Kは、抑制部7Kの構成が上記実施形態と異なる。
図29は、
図28のXXIX-XXIX線における断面図である。連結部5Kは、筒形状を有し、シース2の近位部が挿入されている。連結部5Kにはガイドワイヤ挿入口55が開口している。ガイドワイヤ挿入口55の遠位端551Kから、連結部5Kの遠位端までスリット56Kが形成されている。スリット56Kの幅L56は組み合わせて使用するガイドワイヤGWの径よりも狭くなっている。周方向におけるスリット56の両側が抑制部7Kを構成する。
図29に示すように、抑制部7Kは、シーススリット23の近位端および近位端開口22の遠位端を覆う位置に設けられている。一対のカバー本体71Kは、厚さが薄く、外力により弾性変形可能に構成されている。スリット56Kは抑制スリットの一例である。
【0070】
抑制部7Kが第一状態であるとき、シーススリット23は、抑制部7Kにより覆われている。したがって、ガイドワイヤルーメン21内に位置するガイドワイヤGWをスリット56Kに進入させて抑制部7Kよりも外方に露出させる力が掛かった場合であってもガイドワイヤGWには大きな抵抗力が生じる。特に、ガイドワイヤ挿入口55の遠位端551Kはシース2の近位端開口22の遠位端よりも近位側Pに位置する。その結果、ガイドワイヤGWがシーススリット23の近位部に進入することを防止できる。
【0071】
一方、操作者がガイドワイヤGWをガイドワイヤルーメン21から抜去したい場合、ガイドワイヤ挿入口55から露出しているガイドワイヤGWに対して、より大きな力を付与して径方向外側に移動させると、ガイドワイヤGWはスリット56Kに進入し、シーススリット23まで進入させることができる。この結果、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去でき、手術時間の短縮に寄与する。
【0072】
(第六実施形態)
次に第六実施形態に係る処置具1Lを
図30および
図31を参照して説明する。
図30および
図31は、シース2の長手軸に直交する断面図である。
図30は、第一状態における抑制部7Lを示している。
図31は、第二状態における抑制部7Lを示している。本実施形態に係る処置具1Lの抑制部7Lは、筒体70Lと、スライド部材78とを備える。筒体70Lは長手軸方向に遠位端から近位端まで連通する挿通路が形成されており、シース2が挿通されている。筒体70Lは、第五実施形態の筒体70Kと同様に、ガイドワイヤポートが開口している。ガイドワイヤポートと筒体70Kの遠位端との間に、長手軸に沿って延びるスリット74Lが形成されている。スリット74Lは、シーススリット23と周方向の位置が略等しい位置に配置されている。スリット74Lの両側にカバー本体71Lが配置されている。
【0073】
スライド部材78は、筒体70Lに対して、長手軸と直交する方向にスライド可能に設けられている。スライド部材78は、長手軸に直交する断面形状が略U字状のスライド溝を有する。スライド溝は、溝の底部に位置する第一溝部781と、スライド溝の開口端近傍に位置する第三溝部783と、第一溝部781と第三溝部783との間に設けられた第二溝部782とを含んで構成されている。第一溝部781は、筒体70Lの直径と略等しい溝である。
【0074】
図30に示すように、筒体70Lが第一溝部781に位置するとき、筒体70Lの外面と第一溝部781とが接触しており、一対のカバー本体71L同士が当接して第一状態を形成する。第二溝部782は、第一溝部781および第三溝部783よりも開口寸法が大きい。第二溝部782は、筒体70Lの直径よりも大きい溝である。
【0075】
図30に示すように、抑制部7Lが第一状態であるとき、一対のカバー本体71Lは、シーススリット23を覆う位置に配置されている。
図31に示すように、筒体70Lが第二溝部782に位置するとき、筒体70Lは第一状態よりも径方向外側に広がり、一対のカバー本体71L同士が離間してスリット74Lが開く。シーススリット23は、カバー本体71に覆われず抑制部7Lは第二状態となる。第三溝部783は第二溝部782よりも開口幅が小さいため、スライド部材78が筒体70Lから脱落し難い。
【0076】
操作者は、スライド部材78を操作して抑制部7Lを第一状態と第二状態とに切り替える。ガイドワイヤGWがシーススリット23へ進入することを防ぎたいとき、操作者は、第一溝部781に筒体70Lが配置されるようにスライド部材78を移動させる。第一状態では、筒体70Lのスリット74Lが閉じているため、ガイドワイヤGWがシーススリット23に進入することが防止できる。ガイドワイヤGWをガイドワイヤルーメン21から抜去させるとき、操作者は、スライド部材78をシース2の径方向に移動させ、第二溝部782に筒体70Lを配置させる。この結果、筒体70Lのスリット74Lが開いてシーススリット23が覆われずに開放する。この状態で、操作者がガイドワイヤGWの露出部分を径方向外側に移動させると、ガイドワイヤGWがシーススリット23内に進入する。この状態で、処置具1Lの近位部を引き抜くと、ガイドワイヤGWを体内に留置した状態で内視鏡挿入部101から抜去できる。
【0077】
本実施形態に係る処置具1Lによれば、スライド部材78のスライド操作により、抑制部7Lを第一状態と第二状態とに切り替えられる。このため、処置具1Lによれば、シース2に対してガイドワイヤGWを前進操作する際、ガイドワイヤGWがシーススリット23内に進入することを防ぎ、円滑にガイドワイヤGWをシース2に対して前進させることができる。一方、シース2を内視鏡挿入部101から抜去する際は抑制部7Lを第二状態に切り替えることにより、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去できる。この結果、手術時間の短縮に寄与する。
【0078】
上記実施形態では、スライド部材78がシース2の径方向にスライドする例を示したが、スライド部材は、この構成に限定されない。例えば、
図32および
図33に示す変形例の処置具1Mのように、スライド部材78Mを長手軸方向に移動させる構成であってもよい。
【0079】
図32および
図33に示す処置具1Mでは、抑制部7Mは、筒体70Mと、スライド部材78Mとを含んで構成されている。筒体70Mは、遠位側Dに向かって拡径するテーパー部77Mを有する。筒体70Mの遠位端部は、近位端部より外径が大きい。筒体70Mは、遠位端から近位端迄長手軸に沿ってスリット74Mが形成されている。スリット74Mは、シーススリット23に対応する位置に配置されている。スリット74Mは抑制スリットの一例である。シース2は、シーススリット23の近位側Pに近位端開口22が開口している。ガイドワイヤポート25は、シーススリット23よりも開口幅が広い。筒体70Mは、シース2のガイドワイヤポート25の長手軸方向の長さより長い。筒体70Mの近位端は、シース2の近位端開口22の近位端よりも近位側Pに配置されている。筒体70Mの遠位端は、近位端開口22よりも遠位側Dのシーススリット23の近位端部を覆う位置まで配置されている。スリット74Mの周方向の両側にカバー本体71Mが形成されている。一対のカバー本体71Mは、シーススリット23の近位端部と近位端開口22との境界部分を含んで覆っている。筒体70Mは、弾性変形可能な樹脂部品である。スライド部材78Mは、筒体70Mよりも硬質なC型部材である。スリット74Mは抑制スリットの一例である。
【0080】
スライド部材78Mは、筒体70Mの外周部に係止されている。スライド部材78Mは、筒体70Mの近位部からテーパー部77Mまでスライド可能に設けられている。
図32は、第二状態における抑制部7Mを示している。
図33は、第一状態における抑制部7Mを示している。抑制部7Mが第二状態のとき、筒体70Mのカバー本体71Mはシース2のガイドワイヤポート25の一部を覆い、かつ、ガイドワイヤGWが通過可能な隙間を形成する。第二状態からスライド部材78Mを遠位側Dに移動させると、スライド部材78Mがテーパー部77Mを進む。筒体70Mは弾性変形可能であるため、スライド部材78Mがテーパー部77Mを遠位側Dに移動すると、テーパー部77Mが径方向内側に押されてスリット74Mの両側のカバー本体71Mが近付く。両側のカバー本体71Mが近付くと、スリット74Mの開口寸法が、シーススリット23の開口寸法より小さくなるように弾性変形する。この結果、カバー本体71M同士が接触し、スリット74Mが閉じられ、ガイドワイヤポート25の遠位端およびシーススリット23の近位端部がカバー本体71により覆われた第一状態に切り替えられる。
【0081】
本変形例の処置具1Mによれば、第六実施形態に係る処置具1Lと同様に、スライド部材78Mのスライド操作により、抑制部7Mを第一状態と第二状態とに切り替えられる。このため、処置具1Mによれば、シース2に対してガイドワイヤGWを前進操作する際、ガイドワイヤGWがシーススリット23内に進入することを防ぎ、円滑にガイドワイヤGWをシース2に対して前進させることができる。一方、シース2を内視鏡挿入部101から抜去する際は抑制部7Mを第二状態に切り替えることにより、ガイドワイヤGWが体内に挿入された状態を保持しながら円滑にシース2を抜去できる。この結果、手術時間の短縮に寄与する。
【0082】
上記各実施形態および変形例の処置具では、シース2のルーメン29に造影剤を注入する例を示したが、処置具はこの例に限定されない。例えば、
図34に示す処置具1Nのように、ルーメン29にバルーン3Nが連通される構成であってもよい。
図34では、バルーン3Nを拡大して模式的に示している。例えば、
図35に示す処置具1Pのように、ルーメン29にナイフワイヤ3Pを挿通する例であってもよい。
【0083】
抑制部として、連結部5に医療用テープを巻き付ける例であってもよい。具体的には、連結部5におけるシーススリット23と近位端開口22の遠位端の少なくとも一方を覆う位置に医療用テープを巻き付けて抑制部を構成してもよい。
【0084】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各実施形態における構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
内視鏡用処置具は、ガイドワイヤを円滑に進退操作可能であり、手術時間の短縮に寄与する。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B,1C,1D,1F,1G,1H,1I,1J,1K,1L,1M,1N,1P 内視鏡用処置具
2 シース
7,7A,7B,7C,7D,7F,7G,7H,7I,7J,7K,7L,7M 抑制部
9 操作部
23 シーススリット
103 操作部
551 遠位端
562 遠位端
751G 近位端
751K 遠位端