IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ゴム組成物、ゴム製品およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20240415BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20240415BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20240415BHJP
   C08C 19/36 20060101ALI20240415BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240415BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C08L15/00
C08C19/25
C08F8/42
C08C19/36
C08K3/36
B60C1/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022555844
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 IB2021051806
(87)【国際公開番号】W WO2021186280
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/052386
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア アーリシチオ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドラ カルツェッタ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ ディ ロンザ
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518492(JP,A)
【文献】特表2015-529625(JP,A)
【文献】特表2019-530774(JP,A)
【文献】特表2019-523328(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物であって、
末端基官能化溶液重合スチレン-ブタジエン(SSBR)コポリマーを含むゴム成分であって、該末端基官能化SSBRコポリマーが末端カルボキシル基を含む、ゴム成分と、
1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカである、官能化シリカであって、
250~310m /gのBET比表面積、
230~285m /gのCTAB比表面積、
前記官能化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量(C)、
少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比(Ld)であって、前記物体サイズ分布幅比(Ld)は、超音波デアグロメレーション後にX線ディスク遠心機(XDC)粒子サイズ分析によって測定され、比(d84-d16)/d50に対応し、ここで、dnは、粒子のn%がこのサイズよりも小さいサイズである、物体サイズ分布幅比(Ld)、および
少なくとも0.65の細孔容積分布比であって、前記細孔容積分布比は、比V(d5-d50)/V(d5-d100)についてDIN66133に従って測定され、ここで、V(d5-d50)は直径d5からd50の間の細孔からなる細孔容積を表し、V(d5-d100)は直径d5からd100の間の細孔からなる細孔容積を表し、ここで、dnは、すべての細孔の全表面積のn%が、この直径より大きい直径を有する細孔によって提供される細孔直径である、細孔容積分布比、
を有する、官能化シリカと、
を備える、ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記末端基官能化SSBRコポリマーは、下記式(I)、
【化1】
の末端シラン含有カルボキシル基を含み、上記式中、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、並びに、
Aは、二価の有機ラジカルであり、アルキレンラジカルO、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子および/またはヘテロ原子団;または、1つ以上のヘテロ原子および/またはヘテロ原子団を含有するアルキレンラジカルであり得るもので、該ヘテロ原子および/またはヘテロ原子団は、O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上であり、R は、水素またはC ~C の直鎖アルキルであり、R およびR は、独立して、C ~C の直鎖アルキルである、ゴム組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のゴム組成物において、前記シラン含有カルボキシル基は、下記式(II)、
【化2】
のカルボン酸塩として存在し、上記式中、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、並びに、
Aは、二価の有機ラジカルであり、アルキレンラジカルO、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子および/またはヘテロ原子団;または、1つ以上のヘテロ原子および/またはヘテロ原子団を含有するアルキレンラジカルであり得るもので、該ヘテロ原子および/またはヘテロ原子団は、O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上であり、 は、水素またはC ~C の直鎖アルキルであり、R およびR は、独立して、C ~C の直鎖アルキルであり、
Mは、原子価1~4の金属または半金属であり、
nは、1~4までの整数である、ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物において、前記末端基官能化SSBRコポリマーは、SSBRコポリマーとシララクトンの形態の1つ以上の官能化試薬との反応によって得ることができ、該シララクトンは、下記式(III)、
【化3】
の化合物であり、上記式中、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、並びに、
Aは、二価の有機ラジカルであり、アルキレンラジカルO、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子および/またはヘテロ原子団;または、1つ以上のヘテロ原子および/またはヘテロ原子団を含有するアルキレンラジカルであり得るもので、該ヘテロ原子および/またはヘテロ原子団は、O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上であり、R は、水素またはC ~C の直鎖アルキルであり、R およびR は、独立して、C ~C の直鎖アルキルである、ゴム組成物。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか一項に記載のゴム組成物において、前記シラン含有カルボキシル基は、下記式(V)、
【化4】
の1つ以上の二価構造要素を介してSSBRコポリマーに結合され、
二価構造要素は、下記式(IV)、
【化5】
のシクロシロキサンから誘導されるもので、上記式中、
nは、3~6の整数であり、
、Rは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、R、Rは、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、前記二価構造要素は、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンよりなる群から選択される1つ以上のシクロシロキサンから誘導される、ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物において、前記官能化シリカは、その表面が1つ以上のポリカルボン酸で官能化されており、該1つ以上のポリカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、エチルコハク酸、グルタル酸、メチルグルタル酸、シュウ酸、およびクエン酸よりなる群から選択される1つ以上である、ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物において、前記官能化シリカは、少なくとも0.15重量%の炭素含有量を有する、ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム組成物において、前記官能化シリカは、少なくとも0.94の物体サイズ分布幅比を有する、ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物において、前記官能化シリカは、少なくとも0.66の細孔容積分布比を有する、ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のゴム組成物において、前記官能化シリカのpHは、2.5~7である、ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム組成物において、ゴム成分100重量部に対して10.5~100重量部の前記末端基官能化SSBRコポリマー、およびゴム成分100重量部に対して20~200重量部の官能化シリカを含む、ゴム組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のゴム組成物において、ゴム成分100重量部当たりの前記官能化シリカの重量部とゴム成分100重量部当たりの前記末端基官能化SSBRコポリマーの重量部との比は、0.5:1~2:1である、ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のゴム組成物において、該ゴム組成物は配合されている、ゴム組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のゴム組成物を含むゴム製品であって、該ゴム組成物は加硫されている、ゴム製品。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のゴム組成物または請求項14に記載のゴム製品を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能化ポリマーおよび官能化シリカを含むタイヤ製造に適したゴム組成物を提供する。本発明はさらに、これらのゴム組成物から製造されたゴム製品およびタイヤを提供する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出量の削減に向けた世界的な動きに伴い、低燃費の車両に対する需要が高まっている。この需要に応えるために、タイヤには転がり抵抗の低減が求められている。自動車走行の安全性向上の観点からは、濡れた路面でのグリップ性能(ウェット性能)を最大化させることも重要である。耐摩耗性および靭性は、タイヤ製造において改善することが重要となる追加要素である。タイヤ製造業者は、これらの特性に影響を与えるために、タイヤ調製のためのゴム組成物の成分を変更し得る。当技術分野で知られている官能化ポリマーとしては、特許文献1(国際公開第2014/173706号)に開示されているものが挙げられる。特許文献2(国際公開第2015/121333号)に開示されているような官能化充填剤がさらに知られている。
【0003】
タイヤの転がり抵抗を改善するためのタイヤトレッド用ゴム組成物を開発する場合、一般的に60℃付近の損失正接(tanδ(デルタ))を指標として考慮することが有効である。具体的には、特許文献3(特許公開第2012-92179号)のように、トレッドゴムに60℃付近の低tanδのゴム組成物を用いることで、タイヤの発熱を抑えて転がり抵抗を低減し、それによってタイヤの燃費を向上させることができる。同様に、特許文献4(特許公開第2014-9324号)は、タイヤトレッド用ゴム組成物のウェット性能を向上させる技術を開示している。耐摩耗性および靭性も、当技術分野で知られている技術によって測定することができる。ウェット性能、転がり抵抗および耐摩耗性は共に、粘弾性特性の魔法のトライアングルとして知られている。これらの特性のすべてが改善されたタイヤを提供することが当技術分野において望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/173706号パンフレット
【文献】国際公開第2015/121333号パンフレット
【文献】特許公開第2012-92179号
【文献】特許公開第2014-9324号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、1つ以上のカルボキシル基で官能化されたポリマーと、1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカとを含むゴム組成物を提供することによって、該ゴム組成物から製造されたタイヤが、優れた耐摩耗性、転がり抵抗、ウェット性能および靭性、ならびにこれらの特性間の優れたバランスを有することを予期せず発見した。特に、官能化ポリマーおよび官能化シリカの両方を含むゴム組成物から調製されたゴム製品の粘弾性特性に対して、相互作用および/または相乗効果が観察される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様はゴム組成物を提供し、このゴム組成物は、
末端基(end-group)官能化溶液重合スチレン-ブタジエン(SSBR)コポリマーを含むゴム成分であって、末端基官能化SSBRコポリマーが末端カルボキシル基を含む、ゴム成分と、
1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカである官能化シリカであって、
250~310m/gのBET比表面積、
230~285m/gのCTAB比表面積、
官能化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量(C)、
少なくとも0.91の物体(object)サイズ分布幅比(Ld)、および
少なくとも0.65の細孔容積分布比、
を有する、官能化シリカと、
を備える。
【0007】
末端基官能化溶液重合スチレン-ブタジエン(SSBR)コポリマーは、下記式(I)、
【化1】
の末端シラン含有カルボキシル基を含み得るもので、上記式中、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、また、
Aは、二価の有機ラジカルであり、アルキレンラジカル;O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子;または、1つ以上のヘテロ原子を含有するアルキレンラジカルであり得るもので、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上である。
【0008】
シラン含有カルボキシル基は、下記式(II)、
【化2】

のカルボン酸塩として存在し得るもので、上記式中、
およびRは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、
およびRは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、
Aは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、また、
Mは、原子価1~4の金属または半金属であり、好ましくは、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、MoまたはWであり、
nは、1~4までの整数である。
【0009】
末端基官能化SSBRコポリマーは、SSBRコポリマーとシララクトンの形態の1つ以上の官能化試薬との反応によって得ることができる。例えば、シララクトンは、下記式(III)、
【化3】

の化合物であり得るもので、上記式中、
およびRは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、
およびRは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、また、
Aは、式(I)に対して上記で定義したとおりである。
【0010】
シラン含有カルボキシル基は、下記式(V)、
【化4】

の1つ以上の二価構造要素を介してSSBRコポリマーに結合され得るもので、上記式中、
nは、3~6の整数であり、
、Rは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、
、Rは、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上である。
【0011】
式(V)の二価構造要素は、シクロシロキサンから、例えば、下記式(IV)、
【化5】

のシクロシロキサンから誘導され得るもので、上記式中、
nは、3~6の整数であり、
、Rは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、
、Rは、1つ以上のヘテロ原子を含有し得るもので、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、より好ましくは、式(V)の二価構造要素は、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンよりなる群から選択される1つ以上のシクロシロキサンから誘導され得る。
【0012】
官能化シリカは、その表面が1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカを含み得る。カルボキシル基は、カルボン酸および/またはカルボン酸塩として存在し得る。
【0013】
官能化シリカのカルボキシル基は、1つ以上のカルボン酸、例えば1つ以上のポリカルボン酸から誘導され得る。1つ以上のポリカルボン酸は、2つ、3つ、4つ、または4つを超えるカルボキシル基を含有し得る。好ましくは、1つ以上のポリカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、エチルコハク酸、グルタル酸、メチルグルタル酸、シュウ酸、およびクエン酸よりなる群から選択される1つ以上であり得る。
【0014】
官能化シリカのカルボキシル基は、シリカと1つ以上のカルボン酸とを反応させて官能化シリカを形成することによって誘導され得る。
【0015】
官能化シリカは、250~310m/gのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積を有する。ブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積は、好ましくは270~300m/g、より好ましくは280~290m/gであり得る。
【0016】
官能化シリカは、230m/g~285m/gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)吸着による表面積を有する。臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)吸着による表面積は、好ましくは240m/g~270m/g、より好ましくは245m/g~265m/g、より好ましくは250m/g~260m/gであり得る。
【0017】
官能化シリカは、官能化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量を有する。炭素含有量は、官能化シリカの好ましくは少なくとも0.15重量%、より好ましくは少なくとも0.20重量%、より好ましくは少なくとも0.25重量%、より好ましくは少なくとも0.30重量%であり得る。
【0018】
官能化シリカは、少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比Ldを有する。物体サイズ分布幅比Ldは、好ましくは少なくとも0.94である。
【0019】
官能化シリカは、少なくとも0.65の細孔容積分布比を有する。細孔容積分布は、好ましくは少なくとも0.66、より好ましくは少なくとも0.68である。
【0020】
官能化シリカのpHは、2.5~7、好ましくは2.5~5、より好ましくは3~4.5であり得る。
【0021】
ゴム成分100重量部に対する官能化シリカの量(重量部)と、ゴム成分100重量部に対する末端基官能化SSBRコポリマーの量(重量部)との比は、0.5:1~2:1、好ましくは0.75:1~1.50:1、好ましくは0.9:1~1.40:1、より好ましくは0.95:1~1.30:1であり得る。
【0022】
ゴム組成物は、
ゴム成分100重量部に対して10.5~100重量部の末端基官能化SSBRコポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して20~200重量部の官能化シリカと、
を含み得る。
【0023】
ゴム組成物は、好ましくは、
ゴム成分100重量部に対して40~90重量部の末端基官能化SSBRコポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して50~100重量部の官能化シリカと、
を含み得る。
【0024】
ゴム組成物は、好ましくは、
ゴム成分100重量部に対して50~80重量部の末端基官能化SSBRコポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して65~85重量部の官能化シリカと、
を含み得る。
【0025】
ゴム組成物は、好ましくは、
ゴム成分100重量部に対して55~75重量部の末端基官能化SSBRコポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して70~75重量部の官能化シリカと、
を含み得る。
【0026】
特定の実施形態において、ゴム組成物は、
ゴム成分100重量部に対して60重量部の末端基官能化SSBRコポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して72重量部の官能化シリカと、
を含み得る。
【0027】
特定の実施形態において、ゴム組成物は、
ゴム成分100重量部に対して70重量部の末端基官能化SSBRコポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して72重量部の官能化シリカと、
を含み得る。
【0028】
特定の実施形態において、ゴム組成物は、
ゴム成分100重量部に対して70重量部の末端基官能化SSBRコポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して80重量部の官能化シリカと、
を含み得る。
【0029】
本発明のゴム組成物は、配合され得る。
【0030】
本発明の第2の態様は、本発明の加硫されているゴム組成物を含むゴム製品に関する。
【0031】
本発明の第3の態様は、本発明のゴム組成物または本発明のゴム製品を含むタイヤに関する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一態様によれば、本発明はゴム組成物を提供し、このゴム組成物は、
末端基官能化溶液重合スチレン-ブタジエン(SSBR)コポリマーを含むゴム成分であって、末端基官能化SSBRコポリマーが末端カルボキシル基を含む、ゴム成分と、
1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカである官能化シリカであって、
250~310m/gのBET比表面積、
230~285m/gのCTAB比表面積、
官能化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量、
少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比Ld、および
少なくとも0.65の細孔容積分布比、
を有する、官能化シリカと、
を備える。
【0033】
本発明のゴム組成物は、当技術分野で知られているゴム組成物と比較して多くの利点を提供する。特に、本発明のゴム組成物から製造されたタイヤは、優れたウェット性能、転がり抵抗、耐摩耗性および靭性を有し、これらの特性間のバランスに優れている。末端基官能化SSBRコポリマーと官能化シリカとの組み合わせは、ゴム組成物の特性に相互作用および/または相乗効果をもたらし、上記のタイヤの有利な特性を生み出す。具体的には、末端基官能化SSBRコポリマーと官能化シリカとの間の相互作用(相乗的であり得る)によって、本発明のゴム組成物およびゴム製品における充填剤(特に官能化シリカ充填剤)の前例のないレベルの分散性をもたらす。この前例のない分散性が、ゴム組成物から製造されたタイヤのウェット性能、転がり抵抗、耐摩耗性、および靭性のそれぞれにプラスの影響を与え、これらの特性間の優れたバランスをもたらす。
【0034】
[末端基官能化溶液重合スチレン-ブタジエン(SSBR)コポリマー]
末端基官能化SSBRコポリマーは、下記式(I)、
【化6】
のシラン含有カルボキシル基によって末端化されたSSBRコポリマーを含み得るもので、上記式中、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルキルアリール、アルキルアリールオキシ、アラルキル、またはアラルコキシラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得る、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、
およびRは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、1つ以上のヘテロ原子を含有し得る、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上であり、また、
Aは、二価の有機ラジカルであり、アルキレンラジカル;O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子;または、1つ以上のヘテロ原子を含有するアルキレンラジカルであってもよく、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上である。
【0035】
末端基官能化SSBRコポリマーは、式(I)のシラン含有カルボキシル基によって末端化されたSSBRコポリマーを含み得るものであり、上記式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、C~C12の直鎖もしくは分枝アルキル、C~C12の直鎖もしくは分枝アルケニル、C~C12の直鎖もしくは分枝アルコキシ、C~C12のシクロアルキル、C~C12のシクロアルコキシ、C~C12のアリール、C~C12のアリールオキシ、C~C14のアリールアルキル、C~C14のアルキルアリール、C~C24のアルキルアリールオキシ、C~C24のアラルキル、またはC~C24のアラルコキシラジカルである。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、C~Cの直鎖もしくは分枝アルキル、C~Cの直鎖もしくは分枝アルケニル、C~Cの直鎖もしくは分枝アルコキシ、C~C12のシクロアルキル、C~C12のシクロアルコキシ、またはC~C12のアリールラジカルである。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、C~Cの直鎖もしくは分枝アルキル、C~Cの直鎖もしくは分枝アルケニル、C~Cの直鎖もしくは分枝アルコキシ、またはC~C12のアリールラジカルである。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、C~Cの直鎖もしくは分枝アルキル、C~Cの直鎖もしくは分枝アルケニル、C~Cの直鎖もしくは分枝アルコキシ、またはCのアリールラジカルである。例えば、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル、tert-ブチル、プロプ-1-エニル、エトキシ、またはフェニルラジカルであり得る。より好ましくは、RおよびRはメチルラジカルである。
【0036】
およびRは、それぞれ独立して、水素、C~C12の直鎖もしくは分枝アルキル、C~C12のシクロアルキル、C~C12のアリール、C~C24のアラルキル、またはC~C24のアルカリルラジカルであり得る。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、C~Cの直鎖もしくは分枝アルキル、C~Cの直鎖もしくは分枝アルケニル、C~Cの直鎖もしくは分枝アルコキシ、またはC~C12のアリールラジカルであり得る。より好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチルラジカルであり得る。特定の実施形態において、R3/R4およびAは一緒になってCアリールを形成する。
【0037】
Aは、独立して、置換もしくは非置換のC~Cの直鎖状アルキレンラジカルであり;O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子;または、O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する、置換もしくは非置換のC~Cの直鎖状アルキレンラジカルであり得る。好ましくは、Aは、独立して、置換もしくは非置換のC~Cの直鎖状アルキレンラジカルであり;O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子;または、O、NR、S、およびSiRよりなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する、置換もしくは非置換のC~Cの直鎖状アルキルラジカルであり得る。Aが置換される場合、それは、C~Cの直鎖状アルキルラジカルおよびC~C12のアリールラジカルよりなる群から選択される1つ以上で置換され得る。好ましくは、Aは、C~Cの直鎖アルキルラジカルまたはCアリールラジカルで置換され得る。より好ましくは、AはCラジカルで置換され得る。Rは、水素、C~Cの直鎖アルキル、例えばメチル、またはトリメチルシリルであり得る。RおよびRは、独立して、C~Cの直鎖アルキル、例えばメチルであり得る。好ましくは、AはS原子を含有するC アルキレンラジカルである。S原子を含有するC アルキレンラジカルとしてのAの構造を以下に示す。
【化7】
【0038】
シラン含有カルボキシル基は、下記式(II)、
【化8】

のカルボン酸塩として存在し得るもので、上記式中、
およびRは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、
およびRは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、また
Aは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、また
Mは、原子価1~4の金属または半金属であり、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Fe、Co、Ni、Al、Nd、Ti、Sn、Si、Zr、V、MoまたはWであり、
nは、1~4までの整数である。
【0039】
式(II)の化合物において、MはLiであってもよく、およびnは1であってもよい。
【0040】
式(II)中のR、R、R、R、R、RおよびRのさらなる定義は、式(I)について上記したものと同じである。
【0041】
末端基官能化SSBRコポリマーは、SSBRコポリマーとシララクトンの形態の1つ以上の官能化試薬との反応によって得ることができる。シララクトンは、下記式(III)、
【化9】

の化合物であり得るもので、上記式中、
およびRは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、
およびRは、式(I)に対して上記で定義したとおりであり、また
Aは、式(I)に対して上記で定義したとおりである。
【0042】
式(III)中のR、R、R、R、R、RおよびRのさらなる定義は、式(I)について上記した通りである。
【0043】
有利には、式(III)のシララクトンは、2,2-ジメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,4-トリメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6‐オン、2,2,5-トリメチル-1-オキサ-2‐シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,4,5-テトラメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジエチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-8-オン、2,2-ジエトキシ-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジメチル-1,4-ジオキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,5-トリメチル-1,4-ジオキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,3,3-テトラメチル-1,4-ジオキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジエチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジフェニル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2-メチル-2-エテニル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,5-トリメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,4-トリメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,4-ジメチル-2-フェニル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジメチル-4-トリメチルシリル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-8-オン、2,2-ジエトキシ-4-メチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,4,4-テトラメチル-1-オキサ-2,4-ジシラシクロヘキサン-8-オン、3,4-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1H-2,3-ベンゾオキサシリン-1-オン、2,2-ジメチル-1-オキサ-2-シラシクロペンタン-5-オン、2,2,3-トリメチル-1-オキサ-2-シラシクロペンテン-5-オン、2,2-ジメチル-4-フェニル-1-オキサ-2-シラシクロペンタン-5-オン、2,2,4-(tert-ブチル)-1-オキサ-2-シラシクロペンタン-5-オン、2-メチル-2-(2-プロペン-1-yl)-1-オキサ-2-シラシクロペンタン-5-オン、1,1-ジメチル-2,1-ベンゾオキサシロール-3(1H)-オン、2,2-ジメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘプタン-7-オンよりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、式(III)のシララクトンは、2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンである。2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンの構造を以下に示す。
【化10】
【0044】
シラン含有カルボキシル基は、下記式(V)、
【化11】

の1つ以上の二価構造要素を介してSSBRコポリマーに結合され得るもので、上記式中、
nは、3~6の整数であり、
、Rは、同一かまたは異なり、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、またはアラルキルラジカルであり、
、Rは、1つ以上のヘテロ原子を含有し得、好ましくは、該ヘテロ原子は、O、N、SおよびSiよりなる群から選択される1つ以上である]
【0045】
二価構造要素が存在する場合、SSBR共重合体は、以下に従って二価構造要素のケイ素末端に結合される。
【化12】
【0046】
式(I)または式(II)のシラン含有カルボキシル基は、二価構造要素が存在する場合、式(V)の二価構造要素の酸素末端に結合される。
【0047】
式(V)の二価構造要素は、下記式(IV)、
【化13】

のシクロシロキサンなどのシクロシロキサンから誘導され得るもので、上記式中、
nは、式(V)に対して上記で定義したとおりであり、
、Rは、式(V)に対して上記で定義したとおりである。
【0048】
およびRは、それぞれ独立して、水素、C~C12の直鎖もしくは分枝アルキル、C~C12のシクロアルキル、C~C12のアリール、C~C14のアラルキル、またはC~C14のアルカリルラジカルであり得る。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立して、C~Cの直鎖もしくは分枝アルキル、好ましくはC~Cの直鎖アルキル、より好ましくはメチルラジカルであり得る。
【0049】
式(V)の二価構造要素は、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサンよりなる群から選択される1つ以上から誘導され得る。好ましくは、二価構造要素はヘキサメチルシクロトリシロキサンから誘導される。
【0050】
末端基官能化SSBRコポリマーが、ヘキサメチルシクロトリシロキサン由来の二価構造要素を介してポリマーに結合された2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンから誘導されたシラン含有カルボキシル基によって末端化されることが特に有利である。
【0051】
末端基官能化SSBRコポリマーは、末端基官能化SSBRコポリマーの10重量%~30重量%、好ましくは15重量%~25重量%、より好ましくは20重量%~22重量%、例えば20重量%、21重量%または22重量%のスチレン含量を有し得る。末端基官能化SSBRコポリマーは、末端基官能化SSBRコポリマーの50重量%~75重量%、好ましくは50重量%~65重量%、より好ましくは60重量%~65重量%、例えば末端基官能化SSBRコポリマーの60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、または65重量%のビニル含量を有し得る。
【0052】
末端基官能化SSBRコポリマーは、10,000~2,000,000g/mol、好ましくは100,000~1,000,000g/molの平均モル質量(数平均、Mn)を有し得る。
【0053】
末端基官能化SSBRコポリマーは、-110℃~+20℃、好ましくは-60℃~0℃、好ましくは-40℃~-10℃、好ましくは-30℃~-15℃、より好ましくは-22℃~-26℃、例えば-22℃、-23℃、-24℃、-25℃、または-26℃のガラス転移温度を有し得る。
【0054】
末端基官能化SSBRコポリマーは、10~200ムーニー単位(Mooney units)、例えば、30~150ムーニー単位、40~90ムーニー単位、50~60ムーニー単位、例えば50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60ムーニー単位のムーニー粘度(Mooney viscosity)[ML 1+4(100℃)]を有し得る。
【0055】
末端基官能化SSBRコポリマーは、油展された末端基官能化SSBRコポリマーが1%~10%の伸展油(extender oil)、好ましくは2.5%~7.5%、より好ましくは5%の伸展油を含むように、伸展油で油展され得る。伸展油は、DAE(蒸留芳香族抽出物)、Tdae(処理蒸留芳香族抽出物)、MES(マイルド抽出溶媒和物)、RAE(残留芳香族抽出物)、Trae(処理残留芳香族抽出物)、ナフテン油、重ナフテン油、パラフィン油、ヤシ油などの植物油、アルキルベンゼン油などの合成油、およびヒマシ油よりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、末端基官能化SSBRコポリマーは、油展後の末端基官能化SSBRコポリマーが5%の処理蒸留芳香族抽出油を含むようになるように、処理蒸留芳香族抽出油(Tdae)などの芳香族油で油展される。
【0056】
カルボキシル基で末端化されたSSBRコポリマーおよび上記の式(I)~(V)の化合物の合成は、例えば、特許文献1(国際公開第2014/173706号)において詳述されている。
【0057】
[官能化シリカ]
官能化シリカは、1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカであり、該官能化シリカは、
・250~310m/gのBET比表面積と、
・230~285m/gのCTAB比表面積と、
・官能化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量と、
・少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比Ldと、
・少なくとも0.65の細孔容積分布比と、
を有する。
【0058】
官能化シリカの合成については、特許文献2(国際公開第2015/121333号)で詳述されている。しかし、一般に、官能化シリカの調製は、アルカリ金属ケイ酸塩(例えばケイ酸ナトリウム)などのケイ酸塩と酸性化剤(例えば硫酸)との沈殿反応、次いで濾過による分離、得られた沈降シリカの濾過ケーキの生成、続いて前記濾過ケーキの液化、および最後に乾燥(一般に噴霧による)によって実施される。シリカは、任意の様式で沈殿させることができ、特に、ケイ酸塩供給原料への酸性化剤の添加、または水もしくはケイ酸塩の供給原料への酸性化剤およびケイ酸塩の全体的もしくは部分的な同時添加である。液化操作中、または液化操作後かつ乾燥工程前のいずれかの段階で、1つ以上のポリカルボン酸が濾過ケーキに添加される。
【0059】
官能化シリカは、その表面が1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカを含み得る。カルボキシル基は、カルボン酸および/またはカルボン酸塩として存在し得る。カルボキシル基は、2つ、3つ、4つ、または4つを超えるカルボン酸官能基を含有するポリカルボン酸を含み得る。ポリカルボン酸は、ジカルボン酸またはトリカルボン酸であり得る。ポリカルボン酸は、2~20個の炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸、または芳香族ポリカルボン酸であり得る。ポリカルボン酸は、ヒドロキシル基および/またはハロゲン原子を含み得る。脂肪族ポリカルボン酸は、主鎖上にヘテロ原子、例えばNまたはSを含み得る。ポリカルボン酸は、2~16個の炭素原子を含有する直鎖状の、分枝状の、飽和の、不飽和の脂肪族ポリカルボン酸および芳香族ポリカルボン酸よりなる群から選択される1つ以上であり得る。
【0060】
脂肪族ポリカルボン酸は、2~14個の炭素原子、例えば2~12個の炭素原子を含有する直鎖状の飽和または不飽和ポリカルボン酸でできていてもよい。ポリカルボン酸は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の炭素原子を含み得る。有利には、ポリカルボン酸は、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子、例えば4、5、6、7または8個の炭素原子を含み得る。ポリカルボン酸は、4、5または6個の炭素原子を含み得る。
【0061】
ポリカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、トリカルバリル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、メチルアジピン酸、メチルグルタル酸、ジメチルグルタル酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、および酒石酸よりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、ポリカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、エチルコハク酸、グルタル酸、メチルグルタル酸、シュウ酸、およびクエン酸よりなる群から選択される1つ以上である。
【0062】
官能化シリカは、250~310m/gのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積を有する。ブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積は、好ましくは270~300m/g、より好ましくは280~290m/g、例えば280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、または290m/gである。
【0063】
官能化シリカは、230m/g~285m/gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)吸着による表面積を有する。臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)吸着による表面積は、好ましくは240m/g~270m/g、より好ましくは245m/g~265m/g、より好ましくは250m/g~260m/g、例えば250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、または260m/gであり得る。
【0064】
官能化シリカのpHは、2.5~7、好ましくは2.5~5、より好ましくは3~4.5、例えば、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、または4.5であり得る。
【0065】
官能化シリカは、官能化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量を有する。炭素含有量((C)で表される)は、全炭素として表される、カルボン酸および対応するカルボン酸塩の炭素含有量である。炭素含有量は、好ましくは官能化シリカの少なくとも0.15重量%、より好ましくは少なくとも0.20重量%、より好ましくは少なくとも0.25重量%、より好ましくは少なくとも0.30重量%であり得る。
【0066】
官能化シリカは、少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比Ldを有する。物体サイズ分布幅比Ldは、0.94以上であることが好ましい。本明細書で使用される場合、物体サイズ分布幅比は、(水中で)超音波デアグロメレーション(ultrasound deagglomeration)後にX線ディスク遠心機(XDC)粒子サイズ分析によって測定される物体サイズ分布幅比(Ld)であり、比(d84-d16)/d50に対応し、ここで、dnは、粒子のn%(質量換算)がこのサイズよりも小さいサイズである(したがって、分布幅Ldは、累積粒子サイズ曲線全体で計算される)。500nm未満の物体のサイズ分布幅Ldは、(水中で)超音波デアグロメレーション(解砕)後にXDC粒子サイズ分析によって測定され、比率(d84-d16)/d50に対応し、ここで、dnは、500nmより小さい粒子に対して、n%(質量)の粒子がこのサイズよりも小さいサイズである(したがって、分布幅Ldは、500nmより上で切り捨てられた累積粒子サイズ曲線で計算される)。本明細書における物体サイズ分布幅は、特許文献2(国際公開第2015/121333号)に記載の方法に従って測定される。
【0067】
官能化シリカは、少なくとも0.65の細孔容積分布比を有する。細孔容積分布は、好ましくは少なくとも0.66、より好ましくは少なくとも0.68である。細孔容積および細孔径は、Micromeritics Autopore 9520ポロシメーターを使用して水銀(Hg)ポロシメトリーによって測定され、接触角シータが140°に等しく、ガンマ表面張力が484ダイン/cmに等しいウォッシュバーンの関係によって計算される(標準 DIN 66133)。各サンプルの調製は次のように実施される。各サンプルは、200℃のオーブンで2時間予備乾燥される。本明細書において、細孔容積分布比とは、比V(d5-d50)/V(d5-d100)が0.65以上、好ましくは0.66以上、より好ましくは0.68以上となるような細孔容積分布である。V(d5-d50)は直径d5からd50の間の細孔からなる細孔容積を表し、V(d5-d100)は直径d5からd100の間の細孔からなる細孔容積を表し、ここで、dnは、すべての細孔の全表面積のn%が、この直径より大きい直径を有する細孔によって提供される細孔直径である(細孔の全表面積(S0)は、水銀圧入曲線から決定することができる)。本明細書において、細孔容積分布は、特許文献2(国際公開第2015/121333号)に記載の方法に従って測定される。
【0068】
ゴム組成物中の末端基官能化SSBRコポリマーおよび官能化シリカの量、ならびにこれら2つの成分の互いに対する量は、本発明のゴム組成物およびそれから製造されたタイヤの特性に有利な効果を有することができる。
【0069】
末端基官能化SSBRコポリマーの量は、ゴム成分100重量部に対して10.5~100重量部、好ましくは40~90重量部、好ましくは50~80重量部、より好ましくは55~75重量部、例えばゴム成分100重量部に対して55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75重量部であり得る。特定の例では、末端基官能化SSBRコポリマーの量は、ゴム成分100重量部に対して60重量部または70重量部であり得る。
【0070】
官能化シリカの量は、ゴム成分100重量部に対して20~200重量部、好ましくは50~100重量部、好ましくは65~85重量部、より好ましくは70~75重量部、例えばゴム成分100重量部に対して、70、71、72、73、74、75重量部であり得る。特定の例では、官能化シリカの量は、ゴム成分100重量部に対して72重量部であり得る。
【0071】
上述のように、ゴム組成物中の末端基官能化SSBRコポリマーおよび官能化シリカの互いに対する量は、ゴム組成物およびそれから製造されるタイヤの特性に有利な効果を有することができる。ゴム成分100重量部に対する官能化シリカと末端基官能化SSBRコポリマーとの量の重量部比は、0.5:1~2:1、好ましくは0.75:1~1.50、好ましくは0.9:1~1.40:1、より好ましくは0.95:1~1.30:1、例えば0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.00、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.10、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、または1.30:1であり得る。これらの相対量の官能化シリカおよび末端基官能化SSBRコポリマーを有するゴム組成物から製造されたタイヤは、末端基官能化SSBRコポリマーおよび官能化シリカのいずれかまたは両方が存在しない組成物と比較して、優れたウェット性能、転がり抵抗、耐摩耗性および靭性を有し、これらの特性間のバランスが改善されている。
【0072】
ゴム成分100重量部に対する重量部における官能化シリカの量が、ゴム成分100重量部に対する重量部における末端基官能化SSBRコポリマーの量よりも多い場合、そのゴム組成物から製造されたタイヤは、これらの成分の相対量が異なる組成物から製造されたタイヤと比較して、または末端基官能化SSBRコポリマーおよび官能化シリカのいずれかまたは両方が存在しない組成物と比較して、特に改善された耐摩耗性、並びに、優れた転がり抵抗、ウェット性能、靭性、およびこれらの特性間の優れたバランスを示す。換言すれば、これらの改善された特性は、ゴム成分100重量部に対する官能化シリカ対末端基官能化SSBRコポリマーの量の重量部比が1:1より大きい、好ましくは1.01:1~1.50:1、1.01:1~1.40:1、または1.01:1~1.30:1、例えば、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.10、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、または1.30:1の場合に達成される。
【0073】
さらに他の態様によれば、本発明はゴム組成物を提供し、このゴム組成物は、
ゴム成分100重量部に対して58~73重量部の官能化ポリマーであって、1つ以上のカルボキシル基で官能化されたポリマーである、官能化ポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して70~75重量部の官能化シリカであって、該官能化シリカは1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカであり、
250~310m/gのBET比表面積、
230~285m/gのCTAB比表面積、
官能化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量、
少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比Ld、および
少なくとも0.65の細孔容積分布比、
を有する、官能化シリカと、
を含み、
ゴム成分100重量部に対する前記官能化シリカの量と前記官能化ポリマーの量との重量部比は、1.01:1~1.30:1であり、また
前記官能化シリカのpHは3.5~4.5である。
【0074】
さらに、より官能化シリカの量を多くすることで、特に、本発明のゴム組成物から製造されたタイヤの耐摩耗性を改善することができることが発見された。例えば、ゴム成分100重量部に対して75重量部以上、例えば、75~200重量部、75~150重量部、75~100重量部、または75~85重量部、例えば80重量部の官能化シリカを含むゴム組成物から製造されたタイヤは、優れた耐摩耗性を有する。特に、官能化シリカの量が先に詳述した末端基官能化SSBRコポリマーの量よりも多いゴム組成物中に、上記の官能化シリカをより多量に含めると、極めて良好な耐摩耗性が得られる。
【0075】
本発明はさらに、ゴム組成物を提供し、このゴム組成物は、
ゴム成分100重量部に対して68~72重量部の末端基官能化溶液重合スチレン-ブタジエン(SSBR)コポリマーであって、末端基が1つ以上のカルボキシル基を含む、末端基官能化溶液重合スチレン-ブタジエン(SSBR)コポリマーと、
ゴム成分100重量部に対して77.5~82.5重量部の官能化シリカであって、該官能化シリカは1つ以上のカルボキシル基で官能化されたシリカであり、
250~310m/gのBET比表面積、
230~285m/gのCTAB比表面積、
官能化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量、
少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比Ld、および、
少なくとも0.65の細孔容積分布比、
を有する、官能化シリカと、
を備え、
ゴム成分100重量部に対する前記官能化シリカの量と前記末端基官能化SSBRコポリマーの量との重量部比は、1.01:1~1.15:1であり、
前記官能化シリカのpHは3~4.5である。
【0076】
[その他の成分]
末端基官能化SSBRコポリマーおよび官能化シリカに加えて、本発明のゴム組成物はさらなる成分を含有してもよい。これらのさらなる成分は、追加のポリマー加硫剤(上記の末端基官能化SSBRコポリマーとは異なる)、加硫促進剤、加硫促進助剤、充填剤、シランカップリング剤、酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤、ワックス、および油よりなる群から選択される1つ以上を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、さらに、追加のポリマー、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、カーボンブラック、シランカップリング剤、劣化防止剤、ワックス、および油を含んでもよい。
【0077】
ゴム組成物の追加のポリマーは特に限定されず(上記の末端基官能化SSBRコポリマーとは異なるという点を除いて)、当業者に知られている任意のものであり得る。追加のポリマーは、ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとの共重合によって得られるジエンポリマーおよび/またはジエンコポリマーを含み得る。例えば、追加のポリマーは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン-イソプレンコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、イソプレン-スチレンコポリマー、またはブタジエン-イソプレン-スチレンタ-ポリマーよりなる群から選択される1つ以上を含み得る。好ましくは、追加のポリマーは、溶液重合されたスチレン-ブタジエンコポリマー、例えばArlanxeo社のBUNA(登録商標)VSL 3038-2HMである。追加のポリマーは、油展され得る。伸展油は、DAE(蒸留芳香族抽出物)、Tdae(処理蒸留芳香族抽出物)、MES(マイルド抽出溶媒和物)、RAE(残留芳香族抽出物)、Trae(処理残留芳香族抽出物)、ナフテン油、重ナフテン油、パラフィン油、ヤシ油などの植物油、アルキルベンゼン油などの合成油、およびヒマシ油よりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、伸展油は、処理蒸留芳香族抽出物(Tdae)などの芳香油である。追加のポリマー中に存在する油の量は、油展された追加のポリマーの総量の20%~40%、例えば27.3%まで変化し得る。追加のポリマーの配合量は特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して0~89.5重量部、好ましくは10~60重量部、好ましくは20~50重量部、より好ましくは25~45重量部、例えばゴム成分100重量部に対して25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、または45重量部であり得る。
【0078】
本発明のゴム組成物の加硫剤は、特に限定されず、当業者に知られている任意のものであり得る。例えば、加硫剤は硫黄であり得る。本発明のゴム組成物における加硫剤の配合量は、特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して0.1~5重量部であり得る。例えば、ゴム組成物は、ゴム成分100重量部に対して0.1~2重量部、好ましくは0.1~1重量部、より好ましくは0.5~1重量部、例えば0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1重量部を含み得る。
【0079】
本発明のゴム組成物の加硫促進剤は、特に限定されず、当業者に知られている任意のものであり得る。例えば、加硫促進剤は、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、およびN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)などのチアゾール系加硫促進剤;1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、およびテトラベンジルチウラムジスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバメート亜鉛などのジチオカルバメート化合物;並びに他のジアルキルジチオリン酸亜鉛よりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、加硫促進剤は、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、および1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)の組み合わせであり得る。加硫促進剤の総量は特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して0.2~10重量部、好ましくは0.5~8重量部、好ましくは1~5重量部、より好ましくは2~4重量部、例えばゴム成分100重量部に対して2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4重量部であり得る。各加硫促進剤の量は、ゴム成分100重量部に対して0.1~5重量部、好ましくは0.5~3重量部、より好ましくは0.75~2重量部、例えばゴム成分100重量部に対して0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2重量部であり得る。好ましくは、本発明のゴム組成物の加硫促進剤は、ゴム成分100重量部に対して、1~2重量部の量のジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、0.75重量部の量のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、および1.3重量部の1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)を含み得る。
【0080】
本発明の加硫促進助剤は、特に限定されず、当業者に知られている任意のものであり得る。例えば、加硫促進助剤は、酸化亜鉛(ZnO)および脂肪酸であり得る。脂肪酸は、飽和もしくは不飽和、または直鎖もしくは分枝のいずれの脂肪酸であってもよい。脂肪酸の炭素数も特に限定されないが、1~30であってもよいし、15~30であってもよい。例えば、脂肪酸は、シクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、アルキルシクロペンタンなどの側鎖を有するナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸などの分枝カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、およびオクタデカン酸(ステアリン酸)などの飽和脂肪酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などの不飽和脂肪酸、並びに、ロジン、トール油酸、アビエチン酸などの樹脂酸よりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、本発明の加硫促進助剤は、酸化亜鉛(ZnO)およびステアリン酸である。加硫促進助剤の総量は特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して1~10重量部、例えば1.5~7重量部、または2~5重量部、例えば2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5重量部であり得る。好ましくは、酸化亜鉛(ZnO)は、ゴム成分100重量部に対して2重量部の量で存在し、ステアリン酸は1.5重量部の量で存在する。
【0081】
本発明のゴム組成物のカーボンブラックは、特に限定されず、当業者に知られている任意のものであり得る。カーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびランプブラックであってよい。例えば、カーボンブラックは、スーパーアブレーションファーネス(SAF)ブラック、ハイアブレーションファーネス(HAF)ブラック、高速押出ファーネス(FEF)ブラック、ファインファーネス(FF)ブラック、中間(intermediate)スーパーアブレーションファーネス(ISAF)ブラック、半強化(semi-reinforcing)ファーネス(SRF)ブラック、ミディアムプロセッシングチャネルブラック、ハードプロセッシングチャネルブラック、および導電性チャネルブラックよりなる群から選択される1つ以上であり得る。使用できる他のカーボンブラックは、アセチレンブラックを含む。カーボンブラックは、ペレット化された形態であっても、ペレット化されていない凝集塊(flocculent mass)であってもよい。本発明のゴム組成物中のカーボンブラックの特定の例は、Orion Engineered Carbons社のCORAX(登録商標)N234である。本発明のゴム組成物が含むカーボンブラックの量は、特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して、0.1から10重量部、例えば、0.5から5重量部、または1から4重量部、例えば1、2、3または4重量部であり得る。好ましくは、カーボンブラックは、ゴム成分100重量部に対して2~3重量部で存在する。
【0082】
有利なことに、本発明のゴム組成物が含む唯一のシリカ系充填剤は、上記の官能化シリカである。換言すれば、追加のシリカは存在しなくてもよい。しかしながら、追加のシリカ系充填剤の存在は、本発明から必ずしも排除されない。追加のシリカ系充填剤は、沈降非晶質シリカ、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ヒュームドシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(例:MgSiO、MgSiO)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(例:Al.CaOSiO)を含む、当業者に知られている任意のもの(上記の官能化シリカは含まない)を含み得る。
【0083】
ゴム組成物は、当業者に知られている追加の充填剤を含んでもよい。例えば、本発明のゴム組成物は、水酸化アルミニウム、タルク、アルミナ(Al)、水酸化アルミニウム(AlO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、炭酸アルミニウム(Al(CO)、酸化アルミニウムマグネシウム(MgOAl)、パイロフィライト(Al.4SiO.HO)、ベントナイト(Al.4SiO.2HO)、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[Zr(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、結晶性アルミノケイ酸塩、酸化亜鉛の強化(reinforcing)グレード(すなわち、強化酸化亜鉛)よりなる群から選択される1つ以上を含み得る。さらなる充填剤の量は、ゴム成分100重量部に対して5~200重量部、例えば、ゴム成分100重量部に対して10~150重量部、または25~100重量部であり得る。
【0084】
発明のゴム組成物のシランカップリング剤は、特に限定されず、当業者に公知の任意のものであり得る。例えば、本発明のシランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、およびジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドよりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、シランカップリング剤はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。シランカップリング剤の特定の例は、Evonik Industries AGのSi69(登録商標)である。シランカップリング剤の配合量は特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して2~20重量部、好ましくは5~15重量部、好ましくは7~13重量部、より好ましくは9~12重量部、例えばゴム成分100重量部に対して、9、9.1、9.2、10.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9、11、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9、または12重量部であり得る。
【0085】
本発明のゴム組成物の油は特に限定されず、当業者に知られている任意のものであり得る。例えば、本発明の油は、DAE(蒸留芳香族抽出物)、Tdae(処理蒸留芳香族抽出物)、MES(マイルド抽出溶媒和物)、RAE(残留芳香族抽出物)、Trae(処理残留芳香族抽出物)などの芳香族油、ナフテン油、重ナフテン油、パラフィン油、ヤシ油などの植物油、アルキルベンゼン油などの合成油、およびヒマシ油などの加工油よりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、油は、残留芳香族抽出油などの芳香族油である。ゴム組成物の油は、1つ以上のポリマー(例えば、官能化または非官能化SSBRコポリマー)中に存在するポリマー油展剤の形態でゴム組成物に添加されてもよい。
【0086】
ゴム組成物中の油の総量は、1つ以上のポリマー中に存在する伸展油と、存在し得る任意の追加の油成分との合計によって計算される。油の総量は特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して5~60重量部、好ましくは8~50重量部、好ましくは10~45重量部、より好ましくは15~40重量部、例えばゴム成分100重量部に対して、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30重量部であり得る。
【0087】
本発明のゴム組成物の劣化防止剤は特に限定されず、当業者に知られている任意のものであり得る。劣化防止剤は、抗酸化剤および/またはオゾン劣化防止剤であり得る。例えば、劣化防止剤は、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー(TMQ)よりなる群から選択される1つ以上であり得る。好ましくは、劣化防止剤は、N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)と2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー(TMQ)との組み合わせである。各劣化防止剤の量は、ゴム成分100重量部に対して0.1~3重量部、例えば、0.5~1.5重量部、例えばゴム成分100重量部に対して0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0重量部であり得る。劣化防止剤の総量は、ゴム成分100重量部に対して0.1~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、好ましくは0.5~3重量部、より好ましくは1~2重量部であり、例えばゴム成分100重量部に対して1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2重量部であり得る。
【0088】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明のゴム組成物を配合することによりゴム配合物を製造する方法を提供する。
【0089】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明のゴム組成物を配合してゴム配合物を形成するステップと、前記ゴム配合物を所望の形状に成形するステップと、前記ゴム配合物を加硫するステップと、を含むゴム製品の製造方法を提供する。
【0090】
[ゴム組成物の製造および配合]
本発明のゴム組成物の調製において、各成分を組み合わせる方法は限定されず、当業者に公知の方法のいずれかを使用することができる。例えば、全ての構成材料を一度に混合および混練(kneaded)してもよいし、複数回に分けて混合および混練してもよい。混合および混練には、ロールニーダー、密閉式ミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いることができる。ゴム組成物をシート状または短冊状に成形するには、押出成形機またはプレス成形機等の公知の成形機を使用することができる。
【0091】
[加硫]
上記ゴム組成物を硬化させるための加硫条件は限定されず、当業者に知られている条件のいずれでもよい。しかし、典型的には、140~180℃で5~120分間の処理を行う加硫条件が採用される。
【0092】
[タイヤ製造]
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて製造されること以外は特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択することができる。タイヤは、本発明のゴム組成物を使用して製造されるため、優れた耐摩耗性、転がり抵抗、ウェット性能および靭性を有し、これらの特性間の優れたバランスを有する。
【0093】
本発明のゴム組成物が使用されるタイヤの部位は特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ゴム組成物は、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム、ビードフィラーなどに使用することができる。これらのうち、ゴム組成物は、トレッドの構成要素に有利に使用される。
【0094】
タイヤの製造方法に関しては、当業者に知られている任意の方法を使用することができる。例えば、未加硫ゴム組成物およびコードよりなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されるカーカス層、ベルト層、トレッド層等のタイヤ製造に一般的に用いられる部品を、タイヤ成形用のドラムに順次積層し、次いで、ドラムを取り外して生タイヤ(green tyre)を製造する。次に、生タイヤを常法に従って加熱加硫し、所望のタイヤを製造する。タイヤは、例えば空気入りタイヤであり得る。
【実施例
【0095】
以下の実施例によって本発明を説明するが、これらは本発明を説明することを意図しており、決してその範囲を限定するものではない。
【0096】
[試験方法]
ブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積‐官能化シリカの比表面積は、非特許文献1(Journal of the American Chemical Society, Vol. 60, page 309, February 1938, and corresponding to standard NF ISO 5794-1, Appendix D (June 2010))に記載された方法に従ってBET法によって測定した。
【0097】
臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)吸着‐官能化シリカの表面積は、ASTM D6845に従ってCTAB法によって測定した。
【0098】
カルボン酸および対応するカルボン酸塩の炭素含有量(C)‐全炭素として(C)で表される、カルボン酸および対応するカルボン酸塩の含有量は、Horiba EMIA 320 V2機などの炭素/硫黄分析装置を使用して測定することができる。炭素/硫黄分析装置の原理は、誘導炉(約170mAに調整)内の酸素流中の固体サンプルの燃焼ならびに、燃焼促進剤(約2gのタングステン(特にLecocel 763-266)および約1gの鉄)をベースとしている。分析はおよそ1分間続く。分析するサンプル中に存在する炭素(質量約0.2g)は、酸素と結合してCOおよびCOを形成する。これら分解ガスを、続いて赤外線検出器によって分析する。これら酸化反応中に生成されるサンプルからの水分および水は、赤外線測定を妨害しないように、脱水剤(過塩素酸マグネシウム)を含むカートリッジを通過させることによって除去する。結果を、元素炭素の質量パーセントとして表す。
【0099】
物体サイズ分布幅比 Ld‐物体サイズ分布幅比は、WO2015/121333A1に記載の方法に従って、超音波デアグロメレーション後にXDC粒子サイズ分析により測定される物体サイズ分布幅比Ld((d84-d16)/d50)である。
【0100】
細孔容積分布‐細孔容積分布は、WO2015/121333A1に記載の方法で測定した細孔容積分布比V(d5-d50)/V(d5-d100)である。
【0101】
官能化シリカpH‐官能化シリカのpHは、ISO787/9に由来する特許文献2(国際公開第2015/121333号)に記載された方法に従って測定した。
【0102】
ムーニー粘度‐ムーニー粘度は、ASTM D1646規格に従って、未加工(raw)官能化または非官能化ポリマーで測定した。
【0103】
転がり抵抗(RR)‐転がり抵抗は、United Nations Regulation No. 117, Revision 4, 2016, Annex 6に従って測定した。
【0104】
ウェット性能‐ウェット性能は、United Nations Regulation No. 117, Revision 4, 2016, Annex 5に従って測定した。
【0105】
靭性(TB*EB)‐靭性測定は、国際標準化機構(ISO)5893に従って、100℃で測定された化合物の引張特性をベースとした。
【0106】
ペイン効果(%)‐ペイン効果は、室温での応力/ひずみ試験で、ISO4664規格に従って測定された化合物の動的特性から計算した。ペイン効果は、ΔE’/E(0.1%ひずみ)の比率(パーセンテージで表示)からゴム組成物中のフィラー分散を予測でき、ここで、ΔE’はE’(0.1%ひずみ)-E’(4%ひずみ)の差分である。ペイン効果が低いほど、ゴム組成物中のフィラー分散が良好である。以下の表2において、ペイン効果のデータは、ペイン効果が100に正規化された比較例1と比較して提示されている。100を超えるペイン効果値は、フィラー分散が比較例1と比較して改善されていることを示す。
【0107】
[末端基官能化SSBRコポリマー]
以下の実施例において、末端基官能化SSBRコポリマーは、以下に記載されるように、特許文献1(国際公開第2014/173706号)の実施例3に従って調製した。
【0108】
不活性化された20リットルの反応器に、ヘキサン(8.5kg)、1,3-ブタジエン(1,185g)、スチレン(315g)、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン(8.6mmol)、およびブチルリチウム(11.3mmol)を入れ、内容物を60℃に加熱した。60℃で25分間攪拌しながら重合を生じさせた。続いて、ブチルリチウムと等モル量のヘキサメチルシクロトリシロキサンを(シクロヘキサン中の溶液として)添加し、反応器の内容物をさらに20分間60℃に加熱して、ポリマー鎖のアニオン末端をキャップした。ヘキサメチルシクロトリシロキサンの添加から20分後、ブチルリチウムおよびヘキサメチルシクロトリシロキサンと等モル量の2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンを(トルエン中の溶液として)添加し、混合物をさらに20分間60℃に加熱した。ゴム溶液を廃棄し、Irganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)(3g)を添加して安定化させ、蒸気でストリッピングして溶媒を除去した。ゴムクラムを減圧下65℃で乾燥させた。
【0109】
[官能化シリカ]
以下の実施例において、官能化シリカは、特許文献2(国際公開第2015/121333号)の実施例6に従って調製され、ここでは、官能化シリカAについては、添加されたメチルグルタル酸(MGA)の量は0.40重量%(MGA混合物/SiO重量比として表される)であり、pHは3~3.7の間に調整し、官能化シリカBについては、添加されたMGAの量は0.40重量%(MGA混合物/SiOの重量比で表される)であり、pHは3.5~4.2の間に調整した。
【0110】
官能化シリカAおよび官能化シリカBの特性を以下の表1に示す。
【表1】
【0111】
[ゴム組成物]
以下の表2および表3は、実施例1~4および比較例1~3のゴム組成物を示す。ゴム組成物は、表2および表3に列挙された成分を配合することによって調製した。表2は、ゴム組成物のポリマーおよびシリカ成分を示し、表3は、さらなる成分を示す。表2および表3に示す値は、ゴム成分100重量部に対する重量部(PHR)である。表2に示されるポリマー成分の量(すなわち、非官能化SSBR、ヒドロキシル官能化SSBRおよび末端基官能化SSBRコポリマーの量)は、表2のカラム2内の各ポリマーの説明に記載されている伸展油のパーセンテージ量を含む。すなわち、ゴム成分100重量部に対する重量で組成物中に存在する純粋なSSBRコポリマーの量を計算するには、表2に与えられた値は、存在する伸展油のパーセンテージ割合を占めるよう調整しなければならない。ゴム組成物を上記の試験方法に供した。
【0112】
表2はさらに、実施例1~4および比較例1~3のゴム組成物から製造されたタイヤの粘弾性特性を示す。結果は、列挙された粘弾性特性のすべての値が100に正規化されている比較例1と比較して示されている。したがって、粘弾性特性の値が100より大きい場合、その特性の改善を意味し、粘弾性特性の値が100未満である場合、その粘弾性特性の低下を意味する。粘弾性特性の値が100である場合は、比較例1と同じ結果であった。
【0113】
「バランス」の数値は、各組成の粘弾性特性の値の合計から400を引いたものである。比較例1の4つの粘弾性特性のそれぞれの値が100に設定されているので、比較例1のバランスは0である。したがって、0より大きいバランスは、比較例1と比較して全体的な粘弾性特性の改善を意味する。
【0114】
「備考」は、各ゴム組成物のポリマー成分およびシリカ成分の特徴をまとめたものである。
【0115】
【表2】
【0116】
比較例の注記(CE)
CE1:カルボキシル官能化成分なし
CE2:カルボキシル官能化SSBR、非官能化シリカ
CE3:ヒドロキシル官能化SSBR、カルボキシル官能化シリカ
【0117】
実施例の注記(EE)
EE1:カルボキシル官能化SSBR、カルボキシル官能化シリカ
EE2:より高いpH(3.7に対して4.2)を有するカルボキシル官能化シリカ
EE3:官能化シリカと官能化ポリマーとの比率が1未満
EE4:より多量の官能化シリカ
【0118】
【表3】
【0119】
[結果および考察]
実施例1~4のバランスデータは、比較例1~3のものよりも有意に高く、末端基官能化SSBRおよび官能化シリカの両方を含む組成物から調製されたタイヤの粘弾性特性の全体的な改善を実証している。さらに、末端基官能化SSBRと官能化シリカとを組み合わせることによって、相互作用および/または相乗効果が達成される。
【0120】
比較例3を実施例1~4と比較すると、ヒドロキシル官能化ポリマーと比較して、末端基官能化SSBRを使用すると、全体的な粘弾性特性、特に耐摩耗性および転がり抵抗の改善が達成される。
【0121】
実施例1と実験例2とを比較することにより、pHが4.2と比較して3.7である場合に、全体的な粘弾性特性、特に摩耗耐性および転がり抵抗の改善が達成されることを実証している。
【0122】
実施例1と実施例3との比較から分かるように、官能化シリカの量が官能化末端基SSBRの量よりも多い場合、全体的な粘弾性特性、特に摩耗耐性および靭性の改善が達成される。
【0123】
実施例4から分かるように、官能化シリカの量が多いほど、摩耗特性が著しく改善される。