(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】付加製造用途で利用するオーセチック三次元構造物
(51)【国際特許分類】
F01D 25/00 20060101AFI20240415BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240415BHJP
B22F 5/04 20060101ALI20240415BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240415BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240415BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20240415BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20240415BHJP
F01D 5/14 20060101ALI20240415BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20240415BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20240415BHJP
【FI】
F01D25/00 L
B22F10/28
B22F5/04
B33Y10/00
B33Y80/00
F01D25/00 X
F02C7/00 D
F02C7/00 C
F01D5/28
F01D5/14
F01D9/02 101
B22F10/38
(21)【出願番号】P 2022562483
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020028235
(87)【国際公開番号】W WO2021211108
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】キブゼイ,ミッチ
(72)【発明者】
【氏名】シェンツァー,ミーガン
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506297(JP,A)
【文献】特表2018-510319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
B22F 10/28
B22F 5/04
B33Y 10/00
B33Y 80/00
F02C 7/00
F01D 5/28
F01D 5/14
F01D 9/02
B22F 10/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーセチック(NPR)構造物であって、
交差する複数の上下に延びた、
それぞれが負のポアソン比を示す窪み付きシートを
含んで構成されている、三次元単位セルを備え、
前記窪み付きシートのそれぞれは、鞍点を画定する正弦波の形状であり、
前記窪み付きシートのそれぞれは、
前記正弦波の前記鞍点において、近接する2枚の窪み付きシートと交差して矩形の管状構造を作り、そして、前記窪み付きシートのそれぞれは、近接する窪み付きシートとの交差部位から外側へ突出する部分をもち、
前記窪み付きシートにおける各窪みの振幅は、前記窪み付きシートのオーバーハング面が、支持構造を用いないでプリントできる角度閾値を超えないようにしてある、オーセチック(NPR)構造物。
【請求項2】
当該オーセチック(NPR)構造物は、支持構造を用いずに付加製造される、請求項1に記載のオーセチック(NPR)構造物。
【請求項3】
当該オーセチック(NPR)構造物は、レーザー粉末床溶融結合法(L-PBF)を使用して付加製造される、
請求項1に記載のオーセチック(NPR)構造物。
【請求項4】
当該オーセチック(NPR)構造物の複数の機械的特性が、前記窪み付きシートそれぞれの厚さ(t)、振幅(h)、及び波長(λ)のいずれかを変更することによってチューナブルである、
請求項1に記載のオーセチック(NPR)構造物。
【請求項5】
前記複数の機械的特性は、剛性、ポアソン比、密度、及び熱伝達よりなる群から選択される、
請求項4に記載のオーセチック(NPR)構造物。
【請求項6】
セル長パラメータ(a)に対する前記振幅(h)の比が0.1~0.15の範囲であり、前記波長(λ)に対する前記セル長パラメータ(a)の比が1である、
請求項4に記載のオーセチック(NPR)構造物。
【請求項7】
当該オーセチック(NPR)構造物は、前記窪み付きシートのそれぞれに孔をもつ、請求項1に記載のオーセチック(NPR)構造物。
【請求項8】
前記孔は、前記窪み付きシートの各窪みのピーク又は変曲点に配置される、
請求項7に記載のオーセチック(NPR)構造物。
【請求項9】
前記プリントできる角度閾値が45°である、請求項1に記載のオーセチック(NPR)構造物。
【請求項10】
ガスタービンコンポーネントであって、複数のNPR構造物からなる反復オーセチック構造物を含み、
前記NPR構造物のそれぞれが請求項1に記載のオーセチック(NPR)構造物であり、
前記鞍点を画定する前記正弦波の形状である前記窪み付きシートのそれぞれにおいて、窪みがそのピークに位置
する、ガスタービンコンポーネント。
【請求項11】
中実の外側ウォールを有し、
該中実の外側ウォール内側の当該ガスタービンコンポーネントの内部に、前記反復オーセチック構造物が組み込まれている、
請求項10に記載のガスタービンコンポーネント。
【請求項12】
前記NPR構造物それぞれの複数の機械的特性が、前記窪み付きシートぞれぞれの厚さ(t)、振幅(h)、及び波長(λ)の少なくともいずれか1つを変更することによってチューナブルである、
請求項10に記載のガスタービンコンポーネント。
【請求項13】
前記複数の機械的特性は、剛性、ポアソン比、密度、及び熱伝達よりなる群から選択される、
請求項12に記載のガスタービンコンポーネント。
【請求項14】
前記反復オーセチック構造物は、前記窪み付きシートのピークに配置された複数の孔をさらに含み、
冷却流が、前記反復オーセチック構造物により形成されているチャンネルを流れて前記複数の孔を通り、前記中実の外側ウォールを冷却するために前記中実の外側ウォールの内側部分に衝突する、
請求項11に記載のガスタービンコンポーネント。
【請求項15】
タービンベーン又はタービンブレードである、
請求項14に記載のガスタービンコンポーネント。
【請求項16】
Alloy247を材料とする、
請求項15に記載のガスタービンコンポーネント。
【請求項17】
レーザー粉末床溶融結合法(L-PBF)を用いて付加製造される、
請求項16に記載のガスタービンコンポーネント。
【請求項18】
付加製造プロセスを用いてコンポーネントを形成する方法であって、
ビルドプレートに支持構造を配置する過程、
該支持構造を配置する過程は、
上下方向の第1の複数の窪み付きシートを位置決めし、
第2の複数の窪み付きシートを前記第1の複数の窪み付きシートと直交させて矩形の管状構造を画定することを含み、
前記第1の複数の窪み付きシート及び前記第2の複数の窪み付きシートのそれぞれは、近接する窪み付きシートとの交点から外側に突出する部分を有すると共に、その各窪みの振幅が、支持構造を用いずにプリントできる角度閾値を超えるオーバーハング面の無い振幅であり、
前記第1及び第2の複数の窪み付きシートのそれぞれは、鞍点を画定する正弦波の形状であり、該窪み付きシートがその正弦波の前記鞍点で互いに交差し、
付加製造プロセスにおいて前記コンポーネントの形成中の層を支持するために前記支持構造を利用し、付加製造プロセスによって前記コンポーネントを形成する過程、
形成した前記コンポーネントから前記支持構造を除去する過程、を含み、
前記支持構造は、前記ビルドプレートから前記コンポーネントまで延在する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する態様は、広く言えばチューナブル(調整可能)構造物に関し、具体的には、負のポアソン比を示す構造物とそのような構造物を作り出す付加製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
標準的な構造物や物質が特定の軸に沿って圧縮されるとき、印加された荷重と交差する方向にそれらが膨らむことが一般的に最も観察される。この挙動を特徴づける特性はポアソン比であり、負の横歪と縦歪の比として定義できる。負のポアソン比を示す構造物(NPR構造物とも呼ばれるので、以降はこの用語も使用する)を開発することによって、オーセチックメタマテリアル(auxetic meta-materials)を設計することができる。オーセチック構造物(つまり、負のポアソン比の挙動を与える構造物)によるメタマテリアルは、圧縮(又は伸張)されると、横方向において収縮(又は拡張)する。
【0003】
付加製造(AM)は、従来の製造技術を用いて製造することが困難なコンポーネントの製造を可能にする。ほとんどの付加製造プロセスにおいて、コンポーネントは一層ずつ製造される。当該付加製造プロセスの1つがレーザー粉末床溶融結合法(L-PBF)である。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、オーセチック(NPR)構造物は、交差する複数の上下に延びた、窪み付きシートを含む。これら窪み付きシートのそれぞれは、負のポアソン比を示す。窪み付きシートのそれぞれは、近接する2枚の窪み付きシートと交差して矩形の管状構造を作る。窪み付きシートのそれぞれは、近接する窪み付きシートとの交差部位から外側へ突出する部分をもつ。窪み付きシートにおける各窪みの振幅は、窪み付きシートのオーバーハング面が、支持構造を用いないでプリントできる角度閾値を超えないようにしてある。
【0005】
別の態様において、ガスタービンコンポーネント(部品)は、反復オーセチック構造物(反復形成したオーセチックの構造物)を組み込んだ中実の外側ウォールを含む。反復オーセチック構造物は、複数のNPR構造物からなる。これらNPR構造物のそれぞれが三次元単位セルを含む。三次元単位セルは、正弦波形の鞍点で互いに交差する正弦波形シートからなる複数の窪み付きシートを含んで構成される。
【0006】
別の態様において、付加製造プロセスを使用してコンポーネントを形成する方法は、ビルドプレートに支持構造を配置するステップと、付加製造プロセスにおいてコンポーネントの形成中の層を支持するために支持構造を利用し、付加製造プロセスによってコンポーネントを形成するステップと、形成したコンポーネントから支持構造を除去するステップとを含む。支持構造は、反復オーセチック構造物からなり、反復オーセチック構造物は、複数のNPR構造物を含んで構成される。NPR構造部のそれぞれは、三次元単位セルを含む。三次元単位セルは、正弦波形の鞍点で互いに交差する正弦波形シートからなる複数の窪み付きシートを含んで構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
具体的な要素や作用の説明を分かりやすくする目的で、参照番号の最上位桁は、該当要素が最初に表されている図番号を指す。
【
図1】三次元単位セルのオーセチック(NPR)構造物の斜視図。
【
図2】窪みのピークの位置で切り取った
図1のNPR構造物の断面図。
【
図3】窪みの振幅を変えたNPR単位セル構造物を2つ示す。
【
図4】窪みをなす波長を変えたNPR単位セル構造物を4つ示す。
【
図5】窪みのピークに配置された孔を有する
図1のNPR構造物を示す。
【
図7】反復オーセチック構造物を組み込んだタービンベーンの斜視図。
【
図8】衝突冷却(衝突噴流冷却)用に窪みのピークに孔を有する反復オーセチック構造物の断面図。
【
図9】付加製造プロセスのために支持構造を利用したタービンベーンの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ガスタービンエンジンは、最高効率を確実にし且つ望ましくない排出を最小限に抑えるために、高温で作動する。エンジン内部の燃焼経路内コンポーネントは、高温で高い強度をもつ超合金物質で構成されることがほとんどである。ただし、超合金のコンポーネントは、通常、鋳造や鍛造のような従来の方法を用いて製造され、これらの手法はコンポーネントの形状に一定の制約を課す。付加製造(AM)は、現在、ガスタービンの高温部で利用されるコンポーネントを製造するための魅力的な選択肢であり、魅力の要因の一つに、従来の方法では製造できなかった複雑な形状をプリントできる能力がある。しかしながら、付加製造プロセスを利用して製造されるコンポーネントは、付加製造のビルドプロセスとその後の熱処理及び熱間等方圧加圧(HIP)サイクルで亀裂の影響を受けるということもある。このことに鑑み、本願の発明者は、ビルドプロセス、その後の熱処理、及びHIPサイクルにおける亀裂発生の可能性を低減して付加製造を行うことができるチューナブル(調節可能)な機械的特性を有するオーセチック(NPR)構造物を提案する。
【0009】
図1は、三次元単位セルのNPR構造物100を示す。NPR構造物100は、三次元構造物を作成するために、交差する複数の上下(台に対して上下)に延びた窪み付きシート102を含む。窪み付きシート102のそれぞれは、近接する窪み付きシートと正弦波パターン(正弦波形)の鞍点で交差する正弦波の波形を有し、窪みのピークがその交差部位の間に位置する。一実施例において、正弦波形を有する窪み付きシート102のそれぞれは、正弦波形の鞍点において直交して、近接する窪み付きシートと交差する。したがって、各窪み付きシート102は、次の式(1)に基づいて構成することができる。
z=h×sin(2πx/λ) sin(2πy/λ)・・・(1)
式中、「z」は所定の位置(x,y)における標準高さ、「h」は窪みの振幅、「λ」は波長である。
図1に示すパラメータ「a」は、単位セルパラメータに相当する。単位セルは、寸法a×a×aの立方体である。NPR構造物100の一実施例において、λ(波長)の値は、単位セルパラメータであるaに等しい。各シートの厚さは「t」で示される。図示された単位セルNPR構造物100は、ヒレ(縁)部分、又は交差する窪み付きシート102の交差部位を過ぎて突出する部分、を含み得る。応力集中を避けるためにヒレ部分を追加してもよい。
【0010】
NPR構造物100を、支持構造を利用せずに、レーザー粉末床溶融結合法(L-PBF)などによる付加製造プロセスで製造できるようにするために、NPR構造物100は、支持構造を用いずにプリントできる角度閾値を超えるオーバーハング面を含むべきではない。L-PBFプロセスの場合、このプリント適性の角度閾値は、通常、45°である。したがって、一実施例において、NPR構造物100は、45°の角度を超えるオーバーハング面を含まない。この条件は、NPR構造物100で次式(2)のように規定することによって達成され得る。
h≦a/2π・・・(2)
式(2)の導出は、窪み付きシート102の最大導関数を特定することによってなすことができる。L-PBFは、本開示の全体を通して付加製造プロセスとして特に言及するが、当業者には理解されるように、提案に係るNPR構造物100は、他の付加製造プロセスを用いて製造することもできる。また、閾値の角度は、物質、プロセス、及びサイズに応じて変化し得る。
【0011】
窪みのピークの位置でNPR構造物100を通して水平面を切り取った場合に得られる断面が
図2に示されている。二次元において、この形状は、湾曲円弧を変位させることによりNPR挙動を達成する。これらの湾曲円弧が曲がると、これら湾曲円弧は交差点を回転させ、このことが、横断する円弧にも曲げを生じさせる。提案に係る構造物は、S字形状の二次元NPR挙動をとり、これを三次元に変換する。提案に係るNPR構造物100は、その独特の形状に起因して、3つの直交方向すべてにおいて負のポアソン比を示す。
【0012】
一実施例において、NPR構造物100の形状パラメータは、機械的特性をチューン(調整)するために変更可能である。幾何学的なNPR構造物100の形状特性、波長(λ)、振幅(h)、及び厚さ(t)が
図1に示されている。NPR構造物100の機械的特性は、剛性、ポアソン比(負の値を含む)、密度、及び熱伝導率を含み得る。NPR構造物100がコンポーネントに組み込まれる場合に幾つかの利益が得られる。機械的特性をチューンすることによって、ロッド/リガメント型構造物などの他の構造物と比較して、応力を低くし、熱伝達を改善することが可能である。例えば、NPR構造物100を用いたコンポーネントにおいて応力を低くすることが、ポアソン比(負の値を有する)を調整して熱膨張による横方向負荷を緩和することによって、達成され得る。他の特性(例えば、剛性及び密度)も、応力低減のための最適値を達成するために又は熱的挙動を改善するために、チューンすることができる。
【0013】
NPR構造物100のチューナブル特性は、付加製造されるコンポーネントにおいて特に有用である。応力低減は、使用しているコンポーネントの寿命を改善するだけではなく、ビルド中の及びその後の熱処理及びHIPサイクルでの強い熱勾配によって引き起こされる応力を低減することでプリント適性をも改善する。
【0014】
NPR構造物100の機械的特性を評価するために、例えばa=2で壁厚比a/t=40の形状パラメータを有する単位セルについて、当業者に周知の方法に従って有限要素解析を行える。
図3及び
図4に示す例の場合、NPR構造物100の振幅h及び波長λが変更されている。
図3は、NPR構造物300の窪みの振幅hの変化を表し、
図4は、NPR構造物400の窪みの波長の変更を表す。この解析の結果は、周波数が単位セルあたりちょうど1波長のとき及び振幅(h)がおおよそ0.1から0.15のときに、ポアソン比が最大になることを示す。
【0015】
多くのガスタービンコンポーネントの、特にエンジンの最高温度で作動するタービンセクションにあるコンポーネントの寿命に関し、当該コンポーネントは、過酷な温度による溶融や他の悪影響を防止するために、冷却される。NPR構造物100は、機械的特性以外にも、冷却機能を提供し得る。NPR構造物100の交差する窪み付きシート102の間の空隙によって作り出される流体容積は、NPR構造物100を含んだコンポーネントを通して冷却空気を運ぶために利用できるチャンネルを作り出すことができる。一実施例において、NPR構造物100は、そのチャンネルの間を連通させて冷却空気を交換できるように、シートに孔を含んでもよい。一例として
図5に、窪みのピークを貫通するようにNPR構造物に追加された複数の孔502を有するNPR構造物500を示す。加えて又は代替的に、孔502は、変曲点に配置することもできる。孔の追加は、NPR構造物100の機械的特性に影響を及ぼし得る。例えば、窪みの変曲点に配置された孔がさらに負となるようにポアソン比を減少させ得るし、ピークにある孔がポアソン比を正の方へ変化させ材料のバルク値に近づけ得る。孔は、窪みの大きさに対して様々な大きさとし得る。
【0016】
図6は、複数のNPR構造物100から構成した反復オーセチック(NPR)構造物600を示す。図示した例の反復NPR構造物600は、4×4×4のNPR構造単位セル100のセットを含む。一実施例において、反復NPR構造物600はコンポーネントに組み込まれる。本開示の全体を通してガスタービンコンポーネントを説明するが、反復NPR構造物600は、種々の目的で利用される様々なコンポーネントに組み込まれ得る。
【0017】
一実施例において、反復NPR構造物600は、ガスタービンコンポーネントに組み込まれる。
図7は、反復NPR構造物600を組み込んだガスタービンコンポーネントとして、タービンベーン700の斜視図を示す。
図7において、タービンベーン700は、外側ウォール704を備えたボディを有する細長い翼型702を含む。また、タービンベーン700は、第1の端部に外側シュラウド708を含み、そしてタービンベーン700の第2の端部に、プラットフォームとしても知られる内側シュラウド706を含む。タービンベーン700は、ガスタービンエンジンでの使用を目的に構成される。一実施例において、反復NPR構造物600は、中実の外側ウォール704を有する翼型702の内部に組み込まれる。反復NPR構造物600を有するタービンベーン700の利点は、応力低減と改良冷却である。
【0018】
一実施例において、ガスタービンコンポーネント700は、合金-Alloy247を材料とする。合金のAlloy247は、高温で高強度であることから、ガスタービンコンポーネントなど、非常に高温のクリープ傾向のある環境におけるコンポーネントに一般的に使用されているNiベースの合金である。例えば、鋳造に代えてレーザー粉末床溶融結合法(L-PBF)などの付加製造プロセスにより、Alloy247を用いてガスタービンコンポーネントを付加製造(3Dプリント)する手段をもつことは、製造時間を短縮でき、費用対効果をより高くすることができる。しかしながら、Alloy247は、製造の難しさが知られており、溶接不可に分類されている。3Dプリントプロセス中に及びHIP(熱間等方圧加圧)サイクルなどの後処理において、ひび割れが頻発する。Alloy247がNPR構造物100を作る物質としてとりわけ注目されるが、NPR構造物は、例えばチタン、ステンレス鋼、プラスチック、及びゴムなどの他の物質で形成することもできる。
【0019】
一実施例において、反復NPR構造物600は、上述のように、チューナブルの機械的特性を含むと共に、冷却機能も提供する。衝突冷却孔が反復NPR構造物600において大きさを調節して配置され、機械的特性をチューンして高温ウォールとNPR構造物600との間の熱的競合を処理する。一例として、
図8は、例えば900℃以上の温度に達し得る高温ガス802のガス流に曝される中実の外側ウォール704を有するタービンベーン700に組み込まれた、反復オーセチック構造物600の断面図を示す。複数の孔502が、
図5及び
図8に示されるように、窪みのピークに形成される。冷却空気流は、反復NPR構造物600によって形成されるチャンネルを通して供給されるので、
図8に図示されている面に対し直交する方向に流れる。チャンネルを通って流れる冷却空気は、図示のように、中実の外側ウォール704へ衝突して中実の外側ウォール704を冷却する。
【0020】
多くの場合、支持構造が付加製造プロセスに使用され、この付加製造プロセスにおいては、プリントするコンポーネントが、プリントプロセスや時には後続の熱処理中に支持構造を用いて支持される。支持構造は、標準的には、ほとんどのL-PBFプロセスで45°である自己支持角度閾値を超えるコンポーネントの領域を支持するべく配置され得る。支持構造は、コンポーネントをビルドプレートに強固に接続する、厚く、強く、高密度の柱状支持体を含む。このような支持体は、高い熱応力に対抗し、コンポーネントがビルドプレートから剥がれようとする力に対抗する。コンポーネントが完成すると、柱状支持体は、機械加工プロセスによって除去される。これとは異なり、薄い格子状支持体を使用してオーバーハング面を支持し崩壊を避け、手作業又はグリットブラストによって除去することもできる。これらの既存の支持構造は、プリントプロセスと後工程の熱処理及びHIPにおいて、コンポーネントに局所的な応力集中を発生させるという不具合がある。Alloy247などの溶接が難しい合金では、熱勾配によって生じる負荷で現存の構造物が壊れる可能性もある。
【0021】
標準的なタービンベーンは、翼型702にオーバーハングするプラットフォーム706,708と組み合わせられている。そのオーバーハング形状は支持構造を用いてビルド(構築)しなければならないが、この支持構造がビルド中に破壊することが多く、ビルド失敗の原因となる。場合によっては、ビルドに失敗した物は廃棄する必要がある。この点に鑑み、本願の発明者は、反復オーセチック構造物600を、付加製造プロセスにおける支持構造として利用することを提案する。
図9は、反復オーセチック構造物600を支持構造902として利用したタービンベーン700の斜視図を示す。支持構造902は、ビルドプレート904に配置される。図示のとおり、支持構造902は、ビルドプレート904からコンポーネント700まで延在する。コンポーネントの層が、付加製造プロセスで支持構造902上に形成される。
【0022】
一実施例において、支持構造902の機械的特性は、NPR構造物100に関して上述したようにチューンすることが可能である。例えば、支持構造902は、応力が最小に抑えられるように、L-PBFなど付加製造プロセスの熱負荷に反応すべくチューンすることができる。
【0023】
まとめると、本提案に係るNPR構造物100は、付加製造プロセスに最適となる特性を含んでいる。例えば、横断面又はオーバーハング面がないことから、NPR構造物100を、外部支持構造を伴わないレーザー粉末床溶融結合法で3Dプリントすることが可能である。交差する窪み付きシート102の窪みの振幅が、ビルドプレート904との角度が45度未満のオーバーハング面が無いように決められる場合、NPR構造物100は、プリントするコンポーネントにおけるオーバーハング形態を支持する支持構造としてそれ自体を使用することができる。さらに、交差するシートを備えたNPR構造物100は、大きな熱負荷に起因する形態の変位や反りに抵抗し得る剛性及び密度をもつ。また、NPR構造物100のポアソン比をチューンすることによって、当該構造物は、付加製造するコンポーネントにおける応力及びひび割れを低減することも可能である。
【0024】
実施例を開示して詳細に説明したが、当業者であれば、本開示技術の最も広範な態様における思想及び範囲から逸脱することなく、本明細書から唆示される種々の変更、代替、派生、及び改良をなし得ることは当然理解される。
【0025】
本願における説明のいずれも、特定の要素、ステップ、作用、又は機能が特許請求の範囲に含まれるべき必須の要素であることを示唆していると解釈されるべきではない。特許に係る主題の範囲は、許可された請求項によってのみ定義される。また、請求項のいずれも、「手段」の単語に「機能」を合わせた明白な機能的記載をしてない限り、「ミーンズプラスファンクション」を意図したものではない。