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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20240415BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F15B11/00 V
E02F9/22 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022571951
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2021041600
(87)【国際公開番号】W WO2022137872
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020215521
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】秋田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】白川 賀裕
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】金濱 充彦
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057926(JP,A)
【文献】特開2019-148318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130427(US,A1)
【文献】特開2020-153461(JP,A)
【文献】特開2020-118271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクから吸引した作動油を吐出するポンプと、
前記ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、
中立位置で前記ポンプからの作動油を前記タンクに導くセンタバイパス通路部を有し、前記中立位置からの変位量に応じて前記油圧アクチュエータへ供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、
前記ポンプから供給された作動油を、前記流量制御弁の前記センタバイパス通路部を経由して前記タンクに導くセンタバイパスラインと、
前記センタバイパスラインにおける前記流量制御弁の下流側に設けられ前記センタバイパスラインの開口を制御するバイパスカット弁と、
前記バイパスカット弁を制御するパイロット圧を生成する電磁比例弁と、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
前記操作装置の操作量に基づいて、前記流量制御弁を制御するパイロット圧を生成するパイロット弁と、
前記操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、
前記操作量検出装置で検出された操作量に基づいて、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備えた作業機械において、
前記制御装置は、
前記操作量検出装置で検出された操作量が、最小操作量以上所定操作量未満の範囲では、前記操作量の増加に応じて前記バイパスカット弁の開口面積が最小開口面積となるまで小さくなるように前記電磁比例弁を制御し、
前記操作量検出装置で検出された操作量が、最大操作量であるときには、前記バイパスカット弁の開口面積が前記最小開口面積よりも大きい開口面積となるように、前記電磁比例弁を制御し、
前記流量制御弁の前記センタバイパス通路部は、前記操作量が前記所定操作量未満の範囲では前記操作量が増加するほど開口面積が小さくなり、前記所定操作量で全閉となる開口特性を有し、
前記制御装置は、前記操作量検出装置で検出された操作量が、前記所定操作量以上前記最大操作量以下であるときに、前記バイパスカット弁の開口面積が前記最小開口面積から増加するように前記電磁比例弁を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
タンクから吸引した作動油を吐出するポンプと、
前記ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、
中立位置で前記ポンプからの作動油を前記タンクに導くセンタバイパス通路部を有し、前記中立位置からの変位量に応じて前記油圧アクチュエータへ供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、
前記ポンプから供給された作動油を、前記流量制御弁の前記センタバイパス通路部を経由して前記タンクに導くセンタバイパスラインと、
前記センタバイパスラインにおける前記流量制御弁の下流側に設けられ前記センタバイパスラインの開口を制御するバイパスカット弁と、
前記バイパスカット弁を制御するパイロット圧を生成する電磁比例弁と、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
前記操作装置の操作量に基づいて、前記流量制御弁を制御するパイロット圧を生成するパイロット弁と、
前記操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、
前記操作量検出装置で検出された操作量に基づいて、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備えた作業機械において、
前記制御装置は、
前記操作量検出装置で検出された操作量が、最小操作量以上所定操作量未満の範囲では、前記操作量の増加に応じて前記バイパスカット弁の開口面積が最小開口面積となるまで小さくなるように前記電磁比例弁を制御し、
前記操作量検出装置で検出された操作量が、最大操作量であるときには、前記バイパスカット弁の開口面積が前記最小開口面積よりも大きい開口面積となるように、前記電磁比例弁を制御し、
前記バイパスカット弁を通過する作動油の温度を検出する温度センサを備え、
前記制御装置は、前記温度センサで検出された作動油の温度が低いときには、高いときよりも前記バイパスカット弁の開口面積が大きくなるように、前記電磁比例弁を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
タンクから吸引した作動油を吐出するポンプと、
前記ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、
中立位置で前記ポンプからの作動油を前記タンクに導くセンタバイパス通路部を有し、前記中立位置からの変位量に応じて前記油圧アクチュエータへ供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、
前記ポンプから供給された作動油を、前記流量制御弁の前記センタバイパス通路部を経由して前記タンクに導くセンタバイパスラインと、
前記センタバイパスラインにおける前記流量制御弁の下流側に設けられ前記センタバイパスラインの開口を制御するバイパスカット弁と、
前記バイパスカット弁を制御するパイロット圧を生成する電磁比例弁と、
前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、
前記操作装置の操作量に基づいて、前記流量制御弁を制御するパイロット圧を生成するパイロット弁と、
前記操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、
前記操作量検出装置で検出された操作量に基づいて、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備えた作業機械において、
前記制御装置は、
前記操作量検出装置で検出された操作量が、最小操作量以上所定操作量未満の範囲では、前記操作量の増加に応じて前記バイパスカット弁の開口面積が最小開口面積となるまで小さくなるように前記電磁比例弁を制御し、
前記操作量検出装置で検出された操作量が、最大操作量であるときには、前記バイパスカット弁の開口面積が前記最小開口面積よりも大きい開口面積となるように、前記電磁比例弁を制御し、
前記センタバイパスラインには、複数の前記流量制御弁が設けられ、
前記制御装置は、前記複数の流量制御弁が複合操作されたときには、単独操作されたときよりも前記バイパスカット弁の開口面積が大きくなるように、前記電磁比例弁を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出された作動油により駆動される油圧アクチュエータと、油圧ポンプから油圧アクチュエータに供給される作動油の流れを制御する制御弁と、制御弁を操作する操作装置とを備えた作業機械が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の作業機械の油圧システムは、センタバイパスラインにおける特定の油圧シリンダに対応する制御弁の下流側に配置されるセンタバイパスカット弁と、特定の油圧シリンダの負荷保持側のシリンダ室に作動油を供給するよう操作手段が操作されたときにセンタバイパスカット弁を作動させ、油圧ポンプの吐出圧力が特定の油圧シリンダの負荷圧よりも高くなるように制御する制御手段と、を備えている。
【0004】
特許文献2には、ブームシリンダの昇降をダイレクトに駆動制御する油圧回路において、油撃発生防止装置として、電磁開閉弁と絞り弁を介して負荷シリンダのボトム側油室とロッド側油室とを連通するバイパス回路を設けた昇降用油圧回路が開示されている。特許文献2に記載の昇降用油圧回路では、サージ圧が発生するシリンダ作動開始時、または停止時において、制御部が、予め定められた時間だけバイパス回路を開ける指令を電磁開閉弁に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011―85198号公報
【文献】特開2012―229777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の油圧システムでは、特定の油圧シリンダに対応する制御弁に対して戻し操作を行ったときに、この制御弁の戻り動作に比べてセンタバイパスカット弁が開くのが遅れることに起因して、サージ圧が発生するおそれがある。サージ圧の発生は、作業効率の低下に繋がる。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、サージ圧の発生を低減することを目的としているが、油圧パイロット3位置切換弁の動作に比べて、バイパス回路に設けられる電磁開閉弁の動作が遅れる場合には、サージ圧の発生を防止することができないおそれがある。
【0008】
本発明は、油圧アクチュエータの停止時のサージ圧の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様による作業機械は、タンクから吸引した作動油を吐出するポンプと、前記ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、中立位置で前記ポンプからの作動油を前記タンクに導くセンタバイパス通路部を有し、前記中立位置からの変位量に応じて前記油圧アクチュエータへ供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、前記ポンプから供給された作動油を、前記流量制御弁の前記センタバイパス通路部を経由して前記タンクに導くセンタバイパスラインと、前記センタバイパスラインにおける前記流量制御弁の下流側に設けられ前記センタバイパスラインの開口を制御するバイパスカット弁と、前記バイパスカット弁を制御するパイロット圧を生成する電磁比例弁と、前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、前記操作装置の操作量に基づいて、前記流量制御弁を制御するパイロット圧を生成するパイロット弁と、前記操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、前記操作量検出装置で検出された操作量に基づいて、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記操作量検出装置で検出された操作量が、最小操作量以上所定操作量未満の範囲では、前記操作量の増加に応じて前記バイパスカット弁の開口面積が最小開口面積となるまで小さくなるように前記電磁比例弁を制御し、前記操作量検出装置で検出された操作量が、最大操作量であるときには、前記バイパスカット弁の開口面積が前記最小開口面積よりも大きい開口面積となるように、前記電磁比例弁を制御する。また、本発明の第一の態様による作業機械において、前記流量制御弁の前記センタバイパス通路部は、前記操作量が前記所定操作量未満の範囲では前記操作量が増加するほど開口面積が小さくなり、前記所定操作量で全閉となる開口特性を有し、前記制御装置は、前記操作量検出装置で検出された操作量が、前記所定操作量以上前記最大操作量以下であるときに、前記バイパスカット弁の開口面積が前記最小開口面積から増加するように前記電磁比例弁を制御する。
本発明の第二の態様による作業機械は、タンクから吸引した作動油を吐出するポンプと、前記ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、中立位置で前記ポンプからの作動油を前記タンクに導くセンタバイパス通路部を有し、前記中立位置からの変位量に応じて前記油圧アクチュエータへ供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、前記ポンプから供給された作動油を、前記流量制御弁の前記センタバイパス通路部を経由して前記タンクに導くセンタバイパスラインと、前記センタバイパスラインにおける前記流量制御弁の下流側に設けられ前記センタバイパスラインの開口を制御するバイパスカット弁と、前記バイパスカット弁を制御するパイロット圧を生成する電磁比例弁と、前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、前記操作装置の操作量に基づいて、前記流量制御弁を制御するパイロット圧を生成するパイロット弁と、前記操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、前記操作量検出装置で検出された操作量に基づいて、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記操作量検出装置で検出された操作量が、最小操作量以上所定操作量未満の範囲では、前記操作量の増加に応じて前記バイパスカット弁の開口面積が最小開口面積となるまで小さくなるように前記電磁比例弁を制御し、前記操作量検出装置で検出された操作量が、最大操作量であるときには、前記バイパスカット弁の開口面積が前記最小開口面積よりも大きい開口面積となるように、前記電磁比例弁を制御する。また、本発明の第二の態様による作業機械は、前記バイパスカット弁を通過する作動油の温度を検出する温度センサを備え、前記制御装置は、前記温度センサで検出された作動油の温度が低いときには、高いときよりも前記バイパスカット弁の開口面積が大きくなるように、前記電磁比例弁を制御する。
本発明の第三の態様による作業機械は、タンクから吸引した作動油を吐出するポンプと、前記ポンプから吐出された作動油によって駆動される油圧アクチュエータと、中立位置で前記ポンプからの作動油を前記タンクに導くセンタバイパス通路部を有し、前記中立位置からの変位量に応じて前記油圧アクチュエータへ供給される作動油の流量を制御する流量制御弁と、前記ポンプから供給された作動油を、前記流量制御弁の前記センタバイパス通路部を経由して前記タンクに導くセンタバイパスラインと、前記センタバイパスラインにおける前記流量制御弁の下流側に設けられ前記センタバイパスラインの開口を制御するバイパスカット弁と、前記バイパスカット弁を制御するパイロット圧を生成する電磁比例弁と、前記油圧アクチュエータを操作するための操作装置と、前記操作装置の操作量に基づいて、前記流量制御弁を制御するパイロット圧を生成するパイロット弁と、前記操作装置の操作量を検出する操作量検出装置と、前記操作量検出装置で検出された操作量に基づいて、前記電磁比例弁を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記操作量検出装置で検出された操作量が、最小操作量以上所定操作量未満の範囲では、前記操作量の増加に応じて前記バイパスカット弁の開口面積が最小開口面積となるまで小さくなるように前記電磁比例弁を制御し、前記操作量検出装置で検出された操作量が、最大操作量であるときには、前記バイパスカット弁の開口面積が前記最小開口面積よりも大きい開口面積となるように、前記電磁比例弁を制御する。また、本発明の第三の態様による作業機械において、前記センタバイパスラインには、複数の前記流量制御弁が設けられ、前記制御装置は、前記複数の流量制御弁が複合操作されたときには、単独操作されたときよりも前記バイパスカット弁の開口面積が大きくなるように、前記電磁比例弁を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油圧アクチュエータの停止時のサージ圧の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る油圧ショベルが備える油圧システム(油圧駆動回路)について示す図である。
図3図3は、流量制御弁のセンタバイパス通路部及びメータイン通路部の開口特性について示す図である。
図4図4は、バイパスカット弁の開口特性について示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る油圧ショベルのコントローラによる電磁比例弁の制御電流値の演算処理について示すブロック図である。
図6図6は、バイパスカット弁の目標開口特性について示す図である。
図7図7は、第1実施形態の比較例に係る油圧ショベルにおいて、ブーム戻し操作を行ったときの各弁の開口面積及び作動油の圧力の時間変化を示すタイムチャートである。
図8図8は、第1実施形態に係る油圧ショベルにおいて、ブーム戻し操作を行ったときの各弁の開口面積及び作動油の圧力の時間変化を示すタイムチャートである。
図9図9は、第2実施形態に係る油圧ショベルが備える油圧システム(油圧駆動回路)について示す図である。
図10図10は、第2実施形態に係る油圧ショベルのコントローラによる電磁比例弁の制御電流値の演算処理について示すブロック図である。
図11図11は、バイパスカット弁の第1目標開口特性及び第2目標開口特性について示す図である。
図12図12は、第1実施形態に係る油圧ショベルにおいて、ブーム上げ操作を行ったときの各弁の開口面積及び作動油の圧力の時間変化を示すタイムチャートであり、(a)は作動油の温度Tが閾値T0以上である場合のタイムチャートであり、(b)は作動油の温度Tが閾値T0未満である場合のタイムチャートである。
図13図13は、第2実施形態に係る油圧ショベルにおいて、ブーム上げ操作を行ったときの各弁の開口面積及び作動油の圧力の時間変化を示すタイムチャートである。
図14図14は、第3実施形態に係る油圧ショベルが備える油圧システム(油圧駆動回路)について示す図である。
図15図15は、第3実施形態に係る油圧ショベルのコントローラによる電磁比例弁の制御電流値の演算処理について示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械について説明する。本実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベルである例について説明する。作業機械は、作業現場において、土木作業、建設作業、解体作業、浚渫作業等の作業を行う。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル100の側面図である。図1に示すように、油圧ショベル100は、機体105と、機体105に取り付けられる作業装置104と、を備える。機体105は、クローラ式の走行体102と、走行体102上に旋回可能に設けられた旋回体103と、を有する。走行体102は、左右一対のクローラを走行モータ102Aによって駆動することにより走行する。旋回体103は、旋回モータ103Aを有する旋回装置を介して走行体102に連結され、旋回モータ103Aによって駆動されて走行体102に対して回動する(旋回する)。
【0014】
旋回体103は、オペレータが搭乗する運転室118と、エンジン及びエンジンにより駆動される油圧ポンプ等の油圧機器が収容されるエンジン室と、を備える。エンジンは、油圧ショベル100の動力源であり、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。
【0015】
作業装置104は、旋回体103に取り付けられる多関節型の作業装置であって、複数の油圧アクチュエータ、及び複数の油圧アクチュエータにより駆動される複数の被駆動部材(フロント部材)を有する。作業装置104は、3つの被駆動部材(ブーム111、アーム112及びバケット113)が直列的に連結された構成である。ブーム111は、その基端部が旋回体103の前部に、ブームピンを介して回動可能に連結される。アーム112は、その基端部がブーム111の先端部に、アームピンを介して回動可能に連結される。バケット113は、アーム112の先端部に、バケットピンを介して回動可能に連結される。
【0016】
ブーム111は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)であるブームシリンダ111Aの伸縮動作によって回転駆動される。アーム112は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)であるアームシリンダ112Aの伸縮動作によって回転駆動される。バケット113は、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)であるバケットシリンダ113Aの伸縮動作によって回転駆動される。
【0017】
図2は、第1実施形態に係る油圧ショベル100が備える油圧システム(油圧駆動回路)について示す図である。なお、説明の簡略化のため、図2では、ブームシリンダ111Aの駆動に関わる部分のみを示し、その他の油圧アクチュエータの駆動に関わる部分は省略している。
【0018】
図2に示すように、油圧システムは、作動流体である作動油が貯留されるタンク4と、エンジン(不図示)によって駆動されタンク4から吸引した作動油を吐出するメインポンプ1及びパイロットポンプ9と、メインポンプ1から吐出された作動油によって駆動されるブームシリンダ111Aと、メインポンプ1とタンク4とを接続するセンタバイパスライン171と、センタバイパスライン171に設けられる流量制御弁130と、センタバイパスライン171における流量制御弁130の下流側に設けられるバイパスカット弁6と、バイパスカット弁6を制御するパイロット圧を生成する電磁比例弁7と、ブームシリンダ111Aを操作するための操作装置180と、油圧ショベル100の各部を制御する制御装置としてのコントローラ150と、流量制御弁130のパイロット受圧部136,137に作用するパイロット圧を検出する圧力センサ185A,185Bと、を備えている。センタバイパスライン171は、メインポンプ1から供給された作動油を、流量制御弁130のセンタバイパス通路部131を経由してタンク4に導く油路である。
【0019】
メインポンプ1は、吐出容量(押しのけ容積)を変更可能な可変容量型の油圧ポンプであり、パイロットポンプ9は、吐出容量が一定の固定容量型の油圧ポンプである。なお、メインポンプ1は、固定容量型の油圧ポンプであってもよい。
【0020】
流量制御弁(方向制御弁)130は、メインポンプ1からブームシリンダ111Aに供給される作動油の流れの方向及び流量を制御する。パイロット受圧部136及びパイロット受圧部137のそれぞれにタンク圧が作用している状態では、流量制御弁130は中立位置に位置する。流量制御弁130は、オープンセンタ型の制御弁であり、中立位置でメインポンプ1からの作動油をセンタバイパスライン171を通じてタンク4に導くセンタバイパス通路部131と、メインポンプ1から供給される作動油をブームシリンダ111Aに導くメータイン通路部132と、ブームシリンダ111Aから供給される作動油(戻り油)をタンク4に導くメータアウト通路部133と、を有する。
【0021】
流量制御弁130は、中立位置からの変位量(スプールストローク)に応じて、ブームシリンダ111Aへ供給される作動油の流量を制御する。流量制御弁130の中立位置からの変位量が大きくなるほど、ブームシリンダ111Aの速度は大きくなる。また、流量制御弁130が中立位置から一方に移動すると、ブームシリンダ111Aが伸長し、流量制御弁130が中立位置から他方に移動すると、ブームシリンダ111Aが収縮する。つまり、流量制御弁130は、ブームシリンダ111Aの駆動方向及び速度を制御する。
【0022】
操作装置180は、ブーム111(ブームシリンダ111A、流量制御弁130)を操作する操作装置であって、操作部材である操作レバー181と、操作レバー181の操作量に基づいて、流量制御弁130を制御するパイロット圧(以下、操作圧とも記す)を生成するブーム上げ用のパイロット弁182及びブーム下げ用のパイロット弁183とを有する。操作装置180は、操作レバー181の操作方向及び操作量に応じたパイロット圧(操作圧)をパイロット弁182,183で生成し、パイロット弁182,183で生成されたパイロット圧を流量制御弁130に直接供給する油圧パイロット式の操作装置である。操作レバー181は、例えば、運転席の右側に設けられ(図1参照)、前後方向に操作される。操作レバー181が後方に操作されると、ブーム111が上げ方向に動作する。操作レバー181が前方に操作されると、ブーム111が下げ方向に動作する。
【0023】
ブーム上げ用のパイロット弁182は、パイロットポンプ9から供給されるパイロット一次圧を減圧し、操作レバー181のブーム上げ方向の操作量(レバーストローク)に応じたパイロット圧(操作圧)を生成する。ブーム上げ用のパイロット弁182から出力された操作圧は、パイロット油路を介して流量制御弁130の一方(図示右側)のパイロット受圧部136に導かれ、流量制御弁130を図示左方向に駆動する。これにより、メインポンプ1から吐出された作動油が、流量制御弁130のメータイン通路部132を通じてブームシリンダ111Aのボトム側油室111bに供給されると共にロッド側油室111rの作動油が、流量制御弁130のメータアウト通路部133を通じてタンク4に排出される。その結果、ブームシリンダ111Aが伸長する。
【0024】
ブーム下げ用のパイロット弁183は、パイロットポンプ9から供給されるパイロット一次圧を減圧し、操作レバー181のブーム下げ方向の操作量(レバーストローク)に応じたパイロット圧(操作圧)を生成する。ブーム下げ用のパイロット弁183から出力された操作圧は、パイロット油路を介して流量制御弁130の他方(図示左側)のパイロット受圧部137に導かれ、流量制御弁130を図示右方向に駆動する。これにより、メインポンプ1から吐出された作動油が、流量制御弁130のメータイン通路部を通じてブームシリンダ111Aのロッド側油室111rに供給されると共にボトム側油室111bの作動油が、流量制御弁130のメータアウト通路部を通じてタンク4に排出される。その結果、ブームシリンダ111Aが収縮する。
【0025】
図3は、流量制御弁130のセンタバイパス通路部131の開口特性A1c及びメータイン通路部132の開口特性A2cについて示す図である。図3において、横軸はパイロット受圧部136に作用する操作圧Po(パイロット弁182により生成されるパイロット圧)を示し、縦軸はセンタバイパス通路部131の開口面積A1及びメータイン通路部132の開口面積A2を示している。操作圧Poは、流量制御弁130のストローク量に概ね対応している。なお、パイロット受圧部137の圧力は、最小圧力(タンク圧)である。
【0026】
図3に示すように、流量制御弁130が中立位置に位置しているとき、すなわち、パイロット受圧部136に作用する操作圧Poが最小圧力(タンク圧)であるときには、センタバイパス通路部131の開口面積A1は最大開口面積A1maxとなり、メータイン通路部132は全閉(すなわち、開口面積A2は0)となる。
【0027】
パイロット受圧部136に作用する操作圧Poが増加すると、流量制御弁130のストローク量が増加する。パイロット受圧部136に作用する操作圧Poが増加するほど、メータイン通路部132の開口面積A2が大きくなり、センタバイパス通路部131の開口面積A1は小さくなる。操作圧Poが後述する第2操作圧Po2以上になると、センタバイパス通路部131は全閉(すなわち、開口面積A1は0)となる。また、操作圧Poが、第2操作圧Po2よりも高い所定圧力以上になると、メータイン通路部132の開口面積A2は最大開口面積A2maxとなる(A2max=A1max)。このように、センタバイパス通路部131の操作圧Poに対する開口面積A1の変化と、メータイン通路部132の操作圧Poに対する開口面積A2の変化とは、逆の関係になっている。なお、図示しないが、メータアウト通路部133の開口特性は、メータイン通路部132の開口特性A2cと概ね同じである。
【0028】
図2に示すように、バイパスカット弁6は、センタバイパスライン171の開口を制御可能な油圧パイロット式の制御弁である。バイパスカット弁6は、電磁比例弁7により生成されるパイロット圧(2次圧)が作用するパイロット受圧部6aを有し、パイロット受圧部6aに作用するパイロット圧によって制御される。
【0029】
電磁比例弁7は、エンジン(不図示)により駆動されるパイロットポンプ9とバイパスカット弁6のパイロット受圧部6aとを結ぶパイロット油路に設けられている。電磁比例弁7は、パイロットポンプ9から供給されるパイロット一次圧を減圧し、コントローラ150からの制御電流に応じたパイロット圧を生成する。電磁比例弁7は、入力される制御電流の増加に応じて減圧度が小さくなる減圧弁である。このため、電磁比例弁7に入力される制御電流が増加すると、制御電流に応じて2次圧力(パイロット圧)が大きくなる。
【0030】
図4は、バイパスカット弁6の開口特性A3cについて示す図である。図4において、横軸はパイロット受圧部6aに作用するパイロット圧(電磁比例弁7によって生成されるパイロット圧)を示し、縦軸はバイパスカット弁6の開口面積A3を示している。図4に示すように、パイロット受圧部6aに作用するパイロット圧が最小圧力(タンク圧)であるときには、ばねの力によって、バイパスカット弁6が全開位置に位置する。パイロット受圧部6aに作用するパイロット圧が所定圧力Pp3以上になると、バイパスカット弁6は遮断位置に位置する。バイパスカット弁6が遮断位置に位置しているときには、センタバイパスライン171が遮断される(すなわち、開口面積A3は0となる)。パイロット受圧部6aに作用するパイロット圧Ppが増加するほど、バイパスカット弁6の開口面積A3は小さくなる。なお、本第1実施形態では、後述するように、油圧ショベル100の稼働中、バイパスカット弁6の開口面積A3は、操作圧Poの大きさに応じて、最小開口面積A3min(A3min>0)以上最大開口面積A3max以下の範囲で制御される(図6参照)。
【0031】
図2に示すように、圧力センサ185Aは、操作レバー181によりブーム上げ操作が行われたときにブーム上げ用のパイロット弁182から出力される操作圧Poを検出し、検出結果をコントローラ150に出力する。圧力センサ185Bは、操作レバー181によりブーム下げ操作が行われたときにブーム下げ用のパイロット弁183から出力される操作圧Poを検出し、検出結果をコントローラ150に出力する。圧力センサ185A,185Bで検出される操作圧Poは、操作レバー181の操作量と相関関係(比例関係)を有している。このため、圧力センサ185A,185Bは、操作装置180の操作量を検出する操作量検出装置としての機能を有する。
【0032】
コントローラ150は、圧力センサ185A,185Bで検出された操作圧Po(操作装置180の操作量に相当)に基づいて、電磁比例弁7を制御する制御装置である。コントローラ150は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ151、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ152、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ153、入力インタフェース154、出力インタフェース155及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラ150は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0033】
不揮発性メモリ152には、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ152は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。プロセッサ151は、不揮発性メモリ152に記憶されたプログラムを揮発性メモリ153に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入力インタフェース154、不揮発性メモリ152及び揮発性メモリ153から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
【0034】
入力インタフェース154は、入力された信号をプロセッサ151で演算可能なように変換する。また、出力インタフェース155は、プロセッサ151での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を電磁比例弁7等の装置に出力する。
【0035】
図5は、第1実施形態に係る油圧ショベル100のコントローラ150による電磁比例弁7の制御電流値の演算処理について示すブロック図であり、ブーム上げ操作が行われたときの演算処理について示す。図5に示すように、コントローラ150は、開口面積演算部161と、パイロット圧演算部162と、電流演算部163とを有する。開口面積演算部161、パイロット圧演算部162及び電流演算部163の機能は、不揮発性メモリ152に記憶されているプログラムがプロセッサ151によって実行されることにより発揮される。
【0036】
開口面積演算部161は、不揮発性メモリ152に予め記憶されている目標開口特性A3tcを参照し、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poに基づいて、バイパスカット弁6の開口面積A3の目標値である目標開口面積A3tを演算する。
【0037】
図6は、バイパスカット弁6の目標開口特性A3tcについて示す図である。なお、図6では、破線で流量制御弁130のセンタバイパス通路部131の開口特性A1cについても示している。図6に示すように、目標開口特性A3tcは、パイロット受圧部136に作用する操作圧Poに対するバイパスカット弁6の目標開口面積A3tの特性であり、テーブル形式で不揮発性メモリ152に記憶されている。
【0038】
目標開口特性A3tcで定められる操作圧Poと目標開口面積A3tの関係は以下のとおりである。操作圧Poが最小圧力(以下、最小操作圧とも記す)Pon以上第2操作圧Po2未満の範囲では、操作圧Poの増加に応じてバイパスカット弁6の目標開口面積A3tが最小開口面積A3minとなるまで小さくなる。具体的には、操作圧Poが最小操作圧Ponのとき(すなわち操作レバー181が中立位置にあり操作量が0のとき)には、目標開口面積A3tは最大開口面積A3maxである。操作圧Poが最小操作圧Pon以上第1操作圧Po1以下の範囲では、操作圧Poの増加に応じてバイパスカット弁6の目標開口面積A3tが連続的に小さくなり、操作圧Poが第1操作圧Po1のときに最小開口面積A3minとなる。また、操作圧Poが第1操作圧Po1以上第2操作圧Po2未満の範囲では、バイパスカット弁6の目標開口面積A3tは最小開口面積A3minである。
【0039】
操作圧Poが増加して第2操作圧Po2になると、バイパスカット弁6の目標開口面積A3tは、最小開口面積A3minから所定開口面積A30まで増加する。本第1実施形態では、操作圧Poが第2操作圧Po2以上最大操作圧Pox以下の範囲において、バイパスカット弁6の目標開口面積A3tは所定開口面積A30である。所定開口面積A30は、最小開口面積A3minよりも大きく、最大開口面積A3max以下の値である。
【0040】
図5に示すように、パイロット圧演算部162は、不揮発性メモリ152に予め記憶されている目標パイロット圧特性Cpを参照し、開口面積演算部161で演算された目標開口面積A3tに基づいて、電磁比例弁7で生成するパイロット圧Ppの目標値である目標パイロット圧Pptを演算する。目標パイロット圧特性Cpは、目標開口面積A3tが増加するほど目標パイロット圧Pptが減少する特性であり、テーブル形式で不揮発性メモリ152に記憶されている。
【0041】
電流演算部163は、不揮発性メモリ152に予め記憶されている制御電流特性Ciを参照し、パイロット圧演算部162で演算された目標パイロット圧Pptに基づいて、電磁比例弁7のソレノイドに供給する制御電流値Icを演算し、演算結果に応じた制御電流を電磁比例弁7に出力する。制御電流特性Ciは、目標パイロット圧Pptが増加するほど制御電流値Icが増加する特性である。
【0042】
本第1実施形態の主な動作について説明する。以下では、油圧ショベル100で実施されるクレーン作業(吊り荷作業)を例に説明する。クレーン作業では、油圧ショベル100のバケット113の背部に設けられたフックにワイヤーを掛けて吊り荷を吊り上げる。また、クレーン作業では、ブーム111の上げ動作及び下げ動作により、吊り荷の上下方向の移動を行う。ブーム111の上げ動作では、ブームシリンダ111Aのボトム側油室111bが負荷保持側となる。
【0043】
オペレータが、操作レバー181をブーム上げ側に操作すると、ブームシリンダ111Aが伸長し、ブーム111が上方向に回動する。その後、オペレータが、操作レバー181を中立位置に戻す戻し操作を行うと、ブームシリンダ111Aが減速し、停止する。
【0044】
本第1実施形態では、操作圧Poが最小操作圧Ponから流量制御弁130のセンタバイパス通路部131が全閉となる第2操作圧Po2までの領域では、センタバイパスライン171の開口面積は、流量制御弁130の開口面積とバイパスカット弁6の開口面積の合成開口面積(実効面積)となる。この合成開口面積は、センタバイパス通路部131の開口面積A1に比べて小さい。
【0045】
これにより、ブームシリンダ111Aの動作に必要なメインポンプ1の吐出圧力を確保しながら、センタバイパスライン171からタンク4に戻る作動油の流量を減少させることができる。その結果、エネルギーロスを低減することができ、燃費が向上する。また、良好な微操作性を得ることができる。
【0046】
本第1実施形態に係るコントローラ150は、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poが、最大操作圧Poxであるときには、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minよりも大きい所定開口面積A30となるように、電磁比例弁7を制御する。
【0047】
これにより、オペレータが、最大操作量まで操作レバー181をブーム上げ側に操作してから、操作レバー181を中立位置に戻す操作を行ったときに、ショックが発生することなく、滑らかにブームシリンダ111Aを減速させ、停止することができる。以下、本第1実施形態の構成によって、操作レバー181の戻し操作の際に、ショックが発生することなくブームシリンダ111Aの停止動作を行うことができる点について、本第1実施形態の比較例と比較して説明する。
【0048】
図7は、本第1実施形態の比較例に係る油圧ショベルにおいて、ブーム戻し操作を行ったときの各弁の開口面積及び作動油の圧力の時間変化を示すタイムチャートである。図8は、本第1実施形態に係る油圧ショベルにおいて、ブーム戻し操作を行ったときの各弁の開口面積及び作動油の圧力の時間変化を示すタイムチャートである。図7及び図8に示すタイムチャートは、最大操作量まで操作レバー181をブーム上げ側に操作してから、操作レバー181が中立位置に戻し操作された場合におけるタイムチャートである。なお、開口面積の変化を示す上側のタイムチャートでは、流量制御弁130のセンタバイパス通路部131の開口面積A1及びメータイン通路部132の開口面積A2並びにバイパスカット弁6の開口面積A3の時間変化を示している。また、圧力の変化を示す下側のタイムチャートでは、メインポンプ1の吐出圧(ポンプ圧とも記す)Ppu、ブームシリンダ111Aのボトム側油室111bの作動油の圧力(ボトム圧とも記す)Pb、及びブームシリンダ111Aのロッド側油室111rの作動油の圧力(ロッド圧とも記す)Prの時間変化を示している。
【0049】
図7及び図8には、タイムチャートとともに、タイムチャートの説明のための簡略的な油圧回路図と、バイパスカット弁6の目標開口特性図が示されている。図7に示すように、本第1実施形態の比較例に係る油圧ショベルは、本第1実施形態に係る油圧ショベル100と同様の構成を有しているが、不揮発性メモリ152に記憶されている目標開口特性A3tccが本第1実施形態で説明した目標開口特性A3tcと異なっている。具体的には、比較例に係る目標開口特性A3tccは、操作圧Poが第2操作圧Po2以上最大操作圧Pox以下の範囲で、目標開口面積Atが最小開口面積A3minとなる特性である。
【0050】
図7に示すように、本実施形態の比較例に係る油圧ショベルでは、操作レバー181をブーム上げ側の最大操作量まで操作している状態から戻し操作を開始すると(時点t11)、流量制御弁130が中立位置に向かって動作する戻り動作が開始される。これにより、時点t11からメータイン通路部132の開口面積A2が減少するとともにセンタバイパス通路部131の開口面積A1が増加する。
【0051】
バイパスカット弁6は、流量制御弁130のセンタバイパス通路部131が開き始める時点t11から遅れ時間Δt1だけ遅れてから開き始める。このように、流量制御弁130とバイパスカット弁6との応答性に違いがでる理由について説明する。流量制御弁130は、操作レバー181の戻し操作によりパイロット弁182から出力されるパイロット圧(操作圧)が低下することにより戻り動作を開始する。
【0052】
これに対してバイパスカット弁6は、電磁比例弁7から出力されるパイロット圧が低下することにより戻り動作を開始する。電磁比例弁7は、コントローラ150から出力される制御電流に基づいて制御される。コントローラ150は、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poが低下したことを検出してから、操作圧Poに応じた制御電流を電磁比例弁7に出力する。
【0053】
このように、バイパスカット弁6の動作は、コントローラ150によって制御される。このため、コントローラ150が、操作圧Poの検出結果を取得してから電磁比例弁7に制御電流を出力するまでの通信、演算処理に要する時間が、応答遅れの原因の一つとして挙げられる。また、電磁比例弁7に制御電流が入力されてからバイパスカット弁6のパイロット受圧部6aに作用するパイロット圧が変化するまでの時間も応答遅れの原因の一つとして挙げられる。これに対して、流量制御弁130は、コントローラ150によって制御されず、オペレータの操作に応じて操作装置180から出力される操作圧によって直接的に制御される。このことから、バイパスカット弁6の動作は、流量制御弁130の動作よりも遅れる。
【0054】
流量制御弁130の戻り動作に比べてバイパスカット弁6の動作が遅れると、流量制御弁130のセンタバイパス通路部131の開口面積A1が増加したとしてもバイパスカット弁6が閉じられているため、ポンプ圧Ppuが上昇する。ポンプ圧Ppuが上昇すると、メータイン通路部132でメインポンプ1と繋がっているブームシリンダ111Aのボトム側油室111bの作動油の圧力であるボトム圧Pbも高くなる。ボトム圧Pbが高くなると、ブームシリンダ111Aを減速させるブレーキ力(ロッド圧Pr×ロッド側油室111rの受圧面積-ボトム圧Pb×ボトム側油室111bの受圧面積)が弱くなる。このため、比較例では、ブームシリンダ111Aの速度が速い状態のまま、メータイン通路部132及びメータアウト通路部133が閉じられることになり、ロッド側油室111rにサージ圧が発生する(時点t12)。
【0055】
ブームシリンダ111Aを停止する際にサージ圧が発生すると、作業装置104に衝撃、振動が発生することになるため、作業装置104の位置決めが困難になる。また、作業装置104に衝撃、振動が発生すると、オペレータの疲労の増大にもつながる。このため、サージ圧の発生は、油圧ショベル100による作業の効率の低下を招くおそれがある。
【0056】
これに対して、本第1実施形態では、上述したように、コントローラ150は、操作圧が第2操作圧Po2以上になると、バイパスカット弁6の開口面積A3が所定開口面積A30となるように、電磁比例弁7を制御する。したがって、本第1実施形態では、図8に示すように、操作レバー181をブーム上げ側の最大操作量まで操作している状態では、バイパスカット弁6の開口面積A3が所定開口面積A30となっている。
【0057】
この状態から、操作レバー181の戻し操作が行われたときには(時点t21)、既にバイパスカット弁6が開いているため、メインポンプ1から吐出された作動油をタンク4へ逃がすことができる。これにより、ポンプ圧Ppu及びボトム圧Pbが上昇することを防止することができ、ブレーキ力が適切にブームシリンダ111Aに作用するため、ブームシリンダ111Aは滑らかに減速し、停止する。
【0058】
このように、本第1実施形態では、流量制御弁130が戻り動作を開始する時点t21からバイパスカット弁6が開き始めるまで(バイパスカット弁6の開口面積A3が増加し始めるまで)に遅れ時間Δt2が発生するが、予め、バイパスカット弁6を開いておくことで、ロッド側油室111rにサージ圧が発生することを防止することができる。つまり、本第1実施形態では、作業装置104に衝撃、振動が発生することを防止することができるので、作業装置104の位置決めを容易に行うことができる。また、本第1実施形態では、作業装置104に衝撃、振動が発生することを防止することができるので、オペレータの疲労を軽減することができる。その結果、油圧ショベル100による作業の効率を向上することができる。
【0059】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0060】
(1)油圧ショベル(作業機械)100は、タンク4から吸引した作動油を吐出するメインポンプ(ポンプ)1と、メインポンプ1から吐出された作動油によって駆動されるブームシリンダ(油圧アクチュエータ)111Aと、中立位置でメインポンプ1からの作動油をタンク4に導くセンタバイパス通路部131を有し、中立位置からの変位量に応じてブームシリンダ111Aへ供給される作動油の流量を制御する流量制御弁130と、メインポンプ1から供給された作動油を、流量制御弁130のセンタバイパス通路部131を経由してタンク4に導くセンタバイパスライン171と、センタバイパスライン171における流量制御弁130の下流側に設けられセンタバイパスライン171の開口を制御するバイパスカット弁6と、バイパスカット弁6を制御するパイロット圧を生成する電磁比例弁7と、ブームシリンダ111Aを操作するための操作装置180と、操作装置180の操作量に基づいて、流量制御弁130を制御する操作圧(パイロット圧)を生成するパイロット弁182と、操作装置180の操作圧(操作量)を検出する圧力センサ(操作量検出装置)185Aと、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poに基づいて、電磁比例弁7を制御するコントローラ(制御装置)150と、を備える。
【0061】
コントローラ150は、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poが、最小操作圧Pon以上第2操作圧Po2未満の範囲では、操作圧Poの増加に応じてバイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minとなるまで小さくなるように電磁比例弁7を制御する。これにより、メインポンプ1のエネルギーロスが低減され、燃費が向上する。また、良好な微操作性を得ることができる。
【0062】
コントローラ150は、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poが、最大操作圧Poxであるときには、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minよりも大きい開口面積(所定開口面積A30)となるように、電磁比例弁7を制御する。これにより、ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)111Aの停止時のサージ圧の発生を防止することができる。その結果、油圧ショベル100の作業効率を向上することができる。
【0063】
(2)流量制御弁130のセンタバイパス通路部131は、操作圧Poが第2操作圧Po2未満の範囲では操作圧Poが増加するほど開口面積A1が小さくなり、第2操作圧Po2で全閉となる開口特性A1cを有する。コントローラ150は、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poが、第2操作圧Po2以上最大操作圧Pox以下であるときに、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minから増加するように電磁比例弁7を制御する。これにより、操作圧Poが、第2操作圧Po2未満でバイパスカット弁6の開口面積A3を最小開口面積A3minから増加させる場合に比べて、エネルギーロスを低減することができる。なお、操作圧Poが第2操作圧Po2であるときのバイパスカット弁6の目標開口面積A3tを所定開口面積A30に設定することにより、バイパスカット弁6の開き遅れを効果的に防止することができる。
【0064】
<第2実施形態>
図9から図13を参照して、第2実施形態に係る油圧ショベル200について説明する。なお、図中、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。図9は、図2と同様の図であり、第2実施形態に係る油圧ショベル200が備える油圧システム(油圧駆動回路)について示す図である。図9に示すように、第2実施形態に係る油圧ショベル200は、第1実施形態に係る油圧ショベル100と同様の構成に加え、バイパスカット弁6を通過する作動油の温度を検出する温度センサ286を備えている。
【0065】
本実施形態では、温度センサ286は、メインポンプ1によって吸い上げられる作動油が貯留されるタンク4内の作動油の温度を検出する。なお、温度センサ286の設置場所は、タンク4に限られない。
【0066】
図10は、図5と同様の図であり、第2実施形態に係る油圧ショベル200のコントローラ250による電磁比例弁7の制御電流値の演算処理について示すブロック図である。図10に示すように、コントローラ250は、第1開口面積演算部261Aと、第2開口面積演算部261Bと、選択部264と、パイロット圧演算部162と、電流演算部163と、を有する。第1開口面積演算部261Aは、第1実施形態で説明した開口面積演算部161と同様の機能を有する。第1開口面積演算部261Aは、第1目標開口特性A3acを参照し、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poに基づいて、バイパスカット弁6の目標開口面積A3tを演算する。
【0067】
第2開口面積演算部261Bは、第1目標開口特性A3acとは異なる第2目標開口特性A3bcを参照し、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poに基づいて、バイパスカット弁6の目標開口面積A3tを演算する。図11は、バイパスカット弁6の第1目標開口特性A3ac及び第2目標開口特性A3bcについて示す図である。第1目標開口特性A3ac及び第2目標開口特性A3bcは、テーブル形式で不揮発性メモリ152に記憶されている。図11では、細い実線で第1目標開口特性A3acについて示し、太い実線で第2目標開口特性A3bcについて示している。なお、図11では、破線で流量制御弁130のセンタバイパス通路部131の開口特性A1cについても示している。第1目標開口特性A3acは、第1実施形態で説明した目標開口特性A3tcと同じ特性であるので、説明を省略する。
【0068】
第2目標開口特性A3bcで定められる操作圧Poと目標開口面積A3tの関係は以下のとおりである。操作圧Poが最小操作圧Ponのときには、目標開口面積A3tは最大開口面積A3maxである。操作圧Poが最小操作圧Pon以上第2操作圧Po2未満の範囲では、操作圧Poの増加に応じてバイパスカット弁6の目標開口面積A3tが最小開口面積A3min2となるまで連続的に小さくなる。なお、第2目標開口特性A3bcにおける最小開口面積A3min2は、第1目標開口特性A3acにおける最小開口面積A3minよりも大きい。
【0069】
操作圧Poが第2操作圧Po2以上では、バイパスカット弁6の目標開口面積A3tは、最小開口面積A3min2よりも大きい所定開口面積A30となる。なお、操作圧Poが最小操作圧Pon以上第3操作圧Po3未満の範囲における操作圧Poに対する目標開口面積A3tの変化率(傾き)と、第3操作圧Po3以上第2操作圧Po2未満の範囲における操作圧Poに対する目標開口面積A3tの変化率(傾き)とは異なっている。なお、各操作圧の大小関係は、Pon<Po3<Po1<Po2<Poxである。
【0070】
操作圧Poが第3操作圧Po3以上第2操作圧Po2未満の範囲において、第2目標開口特性A3bcで定められる目標開口面積A3tは、第1目標開口特性A3acで定められる目標開口面積A3tよりも大きい。
【0071】
図10に示すように、選択部264は、温度センサ286で検出された作動油の温度Tが、閾値T0以上であるか否かを判定する。閾値T0は、作動油が低温状態であるか否かを判定するための閾値であり、予め不揮発性メモリ152に記憶されている。選択部264は、作動油の温度Tが閾値T0以上であると判定した場合、第1開口面積演算部261Aで演算された目標開口面積A3tを選択し、パイロット圧演算部162に出力する。選択部264は、作動油の温度Tが閾値T0未満であると判定した場合、第2開口面積演算部261Bで演算された目標開口面積A3tを選択し、パイロット圧演算部162に出力する。なお、これに限られるものではなく、例えば、操作圧と作動油温とを入力し3次元テーブルとして目標開口面積A3tを選択するようにしてもよい。
【0072】
パイロット圧演算部162は、選択部264で選択された目標開口面積A3tに基づいて、目標パイロット圧Pptを演算する。電流演算部163は、パイロット圧演算部162で演算された目標パイロット圧Pptに基づいて制御電流値Icを演算し、演算結果に応じた制御電流を電磁比例弁7に出力する。
【0073】
本第2実施形態の主な動作について説明する。以下では、油圧ショベル200で実施されるクレーン作業(吊り荷作業)を例に説明する。オペレータが、操作レバー181をブーム上げ側に操作すると、ブームシリンダ111Aが伸長し、ブーム111が上方向に回動する。オペレータは、操作レバー181の操作量を徐々に増加させることにより(微操作を行うことにより)、吊り荷が作業装置104によってスムーズに持ち上げられる。
【0074】
ここで、第1実施形態に係る油圧ショベル100では、作動油の温度Tが低温の状態であると、流量制御弁130のセンタバイパス通路部131及びバイパスカット弁6を通過する作動油の圧力損失が大きくなることに起因して、ブームシリンダ111Aをスムーズに動作させることができないおそれがある。
【0075】
これに対して、本第2実施形態では、コントローラ150が、温度センサ286で検出された作動油の温度Tが低いとき(T<T0)には、高いとき(T≧T0)よりもバイパスカット弁6の開口面積A3が大きくなるように、電磁比例弁7を制御する。
【0076】
これにより、例えば、オペレータが、操作レバー181をブーム上げ側に操作したときに、ショックが発生することなく、滑らかにブームシリンダ111Aを動作させることができる。以下、本第2実施形態の構成によって、ブーム上げ操作の際に、ショックが発生することなくブームシリンダ111Aを動作させることができる点について、第1実施形態と比較して説明する。
【0077】
図12(a)及び図12(b)は、第1実施形態に係る油圧ショベル100において、ブーム上げ操作を行ったときの各弁の開口面積及び作動油の圧力の時間変化を示すタイムチャートである。図12(a)は作動油の温度Tが閾値T0以上である場合のタイムチャートであり、図12(b)は作動油の温度Tが閾値T0未満である場合のタイムチャートである。図13は、本第2実施形態に係る油圧ショベル200において、ブーム上げ操作を行ったときの各弁の開口面積及び作動油の圧力の時間変化を示すタイムチャートである。図12(a)、図12(b)及び図13に示すタイムチャートは、操作レバー181を中立位置からブーム上げ側に操作した場合におけるタイムチャートである。なお、開口面積の変化を示す上側のタイムチャートでは、流量制御弁130のセンタバイパス通路部131の開口面積A1及びメータイン通路部132の開口面積A2並びにバイパスカット弁6の開口面積A3の時間変化を示している。また、圧力の変化を示す下側のタイムチャートでは、ポンプ圧Ppu、ブームシリンダ111Aのボトム圧Pb、及びブームシリンダ111Aのロッド圧Prの時間変化を示している。
【0078】
図12(a)に示すように、第1実施形態では、作動油の温度Tが所定の温度T0以上である場合には、操作レバー181を中立位置からブーム上げ側に操作を開始すると(時点t31)、流量制御弁130が中立位置から変位する。これにより、時点t31からセンタバイパス通路部131の開口面積A1及びバイパスカット弁6の開口面積A3が徐々に減少する。また、メータイン通路部132が時点t32から開き始め、操作量の増加に応じて、メータイン通路部132の開口面積A2が増加する。
【0079】
作動油の温度Tが所定の温度T0以上である場合には、時点t31からポンプ圧Ppuが緩やかに上昇する。ポンプ圧Ppuは、メータイン通路部132が開き始める時点t32の直前にボトム圧Pbを超える。このように、メータイン通路部132が開く際のポンプ圧ppをボトム圧Pbに合わせることにより、スムーズにブームシリンダ111Aの動作を開始させることができる。したがって、ブーム111をゆっくりと動作させて吊り荷を上昇させることができる。
【0080】
しかしながら、図12(b)に示すように、作動油の温度Tが所定温度T0よりも低くなると、作動油の粘性(粘度)が増加するため、作動油が流量制御弁130のセンタバイパス通路部131及びバイパスカット弁6を通過する際の圧力損失が大きくなる。このため、操作レバー181を中立位置からブーム上げ側に操作を開始した時点t41からポンプ圧Ppuが急上昇する。つまり、ポンプ圧Ppuの上昇率が、作動油の温度が高いとき(T≧T0)に比べて大きくなる。その結果、作動油の温度Tが所定温度T0よりも低いときには、所定温度T0よりも高いときに比べて、ブーム上げ動作を行う場合において、ブームシリンダ111Aのボトム側油室111bに流入する作動油の圧力(すなわち、ボトム圧Pb)が必要以上に高くなる。その結果、ブームシリンダ111Aが急に動作することに起因して、ショックが発生するおそれがある。このように、作動油の温度Tが低い場合には、微操作性が悪化し、作業装置104の位置決めが困難になる。また、作業装置104が急に動作を開始すると(動作開始時にショックが発生すると)、オペレータの疲労の増大にもつながる。このため、作業装置104の急な動作は、油圧ショベル100による作業の効率の低下を招くおそれがある。
【0081】
これに対して、本第2実施形態では、上述したように、コントローラ250は、作動油の温度Tが閾値T0未満のときには、作動油の温度Tが閾値T0以上のときよりもバイパスカット弁6の開口面積A3が大きくなるように、電磁比例弁7を制御する。したがって、本第2実施形態では、図13に示すように、操作レバー181を中立位置からブーム上げ側に操作を開始した時点t51からセンタバイパス通路部131の開口面積A1及びバイパスカット弁6の開口面積A3が減少するが、時点t52においてバイパスカット弁6の開口面積A3の減少率が小さくなる。時点t52は、メータイン通路部132が開き始める時点よりも前の時点である。時点t52からセンタバイパス通路部131が全閉となる時点t53まで、作動油の温度Tが閾値T0未満のときのバイパスカット弁6の開口面積A3は、作動油の温度Tが閾値T0以上のときの開口面積A3よりも大きくなる。これにより、作動油が流量制御弁130のセンタバイパス通路部131及びバイパスカット弁6を通過する際の圧力損失が低下するため、ポンプ圧Ppuの急な上昇が防止される。その結果、ボトム圧Pbの急な上昇も防止される。
【0082】
以上のとおり、本第2実施形態によれば、作動油の温度が低い場合において、作業装置104が急に動作を開始することを防止することができるので、作業装置104の位置決めを容易に行うことができる。また、本第2実施形態では、作動油の温度が低い場合において、作業装置104が急に動作を開始することを防止することができるので、オペレータの疲労を軽減することができる。その結果、油圧ショベル200による作業の効率を向上することができる。
【0083】
<第3実施形態>
図14及び図15を参照して、第3実施形態に係る油圧ショベル300について説明する。なお、図中、第2実施形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。図14は、図2及び図9と同様の図であり、第3実施形態に係る油圧ショベル300が備える油圧システム(油圧駆動回路)について示す図である。
【0084】
図14に示すように、第3実施形態に係る油圧ショベル300は、センタバイパスライン171に、複数の流量制御弁130A,130Bが設けられている。タンデム接続される流量制御弁130A及び流量制御弁130Bは、第1実施形態で説明した流量制御弁130と同様の構成である。流量制御弁130Aは、ブームシリンダ111Aに供給される作動油の流れの方向及び流量を制御し、流量制御弁130Bは、アームシリンダ112Aに供給される作動油の流れの方向及び流量を制御する。
【0085】
油圧ショベル300は、アームシリンダ112Aを操作するための操作装置380と、流量制御弁130Bのパイロット受圧部136,137に作用するパイロット圧を検出する圧力センサ385A,385Bと、を備えている。
【0086】
操作装置380は、アーム112(アームシリンダ112A、流量制御弁130B)を操作する操作装置であって、操作部材である操作レバー381と、操作レバー381の操作量に基づいて、流量制御弁130Bを制御するパイロット圧(操作圧)を生成するアームクラウド用のパイロット弁382及びアームダンプ用のパイロット弁383とを有する。操作装置380は、操作レバー381の操作方向及び操作量に応じたパイロット圧(操作圧)をパイロット弁382,383で生成し、パイロット弁382,383で生成されたパイロット圧を流量制御弁130Bに直接供給する油圧パイロット式の操作装置である。操作レバー381は、例えば、運転席の左側に設けられ(図1参照)、左右方向に操作される。操作レバー381が左方に操作されると、アームダンプ動作が行われる。アームダンプ動作とは、アーム112の先端が機体105から離れるようにアーム112が回動する動作である。操作レバー381が右方に操作されると、アームクラウド動作が行われる。アームクラウド動作とは、アーム112の先端が機体105に近づくようにアーム112が回動する動作である。
【0087】
圧力センサ385Aは、操作レバー381によりアームクラウド操作が行われたときにアームクラウド用のパイロット弁382から出力される操作圧Poを検出し、検出結果をコントローラ350に出力する。圧力センサ385Bは、操作レバー381によりアームダンプ操作が行われたときにアームダンプ用のパイロット弁383から出力される操作圧Poを検出し、検出結果をコントローラ350に出力する。
【0088】
操作レバー181及び操作レバー381により複数の流量制御弁130A,130Bの複合操作が行われた場合、単独操作が行われた場合に比べて、センタバイパスライン171の開口面積(合成開口面積)が絞られる。このため、タンデム接続される複数の流量制御弁130A,130Bのうち、センタバイパスライン171の上流側の流量制御弁130Aから作動油が供給されるブームシリンダ111Aの供給側圧力が必要以上に高くなる。このため、第2実施形態で説明した作動油の温度が低温状態のときと同様、ブームシリンダ111Aの動作開始時にショックが発生するおそれがある。
【0089】
そこで、本第3実施形態では、コントローラ350は、複数の流量制御弁130A,130Bが複合操作されたときには、単独操作されたときよりもバイパスカット弁6の開口面積A3が大きくなるように、電磁比例弁7を制御する。
【0090】
図15は、図5及び図10と同様の図であり、第3実施形態に係る油圧ショベル300のコントローラ350による電磁比例弁7の制御電流値の演算処理について示すブロック図である。図15に示すように、コントローラ350は、第2実施形態で説明した選択部264に代えて、選択部364を有している。選択部364は、圧力センサ185A,185B,385A,385Bで検出された操作圧Poに基づいて、流量制御弁130A及び流量制御弁130Bが同時に操作されている複合操作状態であるか否かを判定する。
【0091】
選択部364は、圧力センサ185A,185Bで検出された操作圧Poのいずれか一方が閾値Po0以上であり、かつ、圧力センサ385A,385Bで検出された操作圧のいずれか一方が閾値Po0以上である場合、複合操作状態であると判定し、それ以外の場合には複合操作状態でないと判定する。閾値Po0は、操作装置180,380が操作されているか否かを判定するための閾値であり、予め定められ不揮発性メモリ152に記憶されている。選択部364は、複合操作状態でない(すなわち単独操作状態である)と判定した場合、第1開口面積演算部261Aで演算された目標開口面積A3tを選択し、パイロット圧演算部162に出力する。選択部364は、複合操作状態であると判定した場合、第2開口面積演算部261Bで演算された目標開口面積A3tを選択し、パイロット圧演算部162に出力する。なお、これに限られるものではなく、例えば、操作装置180から出力される操作圧と、操作装置380から出力される操作圧とを入力し3次元テーブルとして目標開口面積A3tを選択するようにしてもよい。
【0092】
このように第3実施形態では、センタバイパスライン171に複数の流量制御弁130A,130Bが設けられている。コントローラ350は、複数の流量制御弁130A,130Bが複合操作されたときには、単独操作されたときよりもバイパスカット弁6の開口面積A3が大きくなるように、電磁比例弁7を制御する。
【0093】
したがって、本第3実施形態によれば、複数の流量制御弁130A,130Bが複合操作された場合において、作業装置104が急に動作を開始することを防止することができるので、作業装置104の位置決めを容易に行うことができる。また、本第3実施形態では、複数の流量制御弁130A,130Bが複合操作された場合において、作業装置104が急に動作を開始することを防止することができるので、オペレータの疲労を軽減することができる。その結果、油圧ショベル300による作業の効率を向上することができる。
【0094】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0095】
<変形例1>
上記第1実施形態では、コントローラ150は、圧力センサ185Aで検出された操作圧Poが、第2操作圧Po2であるときに、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minから増加するように電磁比例弁7を制御する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0096】
<変形例1-1>
コントローラ150は、操作圧Poが第2操作圧Po2よりも大きいときに、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minから増加するように電磁比例弁7を制御してもよい。上述したように、操作圧Poが、第2操作圧Po2以上最大操作圧Pox以下であるときに、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minから増加するように電磁比例弁7を制御することにより、エネルギーロスを低減することができる。
【0097】
<変形例1-2>
コントローラ150は、操作圧Poが第2操作圧Po2未満のときに、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minから増加するように電磁比例弁7を制御してもよい。なお、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minから増加する操作圧Poは低いほどエネルギーロスが発生する。このため、バイパスカット弁6の開口面積A3が最小開口面積A3minから増加する操作圧Poは、高い方が(すなわち第2操作圧Po2に近い方が)好ましい。
【0098】
<変形例2>
上記第1実施形態では、操作装置180が、油圧パイロット式の操作装置である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。操作装置180は、電気式の操作装置であってもよい。電気式の操作装置の操作量は、操作レバーの回動角度を検出するポテンショメータ等の操作量検出装置によって検出される。コントローラ150は、操作量検出装置で検出された操作量に基づいて、電磁比例弁(パイロット弁)に制御電流を出力する。電磁比例弁(パイロット弁)は、パイロットポンプ9から供給されるパイロット一次圧を減圧してパイロット圧(操作圧)を生成し、生成したパイロット圧(操作圧)を流量制御弁130のパイロット受圧部136,137に出力する。このような構成では、バイパスカット弁6を制御する電磁比例弁7と、流量制御弁130を制御する電磁比例弁(パイロット弁)は、それぞれコントローラ150によって制御されるので、応答性に差が生じにくい。しかしながら、流量制御弁130のパイロット受圧部136と電磁比例弁(パイロット弁)とを接続するパイロット油路と、バイパスカット弁6と電磁比例弁7とを接続するパイロット油路との長さの違い、及び弁の特性の違い等により、バイパスカット弁6の動作が、流量制御弁130の動作に比べて遅れることもある。したがって、電気式の操作装置を有する油圧ショベルに対しても、上記実施形態で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0099】
<変形例3>
上記第1実施形態では、ブームシリンダ111Aにおけるサージ圧の発生を防止するための構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。アームシリンダ112A及びバケットシリンダ113Aにおけるサージ圧の発生も同様に防止することができる。
【0100】
<変形例4>
上記実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベル100である場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ等の種々の作業機械に本発明を適用することができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0102】
1…メインポンプ、4…タンク、6…バイパスカット弁、7…電磁比例弁、9…パイロットポンプ、100…油圧ショベル(作業機械)、111A…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、112A…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、113A…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)、130…流量制御弁、130A…流量制御弁、130B…流量制御弁、131…センタバイパス通路部、132…メータイン通路部、133…メータアウト通路部、150…コントローラ(制御装置)、161…開口面積演算部、162…パイロット圧演算部、163…電流演算部、171…センタバイパスライン、180…操作装置、181…操作レバー(操作部材)、182,183…パイロット弁、185A,185B…圧力センサ(操作量検出装置)、200…油圧ショベル(作業機械)、250…コントローラ(制御装置)、261A…第1開口面積演算部、261B…第2開口面積演算部、264…選択部、286…温度センサ、300…油圧ショベル(作業機械)、350…コントローラ(制御装置)、364…選択部、380…操作装置、381…操作レバー(操作部材)、382,383…パイロット弁、385A,385B…圧力センサ(操作量検出装置)、A1…センタバイパス通路部の開口面積、A1c…センタバイパス通路部の開口特性、A2…メータイン通路部の開口面積、A2c…メータイン通路部の開口特性、A3…バイパスカット弁の開口面積、A3ac…バイパスカット弁の第1目標開口特性、A3bc…バイパスカット弁の第2目標開口特性、A3tc…バイパスカット弁の目標開口特性
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15