(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】化粧料、加温使用用化粧料および美容方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/87 20060101AFI20240415BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240415BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240415BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240415BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240415BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/02
A61K8/73
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2023011969
(22)【出願日】2023-01-30
(62)【分割の表示】P 2019038193の分割
【原出願日】2019-03-04
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴裕
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240926(JP,A)
【文献】特開2005-289935(JP,A)
【文献】後居洋介,化粧品原料としてのセルロース繊維の研究,FRAGRANCE JOURNAL,日本,2016年,No.3,p.54-57
【文献】Super Aqua Pack,2014.08 [検索日2020.06.12],Mintel GNPD [online],インターネット:<URL:https://www.mintel.com>,Accession No.2628903
【文献】Better Tomorrow Cream,2015.07 [検索日2020.06.12],Mintel GNPD [online],インターネット:<URL:https://mintel.com>,Accession No.3284595
【文献】ADEKA NOL GT-730,2014.08.26 [検索日 2020.06.12],日本,ADEKA CORPORATION [online],インターネット :<URL:https://www.adeka.co.jp/chemical/catalog/pdf/adeka_gt730.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 34/00-37/00
A45D 44/00-44/22
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部を有する機器に使用する加温使用用化粧料であって、
30℃以上で構造変化する温度応答性高分子と、
70℃以下では構造変化しない高温安定性高分子と、
水と、
を含有
し、
前記前記温度応答性高分子が、(A)疎水変性ポリエーテルウレタンであり、かつ
前記高温安定性高分子が、(B)セルロースナノファイバーである、
加温使用用化粧料。
【請求項2】
前記温度応答性高分子の配合量が前記高温安定性高分子の配合量よりも多く、かつ全化粧料に対する前記高温安定性高分子の配合量が0.1質量%以上である請求項
1記載の加温使用用化粧料。
【請求項3】
前記(A)疎水変性ポリエーテルウレタンが、(PEG-240/デシルテトラデセス-/HDI)コポリマーである請求項
1または
2記載の加温使用用化粧料。
【請求項4】
前記(B)セルロースナノファイバーが、最大繊維径が1000nm以下である微細繊維状セルロースである請求項
1~3のいずれか一項記載の加温使用用化粧料。
【請求項5】
30~70℃の温度条件下で用いられる請求項1~
4いずれか1項記載の加温使用用化粧料。
【請求項6】
前記加熱部の熱源がヒータまたはペルチェ素子である請求項1~
5いずれか1項記載の加温使用用化粧料。
【請求項7】
前記機器が噴霧装置を具備する請求項1~
6いずれか1項記載の加温使用用化粧料。
【請求項8】
前記機器がプローブを具備する請求項1~
6いずれか1項記載の加温使用用化粧料。
【請求項9】
前記機器が前記加温使用用化粧料を収容するタンクを具備する請求項1~
6いずれか1項記載の加温使用用化粧料。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の加温使用用化粧料を40~70℃の温度範囲に前記加熱部で制御してミスト状で直接および/または間接的に皮膚に適用する美容方法。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の加温使用用化粧料を30~48℃の温度範囲に前記加熱部で制御して直接および/または間接的に皮膚に適用する美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性ポリエーテルウレタンおよびセルロースナノファイバーを含有する化粧料、温度応答性高分子と高温安定性高分子を含有する加温して使用する加温使用用化粧料、および美容方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧品には製剤の安定性や使用性の使い心地の向上を目的として水溶性増粘剤が配合されており、使用者の用途に合わせてその増粘剤の種類や配合量、組み合わせが調整されている。例えば、特許文献1にはセルロースナノクリスタルと、カルボキシビニルポリマー、メタクリル酸アルキル・アクリル酸コポリマー、増粘性多糖類といった水溶性高分子を含む化粧料が記載されている。
【0003】
一般的に増粘剤を配合すると、その化粧料の溶媒の揮発により増粘剤濃度が上昇する。このため、増粘剤に起因するべたつきが顕著に生じ、使用性が悪くなる。また、増粘剤の配合量を増やすと、一般的には化粧料のチクソトロピー性が増加するため、容器壁面への化粧料の付着増加により使用できる量の減少、ディスペンサによる吸い上げ不良などが生じる。特に、ディスペンサによる吸い上げの際には、化粧料が連続的に吸いあがらずに空気が混ざった断続的な吐出となるという問題が生じる。
【0004】
化粧料はボトルやチューブ、ジャー、ミストディスペンサー等といった様々な容器形態に収容されているが、水溶性増粘剤で調整された化粧品を開発するにあたっては、増粘剤の選定に加えて容器形態を考慮した設計が重要である。
【0005】
ところで、従来より、常温での化粧料の使用より、加温して使用する方が高い効果実感が得られることが明らかになり、加温して使用する化粧料(以下、加温使用用化粧料ともいう)が開発され始めている。加温使用用化粧料には、温度により物性が変化する性質を利用して、使用感を制御した温度応答性のある基剤が適している。
【0006】
しかしながら、単に従来の化粧料を加温して使用すると、化粧料の粘度が下がり使用中に垂れ落ちたり、分離する等の安定性に問題が生じる場合があり、使用者が満足できる使用条件を満たすには配合成分、特に化粧料の粘度を調整するための増粘剤を選定する必要がある。
【0007】
加温使用用化粧料としては、水溶性増粘剤より調整された化粧料が開発されており、例えば、特許文献2には、温度応答性高分子と水溶性増粘剤の組み合わせにより、使用感を調整した化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-48181号公報
【文献】特開2012-240926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は微細セルロースの凝集を抑制して均一な化粧料とするために、特定の水溶性高分子を採用したものであるが、容器壁面への化粧料の付着増加やディスペンサによる吸い上げ不良といった容器との関係で増粘剤は選択されていない。
一方、加温使用用化粧料の分野においては、温度応答性のある水溶性増粘剤と、その温度応答性を妨げずに高温安定性を向上させるという検討は何らなされていない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、第一に、乾燥の際に被膜性を有することで化粧料のべたつきをなくし、かつ、ディスペンサ作動時において連続的に吸いあがる化粧料を提供することを目的とするものである。
また、第二に、温度応答性を有しながら、高温安定性の高い加温使用用化粧料を提供することを目的とするものである。さらに、加温使用用化粧料を適用する美容方法を提供することも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の化粧料は、
(A)疎水変性ポリエーテルウレタンと、
(B)セルロースナノファイバーと、
(C)水と、
を含有する化粧料であって、
(A)疎水変性ポリエーテルウレタンと(B)セルロースナノファイバーの配合比率が、
(A)<(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が0.75質量%以下であり、
(A)=(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が1.75質量%以下であり、
(A)>(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が2質量%以下である。
【0012】
(A)疎水変性ポリエーテルウレタンは、(PEG-240/デシルテトラデセス―20/HDI)コポリマーであることが好ましい。なお、PEGはポリエチレングリコールの、HDIはヘキサメチレンジイソシアネートの略語である。
【0013】
(B)セルロースナノファイバーは、最大繊維径が1000nm以下である微細繊維状セルロースであることが好ましい。
【0014】
本発明の化粧料はディスペンサ容器に収容してなることが好ましい。
【0015】
本発明の加温使用用化粧料は、加熱部を有する機器に使用する加温使用用化粧料であって、
30℃以上で構造変化する温度応答性高分子と、
70℃以下では構造変化しない高温安定性高分子と、
水と、
を含有するものである。
【0016】
温度応答性高分子は(A)疎水変性ポリエーテルウレタンであり、高温安定性高分子は(B)セルロースナノファイバーであることが好ましい。
【0017】
温度応答性高分子の配合量は高温安定性高分子の配合量よりも多く、かつ全化粧料に対する高温安定性高分子の配合量が0.1質量%以上であることが好ましい。
【0018】
(A)疎水変性ポリエーテルウレタンは、(PEG-240/デシルテトラデセス―/HDI)コポリマーであることが好ましい。
【0019】
(B)セルロースナノファイバーは、最大繊維径が1000nm以下である微細繊維状セルロースであることが好ましい。
【0020】
本発明の加温使用用化粧料は、30~70℃の温度条件下で用いられることが好ましい。
【0021】
加熱部の熱源はヒータまたはペルチェ素子であることが好ましい。
【0022】
機器は噴霧装置を具備するものであってよい。
【0023】
機器はプローブを具備するものであってよい。
【0024】
機器は加温使用用化粧料を収容するタンクを具備するものであってよい。
【0025】
本発明の美容方法は上記の加温使用用化粧料を40~70℃の温度範囲に加熱部で制御してミスト状で直接および/または間接的に皮膚に適用するものである。
【0026】
本発明の美容方法は上記の加温使用用化粧料を30~48℃の温度範囲に加熱部で制御して直接および/または間接的に皮膚に適用するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の化粧料は、
(A)疎水変性ポリエーテルウレタンと、
(B)セルロースナノファイバーと、
(C)水と、
を含有する化粧料であって、
(A)疎水変性ポリエーテルウレタンと(B)セルロースナノファイバーの配合比率が、
(A)<(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が0.75質量%以下であり、
(A)=(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が1.75質量%以下であり、
(A)>(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が2質量%以下であるので、被膜性が付与されてべたつきがなくなり、かつ、ディスペンサ作動時において連続的に吸いあがるものとすることができる。
【0028】
本発明の加温使用用化粧料は、加熱部を有する機器に使用する加温使用用化粧料であって、
30℃以上で構造変化する温度応答性高分子と、
70℃以下では構造変化しない高温安定性高分子と、
水と、
を含有するものであるので、温度応答性を有しながら、高温安定性の高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】(A):(B)=100:0とした加温使用用化粧料の加温による弾性率とひずみの関係を示すグラフである。
【
図2】(A):(B)=75:25とした加温使用用化粧料の加温による弾性率とひずみの関係を示すグラフである。
【
図3】(A):(B)=50:50とした加温使用用化粧料の加温による弾性率とひずみの関係を示すグラフである。
【
図4】(A):(B)=25:75とした加温使用用化粧料の加温による弾性率とひずみの関係を示すグラフである。
【
図5】(A):(B)=0:100とした加温使用用化粧料の加温による弾性率とひずみの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、本発明の化粧料について説明する。本発明の化粧料は、
(A)疎水変性ポリエーテルウレタン(以下単に(A)ともいう)と、
(B)セルロースナノファイバー(以下単に(B)ともいう)と、
(C)水と、
を含有する化粧料であって、
(A)と(B)の配合比率が、
(A)<(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が0.75質量%以下であり、
(A)=(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が1.75質量%以下であり、
(A)>(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が2質量%以下である。
以下、各成分について説明する。
【0031】
(A)疎水変性ポリエーテルウレタン
(A)疎水変性ポリエーテルウレタンは下記式(I)で表される疎水変性ポリエーテルウレタンである。このコポリマーは会合性増粘剤で、温度応答性を有することが知られている。会合性増粘剤は、親水基部を骨格とし、末端に疎水性部分をもつコポリマーであり、水性媒体中でコポリマーの疎水性部分同士が会合し増粘作用を示すものをいう。このような会合性増粘剤は、水性媒体中でコポリマーの疎水性部分同士が会合し、親水部がループ状、ブリッジ状をなし、増粘作用を示す。
【0032】
【0033】
上記式(I)中、R1、R2およびR4は、それぞれ独立に炭素原子数2~4のアルキレン基、またはフェニルエチレン基を示す。好ましくは炭素原子数2~4のアルキレン基である。
R3はウレタン結合を有していてもよい炭素原子数1~10のアルキレン基を示す。
R5は炭素原子数8~36、好ましくは12~24の、直鎖、分岐または2級のアルキル基を示す。
mは2以上の数である。好ましくは2である。
hは1以上の数である。好ましくは1である。
kは1~500の数である。好ましくは100~300の数である。
nは1~200の数である。好ましくは10~100の数である。
【0034】
上記式(I)で表される疎水変性ポリエーテルウレタンは、例えば、R1-[(O-R2)k-OH]m(ここで、R1、R2、k、mは上記で定義したとおり)で表される1種または2種以上のポリエーテルポリオールと、R3-(NCO)h+1(ここで、R3、hは上記で定義したとおり)で表される1種または2種以上のポリイソシアネートと、HO-(R4-O)n-R5(ここで、R4、R5、nは上記で定義したとおり)で表される1種または2種以上のポリエーテルモノアルコールとを反応させることにより得る方法が好適例として挙げられる。
【0035】
この場合、式(I)中のR1~R5は、用いるR1-[(O-R2)k-OH]m、R3-(NCO)h+1、HO-(R4-O)n-R5により決定される。上記3者の仕込み比は、特に限定されるものでないが、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルモノアルコール由来の水酸基と、ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の比が、NCO/OH=0.8:1~1.4:1であるのが好ましい。
【0036】
上記式R1-[(O-R2)k-OH]mで表されるポリエーテルポリオール化合物は、m価のポリオールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキシド、スチレンオキシド等を付加重合することによりできる。
【0037】
ここでポリオールとしては、2~8価のものが好ましく、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタトリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール等の4価のアルコール;アドニット、アラビット、キシリット等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビット、マンニット、イジット等の6価アルコール;ショ糖等の8価アルコール等が挙げられる。
【0038】
また、付加させるアルキレンオキシド、スチレンオキシド等により、R2が決定されるが、特に入手が容易であり、優れた効果を発揮させるためには、炭素原子数2~4のアルキレンオキシドあるいはスチレンオキシドが好ましい。
【0039】
付加させるアルキレンオキシド、スチレンオキシド等は単独重合、2種類以上のランダム重合あるいはブロック重合であってよい。付加の方法は通常の方法であってよい。重合度kは1~500である。R2に占めるエチレン基の割合は、好ましくは全R2の50~100質量%である。
【0040】
R1-[(O-R2)k-OH]mの分子量は500~10万のものが好ましく、1000~5万のものが特に好ましい。
【0041】
上記式R3-(NCO)h+1で表されるポリイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されない。例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、フェニルメタンのジ-、トリ-、テトライソシアネート等が挙げられる。
【0042】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート、3-メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3-ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、2,7-ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
ビフェニルジイソシアネートとしては、例えば、ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
フェニルメタンのジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5,2’,5’-テトラメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシルビス(4-イソシオントフェニル)メタン、3,3’-ジメトキシジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、4,4’-ジエトキシジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチル-5,5’-ジメトキシジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジクロロジフェニルジメチルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ベンゾフェノン-3,3’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
フェニルメタンのトリイソシアネートとしては、例えば、1-メチルベンゼン-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゼン-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,7-ナフタレントリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、3-メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等が挙げられる。
【0048】
また、これらのポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)で用いられてもよく、また、アミンと反応させてビウレットとして用いてもよい。
【0049】
さらに、これらのポリイソシアネート化合物と、ポリオールを反応させたウレタン結合を有するポリイソシアネートも用いることができる。ポリオールとしては、2~8価のものが好ましく、前述のポリオールが好ましい。なお、R3-(NCO)h+1として3価以上のポリイソシアネートを用いる場合は、このウレタン結合を有するポリイソシアネートが好ましい。
【0050】
上記式HO-(R4-O)n-R5で表されるポリエーテルモノアルコールは、直鎖および分岐鎖または2級の1価アルコールのポリエーテルであれば特に限定されない。このような化合物は、直鎖および分岐鎖または2級の1価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキシド、スチレンオキシド等を付加重合することにより得ることができる。
【0051】
ここでいう直鎖アルコールとは、下記式(II)で表される。
R6-OH (II)
【0052】
また、ここでいう分岐鎖アルコールとは、下記式(III)で表される。
【化2】
【0053】
また、2級アルコールとは、下記式(IV)で表される。
【化3】
【0054】
したがって、R5は、上記式(II)~(IV)において水酸基を除いた基である。上記式(II)~(IV)においてR6、R7、R8、R10およびR11は炭化水素基またはフッ素炭素基であり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等である。
【0055】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イソステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-オクチルドデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-テトラデシルオクタデシル、モノメチル分岐-イソステアリル等が挙げられる。
【0056】
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。
【0057】
アルキルアリール基としては、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。
【0058】
シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0059】
上記式(III)において、R9は炭化水素基、またはフッ化炭素基であり、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基等である。
【0060】
また、R5は、炭化水素基またはフッ化炭素基であり、そのうちアルキル基であることが好ましく、さらにその合計の炭素原子数が8~36が好ましく、12~24が特に好ましい。
【0061】
また、付加させるアルキレンオキシド、スチレンオキシド等は、単独重合、2種以上のランダム重合あるいはブロック重合であってよい。付加の方法は通常の方法であってよい。重合度nは0~1000であり、好ましくは1~200、さらに好ましくは10~200が良い。また、R4に占めるエチレン基の割合が、好ましくは全R4の50~100質量%、さらに好ましくは、65~100質量%であると、本発明の目的に良好な会合性増粘剤が得られる。
【0062】
上記式(I)で表されるコポリマーを製造する方法としては、通常のポリエーテルとイソシアネートとの反応と同様にして、例えば、80~90℃で1~3時間加熱し、反応せしめて得ることができる。
【0063】
また、R1-[(O-R2)k-OH]mで表されるポリエーテルポリオール(a)と、R3-(NCO)h+1で表されるポリイソシアネート(b)と、HO-(R4-O)n-R5で表されるポリエーテルモノアルコール(c)とを反応させる場合には、式(I)の構造のコポリマー以外のものも副生することがある。例えば、ジイソシアネートを用いた場合、主生成物としては式(I)で表されるc-b-a-b-c型のコポリマーが生成するが、その他、c-b-c型、c-b-(a-b)x-a-b-c型等のコポリマーが副生することがある。この場合、特に式(I)型のコポリマーを分離することなく、式(I)型のコポリマーを含む混合物の状態で本発明に使用することができる。
【0064】
特に好ましい例として、INCI名称が「(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー(PEG-240/HDI COPOLYMER BISDECYLTETRADECETH-20 ETHER)」である疎水変性ポリエーテルウレタンが挙げられる。当該コポリマーは、商品名「アデカノールGT-700」として株式会社ADEKAから市販されている。
【0065】
(B)セルロースナノファイバー
セルロースナノファイバーは植物細胞壁由来のセルロース繊維をナノレベルにまで解繊した繊維を意味し、最大繊維径が1000nm以下である微細繊維状セルロースであることが好ましい。より詳細には、数平均繊維径が2~100nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6~2.2mmol/gである、微細なセルロース繊維であることが好ましい。これは、上記セルロース繊維が、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料を表面酸化し微細化した繊維であることを意味する。すなわち、天然セルロースの生合成の過程においては、ほぼ例外なくミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構成するが、上記ミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、その水酸基の一部が酸化され、アルデヒド基およびカルボキシル基に変換されているものである。
【0066】
ここで、セルロースナノファイバーを構成するセルロースがI型結晶構造を有することは、例えば、広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2シータ=14~17°付近と、2シータ=22~23°付近の2つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
【0067】
また、セルロースナノファイバーは、最大繊維径が1000nm以下で、かつ数平均繊維径が2~100nmであり、分散安定性の点から、好ましくは数平均繊維径が3~80nmである。すなわち、上記数平均繊維径が2nm以上であることで、分散媒体に溶解することをより抑制することができ、数平均繊維径が100nm以下とすることで、セルロース繊維の沈降を抑制して、セルロース繊維を配合することによる機能性を充分に発現させることができる。また、同様に、最大繊維径を1000nm以下とすることで、セルロース繊維の沈降を抑制して、セルロース繊維を配合することによる機能性を充分に発現させることができる。
【0068】
セルロースナノファイバーの数平均繊維径および最大繊維径は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、セルロース繊維に水を加え、セルロースの固形分を1質量%とする。これを、超音波ホモジナイザー,高圧ホモジナイザー,回転速度15,000rpm以上の能力を有するブレンダー等を用いて、分散させた後、凍結乾燥により試料を調製する。これを走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察し、得られた画像からセルロース繊維の数平均繊維径および最大繊維径を測定し算出することができる。
【0069】
セルロースナノファイバーは、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性されており、カルボキシル基の量が0.6~2.2mmol/gであることが好ましい。さらに、保形性能、分散安定性の点から、特に好ましくは0.6~2.0mmol/gの範囲である。すなわち、上記カルボキシル基量が0.6mmol/g以上であることで、セルロース繊維の分散安定性をより良好なものとし、沈降を抑制することができ、カルボキシル基量が2.2mmol/g以下であることで、水溶性を適性に保ってべたついた使用感を抑制することができる。
【0070】
セルロースナノファイバーのカルボキシル基量の測定は、例えば、電位差滴定により行うことができる。すなわち、乾燥させたセルロース繊維を水に分散させ、0.01Nの塩化ナトリウム水溶液を加えて、充分に撹拌してセルロース繊維を分散させる。つぎに、0.1Nの塩酸溶液をpH2.5~3.0になるまで加え、0.04Nの水酸化ナトリウム水溶液を毎分0.1mlの速度で滴下し、得られたpH曲線から過剰の塩酸の中和点と、このセルロース繊維由来のカルボキシル基の中和点との差から、カルボキシル基量を算出することができる。
【0071】
なお、カルボキシル基量の調整は、後述するように、セルロース繊維の酸化工程で用いる共酸化剤の添加量や反応時間を制御することにより行うことができる。
【0072】
セルロースナノファイバーは、セルロース繊維表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されていることが好ましい。このセルロース繊維表面上のグルコースユニットのC6位の水酸基のみが選択的にアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されているかどうかは、例えば、13C-NMRチャートにより確認することができる。すなわち、酸化前のセルロースの13C-NMRチャートで確認できるグルコース単位の1級水酸基のC6位に相当する62ppmのピークが、酸化反応後は消失し、代わりに178ppmにカルボキシル基に由来するピークが現れる。このようにして、グルコース単位のC6位水酸基のみがアルデヒド基およびカルボキシル基に酸化されていることを確認することができる。
【0073】
セルロースナノファイバーは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、針葉樹パルプ等の天然セルロースを、水に分散させてスラリー状としたものに、臭化ナトリウム、N-オキシラジカル触媒を加え、充分撹拌して分散・溶解させる。つぎに、次亜塩素酸水溶液等の共酸化剤を加え、pH10.5を保持するように0.5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しながらpH変化が見られなくなるまで反応を行なう。上記反応により得られたスラリーは未反応原料、触媒等を除去するために、水洗,濾過を行なうことにより精製し目的物とする、繊維表面が酸化された特定のセルロース繊維の水分散体を得ることができる。なお、化粧料としてより高い透明性が求められる場合、高圧ホモジナイザー,超高圧ホモジナイザー等の強力な分散力を有する分散装置を用いて処理することにより良好な透明性を持つ化粧料を得ることができる。
【0074】
上記N-オキシラジカル触媒としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)、4-アセトアミド-TEMPO等があげられる。上記N-オキシラジカル触媒の添加は、触媒量で充分であり、好ましくは0.1~4mmol/l、さらに好ましくは0.2~2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。
【0075】
また、上記共酸化剤としては、例えば、次亜ハロゲン酸またはその塩、亜ハロゲン酸またはその塩、過ハロゲン酸またはその塩、過酸化水素、過有機酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上を併せて用いられる。なかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。そして、上記次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属の存在下で反応を進めることが、反応速度の点において好ましい。上記臭化アルカリ金属の添加量は、上記N-オキシラジカル触媒に対して約1~40倍モル量、好ましくは約10~20倍モル量である。
【0076】
なお、セルロースナノファイバーは市販品を用いてもよく、例えば、商品名「レオクリスタC-2SP」として第一工業製薬株式会社から市販されているものを挙げることができる。
【0077】
(A)成分と(B)成分の配合比率は、(A)<(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が0.75質量%以下であり、(A)=(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が1.75質量%以下であり、(A)>(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が2質量%以下である。全化粧料に対する(A)+(B)の配合量がそれぞれ上記数値以下であることで、乾燥の際に被膜性が付与されることで化粧料のべたつきがなくなり、かつ、ディスペンサ作動時において連続的に吸いあがる化粧料とすることができる。
【0078】
(A)成分と(B)成分の配合比率は、(A)<(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が、より好ましくは0.01~0.75質量%の範囲であり、0.1~0.5質量%の範囲であることがより好ましい。(A)=(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が、より好ましくは0.02~1.75質量%の範囲であり、0.2~1.5質量%の範囲であることがより好ましい。(A)>(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が、より好ましくは0.02~2質量%の範囲であり、0.2~1.75質量%の範囲であることがより好ましい。
【0079】
本発明の化粧料はディスペンサ作動時において連続的に吸いあがるため、ディスペンサ容器に収容する態様として好適に用いることができる。なお、ディスペンサ容器は、容器を傾けることなく頭部に設けられた押釦を押圧操作することにより、容器の内容物を所定量ずつ取り出せるようにした容器である。
【0080】
続いて、本発明の加温使用用化粧料について説明する。本発明の加温使用用化粧料は、加熱部を有する機器に使用する加温使用用化粧料であって、
30℃以上で構造変化する温度応答性高分子と、
70℃以下では構造変化しない高温安定性高分子と、
水と、
を含有するものである。
以下、各成分について説明する。
【0081】
(30℃以上で構造変化する温度応答性高分子)
30℃以上で構造変化する温度応答性高分子(以下、単に温度応答性高分子ともいう)は、30℃以上の温度で高分子による構造体が膨潤収縮することを意味する。特に、高分子の分子内、あるいは分子間の疎水結合が強まりポリマー鎖が凝集する構造変化を起こす高分子を意味する。温度応答性高分子を含むことにより、加温による化粧料の粘度低下を起こすことができる。温度応答性高分子の構造変化する温度範囲は30℃以上80℃未満であるとより好ましい。
好ましくは、温度応答性高分子は(A)疎水変性ポリエーテルウレタンであり、その詳細は上記と同様である。
【0082】
(70℃以下では構造変化しない高温安定性高分子)
70℃以下では構造変化しない高温安定性高分子(以下、単に高温安定性高分子ともいう)は、70℃以下の温度で高分子による構造体が膨潤収縮しないことを意味する。特に、70℃以下の温度ではその分子内、あるいは分子間での凝集が起こらず構造変化をしない高分子を意味する。高温安定性高分子を含むことにより、加温による化粧料の粘度低下はなく、使用中に垂れ落ちたり、分離したりすることがない、安定性を確保することができる。高温安定性高分子の構造変化しない温度範囲は30℃以上70℃未満であることがより好ましい。
好ましくは、高温安定性高分子は(B)セルロースナノファイバーであり、その詳細は上記と同様である。
【0083】
温度応答性高分子と高温安定性高分子を併用することにより、加温前後でも高温安定性を担保しつつも温度応答する加温使用用化粧料を調整できる。特に、加温前では各々の高分子の物性が加算された状態であるが、加温後では高温安定性高分子の物性が主として発現される。そのため、加温による変化を付与しつつも、高温安定性を担保できる化粧料とすることができる。
【0084】
温度応答性高分子の配合量は高温安定性高分子の配合量よりも多く、かつ全化粧料に対する高温安定性高分子の配合量が0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.1~1質量%の範囲である。高温安定性高分子の配合量が0.1質量%以上であることで、高温安定性高分子を配合することによる増粘機構を充分に発現させることができる。
【0085】
本発明の加温使用用化粧料は、30~70℃の温度条件下、より好ましくは36~66℃の温度条件下で用いられることが好ましい。30~70℃の温度条件下で用いられることにより、化粧料の高い効果実感が得られることができる。また、本発明の加温使用用化粧料は温度応答性高分子と高温安定性高分子を併用しているので、加温しても化粧料が使用中に垂れ落ちることがなく、分離を抑制することができる。
【0086】
本発明の加温使用用化粧料を使用する機器の加熱部の熱源は、特に限定されるものではないが、ヒータまたはペルチェ素子等が好ましい。
【0087】
加温使用用化粧料を使用する機器は、特に限定されるものでないが、噴霧装置を具備するもの、例えば、容器の内部を大気圧に保持したままで噴霧可能なポンプ式ノズルを装着したディスペンサ式噴霧器や、噴射剤を容器内に充填するエアゾール式噴霧器、メッシュ孔を高周波数で振動させる超音波式噴霧器、液面から液柱を生成させる超音波式噴霧器、化粧料に別の液体を混合させる複流体混合式噴霧器(機器の内部、外部の混合を問わない)、静電パルスによる衝撃でミスト化させる静電式噴霧器、針先より空気流でミスト化させるエアブラシ式噴霧器等が挙げられる。また、エステティックサロンや美容医療分野、家庭用美容機器などとして用いられる皮膚への加温用温熱プローブを具備するもの、加温使用用化粧料を収容するタンクを具備するもの、また、そのタンクを加温する機器等が挙げられる。
【0088】
本発明の加温使用用化粧料は、上記した機器、具体的にはエステティックサロンや美容医療分野、家庭用美容機器で化粧料をミスト状で直接および/または間接的に皮膚に適用する場合に、化粧料を40~70℃の温度範囲に制御して用いる美容方法に適用することができる。また、本発明の加温使用用化粧料は、上記した機器、具体的には加温用温熱プローブにより化粧料を30~48℃の温度範囲に制御して直接および/または間接的に皮膚に適用する美容方法に用いることができる。
ここで、間接的とは、上記した機器や加温使用用化粧料を適用する場合に、それ以外の化粧料や化粧用具などを介して皮膚に適用することを意味し、例えば、コットンに加温後の加温使用用化粧料を含ませ肌に適用することが挙げられる。
【0089】
本発明の化粧料および加温使用用化粧料には通常化粧料に配合する成分を配合してもよく、水性成分、油性成分、粉末等が挙げられる。また、本発明の化粧料および加温使用用化粧料は水性成分を主の分散媒として構成し、乳化構造を有してもよい。
【0090】
水性成分としては、水や水溶性成分などが挙げられる。水溶性成分としては、例えば低級アルコール、保湿剤、水溶性高分子(天然、半合成、合成、無機)などが挙げられる。なお、水溶性高分子は増粘目的ではない物を指す。
【0091】
低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが例示される。
【0092】
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、エラスチン、アミノ酸、核酸、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イサイヨバラ抽出物、セイヨウノキギリソウ抽出物、メリロート抽出物などが例示される。なお、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドの略語である。
【0093】
天然の水溶性高分子としては、アラアビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリントガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系水溶性高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグリカン、ブルラン等の微生物系水溶性高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系水溶性高分子などが例示される。
【0094】
半合成水溶性高分子としては、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系水溶性高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系水溶性高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系水溶性高分子などが例示される。
【0095】
合成水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)等のビニル系水溶性高分子;ポリエチレングリコール20,000、同4,000,000、同600,000等のポリオキシエチレン系水溶性高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等の共重合系水溶性高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系水溶性高分子のほか、ポリエチレンイミン、カチオンポリマーなどが例示される。
【0096】
無機の水溶性高分子としては、ベントナイト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸などが例示される。
【0097】
粉末成分としては、疎水性粉末、親水性粉末のいずれも用いることができる。また、粉末自体が疎水性、親水性のもののみならず、粉末表面を疎水化、親水化の処理をしてもよい。
【0098】
粉末成分としては、例えばタルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末などの有機粉末や、トリメチルシルセスキオキサン粉末などのシリコーン粉末、窒化ホウ素等の無機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック、低次二酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、バルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;二酸化チタンコーテッドマイカ、二酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、二酸化チタンコーテッドタルク、着色二酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料等が挙げられる。
【0099】
これら粉末成分を疎水化処理する方法としては、疎水化処理方法としては、撥水性を付与できる方法であればいかなるものでもよく、その方法は問わないが、例えば気相法、液相法、オートクレーブ法、メカノケミカル法等、通常の表面処理方法を用いることができる。疎水化処理剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸デキストリン処理粉末、トリメチルシロキシ珪酸処理粉末、フッ素変性トリメチルシロキシ珪酸処理粉末、メチルフェニルシロキシ珪酸処理粉末、フッ素変性メチルフェニルシロキシ珪酸処理粉末、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の低粘度~高粘度油状ポリシロキサン処理粉末、ガム状ポリシロキサン処理粉末、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理粉末、フッ素変性メチルハイドロジェンポリシロキサン処理粉末、メチルトリクロルシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルクロルシラントリメチルアルコキシシラン等の有機シリル化合物あるいはそれらのフッ素置換体による処理粉末、エチルトリクロルシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリクロルシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ヘキシルトリクロルシラン、ヘキシルトリアルコキシシラン、長鎖アルキルトリクロルシラン、長鎖アルキルトリエトキシシラン等の有機変性シランあるいはそれらのフッ素置換体による処理粉末、アミノ変性ポリシロキサン処理粉末、フッ素変性ポリシロキサン処理粉末、フッ化アルキルリン酸処理粉末等が挙げられる。
【0100】
本発明の化粧料および加温使用用化粧料に配合される油性成分は、通常化粧料に配合され得る油性成分であれば特に限定されるものでなく、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油等が挙げられる。
【0101】
油脂としては、アボガド油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂などが例示される。
【0102】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどが例示される。なお、POEはポリオキシエチレンの略語である。
【0103】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが例示される。
【0104】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが例示される。
【0105】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコールなどが例示される。
【0106】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリー2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-クチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、クロタミトン(C13H17NO)などが例示される。
【0107】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状ポリシロキサン;3次元網目構造を形成しているシリコ-ン樹脂、シリコーンゴムなどが例示される。
【0108】
乳化剤には、一般に水中油型の乳化化粧料に配合することのできる乳化剤を配合することができる。このような乳化剤としては、本発明ではHLB8以上である1種または2種以上から構成されるものが好適である。例えばグリセリン又はポリグリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEヒマシ油又は硬化ヒマシ油誘導体、POE蜜ロウ・ラノリン誘導体、アルカノールアミド類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル類、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド類から選択される1種または2種以上を配合する。
【0109】
上記例示した成分以外のその他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等);紫外線吸収剤等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【実施例】
【0110】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0111】
なお本実施例において、(A)および(B)は下記化合物を用いた。
(A):疎水変性ポリエーテルウレタン:上記式(I)に示すコポリマー(ただし式中、R1、R2、R4はそれぞれエチレン基、R3=ヘキサメチレン基、R5=2-ドデシルドデシル基、h=1、m=2、k=120、n=20)((PEG-240/デシルテトラデセス―20/HDI)コポリマー:「アデカノールGT-700」;株式会社ADEKA製)を用いた。
(B):セルロースナノファイバー:最大繊維径が1000nm以下である微細繊維状セルロース(「レオクリスタC-2SP」;第一工業製薬株式会社製)を用いた。なお、レオクリスタC-2SPは、2質量%の微細繊維状セルロース、1質量%のフェノキシエタノール(防腐剤)を97質量%の水中に含む製品であり、本明細書および表に記載している質量%は微細繊維状セルロースのみを指し、商品に含まれる水、防腐剤は含まれない。
【0112】
[化粧料についての実施例]
全量に対し(A)のみ、(A)と(B)、および(B)のみがそれぞれ2質量%、1.75質量%、0.75質量%となるように、表4に示す処方にて化粧料を配合し、かつそれぞれの濃度において、(A)と(B)の配合比率が下記表1~3に示す比率となるように調製し、下記被膜試験、ディスペンサ試験を行った。評価結果を表1~3に示す。
【0113】
(被膜試験)
φ50mmガラス製シャーレに各配合条件のサンプルを10g滴下し、表面を平面にした状態で50℃、24時間放置した後のサンプルの状態を以下の基準で判断した。
A:シャーレより固体としてサンプルを剥がせる
C:粘着性があってサンプルをシャーレから剥がせない
【0114】
(ディスペンサ試験)
0.7ml吐出のディスペンサで各配合条件のサンプルの連続的吐出を以下の基準で判断した。
A:空気が混入されずに連続的に吐出できる
B:5回以内の押圧操作で連続的に吐出できる
C:断続的にしか吐出できない
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
被膜試験から(B)が配合されるとべたつきが抑制されることが分かった。これは表1に示す(A)単独の2質量%配合サンプルでは得られない結果である。また、ディスペンサ試験からは(A)の配合比率が高いほど(A)と(B)を高配合しても吐出できることが分かった。反対に(B)の配合比率が高い場合には吐出が困難になる。これは(B)の配合によって化粧料が不連続体、つまり、弾性体に近づくことを意味する。よって、(A)と(B)を組み合わせることで、(A)が高配合であっても、べたつきがなく、かつ、ディスペンサ吐出可能な製剤とすることができることがわかる。
【0120】
すなわち、その組み合わせは
(A)<(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が0.75質量%以下であり、
(A)=(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が1.75質量%以下であり、
(A)>(B)の場合は、全化粧料に対する(A)+(B)の配合量が2質量%以下、が適正な値となる。
【0121】
[加温使用用化粧料についての実施例]
全量に対し(A)のみ、(A)と(B)、および(B)のみが1質量%となるように、表4に示す処方にて化粧料を配合し、かつ(A)と(B)の配合比率が下記表5に示す比率となるように調製した。調製した各サンプルについて、アントンパール社製、応力制御型レオメーターMCR301を用いて動的粘弾性測定を行った。測定条件はφ25mm コーンプレートで温度30℃、60℃とし、ひずみを0.01から5000まで上昇させたときの貯蔵弾性率G’および損失弾性率G”を測定した。
【0122】
一般的にG’>G”の場合(G”/G’=1以下の場合)は固体的な性質、G”>G’の場合(G”/G’=1以上の場合)には液体的な性質が優位な物性であると言われている。とくに、ひずみが小さい場合の性質は、垂れ落ちや分離の安定性に寄与することからひずみ値が1の時の物性値で判断した。
結果を表5および
図1~5に示した。なお、
図1のグラフの下に記載しているように、
図1~5のグラフにおいて、●は30℃でのG’、○は30℃でのG”、▲は60℃でのG’、△は60℃でのG”を示している。
【0123】
【0124】
(A)(=温度応答性高分子)のみの場合には、温度が30℃から60℃に加温すると弾性率が下がり、損失弾性率G”優位が顕著となる(
図1)。一方、(B)(=温度応答
性高分子)のみの場合には、加温前後で弾性率の変化がなくその貯蔵弾性率G’は高い値を示す(
図5)。(B)>(A)の場合には、(B)の物性が支配的で高い弾性率のまま加温前後で弾性率の変化は小さい(
図4)。(A)>(B)の場合には、加温時に弾性率が下がり、かつ、高温時においても貯蔵弾性率G’は高く固体的な性質を維持した(
図2)。(A)=(B)の場合は、加温前後で弾性率の変化がなかった(
図3)。以上の結果から、加温時に粘度変化する使用感を制御しつつ、その温度安定性をよりよくするためには(A)>(B)のように、加温時に弾性率が下がりつつ、かつ、低いひずみ値においてG’>G”であることがより好ましいことがわかる。
【0125】
(水分散化粧料の処方例)
表6に示す処方で、イオン交換水以外の成分をイオン交換水に溶解、分散して水分散化粧料の処方例1~12を作製した。
【0126】
【0127】
(乳化化粧料の処方例)
表7に示す処方で、油性成分、水性成分をそれぞれ溶解、混合後、水性成分に油性成分を混合して乳化させ、乳化化粧料の処方例1~5を作製した。
【0128】
【0129】
(粉末配合化粧料の処方例)
表8に示す処方で、油性成分、水性成分をそれぞれ溶解、混合後、油なじみのよい粉末は油性成分に、水なじみのよい粉末は水性成分に分散し、水性成分に油性成分を混合して乳化させ、粉末配合化粧料の処方例1~5を作製した。
【0130】