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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20240415BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240415BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20240415BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20240415BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20240415BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20240415BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 H
H01L27/088 331E
H01L29/78 618E
H01L29/78 620
H10B12/00 621Z
H10B12/00 671C
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
H10B41/70
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023020070
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2020505551の分割
【原出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2023053264
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2018044786
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018049535
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018055943
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018055807
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194076(JP,A)
【文献】特開2015-188059(JP,A)
【文献】特開2012-064932(JP,A)
【文献】特開2011-146698(JP,A)
【文献】特開2018-019073(JP,A)
【文献】特開2012-235102(JP,A)
【文献】特開2011-228691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 29/786
H10B 12/00
H10B 41/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性の金属酸化物と、
ゲート、ソース、及びドレインと、を有するトランジスタであって、
前記結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、
前記第1の層は、前記第2の層よりもバンドギャップが広く、
前記第1の層、及び前記第2の層のそれぞれは、前記結晶性の金属酸化物の被形成面に対して概略垂直に配置され、
前記第1の層、及び前記第2の層によって、結晶格子が形成され、
前記ゲートに電圧を印加し、前記結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、
前記第2の層を介して、前記ソースから前記ドレインにキャリアが伝送される、トランジスタ。
【請求項2】
結晶性の金属酸化物と、
ゲート、ソース、及びドレインと、を有するトランジスタであって、
前記結晶性の金属酸化物は、
第1の金属酸化物と、前記第1の金属酸化物上の第2の金属酸化物と、前記第2の金属酸化物上の第3の金属酸化物と、を有し、
前記第1の金属酸化物、前記第2の金属酸化物及び前記第3の金属酸化物は、それぞれ第1の層と、第2の層とを、有し、
前記第1の層は、前記第2の層よりもバンドギャップが広く、
前記第2の金属酸化物が有する前記第1の層、及び前記第2の金属酸化物が有する前記第2の層のそれぞれは、前記第2の金属酸化物の被形成面に対して概略垂直に配置され、
前記第1の層、及び前記第2の層によって、結晶格子が形成され、
前記ゲートに電圧を印加し、前記結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、
前記第2の層を介して、前記ソースから前記ドレインにキャリアが伝送される、トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、金属酸化物、及び金属酸化物を有するトランジスタに関する。または、本発明の一態様は、半導体装置、半導体ウエハ、モジュール、および電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能し得る装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶装置は、半導体装置の一態様である。表示装置(液晶表示装置、発光表示装置など)、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置、電子機器などは、半導体装置を有すると言える場合がある。
【0003】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0004】
酸化物半導体において、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造およびnc(nanocrystalline)構造が見出されている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0005】
非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する技術が開示されている。
【0006】
また、1980年代の後半には、トランジスタのチャネル形成領域として、エネルギーバンド幅の大なる層と、エネルギーバンド幅の小なる半導体の層と、が量子論的に相互作用する多層構成の技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1では、トランジスタのチャネル形成領域に半導体層-絶縁体層-半導体層の繰り返しの多層構造からなるスーパーラティス(超格子)構造が設けられており、各層は、当該層の面がキャリアの移動方向に沿うように積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭63-94680号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】S. Yamazaki et al., “SID Symposium Digest of Technical Papers”, 2012, volume 43, issue 1, pp.183-186
【文献】S. Yamazaki et al., “Japanese Journal of Applied Physics”, 2014, volume 53, Number 4S, pp.04ED18-1-04ED18-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一態様は、新規の金属酸化物を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、新規のトランジスタを提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、オン電流が大きい半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、信頼性が良好な半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0011】
また、本発明の一態様は、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、情報の書き込み速度が速い半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、結晶性の金属酸化物であって、結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介してキャリアが伝送される。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物であって、結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層、及び第2の層のそれぞれは、結晶性の金属酸化物の被形成面に対して概略平行に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介してキャリアが伝送される。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物であって、結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層は、元素M(MはAl、Ga、Y、及びSnの中から選ばれた一または複数)と、Znと、を有し、第2の層は、Inを有し、第1の層、及び第2の層のそれぞれは、結晶性の金属酸化物の被形成面に対して概略平行に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介してキャリアが伝送される。
【0016】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物であって、結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層、及び第2の層のそれぞれは、結晶性の金属酸化物の被形成面に対して概略垂直に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介してキャリアが伝送される。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物であって、結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層は、元素M(MはAl、Ga、Y、及びSnの中から選ばれた一または複数)と、Znと、を有し、第2の層は、Inを有し、第1の層、及び第2の層のそれぞれは、結晶性の金属酸化物の被形成面に対して概略垂直に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介してキャリアが伝送される。
【0018】
上記結晶性の金属酸化物において、第1の層と、第2の層との間の距離は1nm以下であることが好ましい。また、上記結晶性の金属酸化物において、結晶性の金属酸化物をc軸方向からTEM観察した際に、結晶性の金属酸化物は、六角形の格子点を有することが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物と、ゲート、ソース、及びドレインと、を有するトランジスタであって、結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層、及び第2の層は、それぞれ当該トランジスタのチャネル長方向に対して概略平行に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、ゲートに電圧を印加し、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介して、ソースからドレインにキャリアが伝送される。
【0020】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物と、ゲート、ソース、及びドレインと、を有するトランジスタであって、結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層、及び第2の層のそれぞれは、結晶性の金属酸化物の被形成面に対して概略平行に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、ゲートに電圧を印加し、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介して、ソースからドレインにキャリアが伝送される。
【0021】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物と、ゲート、ソース、及びドレインと、を有するトランジスタであって、結晶性の金属酸化物は、第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層、及び第2の層のそれぞれは、結晶性の金属酸化物の被形成面に対して概略垂直に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、ゲートに電圧を印加し、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介して、ソースからドレインにキャリアが伝送される。
【0022】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物と、ゲート、ソース、及びドレインと、を有するトランジスタであって、結晶性の金属酸化物は、第1の金属酸化物と、第1の金属酸化物上の第2の金属酸化物と、第2の金属酸化物上の第3の金属酸化物と、を有し、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物、及び第3の金属酸化物は、それぞれ第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第1の層、及び第2の層は、それぞれ当該トランジスタのチャネル長方向に対して概略平行に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、ゲートに電圧を印加し、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介して、ソースからドレインにキャリアが伝送される。
【0023】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物と、ゲート、ソース、及びドレインと、を有するトランジスタであって、結晶性の金属酸化物は、第1の金属酸化物と、第1の金属酸化物上の第2の金属酸化物と、第2の金属酸化物上の第3の金属酸化物と、を有し、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物、及び第3の金属酸化物は、それぞれ第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第2の金属酸化物が有する第1の層、及び第2の金属酸化物が有する第2の層のそれぞれは、第2の金属酸化物の被形成面に対して概略平行に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、ゲートに電圧を印加し、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介して、ソースからドレインにキャリアが伝送される。
【0024】
上記トランジスタにおいて、トランジスタのチャネル幅方向において、第3の金属酸化物は、第2の金属酸化物の上面、及び側面を覆い、ゲートは、第2の金属酸化物の上面、及び側面を覆い、第2の金属酸化物の側面において、第3の金属酸化物のc軸方向と、第2の金属酸化物のc軸方向とは異なる、ことが好ましい。
【0025】
また、本発明の他の一態様は、結晶性の金属酸化物と、ゲート、ソース、及びドレインと、を有するトランジスタであって、結晶性の金属酸化物は、第1の金属酸化物と、第1の金属酸化物上の第2の金属酸化物と、第2の金属酸化物上の第3の金属酸化物と、を有し、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物、及び第3の金属酸化物は、それぞれ第1の層と、第2の層とを、有し、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広く、第2の金属酸化物が有する第1の層、及び第2の金属酸化物が有する第2の層のそれぞれは、第2の金属酸化物の被形成面に対して概略垂直に配置され、第1の層、及び第2の層によって、結晶格子が形成され、ゲートに電圧を印加し、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、第2の層を介して、ソースからドレインにキャリアが伝送される。
【0026】
上記トランジスタにおいて、ゲートにおいて、第2の金属酸化物と重畳しない第1の領域の底面は、第2の金属酸化物の底面より位置が低く、ゲートにおいて、第1の領域と第2の金属酸化物を挟んで対向して位置する第2の領域の底面は、第2の金属酸化物の底面より位置が低い、ことが好ましい。
【0027】
また、上記トランジスタにおいて、第1の金属酸化物の下に、第2の金属酸化物とゲートが重なる領域の少なくとも一部に重畳して、第2のゲートを有することが好ましい。
【0028】
また、上記トランジスタにおいて、トランジスタのチャネル長、及びチャネル幅のいずれか一方または双方は、100nm以下の領域を有することが好ましい。
【0029】
また、上記トランジスタにおいて、第1の層は、元素M(MはAl、Ga、Y、及びSnの中から選ばれた一または複数)と、Znと、を有し、第2の層は、Inを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様により、新規の金属酸化物を提供することができる。また、本発明の一態様により、新規のトランジスタを提供することができる。また、本発明の一態様により、オン電流が大きい半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。
【0031】
また、本発明の一態様により、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、情報の書き込み速度が速い半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することができる。
【0032】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一態様に係るトランジスタの断面図およびバンドダイアグラムを説明する図、ならびに、本発明の一態様に係る金属酸化物が有する結晶を説明する図および当該結晶の伝導帯下端のエネルギーを説明する図。
図2】金属酸化物の結晶の層構造、および金属酸化物の原子の格子振動とキャリアの伝送を説明する図。
図3】金属酸化物の原子の格子振動とキャリアの伝送を説明する図。
図4】本発明の一態様に係るトランジスタの斜視図。
図5】本発明の一態様に係るトランジスタの断面図および、本発明の一態様に係る金属酸化物が有する結晶を説明する図。
図6】本発明の一態様に係るトランジスタの断面図。
図7】本発明の一態様に係るトランジスタの斜視図。
図8】本発明の一態様に係るトランジスタの断面図。
図9】本発明の一態様に係るトランジスタの斜視図。
図10】本発明の一態様に係るトランジスタの断面図およびバンドダイアグラムを説明する図、ならびに、本発明の一態様に係る金属酸化物が有する結晶を説明する図。
図11】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図および断面図。
図12】本発明の一態様に係る半導体装置の断面図。
図13】CAAC-OSの断面TEM像、ならびに平面TEM像およびその画像解析像。
図14】酸化物半導体の断面TEM像および局所的なフーリエ変換像。
図15】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図および断面図。
図16】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図および断面図。
図17】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図および断面図。
図18】本発明の一態様に係る記憶装置の構成を示す断面図。
図19】本発明の一態様に係る記憶装置の構成を示す断面図。
図20】本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示すブロック図、および模式図。
図21】本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示す回路図。
図22】本発明の一態様に係る半導体装置の模式図。
図23】本発明の一態様に係る記憶装置の模式図。
図24】本発明の一態様に係る電子機器を示す図。
図25】本発明の実施例に係る断面TEM像。
図26】本発明の実施例に係る断面TEM像。
図27】実施例に係る試料の断面TEM像、およびEDX線分析を説明する図。
図28】トランジスタのV-I特性の温度依存性を説明する図。
図29】動作周波数の算出方法を説明する図。
図30】動作周波数の算出結果を示す図。
図31】動作周波数の算出結果を示す図。
図32】本発明の一態様における酸化物半導体のキャリア濃度、およびHall移動度を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0035】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお、図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするため、図に反映しないことがある。また、図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0036】
また、特に上面図(「平面図」ともいう。)や斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0037】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0038】
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。したがって、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0039】
例えば、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接的に接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に開示されているものとする。
【0040】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0041】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう。)を有しており、チャネル形成領域を介して、ソースとドレインとの間に電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネル形成領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0042】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができる場合がある。
【0043】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネル形成領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。すなわち、一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書等では、チャネル長は、チャネル形成領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0044】
チャネル幅とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネル形成領域における、チャネル長方向を基準として垂直方向のチャネル形成領域の長さをいう。なお、一つのトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。すなわち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書等では、チャネル幅は、チャネル形成領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
【0045】
なお、本明細書等において、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、「実効的なチャネル幅」ともいう。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、「見かけ上のチャネル幅」ともいう。)と、が異なる場合がある。例えば、ゲート電極が半導体の側面を覆う場合、実効的なチャネル幅が、見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつゲート電極が半導体の側面を覆うトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル形成領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、見かけ上のチャネル幅よりも、実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0046】
このような場合、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0047】
本明細書等では、単にチャネル幅と記載した場合には、見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書等では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅などは、断面TEM像などを解析することなどによって、値を決定することができる。
【0048】
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。不純物が含まれることにより、例えば、半導体の欠陥準位密度が高くなることや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、および酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがあり、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、水も不純物として機能する場合がある。また、酸化物半導体の場合、例えば不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンである場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
【0049】
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものである。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものである。
【0050】
また、本明細書等において、「絶縁体」という用語を、絶縁膜または絶縁層と言い換えることができる。また、「導電体」という用語を、導電膜または導電層と言い換えることができる。また、「半導体」という用語を、半導体膜または半導体層と言い換えることができる。
【0051】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10度以上10度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5度以上5度以下の場合も含まれる。また、「概略平行」とは、二つの直線が-30度以上30度以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80度以上100度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85度以上95度以下の場合も含まれる。また、「概略垂直」とは、二つの直線が60度以上120度以下の角度で配置されている状態をいう。
【0052】
なお、本明細書等において、バリア膜とは、水、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する膜のことであり、当該バリア膜が導電性を有する場合は、導電性バリア膜と呼ぶことがある。
【0053】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む。)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう。)などに分類される。例えば、トランジスタの半導体層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OSトランジスタと記載する場合においては、酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0054】
また、本明細書等において、ノーマリーオフとは、ゲートに電位を印加しない、またはゲートに接地電位を与えたときに、トランジスタに流れるチャネル幅1μmあたりの電流が、室温において1×10-20A以下、85℃において1×10-18A以下、または125℃において1×10-16A以下であることをいう。
【0055】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である金属酸化物、および当該金属酸化物を有するトランジスタついて、図1乃至図10を用いて説明する。
【0056】
<トランジスタの構成例>
図1(A)は、本発明の一態様に係るトランジスタ10のチャネル長方向の断面図である。
【0057】
図1(A)に示すように、トランジスタ10は、基板(図示せず。)の上に配置された酸化物230と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、を有する。また、酸化物230は、トランジスタ10のチャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう。)として機能する領域234と、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231(領域231a、および領域231b)と、を有する。絶縁体250は、ゲート絶縁膜として機能する。また、導電体260は、ゲート電極として機能する。
【0058】
また、図1(B)は、図1(A)に示すトランジスタにおいて、X1-X2で示す一点鎖線上におけるバンドダイアグラムのモデルである。図1(B)では、k空間を無視している。なお、図1(B)には、ゲートとソースとの間に電圧を印加しない状態を示す。導電体260に位置する実線は、導電体260のフェルミ面の位置を示す。また、絶縁体250に位置する実線は、絶縁体250の伝導帯下端の位置を示す。また、酸化物230に位置する実線は、酸化物230の伝導帯下端の位置を示す。
【0059】
トランジスタ10は、ゲートに印加する電位によって、チャネル部の抵抗を制御することができる。すなわち、ゲートに印加する電位によって、ソースとドレインとの間の導通(トランジスタがオン状態)・非導通(トランジスタがオフ状態)を制御することができる。
【0060】
トランジスタ10は、チャネル形成領域を含む酸化物230に、半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。酸化物半導体は、シリコンなどからなる半導体と比較して、トランジスタのスイッチング特性が良好で、極めて小さいオフ電流が得られるため、好ましい。
【0061】
また、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流(オフ電流)が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、高集積型の半導体装置を構成するトランジスタに用いることができる。
【0062】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中のチャネル形成領域に不純物および酸素欠損が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、チャネル形成領域中の酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、絶縁体250などを介して酸化物230に酸素を供給し、酸素欠損を補填すればよい。これにより、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させたトランジスタを提供することができる。
【0063】
また、酸化物230には、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0064】
例えば、酸化物230として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、または錫(Sn)を用いるとよい。また、酸化物230として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0065】
また、酸化物230上に接するように、ソース電極やドレイン電極として機能する導電膜を設けてもよい。このとき、当該導電膜に含まれる元素が、酸化物230の酸素を吸収する機能を有する場合、酸化物230と当該導電膜の間、または酸化物230の表面近傍に、部分的に低抵抗領域が形成される場合がある。この場合、当該低抵抗領域には、酸素欠損に入り込んだ不純物(水素、窒素、金属元素等)がドナーとして機能し、キャリア密度が増加する場合がある。また、当該低抵抗領域の少なくとも一部は、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231に含まれる。
【0066】
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0067】
トランジスタのチャネル形成領域には、当該トランジスタのオン電流が高くなる金属酸化物を用いることが好ましい。当該トランジスタのオン電流を高くするには、当該トランジスタに用いる金属酸化物の移動度を高くするとよい。金属酸化物の移動度を高くするには、キャリアの伝送を向上させる、または、キャリアの伝送に影響を与える散乱源を低減する必要がある。
【0068】
そこで、チャネル形成領域を含む酸化物230に、結晶性の金属酸化物を用いることが好ましい。また、金属酸化物が有する結晶は、第1の層と、第2の層とを有し、当該第1の層、および当該第2の層が交互に積層された結晶構造であることが好ましい。また、当該第1の層は、当該第2の層よりもバンドギャップが広いことが好ましい。なお、本明細書等では、第1の層は、第2の層よりもバンドギャップが広いことを、第1の層はワイドギャップを有する、と表記する場合がある。また、第2の層は、第1の層よりもバンドギャップが狭いことを、第2の層はナローギャップを有する、と表現する場合がある。つまり、結晶性の金属酸化物は、ナローギャップを有する第2の層が、ワイドギャップを有する第1の層に挟まれた結晶を有することが好ましい。
【0069】
酸化物230が有する第1の層と第2の層は、それぞれ、トランジスタ10のチャネル長方向に対して概略平行に配置される。また、酸化物230が有する第1の層と第2の層の伸長方向が、それぞれ、トランジスタ10のチャネル長方向に対して概略平行である、ということもできる。また、酸化物230が有する第1の層と第2の層のそれぞれは、酸化物230の被形成面に対して概略平行に配置されることが好ましい。
【0070】
結晶性の金属酸化物として、例えば、単結晶酸化物半導体、CAAC-OSが挙げられる。結晶性の金属酸化物は、キャリアの伝送を向上させることができる。したがって、当該金属酸化物の移動度が高くなり、当該金属酸化物を用いたトランジスタのオン電流が高くなり、当該トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0071】
[キャリア伝送モデル]
以下では、結晶性の金属酸化物におけるキャリア伝送モデルについて、説明する。ここでは、結晶性の金属酸化物の例として、CAAC-OSを挙げる。また、当該金属酸化物は、インジウム、元素M、亜鉛、および酸素から構成された金属酸化物(In-M-Zn酸化物ともいう。)とする。
【0072】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶(最大径が10nm未満である結晶領域)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0073】
CAAC-OSをc軸方向から見た場合、ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0074】
なお、結晶性の金属酸化物における六角形状は、当該金属酸化物のc軸方向からの透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像で、確認することができる。
【0075】
図1(A)に示す酸化物230の領域51の拡大図を、図1(C)に示す。ここで、酸化物230は、CAAC構造を有するIn-M-Zn酸化物とする。また、元素Mは、Gaとし、酸化物230の組成は、In:M:Zn=1:1:1[原子数比]とする。また、図1(C)において、CAAC構造を有するIn-M-Zn酸化物のc軸(c-axis)方向は、紙面の上下方向であり、a-b面方向は、紙面の左右方向および法線方向である。なお、図1(C)では、酸化物230として、組成がIn:M:Zn=1:1:1[原子数比]の、CAAC構造を有するIn-M-Zn酸化物を示したが、これに限られない。酸化物230は、結晶性の金属酸化物であればよく、例えば、組成式がIn(1+α)(1-α)(ZnO)(αは0以上1以下の実数、mは0以上の実数)で表され、CAAC構造または単結晶構造を有するIn-M-Zn酸化物でもよい。
【0076】
図1(C)に示すように、CAAC構造を有するIn-M-Zn酸化物は、インジウム、および酸素を有する層(以下、InO層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)O層)とが積層した、層状の結晶構造(層状結晶、層状構造ともいう。)を有する傾向がある。なお、本明細書等では、(M,Zn)O層は、InO層と、当該InO層とc軸方向に隣り合うInO層との間に位置し、元素M、亜鉛、および酸素を有する層のことを指す。また、インジウムと、元素Mおよび亜鉛と、は、互いに置換可能であるため、インジウムの一部が、(M,Zn)O層に含まれている場合がある。また、元素Mの一部、または亜鉛の一部が、InO層に含まれている場合がある。
【0077】
なお、本明細書等では、第1の層、および第2の層が交互に積層された構造を結晶構造とし、当該結晶構造の単位胞を、ある空間群で表すことができる場合、当該積層された構造を、結晶格子と呼ぶ場合がある。例えば、CAAC構造を有するIn-M-Zn酸化物の場合、第1の層は(M,Zn)O層であり、第2の層はInO層である。また、結晶格子は、2の層で形成されなくてもよく、3以上の層で形成されていてもよい。
【0078】
また、第1の層と、第2の層との間の距離が大きくなるほど、第1の層と、第2の層との相互作用が弱くなり、結晶格子は構造的に不安定となる。よって、当該距離は、結晶格子を構成する原子間の距離に近いことが好ましい。例えば、第1の層と、第2の層との間の距離は、1nm以下が好ましく、0.7nm以下がより好ましく、0.5nm以下がさらに好ましい。こうすることで、第1の層、および第2の層によって形成される結晶格子が構造的に安定になる。
【0079】
また、図1(C)に示すように、CAAC-OSが有する結晶のc軸は、酸化物230の被形成面または膜表面に対する法線方向に配向する。したがって、トランジスタ10の断面図において、CAAC-OSが有する結晶のc軸の向きは、紙面の上下方向となる。また、CAAC-OSが有する結晶のa-b面は、酸化物230の被形成面または膜表面と概略平行となる。つまり、InO層、および(M,Zn)O層のそれぞれは、酸化物230の被形成面に対して概略平行に配置される。したがって、CAAC-OSが有する結晶のa-b面は、紙面の左右方向、および、紙面の法線方向に平行となる。
【0080】
ここで、図1(B)に示すバンドダイアグラムのモデルにおける、酸化物230の伝導帯下端の領域52の拡大図を、図1(D)に示す。図1(D)では、k空間を無視している。なお、領域52は、実空間における領域51に相当する。
【0081】
InO層と、(M,Zn)O層と、は、各層に含まれる構成元素の割合が異なる。よって、InO層と、(M,Zn)O層とは、バンドギャップが異なる。または、InO層と、(M,Zn)O層とは、電子親和力が異なる。または、InO層と、(M,Zn)O層と、は、真空準位のエネルギーと伝導帯下端のエネルギーEcとの差が異なる。
【0082】
ガリウムの酸化物は、インジウムの酸化物と比べて、バンドギャップが大きいことが知られている。よって、元素MがGaである場合、(M,Zn)O層のバンドギャップは、InO層のバンドギャップよりも大きいと推定される。また、(M,Zn)O層の電子親和力は、InO層の電子親和力よりも小さいと推定される。換言すると、InO層において、真空準位のエネルギーと伝導帯下端のエネルギーとの差は、(M,Zn)O層における、真空準位のエネルギーと伝導帯下端のエネルギーとの差よりも大きいと推定される。したがって、InO層の伝導帯下端は、(M,Zn)O層の伝導帯下端よりも、低い位置に位置していると推定される。なお、(M,Zn)O層は、InO層よりもバンドギャップが大きいことから、(M,Zn)O層は、ワイドギャップを有する、と表現する場合がある。また、InO層は、(M,Zn)O層よりもバンドギャップが小さいことから、InO層は、ナローギャップを有する、と表現する場合がある。
【0083】
また、InO層と、(M,Zn)O層とは、結晶格子を形成しているため、InO層の伝導帯下端と、(M,Zn)O層の伝導帯下端とは、InO層と(M,Zn)O層との境界において、連続的に変化していると推測される。したがって、図1(D)に示すように、酸化物230の伝導帯下端は、InO層の伝導帯下端と、(M,Zn)O層の伝導帯下端とが、繰り返し現れる準位であると推測される。よって、図1(D)に示すバンドダイアグラムにおいて、(M,Zn)O層の伝導帯下端近傍は凸部となり、InO層の伝導帯下端近傍は凹部となる。なお、InO層、および(M,Zn)O層は、a-b面方向に形成されているので、a-b面方向の伝導帯下端は、一定となる。したがって、キャリアは、伝導帯下端がより低いInO層のa-b面方向に沿って、伝送されやすい。
【0084】
ソースから注入されたキャリアは、ワイドギャップを有する(M,Zn)O層に挟まれている、ナローギャップを有するInO層に集中する。さらに、図1(C)および図1(D)における、キャリアの伝送方向、つまり、ソースからドレインへの方向は、InO層のa-b面方向(紙面の左右方向、および、紙面の法線方向)と概略一致する。以上から、主なキャリアの伝送経路は、InO層となる。つまり、結晶性の金属酸化物にキャリアを励起させた場合において、InO層を介して、キャリアは伝送される。
【0085】
なお、キャリアは、チャネル形成領域を介して、ソースからドレインに流れる。キャリアの伝送速度を高めるには、キャリアがチャネル長方向に流れやすいチャネル形成領域を設けるとよい。また、上記のように、In-M-Zn酸化物が有する結晶において、キャリアはa-b面方向に流れやすい。そこで、In-M-Zn酸化物が有する結晶のa-b面をキャリアの流れる方向に揃えることが好ましい。
【0086】
また、層状構造は、酸化物230が有する領域231にも延在していることが好ましい。こうすることで、チャネル形成領域を介した、領域231aと、領域231bと、の間のキャリアの伝送を容易にすることができる。
【0087】
量子化されて、a-b面方向に電子が動くと推定される。InO層に含まれる電子は、(M,Zn)O層で遮断され、格子散乱が無いため、当該電子は、InO層のa-b面方向に動きやすい。つまり、a-b面方向の移動度は、c軸方向と比べて、高いと推定される。
【0088】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因するトラップ準位密度が低い伝導帯下端が、a-b面方向にわたって広がっている(本明細書等では、大準位化している、ともいう。)と推測される。よって、電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0089】
また、金属酸化物は、温度が高いほど、移動度が高くなる傾向がある。これは、格子散乱によるものと推測される。熱による原子の格子振動およびキャリアの伝送について、図2および図3を用いて説明する。
【0090】
図2(A)は、CAAC構造を有するIn-M-Zn酸化物の結晶構造である。図2(A)において、W_(M,Zn)Oは、(M,Zn)O層のc軸方向の厚さを示す。また、W_(M,Zn)Oは、図1(D)に示すバンドダイアグラムにおける、(M,Zn)O層の伝導帯下端の凸部の幅ということもできる。W_InOは、InO層のc軸方向の厚さを示す。また、W_InOは、図1(D)に示すバンドダイアグラムにおける、InO層の伝導帯下端の凹部の幅ということもできる。
【0091】
また、図2(B)に示すWa_(M,Zn)Oは、温度Tが基準となる温度(例えば、室温(R.T.))とほぼ同じである場合における、(M,Zn)O層のc軸方向の厚さを示し、図2(B)に示すWa_InOは、温度Tが基準となる温度(例えば、室温(R.T.))とほぼ同じである場合における、InO層のc軸方向の厚さを示す。また、図2(C)に示すWb_(M,Zn)Oは、温度Tが基準となる温度(例えば、室温(R.T.))よりも高い温度である場合における、(M,Zn)O層のc軸方向の厚さを示し、図2(C)に示すWb_InOは、温度Tが基準となる温度(例えば、室温(R.T.))よりも高い温度である場合における、InO層のc軸方向の厚さを示す。また、図2(B)および図2(C)において、図の右側に示す波線は、キャリアがInO層を伝送する様子を示す。
【0092】
熱による原子の格子振動は、原子の質量数が大きいほど、小さくなる。金属酸化物が、In-Ga-Zn酸化物である場合、原子の質量数は、Inが一番大きく、次いでGaおよびZnが大きく、Oが一番小さい。よって、GaおよびZnは、Inよりも、熱による格子振動が大きい。このことから、温度が高くなると、InO層と比べて、(Ga,Zn)O層を構成する原子の振動が大きくなる。また、(Ga,Zn)O層内の原子の結合と比べて、InO層と(Ga,Zn)O層との間の原子の結合は弱いため、GaおよびZnの、c軸方向の格子振動は、a-b面方向の格子振動よりも大きい。以上より、Wb_(Ga,Zn)は、Wa_(Ga,Zn)Oよりも大きくなる(図2(C)参照。)。なお、層状結晶のc軸方向の格子定数が温度によって変化しないと仮定すると、Wb_(Ga,Zn)O層が大きくなることで、Wb_InOは、相対的に小さくなる(図2(C)参照。)。つまり、温度が高くなるほど、InO層のc軸方向の厚さは小さくなる。
【0093】
図3(A)乃至図3(C)は、図2(A)に示す結晶構造における、バンドダイアグラムと、キャリアがInO層を伝送する様子を模式的に示した図である。図3(A)乃至図3(C)において、紙面奥行側がソース(source)に、紙面手前側がドレイン(drain)に対応し、紙面の左右方向がCAAC-OSのc軸(c-axis)方向に対応し、図中の波状の曲面はCAAC-OSの伝導帯下端を示す。また、図3(A)乃至図3(C)において、黒丸はキャリア(例えば、電子)を示し、点線はキャリアの模式的な軌跡を示す。
【0094】
図3(A)は基準となる温度(例えば、室温(R.T.))とほぼ同じ温度Taのモデルを示しており、Wa_(M,Zn)Oは(M,Zn)O層の伝導帯下端の凸部の幅であり、Wa_InOはInO層の伝導帯下端の凹部の幅である。また、図3(B)は基準となる温度(例えば、室温(R.T.))より高い温度Tbのモデルを示しており、Wb_(M,Zn)Oは(M,Zn)O層の伝導帯下端の凸部の幅であり、Wb_InOはInO層の伝導帯下端の凹部の幅である。また、図3(C)は温度Tbより高い温度Tcのモデルを示しており、Wc_(M,Zn)Oは(M,Zn)O層の伝導帯下端の凸部の幅であり、Wc_InOはInO層の伝導帯下端の凹部の幅である。
【0095】
上述したように、温度が高くなると、InO層と比べて、(Ga,Zn)O層を構成する原子の振動が大きくなる。また、(Ga,Zn)O層内の原子の結合と比べて、InO層と(Ga,Zn)O層との間の結合は弱いため、GaおよびZnの、c軸方向の格子振動は、a-b面方向の格子振動よりも大きい。以上より、図3(A)乃至(C)に示すように、Wc_(Ga,Zn)O>Wb_(Ga,Zn)O>Wa_(Ga,Zn)O、となる。なお、層状結晶のc軸方向の格子定数が温度によって変化しないと仮定すると、W_(Ga,Zn)Oが大きくなることで、W_InOは、相対的に小さくなる。よって、図3(A)乃至(C)に示すように、Wa_InO>Wb_InO>Wc_InO、となる。つまり、温度が高くなるほど、バンドダイアグラム上のInO層のc軸方向の厚さは小さくなる。
【0096】
上記のように、キャリアの主な伝送経路は、InO層である。温度が高くなるほど、バンドダイアグラム上のInO層のc軸方向の厚さが小さくなるため、キャリアは、InO層のa-b面を、より平面的に伝送される。以上より、キャリアが、ソースからドレインへ、より直線的に伝送されることで、金属酸化物は移動度が高くなる。よって、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いることで、温度が高くなるほど、周波数特性は向上する。
【0097】
上記のように、温度が高いほど、キャリアは、InO層のa-b面を、より平面的に伝送される。別言すると、結晶性の金属酸化物では、格子振動によるキャリアの散乱(所謂、フォノン散乱)が起こり難いと推測される。なお、トランジスタのチャネル長方向を小さくする(短チャネル化ともいう。)ことで、ドレイン電界が強くなり、キャリアのドリフト速度が速くなる。短チャネル化によるドリフト速度の向上は、フォノン散乱によって抑制される。しかしながら、結晶性の金属酸化物では、フォノン散乱が起こり難いため、短チャネル化によるドリフト速度向上は抑制されにくくなる。言い換えると、結晶性の金属酸化物は、短チャネル効果が現れにくいことが予想される。したがって、結晶性の金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタの微細化を図ることができる。例えば、当該トランジスタのチャネル長およびチャネル幅のいずれか一方または双方を、100nm以下の領域とすることができる。
【0098】
本明細書等では、ワイドギャップを有する第1の層に挟まれ、ナローギャップを有する第2の層の、a-b面に沿ったキャリアの伝送を、多原子層伝導(MALT:Multi-Atomic Layers Transport)と呼ぶ場合がある。なお、MALTが生じる材料は、ナローギャップを有する第2の層が、ワイドギャップを有する第1の層に挟まれた半導体材料に限られない。第1の層と、第2の層とが同じ元素から構成されていても、キャリアが第1の層および第2の層のいずれか一方を選択的に、または優先的に伝送する場合でもよい。MALTが生じる材料として、例えば、グラフェンの積層構造であるグラファイトなどが挙げられる。
【0099】
<トランジスタの変形例1>
図4は、本発明の一態様に係るトランジスタ10aの斜視図である。なお、図4の斜視図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。また、図5(A)および図5(B)は、本発明の一態様に係るトランジスタ10aの断面図である。図5(A)は、図4にA1-A2で示す方向におけるトランジスタ10aの断面図であり、トランジスタ10aのチャネル長方向の断面図でもある。また、図5(B)は、図4にA3-A4で示す方向におけるトランジスタ10aの断面図であり、トランジスタ10aのチャネル幅方向の断面図でもある。
【0100】
図5(A)に示すように、トランジスタ10aは、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230bと、酸化物230bの上に配置された酸化物230cと、酸化物230cの上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、を有する。
【0101】
また、図5(B)に示すように、トランジスタ10aのチャネル幅方向において、酸化物230cは、酸化物230bの上面および側面を覆うように設けられている。また、絶縁体250は、酸化物230cを介して、酸化物230bの上面および側面を覆うように設けられている。また、導電体260は、酸化物230cおよび絶縁体250を介して、酸化物230bの上面および側面を覆うように設けられている。
【0102】
絶縁体250はゲート絶縁膜として機能する。また、導電体260はゲート電極として機能する。また、酸化物230bは、トランジスタ10aのチャネル形成領域として機能する領域234と、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231(領域231a、および領域231b)と、を有する。また、チャネル形成領域は、酸化物230cに形成されてもよい。
【0103】
トランジスタ10aは、図5(B)に示すように、酸化物230bが有する第1の層と第2の層のそれぞれが、酸化物230bの被形成面(絶縁体224の上面)に対して概略垂直に配置されている点において、トランジスタ10と異なる。また、トランジスタ10aの酸化物230bが有する第1の層と第2の層の配列方向は、酸化物230bの被形成面に平行である点において、トランジスタ10と異なる、ということもできる。ただし、トランジスタ10aにおいても、酸化物230bが有する第1の層と第2の層は、それぞれトランジスタ10のチャネル長方向に対して概略平行に配置される。なお、トランジスタ10aの酸化物230bは、第1の層と第2の層のそれぞれが、酸化物230bの被形成面に対して概略垂直に配置されている点を除いて、トランジスタ10の酸化物230と同様の構成を有する。
【0104】
ここで、図5(B)に示す酸化物230bの領域53の拡大図を、図5(C)に示す。図5(C)に示す、酸化物230bは、CAAC構造を有するIn-M-Zn酸化物である。
【0105】
図5(C)に示すように、トランジスタ10aの酸化物230bにおいて、CAAC-OSが有する結晶のc軸(c-axis)は、酸化物230bの被形成面または膜表面と概略平行な方向に配向する。したがって、図5(B)において、CAAC-OSが有する結晶のc軸の向きは、紙面の左右方向となる。また、CAAC-OSが有する結晶のa-b面は、酸化物230bの被形成面または膜表面に対する法線方向に概略平行となる。つまり、InO層、および(M,Zn)O層は、それぞれ被形成面に対して概略垂直に配置される。したがって、図5(B)において、CAAC-OSが有する結晶のa-b面は、紙面の上下方向、および、紙面の法線方向に平行となる。
【0106】
このような酸化物230bを設ける場合、例えば、絶縁体224上に構造体を形成し、当該構造体の側面を被形成面として酸化物230bを成膜し、当該構造体を除去すればよい。ここで、当該構造体の側面は、絶縁体224の上面に対して概略垂直であることが好ましい。
【0107】
また、トランジスタ10aのチャネル幅方向において、絶縁体224の底面を基準としたとき、酸化物230bと重ならない領域における導電体260の底面は、酸化物230bの底面より、低いことが好ましい。特に、導電体260において、酸化物230bと重畳しない第1の領域の底面(A3側の底面ということもできる。)、および導電体260において、第1の領域と酸化物230bを挟んで対向して位置する第2の領域の底面(A4側の底面ということもできる。)は、酸化物230bの底面より、位置が低いことが好ましい。ここで、酸化物230bと、導電体260とが、重ならない領域における導電体260の底面の高さと、酸化物230bの底面の高さと、の差は、0nm以上100nm以下、好ましくは、3nm以上50nm以下、より好ましくは、5nm以上20nm以下とする。
【0108】
ゲート電極として機能する導電体260が、チャネル形成領域の酸化物230bの側面および上面を酸化物230cおよび絶縁体250を介して覆う構成とすることで、図5(B)に示すように、導電体260の電界を酸化物230bの領域234全体に作用させやすくなる。特に、導電体260の底面を酸化物230bの底面より下にすることで、導電体260の電界を酸化物230bの底面にも作用させることができる。
【0109】
このように、トランジスタ10aのチャネル幅方向の断面において、概略全周囲からゲート電界を酸化物230bの領域234に印加することができる。これにより、酸化物230bの領域234全体にチャネルを形成することができるので、トランジスタ10aのオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。また、このように酸化物230bの領域234全体にチャネルを形成することで、トランジスタ10aのオフ電流の低減を図ることもできる。
【0110】
ここで、酸化物230bは、膜厚およびチャネル幅方向の長さが、数nm乃至数十nm程度の、細長いワイヤ状にすることが好ましい。このような酸化物230bを、ナノワイヤと呼ぶことができる。また、図4および図5に示すように、酸化物230b、酸化物230c、絶縁体250、および導電体260を含めて細長いワイヤ状の構造体にできるので、これらを含めてナノワイヤと呼ぶこともできる。また、トランジスタ10aは、上記の通り、導電体260の電界を酸化物230bの領域234全体に作用させることができるので、ナノワイヤトランジスタと呼ぶこともできる。
【0111】
トランジスタ10aの酸化物230bは、トランジスタ10の酸化物230と比較して、金属酸化物の層が、チャネル長方向を軸に、90度回転している。しかしながら、トランジスタ10aをナノワイヤ状にする、つまり、酸化物230bの領域234全体に導電体260の電界を作用させることで、導電体260に対して金属酸化物の層がどのような角度で設けられていても等価になる。よって、酸化物230bの被形成面に対する金属酸化物の層の角度が異なっても、トランジスタ10aとトランジスタ10は同等の特性を有するとみなすことができる。
【0112】
また、酸化物230cには、酸化物230bよりも、バンドギャップが大きい金属酸化物を用いてもよい。または、電子親和力が小さい金属酸化物を用いてもよい。または、真空準位のエネルギーと伝導帯下端のエネルギーの差が、小さい金属酸化物を用いてもよい。このようにすることで、キャリアがゲート電極およびゲート絶縁膜に移動しうる確率を低減することができる。
【0113】
また、酸化物230cが酸素の拡散を抑制する機能を有する場合、酸化物230bの酸素が、ゲート絶縁膜またはゲート電極へ拡散することを抑制できる。また、酸化物230cが不純物の拡散を抑制する機能を有する場合、酸化物230cよりも上方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0114】
なお、図4および図5では、酸化物230cを単層で図示したが、酸化物230cは、積層構造としてもよい。
【0115】
<トランジスタの変形例2>
図6に、トランジスタ10aの変形例として、トランジスタ10bを示す。図6(A)および図6(B)は、本発明の一態様に係るトランジスタ10bの断面図である。図6(A)は、トランジスタ10bのチャネル長方向の断面図である。また、図6(B)は、トランジスタ10bのチャネル幅方向の断面図である。
【0116】
なお、トランジスタ10bにおいて、トランジスタ10およびトランジスタ10aを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目において、トランジスタ10bの構成材料についてはトランジスタ10およびトランジスタ10aで詳細に説明した材料を用いることができる。
【0117】
トランジスタ10bは、絶縁体224の下に、酸化物230bと導電体260が重なる領域の少なくとも一部に重畳して、導電体205を有する点において、トランジスタ10aと異なる。なお、トランジスタ10bにおいては、トランジスタ10aで設けていた酸化物230cを設けていない。
【0118】
ここで、導電体260は、第1のゲート(トップゲートともいう。)電極として機能する場合がある。また、導電体205は、第2のゲート(バックゲートともいう。)電極として機能する場合がある。その場合、導電体205に印加する電位を、導電体260に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ10bのしきい値電圧(Vth)を制御することができる。特に、導電体205に負の電位を印加することにより、トランジスタ10bのVthをより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体205に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体260に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0119】
なお、導電体205は、酸化物230bにおけるチャネル形成領域よりも、大きく設けるとよい。特に、図6(B)に示すように、導電体205は、酸化物230bのチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物230のチャネル幅方向における側面の外側において、導電体205と、導電体260とは、絶縁体224を介して重畳していることが好ましい。
【0120】
上記構成を有することで、図6(B)に示すように、第1のゲート電極として機能する導電体260の電界と、第2のゲート電極として機能する導電体205の電界によって、酸化物230bのチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。特に導電体205の電界によって、酸化物230bの底面に作用させる電界をより強くすることができる。
【0121】
このように、トランジスタ10bのチャネル幅方向の断面において、概略全周囲からゲート電界を酸化物230bの領域234に印加することができる。これにより、酸化物230bの領域234全体にチャネルを形成することができるので、トランジスタ10bのオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。また、このように酸化物230bの領域234全体にチャネルを形成することで、トランジスタ10bのオフ電流の低減を図ることもできる。
【0122】
また、トランジスタ10bは、トランジスタ10aと同様に、導電体260および導電体205の電界を酸化物230bの領域234全体に作用させることができるので、ナノワイヤまたはナノワイヤトランジスタと呼ぶことができる。
【0123】
なお、本明細書等において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶこともできる。
【0124】
<トランジスタの変形例3>
図7および図8に、トランジスタ10aの変形例として、トランジスタ10cを示す。図7は、本発明の一態様に係るトランジスタ10cの斜視図である。なお、図7の斜視図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。また、図8(A)および図8(B)は、本発明の一態様に係るトランジスタ10cの断面図である。図8(A)は、図7にA1-A2で示す方向におけるトランジスタ10cの断面図であり、トランジスタ10cのチャネル長方向の断面図でもある。また、図8(B)は、図7にA3-A4で示す方向におけるトランジスタ10cの断面図であり、トランジスタ10cのチャネル幅方向の断面図でもある。
【0125】
なお、トランジスタ10cにおいて、トランジスタ10、トランジスタ10a、およびトランジスタ10bを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目において、トランジスタ10cの構成材料についてはトランジスタ10、トランジスタ10a、およびトランジスタ10bで詳細に説明した材料を用いることができる。
【0126】
トランジスタ10cは、絶縁体224と酸化物230bの間に酸化物230aを有する点において、トランジスタ10aと異なる。つまり、酸化物230は、絶縁体224上の酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の酸化物230cと、を有する。
【0127】
酸化物230aは、酸化物230cと同様の酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物230aに、酸化物230bよりも、バンドギャップが大きい金属酸化物を用いてもよい。または、電子親和力が小さい金属酸化物を用いてもよい。または、真空準位のエネルギーと伝導帯下端のエネルギーの差が、小さい金属酸化物を用いてもよい。このようにすることで、キャリアが絶縁体224に移動しうる確率を低減することができる。
【0128】
酸化物230aは、少なくとも領域234において、図8(B)に示すように、上面が酸化物230bに接し、側面が酸化物230cに接することが好ましい。このような構成にすることで、領域234において、酸化物230bを、酸化物230aと酸化物230cによって、覆うことができる。よって、酸化物230bを領域234において、絶縁体224、および絶縁体250と隔離することができる。これにより、酸化物230bにおいて、キャリアが外部へ移動しうる確率を低減し、酸素の外部への拡散、および外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0129】
<トランジスタの変形例4>
図9は、本発明の一態様に係るトランジスタ10dの斜視図である。なお、図9の斜視図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。また、図10(A)および図10(B)は、本発明の一態様に係るトランジスタ10dの断面図である。図10(A)は、図9にA1-A2で示す方向におけるトランジスタ10dの断面図であり、トランジスタ10dのチャネル長方向の断面図でもある。また、図10(B)は、図9にA3-A4で示す方向におけるトランジスタ10dの断面図であり、トランジスタ10dのチャネル幅方向の断面図でもある。
【0130】
なお、トランジスタ10dにおいて、トランジスタ10、トランジスタ10a、トランジスタ10bおよびトランジスタ10cを構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目において、トランジスタ10dの構成材料についてはトランジスタ10、トランジスタ10a、トランジスタ10bおよびトランジスタ10cで詳細に説明した材料を用いることができる。
【0131】
図10(A)に示すように、トランジスタ10dは、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230bと、酸化物230bの上に配置された酸化物230cと、酸化物230cの上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、を有する。
【0132】
また、図10(B)に示すように、トランジスタ10dのチャネル幅方向において、酸化物230cは、酸化物230bの上面および側面を覆うように設けられている。また、絶縁体250は、酸化物230cを介して、酸化物230bの上面および側面を覆うように設けられている。また、導電体260は、酸化物230cおよび絶縁体250を介して、酸化物230bの上面および側面を覆うように設けられている。
【0133】
絶縁体250はゲート絶縁膜として機能する。また、導電体260はゲート電極として機能する。また、酸化物230bは、トランジスタ10dのチャネル形成領域として機能する領域234と、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231(領域231a、および領域231b)と、を有する。また、チャネル形成領域は、酸化物230cに形成されてもよい。
【0134】
また、トランジスタ10dのチャネル幅方向において、絶縁体224の底面を基準としたとき、酸化物230bと重ならない領域における導電体260の底面は、酸化物230bの底面より、低いことが好ましい。ゲート電極として機能する導電体260が、チャネル形成領域の酸化物230bの側面および上面を酸化物230cおよび絶縁体250を介して覆う構成とすることで、導電体260の電界を酸化物230bの領域234全体に作用させやすくなる。よって、トランジスタ10dのオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。酸化物230bと、導電体260とが、重ならない領域における導電体260の底面の高さと、酸化物230bの底面の高さと、の差は、0nm以上100nm以下、好ましくは、3nm以上50nm以下、より好ましくは、5nm以上20nm以下とする。
【0135】
酸化物230b、および酸化物230cの少なくとも一方は、結晶性の金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物230b、および酸化物230cの少なくとも一方は、単結晶酸化物半導体、またはCAAC-OSであることが好ましい。
【0136】
また、酸化物230bを単層で図示したが、積層構造としてもよい。例えば、酸化物230bを2層の積層構造とする場合、酸化物230bの下層は、絶縁体224と接し、酸化物230bの上層は、酸化物230cと接するとする。このような構成にすることで、酸化物230bの下層よりも下方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0137】
ここで、図10(B)に示す酸化物230bの領域54の拡大図を、図10(D)に示す。また、図10(B)に示す酸化物230cの領域55を、図10(E)に示す。なお、酸化物230bおよび酸化物230cは、CAAC構造を有するIn-M-Zn酸化物である。
【0138】
上述したように、酸化物230bがCAAC-OSである場合、酸化物230bが有する結晶のc軸は、酸化物230bの被形成面または膜表面に対する法線方向に配向し、a-b面は、酸化物230bの被形成面または膜表面と概略平行となる。したがって、図10(D)に示す酸化物230bの領域54において、酸化物230bが有する結晶のc軸(c-axis)の向きは、紙面の上下方向となる。また、酸化物230bが有する結晶のa-b面は、紙面の左右方向、および、紙面の法線方向に平行となる。
【0139】
また、CAAC-OSが有する結晶のc軸は、CAAC-OSの被形成面に対して概略垂直方向に配向し、a-b面は、CAAC-OSの被形成面と概略平行となる。したがって、酸化物230cに結晶性の金属酸化物を用いた場合、図10(E)に示す酸化物230cの領域55において、酸化物230cが有する結晶のc軸(c-axis)の向きは、紙面の左右方向となる。また、酸化物230cが有する結晶のa-b面は、紙面の上下方向、および、紙面の法線方向に平行となる。
【0140】
以上より、図10(B)にX5-X6に示す一点鎖線上において、酸化物230bが有する結晶のc軸方向と、酸化物230cが有する結晶のc軸方向とは、異なる。
【0141】
[キャリア伝送モデル2]
ここでは、酸化物230bと酸化物230cとが積層されたトランジスタにおけるキャリアの伝送を、先で説明したキャリア伝送モデルを用いて説明する。
【0142】
図10(C)に、図10(A)および図10(B)に示すトランジスタ10dにおいて、X5-X6で示す一点鎖線上におけるバンドダイアグラムのモデルを示す。なお、図10(C)には、ゲート電極に正の電位を印加した状態を示す。また、図10(C)には、酸化物230bと酸化物230cとは、伝導帯下端のエネルギーが同じ金属酸化物を用いた例を示す。
【0143】
図10(B)に示すX5-X6の一点鎖線上において、酸化物230bの内部では、酸化物230bが有する結晶のa-b面は、基板面と概略平行である。したがって、X5-X6で示す一点鎖線上における、酸化物230bの伝導帯下端のエネルギーは一定である。また、酸化物230bの内部では、酸化物230bが有する結晶のa-b面方向に電界が生じる。また、酸化物230bの内部では、酸化物230bの表面にかかる電界よりも小さい。よって、酸化物230bの内部における伝導帯下端の曲りは小さい。
【0144】
一方、酸化物230cでは、酸化物230cが有する結晶のc軸方向に電界が生じる。また、酸化物230c生じる電界は、酸化物230bの内部にかかる電界よりも大きい。よって、酸化物230cにおけるバンドの曲りは大きい(図10(C)の点線を参照。)。また、X5-X6で示す一点鎖線上において、酸化物230cが有する結晶のa-b面は、基板面と概略垂直である。したがって、図10(C)に示すように、X5-X6で示す一点鎖線上において、酸化物230cの伝導帯下端は、InO層由来の伝導帯下端と(M,Zn)O層由来の伝導帯下端が交互に現れる。
【0145】
このとき、ソースから注入されたキャリアは、伝導帯下端がより低い、酸化物230cのInO層に集中する。さらに、キャリアは、ソースとドレインの間を伝送される、つまり、a-b面方向に伝送される。以上から、X5-X6で示す一点鎖線上において、主なキャリアの伝送経路は、酸化物230bのInO層、または酸化物230cのInO層となる。
【0146】
キャリアが集中しすぎると、キャリア間で、クーロン力による反発が生じてしまい、キャリアの伝送が抑制されてしまう。層状結晶を有する金属酸化物では、図10(C)に示すように、主なキャリアの伝送経路であるInO層が複数存在するため、キャリアが複数存在するInO層に分散される。したがって、キャリアの集中が緩和され、キャリア間で、クーロン力による反発が生じ難く、キャリアの伝送が抑制されない。
【0147】
なお、酸化物230cには、酸化物230bよりも、バンドギャップが大きい金属酸化物を用いてもよい。または、電子親和力が小さい金属酸化物を用いてもよい。または、真空準位のエネルギーと伝導帯下端のエネルギーの差が、小さい金属酸化物を用いてもよい。このようにすることで、キャリアがゲート電極およびゲート絶縁膜に移動しうる確率を低減することができる。
【0148】
図9および図10では、酸化物230cを単層で図示したが、積層構造としてもよい。例えば、酸化物230cを2層の積層構造とする場合、酸化物230cの下層は、酸化物230bと接し、酸化物230cの上層は、絶縁体250と接するとする。このとき、酸化物230cの下層は、酸化物230bと同じ組成である金属酸化物を用い、酸化物230cの上層は、酸化物230bよりも、バンドギャップが大きい金属酸化物を用いるとよい。このような構成にすることで、キャリアがゲート電極およびゲート絶縁膜に移動しうる確率を低減することができる。または、酸化物230cの上層が酸素の拡散を抑制する機能を有する場合、酸化物230bおよび酸化物230cの下層の酸素が、ゲート絶縁膜またはゲート電極への拡散を抑制することができる。または、また、酸化物230cの上層が不純物の拡散を抑制する機能を有する場合、酸化物230cの上層よりも上方に形成された構造物から、酸化物230cの下層および酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0149】
以上に示す、トランジスタの構成例、および変形例の構成は、互いに適宜組み合わせて用いることができる。
【0150】
以上より、オン電流が大きいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。また、高い周波数特性を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。また、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。また、オフ電流が小さいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。
【0151】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態や実施例に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0152】
(実施の形態2)
以下では、先の実施の形態に示す半導体装置の具体的な構成の一例について、図11乃至図17を用いて説明する。
【0153】
<半導体装置の構成例1>
図11(A)乃至図11(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200、およびトランジスタ200周辺の上面図および断面図である。
【0154】
図11(A)は、トランジスタ200を有する半導体装置の上面図である。また、図11(B)および図11(C)は、当該半導体装置の断面図である。ここで、図11(B)は、図11(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、図11(C)は、図11(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、図11(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0155】
本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200と、層間膜として機能する絶縁体214、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体281と、を有する。また、トランジスタ200と電気的に接続し、プラグとして機能する導電体240(導電体240a、および導電体240b)を有する。なお、プラグとして機能する導電体240の側面に接して絶縁体241(絶縁体241a、および絶縁体241b)が設けられる。
【0156】
また、絶縁体254、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体281の開口の側壁に接して絶縁体241が設けられ、その側面に接して導電体240の第1の導電体が設けられ、さらに内側に導電体240の第2の導電体が設けられている。ここで、導電体240の上面の高さと、絶縁体281の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体240の第1の導電体および導電体240の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体240を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
【0157】
[トランジスタ200]
図11に示すように、トランジスタ200は、基板(図示せず。)の上に配置された絶縁体216と、絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216の上および導電体205の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250上に配置された導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、酸化物230bの上面の一部と接する導電体242aおよび導電体242bと、絶縁体222の上面の一部、絶縁体224の側面、酸化物230aの側面、酸化物230bの側面、導電体242aの側面、導電体242aの上面、導電体242bの側面、および導電体242bの上面に接して配置された絶縁体254と、を有する。
【0158】
導電体260は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体242aおよび導電体242bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。トランジスタ200では、ゲート電極として機能する導電体260が、絶縁体280などに形成されている開口を埋めるように自己整合的に形成される。導電体260をこのように形成することにより、導電体242aと導電体242bとの間の領域に、導電体260を位置合わせすることなく確実に配置することができる。
【0159】
なお、導電体260は、導電体260aと、導電体260aの上に配置された導電体260bと、を有することが好ましい。例えば、導電体260aは、導電体260bの底面および側面を包むように配置されることが好ましい。また、図11(B)に示すように、導電体260の上面は、絶縁体250の上面および酸化物230cの上面と略一致している。なお、トランジスタ200では、導電体260を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体260が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0160】
絶縁体222、絶縁体254、および絶縁体274は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。また、絶縁体222、絶縁体254、および絶縁体274は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体222、絶縁体254、および絶縁体274は、それぞれ絶縁体224よりも水素および酸素の一方または双方の透過性が低いことが好ましい。絶縁体222、絶縁体254、および絶縁体274は、それぞれ絶縁体250よりも水素および酸素の一方または双方の透過性が低いことが好ましい。絶縁体222、絶縁体254、および絶縁体274は、それぞれ絶縁体280よりも水素および酸素の一方または双方の透過性が低いことが好ましい。
【0161】
酸化物230は、絶縁体224の上に配置された酸化物230aと、酸化物230aの上に配置された酸化物230bと、酸化物230bの上に配置され、少なくとも一部が酸化物230bの上面に接する酸化物230cと、を有することが好ましい。また、図11(C)に示すように、トランジスタ200のチャネル幅方向において、酸化物230cは、酸化物230bの上面および側面を覆うように設けられることが好ましい。
【0162】
ここで、酸化物230、絶縁体250、導電体260、絶縁体224、および導電体205は、先の実施の形態に示す、トランジスタ10、またはトランジスタ10a乃至トランジスタ10dが有する構成に対応する。
【0163】
なお、トランジスタ200では、チャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう。)と、その近傍において、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物230bの単層、酸化物230aと酸化物230bの2層構造、酸化物230bと酸化物230cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cのそれぞれが2層以上の積層構造を有していてもよい。
【0164】
例えば、酸化物230cが第1の酸化物と、第1の酸化物上の第2の酸化物からなる積層構造を有する場合、当該第1の酸化物は、酸化物230bと同様の組成を有し、当該第2の酸化物は、酸化物230aと同様の組成を有してもよい。
【0165】
また、トランジスタ200は、チャネル形成領域を含む酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)に、半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。
【0166】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタ200は、非導通状態において極めてリーク電流(オフ電流)が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、高集積型の半導体装置を構成するトランジスタ200に用いることができる。
【0167】
例えば、酸化物230として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、酸化物230として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、またはGa-Zn酸化物を用いてもよい。
【0168】
上記の通り、酸化物230は、先の実施の形態に示す酸化物230と対応する。よって、トランジスタ200の、チャネル形成領域を含む酸化物230に、結晶性の金属酸化物を用いることが好ましい。また、金属酸化物が有する結晶は、第1の層と、第2の層とを有し、当該第1の層、および当該第2の層が交互に積層された結晶構造であることが好ましい。また、当該第1の層は、当該第2の層よりもバンドギャップが広いことが好ましい。結晶性の金属酸化物として、例えば、単結晶酸化物半導体、CAAC-OSが挙げられる。結晶性の金属酸化物は、キャリアの伝送を向上させることができる。したがって、当該金属酸化物の移動度が高くなり、当該金属酸化物を用いたトランジスタのオン電流が高くなり、当該トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0169】
さらに、上記の通り、酸化物230b、および酸化物230cの少なくとも一方は、結晶性の金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物230b、および酸化物230cの少なくとも一方は、単結晶酸化物半導体、またはCAAC-OSであることが好ましい。ここで、図11(C)は、図10(B)と同様に、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図である。ゆえに、図10(B)に示す酸化物230bの領域54に対応する領域は、図10(D)に示す結晶構造を有し、図10(B)に示す酸化物230cの領域55に対応する領域は、図10(E)に示す結晶構造を有する。よって、トランジスタ200は、図10(C)に示す概略バンドダイアグラムのモデルを満たすので、キャリアの伝送の抑制を防ぐことができる。
【0170】
また、図11(B)に示すように、酸化物230cと絶縁体274との界面近傍に位置する領域と、酸化物230のチャネル形成領域とは、物理的距離が離れていることが好ましい。酸化物230cと絶縁体274との界面近傍では、トラップ準位密度が高い場合がある。したがって、酸化物230cと絶縁体274との界面近傍に位置する領域と、酸化物230のチャネル形成領域との物理的距離が離れることで、トランジスタ200の電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。
【0171】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中のチャネル形成領域に不純物および酸素欠損が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸化物半導体中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、チャネル形成領域中の酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、酸化物230cまたは絶縁体250などを介して酸化物230に酸素を供給し、酸素欠損を補填すればよい。これにより、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させたトランジスタを提供することができる。
【0172】
また、酸化物230上に接するように設けられ、ソース電極やドレイン電極として機能する導電体242(導電体242a、および導電体242b)に含まれる元素が、酸化物230の酸素を吸収する機能を有する場合、酸化物230と導電体242の間、または酸化物230の表面近傍に、部分的に低抵抗領域が形成される場合がある。この場合、当該低抵抗領域には、酸素欠損に入り込んだ不純物(水素、窒素、金属元素等)がドナーとして機能し、キャリア密度が増加する場合がある。
【0173】
また、図11(B)に示すトランジスタ200の一部の領域の拡大図を、図12(A)に示す。図12(A)に示すように、酸化物230上に接するように導電体242が設けられ、酸化物230の、導電体242との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域243(領域243a、および領域243b)が形成される場合がある。酸化物230は、トランジスタ200のチャネル形成領域として機能する領域234と、領域243の少なくとも一部を含み、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域231(領域231a、および領域231b)と、を有する。なお、以降の図面において、拡大図などで領域243を示さない場合でも、同様の領域243が形成されている場合がある。
【0174】
なお、領域243a、および領域243bは、酸化物230bの導電体242近傍において、深さ方向に拡散するように設けられる例を示しているが、本発明はこれに限らない。領域243aおよび領域243bは、求められるトランジスタの電気特性に合わせて適宜形成すればよい。また、酸化物230において、各領域の境界を明確に検出することが困難な場合がある。各領域内で検出される元素の濃度は、領域ごとの段階的な変化に限らず、各領域内でも連続的に変化(グラデーションともいう。)していてもよい。
【0175】
また、図11(B)に示すように、絶縁体254は、導電体242aおよび導電体242bの上面と、導電体242aおよび導電体242bの互いに向かい合う側面以外の、導電体242aおよび導電体242bの側面と、酸化物230aおよび酸化物230bの側面と、絶縁体224の側面と、絶縁体222の上面の一部と、に接することが好ましい。これにより、絶縁体280は、絶縁体254によって、絶縁体224、酸化物230a、および酸化物230bと離隔される。したがって、絶縁体280などに含まれる水素などの不純物が、絶縁体224、酸化物230a、および酸化物230bへ混入するのを抑制することができる。
【0176】
絶縁体274は、導電体260、絶縁体250、および酸化物230cのそれぞれの上面と接する。また、本発明の一態様であるトランジスタ200は、図12(A)に示すように、絶縁体274と、絶縁体250とが、接する構造となっている。このような構造とすることで、絶縁体281などに含まれる水素などの不純物が絶縁体250へ混入することを抑えることができる。したがって、トランジスタの電気特性およびトランジスタの信頼性への悪影響を抑制することができる。
【0177】
また、図12(A)に示すように、絶縁体224の底面を基準として、領域234と重なる領域における導電体260の底面の高さは、導電体242aおよび導電体242bのそれぞれの上面の高さより低くなる場合がある。例えば、領域234と重なる領域における導電体260の底面の高さと、導電体242aおよび導電体242bのそれぞれの上面の高さとの差は、0nm以上30nm以下、または0nm以上15nm以下とする。
【0178】
また、図11(C)に示すトランジスタ200の一部の領域の拡大図を、図12(B)に示す。先の実施の形態と同様に、トランジスタ200のチャネル幅方向において、絶縁体222の底面を基準として、導電体260と、酸化物230bと、が重ならない領域の、導電体260の底面の高さは、酸化物230bの底面の高さより低いことが好ましい。ゲート電極として機能する導電体260が、チャネル形成領域の酸化物230bの側面および上面を酸化物230cおよび絶縁体250を介して覆う構成とすることで、導電体260の電界を酸化物230bの領域234全体に作用させやすくなる。よって、トランジスタ200のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。酸化物230aおよび酸化物230bと、導電体260とが、重ならない領域における導電体260の底面の高さと、酸化物230bの底面の高さと、の差をT2とすると、T2は、0nm以上100nm以下、好ましくは、3nm以上50nm以下、より好ましくは、5nm以上20nm以下とする。
【0179】
また、図12(B)に示すように、トランジスタ200のチャネル幅方向において、酸化物230b、酸化物230a、および絶縁体224と重ならない領域の酸化物230cの少なくとも一部は、絶縁体222と接することが好ましい。当該構成にすることで、酸化物230cに含まれる酸素が、絶縁体224を経由して、トランジスタ200の外側へ拡散するのを防ぐことができる。また、酸化物230b、および酸化物230aに含まれる酸素が、絶縁体224を経由して、トランジスタ200の外側へ拡散するのを防ぐことができる。また、絶縁体224の面積が減少することで、絶縁体224に取り込まれる酸素の量が減少し、酸化物230へ供給される酸素量の減少を抑制することができる。よって、酸化物230cに含まれる酸素を、効率的に酸化物230b、および酸化物230aに供給することができ、領域234における酸化物230の低抵抗化を抑制することができる。したがって、トランジスタの電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させることができる。
【0180】
また、上記構成にすることで、絶縁体224などに含まれる水素などの不純物が、酸化物230へ混入するのを抑制することができる。つまり、酸化物230の低抵抗化を抑制することができる。よって、トランジスタの電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させることができる。なお、当該構成は、酸化物230b、および酸化物230aと重ならない領域の絶縁体224を除去することで、形成することができる。
【0181】
また、酸化物230b、および酸化物230aと重ならない領域の絶縁体224を除去することで、図12(B)に示すように、トランジスタ200のチャネル幅方向において、絶縁体222の底面を基準として、酸化物230aおよび酸化物230bと、導電体260とが、重ならない領域における導電体260の底面の高さは、酸化物230bの底面の高さよりも、低くなりやすい。したがって、トランジスタ200のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。
【0182】
以上より、オン電流が大きいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。また、高い周波数特性を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。また、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。また、オフ電流が小さいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。
【0183】
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の詳細な構成について説明する。
【0184】
導電体205は、酸化物230、および導電体260と、重なるように配置する。また、導電体205は、絶縁体214および絶縁体216に埋め込まれて設けることが好ましい。ここで、導電体205の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体205上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体205の上に形成される、絶縁体224の平坦性を良好にし、酸化物230a、酸化物230bおよび酸化物230cの結晶性の向上を図ることができる。
【0185】
ここで、導電体260は、第1のゲート(トップゲートともいう。)電極として機能する場合がある。また、導電体205は、第2のゲート(バックゲートともいう。)電極として機能する場合がある。その場合、導電体205に印加する電位を、導電体260に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ200のしきい値電圧(Vth)を制御することができる。特に、導電体205に負の電位を印加することにより、トランジスタ200のVthをより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体205に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体260に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0186】
なお、導電体205は、図11(A)に示すように、酸化物230におけるチャネル形成領域よりも、大きく設けるとよい。特に、図11(C)に示すように、導電体205は、酸化物230のチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物230のチャネル幅方向における側面の外側において、導電体205と、導電体260とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。
【0187】
上記構成を有することで、第1のゲート電極として機能する導電体260の電界と、第2のゲート電極として機能する導電体205の電界によって、酸化物230のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。
【0188】
また、図11(C)に示すように、導電体205は延伸させて、配線としても機能させている。ただし、これに限られることなく、導電体205の下に、配線として機能する導電体を設ける構成にしてもよい。また、導電体205は、必ずしも各トランジスタに一個ずつ設ける必要はない。例えば、導電体205を複数のトランジスタで共有する構成にしてもよい。
【0189】
また、導電体205は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電体205を単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0190】
また、導電体205の下に水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電体を設けてもよい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電体を設けることが好ましい。なお、本明細書等において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一またはすべての拡散を抑制する機能とする。
【0191】
導電体205の下に、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電体を用いることにより、導電体205が酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電体としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。したがって、導電体205の下層の導電体としては、上記導電性材料を単層または積層とすればよい。
【0192】
なお、導電体205の成膜は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、または原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法などを用いて行うことができる。
【0193】
本実施の形態では、導電体205として、例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステンの順に導電膜を成膜した、積層膜を用いることができる。
【0194】
基板(図示せず。)の上に配置された絶縁体214は、水、水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体214は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0195】
例えば、絶縁体214として、酸化アルミニウム、窒化シリコンなどを用いることが好ましい。これにより、水、水素などの不純物が、絶縁体214よりも基板側からトランジスタ200側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体224などに含まれる酸素が、絶縁体214よりも基板側に、拡散するのを抑制することができる。
【0196】
なお、絶縁体214の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体214として、例えば、スパッタリング法によって成膜された酸化アルミニウムを用いることができる。
【0197】
絶縁体214の上に配置される絶縁体216は層間膜として機能する。また、絶縁体254の上に配置される絶縁体280、および絶縁体281も同様に層間膜として機能する。ここで、層間膜として機能する絶縁体216、絶縁体280、および絶縁体281は、絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体216、絶縁体280、および絶縁体281として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0198】
また、絶縁体216を積層構造にしてもよい。例えば、絶縁体216において、少なくとも導電体205の側面と接する部分に、絶縁体214と同様の絶縁体を設ける構成にしてもよい。このような構成にすることで、絶縁体216に含まれる酸素によって、導電体205が酸化するのを抑制することができる。または、導電体205により、絶縁体216に含まれる酸素が吸収されるのを抑制することができる。
【0199】
なお、絶縁体216の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体216として、例えば、CVD法によって成膜された酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0200】
絶縁体222、および絶縁体224は、ゲート絶縁体としての機能を有する。
【0201】
ここで、酸化物230と接する絶縁体224は、加熱により酸素を脱離することが好ましい。本明細書等では、加熱により離脱する酸素を過剰酸素と呼ぶことがある。例えば、絶縁体224は、酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。酸素を含む絶縁体を酸化物230に接して設けることにより、酸化物230中の酸素欠損を低減し、トランジスタ200の信頼性を向上させることができる。
【0202】
絶縁体224として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化膜を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化膜とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0203】
なお、絶縁体224の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体224として、例えば、CVD法によって成膜された酸化窒化シリコンを用いることができる。なお、図11に示すトランジスタ200において、絶縁体224を島状にする構成としたが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、絶縁体224が絶縁体222の全面を覆う構成にすることもできる。
【0204】
絶縁体222は、水、水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体222は、絶縁体224より水素透過性が低いことが好ましい。絶縁体222、および絶縁体254によって、絶縁体224、酸化物230などを囲むことにより、水、水素などの不純物が、外方から絶縁体224、および酸化物230に拡散することを抑制することができる。
【0205】
さらに、絶縁体222は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)ことが好ましい。例えば、絶縁体222は、絶縁体224より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁体222が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物230が有する酸素は、基板側へ拡散することを低減できるので、好ましい。また、導電体205が、絶縁体224や、酸化物230が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0206】
絶縁体222は、絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体222を形成した場合、絶縁体222は、酸化物230からの酸素の放出や、トランジスタ200の周辺部から酸化物230への水素等の不純物の拡散を抑制する層として機能する。なお、絶縁体222としては、上述した材料の中でも、特に酸化ハフニウムを用いると好適である。例えば、絶縁体222をゲート絶縁膜として使用する場合、絶縁体222に酸化ハフニウムを用いることで、酸化アルミニウムよりも界面準位密度を減少させられる場合がある。
【0207】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0208】
また、絶縁体222は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0209】
なお、絶縁体222の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体222として、例えば、ALD法によって成膜された酸化ハフニウムを用いることができる。
【0210】
また、図11(C)に示すように、絶縁体222は、酸化物230bと重ならない領域の膜厚が、それ以外の領域の膜厚より薄くなる場合がある。絶縁体222において、酸化物230bと重ならない領域の膜厚は、絶縁体280などに設けられる開口を形成する際、エッチングストッパ膜として機能できる膜厚である、または、絶縁体216もしくは導電体205の表面が露出しないのに十分な膜厚であることが好ましい。
【0211】
なお、絶縁体222、および絶縁体224が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。例えば、絶縁体222の下に絶縁体224と同様の絶縁体を設ける構成にしてもよい。
【0212】
酸化物230は、酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の酸化物230cと、を有する。酸化物230b下に酸化物230aを有することで、酸化物230aよりも下方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物230b上に酸化物230cを有することで、酸化物230cよりも上方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0213】
なお、酸化物230は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物230aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230cは、酸化物230aまたは酸化物230bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0214】
また、酸化物230bおよび酸化物230cは、結晶性を有することが好ましい。例えば、後述するCAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OSなどの結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損など)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物230bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。これにより、熱処理を行っても、酸化物230bから酸素が引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ200は、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0215】
また、酸化物230aおよび酸化物230cの伝導帯下端が、酸化物230bの伝導帯下端より真空準位に近いことが好ましい。また、言い換えると、酸化物230aおよび酸化物230cの電子親和力が、酸化物230bの電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、酸化物230cは、酸化物230aに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、酸化物230cに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230cに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0216】
また、酸化物230cが、酸化物230c1、および酸化物230c1上の酸化物230c2を含む積層構造を有する場合、酸化物230aおよび酸化物230c2の伝導帯下端が、酸化物230bおよび酸化物230c1の伝導帯下端より真空準位に近いことが好ましい。また、言い換えると、酸化物230aおよび酸化物230c2の電子親和力が、酸化物230bおよび酸化物230c1の電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、酸化物230c2は、酸化物230aに用いることができる金属酸化物を用い、酸化物230c1は、酸化物230bに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。
【0217】
ここで、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの接合部において、伝導帯下端はなだらかに変化する。換言すると、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの接合部における伝導帯下端は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0218】
具体的には、酸化物230aと酸化物230b、酸化物230bと酸化物230cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする。)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物230bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物230aおよび酸化物230cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いてもよい。また、酸化物230cを、酸化物230c1と酸化物230c2との積層構造とする場合、例えば、In-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上のGa-Zn酸化物との積層構造、またはIn-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上の酸化ガリウムとの積層構造を用いることができる。別言すると、In-Ga-Zn酸化物と、Inを含まない酸化物との積層構造を、酸化物230cとして用いても良い。
【0219】
具体的には、酸化物230aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、またはIn:Ga:Zn=1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、またはIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:1[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:5[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、酸化ガリウムとの積層構造などが挙げられる。
【0220】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物230bまたは酸化物230cとなる。あるいは、酸化物230cが、酸化物230c1、および酸化物230c2を含む積層構造を有する場合、酸化物230bだけでなく、酸化物230c1もキャリアの主たる経路となる場合がある。酸化物230a、酸化物230cを上述の構成とすることで、酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ200は高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。なお、酸化物230cを積層構造とした場合、上述の酸化物230bと、酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くする効果に加え、酸化物230cが有する構成元素が、絶縁体250側に拡散するのを抑制することが期待される。より具体的には、酸化物230cを積層構造とし、積層構造の上方にInを含まない酸化物を位置させるため、Inが絶縁体250側に拡散するのを抑制することができる。絶縁体250は、ゲート絶縁体として機能するため、Inが絶縁体250などに混入した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、酸化物230cを積層構造とすることで、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0221】
酸化物230は、半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、領域234となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0222】
なお、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。なお、スパッタリング法を用いて成膜する場合、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いることが好ましい。また、基板を加熱しながら成膜を行うことによって、当該酸化膜の結晶性を向上させることができる。
【0223】
本実施の形態では、酸化物230aとして、例えば、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によって成膜された金属酸化物を用いることができる。また、酸化物230bとして、例えば、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によって成膜された金属酸化物を用いることができる。また、酸化物230c1として、例えば、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によって成膜された金属酸化物を用いることができる。また、酸化物230c2として、例えば、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法によって成膜された金属酸化物を用いることができる。
【0224】
酸化物230b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体242(導電体242a、および導電体242b)が設けられる。導電体242の膜厚は、例えば、1nm以上50nm以下、好ましくは2nm以上25nm以下、とすればよい。
【0225】
導電体242としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0226】
なお、導電体242の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、導電体242として、例えば、スパッタリング法によって成膜された窒化タンタルを用いることができる。
【0227】
絶縁体254は、絶縁体214などと同様に、水、水素などの不純物が、絶縁体280側からトランジスタ200に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体254は、絶縁体224より水素透過性が低いことが好ましい。さらに、図11(B)に示すように、絶縁体254は、導電体242aの上面および側面、導電体242bの上面および側面、酸化物230aおよび酸化物230bの側面、ならびに絶縁体224の側面に接することが好ましい。このような構成にすることで、絶縁体280は、絶縁体254によって、絶縁体224、および酸化物230と離隔されている。これにより、絶縁体280に含まれる水素が、導電体242a、導電体242b、酸化物230a、酸化物230bおよび絶縁体224の上面または側面から酸化物230に拡散するのを抑制することができるので、トランジスタ200に良好な電気特性および信頼性を与えることができる。
【0228】
さらに、絶縁体254は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)ことが好ましい。例えば、絶縁体254は、絶縁体280または絶縁体224より酸素透過性が低いことが好ましい。
【0229】
絶縁体254は、スパッタリング法を用いて成膜されることが好ましい。絶縁体254を、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて成膜することで、絶縁体224の絶縁体254と接する領域近傍に酸素を添加することができる。これにより、当該領域から、絶縁体224を介して酸化物230中に酸素を供給することができる。ここで、絶縁体254が、上方への酸素の拡散を抑制する機能を有することで、酸素が酸化物230から絶縁体280へ拡散することを防ぐことができる。また、絶縁体222が、下方への酸素の拡散を抑制する機能を有することで、酸素が酸化物230から基板側へ拡散することを防ぐことができる。このようにして、酸化物230のチャネル形成領域に酸素が供給される。これにより、酸化物230の酸素欠損を低減し、トランジスタのノーマリーオン化を抑制することができる。
【0230】
絶縁体254としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。なお、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。この場合、絶縁体254は、ALD法を用いて成膜されることが好ましい。ALD法は、被覆性の良好な成膜法なので、絶縁体254の凹凸によって、段切れなどが形成されるのを防ぐことができる。
【0231】
このように、水素に対してバリア性を有する絶縁体254によって、絶縁体224、および酸化物230を覆うことで、絶縁体280は、絶縁体224、および酸化物230と離隔されている。これにより、水素などの不純物が、トランジスタ200の外方から混入することを抑制できるので、トランジスタ200に良好な電気特性および信頼性を与えることができる。
【0232】
また、絶縁体254としては、例えば、窒化アルミニウムを含む絶縁体を用いればよい。絶縁体254として、組成式がAlNx(xは0より大きく2以下の実数、好ましくは、xは0.5より大きく1.5以下の実数)を満たす窒化物絶縁体を用いることが好ましい。これにより、絶縁性に優れ、且つ熱伝導性に優れた膜とすることができるため、トランジスタ200を駆動したときに生じる熱の放熱性を高めることができる。また、絶縁体254として、窒化アルミニウムチタン、窒化チタンなどを用いることもできる。この場合、スパッタリング法を用いて成膜することで、成膜ガスに酸素またはオゾンなどの酸化性の強いガスを用いずに成膜することができるので、好ましい。また、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどを用いることもできる。
【0233】
また、絶縁体254は、2層以上の多層構造とすることができる。例えば、絶縁体254として、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて1層目を成膜し、次にALD法を用いて2層目を成膜し、2層構造としてもよい。ALD法は、被覆性の良好な成膜法なので、1層目の凹凸によって、段切れなどが形成されるのを防ぐことができる。なお、絶縁体254を2層以上の多層構造とする場合、異なる材料からなる多層構造としてもよい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンと、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体と、の積層構造としてもよい。また、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いることができる。
【0234】
絶縁体250は、ゲート絶縁体として機能する。絶縁体250は、酸化物230cの上面に接して配置することが好ましい。絶縁体250は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0235】
絶縁体250は、絶縁体224と同様に、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体250として、酸化物230cの上面に接して設けることにより、酸化物230bの領域234に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体224と同様に、絶縁体250中の水、水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体250の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0236】
なお、絶縁体250の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体250として、例えば、CVD法によって成膜された酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0237】
また、絶縁体250と導電体260との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体250から導電体260への酸素の拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体250から導電体260への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物230へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、絶縁体250の酸素による導電体260の酸化を抑制することができる。
【0238】
なお、上記金属酸化物は、ゲート絶縁体の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体250に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、上記金属酸化物は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。ゲート絶縁体を、絶縁体250と上記金属酸化物との積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、ゲート絶縁体の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0239】
また、上記金属酸化物は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物230として用いることができる酸化物半導体を、上記金属酸化物として用いることができる。その場合、導電体260をスパッタリング法で成膜することで、上記金属酸化物の電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0240】
上記金属酸化物を有することで、導電体260からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ200のオン電流の向上を図ることができる。また、絶縁体250と、上記金属酸化物との物理的な厚みにより、導電体260と、酸化物230との間の距離を保つことで、導電体260と酸化物230との間のリーク電流を抑制することができる。また、絶縁体250、および上記金属酸化物との積層構造を設けることで、導電体260と酸化物230との間の物理的な距離、および導電体260から酸化物230へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0241】
具体的には、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。特に、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。また、酸化物230に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、上記金属酸化物として用いることができる。
【0242】
導電体260は、図11では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0243】
導電体260aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0244】
また、導電体260aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体250に含まれる酸素により、導電体260bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0245】
また、導電体260は、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、導電体260bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体260bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0246】
なお、導電体260の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、導電体260aとして、例えば、CVD法によって成膜された窒化チタンを用い、導電体260bとして、例えば、CVD法によって成膜された窒化チタンを用いることができる。
【0247】
絶縁体280は、絶縁体254を介して、絶縁体222、絶縁体224、酸化物230、および導電体242上に設けられる。例えば、絶縁体280として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどの材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。
【0248】
絶縁体280中の水、水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。また、絶縁体280の上面は、平坦化されていてもよい。
【0249】
なお、絶縁体280の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体280として、例えば、CVD法によって成膜された酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0250】
絶縁体274は、絶縁体214などと同様に、水、水素などの不純物が、上方から絶縁体280に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体274としては、例えば、絶縁体214、絶縁体254等に用いることができる絶縁体を用いればよい。
【0251】
なお、絶縁体274の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体274として、例えば、スパッタリング法によって成膜された酸化アルミニウムを用いることができる。
【0252】
また、絶縁体274の上に、層間膜として機能する絶縁体281を設けることが好ましい。絶縁体281は、絶縁体224などと同様に、膜中の水、水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0253】
なお、絶縁体281の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体281として、例えば、CVD法によって成膜された窒化シリコンを用いることができる。
【0254】
また、絶縁体281、絶縁体274、絶縁体280、および絶縁体254に形成された開口に、導電体240aおよび導電体240bを配置する。導電体240aおよび導電体240bは、導電体260を挟んで対向して設ける。なお、導電体240aおよび導電体240bの上面の高さは、絶縁体281の上面と、同一平面上としてもよい。
【0255】
なお、絶縁体281、絶縁体274、絶縁体280、および絶縁体254の開口の側壁に接して、絶縁体241aが設けられ、その側面に接して導電体240aの第1の導電体が形成されている。当該開口の底部の少なくとも一部には導電体242aが位置しており、導電体240aが導電体242aと接する。同様に、絶縁体281、絶縁体274、絶縁体280、および絶縁体254の開口の側壁に接して、絶縁体241bが設けられ、その側面に接して導電体240bの第1の導電体が形成されている。当該開口の底部の少なくとも一部には導電体242bが位置しており、導電体240bが導電体242bと接する。
【0256】
導電体240aおよび導電体240bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体240aおよび導電体240bは積層構造としてもよい。
【0257】
また、導電体240を積層構造とする場合、酸化物230a、酸化物230b、導電体242、絶縁体254、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体281と接する導電体には、水、水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水、水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。当該導電性材料を用いることで、絶縁体280に添加された酸素が導電体240aおよび導電体240bに吸収されるのを防ぐことができる。また、絶縁体281より上層に含まれる、水、水素などの不純物が、導電体240aおよび導電体240bを通じて酸化物230に拡散するのを抑制することができる。
【0258】
絶縁体241aおよび絶縁体241bとしては、例えば、絶縁体254等に用いることができる絶縁体を用いればよい。絶縁体241aおよび絶縁体241bは、絶縁体254に接して設けられるので、絶縁体280などに含まれる水、水素などの不純物が、導電体240aおよび導電体240bを通じて酸化物230に拡散するのを抑制することができる。また、絶縁体280に含まれる酸素が導電体240aおよび導電体240bに吸収されるのを防ぐことができる。なお、絶縁体241aおよび絶縁体241bの形成には、ALD法やCVD法を用いることができる。
【0259】
また、図示しないが、導電体240aの上面、および導電体240bの上面に接して配線として機能する導電体を配置してもよい。配線として機能する導電体は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、当該導電体は、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。なお、当該導電体は、絶縁体に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
【0260】
また、図示しないが、上記導電体を覆うように、抵抗率が1.0×1013Ωcm以上1.0×1015Ωcm以下、好ましくは5.0×1013Ωcm以上5.0×1014Ωcm以下の絶縁体を設けることが好ましい。上記導電体上に上記のような抵抗率を有する絶縁体を設けることで、当該絶縁体は、絶縁性を維持しつつ、トランジスタ200、上記導電体等の配線間に蓄積される電荷を分散し、該電荷によるトランジスタや、該トランジスタを有する電子機器の特性不良や静電破壊を抑制することができ、好ましい。
【0261】
以上のように、本発明の一態様により、オン電流の大きい半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、オフ電流の小さい半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、生産性の高い半導体装置を提供することができる。
【0262】
<半導体装置の構成材料>
以下では、半導体装置に用いることができる構成材料について説明する。
【0263】
以下に示す構成材料の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いて行うことができる。
【0264】
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0265】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを抑制することが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0266】
また、ALD法も、被処理物へのプラズマダメージを抑制することが可能な成膜方法である。よって、欠陥の少ない膜が得られる。なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などの不純物を含むものがある。このため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。なお、不純物の定量は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて行うことができる。
【0267】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0268】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0269】
また、当該構成材料の加工はリソグラフィー法を用いて行えばよい。また、当該加工はドライエッチング法やウエットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。
【0270】
リソグラフィー法では、まず、マスクを介してレジストを露光する。次に、露光された領域を、現像液を用いて除去または残存させてレジストマスクを形成する。次に、当該レジストマスクを介してエッチング処理することで導電体、半導体または絶縁体などを所望の形状に加工することができる。例えば、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いて、レジストを露光することでレジストマスクを形成すればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、レジスト上に直接描画を行うため、上述のレジスト露光用のマスクは不要となる。なお、レジストマスクは、アッシングなどのドライエッチング処理を行う、ウエットエッチング処理を行う、ドライエッチング処理後にウエットエッチング処理を行う、またはウエットエッチング処理後にドライエッチング処理を行う、などで、除去することができる。
【0271】
また、レジストマスクの代わりに絶縁体や導電体からなるハードマスクを用いてもよい。ハードマスクを用いる場合、当該構成材料上にハードマスク材料となる絶縁膜や導電膜を形成し、その上にレジストマスクを形成し、ハードマスク材料をエッチングすることで所望の形状のハードマスクを形成することができる。当該構成材料のエッチングは、レジストマスクを除去してから行ってもよいし、レジストマスクを残したまま行ってもよい。後者の場合、エッチング中にレジストマスクが消失することがある。当該構成材料のエッチング後にハードマスクをエッチングにより除去してもよい。一方、ハードマスクの材料が後工程に影響が無い、あるいは後工程で利用できる場合、必ずしもハードマスクを除去する必要は無い。
【0272】
ドライエッチング装置としては、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。平行平板型電極を有する容量結合型プラズマエッチング装置は、平行平板型電極の一方の電極に高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極の一方の電極に複数の異なった高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに同じ周波数の高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに周波数の異なる高周波電源を印加する構成でもよい。または高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置などを用いることができる。
【0273】
<<基板>>
トランジスタ200を形成する基板としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板、または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
【0274】
<<絶縁体>>
絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0275】
例えば、トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体に、high-k材料を用いることで物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。一方、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0276】
また、比誘電率の高い絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物、またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0277】
また、比誘電率が低い絶縁体としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などがある。
【0278】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体(絶縁体214、絶縁体222、絶縁体254、および絶縁体274など)で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム、またはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、または酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどの金属窒化物を用いることができる。
【0279】
また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体は、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する絶縁体であることが好ましい。例えば、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを酸化物230と接する構造とすることで、酸化物230が有する酸素欠損を補償することができる。
【0280】
<<導電体>>
導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0281】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0282】
なお、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物を用いる場合において、ゲート電極として機能する導電体には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0283】
特に、ゲート電極として機能する導電体として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁体などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
【0284】
<<金属酸化物>>
酸化物230として、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る酸化物230に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0285】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特に、インジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたは錫などが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0286】
ここでは、金属酸化物が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫などとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0287】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0288】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS、a-like OS、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0289】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0290】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0291】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損(V:oxygen vacancyともいう。)など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0292】
ここで、図13(A)に、試料面と概略平行な方向から、TEMによって、観察したCAAC-OSの断面の高分解能TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Aberration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fなどによって観察することができる。
【0293】
図13(A)より、金属原子が層状に配列している領域であるナノ結晶を確認することができる。ナノ結晶一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあることがわかる。ナノ結晶は、CAAC-OSの被形成面または上面の凹凸を反映しており、CAAC-OSの被形成面または上面と平行となる。
【0294】
また、図13(B)および図13(C)に、試料面と概略垂直な方向から観察したCAAC-OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図13(D)および図13(E)は、それぞれ図13(B)および図13(C)を画像処理した像である。以下では、画像処理の方法について説明する。まず、図13(B)を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理することでFFT像を取得する。次に、取得したFFT像において原点を基準に、2.8nm-1から5.0nm-1の間の範囲を残すマスク処理する。次に、マスク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)処理することで画像処理した像を取得する。こうして取得した像をFFTフィルタリング像と呼ぶ。FFTフィルタリング像は、Cs補正高分解能TEM像から周期成分を抜き出した像であり、格子配列を示している。
【0295】
図13(D)では、格子配列の乱れた箇所を破線で示している。破線で囲まれた領域が、一つのナノ結晶である。そして、破線で示した箇所がナノ結晶とナノ結晶との連結部である。破線は、六角形状であるため、ナノ結晶が六角形状であることがわかる。このように、CAAC-OSは、c軸方向からTEMで観察した際に、六角形の格子点が見られる。よって、CAAC-OSは、先の実施の形態において、図1(C)に示す、層状の結晶構造を有するということができる。なお、ナノ結晶の形状は、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合もある。
【0296】
図13(E)では、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を点線で示し、格子配列の向きの変化を破線で示している。点線近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。点線近傍の格子点を中心に周囲の格子点を繋ぐと、歪んだ六角形や、五角形または七角形などが形成できる。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制していることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0297】
また、図14(A)に、図13とは異なるCAAC-OSの断面の高分解能TEM像を示す。また、図14(B)は、図14(A)をさらに拡大した断面の高分解能TEM像であり、理解を容易にするために原子配列を強調表示している。
【0298】
図14(C)は、図14(A)のA-O-A’間において、丸で囲んだ領域(直径約4nm)の局所的なフーリエ変換像である。図14(C)より、各領域においてc軸配向性が確認できる。また、A-O間とO-A’間とでは、c軸の向きが異なるため、異なるグレインであることが示唆される。また、A-O間では、c軸の角度が14.3°、16.6°、26.4°のように少しずつ連続的に変化していることがわかる。同様に、O-A’間では、c軸の角度が-18.3°、-17.6°、-15.9°と少しずつ連続的に変化していることがわかる。
【0299】
断面の高分解能TEM像および平面の高分解能TEM像より、CAAC-OSのナノ結晶は配向性を有していることがわかる。
【0300】
以上のことから、CAAC-OSは、先の実施の形態に示すように、c軸配向性を有し、かつc軸がCAAC-OSの被形成面またはCAAC-OSの膜表面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面の高分解能TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、ナノ結晶のa-b面に平行な面である。
【0301】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0302】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0303】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0304】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0305】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0306】
金属酸化物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。したがって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度(SIMSにより得られる濃度)を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0307】
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0308】
このため、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0309】
<半導体装置の構成例2>
図15は、本発明の一態様に係るトランジスタ200A、およびトランジスタ200A周辺の上面図および断面図である。
【0310】
図15(A)は、トランジスタ200Aを有する半導体装置の上面図である。また、図15(B)および図15(C)は当該半導体装置の断面図である。ここで、図15(B)は、図15(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200Aのチャネル長方向の断面図でもある。また、図15(C)は、図15(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200Aのチャネル幅方向の断面図でもある。なお、図15(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0311】
なお、図15に示す半導体装置において、<半導体装置の構成例1>に示した半導体装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記している。
【0312】
以下、半導体装置の構成について、図15を用いて説明する。なお、本項目において、半導体装置の構成材料については<半導体装置の構成例1>で詳細に説明した材料を用いることができる。
【0313】
[トランジスタ200A]
図15に示すように、トランジスタ200Aは、基板(図示せず。)の上に配置された絶縁体216と、絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216の上および導電体205の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、酸化物230c1、および酸化物230c2)と、酸化物230の上に配置された250と、絶縁体250上に配置された導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、酸化物230bの上面の一部と接する導電体242aおよび導電体242bと、導電体242aの上に配置されたバリア膜244aと、導電体242bの上に配置されたバリア膜244bと、絶縁体222の上面の一部、絶縁体224の側面、酸化物230aの側面、酸化物230bの側面、導電体242aの側面、バリア膜244aの上面、導電体242bの側面、およびバリア膜244bの上面に接して配置された絶縁体254(絶縁体254a、および絶縁体254b)と、を有する。
【0314】
絶縁体254が、絶縁体254a、および絶縁体254bの2層を積層する構成であり、また、酸化物230cが、酸化物230c1および酸化物230c2の2層を積層する構成である点が、前述のトランジスタ200と異なる。以下では、トランジスタ200と異なる点について説明する。
【0315】
図15に示すように、絶縁体254は、絶縁体254aと、絶縁体254aの上に配置された絶縁体254bと、を有する。例えば、絶縁体254aは、水、水素などの不純物が、絶縁体280側からトランジスタ200Aに拡散するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。また、例えば、絶縁体254bは、酸化物230中の酸素が、絶縁体280側へ拡散するのを抑制することが好ましい。このような2層を積層する構成にすることで、酸化物230のチャネル形成領域への水素の混入を防ぐことができる。さらに、酸化物230のチャネル形成領域からの酸素の放出を防ぐことができる。具体的には、絶縁体254aとして、スパッタリング法を用いて成膜された窒化シリコンを用い、絶縁体254bとして、ALD法を用いて成膜された酸化アルミニウムを用いればよい。
【0316】
また、例えば、絶縁体254aとして、過剰酸素領域を有する絶縁性材料、または、過剰酸素領域が形成されやすい絶縁性材料を用い、絶縁体254bとして、被形成膜に過剰酸素領域を形成しやすい絶縁性材料を用いることが好ましい。具体的には、絶縁体254aとして、スパッタリング法を用いて成膜された酸化シリコンを用い、絶縁体254bとして、スパッタリング法を用いて成膜された酸化アルミニウムを用いればよい。このような2層を積層する構成にすることで、絶縁体254aが有する過剰酸素を、酸化物230に効率的に供給することができる。
【0317】
なお、絶縁体254aが過剰酸素を有する場合、導電体242aの上面に接してバリア膜244aが設けられ、導電体242bの上面に接してバリア膜244bが設けられることが好ましい。バリア膜244aおよびバリア膜244bは、水、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する。これにより、酸化物230cおよび絶縁体250中の過剰酸素が、導電体242aおよび導電体242bへと拡散することを防止することができる。つまり、導電体242aおよび導電体242bの酸化に、周囲の過剰酸素が用いられることを防ぐことができる。さらに、導電体242aおよび導電体242bの酸化によって、導電体242aおよび導電体242bの電気抵抗値が増加することを防ぐことができる。なお、導電体の電気抵抗値の測定は、2端子法などを用いて測定することができる。
【0318】
バリア膜244a、およびバリア膜244bとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いればよい。
【0319】
また、バリア膜244a、およびバリア膜244bとして不純物が透過しにくい導電性材料を用いてもよい。バリア膜244a、およびバリア膜244bに導電性材料を用いる場合は、酸素が放出されにくい、または、吸収されにくい導電性材料を用いることが好ましい。なお、バリア膜244aおよびバリア膜244bを設けない構成としてもよい。
【0320】
なお、絶縁体254は、絶縁体254aおよび絶縁体254bを積層する構成に限定されず、単層にしてもよいし、絶縁体254a、絶縁体254b、および絶縁体254cの3層を積層する構成にしてもよい。3層を積層する構成にする場合、例えば、絶縁体254aとして、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用い、絶縁体254bとして、過剰酸素領域を有する絶縁性材料を用い、絶縁体254cとして、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。このような3層を積層する構成にすることで、絶縁体254bが有する過剰酸素が、絶縁体254aおよび絶縁体254cの外側に拡散することを抑制することができる。したがって、絶縁体254bが有する過剰酸素を、酸化物230に効率的に供給することができる。
【0321】
なお、絶縁体254を2層以上の積層する構成にする場合、絶縁体254に用いる絶縁性材料の組み合わせおよび積層順は、求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0322】
また、図15に示すように、酸化物230cは、酸化物230c1と、酸化物230c1の上に配置された酸化物230c2と、を有する。酸化物230c1は、酸化物230bに用いられる金属酸化物を構成する金属元素の少なくとも一つを含むことが好ましく、当該金属元素を全て含むことがより好ましい。これにより、酸化物230bと酸化物230c1との界面における欠陥準位密度を低くすることができる。また、酸化物230c2は、酸化物230c1より、酸素の拡散または透過を抑制する金属酸化物であることが好ましい。絶縁体250と酸化物230c1との間に酸化物230c2を設けることで、絶縁体280に含まれる酸素が、絶縁体250に拡散するのを抑制することができる。したがって、当該酸素は、酸化物230c1を介して、酸化物230に供給されやすくなる。
【0323】
また、酸化物230c1、および酸化物230c2は、結晶性を有することが好ましく、酸化物230c2は、酸化物230c1よりも結晶性が高いことがより好ましい。特に、酸化物230c1、および酸化物230c2として、CAAC-OSを用いることが好ましく、酸化物230c1、および酸化物230c2が有する結晶のc軸が、酸化物230c1、および酸化物230c2の被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが好ましい。CAAC-OSは、c軸方向に酸素を移動させにくい性質を有する。したがって、酸化物230c1と絶縁体250との間に、酸化物230c2を設けることで、酸化物230c1が有する酸素が、絶縁体250へ拡散することを抑制し、当該酸素を、酸化物230に効率的に供給することができる。
【0324】
具体的には、酸化物230c1として、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の金属酸化物を用い、酸化物230c2として、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。酸化物230c2に用いる金属酸化物において、構成元素中のInの原子数比が、酸化物230c1に用いる金属酸化物における、構成元素中のInの原子数比より小さくすることで、Inが絶縁体250側に拡散するのを抑制することができる。絶縁体250は、ゲート絶縁体として機能するため、Inが絶縁体250などに混入した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、酸化物230cを積層構造とすることで、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0325】
また、絶縁体280を、2層の積層構造として設ける構成にしてもよい。図15に示すように、絶縁体280は、絶縁体280aと、絶縁体280aの上に配置された絶縁体280bと、を有する場合、絶縁体280aは、過剰酸素領域を有することが好ましい。絶縁体280aは、絶縁体280bよりも、酸化物230のチャネル形成領域までの物理的距離が短いため、絶縁体280に含まれる酸素を、酸化物230のチャネル形成領域に効率的に供給することができる。
【0326】
具体的には、絶縁体280aとして、スパッタリング法を用いて成膜した酸化シリコンを用い、絶縁体280bとして、CVD法を用いて成膜した酸化窒化シリコンを用いればよい。なお、トランジスタ200Aでは、絶縁体280を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、絶縁体280を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0327】
また、図15に示すように、絶縁体274と絶縁体281との間に、絶縁体282を設ける構成にしてもよい。絶縁体282は、水素などの不純物や、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、スパッタリング法や、ALD法を用いて、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどを成膜すること好ましい。絶縁体282を設けることで、絶縁体280、絶縁体250などが有する酸素が、絶縁体281側へ拡散することを抑制することができる。
【0328】
<半導体装置の構成例3>
図16は、本発明の一態様に係るトランジスタ200B、およびトランジスタ200B周辺の上面図および断面図である。
【0329】
図16(A)は、トランジスタ200Bを有する半導体装置の上面図である。また、図16(B)乃至図16(D)は当該半導体装置の断面図である。ここで、図16(B)は、図16(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200Bのチャネル長方向の断面図でもある。また、図16(C)は、図16(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200Bのチャネル幅方向の断面図でもある。また、図16(D)は、図16(A)にA5-A6の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200Bの低抵抗領域として機能する領域243b近傍の断面図でもある。なお、図16(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0330】
なお、図16に示す半導体装置において、<半導体装置の構成例1>または<半導体装置の構成例2>に示した半導体装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記している。
【0331】
以下、半導体装置の構成について、図16を用いて説明する。なお、本項目において、半導体装置の構成材料については<半導体装置の構成例1>または<半導体装置の構成例2>で詳細に説明した材料を用いることができる。
【0332】
[トランジスタ200B]
図16に示すように、トランジスタ200Bは、基板(図示せず。)の上に配置された絶縁体216と、絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216の上および導電体205の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、酸化物230c1、および酸化物230c2)と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250上に配置された導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、絶縁体222の上面の一部、絶縁体224の側面、酸化物230aの側面、酸化物230bの側面、および酸化物230bの上面に接して配置された絶縁体254(絶縁体254a、および絶縁体254b)と、を有する。ここで、酸化物230bの上面には、領域243a、および領域243bが、互いに離隔して形成されている。
【0333】
トランジスタ200Bは、導電体242を設けていない点において、前述のトランジスタ200などと異なる。以下では、前述のトランジスタ200などと異なる点について説明する。
【0334】
図16(B)に示すように、領域243aおよび領域243bは、導電体260を挟んで対向して形成されており、上面が絶縁体254と接することが好ましい。上面視において、領域243aおよび領域243bの導電体260側の側面は、導電体260の側面と一致する、または、領域243aおよび領域243bの一部が導電体260と重畳する、ことが好ましい。
【0335】
図16に示すトランジスタ200Bにおいては、例えば、酸化物230のキャリア密度を増大させ、低抵抗化させることができる元素をドーパントとして添加することによって、領域243(領域243aおよび領域243b)を形成すればよい。
【0336】
ドーパントとしては、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素などを用いればよい。このような元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。また、希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。また、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどの金属元素の中から選ばれるいずれか一つまたは複数の金属元素を添加してもよい。上述した中でもドーパントとしては、ホウ素、及びリンが好ましい。ホウ素、リンをドーパントとして用いる場合、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、設備投資を抑制することができる。上記元素の濃度は、SIMSなどを用いて測定すればよい。
【0337】
特に、領域243に添加する元素として、酸化物を形成しやすい元素を用いることが好ましい。このような元素としては、代表的にはホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム等がある。領域243に添加された当該元素は、酸化物230中の酸素を奪って酸化物を形成しうる。その結果、領域243には多くの酸素欠損が生じる。当該酸素欠損と、酸化物230中の水素とが結合することでキャリアが生じ、極めて低抵抗な領域となる。さらに、領域243に添加された元素は安定な酸化物の状態で領域243に存在するため、その後の工程で高い温度を要する処理が行われたとしても、領域243から脱離しにくい。すなわち、領域243に添加する元素として、酸化物を形成しやすい元素を用いることで、酸化物230中に高温のプロセスを経ても高抵抗化しにくい領域を形成できる。
【0338】
ここで、領域243の上記元素の濃度は、酸化物230の領域243が形成されていない部分の上記元素の濃度と、同等、またはそれよりも高いことが好ましい。また、領域243に含まれる酸素欠損の量は、酸化物230の領域243が形成されていない部分の酸素欠損の量と、同等、またはそれよりも多いことが好ましい。これにより、領域243は、酸化物230の領域243が形成されていない部分と比較して、キャリア密度が大きく、抵抗が低くなる。
【0339】
酸化物230にソース領域またはドレイン領域として機能する領域243を形成することで、金属で形成されたソース電極およびドレイン電極を設けることなく、領域243にプラグとして機能する導電体240を接続することができる。
【0340】
また、このようにドーパントを添加して領域243を形成すると、絶縁体254aおよび絶縁体254bにもドーパントが添加される。すなわち、酸化物230b、絶縁体254a、および絶縁体254bがドーパントに含まれる元素を有する。また、絶縁体254aおよび絶縁体254bが過剰酸素を有する場合、ドーパントによって、外部への過剰酸素の拡散を抑制できる場合がある。このような領域243を形成することで、トランジスタ200Bのオン電流を大きくし、S値(Subthreshold Swing、SSとも言う。)を良好にし、周波数特性の向上を図ることができる。
【0341】
ドーパントの添加によって領域243を形成する場合、例えば、酸化物230c1、酸化物230c2、絶縁体250、および導電体260を設ける位置に、ダミーゲートを形成し、当該ダミーゲートをマスクとして用いて、ドーパントの添加を行えばよい。これにより、酸化物230において、当該ダミーゲートが重畳していない領域に、上記の元素を含む領域243を形成することができる。
【0342】
ドーパントの添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。質量分離を行う場合、添加するイオン種およびその濃度を厳密に制御することができる。一方、質量分離を行わない場合、短時間で高濃度のイオンを添加することができる。また、原子または分子のクラスターを生成してイオン化するイオンドーピング法を用いてもよい。なお、ドーパントを、イオン、ドナー、アクセプター、不純物または元素などと言い換えてもよい。
【0343】
また、領域243に酸素欠損を形成する元素を添加して、熱処理を行うことで、チャネル形成領域として機能する領域234に含まれる水素を、領域243に含まれる酸素欠損で捕獲できる場合がある。これにより、トランジスタ200Bに安定な電気特性を与え、信頼性の向上を図ることができる。
【0344】
なお、図16において、トランジスタ200Aと同様に、酸化物230cを酸化物230c1と酸化物230c2の積層で示し、絶縁体254を絶縁体254aと絶縁体254bの積層で示したが、これに限られるものではない。酸化物230cおよび絶縁体254は、単層にしてもよいし、3層以上の積層構造にしてもよい。
【0345】
<半導体装置の構成例4>
図17は、本発明の一態様に係るトランジスタ200C、およびトランジスタ200C周辺の上面図および断面図である。
【0346】
図17(A)は、トランジスタ200Cを有する半導体装置の上面図である。また、図17(B)および図17(C)は当該半導体装置の断面図である。ここで、図17(B)は、図17(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200Cのチャネル長方向の断面図でもある。また、図17(C)は、図17(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200Cのチャネル幅方向の断面図でもある。なお、図17(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いている。
【0347】
なお、図17に示す半導体装置において、<半導体装置の構成例1>に示した半導体装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記している。
【0348】
以下、半導体装置の構成について、図17を用いて説明する。なお、本項目において、半導体装置の構成材料については<半導体装置の構成例1>で詳細に説明した材料を用いることができる。
【0349】
[トランジスタ200C]
図17に示すように、トランジスタ200Cは、基板(図示せず。)の上に配置された絶縁体216と、絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216の上および導電体205の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250上に配置された導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、酸化物230bの上面の一部と接する導電体242aおよび導電体242bと、絶縁体222の上面の一部、絶縁体224の側面、酸化物230aの側面、酸化物230bの側面、導電体242aの側面、導電体242aの上面、導電体242bの側面、導電体242bの上面、および酸化物230cの一部に接して配置された絶縁体254と、導電体260を覆って配置された絶縁体273と、を有する。
【0350】
絶縁体273を有し、酸化物230c、絶縁体250、および導電体260の一部が導電体242に重畳し、絶縁体280が酸化物230c、絶縁体250、および導電体260の上に設けられている点が、前述のトランジスタ200と異なる。以下では、トランジスタ200と異なる点について説明する。
【0351】
トランジスタ200Cにおいて、導電体260は、絶縁体250を介して導電体242aと重なる領域と、絶縁体250を介して導電体242bと重なる領域を有する。導電体260をこのような形状にすることにより、導電体260に位置合わせのマージンを持たせることができるので、酸化物230の導電体242aと導電体242bの間の領域に、導電体260を確実に重畳させ、オフセット領域が形成されるのを防ぐことができる。
【0352】
絶縁体273は、絶縁体254などと同様に、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)ことが好ましい。例えば、絶縁体273は、絶縁体280または絶縁体224より酸素透過性が低いことが好ましい。このような絶縁体273で導電体260を覆うことにより、導電体260が酸化されるのを抑制することができる。
【0353】
また、絶縁体273は、絶縁体254などと同様に、水、水素などの不純物が、絶縁体280側から導電体260に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体273は、絶縁体224より水素透過性が低いことが好ましい。
【0354】
なお、図17において、絶縁体273は、導電体260を覆い、絶縁体250の上面に接する構成にしているが、これに限られるものではない。例えば、絶縁体273が、導電体260、絶縁体250、および酸化物230cを覆い、絶縁体254に接する構成にしてもよい。
【0355】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態や実施例に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0356】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置の一形態を、図18および図19を用いて説明する。
【0357】
[記憶装置1]
本発明の一態様である容量素子を使用した、半導体装置(記憶装置)の一例を図18に示す。本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、およびトランジスタ200の上方に設けられている。なお、トランジスタ200として、先の実施の形態で説明したトランジスタ200などを用いることができる。
【0358】
トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減することができる。
【0359】
図18に示す半導体装置において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200の第1のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200の第2のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。
【0360】
また、図18に示す記憶装置は、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。
【0361】
<トランジスタ300>
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、ゲート電極として機能する導電体316、ゲート絶縁体として機能する絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ならびにソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。トランジスタ300は、pチャネル型、またはnチャネル型のいずれでもよい。
【0362】
ここで、図18に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域313(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域313の側面および上面を、絶縁体315を介して、導電体316が覆うように設けられている。なお、導電体316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁体を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0363】
なお、図18に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0364】
<容量素子100>
容量素子100は、トランジスタ200の上方に設けられる。容量素子100は、第1の電極として機能する導電体110、第2の電極として機能する導電体120、および誘電体として機能する絶縁体130を有する。
【0365】
また、例えば、導電体240上に設けた導電体112と、導電体110は、同時に形成することができる。なお、導電体112は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。
【0366】
図18では、導電体112、および導電体110は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0367】
また、絶縁体130は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
【0368】
例えば、絶縁体130には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いることが好ましい。当該構成により、容量素子100は、高誘電率(high-k)の絶縁体を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁体を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制することができる。
【0369】
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0370】
一方、絶縁耐力が大きい材料(低い比誘電率の材料)としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、樹脂などがある。
【0371】
<配線層>
各構造体の間には、層間膜、配線、プラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0372】
例えば、基板311上には、層間膜として、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。なお、絶縁体315、および導電体316は、絶縁体320に埋め込まれるように設けられている。また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子100、またはトランジスタ200と電気的に接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330はプラグ、または配線として機能する。
【0373】
また、層間膜として機能する絶縁体は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0374】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図18において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、プラグ、または配線として機能する。
【0375】
絶縁体354、および導電体356上には、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216が順に積層して設けられている。また、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216には、導電体218、及びトランジスタ200を構成する導電体(導電体205)等が埋め込まれている。なお、導電体218は、容量素子100、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。さらに、導電体120、および絶縁体130上には、絶縁体150が設けられている。
【0376】
層間膜として用いることができる絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0377】
例えば、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0378】
例えば、絶縁体212、絶縁体352、絶縁体354等には、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、樹脂などを有することが好ましい。または、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂と、の積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。
【0379】
また、導電体112、または導電体120上に設けられる絶縁体130、および絶縁体150の一方、または両方を抵抗率が1.0×1012Ωcm以上1.0×1015Ωcm以下、好ましくは5.0×1012Ωcm以上1.0×1014Ωcm以下、より好ましくは1.0×1013Ωcm以上5.0×1013Ωcm以下の絶縁体とすることが好ましい。絶縁体130、および絶縁体150の一方、または両方を上記のような抵抗率を有する絶縁体とすることで、当該絶縁体は、絶縁性を維持しつつ、トランジスタ200、トランジスタ300、容量素子100、および導電体112、導電体120等の配線間に蓄積される電荷を分散し、該電荷によるトランジスタ、該トランジスタを有する記憶装置の特性不良や静電破壊を抑制することができ、好ましい。このような絶縁体として、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンを用いることができる。
【0380】
また、上記のような抵抗率を有する絶縁体として、絶縁体140を導電体112の下層に設けてもよい。この場合、絶縁体281上に絶縁体140を形成し、絶縁体140、絶縁体281、絶縁体274、絶縁体280、絶縁体254などに開口部を形成し、当該開口部内に絶縁体241の形成や、トランジスタ200、導電体218などと電気的に接続する導電体240の形成を行えばよい。絶縁体140は、絶縁体130、または絶縁体150と同様の材料を用いることができる。
【0381】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。従って、絶縁体210、絶縁体350等には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体を用いればよい。
【0382】
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0383】
配線、プラグに用いることができる導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0384】
例えば、導電体328、導電体330、導電体356、導電体218、導電体110、導電体112、導電体120等としては、上記の材料で形成される金属材料、合金材料、金属窒化物材料、金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0385】
<<酸化物半導体が設けられた層の配線、またはプラグ>>
なお、トランジスタ200に、酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体の近傍に過剰酸素領域を有する絶縁体が設けることがある。その場合、該過剰酸素領域を有する絶縁体と、該過剰酸素領域を有する絶縁体に設ける導電体との間に、バリア性を有する絶縁体を設けることが好ましい。
【0386】
例えば、図18では、絶縁体280および絶縁体281と、導電体240との間に、絶縁体241を設けるとよい。絶縁体241が、絶縁体280、および絶縁体281と、導電体240との間に存在することで、導電体240による、絶縁体280、および絶縁体281に含まれる酸素の吸収、すなわち導電体240の酸化を抑制することができる。
【0387】
つまり、絶縁体241を設けることで、絶縁体280が有する過剰酸素が、導電体240に吸収されることを抑制することができる。また、絶縁体241を有することで、不純物である水素が、導電体240を介して、トランジスタ200へ拡散することを抑制することができる。
【0388】
なお、絶縁体241としては、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0389】
以上が構成例についての説明である。本構成を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。また、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。また、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。また、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。
【0390】
[記憶装置2]
本発明の一態様である半導体装置を使用した、記憶装置の一例を図19に示す。図19に示す記憶装置は、図18で示したトランジスタ200、トランジスタ300、および容量素子100を有する半導体装置に加え、トランジスタ400を有している。
【0391】
トランジスタ400は、トランジスタ200の第2のゲート電圧を制御することができる。例えば、トランジスタ400の第1のゲート及び第2のゲートをソースとダイオード接続し、トランジスタ400のソースと、トランジスタ200の第2のゲートを接続する構成とする。当該構成でトランジスタ200の第2のゲートの負電位を保持するとき、トランジスタ400の第1のゲート-ソース間の電圧および、第2のゲート-ソース間の電圧は、0Vになる。トランジスタ400において、第2のゲート電圧及び第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流が非常に小さいため、トランジスタ200およびトランジスタ400に電源供給をしなくても、トランジスタ200の第2のゲートの負電位を長時間維持することができる。これにより、トランジスタ200、およびトランジスタ400を有する記憶装置は、長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。
【0392】
従って、図19において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200の第1のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200の第2のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。配線1007はトランジスタ400のソースと電気的に接続され、配線1008はトランジスタ400の第1のゲートと電気的に接続され、配線1009はトランジスタ400の第2のゲートと電気的に接続され、配線1010はトランジスタ400のドレインと電気的に接続されている。ここで、配線1006、配線1007、配線1008、及び配線1009が電気的に接続されている。
【0393】
また、図19に示す記憶装置は、図18に示す記憶装置と同様に、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。なお、1個のトランジスタ400は、複数のトランジスタ200の第2のゲート電圧を制御することができる。そのため、トランジスタ400は、トランジスタ200よりも、少ない個数を設けるとよい。
【0394】
<トランジスタ400>
トランジスタ400は、トランジスタ200と、同じ層に形成されており、並行して作製することができるトランジスタである。トランジスタ400は、第1のゲート電極として機能する導電体460(導電体460a、および導電体460b)と、第2のゲート電極として機能する導電体405と、ゲート絶縁体として機能する絶縁体222、絶縁体424a、絶縁体424b、および絶縁体450と、チャネルが形成される領域を有する酸化物430cと、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体442a、酸化物431a、および酸化物431bと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体442b、酸化物432a、および酸化物432bと、導電体440(導電体440a、および導電体440b)と、を有する。
【0395】
トランジスタ400において、導電体405は、導電体205と、同じ層に形成される。絶縁体424a、および絶縁体424bは、絶縁体224と、同じ層に形成される。酸化物431a、および酸化物432aは、酸化物230aと、同じ層に形成され、酸化物431b、および酸化物432bは、酸化物230bと、同じ層に形成される。導電体442は、導電体242と、同じ層に形成される。酸化物430cは、酸化物230cと、同じ層に形成される。絶縁体450は、絶縁体250と、同じ層に形成される。導電体460は、導電体260と、同じ層に形成される。
【0396】
なお、同じ層に形成された構造体は、同時に形成することができる。例えば、酸化物430cは、酸化物230cとなる酸化膜を加工することで、形成することができる。
【0397】
トランジスタ400の活性層として機能する酸化物430cは、酸化物230などと同様に、酸素欠損が低減され、水、水素などの不純物が低減されている。これにより、トランジスタ400のしきい値電圧をより大きくし、オフ電流を低減し、第2のゲート電圧及び第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流を非常に小さくすることができる。
【0398】
<<ダイシングライン>>
以下では、大面積基板を半導体素子ごとに分断することによって、複数の半導体装置をチップ状で取り出す場合に設けられるダイシングライン(スクライブライン、分断ライン、又は切断ラインと呼ぶ場合がある)について説明する。分断方法としては、例えば、まず、基板に半導体素子を分断するための溝(ダイシングライン)を形成した後、ダイシングラインにおいて切断し、複数の半導体装置に分断(分割)する場合がある。
【0399】
先の実施の形態で説明したトランジスタ200および本実施の形態で示すトランジスタ400の外縁では、図19に示すように、絶縁体254と、絶縁体222とが接する。したがって、絶縁体254と、絶縁体222とが接する領域をダイシングラインとなるように設計する際、ダイシングラインの設計自由度を高くことができる。このとき、絶縁体222と、絶縁体254とを同材料、および同方法を用いて形成してもよい。絶縁体222、および絶縁体254を、同材料、および同方法で設けることで、密着性を高めることができる。例えば、酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0400】
当該構造により、絶縁体222、および絶縁体254で、絶縁体224、トランジスタ200、およびトランジスタ400を包み込むことができる。絶縁体222、および絶縁体254は、酸素、水素、及び水の拡散を抑制する機能を有しているため、本実施の形態に示す半導体素子が形成された回路領域ごとに、基板を分断することにより、複数のチップに加工しても、分断した基板の側面方向から、水、水素などの不純物が混入し、トランジスタ200、およびトランジスタ400に拡散することを防ぐことができる。
【0401】
また、当該構造により、絶縁体224の過剰酸素が絶縁体254、および絶縁体222の外部に拡散することを防ぐことができる。従って、絶縁体224の過剰酸素は、効率的にトランジスタ200、またはトランジスタ400におけるチャネルが形成される酸化物に供給される。当該酸素により、トランジスタ200、またはトランジスタ400におけるチャネルが形成される酸化物の酸素欠損を低減することができる。これにより、トランジスタ200、またはトランジスタ400におけるチャネルが形成される酸化物を欠陥準位密度が低い、安定な特性を有する酸化物半導体とすることができる。つまり、トランジスタ200、またはトランジスタ400の電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。
【0402】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0403】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図20および図21を用いて、本発明の一態様に係る、酸化物を半導体に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタと呼ぶ場合がある。)、および容量素子が適用されている記憶装置(以下、OSメモリ装置と呼ぶ場合がある。)について説明する。OSメモリ装置は、少なくとも容量素子と、容量素子の充放電を制御するOSトランジスタを有する記憶装置である。OSトランジスタのオフ電流は極めて小さいので、OSメモリ装置は優れた保持特性をもち、不揮発性メモリとして機能させることができる。
【0404】
<記憶装置の構成例>
図20(A)にOSメモリ装置の構成の一例を示す。記憶装置1400は、周辺回路1411、およびメモリセルアレイ1470を有する。周辺回路1411は、行回路1420、列回路1430、出力回路1440、およびコントロールロジック回路1460を有する。
【0405】
列回路1430は、例えば、列デコーダ、プリチャージ回路、センスアンプ、書き込み回路等を有する。プリチャージ回路は、配線をプリチャージする機能を有する。センスアンプは、メモリセルから読み出されたデータ信号を増幅する機能を有する。なお、上記配線は、メモリセルアレイ1470が有するメモリセルに接続されている配線であり、詳しくは後述する。増幅されたデータ信号は、出力回路1440を介して、データ信号RDATAとして記憶装置1400の外部に出力される。また、行回路1420は、例えば、行デコーダ、ワード線ドライバ回路等を有し、アクセスする行を選択することができる。
【0406】
記憶装置1400には、外部から電源電圧として低電源電圧(VSS)、周辺回路1411用の高電源電圧(VDD)、メモリセルアレイ1470用の高電源電圧(VIL)が供給される。また、記憶装置1400には、制御信号(CE、WE、RE)、アドレス信号ADDR、データ信号WDATAが外部から入力される。アドレス信号ADDRは、行デコーダおよび列デコーダに入力され、データ信号WDATAは書き込み回路に入力される。
【0407】
コントロールロジック回路1460は、外部から入力される制御信号(CE、WE、RE)を処理して、行デコーダ、列デコーダの制御信号を生成する。制御信号CEは、チップイネーブル信号であり、制御信号WEは、書き込みイネーブル信号であり、制御信号REは、読み出しイネーブル信号である。コントロールロジック回路1460が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて、他の制御信号を入力すればよい。
【0408】
メモリセルアレイ1470は、行列状に配置された、複数個のメモリセルMCと、複数の配線を有する。なお、メモリセルアレイ1470と行回路1420とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一列に有するメモリセルMCの数などによって決まる。また、メモリセルアレイ1470と列回路1430とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一行に有するメモリセルMCの数などによって決まる。
【0409】
なお、図20(A)において、周辺回路1411とメモリセルアレイ1470を同一平面上に形成する例について示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、図20(B)に示すように、周辺回路1411の一部の上に、メモリセルアレイ1470が重なるように設けられてもよい。例えば、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にしてもよい。
【0410】
図21に上述のメモリセルMCに適用できるメモリセルの構成例について説明する。
【0411】
[DOSRAM]
図21(A)乃至(C)に、DRAMのメモリセルの回路構成例を示す。本明細書等において、1OSトランジスタ1容量素子型のメモリセルを用いたDRAMを、DOSRAM(登録商標)(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶ場合がある。図21(A)に示す、メモリセル1471は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。なお、トランジスタM1は、ゲート(トップゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有する。
【0412】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
【0413】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、及び読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
【0414】
また、メモリセルMCは、メモリセル1471に限定されず、回路構成の変更を行うことができる。例えば、メモリセルMCは、図21(B)に示すメモリセル1472のように、トランジスタM1のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図21(C)に示すメモリセル1473ように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM1で構成されたメモリセルとしてもよい。
【0415】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1471等に用いる場合、トランジスタM1としてトランジスタ200を用い、容量素子CAとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に小さくすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に小さいため、メモリセル1471、メモリセル1472、メモリセル1473に対して多値データ、又はアナログデータを保持することができる。
【0416】
また、DOSRAMにおいて、上記のように、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にすると、ビット線を短くすることができる。これにより、ビット線容量が小さくなり、メモリセルの保持容量を低減することができる。
【0417】
[NOSRAM]
図21(D)乃至(G)に、2トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの回路構成例を示す。図21(D)に示す、メモリセル1474は、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子CBと、を有する。なお、トランジスタM2は、トップゲート(単にゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有する。本明細書等において、トランジスタM2にOSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(登録商標)(Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ぶ場合がある。
【0418】
トランジスタM2の第1端子は、容量素子CBの第1端子と接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM2のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM2のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CBの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM3の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM3の第2端子は、配線SLと接続され、トランジスタM3のゲートは、容量素子CBの第1端子と接続されている。
【0419】
配線WBLは、書き込みビット線として機能し、配線RBLは、読み出しビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CBの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、データ保持の最中、データの読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM2のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM2のしきい値電圧を増減することができる。
【0420】
また、メモリセルMCは、メモリセル1474に限定されず、回路の構成を適宜変更することができる。例えば、メモリセルMCは、図21(E)に示すメモリセル1475のように、トランジスタM2のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図21(F)に示すメモリセル1476のように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM2で構成されたメモリセルとしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図21(G)に示すメモリセル1477のように、配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとしてまとめた構成であってもよい。
【0421】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1474等に用いる場合、トランジスタM2としてトランジスタ200を用い、トランジスタM3としてトランジスタ300を用い、容量素子CBとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM2としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM2のリーク電流を非常に小さくすることができる。これにより、書き込んだデータをトランジスタM2によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に小さいため、メモリセル1474に多値データ、又はアナログデータを保持することができる。メモリセル1475乃至メモリセル1477も同様である。
【0422】
なお、トランジスタM3は、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼ぶ場合がある)であってもよい。Siトランジスタの導電型は、nチャネル型としてもよいし、pチャネル型としてもよい。Siトランジスタは、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合がある。よって、読み出しトランジスタとして機能するトランジスタM3として、Siトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタM3にSiトランジスタを用いることで、トランジスタM3の上に積層してトランジスタM2を設けることができるので、メモリセルの占有面積を低減し、記憶装置の高集積化を図ることができる。
【0423】
また、トランジスタM3はOSトランジスタであってもよい。トランジスタM2およびトランジスタM3にOSトランジスタを用いた場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0424】
また、図21(H)に3トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの一例を示す。図21(H)に示すメモリセル1478は、トランジスタM4乃至トランジスタM6、および容量素子CCを有する。容量素子CCは適宜設けられる。メモリセル1478は、配線BIL、配線RWL、配線WWL、配線BGL、および配線GNDLに電気的に接続されている。配線GNDLは低レベル電位を与える配線である。なお、メモリセル1478を、配線BILに代えて、配線RBL、配線WBLに電気的に接続してもよい。
【0425】
トランジスタM4は、バックゲートを有するOSトランジスタであり、バックゲートは配線BGLに電気的に接続されている。なお、トランジスタM4のバックゲートとゲートとを互いに電気的に接続してもよい。あるいは、トランジスタM4はバックゲートを有さなくてもよい。
【0426】
なお、トランジスタM5、トランジスタM6はそれぞれ、nチャネル型Siトランジスタまたはpチャネル型Siトランジスタでもよい。或いは、トランジスタM4乃至トランジスタM6がOSトランジスタでもよい、この場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0427】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1478に用いる場合、トランジスタM4としてトランジスタ200を用い、トランジスタM5、トランジスタM6としてトランジスタ300を用い、容量素子CCとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM4としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM4のリーク電流を非常に小さくすることができる。
【0428】
なお、本実施の形態に示す、周辺回路1411、メモリセルアレイ1470等の構成は、上記に限定されるものではない。これらの回路、および当該回路に接続される配線、回路素子等の、配置または機能は、必要に応じて、変更、削除、または追加してもよい。
【0429】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態、実施例などに示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0430】
(実施の形態5)
本実施の形態では、図22を用いて、本発明の半導体装置が実装されたチップ1200の一例を示す。チップ1200には、複数の回路(システム)が実装されている。このように、複数の回路(システム)を一つのチップに集積する技術を、システムオンチップ(System on Chip:SoC)と呼ぶ場合がある。
【0431】
図22(A)に示すように、チップ1200は、CPU(Central Processing Unit)1211、GPU(Graphics Processing Unit)1212、一または複数のアナログ演算部1213、一または複数のメモリコントローラ1214、一または複数のインターフェース1215、一または複数のネットワーク回路1216等を有する。
【0432】
チップ1200には、バンプ(図示しない)が設けられ、図22(B)に示すように、プリント基板(Printed Circuit Board:PCB)1201の第1の面と接続する。また、PCB1201の第1の面の裏面には、複数のバンプ1202が設けられており、マザーボード1203と接続する。
【0433】
マザーボード1203には、DRAM1221、フラッシュメモリ1222等の記憶装置が設けられていてもよい。例えば、DRAM1221に先の実施の形態に示すDOSRAMを用いることができる。また、例えば、フラッシュメモリ1222に先の実施の形態に示すNOSRAMを用いることができる。
【0434】
CPU1211は、複数のCPUコアを有することが好ましい。また、GPU1212は、複数のGPUコアを有することが好ましい。また、CPU1211、およびGPU1212は、それぞれ一時的にデータを格納するメモリを有していてもよい。または、CPU1211、およびGPU1212に共通のメモリが、チップ1200に設けられていてもよい。該メモリには、前述したNOSRAMや、DOSRAMを用いることができる。また、GPU1212は、多数のデータの並列計算に適しており、画像処理や積和演算に用いることができる。GPU1212に、本発明の酸化物半導体を用いた画像処理回路や、積和演算回路を設けることで、画像処理、および積和演算を低消費電力で実行することが可能になる。
【0435】
また、CPU1211、およびGPU1212が同一チップに設けられていることで、CPU1211およびGPU1212間の配線を短くすることができ、CPU1211からGPU1212へのデータ転送、CPU1211、およびGPU1212が有するメモリ間のデータ転送、およびGPU1212での演算後に、GPU1212からCPU1211への演算結果の転送を高速に行うことができる。
【0436】
アナログ演算部1213はA/D(アナログ/デジタル)変換回路、およびD/A(デジタル/アナログ)変換回路の一、または両方を有する。また、アナログ演算部1213に上記積和演算回路を設けてもよい。
【0437】
メモリコントローラ1214は、DRAM1221のコントローラとして機能する回路、およびフラッシュメモリ1222のインターフェースとして機能する回路を有する。
【0438】
インターフェース1215は、表示装置、スピーカー、マイクロフォン、カメラ、コントローラなどの外部接続機器とのインターフェース回路を有する。コントローラとは、マウス、キーボード、ゲーム用コントローラなどを含む。このようなインターフェースとして、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などを用いることができる。
【0439】
ネットワーク回路1216は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク回路を有する。また、ネットワークセキュリティー用の回路を有してもよい。
【0440】
チップ1200には、上記回路(システム)を同一の製造プロセスで形成することが可能である。そのため、チップ1200に必要な回路の数が増えても、製造プロセスを増やす必要が無く、チップ1200を低コストで作製することができる。
【0441】
GPU1212を有するチップ1200が設けられたPCB1201、DRAM1221、およびフラッシュメモリ1222が設けられたマザーボード1203は、GPUモジュール1204と呼ぶことができる。
【0442】
GPUモジュール1204は、SoC技術を用いたチップ1200を有しているため、そのサイズを小さくすることができる。また、画像処理に優れていることから、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップPC、携帯型(持ち出し可能な)ゲーム機などの携帯型電子機器に用いることが好適である。また、GPU1212を用いた積和演算回路により、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)などの手法を実行することができるため、チップ1200をAIチップ、またはGPUモジュール1204をAIシステムモジュールとして用いることができる。
【0443】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態、実施例などに示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0444】
(実施の形態6)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す半導体装置を用いた記憶装置の応用例について説明する。先の実施の形態に示す半導体装置は、例えば、各種電子機器(例えば、情報端末、コンピュータ、スマートフォン、電子書籍端末、デジタルカメラ(ビデオカメラも含む)、録画再生装置、ナビゲーションシステムなど)の記憶装置に適用できる。なお、ここで、コンピュータとは、タブレット型のコンピュータ、ノート型のコンピュータ、デスクトップ型のコンピュータの他、サーバシステムのような大型のコンピュータを含むものである。または、先の実施の形態に示す半導体装置は、メモリカード(例えば、SDカード)、USBメモリ、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用される。図23にリムーバブル記憶装置の幾つかの構成例を模式的に示す。例えば、先の実施の形態に示す半導体装置は、パッケージングされたメモリチップに加工され、様々なストレージ装置、リムーバブルメモリに用いられる。
【0445】
図23(A)はUSBメモリの模式図である。USBメモリ1100は、筐体1101、キャップ1102、USBコネクタ1103および基板1104を有する。基板1104は、筐体1101に収納されている。例えば、基板1104には、メモリチップ1105、コントローラチップ1106が取り付けられている。メモリチップ1105などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0446】
図23(B)はSDカードの外観の模式図であり、図23(C)は、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード1110は、筐体1111、コネクタ1112および基板1113を有する。基板1113は筐体1111に収納されている。例えば、基板1113には、メモリチップ1114、コントローラチップ1115が取り付けられている。基板1113の裏面側にもメモリチップ1114を設けることで、SDカード1110の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板1113に設けてもよい。これによって、ホスト装置とSDカード1110間の無線通信によって、メモリチップ1114のデータの読み出し、書き込みが可能となる。メモリチップ1114などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0447】
図23(D)はSSDの外観の模式図であり、図23(E)は、SSDの内部構造の模式図である。SSD1150は、筐体1151、コネクタ1152および基板1153を有する。基板1153は筐体1151に収納されている。例えば、基板1153には、メモリチップ1154、メモリチップ1155、コントローラチップ1156が取り付けられている。メモリチップ1155はコントローラチップ1156のワークメモリであり、例えばDOSRAMチップを用いればよい。基板1153の裏面側にもメモリチップ1154を設けることで、SSD1150の容量を増やすことができる。メモリチップ1154などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0448】
本実施の形態は、他の実施の形態、実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0449】
(実施の形態7)
本発明の一態様に係る半導体装置は、CPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップに用いることができる。図24に、本発明の一態様に係るCPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップを備えた電子機器の具体例を示す。
【0450】
<電子機器・システム>
本発明の一態様に係るGPU又はチップは、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、本発明の一態様に係る集積回路又はチップを電子機器に設けることにより、電子機器に人工知能を搭載することができる。
【0451】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0452】
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0453】
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。図24に、電子機器の例を示す。
【0454】
[携帯電話]
図24(A)には、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)が図示されている。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
【0455】
情報端末5500は、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、会話を認識してその会話内容を表示部5511に表示するアプリケーション、表示部5511に備えるタッチパネルに対してユーザが入力した文字、図形などを認識して、表示部5511に表示するアプリケーション、指紋や声紋などの生体認証を行うアプリケーションなどが挙げられる。
【0456】
[情報端末]
図24(B)には、デスクトップ型情報端末5300が図示されている。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303と、を有する。
【0457】
デスクトップ型情報端末5300は、先述した情報端末5500と同様に、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、設計支援ソフトウェア、文章添削ソフトウェア、献立自動生成ソフトウェアなどが挙げられる。また、デスクトップ型情報端末5300を用いることで、新規の人工知能の開発を行うことができる。
【0458】
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、及びデスクトップ用情報端末を例として、それぞれ図24(A)、(B)に図示したが、スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどが挙げられる。
【0459】
[電化製品]
図24(C)は、電化製品の一例である電気冷凍冷蔵庫5800を示している。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
【0460】
電気冷凍冷蔵庫5800に本発明の一態様のチップを適用することによって、人工知能を有する電気冷凍冷蔵庫5800を実現することができる。人工知能を利用することによって電気冷凍冷蔵庫5800は、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材、その食材の消費期限などを基に献立を自動生成する機能や、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材に合わせた温度に自動的に調節する機能などを有することができる。
【0461】
本一例では、電化製品として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
【0462】
[ゲーム機]
図24(D)は、ゲーム機の一例である携帯ゲーム機5200を示している。携帯ゲーム機5200は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
【0463】
携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、低消費電力の携帯ゲーム機5200を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0464】
更に、携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、人工知能を有する携帯ゲーム機5200を実現することができる。
【0465】
本来、ゲームの進行、ゲーム上に登場する生物の言動、ゲーム上で発生する現象などの表現は、そのゲームが有するプログラムによって定められているが、携帯ゲーム機5200に人工知能を適用することにより、ゲームのプログラムに限定されない表現が可能になる。例えば、プレイヤーが問いかける内容、ゲームの進行状況、ゲーム中のイベントが発生するタイミング、ゲーム上に登場する人物の言動、等をゲームのプログラムに限定されずに変化させて表現することが可能となる。
【0466】
また、携帯ゲーム機5200で複数のプレイヤーが必要なゲームを行う場合、人工知能によって擬人的にゲームプレイヤーを構成することができるため、対戦相手を人工知能によるゲームプレイヤーとすることによって、1人でもゲームを行うことができる。
【0467】
図24(D)では、ゲーム機の一例として携帯ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機はこれに限定されない。本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機としては、例えば、家庭用の据え置き型ゲーム機、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどが挙げられる。
【0468】
[移動体]
本発明の一態様のGPU又はチップは、移動体である自動車、及び自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0469】
図24(E1)は移動体の一例である自動車5700を示し、図24(E2)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。図24(E2)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
【0470】
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することで、様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目やレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることが可能である。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることも可能である。
【0471】
表示パネル5704には、自動車5700の外側に設けられた撮像装置(図示しない。)からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
【0472】
本発明の一態様のGPU又はチップは人工知能の構成要素として適用できるため、例えば、当該チップを自動車5700の自動運転システムに用いることができる。また、当該チップを道路案内、危険予測などを行うシステムに用いることができる。表示パネル5701乃至表示パネル5704には、道路案内、危険予測などの情報を表示する構成としてもよい。
【0473】
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
【0474】
[放送システム]
本発明の一態様のGPU又はチップは、放送システムに適用することができる。
【0475】
図24(F)は、放送システムにおけるデータ伝送を模式的に示している。具体的には、図24(F)は、放送局5680から送信された電波(放送信号)が、各家庭のテレビジョン受信装置(TV)5600に届くまでの経路を示している。TV5600は、受信装置を備え(図示しない。)、アンテナ5650で受信された放送信号は、当該受信装置を介して、TV5600に送信される。
【0476】
図24(F)では、アンテナ5650は、UHF(Ultra High Frequency)アンテナを図示しているが、アンテナ5650としては、BS・110°CSアンテナ、CSアンテナなども適用できる。
【0477】
電波5675A、電波5675Bは地上波放送用の放送信号であり、電波塔5670は受信した電波5675Aを増幅して、電波5675Bの送信を行う。各家庭では、アンテナ5650で電波5675Bを受信することで、TV5600で地上波TV放送を視聴することができる。なお、放送システムは、図24(F)に示す地上波放送に限定せず、人工衛星を用いた衛星放送、光回線によるデータ放送などとしてもよい。
【0478】
上述した放送システムは、本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用した放送システムとしてもよい。放送局5680から各家庭のTV5600に放送データを送信するとき、エンコーダによって放送データの圧縮が行われ、アンテナ5650が当該放送データを受信したとき、TV5600に含まれる受信装置のデコーダによって当該放送データの復元が行われる。人工知能を利用することによって、例えば、エンコーダの圧縮方法の一である動き補償予測において、表示画像に含まれる表示パターンの認識を行うことができる。また、人工知能を利用したフレーム内予測などを行うこともできる。また、例えば、解像度の低い放送データを受信して、解像度の高いTV5600で当該放送データの表示を行うとき、デコーダによる放送データの復元において、アップコンバートなどの画像の補間処理を行うことができる。
【0479】
上述した人工知能を利用した放送システムは、放送データの量が増大する超高精細度テレビジョン(UHDTV:4K、8K)放送に対して好適である。
【0480】
また、TV5600側における人工知能の応用として、例えば、TV5600に人工知能を有する録画装置を設けてもよい。このような構成にすることによって、当該録画装置にユーザの好みを人工知能に学習させることで、ユーザの好みにあった番組を自動的に録画することができる。
【0481】
本実施の形態で説明した電子機器、その電子機器の機能、人工知能の応用例、その効果などは、他の電子機器の記載と適宜組み合わせることができる。
【0482】
本実施の形態は、他の実施の形態、実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0483】
本実施例では、本発明の一態様に係る半導体装置として、図9および図10に示す、トランジスタ10dと同様の構成を有するトランジスタ(以下、試料1と呼ぶ。)を作製した。当該半導体装置を、走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)を用いて観察を行った結果について説明する。
【0484】
まず、試料1の構成について説明する。図9および図10に示すように、試料1は、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230bと、酸化物230bの上に配置された酸化物230cと、酸化物230cの上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、を有する。なお、試料1は、図9および図10では図示していないが、図11に示すトランジスタ200と同様に、絶縁体224と酸化物230bの間に酸化物230aを有する。また、導電体260は導電体260aと導電体260bの積層膜である。
【0485】
絶縁体224として、膜厚35nmの酸化窒化シリコンを用いた。
【0486】
酸化物230aとして、DCスパッタリング法を用いて成膜した、膜厚が5nmのIn-Ga-Zn酸化物を用いた。なお、酸化物230aの成膜には、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、成膜ガスとして酸素ガス45sccmを用い、成膜圧力を0.7Pa(キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG-2によって計測した。)とし、成膜電力を500Wとし、基板温度を200℃とし、ターゲット-基板間距離を60mmとした。
【0487】
酸化物230bとして、DCスパッタリング法を用いて成膜した、膜厚が15nmのIn-Ga-Zn酸化物を用いた。なお、酸化物230bの成膜には、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、成膜ガスとして、アルゴンガス30sccm、酸素ガス15sccmを用い、成膜圧力を0.7Pa(キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG-2によって計測した。)とし、成膜電力を500Wとし、基板温度を200℃とし、ターゲット-基板間距離を60mmとした。
【0488】
酸化物230cは、積層膜である。酸化物230cの下層の膜として、DCスパッタリング法を用いて成膜した、膜厚が5nmのIn-Ga-Zn酸化物を用いた。なお、酸化物230cの下層の膜の成膜には、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、成膜ガスとして、酸素ガス45sccmを用い、成膜圧力を0.7Pa(キャノンアネルバ製ミニチュアゲージMG-2によって計測した。)とし、成膜電力を500Wとし、基板温度を200℃とし、ターゲット-基板間距離を60mmとした。
【0489】
また、酸化物230cの上層の膜として、DCスパッタリング法を用いて成膜した、膜厚が5nmのIn-Ga-Zn酸化物を用いた。なお、酸化物230cの上層の成膜には、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、他の成膜条件は酸化物230aと同様にした。
【0490】
絶縁体250として、膜厚10nmの酸化窒化シリコンを用いた。また、導電体260aとして、膜厚5nmの窒化チタンを用いた。また、導電体260bとして、タングステンを用いた。
【0491】
以上のような構成を有する試料1は、チャネル長200nm、チャネル幅60nmのトランジスタである。なお、試料1は、トランジスタ200と同様に、上記構成に加えて、さらに、絶縁体214、絶縁体216、導電体205、絶縁体222、導電体242、絶縁体254、導電体240、絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体281等を有する。
【0492】
作製した試料1について、日本電子製「JEM-ARM200F」を用いて、加速電圧を200kVとして、Cs-TEMモードで断面TEM像の撮影を行った。断面TEM像の撮影結果を図25に示す。図25は、酸化物230のチャネル形成領域近傍のチャネル幅方向の断面TEM像である。
【0493】
さらに、図26に、図25に示す領域A乃至領域Fの拡大断面TEM像を示す。ここで、領域Aは、酸化物230bの上面に接する酸化物230cを含む。また、領域Bは、酸化物230bの上面端部に接する酸化物230cを含む。また、領域Cは、酸化物230bの側面に接する酸化物230cを含む。また、領域Dは、絶縁体224の側面に接する酸化物230cを含む。また、領域Eは、絶縁体224の上面に接する酸化物230cを含む。また、領域Fは、酸化物230bを含む。
【0494】
図25および図26(A)乃至(E)に示す領域A乃至領域Eにおいて、酸化物230cは、2nm乃至5nm程度の非常に薄い膜厚で成膜された。しかしながら、図26(A)乃至図26(E)に示すように、酸化物230cは、いずれの領域においても、層状のCAAC-OSが形成されている。ここで、図26(A)乃至図26(E)に示す矢印は、酸化物230cの膜に概略垂直な方向を示しているが、当該矢印は、酸化物230cの層状の結晶の法線方向、すなわちCAAC-OSのc軸方向と概略一致している。よって、酸化物230cのCAAC-OSが、酸化物230cの被形成面または酸化物230cの膜表面の凹凸に沿って配列していることが分かる。
【0495】
また、図25および図26(F)に示すように、領域Fにおいても、層状の結晶は、絶縁体224の上面に概略平行に配列している。つまり、酸化物230bのCAAC-OSが、酸化物230bの被形成面または膜表面に沿って配列していることが分かる。
【0496】
以上より、試料1において、図10(B)の領域54に対応する領域Fが図10(D)に示す結晶構造を有し、図10(B)の領域55に対応する領域Cが図10(E)に示す結晶構造を有することが推測される。よって、試料1は、図10(C)に示す概略バンドダイアグラムのモデルを満たすので、キャリアの伝送の抑制を防ぐことができると考えられる。
【0497】
以上、本実施例に示す構成、方法などは、少なくともその一部を本明細書中に記載する実施の形態および実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例2】
【0498】
本実施例では、本発明の一態様である金属酸化物の結晶構造について評価を行った。具体的には、金属酸化物を形成した試料2に対して、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡(HAADF-STEM:High-Angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscope)像の観察、および、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いた元素分析を行った。
【0499】
はじめに、試料2の作製方法について説明する。
【0500】
イットリア安定化ジルコニア(YSZ)基板上に、金属酸化物として、スパッタリング法により、In-Ga-Zn酸化物を100nmの膜厚で成膜した。In-Ga-Zn酸化物の成膜には、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、酸素ガス流量を30sccmとし、圧力を0.4Paとし、直流電源を200Wとし、基板温度を300℃とした。
【0501】
次に、加熱処理を行った。当該加熱処理は、酸素を含む雰囲気にて温度1200℃、1時間の処理を行った。
【0502】
以上により、試料2を作製した。
【0503】
作製した試料2のHAADF-STEM像を取得した。HAADF-STEM像の取得には、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いた。
【0504】
HAADF-STEM像で観察される点の輝度は、当該点に対応する原子の原子番号の2乗に比例して、高くなる。つまり、原子番号が大きい原子に対応する点では、より白く(輝度が高く)観察される。In-Ga-Zn酸化物において、原子番号は、Inが一番大きく、次いで、GaおよびZnが大きく、Oが一番小さい。よって、Inに対応する点の輝度は高く、より白く観察される。また、GaおよびZnに対応する点の輝度はInよりも低く、Inに対応する点よりも黒く観察される。また、Oに対応する点の輝度は非常に低いため、Oの位置を特定するのが困難な場合がある。
【0505】
図27の右側に試料2の断面HAADF-STEM像を示す。紙面の上下方向は、金属酸化物の被形成面(YSZ基板表面)の法線方向であり、紙面の左右方向および法線方向は、金属酸化物の被形成面(YSZ基板表面)に平行な方向である。
【0506】
図27の右側に示す断面HAADF-STEM像より、試料2に形成した金属酸化物において、層状構造が形成されていることが確認できた。また、輝度の異なる点が観察された。比較的輝度が高い点は、Inに対応する点であり、比較的輝度が低い点は、GaまたはZnに対応する点であると推定される。また、輝度が同程度の点が、紙面の左右方向に並んでいる様子が観察された。比較的輝度が高い点が紙面の左右方向に並んだ列は、InO層であり、比較的輝度が低い点が紙面の左右方向に並んだ列は、(Ga,Zn)O層であると推定される。また、比較的輝度が高い点が紙面の左右方向に並んだ列と、比較的輝度が低い点が紙面の左右方向に並んだ列とは、紙面の上下方向に、交互に観察された。したがって、試料2に形成した金属酸化物において、InO層と(Ga,Zn)O層とが積層した層状構造を形成していることが確認できた。
【0507】
次に、EDXを用いて、試料2の元素分析を行った。EDX測定のうち、領域内を走査しながら測定し、領域内を2次元に評価することをEDX面分析と呼ぶ場合がある。また、EDX面分析から、線状の領域のデータを抽出し、原子濃度について領域内の分布を評価することを、EDX線分析と呼ぶ場合がある。
【0508】
なお、元素分析装置として、日本電子株式会社製エネルギー分散型X線分析装置JED-2300Tを用いた。また、試料から放出されたX線の検出にはSiドリフト検出器を用いた。
【0509】
図27の右側に示す断面HAADF-STEM像を取得した領域と同じ領域に対して行ったEDX線分析の測定結果を、図27の左側に示す。図27の左側の図において、縦軸は、基準となる位置(0nm)からの、金属酸化物の被形成面(YSZ基板表面)の法線方向の距離(Distance)[nm]を示す。また、横軸は、構成元素中の各元素の割合(Composition ratio)[atomic%]を示す。
【0510】
図27より、比較的輝度が高い点が紙面の左右方向に並んだ列は、Inの割合が最も高いことから、InO層であることが分かった。また、比較的輝度が低い点が紙面の左右方向に並んだ列は、GaまたはZnの割合が高いことから、(Ga,Zn)O層であることが分かった。なお、比較的輝度が低い点が紙面の左右方向に並んだ列からも、15atomic%程度のInが検出されることから、(Ga,Zn)O層にInが混在していることが確認された。
【0511】
以上より、In-Ga-Zn酸化物において、InO層と(Ga,Zn)O層とが積層した層状構造を確認することができた。
【0512】
本実施例に示す構成、方法などは、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例3】
【0513】
本実施例では、実施の形態4に示したDOSRAMについて動作周波数を見積もった。
【0514】
DOSRAMに求められる仕様の一つである「変動許容電圧」とは、DOSRAMの容量素子にかかる電圧がデータ書き込み後から変動する量の許容値である。また、DOSRAMの「データ保持時間」とは、DOSRAMが有する容量素子にかかる電圧の変動量が変動許容電圧に達するまでに要する時間である。本実施例では、「変動許容電圧」を0.2Vとし、「データ保持時間」を容量素子(保持容量3.5fF)にかかる電圧がデータ書き込み後の状態から0.2V低下するまでに要する時間とした。例えば、本実施例でDOSRAMのデータ保持が1時間という場合、DOSRAMが有する容量素子にかかる電位が、データ書き込み後から0.2V低下するまでの時間が1時間であることを意味する。
【0515】
DOSRAMのデータ保持時間は、DOSRAMが有するトランジスタのカットオフ電流の大きさに依存する。ここで、トランジスタのカットオフ電流とは、トランジスタのゲート電圧V=0Vにおけるドレイン電流I(以下、Icutと記す。)と言い換えることができる。例えば、DOSRAMのデータ保持特性が、DOSRAMが有するトランジスタのIcutの大きさのみに依存する場合、DOSRAMのデータ保持時間は、DOSRAMが有するトランジスタのIcutの大きさに反比例する。
【0516】
DOSRAMが有するトランジスタのIcutが既知である場合、DOSRAMのデータ保持時間は、データ保持中に容量素子から失われる電荷量(容量素子の保持容量(3.5fF)と容量素子にかかる電圧の低下分(0.2V)との積に相当する0.7fC)をIcutで割ることによって算出することができる。また、目標とするDOSRAMの保持時間を設定し、前述した電荷量0.7fCを当該保持時間で割ることで、DOSRAMが有するトランジスタに求められるIcutの値(以下、Icut0と記す。)を見積ることもできる。保持時間の目標を1時間とする場合、トランジスタに求められるIcutは約200zA(200×10-21A)となった。図28に示すIcut0が200zAとなるようにバックゲート電圧を調整することで、高いデータ保持特性を有し、かつ、広い温度範囲で高い動作周波数を有するDOSRAMとすることができる。本実施例では、DOSRAMのバックゲート電圧と動作周波数に関係について評価した。
【0517】
DOSRAMの動作周波数の見積もりにあたり、図9および図10に示す、トランジスタ10dと同様の構成を有するトランジスタ(以下、試料3と呼ぶ。)を作製し、その電気特性から見積もりに必要なパラメータを抽出した。本実施例では、図21(A)のトランジスタM1として、トランジスタ10dを想定し、DOSRAMの動作周波数を見積もった。
【0518】
まず、試料3の構成について説明する。図9および図10に示すように、試料3は、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230bと、酸化物230bの上に配置された酸化物230cと、酸化物230cの上に配置された絶縁体250と、絶縁体250の上に配置された導電体260と、を有する。なお、試料3は、図9および図10では図示していないが、図11に示すトランジスタ200と同様に、絶縁体224と酸化物230bの間に酸化物230aを有する。また、導電体260は導電体260aと導電体260bの積層膜である。
【0519】
絶縁体224として、膜厚35nmの酸化窒化シリコンを用いた。
【0520】
酸化物230aとして、DCスパッタリング法を用いて成膜した、膜厚が5nmのIn-Ga-Zn酸化物を用いた。なお、酸化物230aの成膜には、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、成膜ガスとして酸素ガス45sccmを用い、成膜圧力を0.7Paとし、成膜電力を500Wとし、基板温度を200℃とし、ターゲットと基板との間隔を60mmとした。
【0521】
酸化物230bとして、DCスパッタリング法を用いて成膜した、膜厚が20nmのIn-Ga-Zn酸化物を用いた。なお、酸化物230bの成膜には、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、成膜ガスとして、アルゴンガス30sccm、酸素ガス15sccmを用い、成膜圧力を0.7Paとし、成膜電力を500Wとし、基板温度を200℃とし、ターゲットと基板との間隔を60mmとした。
【0522】
酸化物230cとして、DCスパッタリング法を用いて成膜した、膜厚が5nmのIn-Ga-Zn酸化物を用いた。なお、酸化物230cの成膜には、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、成膜ガスとして、酸素ガス45sccmを用い、成膜圧力を0.7Paとし、成膜電力を500Wとし、基板温度を130℃とし、ターゲットと基板との間隔を60mmとした。
【0523】
絶縁体250として、膜厚8nmの酸化窒化シリコンを用いた。また、導電体260aとして、膜厚10nmの窒化チタンを用いた。また、導電体260bとして、タングステンを用いた。
【0524】
以上のような構成を有する試料3は、チャネル長0.37μm、チャネル幅0.24μmのトランジスタである。なお、試料3は、トランジスタ200と同様に、上記構成に加えて、さらに、絶縁体214、絶縁体216、導電体205、絶縁体222、導電体242、絶縁体254、導電体240、絶縁体280、絶縁体274、絶縁体281等を有する。
【0525】
次に、試料3において、トランジスタ10dのI-V測定を行った。I-V測定は、トランジスタのドレイン電位Vを+1.08Vに、ソース電位Vを0Vに、ゲート電位Vを-1.0Vから+3.3Vまで掃引することで行った。バックゲート電圧VBGは-7.1Vで行った。測定温度は、-40℃、27℃、85℃の3水準で行った。具体的には、測定対象となるトランジスタが形成された5インチ角基板を上記各温度に設定したサーモチャック上に固定した状態でトランジスタのI-V測定を実施した。また、それぞれの測定温度に対し、3素子の測定を行った。
【0526】
得られたI-Vカーブから、トランジスタのシフト電圧(Vsh)およびサブスレッショルドスイング値(Svalue)を算出した。Vshとは、トランジスタのI-Vカーブにおいて、カーブ上の傾きが最大である点における接線が、I=1pAの直線と交差するVと定義する。また、Svalueとは、ドレイン電圧一定にてドレイン電流を1桁変化させるサブスレッショルド領域でのゲート電圧の変化量をいう。
【0527】
トランジスタ10dは、実施の形態2で示したように、チャネル形成領域に金属酸化物を用いている。チャネル形成領域に金属酸化物を用いたトランジスタは、例えば、チャネル形成領域にSiを用いたトランジスタと比べて、非導通状態におけるリーク電流が極めて小さい。そのため、チャネル形成領域に金属酸化物を用いたトランジスタは、実測によりIcutを検出することが困難な場合がある。トランジスタ10dにおいてもIcutの実測は困難であったため、前述のI-Vカーブから得られたVshおよびSvalueから、式(1)を用いた外挿によってIcutを見積もった。なお、式(1)に示すように、トランジスタのオフ電流がV=0Vに達するまで、Svalueに従って、Iが単調減少すると仮定した。
【0528】
【数1】
【0529】
次に、トランジスタ10dのI-V測定を行った。
【0530】
ここで、DOSRAM動作周波数の見積り方法について説明する。DOSRAM動作周波数とは、DOSRAMのデータ書き込みサイクル時間の逆数とする。DOSRAMのデータ書き込みサイクル時間は、DOSRAMが有する容量素子の充電時間などによって設定されるパラメータである。本実施例では、DOSRAMのデータ書き込みサイクル時間(DOSRAM動作周波数の逆数)の40%に相当する時間を、DOSRAMが有する容量素子の充電時間とする設定とした。
【0531】
DOSRAM動作周波数は、DOSRAMが有する容量素子の充電時間に依存する。したがって、DOSRAM動作周波数を見積るに際して、まずDOSRAMが有する容量素子の充電持間を事前に知る必要がある。本実施例では、DOSRAMが有する容量素子(保持容量3.5fF)に0.52V以上の電位がかかった状態を、当該容量素子が「充電された状態」と定義した。したがって、本実施例では、DOSRAMのデータ書き込み動作を開始してから、当該容量素子にかかる電位が0.52Vに達するまでの時間が、DOSRAMが有する容量素子の充電時間に相当する。
【0532】
DOSRAMが有する容量素子の充電時間は、DOSRAMデータ書き込み時における、DOSRAMが有するトランジスタのIの大きさに依存する。そこで本実施例では、DOSRAMデータ書き込み時にDOSRAMが有するトランジスタにかかることが想定される電位(図29(A)参照)を、本発明の一態様に係るトランジスタ(L/W=0.37/0.24μm)に実際に印加することでDOSRAMデータ書き込み動作を再現し、このときのトランジスタのIを測定した。図29(A)は、図21(A)の容量素子CAにトランジスタM1を介してデータを書き込む場合を想定している。Dはドレインを表し、Gはゲートを表し、Sはソースを表している。トランジスタTr1のソースの電位(容量素子Csに印加される電圧)をVとする。トランジスタTr1をオンにすることで、電流Iが流れ、容量素子Csが充電される。具体的には、トランジスタのゲート電位Vgを+2.97Vに、ドレイン電位Vdを+1.08Vに、ソース電位Vを0Vから+1.2Vまで掃引することでトランジスタのI測定を行った。バックゲート電圧VBGは-7.1Vで行った。測定温度は、-40℃、27℃、85℃の3水準で行った。
【0533】
なお、DOSRAMは、チャネル長(L)が60nm、チャネル幅(W)が60nmのトランジスタと、保持容量3.5fFの容量素子と、を有する構成を想定した。そこで、トランジスタ10d(L/W=0.37μm/0.24μm)から得られたIの値を、DOSRAMが有すると想定したトランジスタ(L/W=60/60nm)のサイズで補正した。
【0534】
DOSRAMの充電が開始されてVが書き込み判定電圧VCSに達した時に充電完了とする。この時の時間を充電時間tとする(図29(B)参照)。DOSRAMが有する保持容量Cs[F]の容量素子に充電される電荷をQ[C]、充電時間をt[sec]、充電によって容量素子にかかる電位をVCS(=Vs)[V]、DOSRAMが有するトランジスタのドレイン電流をI[A]とした場合、各パラメータの間には以下の式(2)の関係が成り立つ。
【0535】
【数2】
【0536】
式(2)を変形することで、DOSRAMが有する容量素子の充電時間tを以下の式(3)で表すことができる(図29(C)参照)。
【0537】
【数3】
【0538】
本実施例では、式(3)のCsに3.5fF、VCSに+0.52V、前述のI-V測定で得られたIを代入し、DOSRAMが有する容量素子の充電時間tを算出した。
【0539】
記憶装置1400の動作周波数fと充電時間tの関係を式(4)で表すことができる。
【0540】
【数4】
【0541】
式(4)においてAは係数である。記憶装置1400において、1回の動作時間のうち、書き込みに要する時間は4割と想定されることから、本実施例では係数Aを0.4として動作周波数fを算出した。
【0542】
試料3において、電源電圧を3.3V、バックゲート電圧を-7.1Vとした場合のDOSRAMの動作周波数を図30および図31に示す。図30において、横軸は温度(Temperature)[℃]を示し、縦軸は動作周波数[MHz]を示す。また、図31において、横軸は温度の逆数(1000/Temperature)[K-1]を示し、横軸は動作周波数[MHz]を示す。図30および図31に示すように、高温になるほど動作周波数が高くなることを確認できた。また、図31に示すように、算出した動作周波数を外挿することで、200℃における動作周波数が、1GHz以上になることが見積もられた。
【0543】
以上より、DOSRAMが有するトランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物を用いることで、温度が高くなるほど、DOSRAMの動作周波数が高くなることが分かった。
【0544】
本実施例に示す構成、方法などは、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例4】
【0545】
本実施例では、金属酸化物のキャリア濃度およびHall移動度の温度依存性を評価した。具体的には、金属酸化物を成膜した試料4に対して、温度を変えてのHall効果測定を行い、当該結果を用いて、各温度における金属酸化物のキャリア濃度およびHall移動度を算出した。
【0546】
ここで、Hall効果測定とは、電流の流れているものに、電流の向きに対して垂直に磁場をかけることによって、電流と磁場の双方に垂直な方向に起電力が現れるHall効果を利用して、キャリア密度、移動度、抵抗率などの電気特性を測定する方法である。ここでは、Van der Pauw法を用いたHall効果測定を行った。なお、Hall効果測定には、株式会社東陽テクニカ製ResiTestを用いた。
【0547】
はじめに、試料4の作製方法ついて説明する。
【0548】
ガラス基板上に、窒化シリコンを400nmの膜厚で成膜し、当該窒化シリコンの上に、酸化窒化シリコンを50nmの膜厚で成膜した。
【0549】
次に、上記酸化窒化シリコンの上に、評価対象となる金属酸化物として、スパッタリング法により、In-Ga-Zn酸化物を35nmの膜厚で成膜した。In-Ga-Zn酸化物の成膜には、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、アルゴンガス流量を20sccmとし、酸素ガス流量を10sccmとし、圧力を0.4Paとし、直流電源を200Wとし、基板温度を300℃とした。
【0550】
次に、加熱処理を行った。当該加熱処理は、窒素を含む雰囲気にて温度450℃、1時間の処理を行い、続いて酸素および窒素を含む雰囲気にて温度450℃、1時間の処理を行った。
【0551】
以上により、試料4を作製した。
【0552】
作製した試料4に対して、159℃から239℃までの温度範囲を約10℃刻みで、Hall効果測定を行った。
【0553】
図32(A)に、測定温度に対する、金属酸化物のキャリア濃度の推移を示す。横軸は、測定温度の逆数(1000/Temperature)[K-1]を示し、縦軸は、金属酸化物のキャリア濃度[cm-3]を示す。
【0554】
図32(A)より、測定温度の逆数が小さい(測定温度が高い)ほど、金属酸化物のキャリア濃度が高くなることが分かった。
【0555】
また、図32(B)に、測定温度に対する、金属酸化物のHall移動度の推移を示す。横軸は、測定温度の逆数(1000/Temperature)[K-1]を示し、縦軸は、金属酸化物のHall移動度[cm/(V・s)]を示す。
【0556】
図32(B)より、測定温度の逆数が小さい(測定温度が高い)ほど、金属酸化物のHall移動度が高くなることが分かった。
【0557】
以上より、金属酸化物は、温度が高いほど、移動度が高くなる傾向が確認された。
【0558】
本実施例に示す構成、方法などは、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0559】
10:トランジスタ、10a:トランジスタ、10b:トランジスタ、10c:トランジスタ、10d:トランジスタ、51:領域、52:領域、53:領域、54:領域、55:領域、100:容量素子、110:導電体、112:導電体、120:導電体、130:絶縁体、140:絶縁体、150:絶縁体、200:トランジスタ、200A:トランジスタ、200B:トランジスタ、200C:トランジスタ、205:導電体、210:絶縁体、212:絶縁体、214:絶縁体、216:絶縁体、218:導電体、222:絶縁体、224:絶縁体、230:酸化物、230a:酸化物、230b:酸化物、230c:酸化物、230c1:酸化物、230c2:酸化物、231:領域、231a:領域、231b:領域、234:領域、240:導電体、240a:導電体、240b:導電体、241:絶縁体、241a:絶縁体、241b:絶縁体、242:導電体、242a:導電体、242b:導電体、243:領域、243a:領域、243b:領域、244a:バリア膜、244b:バリア膜、250:絶縁体、254:絶縁体、254a:絶縁体、254b:絶縁体、254c:絶縁体、260:導電体、260a:導電体、260b:導電体、273:絶縁体、274:絶縁体、280:絶縁体、280a:絶縁体、280b:絶縁体、281:絶縁体、282:絶縁体、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、400:トランジスタ、405:導電体、424a:絶縁体、424b:絶縁体、430c:酸化物、431a:酸化物、431b:酸化物、432a:酸化物、432b:酸化物、440:導電体、440a:導電体、440b:導電体、442:導電体、442a:導電体、442b:導電体、450:絶縁体、460:導電体、460a:導電体、460b:導電体、1001:配線、1002:配線、1003:配線、1004:配線、1005:配線、1006:配線、1007:配線、1008:配線、1009:配線、1010:配線
図1
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