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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20240415BHJP
   B66B 1/06 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B66B13/14 Z
B66B1/06 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023120585
(22)【出願日】2023-07-25
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】藤本 拓也
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203475(JP,A)
【文献】特開2006-008286(JP,A)
【文献】特開2011-148591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/14
B66B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一区画の昇降路内を昇降する複数台のエレベータ号機の戸開閉をドラフトの影響を受けないように制御するエレベータ制御装置であって、
基準階を境に上方階と下方階に区分けし、上方階で戸開中のエレベータがあるときには下方階のエレベータは戸閉し、または下方階で戸開中のエレベータがあるときには上方階のエレベータは戸閉するように制御するドラフト運転制御を実施する、エレベータ制御装置。
【請求項2】
前記基準階は、昇降路の気圧と各階ホールの気圧との差圧がゼロ近傍の階とする、請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
ドラフトの影響が小さい時期、時間帯または外部からの指定によって、前記ドラフト運転制御を行わず、ドラフトの影響が大きい特定の時期、特定の時間帯に自動でまたは外部からの指定によって前記ドラフト運転制御に切り替える、請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高層ビルなど昇降行程の長いエレベータ(以下、「EL」とも称する)において、冬季の煙突効果による戸開閉動作への影響(以下、「ドラフト」という)が問題となることがある。一般的には建屋側で風除室の設置や空調による気圧制御でドラフトの影響を抑制できる。しかし、昨今の大寒波や節電により想定以上のドラフトが発生し、EL運行に支障をきたすことがある。
【0003】
従来、昇降路や戸の構造によりドラフト影響を低減する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-19519号公報
【文献】特許第6054482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建屋構造によりドラフトを低減する従来技術では、建屋の計画段階からドラフト影響を見込む必要があり、EL据付後にドラフト影響が判明した場合には解決できないという課題がある。
【0006】
また、戸の構造によりドラフト影響を低減する従来技術では、戸の構造が複雑となることや、既設ドアへの適用が困難であるという課題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、建屋構造や戸の構造を変更することなく、ELの運行方法によりドラフトの影響を低減することのできるエレベータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための実施形態は、同一区画の昇降路内を昇降する複数台のエレベータ号機の戸開閉をドラフトの影響を受けないように制御するエレベータ制御装置であって、基準階を境に上方階と下方階に区分けし、上方階で戸開中のエレベータがあるときには下方階のエレベータは戸閉し、または下方階で戸開中のエレベータがあるときには上方階のエレベータは戸閉するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るエレベータ制御装置の実施形態の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態の原理を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態におけるドラフト低減運転実行制御部の処理手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態における戸開禁止指令生成部の処理手順を示すフローチャートである。
図5】本発明に係るエレベータ制御装置の変形例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
図1は本発明に係るエレベータ制御装置の実施形態の構成を示すブロック図、図2は本発明の実施形態の原理を示す説明図である。
【0011】
初めに、図2を参照して本発明の実施形態の原理を説明する。
【0012】
同一区画内で昇降するエレベータが上方階と下方階で同時に戸開すると、ドラフトにより戸閉時の負荷が大きくなる。そこで、ある階(物件ごと任意)を境に上方階と下方階に分け、上方階と下方階で同時に戸開しないように制御する。同一区画とは、同一の昇降路内において、複数台のエレベータが昇降するような場合をいう。例えば、各エレベータ間はネット(網)等で区分けされているが、昇降路内を通る風はネットを通して各エレベータの走行に影響を与える。
【0013】
ここで、図2に示すように、上方階と下方階の境を基準位置、すなわち、基準階とする。基準階は、昇降路とエレベータホールの差圧が反転する階とする。昇降路へ空気が流入する側と流出する側を同時に開かないことで、ドラフト影響を低減する。図2に示すように、昇降路Aと昇降路Bは独立した区画であり、相互に空気の流れはないものとする。
【0014】
図2において、昇降路AでA号機エレベータ1Aは上方階で戸開しており、下方階にいるB号機エレベータ1B、C号機エレベータ1Cは戸閉している。この状態では、下方階のB号機エレベータ1BとC号機エレベータ1Cが戸閉しているので、下方階から上方階へのドラフトによる上昇風が抑制される。したがって、A号機エレベータ1Aは戸開停止していても、ドラフトの影響を受けることがない。
【0015】
また、昇降路Bでは、D号機エレベータ1Dが戸閉、E号機エレベータ1E、F号機エレベータ1Fが戸開している。この場合には、昇降路Aと昇降路Bとは、独立した区画で分けられているので、昇降路Aの上方階でA号機エレベータ1Aが戸開中であっても、昇降路Bのエレベータ1E,1Fはドラフトの影響を受けることなく、下方階で戸開することができる。
【0016】
《実施形態の構成》
図1に示すように、エレベータ制御装置の実施形態としてのA号機制御装置10Aは、ドラフト低減運転実行制御部11と、実行スケジュール設定部12と、戸開禁止指令生成部13と、基準階設定部14と、戸開閉制御部15とを備える。なお、B号機制御装置10BもA号機制御装置10Aと同一構成であるため、以下の説明では、A号機制御装置10Aについて説明する。
【0017】
ドラフト低減運転実行制御部11は、現在の日時と、実行スケジュール設定部12にあらかじめ設定されたスケジュールとを比較してドラフト低減運転を実行するかを判断する。
【0018】
実行スケジュール設定部12は、カレンダー情報や時刻情報からドラフト低減運転を実施するスケジュール情報を設定する。
【0019】
戸開禁止指令生成部13は、自号機および他号機(B号機)のかご位置情報から、各々が上方階/下方階のいずれに位置するかを判定し、判定結果に基いて自号機の戸開禁止指令を生成する。
【0020】
基準階設定部14は、上方階/下方階の境となる階床を基準階としてあらかじめ設定する。例えば、図1に示すように、下階から上階の高さ方向において、昇降路の気圧とホールの気圧との差圧がゼロ近傍になる階を基準階とする。
【0021】
戸開閉制御部15は、ELドア制御装置20に戸開閉指令を出力するもので、戸開禁止指令生成部13から戸開禁止指令が出力されたときにELドア制御装置20に戸閉指令を出力する。
【0022】
《実施形態の処理手順》
図3は、ドラフト低減運転実行制御部11の処理手順、図4は、戸開禁止指令生成部13の処理手順を示すフローチャートである。
【0023】
図3に示すように、ドラフト低減運転実行制御部11は現在のA号機制御装置10A内の日時情報を取得し、実行スケジュール設定部12のスケジュール情報と比較する(ステップS1,S2)。
【0024】
現在の日時が予め設定されているスケジュールの範囲内である場合には(ステップS3YES)、ドラフト低減運転実行指令が戸開禁止指令生成部13に出力される(ステップS4)。他方、現在の日時が予め設定されているスケジュールの範囲内に無い場合には(ステップS3NO)、ドラフト低減運転実行指令はオフとなり出力されない(ステップS5)。
【0025】
図4に示すように、戸開禁止指令生成部13は、戸開閉制御部15に対する戸開禁止指令がオフの状態(ステップS11)において、ドラフト低減運転実行指令がオンしているか否かを判定する(ステップS12)。
【0026】
ドラフト低減運転実行指令がオンしている場合には(ステップS12YES)、自号機のかご位置が基準階よりも上方である上方階にある(かご位置≧基準階)か否かが判定される(ステップS13)。
【0027】
次いで、n番目の号機は同一区画(グループ)にあるか否かが判定される(ステップS15,S21)。nは、グループ内のエレベータかご数(号機数)を指し、判定処理はグループ内の全号機についての判定が終了するまで実行される(ステップS14,S19)。
【0028】
自号機が上方階にあって(ステップS13YES)、n番目の号機のかご位置が下方階であり、かつ、n番目の号機が戸開中である場合には(ステップS16,S17)、戸開禁止指令がオンとなり、戸開閉制御部15に戸開閉禁止指令が出力される(ステップS18)。これにより、戸開閉制御部15はELドア制御装置20に対して戸閉指令を出力して、戸開中であれば戸閉させる。
【0029】
自号機が下方階にあって(ステップS13NO)、n番目の号機のかご位置が上方階であり、かつ、n番目の号機が戸開中である場合にも(ステップS22,S23)、戸開禁止指令がオンとなり、戸開閉制御部15に戸開閉禁止指令が出力される(ステップS24)。これにより、戸開閉制御部15はELドア制御装置20に対して戸閉指令を出力して、戸開中であれば戸閉させる。
【0030】
以上の実施形態によれば、昇降路や戸の構造を変更することなく、ドラフトによりエレベータの戸開閉に支障が出ることが想定される場合に、エレベータの運転パターンを変更してドラフト運転制御を実施することでドラフトの影響を低減することができる。
【0031】
以上の実施形態によれば、昇降路や戸の構造を変更することなく、ドラフトによりエレベータの戸開閉に支障が出ることが想定される場合に、エレベータの運転パターンを変更してドラフト運転制御を実施することでドラフトの影響を低減することができる。
<変形例1>
同一区画内に3台以上の号機が有る場合について説明する。
【0032】
図5は、同一区画内にA号機、B号機、C号機、D号機の4台の号機が有る場合の制御を示すブロック図である。
【0033】
A号機はA号機制御装置10A、B号機はB号機制御装置10B、C号機はC号機制御装置10C、D号機はD号機制御装置10Dによってそれぞれ制御され、A号機制御装置10A~D号機制御装置10Dは群管理制御装置30によって統括制御されている。
【0034】
この場合において、A号機制御装置10Aに着目すると、A号機制御装置10Aには群管理制御装置30からB号機~D号機の各かご位置情報および各戸開閉状態情報が入力されている。A号機制御装置10Aの戸開禁止指令生成部13は、自号機のかご位置と、B号機~D号機の各かご位置情報および各戸開閉状態情報とに基づき、図4に示した処理を実行してドラフト運転制御を実施してドラフトの影響を低減するようにしている。
<変形例2>
戸開閉タイミングの制約を設けず、呼び登録がないエレベータかご、または特定の1台を呼び登録の対象から除外され負荷低減用に割り当てたエレベータかごを上方階または下方階で、よりドラフトの影響が大きい方の終端階に移動して戸開待機させるようにしてもよい。上方階と下方階で同時に戸開閉を行う場合でも、戸開待機したかごにより負荷を分散するため、ドラフト影響を低減できる。
<変形例3>
通常、ドラフトの影響が小さい時期や時間帯では、上述したドラフト運転制御を実施せず、ドラフトの影響が大きい特定の時期や時間帯に自動でドラフト運転制御に切り替えるようにしてもよい。また、例えば、防災センターからの信号入力によりドラフト運転の実施、停止を切り替えるようにしてもよい。さらに、建屋内外、昇降路内外の気温差や気圧差などに基づいて、ドラフト影響の判定を行うドラフト影響判定装置を別途設け、その出力によりドラフト運転制御に切り替えるようにしてもよい。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1A…A号機エレベータ、1B…B号機エレベータ、1C…C号機エレベータ、1D…D号機エレベータ、1E…E号機エレベータ、1F…F号機エレベータ、10A…A号機制御装置、10B…B号機制御装置、10C…C号機制御装置、10D…D号機制御装置、11…ドラフト低減運転実行制御部、12…実行スケジュール設定部、13…戸開禁止指令生成部、14…基準階設定部、15…戸開閉制御部、20…エレベータ(EL)ドア制御装置、30…群管理制御装置。
【要約】
【課題】建屋構造や戸の構造を変更することなく、ELの運行方法によりドラフトの影響を低減する。
【解決手段】同一区画の昇降路内を昇降する複数台のエレベータ号機の戸開閉をドラフトの影響を受けないように制御するエレベータ制御装置であって、基準階を境に上方階と下方階に区分けし、上方階で戸開中のエレベータがあるときには下方階のエレベータは戸閉し、または下方階で戸開中のエレベータがあるときには上方階のエレベータは戸閉するように制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5