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  • 特許-法枠の構造及び法枠の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】法枠の構造及び法枠の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
E02D17/20 104C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023205269
(22)【出願日】2023-12-05
【審査請求日】2023-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000112886
【氏名又は名称】フリー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】堀川 勝
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-299917(JP,A)
【文献】特開平06-173273(JP,A)
【文献】特開2002-054151(JP,A)
【文献】実開平06-043037(JP,U)
【文献】特開昭55-089534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02D 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に設置して、法面を安定化する法枠の構造であって、
一対の金網を前記法面上に格子状に配置してなる枠体と、
前記枠体の内部に配筋した鉄筋と、
前記枠体内に打設して硬化したコンクリートと、を有し、
前記格子の交点に配置し、前記法枠を前記法面に固定するアンカーを挿通するアンカー孔を形成する網筒を有し、
前記網筒は、クリンプ金網を略U字状に折曲した二つのU型網を組み合わせて平面視略六角形を呈するようにして形成することを特徴とする、
法枠の構造。
【請求項2】
法枠の施工方法であって、
法面上に一対の金網からなる枠体を格子状に配置する工程と、
前記枠体内に鉄筋を配筋する工程と、
前記格子の交点に網筒を配置する工程と、
前記枠体内にコンクリートを打設して法枠を構築する工程と、
前記網筒を通じて前記法面にアンカー孔を削孔する工程と、
前記アンカー孔にアンカーを固定し、前記アンカーを介して前記法枠を前記法面に固定する工程と、を有し、
前記網筒は、クリンプ金網を略U字状に折曲した二つのU型網を組み合わせて平面視略六角形を呈するようにして形成することを特徴とする、
法枠の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は法枠の構造とその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
法面を保護し安定化するために、コンクリートを吹き付けて法枠を構築する吹付法枠工法として、フリーフレーム工法(登録商標)が広く行われている。この工法は、網体を並列配置して形成した型枠内に鉄筋を組み立て、型枠内に吹き付け工法でコンクリートを打設して、コンクリートからなる格子状の法枠を構築する工法である。
フリーフレーム工法の特徴の一つは、型枠を網体により形成することで、コンクリート吹き付け時に網目からリバウンドを排除(排出)し、均一な吹き付けコンクリートにより高強度の法枠を構築できることである。
そして、この工法において、法枠を法面に安定的に固定するためにグラウンドアンカーやロックボルト等のアンカーを用いる場合には、格子の交点中央に箱抜き管を配置した状態でコンクリートを吹き付けて、アンカー孔を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-343626号公報
【文献】特開2007-100344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の箱抜き管を用いた吹付法枠工法は、以下の課題を内包している。
(1)従来用いられている箱抜き管は、塩ビ管又はボイド管の2種類である。これらの管はいずれも表面が平滑な曲面であり、コンクリートを吹き付ける際に、リバウンドを排除する効果がない。特に、格子の交点中央には、型枠を法面に固定するための主アンカー、鉄筋、箱抜き管を固定するための追加鉄筋や番線等により密な状態になっているため、リバウンドが排出されにくい。このため、リバウンドが箱抜き管上に残り、均一なコンクリートにならないおそれや空洞部ができるおそれがある。
(2)コンクリートは上方から吹き付けるため、吹き付けたコンクリートが透過しない箱抜き管の背面には空洞部ができるおそれがある。
(3)格子の交点は主アンカーや鉄筋等が集中する重要な箇所にもかかわらず、均一なコンクリートにならなかったり、空洞部が生じたりすることで強度的に不安が生じるおそれがある。
(4)空洞部が生じると、空洞部内に湧水や雨水が入りこみ、鉄筋が腐食してしまうおそれがある。
(5)箱抜き管が塩ビ管の場合、箱抜き管は法枠内に残置してアンカー工が施工される。アンカー工においては、孔内にグラウトや硬練りモルタルからなる間詰材を注入するが、塩ビ管が残置されているため法枠とグラウトは縁切れ状態となり一体とならない。また、塩ビ管とコンクリートの収縮・膨張率の違いから塩ビ管周囲のコンクリートにクラックが入るおそれがある。
(6)箱抜き管がボイド管の場合、アンカー孔の削孔またはアンカー孔へのグラウト注入前に抜き取って廃棄するため、産業廃棄物が発生する。また、アンカー孔の削孔前にボイド管を抜き取ると、削孔時のスライムが空洞部に回り、均一なコンクリートにならないおそれがある。
(7)アンカー孔の削孔後にボイド管を抜き取ることができ、グラウトや間詰材が空洞部に回るとしても、グラウトや間詰材は水平以上には回らないため、上部は空洞のままとなる。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは以上の問題点を解消し、格子の交点を均一なコンクリートで構成することができる法枠の構造とその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、法面に設置して、法面を安定化する法枠の構造であって、一対の金網を前記法面上に格子状に配置してなる枠体と、前記枠体の内部に配筋した鉄筋と、前記枠体内に打設して硬化したコンクリートと、を有し、前記格子の交点に配置し、前記法枠を前記法面に固定するアンカーを挿通するアンカー孔を形成する網筒を有し、前記網筒は、クリンプ金網を略U字状に折曲した二つのU型網を組み合わせて平面視略六角形を呈するようにして形成する
【0007】
また、本発明は、法枠の施工方法であって、法面上に一対の金網からなる枠体を格子状に配置する工程と、前記枠体内に鉄筋を配筋する工程と、前記格子の交点に網筒を配置する工程と、前記枠体内にコンクリートを打設して法枠を構築する工程と、前記網筒を通じて前記法面にアンカー孔を削孔する工程と、前記アンカー孔にアンカーを固定し、前記アンカーを介して前記法枠を前記法面に固定する工程と、を有し、前記網筒は、クリンプ金網を略U字状に折曲した二つのU型網を組み合わせて平面視略六角形を呈するようにして形成する
【発明の効果】
【0008】
本発明では、少なくとも次の一つの効果を奏する。
(1)網筒の網目によりリバウンドが排除されるため、法枠の格子の交点部を均一なコンクリートにより構築できる。
(2)網筒の網目によりリバウンドが排除されるため、コンクリートに空洞部ができるおそれがなく、空洞部内に湧水や雨水が入りこみ、鉄筋が腐食することがない。
(3)コンクリートと網筒は一体となっているため、網筒の周囲のコンクリートにクラックが入るおそれがない。
(4)網筒の網目からは内部に法枠のコンクリートがはみ出しており、また、網筒の背面や周囲に空洞部がないため、注入材により法枠とアンカーが一体となる。
(5)網筒は法枠と一体となっており、ボイド管のように抜き取りは不要であり、産業廃棄物が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の法枠の斜視図
図2】本発明の法枠の構造の断面図
図3】網筒の斜視図
図4】本発明の法枠の施工方法の吹き付け工程後の法枠の構造の断面図
図5】実施例2にかかる網筒の分解斜視図
図6】実施例2にかかる網筒の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の法枠の構造とその施工方法について詳細に説明する。
【0011】
[実施例1]
<1>法枠の全体構成
本発明の法枠1は、法面に設置して安定化するものであって、一対の構成の金網21、21を対向して法面上に格子状に配置してなる枠体2と、枠体2の内部に配筋する鉄筋3と、を有する。また、枠体2内にはコンクリート4を打設して硬化させる。また、枠体2の内部の法枠1の格子の交点の位置には、網筒5を配置する(図1)。
鉄筋3は例えば、対向して配置した金網21間に亘って配置する連結材(図示せず)に鋼線等により固定して配筋する。
コンクリート4は鉄筋3を配筋した枠体2内に、従来知られている吹付工法にて吹き付けて硬化して構成する。
網筒5の底部の法面にはアンカー孔6を形成し、アンカー孔6に挿入して固定したアンカー7の頭部に定着具71を設けて法枠1を法面に固定する(図2)。
アンカー孔6内や網筒5内では、アンカー工において注入したグラウトや硬練りモルタルからなる間詰材等の注入材8が硬化している。
【0012】
<2>網筒
網筒5は周面に網目51を有する円柱状の部材であり(図3)、高さを枠体2の金網21の高さと略同一とする。
網筒5は例えば、クリンプ金網を湾曲して筒状に形成する。
網筒5は網目51を有するため、網目51に吹き付けたコンクリート4が網筒5の内部に入り込み、法枠1と一体となる。
【0013】
<3>法枠の施工方法
法枠1は、法面上に格子状に一対の金網からなる枠体2を配置し、枠体2内に鉄筋を配筋し、格子の交点に網筒5を配置する。枠体2や鉄筋3は、前述した連結材や法面に打設した主アンカー、副アンカー(いずれも図示せず)を介して固定される。
【0014】
<3.1>コンクリートの吹き付け
そして、枠体2内にコンクリート4を吹き付ける。網筒5は平面視円形の筒状のため、コンクリート4の吹き付け圧力に抵抗することができる。
網筒5は、枠体2と同様に網目51を有しているため、吹き付けたコンクリート4が網目51の内側にはみ出して、網筒5とコンクリート4が一体となっている。このように、コンクリート4と網筒5は一体となっているため、網筒5の周囲のコンクリート4にクラックが入るおそれがない。
また、網筒5は網目51を有しているため、コンクリート4吹き付け時のリバウンドが網目51により排除されるため、空洞部がなくなり、かつ網筒5内部にリバウンドが蓄積される構造となる。空洞部がなくなることで、空洞部内に湧水や雨水が入りこみ、鉄筋3が腐食することがない。そして、リバウンドが排除されるため、法枠1の格子の交点部を均一なコンクリート4により構築できる。特に格子の交点は主アンカーや鉄筋3等が集中する重要な箇所であり、コンクリート4を均一になることで強度を保つことができる。
網筒5の下部についても、網筒5の上方から吹き付けることで、コンクリート4が網目51を通過して下部に吹き付けられた状態となり、網筒5の下部に空洞が生じるおそれがない。このとき、網筒5の内部には上述のリバウンドのみならずコンクリート4が吹き付けられた状態となるが、これらが硬化したとしても、後述のアンカー工において削孔して排除することができる。なお、網筒5の上部は、コンクリート4を吹き付けるときには養生して仮に塞いでおいてもよい。
その後、コンクリート4が硬化して法枠1が構築される。
【0015】
<3.2>アンカー工
法枠1の構築後、網筒5を通じて法面にアンカー孔6を削孔する。網筒5内にはコンクリート4やそのリバウンドが硬化しているが、削孔機による削孔時に排除することができる。
網筒5は法枠1と一体となっており、ボイド管のように抜き取りは不要であり、産業廃棄物が発生しない。また、周囲に空洞部がないため、削孔時のスライムが入りこむこともない。
そして、アンカー孔6の削孔後にアンカー7を挿入して固定し、網筒5やアンカー孔6内にグラウト及び間詰材等の注入材8を注入する。網筒5の網目51からは内部に法枠1のコンクリート4がはみ出しており、また、網筒5の背面や周囲に空洞部がないため、注入材8により法枠1とアンカー7が一体となる。
注入材8硬化後、アンカー7頭部に定着具71を設けて、法枠1を法面に固定する。
【0016】
[実施例2]
<1>網筒の構成
上述の実施例1では、網筒5を円筒状としたが、クリンプ金網を略U字状に折曲した二つのU型網52を組み合わせて(図5)、平面視略六角形(図6(a))を呈するようにして形成してもよい(図6(b))。
網筒5の組み立て(U型網52の組み合わせ)は現場で行うことができる。U型網52は製作が容易であり、また、重合して現場に搬入することができるため、製作・運搬コストを低減できる。
【符号の説明】
【0017】
1 法枠
2 枠体、21 金網
3 鉄筋
4 コンクリート
5 網筒、51 網目、52 U型鋼
6 アンカー孔
7 アンカー
8 注入材
【要約】
【課題】格子の交点を均一なコンクリートで構成することができる法枠の構造を提供する。
【解決手段】法面に設置して、法面を安定化する法枠の構造であって、一対の金網を前記法面上に格子状に配置してなる枠体と、前記枠体の内部に配筋した鉄筋と、前記枠体内に打設して硬化したコンクリートと、を有し、前記格子の交点に配置し、前記法枠を前記法面に固定するアンカーを挿通するアンカー孔を形成する網筒と、を有することを特徴とする、法枠の構造。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6