IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】光開始剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20240416BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20240416BHJP
   C07F 7/18 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C08F2/50
C09D11/101
C07F7/18 W
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021538138
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2019061152
(87)【国際公開番号】W WO2020136522
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102018000021388
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516358093
【氏名又は名称】アイジーエム レシンス イタリア ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】マリカ モローネ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ノルチーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ カザルーチェ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーア ベルニーニ フレッディ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ポストル
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-506511(JP,A)
【文献】特開昭56-057803(JP,A)
【文献】特開平04-015201(JP,A)
【文献】特開昭56-004604(JP,A)
【文献】Macromolecules,2009年,Vol.42, No.16,p.6031-6037
【文献】Progress in Organic Coatings,2011年,Vol.70,p.83-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C07F 7/00-7/30
C09D 11/101
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~98.9質量(固形分)%;
b)光開始剤として少なくとも1の下記の式(I)及び/又は(II)の化合物0.1~35質量(固形分)%;
c)三重項エネルギー225~310 kJ/モルを有する芳香族カルボニル化合物の群から選ばれる少なくとも1の光増感剤0.01~15質量(固形分)%
を含んでなる光硬化性組成物。
式(I)、式(II)
【化1】
(I)、
【化2】
(II)
[ここで、
nは1又は2であり;
nが1である場合、Arは、
C6-C12アリール(未置換であるか、又はハロゲン、-CN、-COOH、-OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sフェニル、-SOアルキル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、-SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、-NHCOフェニルからなる群から選ばれる1以上の置換基によって置換される);及び
次の基の1:ピリジル、チエニル、2-メチルチエニル、ピリル、フリル、インダニル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、3,4-エチレンジオキシチオフェン、カルバゾリル、N-アルキルカルバソリル、チアントレニル、フェノキサチイニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、5,10-ジヒドロフェナジニル(全ての基は、1以上の電子供与基によって置換されていてもよい)
から選ばれ;
nが2である場合、Arは、C6-C12アリーレン基、C6-C12ヘテロアリーレン基、及び-アリーレン-T-アリーレン-基(ここで、Tは、直接の結合、-O-、-S-、-SO2-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2OCH2-、及び-CH=CH-から選ばれる)及びトリメチル-フェニル-インダン基から選ばれ(前記の全ての基は、1以上の電子供与基によって置換されていてもよい);
Yは、直接の結合、-CH2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、及び-Nアルキルから選ばれ;
Zは、直接の結合、-O-、-S-、-SO2-、-Nアルキル、-CH2-、及び-C(CH3)2から選ばれ;
R1は、C1-C8アルキル(未置換であるか、又はC2-C8アシルオキシ、-NR8R9、-COOアルキル、又は-CNによって置換される)から選ばれか、又はC3-C5アルケニル、C5-C12シクロアルキル、フェニル、又はベンジルを表し;
R2はR1から選ばれるか、又はR2は-CH2CH2R10基を表し;又はR1及びR2は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキルを表し;
R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ独立して、フェニル、C1-C8アルキル(いずれも、未置換であるか、又は-OH、-Oアルキル、C2-C8アシルオキシ、-NR8R9、-COOアルキル、又はCNによって置換される);及び-Oアルキルから選ばれ;
R8及びR9は、それぞれ独立して、C1-C18アルキル(未置換であるか、又は-OH、-Oアルキル、又は-CNによって置換される)から選ばれ;
R10は、-CONH2、-CONHアルキル、-CON(アルキル)2、及び-P(=O)(Oアルキル)2から選ばれ;
R11は、水素、ハロゲン、-CN、-COOH、-OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sフェニル、-SOアルキル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、-SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、及び-NHCOフェニルから選ばれ;
R12は、R11について定義した意味の1を有し;
又は、R11及びR12は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキル又はC6-C12アリールを表す。]
【請求項2】
式(I)において、アリール又は未置換又は置換フェニルとしてのArは、フェニル、フルオロフェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、ヨードフェニル、シアノフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ジフェニリル、メシチル、イソプロフェニル、イソプロピルクロロフェニル、フェノキシフェニル、p-ノニルフェニル、C10-C13アルキルフェニル、ヒドロキシフェニル、トリル、クロロトリル、3級-ブチルフェニル、キシリル、ブロモキシリル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、メチルチオフェニル、フェニルチオフェニル、4-メトキシチオアニソール、ブチルスルホフェニル、フェニルスルホフェニル、エトキシカルボニルフェニル、3級-ブトキシカルボニルフェニル、メチルアミノスルホフェニル、ジプロピルアミノスルホフェニル、ジメチルアミノフェニル、4-モルホリノフェニル、ベンゾイルアミノフェニル、アセチルアミノフェニル、ピリジルチエニル、2-メチルチエニル、フリル、インダニル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフリル、カルバゾリル、N-アルキルカルバゾリル、チアントレニル、フェノキサチイニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、5,10-ジヒドロフェナジニルである請求項1に記載の光硬化性組成物。
【請求項3】
式(I)において、nが1である請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
式(I)及び(II)において、R3、R4、R5、R6、及びR7が、相互に独立して、メチル、エチル、又はフェニルである請求項1~3のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
式(II)において、R11及びR12が水素である請求項1~4のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項6】
光増感剤c)が、チオキサントン又はケトクマリンである請求項1~5のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物70~98.9質量(固形分)%;
b)少なくとも1の式(I)及び/又は(II)の化合物0.1~20質量(固形分)%;
c)三重項エネルギー225~310 kJ/モルを有する芳香族カルボニル化合物の群から選ばれる少なくとも1の光増感剤0.01~10質量(固形分)%
を含んでなる請求項1~6のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
さらに、f)他の光開始剤0.5~15質量%を含んでなる請求項1~7のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
式(Ia)又は(II)の光開始剤。
式(Ia)、(II)
【化3】
(Ia)、
【化4】
(II)
[ここで、
nは1又は2であり;
nが1である場合、Ar’は、次の基:C6-C12アリール、チエニル;2-メチルチエニル;フリル;インダニル;チアゾリル;オキサゾリル;テトラヒドロナフチル;ベンゾチエニル;ベンゾピリル;ベンゾフリル;カルバゾリル;N-アルキルカルバゾリル;チアントレニル;フェノキサチイニル;フェノチアジニル;フェノキサジニル;5,10-ジヒドロフェナジニルの1から選ばれ(前記の全ての基は、1以上の電子供与基によって置換されていてもよい);C6-C12アリールがフェニル基である場合、前記フェニル基は、常に、1以上の電子供与基によって置換され;
nが2である場合、Ar’は、C6-C12アリーレン基、C6-C12ヘテロアリーレン基、及び-アリーレン-T-アリーレン-基(ここで、Tは、直接の結合、-O-、-S-、-SO2-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2OCH2-、及び-CH=CH-から選ばれる)及びトリメチル-フェニル-インダン基から選ばれ(前記の全ての基は、1以上の電子供与基によって置換されていてもよい);
Yは、直接の結合、-CH2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、及び-Nアルキルから選ばれ;
Zは、直接の結合、-O-、-S-、-SO2-、-Nアルキル、-CH2-、及び-C(CH3)2から選ばれ;
R1は、水素、C1-C8アルキル(未置換であるか、又はC2-C8アシルオキシ、-NR8R9、-COOアルキル、又は-CNによって置換される)から選ばれか、又はC3-C5アルケニル、C5-C12シクロアルキル、フェニル、又はベンジルを表し;
R2はR1から選ばれるか、又はR2は-CH2CH2R10基を表し;又はR1及びR2は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキルを表し;
R3、R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立して、フェニル、C1-C8アルキル(いずれも、未置換であるか、又は-OH、-Oアルキル、C2-C8アシルオキシ、-NR8R9、-COOアルキル、又はCNによって置換される);及び-Oアルキルから選ばれ;
R8及びR9は、それぞれ独立して、C1-C18アルキル(未置換であるか、又は-OH、-Oアルキル、又は-CNによって置換される)から選ばれ;
R10は、-CONH2、-CONHアルキル、-CON(アルキル)2、及び-P(=O)(Oアルキル)2から選ばれ;
R11は、水素、ハロゲン、-CN、-COOH、-OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sフェニル、-SOアルキル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、及び-NHCOフェニルから選ばれ;
R12は、R11について定義した意味の1を有し;
又は、R11及びR12は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキル又はC6-C12アリールを表し;及び
R1及びR2が、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキルを表す場合、Ar’は未置換でもよい。]
【請求項10】
式(Ia)においてAr’が、置換フェニル、及びナフチル、フェナントリル、アントラシル、ジフェニル、メシチル、イソプロピルフェニル、フェノキシフェニル、p-ノニルフェニル、C10-C13アルキルフェニル、ヒドロキシフェニル、トリル、3級ブチルフェニル、キシリル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、メチルチオフェニル、フェニルチオフェニル、4-メトキシチオアニソール、ブチルスルホフェニル、フェニルスルホフェニル、エトキシカルボニルフェニル、3級-ブトキシカルボニルフェニル、メチルアミノスルホフェニル、ジプロピルアミノスルホフェニル、ジメチルアミノフェニル、4-モルホリノフェニル、ベンゾイルアミノフェニル、アセチルアミノフェニル、チエニル、2-メチルチエニル、フリル、インダニル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフリル、カルバゾリル、N-アルキルカルバゾリル、チアントレニル、フェノキサチイニル、フェノキサチアジニル、フェノキサジニル、及び5,10-ジヒドロフェナジニルから選ばれる基から選ばれる請求項9に記載の光開始剤。
【請求項11】
式(Ia)において、nが1である請求項9又は10に記載の光開始剤。
【請求項12】
式(Ia)及び(II)において、R3、R4、R5、R6、R7が、相互に独立して、メチル、エチル、又はフェニルである請求項9~11のいずれかに記載の光開始剤。
【請求項13】
式(II)において、R11及びR12が水素である請求項9~12のいずれかに記載の光開始剤。
【請求項14】
I)請求項1~7のいずれかにおいて定義するa)、b)、及びc)を含んでなる光重合性組成物、又はa)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量(固形分)%及びd)少なくとも1の請求項9~13のいずれかに記載の式(Ia)及び/又は(II)の化合物0.1~35質量(固形分)%を含んでなる光重合性組成物を調製すること;
II)前記光重合性組成物を基板上にコーティング又はプリントすること;及び
III)前記コーティング又はプリントした組成物を、前記基板上において、光源にて光重合すること
を含んでなる光重合性組成物又はインクを光硬化する方法。
【請求項15】
光重合を、波長365~600 nmを放射するLED光源にて行う請求項14に記載の方法。
【請求項16】
α-ジシリルアリールケトンのスペクトル作動波長を拡大する方法であって、前記α-ジシリルアリールケトンに増感剤を添加することを含んでなり、前記α-ジシリルアリールケトンが、請求項9に記載の式(Ia)及び(II)の化合物から選ばれ、前記増感剤が三重項エネルギー225~310 kJ/モルを有する芳香族カルボニル化合物の群から選ばれることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
UV硬化技術のダイナミックな成長は、常に新しい課題の克服において、この技術を支持する不断のイノベーションに依存し、これは、処方について求められる新規の物質の迅速な開発によって反映される。特に、重要な成分は光開始剤であり、その役割は、光を、反応性の中間体の形の化学エネルギーに変換することである。これらの中間体は、硬化される処方中に存在する二重結合のラジカル重合を開始できるラジカルである。
【0002】
光開始剤の分野における開発は、各種のファクターによって刺激される。第1に、各用途についての要件、例えば、ライン速度、表面硬化、硬化後の変色、又は溶解性の全てを満足する単独の光開始剤がないため、既存の用途、例えば、コーティング、インク、接着剤、又はエレクトロニクスのための光開始剤の不断の改善が求められる。第2に、新規のランプ、例えば、LEDランプの導入は、その波長に合わせた光開始剤の開発を刺激した。第3に、毒又は生殖毒として禁止される光開始剤の数が増加している。
【背景技術】
【0003】
近年、基準の光開始剤を模倣し、課題、例えば、黄変、より高いライン速度、LEDランプの下での硬化を克服できる新規の光開始剤を開発するための各種の試みがなされており、いくつかの例は、3-ケトクマリン(US9951034, WO/2017/216699)、アシルゲルマニウム光開始剤(EP3150641, EP2649981)、ベンゾイルフェニルテルリドPIs(Macromolecules, 2014, 47(16), 5526-5531)、ケイ素系PIs(特開2010-229169号;Macromolecules, 2009, 42(16), 6031-6037;Macromolecules 2007, 40(24), 8527-8530;Macromol. Rapid Commun. 2017, 38, 1600470;Macromolecules, 2017, 50(17), 6911-6923)である。
【0004】
特に、ケイ素系PIsは広く探究されているが、公知のPIsは、いずれも、上述の特性の少なくとも1を有意に改善することができない。ここ数年で調査された第1のクラスのケイ素系PIsの1は、α-ジシリルオキシケトン(α-ヒドロキシケトンに由来する)のクラスであるが、親化合物のクラスと比べて、反応性は劣るか又は同程度であり、吸収波長は、ジシリルオキシ置換によって、正の影響を受けない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、公知のα-ジシリルオキシアリールケトン含有組成物と比べて、より高い性能のα-ジシリルオキシケトンを含んでなる新規の光硬化性組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、α-ジシリルオキシアリールケトン、その光開始剤としての使用、及びそれらを含んでなる光硬化性組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の更なる目的は、エチレン系不飽和化合物を光硬化する方法とともに、前記方法によって製造された製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、驚くべきことには、α-ジシリルオキシケトンに共役する電子供与性芳香族基は、従来技術に記載のα-ジシリルオキシアリールケトン(PI-1:Macromolecules, 2009, 42(16), 6031-6037)と比べて高度に反応性である新規のPIsを生ずるとの知見を得た。
【0009】
実際、意外にも、α-ジシリルオキシアリールケトンのアリールモイエティー、例えば、ジフェニルスルフィド又はp-モルホリノフェニルにおけるに電子供与基による置換は、上述の基準化合物(PI-1)の2倍の反応性を有する良好な性能の光開始剤を生ずるとの知見を得た。
【0010】
さらに、発明者らは、驚くべきことには、α-ジシリルオキシアリールケトンのクラスに属する全ての化合物が増感され、このようにして、スペクトル作動波長を改善し、全ての前記化合物がLED波長(例えば、400 nm)で作動できようにするが、この結果は、他のPIs、例えば、α-ヒドロキシケトンによっては達成されないとの知見を得た。
【0011】
それ故、PIsとしてα-ジシリルオキシアリールケトンを含んでなる光硬化性組成物における増感剤の添加により、下記の実施例から明らかなように、予測されない技術的改善を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
態様の1によれば、本発明は、
a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%(水又は溶媒を除く固形分);
b)少なくとも1の下記の式(I)及び/又は(II)の化合物0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、及びさらに好ましくは、0.2~15質量%(水又は溶媒を除く固形分);
c)三重項エネルギー225~310 kJ/モルを有する芳香族カルボニル化合物からなる群からの少なくとも1の光増感剤0.01~15質量%、好ましくは、0.01~10質量%、及びさらに好ましくは、0.02~8質量%(水又は溶媒を除く固形分)を含んでなる光硬化性組成物に係る。
【0013】
式(I)及び(II)
【化1】
(I)

【化2】
(II)

[ここで、
nは1又は2であり;
nが1である場合、Arは、
C6-C12アリール(未置換であるか、又はハロゲン、-CN、-COOH、-OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、-Oアルコキシ、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sアルコキシ、-Sフェニル、-SOアルキル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、-NHCOフェニルからなる群から選ばれる1以上の置換基によって置換される);及び
次の基:ピリジル、チエニル、2-メチルチエニル、ピリル、フリル、インダニル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、3,4-エチレンジオキシチオフェン、カルバゾリル、N-アルキルカルバソリル、チアントレニル、フェノキサチイニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、5,10-ジヒドロフェナジニルの1(すべての基が、可及的に、1以上の電子供与基によって置換される)
から選ばれ;
nが2である場合、Arは、C6-C12アリーレン基、C6-C12ヘテロアリーレン基、及び-アリーレン-T-アリーレン-基、例えば、-フェニレン-T-フェニレン-基、及びトリメチル-フェニル-インダン基、例えば、式
【化3】

から選ばれ(前記基の全てが、可及的に、1以上の電子供与基によって置換される);
Yは、直接結合、-CH2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、及び-Nアルキルから選ばれ;
Zは、直接結合、-O-、-S-、-SO2-、-Nalk、-CH2-、及び-C(CH3)2から選ばれ;
Tは、直接結合、-O-、-S-、-SO2-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2OCH2-、及び-CH=CH-から選ばれ;
R1は、C1-C8アルキル(未置換であるか、又はC2-C8アシルオキシ、-NR8R9、-COOアルキル、又は-CNによって置換される)から選ばれるか、又はC3-C5アルケニル、C5-C12シクロアルキル、フェニル、又はベンジルを表し;
R2は、R1から選ばれるか又は-CH2CH2R10基を表し;又はR1及びR2は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキル、C2-C8アルキレン、又はC3-C9オキサ-又はアザ-アルキレンを表し;
R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ独立して、フェニル、C1-C8アルキル(いずれも、未置換であるか、又は-OH、-Oアルキル、C2-C8アシルオキシ、-NR8R9、-COOアルキル、又はCNによって置換される);及び-Oアルキルから選ばれ;
R8及びR9は、それぞれ独立して、C1-C18アルキル(未置換であるか、又は-OH、-Oアルキル、又は-CNによって置換される)から選ばれ;
R10は、-CONH2、-CONHアルキル、-CON(アルキル)2、及び-P(=O)(Oアルキル)2から選ばれ;
R11は、水素、ハロゲン、-CN、-COOH、-OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、-Oアルコキシ、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sアルコキシ、-Sフェニル、-SOアルキル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、-SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、及び-NHCOフェニルから選ばれ;
R12は、R11について定義した意味の1を有し;
又は、R11及びR12は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキル、又はC6-C12アリールを表す。]
【0014】
他の態様によれば、本発明は、下記の式(Ia)又は(II)の光開始剤に係る。
【0015】
式(Ia)及び式(II)
【化4】
(Ia)

【化5】
(II)

[ここで、
n1又は2であり;
nが1である場合、Ar’は、次の基:C6-C12アリール、チエニル、2-メチルチエニル、フリル、インダニル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフリル、カルバゾリル、N-アルキルカルバゾリル、チアントレニル、フェノキサチイニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、及び5,10-ジヒドロフェナジニルの1から選ばれ(前記全ての基は、可及的に、電子供与基によって置換され;C6-C12アリールがフェニル基である場合、前記フェニル基は、常に、1以上の電子供与基によって置換される);
nが2である場合、Ar’は、C6-C12アリーレン基、C6-C12ヘテロアリーレン基、及び-アリーレン-T-アリーレン-基、例えば、-フェニレン-T-フェニレン-基、及びトリメチル-フェニル-インダン基、例えば、式
【化6】

から選ばれ(前記全ての基が、可及的に、1以上の電子供与基によって置換される);
Yは、直接結合、-CH2-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、及び-Nアルキルから選ばれ;
Zは、直接結合、-O-、-S-、-SO2-、-Nalk、-CH2-、及び-C(CH3)2から選ばれ;
Tは、直接結合、-O-、-S-、-SO2-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2OCH2-、及び-CH=CH-から選ばれ;
R1は、水素、C1-C8アルキル(未置換であるか、又はC2-C8アシルオキシ、-NR8R9、-COOアルキル、又は-CNによって置換される)から選ばれるか、又はR1は、C3-C5アルケニル、C5-C12シクロアルキル、フェニル、又はベンジルを表し;
R2はR1から選ばれるか、又はR2は-CH2CH2R10基を表し;又は
R1及びR2は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキル、C2-C8アルキレン、又はC3-C9オキサ-又はアザ-アルキレンを表し;
R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ独立して、フェニル、C1-C8アルキル(いずれも、未置換であるか、又は-OH、-Oアルキル、C2-C8アシルオキシ、-NR8R9、-COOアルキル、又はCNによって置換される);及び-Oアルキルから選ばれ;
R8及びR9は、それぞれ独立して、C1-C18アルキル(未置換であるか、又は-OH、-Oアルキル、又は-CNによって置換される)から選ばれ;
R10は、-CONH2、-CONHアルキル、-CON(アルキル)2、及び-P(=O)(Oアルキル)2から選ばれ;
R11は、水素、ハロゲン、-CN、-COOH、-OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、-Oアルコキシ、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sアルコキシ、-Sフェニル、-SOアルキル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、-SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、及び-NHCOフェニルから選ばれ;
R12は、R11について定義した意味の1を有し;
又は、R11及びR12は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキル又はC6-C12アリールを表し;及び
R1及びR2が、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキル(好ましくは、C6-C10シクロアルキル、さらに好ましくは、シクロヘキシル基)、C2-C8アルキレン、又はC3-C9オキサ-又はアザ-アルキレンを表す場合、Ar’は、未置換でもよい。]
【0016】
態様の1によれば、本発明は、
a)少なくとも1のエチレン系不飽和化合物50~99.9質量%、好ましくは、70~98.9質量%(水又は溶媒を除く固形分);
b)少なくとも1の、上述のように定義された式(Ia)及び/又は(II)の化合物0.1~35質量%、好ましくは、0.1~20質量%、及びさらに好ましくは、0.2~15質量%(水又は溶媒を除く固形分)
を含んでなる光硬化性組成物に係る。
【0017】
他の態様によれば、本発明は、少なくとも1の、上述のように定義された式(Ia)及び(II)の化合物の光開始剤としての使用に係る。
【0018】
他の態様によれば、本発明は、少なくとも1の、上述のように定義された式(I)、(Ia)、及び(II)の化合物を使用する光硬化法、及び前記方法によって製造された製品に係る。
【0019】
他の態様によれば、本発明は、ジシリルアリールケトンのスペクトル作動波長を拡大するための増感剤の使用に係る。
【0020】
本発明によれば、用語「光硬化」及び「光重合」(及びそれらの派生する用語)は互換的である。
【0021】
「α-ジシリルオキシアリールケトン」は、式(I)、(Ia)、及び(II)の本発明の化合物を意味し、ここでは、前記式において定義されるように、α-ジシリルオキシアリールケトン及びα-ジシリルオキシヘテロアリールケトンを含む。
【0022】
他に明示しない限り、用語「置換フェニル」は、1以上の電子供与基によって置換されたフェニルを意味する。
【0023】
好ましくは、電子供与基は、-OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、-Oアルコキシ、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sアルコキシ、-Sフェニル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、-SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、又は-NHCOフェニルから選ばれ、或いは、チエニル、2-メチルチエニル、ピリル、フリル、インダニル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、3,4-エチレンジオキシチオフェン、メシチル、イソプロピルフェニル、フェノキシフェニル、p-ノニルフェニル、C10-C13アルキルフェニル、ヒドロキシフェニル、トリル、3級-ブチルフェニル、キシリル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、メチルチオフェニル、フェニルチオフェニル、4-メトキシチオアニソール、ブチルスルホフェニル、フェニルスルホフェニル、エトキシカルボニルフェニル、3級-ブトキシカルボニルフェニル、メチルアミノスルホフェニル、ジプロピルアミノスルホフェニル、ジメチルアミノフェニル、4-モルホリノフェニル、ベンゾイルアミノフェニル、及びアセチルアミノフェニルを表す。
【0024】
好ましくは、電子供与基は、OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、- Oアルコキシ、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sアルコキシ、-Sフェニル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、-SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、又は-NHCOフェニルから選ばれるか、又はチエニル、2-メチルチエニル、ピリル、フリル、インダニル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、3,4-エチレンジオキシチオフェン、メシチル、イソプロピルフェニル、フェノキシフェニル、p-ノニルフェニル、C10-C13アルキルフェニル、ヒドロキシフェニル、トリル、3級-ブチルフェニル、キシリル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、メチルチオフェニル、フェニルチオフェニル、4-メトキシチオアニソール、ブチルスルホフェニル、フェニルスルホフェニル、エトキシカルボニルフェニル、3級-ブトキシカルボニルフェニル、メチルアミノスルホフェニル、ジプロピルアミノスルホフェニル、ジメチルアミノフェニル、4-モルホリノフェニル、ベンゾイルアミノフェニル、及びアセチルアミノフェニルを表す。
【0025】
好適な具体例によれば、本発明の式(I)、(Ia)、及び(II)において、
nが1である場合、Arは、フェニル、フルオロフェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、ヨードフェニル、シアノフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ジフェニリル、メシチル、イソプロフェニル、イソプロピルクロロフェニル、フェノキシフェニル、p-ノニルフェニル、C10-C13アルキルフェニル、ヒドロキシフェニル、トリル、クロロトリル、3級-ブチルフェニル、キシリル、ブロモキシリル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、メチルチオフェニル、フェニルチオフェニル、4-メトキシチオアニソール、ブチルスルホフェニル、フェニルスルホフェニル、エトキシカルボニルフェニル、3級-ブトキシカルボニルフェニル、メチルアミノスルホフェニル、ジプロピルアミノスルホフェニル、ジメチルアミノフェニル、4-モルホリノフェニル、ベンゾイルアミノフェニル、アセチルアミノフェニル、ピリジルチエニル、2-メチルチエニル、フリル、インダニル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフラニル、カルバゾリル、N-アルキルカルバゾリル;チアントレニル、フェノキサチイニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、及び5,10-ジヒドロフェナジニルから選ばれ;
nが1である場合、Ar’は、
ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ジフェニリル;
1以上の電子供与基によって置換されたフェニル(前記電子供与基は、-OH、C1-C18アルキル、-Oアルキル、-Oアルコキシ、-Oフェニル、-SH、-Sアルキル、-Sアルコキシ、-Sフェニル、-SO2アルキル、-SO2アルコキシ、-SO2フェニル、-COOアルキル、-SO2NH2、-SO2NHアルキル、-SO2N(アルキル)2、-NHアルキル、-NHアルコキシ、-N(アルキル)2、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、-N(アルコキシ)2、-NHCOアルキル、又は-NHCOフェニルから選ばれ、或いは、チエニル、2-メチルチエニル、ピリル、フリル、インダニル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾキサゾリル、3,4-エチレンジオキシチオフェンである)から選ばれ;
他の好適な、1以上の電子供与基によって置換されたフェニルは、メシチル、イソプロピルフェニル、フェノキシフェニル、p-ノニルフェニル、C10-C13アルキルフェニル、ヒドロキシフェニル、トリル、3級-ブチルフェニル、キシリル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、メチルチオフェニル、フェニルチオフェニル、4-メトキシチオアニソール、ブチルスルホフェニル、フェニルスルホフェニル、エトキシカルボニルフェニル、3級-ブトキシカルボニルフェニル、メチルアミノスルホフェニル、ジプロピルアミノスルホフェニル、ジメチルアミノフェニル、4-モルホリノフェニル、ベンゾイルアミノフェニル、及びアセチルアミノフェニルから選ばれ;
C6-C12アリーレンは、フェニレン、ナフチレン、及びジフェニレンから選ばれ;
C6-C12ヘテロアリーレンは、未置換又は置換のベンゾフラン、カルバゾール、及びケトクマリン基から選ばれ;
アリーレン-T-アリーレンは、好ましくは、フェニレン-T-フェニレン-基、例えば、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、及びジフェニルスルフィド;及びトリメチル-フェニル-インダン基、例えば、式
【化7】

から選ばれ;
C1-C18アルキルは、直鎖状又は分枝状の飽和アルキル(未置換又はアリール、アルキル、アリールオキシ、ヘテロ原子及び/又は複素環基によって置換される)から選ばれ、及び例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2級-ブチル、3級-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル、1,1-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、α,α-ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p-トリルメチル、1-(p-ブチルフェニル)エチル、p-クロロベンジル、2,4-ジクロロベンジル、p-メトキシベンジル、m-エトキシベンジル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、6-ヒドロキシヘキシル、2-メトキシエチル、2-メトキシプロピル、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、6-メトキシヘキシル、2-エトキシエチル、2-エトキシプロピル、3-エトキシプロピル、4-エトキシブチル、又は6-エトキシヘキシル、2-メトキシカルボニルエチル、2-エトキシカルボニルエチル、2-ブトキシカルボニルプロピル、1,2-ジ(メトキシカルボニルエチル)エチル、2-ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2イル、2-イソプロポキシエチル、2-ブトキシプロピル、2-オクチルオキシエチル、クロロメチル、2-クロロエチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1-ジメチル-2-クロロエチル、2-メトキシイソプロピル、ブチルチオメチル、2-ドデシルチオエチル、2-フェニルチオエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-アミノエチル、2-アミノプロピル、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、6-アミノヘキシル、2-メチルアミノエチル、2-メチルアミノプロピル、3-メチルアミノプロピル、4-メチルアミノブチル、6-メチルアミノヘキシル、2-ジメチルアミノエチル、2-ジメチルアミノプロピル、3-ジメチルアミノプロピル、4-ジメチルアミノブチル、6-ジメチルアミノヘキシル、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルエチル、2-フェノキシエチル、2-フェノキシプロピル、3-フェノキシプロピル、4-フェニキシブチル、及び6-フェノキシヘキシルを含み;
C1-C8アルキルは、直鎖状又は分枝状、飽和、未置換アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2級-ブチル又は3級-ブチル、イソアミル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル、又はオクチルから選ばれ、;及び
C5-C12シクロアルキルは、未置換、又はアリール、アルキル、アリールオキシ、アルコキシ、ヘテロ原子、及び/又は複素環基によって置換されており、及び、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、2,5-ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、2,6-ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシシル、2,6-ジメトキシシクロヘキシル、2,6-ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、2,6-ジクロロシクロヘキシル、及び2,5-ジクロロシクロペンチルを含み;或いは、C5-C12シクロアルキルは、飽和又は不飽和、未置換又は置換の二環系、例えば、ノルボルニル又はノルボレネニル;三環系、例えば、アダマンチルである。
【0026】
特別に示さない限り、アルキル基及びアルコキシ基は、C1-C6直鎖状又は分枝状、飽和のアルキル又はアルコキシ、例えば、C1-C4基である。
【0027】
好ましくは、nは1である。
【0028】
好ましくは、Arは、フェニル又は置換フェニル、例えば、C10-C13アルキルフェニル、トリル、3級-ブチルフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、メチルチオフェニル、フェニルチオフェニル;4-メトキシチオアニソール;ジメチルアミノフェニル; 4-モルホリノフェニル;チエニル; 2-メチルチエニル;インダニル;チアゾリル;オキサゾリル;テトラヒドロナフチル;ベンゾチエニル;ベンゾピリル、及びベンゾフリルから選ばれる。
【0029】
好ましくは、Ar’は、1以上の電子供与基によって置換されたフェニル、例えば、C10-C13アルキルフェニル、トリル、3級-ブチルフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フェノキシフェニル、メチルチオフェニル、フェニルチオフェニル、4-メトキシチオアニソール、ジメチルアミノフェニル、4-モルホリノフェニルである。
【0030】
好ましくは、Ar’は、チエニル、2-メチルチエニル、インダニル、チアゾリル、オキサゾリル、テトラヒドロナフチル、ベンゾチエニル、ベンゾピリル又はベンゾフリルである。
【0031】
好ましくは、R1及びR2の少なくとも1は水素ではなく、より好ましくは、R1及びR2は、ともに水素ではない。
【0032】
好ましくは、R1は、メチル、エチル、プロピル、又はベンジルである。
【0033】
好ましくは、R2は、メチル、エチル、又はプロピルであるか、R1及びこれらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキルを形成する。
【0034】
好ましくは、Ar’は、未置換であり、R1及びR2は、これらが結合する炭素原子と一緒に、C5-C12シクロアルキル、好ましくは、C6-C10シクロアルキル、さらに好ましくは、シクロヘキシル基を形成する。
【0035】
好ましくは、R3、R4、R5、R6、R7は、それぞれ独立して、メチル、エチル、又はフェニルである。
【0036】
好ましくは、R11及びR12は水素である。
【0037】
好ましくは、式(I)、(Ia)、及び(II)によるα-ジシリルオキシアリールケトンを表1にリストアップするが、これは説明のためのものであって、これらに限定されない。
【0038】
【表1】











【0039】
式(I)、(Ia)、(II)の化合物は、例えば、下記のスキームによる対応するα-ヒドロキシケトンのシリル化のための当業者には公知の一般的な方法に従って調製される:
【化8】
【0040】
式(I)、(Ia)、(II)の代表的な化合物の例示的合成を下記の実施例に報告する。
本発明によれば、式(I)、(Ia)、(II)の光開始剤は、エチレン系不飽和化合物a)を含んでなる光硬化性組成物を調製するために使用される。
【0041】
不飽和化合物a)は、1以上のオレフィン系二重結合を含有できる。これらは、低分子量(モノマー)又は高分子量(オリゴマー)を有することができる。
【0042】
1の二重結合を有する好適な低分子量モノマーの例は、アルキル又はヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレート、例えば、メチル、エチル、ブチル、2-エチルヘキシル、又は2-ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、及びメチル又はエチルメタクリレートである。また、ケイ素又はフッ素にて修飾された樹脂、例えば、シリコーンアクリレートも興味深い。さらに、これらのモノマーの例は、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、アルキルスチレン、及びハロゲノスチレン、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、ビニルエーテル、例えば、イソ-ブチルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、又は塩化ビニリデンである。
【0043】
1より大の二重結合を有するモノマーの例は、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、4,4'-ビス-(2-アクリロイルオキシエトキシ)-ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルコハク酸エステル、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート、又はトリス-(2-アクリロイルエチル)イソシアヌレートである。
【0044】
高分子量(オリゴマー)多不飽和化合物の例は、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化又はビニルエーテル又はエポキシ基含有ポリエステル、アクリル化ポリウレタン、又はアクリル化ポリエーテルである。不飽和オリゴマーの他の例は、通常、マレイン酸、フタル酸及び1以上のジオールから調製され、約500~3000 Daの分子量を有する不飽和ポリエステル樹脂である。このような不飽和オリゴマーはプレポリマーとも称される。
【0045】
本発明の実施に特に好適である化合物a)の例は、エチレン系不飽和カルボン酸及びポリオール又はポリエポキシドのエステル、及び鎖中又は側鎖中にエチレン系不飽和基を含有するポリマー、例えば、不飽和ポリエステル、ポリアミド、及びポリウレタン、及びそのコポリマー、アルキド樹脂、ポリブタジエン及びブタジエンコポリマー、ポリイソプレン及びイソプレンコポリマー、側鎖に(メタ)アクリル基を有するポリマー及びコポリマー、さらに、1以上のこのようなポリマーの混合物である。
【0046】
前記エステルの調製に有用な不飽和カルボン酸又は無水物の例示的な例は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、及び不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸及びオレイン酸である。アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0047】
エステル化されるポリポールは、芳香族及び脂肪族及び脂環式ポリオールであり、好ましくは、脂肪族及び脂環式ポリオールである。
【0048】
芳香族ポリオールは、例えば、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、さらに、ノボラック及びレゾールである。エステル化されるポリエポキシドとしては、前記ポリオール系のもの、特に、芳香族ポリオール及びエピクロロヒドリンが含まれる。また、ポリマー鎖又は側鎖にヒドロキシル基を含有するポリマー及びコポリマー、例えば、ポリビニルアルコール及びそのコポリマー、又はポリメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル又はそのコポリマーも、ポリオールとして好適である。さらに、ヒドロキシ末端基を有するオリゴエステルも好適なポリオールである。
【0049】
脂肪族及び脂環式ポリオールの例としては、炭素原子2~12を含有するアルキレンジオール、例えば、エチレングリコール、1,2-又は3-プロパンジオール、1,2-、1,3-、又は1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量、好ましくは、200~1500 Daを有するポリエチレングリコール、1,3-シクロペンタンジオール、1,2-、1,3-、又は1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(β-ヒドロキシエチル)アミン、トリメチルオールエタン、トリメチルオールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びソルビトールが含まれる。
【0050】
さらに好適なエチレン系不飽和化合物a)は、不飽和カルボン酸及びアミノ基2~6個、好ましくは、2~4個を有する脂肪族及び脂環式ポリアミドから得られる不飽和ポリアミドである。
【0051】
このようなポリアミドの例は、エチレンジアミン、1,2-又は1,3-プロピレンジアミン、1,2-、1,3-、又は1,4-ブチレンジアミン、1,5-ペンチレンジアミン、1,6-ヘキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ-(β-アミノエチル)エーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、及びジ(β-アミノエトキシ)-及びジ(β-アミノプロポキシ)-エタンが含まれる。他の好適なポリアミンは、側鎖に追加のアミノ基を含有するポリマー及びコポリマー、及びアミノ末端基を含有するオリゴアミドである。
【0052】
このような不飽和ポリアミドの特別な例としては、メチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサンメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミノプロポキシ)エタン、及びN-[(β-ヒドロキシエトキシ)エチル]-アクリルアミドが含まれる。
【0053】
不飽和ポリウレタンも、本発明の実施には好適であり、例えば、飽和又は不飽和ジイソシアネート及び不飽和又は飽和ジオールに由来のものである。ポリブタジエン及びポリイソプレン及びそのコポリマーも有用である。好適なコモノマーとしては、例えば、オレフィン(例えば、エチレン、プロペン、ブテン、及びヘキセン)、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、及び塩化ビニルが含まれる。
【0054】
側鎖に不飽和(メタ)アクリレート基を有するポリマーが、成分(a)として使用される。これらは、典型的に、ノボラック系のエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートとの反応生成物;(メタ)アクリレートにてエステル化されたビニルアルコール又はそのヒドロキシアルキル誘導体のホモポリマー又はコポリマー;及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにてエステル化された(メタ)アクリレートのホモポリマー及びコポリマーである。
【0055】
混合物における成分c)は、三重項エネルギー225~310 kJ/モルを有する光増感剤である。
【0056】
光増感剤の例は、当分野において一般的に使用されているもの、芳香族カルボニル化合物、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン、及び3-アシルクマリン誘導体、テルフェニル、スチリルケトン、及び3-(アロイルメチレン)-チアゾリン、カンファーキノンであり、及びエオシン、ローダミン、及びエリスロシン染料である。
【0057】
チオキサントンの例は、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、N-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシエトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-プロピルエタングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド、又はPCT/EP2011/069514に記載のもの、例えば、n-ドデシル-7-メチル-チオキサントン-3-カルボキシレート、及びN,N-ジイソブチル-7-メチル-チオキサントン-3-カルバミドである。ポリマー性チオキサントン誘導体(例えば、Omnipol TX(IGM Resins B.V.)、Genopol TX-1(Rahn A.G.)、Speedcure 7010(Lambson Limited))も好適である。
【0058】
ベンゾフェノンの例は、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、4,4'-ジメチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-(4-メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、メチル2-ベンゾイルベンゾアート、4-(2-ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4-(4-トリルチオ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N,N-トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド・一水和物、4-(13-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニル)オキシエチル-ベンゼンメタンアミニウムクロリドである。ポリマー性ベンゾフェノン誘導体(Omnipol(登録商標)BP、Omnipol 2702及びOmnipol 682(いずれもIGM Resins B.V.)、Genopol(登録商標) BP-2(Rahn A.G.)、及びSpeedcure(登録商標)7005(Lambson Limited))も好適である。
【0059】
3-アシルクマリン誘導体の例は、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(プロポキシ)クマリン、3-ベンゾイル-6,8-ジクロロクマリン、3-ベンゾイル-6-クロロクマリン、3,3'-カルボニル-ビス[5,7-ジ(プロポキシ)クマリン]、3,3'-カルボニル-ビス(7-メトキシクマリン)、3,3'-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-イソブチロイルクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジメトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジエトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジブトキシクマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジ(アリルオキシ)クマリン、3-ベンゾイル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、3-イソブチロイル-1,7-ジメチルアミノクマリン、5,7-ジメトキシ-3-(1-ナフトイル)クマリン、5,7-ジメトキシ-3-(1-ナフトイル)クマリン、3-ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、7-ジエチルアミノ-3-チエノイルクマリン、3-(4-シアノベンゾイル)-5,7-ジメトキシクマリン、又はEP2909243及びWO 2017/216699に記載されたものである。
【0060】
3-(アロイルメチレン)チアゾリジンの例は、3-メチル-1,2-ベンゾイルメチレン-β-ナフトチアゾリン、3-メチル-2-ベンゾイルメチレン-ベンゾチアゾリン、3-エチル-2-プロピオニルメチレン-β-ナフトチアゾリンである。
【0061】
他の芳香族カルボニル化合物の例は、アセトフェノン、3-メトキシアセトフェノン、4-フェニルアセトフェノン、ベンジル(例えば、WO 2013/164394に記載のもの)、2-アセチルナフタレン、2-ナフトアルデヒド、9,10-アントラキノン、9-フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α-(p-ジメチルアミノベンジリデン);ケトン、例えば、2-(4-ジメチルアミノ-ベンジリデン)-インダン-1-オン、又は3-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-インダン-5-イル-プロぺノン、3-フェニルチオフタルイミド、N-メチル-3,5-ジ(エチルチオ)フタルイミドである。
【0062】
チオキサントン及び3-アシルクマリンが特に好ましい。
【0063】
発明者らは、驚くべきことには、前記成分c)が、混合物の棚寿命を短くすることなく、光開始剤b)の活性を増大させるとの知見を得た。さらに、混合物は、光増感剤c)の適切な選択により、光開始剤b)の分光感度が、各種の所望の波長領域にシフトされるとの特別な利点を有するとの知見を得た。
【0064】
本発明の光硬化性組成物は、成分a)、b)、c)、及びd)に加えて、さらに、光開始剤e)及び/又は添加剤f)を含むことができる。
【0065】
更なる光開始剤e)は、組成物の0.5~15質量%(水又は溶媒を除く固形分)、好ましくは、1~10質量%の量で存在できる。
【0066】
好適な他の光開始剤e)の例は、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル、及びベンジルケタール、例えば、ベンジルジメチルケタール、ケトスルホン、例えば、1-[4-[(4-ベンゾイル-フェニル)-チオ]-フェニル]-2-メチル-2-[(4-メチル-フェニル)-スルホニル]-プロパン-1-オン(Esacure(登録商標)1001(IGM Resins B.V.)、3-ケトクマリン、例えば、EP2909243及びWO 2017/216699に記載のもの、フェニルグリオキシレート及びその誘導体、二量体のフェニルグリオキシレート、ペルエステル、例えば、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ペルエステル、例えば、EP 126541に記載のもの、アシルホスフィン光開始剤(モノ-アシルホスフィンオキシド、ビス-アシルホスフィンオキシド、トリス-アシルホスフィンオキシド、及び多官能性モノ-又はビス-アシルホスフィンオキシド)、ハロメチルトリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、例えば、o-クロロヘキサフェニルビスイミダゾールと、2-メルカプトベンゾチアゾールとの組み合わせ;フェロセニウム化合物又はチタノセン、例えば、ジシクロペンタジエニル-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピロロ-フェニル)チタン;O-アシルオキシムエステル光開始剤である。
【0067】
α-ヒドロキシケトン及びα-アミノケトンの例は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェノキシ]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン)である。
【0068】
O-アシルオキサミンエステル光開始剤の例は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンジルオキサミン)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル] 1-(O-アシルオキサミン)、又はGB2339571に記載のものである。
【0069】
アシルホスフィン光開始剤の例としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-(2,4-ジペンチルオキシフェニル)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸、エトキシ化グリセリントリアクリレート(Omnipol(登録商標)TP(IGM Resins B.V.))が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
ハロメチルトリアジン系光開始剤の例は、2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル[1,3,5]トリアジンである。
【0071】
本発明による光硬化性組成物が、ハイブリッド系(これに関連して、ハイブリッド系とは、フリーラジカル硬化性系及びカチオン硬化性系の混合を意味する)で使用される場合には、更なる光開始剤e)として、カチオン性光開始剤も使用される。好適なカチオン性光開始剤の例は、芳香族のスルホニウム塩、ホスホニウム塩、又はヨードニム塩、例えば、米国特許第4,950,581号に記載されたもの、又はシクロペンタジエニルアレン-鉄(II)錯塩、例えば、(η6-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート又はオキシム系光潜在性酸(例えば、GB2348644、米国特許第4,450,598号、同第4,136,055号、WO 00/10972、及びWO 00/26219に記載)である。
【0072】
添加剤f)は、例えば、促進剤/共開始剤、熱開始剤、結合剤、安定剤、及びその混合物である。
【0073】
本発明の光硬化性組成物は、便利には、促進剤/共開始剤、例えば、アルコール、チオール、チオエーテル、アミン、又はヘテロ原子に隣接する炭素に結合する有効水素を有するエーテル、ジスルフィド、及びホスフィン(例えば、EP438123及びGB2180358に記載)を含むことができる。このような促進剤/共開始剤は、一般に、0.2~15質量%、好ましくは、0.2~8質量%の量で存在する。
【0074】
アミン促進剤/共開始剤の好適な例としては、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール-脂肪族、複素環、オリゴマー性又はポリマー性のアミンが含まれるが、これらに限定されない。これらは、一級、二級、又は三級アミン、例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジ-シクロヘキシルアミン、N-フェニルグリシン、トリエチルアミン、フェニル-ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノ安息香酸のエステル、ミヒラーケトン(4,4'-ビス-ジメチルアミノベンゾフェノン)及び対応する誘導体である。
【0075】
アミン促進剤/共開始剤として、アミン修飾アクリレートが使用される。このようなアミン修飾アクリレートの例としては、一級又は二級アミンとの反応によって修飾されたアクリレート(米国特許第3,844,916号、EP 280222、米国特許第5,482,649号、又は同
第5,734,002号に記載)が含まれる。
【0076】
共開始剤として、多官能性アミン及びポリマー性アミン誘導体も使用される。いくつかの例は、Omnipol(登録商標)ASA(IGM Resins B.V.)、Genopol(登録商標)AB-2(Rahn A.G.)、Speedcure(登録商標)7040(Lambson Limited)、又は米国特許出願公開第2013/0012611号に記載のものである。
【0077】
特に、顔料配合組成物の場合における本発明による硬化法は、追加の添加剤f)として、熱開始剤を添加することによって促進され、この熱開始剤は、加熱される際にフリーラジカルを生成する化合物であり、例えば、アゾ化合物、例えば、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、トリアゼン、ジアソズルフィド、ペンタアザジエン、又はペルオキシ化合物、例えば、ヒドロペルオキシド又はペルオキシカーボネート、例えば、3級-ブチルヒドロペルオキシド(例えば、EP245639に記載)である。
【0078】
本発明の光硬化性組成物には、結合剤も添加される。結合剤の添加は、特に、光硬化性化合物が液体又は粘稠な物質である場合に有利である。結合剤の量は、例えば、5~60質量%、好ましくは、10~50質量%である。結合剤は、使用分野及び要求される特性、例えば、水性及び有機溶媒システムにおける現像性、基材への接着性、及び酸素に対する感受性に応じて選択される。
【0079】
好適な結合剤は、例えば、分子量約5000~2000000 Da、好ましくは、10000~1000000 Daを有するポリマーである。例示的な例は、アクリレート及びメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、例えば、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸、ポリ(メタクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アクリル酸アルキルエステル);セルロースエステル及びエーテル、例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース;ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、環化ゴム、ポリエーテル、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ポリオレフィン、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニリデンとアクリロニトリル、メチルメタクリレート及び酢酸ビニルとのコポリマー、ポリ酢酸ビニル、コ-ポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリマー、例えば、ポリカプロラクタム及びポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレングリコールテレフタレート)及びポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)である。
【0080】
好適な安定剤は、例えば、熱阻害剤、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノン誘導体、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、又は立体障害フェノール、例えば、2,6-ジ(3級-ブチル)-p-クレゾールであり、早期重合を阻止する。暗所貯蔵安定性を増大させるために、例えば、銅化合物、例えば、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅、又はオクテン酸銅、リン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、又は亜リン酸トリベンジル、4級アンモニウム化合物、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム又は塩化トリメチルベンジルアンモニウム、又はヒドロキシルアミン誘導体、例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミンを使用できる。重合の間に、雰囲気中の酸素を除去する目的で、パラフィン又は同様のワックス様物質(ポリマーに不溶)を使用でき、当該物質は、重合の開始時に表面に移動し、空気の侵入を阻止する透明の層を形成する。
【0081】
光安定剤、例えば、UV吸収剤、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾフェノン、シュウ酸アミド、又はヒドロキシフェニル-s-トリアジンタイプを使用できる。このような化合物は、立体障害アミン(HALS)を使用して又は使用することなく、単独で又は混合物の形で使用される。
【0082】
本発明による光硬化性組成物は、更なる添加剤f)として、光還元性染料、例えば、キサンテン、ベンゾキサンテン、チアジン、ピロニン、ポルフィリン、又はアクリジン染料、及び/又は放射線開裂可能なトリメチル化合物も含むことができる。これらの化合物は、例えば、EP445624に記載されている。
【0083】
さらに通例の添加剤f)は、目的の用途に応じて、蛍光染料、フィラー、顔料(白色及び有色顔料の両方)、着色料、帯電防止剤、湿潤剤、又は流動性向上剤である。当分野において通例の添加剤、例えば、帯電防止剤、流動性向上剤、及び接着性増強剤も使用できる。
【0084】
本発明による光硬化性組成物には、当分野において通例の連鎖移動剤も添加される。例は、メルカプタン、アミン、及びベンゾチアゾールである。
【0085】
本発明の組成物は、着色料及び/又は有色顔料を含んでいてもよい。目的の用途に応じて、無機顔料及び有機顔料の両方を使用できる。このような添加剤は、当業者には公知である。いくつかの例は、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、クロムイエロー、クロムグリーン、ニッケルチタンイエロー、群青、コバルトブルー、バナジウム酸ビスマス、カドミウムイエロー、及びカドミウムレッドである。有機顔料の例は、モノ-又はビス-アゾ顔料、及びその金属錯体、フタロシアニン顔料、多環式顔料、例えば、ペリレン、アントラキノン、チオインジゴ、キナクリドン又はトリフェニルメタン顔料、及びジケト-ピロロ-ピロール、イソインドリノン、例えば、テトラクロロイソインドリノン、イソインドリノン、ジオキサジン、ベンズイミダゾロン、及びキノフタロン顔料である。処方において、顔料は、単独で又は混合物として使用される。
【0086】
目的の用途に応じて、顔料は、当分野における通例の量で、例えば、総質量基準で0.1~30質量%、又は10~25質量%の量で処方に添加される。
【0087】
組成物は、例えば、広範囲の種類の有機着色料を含んでいてもよい。例は、アゾ染料、メチン染料、アントラキノン染料、及び金属錯体染料である。通常の濃度は、総質量基準で、例えば、0.1~20質量%、特に、1~5質量%である。
【0088】
添加剤の選択は、使用分野及びその分野について望まれる特性によって決定される。上記の添加剤d)は当分野において公知であり、従って、当分野における通例の量で使用される。
【0089】
本発明の光硬化性組成物は、各種の目的、例えば、印刷用インク、例えば、スクリーン印刷インク、フレキソ印刷インク、オフセット印刷インク、及びインクジェット印刷インクとして、クリアコートとして、例えば、木材又は金属用の着色コートとして、粉末コーティングとして、特に、紙、木材、金属、又はプラスチック用のコーティング材料として、構造体及び道路マーキング用、複写写真法用、ホログラム記録材料用、画像記録法又は有機溶媒を使用する又は水性アルカリ媒体を使用する版面の再生において、スクリーン印刷用マスクの製造用の日光-硬化性塗料として、歯科用充填材料として、接着剤として、感圧性接着剤として、ラミネート樹脂として、フォトレジスト、例えば、ガルバノレジストとして、エッチレジスト又は永久レジスト(液体及び乾燥フィルムの両方))として、光構造化性絶縁体として、及び電子回路用ソルダーマスクとして、各種のタイプのディスプレイスクリーン用のカラーフィルターの製造おける又はプラズマディスプレイ及びエレクトロルミネセントディスプレイの製造中の構造物の形成における、又は光学スイッチ、光学格子(干渉格子)の製造における、バルク硬化(透明鋳型でのUV硬化)による又はステレオリソグラフィー法(例えば、米国特許第4,575,330号に記載されている)による三次元物品の製造における、複合材料(例えば、ガラス繊維及び/又は他の繊維及び他の補助剤を含むことができるスチレンポリエステル)の製造又は当業者には周知の三次元印刷法における、電子部品のコーティング又は封止におけるレジストとして、又は光ファイバーのコーティング剤として使用することができる。
【0090】
本発明の光硬化性組成物は、光学レンズ、例えば、コンタクトレンズ又はフレネルレンズの製造に、医療用装置、補助具又はインプラント、ドライフィルムペイントの製造においても適している。
【0091】
本発明の光硬化性組成物は、サーモトロピック特性を有するゲルの調製にも適している。このようなゲルは、例えば、DE 19700064及びEP 678534に記載されている。
【0092】
本発明による化合物及び組成物は、放射線硬化性粉末コーティング用のフリーラジカル光開始剤又は光開始系としても使用される。
【0093】
本発明による光硬化性組成物は、例えば、全ての種類の基材(例えば、木材、布地、紙、セラミックス、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、及びセルロースアセテート)、特に、フィルム状の基材のため、及び金属(例えば、Al、Cu、Ni、Fe、Zn、Mg、又はCo)、及びGaAs、Si、又はSiO2(保護フィルムが塗布される、又は例えば、像様露光によって、像が適用される)の基材のためのコーティング材料として好適である。
【0094】
少なくとも式(Ia)及び/又は(II)の化合物を含んでなる光硬化性組成物は、本発明の更なる主題である。
【0095】
本発明の他の態様によれば、本発明の更なる主題は、光重合性組成物及びインクを光硬化する方法にあり、該方法は、
I)上記で定義したとおりのa)、b)、及びc);又は上記で定義したとおりのa)及びd)を含んでなる光重合性組成物を調製すること;
II)前記光重合性組成物を基板にコーティング又はプリントすること;
III)前記コーティング又はプリントされた組成物を、前記基板上で、光源にて光重合すること
を含んでなる。
【0096】
従って、多数の広範囲の光源を使用でき、光源は、約200~約600 nmの波長で放射する。点光源及びプラットフォームラジエーター(ランプカーペット)の両方が好適である。例は、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、中圧、高圧、及び低圧水銀アークラジエーター(適宜、金属ハロゲン化物でドープされている)(メタルハライドランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマランプ、超光活性蛍光灯、蛍光ランプ、アルゴン白熱ランプ、フラッシュランプ、写真用投光器ランプ、発光ダイオード(LED)、電子ビーム、X線、レーザーである。ランプと、露光される本発明による基材との間の距離は、用途及びランプのタイプ及び出力に応じて変化し、例えば、1~150 cmである。
【0097】
波長365~420 nm、好ましくは、365 nm、385 nm、及び395 nmで放射するLED光源が特に好適である。
【0098】
前記光重合性組成物は、既にコーティング又はプリントされた層を含んでなる基材上に塗布される。前記光重合性組成物は、前記光源による光重合の後、プリンティング又はコーティングに好適な1以上の組成物で、オーバープリンティング又はオーバーコーティングされる。
【0099】
少なくとも式(Ia)及び/又は(II)の化合物を含んでなる物品は、本発明の更なる主題である。
【0100】
前記コーティング又はプリンティング手段によって、前記基材上に前記光重合性組成物を塗布し、前記光源によって光重合し、さらに、コーティング又はプリンティングすることによる物品の綿密な仕上げ又は仕上げすることなく得られた物品は、本発明の更なる主題である。
【0101】
驚くべきことには、発明者らは、式(Ia)及び(II)の化合物が、Macromolecules 2009, 42, 6031-6037 (PI-1)に記載の化合物と比べて、透明系及び有色系の両方において、光重合の間に、より高い反応性を示すとの知見を得た。さらに、発明者らは、式(I)及び(II)の化合物が合成され、これらの化合物のスペクトル活性が改善されることを初めて証明した。
【0102】
例えば、発明者らは、実施例5に記載の式(Ia)の化合物は、同一の量で使用される場合、Macromolecules 2009, 42, 6031-6037 (PI-1)に記載された対照化合物の2倍の反応性であり、さらに、この化合物は、イソプロピルチオキサントンによって合成され、このようにして、LED波長(例えば、400 nm)で機能するとの知見を得た。
【0103】
本発明による式(Ia)及び(II)のα-ジシリルオキシケトン及び光硬化性組成物の代表的な製造を、以下の実施例に報告するが、これらは説明のためのものであって、本発明を限定するものではない。
【0104】
[実施例]
定義及び装置
1H NMRスペクトルを、Bruker Avance 400 MHz又はBruker DMX 500 MHz又はBruker DMX 600 MHzにて記録した。
赤外スペクトルを、FT-IR 430- Jascoにて記録した。
以下の実施例において、化学構造と、表示した化学名とが一致しない場合、化学構造が優先する。
【実施例1】
【0105】
1-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-((1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラニル)オキシ)プロパン-1-オンの合成
【化9】

ジクロロメタン70mlにアニソール5g(46.2ミリモル)及びα-ブロモイソブチリルブロミド11.16 g(48.5ミリモル)を含有する溶液に、温度を0~5℃に維持しながら、約30分で、三塩化アルミニウム6.46 g(48.5ミリモル)を添加した。室温において、2時間後、反応混合物を、氷水100 ml及び37%HCl2mlの混合物中に注いだ。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過した。溶液を、還流しながら、3時間、0.5M KOHメタノール溶液120 mlにて処理した。水100 ml及びジクロロメタン50mlで希釈した後、相を分離した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下で、溶媒を蒸発させた。何ら精製することなく、粗製物質を次工程において使用した。
2-ヒドロキシ-1-(4-メトキシフェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(2g、10.2ミリモル)及びクロロペンタメチルジシラン(1.7g、10.2ミリモル)を、ジクロロメタン10mlに溶解し、イミダゾール0.69 g(10.2ミリモル)を添加した。反応混合物を、室温において、3時間撹拌し、ついで、真空下で、蒸発させた。粗製物質をトルエン20mlで希釈し、シリカゲル上で濾過した。真空下で、溶媒を除去して、純粋な生成物を得た(1.9g)。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.00 (s, 9H), 0.13 (s, 6H), 1.55 (s, 6H), 3.85 (s, 3H), 6.88 (d, 2H), 8.22 (d, 2H)
【実施例2】
【0106】
2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-((1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラニル)オキシ)プロパン-1-オンの合成
【化10】

ジクロロメタン70mlにチオアニソール5g(40.2ミリモル)及びα-ブロモイソブチリルブロミド9.72 g(42.2ミリモル)を含有する溶液に、温度を0~5℃に維持しながら、約30分で、三塩化アルミニウム6.46 g(48.5ミリモル)を添加した。室温において、2時間後、反応混合物を、氷水100 ml及び37%HCl2mlの混合物中に注いだ。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過した。溶液を、還流しながら、3時間、0.5M KOHメタノール溶液100 mlにて処理した。水100 ml及びジクロロメタン50mlで希釈した後、相を分離した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下で、溶媒を蒸発させた。何ら精製することなく、粗製物質を次工程において使用した。
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)プロパン-1-オン(1.4g、6.6ミリモル)及びクロロペンタメチルジシラン(1.1g、6.6ミリモル)を、ジクロロメタン10mlに溶解し、イミダゾール0.44 g(6.6ミリモル)を添加した。反応混合物を、室温において、3時間撹拌し、ついで、真空下で、蒸発させた。粗製物質をトルエン20mlで希釈し、シリカゲル上で濾過した。真空下で、溶媒を除去して、純粋な生成物を得た(1.35 g)。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.00 (s, 9H), 0.14 (s, 6H), 1.53 (s, 6H), 2.50 (s, 3H), 7.2 (d, 2H), 8.14 (d, 2H)
【実施例3】
【0107】
2-メチル-1-(4-モルホリノフェニル)-2-((1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラニル)オキシ)プロパン-1-オンの合成
【化11】

ジクロロメタン120 mlにフルオロベンゼン10g(104ミリモル)及びα-ブロモイソブチリルブロミド25.1 g(109ミリモル)を含有する溶液に、温度を0~5℃に維持しながら、約30分で、三塩化アルミニウム14.5 g(109ミリモル)を添加した。室温において、2時間後、反応混合物を、氷水100 ml及び37%HCl2mlの混合物中に注いだ。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過した。溶液を、還流しながら、3時間、0.5M KOHメタノール溶液100 mlにて処理した。水100 ml及びジクロロメタン50mlで希釈した後、相を分離した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下で、溶媒を蒸発させた。粗製物質(4g、21.3ミリモル)、モルホリン(1.85 g、21.3ミリモル)、及び炭酸カリウム(4.42 g、32ミリモル)を、ジメチルスルホキシド50mに溶解した。160℃において、18時間後、懸濁液を冷却し、水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下で、溶媒を蒸発させた。何ら精製することなく、粗製物質を次工程において使用した。
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-モルホリノフェニル)プロパン-1-オン(1.67 g、6.69ミリモル)及びクロロペンタメチルジシラン(1.11 g、6.69ミリモル)を、ジクロロメタン30mlに溶解し、イミダゾール0.45 g(6.69ミリモル)を添加した。反応混合物を、室温において、3時間撹拌し、ついで、真空下で、蒸発させた。粗製物質を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル(9/1))により精製して、純粋な生成物1.15 gを得た。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.01 (s, 9H), 0.14 (s, 6H), 1.50 (s, 6H), 3.29 (t, 2H), 3.86 (t, 2H), 6.83 (d, 2H), 8.19 (d, 2H)
【実施例4】
【0108】
2-メチル-2-((1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラニル)オキシ)-1-(4-フェノキシフェニル)プロパン-1-オンの合成
【化12】

ジクロロメタン100 mlにジフェニルエーテル15g(88.1ミリモル)及びα-ブロモイソブチリルブロミド10.11 g(44ミリモル)を含有する溶液に、温度を0~5℃に維持しながら、約30分で、三塩化アルミニウム5.87 g(44ミリモル)を添加した。室温において、2時間後、反応混合物を、氷水100 ml及び37%HCl2mlの混合物中に注いだ。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過した。溶液を、還流しながら、3時間、0.5M KOHメタノール溶液120 mlにて処理した。水100 ml及びジクロロメタン50mlで希釈した後、相を分離した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下で、溶媒を蒸発させた。粗製物質を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)によって精製し、次工程において使用した。
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-フェノキシフェニル)プロパン-1-オン(1.5g、5.8ミリモル)及びクロロペンタメチルジシラン(0.97 g、5.8ミリモル)を、ジクロロメタン20mlに溶解し、イミダゾール0.4g(5.8ミリモル)を添加した。反応混合物を、室温において、3時間撹拌し、ついで、真空下で、蒸発させた。粗製物質をトルエン20mlで希釈し、シリカゲル上で濾過した。真空下で、溶媒を除去して、純粋な生成物を得た(1.27 g)。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.05 (s, 9H), 0.15 (s, 6H), 1.55 (s, 6H), 6.95 (d, 2H), 7.07 (d, 2H), 7.18 (t, 1H), 7.38 (t, 2H), 8.20 (d, 2H)
【実施例5】
【0109】
2-メチル-2-((1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラニル)オキシ)-1-(4-(フェニルチオ)フェニル)プロパン-1-オンの合成
【化13】

ジクロロメタン100 mlにジフェニルスルフィド15g(80.5ミリモル)及びα-ブロモイソブチリルブロミド9.25 g(40.2ミリモル)を含有する溶液に、温度を0~5℃に維持しながら、約30分で、三塩化アルミニウム5.35 g(40.2ミリモル)を添加した。室温において、2時間後、反応混合物を、氷水100 ml及び37%HCl2mlの混合物中に注いだ。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過した。溶液を、還流しながら、3時間、0.5M KOHメタノール溶液100 mlにて処理した。水100 ml及びジクロロメタン50mlで希釈した後、相を分離した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下で、溶媒を蒸発させた。粗製物質を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)によって精製し、次工程において使用した。
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-フェニルチオ)フェニル)プロパン-1-オン(1.5g、5.5ミリモル)及びクロロペンタメチルジシラン(0.92 g、5.5ミリモル)を、ジクロロメタン20mlに溶解し、イミダゾール0.37 g(5.5ミリモル)を添加した。反応混合物を、室温において、3時間撹拌し、ついで、真空下で、蒸発させた。粗製物質をトルエン20mlで希釈し、シリカゲル上で濾過した。真空下で、溶媒を除去して、純粋な生成物を得た(1.30 g)。
1H NMR (CDCl3, δppm):0.00 (m, 9H), 0.14 (m, 6H), 1.54 (s, 6H), 7.18 (d, 2H), 7.37 (m, 3H), 7.47 (d, 2H), 8.08 (d, 2H)
【実施例6】
【0110】
2-メチル-2-((1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラニル)オキシ)-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オンの合成
【化14】

工程1
テトラロン(4.55 ml、34.202ミリモル)のTHF(20ml)溶液を、窒素雰囲気下、撹拌したNaH(60%オイル分散液、2.73 g、68.404ミリモル)及びジメチルカーボネート(5.76 ml、68.404ミリモル)のTHF(80ml)懸濁液に1滴ずつ添加した。反応混合物を、2時間、還流加熱した。ついで、室温まで冷却し、1M塩酸水溶液で酸性化し、酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をDMF(20ml)に溶解し、撹拌したNaH(60%オイル分散液、2.05 g、51.3ミリモル)のDMF(50ml)懸濁液に、1滴ずつ添加した。窒素雰囲気下、室温において、1時間、混合物を撹拌した。ついで、ヨウ化メチル(3.19 ml、51.3ミリモル)を添加し、混合物を、同じ温度において、さらに1時間、撹拌した。ついで、水を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を蒸発させた。残渣を酢酸(50ml)に溶解し、37%HCl(11ml)を添加した。混合物を、4時間、還流加熱し、室温に冷却し、水(100 ml)で希釈し、ジクロロメタンで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。粗製物質、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル(5/95))によって精製して、純粋な生成物5.056 gを得た。
1H NMR (CDCl3, δ ppm):1.24-1.30 (d, 3H), 1.84-1.92 (m, 1H), 2.16-2.23 (m, 1H), 2.55-2.62 (m, 1H), 2.94-3.07 (m, 2H), 7.21 (d, 1H), 7.27-7.32 (t, 1H), 7.43-7.48 (m, 1H), 8.01-8.06 (m, 1H)
【0111】
工程2
NaI(3.567 g、23.84ミリモル)のアセトニトリル(50ml)懸濁液に、工程1で調製した2-メチル-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン(2.728 g、17.03ミリモル)のアセトニトリル溶液(10ml)を添加し、続いて、トリエチルアミン(3.55 ml、25.54ミリモル)を添加した。ついで、混合物を0℃に冷却し、クロロトリメチルシラン(2.81 ml、22.14ミリモル)を1滴ずつ添加した。窒素雰囲気下、室温において、2時間、混合物を撹拌した。ついで、水(50ml)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をジクロロメタン(20ml)に溶解し、0℃において、3-クロロ過安息香酸(3.82 g、22.13ミリモル)を添加した。室温において、30分間、混合物を撹拌した。ついで、10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をTHF(40ml)に溶解し、テトラ-n-ブチルフッ化アンモニウム(6.68 g、25.54ミリモル)を添加した。室温において、反応混合物を一夜撹拌した。ついで、水(50ml)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。粗製生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル(1/5))によって精製して、純粋な生成物2.177 gを得た。
1H NMR (CDCl3, δ ppm):1.4 (s, 3H), 2.17-2.28 (m, 2H), 2.99-3.14 (m, 2H), 7.23-7.28 (m, 1H), 7.32-7.37 (t, 1H), 7.49-7.55 (m, 1H), 8.01-8.06 (m, 1H)
【0112】
工程3
2-ヒドロキシ-2-メチル-3,4-ジヒドロナフタレン-1(2H)-オン(工程2で調製;300 mg、1.704ミリモル)のジクロロメタン(10ml)溶液に、クロロペンタメチルジシラン(494 μl、2.56ミリモル)及びイミダゾール(174 mg、2.56ミリモル)を添加した。室温において、3時間、混合物を撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。残渣を、短いシリカゲルパッド(100%シクロヘキサン2cv、及びついで、酢酸エチル/シクロヘキサン(5/95)にて溶離)を介して濾過して、純粋な生成物90mgを得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):0.09 (s, 9H), 0.18 (s, 3H), 0.20 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 2.01-2.08 (m, 1H), 2.19-2.26 (m, 1H), 2.84-2.91 (m, 1H), 3.10-3.17 (m, 1H), 7.18-7.22 (d, 1H), 7.27-7.32 (t, 1H), 7.43-7.47 (m, 1H), 7.99-8.02 (m, 1H)
【実施例7】
【0113】
6-メトキシ-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オンの合成
【化15】

工程1
6-メトキシ-1-テトラロン(5 g、28.37ミリモル)のTHF(50ml)溶液を、窒素雰囲気下、撹拌したNaH(60%オイル分散液、2.27 g、56.75ミリモル)及びジメチルカーボネート(4.78 ml、56.75ミリモル)のTHF(50ml)懸濁液に1滴ずつ添加した。反応混合物を、2時間、還流加熱した。ついで、室温まで冷却し、1M塩酸水溶液で酸性化し、酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をDMF(20ml)に溶解し、撹拌したNaH(60%オイル分散液、1.7g、42.55ミリモル)のDMF(50ml)懸濁液に1滴ずつ添加した。窒素雰囲気下、室温において、1時間、混合物を撹拌した。ついで、ヨウ化メチル(2.6ml、42.55ミリモル)を添加し、混合物を、同じ温度において、さらに1時間、撹拌した。ついで、水を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣を酢酸(50ml)に溶解し、37%HCl(11ml)を添加した。混合物を、4時間、還流加熱し、室温に冷却し、水(100 ml)で希釈し、ジクロロメタンで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。粗製生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル(5/95))によって精製して、純粋な生成物5.04 gを得た(収率=93%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ= 1.22-1.27 (d, 3H), 1.80-1.89 (m, 1H), 2.13-2.19 (m, 1H), 2.49-2.56 (m, 1H), 2.88-3.02 (m, 2H), 3.83 (s, 3H), 6.65-6.67 (m, 1H), 6.79-6.82 (m, 1H), 7.98-8.01 (m, 1H)
【0114】
工程2
NaI(2.62 g、14.47ミリモル)のアセトニトリル(25ml)懸濁液に、6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン(工程1で調製)(2g、12.48ミリモル)のアセトニトリル溶液(10ml)を添加し、続いて、トリエチルアミン(2.6ml、18.72ミリモル)を添加した。ついで、混合物を0℃に冷却し、クロロトリメチルシラン(2.06 ml、16.22ミリモル)を1滴ずつ添加した。窒素雰囲気下、室温において、2時間、混合物を撹拌した。ついで、水(25ml)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をジクロロメタン(10ml)に溶解し、0℃において、3-クロロ過安息香酸(3.635 g、21.06ミリモル)を添加した。室温において、30分間、混合物を撹拌した。ついで、10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をTHF(40ml)に溶解し、テトラ-n-ブチルフッ化アンモニウム(3.94 g、12.48ミリモル)を添加した。室温において、反応混合物を一夜撹拌した。ついで、水(50ml)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。粗製生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル(3/7))によって精製して、純粋な生成物557 mgを得た(収率=22%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ =1.4 (s, 3H), 2.15-2.26 (m, 2H), 2.92-3.1 (m, 2H), 3.85 (s, 3H), 6.72 (s, 1H), 6.84-6.88 (m, 1H), 7.97-8.01 (m, 1H)
【0115】
工程3
2-ヒドロキシ-6-メトキシ-2-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-オン(工程2で調製)(270 mg、1.31ミリモル)のジクロロメタン(2ml)溶液に、クロロペンタメチルジシラン(303 μl、1.57ミリモル)及びイミダゾール(107 mg、1.57ミリモル)を添加した。室温において、3時間、混合物を撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。残渣を、短い酸化アルミニウムパッド(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル(5/95))を介して濾過して、純粋な生成物150 mgを得た(収率=34%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):-0.01 (s, 9H), 0.15 (s, 3H), 0.13 (s, 3H), 1.32 (s, 3H), 1.96-2.15 (m, 2H), 2.82-2.96 (m, 1H), 2.97-3.10 (m, 1H), 3.83 (s, 3H), 6.83-6.87 (d, 1H), 6.88-6.95 (dd, 1H), 7.81-7.88 (d, 1H)
【実施例8】
【0116】
2-メチル-1-[4-(4-{2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシプロパノイル}フェノキシ)フェニル]-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシプロパン-1-オン(式(I)/(Ia)、n=2;Ar(Ar’)= -フェニレン-O-pフェニレン-)の合成
【化16】

2‐ヒドロキシ‐1‐{4‐[4‐(2‐ヒドロキシ‐2‐メチルプロパノイル)フェノキシ]フェニル}‐2‐メチルプロパン‐1‐オン(2g、5.841ミリモル)を、ジクロロメタン(10ml)に溶解し、クロロペンタメチルジシラン(2.71 ml、14.02ミリモル)及びイミダゾール(954 mg、14.02ミリモル)を添加した。室温において、2時間、混合物を撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。粗製生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル(5/95))によって精製して、純粋な生成物2.4gを得た(収率=69%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):-0.03 (s, 18H), 0.15 (s, 12H), 1.5 (s, 12H), 7.10- 7.18 (d, 4H), 8.13-8.20 (d, 4H)
【実施例9】
【0117】
1-[(1-ベンゾイルシクロヘキシル)オキシ]-1,1,2,2,2-ペンタメチルジシランの合成
【化17】

1‐ベンゾイルヘキサン‐1‐オール(1g、4.89ミリモル)を、ジクロロメタン(10ml)に溶解し、クロロペンタメチルジシラン(1.14 ml、5.87ミリモル)及びイミダゾール(400 mg、5.87ミリモル)を添加した。室温において、2時間、混合物を撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。粗製生成物を、酸化アルミニウム上でのフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル2cv;酢酸エチル/石油エーテル(3/97))によって精製して、純粋な生成物350 mgを得た(収率=21%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):0.00 (s, 9H), 0.08 (s, 6H), 1.21-1.54 (m, 4H), 1.55-1.71 (m, 2H), 1.71-1.83 (m, 2H), 1.86-2.00 (m, 2H), 7.44-7.54 (m, 2H), 7.54-7.64 (m, 1H), 8.02-8.11 (m, 2H)
【実施例10】
【0118】
6-メチル-6-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ]-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-5-オンの合成
【化18】

工程1
1-ベンゾスベロン(5g、31.21ミリモル)のTHF(50ml)溶液を、窒素雰囲気下、撹拌したNaH(60%オイル分散液、2.50 g、62.42ミリモル)及びジメチルカーボネート(5.26 ml、62.42ミリモル)のTHF(50ml)懸濁液に1滴ずつ添加した。反応混合物を、2時間、還流加熱した。ついで、室温まで冷却し、1M塩酸水溶液で酸性化し、酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をDMF(20ml)に溶解し、撹拌したNaH(60%オイル分散液、1.87 g、46.8ミリモル)のDMF(50ml)懸濁液に、1滴ずつ添加した。窒素雰囲気下、室温において、1時間、混合物を撹拌した。ついで、ヨウ化メチル(2.91 ml、46.8ミリモル)を添加し、混合物を、同じ温度において、さらに1時間、撹拌した。ついで、水を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣を酢酸(50ml)に溶解し、37%HCl(11ml)を添加した。混合物を、4時間、還流加熱し、室温に冷却し、水(100 ml)で希釈し、ジクロロメタンで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。粗製生成物、フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル(5/95))によって精製して、純粋な生成物4.97 gを得た(収率=91%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ = 1.19-1.24 (d, 3H), 1.54-1.64 (m, 1H), 1.66-1.74 (m, 1H), 1.86-1.95 (m, 1H), 2.02-2.12 (m, 1H), 2.87-3.04 (m, 3H), 7.18-7.21 (d, 1H), 7.25-7.29 (d, 1H), 7.34-7.39 (m, 1H), 7.64-7.68 (m, 1H)
【0119】
工程2
NaI(5.98 g、39.93ミリモル)のアセトニトリル(50ml)懸濁液に、6-メチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-5-オン(工程1で調製)(4.97 g、28.52ミリモル)のアセトニトリル溶液(10ml)を添加し、続いて、トリエチルアミン(5.95 ml、42.78ミリモル)を添加した。ついで、混合物を0℃に冷却し、クロロトリメチルシラン(4.71 ml、37.08ミリモル)を1滴ずつ添加した。窒素雰囲気下、室温において、2時間、混合物を撹拌した。ついで、水(50ml)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をジクロロメタン(20ml)に溶解し、0℃において、3-クロロ過安息香酸(8.31 g、48.15ミリモル)を添加した。室温において、30分間、混合物を撹拌した。ついで、10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。残渣をTHF(40ml)に溶解し、テトラ-n-ブチルフッ化アンモニウム(7.46 g、28.52ミリモル)を添加した。室温において、反応混合物を一夜撹拌した。ついで、水(50ml)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(2×50ml)。有機相を10%NaHCO3水溶液、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下で、溶媒を除去した。粗製生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル(1/9))によって精製して、純粋な生成物3.654 gを得た(収率=67%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ = 1.25 (s, 3H), 1.88-2.05 (m, 3H), 2.11-2.18 (m, 1H), 2.83-2.88 (m, 2H), 7.14-7.17 (m, 1H), 7.24-7.28 (m, 1H), 7.35-7.39 (m, 2H)
【0120】
工程3
6-ヒドロキシ-6-メチル-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-5-オン(工程2で調製)(1g、5.26ミリモル)のジクロロメタン(50ml)溶液に、クロロペンタメチルジシラン(1.22 ml、6.31ミリモル)及びイミダゾール(429 mg、6.31ミリモル)を添加した。室温において、3時間、混合物を撹拌し、ついで、減圧下で濃縮した。残渣を、短い酸化アルミニウムパッド(石油エーテル4cv)を介して濾過して、純粋な生成物506 mgを得た(収率=30%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6):-0.10 (s, 9H), 0.05 (s, 3H), 0.16 (s, 3H), 1.36 (s, 3H), 1.59-1.75 (m, 1H), 1.76-1.87 (m, 1H), 1.87-2.06 (m, 2H), 2.69-2.81 (m, 1H), 2.86-2.99 (m, 1H), 7.17-7.24 (m, 1H), 7.24-7.30 (m, 2H), 7.32-7.41 (m, 1H)
【実施例11】
【0121】
主として、2,3-ジヒドロ-6-[2-(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ-2-メチル-1-オキソプロピル]-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ-2-メチル-1-オキソプロプル)フェニル]-1H-インデン;2,3-ジヒドロ-5-[2-(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ-2-メチル-1-オキソプロピル]-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデンに基づく混合物の合成
【化19】

Esacure(登録商標)ONE(主として、2,3-ジヒドロ-6-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデン;2,3-ジヒドロ-5-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)-1,1,3-トリメチル-3-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-オキソプロピル)フェニル]-1H-インデンに基づく混合物)(0.2g、0.489ミリモル)及びクロロペンタメチルジシラン(0.16 g、0.977ミリモル)を、ジクロロメタン(10ml)に溶解し、イミダゾール0.07 g(0.977ミリモル)を添加した。室温において、3時間、反応混合物を撹拌し、ついで、真空下で蒸発させた。た。粗製物質をトルエン20mlで希釈し、シリカゲル上で濾過した。真空下で、溶媒を除去して、純粋な生成物を得た。
1H NMR (CDCl3, δ ppm):0.00 (m, 18H), 0.12 (m, 18H), 1.1 (s, 3H), 1.39 (s, 3H), 1.59 (m, 12H), 1.73 (s, 3H), 2.25 (d, 1H), 2.49 (m, 1H), 7.1-7.22 (m, 3H), 7.93-8.25 (m, 4H)
【実施例12】
【0122】
1-(9-ブチル-9H-カルバゾール-3-イル)-2-メチル-2-[(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシラン-1-イル)オキシ]プロパン-1-オンの合成
【化20】

N-ブチルカルバゾール(3g、13.4ミリモル)及びα-ブロモイソブチリルブロミド(3.67 g、16ミリモル)をベンゼン(40ml)に溶解し、さらに、撹拌しながら、0℃において、30分間で、塩化アルミニウム(1.78 g、13.4ミリモル)を添加した。添加が完了後、25℃において、4時間、撹拌した。反応溶液を、氷水50gに注ぎ、続いて、ベンゼン100 mlで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤を濾過して除き、ついで、残渣を、トルエン/石油エーテル(6/1)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。粗製生成物をジクロロメタン6mlに溶解し、50%NaOH溶液0.24 gとともに、5時間、還流加熱した。水10ml及びジクロロメタン10mlで希釈した後、相を分離した。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥し、濾過し、真空下で、溶媒を蒸発させた。組成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル(9/1))によって精製し、次工程において使用した。
1-(9-ブチル-9H-カルバゾール-3-イル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(0.5g、1.61ミリモル)及びクロロペンタメチルジシラン(0.26 g、1.61ミリモル)を、ジクロロメタン5mlに溶解し、イミダゾール0.1g(1.61ミリモル)を添加した。30℃において、3時間、反応混合物を撹拌し、ついで、真空下で、蒸発させた。組成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(トルエン)によって精製した。真空下で、溶媒を除去して、生成物(0.3g)を得た。
1H NMR (CDCl3, δ ppm):0.00 (s, 9H), 0.18 (s, 6H), 0.92 (t, 3H), 1.4 (m, 2H), 1.65 (s, 6H), 1.85 (m, 2H), 4.32 (t, 2H) 7.2-7.5 (m, 4H), 8.14 (d, 1H), 8.40 (d, 1H), 9.14 (s, 1H)
【実施例13】
【0123】
比較テスト
本発明のα-ジシリルオキシケトンを、Macromolecules 2009, 42, 6031-6037 (PI-1)に記載のようにして調製した従来技術の2-メチル-2-(1,1,2,2,2-ペンタメチルジシリルオキシ)-1-フェニルプロパン-1-オン(COMP-1)及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(COMP-2)と比較した。
【0124】
[実施例13.1]
比較テスト
[実施例13.1.1]
透明の処方;水銀ランプ
光開始剤を、それぞれ、Ebecryl(登録商標)605及びEbecryl 350(Allnex)の99.5:0.5(質量)混合物に、、濃度3質量%で溶解することによって、テスト用の光重合性組成物を調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルから距離65mm、角度30°で配置した水銀ランプ(160 W)に露光した。光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを獲得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
結果(経時的重合度%として示す)を表3に報告する。
【0125】
【表2】


*:比較対象

これらのテストは、式(Ia)及び(II)の化合物が、同一の量で使用される際、比較対象(COMP-1)に匹敵する又はより優れた反応性を有することを証明する。最良のパフォーマンスは、実施例6によって達成され、この場合、反応性は、対照化合物(COMP-1)の反応性の2倍であった。
【0126】
[実施例13.1.2]
透明の処方;LEDランプ(400 nm)
光重合性組成物を、
1. 濃度3質量%光開始剤及び0.5%イソプロピルチオキサントン(増感剤)を、Ebecryl 605及びEbecryl 350(Allnex)の99.5:0.5(質量)混合物に溶解する(処方A);
2. 光開始剤を、Ebecryl 605及びEbecryl 350(Allnex)の99.5:0.5(質量)混合物に、濃度3質量%で溶解する(処方B)
ことによって調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルからの距離25mm、角度30°で配置したLED光源(400 nm)に露光した。光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを獲得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
結果(経時的重合度%として示す)を表4に報告する。
【0127】
【表3】


*:比較対象

これらのテストは、式(I)、(Ia)、及び(II)の化合物が増感され、LEDランプにて作用可能であるが、一方、α-ヒドロキシケトンである比較対象(COMP-2)では達成されないことを証明する。
驚くべきことには、試験に供した全てのα-ジシリオキシアリールケトンが、増感剤との混合物である場合、LEDランプにて作用可能であるとの知見を得た。
【0128】
[実施例13.1.3]
シアンインクジェットインク;水銀ランプ
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルから距離65mm、角度30°で配置した水銀ランプ(160 W)に露光した。光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを獲得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
結果(経時的重合度%として示す)を表5に報告する。
【0129】
【表4】


*:比較対象

これらのテストは、式(Ia)の化合物が、比較対象よりも反応性であることを確証する。
【0130】
[実施例13.1.4]
シアンインクジェットインク;LEDランプ(400 nm)
光重合性組成物を、
1. 濃度5質量%光開始剤及び0.5%イソプロピルチオキサントンを、シアンインクジェットインクに溶解する(処方A);
2. 光開始剤を、シアンインクジェットインクに、濃度5質量%で溶解する(処方B)
ことによって調製した。
FT-IR(FT-IR 430-Jasco)のサンプル拠点に置いた光重合性組成物を、サンプルからの距離25mm、角度30°で配置したLED光源(400 nm)に露光した。光重合の間に、一定の時間間隔で、IRスペクトルを獲得し、IRソフトウエアを使用して、アクリル二重結合に割り当てられた1408 cm-1及び810 cm-1におけるピーク面積の経時的減少を測定した。これは、重合度、従って、光開始剤の効力の定量を可能にする。
結果(経時的重合度%として示す)を表6に報告する。
【0131】
【表5】


*:比較対象

これらのテストは、式(I)の化合物が、着色系においても増感され、LEDランプにて作用可能であるが、一方、比較対象(COMP-2)では達成されないことを証明する。