(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】オープン検出装置及びオープン検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20240416BHJP
【FI】
G01R31/54
(21)【出願番号】P 2019169047
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明
(72)【発明者】
【氏名】金田 崇宏
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-062793(JP,A)
【文献】特開2006-139755(JP,A)
【文献】特開平04-274195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電流指令値に応じた出力電流が流れる1次側の電力線からトランスを介して2次側の負荷に電力を供給するシステムにおいて、1次側の開路を検出するオープン検出装置であって、
前記出力電流もしくは前記出力電流に相当する電流を対象電流として検出する電流検出部と、
前記対象電流の電流実効値を演算する実効値演算部と、
前記対象電流の2乗と前記対象電流の微分値の2乗とを加算した値を元にする瞬時電流実効値を、前記実効値演算部による前記電流実効値の演算間隔よりも短い間隔で演算する瞬時実効値演算部と、
前記瞬時電流実効値が予め設定された第1閾電流値を下回った場合、前記出力電流を
前記出力電流指令値から開路検証電流値に引き下げることを指示する削減信号を出力し、前記削減信号によって前記出力電流が前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記瞬時電流実効値が前記第1閾電流値を上回った場合、前記出力電流を前記開路検証電流値から前記出力電流指令値に戻すことを指示する復帰信号を出力する状態判定部と、
前記削減信号によって前記出力電流が前記出力電流指令値から前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記電流実効値が前記第1閾電流値よりも小さい予め設定された第2閾電流値を下回った場合、1次側の開路を検出する開路判定部と、を具備することを特徴とするオープン検出装置。
【請求項2】
前記開路検証電流値は、1次側及び2次側の開路時に出力電圧が予め規定された増加上限値に到達することがない値に設定されていることを特徴とする請求項1記載のオープン検出装置。
【請求項3】
前記第1閾電流値は、前記出力電流が前記出力電流指令値で設定できる最小電流値で電流波形が正常である場合の前記瞬時電流実効値よりも小さい値に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のオープン検出装置。
【請求項4】
出力電圧もしくは前記出力電圧に相当する電圧を対象電圧として検出する電圧検出部を具備し、
前記瞬時実効値演算部は、前記対象電圧の2乗と前記対象電圧の微分値の2乗とを加算した値を元にする
瞬時電圧実効値を、前記瞬時電流実効値と同じ間隔で演算し、
状態判定部は、前記瞬時電流実効値が前記第1閾電流値を下回り、且つ前記瞬時電圧実効値が予め設定された第1閾電圧値を上回った場合、前記削減信号を出力し、前記削減信号によって前記出力電流が前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記瞬時電流実効値が前記第1閾電流値を上回り、且つ前記瞬時電圧実効値が前記第1閾電圧値を下回った場合、前記復帰信号を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオープン検出装置。
【請求項5】
前記第1閾電圧値は、前記出力電流が前記出力電流指令値で設定できる最大電流値で電圧波形が正常である場合の前記瞬時電圧実効値によりも大きい値に設定されていることを特徴とする請求項4記載のオープン検出装置。
【請求項6】
出力電流指令値に応じた出力電流が流れる1次側の電力線からトランスを介して2次側の負荷に電力を供給するシステムにおいて、1次側の開路を検出するオープン検出方法であって、
電流検出部は、前記出力電流もしくは前記出力電流に相当する電流を対象電流として検出し、
実効値演算部は、前記対象電流の電流実効値を演算し、
瞬時実効値演算部は、前記対象電流の2乗と前記対象電流の微分値の2乗とを加算した値を元にする瞬時電流実効値を、前記実効値演算部による前記
電流実効値の演算間隔よりも短い間隔で演算し、
状態判定部は、前記瞬時電流実効値が予め設定された第1閾電流値を下回った場合、前記出力電流を
前記出力電流指令値から開路検証電流値に引き下げることを指示する削減信号を出力し、前記削減信号によって前記出力電流が前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記瞬時電流実効値が前記第1閾電流値を上回った場合、前記出力電流を前記開路検証電流値から前記出力電流指令値に戻すことを指示する復帰信号を出力し、
開路判定部は、前記削減信号によって前記出力電流が前記出力電流指令値から前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記電流実効値が前記第1閾電流値よりも小さい予め設定された第2閾電流値を下回った場合、1次側の開路を検出することを特徴とするオープン検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行場灯火のオープン(開路)を検出するオープン検出装置及びオープン検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行場灯火は、灯火台数分が直列接続されたカレントトランスの2次側に灯器(ランプ)を接続したもので、この飛行場灯火の電源側に飛行場灯火電源装置である定電流交流電源装置(以下、CCRと称す)が接続され、CCRより灯器の明るさに調光された定電流で飛行場灯火に電力を供給している。
【0003】
このようなCCRにおいて、電源の出力部に出力電流検出回路と出力電圧検出回路の少なくとも一方を設け、出力電流検出回路の検出電流が所定値以下のとき、又は出力電圧検出回路の検出電圧が所定値以上のときに動作する保護回路を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
飛行場灯火では、カレントトランスの2次側に接続された灯器が切れてオープン(断芯)となっても他灯器への電力供給は継続されるのに対し、カレントトランスの1次側がオープンになった場合は定電流での供給は困難となる。すなわち、CCRは、灯器の断芯の発生(2次側のオープン)では運転を継続し、1次側のオープンでは運転を停止する必要があるので、それぞれ区別して判定する必要がある。
【0006】
また、1次側のオープンの検出に際しては、航空局よりオープン時に生じる出力電圧の増加上限値、オープン検出時間が定められている。従って、CCRは、定められた条件より素早く1次側のオープンを2次側のオープンと区別して検出する必要がある。
【0007】
しかしながら、正弦波電流を供給する機能を持つCCRにおいて、
図7(a)、(b)に示すように、1次側のオープン直後の出力電圧の電圧波形と、灯器の断芯の発生(2次側のオープン)直後の出力電圧の電圧波形との挙動(立ち上がり急峻)が類似しているため、出力電圧の電圧波形から素早く1次側のオープンを2次側のオープンと区別して検出することが困難である。
【0008】
そこで、出力電流での検出が必要となるが、1次側のオープン発生から定められた条件よりも速い時間で出力電圧の増加上限値に達するため、一般的な出力電流の実効値演算では、1次側のオープンと2次側のオープンとを区別して検出することができない。
【0009】
本発明の目的は、従来技術の上記問題を解決し、1次側のオープンを2次側のオープンと区別して検出することができるオープン検出装置及びオープン検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のオープン検出装置は、出力電流指令値に応じた出力電流が流れる1次側の電力線からトランスを介して2次側の負荷に電力を供給するシステムにおいて、1次側の開路を検出するオープン検出装置であって、前記出力電流もしくは前記出力電流に相当する電流を対象電流として検出する電流検出部と、前記対象電流の電流実効値を演算する実効値演算部と、前記対象電流の2乗と前記対象電流の微分値の2乗とを加算した値を元にする瞬時電流実効値を、前記実効値演算部による前記電流実効値の演算間隔よりも短い間隔で演算する瞬時実効値演算部と、前記瞬時電流実効値が予め設定された第1閾電流値を下回った場合、前記出力電流を前記出力電流指令値から開路検証電流値に引き下げることを指示する削減信号を出力し、前記削減信号によって前記出力電流が前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記瞬時電流実効値が前記第1閾電流値を上回った場合、前記出力電流を前記開路検証電流値から前記出力電流指令値に戻すことを指示する復帰信号を出力する状態判定部と、前記削減信号によって前記出力電流が前記出力電流指令値から前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記電流実効値が前記第1閾電流値よりも小さい予め設定された第2閾電流値を下回った場合、1次側の開路を検出する開路判定部と、を具備することを特徴とする。
また、本発明のオープン検出方法は、出力電流指令値に応じた出力電流が流れる1次側の電力線からトランスを介して2次側の負荷に電力を供給するシステムにおいて、1次側の開路を検出するオープン検出方法であって、電流検出部は、前記出力電流もしくは前記出力電流に相当する電流を対象電流として検出し、実効値演算部は、前記対象電流の電流実効値を演算し、瞬時実効値演算部は、前記対象電流の2乗と前記対象電流の微分値の2乗とを加算した値を元にする瞬時電流実効値を、前記実効値演算部による前記電流実効値の演算間隔よりも短い間隔で演算し、状態判定部は、前記瞬時電流実効値が予め設定された第1閾電流値を下回った場合、前記出力電流を前記出力電流指令値から開路検証電流値に引き下げることを指示する削減信号を出力し、前記削減信号によって前記出力電流が前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記瞬時電流実効値が前記第1閾電流値を上回った場合、前記出力電流を前記開路検証電流値から前記出力電流指令値に戻すことを指示する復帰信号を出力し、開路判定部は、前記削減信号によって前記出力電流が前記出力電流指令値から前記開路検証電流値に引き下げられた状態で、前記電流実効値が前記第1閾電流値よりも小さい予め設定された第2閾電流値を下回った場合、1次側の開路を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象電流の異常を素早く検出して、出力電流を設定可能な最小電流値から開路検証電流値に引き下げた状態で、対象電流の低下を判定することができるため、1次側のオープンを2次側のオープンと区別して検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るオープン検出装置を備えた航空灯火システムの第1の実施の形態の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すオープン検出装置のオープン検出動作を説明するフローチャートである。
【
図3】本発明に係るオープン検出装置を備えた航空灯火システムの第2の実施の形態の構成を示す図である。
【
図4】本発明に係るオープン検出装置を備えた航空灯火システムの第3の実施の形態の構成を示す図である。
【
図5】
図4に示すオープン検出装置のオープン検出動作を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明に係るオープン検出装置を備えた航空灯火システムの第4の実施の形態の構成を示す図である。
【
図7】航空灯火システムの1次側のオープン時及び2次側のオープン時の電圧及び電流波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0014】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態のオープン検出装置10は、定電流を用いて直列に接続された複数の負荷を駆動するシステム、例えば、
図1に示す航空灯火システム1に備えられる。
【0015】
航空灯火システム1は、商用交流電源などの外部交流電源ACに電気的に接続された定電流交流電源装置2(以下、CCR2と称す)と、CCR2に直列に接続された複数の灯器3とを備えている。
【0016】
CCR2は、コンバータ(AC/DC)21と、インバータ(DC/AC)22と、トランス23と、出力電流指令値に基づいてコンバータ21及びインバータ22の動作を制御する制御部24とを備えている。CCR2は、外部交流電源ACをコンバータ21により交流から直流に変換し、高周波スイッチング素子を使用した電力変換器であるインバータ22により直流から正弦波の交流に変換し、トランス23を介して高電圧の定電流を航空灯火の負荷である灯器3に出力電流として供給する。
【0017】
制御部24は、出力電流が上位システムから入力される出力電流指令値に一致する様に、コンバータ21及びインバータ22の動作を制御する。通常動作において、制御部24は、出力電流が出力電流指令値に一致する様に、コンバータ21及びインバータ22の動作を制御する。出力電流指令値は、最小電流値から最大電流値の間で段階的もしくはリニアに設定される。
【0018】
CCR2からの出力電流が流れる電力線4は、1次側の閉ループを形成され、灯器3の台数分のトランス5が直列接続されている。トランス5は、灯器3への電源供給用トランスであり、2次側に灯器3が接続される。
【0019】
インバータ22からの出力線には、インバータ22によって変換されたインバータ出力電流(トランス23の1次電流)を検出する変流器CT1が取り付けられている。
【0020】
オープン検出装置10は、変流器CT1によって検出されたインバータ出力電流に基づいて1次側のオープン発生から設定されたオープン検出時間よりも速く、出力電圧が設定された増加上限値に達するまでに、1次側のオープンを2次側のオープンと区別して検出する。
【0021】
オープン検出装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイコン等の情報処理装置である。オープン検出装置10のCPUは、ROMに記憶されている制御を読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、瞬時実効値演算部11、実効値演算部12、状態判定部13、開路判定部14として機能する。
【0022】
瞬時実効値演算部11は、インバータ出力電流の電流波形を微分してインバータ出力電流微分値を算出すると共に、インバータ出力電流Iの2乗とインバータ出力電流微分値I*の2乗とを加算した値(I2+I*2)を算出し、さらに(I2+I*2)を2で除算した値の平方根を瞬時電流実効値として演算する。なお、(I2+I*2)自体や、(I2+I*2)を元に定数で演算した値を瞬時電流実効値としても良い。
【0023】
瞬時実効値演算部11は、オープン検出装置10が変流器CT1によるインバータ出力電流の検出値を取り込む毎に、瞬時電流実効値の演算を実行する。瞬時実効値演算部11による瞬時電流実効値の演算間隔は、インバータ出力電流の1周期よりも十分に短い間隔であり、1次側のオープン発生によって出力電圧が増加上限値に達する時間よりも短い時間に設定されている。
【0024】
実効値演算部12は、変流器CT1によるインバータ出力電流の検出値に基づいて、インバータ出力電流の1周期ごとに実効値(以下、電流実効値と称す)を演算する。なお、瞬時電流実効値は、インバータ出力電流の電流波形が正常である場合、インバータ出力電流の実効値と一致する。以下、出力電流(出力電流指令値)が最小電流値でインバータ出力電流の電流波形が正常である場合の瞬時電流実効値を最小瞬時電流実効値と称し、出力電流(出力電流指令値)が最小電流値でインバータ出力電流の電流波形が正常である場合の最小電流実効値と称す。
【0025】
状態判定部13は、瞬時電流実効値が最小瞬時電流実効値よりも小さい値に設定された第1閾電流値を下回るか否かを判断し、瞬時電流実効値が第1閾電流値を下回った場合、状態判定部13は、1次側で開路が発生した状態と見なし、出力電流を最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げることを制御部24に指示する削減信号を出力する。これにより、制御部24は、出力電流を最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げる。
【0026】
また、状態判定部13は、出力電流が最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げられた状態で、瞬時電流実効値が第1閾電流値を上回るか否かを判断し、瞬時電流実効値が第2閾電流値を上回った場合、1次側で開路が発生していないと判断し、出力電流を出力電流指令値に戻すことを制御部24に指示する復帰信号を出力する。これにより、制御部24は、出力電流を出力電流指令値に復帰させる。
【0027】
開路判定部14は、出力電流が最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げられた状態で、電流実効値と、第1閾電流値よりも小さい値に設定された第2閾電流値とを比較し、電流実効値が第2閾電流値を下回るか否かを判断し、電流実効値が第2閾電流値を下回った場合、1次側で開路が発生したと判断し、1次側のオープン発生を制御部24に通知する開路信号を出力する。
【0028】
次に、オープン検出装置10によるオープン検出動作について
図2を参照して詳細に説明する。
【0029】
オープン検出装置10には、変流器CT1によって検出されたインバータ出力電流(トランス23の1次電流)が入力され、瞬時実効値演算部11は、インバータ出力電流の1周期よりも十分に短い間隔で瞬時電流実効値を演算すると共に、実効値演算部12は、1周期ごとにインバータ出力電流の電流実効値を演算する(ステップS101)。
【0030】
状態判定部13は、瞬時実効値演算部11による瞬時電流実効値の算出を待機し(ステップS102)、ステップS102で瞬時電流実効値が算出されると、瞬時電流実効値と、最小瞬時電流実効値よりも小さい値に設定された第1閾電流値とを比較する(ステップS103)。
【0031】
次に、状態判定部13は、瞬時電流実効値が第1閾電流値を下回るか否かを判断し(ステップS104)、ステップS104で瞬時電流実効値が第1閾電流値以上である場合、ステップS102に戻って、次に算出される瞬時電流実効値を待機する。
【0032】
ステップS104で瞬時電流実効値が第1閾電流値を下回った場合、状態判定部13は、1次側で開路が発生した状態と見なし、出力電流を最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げることを制御部24に指示する削減信号を出力する(ステップS105)。なお、開路検証電流値は、1次側及び2次側のオープン時に出力電圧が航空局によって規定された増加上限値に到達することがない値に設定されている。また、算出される瞬時電流実効値の誤差を考慮し、連続して算出された複数の瞬時電流実効値のいずれもが第1閾電流値を下回った場合に、ステップS104でYesと判断するようにしても良い。この場合、1次側のオープン発生によって出力電圧が増加上限値に達する時間よりも短い時間内に連続して算出された複数の瞬時電流実効値が判断の対象となる。
【0033】
次に、状態判定部13は、瞬時実効値演算部11による瞬時電流実効値の算出を待機すると共に(ステップS106)、開路判定部14は、実効値演算部12による電流実効値の算出を待機する(ステップS107)。
【0034】
ステップS106で瞬時電流実効値が算出されると、状態判定部13は、瞬時電流実効値と、第1閾電流値とを比較し(ステップS108)、瞬時電流実効値が第1閾電流値を上回るか否かを判断する(ステップS109)。
【0035】
ステップS109で瞬時電流実効値が第1閾電流値以下である場合、ステップS106、S107に戻って、次に算出される瞬時電流実効値、電流実効値を待機する。
【0036】
ステップS109で瞬時電流実効値が第1閾電流値を上回った場合、状態判定部13は、1次側で開路が発生していないと判断し、出力電流を出力電流指令値に戻すことを制御部24に指示する復帰信号を出力し(ステップS110)、ステップS102に戻って、次に算出される瞬時電流実効値を待機する。なお、算出される瞬時電流実効値の誤差を考慮し、連続して算出された複数の瞬時電流実効値のいずれもが第1閾電流値を上回った場合に、ステップS109でYesと判断するようにしても良い。
【0037】
ステップS107で電流実効値が算出されると、開路判定部14は、電流実効値と、第1閾電流値よりも小さい値に設定された第2閾電流値とを比較し(ステップS111)、開路判定部14は、電流実効値が第2閾電流値を下回るか否かを判断する(ステップS112)。
【0038】
ステップS112で電流実効値が第2閾電流値以上である場合、ステップS106、S107に戻って、次に算出される瞬時電流実効値、電流実効値を待機する。
【0039】
ステップS112で電流実効値が第2閾電流値を下回った場合、開路判定部14は、1次側で開路が発生したと判断し、1次側のオープン発生を制御部24に通知する開路信号を出力し(ステップS113)、オープン検出動作を終了する。なお、ステップS112において、算出される電流実効値の誤差を考慮し、連続して算出された複数の電流実効値のいずれもが第2閾電流値を下回った場合に、電流実効値が第2閾電流値を下回ったとして判断するようにしても良い。
【0040】
(第2の実施の形態)
図3に示す航空灯火システム1aのCCR2aには、第1の実施の形態の変流器CT1の代わりに、トランス23からの出力線に出力電流(トランス23の2次電流)を検出する変流器CT2が取り付けられている。そして、オープン検出装置10において、1次側の電力線4に出力する実際の出力電流に基づいて、瞬時実効値演算部11は瞬時電流実効値を、実効値演算部12は電流実効値をそれぞれ演算する点で第1の実施の形態と異なっている。すなわち、第1の実施の形態では、インバータ出力電流を実際の出力電流と見なしており、瞬時電流実効値及び電流実効値は、インバータ出力電流と実際の出力電流とのいずれに基づいて演算しても良い。
【0041】
(第3の実施の形態)
図4に示す航空灯火システム1bのCCR2bは、第1の実施の形態のCCR2の構成に加えて、トランス23の1次側電圧(以下、インバータ出力電圧と称す)を検出する電圧計VT1を備えている。
【0042】
そして、瞬時実効値演算部11aは、瞬時電流実効値と共に、瞬時電圧実効値を演算する。瞬時実効値演算部11aは、インバータ出力電圧の電圧波形を微分してインバータ出力電圧微分値を算出すると共に、インバータ出力電圧Vの2乗とインバータ出力電圧微分値V*の2乗とを加算した値(V2+V*2)を算出し、さらに(V2+V*2)を2で除算した値の平方根を瞬時電圧実効値として演算する。なお、(V2+V*2)自体や、(V2+V*2)を元に定数で演算した値を瞬時電圧実効値としても良い。
【0043】
瞬時実効値演算部11aは、オープン検出装置10aが電圧計VT1によるインバータ出力電圧の検出値を取り込む毎に、瞬時電流実効値と同じタイミングで瞬時電圧実効値の演算を実行する。瞬時実効値演算部11による瞬時電圧実効値の演算間隔は、インバータ出力電圧の1周期よりも十分に短い間隔であり、1次側のオープン発生によって出力電圧が増加上限値に達する時間よりも短い時間に設定されている。
【0044】
なお、瞬時電圧実効値は、インバータ出力電圧の電圧波形が正常である場合、インバータ出力電圧の実効値と一致する。以下、出力電流が最小電流値でインバータ出力電圧の電圧波形が正常である場合の瞬時電圧実効値を最大瞬時電圧実効値と称す。
【0045】
状態判定部13aは、瞬時電流実効値が最小瞬時電流実効値よりも小さい値に設定された第1閾電流値を下回るか否かと、瞬時電圧実効値が最大瞬時電圧実効値よりも大きい値に設定された第1閾電圧値を上回るか否かと、を判断し、瞬時電流実効値が第1閾電流値を下回り、且つ瞬時電圧実効値が第1閾電圧値を上回った場合、状態判定部13は、1次側で開路が発生した状態と見なし、出力電流を最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げることを制御部24に指示する削減信号を出力する。これにより、制御部24は、出力電流指令値を絞って出力電流を最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げる。
【0046】
また、状態判定部13aは、出力電流が最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げられた状態で、瞬時電流実効値が第1閾電流値を上回るか否かと、瞬時電圧実効値が第1閾電圧値を下回るか否かと、を判断し、瞬時電流実効値が第1閾電流値を上回り、且つ瞬時電圧実効値が第1閾電圧値を下回った場合、1次側で開路が発生していないと判断し、出力電流を出力電流指令値に戻すことを制御部24に指示する復帰信号を出力する。これにより、制御部24は、出力電流を出力電流指令値に復帰させる。
【0047】
次に、オープン検出装置10aによるオープン検出動作について
図5を参照して詳細に説明する。
【0048】
オープン検出装置10aには、変流器CT1によって検出されたインバータ出力電流(トランス23の1次電流)と、電圧計VT1によって検出されたインバータ出力電圧(トランス23の1次側電圧)とが入力され、瞬時実効値演算部11は、インバータ出力電流の1周期よりも十分に短い間隔で瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値を演算すると共に、実効値演算部12は、1周期ごとにインバータ出力電流の電流実効値を演算する(ステップS201)。
【0049】
状態判定部13aは、瞬時実効値演算部11による瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値の算出を待機し(ステップS202)、ステップS102で瞬時電流実効値が算出されると、瞬時電流実効値と、最小瞬時電流実効値よりも小さい値に設定された第1閾電流値とを比較すると共に、瞬時電圧実効値と、最大瞬時電圧実効値よりも大きい値に設定された第1閾電圧値とを比較する(ステップS203)。
【0050】
次に、状態判定部13aは、瞬時電流実効値が第1閾電流値を下回り、且つ瞬時電圧実効値が第1閾電圧値を上回るか否かを判断し(ステップS204)、ステップS204で瞬時電流実効値が第1閾電流値以上もしくは瞬時電圧実効値が第1閾電圧値以下である場合、ステップS202に戻って、次に算出される瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値を待機する。
【0051】
ステップS204で瞬時電流実効値が第1閾電流値を下回り、且つ瞬時電圧実効値が第1閾電圧値を上回った場合、状態判定部13aは、1次側で開路が発生した状態と見なし、出力電流を最小電流値よりも小さい開路検証電流値に引き下げることを制御部24に指示する削減信号を出力する(ステップS205)。なお、算出される瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値の誤差を考慮し、連続して算出された複数の瞬時電流実効値のいずれもが第1閾電流値を下回り、且つ連続して算出された複数の瞬時電圧実効値のいずれもが第1閾電圧値を上回った場合に、ステップS204でYesと判断するようにしても良い。この場合、1次側のオープン発生によって出力電圧が増加上限値に達する時間よりも短い時間内に連続して算出された複数の瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値が判断の対象となる。
【0052】
次に、状態判定部13aは、瞬時実効値演算部11による瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値の算出を待機すると共に(ステップS206)、開路判定部14は、実効値演算部12による電流実効値の算出を待機する(ステップS207)。
【0053】
ステップS206で瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値が算出されると、状態判定部13aは、瞬時電流実効値と、第1閾電流値とを比較すると共に、瞬時電圧実効値と、第1閾電圧値とを比較し(ステップS208)、瞬時電流実効値が第1閾電流値を上回り、且つ瞬時電圧実効値が第1閾電圧値を下回るか否かを判断する(ステップS209)。
【0054】
ステップS209で瞬時電流実効値が第1閾電流値以下もしくは瞬時電圧実効値が第1閾電圧値以上である場合、ステップS206、S207に戻って、次に算出される瞬時電流実効値、瞬時電圧実効値及び電流実効値を待機する。
【0055】
ステップS209で瞬時電流実効値が第1閾電流値を上回り、且つ瞬時電圧実効値が第1閾電圧値を下回った場合、状態判定部13aは、1次側で開路が発生していないと判断し、出力電流を出力電流指令値に戻すことを制御部24に指示する復帰信号を出力し(ステップS210)、ステップS202に戻って、次に算出される瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値を待機する。なお、算出される瞬時電流実効値及び瞬時電圧実効値の誤差を考慮し、連続して算出された複数の瞬時電流実効値のいずれもが第1閾電流値を上回り、且つ連続して算出された複数の瞬時電圧実効値のいずれもが第1閾電圧値を上回った場合に、ステップS209でYesと判断するようにしても良い。
【0056】
ステップS207で電流実効値が算出されると、開路判定部14は、電流実効値と、第1閾電流値よりも小さい値に設定された第2閾電流値とを比較し(ステップS211)、開路判定部14は、電流実効値が第2閾電流値を下回るか否かを判断する(ステップS212)。
【0057】
ステップS212で電流実効値が第2閾電流値以上である場合、ステップS206、S207に戻って、次に算出される瞬時電流実効値、瞬時電圧実効値及び電流実効値を待機する。
【0058】
ステップS212で電流実効値が第2閾電流値を下回った場合、開路判定部14は、1次側で開路が発生したと判断し、1次側のオープン発生を制御部24に通知する開路信号を出力し(ステップS213)、オープン検出動作を終了する。なお、ステップS212において、算出される電流実効値の誤差を考慮し、連続して算出された複数の電流実効値のいずれもが第2閾電流値を下回った場合に、電流実効値が第2閾電流値を下回ったとして判断するようにしても良い。
【0059】
(第4の実施の形態)
図6に示す航空灯火システム1cのCCR2cには、第3の実施の形態の変流器CT1の代わりに、トランス23からの出力線に出力電流(トランス23の2次電流)を検出する変流器CT2が取り付けられている。そして、オープン検出装置10aにおいて、1次側の電力線4に出力する実際の出力電流に基づいて、瞬時実効値演算部11aは瞬時電流実効値を、実効値演算部12は電流実効値をそれぞれ演算する点で第1の実施の形態と異なっている。すなわち、第3の実施の形態では、インバータ出力電流を実際の出力電流と見なしており、瞬時電流実効値及び電流実効値は、インバータ出力電流と実際の出力電流とのいずれに基づいて演算しても良い。
【0060】
また、第3、第4の実施の形態の電圧計VT1の代わりに、トランス23の2次側の出力電圧を検出する電圧計を設け、実際の出力電圧に基づいて、瞬時実効値演算部11aは瞬時電圧実効値を演算するようにしても良い。すなわち、第3、第4の実施の形態では、インバータ出力電圧を実際の出力電圧と見なしており、瞬時電圧実効値は、インバータ出力電圧と実際の出力電圧とのいずれに基づいて演算しても良い。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態によれば、出力電流指令値に応じた出力電流が流れる1次側の電力線4からトランス5を介して2次側の負荷(灯器3)に電力を供給するシステム(航空灯火システム1、1a)において、1次側のオープン(開路)を検出するオープン検出装置10であって、出力電流もしくは出力電流に相当する電流(インバータ出力電流)を対象電流として検出する電流検出部(変流器CT1、CT2)と、対象電流の電流実効値を演算する実効値演算部12と、対象電流の2乗と対象電流の微分値の2乗とを加算した値を瞬時電流実効値として、実効値演算部による電流実効値の演算間隔よりも短い間隔で演算する瞬時実効値演算部11と、瞬時電流実効値が予め設定された第1閾電流値を下回った場合、出力電流を出力電流指令値から開路検証電流値に引き下げることを指示する削減信号を出力し、削減信号によって出力電流が開路検証電流値に引き下げられた状態で、瞬時電流実効値が第1閾電流値を上回った場合、出力電流を開路検証電流値から出力電流指令値に戻すことを指示する復帰信号を出力する状態判定部13と、削減信号によって出力電流が出力電流指令値から開路検証電流値に引き下げられた状態で、電流実効値が第1閾電流値よりも小さい予め設定された第2閾電流値を下回った場合、1次側の開路を検出する開路判定部14と、を備えている。
この構成により、インバータ出力電流もしくは出力電流の異常を素早く検出して、出力電流を出力電流指令値から開路検証電流値に引き下げた状態で、インバータ出力電流もしくは出力電流の低下を判定することができるため、1次側のオープンを2次側のオープンと区別して検出することができる。
【0062】
さらに、本実施の形態において、開路検証電流値は、1次側及び2次側の開路時に出力電圧が予め規定された増加上限値に到達することがない値に設定されている。
この構成により、インバータ出力電流もしくは出力電流の異常を素早く検出して、出力電圧が予め規定された増加上限値に到達しない状態に移行させることができる。
【0063】
さらに、本実施の形態において、第1閾電流値は、出力電流が出力電流指令値で設定できる最小電流値で電流波形が正常である場合の瞬時電流実効値によりも小さい値に設定されている。
この構成により、対象電流の異常を正しく検出できる。
【0064】
さらに、本実施の形態において、出力電圧もしくは出力電圧に相当する電圧(インバータ出力電圧)を対象電圧として検出する電圧検出部(電圧計VT1)を具備し、瞬時実効値演算部11aは、対象電圧の2乗と対象電圧の微分値の2乗とを加算した値を瞬時電圧実効値として、瞬時電流実効値と同じ間隔で演算し、状態判定部13aは、瞬時電流実効値が予め設定された第1閾電流値を下回り、且つ瞬時電圧実効値が予め設定された第1閾電圧値を上回った場合、削減信号を出力し、削減信号によって出力電流が開路検証電流値に引き下げられた状態で、瞬時電流実効値が第第1閾電流値を上回り、且つ瞬時電圧実効値が第1閾電圧値を下回った場合、復帰信号を出力する。
この構成により、インバータ出力電流もしくは出力電流と、インバータ出力電圧もしくは出力電圧との異常を素早く検出して、出力電流を出力電流指令値から開路検証電流値に引き下げた状態で、インバータ出力電流もしくは出力電流の低下を判定することができるため、1次側のオープンを2次側のオープンと区別して検出することができる。
【0065】
さらに、本実施の形態において、第1閾電圧値は、出力電流が出力電流指令値で設定できる最小電流値で電圧波形が正常である場合の瞬時電圧実効値によりも大きい値に設定されている。
この構成により、対象電圧の異常を正しく検出できる。
【0066】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1、1a、1b、1c 航空灯火システム
2、2a、2b、2c 定電流交流電源装置(CCR)
3 灯器
4 電力線
5 トランス
6 マイコン
7 2次出力線
10、10a オープン検出装置
11、11a 瞬時実効値演算部
12 実効値演算部
13、13a 状態判定部
14 開路判定部
21 コンバータ(AC/DC)
22 インバータ(DC/AC)
23 トランス
24 制御部