(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240416BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240416BHJP
G01R 31/379 20190101ALI20240416BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20240416BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M10/48 A
G01R31/367
G01R31/379
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/48 102
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2019183337
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ムハマド シャヒド フィトリ ビン アザハル
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼野 泰如
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-231441(JP,A)
【文献】特開2016-109639(JP,A)
【文献】特開2019-079629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 - 10/48
G01R 31/36 - 31/44
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出する導出部と、
電解液の比重を特定する第1特定部と、
特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び
電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択され
る関係に基づいて、第1度合、第2度合、
及び第3度合
のうちの少なくとも1つの度合い、及び第4度
合を特定する第2特定部と、
特定し
た度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する推定部と
を備える推定装置。
【請求項2】
前記第1特定部は、
鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく履歴を入力した場合に、電解液の比重を出力する第1学習モデルに、導出した前記履歴を入力して、電解液の比重を特定する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記第2特定部は、
電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴及び電解液の比重を入力した場合に、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を出力する第2学習モデルに、導出した前記導出履歴及び特定した前記電解液の比重を入力して、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を特定する、請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、
第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を入力した場合に、鉛蓄電池の劣化の度合を出力する第3学習モデルに、特定した前記少なくとも1つの度合を入力して、劣化の度合を推定する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項5】
前記導出履歴は、放電電気量を温度及び電解液の比重の少なくとも一方に基づく係数により補正した有効放電電気量、充電電気量を温度及び電解液の比重の少なくとも一方に基づく係数により補正した有効充電電気量、又は温度に所定の係数若しくは電解液の比重に基づく係数を乗じて積算した温度積算値を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項6】
前記第2特定部は、
電解液の比重、導出履歴、及び前記鉛蓄電池の設計情報に基づいて、前記少なくとも1つの度合を特定する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項7】
前記設計情報は、極板の枚数、正極活物質量、正極格子の質量、正極格子の厚さ、正極格子のデザイン、正極電極材料の密度、正極電極材料の組成、正極電極材料中の添加剤の量及び種類、正極合金の組成、正極板に当接する不織布の有無並びに厚さ、材質及び通気度、負極活物質量、負極電極材料中のカーボン量及び種類、負極電極材料中の添加剤の量及び種類、負極電極材料の比表面積、電解液の添加剤の種類及び濃度、並びに電解液の初期の比重及び量からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の推定装置。
【請求項8】
前記推定部は、
前記少なくとも1つの度合、及び前記鉛蓄電池の診断情報に基づいて、劣化の度合を推定する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の推定装置。
【請求項9】
前記診断情報は、内部抵抗、開放電圧、及びSOCからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項8に記載の推定装置。
【請求項10】
前記導出履歴と、前記第2特定部が特定した前記劣化の度合又は前記診断情報を記憶する記憶部と、
前記劣化の度合又は前記診断情報と、閾値とに基づいて、前記鉛蓄電池が交換されたと推定した場合に、前記導出履歴、及び前記劣化の度合又は前記診断情報を消去する履歴消去部と
を備える、請求項8又は9に記載の推定装置。
【請求項11】
鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出し、
電解液の比重を特定し、
特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び
電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択され
る関係に基づいて、第1度合、第2度合、
及び第3度合
のうちの少なくとも1つの度合い、及び第4度
合を特定し、
特定し
た度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する、推定方法。
【請求項12】
鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出し、
電解液の比重を特定し、
特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、
電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び
電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択され
る関係に基づいて、第1度合、第2度合、
及び第3度合
のうちの少なくとも1つの度合い、及び第4度
合を特定し、
特定し
た度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池の劣化を推定する推定装置、推定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。例えば車載用の鉛蓄電池等の二次電池(蓄電素子)は、例えば自動車、バイク、フォークリフト、ゴルフカー等の車両等の移動体に搭載され、エンジン始動時におけるスタータモータへの電力供給源、及びライト等の各種電装品への電力供給源として使用されている。例えば、産業用の鉛蓄電池は、非常用電源やUPSへの電力供給源として使用されている。
【0003】
鉛蓄電池は様々な要因によって劣化が進行することが知られている。鉛蓄電池の予期せぬ機能喪失による電力の供給停止を防ぐため、劣化の度合を適切に判定する必要がある。
特許文献1には、鉛蓄電池の電流及び電圧に基づいて内部抵抗を算出し、内部抵抗に基づいて劣化を判定する劣化判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉛蓄電池の主要な劣化要因は、正極活物質の軟化、正極格子の腐食、負極サルフェーション、負極活物質の収縮である。劣化要因の度合を推定して、良好に鉛蓄電池の劣化の度合を推定することが求められている。
【0006】
本発明は、鉛蓄電池の劣化の度合を推定することができる推定装置、推定方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る推定装置は、鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出する導出部と、電解液の比重を特定する第1特定部と、特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択される少なくとも1つの関係に基づいて、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を特定する第2特定部と、特定した前記少なくとも1つの度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する推定部とを備える。
【0008】
本発明に係る推定方法は、鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出し、電解液の比重を特定し、特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択される少なくとも1つの関係に基づいて、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を特定し、特定した前記少なくとも1つの度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する。
【0009】
本発明に係るコンピュータプログラムは、鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出し、電解液の比重を特定し、特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択される少なくとも1つの関係に基づいて、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を特定し、特定した前記少なくとも1つの度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉛蓄電池の劣化の度合を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る充放電システム、負荷、及びサーバの構成を示すブロック図である。
【
図5】劣化度合DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図6】使用履歴DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図7】制御部による劣化度合の推定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態2に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】使用履歴DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図10】第1学習モデルの一例を示す模式図である。
【
図11】制御部による第1学習モデルの生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】第2学習モデルの一例を示す模式図である。
【
図13】第3学習モデルの一例を示す模式図である。
【
図14】制御部による劣化度合の推定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図15】学習モデルA、B、C、Dの一例を示す模式図である。
【
図16】制御部による劣化度合の推定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の概要)
実施形態に係る推定装置は、鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出する導出部と、電解液の比重を特定する第1特定部と、特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択される少なくとも1つの関係に基づいて、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を特定する第2特定部と、特定した前記少なくとも1つの度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する推定部とを備える。
【0013】
鉛蓄電池の劣化要因としては、正極格子の腐食、正極電極材料の軟化、負極サルフェーション、負極電極材料の収縮等がある。
【0014】
鉛蓄電池においては、電解液(硫酸+水)の水は蒸発や電気分解により減少するので、次第に硫酸の濃度が高くなり、比重が高くなる。電解液の比重が高くなると、腐食速度が速くなる。従って、比重の変動がある場合、正極格子の腐食の度合の特定の精度が悪くなり、鉛蓄電池の劣化の推定精度が悪くなる。
【0015】
電解液比重が高いほど正極電極材料の軟化が進行しやすくなるので、比重の変動がある場合、正極電極材料の軟化の度合の特定の精度が悪くなり、鉛蓄電池の劣化の推定精度が悪くなる。
【0016】
電解液の比重が高いほど、充電効率が悪くなる。そのため、放電の際に生成した硫酸鉛が充電時に全部は鉛に還元されず、一部が硫酸鉛として残存する。充放電を繰り返した場合、残存している硫酸鉛の結晶サイズが次第に大きくなり、充電しても鉛に戻ることができなくなる、負極サルフェーションが生じる。比重の変動がある場合、負極サルフェーションの度合の特定の精度が悪くなり、鉛蓄電池の劣化の推定精度が悪くなる。
【0017】
電解液の硫酸は、負極サルフェーションによって、電解液から負極電極材料に移動する。従って、負極サルフェーションが進行すると、電解液中の硫酸濃度が低くなり、比重が低下する。比重が低下すると、前述した比重が高くなる場合の逆の作用が起こる。すなわち比重の変動により、鉛蓄電池の劣化の推定精度が悪くなる。
【0018】
そして、本願発明者は、鉛蓄電池の比重を特定し、比重の変動を加味して正極電極材料の軟化等の度合を特定することにより、鉛蓄電池の劣化の度合を良好に推定できることを見出した。
【0019】
比重は、各推定時点の導出履歴に基づいて特定する。また、比重は、電流、電圧の関係式や、取得したOCV及び内部抵抗によっても特定できる。そして、比重センサによっても特定できる。「特定した前記比重」として、劣化度合を推定する時点の一点の比重のみではなく、記憶してある電解液の比重の履歴を用いてもよく、記憶してある電解液の比重の履歴に所定の係数を乗じて平均した平均比重を用いてもよい。
【0020】
補水がされた場合、電圧の変化から補水量を推定してもよい。電解液の比重が変化することにより、すなわち電解液に含まれる水の割合が変化することにより、電池の電圧は変化する。補水の前後にて電池の液量が大きく変化するので、制御部31は、取得した電圧と、1つ前に取得した電圧との差が所定値以上であった場合、補水が行われたと判定する。指定した補水量を導出履歴に含めてもよい。
【0021】
ここで、第1履歴、第2履歴、第3履歴、第4履歴は同一であっても異なっていてもよい。一部が共通していてもよい。例えば、第1履歴の場合、生涯有効放電電気量、温度蓄積値、使用期間等の履歴を含む。第2履歴は、生涯有効過充電電気量、温度積算値、使用期間等の履歴を含む。第3履歴は、生涯有効充電電気量、温度積算値、使用期間、放置時間、各SOC区分における滞在時間等の履歴を含む。第4履歴は、生涯有効充電電気量、温度積算値、使用期間等の履歴を含む。
【0022】
上記構成によれば、導出履歴に加えて、特定した比重を用いて鉛蓄電池の劣化を推定する。比重の変動を加味して良好に正極電極材料の軟化等の度合を特定し、良好に鉛蓄電池の劣化を推定することができる。
劣化を予測することにより、故障リスクを推定し、突然の使用不能状態に陥ることを回避できる。
【0023】
上述の推定装置において、前記第1特定部は、鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく履歴を入力した場合に、電解液の比重を出力する第1学習モデルに、導出した前記履歴を入力して、電解液の比重を特定してもよい。
【0024】
上記構成によれば、第1学習モデルを用いて、容易に、良好に、電解液の比重を特定できる。
【0025】
上述の推定装置において、前記第2特定部は、電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴及び電解液の比重を入力した場合に、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を出力する第2学習モデルに、導出した前記導出履歴及び特定した電解液の比重を入力して、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を特定してもよい。
【0026】
上記構成によれば、第2学習モデルを用いて、容易に、良好に、推定時点の劣化要因の度合を特定できる。
【0027】
上述の推定装置において、前記推定部は、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を入力した場合に、鉛蓄電池の劣化の度合を出力する第3学習モデルに、特定した前記少なくとも1つの度合を入力して、劣化の度合を推定してもよい。
【0028】
上記構成によれば、第3学習モデルを用いて、容易に、良好に、推定時点の鉛蓄電池の劣化を推定できる。
【0029】
上述の推定装置において、前記導出履歴は、放電電気量を温度及び電解液の比重の少なくとも一方に基づく係数により補正した有効放電電気量、充電電気量を温度及び電解液の比重の少なくとも一方に基づく係数により補正した有効充電電気量、又は温度に所定の係数若しくは電解液の比重に基づく係数を乗じて積算した温度積算値を含んでもよい。
上記構成によれば、良好に劣化要因の度合を特定できる。比重により補正した有効放電電気量等を用いて、劣化要因の度合を特定することができる。
【0030】
上述の推定装置において、前記第2特定部は、導出履歴、及び前記鉛蓄電池の設計情報に基づいて、前記少なくとも1つの度合を特定してもよい。
上記構成によれば、導出履歴、及び設計情報に基づいて、良好に劣化要因の度合を特定できる。
【0031】
上述の推定装置において、前記設計情報は、極板の枚数、正極活物質量、正極格子の質量、正極格子の厚さ、正極格子のデザイン、正極電極材料の密度、正極電極材料の組成、正極電極材料中の添加剤の量及び種類、正極合金の組成、正極板に当接する不織布の有無並びに厚さ、材質及び通気度、負極活物質量、負極電極材料中のカーボン量及び種類、負極活物質の添加剤の量及び種類、負極電極材料の比表面積、電解液の添加剤の種類及び濃度、並びに電解液の初期の比重及び量からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
上記構成によれば、良好に劣化要因の度合を特定できる。
【0032】
上述の推定装置において、前記推定部は、前記少なくとも1つの度合、及び前記鉛蓄電池の診断情報に基づいて、劣化の度合を推定してもよい。
上記構成によれば、劣化要因の度合と診断情報とに基づいて、良好に劣化度合を推定できる。
【0033】
上述の推定装置において、前記診断情報は、内部抵抗、開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)、及びSOC(State Of Charge)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
上記構成によれば、良好に劣化要因の度合を特定できる。
【0034】
上述の推定装置において、前記導出履歴と、前記第2特定部が特定した前記劣化の度合又は前記診断情報を記憶する記憶部と、前記劣化の度合又は前記診断情報と、閾値とに基づいて、前記鉛蓄電池が交換されたと推定した場合に、前記導出履歴、及び前記劣化の度合又は前記診断情報を消去する履歴消去部とを備えてもよい。
【0035】
劣化の度合又は診断情報により、鉛蓄電池が交換されたと判定した場合に、例えば後述する使用履歴DBのデータを消去することができる。
【0036】
実施形態に係る推定方法は、鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出し、電解液の比重を特定し、特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択される少なくとも1つの関係に基づいて、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を特定し、特定した前記少なくとも1つの度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する。
【0037】
上記構成によれば、導出履歴に加えて、比重を用いて鉛蓄電池の劣化を推定する。比重の変動を加味して良好に鉛蓄電池の劣化を推定できる。比重としては、上述したように、劣化度合の推定時点に過充電電気量等の履歴により特定した比重、比重センサ等により取得した比重、又は記憶してある比重の履歴等を使用することができる。
【0038】
実施形態に係るコンピュータプログラムは、鉛蓄電池の電流、電圧、及び該鉛蓄電池の温度に基づく導出履歴を導出し、電解液の比重を特定し、特定した前記比重、及び導出した前記導出履歴、並びに電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第1履歴と、正極電極材料の軟化の第1度合との第1関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第2履歴と、正極格子の腐食の第2度合との第2関係、電解液の比重、並びに電流、電圧、及び温度に基づく第3履歴と、負極サルフェーションの第3度合との第3関係、及び電流、電圧、及び温度に基づく第4履歴と、負極電極材料の収縮の第4度合との第4関係からなる群から選択される少なくとも1つの関係に基づいて、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つの度合を特定し、特定した前記少なくとも1つの度合に基づいて、前記鉛蓄電池の劣化の度合を推定する処理をコンピュータに実行させる。
【0039】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る充放電システム1、負荷13、及びサーバ9の構成を示すブロック図、
図2はBMU3の構成を示すブロック図である。
充放電システム1は、鉛蓄電池(以下、電池という)2と、BMU(Battery Management Unit)3と、電圧センサ4と、電流センサ5と、温度センサ6と、制御装置7とを備える。
【0040】
BMU3は、制御部31、記憶部32、入力部36、及び通信部37を備える。BMU3は、電池ECUであってもよい。
制御装置7は充放電システム1全体を制御し、制御部71、記憶部72、及び通信部77を備える。
サーバ9は、制御部91、及び通信部92を備える。
制御装置7の制御部71は、通信部77、ネットワーク10、及び通信部92を介し、制御部91と接続されている。
電池2は、端子11,12を介して負荷13に接続している。
【0041】
制御部31、71、及び91は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成され、BMU3、制御装置7、及びサーバ9の動作を制御する。
記憶部32、記憶部72は、例えばハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラム及びデータを記憶する。
通信部37、77、及び92は、ネットワークを介して他の装置との間で通信を行う機能を有し、所要の情報の送受信を行うことができる。
【0042】
BMU3の記憶部32には、劣化推定のプログラム33が格納されている。プログラム33は、例えばCD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体40に格納された状態で提供され、BMU3にインストールすることにより記憶部32に格納される。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラム33を取得し、記憶部32に記憶させることにしてもよい。
【0043】
記憶部32には、履歴と、電解液の比重と、設計情報と、診断情報と、各劣化要因の度合と、電池2の劣化度合とを記憶した劣化度合DB34、及び各電池2につき、導出履歴と、電解液の比重と、設計情報と、診断情報と、各劣化要因の度合と、劣化度合とを記憶した使用履歴DB35も記憶している。劣化度合DB34及び使用履歴DB35の詳細は後述する。
入力部36は、電圧センサ4、電流センサ5、及び温度センサ6からの検出結果の入力を受け付ける。
【0044】
実施形態においては、BMU3が本発明の推定装置として機能する。制御装置7、及びサーバ9のいずれかが、推定装置として機能してもよい。BMU3が推定装置として機能する場合においても、プログラム33及び劣化度合DB34、使用履歴DB35は必ずしも全てが記憶部32に含まれる必要はない。実施形態に応じて、プログラム33及び劣化度合DB34、使用履歴DB35のいずれかは、又は、これらの全ては、制御装置7に含まれてもよく、サーバ9に含まれてもよい。なお、サーバ9が推定装置として機能しない場合、充放電システム1がサーバ9に接続されていなくてもよい。
【0045】
電圧センサ4は、電池2に並列に接続されており、電池2の全体の電圧に応じた検出結果を出力する。
電流センサ5は、電池2に直列に接続されており、電池2の電流に応じた検出結果を出力する。なお、電流センサ5は、例えばクランプ式電流センサのように、電池2に電気的に接続していないものを用いることもできる。
温度センサ6は、電池2の近傍に配置されており、電池2の温度に応じた検出結果を出力する。なお、劣化の予測には、電池2の温度として、電池2の電解液の温度を用いるのが好ましい。このため、温度センサ6が配置される位置に応じて、温度センサ6が検出した温度が電解液の温度となるように温度補正してもよい。
【0046】
図3は、一例としての自動車用液式電池である、電池2の外観構成を示す斜視図、
図4は
図3のIV-IV線断面図である。
図3及び
図4に示すように、電池2は、電槽20と、正極端子28と、負極端子29と、複数の極板群23とを備える。
【0047】
電槽20は、電槽本体201と、蓋202とを有する。電槽本体201は、上部が開口した直方体状の容器であり、例えば合成樹脂等により形成されている。例えば合成樹脂製の蓋202は、電槽本体201の開口部を閉塞する。蓋202の下面の周縁部分と電槽本体201の開口部の周縁部分とは例えば熱溶着によって接合される。電槽20内の空間は、隔壁27によって、電槽20の長手方向に並ぶ複数のセル室21に区画されている。
【0048】
電槽20内の各セル室21には、1つの極板群23が収容されている。電槽20内の各セル室21には、希硫酸を含む電解液22が収容されており、極板群23の全体が電解液22中に浸漬している。電解液22は、蓋202に設けられた注液口(図示せず)からセル室21内に注入される。
【0049】
極板群23は、複数の正極板231と、複数の負極板235と、セパレータ239とを備える。複数の正極板231及び複数の負極板235は、交互に並ぶように配置されている。
【0050】
正極板231は、正極格子232と、正極格子232に支持された正極電極材料234とを有する。正極格子232は、略格子状又は網目状に配置された骨部を有する導電性部材であり、例えば鉛又は鉛合金により形成されている。正極格子232は、上端付近に、上方に突出する耳233を有する。正極電極材料234は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含んでいる。正極電極材料234は、さらに公知の添加剤を含んでもよい。
【0051】
負極板235は、負極格子236と、負極格子236に支持された負極電極材料238とを有する。負極格子236は、略格子状又は網目状に配置された骨部を有する導電性部材であり、例えば鉛又は鉛合金により形成されている。負極格子236は、上端付近に、上方に突出する耳237を有する。酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を含んでいる。負極電極材料238は、さらに公知の添加剤を含んでもよい。
【0052】
セパレータ239は、例えばガラスまたは合成樹脂等の絶縁性材料により形成されている。セパレータ239は、互いに隣り合う正極板231と負極板235との間に介在する。セパレータ239は、一体の部材として構成されてもよく、正極板231と負極板235との間に各別に設けてもよい。セパレータ239は正極板231及び負極板235のいずれかを包装するように配置してもよい。
【0053】
複数の正極板231の耳233は、例えば鉛又は鉛合金により形成されたストラップ24に接続されている。複数の正極板231は、ストラップ24を介して電気的に接続されている。同様に、複数の負極板235の耳237は、例えば鉛又は鉛合金により形成されたストラップ25に接続されている。複数の負極板235は、ストラップ25を介して電気的に接続されている。
【0054】
電池2において、一のセル室21内のストラップ25は、例えば鉛又は鉛合金により形成された中間ポール26を介して、前記一のセル室21に隣接する一方のセル室21内のストラップ24に接続されている。また、前記一のセル室21内のストラップ24は、中間ポール26を介して、前記一のセル室21に隣接する他方のセル室21内のストラップ25に接続されている。即ち、電池2の複数の極板群23は、ストラップ24,25及び中間ポール26を介して電気的に直列に接続されている。なお、
図4に示すように、セルCが並ぶ方向の一端に位置するセル室21に収容されたストラップ24は、中間ポール26ではなく、後述する正極柱282に接続されている。セルCが並ぶ方向の他端に位置するセル室21に収容されたストラップ25は、中間ポール26ではなく、負極柱292に接続されている(不図示)。
【0055】
正極端子28は、セルCが並ぶ方向の一端部に配置されており、負極端子29は、前記方向の他端部付近に配置されている。
【0056】
図4に示すように、正極端子28は、ブッシング281と、正極柱282とを含む。ブッシング281は、略円筒状の導電性部材であり、例えば鉛合金により形成されている。ブッシング281の下側部分は、インサート成形により蓋202に一体化されており、ブッシング281の上部は、蓋202の上面から上方に突出している。正極柱282は、略円柱状の導電性部材であり、例えば鉛合金により形成されている。正極柱282は、ブッシング281の孔に挿入されている。正極柱282の上端部は、ブッシング281の上端部と略同じ位置に位置しており、例えば溶接によりブッシング281に接合されている。正極柱282の下端部は、ブッシング281の下端部より下方に突出し、さらに、蓋202の下面より下方に突出しており、セルCが並ぶ方向の一端部に位置するセル室21に収容されたストラップ24に接続されている。
負極端子29は、正極端子28と同様に、ブッシング291と、負極柱292とを含み(
図3参照)、正極端子28と同様の構成を有する。
【0057】
電池2の放電の際には、正極端子28のブッシング281及び負極端子29のブッシング291に負荷(図示せず)が接続され、各極板群23の正極板231での反応(二酸化鉛から硫酸鉛が生ずる反応)及び負極板235での反応(鉛(海綿状鉛)から硫酸鉛が生ずる反応)により生じた電力が該負荷に供給される。また、電池2の充電の際には、正極端子28のブッシング281及び負極端子29のブッシング291に電源(図示せず)が接続され、該電源から供給される電力によって各極板群23の正極板231での反応(硫酸鉛から二酸化鉛が生ずる反応)及び負極板235での反応(硫酸鉛から鉛(海綿状鉛)が生ずる反応)が起こり、電池2が充電される。
【0058】
図5は、上述の劣化度合DB34のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
劣化度合DB34は、No.列、生涯有効放電電気量列,生涯有効充電電気量列,生涯有効過充電電気量列,温度積算値列,放置時間列、SOC滞在時間列等の履歴列、比重列、正極格子厚さ列、診断情報列、第1度合列,第2度合列,第3度合列,及び第4度合列等の劣化要因度合列、並びに劣化度合列を記憶している。
【0059】
No.列は、複数の異なる電池2の劣化度合のNo.、同一の電池2の異なるタイミングでの劣化度合のNo.を記憶している。生涯有効放電電気量列は、例えば1分毎に電池2の放電電気量を測定し、該放電電気量に、その時点の電池2の温度に基づく係数を乗じた有効放電電気量の積算値を記憶している。生涯有効充電電気量列は、例えば1分毎に電池2の充電電気量を測定し、該充電電気量に、その時点の電池2の温度に基づく係数を乗じた有効充電電気量の積算値を記憶している。生涯有効過充電電気量列は、有効充電電気量から有効放電電気量を減じた有効過充電電気量の積算値を記憶している。
温度積算値列は、例えば-20℃から80℃まで、10℃間隔毎に、各温度間隔の中心温度に所定の係数及び時間を乗じた積算値を記憶している。
放置時間は駐車時間の積算値を記憶している。
【0060】
SOC滞在時間列は、SOC0~20%滞在時間,SOC20~40%滞在時間,SOC40~60%滞在時間,SOC60~80%滞在時間,及びSOC80~100%滞在時間等を記憶している。SOC0~20%滞在時間は、例えば1時間単位で平均SOCを求め、平均SOCが0~20%の範囲内であった時間の積算値を記憶している。同様に、SOC20~40%滞在時間、SOC40~60%滞在時間、SOC60~80%滞在時間、SOC80~100%滞在時間は、平均SOCが20~40%の範囲内、40~60%の範囲内、60~80%の範囲内、80~100%の範囲内であった時間の積算値を記憶している。
診断情報列は、内部抵抗、SOC、OCV等の診断情報を記憶している。
比重列は、電解液の比重の履歴、例えば平均比重を記憶している。
【0061】
第1度合列は、正極電極材料の軟化の度合である第1度合を記憶している。第1度合は0から5までの6段階の数値の評価で表される。評価は、軟化による正極電極材料の脱落量や正極電極材料の軟化度合等により行う。0が良好であり、数字が大きくなるに従って悪くなる。
【0062】
第2度合列は、正極格子の腐食の度合である第2度合を記憶している。第2度合は6段階の評価で表す。評価は上記と同様の数値で表される。評価は、腐食によって減少した正極格子質量や、残存している正極格子質量等により行う。
第3度合列は、負極サルフェーションの度合である第3度合を記憶している。第3度合は6段階の評価で表す。評価は上記と同様の数値で表される。評価は、負極活物質中の硫酸鉛量等により行う。
第4度合列は、負極電極材料の収縮の度合である第4度合を記憶している。第4度合は6段階の評価で表す。評価は上記と同様の数値で表される。評価は、電極材料の収縮によるクラックの度合や比表面積の低下度等により行う。
なお、第1度合、第2度合、第3度合及び第4度合の評価は、6段階に限定されるものではなく、100段階でもよく、それぞれの度合と関連する物理量の値を用いてもよい。
【0063】
劣化度合列は、10段階の評価で表した劣化度合を記憶している。劣化度合の1~10の数値は、SOH(State of Health)の範囲に基づいて定める。「1」が、下記割合をSOHと定めた場合、90~100%の範囲であり、「10」は0~10%の範囲である。SOHは、鉛蓄電池に期待される特性に基づいて定めることができる。例えば、使用可能期間を基準とし、評価の時点において残存する使用可能期間の割合をSOHと定めてもよい。また、常温ハイレート放電時の電圧を基準とし、評価の時点における常温ハイレート放電時の電圧をSOHの評価に用いてもよい。いずれの場合においても、SOHが0のときは、鉛蓄電池の機能が喪失した状態を表す。
【0064】
劣化度合DB34に記憶される情報は上述の場合に限定されない。
設計情報として、正極格子厚さ以外に、極板の枚数、正極活物質量、正極格子の質量、正極格子のデザイン、正極電極材料の密度、正極電極材料の組成、正極電極材料中の添加剤の量及び種類、正極合金の組成、正極板に当接する不織布の有無並びに厚さ、材質及び通気度、負極活物質量、負極電極材料中のカーボン量及び種類、負極電極材料中の添加剤の量及び種類、負極電極材料の比表面積、電解液の添加剤の種類及び濃度、並びに電解液の初期の比重及び量を記憶してもよい。
診断情報として内部抵抗や開放電圧等を記憶してもよい。なお、内部抵抗や開放電圧は、SOCに依存するため、別途取得したSOCによって内部抵抗や開放電圧を補正してもよい。
【0065】
図6は、上述の使用履歴DB35のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
使用履歴DB35は、電池2毎に、各推定時点の導出履歴、電解液の比重、正極格子厚さ、診断情報、劣化要因の度合、及び劣化度合を記憶している。
図6はIDNo.1の電池2の導出履歴を示している。No.列は、各推定時点のNo.を記憶している。導出履歴列、正極格子厚さ列、診断情報列は、劣化度合DB34の履歴列、正極格子厚さ列、診断情報列と同様の内容を記憶している。
【0066】
比重列は、後述するように、各推定時点の電流、電圧、及び温度に基づく導出履歴により特定した比重の履歴を記憶している。上述したように、比重は、電流、電圧の関係式や、取得したOCV及び内部抵抗によっても特定できる。また、比重センサによっても特定できる。
【0067】
第1度合列、第2度合列、第3度合列は、後述するように、各推定時点の電解液の比重及び導出履歴に基づいて特定した第1度合、第2度合、第3度合を記憶している。第4度合列は、後述するように、各推定時点の導出履歴に基づいて特定した、第4度合を記憶している。
劣化度合列は、特定した第1度合、第2度合、第3度合、第4度合に基づいて推定した劣化度合を記憶している。
使用履歴DB35に記憶される情報は上述の場合に限定されない。
【0068】
以下、劣化度合の推定方法について説明する。
図7は、制御部31による劣化度合の推定処理の手順を示すフローチャートである。制御部31は所定の推定時点で、以下の処理を行う。
制御部31は、IDNo.1の電池2につき、推定時点で取得した電圧、電流、温度、に基づいて生涯有効放電電気量等の導出履歴を導出し、使用履歴DB35に記憶する(S1)。
【0069】
制御部31は、電解液の比重を特定する(S2)。制御部31は劣化度合DB34を読み出し、劣化度合DB34のデータから導出される、導出履歴と比重との関係に基づいて、比重を特定し、使用履歴DB35に記憶する。
【0070】
電解液の比重は、例えば、以下のようにして特定することができる。
(1)使用履歴DB35に、設計情報として、電解液の初期の比重を記憶しておくか、SOC100%のときの電池電圧(充電から少し時間が経ち、電圧が安定しているときの電圧)から初期の電解液比重を推定し、比重列に記憶しておく。
(2)推定期間の充放電履歴から過充電量aを算出する。
(3)推定期間の温度から、電池2の自己放電量を推定する。
(4)過充電量bを下記式により算出する。
過充電量b=過充電量a-自己放電量-暗電流による放電量
(5)過充電量bから水分解反応量を算出し、電解液の減液量を推定する。
(6)減液量と電解液の比重とに基づいて推定時点の電解液の比重を推定する。
【0071】
制御部31は劣化度合DB34を読み出し、劣化度合DB34のデータから導出される、電解液の比重及び第1履歴と第1度合との第1関係に基づいて、第1度合を特定し、使用履歴DB35に記憶する(S3)。同様に、劣化度合DB34のデータから導出される、電解液の比重及び第2履歴と第2度合との第2関係に基づいて第2度合を特定し、電解液の比重及び第3履歴と第3度合との第3関係に基づいて第3度合を特定し、第4履歴と第4度合との第4関係に基づいて第4度合を特定し、使用履歴DB35に記憶する。
【0072】
なお、制御部31が、第1度合~第4度合の特定に使用する電解液の比重は、推定時点における電解液の比重でもよく、記憶されている電解液の比重の履歴を用いてもよく、記憶されている電解液の比重の履歴に所定の係数を乗じて平均した平均比重を用いてもよい。
【0073】
また、制御部31は、電流、電圧、及び温度に基づく導出履歴を、電解液の比重で補正した上で、第1度合~第4度合の特定に使用してもよい。
【0074】
制御部31は、劣化度合DB34のデータから導出される、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合と、劣化度合との関係に基づいて、特定した劣化要因の度合から劣化度合を推定し、使用履歴DB35に記憶し(S4)、処理を終了する。
劣化度合DB34に設計情報も記憶している場合、S3において、電解液の比重、第1履歴及び設計情報と、第1度合との第1関係に基づいて、第1度合を特定する。第2度合、第3度合も電解液の比重、第2履歴又は第3履歴、及び設計情報と、第2度合又は第3度合との関係に基づいて特定する。第4度合は、第4履歴及び設計情報と、第4度合との関係に基づいて特定する。
劣化度合DB34に診断情報も記憶している場合、S4において、劣化度合を診断情報により補正してもよい。
【0075】
本実施形態においては、第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合の全てを特定し、これらを用いて劣化度合を推定する場合につき説明しているがこれに限定されない。第1度合、第2度合、第3度合、及び第4度合のうちの少なくとも1つを特定し、これらを用いて劣化度合を推定すればよい。
劣化度合DB34には、第1関係、第2関係、第3関係、及び第4関係の関数を記憶しておいてもよい。
【0076】
制御部31は、推定した劣化度合、又は診断情報と、予め設定した閾値とに基づいて、電池2が交換されたと判定した場合に、使用履歴DB35のデータを消去し、リセットしてもよい。なお、制御部31は、電池2が交換されたと制御部31が判定した場合に、使用履歴DBのデータをリセットする以外の動作を行ってもよい。すなわち、制御部31は、電池2が交換されたと制御部31が判定した場合に、使用履歴DBに記憶される、履歴情報の積算の開始時点を、電池2が交換されたと判断した時点としてもよい。
【0077】
本実施形態によれば、電流、電圧、及び温度に基づく導出履歴を導出し、電解液の比重を特定し、予め求めてある、電解液の比重及び導出履歴と、劣化要因の度合との関係に基づいて、第1度合、第2度合、又は第3度合を特定する。また、導出履歴と、第4関係との関係に基づいて、第4度合を特定する。比重の変動も加味して良好に正極活物質の軟化等の度合を特定し、良好に電池2の劣化を推定することができる。
【0078】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る制御装置7の構成を示すブロック図である。
実施形態2に係る充放電システム1は、制御装置7が、記憶部72に、劣化推定のためのプログラム73、劣化度合DB74、使用履歴DB75、学習モデルDB76を記憶していること以外は、実施形態1に係る充放電システム1と同様の構成を有する。
学習モデルDB76は、後述する第1学習モデル、第2学習モデル、及び第3学習モデルを記憶している。
劣化度合DB74は、劣化度合DB34と同様の構成を有する。
【0079】
図9は、使用履歴DB75のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
使用履歴DB75は、電池2毎に、各推定時点の導出履歴、比重、正極格子厚さ、診断情報、劣化要因の度合、実測の劣化要因の度合、劣化度合、及び実測に基づく劣化度合を記憶している。
図9はIDNo.1の電池2の使用履歴を示している。履歴列、正極格子厚さ列、診断情報列は、劣化度合DB34の履歴列、正極格子厚さ列、診断情報列と同様の内容を記憶している。
【0080】
比重列は、各推定時点の使用履歴を第1学習モデルに入力して特定した比重を記憶している。
第1度合列、第2度合列、第3度合列、第4度合列は、後述するように、各推定時点の使用履歴、及び特定した比重を第2学習モデルに入力して特定した第1度合、第2度合、第3度合、第4度合を記憶している。
劣化度合列は、特定した第1度合、第2度合、第3度合、第4度合を第3学習モデルに入力して推定した劣化度合を記憶している。
【0081】
実測比重列は、実測した比重を記憶している。
実測第1度合列、実測第2度合列、実測第3度合列、実測第4度合列は夫々、実測により求めた第1度合、第2度合、第3度合、第4度合を記憶している。
実測劣化度合列は、実測によりSOHを求めて、判定した劣化度合を記憶している。
実測による劣化要因の度合、及び実測による劣化度合は、後述する再学習に用いるために求めており、全ての推定時点において求める必要はない。
【0082】
図10は、第1学習モデルの一例を示す模式図である。
第1学習モデルは、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての利用が想定される学習モデルであり、多層のニューラルネットワーク(深層学習)を用いることができ、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)を用いることができるが、リカレントニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)を用いてもよい。RNNを用いる場合、履歴の経時的な変動を入力する。決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン等の他の機械学習を用いてもよい。制御部71が、第1学習モデルからの指令に従って、第1学習モデルの入力層に入力された履歴情報に対し演算を行い、比重とその確率とを出力するように動作する。
図10では、便宜上、2つ中間層を図示しているが、中間層の層数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。CNNの場合、コンボリューション層及びプーリング層を含む。ノード(ニューロン)の数も
図10の場合に限定されない。
【0083】
入力層、出力層及び中間層には、1又は複数のノードが存在し、各層のノードは、前後の層に存在するノードと一方向に所望の重みで結合されている。入力層のノードの数と同数の成分を有するベクトルが、第1学習モデルの入力データ(学習用の入力データ及び劣化要因の度合特定用の入力データ)として与えられる。学習済みの入力データには、導出履歴情報として、有効過充電電気量、温度積算値、SOC滞在時間等が挙げられる。入力情報はこの場合に限定されない。設計情報として、初期の電解液の比重を入力してもよい。
【0084】
第1学習モデルの入力層は、有効過充電電気量、温度積算値、及びSOC滞在時間等の導出履歴を入力する。入力層の各ノードに与えられたデータは、最初の中間層に入力して与えられると、重み及び活性化関数を用いて中間層の出力が算出され、算出された値が次の中間層に与えられ、以下同様にして出力層の出力が求められるまで次々と後の層(下層)に伝達される。なお、ノードを結合する重みのすべては、学習アルゴリズムによって計算される。
【0085】
第1学習モデルの出力層は、出力データとして比重を生成する。出力層のノードの数は比重の候補の数に対応する。出力層は、各比重と、各比重の確率とを出力する。
出力層は、
出力層は、
例えば、比重1.100…0.01
比重1.240…0.07
比重1.300…0.88
・・・
のように出力する。
【0086】
なお、学習モデル156がCNNであるものとして説明したが、上述したようにRNNを用いることができる。RNNでは、前の時刻の中間層を次の時刻の入力層と合わせて学習に用いる。
【0087】
図11は、制御部71による第1学習モデルの生成処理の手順を示すフローチャートである。
制御部71は、劣化度合DB74を読み出し、各行の履歴と、比重とを対応付けた教師データを取得する(S11)。
【0088】
制御部71は教師データを用いて、導出履歴を入力した場合に比重を出力する第1学習モデル(学習済みモデル)を生成する(S12)。具体的には、制御部71は、教師データを入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、出力層から比重と確率とを取得する。
制御部71は、出力層から出力された各比重の特定結果を、教師データにおいて履歴情報に対しラベル付けされた情報、即ち正解値と比較し、出力層からの出力値が正解値に近づくように、中間層での演算処理に用いるパラメータを最適化する。該パラメータは、例えば上述の重み(結合係数)、活性化関数の係数等である。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えば制御部71は誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。
制御部71は、劣化度合DB74に含まれる各教師データの履歴情報について上記の処理を行い、第1学習モデルを生成する。制御部71は、生成した第1学習モデルを記憶部72に格納し、一連の処理を終了する。
【0089】
図12は、第2学習モデルの一例を示す模式図である。
第2学習モデルは、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての利用が想定される学習モデルであり、例えばCNNを用いることができるが、RNNを用いてもよい。RNNを用いる場合、履歴の経時的な変動を入力する。他の機械学習を用いてもよい。制御部71が、第2学習モデルからの指令に従って、第2学習モデルの入力層に入力された履歴及び比重に対し演算を行い、第1度合、第2度合、第3度合、第4度合とその確率とを出力するように動作する。
図12では、便宜上、2つ中間層を図示しているが、中間層の層数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。ノード(ニューロン)の数も
図12の場合に限定されない。
【0090】
第2学習モデルの出力層は、出力データとして第1度合、第2度合、第3度合、第4度合を生成する。出力層のノードの数は劣化度合の数に対応する。例えば、第1度合が夫々0から5までの評価値で表される場合、第1度合のノードからは、0~5までの評価値と、夫々についての確率とが出力される。
出力層は、
例えば、第1度合 0…0.08
1…0.78
・・・
5…0.01
・・・
第4度合 0…0.04
1…0.82
・・・
5…0.01
のように出力する。
制御部71は、各度合につき、確率が最大である評価値、又は確率が閾値以上である評価値を取得する。
【0091】
第2学習モデルの出力層は、出力データとして第1度合、第2度合、第3度合、第4度合の組み合わせと確率とを出力してもよい。
出力層は、
例えば、第1度合1、第2度合3、第3度合3、第4度合0…0.91
第1度合1、第2度合2、第3度合2、第4度合1…0.08
・・・
のように出力する。
【0092】
図13は、第3学習モデルの一例を示す模式図である。
第3学習モデルは、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての利用が想定される学習モデルであり、例えばCNNを用いることができるが、RNNを用いてもよい。RNNを用いる場合、劣化要因の度合の経時的な変動を入力する。他の機械学習を用いてもよい。制御部71が、第3学習モデルからの指令に従って、第3学習モデルの入力層に入力された第1度合、第2度合、第3度合、第4度合に対し演算を行い、電池2の劣化度合とその確率とを出力するように動作する。
図13では、便宜上、2つ中間層を図示しているが、中間層の層数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。ノードの数も
図13の場合に限定されない。
【0093】
入力データには、第1度合、第2度合、第3度合、第4度合が入力される。入力データは1以上の度合を含む。
【0094】
第3学習モデルの出力層は、出力データとして劣化度合を生成する。出力層のノードの数は劣化度合の数に対応する。例えば、劣化度合が1から10までの数値で表される場合、ノードの数を10に設定できる。出力層は、各劣化度合と、各劣化度合の確率とを出力する。
出力層は、
例えば、劣化度合1…0.01
劣化度合2…0.07
劣化度合3…0.88
・・・
のように出力する。
第3学習モデルは、第1学習モデルと同様にして生成される。
【0095】
図14は、制御部71による劣化度合の推定処理の手順を示すフローチャートである。
制御部71は、IDNo.1の電池2につき、推定時点で、生涯有効放電電気等の導出履歴を導出し、使用履歴DB75に記憶する(S21)。設計情報及び診断情報も記憶しもよい。
制御部71は、学習モデルDB76を読み出し、導出履歴を第1学習モデルに入力する(S22)。
制御部71は、第1学習モデルが出力した比重のうち、最も確率が高いものを特定する(S23)。
制御部71は、導出履歴、及び特定した比重を第2学習モデルに入力する(S24)。 制御部71は、評価値の確率が閾値以上である劣化要因の度合を特定する(S25)。
制御部71は、特定した劣化要因の度合を第3学習モデルに入力する(S26)。
制御部71は、第3学習モデルが出力した劣化度合のうち、例えば最も確率が高いものを取得して劣化度合を推定し(S27)、処理を終了する。
【0096】
本実施形態によれば、第1学習モデルを用いて、容易に、良好に比重を特定し、特定した比重及び導出履歴に基づいて、第2学習モデルを用い、容易に、良好に劣化要因の度合を特定できる。特定した劣化要因の度合に基づいて、第3学習モデルを用い、容易に、良好に電池2の劣化を推定できる。
【0097】
制御部71は、第2学習モデル及び第3学習モデルを用いて推定した劣化度合と、実測により得られた劣化度合とに基づいて、劣化度合の推定の信頼度が向上するように、第1学習モデル~第3学習モデルを再学習させることができる。例えば
図9の使用履歴DB75のNo.2では、第2学習モデルにより推定した劣化要因の度合と実測の度合とが一致しているので、No.2の導出履歴に対し前記度合とが対応付けられた教師データを多数入力して再学習させることで、前記度合の確率を上げることができる。同様に、No.2では、第3学習モデルにより推定した劣化度合と実測の劣化度合とが一致しているので、No.2の前記劣化要因の度合に対し前記劣化度合とが対応付けられた教師データを多数入力して再学習させることで、前記劣化度合の確率を上げることができる。No.3の場合、第3度合と実測第3度合とが一致せず、劣化度合と実測劣化度合とが一致していない。使用履歴に対し、実測第1度合、実測第2度合、実測第3度合、実測第4度合とが対応付けられた教師データを入力して再学習させる。また、比重の実測値を求め、これを用いて第1学習モデルを再学習させてもよい。
【0098】
制御部71は、推定した劣化度合、又は診断情報と、予め設定した閾値とに基づいて、電池2が交換されたと判定した場合に、使用履歴DB75のデータを消去し、リセットしてもよい。なお、制御部71は、電池2が交換されたと判定した場合に、使用履歴DB75のデータをリセットする以外の動作を行ってもよい。すなわち、制御部71は、電池2が交換されたと判定した場合に、使用履歴DB75に記憶される、履歴情報の積算の開始時点を、電池2が交換されたと判断した時点としてもよい。
【0099】
本実施形態においては、第1学習モデル、及び第2学習モデルを用いて比重、劣化要因の度合を特定し、第3学習モデルを用いて劣化度合を推定する場合につき説明しているが、これに限定されない。3つの学習モデルのうち、1又は2の学習モデルを用い、他の項目は関係式等により求めてもよい。
【0100】
(実施形態3)
実施形態3に係る充放電システム1は、学習モデルDB76が、導出履歴を入力して、夫々第1度合、第2度合、第3度合、第4度合の評価値の確率を出力する学習モデルA、B、C、Dを記憶していること以外は、実施形態2に係る充放電システム1と同様の構成を有する。
【0101】
図15は、学習モデルA、B、C、Dの一例を示す模式図である。
学習モデルAは、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての利用が想定される学習モデルであり、例えばCNNを用いることができるが、RNNを用いてもよい。他の機械学習を用いてもよい。制御部71が、学習モデルAからの指令に従って、学習モデルAの入力層に入力された導出履歴及び比重に対し演算を行い、電池2の第1度合とその確率とを出力するように動作する。
図15では、便宜上、2つ中間層を図示しているが、中間層の層数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。ノードの数も
図15の場合に限定されない。
【0102】
学習モデルAの入力層には、生涯有効放電電気量、温度積算値、使用期間等の第1履歴及び特定した比重が入力される。
学習モデルAの出力層は、第1度合を出力する。出力層のノードの数は第1度合の数に対応する。例えば、第1度合が0から5までの数値で表される場合、ノードの数を6に設定できる。出力層は、第1度合の評価値と、各評価値の確率とを出力する。
出力層は、
例えば、第1度合0…0.01
第1度合1…0.87
第1度合2…0.08
・・・
のように出力する。
制御部71は、劣化度合DB74を読み出し、第1履歴及び比重に、第1度合を対応させた教師データを取得し、該教師データを用いて学習モデルAを生成する。
【0103】
学習モデルBの入力層には、生涯有効過充電電気量、温度積算値、使用期間等の第2履歴及び特定した比重が入力される。
学習モデルBの出力層は、第2度合を出力する。出力層のノードの数は第2度合の数に対応する。例えば、第2度合が0から5までの数値で表される場合、ノードの数を6に設定できる。出力層は、第2度合の評価値と、各評価値の確率とを出力する。
制御部71は、劣化度合DB74を読み出し、第2履歴及び比重に、第2度合を対応させた教師データを取得し、該教師データを用いて学習モデルBを生成する。
【0104】
学習モデルCの入力層には、生涯有効充電電気量、温度積算値、使用期間、放置時間、各SOC区分における滞在時間等の第3履歴及び特定した比重が入力される。
学習モデルCの出力層は、第3度合を出力する。出力層のノードの数は第3度合の数に対応する。例えば、第3度合が0から5までの数値で表される場合、ノードの数を6に設定できる。出力層は、第3度合の評価値と、各評価値の確率とを出力する。
制御部71は、劣化度合DB74を読み出し、第3履歴及び比重に、第3度合を対応させた教師データを取得し、該教師データを用いて学習モデルCを生成する。
【0105】
学習モデルDの入力層には、生涯有効充電電気量、温度積算値、使用期間等の履歴が入力される。
学習モデルDの出力層は、第4度合を出力する。出力層のノードの数は第4度合の数に対応する。例えば、第4度合が0から5までの数値で表される場合、ノードの数を6に設定できる。出力層は、第4度合の評価値と、各評価値の確率とを出力する。
制御部71は、劣化度合DB74を読み出し、第4履歴及び比重に、第4度合を対応させた教師データを取得し、該教師データを用いて学習モデルDを生成する。
【0106】
以下、劣化度合の推定方法について説明する。
図16は、制御部71による劣化度合の推定処理の手順を示すフローチャートである。制御部71は所定の推定時点で、以下の処理を行う。
制御部71は、IDNo.1の電池2につき、推定時点で取得した電圧、電流、温度に基づいて生涯有効放電電気量、温度積算値等の使用履歴を導出し、使用履歴DB75に記憶する(S31)。
制御部71は、上述のS2又はS23と同様にして、比重を特定する(S32)。
【0107】
制御部71は学習モデルDB76を読み出し、第1履歴及び比重を学習モデルAに入力する(S33)。
制御部71は、学習モデルAが出力した第1度合のうち、最も確率が高いものを特定し、使用履歴DB75に記憶する(S34)。
制御部71は、特定した第1度合に基づいて劣化度合を推定し(S35)、使用履歴DB75に記憶し、処理を終了する。制御部71は、劣化度合DB74から導出される、第1度合と劣化度合との関係に基づいて、劣化度合を推定することができる。又は 第3学習モデルに特定した第1度合を入力して、劣化度合を取得してもよい。
【0108】
第2度合、第3度合についても、上記と同様に、第2履歴又は第3履歴と比重とを夫々学習モデルB、Cに入力して特定し、特定した劣化要因の度合に基づいて、劣化度合を推定することができる。第4度合についても、第4履歴を学習モデルDに入力して特定し、特定した第4度合に基づいて、劣化度合を推定することができる。
【0109】
本実施形態によれば、学習モデルA~Dを用いて、容易に、良好に劣化要因の度合を特定し、特定した劣化要因の度合に基づいて、良好に電池2の劣化を推定できる。学習モデルA~Dは上述した場合に限定されない。また、学習モデルA~Dには、履歴に加えて、設計情報を入力してもよい。
【0110】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 充放電システム
2 電池(蓄電素子)
3 BMU
31、71、91 制御部(導出部、第1特定部、第2特定部、推定部、履歴消去部)
32、72 記憶部
33、73 プログラム
34、74 劣化度合DB
35、75 使用履歴DB
36 入力部
37、77、92 通信部
7 制御装置
76 学習モデルDB
9 サーバ
10 ネットワーク
13 負荷