(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240416BHJP
G03G 15/24 20060101ALI20240416BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/24
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2019185474
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】八木 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】園山 将士
(72)【発明者】
【氏名】日當 大我
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-293134(JP,A)
【文献】特開2005-031312(JP,A)
【文献】特開2010-164913(JP,A)
【文献】特開2008-304842(JP,A)
【文献】特開2005-189694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 15/24
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された静電潜像がトナーにより顕像化され、顕像化されたトナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体からトナー像が転写される1次中間転写部材と、
前記1次中間転写部材からトナー像が転写される2次中間転写部材と、
前記2次中間転写部材からトナー像が転写され、転写されたトナー像を加熱して記録媒体に定着させる転写定着部材と、
前記1次中間転写部材および前記転写定着部材を固定した状態で前記2次中間転写部材を移動させることによって、前記2次中間転写部材を第1ニップ部で前記1次中間転写部材と当接させるとともに第2ニップ部で前記転写定着部材と当接された当接状態と、前記2次中間転写部材を前記1次中間転写部材および前記転写定着部材から離間させた離間状態とに状態を切り換える切換手段と、を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記2次中間転写部材は、前記転写定着部材よりも熱容量が大きい、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記1次中間転写部材は、前記2次中間転写部材よりも熱容量が大きい、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記2次中間転写部材は、前記転写定着部材よりも熱伝導率が小さい、請求項1~3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記1次中間転写部材は、前記2次中間転写部材よりも熱伝導率が小さい、請求項1~4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記切換手段は、前記像担持体にトナー像が形成される期間を少なくとも含む画像形成期間に前記当接状態に切り換え、前記画像形成期間でない間は前記離間状態に状態を切り換える、請求項1~5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記2次中間転写部材は、少なくとも、転写ベルトと、前記転写ベルトを支持する支持部材から構成される、請求項1~6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記2次中間転写部材は、少なくとも、転写ローラから構成される、請求項1~6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記転写定着部材は、少なくとも、転写定着ベルトと、前記転写定着ベルトを加熱する加熱部材から構成される、請求項1~8のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関し、特に、トナーを用いて画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機(MFP)で代表される画像形成装置は、トナーを用紙等の記録媒体に定着させるための定着装置を備えている。この定着装置は、トナーで構成されるトナー像が転写された記録媒体が供給され、その記録媒体に熱および圧を加えることにより、トナーを記録媒体に定着させる。しかしながら、この定着装置においては、トナーを溶融するために記録媒体にも同時に熱が加えられるので、不要な熱エネルギーが使用される。
【0003】
一方で、トナー像を記録媒体に転写させる前にトナー像に熱を加え、トナー像を記録媒体に転写する転写定着同時方式と呼ばれる定着装置が知られている。例えば、特開2005-189694号公報には、各々の表面に画像を担持する一対の回転体と、この一対の回転体の回転表面の各画像を加熱する一または複数の加熱部とを備え、上記一対の回転体間のニップ部に記録媒体を通過させることにより上記一対の回転体表面から上記記録媒体の表裏各面に画像を転写定着する構成を備えた定着装置において、表面に画像を担持可能であって、上記一対の回転体の一方の表面に画像を転写すると共に上記一対の回転体の他方の表面に対しても画像を転写可能な中間転写体を備えたことを特徴とする定着装置が記載されている。
【0004】
しかしながら、特開2005-189694号公報に記載の定着装置は、中間転写体が一対の回転体の一方に画像を転写する際に一対の回転体の一方と接触する。このため加熱部により加熱された一対の回転体から中間転写体に熱が直接伝導し、中間転写体の温度が上昇する。中間転写体の温度が上昇しすぎると、中間転写体に画像を担持させる作像器内のトナーが固化したり、中間転写体にトナーが固着したりするといった問題がある。作像器内のトナーが固化すると、作像器が破損する場合がある。また、中間転写体にトナーが固着すると中間転写体を清掃するクリーニング装置が破損する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的の1つは、トナーの温度上昇を抑えて故障を低減した画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面によれば、画像形成装置は、表面に形成された静電潜像がトナーにより顕像化され、顕像化されたトナー像を担持する像担持体と、像担持体からトナー像が転写される1次中間転写部材と、1次中間転写部材からトナー像が転写される2次中間転写部材と、2次中間転写部材からトナー像が転写され、転写されたトナー像を加熱して記録媒体に定着させる転写定着部材と、1次中間転写部材および転写定着部材を固定した状態で2次中間転写部材を移動させることによって、2次中間転写部材を第1ニップ部で1次中間転写部材と当接させるとともに第2ニップ部で転写定着部材と当接された当接状態と、2次中間転写部材を1次中間転写部材および転写定着部材から離間させた離間状態とに状態を切り換える切換手段と、を備える。
【0008】
この局面に従えば、1次中間転写部材と転写定着部材との間に2次中間転写部材が備えられる。このため、転写定着部材でトナー像を加熱するための熱が1次中間転写部材に直接伝導しないようにできる。また、離間状態において1次中間転写部材および転写定着部材を固定した状態で2次中間転写部材を移動させることによって2次中間転写部材が1次中間転写部材および転写定着部材から離間するので、転写定着部材から2次中間転写部材に熱が伝導しないようにできるとともに、2次中間転写部材から1次中間転写部材に熱が伝導しないようにできる。その結果、トナーの温度上昇を抑えて故障を低減した画像形成装置を提供することができる。
【0009】
好ましくは、2次中間転写部材は、転写定着部材よりも熱容量が大きい。
【0010】
この局面に従えば、2次中間転写部材の熱容量が転写定着部材の熱容量よりも大きいので、転写定着部材でトナー像を加熱するための熱によって2次中間転写部材の温度が上がりにくい。このため、転写定着部材でトナー像を加熱するための熱が1次中間転写部材に伝導する熱量を少なくすることができる。
【0011】
好ましくは、1次中間転写部材は、2次中間転写部材よりも熱容量が大きい。
【0012】
この局面に従えば、1次中間転写部材に転写定着部材でトナー像を加熱するための熱が伝導したとしても、1次中間転写部材の温度を上がり難くできる。
【0013】
好ましくは、2次中間転写部材は、転写定着部材よりも熱伝導率が小さい。
【0014】
この局面に従えば、2次中間転写部材は転写定着部材よりも熱伝導率が小さいので、転写定着部材でトナー像を加熱するための熱が2次中間転写部材を伝導し難い。このため、転写定着部材でトナー像を加熱するための熱が1次中間転写部材に伝導し難い。従って、1次中間転写部材の温度を上がり難くできる。
【0015】
好ましくは、1次中間転写部材は、2次中間転写部材よりも熱伝導率が小さい。
【0016】
この局面に従えば、1次中間転写部材に転写定着部材でトナー像を加熱するための熱が伝導したとしても、1次中間転写部材に接触する部材に熱が伝導し難くできる。
【0019】
好ましくは、切換手段は、像担持体にトナー像が形成される期間を少なくとも含む画像形成期間に当接状態に切り換え、画像形成期間でない間は離間状態に状態を切り換える。
【0020】
この局面に従えば、画像形成期間でない間は2次中間転写部材を1次中間転写部材から離間させた離間状態に状態が切り換えられる。このため、像担持体にトナー像が形成されていない間に、2次中間転写部材から1次中間転写部材に熱が伝導しないようにできる。その結果、1次中間転写部材の温度が上昇し続けないようにできる。
【0025】
好ましくは、2次中間転写部材は、少なくとも、転写ベルトと、転写ベルトを支持する支持部材から構成される。
【0026】
好ましくは、2次中間転写部材は、少なくとも、転写ローラから構成される。
【0027】
好ましくは、転写定着部材は、少なくとも、転写定着ベルトと、転写定着ベルトを加熱する加熱部材から構成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施の形態の1つにおけるMFPの外観を示す第1の斜視図である。
【
図2】MFPのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】MFPの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】転写定着装置の詳細な構成を模式的に示す図である。
【
図5】1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
【
図6】画像形成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2の変形例における1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
【
図8】第3の変形例における1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
【
図9】第4の変形例における1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
【
図10】第5の変形例における1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
【
図11】第6の変形例における転写定着装置の詳細な構成を模式的に示す図である。
【
図12】第6の変形例における1次中間転写ベルト、中間転写ローラーおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の説明では同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるMFPの外観を示す第1の斜視図である。
図2は、MFPのハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図1および
図2を参照して、MFP(Multi Function Peripheral)100は、画像形成装置の一例であり、メイン回路110と、画像データに基づいて用紙等に画像を形成するための画像形成部140と、画像形成部140に用紙を供給するための給紙部150と、ユーザーインターフェースとしての操作パネル160とを含む。
【0031】
メイン回路110は、MFP100の全体を制御するCPU(中央演算処理装置)111と、通信インターフェース(I/F)部112と、ROM(Read Only Memory)113と、RAM(Random Access Memory)114と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)115と、ファクシミリ部116と、外部記憶装置117と、を含む。CPU111は、画像形成部140、給紙部150および操作パネル160と接続され、MFP100の全体を制御する。
【0032】
給紙部150は、給紙トレイに収納された用紙を画像形成部140に搬送する。画像形成部140は、CPU111により制御され、周知の電子写真方式により画像を形成するものであって、CPU111から入力される画像データに基づいて、給紙部150により搬送される用紙に画像を形成し、画像を形成した用紙を排紙トレイ39に排出する。CPU111が画像形成部140に出力する画像データは、外部のパーソナルコンピューター等から受信されるプリントデータ等の画像データを含む。
【0033】
ROM113は、CPU111が実行するプログラム、またはそのプログラムを実行するために必要なデータを記憶する。RAM114は、CPU111がプログラムを実行する際の作業領域として用いられる。
【0034】
操作パネル160は、MFP100の上面に設けられる。操作パネル160は、表示部161と操作部163とを含む。表示部161は、例えば、液晶表示装置(LCD)であり、ユーザーに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。なお、LCDに代えて、画像を表示する装置であれば、例えば、有機EL(electroluminescence)ディスプレイを用いることができる。
【0035】
操作部163は、タッチパネル165と、ハードキー部167とを含む。ハードキー部167は、複数のハードキーを含む。ハードキーは、例えば接点スイッチである。タッチパネル165は、表示部161の表示面中でユーザーにより指示された位置を検出する。
【0036】
通信I/F部112は、ネットワークにMFP100を接続するためのインターフェースである。通信I/F部112は、TCP(Transmission Control Protocol)またはFTP(File Transfer Protocol)等の通信プロトコルで、ネットワークに接続された他のコンピューターと通信する。なお、通信I/F部112が接続されるネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)であり、接続形態は有線または無線を問わない。またネットワークは、LANに限らず、ワイドエリアネットワーク(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)、インターネット等であってもよい。
【0037】
ファクシミリ部116は、公衆交換電話網(PSTN)に接続され、PSTNにファクシミリデータを送信する、またはPSTNからファクシミリデータを受信する。ファクシミリ部116は、受信したファクシミリデータを、HDD115に記憶するとともに、画像形成部140でプリント可能なプリントデータに変換して、画像形成部140に出力する。これにより、画像形成部140は、ファクシミリ部116により受信されたファクシミリデータの画像を用紙に形成する。また、ファクシミリ部116は、HDD115に記憶されたデータをファクシミリデータに変換して、PSTNに接続されたファクシミリ装置に送信する。
【0038】
外部記憶装置117は、CPU111により制御され、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)118、または半導体メモリが装着される。本実施の形態においては、CPU111は、ROM113に記憶されたプログラムを実行する例を説明するが、CPU111は、外部記憶装置117を制御して、CD-ROM118からCPU111が実行するためのプログラムを読み出し、読み出したプログラムをRAM114に記憶し、実行するようにしてもよい。
【0039】
なお、CPU111が実行するためのプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM118に限られず、フレキシブルディスク、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)などの半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU111がネットワークに接続されたコンピューターからプログラムをダウンロードしてHDD115に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピューターがプログラムをHDD115に書込みするようにして、HDD115に記憶されたプログラムをRAM114にロードしてCPU111で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU111により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0040】
図3は、MFPの内部構成の一例を模式的に示す断面図である。以下、説明のため、
図3の左右の方向を左右方向といい、表裏の方向を奥行方向という。左右方向で左から右に向かう方向を右側面方向といい、右から左に向かう方向を左側面方向という。奥行方向の表から裏に向かう方向を正面方向といい、裏から表に向かう方向を背面方向という。
【0041】
図3を参照して、画像形成部140は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックそれぞれの画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを備える。ここで、“Y”、“M”、“C”および“K”は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを表す。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの少なくとも1つが駆動されることにより、画像が形成される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのすべてが駆動されると、フルカラーの画像が形成される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kには、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの印字用データがそれぞれ入力される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kは、取扱うトナーの色彩が異なるのみなので、ここでは、イエローの画像を形成するための画像形成ユニット20Yについて説明する。
【0042】
画像形成ユニット20Yは、イエローの印字用データが入力される露光装置21Yと、像担持体である感光体ドラム23Yと、感光体ドラム23Yの表面を一様に帯電するための帯電ローラー22Yと、現像器24Yと、感光体ドラム23Y上に形成されたトナー像を電界力の作用で像担持体である1次中間転写ベルト30上に転写するための1次転写ローラー25Yと、感光体ドラム23Y上の転写残トナーを除去するためドラム清掃ブレード27Yと、トナーボトル41Yと、トナーホッパー42Yと、を備える。
【0043】
トナーボトル41Yは、イエローのトナーを収容する。トナーボトル41Yは、トナーボトルモーターを駆動源として回転し、トナーを外部に排出する。トナーボトル41Yから排出されたトナーは、トナーホッパー42Yに供給される。トナーホッパー42Yは、現像器24Yに収容されたトナーの残量が予め定められた下限値以下になることに応じて現像器24Yにトナーを供給する。
【0044】
感光体ドラム23Yの周辺に、帯電ローラー22Y、露光装置21Y、現像器24Y、1次転写ローラー25Y、ドラム清掃ブレード27Yが、感光体ドラム23Yの回転方向に沿って順に配置される。
【0045】
感光体ドラム23Yは、表面に形成された静電潜像が現像器24Yによってトナーにより顕像化され、顕像化されたトナー像を担持する。具体的には、感光体ドラム23Yは、帯電ローラー22Yによって帯電された後、露光装置21Yが発光するレーザー光が照射される。露光装置21Yは、感光体ドラム23Yの表面の画像対応部を露光して静電潜像を形成する。これにより、感光体ドラム23Yに静電潜像が形成される。続いて、現像器24Yが、感光体ドラム23Yに形成された静電潜像を帯電したトナーで現像する。感光体ドラム23Yに形成された静電潜像上に電界力の作用でトナーが載せられる。具体的には、現像器24Yに現像バイアス電圧が印加される。現像バイアス電圧はトナーの帯電電位と感光体ドラム23Yの露光電位との間に設定される。これにより、現像バイアス電圧と露光電位との電位差により、トナー像が感光体ドラム23Yに形成される。
【0046】
このように、感光体ドラム23Y上に形成されたトナー像は、像担持体である1次中間転写ベルト30上に1次転写ローラー25Yにより電界力の作用で転写される。具体的には、1次転写ローラー25Yに正の1次転写バイアス電圧が印加される。1次転写ローラー25Yと感光体ドラム23Yとの間に発生する電界により、感光体ドラム23Y上のトナー像は1次中間転写ベルト30に転写される。感光体ドラム23Y上で転写されずに残ったトナーは、ドラム清掃ブレード27Yにより感光体ドラム23Yから除去される。
【0047】
一方、1次中間転写ベルト30は、駆動ローラー33と従動ローラー34とにより弛まないように懸架されている。駆動ローラー33が
図3中で反時計回りに回転すると、1次中間転写ベルト30が所定の速度で図中反時計回りに回転する。1次中間転写ベルト30の回転に伴って、従動ローラー34が、反時計回りに回転する。
【0048】
これにより、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが、順に1次中間転写ベルト30上にトナー像を転写する。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kそれぞれが、1次中間転写ベルト30上にトナー像を転写するタイミングは、1次中間転写ベルト30に付された基準マークを検出することにより、調整される。これにより、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が1次中間転写ベルト30上に重畳される。
【0049】
MFP100は、フルカラーの画像を形成する場合、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのすべてを駆動するが、モノクロの画像を形成する場合、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kのいずれか1つを駆動する。また、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの2以上を組み合わせて画像を形成することもできる。なお、ここでは、MFP100は、用紙に4色のトナーそれぞれを形成する画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを備えたタンデム方式を採用する例について説明するが、1つの感光体ドラムで4色のトナーを順に用紙に転写する4サイクル方式を採用してもよい。
【0050】
1次中間転写ベルト30により担持されるトナー像は、転写定着装置50に転写される。1次中間転写ベルト30の画像形成ユニット20Yの上流に、ベルト清掃ブレード28が設けられている。ベルト清掃ブレード28は、転写定着装置50に転写されずに1次中間転写ベルト30上に残ったトナーを除去する。
【0051】
給紙カセット35には、複数枚の用紙がセットされている。給紙カセット35に収容された用紙は、給紙カセット35に取付けられている取出ローラー36により、1枚ずつ順に搬送経路へ供給され、給紙ローラー37によりタイミングローラー31へ送られる。また、手差カセット35Aに、1以上の用紙がセットされる場合、手差カセット35Aにセットされた1以上の用紙は、手差カセット35Aに取付けられている取出ローラー36Aにより、1枚ずつ順に搬送経路へ供給され、給紙ローラー37によりタイミングローラー31へ送られる。
【0052】
タイミングローラー31は、給紙カセット35または手差カセット35Aから搬送される用紙を転写定着装置50に搬送する。転写定着装置50は、タイミングローラー31により搬送される用紙に、トナー像を転写すると同時に定着する。これにより、トナーが溶かされて用紙に定着する。タイミングローラー31は、転写定着装置50がトナー像を用紙に転写する位置に転写定着装置50に転写されたトナー像が到達するタイミングに合わせて用紙の搬送を開始する。これにより用紙にトナー像が転写される位置が調整される。転写定着装置50は、トナー像を転写および定着した用紙を排紙トレイ39に排出する。
【0053】
図4は、転写定着装置の詳細な構成を模式的に示す図である。
図4を参照して、転写定着装置50は、中間転写部51と、転写同時定着部61と、加圧ローラー71と、を含む。中間転写部51は、2次転写ローラー53と、サブローラー55と、像担持体である2次中間転写ベルト57と、離脱機構59と、を含む。
【0054】
2次転写ローラー53は、中空円筒形状のローラーである。2次転写ローラー53の外周およびサブローラー55の外周に無端状の2次中間転写ベルト57が架けられている。2次転写ローラー53は、モーターによって所定の回転速度で回転される。2次転写ローラー53の回転軸は、中間転写フレーム10に摺動可能に軸支されている。また、サブローラー55の回転軸は中間転写フレーム10に軸支されている。2次転写ローラー53の回転軸はサブローラー55と反対方向に付勢されている。これにより、2次中間転写ベルト57が弛まないように2次転写ローラー53およびサブローラー55の周りを回転する。中間転写フレーム10は本体フレームに摺動可能に取り付けられる。
【0055】
離脱機構59は、中間転写フレーム10を本体フレームに対して摺動させることにより、2次転写ローラー53およびサブローラー55それぞれの回転軸を駆動位置と離脱位置とのいずれかに移動させる。離脱機構59は、2次転写ローラー53およびサブローラー55が駆動位置に位置する状態で2次転写ローラー53の回転軸を駆動ローラー33に向かう方向に付勢するとともに、サブローラー55を3次転写ローラー63に向かう方向に付勢する。離脱機構59は、中間転写フレーム10を付勢するために、バネ等の弾性体を有する。2次転写ローラー53およびサブローラー55が駆動位置に位置する場合において、2次転写ローラー53と駆動ローラー33との間に第1ニップ部N1が形成される。2次転写ローラー53およびサブローラー55が駆動位置に位置する場合において、サブローラー55と後述する3次転写ローラー63との間に第2ニップ部N2が形成される。
【0056】
2次転写ローラー53には第2転写バイアス電圧が印加されており、1次中間転写ベルト30に担持されるトナー像は第1ニップ部N1において2次転写ローラー53に転写される。2次転写バイアス電圧は、1次転写バイアス電圧よりも絶対値が大きい。3次転写ローラー63には第3転写バイアス電圧が印加されており、2次転写ローラー53により担持されるトナー像は第2ニップ部N2において転写定着ベルト67に転写される。3次転写バイアス電圧は、2次転写バイアス電圧よりも絶対値が大きい。第1ニップ部N1は、2次転写ローラー53と駆動ローラー33との間で2次転写ローラー53が1次中間転写ベルト30と接触する部分である。第2ニップ部N2は、サブローラー55と3次転写ローラー63との間で2次中間転写ベルト57が転写定着ベルト67と接触する部分である。
【0057】
2次転写ローラー53およびサブローラー55が離脱位置に位置する場合において、2次転写ローラー53が駆動ローラー33と離間するとともに、サブローラー55が3次転写ローラー63と離間する。
【0058】
転写同時定着部61は、3次転写ローラー63と、加熱ローラー65と、像担持体である無端状の転写定着ベルト67と、を含む。加熱ローラー65は、中空円筒形状の部材であり、内部に熱源66を内蔵する。加熱ローラー65の内径は、熱源66が接触しないサイズに設定されている。加熱ローラー65はステンレス製である。加熱ローラー65をステンレス製とするので、強度があり、加工性も良い。熱源66は、例えば、ハロゲンヒーターである。本実施の形態においては、熱源66として、発光長の異なる2本のハロゲンヒーターが用いられる。なお、熱源66はハロゲンヒーターに限定されず、抵抗発熱体またはIH(Induction Heating)が用いられてもよい。
【0059】
熱源66が発熱することにより、加熱ローラー65が加熱され、加熱ローラー65の温度が上昇する。加熱ローラー65を薄肉化することで、加熱ローラー65の熱容量が小さくなる。このため、加熱ローラー65の昇温速度が速くなるので、加熱ローラー65が所定の温度に達するまでのウォームアップ時間を短くすることができる。また、熱源66の消費電力量を低減することができる。
【0060】
3次転写ローラー63の外周および加熱ローラー65の外周に無端状の転写定着ベルト67が架けられている。加熱ローラー65は、モーターによって所定の回転速度で回転される。加熱ローラー65の回転に伴って転写定着ベルト67および3次転写ローラー63が従動回転する。転写定着ベルト67は、加熱ローラー65と接触する間に熱せられる。
【0061】
加熱ローラー65の外側に、加熱ローラー65と非接触の状態でサーミスタが配置されている。このサーミスタにより加熱ローラー65により熱が伝達した転写定着ベルト67の表面温度が検知され、熱源66の発熱量が制御される。具体的には、転写定着ベルト67の表面温度が所定の温度になるように熱源66の発熱量が制御される。
【0062】
なお、加熱ローラー65が備える熱源66が、加熱ローラー65の内部ではなく、3次転写ローラー63の内部に設けられてもよい。
【0063】
加熱ローラー65と対向する位置に加圧ローラー71が配置される。加圧ローラー71は、円柱形状の部材である。加圧ローラー71の回転軸が本体フレームに摺動可能に軸支されている。加圧ローラー71の回転軸は、バネなどの弾性体により加熱ローラー65側に付勢され、加圧ローラー71と加熱ローラー65との間に第3ニップ部N3が形成される。第3ニップ部N3は、加圧ローラー71が転写定着ベルト67と接触する部分である。ばねの長さを変えることにより加圧ローラー71に加わる付勢力が調整される。第3ニップ部N3の長さは0mm以上~1mm以下とするのが好ましい。また、加圧ローラー71は、加熱ローラー65に向かう方向に付勢された付勢状態と、加熱ローラー65から離間して転写定着ベルト67と接触しない待機状態とに状態を変化させる移動機構が設けられる。
【0064】
付勢状態においては、加圧ローラー71は転写定着ベルト67に接触するので、熱源66で発生した熱が伝導するが、待機状態においては、加圧ローラー71は転写定着ベルト67に接触しないので熱は伝導しない。このため、待機状態において、熱源66で発生した熱が加圧ローラー71に伝導しないので、転写定着ベルト67の温度を所定の値にするまでの時間を短くすることができる。このため、無駄に熱エネルギーが消費されないようにできる。
【0065】
また、2次転写ローラー53およびサブローラー55が離脱位置に位置する場合において、2次転写ローラー53が駆動ローラー33と離間するとともに、サブローラー55が3次転写ローラー63と離間する。このため、2次転写ローラー53およびサブローラー55が離脱位置に位置する場合は、熱源66で発生した熱が1次中間転写ベルト30に伝導しない。このため、1次中間転写ベルト30および画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの温度の上昇を抑えることができる。これにより、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20K内に収容されるトナーの固化を防止することができ、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの破壊を防ぐことができる。また、1次中間転写ベルト30にトナーが固着するのを防止してベルト清掃ブレード28が破損するのを防止することができる。
【0066】
1次中間転写ベルト30により担持されるトナー像は、第1ニップ部N1において像担持体である2次中間転写ベルト57に電界力の作用で転写される。具体的には、2次転写ローラー53に正の2次転写バイアスが印加される。2次転写バイアスは、1次転写バイアスよりも大きな値である。2次転写ローラー53と駆動ローラー33との間に発生する電界により、1次中間転写ベルト30上のトナー像は2次中間転写ベルト57に転写される。1次中間転写ベルト30上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が重畳して形成されているので、そのトナー像が2次中間転写ベルト57に転写される。
【0067】
2次中間転写ベルト57により担持されるトナー像は、第2ニップ部N2において転写定着ベルト67上に3次転写ローラー63による電界力の作用で転写される。具体的には、3次転写ローラー63に正の3次転写バイアスが印加される。3次転写バイアスは、2次転写バイアスよりも大きな値である。3次転写ローラー63とサブローラー55との間に発生する電界により、2次中間転写ベルト57上のトナー像は転写定着ベルト67に転写される。2次中間転写ベルト57上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が重畳して形成されているので、そのトナー像が転写定着ベルト67に転写される。
【0068】
タイミングローラー31から搬送される用紙は、加熱ローラー65と加圧ローラー71との間の第3ニップ部N3で転写定着ベルト67に押し付けられる。加圧ローラー71の回転軸と加熱ローラー65の回転軸とは奥行方向に平行であり、用紙の搬送方向と垂直に交わる。転写定着ベルト67により担持されるトナー像は、第2ニップ部N2から第3ニップ部N3に移動する間に転写定着ベルト67により加熱されるので、溶けた状態になる。そして、転写定着ベルト67により担持されるトナー像は、加熱ローラー65と加圧ローラー71との間で用紙に加圧される。これにより、熱により溶かされたトナーが用紙に圧着される。
【0069】
1次中間転写ベルト30および2次中間転写ベルト57は、PI(polyimide)を基材とし、導電材料を含有している。1次中間転写ベルト30は第1ニップ部N1で電界を形成するために、2次中間転写ベルト57は第1ニップ部N1および第2ニップ部N2で電界を形成するために、それぞれが導電材料を含有している。転写定着ベルト67は、PIを基材とし、導電材料を含有する基層と、基層の上層としてのシリコーンゴムで形成される中間層と、中間層の上層としてのフッ素で形成される離形層とを含む。転写定着ベルト67は、中間層を有するので、加熱ローラー65と加圧ローラー71との間の第3ニップ部N3で、加圧ローラー71により加圧されて弾性変形する。これにより、第3ニップ部N3において、副走査方向に所定の長さが確保される。副走査方向は、用紙の搬送方向と平行である。また、転写定着ベルト67は、離形層を含むので、第2ニップ部N2で転写されるトナーが転写定着ベルト67に付着しにくい。このため、転写定着ベルト67により担持されるトナーが第3ニップ部N3で用紙に転写し易い。
【0070】
図5は、1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
図5を参照して、熱容量に関して、2次中間転写ベルト57の熱容量が、転写定着ベルト67の熱容量よりも大きい。また、1次中間転写ベルト30の熱容量が、2次中間転写ベルト57の熱容量よりも大きい。
【0071】
熱伝導率に関して、2次中間転写ベルト57の熱伝導率が、転写定着ベルト67の熱伝導率よりも小さい。また、1次中間転写ベルト30の熱伝導率が、2次中間転写ベルト57の熱伝導率よりも小さい。なお、転写定着ベルト67の熱伝導率は、シリコーンゴムで形成される中間層の熱伝導率としている。
【0072】
ここでは、駆動ローラー33、従動ローラー34、2次転写ローラー53、サブローラー55、3次転写ローラー63および加熱ローラー65は、その表層に、厚さ3mm程度のシリコーンスポンジゴムの層が形成される。所定の時間以内であれば、シリコーンゴムの層が断熱材として機能する。このため、これらのローラーが熱伝導に与える影響は少ない。したがって、ここでは、1次中間転写ベルト30においては駆動ローラー33および従動ローラー34それぞれの熱容量および熱伝導率、2次中間転写ベルト57においては2次転写ローラー53およびサブローラー55それぞれの熱容量および熱伝導率、および転写定着ベルト67においては3次転写ローラー63および加熱ローラー65それぞれの熱容量および熱伝導率は考慮されていない。
【0073】
熱源66で発生した熱は、転写定着ベルト67を介して第2ニップ部N2で転写定着ベルト67と接触する2次中間転写ベルト57に伝導する。2次中間転写ベルト57に伝導した熱は、第1ニップ部N1で2次中間転写ベルト57に接触する1次中間転写ベルト30に伝導する。
【0074】
2次中間転写ベルト57の熱伝導率が、転写定着ベルト67の熱伝導率よりも小さいので、転写定着ベルト67に比較して2次中間転写ベルト57は熱が伝導しにくい。このため、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導しにくくできる。2次中間転写ベルト57の熱容量が、転写定着ベルト67の熱容量よりも大きいので、転写定着ベルト67に比較して2次中間転写ベルト57の温度が上昇し難い。このため、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導し難くできる。
【0075】
2次中間転写ベルト57は転写定着ベルト67と比較して温度が上昇し難く熱が伝導し難いので、2次中間転写ベルト57が、1次中間転写ベルト30と熱源66との間で断熱する役割を果たす。このように、2次中間転写ベルト57の断熱効果を高めることにより、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導し難くできる。
【0076】
また、1次中間転写ベルト30の熱容量が2次中間転写ベルト57の熱容量よりも大きいので、2次中間転写ベルト57に比較して1次中間転写ベルト30の温度が上昇しにくい。また、1次中間転写ベルト30の熱伝導率が2次中間転写ベルト57の熱伝導率よりも小さいので、2次中間転写ベルト57に比較して1次中間転写ベルト30は熱が伝導しにくい。このため、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導する場合であっても、1次中間転写ベルト30の温度が上昇しにくいので、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの温度の上昇を抑えることができる。
【0077】
画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの温度が上昇すると、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20K内に収容されるトナーが固化し、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが破損することがある。MFP100は、1次中間転写ベルト30の温度の上昇を抑え、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが破損し難くできる。また、1次中間転写ベルト30の温度が上昇すると、トナーが1次中間転写ベルト30に固着し、ベルト清掃ブレード28が破損する場合がある。MFP100は、1次中間転写ベルト30の温度の上昇を抑えるので、ベルト清掃ブレード28が破損し難くできる。
【0078】
1次中間転写ベルト30および2次中間転写ベルト57それぞれの熱容量および熱伝導率は、MFP100が画像を連続して形成することが許容される時間に基づいて定めることができる。MFP100が画像を連続して形成することが許容される時間は、例えば、1次中間転写ベルト30の上限温度を定めておき、1次中間転写ベルト30が上限温度に到達するまでの時間とすることができる。
【0079】
図6は、画像形成処理の流れの一例を示すフローチャートである。画像形成処理は、MFP100が備えるCPU111が画像形成制御プログラムを実行することによりCPU111により実行される処理である。
図6を参照して、CPU111は、加圧ローラー71を離間させる(ステップS01)。CPU111は、移動機構を制御して、加圧ローラー71を待機状態に状態を変化させる。
【0080】
次のステップS02においては、CPU111は、中間転写部51を離間させる。具体的には、CPU111は、離脱機構59を制御して、中間転写フレーム10を本体フレームに対して摺動させることにより、2次転写ローラー53およびサブローラー55それぞれの回転軸を離脱位置に移動させる。
【0081】
ステップS03においては、転写同時定着部61の準備動作が開始される。具体的には、CPU111は、熱源66に発熱させるとともに、3次転写ローラー63を回転させる。これにより、転写定着ベルト67が3次転写ローラー63と加熱ローラー65との周りを回転しながら、加熱ローラー65により加熱される。
【0082】
ステップS04においては、転写定着ベルト67の温度が所定温度か否かが判断される。サーミスタにより検知される転写定着ベルト67の表面の温度が所定温度になるまで待機状態となり(ステップS04でNO)、所定温度ならば処理はステップS05に進む。
【0083】
ステップS05においては、プリントデータが受信されたか否かが判断される。例えば、外部のコンピューターからプリントデータが受信されるまで待機状態となり(ステップS05でNO)、プリントデータが受信されたならば(ステップS05でYES)、処理はステップS06に進む。
【0084】
ステップS06においては、画像形成が開始される。画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが制御され、1次中間転写ベルト30にトナー像が形成される。次のステップS07においては、中間転写部51が付勢される。具体的には、CPU111は、離脱機構59を制御して、中間転写フレーム10を本体フレームに対して摺動させることにより、2次転写ローラー53およびサブローラー55それぞれの回転軸を駆動位置に移動させる。これにより、1次中間転写ベルト30により担持されるトナー像が第1ニップ部N1において2次中間転写ベルト57に転写され、2次中間転写ベルト57により担持されるトナー像が第2ニップ部N2において転写定着ベルト67に転写される。
【0085】
ステップS08においては、第3ニップ部N3に用紙が供給されるタイミングか否かが判断される。用紙が第3ニップ部N3に搬送さるタイミングはタイミングローラー31によりが調整されるので、タイミングローラー31が用紙を開始するタイミングに基づいて、第3ニップ部N3に用紙が供給されるタイミングが決定される。第3ニップ部N3に用紙が供給されるタイミングになるまで待機状態となり(ステップS08でNO)、第3ニップ部N3に用紙が供給されるタイミングならば(ステップS08でYES)、処理はステップS09に進む。
【0086】
ステップS09においては、加圧ローラー71が付勢され、処理はステップS10に進む。CPU111は、移動機構を制御して、加圧ローラー71を付勢状態に状態を変化させる。これにより、加圧ローラー71が加熱ローラー65に向かう方向に付勢されるので、第3ニップ部N3に搬送される用紙に、転写定着ベルト67により担持されるトナー像が用紙に転写されるとともに定着される。
【0087】
ステップS10においては、画像形成部140による画像形成が終了したか否かが判断される。画像形成が終了するまで待機状態となり(ステップS10でNO)、画像形成が終了したならば(ステップS10でYES)、処理はステップS11に進む。
【0088】
ステップS11においては、CPU111は、ステップS01と同様に加圧ローラー71を離間させる。次いで、CPU111は、ステップS12において、ステップS02と同様に中間転写部51を離間させ、処理を終了する。
【0089】
本実施の形態におけるMFP100は、熱源66と1次中間転写ベルト30との間に中間転写部51が設けられる。このため、熱源66で発生した熱が1次中間転写ベルト30および画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kに伝導しにくいようにしている。
【0090】
なお、2次転写ローラー53およびサブローラー55それぞれの回転軸が駆動位置に位置する場合に、2次中間転写ベルト57が第1ニップ部N1において1次中間転写ベルト30と接触し、第2ニップ部N2において転写定着ベルト67と接触する例を示したが、電界力の作用でトナー像を転写可能な場合は、2次中間転写ベルト57が第1ニップ部N1において1次中間転写ベルト30から所定の距離だけ離間し、第2ニップ部N2において転写定着ベルト67から所定の距離だけ離間するようにしてもよい。
【0091】
<第1の変形例>
第1の変形例におけるMFP100は、離脱機構59に代えて、2次転写ローラー53の回転軸を駆動位置と離脱位置とのいずれかに移動させる第1離脱機構と、サブローラー55の回転軸を駆動位置と離脱位置とのいずれかに移動させる第2離脱機構と、を備える。第2離脱機構によりサブローラー55の回転軸が離脱位置に移動された状態では、2次中間転写ベルト57が転写定着ベルト67と接触しないので、熱源66で発生した熱が2次中間転写ベルト57に伝導しないようにできる。このため、2次転写ローラー53の回転軸が駆動位置に移動している場合でも、熱源66で発生した熱が1次中間転写ベルト30に伝導しないようにできる。
【0092】
また、第1離脱機構により2次転写ローラー53の回転軸が離脱位置に移動された状態では、2次中間転写ベルト57が1次中間転写ベルト30と接触しないので、サブローラー55の回転軸が駆動位置に移動している場合でも、熱源66で発生した熱が1次中間転写ベルト30に伝導しないようにできる。
【0093】
また、第1離脱機構により2次転写ローラー53の回転軸が離脱位置に移動された状態、および、第2離脱機構によりサブローラー55の回転軸が離脱位置に移動された状態では、離脱機構59により2次転写ローラー53およびサブローラー55の回転軸を離脱位置に移動させた状態と同じである。
【0094】
<第2の変形例>
図7は、第2の変形例における1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
図5に示した例と異なる点は、2次中間転写ベルト57の厚さおよび周長が大きい。これにより、2次中間転写ベルト57の熱容量が、転写定着ベルト67の熱容量および1次中間転写ベルト30の熱容量よりも大きい。熱伝導率は、
図5に示した値と同じである。
【0095】
このため、2次中間転写ベルト57の温度が上昇しにくいので、2次中間転写ベルト57が、1次中間転写ベルト30と熱源66との間で断熱する効果が
図5に示した場合よりも大きくなる。2次中間転写ベルト57の断熱効果が高まるので、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導しにくくできる。
【0096】
<第3の変形例>
図8は、第3の変形例における1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
図5に示した例と異なる点は、2次中間転写ベルト57の厚さおよび周長が小さく、かつ、1次中間転写ベルト30の厚さおよび周長が大きい。このため、1次中間転写ベルト30の熱容量が、転写定着ベルト67の熱容量および2次中間転写ベルト57の熱容量よりも大きい。しかも、熱容量の大きさは1桁違う。したがって、1次中間転写ベルト30は2次中間転写ベルト57および転写定着ベルト67に比較して温度が上昇しにくい。熱伝導率は、
図5に示した値と同じである。
【0097】
また、2次中間転写ベルト57の熱容量が転写定着ベルト67の熱容量よりも小さいので、2次中間転写ベルト57の断熱効果が小さくなるが、1次中間転写ベルト30の熱容量が桁違いに大きいので、1次中間転写ベルト30の温度が上昇しにくく、上限温度にまで上昇するまでの時間を
図5に示した場合と同等の長さにできる。
【0098】
第3の変形例においては、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導する場合であっても、1次中間転写ベルト30の温度が上昇しにくく、さらに、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの温度の上昇を抑えることができる。したがって、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが破損し難くなるとともに、ベルト清掃ブレード28が破損し難くなる。
【0099】
<第4の変形例>
図9は、第4の変形例における1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
図5に示した例と異なる点は、2次中間転写ベルト57の熱伝導率が小さい。熱容量は、
図5に示した値と同じである。2次中間転写ベルト57と転写定着ベルト67とが接触する第2ニップ部N2の接触面積を小さくすることにより、2次中間転写ベルト57の熱伝導率を小さくすることができる。
【0100】
2次中間転写ベルト57の熱伝導率が、転写定着ベルト67の熱伝導率および1次中間転写ベルト30の熱伝導率よりも小さい。したがって、2次中間転写ベルト57は1次中間転写ベルト30および転写定着ベルト67に比較して熱が伝導し難い。
【0101】
このため、2次中間転写ベルト57が熱を伝導し難いので、2次中間転写ベルト57が、1次中間転写ベルト30と熱源66との間で断熱する効果が
図5に示した場合よりも大きくなる。2次中間転写ベルト57の断熱効果が高まるので、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導し難くできる。
【0102】
<第5の変形例>
図10は、第5の変形例における1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
図5に示した例と異なる点は、1次中間転写ベルト、2次中間転写ベルトおよび転写定着ベルトそれぞれの熱伝導率が異なる。1次中間転写ベルト30の熱伝導率が最も小さく、2次中間転写ベルト57の熱伝導率が最も大きい。熱容量は、
図5に示した値と同じである。
【0103】
このため、1次中間転写ベルト30の熱伝導率が、転写定着ベルト67の熱伝導率および2次中間転写ベルト57の熱伝導率よりも小さい。したがって、1次中間転写ベルト30は2次中間転写ベルト57および転写定着ベルト67に比較して熱が伝導し難い。
【0104】
また、2次中間転写ベルト57の熱伝導率が転写定着ベルト67の熱伝導率よりも大きいので、2次中間転写ベルト57の断熱効果が
図5に示した場合よりも小さくなるが、1次中間転写ベルト30の熱伝導率が最小なので、1次中間転写ベルト30の温度が上昇しにくく、上限温度にまで上昇するまでの時間を
図5に示した場合と同等の長さにできる。
【0105】
第5の変形例においては、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導する場合であっても、1次中間転写ベルト30の温度が上昇しにくく、さらに、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの温度の上昇を抑えることができる。したがって、画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kが破損し難くなるとともに、ベルト清掃ブレード28が破損し難くなる。
【0106】
<第6の変形例>
図11は、第6の変形例における転写定着装置の詳細な構成を模式的に示す図である。
図11を参照して、
図4に示した転写定着装置50と異なる点は、中間転写部51が中間転写部51Aに変更された点である。その他の構成は
図4に示した構成と同じなのでここでは説明は繰り返されない。
【0107】
中間転写部51Aは、中間転写ローラー53Aと、離脱機構59Aと、を含む。中間転写ローラー53Aは、中空円筒形状のローラーである。中間転写ローラー53Aは、材質がPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)で形成される。中間転写ローラー53Aの回転軸は、中間転写フレーム10に軸支される。
【0108】
離脱機構59Aは、中間転写フレーム10を本体フレームに対して摺動させることにより、中間転写ローラー53Aの回転軸を駆動位置と離脱位置とのいずれかに移動させる。中間転写ローラー53Aが駆動位置に位置する場合において、中間転写ローラー53Aと駆動ローラー33との間に第1ニップ部N1が形成される。中間転写ローラー53Aには第2転写バイアス電圧が印加されており、1次中間転写ベルト30に担持されるトナー像は第1ニップ部N1において中間転写ローラー53Aに転写される。2次転写バイアス電圧は、1次転写バイアス電圧よりも絶対値が大きい。
【0109】
また、中間転写ローラー53Aが駆動位置に位置する場合において、中間転写ローラー53Aと3次転写ローラー63との間に第2ニップ部N2が形成される。3次転写ローラー63には第3転写バイアス電圧が印加されており、中間転写ローラー53Aにより担持されるトナー像は第2ニップ部N2において転写定着ベルト67に転写される。3次転写バイアス電圧は、2次転写バイアス電圧よりも絶対値が大きい。
【0110】
第1ニップ部N1は、中間転写ローラー53Aと駆動ローラー33との間で中間転写ローラー53Aが1次中間転写ベルト30と接触する部分である。第2ニップ部N2は、中間転写ローラー53Aと3次転写ローラー63との間で中間転写ローラー53Aが転写定着ベルト67と接触する部分である。
【0111】
中間転写ローラー53Aが離脱位置に位置する場合において、中間転写ローラー53Aは、駆動ローラー33と離間するとともに、3次転写ローラー63と離間する。離脱機構59Aは、中間転写ローラー53Aが駆動位置に位置する状態で中間転写ローラー53Aの回転軸を駆動ローラー33に向かう方向および3次転写ローラー63に向かう方向に付勢する。離脱機構59Aは、中間転写ローラー53Aの回転軸を付勢するために、バネ等の弾性体を有する。
【0112】
図12は、第6の変形例における1次中間転写ベルト、中間転写ローラーおよび転写定着ベルトの熱容量および熱伝導率の一例を示す図である。
図12を参照して、熱容量に関して、中間転写ローラー53Aの熱容量が、転写定着ベルト67の熱容量および1次中間転写ベルト30の熱容量よりも大きい。このため、中間転写ローラー53Aの温度が転写定着ベルト67および1次中間転写ベルト30に比較して上昇しにくいので、中間転写ローラー53Aが、1次中間転写ベルト30と熱源66との間で断熱する効果が高い。
【0113】
また、中間転写ローラー53Aの熱伝導率が1次中間転写ベルト30の熱伝導率および1次中間転写ベルト30の熱伝導率よりも小さい。したがって、中間転写ローラー53Aは1次中間転写ベルト30および転写定着ベルト67に比較して熱が伝導し難い。このため、中間転写ローラー53Aが熱を伝導し難いので、中間転写ローラー53Aが、1次中間転写ベルト30と熱源66との間で断熱する効果が高い。中間転写ローラー53Aの断熱効果が高いので、1次中間転写ベルト30に熱源66で発生した熱が伝導し難くできる。
【0114】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
100 MFP、20Y,20M,20C,20K 画像形成ユニット、21Y,21M,21C,21K 露光装置、22Y,22M,22C,22K 帯電ローラー、23Y,23M,23C,23K 感光体ドラム、24Y,24M,24C,24K 現像器、25Y,25M,25C,25K 1次転写ローラー、27Y,27M,27C,27K ドラム清掃ブレード、28 ベルト清掃ブレード、30 1次中間転写ベルト、31 タイミングローラー、33 駆動ローラー、34 従動ローラー、35 給紙カセット、39 排紙トレイ、41Y,41M,41C,41K トナーボトル、42Y、42M,42C,42K トナーホッパー、10 中間転写フレーム、50 転写定着装置、51,51A 中間転写部、53 2次転写ローラー、53A 中間転写ローラー、55 サブローラー、57 2次中間転写ベルト、59,59A 離脱機構、61 転写同時定着部、63 3次転写ローラー、65 加熱ローラー、66 熱源、67 転写定着ベルト、71 加圧ローラー、111 CPU。