(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】自動塗装システム
(51)【国際特許分類】
B05B 12/00 20180101AFI20240416BHJP
B05B 13/02 20060101ALI20240416BHJP
B05B 7/24 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B05B13/02
B05B7/24
(21)【出願番号】P 2019208634
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-297353(JP,A)
【文献】特開昭48-076932(JP,A)
【文献】実開昭58-048358(JP,U)
【文献】特開2005-185923(JP,A)
【文献】特開2017-170511(JP,A)
【文献】特開2001-321701(JP,A)
【文献】特開平02-111466(JP,A)
【文献】特開2000-167444(JP,A)
【文献】特開平07-299389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/00
B05B 13/02
B05B 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも狭窄部の奥に被塗装面を有する塗装対象物に塗装を施す自動塗装システムであって、
前記塗装対象物に対して塗料を噴射するノズル部と、当該ノズル部に前記塗料を供給する本体部と、該本体部と前記ノズル部との間に設けられ、前記塗料が流通すると共に前記ノズル部を前記狭窄部を介して前記被塗装面に対向する首部とを備えるスプレーガンと、
該スプレーガンに塗料を供給する供給装置と、
前記スプレーガンを前記塗装対象物に対して所定姿勢かつ所定経路で移動させるロボットと、
該ロボット及び前記供給装置を制御する制御装置とを備え、
前記供給装置は、前記塗料に加えて、当該塗料の放射角を規定する圧縮ガスを前記スプレーガンに供給し、
前記スプレーガンは、前記ノズル部から噴射する前記塗料に前記圧縮ガスを噴射して前記放射角を設定する圧縮ガス噴射孔を備え、
前記圧縮ガス噴射孔は、前記塗料を噴射する塗料噴射孔が設けられた平面を挟むように一対設けられるとともに前記平面側に傾斜した傾斜面に設けられ
、
前記塗装対象物は、円板状に形成されると共に外周に翼部品が放射状に取り付けられる前記狭窄部が複数形成された回転体であり、所定の角度ピッチで間欠回転することによって前記狭窄部が前記スプレーガンに順次対峙するように位置設定されることを特徴とする自動塗装システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ノズル部の前記塗装対象物に対する移動速度、前記ノズル部から前記塗装対象物に向けて噴射される前記塗料の流量、前記塗料の前記塗装対象物に対する噴射角、またノズル部の塗装対象物に対向する面との距離が少なくとも一定になるように前記ロボット及び前記供給装置を制御することを特徴とする請求項1記載の自動塗装システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記被塗装面において前記狭窄部から離間した部位に加え、前記狭窄部の裏側部位にも前記塗料を噴き付けさせることを特徴とする請求項1または2記載の自動塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、塗料の噴射量が従来よりも安定する塗装用スプレーガン及び塗装装置が開示されている。この塗装用スプレーガン及び塗装装置は、スプレーガン本体にテフロン(登録商標)製の塗料流路を備えることにより、通過経路内に付着・滞留し易い塗料を用いた場合であっても、塗料のテフロンチューブ内への付着・滞留を防止あるいは抑制することが可能であり、以ってノズルから噴射する塗料の噴射量を安定させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術は、塗料の噴射量が安定するので、塗装対象物に安定した膜厚の塗膜を形成することが可能であるが、狭窄部を有する塗装対象物の塗装を考慮したものではない。背景技術は、例えば塗料を噴射するノズルが比較的大径のブラケットに隣接配置されているので、ノズルを狭窄部を通過させることが困難であり、よって狭窄部を有する塗装対象物に対して効率よく塗膜を形成することが困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも狭窄部の奥に被塗装面を有する塗装対象物に対して効率よく塗装を行うことが可能な自動塗装システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、自動塗装システムに係る第1の解決手段として、少なくとも狭窄部の奥に被塗装面を有する塗装対象物に塗装を施す自動塗装システムであって、前記塗装対象物に対して塗料を噴射するノズル部と、当該ノズル部に前記塗料を供給する本体部と、該本体部と前記ノズル部との間に設けられ、前記塗料が流通すると共に前記ノズル部を前記狭窄部を介して前記被塗装面に対向する首部とを備えるスプレーガンと、該スプレーガンに塗料を供給する供給装置と、前記スプレーガンを前記塗装対象物に対して所定姿勢かつ所定経路で移動させるロボットと、該ロボット及び前記供給装置を制御する制御装置とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、自動塗装システムに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御装置は、前記ノズル部の前記塗装対象物に対する移動速度、前記ノズル部から前記塗装対象物に向けて噴射される前記塗料の流量、前記塗料の前記塗装対象物に対する噴射角、またノズル部の塗装対象物に対向する面との距離が少なくとも一定になるように前記ロボット及び前記供給装置を制御する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、自動塗装システムに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記制御装置は、前記被塗装面において前記狭窄部から離間した部位に加え、前記狭窄部の裏側部位にも前記塗料を噴き付けさせる、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、自動塗装システムに係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記塗装対象物は、略円板状に形成されると共に外周に複数の翼部品が放射状に取り付けられる回転体である、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、自動塗装システムに係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記供給装置は、前記塗料に加えて、当該塗料の放射角を規定する圧縮ガスを前記スプレーガンに供給し、前記スプレーガンは、前記ノズル部から噴射する前記塗料に前記圧縮ガスを噴射して前記放射角を設定する圧縮ガス噴射孔を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、狭窄部を有する塗装対象物に対して効率よく塗装を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動塗装システムのシステム構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるスプレーガンの構成を示す概要図である。
【
図3】本発明の一実施形態における塗装対象物とスプレーガンの位置関係を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る自動塗装システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る自動塗装システムは、
図1に示すようにロボット1、スプレーガン2、供給装置3、回転駆動装置4及び制御装置5を備えており、塗装対象物Wに対して塗装を施す。
【0014】
最初に、塗装対象物Wについて説明すると、塗装対象物Wは、
図1に示すように円板状の回転体であり、
図3に一部拡大図として示すように外周部に複数の狭窄部Kを備えている。この狭窄部Kは、例えば、円板状の塗装対象物Wの外周に沿って大凡所定のピッチで形成されている。すなわち、この塗装対象物Wは、回転中心周りの角度割として大凡所定の角度毎に配列する狭窄部Kを備えており、回転駆動装置4によって回転自在に支持されている。
【0015】
このような狭窄部Kの奥側、つまり塗装対象物Wの回転中心側には所定形状の空間が形成されている。この空間の表面つまり塗装対象物Wに狭窄部Kに対応して複数形成された内周面は、本実施形態における被塗装面Mであり、例えば線対称の形状を有している。すなわち、被塗装面Mは、
図3に示すように、塗装対象物Wの半径方向において塗装対象物Wの回転中心と狭窄部Kの中心とを結ぶ線(基準線L)の両側が同形状に形成されている。
【0016】
なお、
図3は、塗装対象物Wの回転中心軸方向から見た狭窄部K及び被塗装面Mの形状を表しており、被塗装面Mは、回転中心軸方向に所定の幅を有している。この幅は、例えば塗装対象物Wの回転中心軸方向における幅と同等である。すなわち、被塗装面Mは、所定幅を有すると共にC字状に湾曲した曲面である。このような塗装対象物Wは、例えば略円板状に形成されると共に外周に複数の翼部品が放射状に取り付けられ、各翼部品が狭窄部Kに各々係合するタービンディスクである。
【0017】
また
図3において、符号R1は第1塗装ラインを示し、符号R2は第2塗装ラインを示している。これら第1塗装ラインR1及び第2塗装ラインR2は、塗料Tの噴付目標位置を示すものであり、狭窄部Kから離間した部位として設定されたものである。すなわち、第1塗装ラインR1は、基準線Lの右側領域において狭窄部Kから離間した部位に設定されている。一方、第2塗装ラインR2は、基準線Lの左側領域において狭窄部Kから離間した部位に設定されている。
【0018】
ロボット1は、図示するように、複数のアームが関節を介して一列に接続された多関節ロボットであり、制御装置5によって制御される。このロボット1の先端部にはスプレーガン2が装着されている。このようなロボット1は、所定の可動範囲(三次元空間)においてスプレーガン2を任意の位置かつ姿勢に設定することが可能である。なお、このロボット1については、例えば5軸装置あるいは6軸装置等の多軸装置を採用することが考えられる。
【0019】
スプレーガン2は、上記ロボット1の先端部に装着されており、供給装置3から塗料Tと圧縮ガスGの供給を受ける。このスプレーガン2は、ロボット1によって設定された位置及び姿勢から塗装対象物Wに向けて塗料Tを噴射する。
【0020】
より詳細には、スプレーガン2は、
図2に示すように、本体部2a、首部2b及びノズル部2cを備えている。本体部2aは、首部2bを介してノズル部2cに塗料T及び圧縮ガスGを供給する部位であり、全体として円筒状に形成されている。この本体部2aは、円筒形に形成されると共に一端面に首部2bの一端が接続された主部2dと、当該主部2dの他端面に設けられた接続フランジ2eと、塗料T及び圧縮ガスGを受け入れる受入部2f等を少なくとも備えている。
【0021】
主部2dは、互いに平行な一対の端面(平面)を備える筒体であり、内部に塗料Tが流れる流路(塗料内部流路)と圧縮ガスGが流れる流路(ガス内部流路)とが形成されている。接続フランジ2eは、スプレーガン2をロボット1の先端部に接続するための円板状部材であり、主部2dの他端面つまりロボット1の先端部側の面に設けられている。受入部2fは、フレキシブルなチューブによって供給装置3と接続されており、塗料内部流路及びガス内部流路に連通している。
【0022】
首部2bは、本体部2aとノズル部2cとの間に設けられ、塗料T及び圧縮ガスGが流通する管状部材である。この首部2bは、本体部2aにおける主部2dの中心軸線と同軸かつ主部2dの一端面に垂直な姿勢で設けられている。このような首部2bは、本体部2aで受け入れた塗料T及び圧縮ガスGをノズル部2cに送るための流路として機能する。
【0023】
また、この首部2bは、ノズル部2cを
図3に示す狭窄部Kを介して被塗装面Mに対向させ得る長さを有した管状部材でもある。すなわち、本実施形態におけるスプレーガン2では、本体部2aは狭窄部Kを通過し得ない大きさ(比較的大形)に形成されており、一方、ノズル部2cは狭窄部Kを通過し得る大きさ(比較的小形)に形成されている。首部2bは、このような本体部2aとノズル部2cとの間において、狭窄部Kの奥に存在する塗装面Mに対してノズル部2cが十分に対向し得る長さに設定されている。
【0024】
ノズル部2cは、塗装対象物Wに対して塗料Tを噴射する塗料噴射部であり、
図2(b)に示すように塗料噴射孔2g及び一対のガス噴射孔2hを備えている。このノズル部2cは、首部2bを介して本体部2aから供給された塗料Tを塗料噴射孔2gから噴射する。この塗料噴射孔2gは、ノズル部2cにおいて首部2bの延在方向つまり主部2dの中心軸線方向と直行する方向に向けて開口する小孔である。
【0025】
また、このノズル部2cは、首部2bを介して本体部2aから供給された圧縮ガスGを一対のガス噴射孔2hから噴射する。一対のガス噴射孔2hは、
図2(b)に示すように首部2bの延在方向に直交する方向において塗料噴射孔2gを挟むように設けられており、塗料噴射孔2gから噴射される塗料Tに対して両側から圧縮ガスGを噴射する小孔である。
【0026】
塗料噴射孔2gから噴射される塗料Tは、両側から圧縮ガスGを流入する圧縮ガスGの作用によって、
図2(a)に示すような所定の広がり角θに設定される。この広がり角θは、主部2dの中心軸線を含む平面における塗料Tの広がり角を示すものであり、上記中心軸線に対して直行する一点鎖線の方向(基準噴射方向)を中心としている。
【0027】
供給装置3は、スプレーガン2に塗料Tと圧縮ガスGとを供給する装置であり、制御装置5によって制御される。すなわち、この供給装置3は、図示しないが、所定量の塗料Tを貯留する塗料タンクと、当該塗料タンクから所定流量の塗料Tを取り出してスプレーガン2に送り出す塗料ポンプとを備えている。また、この供給装置3は、同様に図示はしないが、所定量のガスを貯留するガスタンクと、当該ガスタンクから取り出したガスを所定圧に圧縮することにより圧縮ガスGを生成し、所定流量と所定圧力の圧縮ガスGをスプレーガン2に送り出すコンプレッサとを備えている。
【0028】
回転駆動装置4は、塗装対象物Wを回転自在に支持する装置であり、制御装置5によって制御される。この回転駆動装置4は、塗装対象物Wを回転軸J周りに所定の角度ピッチで間欠回転させる。
【0029】
制御装置5は、上述したロボット1、供給装置3及び回転駆動装置4を統一的に制御する装置である。すなわち、本実施形態に係る自動塗装システムは、制御装置5がロボット1、供給装置3及び回転駆動装置4を統一的に制御することにより、塗装対象物Wに所望の塗装を施す。
【0030】
制御装置は、例えばノズル部2cの塗装対象物Wに対する移動速度、ノズル部2cから塗装対象物Wに向けて噴射される塗料Tの流量、塗料Tの塗装対象物Wに対する噴射角、またノズル部2cの塗装対象物Wに対向する面との距離が少なくとも一定になるようにロボット1及び供給装置3を制御する。
【0031】
次に、本実施形態に係る自動塗装システムの動作について、
図4に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0032】
本自動塗装システムでは、回転機構によって塗装対象物Wを回転中心軸周りに狭窄部Kの配列ピッチ毎に垂直面内で間欠的に順次回動させることにより、塗装対象物Wに置けて周方向に配列する複数の被塗装面Mに順次塗装を施す。第1の被塗装面Mに塗装する場合、制御装置5は、回転駆動装置4を制御することにより第1の被塗装面Mを所定位置に設定する(ステップS1)。例えば、回転駆動装置4は、
図3に示されているように第1の被塗装面Mの基準線Lが上下方向となる姿勢で塗装対象物Wの回転を停止させることにより、第1の被塗装面Mを位置設定する。
【0033】
制御装置5は、この状態においてロボット1を制御することにより、スプレーガン2を上方から基準線Lに沿って狭窄部Kに進入させ、ノズル部2cを被塗装面Mの初期位置及び初期姿勢に設定させる(ステップS2)。例えば、ロボット1は、
図3に示すように第1塗装ラインR1における一方の端点の垂線上において所定の距離を隔てた位置を初期位置とし、また基準噴射方向が被塗装面Mに対して垂直となる姿勢を初期姿勢となるようにスプレーガン2(つまりノズル部2c)の位置及び姿勢を設定する。
【0034】
制御装置5は、このようにスプレーガン2の初期状態に設定すると、ロボット1を制御することによりスプレーガン2を第1塗装ラインR1に沿って所定速度で移動させると共に、供給装置3を制御することによってスプレーガン2に所定量の塗料T及び圧縮ガスGを供給させる(ステップS3)。この結果、被塗装面Mにはスプレーガン2から広がり角θで塗料Tが噴射して噴き付けられる。なお、この広がり角θの方向は、第1塗装ラインR1の延在方向に対して直行する方向である。
【0035】
そして、制御装置5は、第1塗装ラインR1に沿ったスプレーガン2の変位量が所定変位量に到達したが否かを判断する(ステップ4)。すなわち、制御装置5は、ロボット1の動作パラメータをモニターすることによって、スプレーガン2(ノズル部2c)が第1塗装ラインR1における一方の端点から他方の端点まで移動したか否かを判断する。なお、制御装置5は、スプレーガン2が一方の端点に到達すると、供給装置3を制御することにより塗料T及び圧縮ガスGのスプレーガン2への供給を一旦停止させる。
【0036】
そして、制御装置5は、上記ステップ4の判断が「Yes」になると、つまり基準線Lの右半分の領域に対する塗装が完了したので、ロボット1を制御することにより、スプレーガン2を第2塗装ラインR2の初期位置(一方の端点)及び初期姿勢に設定する(ステップS5)。
【0037】
このような第1塗装ラインR1に沿った塗料Tの噴き付けによって、被塗装面Mにおける基準線Lの右半分の領域には所定厚の塗膜が形成される。すなわち、基準線Lの右半分の領域には、スプレーガン2から広がり角θで塗料Tが噴射することに加え、被塗装面Mに衝突した塗料Tが飛散することによって、比較的均一な塗膜が形成される。
【0038】
そして、制御装置5は、ロボット1を制御することにより、スプレーガン2を第2塗装ラインR2に沿って所定速度で移動させる。また、制御装置5は、供給装置3を制御することによって、スプレーガン2に所定量の塗料T及び圧縮ガスGを供給させる(ステップS6)。
【0039】
そして、制御装置5は、ロボット1の動作パラメータをモニターすることによって、第2塗装ラインR2に沿ったスプレーガン2の変位量が所定変位量に到達したが否かを判断する(ステップ7)。なお、この場合におても、制御装置5は、供給装置3を制御することにより塗料T及び圧縮ガスGのスプレーガン2への供給を一旦停止させる。
【0040】
この結果、被塗装面Mにおいて基準線Lの左半分の領域には、スプレーガン2から広がり角θで塗料Tが噴射して噴き付けられる。この際に、基準線Lの左半分の領域には、スプレーガン2から広がり角θで塗料Tが噴射することに加え、被塗装面Mに衝突した塗料Tが飛散することによって比較的均一な塗膜が形成される。
【0041】
本実施形態によれば、スプレーガン2がノズル部2cを第1塗装ラインR1や第2塗装ラインR2に対して、つまり被塗装面Mに対向させ得る長さの首部2bを備えているので、狭窄部Kの奥に被塗装面Mを有する塗装対象物Wに対して効率よく塗装を行うことが可能である。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、ノズル部2cつまりスプレーガン2の塗装対象物Wに対する移動速度、ノズル部2cから塗装対象物Wに向けて噴射される塗料Tの流量、塗料Tの塗装対象物Wに対する初期姿勢(噴射角)、またノズル部2cの塗装対象物Wに対向する面との距離が少なくとも一定になるようにロボット1及び供給装置2を制御したが、本発明はこれに限定されない。塗装において管理すべきパラメータ(塗装パラメータ)は、要求される塗装品質に応じて適宜設定されるべきものである。
【0043】
(2)上記実施形態では、第1塗装ラインR1に沿った被塗装面Mへの塗料Tの噴き付け、また第2塗装ラインR2に沿った被塗装面Mへの塗料Tの噴き付けといったスプレーガン2の2パス動作によって被塗装面Mの塗装を完了させたが、本発明はこれに限定されない。スプレーガン2のパス数は、被塗装面Mの形状や大きさによって適宜設定される。
【0044】
例えば、
図3に示した形状の被塗装面Mでは、狭窄部Kから離間した第1塗装ラインR1及び第2塗装ラインR2に加え、狭窄部Kの裏側部位にも塗料Tを噴き付けてもよい。狭窄部Kの裏側部位は、被塗装面Mから飛散した塗料Tが付着し難い領域であり、よって塗膜の膜厚が他の部位よりも薄くなる傾向にあるので、補助的に塗料Tを噴き付けることが考えられる。
【0045】
(3)上記実施形態では、略円板状に形成されると共に外周に複数の翼部品が放射状に取り付けられる回転体を塗装対象物Wとしたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、各種形状の塗装対象物に適用することが可能であり、また各種形状の被塗装面に適用することが可能である。
【0046】
(4)上記実施形態では、圧縮ガスGによって塗料Tの広がり角θを設定するタイプのスプレーガン2を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば圧縮ガスGを用いることなく、塗料噴射孔2gの形状に基づいて塗料Tの広がり角を設定するようなプレーガンを採用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
G 圧縮ガス
K 狭窄部
L 基準線
M 被塗装面
R1 第1塗装ライン
R2 第2塗装ライン
T 塗料
W 塗装対象物
1 ロボット
2 スプレーガン
2a 本体部
2b 首部
2c ノズル部
2d 主部
2e 接続フランジ
2f 受入部
2g 塗料噴射孔
2h ガス噴射孔
3 供給装置
4 回転駆動装置
5 制御装置