(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】生育環境制御システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20240416BHJP
A01G 9/18 20060101ALI20240416BHJP
A01G 9/22 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A01G9/24 A
A01G9/18
A01G9/22
A01G9/24 C
A01G9/24 M
A01G9/24 X
A01G9/24 Z
(21)【出願番号】P 2019228370
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一誠
(72)【発明者】
【氏名】岩田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 寛
(72)【発明者】
【氏名】長島 篤史
(72)【発明者】
【氏名】杉木 利和
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-039530(JP,A)
【文献】特開2002-297690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
A01G 9/18
A01G 9/22
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウスで栽培される植物の栽培時における周囲環境を制御するハウス環境制御装置と、
前記ハウス環境制御装置に用いられる前記周囲環境の制御に関する環境パラメータ情報を一括で管理するパラメータ管理装置と、を備え、
前記パラメータ管理装置は、
前記環境パラメータ情報と、前記環境パラメータ情報の内容または属性に関連し、該環境パラメータ情報を特定する特定情報とを含むテンプレートパラメータ情報を生成することと、
前記生成されたテンプレートパラメータ情報を記憶部に保持することと、
前記記憶部に保持された前記テンプレートパラメータ情報を前記ハウス環境制御装置からの使用の要求に応じて提供することと、を実行する管理部、
を備え
、
前記特定情報は、前記環境パラメータ情報の作成者名、前記テンプレートパラメータ情報の名称、前記環境パラメータ情報が使用されたハウス環境制御装置の前記周囲環境の制御に関する状況を分類するための分類情報、前記作成者のコメント、前記環境パラメータ情報の使用実績、前記環境パラメータ情報の使用者のコメント、および、前記環境パラメータ情報に対する前記使用者の評価、の内の少なくとも一つの情報を含むことを特徴とする生育環境制御システム。
【請求項2】
前記ハウス環境制御装置で測定された周囲環境または栽培される植物の生育状況に関する栽培データの履歴を記録するデータ記録装置をさらに備え、
前記管理部は、前記テンプレートパラメータ情報を使用するハウス環境制御装置と、前記ハウス環境制御装置の前記データ記録装置に記録される前記栽培データとを対応付けるための紐付け情報を前記テンプレートパラメータ情報に付与して提供する、ことを特徴とする
請求項1に記載の生育環境制御システム。
【請求項3】
前記栽培データは、温湿度、CO2濃度、日照、土壌中の水分量、土壌中の養分量、降雨量、風速、植物内の樹液流量、植物によって吸収された養分量の内の少なくとも一つの
情報を含むことを特徴とする
請求項2に記載の生育環境制御システム。
【請求項4】
前記紐付け情報は、前記ハウス環境制御装置の通信アドレス情報、前記農業用ハウスの構造情報、前記ハウス環境制御装置の識別番号、前記データ記録装置の通信アドレス情報、および、前記データ記録装置に前記周囲環境に関するデータの履歴を記録するためのセキュリテイ情報を含む、ことを特徴とする
請求項2に記載の生育環境制御システム。
【請求項5】
前記パラメータ管理装置は、前記データ記録装置へ記録された栽培データの履歴から、前記栽培データの時間軸上の推移を表すグラフ情報を生成する表示処理部と、をさらに備え、
前記管理部は、前記テンプレートパラメータ情報の提供の際に、前記テンプレートパラメータ情報が使用されたハウス環境制御装置の栽培データの履歴から生成された前記グラフ情報を提供する、ことを特徴とする
請求項2から4の何れか一項に記載の生育環境制御システム。
【請求項6】
前記管理部は、予め登録された複数の前記ハウス環境制御装置に対して一括、または、指定された識別番号に対応する前記ハウス環境制御装置を宛先として前記テンプレートパラメータ情報を提供する、ことを特徴とする
請求項1から5の何れか一項に記載の生育環境制御システム。
【請求項7】
前記テンプレートパラメータ情報には、前記ハウス環境制御装置間で共通して用いられる部分的な環境パラメータ情報が含まれる、ことを特徴とする
請求項1から6の何れか一項に記載の生育環境制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の農業用ハウス内の、作物や果樹等の植物を栽培する生育環境を制御する生育環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
農作物や果樹等の植物の栽培においては、生産性の向上をはかる観点から、植物の生育状態に合わせて適切な生育環境が維持されるように管理することが求められる。例えば、特許文献1には、ビニールハウスや温室等の農業設備(以下、農業用ハウスという)の内部における環境制御を行う環境制御システムが開示されている。
【0003】
特許文献1において、農業用ハウスには、温度、湿度、日照、炭酸ガス濃度など、内部における環境に関するデータを取得するための各種の計測機器が設けられる。また、農業用ハウスには、空調装置、送風装置、温湿度制御装置、炭酸ガス発生装置、日除け装置など、内部における環境を調整する調整機器が設けられる。そして、環境制御システムの制御装置は、農業用ハウスに設けられた計測機器で取得した各種のデータに基づいて調整機器を制御し、当該農業用ハウスの内部の環境を、ユーザインターフェースとしての入力装置を介して自棟に設定された設定環境に維持する事例が記載されている。
【0004】
ところで、複数の農業用ハウスの環境制御を行う場合には、農業用ハウス毎に、それぞれの入力装置を操作して設定環境を制御装置に入力しなければならない。このため、一つの農業用ハウスに設定した設定環境と同じ設定環境を他の農業用ハウスに使用する場合には、流用先の農業用ハウスのそれぞれに対して同じ設定環境を再入力しなければならず、流用先の農業用ハウスの数量が相対的に多いときには設定作業に費やす負担が増大する。また、過去に使用された設定環境のデータは残されておらず、農業用ハウスに設定された設定環境のデータ管理はメモ用紙等に記述する等、主として個々の生産者の裁量に任せていた。このため、農業用ハウスを用いて植物の栽培を行う生産者においては、低温や高温、日照不足といった植物の生育を阻害するような特定の状況で設定された過去の設定環境に関する情報の共有化が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、周囲環境の制御に使用されたデータを活用し、複数の農業用ハウスの環境制御が可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
農業用ハウスで栽培される植物の栽培時における周囲環境を制御するハウス環境制御装置と、
前記ハウス環境制御装置に用いられる前記周囲環境の制御に関する環境パラメータ情報を一括で管理するパラメータ管理装置と、を備え、
前記パラメータ管理装置は、
前記環境パラメータ情報と、前記環境パラメータ情報の内容または属性に関連し、該環
境パラメータ情報を特定する特定情報とを含むテンプレートパラメータ情報を生成することと、
前記生成されたテンプレートパラメータ情報を記憶部に保持することと、
前記記憶部に保持された前記テンプレートパラメータ情報を前記ハウス環境制御装置からの使用の要求に応じて提供することと、を実行する管理部、
を備えることを特徴とする生育環境制御システムである。
【0008】
これによれば、パラメータ管理装置は、ハウス環境制御装置で使用された環境パラメータ情報に基づいて、複数のハウス環境制御装置に対して流用して使用可能なテンプレートパラメータ情報を生成し、当該テンプレートパラメータ情報を記憶部に保持できる。生成されたテンプレートパラメータ情報には、生成元になった環境パラメータ情報の内容または属性に関連し、該環境パラメータ情報を特定する特定情報が含まれている。このため、テンプレートパラメータ情報を流用する生産者等は、特定情報に基づいて、所望のテンプレートパラメータ情報の選定や流用使用の決定が可能になる。そして、パラメータ管理装置は、記憶部に保持された前記テンプレートパラメータ情報をハウス環境制御装置からの使用の要求に応じて提供することができる。本システムによれば、パラメータ管理装置は、周囲環境の制御に使用されたデータを活用し、複数の農業用ハウスの環境制御が可能な技術を提供できる。
【0009】
ここで、特定情報には、環境パラメータ情報の作成者名、テンプレートパラメータ情報の名称、環境パラメータ情報が使用されたハウス環境制御装置の周囲環境の制御に関する状況を分類するための分類情報、作成者のコメント、環境パラメータ情報の使用実績、環境パラメータ情報の使用者のコメント、および、環境パラメータ情報の評価、の内の少なくとも一つの情報を含むようにできる。これによれば、パラメータ管理装置は、テンプレートパラメータ情報に含まれる環境パラメータ情報について、流用の可否を決定する際の判断材料を複数に提示することが可能になる。農業用ハウスを用いて植物を栽培する生産者は、特定情報に基づいて、記憶部に保持されたテンプレートパラメータ情報の中から所望する周囲環境の制御に適切なテンプレートパラメータ情報を選定することが可能になる。
【0010】
また、本発明においては前記ハウス環境制御装置で測定された周囲環境または栽培される植物の生育状況に関する栽培データの履歴を記録するデータ記録装置をさらに備え、前記管理部は、前記テンプレートパラメータ情報を使用するハウス環境制御装置と、前記ハウス環境制御装置の前記データ記録装置に記録される前記栽培データとを対応付けるための紐付け情報を前記テンプレートパラメータ情報に付与して提供するようにしてもよい。これによれば、紐付け情報によって紐付けられたデータ記録装置に対して、テンプレートパラメータ情報を使用するハウス環境制御装置で測定された周囲環境または栽培される植物の生育状況に関する栽培データの履歴が蓄積できる。そして、紐付け情報によって特定される栽培データにより、当該テンプレートパラメータ情報を用いて制御された周囲環境または栽培される植物の生育状況の実態が把握可能になる。本システムでは、主として個々のユーザの裁量に任せていた、農業用ハウス内の環境を植物の生育状態に合わせて適切に管理するためのノウハウを一元化して資産化することが可能になる。
【0011】
ここで、栽培データは、温湿度、CO2濃度、日照、土壌中の水分量、土壌中の養分量、降雨量、風速、植物内の樹液流量、植物によって吸収された養分量の内の少なくとも一つの情報を含むようにできる。これによれば、テンプレートパラメータ情報が使用された農業用ハウスにおける環境制御の実態が、より詳細に把握することが可能になる。
【0012】
また、紐付け情報は、前記ハウス環境制御装置の通信アドレス情報、前記農業用ハウスの構造情報、前記ハウス環境制御装置の識別番号、前記データ記録装置の通信アドレス情
報、および、前記データ記録装置に前記周囲環境に関するデータの履歴を記録するためのセキュリテイ情報を含むようにできる。これによれば、紐付け情報に基づいて、データ記録装置に蓄積されたデータ元になるハウス環境制御装置と、テンプレートパラメータ情報が使用された農業用ハウスの周囲環境の制御に関するデータ履歴とを対応付けて一元的に管理することが可能になる。
【0013】
また、本発明においては、前記パラメータ管理装置は、前記データ記録装置へ記録された栽培データの履歴から、前記栽培データの時間軸上の推移を表すグラフ情報を生成する表示処理部と、をさらに備え前記テンプレートパラメータ情報の提供の際に、前記テンプレートパラメータ情報が使用されたハウス環境制御装置の栽培データの履歴から生成された前記グラフ情報を提供するようにしてもよい。本システムによれば、パラメータ管理装置は、テンプレートパラメータ情報を用いるハウス環境制御装置で測定された、周囲環境または栽培される植物の生育状況に関する栽培データの実績を、時系列に沿って推移するヒストリカルグラフとして提供することが可能になる。生産者に対し、テンプレートパラメータ情報を用いた環境制御の結果を視認容易なようにグラフ表示化して提供できる。
【0014】
また、本発明においては、前記管理部は、予め登録された前記複数のハウス環境制御装置に対して一括、または、指定された識別番号に対応する前記複数のハウス環境制御装置を宛先として前記テンプレートパラメータ情報を提供するようにしてもよい。また、前記テンプレートパラメータ情報には、前記ハウス環境制御装置間で共通して用いられる部分的な環境パラメータ情報が含まれるようにしてもよい。これによれば、一つの農業用ハウスに設定した設定環境と同じ設定環境を他の農業用ハウスに一括して、あるいは、宛先を指定して設定することが可能になる。また、複数の農業用ハウスに共通する部分的な環境パラメータ情報を一括して、あるいは、宛先を指定して設定することが可能になる。圃場内に設けられた農業用ハウスの数量が相対的に多い場合であっても、環境パラメータ情報の設定に係る作業負担が軽減できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、設定環境に使用されたデータを活用し、複数の農業用ハウスの環境制御が可能な技術が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1における生育環境制御システムの機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施例1における設定パラメータ管理装置と栽培データ管理DBのより詳細な機能構成についてのブロック図である。
【
図3】本発明の実施例1における設定パラメータ管理装置とハウス環境制御装置のより詳細な機能構成についてのブロック図である。
【
図4】本発明の実施例1における設定パラメータ管理装置からハウス環境制御装置に提供されるテンプレートパラメータ情報の一形態を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1における生育環境制御システムの概略のハード構成を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施例1における設定パラメータ管理装置のハードウェア構成図の一例である。
【
図7】本発明の実施例1におけるテンプレートパラメータ情報の登録処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施例1における使用決定されたテンプレートパラメータに関する情報の提供処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施例1におけるテンプレートパラメータに関する情報の他棟への設定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について説明する。本適用例に係る発明は、農業用ハウスで栽培される植物の栽培時における周囲環境の制御に関するパラメータ情報を活用することで、複数の農業用ハウス内の環境制御を可能にする、植物の生育環境制御システムである。本システムは、
図1に示すように、設定パラメータ管理装置10と、農業用ハウス毎に設けられ、当該農業用ハウスで栽培される植物の生育環境を制御するハウス環境制御装置(20#1~20#n)と、農業用ハウス毎の栽培されている植物に関する栽培データ情報を収集して蓄積する栽培データ管理DB(30#1~30#n)と、を備えている。本適用例及び、以下の実施例において、複数のハウス環境制御装置(20#1から20#n)を総称して「ハウス環境制御装置20」、複数の栽培データ管理DB(30#1から30#n)を総称して「栽培データ管理DB30」ともいう。また、一のハウス環境制御装置(例えば、20#1)に関する栽培データ情報は、1対1の関係で対応付けられた栽培データ管理DB(例えば、30#1)に蓄積される例について説明する。なお、本適用例及び以下の実施例における、設定パラメータ管理装置10は「パラメータ管理装置」の一例に相当し、ハウス環境制御装置20は「ハウス環境制御装置」の一例に相当し、栽培データ管理DB30は、「データ記録装置」の一例に相当する。さらに、本適用例及び、以下の実施例において、「設定パラメータ管理装置10」は、単一の物理的構成で実現されてもよく、互いに連携する複数台のコンピュータの構成、例えば、クラウドと呼ばれるシステムによって実現されてもよい。
【0019】
設定パラメータ管理装置10は、ハウス環境制御装置20から提供された、農業用ハウスで栽培される植物の栽培時における周囲環境の制御に関する環境パラメータ情報に基づいて、複数のハウス制御装置の間で流用して使用可能な周囲環境の制御に関するテンプレートパラメータ情報を生成し、管理する。テンプレートパラメータ情報には、当該テンプレートパラメータ情報の使用目的や、ハウス環境制御装置20を通じて制御される周囲環境の状況といった内容または属性に関連し、当該テンプレートパラメータ情報を特定する特定情報が含まれる。設定パラメータ管理装置10が管理するテンプレートパラメータ情報は、当該テンプレートパラメータ情報を植物の周囲環境の制御に使用するハウス環境制御装置20に提供される。そして、テンプレートパラメータ情報を使用するハウス環境制御装置20における栽培データ情報は、例えば、当該ハウス環境制御装置と一対一の関係で対応付けられたデータ記録装置である栽培データ管理DB30に一定の周期間隔で記録され、栽培データ情報の履歴が蓄積される。設定パラメータ管理装置10は、テンプレートパラメータ情報を植物の周囲環境の制御に使用したハウス環境制御装置20に関する栽培データ情報の履歴を対応する栽培データ管理DB30から取得する。
【0020】
より詳細には、
図2に示すように、設定パラメータ管理装置10は、パラメータ管理部101を備え、当該パラメータ管理部101で生成されたテンプレートパラメータ情報をテンプレートパラメータDB107に保持することで、複数のハウス環境制御装置20間で流用可能なパラメータ群が構築できる。ここで、
図4に示すように、テンプレートパラメータ情報には、特定情報として環境パラメータ情報の作成者の名称、テンプレートパラメータ情報の名称、環境パラメータ情報が使用されたハウス環境制御装置20における周囲環境の制御に関する状況(高温や低温、日照不足等の異常気候、環境パラメータ情報を用いて対策した病害虫に関する名称、使用地域名、ハウス構造等)を分類するための分類情報(TAG情報ともいう)が含まれる。また、特定情報として、環境パラメータ情報に対する作成者のコメントや使用者のコメント、使用実績、評価等を示す情報が含まれる。
【0021】
設定パラメータ管理装置10は、
図4に示すように、ハウス環境制御装置20と栽培デ
ータ管理DB30とを紐付ける装置-栽培データ紐付け情報をテンプレートパラメータ情報に付加し、ハウス環境制御装置20に提供する。ここで、装置-栽培データ紐付け情報には、テンプレートパラメータ情報を使用するハウス環境制御装置20の通信アドレス情報(IPアドレス等)、農業用ハウスの構造情報(天窓数、側窓数、遮光カーテン数等)、栽培データ管理DB30の通信アドレス情報、データ記録のためのセキュリテイ証明書等が含まれる。
【0022】
また、
図3に示すように、ハウス環境制御装置20には、環境調整器20fが設けられ、環境センサ群20d、生体センサ群20eを通じて測定された測定値が栽培データ情報として、装置-栽培データ紐付け情報によって関連付けされた栽培データ管理DB30に提供される。なお、装置-栽培データ紐付け情報は「紐付け情報」の一例に相当する。
【0023】
さらに、設定パラメータ管理装置10は、ハウス環境制御装置20からの要求により、当該ハウス環境制御装置20に設定されたテンプレートパラメータ情報を、予め登録された複数のハウス環境制御装置20に一括して、あるいは、ハウス環境制御装置20の識別番号を指定した宛先指定により提供する。また、設定パラメータ管理装置10は、農業用ハウス間で共通して用いられる部分的な環境パラメータ情報をテンプレートパラメータ情報として一括して、あるいは、宛先指定により提供する。
【0024】
これにより、設定パラメータ管理装置10は、一の農業用ハウスにおいて使用された、周囲環境の制御に関する環境パラメータ情報に基づいて生成されたテンプレートパラメータ情報を活用することが可能になり、当該テンプレートパラメータ情報を用いた複数の農業用ハウスの環境制御が可能になる。
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【0026】
〔実施例1〕
図1は、本実施例における生育環境制御システム1の機能ブロック図である。本実施例における生育環境制御システム1は、設定パラメータ管理装置10と、農業用ハウス毎に設けられ、当該農業用ハウスで栽培される植物の周囲環境を制御するハウス環境制御装置(20#1~20#n)と、農業用ハウス毎に栽培されている植物に関する栽培データ情報を一定周期で収集して蓄積する栽培データ管理DB(30#1~30#n)と、を有する。設定パラメータ管理装置10は、後述するように単一のコンピュータであってもよく、複数のコンピュータの集まりによって構成されてもよい。
【0027】
図1に例示のように、複数の農業用ハウスのそれぞれに設けられたハウス環境制御装置(20#1~20#n)から設定パラメータ管理装置
10へは、各農業用ハウスで栽培される植物の周囲環境を制御するために設定されたそれぞれの環境制御パラメータ情報が提供される。また、設定パラメータ管理装置
10から各ハウス環境制御装置へは、当該設定パラメータ管理装置が管理するテンプレートパラメータ群の中から選定されたテンプレートパラメータ情報(後述)が提供される。選定されたテンプレートパラメータ情報は、ユーザの指示により、複数のハウス環境制御装置20に対して一括して提供することもできる。なお、環境制御パラメータ情報の設定、および、テンプレートパラメータ情報の選定は、本システムによるサービスを受けるユーザによって行われる。本システムのユーザとしては、典型的には農業用ハウスを用いて植物を栽培する生産者が挙げられるが、生産者に限られず、複数の農業用ハウスを用いて栽培された食物を消費者に提供する企業の従業員や関係者等であってもよい。
【0028】
また、ハウス環境制御装置(20#1~20#n)から栽培データ管理DB(30#1
~30#n)へは、各農業用ハウスで栽培される植物の周囲環境に関する栽培データ情報が提供される。栽培データ情報には、後述するように、それぞれの農業用ハウス内外における環境データ、植物の生育状態を示す生体記録に関する生育データが含まれる。栽培データ情報は、ハウス環境制御装置毎に対応する栽培データ管理DB30のそれぞれに、一定の周期間隔で収集されて蓄積される。また、栽培データ管理DB(30#1~30#n)から設定パラメータ管理装置10へは、それぞれの栽培データ管理DBに対応付けられる農業用ハウスについての、一定の周期間隔で収集されて蓄積された栽培データの履歴を示す栽培データ履歴情報が提供される。
【0029】
図2には、設定パラメータ管理装置10と栽培データ管理DB30のより詳細な機能構成についてのブロック図が例示される。なお、以下では、複数の栽培データ管理DB30の内の一つの栽培データ管理DB30xを説明例とする。栽培データ管理DB30xは、ハウス環境制御装置20xから提供された栽培データ情報を蓄積する。
【0030】
図2に示すように、栽培データ管理DB30xから設定パラメータ管理装置10に提供される栽培データ履歴情報には、農業用ハウス内外における環境データ履歴および植物の生育状態を示す生体記録に関する生育データ履歴が含まれる。また、蓄積された栽培データ履歴と当該栽培データの収集先であるハウス環境制御装置20xとを紐付けるための紐付け情報(装置情報)が含まれている。装置情報として、例えば、ハウス環境制御装置20xのネットワーク上のアドレスを示すIPアドレス、ハウス環境制御装置20xを備える農業用ハウスの天窓数、側窓数、遮光カーテン数といったハウス構造情報、ハウス環境制御装置20xを識別するためのユニークな装置識別番号(例えば、シリアルNo)等が例示される。
【0031】
環境データ履歴は、後述するように、ハウス環境制御装置20xが備える環境センサ群20dを通じて検出されたデータの履歴である。環境データとして、例えば、温度、湿度、CO2濃度、照度、降雨(降雨の有無、降雨量)、風速等が例示される。また、生育データ履歴は、ハウス環境制御装置20xが備える生体センサ群20eを通じて検出された植物の、光合成量等の成長の度合いを示すデータの履歴である。生育データとして、例えば、植物によって吸収された養分の量、植物内の樹液の流量等が例示される。なお、成長の度合いを示すデータとして、農業用ハウス内に設けられたカメラ等の撮像装置を介して撮影された植物の撮像画像が含まれてもよい。一定の周期間隔で撮影された撮像画像間での生育状態の比較により、植物の成長の度合いを推定することが可能になる。栽培データ情報として栽培データ管理DB30から提供される上記の環境データ、生育データは、「ハウス環境制御装置で測定された周囲環境または栽培される植物の生育状況に関する栽培データ」の一例に相当する。
【0032】
設定パラメータ管理装置10は、各ハウス環境制御装置から提供された環境制御パラメータ情報に基づいて、複数の農業用ハウス間で使用可能な共通のテンプレートパラメータ群を保持し、管理する機能を有する。設定パラメータ管理装置10の保持するテンプレートパラメータ情報は、本システムによるサービスを受ける全てのユーザがアクセスして利用可能であり、テンプレートパラメータ情報として各ハウス環境制御装置に提供される。また、設定パラメータ管理装置10は、保持されたテンプレートパラメータ情報に対する評価および使用実績を管理する機能を有する。これらの機能は、設定パラメータ管理装置10の備える機能要素(構成要素)により実現される。より具体的には、設定パラメータ管理装置10は、パラメータ管理部101と、パラメータ評価部102と、栽培結果表示処理部103と、使用実績管理部104と、UI部105と、評価・実績管理DB106と、テンプレートパラメータDB107を機能要素に備える。ここで、設定パラメータ管理装置10の備えるパラメータ管理部101と、パラメータ評価部102と、使用実績管理部104と、UI部105とは、「管理部」を構成する構成要素の一例に相当し、「栽培結果表示処理部103」は、「表示処理部」を構成する構成要素の一例に相当する。ま
た、設定パラメータ管理装置10の備える評価・実績管理DB106と、テンプレートパラメータDB107とは、「記憶部」を構成する構成要素の一例に相当する。
【0033】
パラメータ管理部101は、各ハウス環境制御装置から提供された環境制御パラメータ情報をテンプレートパラメータDB107に登録する。環境制御パラメータ情報には、環境の制御目標として設定された目標温度、目標湿度、目標CO2濃度、日照量を確保・維持するための環境調整器20fに対する動作設定であるパラメータデータが含まれる。例えば、日照量を確保・維持するためのパラメータデータとして、環境調整器20fとしての遮光カーテンに対する開閉設定や、環境センサ群20dとしての照度センサで測定された照度との相対的な差分に応じた開度設定等が例示できる。目標温度、目標湿度、目標CO2濃度についても同様に、それぞれの目標環境を確保・維持するために関連付けされた環境調整器20fの、環境センサ群20dで検出された環境量に応じた動作設定が例示できる。
【0034】
また、環境制御パラメータ情報には、パラメータデータの設定名称、パラメータデータの作成者名、パラメータデータを分類するためのTAG情報(例えば、高温や低温、日照不足等の異常気候、パラメータデータを用いて対策した病害虫に関する名称、使用地域名、ハウス構造等)、作成者のコメント等を含むことができる。したがって、パラメータ管理部101は、これらの情報が環境制御パラメータに含まれているときには、当該情報をパラメータデータに付加し、テンプレートパラメータ情報としてテンプレートパラメータDB107に格納する。なお、テンプレートパラメータ情報には、当該パラメータを管理するための一意に識別する識別情報も付与される。これにより、吹き出し破線A1に示すように、TAG情報によって分類されたテンプレートパラメータ群がテンプレートパラメータDB107に構築される。なお、吹き出し破線A1内の設定パラメータA(107a)、設定パラメータB(107b)、設定パラメータC(107c)、部分パラメータD(107d)、特定状況パラメータE(107e)は、例えば、TAG情報によって分類されたテンプレートパラメータ群の例示である。ここで、部分パラメータD(107d)は、例えば、複数の農業用ハウスに対して一括して設定可能な部分的なテンプレートパラメータ情報である。
【0035】
パラメータ評価部102は、設定パラメータ管理装置10から各ハウス環境制御装置に提供されたテンプレートパラメータ情報に関する評価を管理する。評価方法の一形態として、テンプレートパラメータ情報を使用したユーザの累積評価ポイント数、平均評価ポイント数、評価人数、使用実績回数等を当該テンプレートパラメータ情報の評価指数として処理し管理することができる。パラメータ評価部102は、テンプレートパラメータ情報毎に処理された評価指数を当該テンプレートパラメータ情報の識別情報に関連付けて評価・実績管理DB106に格納する。
【0036】
なお、テンプレートパラメータ群のそれぞれには、当該テンプレートパラメータ情報に関する議論を行うことができるフォーラムといった掲示板機能を持たせるとしてもよい。当該掲示板を用いて、議論されたテンプレートパラメータ情報の内容や目的、当該テンプレートパラメータ情報を使用したユーザの使用感想や工夫等のコメントや、生育状態を撮影した撮像画像を添付することが可能になる。
【0037】
栽培結果表示処理部103は、栽培データ管理DB30から提供された栽培データ履歴を、ユーザが視認可能なように表示処理を行う。例えば、縦軸に時間軸、縦軸に単位ステップ時間(例えば、時間単位、日単位、週単位、月単位等)ごとの正規化された強度をプロットしたグラフ表示処理が例示できる。設定パラメータ管理装置10は、例えば、テンプレートパラメータ情報が提供されたハウス環境制御装置20に対応する栽培データ履歴情報をグラフ表示化して、当該テンプレートパラメータ情報を新規に使用するユーザに、
環境データや生育データのヒストリカルグラフとして提供できる。
【0038】
使用実績管理部104は、テンプレートパラメータ情報に関する使用実績を収集して管理する。例えば、使用実績管理部104は、テンプレートパラメータ情報の提供先のハウス環境制御装置20の装置識別情報に関連付けて、使用時期、使用期間、使用回数等を、使用実績を示す情報としてテンプレートパラメータ情報毎に収集する。そして、使用実績管理部104は、テンプレートパラメータ情報の識別情報に関連付けて収集された使用実績を評価・実績管理DB105に格納する。ここで、使用実績管理部104は、テンプレートパラメータ情報毎の評価フォーラムに関する情報(例えば、URL等のアドレス情報)が存在するときには、当該情報を収集することもできる。これにより、評価・実績管理DB106には、吹き出し破線A2で示されるように、テンプレートパラメータ情報毎の、使用実績、評価、コメントや画像、評価フォーラム等のアドレス情報等が管理される。UI部105は、ユーザからの指示要求や操作入力を受け付ける。UI部105を通じて受付けた指示要求や操作入力は、パラメータ管理部101、パラメータ評価部102、栽培結果表示処理部103、使用実績管理部104に引き渡される。
【0039】
図3には、設定パラメータ管理装置10とハウス環境制御装置20のより詳細な機能構成についてのブロック図が例示される。
図3に示すように、栽培データ管理DB30xと関連付けられるハウス環境制御装置20xとしてのハウス環境制御装置20は、設定パラメータ管理装置10と情報のやり取りを行う環境制御IF20aと、ユーザが設定入力を行う入出力装置として機能するUI部20bとを備える。UI部20bとして典型的にはタッチパネルが例示される。但し、UI部20bは、クラウド上に構築されたWEBUIであってもよく、当該クラウドに接続可能な端末を通じたUIであってもよい。また、ハウス環境制御装置20は、環境制御装置20cと、環境センサ群20dと、生体センサ群20eと、環境調整器20fと、を備える。
【0040】
UI部20bを介して設定入力された環境制御パラメータ情報は、環境制御IF20aを通じて設定パラメータ管理装置10へ提供される。ユーザは、例えば、表示装置として機能するタッチパネル20bに表示された環境制御IF20aの案内する案内画面にしたがって、環境制御パラメータ情報を作成する。ここで、環境制御IF20aの案内する案内画面には、例えば、設定パラメータ管理装置10へのテンプレートパラメータ情報の閲覧要求や、ユーザによって作成された環境制御パラメータ情報のテンプレートパラメータへの登録要求、提供されたテンプレートパラメータ情報の使用決定通知を行うためのGUIが含まれる。ユーザは、例えば、テンプレートパラメータへの登録要求を行うためのGUIを操作し、環境制御IF20aの案内する案内画面にしたがって作成された環境制御パラメータ情報を設定パラメータ管理装置10へ出力する。
【0041】
また、ユーザは、環境制御IF20aの案内する案内画面にしたがってGUIを操作し、設定パラメータ管理装置10が管理するテンプレートパラメータ情報の閲覧要求を行うと、例えば、テンプレートパラメータDB107に格納されたテンプレートパラメータ情報の一覧リストが、環境制御IF20aを通じてUI部20bを構成する表示画面に表示出力される。表示画面に表示された一覧リストに対してユーザは、環境制御IF20aの案内する案内画面にしたがってタグ情報等に関連付けされたキーワード等を用いた検索を行う。同様にして、テンプレートパラメータ情報に関連付けされた過去の栽培データ履歴のグラフ情報、テンプレートパラメータ情報に対するコメントや評価、添付された画像等を閲覧する。このような操作を繰り返すことで、ユーザの所望するテンプレートパラメータ情報が選定される。
【0042】
ユーザは、環境制御IF20aの案内する案内画面にしたがってGUIを操作し、選定されたテンプレートパラメータ情報の使用決定通知を設定パラメータ管理装置10へ出力
する。環境制御IF20aを通じて使用決定通知を受け付けた設定パラメータ管理装置10では、テンプレートパラメータ情報に装置-栽培データ紐付け情報が付与されて、要求元のハウス環境制御装置20に提供される。
【0043】
図4には、設定パラメータ管理装置10からハウス環境制御装置20に提供されるテンプレートパラメータ情報の一形態が例示される。
図4においては、装置-栽培データ紐付け情報が付加されたテンプレートパラメータ情報としてのハウス環境制御パラメータ201の構成が例示される。
図4に示すように、ハウス環境制御パラメータ201は、選定されたテンプレートパラメータ情報に対応する設定パラメータx(107f)と、当該設定パラメータx(107f)に関連付けされた評価・実績情報107f1と、当該設定パラメータx(107f)の設定先であるハウス環境制御装置20と栽培データ管理DB30とを紐付けるための装置-栽培データ紐付け情報107f2と、で構成される。
【0044】
設定パラメータ管理装置10は、例えば、使用決定が通知されたテンプレートパラメータ情報の識別情報に基づいてテンプレートパラメータDB107および評価・実績管理DB106を検索し、該当する設定パラメータx(107f)と、評価・実績情報107f1とを取得する。そして、設定パラメータ管理装置10は、要求元のハウス環境制御装置20の装置ハードウェア情報(IPアドレス、ハウス構造情報等)、装置識別番号、ハウス通信情報(栽培データ管理DB30のネットワーク上のアドレス情報、セキュリテイ証明書等)を取得する。このような情報は、例えば、環境制御IF20aを通じて取得される。設定パラメータ管理装置10は、設定パラメータx(106f)と、評価・実績情報107f1と、装置-栽培データ紐付け情報107f2と、を組み合せてハウス環境制御パラメータ201を生成し、要求元のハウス環境制御装置20に提供する。
【0045】
図3に戻り、テンプレートパラメータ情報の提供を受けたハウス環境制御装置20では、ハウス環境制御パラメータ201を構成する設定パラメータx(107f)、評価・実績情報107f1が環境制御IF20aを通じてUI部20bの表示画面に表示される。また、ハウス環境制御パラメータ201を構成する設定パラメータx(107f)のパラメータデータ、装置-栽培データ紐付け情報107f2は、環境制御IF20aを通じて環境制御装置20cに出力される。環境制御装置20cでは、受け付けたパラメータデータに基づいて目標環境(温湿度、CO2濃度、日照量等)を維持・確保するように、環境調整器20fに対する環境命令が出力される。また、環境制御装置20cでは、環境センサ群20dを通じて検出された環境記録、および、生体センサ群20eを通じて検出された植物の生体記録が、受け付けた装置-栽培データ紐付け情報1076f2に基づいて、関連付けされた栽培データ管理DB30xに提供される。
【0046】
なお、UI部20bの表示画面に表示された設定パラメータx(107f)等は、環境制御IF20aの案内する案内画面にしたがってGUIを操作することで、他の複数の農業用ハウスに設定することが可能である。ユーザは、例えば、案内画面にしたがってGUIを操作し、設定パラメータx(107f)等を圃場内に存在する他の複数の農業用ハウスへの一括した設定(一括設定)、あるいは、他の農場用ハウスに設けられたハウス環境制御装置20の装置識別番号を宛先として指定(指定設定)すればよい。複数の農業用ハウスで共通する部分情報(部分パラメータ)の場合も同様である。自棟の設定パラメータx(107f)等に関し、指示された設定(一括設定、指定設定)要求は、環境制御IF20aを通じて設定パラメータ管理装置10に送信される。圃場内の他の農業用ハウスのハウス環境制御装置20には、設定パラメータ管理装置10を通じて、ハウス環境制御装置20xに設定された設定パラメータx(107f)等が指示要求にしたがって設定される。
【0047】
図3に示すように、環境調整器20fは、植物周囲の温度・湿度を調整する加温湿器、
日照量を調整する遮光カーテン、CO2量を調整するCO2発生器、植物周囲の空気の換気を行うための換気窓(天窓、側窓)、植物または土壌に潅水する潅水器、肥料の量を調整する施肥器を含んでいる。この環境調整器20fによって、植物の生育に影響を及ぼす環境の調整が行われる。
【0048】
また、環境センサ群20dには、植物周囲の温度・湿度を測定する温湿度センサ、日照量を測定する日射センサ、CO2量を測定するCO2センサ、土壌中の水分量を測定する土中水分センサ、土壌中の所定成分を測定する土中養分センサ、農業用ハウス外の降雨の有無や降雨量を測定する降雨センサ、農業用ハウス外の風速を測定する風速センサが含まれている。また、生体センサ群20eには、植物内の樹液の流量を測定する樹液流センサや、植物によって吸収された養分の量を測定する吸収養分センサが含まれている。
【0049】
環境センサ群20dで測定された植物の周囲の環境情報である環境記録、および、生体センサ群20eで測定された植物の生体情報である生体記録が環境制御装置20cに出力される。環境制御装置20cから、栽培データ管理DB30には、環境記録(環境データ)と生体記録(生育データ)を合わせた情報に、装置-栽培データ紐付け情報を付与した栽培データ情報が送信される。
【0050】
図5は、本実施例に係る生育環境制御システム1の概略のハード構成を示す模式図である。設定パラメータ管理装置10と、農業用ハウス(21#1~21#n)毎に設けられたハウス環境制御装置(20#1~20#n)と、栽培データ管理DB(30#1~30#n)とは、例えば、クラウドを構成するネットワークNを介して接続されている。以下の説明では、複数の農業用ハウス(21#1~21#n)を総称して「農業用ハウス21」ともいう。なお、
図5では、1台の設定パラメータ管理装置10を例示するが、
図2、
図3に示す各機能要素(パラメータ管理部101、パラメータ評価部102、栽培結果表示処理部103、使用実績管理部104、UI部105、評価・実績管理DB106、テンプレートパラメータDB107)備えるコンピュータ装置が連携して、設定パラメータ管理装置10の機能を提供してもよい。
【0051】
ハウス環境制御装置20には、環境制御IF20a、UI部20b、環境制御装置20cが設けられている。UI部20bと環境制御IF20aとは接続し、環境制御IF20aと環境制御装置20cとは接続する。また、環境制御IF20aおよび環境制御装置20cは、ネットワークNに接続されている。
【0052】
環境制御装置20cには、環境センサ群20d、生体センサ群20eが接続されており、農業用ハウス21内の温湿度、日照、CO2濃度、土中養分量、土中水分量等を測定し、栽培データ情報として栽培データ管理DB30に送信可能となっている。また、環境制御装置20cには、環境調整器20fが接続されており、農業用ハウス21内の温湿度、日照、CO2濃度、肥料量、水分量を制御可能となっている。
【0053】
図6は、本実施例に係る設定パラメータ管理装置10のハードウェア構成図の一例である。設定パラメータ管理装置10は、プロセッサ11、主記憶部12、補助記憶部13、入力部14、出力部15、外部インタフェース16、通信インタフェース17、バス18を含んで構成されるコンピュータ装置である。
【0054】
プロセッサ11は、CPUやDSP等である。主記憶部12はROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等から構成される。補助記憶部13は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、リムーバブルメディア等を含む。リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリやSDカード等のフラッシュメモリ、あるいは、CD-ROMやDVDディスク、ブルー
レイディスクのようなディスク記録媒体である。補助記憶部13には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。プロセッサ11は、補助記憶部13に格納された各種プログラム等を主記憶部12の作業領域に読み出して実行し、各種プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、機能が実現される。
【0055】
ただし、一部または全部の機能部はASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)のようなハードウェア回路によって実現されてもよい。また、設定パラメータ管理装置10は必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、互いに連携する複数台のコンピュータ装置によって構成されてもよい。
【0056】
入力部14は、キーボード、マウスやマイク等を含み、ユーザからの入力操作を受け付ける。出力部15は、ディスプレイやスピーカ等を含み、ユーザに対して情報を提供する。外部インタフェース(図ではI/Fと表記)16は、種々の外部装置と接続するためのインタフェースである。通信インタフェース17は設定パラメータ管理装置10をネットワークNに接続するためのインタフェースである。通信インタフェース17は、ネットワークNとの接続方式に応じて適宜の構成を採用することができる。また、バス18は、設定パラメータ管理装置10の各部を接続する信号の伝送路である。なお、ハウス環境制御装置20、栽培データ管理DB30のハード構成については、実質的に設定パラメータ管理装置10のハード構成と類似であるので、ここでは説明を割愛する。
【0057】
次に、設定パラメータ管理装置10におけるテンプレートパラメータ情報の登録処理を説明する。
図7は、設定パラメータ管理装置10で実行されるテンプレートパラメータ情報の登録処理の一例を示すフローチャートである。本フローは、例えば、設定パラメータ管理装置10のプロセッサ11が補助記憶部13に記憶されたプログラムを実行することで提供される。本フローの処理の開始は、ハウス環境制御装置20から送信された環境制御パラメータ情報のテンプレートパラメータ情報への登録要求の受け付けのときが例示できる。処理の開始後、ステップS101において、受け付けた環境制御パラメータ情報が取得されると、処理はステップS102に進む。ステップS102においては、環境制御パラメータ情報に含まれる、テンプレートパラメータ情報の構成要素(パラメータデータ、設定名称、作成者、TAG情報)が抽出される。抽出されたテンプレートパラメータ情報の構成要素は、ステップS104に引き渡され、処理はステップS103に進む。ステップS103においては、環境制御パラメータ情報に含まれる、使用実績、評価情報、コメント情報、画像情報といったテンプレートパラメータ情報の構成要素が抽出される。なお、環境制御パラメータ情報にこれらの情報が含まれない場合もある。例えば、ユーザが他の環境制御パラメータ情報を参照せずに、独自に作成するといったようなケースである。このようなケースでは、使用実績や評価情報等は含まれないことが想定される。このため、ステップS103では、環境制御パラメータ情報に含まれるテンプレートパラメータ情報の構成要素に限定して抽出してもよい。また、環境制御パラメータ情報に含まれるテンプレートパラメータ情報の構成要素(使用実績、評価情報、コメント情報、画像情報)が存在しないときにはステップS103の処理を終了してステップS104に進んでもよい。ステップS103の処理で抽出された、テンプレートパラメータ情報の構成要素は、ステップS105に引き渡され、処理はステップS104に進む。
【0058】
ステップS104においては、ステップS102で抽出された情報が、当該情報に対応するテンプレートパラメータ情報の識別情報に関連付けされてテンプレートパラメータDB107に格納される。そして、処理はステップS105に進み、ステップS103で抽出された情報が、ステップS104の処理で関連付けされたテンプレートパラメータ情報の識別情報に関連付けされて評価・実績管理DB106に格納される。ステップS105
の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0059】
次に、設定パラメータ管理装置10における、使用決定されたテンプレートパラメータに関する情報の提供処理を説明する。
図4を用いて説明したように、テンプレートパラメータ情報は、使用先のハウス環境制御装置20の装置情報と栽培データ管理DB30とを紐付ける装置-栽培データ紐付け情報が組み合わされたハウス環境制御パラメータとして提供される。
【0060】
図8は、使用決定されたテンプレートパラメータに関する情報(ハウス環境制御パラメータ)の提供処理の一例を示すフローチャートである。本フローは、例えば、設定パラメータ管理装置10のプロセッサ11が補助記憶部13に記憶されたプログラムを実行し、ハウス環境制御装置20と適宜に通信を行いながら提供される。本フローの処理の開始は、ハウス環境制御装置20からの、ユーザによって選択されたテンプレートパラメータ情報に対する使用決定通知の受け付けのときが例示できる。使用決定通知には、テンプレートパラメータ情報の識別情報が含まれる。処理の開始後、ステップS111において、使用決定通知されたテンプレートパラメータ情報の識別情報が取得されると、処理はステップS112に進む。ステップS112においては、テンプレートパラメータDB107に格納された、識別情報に対応する情報(パラメータデータ、設定名称、作成者、TAG情報)が取得されると、処理はステップS113に進む。ステップS113においては、評価・実績管理DB106に格納された、識別情報に対応する情報(使用実績、評価情報、コメント情報、画像情報)が取得されると、処理はステップS114に進む。そして、ステップS114においては、テンプレートパラメータ情報を使用する使用先の、装置ハードウェア情報(IPアドレス、ハウス構造情報等)、装置識別番号、ハウス通信情報(栽培データ管理DB30のネットワーク上のアドレス情報、セキュリテイ証明書等)が取得される。ステップS114の終了後、処理はステップS115に進む。ステップS115においては、ステップS112からS114で取得された情報を併せて、テンプレートパラメータに関する情報(ハウス環境制御パラメータ)が生成される。そして、処理はステップS116に進み、生成されたテンプレートパラメータに関する情報が使用先に送信される。ステップS116の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0061】
次に、設定パラメータ管理装置10における、テンプレートパラメータに関する情報の他棟への設定処理を説明する。
図9は、テンプレートパラメータに関する情報の他棟への設定処理の一例を示すフローチャートである。本フローは、例えば、設定パラメータ管理装置10のプロセッサ11が補助記憶部13に記憶されたプログラムを実行し、複数のハウス環境制御装置20と適宜に通信を行いながら提供される。本フローの処理の開始は、一つのハウス環境制御装置20からの、テンプレートパラメータに関する情報の、他棟への設定要求の受け付けのときが例示できる。他棟への設定要求には、一括設定または設定対象先の装置識別情報が含まれる。また、
図2を用いて説明したように、テンプレートパラメータに関する情報には、テンプレートパラメータDB107に構築された、TAG情報によって分類されたテンプレートパラメータ群(各設定パラメータ、特定状況パラメータ、部分パラメータ等)が含まれる。
【0062】
処理の開始後、ステップS121において、他棟への設定要求の種別(一括設定または設定先の装置識別情報を宛先とする宛先指定)が判定される。判定の結果が、一括指定の場合には(ステップS121“一括”)、処理はステップS122に進む。一方、判定の結果が、一括指定の場合には(ステップS121“宛先指定”)、処理はステップS123に進む。
【0063】
ステップS122においては、一括指定の範囲に含まれる複数のハウス環境制御装置20に関する装置識別情報が取得される。このような一括指定の範囲に含まれるハウス環境
制御装置の装置識別情報は、予め設定パラメータ管理装置10に登録されている。ステップS122の処理では、予め登録された一括指定の範囲から、他棟への設定要求を行ったハウス環境制御装置20の装置識別情報を除外した、他のハウス環境制御装置20の装置識別情報が取得される。ステップS122の処理後、処理はステップS124に進む。ステップS123の処理では、宛先指定されたハウス環境制御装置20の装置識別情報が取得される。ステップS123の処理後、処理はステップS124に進む。
【0064】
ステップS124においては、装置識別情報毎の、装置-栽培データ紐付け情報が取得される。装置-栽培データ紐付け情報の取得は、
図8のステップS114と同様の処理によって行われる。すなわち、他棟への設定要求が一括指定されたときには、他棟への設定要求を行ったハウス環境制御装置20の装置識別情報を除外した、他のハウス環境制御装置20に関する装置-栽培データ紐付け情報が取得される。また、他棟への設定要求が宛先指定されたときには、当該宛先に対応するハウス環境制御装置20の装置-栽培データ紐付け情報が取得される。ステップS124の処理後、処理はステップS125に進む。
【0065】
ステップS125においては、装置識別情報毎の、テンプレートパラメータに関する情報(ハウス環境制御パラメータ)が生成される。テンプレートパラメータに関する情報の生成は、
図8のステップS115と同様の処理によって行われる。すなわち、他棟への設定要求が一括指定されたときには、他棟への設定要求を行ったハウス環境制御装置20の装置識別情報を除外した、他のハウス環境制御装置20に対するテンプレートパラメータに関する情報が生成される。また、他棟への設定要求が宛先指定されたときには、当該宛先に対応するハウス環境制御装置20に対するテンプレートパラメータに関する情報が生成される。なお、ステップS125で生成されるテンプレートパラメータに関する情報は、特定状況パラメータや、複数の農業用ハウスに対して共通して設定可能な部分パラメータを含む。ステップS125の処理後、処理はステップS126に進む。ステップS126においては、生成されたテンプレートパラメータに関する情報が装置識別情報に対応する使用先に送信される。ステップS126の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0066】
以上、説明したように、本実施例における設定パラメータ管理装置10は、ハウス環境制御装置20から登録要求された環境制御パラメータ情報に基づいて、複数のハウス環境制御装置20が使用可能な共通のパラメータであるテンプレートパラメータ情報を生成する構成とした。そして、生成されたテンプレートパラメータ情報の構成要素をテンプレートパラメータDB107、および、評価・実績管理DB106に保持する構成とした。これにより、設定パラメータ管理装置10は、農業用ハウス内の環境を植物の生育状態に合わせて適切に管理するための個々のノウハウを、テンプレートパラメータ情報として共有化して保持することが可能になる。例えば、主として個々のユーザの裁量に任せていた農業用ハウスに設定された設定環境のデータ管理を一元化できる。また、特定の状況、低温や高温、日照不足といった植物の生育を阻害するような状況で設定された過去の設定環境に関する情報を共有化された資産として活用することが可能になる。
【0067】
また、本実施例においては、テンプレートパラメータ情報には、使用実績、評価情報、コメント情報、画像情報といった構成要素を含む構成とした。そして、テンプレートパラメータ情報を使用した農業用ハウスに関する環境データ(温度、湿度、CO2濃度、照度、降雨(降雨の有無、降雨量)、風速等)や、植物の光合成量等の成長の度合いを示す生育データ(植物によって吸収された養分の量、植物内の樹液の流量等)の履歴を栽培データ管理DB30に蓄積する構成とした。栽培データ管理DB30に蓄積された環境データや生育データは、ヒストリカルグラフとしてユーザに提供される。これにより、テンプレートパラメータ情報の使用選定において、当該テンプレートパラメータ情報の使用を決定するための客観的な指標をユーザに提供することが可能になる。
【0068】
さらに、本実施例においては、一つのハウス環境制御装置20が使用するテンプレートパラメータ情報を、一括設定または設定先の装置識別情報を宛先とする宛先指定の形態で他のハウス環境制御装置20に設定する構成とした。一つのハウス環境制御装置20から他のハウス環境制御装置20に設定されるテンプレートパラメータ情報には、特定状況パラメータや、複数の農業用ハウスに対して共通して設定可能な部分パラメータが含まれる。これにより、一つの農業用ハウスに設定した設定環境と同じ設定環境を他の農業用ハウスに一括して、あるいは、宛先を指定して設定することが可能になる。また、複数の農業用ハウスに共通する部分情報を一括して、あるいは、宛先を指定して設定することが可能になる。本実施例によれば、圃場内に構築された農業用ハウスの数量が相対的に多い場合であっても、環境制御を行うための設定作業に係る負担を軽減することが可能になる。
【0069】
なお、本発明に係る生育環境制御システムは、上記の実施例で示した構成には限定されない。上記の実施例の構成は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【0070】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
農業用ハウスで栽培される植物の栽培時における周囲環境を制御するハウス環境制御装置(20)と、
前記ハウス環境制御装置(20)に用いられる前記周囲環境の制御に関する環境パラメータ情報を一括で管理するパラメータ管理装置(10)と、を備え、
前記パラメータ管理装置(10)は、
前記環境パラメータ情報と、前記環境パラメータ情報の内容または属性に関連し、該環境パラメータ情報を特定する特定情報とを含むテンプレートパラメータ情報を生成することと、
前記生成されたテンプレートパラメータ情報を記憶部(105、106)に保持することと、
前記記憶部に保持された前記テンプレートパラメータ情報を前記ハウス環境制御装置からの使用の要求に応じて提供することと、を実行する管理部(101、102、104)、
を備えることを特徴とする生育環境制御システム(1)。
【符号の説明】
【0071】
1 :生育環境制御システム
10 :設定パラメータ管理装置(パラメータ管理装置)
101 :パラメータ管理部(管理部)
102 :パラメータ評価部(管理部)
103 :栽培結果表示処理部(表示処理部)
104 :使用実績管理部(管理部)
105 :UI部(管理部)
106 :評価・実績管理DB(記憶部)
107 :テンプレートパラメータDB(記憶部)
20 :ハウス環境制御装置
20a :環境制御IF
20b :UI部
20c :環境制御装置
20d :環境センサ群
20e :生体センサ群
20f :環境調整器
30 :栽培データ管理DB(データ記録装置)