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  • 特許-二輪車用バイアスタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】二輪車用バイアスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20240416BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240416BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240416BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20240416BHJP
   B60C 9/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60C11/01 A
B60C1/00 B
B60C11/00 D
B60C13/00 E
B60C9/06 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020026433
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130381
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】一柳 豊
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273422(JP,A)
【文献】特開昭60-094804(JP,A)
【文献】特開2001-277824(JP,A)
【文献】特開2013-139191(JP,A)
【文献】特開2014-084099(JP,A)
【文献】特開平08-216608(JP,A)
【文献】特開2000-335212(JP,A)
【文献】特開2009-298387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 9/06
B60C 11/00-11/01
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス構造のカーカスを含む二輪車用バイアスタイヤであって、
トレッド部を形成するトレッドゴムと、サイドウォール部を形成するサイドウォールゴムとを含み、
前記トレッドゴムのタイヤ軸方向の端部は、界面を介して、前記サイドウォールゴムに接続されており、
前記界面のタイヤ軸方向の外端は、前記トレッド部のタイヤ軸方向の端であるトレッド端よりもタイヤ半径方向内側かつタイヤ外表面上に位置しており、
前記界面のタイヤ軸方向の内端は、前記トレッド端よりもタイヤ半径方向外側に位置しており、
前記界面は、タイヤ半径方向外側に凸で湾曲している、
二輪車用バイアスタイヤ。
【請求項2】
バイアス構造のカーカスを含む二輪車用バイアスタイヤであって、
トレッド部を形成するトレッドゴムと、サイドウォール部を形成するサイドウォールゴムとを含み、
前記トレッドゴムのタイヤ軸方向の端部は、界面を介して、前記サイドウォールゴムに接続されており、
前記界面のタイヤ軸方向の外端は、前記トレッド部のタイヤ軸方向の端であるトレッド端よりもタイヤ半径方向内側かつタイヤ外表面上に位置しており、
前記界面のタイヤ軸方向の内端は、前記トレッド端よりもタイヤ半径方向外側に位置しており、
前記サイドウォールゴムの70℃における損失正接tanδSは、前記トレッドゴムの70℃における損失正接tanδTよりも小さい、
二輪車用バイアスタイヤ。
【請求項3】
バイアス構造のカーカスを含む二輪車用バイアスタイヤであって、
トレッド部を形成するトレッドゴムと、サイドウォール部を形成するサイドウォールゴムとを含み、
前記トレッドゴムのタイヤ軸方向の端部は、界面を介して、前記サイドウォールゴムに接続されており、
前記界面のタイヤ軸方向の外端は、前記トレッド部のタイヤ軸方向の端であるトレッド端よりもタイヤ半径方向内側かつタイヤ外表面上に位置しており、
前記界面は、タイヤ半径方向内側に凸で湾曲しており、
前記サイドウォールゴムの70℃における損失正接tanδSは、前記トレッドゴムの70℃における損失正接tanδTよりも小さい、
二輪車用バイアスタイヤ。
【請求項4】
バイアス構造のカーカスを含む二輪車用バイアスタイヤであって、
トレッド部を形成するトレッドゴムと、サイドウォール部を形成するサイドウォールゴムとを含み、
前記トレッドゴムのタイヤ軸方向の端部は、界面を介して、前記サイドウォールゴムに接続されており、
前記界面のタイヤ軸方向の外端は、前記トレッド部のタイヤ軸方向の端であるトレッド端よりもタイヤ半径方向内側かつタイヤ外表面上に位置しており、
前記界面は、タイヤ半径方向外側に凸で湾曲しており、
前記サイドウォールゴムの70℃における損失正接tanδSは、前記トレッドゴムの70℃における損失正接tanδTよりも小さい、
二輪車用バイアスタイヤ。
【請求項5】
前記界面のタイヤ軸方向の内端は、前記界面の前記外端よりもタイヤ半径方向外側に位置している、請求項3又は4に記載の二輪車用バイアスタイヤ。
【請求項6】
前記界面のタイヤ軸方向の内端は、前記トレッド端よりもタイヤ半径方向外側に位置している、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の二輪車用バイアスタイヤ。
【請求項7】
前記界面の前記外端と前記トレッド端との間のタイヤ半径方向の距離は、20mm以下である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の二輪車用バイアスタイヤ。
【請求項8】
前記界面の前記外端のビードベースラインからのタイヤ半径方向の高さHoは、前記トレッド端の前記ビードベースラインからのタイヤ半径方向の高さHSの60%以上である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の二輪車用バイアスタイヤ。
【請求項9】
前記サイドウォールゴムは、ゴム成分100質量部に対する天然ゴムの比率が30質量部以上である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の二輪車用バイアスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアス構造のカーカスを含む二輪車用バイアスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイアス構造のカーカスを含む二輪車用バイアスタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1は、カーカスラインの傾斜角度を特定することで、軽量化と操縦安定性とを両立した自動二輪車用バイアスタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-185511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の二輪車用バイアスタイヤは、トレッド部からサイドウォール部にかけて同一のゴムが用いられているため、旋回走行時の操縦安定性能に更なる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、旋回走行時の操縦安定性能を向上し得る二輪車用バイアスタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、バイアス構造のカーカスを含む二輪車用バイアスタイヤであって、トレッド部を形成するトレッドゴムと、サイドウォール部を形成するサイドウォールゴムとを含み、前記トレッドゴムのタイヤ軸方向の端部は、界面を介して、前記サイドウォールゴムに接続されており、前記界面のタイヤ軸方向の外端は、前記トレッド部のタイヤ軸方向の端であるトレッド端よりもタイヤ半径方向内側かつタイヤ外表面上に位置していることを特徴とする。
【0007】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、前記界面のタイヤ軸方向の内端は、前記界面の前記外端よりもタイヤ半径方向外側に位置しているのが望ましい。
【0008】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、前記界面のタイヤ軸方向の内端は、前記トレッド端よりもタイヤ半径方向外側に位置しているのが望ましい。
【0009】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、前記界面の前記外端と前記トレッド端との間のタイヤ半径方向の距離は、20mm以下であるのが望ましい。
【0010】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、前記界面は、タイヤ半径方向内側に凸で湾曲しているのが望ましい。
【0011】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、前記界面は、タイヤ半径方向外側に凸で湾曲しているのが望ましい。
【0012】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、前記界面の前記外端のビードベースラインからのタイヤ半径方向の高さHoは、前記トレッド端の前記ビードベースラインからのタイヤ半径方向の高さHSの60%以上であるのが望ましい。
【0013】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、前記サイドウォールゴムの70℃における損失正接tanδSは、前記トレッドゴムの70℃における損失正接tanδTよりも小さいのが望ましい。
【0014】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、前記サイドウォールゴムは、ゴム成分100質量部に対する天然ゴムの比率が30質量部以上であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二輪車用バイアスタイヤにおいて、トレッドゴムのタイヤ軸方向の端部は、界面を介して、サイドウォールゴムに接続されており、前記界面のタイヤ軸方向の外端は、トレッド部のタイヤ軸方向の端であるトレッド端よりもタイヤ半径方向内側かつタイヤ外表面上に位置している。このような二輪車用バイアスタイヤは、トレッドゴムとサイドウォールゴムとにより、旋回走行時の操縦安定性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の二輪車用バイアスタイヤの一実施形態を示すタイヤ子午線断面図である。
図2】他の実施形態の二輪車用バイアスタイヤのタイヤ子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の二輪車用バイアスタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」ということがある。)の正規状態のタイヤ子午線断面図である。
【0018】
ここで、「正規状態」は、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧となるように調整され、しかも無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0019】
また、「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0020】
また、「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2の両端からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3と、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に位置する一対のビード部4とを含んでいる。一対のビード部4には、例えば、それぞれ、ビードコア5が埋設されている。
【0022】
トレッド部2の外表面であるトレッド面2sは、例えば、タイヤ赤道Cからトレッド端Teまで、タイヤ半径方向外側に凸となる円弧状に湾曲して延びている。トレッド端Te間のタイヤ軸方向の直線幅であるトレッド幅Wtは、タイヤ最大幅をなしているのが望ましい。
【0023】
このようなタイヤ1には、大きなキャンバ角を付与して旋回することができる。ここで、トレッド端Teは、トレッド部2のタイヤ軸方向の端であり、タイヤ赤道Cは、トレッド端Te間のタイヤ軸方向の中心である。
【0024】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るバイアス構造のカーカス6を含んでいる。カーカス6は、一対のビードコア5間に跨る本体部6aと、本体部6aに連なりかつビードコア5の周りで折り返される折返し部6bとを含んでいる。
【0025】
バイアス構造のカーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のカーカスプライ6A、6Bを含んでいる。カーカスプライ6A、6Bは、例えば、それぞれ、タイヤ赤道Cに対して30~60°の角度で傾斜配列されたカーカスコードを含んでいる。カーカスプライ6A、6Bは、各カーカスコードがプライ間で互いに交差するように、カーカスコードの傾斜の向きを逆向きに配されるのが望ましい。
【0026】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2を形成するトレッドゴム7と、サイドウォール部3を形成する一対のサイドウォールゴム8とを含んでいる。本実施形態のトレッドゴム7のタイヤ軸方向の端部7aは、界面9を介して、サイドウォールゴム8に接続されている。すなわち、本実施形態のトレッドゴム7とサイドウォールゴム8とは、互いに異なるゴムから形成されている。
【0027】
このようなタイヤ1は、トレッドゴム7としてグリップ性能に優れたゴムを用い、サイドウォールゴム8として吸収性能に優れたゴムを用いることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、旋回走行時の操縦安定性能を向上させることができる。
【0028】
本実施形態の界面9のタイヤ軸方向の外端9aは、トレッド部2のタイヤ軸方向の端であるトレッド端Teよりもタイヤ半径方向内側かつタイヤ外表面上に位置している。このようなタイヤ1は、大きなキャンバ角を付与して旋回する場合にも、常にトレッドゴム7が接地しており、サイドウォールゴム8が接地するおそれがない。このため、本実施形態のタイヤ1は、旋回走行時にサイドウォールゴム8が接地して急にグリップ性能が変化することがなく、操縦安定性能を向上させることができる。
【0029】
界面9の外端9aとトレッド端Teとの間のタイヤ半径方向の距離L1は、好ましくは、 20mm以下である。距離L1が20mm以下であることで、界面9の外端9aを旋回走行時の歪が小さいタイヤ外表面上に位置させることができ、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。このような観点から、距離L1は、より好ましくは、15mm以下である。
【0030】
界面9の外端9aのビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の高さHoは、トレッド端TeのビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の高さHSの、好ましくは、60%以上、より好ましくは70%以上である。このようなタイヤ1は、界面9の外端9aを旋回走行時の歪が小さいタイヤ外表面上に位置させることができ、耐久性能を向上させることができる。ここで、ビードベースラインBLは、タイヤ1が装着される正規リムのリム径を規定する線に相当するものである。
【0031】
界面9の外端9aの高さHoは、トレッド端Teの高さHSの、好ましくは、98%以下、より好ましくは95%以下である。このようなタイヤ1は、大きなキャンバ角を付与して旋回する場合にも、サイドウォールゴム8が接地するおそれがなく、タイヤ1の旋回走行時の操縦安定性能を向上させることができる。
【0032】
本実施形態の界面9のタイヤ軸方向の内端9bは、界面9の外端9aよりもタイヤ半径方向外側に位置している。このようなタイヤ1は、界面9付近に繰り返し荷重が作用したとしても、界面9に沿ってクラックが生じるおそれが小さく、耐久性能を向上させることができる。
【0033】
界面9の外端9aと内端9bとの間のタイヤ半径方向の距離L2は、好ましくは、30mm以下である。距離L2が30mm以下であることで、界面9の外端9aを旋回走行時の歪が小さいタイヤ外表面上に位置させることができ、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。このような観点から、距離L2は、より好ましくは、20mm以下である。
【0034】
本実施形態の界面9のタイヤ軸方向の内端9bは、トレッド端Teよりもタイヤ半径方向外側に位置している。このようなタイヤ1は、界面9付近に繰り返し荷重が作用したとしても、界面9に沿ってクラックが生じるおそれがより小さく、耐久性能をより向上させることができる。
【0035】
界面9の内端9bのビードベースラインBLからのタイヤ半径方向の高さHiは、トレッド端Teの高さHSの、好ましくは、105%以上、より好ましくは110%以上である。このようなタイヤ1は、界面9に沿ってクラックが生じるおそれを小さくすることができ、耐久性能を向上させることができる。
【0036】
界面9の内端9bの高さHiは、トレッド端Teの高さHSの、好ましくは、130%以下、より好ましくは120%以下である。このようなタイヤ1は、界面9の外端9aを旋回走行時の歪が小さいタイヤ外表面上に位置させることができ、耐久性能を向上させることができる。
【0037】
本実施形態の界面9は、タイヤ半径方向内側に凸で湾曲している。このような界面9は、トレッドゴム7の端部7a付近におけるサイドウォールゴム8の比率が小さいので、大きなキャンバ角を付与して旋回する場合のタイヤ1の操縦安定性能を向上させることができる。
【0038】
タイヤ1は、例えば、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に、補強層10が配されていてもよい。補強層10は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚の補強プライ10Aを含んでいる。この場合の界面9の内端9bは、補強層10上に位置している。このようなタイヤ1は、高速走行時の変形を抑制し、高速耐久性能を向上させることができる。
【0039】
本実施形態のサイドウォールゴム8の70℃における損失正接tanδSは、トレッドゴム7の70℃における損失正接tanδTよりも小さい。このようなサイドウォールゴム8は、吸収性能に優れており、タイヤ1の乗り心地性能を向上させることができる。ここで、70℃における損失正接tanδは、JIS-K6394の規定に準じ、測定温度:70℃、初期歪み:10%、振幅:±1%、周波数:10Hz、変形モード:引張、の条件にて「粘弾性スペクトロメータ」を用いて測定した値である。
【0040】
サイドウォールゴム8は、ゴム成分100質量部に対する天然ゴムの比率が、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、40質量部以上である。このようなサイドウォールゴム8は、クラックの発生を抑制し、タイヤ1の耐久性能を向上させることができる。
【0041】
図2は、他の二輪車用バイアスタイヤ11(以下、単に「タイヤ11」ということがある。)の正規状態のタイヤ子午線断面図である。上述の実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号が付され、その説明が省略される。
【0042】
図2に示されるように、この実施形態のタイヤ11は、トレッド部2と、トレッド部2の両端からタイヤ半径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3と、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に位置する一対のビード部4とを含んでいる。一対のビード部4には、例えば、それぞれ、ビードコア5が埋設されている。タイヤ11は、上述のタイヤ1と同様、バイアス構造のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向の外側かつトレッド部2の内部に配された補強層10とを含むのが望ましい。
【0043】
この実施形態のタイヤ11は、トレッド部2を形成するトレッドゴム7と、サイドウォール部3を形成する一対のサイドウォールゴム8とを含んでいる。この実施形態のトレッドゴム7のタイヤ軸方向の端部7aは、界面12を介して、サイドウォールゴム8に接続されている。
【0044】
この実施形態の界面12のタイヤ軸方向の外端12aは、トレッド端Teよりもタイヤ半径方向内側かつタイヤ外表面上に位置している。このようなタイヤ11は、大きなキャンバ角を付与して旋回する場合にも、常にトレッドゴム7が接地しており、サイドウォールゴム8が接地するおそれがない。このため、この実施形態のタイヤ11は、上述のタイヤ1と同様、旋回走行時にサイドウォールゴム8が接地して急にグリップ性能が変化することがなく、操縦安定性能を向上させることができる。
【0045】
この実施形態の界面12のタイヤ軸方向の内端12bは、界面12の外端12aよりもタイヤ半径方向外側に位置している。この実施形態の界面12の内端12bは、トレッド端Teよりもタイヤ半径方向外側に位置している。このようなタイヤ11は、界面12付近に繰り返し荷重が作用したとしても、界面12に沿ってクラックが生じるおそれが小さく、耐久性能を向上させることができる。
【0046】
この実施形態の界面12は、タイヤ半径方向外側に凸で湾曲している。このような界面9は、トレッドゴム7の端部7a付近におけるサイドウォールゴム8の比率が大きいので、大きなキャンバ角を付与して旋回する場合のタイヤ11の乗り心地性能を向上させることができる。
【0047】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例
【0048】
図1及び図2に示される基本構造をなす二輪車用バイアスタイヤが、実施例として、表1の仕様に基づいて試作された。また、比較例として、トレッドゴムとサイドウォールゴムとが一体的に形成された二輪車用バイアスタイヤが試作された。これらの試作タイヤを用いて、操縦安定性能、乗り心地性能及び耐久性能がテストされた。各試作タイヤの共通仕様及びテスト方法は、以下のとおりである。
【0049】
<共通仕様>
タイヤサイズ : 130/70-13M/C
リムサイズ : 13×3.50MT
空気圧 : 225kPa
【0050】
<操縦安定性能>
試作タイヤを後輪に装着した中型スクーターを用いて、テストライダーがテストコースを周回したときのグリップ性能、接地感、旋回時の過渡特性から、試作タイヤの旋回走行時の操縦安定性能が、テストライダーの官能により総合的に評価された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きいほど、操縦安定性能に優れていることを示す。
【0051】
<乗り心地性能>
試作タイヤを後輪に装着した中型スクーターを用いて、テストライダーがテストコースを周回したときの乗り心地性能が、テストライダーの官能により評価された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きいほど、乗り心地性能に優れていることを示す。
【0052】
<耐久性能>
オゾン劣化処理として濃度50pphmのオゾン室に3週間投入した試作タイヤを、ドラム試験機に装着し、3.29kNの荷重を付加して10000km走行させたときの、サイドウォール部のクラックの発生率から耐久性能が評価された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きいほど、クラックが少なく、耐久性能に優れていることを示す。
【0053】
テストの結果が、表1に示される。
【表1】
【0054】
テストの結果、実施例の二輪車用バイアスタイヤは、比較例に対して、操縦安定性能に優れており、また、各性能の合計で評価される総合性能に関しても良好であった。このため、実施例の二輪車用バイアスタイヤは、旋回走行時の操縦安定性能が向上していることが確認された。
【符号の説明】
【0055】
1 二輪車用バイアスタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
6 カーカス
7 トレッドゴム
7a 端部
8 サイドウォールゴム
9 界面
9a 外端
図1
図2