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  • 特許-溶解炉湯面検出方法及び装置 図1
  • 特許-溶解炉湯面検出方法及び装置 図2
  • 特許-溶解炉湯面検出方法及び装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】溶解炉湯面検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 37/00 20060101AFI20240416BHJP
   B22D 43/00 20060101ALI20240416BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240416BHJP
   F27D 21/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B22D37/00 C
B22D43/00 A
F27D21/00 N
F27D21/00 G
F27D21/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020029500
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133377
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 朋孝
(72)【発明者】
【氏名】森田 良佑
(72)【発明者】
【氏名】去渡 隆宏
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-013129(JP,A)
【文献】特開2009-287097(JP,A)
【文献】特開平10-080762(JP,A)
【文献】特開昭53-004708(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105652(WO,A1)
【文献】特開2018-115874(JP,A)
【文献】特開平08-062166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 37/00
B22D 43/00
F27D 21/00
F27D 21/02
G01J 5/00
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解炉の湯面に浮上するノロを検出する溶解炉湯面検出方法であって、
前記溶解炉の湯面の波の鉛直方向の変化を検出する検出ステップと、
前記湯面の波の鉛直方向の変化が小さい部分をノロと判定する判定ステップと、を備える溶解炉湯面検出方法。
【請求項2】
前記検出ステップは、前記湯面の温度により前記湯面の波の鉛直方向の変化を検出する請求項1に記載の溶解炉湯面検出方法。
【請求項3】
前記検出ステップは、赤外線カメラにより前記湯面の温度を検出する請求項2に記載の溶解炉湯面検出方法。
【請求項4】
前記検出ステップは、所定位置から前記湯面までの距離により前記湯面の波の鉛直方向の変化を検出する請求項1に記載の溶解炉湯面検出方法。
【請求項5】
溶解炉の湯面に浮上するノロを検出する溶解炉湯面検出装置であって、
前記溶解炉の湯面の波の鉛直方向の変化を検出する検出部と、
前記湯面の波の鉛直方向の変化が小さい部分をノロと判定する制御部と、を備える溶解炉湯面検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解炉湯面検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解炉内の溶湯(溶融金属)に生ずるノロ(金属酸化物等の不純物、スラグ)を除去するノロ取り装置が知られており、ノロ取り装置は、溶解炉内の溶湯とノロを識別し、ノロを除去する。
【0003】
特許文献1には、第1撮像手段により、溶融金属を収容する容器内の湯面を鉛直方向上方から撮像して得られる撮像画像の画像上の輝度に基づいて画素毎のスラグの厚みを算出し、算出した画素毎の厚みを積算してスラグの体積を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/105652号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように輝度に基づいて溶湯とノロを識別する場合、輝度を測定するときに、排煙や金属ヒュームにより阻害されることがあり、湯面の輝度を安定して測定することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、排煙や金属ヒュームがある場合でも、安定してノロと溶湯を識別することができる溶解炉湯面検出方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、溶解炉の湯面に浮上するノロを検出する溶解炉湯面検出方法であって、前記溶解炉の湯面の波の鉛直方向の変化を検出する検出ステップと、前記湯面の波の鉛直方向の変化が小さい部分をノロと判定する判定ステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明によれば、排煙や金属ヒュームがある場合でも、安定してノロと溶湯を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係るノロ取り装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るノロ取り装置の溶解炉の湯面の溶湯の部分とノロの部分の温度変化を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係るノロ取り装置の溶解炉の湯面の画像を示す図であり、図3(a)は、光学式カメラで撮影した画像であり、図3(b)は、本実施例の方法により作成した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る溶解炉湯面検出方法は、溶解炉の湯面に浮上するノロを検出する溶解炉湯面検出方法であって、溶解炉の湯面の変化を検出する検出ステップと、湯面の変化が小さい部分をノロと判定する判定ステップと、を備えるよう構成されている。
【0011】
これにより、本発明の一実施の形態に係る溶解炉湯面検出方法は、排煙や金属ヒュームがある場合でも、安定してノロと溶湯を識別することができる。
【実施例
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係るノロ取り装置について詳細に説明する。
図1において、本発明の一実施例に係る溶解炉湯面検出装置を搭載したノロ取り装置1は、検出部としての赤外線カメラ2と、表示部3と、産業用ロボット4と、制御部5と、を含んで構成される。
【0013】
赤外線カメラ2は、撮像対象物が放射している赤外線を検出して、画像化する。赤外線カメラ2は、赤外線センサーである複数のピクセルを2次元アレイ状に配置し、撮像対象物からの赤外線を各ピクセルで検出する。
【0014】
赤外線カメラ2は、高温の溶湯が収容された溶解炉100の湯面を鉛直方向上方から撮像できるように、梁101に設置されている。
【0015】
表示部3は、液晶表示装置などによって構成され、制御部5が生成した、赤外線カメラ2の撮像した画像や、検出結果などを表示する。
【0016】
産業用ロボット4は、制御部5の制御により、溶解炉100に収容された高温の溶湯からノロを除去する。
【0017】
制御部5は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、ハードディスク装置と、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0018】
制御部5のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部5として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、制御部5として機能する。
【0019】
本実施例において、制御部5は、赤外線カメラ2の検出した温度の情報に基づいて、溶解炉100の湯面のノロと溶湯を識別する。
【0020】
溶解完了直後の溶湯面は波打っているため、熱放射角度が変動し、定点で赤外線を受ける赤外線カメラ2では温度が変化するデータが得られる(熱放射率は角度により異なる)。ノロは、溶湯面上を波打つことなく浮遊しているので、一定の熱放射率となる。
【0021】
すなわち、制御部5は、温度の変化を見ることで、湯面の変化(鉛直方向の動き)を検出することができ、湯面の変化が激しい部分は溶湯と判定し、湯面の変化が少ない部分はノロと判定する。
【0022】
なお、本実施例においては湯面の温度の変化により湯面の変化を検出したが、定点から湯面までの距離を検出する距離センサにより湯面の変化を検出してもよい。
【0023】
図2は、湯面での溶湯の温度変化とノロの温度変化を示すものである。図2において、矢印で示した10秒間での温度変化を参照すると、溶湯の温度変化は大きく、ノロの温度変化は小さい。
【0024】
制御部5は、赤外線カメラ2の各ピクセルで検出された温度データを、例えば5秒間分記憶しておく。
【0025】
制御部5は、記憶している各ピクセルの温度データを所定のサンプリング周期、例えば2Hzでサンプリングする。サンプリングデータは5秒間で10点のデータとなる。
【0026】
制御部5は、例えば、10点のデータの上位3点(温度の最も高い点から3点)の温度の平均値と、下位3点(温度の最も低い点から3点)の温度の平均値と、の差分を算出する。
【0027】
制御部5は、算出した差分が所定の閾値より大きいピクセルの部分は溶湯であると判定し、算出した差分が所定の閾値以下のピクセルの部分はノロであると判定する。
【0028】
制御部5は、10点のデータの最大値と最小値との差分を閾値と比較して溶湯とノロを識別してもよい。
【0029】
制御部5は、例えば、溶湯であると判定したピクセルと、ノロであると判定したピクセルとの色を変えて画像を表示部3に表示させる。
【0030】
図3は、光学式カメラによる画像と、本実施例の方法により作成した画像を示している。
【0031】
図3(a)に示すように、光学式カメラによる画像では、排煙や金属ヒュームによりノロと溶湯の識別がつかない場合でも、本実施例の方法によれば、図3(b)に示すように、ノロと溶湯を識別することができる。なお、図3(b)においては、濃い色の部分が溶湯で、白い部分がノロとなっている。
【0032】
制御部5は、ノロと溶湯の識別結果により、産業用ロボット4を制御して、溶解炉100のノロを除去させる。
【0033】
本実施例では、溶湯とノロの識別を行なったが、時間経過による温度変化や温度帯を解析することにより、炉壁と溶湯の境界や、ノロとノロを除去するために散布する除滓剤、ノロや除滓剤の厚さを識別することができる。
【0034】
このように、本実施例では、溶解炉100の湯面の変化を検出し、湯面の変化が小さい部分をノロと判定する。
【0035】
これにより、溶解炉100の湯面の変化によりノロが識別される。このため、排煙や金属ヒュームがある場合でも、安定してノロと溶湯を識別することができる。
【0036】
また、湯面の温度により湯面の変化を検出する。
これにより、湯面の温度により湯面の変化が検出され、ノロが識別される。このため、排煙や金属ヒュームがある場合でも、安定してノロと溶湯を識別することができる。
【0037】
また、赤外線カメラ2により湯面の温度を検出する。
これにより、赤外線カメラ2により湯面の温度を検出され、ノロが識別される。このため湯面の温度の変化を細かく検出することができ、排煙や金属ヒュームがある場合でも、安定して精度よくノロと溶湯を識別することができる。
【0038】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0039】
1 ノロ取り装置
2 赤外線カメラ(検出部)
3 表示部
5 制御部
図1
図2
図3