(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
H03L 7/107 20060101AFI20240416BHJP
H03L 7/093 20060101ALI20240416BHJP
H03L 7/095 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H03L7/107 150
H03L7/093
H03L7/095
(21)【出願番号】P 2020043747
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】海老根 涼
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04752749(US,A)
【文献】特表2003-524936(JP,A)
【文献】特開2000-341118(JP,A)
【文献】特開2016-219938(JP,A)
【文献】特開2010-050738(JP,A)
【文献】特開2007-300486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0155877(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準信号を出力する基準発振器と、
PLL制御信号出力部からPLL制御信号を出力するPLL回路と、
前記PLL制御信号出力部に接続される第1の抵抗と、前記第1の抵抗に接続される第1のコンデンサを含んで構成され、前記PLL制御信号を積分して制御電圧信号を生成するループフィルタと、
前記制御電圧信号に基づいてローカル信号を生成する電圧制御発振器と、
前記制御電圧信号の変化量が所定の値以下か否かを判定して判定結果を出力する制御電圧信号監視部と、
前記制御電圧信号監視部が出力する判定結果に基づいて前記制御電圧信号を前記ループフィルタの前記第1の抵抗と前記第1のコンデンサの接続部に印加するか否かを切り換えるスイッチと、
を備え、
前記PLL回路は前記基準信号と前記ローカル信号との比較結果に基づいて前記PLL制御信号を出力し、
前記スイッチは、前記制御電圧信号の変化量が所定の値以下との判定結果を受け取った場合に、制御電圧信号を前記ループフィルタに印加しないように切り換え、
前記所定の値は、適宜設定可能な値である
ことを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記制御電圧信号監視部は、前記制御電圧信号の電圧値を所定時間毎に監視し、前記制御電圧信号の変化量が複数回連続して所定の値以下であった場合に、前記制御電圧信号の変化量が所定の値以下であると判定する
請求項1に記載の発信回路。
【請求項3】
前記制御電圧信号監視部は、前記制御電圧信号の電圧値を所定時間毎に監視し、前記制御電圧信号の変化量の連続する複数回の平均値が所定の値以下であった場合に、前記制御電圧信号の変化量が所定の値以下であると判定する
請求項1に記載の発信回路。
【請求項4】
前記ループフィルタは、
前記PLL制御信号出力部とグランド間に接続される第2のコンデンサを更に備え、
前記第1のコンデンサの静電容量値は、前記第2のコンデンサの静電容量値よりも大きいことを特徴とする請求項
1または2のいずれか1項に記載の発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数のロックアップを高速に行う発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の周波数チャンネルを切り換えて通信を行う無線機において、周波数シンセサイザ用PLL回路には、ロックアップタイムの高速化が要求されている。一般的に、周波数シンセサイザ用PLL回路には、チャージポンプを用いた回路が用いられる。一方、チャージポンプを用いたPLL回路の場合、ループフィルタのコンデンサ容量の影響により、ロックアップの高速化が妨げられるという問題がある。
【0003】
特許文献1には、現在の充電電圧と基準電圧とを比較した結果に基づいて第2のチャージポンプを用いて高速充電を行うことでPLLロックアップを高速化する技術が開示されている。また、特許文献2には、チャージポンプ出力電圧と基準電圧との差分電圧をチャージポンプの出力部に印加することによってPLLロックアップを高速化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-27141号公報
【文献】特開2001-85996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載の回路では、予め目標周波数毎に基準電圧を設定する必要があるが、電圧に対する発振周波数の関係は部品間でばらつきがあるため、基準電圧を精度良く設定するためには、製品ごとの調整が必要になる場合がある。また、電圧に対する発振周波数の関係は温度によっても変化するため、常に最適な基準電圧を設定することは困難である。
【0006】
本発明は、目標周波数毎に基準電圧を設定する必要なく、高速でPLLロックアップできる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基準信号を出力する基準発振器と、PLL制御信号出力部からPLL制御信号を出力するPLL回路と、前記PLL制御信号出力部に接続される第1の抵抗と、前記第1の抵抗に接続される第1のコンデンサを含んで構成され、前記PLL制御信号を積分して制御電圧信号を生成するループフィルタと、前記制御電圧信号に基づいてローカル信号を生成する電圧制御発振器と、前記制御電圧信号を前記ループフィルタに印加するバッファとを備え、前記PLL回路は前記基準信号と前記ローカル信号との比較結果に基づいて前記PLL制御信号を出力し、 前記バッファは、前記制御電圧信号を前記ループフィルタの前記第1の抵抗と前記第1のコンデンサの接続部に印加することを特徴とする発振回路を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目標周波数毎に基準電圧を設定する必要なく、高速でPLLロックアップすることができる発振回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1における発振回路の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、PLL回路の構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】
図3は、発振回路の動作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図3におけるスイッチOFF時間近傍を拡大した図である。
【
図5】
図5は、実施形態2における発振回路の構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態における発振回路の動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態3における発振回路の構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態における発振回路の動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態1における発振回路のループフィルタを他のループフィルタに置き換えた例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
<実施形態1>
図1は、本実施形態における発振回路100の構成例を示すブロック図である。発振回路100は、基準発振器の発振周波数を基準周波数としてPLL(Phase Locked Loop)制御を行う発振回路であり、電圧制御発振器の発振周波数をPLL制御により制御する。
【0012】
発振回路100は、基準発振器12、PLL回路14、ループフィルタ16、電圧制御発振機(VCO:Voltage Controlled Oscillator)18、バッファ20、スイッチ22、第2の抵抗24を備える。ループフィルタ16は、第1の抵抗30、第1のコンデンサ32、第2のコンデンサ34を含んで構成される。
【0013】
基準発振器12は、例えば基準周波数が19.2MHzの基準信号Rsを生成し、PLL回路14へ出力する。基準発振器12は、例えば温度補償電圧制御型水晶発振器VC-TCXO(Voltage Controlled, Temperature Compensated Crystal Oscillator)である。
【0014】
PLL回路14は、基準信号Rsと、ループ内のVCO18から出力された負帰還信号Nsとを比較し、比較した結果をPLL制御信号として出力する。具体的には、PLL回路14は、基準信号Rsと負帰還信号Nsとをそれぞれ適時分周して位相比較し、比較結果に基づいて、位相差を一定にするためのPLL制御信号である制御電流パルス信号Icを生成し、ループフィルタ16へ出力する。
【0015】
図2を用いて、PLL回路14の具体的な構成例を説明する。PLL回路14は、例えば分数分周PLL回路(フラクショナル-N方式PLL回路)である。PLL回路14は、第1の分周器40と、位相比較器42と、第2の分周器44と、チャージポンプ46とを備える。
【0016】
第1の分周器40は、ループ内のVCO18から出力されたローカル信号Lsを負帰還信号Nsとして受け取り、受け取った負帰還信号Nsを、1/Nの分周比で分周し、比較周波数fnの負帰還比較信号NCsに変換する。例えば、ローカル信号Ls及び負帰還信号Nsの周波数を826.05MHzとし、N=4130.25とすると、負帰還比較信号NCsの比較周波数fnは200kHzである。分周器40は負帰還比較信号NCsを位相比較器42へ出力する。
【0017】
第2の分周器44は、基準発振器21から出力された基準信号Rsを、1/Rの分周比で分周し、比較周波数frの基準比較信号RCsに変換する。例えばR=96とすると、基準比較信号RCsの比較周波数frは200kHzである。分周器44は基準比較信号RCsを位相比較器42へ出力する。
【0018】
位相比較器42は、基準比較信号RCsの比較周波数frと負帰還比較信号NCsの比較周波数fnとを比較し、比較周波数fpの位相差パルス信号Psを生成する。
【0019】
具体的には、位相比較器42は、基準比較信号RCsの比較周波数frと負帰還比較信号NCsの比較周波数fnとを比較し、比較周波数fnが比較周波数frよりも高い場合には位相差パルス信号Psのデューティ比が小さくなるように調整する。また、位相比較器42は、比較周波数fnが比較周波数frよりも低い場合には位相差パルス信号Psのデューティ比が大きくなるように調整する。位相比較器42は、位相差パルス信号Psをチャージポンプ46へ出力する。
【0020】
また、位相比較器42は、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相を比較し、ロックディテクト信号Ldを出力する。具体的には、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲外である場合にHiとなり、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲内である場合にLoとなるロックディテクト信号Ldを出力する。
【0021】
チャージポンプ46は、位相差パルス信号Psを制御電流パルス信号Icに変換し、ループフィルタ16へ出力する。
チャージポンプ46は、PLL制御信号出力部として機能する。
【0022】
図1に戻る。ループフィルタ16は、制御電流パルス信号Icを制御電圧信号Vcに変換し、VCO18及びバッファ20へ出力する。また、ループフィルタ16は、制御電流パルス信号Icから不要な周波数成分を除去する。
【0023】
VCO18は、制御電圧信号Vcに基づいて、例えば周波数が826.05MHzのローカル信号Lsを生成し出力する。ローカル信号Lsは、負帰還信号NsとしてPLL回路14に入力される。バッファ20は制御電圧信号Vcをスイッチ22に出力する。
【0024】
スイッチ22はPLL回路14から受け取ったロックディテクト信号LdによってスイッチのON/OFFを切り換える。ロックディテクト信号LdがHiの場合、スイッチ22がONとなり、ロックディテクト信号LdがLoの場合、スイッチ22がOFFとなる。すなわち、PLL回路14で比較した基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲外の場合にスイッチ22がONとなり、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲内の場合にスイッチ22がOFFとなる。
【0025】
スイッチ22がONの時、スイッチ22はバッファ20から受け取った制御電圧信号Vcを第2の抵抗24を介してループフィルタ16に印加する。具体的には、スイッチ22は制御電圧信号Vcを第2の抵抗24を介して、ループフィルタ16を構成する第1の抵抗30と第1のコンデンサ32の接続部に印加する。これにより、第1のコンデンサに制御電圧信号Vcが即座に印加されてチャージポンプの動作を高速化させることができる。
【0026】
例えば、第1の抵抗値は100(Ω)、第2の抵抗値は10(Ω)であり、第1のコンデンサの静電容量値は4.7(μf)、第2のコンデンサの静電容量値は0.1(μf)である。これらの値に限定されないが、第1の抵抗は第2の抵抗と比較して抵抗値が十分に大きいことが望ましい。更に第2の抵抗は、なくても良い。すなわち、スイッチ22が直接フィルタ16を構成する第1の抵抗30と第1のコンデンサ32の接続部に制御電圧信号Vcを印加しても良い。また、第1のコンデンサは第2のコンデンサと比較して静電容量値が十分に大きいことが望ましい。第2のコンデンサは、なくても良い。
【0027】
図3を用いて発振回路100の動作を説明する。ローカル信号Lsの発振周波数をf1(MHz)からf2(MHz)に切り替えることを想定する。
図3(a)は、スイッチ22のON/OFF動作を示し、
図3(b)はVCO18から出力されるローカル信号Lsの周波数の変化を示す。実線が本実施形態におけるローカル信号Lsの周波数の変化を示す。比較のために、制御電圧信号Vcをフィルタ16に印加しない場合のローカル信号Lsの周波数の変化を1点鎖線で示す。
【0028】
t0でローカル信号Lsの周波数切り換え動作がスタートすると、PLL回路14から出力されるロックディテクト信号LdがHiになり、スイッチ22がONになる。PLL回路14は基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲内となるまでロックディテクト信号LdをHiにした状態で動作し、時間t1で基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲内となると、ロックディテクト信号LdはLoとなり、スイッチ22がOFFになる。以降、スイッチ22がOFFの状態で更に基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相をロックさせる制御を行う。
【0029】
図3(b)に示すように、制御電圧信号Vcをループフィルタ16に印加することで、印加しない場合と比較して、ローカル信号Lsの周波数を早く変化させることができるため、ロックアップを早めることができる。
【0030】
図4は
図3におけるスイッチOFF時間t1近傍を拡大した図である。時間t1まではスイッチ22がONなので、ローカル信号Lsの周波数は急な傾きで変化して行き、時間t1以降はスイッチ22がOFFになるので周波数の変化が緩やかになる。
【0031】
比較のため、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が完全になくなるまでスイッチ22をONにした場合の周波数の変化を2点鎖線で示す。2点鎖線で示すように、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が完全になくなるまでスイッチ22をONにした場合には、周波数の変化が急であるために、周波数の変化が過剰になり、結果、ロックアップまでに時間がかかってしまう。このため、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が完全になくなる前にスイッチ22をOFFすることが望ましい。
【0032】
本実施形態の発振回路100によれば、制御電圧信号Vcをループフィルタ16に印加することで、高速でPLLロックアップすることができる。また、目標周波数毎に基準電圧を設定する必要はない。更に、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が完全になくなる前に制御電圧信号Vcの印加をやめるため、過剰に周波数を変化させることがなく、高速でPLLロックアップすることができる。
【0033】
<実施形態2>
実施形態1では、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲内となった場合にLoとなるロックディテクト信号Ldに基づきスイッチ22をOFFにしたが、実施形態2ではロックディテクト信号LdがLoとなってから所定の時間の後にスイッチをOFFにする。
【0034】
PLL回路14はICで構成されている場合が一般的で、この場合ロックディテクト信号LdのHi/Loの切換はICの仕様によって決まる。従って、ロックディテクト信号LdがLoとなった直後にスイッチ22をOFFするよりも、ロックディテクト信号LdがLoとなってから所定時間経過後にスイッチ22をOFFする方がロックアップを高速化できる場合がある。
【0035】
図5に、本実施形態における発振回路200の構成例を示す。発振回路200は、
図1の発振回路100に対し、遅延回路26が追加されていることが異なる。以下、実施形態1と異なる部分を中心に説明する。実施形態1と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0036】
遅延回路26は、PLL回路14から受け取ったロックディテクト信号Ldを所定の時間遅延させ、スイッチ22に出力する。
図6は、スイッチ22の動作とローカル信号Lsの周波数との関係を示す図であり、スイッチ22がOFFとなる時間の近傍を拡大した図である。基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲内となった時間t1でスイッチをOFFした場合のローカル信号Lsの変化を点線で示し、時間t1に対し所定時間遅延した時間t12でスイッチ22をOFFした場合のローカル信号Lsの周波数の変化を実線で示す。
【0037】
時間t1でスイッチをOFFした場合と比較して、時間t12でスイッチをOFFした場合の方が、PLLロックアップがより高速化されている。本実施形態では実施形態1と比較して、スイッチ22をOFFする時間を遅延させることにより、スイッチ22をOFFするタイミングを最適化させることができるため、PLLロックアップをより高速化させることができる。遅延回路24の遅延量は、ロックディテクト信号LdがLoとなるタイミングに応じて最適な量に設定することが望ましい。
【0038】
本実施形態の発振回路200は、実施形態1で説明した発振回路100に対し、ロックディテクト信号Ldを遅延させる構成を加えることで、制御電圧信号Vcをループフィルタ16に印加することをやめるタイミングを自由に設定できるようにした。このため本実施形態の発振回路200では、実施形態1で説明した効果に加え、PLLロックアップを更に高速化することができるという効果がある。
【0039】
<実施形態3>
実施形態1及ぶ実施形態2では、PLL回路14から出力されるロックディテクト信号Ldに基づいてスイッチ22をOFFにしたが、本実施形態では制御電圧信号Vcの変化量に基づいて、スイッチ22のON/OFFを切り換える。
【0040】
図7に、本実施形態における発振回路300の構成例を示す。発振回路300は、
図1の発振回路100に対し制御電圧信号監視部28が追加され、PLL14のロックディテクト信号Ldの代わりに制御電圧信号監視部28の出力信号に基づいてスイッチ22をON/OFFすることが異なる。以下、実施形態1又は実施形態2と異なる部分を中心に説明する。実施形態1又は実施形態2と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0041】
制御電圧信号監視部28は所定時間毎に、バッファ20から受け取る制御電圧信号Vcの電圧値を監視して、制御電圧信号Vcの変化量に応じて出力のHi/Loを切り換える。具体的には、制御電圧信号監視部28は、20msecごとに制御電圧信号Vcの電圧値を検出して制御電圧信号Vcの変化量を監視し、電圧値の変化量が3回続けて所定の値以下であった場合に出力をLoとし、それ以外の場合に出力をHiとする。
【0042】
制御電圧信号監視部28が制御電圧信号Vcの電圧値を監視する間隔は、20msecに限定されず適宜設定すればよい。また、制御電圧信号Vcの電圧値の変化量の判定方法は上記に限定されず、連続する複数回の変化量の平均値で判定しても良いし、3回以下又は3回以上連続した電圧値の変化量で判定しても良い。
【0043】
ロックディテクト信号Ldに基づいてスイッチ22をOFFするタイミングを設定する場合、ローカル信号Lsの設定周波数によって最適な設定値が異なるため、ある程度余裕をもって設定する必要がある。制御電圧信号Vcの電圧値の変化量に基づいてスイッチ22をOFFするタイミングを設定する本実施形態の方法では、ローカル信号Lsの設定周波数に関係なくスイッチ22をOFFするタイミングを設定することができるので、より適した設定を行うことができる。
【0044】
図8は、スイッチ22の動作とローカル信号Lsの周波数との関係を示す図であり、スイッチ22をOFFにする時間の近傍を拡大した図である。制御電圧信号監視部28の出力に基づいて、時間t13でスイッチ22をOFFした場合のローカル信号Lsの周波数の変化を実線で示す。比較のため、実施形態1において時間t1でスイッチをOFFした場合と、実施形態2において時間t12でスイッチをOFFした場合のローカル信号Lsの周波数の変化をそれぞれ点線で示す。
【0045】
本実施形態の発振回路300は、制御電圧信号Vcの変化量に基づいて、制御電圧信号Vcをループフィルタ16に印加することをやめるタイミングを設定できるようにしたことにより、ローカル信号Lsの設定周波数に関係なく制御電圧信号Vcをループフィルタ16に印加することをやめるタイミングを最適に設定できる。このため、本実施形態の発振回路300では、実施形態1及び実施形態2で説明した効果に加え、更にロックアップをより高速化することができるという効果がある。
【0046】
実施形態1と実施形態2の説明では、ロックディテクト信号Ldが、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲外である場合にHiとなり、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲内である場合にLoとなるとしたが、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲外である場合にLoとなり、基準比較信号RCsと負帰還比較信号NCsとの位相差が所定の範囲内である場合にHiとなる信号でも勿論良い。この場合、スイッチ22の動作を上記説明の逆にすれば良い。実施形態3も同様に、制御電圧信号監視部28の動作が上記説明の逆の場合、スイッチ22の動作を上記説明の逆にすれば良い。
【0047】
(変形例)
ループフィルタ16の構成は、各実施形態で説明した構成に限定されず、PLL回路14から出力されるPLL制御信号を積分して制御電圧信号Vcを生成するフィルタであればよい。実施形態1の発振回路100のループフィルタ16を他の構成のループフィルタ50に置き換えた発振回路400の構成例を
図9に示す。この場合も、スイッチ22は制御電圧信号Vcを第1の抵抗30と第1のコンデンサ32の接続部に印加する。発振回路200と発振回路300においてもループフィルタ16をループフィルタ50に置き換え可能である。更に、ループフィルタ16はオペアンプを用いて構成しても良く、種々応用可能である。
【0048】
なお、本発明は上記説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
12 基準信号発振器
14 PLL回路
16、50 ループフィルタ
18 電圧制御発振器
20 バッファ
22 スイッチ
24 第2の抵抗
26 遅延回路
28 制御電圧信号監視部
30 第1の抵抗
32 第1のコンデンサ
34 第2のコンデンサ
40 第1の分周器
42 第2の分周器
44 位相比較器
46 チャージポンプ
100、200、300、400 発振回路