(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 3/08 20060101AFI20240416BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240416BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20240416BHJP
F28F 3/04 20060101ALI20240416BHJP
F28D 9/00 20060101ALI20240416BHJP
B23K 20/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F28F3/08 311
B32B7/027
B32B15/01 K
F28F3/04 A
F28D9/00
B23K20/00 310L
(21)【出願番号】P 2020045936
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】王 凱建
(72)【発明者】
【氏名】富田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】佐川 賢太郎
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163908(JP,A)
【文献】特開平11-304061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F3/00-3/14,9/00-9/26
F28D9/00-9/04
F16L23/00-23/24
B32B7/027,15/01
B23K20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型マイクロ流路熱交換器に適用される積層体であって、
複数の伝熱板と複数の金属板とが積層され、前記複数の伝熱板と前記複数の金属板のそれぞれが拡散接合により接合された積層ブロック本体と、
複数の金属板が積層され、前記複数の金属板のそれぞれが拡散接合により接合された継手体と
を具備し、
前記複数の伝熱板のそれぞれには、流体が流れる流路が形成され、
前記積層ブロック本体には、前記複数の伝熱板が積層された第1方向に沿って側面が形成され、前記側面には開口が設けられ、
前記継手体は、前記開口に挿入
することが可能であり、
前記継手体を前記開口に挿入したとき、前記積層ブロック本体を形成する前記複数の伝熱板と前記複数の金属板の積層方向と、前記継手体を形成する前記複数の金属板の積層方向とが一致し、前記積層ブロック本体の前記積層方向における厚さと、前記継手体の前記積層方向における厚さとが同じである
積層体。
【請求項2】
請求項1に記載された積層体であって、
前記継手体においては、
前記複数の金属板が積層された第2方向に対して交差する方向に突出する凸部を有し、
前記凸部が
前記開口に挿入され得る
積層体。
【請求項3】
請求項1または2に記載された積層体であって、
前記複数の伝熱板及び前記複数の金属板は、同じ材料で形成された
積層体。
【請求項4】
積層型マイクロ流路熱交換器に適用される積層体を製造する製造方法であって、
少なくとも1つの第1金属板と、少なくとも1つの第2金属板との間に、
流体が流れる流路が形成された第1領域と、前記第1領域外の第2領域とを有する複数の第3金属板を挟んで積層し、
少なくとも1つの前記第1金属板、少なくとも1つの前記第2金属板、及び前
記複数の
第3金属板のそれぞれを拡散接合により接合して、積層ブロック体を形成し、
前記積層ブロック体を前記第1領域を含む第1ブロック体と、前記第2領域を含む第2ブロック体とに分割し、
前記第2ブロック体の少なくとも一部を前記第1ブロック体に接続される継手体として利用
し、
前記第1ブロック体の側面に形成された開口に前記継手体を挿入し、
前記継手体を前記第1ブロック体の前記側面に接続した後において、前記第1ブロック体を形成する前記第1金属板、前記第2金属板、及び前記複数の第3金属板の積層方向と、前記継手体を形成する前記第1金属板、前記第2金属板、及び前記複数の第3金属板の積層方向とが一致している
積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載された積層体の製造方法であって、
前記積層ブロック体が前記第1ブロック体と前記第2ブロック体とに分割される前に、
前記第1ブロック体の前記積層ブロック体の積層方向に沿った
前記側面には
前記開口が形成され、
前記開口に対向する前記第2ブロック体の部分を前記継手体の一部として利用する
積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載された積層体の製造方法であって、
前記第2ブロック体の一部を前記第1ブロック体の前記開口に挿入される前記継手体の凸部として利用し、
前記凸部に含まれる最上層または最下層の金属板の表面をエッチング加工、または、前記凸部に含まれる最上層または最下層の金属板をエッチング加工により除去する
積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器は冷凍サイクルの一つの要素として使用され、冷凍サイクル内の作動流体の温度を目標値にするための不可欠なパーツである。熱交換器には様々な種類が存在する。その中でマイクロ流路熱交換器の卓越した性能が認識されつつあり、実用化に向けて開発が進められている。
【0003】
このようなマイクロ流路熱交換器には積層型マイクロ流路熱交換器がある。この積層型マイクロ流路熱交換器は、例えば、表面に微細な高温流体流路が形成された金属板と、表面に微細な低温流体流路が形成された金属板を交互に積層して形成された積層体の上面と底面に耐圧用の金属板を重ねて、真空の状態で加圧・加熱することによって各伝熱板及び各金属板が互いに拡散接合されて一体化される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この積層型マイクロ流路熱交換器に高温流体と低温流体を流入及び流出させるために継手体が用いられる。この継手体は、例えば連結管を挿入するための孔部が設けられた金属で例えば、複数の伝熱板と金属板が拡散接合された積層体の側面に切削加工等で開口を形成し、その開口に継手体を挿入した後、ロウ付けにより接合される。このような後加工は煩雑で、また積層体に開口を形成するための切削加工の際には開口から金属積層体の内部に切削粉(切削片)が入り、その切削粉が流路を傷つけたり、熱交換器が接続される冷媒回路に流出することで詰まり等の問題を引き起こしたりするおそれがある。
【0005】
これに対し、例えば、複数の伝熱板や金属板のそれぞれの側部にエッチング加工によって切り欠きを設け、この切り欠きが積層されることにより開口を形成する手法がある。このような手法によれば、開口を形成するための切削加工が必要ないので、開口から積層体の内部に切削粉が入る可能性がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、切り欠きが積層されることにより開口を形成した場合、複数の伝熱板や金属板のそれぞれの厚さには、ばらつきがあることから、開口の高さにもばらつきが生じ、ある積層体の開口は、継手体にとって緩くなったり、別の積層体の開口は、継手体にとってきつくなったりする場合がある。この結果、積層体の開口と継手体の間にロウ付けで塞げないような大きさの隙間ができたり、積層体の開口に継手体が挿入できなかったりする場合がある。
【0008】
このため、積層体の開口に継手体を挿入し、ロウ付けにより接合する際の作業が困難であった。また、それを避けるためにはそれぞれの積層体の開口に適合した継手体を積層体ごとに製造する必要が生じ、積層型マイクロ流路熱交換器を製作することが困難であった。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際に積層体の開口に継手体を挿入し接合する作業の困難を回避できる積層体、及び積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層体は、積層ブロック本体と、継手体とを具備する。
上記積層ブロック本体では、複数の伝熱板と複数の金属板とが積層され、上記複数の伝熱板と上記複数の金属板のそれぞれが拡散接合により接合されている。
上記継手体では、複数の金属板が積層され、上記複数の金属板のそれぞれが拡散接合により接合されている。
上記積層ブロック本体には、上記複数の伝熱板が積層された第1方向に沿って側面が形成され、上記側面には開口が設けられている。
上記継手体は、上記開口に挿入され得る。
【0011】
このような積層体によれば、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際に積層ブロック本体の開口に継手体を挿入し接合する作業の困難さが回避される。
【0012】
上記の継手体においては、上記複数の金属板が積層された第2方向に対して交差する方向に突出する凸部を有し、上記凸部が上記開口に挿入され得る。
【0013】
このような積層体によれば、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際に積層ブロック本体の開口に継手体を挿入し接合する作業の困難さがより確実に回避される。
【0014】
上記の積層体においては、上記複数の伝熱板及び上記複数の金属板は、同じ材料で形成されてもよい。
【0015】
このような積層体によれば、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際に積層ブロック本体の開口に継手体を挿入し接合する作業の困難さがより確実に回避される。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層体の製造方法では、少なくとも1つの第1金属板と、少なくとも1つの第2金属板との間に、流路が形成された第1領域と、上記第1領域外の第2領域とを有する複数の第3金属板を挟んで積層する。
少なくとも1つの上記第1金属板、少なくとも1つの上記第2金属板、及び上記複数の第3金属板のそれぞれを拡散接合により接合して、積層ブロック体が形成される。
上記積層ブロック体が上記第1領域を含む第1ブロック体(積層ブロック本体)と、上記第2領域を含む第2ブロック体(フレーム体)とに分割される。
上記第2ブロック体の少なくとも一部が上記第1ブロック体に接続される継手体として利用される。
【0017】
このような積層体の製造方法によれば、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際に積層ブロック本体の開口に継手体を挿入し接合する作業の困難さが回避される。
【0018】
上記の積層体の製造方法においては、上記積層ブロック体が上記第1ブロック体と上記第2ブロック体とに分割される前に、上記第1ブロック体の上記積層ブロック体の積層方向に沿った側面には開口が形成され、上記開口に対向する上記第2ブロック体の部分を上記継手体の一部として利用してもよい。
【0019】
このような積層体によれば、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際に金属積層体の開口に継手体を挿入し接合する作業の困難さがより確実に回避される。
【0020】
上記の積層体の製造方法においては、上記第2ブロック体の一部を上記第1ブロック体の上記開口に挿入される上記継手体の凸部として利用し、上記凸部に含まれる最上層または最下層の金属板の表面をエッチング加工、または、上記凸部に含まれる最上層または最下層の金属板をエッチング加工により除去してもよい。
【0021】
このような積層体によれば、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際に金属積層体の開口に継手体を挿入し接合する作業の困難さがより確実に回避される。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明によれば、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際に積層ブロック本体の開口に継手体を挿入し接合する作業の困難さを回避できる積層体及び積層体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る積層体の模式的斜視図である。
【
図2】図(a)は、継手体が積層ブロック本体の側面に接合される前の模式的断面図である。図(b)は、継手体が積層ブロック本体の側面に接合された後の模式的断面図である。
【
図3】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
【
図4】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
【
図5】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
【
図6】積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
【
図7】本実施形態の変形例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
【0025】
(積層体の構造)
【0026】
図1は、本実施形態に係る積層体の模式的斜視図である。
【0027】
図1に示す積層体10は、積層ブロック本体1と、継手体51~54とを具備する。積層ブロック本体1は、例えば、略直方体形状をしている。
図1では、積層体10の構造を説明する都合上、継手体51~54のそれぞれが積層ブロック本体1から離れて描かれている。継手体51~54のそれぞれは、積層ブロック本体1の側面1wに接続される。
【0028】
積層体10は、例えば、積層型マイクロ流路熱交換器に適用される。例えば、高温の媒体が積層体10の継手体51から流入すると、媒体は、積層ブロック本体1を経由し、継手体52から流出する。一方、低温の媒体が継手体53から流入すると、媒体は、積層ブロック本体1を経由し、継手体54から流出する。継手体51~54のそれぞれの孔部5hには、例えば、連結管等が接続される。
【0029】
積層ブロック本体1は、主面1u(上面)と、主面1uとは反対側の主面1d(下面)と、主面1uと主面1dと、側面1wとを有する。積層ブロック本体1において、主面1u、1dに直交する方向を第1方向とする。第1方向は、本実施形態では、Z軸方向に対応する。
【0030】
積層ブロック本体1は、伝熱板である複数の金属板2Aaと、伝熱板である複数の金属板2Baと、下側外殻板である複数の金属板3Aaと、上側外殻板である複数の金属板3Baとを有する。主面1u側には複数の金属板3Aaが、主面1d側には複数の金属板3Baが、それぞれz方向に積層されている。複数の金属板3Aaと複数の金属板3Baとの間では、Z軸方向に、複数の金属板2Aaと、複数の金属板2Baとが交互に積層されている。金属板3Aa及び金属板3Baのそれぞれは、複数の金属板に限らず、1つの金属板でもよい。なお、
図1では、z方向に積層された複数の金属板のそれぞれの境界に実線が描かれているが、拡散接合後、実線は消滅することがある。
【0031】
複数の金属板3Aa、2Aa、2Ba、及び3Baのそれぞれは、このように積層された状態で拡散接合により接合される。拡散接合としては、固相接合、熱間圧接、冷間圧接等があげられる。なお、複数の金属板3Aaと複数の金属板3Baとの間の複数の金属板2Aa、2Baをまとめて積層体2とする。
【0032】
複数の金属板2Aaのそれぞれ及び複数の金属板2Baのそれぞれには、流路が形成されている(後述)。積層ブロック本体1の側面1wには、開口2hが設けられている。例えば、
図1の例では、4つの側面1wに、それぞれ1つの開口2hが設けられる。開口2hは、1つの側面1w当たりに1つとは限らず、複数設けることもできる。
【0033】
継手体51、52と、継手体53、54とは、積層ブロック本体1の側面1wに挿入されて、例えば、側面1wにロウ付けにより接合される。例えば、継手体51、52は、Y軸方向において積層ブロック本体1の側面1wに挿入され、継手体53、54は、X軸方向において積層ブロック本体1の側面1wに挿入される。すなわち、継手体51から継手体52に向かう方向と、継手体53から継手体54に向かう方向とは、交差する。
【0034】
図2(a)は、継手体が積層ブロック本体の側面に接合される前の模式的断面図である。
図2(b)は、継手体が積層ブロック本体の側面に接合された後の模式的断面図である。
図2(a)、(b)では、一例として、
図1に例示した継手体52を含むA1-A1線に沿った断面が示されている。
図2(a)、(b)の断面図は、他の継手体51、53、54及び継手体51、53、54付近の積層ブロック本体1においても適用される。
【0035】
図2(a)に示すように、積層ブロック本体1の側面1wには、継手体52の一部、例えば、継手体52の凸部5tが挿入され、嵌合される開口2hが設けられている。側面1wに向かって見た場合の開口2hの形状は、例えば、矩形状である。開口2hに継手体52の凸部5tが挿入され嵌合すると、例えば、ロウ材501によって継手体52が積層ブロック本体1の側面1wに接合される(
図2(b))。
【0036】
継手体52は、複数の金属板2Abと、複数の金属板2Bbと、下側外殻板である複数の金属板3Abと、上側外殻板である複数の金属板3Bbとを有する。複数の金属板3Abと複数の金属板3Bbとの間では、Z軸方向に、複数の金属板2Abと、複数の金属板2Bbとが交互に積層されている。複数の金属板3Ab及び複数の金属板3Bbのそれぞれは、1つの金属板でもよい。複数の金属板3Ab、2Ab、2Bb、3Bbのそれぞれは、このように積層された状態で拡散接合により接合される。
【0037】
継手体52は、凸部5tを有する。凸部5tは、複数の金属板2Ab、2Bbが積層された方向(第2方向)に対し交差する方向(例えば、直交する方向)に突出する。例えば、凸部5tは、複数の金属板3Abと複数の金属板3Bbとの間に配置された、複数の金属板2Ab、2Bbが、複数の金属板3Abと複数の金属板3Bbとの間から突出した部分により形成されている。
【0038】
また、積層体10においては、凸部5tに含まれる複数の金属板が積層方向(第2方向)に並んだ高さが複数の金属板2Aa、2Baが積層方向(第1方向)に並ぶ高さに一致する領域が積層ブロック本体1の側面1wに存在する。例えば、凸部5tを複数の金属板3Abと複数の金属板3Bbとの間の複数の金属板2Ab、2Bbで形成した場合には、複数の金属板2Ab、2Bbの積層方向(第2方向)における高さが積層ブロック本体1の側面1wのいずれかの部分における複数の金属板2Aa、2Baの積層方向(第1方向)の高さと一致することになる。
【0039】
例えば、
図2(a)、(b)の例では、凸部5tを形成する複数の金属板2Ab、2Bbが積層方向(第2方向)に並んだ高さが積層体2を形成する複数の金属板2Aa、2Baが積層方向(第1方向)に並んだ高さと一致している。仮に、複数として、凸部5tを10組の金属板2Ab、2Bb(交互に積層された合計20枚の金属板)からなるとした場合には、この10組の金属板2Ab、2Bbの積層方向における高さは、側面1wにおいて積層方向に連続した、いずれかの10組の金属板2Aa、2Ba(交互に積層された合計20枚の金属板)の高さと一致する。この場合、開口2hは、この10組の複数の金属板2Aa、2Baの位置に形成される。なお、ここでいう高さとは、各々の金属板を積層し拡散接合を行って一体化したときの高さのことである。
【0040】
金属板2Aa、2Ba、金属板3Aa、3Ba、2Ab、2Bb、3Ab、3Bbは、熱伝導率が高く、例えば、同じ種類の金属板である。これらの金属板は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼板、銅、アルミニウム合金、チタン、マグネシウム合金等の少なくともいずれかを含む。金属板2Aaと金属板2Ab、金属板2Baと金属板2Bb、金属板3Aaと金属板3Ab、金属板3Ba及びと金属板3Bbのそれぞれの組み合わせは、同じ原材料板から形成される。従ってそれぞれの組み合わせにおける金属板の板厚は、原材料板の寸法誤差を含めて同一である。
【0041】
継手体52には、外部の冷媒管等と接続するための継手管が接続される孔部5hが設けられている。継手体52が側面1wに接続されると、孔部5hは、開口2hに連通する。孔部5hは、例えば、継手体52の拡散接合後、エンドミル、ドリル等の加工冶具により形成される。なお、継手体52の凸部5tが積層ブロック本体1に設けられた開口に嵌合される例に限らず、例えば、
図1に示す継手体51~54のそれぞれの凸部5tをなくし、継手体51~54のそれぞれの外形が嵌合するように開口2hを形成し、継手体51~54のそれぞれの外形を開口2hに挿入して嵌合させ、継手体51~54が積層ブロック本体1に接合された後の形態も実施形態に含まれる。
【0042】
(積層体の製造方法)
【0043】
図3(a)~
図6(b)は、積層体の製造方法を示す模式的斜視図である。
【0044】
例えば、積層ブロック本体1及び継手体51~54を形成する金属板としては、
図3(a)に示す金属板2Aと、
図3(b)に示す金属板2Bと、
図4(a)に示す金属板3Aと、
図4(b)に示す金属板3Bとが使用される。
【0045】
図3(a)に示す金属板2Aは、金属板2Aaと、金属板2Aaを囲む金属板2ABと、金属板2Aaと金属板2ABとを繋ぐリブ部2Arとを有する。金属板2Aaと金属板2ABとの間では、リブ部2Ar以外の部分において貫通溝が形成されている。
【0046】
金属板2Aは、主面2uと、主面2uとは反対側の主面2dと、主面2uと主面2dとに連続する側面2wとを有する。金属板2Aa、金属板2AB、及びリブ部2Arは、一体物であり、同じ材料で形成される。
【0047】
金属板2Aaには、その4辺のそれぞれに、開口部212、222、232、242が設けられている。さらに、金属板2Aaの主面2uには、高温流体の流路を形成する溝25A、30A、31Aが設けられている。溝25A、30A、31Aは、金属板2Aの一方の面に、例えば、ハーフエッチング技術により形成される。
【0048】
溝25A、30A、31Aの深さはいずれの箇所も均一であってよい。複数の溝25Aは、X軸方向に沿って形成される。溝30A、31Aは、Y軸方向に沿って形成される。溝30Aは、その一端が開口部212と連通する。溝31Aは、その一端が開口部222と連通する。
【0049】
すなわち、Y軸方向の両端部に設けられる開口部212と開口部222との間には、開口部212と開口部222との間を連通する複数の溝25A、30A、31Aが形成されている。溝25Aの数は、図示される3本には限らない。また、溝25Aの形状も図示される直線状に限られず、任意の形状でよい。
【0050】
金属板2Aaを囲む金属板2ABには、金属板2ABが加工された後に継手体51~54の一部となる金属板2Abがそれぞれ4か所の領域に設けられている。また、金属板2ABには、その四隅に、拡散接合時の位置決め用のピン孔251が形成されている。
【0051】
図3(b)に示す金属板2Bは、金属板2Baと、金属板2Baを囲む金属板2BBと、金属板2Baと金属板2BBとを繋ぐリブ部2Brとを有する。金属板2Baと金属板2BBとの間では、リブ部2Br以外の部分において溝が形成されている。金属板2Bは、主面2uと、主面2dと、側面2wとを有する。金属板2Ba、金属板2BB、及びリブ部2Brは、一体物であり、同じ材料で形成される。例えば、金属板2Bの材料は、金属板2Aの材料と同じである。
【0052】
金属板2Baには、その4辺のそれぞれに、開口部212、222、232、242が設けられている。さらに、金属板2Baの主面2uには、低温流体の流路を形成する溝25Bが設けられている。溝25Bは、金属板2Bの一方の面に、例えば、ハーフエッチング技術により形成される。複数の溝25Bは、X軸方向に沿って形成される。溝25Bは、その一端が開口部232と連通し、他端は、開口部242と連通する。
【0053】
すなわち、X軸方向の両端部に設けられる開口部232と開口部242との間には、開口部232と開口部242との間を連通する複数の溝25Bが形成されている。溝25Bの数は、図示される3本には限らない。また、溝25Bの形状も図示される直線状に限られず、任意の形状でよい。
【0054】
金属板2Baを囲む金属板2BBには、金属板2BBが加工された後に継手体51~54の一部となる金属板2Bbがそれぞれ4か所の領域に設けられている。また、金属板2BBには、その四隅に、拡散接合時の位置決め用のピン孔251が形成されている。
【0055】
上記の溝、開口部を形成する処理は、エッチング処理、レーザ加工、精密プレス加工、切削加工などで行われる。また、該処理として、3Dプリンターのような積層造形技術も用いることができる。
【0056】
また、本実施形態では、金属板2A、2Bにおいて、流路が形成された金属板2Aa、2Baを金属板2A、2Bの第1領域とし、第1領域を囲む金属板2Ab、2Bbを金属板2A、2Bの第2領域(後述のフレーム体5を形成する部分)とする。また、金属板2A、2Bを第3金属板とする。
【0057】
図4(a)に示す金属板3A(第1金属板)は、金属板3Aaと、金属板3Aaを囲む金属板3ABと、金属板3Aaと金属板3ABとを繋ぐリブ部3Arとを有する。金属板3Aaと金属板3ABとの間では、リブ部3Ar以外の部分において溝が形成されている。金属板3Aa、金属板3AB、及びリブ部3Arは、一体物であり、同じ材料で形成される。
【0058】
また、金属板3Aaを囲む金属板3ABには、金属板3ABが加工された後に継手体51~54の一部となる金属板3Abがそれぞれ4か所の領域に設けられている。また、金属板3ABには、その四隅に、拡散接合時の位置決め用のピン孔251が形成されている。
【0059】
図4(b)に示す金属板3B(第2金属板)は、金属板3Baと、金属板3Baを囲む金属板3BBと、金属板3Baと金属板3BBとを繋ぐリブ部3Brとを有する。金属板3Baと金属板3BBとの間では、リブ部3Br以外の部分において貫通溝が形成されている。金属板3Ba、金属板3BB、及びリブ部3Brは、一体物であり、同じ材料で形成される。
【0060】
また、金属板3Baを囲む金属板3BBには、金属板3BBが加工された後に継手体51~54の一部となる金属板3Bbがそれぞれ4か所の領域に設けられている。また、金属板3BBには、その四隅に、拡散接合時の位置決め用のピン孔251が形成されている。
【0061】
次に、
図5(a)に示すように、それぞれに重ねられた複数の金属板3Aと複数の金属板3Bとの間に、金属板2A、2Bが交互に配置される。
【0062】
例えば、金属板3A、3Bのそれぞれが複数の金属板から形成されているとき、少なくとも1つの金属板3Aと、少なくとも1つの金属板3Bとの間に、複数の金属板2Aと複数の金属板2Bとが交互に挟まれるように金属板2A、金属板2Bが積層される。
【0063】
この際、各金属板の四隅に形成されたピン孔251には、位置決め用のピン(不図示)が挿入される。金属板3Aa、2Aa、2Ba、3Baのそれぞれは、積層方向においてずれないように積層される。
【0064】
次に、
図5(b)に示すように、少なくとも1つの金属板3A、少なくとも1つの金属板3B、及び複数の金属板2A、2Bのそれぞれを真空の状態で積層方向に加圧・加熱することによって、それぞれの金属板が拡散接合により接合されて、積層ブロック体4が形成される。
【0065】
積層ブロック体4は、積層ブロック本体1(第1ブロック体)と、積層ブロック本体1を囲むフレーム体5(第2ブロック体)を有する。積層ブロック本体1は、金属板3Aa、2Aa、2Ba、3Baのそれぞれが積層方向において接合されたものである。フレーム体5は、金属板3AB、2AB、2BB、3BBのそれぞれが積層方向において接合されたものである。また、積層ブロック体4では、リブ部2Ar、2Br、3Ar、3Brのそれぞれが積層方向において接合されてリブ6が形成される。積層ブロック本体1とフレーム体5とは、リブ6によって接続されている。
【0066】
積層ブロック本体1では、金属板2Aa、2Baのそれぞれの開口部212、金属板2Aa、2Baのそれぞれの開口部222、金属板2Aa、2Baのそれぞれの開口部232、及び金属板2Aa、2Baのそれぞれの開口部242が積層方向に重なることで、
図1に示す4つの開口2hが形成される。
【0067】
また、フレーム体5には、金属板3Ab、2Ab、2Bb、3Bbのそれぞれが積層方向において接合することで、継手体51A、52A、53A、54Aが形成される。なお、この段階での継手体51A~54Aには、孔部5hが形成されていない。
【0068】
次に、
図6(a)に示すように、積層ブロック体4の一部であるリブ6を切除することにより、積層ブロック体4が金属板2Aa、2Baを含む積層ブロック本体1と、金属板2Ab、2Bbを含むフレーム体5とに分割される。リブ6の切除は、例えば、放電加工による。
【0069】
次に、
図6(b)に示すように、フレーム体5が機械加工されて、フレーム体5の少なくとも一部が積層ブロック本体1の開口2hに接続される継手体51~54として利用される。例えば、積層ブロック本体1とフレーム体5とに分割される前、すなわち、積層ブロック体4の状態において、積層ブロック本体1の側面1wに形成された開口2hに対向するフレーム体5の部分が開口2hに接続される継手体51~54の一部として利用される。この継手体51~54の一部とは、例えば、継手体51~54の凸部5tである。この後、継手体51~54のそれぞれには、機械加工によって孔部5hが形成される。なお、
図6(a)、(b)では図示を省略しているが、リブ6を切除して分割した後の積層ブロック本体1の側面とフレーム体5の内周面には、リブ6を切除した痕跡が例えば凸状痕として残る場合がある。
【0070】
本実施形態の効果の一例について説明する。
【0071】
積層ブロック本体1に含まれる、複数の金属板2Aa及び複数の金属板2Baのそれぞれは、例えば、その厚さが1mm以下(例えば、0.3mm)という薄い金属板で形成されている。
【0072】
但し、複数の金属板2Aa及び複数の金属板2Baのそれぞれの厚さは、完全に均一であるとは限らない。複数の金属板2Aa及び複数の金属板2Baのそれぞれの厚さは、所定の誤差を持っている場合がある。
【0073】
例えば、真の金属板の厚さ(理想の厚さ)をd、厚さの誤差分をαとしたとき、複数の金属板2Aa及び複数の金属板2Baのそれぞれの厚さがd+αであれば、αに積層枚数を乗算した値が積層ブロック本体1の厚さに上乗せされることになる。一方、複数の金属板2Aa及び複数の金属板2Baのそれぞれの厚さがd-αであれば、積層ブロック本体1の厚さは、αに積層枚数を乗算した厚さ分、薄くなってしまう。
【0074】
従って、拡散接合で形成した積層ブロック本体1においては、複数の金属板2Aa及び複数の金属板2Baのそれぞれの厚さに応じて、厚さが厚くなったり、薄くなったりする。特に、積層ブロック本体1に使用される金属板2Aa、2Bの枚数は、数百枚にも及ぶ場合があり、積層ブロック本体1の厚さのばらつきが無視できなくなる。そして、積層ブロック本体1の厚さのばらつきに応じて、その側面1wに形成される開口2hの積層方向における長さ(以下、開口2hの高さと呼ぶ。)もばらつくことになる。
【0075】
これにより、開口2hに接続する継手体においては、開口2hの高さが異なるそれぞれの積層ブロック本体1ごとに、継手体を適合させて製造する必要が生じている。これは、熱交換器の低コスト化の障害となっている。
【0076】
これに対して、本実施形態では、積層ブロック体4を形成した後、同じ積層ブロック体4から積層ブロック本体1とフレーム体5とを形成する。ここで、積層ブロック本体1の厚さと、フレーム体5の厚さとは、同じ積層ブロック体4から分割されているため、ほぼ同じである。そして、フレーム体5の一部を開口2hに接続する継手体として利用するため、開口2hの高さと、継手体51~54のそれぞれの凸部5tの積層方向の高さとがほぼ同じである。特に、積層ブロック体4において、開口2hに対向するフレーム体5の部分を継手体の凸部5tとして利用することで、金属板2Aa、金属板2Baの厚さ誤差によらず、開口2hの高さと、積層方向の凸部5tの高さとがほぼ同じになる。
【0077】
これにより、本実施形態では、開口2hの高さが異なるそれぞれの積層ブロック本体1ごとに、継手体を適合させて製造する必要がなくなる。すなわち、本実施形態では、開口2hの高さが異なるそれぞれの積層ブロック本体1ごとに適合させた継手体51~54を簡便に形成することができる。この結果、積層型マイクロ流路熱交換器を製作する際の困難さを解消し、熱交換器の低コスト化を図ることができる。
【0078】
(変形例)
【0079】
図7は、本実施形態の変形例を示す模式的断面図である。
図7には、継手体が積層ブロック本体の側面に挿入される前の状態が示されている。
【0080】
図7に示すように、凸部5tに含まれる最上層または最下層の金属板(図では、最上層が金属板2Bb、最下層が金属板2Ab)の表面をエッチング加工5eすることにより、最上層または最下層の金属板の厚さが薄くなるように加工してもよい。あるいは、最上層または最下層の金属板をエッチング加工により除去してもよい。このようにすることで金属板1枚の厚さ(例えば0.3mm)の範囲で凸部5tの高さを調整できる。
【0081】
このように、開口2hの高さに積層方向の凸部5tの高さがより適合するように、積層方向の凸部5tの高さを調整してもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…積層ブロック本体
1w、2w…側面
1d、1u、2d、2u…主面
2…積層体
2Aa…金属板(伝熱板)
2Ba…金属板(伝熱板)
2Ab…金属板
2Bb…金属板
2h…開口
2Ar、2Br、3Ar、3Br…リブ部
212、222、232,242…開口部
25A、25B、30A、31A…溝
3Aa…金属板(外殻板)
3Ba…金属板(外殻板)
3Ab、3AB…金属板
3Bb、3BB…金属板
4…積層ブロック体
5…フレーム体
5h…孔部
5t…凸部
6…リブ
10…積層体
51、52、53、54、51A、52A、53A、54A…継手体
501…ロウ材