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特許7472573プログラム、動態解析装置及び診断支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】プログラム、動態解析装置及び診断支援システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240416BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B6/00 530A
A61B6/00 550Z
A61B6/50 500C
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020050421
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146012
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 丈到
(72)【発明者】
【氏名】福元 剛智
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187862(JP,A)
【文献】特開2012-115581(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0280646(US,A1)
【文献】特開2010-264235(JP,A)
【文献】特開2017-176202(JP,A)
【文献】特開2019-122449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22 、 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた量の息を吐いているときの被検者の胸部を動画撮影することにより前記胸部の動態が写った放射線動画、又は、予め決められた量の息を吸っているときの被検者の胸部の動態を動画撮影することにより胸部の動態が写った放射線動画の少なくとも一方を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画に基づいて、前記胸部の動態を解析する解析処理と、
前記解析処理において得た解析結果に基づいて、呼吸機能に関する情報を抽出する抽出処理と、をコンピューターに実行させるプログラム。
【請求項2】
記抽出処理において、肺野の呼吸機能に関する情報を抽出させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記情報は肺野の呼吸機能を示す機能値を含む、請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記機能値は、全排気量、一秒量及び一秒率の少なくとも一つである、請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記取得処理において、第一の予め決められた量の息を吐いている又は吸っているときの前記胸部の動態が写った第一放射線動画と、前記第一の予め決められた量とは異なる第二の予め決められた量の息を吐いている又は吸っているときの前記胸部の動態が写った第二放射線動画と、をそれぞれ取得させ、
前記解析処理において、前記第一放射線動画と、前記第二放射線動画と、をそれぞれ解析させ、
前記抽出処理において、前記第一放射線動画の解析結果に基づいて前記第一の予め決められた量の息を吐いた又は吸ったときの前記肺野の呼吸機能を示す第一機能値を抽出させ、前記第二放射線動画の解析結果に基づいて前記第二の予め決められた量の息を吐いた又は吸ったときの前記肺野の呼吸機能を示す第二機能値を抽出させる請求項3又は4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記抽出処理において抽出した前記情報に基づいて、前記被検者の呼吸機能を診断するための指標を予測する予測処理を、コンピューターに更に実行させる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記予測処理において、残気量及び全肺気量のうちの少なくとも一方を、前記指標として予測させる請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記解析処理は、前記放射線動画を構成する複数のフレームを用いて、前記胸部の動態を解析する、請求項1から7のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記解析処理において、前記放射線動画を構成する一のフレームにおける、前記胸部を構成する画素の信号値と、前記一のフレームと前後する他のフレームにおける前記画素と同一座標にある他の画素の信号値と、の差分を算出させる請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記取得処理において、呼吸を少なくとも一サイクルしているときの前記被検者の前記胸部の動態が写った前記放射線動画を取得する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項11】
前記抽出処理において抽出した前記情報に関する内容を表示手段に表示させる表示制御処理を、コンピューターに更に実行させる請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項12】
前記抽出処理において抽出した前記情報を保存手段に保存させる保存処理を、コンピューターに更に実行させる請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項13】
予め決められた量の息を吐いているときの被検者の胸部を動画撮影することにより前記胸部の動態が写った放射線動画、又は、予め決められた量の息を吸っているときの被検者の胸部の動態を動画撮影することにより胸部の動態が写った放射線動画の少なくとも一方を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画に基づいて、前記胸部の動態を解析する解析処理と、
前記解析処理において得た解析結果に基づいて、
前記胸部を構成する対象部位の状態に関する情報を抽出する抽出処理と、をコンピューターに実行させるプログラム。
【請求項14】
前記情報は、前記胸部を構成する対象部位の濃度、面積もしくは位置、又は前記濃度の変化量、前記面積の変化量もしくは前記位置の変化量を含む、請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記解析処理は、前記放射線動画を構成する複数のフレームを用いて、前記胸部の動態を解析する、請求項13または14に記載のプログラム。
【請求項16】
予め決められた量の息を吐いているときの被検者の胸部を動画撮影することにより前記胸部の動態が写った放射線動画、又は、予め決められた量の息を吸っているときの被検者の胸部の動態を動画撮影することにより胸部の動態が写った放射線動画の少なくとも一方を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記放射線動画に基づいて、前記胸部の動態を解析する解析手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、呼吸機能に関する情報を抽出する抽出手段と、を備える動態解析装置。
【請求項17】
記抽出手段は、肺野の呼吸機能に関する情報を抽出する請求項16に記載の動態解析装置。
【請求項18】
前記情報は肺野の呼吸機能を示す機能値を含む、請求項17に記載の動態解析装置。
【請求項19】
前記解析手段は、前記放射線動画を構成する複数のフレームを用いて、前記胸部の動態を解析する、請求項16から18のいずれか一項に記載の動態解析装置。
【請求項20】
予め決められた量の息を吐いているときの被検者の胸部を動画撮影することにより前記胸部の動態が写った放射線動画、又は、予め決められた量の息を吸っているときの被検者の胸部の動態を動画撮影することにより胸部の動態が写った放射線動画の少なくとも一方を生成する動画生成手段と、
前記動画生成手段が生成した前記放射線動画に基づいて、前記胸部の動態を解析する解析手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、呼吸機能に関する情報を抽出する抽出手段と、を備える診断支援システム。
【請求項21】
記抽出手段は、肺野の呼吸機能に関する情報を抽出する請求項20に記載の診断支援システム。
【請求項22】
前記情報は肺野の呼吸機能を示す機能値を含む、請求項21に診断支援システム。
【請求項23】
前記解析手段は、前記放射線動画を構成する複数のフレームを用いて、前記胸部の動態を解析する、請求項20から22のいずれか一項に記載の診断支援システム。
【請求項24】
前記被検者が呼吸検査を受ける際、前記被検者に対し各種情報を報知する報知手段を更に備える請求項20から23のいずれか一項に記載の診断支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、動態解析装置及び診断支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼吸機能の診断は、事前に行われる呼吸検査において、被検者に努力呼吸(例えば、これ以上できなくなるところまで息を吐き出す又は吸い込む、所定時間内にできるだけ息を吐く又は吸う等)を行ってもらい、その時に測定された呼気量や吸気量、これらから算出される計算値等を指標として行われてきた。
【0003】
近年、こうした呼吸検査において、検査器具(例えば、スパイロメーター等)を用いて呼気量や吸気量を測定する代わりに、呼吸をしているときの被検者の胸部を放射線撮影し、得られた放射線動画を解析することにより、指標となる数値を推定する技術が提案されている。
例えば特許文献1には、一方向から胸部を放射線撮影することにより得られた胸部画像から肺野の面積を算出する肺野面積算出手段と、肺野面積算出手段により算出された肺野の面積に基づいて、肺野の残気量、機能的残気量、全肺気量又は残気率を推定する推定手段と、を備える放射線画像解析装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-187862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被検者が吐き出す又は吸い込む息の量は、被検者自身は同じ量の息を吐き出している又は吸い込んでいるつもりでいても、そのときの被検者の身体的・精神的状態によって変わることがある。このため、呼吸検査を行う技師は、被検者が懸命に努力呼吸をしていても、それが本当に正確な指標を得るのに十分な呼吸になっているのか客観的に判別することができない。その結果、得られた指標が信頼性に欠けたものとなってしまう。
また、被検者へ努力を促す等の介入を行うことは、技師にとっては呼吸検査における手間の増加となってしまう。
一方、被検者は、懸命に努力呼吸を行っているつもりでいても、技師がそれを不十分と判断し更なる努力を要求してきたときには、より強く呼吸を行わなければならない。このようなことは、被検者にとっては、精神的にも身体的にも苦痛でしかない。
また、術後間もない(例えば、リハビリテーション期間中の)被検者にとって努力呼吸を行うことは身体的負担があまりに大きい。このため、術後間もない被検者に対しては、呼吸検査を行うこと自体が困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、被検者が努力呼吸を行わなくても呼吸機能を診断するための指標を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、
予め決められた量の息を吐いているときの被検者の胸部を動画撮影することにより前記胸部の動態が写った放射線動画、又は、予め決められた量の息を吸っているときの被検者の胸部の動態を動画撮影することにより胸部の動態が写った放射線動画の少なくとも一方を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画に基づいて、前記胸部の動態を解析する解析処理と、
前記解析処理において得た解析結果に基づいて、呼吸機能に関する情報を抽出する抽出処理と、をコンピューターに実行させる。
【0008】
また、本発明に係るプログラムは、
予め決められた量の息を吐いているときの被検者の胸部を動画撮影することにより前記胸部の動態が写った放射線動画、又は、予め決められた量の息を吸っているときの被検者の胸部の動態を動画撮影することにより胸部の動態が写った放射線動画の少なくとも一方を取得する取得処理と、
前記取得処理において取得した前記放射線動画に基づいて、前記胸部の動態を解析する解析処理と、
前記解析処理において得た解析結果に基づいて、
前記胸部を構成する対象部位の状態に関する情報を抽出する抽出処理と、をコンピューターに実行させる。
【0009】
また、本発明に係る動態解析装置は、
予め決められた量の息を吐いているときの被検者の胸部を動画撮影することにより前記胸部の動態が写った放射線動画、又は、予め決められた量の息を吸っているときの被検者の胸部の動態を動画撮影することにより胸部の動態が写った放射線動画の少なくとも一方を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記放射線動画に基づいて、前記胸部の動態を解析する解析手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、呼吸機能に関する情報を抽出する抽出手段と、を備える。
【0010】
また、本発明に係る診断支援システムは、
予め決められた量の息を吐いているときの被検者の胸部を動画撮影することにより前記胸部の動態が写った放射線動画、又は、予め決められた量の息を吸っているときの被検者の胸部の動態を動画撮影することにより胸部の動態が写った放射線動画の少なくとも一方を生成する動画生成手段と、
前記動画生成手段が生成した前記放射線動画に基づいて、前記胸部の動態を解析する解析手段と、
前記解析手段が得た解析結果に基づいて、呼吸機能に関する情報を抽出する抽出手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検者が努力呼吸を行わなくても呼吸機能を診断するための指標を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る診断支援システムを表すブロック図である。
図2図1の診断支援システムが備える動態解析装置を表すブロック図である。
図3図3の動態解析装置が実行する診断支援処理の流れを示すフローチャートである。
図4】呼吸検査によって得られる肺気量分画を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
ただし、本発明の技術的範囲は、以下の実施形態や図面に記載されたものに限定されない。
【0014】
〔1.診断支援システム〕
初めに、本実施形態に係る診断支援システム(以下、システム100)の概略構成について説明する。
図1はシステム100を表すブロック図である。
なお、図1における括弧書きの符号は、後述する第二実施形態のものである。
【0015】
(診断支援システムの構成)
システム100は、技師が呼吸検査(放射線動画の撮影)を行うのに用いられるとともに、医師が呼吸機能の診断を行うための指標を提供するものとなっている。
システム100は、図1に示すように、放射線発生装置(以下、発生装置1)と、放射線検出器(以下、検出器2)と、動態解析装置(以下、解析装置3)と、を備えている。
また、本実施形態に係るシステム100は、操作卓4と、コンソール5と、報知装置6と、を更に備えている。
各装置1~6は、例えば通信ネットワークN(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して互いに通信可能となっている。
【0016】
なお、システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等と通信することが可能となっていてもよい。
【0017】
・放射線発生装置
発生装置1は、図示しない高電圧生成部、管球等を備えている。
高電圧生成部は、操作卓4から入力される制御信号に基づいて、予め設定された撮影条件(撮影形態(静止画の撮影、動画の撮影)、管電圧や管電流、照射時間(mAs値)、放射線動画を撮影する際のフレームレート、最大撮影枚数等)に応じた電圧を管球に印加するようになっている。
管球は、高電圧生成部から電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線(例えばX線)を生成するようになっている。
なお、発生装置1は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、コンソール5等と共に回診車と呼ばれる移動可能に構成されたものであってもよい。
【0018】
このように構成された発生装置1は、例えば操作卓4が操作されたことを契機として、放射線を、設定された撮影条件に応じた態様で発生させる。
例えば設定された撮影形態が静止画の撮影(以下、静止画撮影)の場合、発生装置1は、所定線量の放射線を所定時間、一回だけ発生させる。
一方、設定された撮影形態が、複数のフレームからなる放射線動画の撮影(以下、動画撮影)の場合、発生装置1は、静止画撮影の場合よりも短い所定線量のパルス状放射線を所定周期で所定回数繰り返し発生させる。
【0019】
なお、動画撮影の場合、発生装置1は、照射指示スイッチが操作されている間、放射線を発生し続けるようになっていてもよい。
【0020】
・放射線検出器
検出器2は、図示しない放射線検出部、走査駆動部、読み出し部、画像生成部、通信部等を備えている。
放射線検出部は、受けた放射線の線量に応じた電荷を発生させる放射線算出素子やスイッチ素子を備えた複数の電荷蓄積部が、画像(フレーム)の各画素に対応する二次元状(マトリクス状)に配列されている。
走査駆動部は、各スイッチ素子のオン/オフを制御するようになっている。
読み出し部は、各電荷蓄積部から放出された電荷の量を信号値として読み出すようになっている。
画像生成部は、読み出された複数の信号値から放射線画像の画像データを生成するようになっている。
通信部は、他の装置(発生装置1、解析装置3、コンソール5等)との間で各種信号や各種データの送受信を行うことが可能となっている。
【0021】
なお、検出器2は、シンチレーター等を内蔵し、照射された放射線をシンチレーターで可視光等の他の波長の光に変換し、変換した光に応じた電荷を発生させるもの(いわゆる間接型)であってもよいし、シンチレーター等を介さずに放射線から直接電荷を発生させるもの(いわゆる直接型)であってもよい。
また、検出器2は、撮影室内に据え付けられたものであってもよいし、持ち運び可能に構成されたものであってもよい。
【0022】
そして、検出器2は、例えばコンソール5や操作卓4から所定の制御信号を受信したこと、発生装置1から放射線が照射されたこと等を契機として、放射線画像を、設定された撮影条件に応じた態様で生成する。
例えば設定された撮影形態が静止画撮影の場合、検出器2は、撮影動作(電荷の蓄積、放出、信号値の読出し、画像データの生成)を一回行う。
一方、設定された撮影形態が動画撮影の場合、検出器2は、撮影動作を所定周期で所定回数繰り返し行う。
すなわち、検出器2は動画生成手段をなす。
そして、検出器2は、生成した放射線画像(静止画、動画)の画像データを、通信部を介して有線又は無線で解析装置3やコンソール5、上位システム等へ送信する。
【0023】
なお、検出器2は、動画撮影を行う際、入力されているタイミング信号がオンになる度にフレームの生成を行うようになっていてもよいし、撮影開始のトリガーとなる信号を一回受信した後は、自ら所定周期で所定回数放射線画像の生成を繰り返すようになっていてもよい。
【0024】
・動態解析装置
解析装置3は、PC、携帯端末、又は専用の装置によって構成されている。
そして、解析装置3は、検出器2から取得した放射線動画に基づいて、被検者の胸部の動態を解析するようになっている。
この解析装置3の詳細については後述する。
【0025】
・操作卓
操作卓4は、ユーザーが操作可能な照射指示スイッチを有している。
また、操作卓4は、照射指示スイッチが操作されたことを契機として、発生装置1及び検出器2のうちの少なくとも一方の装置に対して動作の開始を指示する機能を有している。
本実施形態に係る操作卓4は、動作の開始を指示する信号を、発生装置1と検出器2の両方に送信するようになっている。
なお、操作卓4は、発生装置1やコンソール5と一体になっていてもよい。
【0026】
・コンソール
コンソール5は、PC、携帯端末、又は専用の装置によって構成されている。
また、コンソール5は、他のシステム(HISやRIS等)から取得した撮影オーダー情報やユーザーによってなされた操作に基づいて、各種撮影条件(管電圧や管電流、照射時間(mAs値)、撮影部位、撮影方向等)を発生装置1及び検出器2のうちの少なくとも一方へ設定することが可能となっている。
なお、本実施形態に係るコンソール5は、設定した撮影条件を自身が備える表示部に表示させるようになっていてもよい。
なお、図1には、解析装置3とは別にコンソール5を備えるシステム100を例示したが、コンソール5は解析装置3と一体になっていてもよい。
【0027】
・報知装置
報知装置6は、報知手段をなすもので、被検者が呼吸検査を受ける際、被検者に対し各種情報を報知するようになっている。
報知装置6には、例えばスピーカー、表示装置、ランプ、アクチュエーター等が含まれる。
各種報知には、例えば、これから行う動作の指示内容(例えば、息を吸う、息を吐く、息を止める等)が含まれる。
【0028】
なお、被検者が吐いた又は吸った息の量を測定する測定装置をシステム100が備えている場合、又は解析装置3が後述する診断支援処理をリアルタイムで実行するようになっている場合、報知装置6は、測定装置や解析装置3からの制御信号に基づいて、息の吐き状況又は吸い状況(定量値に対してどの程度吐いている又は吸っているか)、撮影結果(うまく撮影できたか否か)を報知するようになっていてもよい。
また、報知装置6は、解析装置3に直接接続されるのではなく、通信ネットワークNを介してコンソール5に接続されていてもよい。
また、報知装置6は、独立した装置ではなく、解析装置3やコンソール5と一体になっていてもよい。
【0029】
(診断支援システムの動作)
このように構成されたシステム100は、発生装置1の管球と検出器2とを間を空けて対向配置し、それらの間に配置された被検者の特定部位(例えば胸部)へ管球から放射線を照射することにより、被検者の放射線画像を撮影する。
静止状態の被検者を撮影する場合には、1回の撮影操作(照射指示スイッチの押下)につき放射線の照射及び放射線画像の生成を1回だけ行い、被検者の動態を撮影する場合には、1回の撮影操作につきパルス状の放射線の照射及びフレームの生成を短時間に複数回繰り返す。
そして、検出器2が生成した放射線動画を解析装置3へ送信し、解析装置3が放射線動画に基づく被検者の動態を解析する。
【0030】
(診断支援システムの解析対象及び検査方法)
システム100が備える発生装置1及び検出器2は、被検者の様々な部位を撮影することが可能である。
しかし、このシステム100は、呼吸をしているときの被検者の胸部が写った放射線動画に基づいて、被検者の胸部の動態を解析するためのものとなっている。
特に、本実施形態に係るシステム100は、所定量の息を吐いている又は吸っているときの胸部の動態を解析するようになっている。
このため、システム100を用いた呼吸検査においては、発生装置1及び検出器2を用いて、所定量の息を吐いている又は吸っているときの被検者の胸部を撮影することになる。
【0031】
この「所定量」は、被検者に応じて決定される。
具体的には、被検者の年齢、術前術後、症例ケース、リハビリの状況、健診結果等に基づいて、例えば、200ml,500ml,1000mlといった具合に決定される。
なお、これらの数値は一例であり、所定量は、適宜設定することが可能であり、術後やリハビリの被検者に対しては限界量を超えない範囲で設定することが好ましい。
【0032】
息を所定量だけ吐く又は吸うための方法としては、例えば以下のようなものが挙げられ、以下方法は複数の方法を組み合わせて良い。
・所定量の空気を入れた袋や容器を被検者の口に当てて息を吸わせる。
・被検者に吐かせている又は吸わせている空気の合計量を測定し、合計量が所定量に達したところで被験者に吐く又は吸うのを止めさせる。
・被検者に吐かせている又は吸わせている空気の流れの速さと圧力を測定しつつこれらの値に基づいて被検者に吐かせている又は吸わせている空気の合計量を算出し、合計量が所定量に達したところで被験者に吐く又は吸うのを止めさせる。
なお、所定量の息を吐く又は吸う際には、鼻をつまんだり耳をふさいだりして、空気が漏れないようすることが好ましい。
【0033】
また、所定量の息の吐き出し又は吸い込みは、一の呼吸検査において一回だけ行われる場合もあれば、二回以上行われる場合もある。
本実施形態に係る所定量の息の吐き出し又は吸い込みを二回以上行う呼吸検査では、例えば、第一所定量(例えば、200ml)の息を吐いている又は吸っているときの胸部を撮影し、息の状態を戻した後(吸った後であれば吐いた後、吐いた後であれば吸った後)、第一所定量とは異なる第二所定量(例えば、500ml)の息を吐いている又は吸っているときの胸部を撮影する。
なお、被検者の最大呼気量又は最大吸気量が事前に分かっている(例えば、術前に測定した等)場合には、所定量をそれぞれ異ならせるのではなく、被検者の最大呼気量又は最大吸気量のN分の一の量の倍数を所定量としてもよい。例えば、最大量が1200mlの場合であってNを3とする場合には、400ml(三分の一)、800ml(三分の二)、1200mlとなる。
【0034】
このとき、検出器2は、第一所定量の息を吐いている又は吸っているときの胸部が写った第一放射線動画と、第一所定量とは異なる第二所定量の息を吐いている又は吸っているときの胸部が写った第二放射線動画と、をそれぞれ生成する。
第二所定量の息を吐いている又は吸っているときの胸部を撮影した後は、必要に応じて第一,第二所定量とは異なる第三所定量(例えば、1000ml)・・第M所定量の息を吐いている又は吸っているときの胸部をさらに撮影してもよい。
なお、第一放射線動画・・第n放射線動画は一つにまとめられたものであってもよい(第n所定量の息を吐きだす又は吸い込む動作の撮影を行った後、発生装置1及び検出器2の動作を止めずに、第n+1所定量の息を吐きだす又は吸い込む動作の撮影を行ってもよい)。
【0035】
以上、システム100の解析対象及び検査方法について説明してきたが、システム100は、胸部の動態を解析するだけでなく、胸部以外の部位の動態も解析できるようになっていてもよい。
【0036】
〔2.動態解析装置の詳細〕
次に、上記システム100が備える解析装置3の詳細について説明する。
図2は解析装置3を表すブロック図、図3は解析装置3が実行する診断支援処理の流れを示すフローチャートである。
なお、図2における括弧書きの符号は、後述する第二実施形態のものである。
【0037】
(動態解析装置の構成)
解析装置3は、図2に示すように、制御部31と、通信部32と、記憶部33と、を備えている。
また、本実施形態に係る解析装置3は、表示部34と、操作部35と、を更に備えている。
【0038】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。
そして、制御部31のCPUは、記憶部33に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、解析装置3各部の動作を集中制御するようになっている。
【0039】
通信部32は、有線通信モジュール又は無線通信モジュール等で構成され、通信ネットワークNを介して接続された他の装置(発生装置1、検出器2、コンソール5等)との間で各種信号や各種データを有線又は無線で送受信することが可能となっている。
【0040】
記憶部33は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成されている。
また、記憶部33は、制御部31が各種処理を実行するためのプログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター等を記憶している。
また、本実施形態に係る記憶部33は、放射線画像(静止画・動画)の画像データを保存することが可能となっている。
なお、解析装置3は、記憶部33から独立して設けられた図示しないデータ記憶部に放射線画像の画像データを保存するようになっていてもよい。
【0041】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種画像や各種情報等を表示するようになっている。
【0042】
操作部35は、カーソルキーや、数字入力キー、各種機能キー等を備えたキーボードや、マウス等のポインティングデバイス、表示部34の表面に積層されたタッチパネル等で、ユーザーが操作可能に構成されている。
そして、操作部35は、操作者によってなされた操作に基づく制御信号を制御部31に出力するようになっている。
【0043】
(動態解析装置の動作)
このように構成された解析装置3の制御部31は、所定条件が成立したこと(例えば、操作卓4が操作されたこと、検出器2が放射線動画(フレーム)の生成を開始したこと、検出器2が放射線動画(フレーム)の送信を開始したこと、ユーザーによって操作部35や他の装置の操作部に所定操作がなされたこと等)を契機として、例えば図3に示すような診断支援処理を実行する機能を有している。
【0044】
この診断支援処理で、制御部31は、まず、取得処理を実行する(ステップS1)。
この取得処理において、制御部31は、呼吸をしているときの被検者の胸部が写った放射線動画を取得する。
また、本実施形態に係る取得処理において、制御部31は、呼吸を少なくとも一サイクルしているときの被検者の胸部が写った放射線動画を取得する。
本実施形態に係る制御部31は、検出器2、コンソール5又は他のシステムから、放射線動画の画像データを、通信部32を介して受信することにより取得するようになっている。
なお、解析装置3が記憶媒体の記憶内容を読み取る読取部を備えている場合には、制御部31は、記憶媒体から画像データを読み込むことにより放射線動画を取得するようになっていてもよい。
【0045】
また、本実施形態に係る制御部31は、取得処理において、所定量の息を吐いている又は吸っているときの胸部が写った放射線動画を取得する。
上記呼吸検査において第一所定量の息を吐いている又は吸っているときの胸部・・第M所定量の息を吐いている又は吸っているときの胸部を撮影した場合、制御部31は、この取得処理において、第一放射線動画・・第M放射線動画をそれぞれ取得する。
制御部31は、このような取得処理を実行することにより取得手段をなす。
【0046】
なお、制御部31は、放射線動画を取得した後、取得した放射線動画が胸部を撮影したものであるか否かを判定する処理を実行するようになっていてもよい。
また、制御部31は、放射線動画の取得を契機として診断支援処理を開始するようになっていてもよい。その場合、診断支援処理において取得処理の実行は不要である。
【0047】
放射線動画を取得した後、制御部31は、解析処理を実行する(ステップS2)。
この解析処理において、制御部31は、取得処理において取得した放射線動画に基づいて、被検者の胸部の動態を解析する。
具体的には、胸部を構成する対象部位(例えば、肺野、横隔膜、胸郭、肋骨、軌道等)の状態(例えば、濃度(信号値)、面積、体積、速度、加速度、ベクトル、もしくは位置、又はこれらの変化量、より好ましくは、濃度、面積もしくは位置、又はこれらの変化量)を解析する。
本実施形態に係る解析処理において、制御部31は、放射線動画を構成する一のフレームにおける、胸部を構成する画素の信号値(濃度)と、一のフレームと前後する他のフレームにおける画素と同一座標にある他の画素の信号値と、の差分を算出する。
上記取得処理において第一・・第M放射線動画を取得した場合、制御部31は、この解析処理において、第一放射線動画・・第M放射線動画をそれぞれ解析する。
制御部31は、このような解析処理を実行することにより解析手段をなす。
【0048】
胸部の動態を解析した後、制御部31は、抽出処理を実行する(ステップS3)。
この抽出処理において、制御部31は、解析処理において得た解析結果に基づいて、呼吸に関するインピーダンスを抽出する。
この「インピーダンス」は、ある定量値xが入力された結果出力される関数f(x)であるとも言える。
本実施形態に係る制御部31は、抽出処理において、所定量の息を吐いた又は吸ったときの肺野の呼吸機能を示す機能値を、インピーダンスとして抽出してもよい。
この「機能値」としては、例えば、全排気量、一秒量、又は一秒率等が挙げられる。
一方、所定量の息を吐き終えた又は吸い終えたときの、胸部を構成する対象部位(例えば、肺野、横隔膜、胸郭、肋骨、軌道等)の状態を抽出してもよく、この「対象部位の状態」には、例えば、濃度(信号値)、面積、体積、速度、加速度、ベクトル、もしくは位置、又はこれらの変化量が含まれ、より好ましい形態においては、濃度、面積もしくは位置、又はこれらの変化量が含まれる。
【0049】
なお、上記解析処理において第一・・第M放射線動画を解析した場合、制御部31は、この抽出処理において、第一放射線動画の解析結果に基づいて第一所定量の息を吐いた又は吸ったときの肺野の呼吸機能を示す第一機能値を抽出し・・第M放射線動画の解析結果に基づいて第M所定量の息を吐いた又は吸ったときの肺野の呼吸機能を示す第M機能値を抽出する。
すなわち、制御部31は、複数の定量値(息の量)の入力があった場合、これらに対応して複数の機能値を離散的(所定量毎)に出力することになる。
制御部31は、このような抽出処理を実行することにより抽出手段をなす。
【0050】
機能値を抽出した後、制御部31は、評価処理を実行する(ステップS4)。
この評価処理において、制御部31は、抽出手段において抽出したインピーダンス(機能値)に基づいて、胸部に関する各種項目を評価する。
評価対象としては、以下のようなものが挙げられる。
・肺野の動作
・横隔膜の動き
・心胸郭比や胸郭幅の変化
・肋骨や気道等の動き
・血流の度合い
・吐ききれなかった又は吸いきれなかった息の量(余り)
【0051】
肺野の動きを評価する場合、例えば、200mlの息を吸い込んだとき機能値と500mlの息を吸い込んだときの機能値とを比較し、次いで、500mlの息を吸い込んだときの機能値と1000mlの息を吸い込んだときの機能値とを比較する。このとき、定量値が比較的小さい場合(200mlのときと500mlのとき)の機能値の差は、多くの場合大きく出るが、定量値が比較的大きい場合(500mlのときと1000mlのとき)の機能値の差は、被検者によって小さくなったり、依然として大きかったりする。
このように、第一・・第M所定量(例えば、200ml,500ml,1000ml・・)の息を吸い込んだときの、肺野の面積や信号値の肺野内分布等の差を見ることによって、息を吸い続けていったときの肺野の膨張の変化を評価することができる。
【0052】
また、血流の度合いを評価する場合、濃度の変化から更に血流に関する解析を行うことにより可能となる。
また、吐ききれなかった又は吸いきれなかった息の量を評価する場合、例えば、呼吸検査において、1000mlの息を吸い込むことができたが2000mlの息を吸い込むことができなかった場合、その被検者が吸い込むことのできる息の上限がこれらの息の量の間にあることが推測できる。また、息を吸い込んだときに、吸いきれなかった息の余り量を知ることができれば、その余り量からも被検者が吸い込むことのできる息の上限をある程度推測できる。この場合、機能値が一つであっても評価することができる。
この被検者が息を吐く検査で1000mlの息を吐いた場合、500mlが吐ききれなかった息の量ということになる。
【0053】
対象部位の動作を評価した後、本実施形態に係る制御部31は、予測処理を実行する(ステップS5)。
この予測処理において、制御部31は、抽出処理において抽出したインピーダンスに基づいて、被検者の呼吸機能を診断するための指標を予測する。
本実施形態に係る診断支援処理においては、抽出処理の後に評価処理を実行するため、本実施形態に係る予測処理において、制御部31は、評価処理において行った(インピーダンスに基づく)評価結果に基づいて、指標を予測する。
予測する指標としては、以下のようなものが挙げられる。
・被検者が罹患している可能性のある疾患
・呼吸機能の正常/異常の度合い
・肺気量分画の項目
【0054】
呼吸機能の正常/異常の度合いを予測する場合には、被検者を呼吸検査することにより得られた指標と、健常者を呼吸検査することにより得られた指標と、を比較し、その乖離の程度に基づいて予測を行う。
【0055】
肺気量分画の項目を予測する場合には、例えば、上記肺野の動きの評価結果、すなわち肺野の膨張の変化(膨らみ方の速度低下の傾向等)を見ることによって、被検者にどれくらいの息を吸い込む能力があるかを示す指標(最大吸気量(図4参照)に相当)を予測することができる。
この他にも、同様の手法を用いることにより、従来呼吸機能を診断するのに用いられてきた肺活量、%肺活量、努力性肺活量といった指標を予測することもできる。
肺活量は、空気を胸いっぱいに吸い込みそれを全て吐き出した時の息の量である。
%肺活量は、年齢・性別に基づいて算出された予測肺活量(基準値)に対する実測肺活量の比率(%)である。
努力性肺活量は、胸いっぱいに息を吸い込み、勢いよく一気に吐き出した息の量である。
また、同様の手法を用いることにより、スパイロメーターでは測定することができなかった残気量、全肺気量といった項目も予測することができる。
また、肺気量分画の項目を予測した場合には、その予測値に基づいて、被検者が罹患している可能性のある疾患、呼吸機能の正常/異常の度合いを更に予測することもできる。
【0056】
指標を予測した後、本実施形態に係る制御部31は、保存処理を実行する(ステップS6)。
この保存処理において、制御部31は、上記抽出処理において抽出したインピーダンスを保存手段に保存させる。
保存手段は、記憶部33であってもよいし、他の装置が備える記憶部であってもよい。
なお、保存処理は、抽出処理を実行した後であればどのタイミングで実行されてもよい。
また、制御部31は、保存処理において、インピーダンスと共に、インピーダンスに関する内容(吐き出した又は吸いこんだ息の量、機能値、各種指標、予測結果のうちの少なくともいずれか)や、取得処理において取得した放射線動画を構成する複数のフレームのうちの少なくとも一つを保存するようになっていてもよい。
【0057】
インピーダンスを保存した後、本実施形態に係る制御部31は、表示制御処理を実行する(ステップS7)。
この表示制御処理において、制御部31は、抽出処理において抽出したインピーダンスに関する内容を表示手段に表示させる。
「インピーダンスに関する内容」には、吐き出した又は吸いこんだ息の量、機能値、各種指標、予測結果のうちの少なくともいずれかが含まれる。
表示手段は、表示部34であってもよいし、他の装置が備える表示部であってもよい。
なお、表示制御処理は、抽出処理を実行した後であればどのタイミングで実行されてもよい。
また、制御部31は、インピーダンスに関する内容と共に、放射線動画を表示させるようになっていてもよい。
【0058】
〔3.効果〕
以上説明してきた本実施形態に係る解析装置3及びこの解析装置3を備えるシステム100は、胸部の動態の解析結果に基づいて呼吸に関するインピーダンス、すなわち、所定量の呼気又は吸気(定量的な入力)に対応する機能値(出力)を抽出するようになっている。
つまり、解析装置3及びシステム100は、従来のように上限が定かではない呼気又は吸気の量ではなく、予め決められた呼気又は吸気の量に応じた機能値に基づいて指標を得るため、信頼性の高い指標を得ることができる。
その結果、本実施形態に係る解析装置3及びこの解析装置3を備えるシステム100によれば、被検者が努力呼吸を行わなくても呼吸機能を診断するための指標を得ることができる。
【0059】
また、被検者が努力呼吸を行わなくても済むため、技師が被検者へ努力を促す等の介入を行う必要がなくなる。その結果、技師の手間や、被検者が受ける精神的・身体的苦痛が軽減される。
また、無理のない量の呼吸で指標を得ることが可能となるため、術後間もない被検者に対しても呼吸検査を行うことが可能となる。
また、各被検者の呼吸検査がより精査されるとともに、新たな方法で予測された指標を用いることで、より被検者の状態に適した診断を行うことができる。
また、本実施形態に係る解析装置3及びシステム100によれば、残気量や全肺気量等、スパイロメーターでは測定することのできなかった項目を予測することができる可能性がある。
【0060】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
なお、ここでは、上記第一実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を焼灼する。
【0061】
(診断支援システムの解析対象及び検査方法)
本実施形態に係る呼吸機能診断支援システム(以下、システム100A)は、解析対象が上記第一実施形態と異なる。
このため、本実施形態に係るシステム100Aを用いた呼吸検査では、動画撮影を行うときの息の吐きだし方又は吸い込み方が異なる。
本実施形態に係る呼吸検査では、第一~第M所定量の息を一秒以内に吐き出している又は吸い込んでいるとき被検者の胸部を撮影する。
【0062】
(動態解析装置の動作)
本実施形態に係る動態解析装置(以下解析装置3A)は、診断支援処理で実行する一部処理が上記第一実施形態と異なっている。
具体的には、解析装置3Aの制御部31は、評価処理において、肺野の動きを評価する場合、例えば、200mlの息を一秒で吐き出したときの機能値、500mlの息を吐き出したときの機能値、1000mlの息を吐き出したときの機能値をそれぞれ比較する。
肺野面積の変化量を機能値とする場合、例えば肺野面積の変化率が200mlでは大きいが、500ml,1000mlと増えるに従ってだんだん小さくなってきた、といった比較を行う。
また、胸郭の位置の変化量を機能値とする場合、胸郭の動きが200mlではスムーズな広がりを見せていたが、500ml,1000mlと増えるに従って小刻みに震えるような動作を見せてきた、といった比較を行う。
このように、第一・・第M所定量(例えば、200ml,500ml,1000ml・・)の息を吐き出したときの、肺野の面積や信号値の肺野内分布等の差を見ることによって、息を一秒間で吐き出したときの肺野の収縮の変化を評価することができる。
【0063】
そして、予測処理において、上記肺野の動きの評価結果、すなわち肺野の収縮の変化を見ることによって、被検者に一秒間でどれくらいの息を吐き出す能力があるかを示す指標(一秒量に相当)を予測することができる。
また、一秒量に相当する指標を予測することができれば、一秒率(努力性肺活量に対する1秒量の比率)を算出することもできる。
【0064】
(効果)
以上説明してきた本実施形態に係る解析装置3A及びこの解析装置3Aを備えるシステム100Aによれば、上記第一実施形態に係る解析装置3A及びシステム100Aと同様、被検者が努力呼吸を行わなくても呼吸機能を診断するための指標を得ることができる。
【0065】
<その他>
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、解析装置3が、呼吸をしているときの被検者の胸部が写った放射線動画に基づいて、呼吸に関するインピーダンスを抽出するようになっていたが、呼吸検査において、被検者が所定量の息を吐いている又は吸っている間に、被検者の胸部の静止画を複数回繰り返し撮影し、各静止画の画素の信号値の差分を取ることにより、インピーダンスを抽出することもできる。
【0067】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0068】
100 診断支援システム
1 放射線発生装置
2 放射線検出器
3 動態解析装置
31 制御部
32 通信部
33 記憶部
34 表示部
35 操作部
4 操作卓
5 コンソール
6 報知装置
図1
図2
図3
図4