(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】管理装置及び管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240416BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20240416BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240416BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240416BHJP
H04N 5/77 20060101ALI20240416BHJP
H04N 5/92 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
H04N7/18 E
H04N7/18 U
H04N5/77
H04N5/92 010
(21)【出願番号】P 2020054251
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】下島野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 一郎
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-87141(JP,A)
【文献】特開2006-84461(JP,A)
【文献】特開2009-205227(JP,A)
【文献】特開2020-35387(JP,A)
【文献】特開2004-272477(JP,A)
【文献】特開2008-217218(JP,A)
【文献】特開2019-86895(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008122(WO,A1)
【文献】特開2015-103089(JP,A)
【文献】特開2018-151716(JP,A)
【文献】特開2004-86699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
G07C 5/00
H04N 7/18
H04N 5/77
H04N 5/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両それぞれにおいて所定の周期で測定された当該車両の位置情報と、当該車両が備えるカメラで撮影可能な方向を示すカメラ動作状態情報と、当該車両を特定する車両識別情報とを受信する受信部と、
前記受信部で受信した車両の位置情報と前記車両の位置情報測定時刻または前記受信部での受信時刻とを関連付けて前記車両識別情報毎に格納する位置履歴テーブルと、
前記受信部で受信したカメラ動作状態情報を前記車両識別情報毎に格納するカメラ情報テーブルと、を記憶する記憶部と、
前記位置履歴テーブルを参照することにより、所定の移動状態に合致する
車両である撮影対象と、前記撮影対象から所定の距離内にある他の
車両とを特定し、前記カメラ情報テーブルを参照することにより、前記他の
車両のカメラが前記撮影対象を撮影可能であるか否かを判定する制御部と、
前記制御部において撮影可能と判定した前記他の
車両に対して、前記撮影対象を撮影させるため
にカメラを制御する撮影指示情報を送信する送信部と、
を備え
、
前記所定の移動状態は、所定速度を超えた速度で走行している状態、前を走行している車両との距離が所定値を下回っている状態、後ろを走行している車両の進路を妨害するような軌跡で走行している状態、周囲の車両の動きとは無関係にジグザグ走行している状態、周囲の車両と逆方向に走行している状態、のいずれかの状態であることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記受信部は、車両が備えるカメラで撮影可能な画角の情報を更に受信し、
前記カメラ情報テーブルは、車両が備えるカメラで撮影可能な画角の情報を含み、
前記制御部は、前記カメラ情報テーブルを参照することにより、前記他の
車両のカメラの画角に前記撮影対象が存在するか否かを示す判定結果を出力し、
前記送信部は、前記制御部の判定結果が真である場合、前記他の
車両に対して
前記撮影指示情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記位置履歴テーブルを参照し、前記撮影対象の位置情報と前記他の
車両の位置情報とに基づいて、前記撮影対象が撮影範囲に含まれるように前記他の
車両のカメラ
を回転させる角度を示す回転角度情報を作成し、
前記送信部は、前記
回転角度情報を前記
撮影指示情報に含めて送信することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
前記記憶部に記憶された前記カメラ情報テーブルは、
前記車両識別情報毎に車両が備える複数のカメラそれぞれで撮影可能な方向を示す情報を格納し、
前記制御部は、前記他の
車両が備える複数のカメラそれぞれについて、当該カメラが前記撮影対象を撮影可能であるか否かを判定することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記受信部はさらに、前記他の
車両のカメラにより撮影された映像情報を受信
し、
前記記憶部は、前記受信部で受信した前記映像情報を前記撮影対象に関連付けて記憶し、
前記制御部は、指定された前記撮影対象に対応する前記映像情報を前記記憶部から読み出して再生することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項6】
コンピュータに、
複数の車両それぞれにおいて所定の周期で測定された当該車両の位置情報と、当該車両が備えるカメラで撮影可能な方向を示すカメラ動作状態情報と、当該車両を特定する車両識別情報とを受信するステップと、
前記受信するステップで受信した車両の位置情報と前記車両の位置情報測定時刻または前記受信するステップでの受信時刻とを関連付けて前記車両識別情報毎に格納する位置履歴テーブルを参照することにより、所定の移動状態に合致する
車両である撮影対象と、前記撮影対象から所定の距離内にある他の
車両とを特定するステップと、
前記受信するステップで受信したカメラ動作状態情報を前記車両識別情報毎に格納するカメラ情報テーブルを参照することにより、前記他の
車両のカメラが前記撮影対象を撮影可能であるか否かを判定するステップと、
前記撮影可能と判定した前記他の
車両に対して、前記撮影対象を撮影させるため
にカメラを制御する撮影指示情報を送信するステップと、
を実行させ
、
前記所定の移動状態は、所定速度を超えた速度で走行している状態、前を走行している車両との距離が所定値を下回っている状態、後ろを走行している車両の進路を妨害するような軌跡で走行している状態、周囲の車両の動きとは無関係にジグザグ走行している状態、周囲の車両と逆方向に走行している状態、のいずれかの状態であることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体が備える撮影機能を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車においては、交通事故が発生した場合や車上荒らし、あおり運転等の被害にあった場合に備え、証拠となる画像、映像情報を記録する事が可能なドライブレコーダを搭載するケースが増えており、自家用車やタクシーや輸送トラックだけではなく、公共の交通機関(電車や路線バスなど)に搭載されることも一般的になりつつある。
【0003】
また、近年のドライブレコーダにおいては、車載カメラにより連続的に映像を撮影し、所定時間の映像情報をデジタル形式で記録保存する方式が主流となっている。ドライブレコーダにおいて撮影される映像情報は、汎用的な符号化圧縮方式(例えばH.264 AVC)により記録に適した映像品質にエンコードされる。
【0004】
また、近年のドライブレコーダにおいては、車載カメラで撮影した映像情報をドライブレコーダ内のストレージ領域に保存する他、管理サーバに撮影した映像情報をリアルタイムで送信し、管理サーバのストレージ領域へドライブレコーダ毎の映像情報を記録する場合もある。運転時の映像情報を管理サーバに記録する事により、車両が事故を起こした際、ドライブレコーダの破損により撮影した映像情報が損失した場合においても、管理サーバで保存された映像情報により、以後の事故原因の分析作業を円滑に行う事が可能となる。
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、ドライブレコーダは動作支援サーバと通信を行い、ある車両Aが事故を起こした場合、車両Aから動作支援サーバへメッセージと事故を起こした位置情報が送信される。動作支援サーバは車両A付近に存在する他の車両にメッセージと位置情報を送信し、メッセージと位置情報を受信した車両はその位置情報が自身のカメラの視野角に入っている場合は撮影した映像情報を保持するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドライブレコーダを設置していない車両が煽り運転等の危険運転を行っている車両と事故を起こした場合、危険運転を行っている車両はドライブレコーダを備えていない、あるいは備えていても映像を記録していない可能性が高い為、事故についての証拠になる映像情報が無い状態になる可能性が高い。この為、事故原因の解明が困難になる場合がある。
【0008】
特許文献1に開示された技術によれば、事故を起こした車両Aの周囲の車両へ動作支援サーバからメッセージが送信され、周囲の車両により事故現場の映像情報が記録されるが、車両Aが車載カメラの視野角に入っていない場合は映像情報が保持されず、事故原因の解明が困難になる場合があった。すなわち、特許文献1に開示された技術によれば、周囲の車両へ指示がなされるのは、事故が発生した後であるため、周囲の車両が事故の映像情報を撮影している可能性は必ずしも高くなく、事故原因解明等に必要な映像情報を十分に撮影記録できないという問題があった。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、周囲の移動体により対象となる移動体の撮影を確実に行うことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の管理装置は、各時刻の移動体の位置情報を移動体毎に格納する位置履歴テーブルと、移動体の周囲の所定方向を撮影可能な少なくとも1つのカメラの情報を移動体毎に格納するカメラ情報テーブルと、を記憶する記憶部と、前記位置履歴テーブルを参照することにより、所定の移動状態に合致する移動体である撮影対象と、前記撮影対象から所定の距離内にある他の移動体とを特定し、前記カメラ情報テーブルを参照することにより、前記他の移動体のカメラが前記撮影対象を撮影可能であるか否かを判定する制御部と、前記制御部において撮影可能と判定した前記他の移動体に対して、前記撮影対象を撮影させるための制御情報を送信する送信部と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周囲の移動体により対象となる移動体の撮影を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係る管理システムの構成図である。
【
図2】
図1の車両内に設置される実施の形態1に係るドライブレコーダの構成図である。
【
図3】実施の形態1に係る管理装置の構成図である。
【
図4】
図2のドライブレコーダが
図3の管理装置へ送信するカメラ情報パケットの構成例である。
【
図6】
図3の車両走行履歴テーブルの構成例である。
【
図8】車両の近隣を同一方向に走行している他の車両の例である。
【
図9】実施の形態1におけるカメラ回転角度の計算方法を説明する図である。
【
図10】
図3の管理装置から
図2のドライブレコーダへ送信される撮影方向変更パケットの構成例である。
【
図11】
図11(a)、
図11(b)は、車両が
図9の撮影方向変更パケットを受信する前と、受信した後の車両の撮影範囲の例である。
【
図12】実施の形態1の管理装置による管理手順を示すフローチャートである。
【
図13】映像情報を管理するための映像情報管理テーブルの例である。
【
図14】対象車両が撮影された映像情報を再生する画面の構成例である。
【
図15】
図3の管理装置の記憶部に記録されるカメラ画角テーブルの構成例である。
【
図16】車両の近隣の他の車両の撮影範囲の例を示す図である。
【
図17】
図3の管理装置から
図2のドライブレコーダへ送信される映像情報送信指示パケットの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る管理システムの構成図である。
【0015】
管理装置200は通信網300と中継局400を経由し、各車両500との通信を行う。通信網300は、4G、5G等の携帯電話回線でもよく、インターネット回線でもよい。各車両500と中継局400は無線での通信が行われる。各車両500は、車両内にドライブレコーダを搭載しているものとする。また、車両500、中継局400は図示している数より多くてもよく、少なくてもよい。なお、管理装置200を管理サーバと呼ぶこともある。また、中継局400を基地局と呼ぶこともある。
【0016】
なお、本実施の形態においては、車両500が自動車である例を説明するが、これに限られるものではない。車両500は、自転車、バイク、鉄道車両等であってもよい。また、地上を走行する車両に限らず、ドローン、ヘリコプター、飛行機等の飛行体であってもよい。また、撮影機能のあるウェアラブルデバイス等を装着した人(歩行者)であってもよい。自動車、ドローン、歩行者などをまとめて「移動体」と呼ぶことができる。すなわち、車両500は移動体の一例であり、以下に説明する本実施の形態の処理を移動体に搭載された撮像装置(カメラ)に適用することができる。管理装置200は、複数の移動体(車両500)を管理する。
【0017】
図2は、
図1の車両500内に設置される本実施の形態に係るドライブレコーダ100の構成図である。
【0018】
表示部10は、液晶ディスプレイ等で構成されており、ドライブレコーダ100の操作や、設定状態の表示を行うインターフェースである。
【0019】
入力部20は、ドライブレコーダ100の操作を行うための各種ボタン、タッチパネル等の入力デバイスと、入力デバイスの状態を制御部50に通知するためのインターフェースを含む。なお、タッチパネルを用いて、表示部10と入力部20を一体的に構成してもよい。なお、入力部20は操作部とも呼ばれる。
【0020】
位置情報特定部30はGPS(Global Positioning System)等で構成され、車両500の位置情報を取得する際に使用される。
【0021】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等で構成され、ドライブレコーダ100全体の制御を行う。通信部40は、無線通信インターフェースにより構成されている。通信部40は、制御部50からの制御(指示)により、中継局400、通信網300を経由して管理装置200と通信を行う。通信部40は、データを受信する受信部(不図示)と、データを送信する送信部(不図示)とを含む。記憶部70は、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性記憶媒体で構成される。あるいは、揮発性記憶媒体と不揮発性記憶媒体を組み合わせて記憶部70を構成してもよい。記憶部70には、ドライブレコーダ100の処理に必要な各種の設定情報(設定データ)が記憶される。また記憶部70は、ドライブレコーダが動作(処理)を行うためのプログラム(ソフトウェア)を記憶してもよい。制御部50は、記憶部70に記憶されたプログラムに従って処理を実行してもよい。
【0022】
カメラ部60は車両500の前後、あるいは左右、あるいはそれ以上の方向に設置され、車両500の走行中(停車中も含む)の車両の周囲を撮影する。また、車両500の車内を撮影してもよい。また、
図2では省略しているが、ドライブレコーダ100は、音声(音響)を入力(収音)するための音声入力部(不図示)を備えていてもよい。音声入力部は、例えばマイクで構成されており、車内の音声を収音するためのマイクと、車外の音声を収音するためのマイクを備えていてもよい。つまり、音声入力部は、1つ以上のマイクで構成されていてもよい。撮影された映像情報90は制御部50によりエンコードされ、ストレージ部80に記録される。映像情報90は、音声入力部で収音された音声信号(音響信号)を含んでいてもよい。つまり、本実施の形態における映像情報90は、映像情報に限らず、音声情報(音響情報)を含む概念である。制御部50は、通信部40を介してエンコードされた映像情報を管理装置200へアップロード(送信)する。また、制御部50はカメラ部60の撮影方向、画角、倍率などを制御できることが望ましい。さらに制御部50は、音声入力部で収音される音の方向や距離を制御してもよい。例えば、マイクロフォンアレイ等を用いて、車両500の前方や右側方などの特定の方向の音を重点的に収音してもよい。さらに制御部50は、カメラ部60の撮影方向、画角、倍率などと、音声入力部の収音方向や収音距離とを連動させて(関連付けて)制御してもよい。
【0023】
図3は、本実施の形態に係る管理装置200の構成図である。
【0024】
入力部210は、管理装置200の操作を行うための各種ボタン、タッチパネル等の入力デバイスと、入力デバイスの状態を制御部230に通知するためのインターフェースとを含む。入力部210は、操作部とも呼ばれる。表示部205は、液晶ディスプレイ等で構成されており、管理装置200のユーザ(管理者等)が、操作を行う際に必要な情報を表示するインターフェースである。なお、タッチパネルを用いて、表示部205と入力部210を一体的に構成してもよい。また、入力部210は、管理装置200とは別の入力装置であってもよく、表示部205は、管理装置200とは別の表示装置であってもよい。例えば、管理装置200から入力部210および表示部205を省略し、管理装置200にインターネット等のネットワークで接続された他のコンピュータ(管理端末、クライアント端末)の入力装置と表示装置を用いてもよい。
【0025】
制御部230は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等で構成され、管理装置200全体の制御を行う。制御部230を「処理部」あるいは「判定部」と呼ぶ場合もある。通信部220は、有線通信インターフェースあるいは無線通信インターフェースにより構成されている。通信部220は、制御部230からの制御(指示)により、通信網300、中継局400を経由してドライブレコーダ100と通信を行う。通信部220は、データを受信する受信部(不図示)と、データを送信する送信部(不図示)とを含む。
【0026】
記憶部240は、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性記憶媒体で構成される。あるいは、揮発性記憶媒体と不揮発性記憶媒体を組み合わせて記憶部240を構成してもよい。記憶部240には車両走行履歴テーブル250及びカメラ情報テーブル260が記録される。また記憶部240は、管理装置200が動作(処理)を行うためのプログラム(ソフトウェア)を記憶してもよい。制御部230は、記憶部240に記憶されたプログラムに従って処理を実行してもよい。車両走行履歴テーブル250は各車両500の走行履歴、すなわち時間経過毎の車両500の位置情報(緯度、経度)が記録される。車両走行履歴テーブル250は、車両500の位置情報の時系列データを記憶するともいえる。カメラ情報テーブル260はシステム内の各車両500のドライブレコーダ100に搭載されているカメラの動作状態についての情報が記録される。カメラ情報テーブル260の詳細は後述する。
【0027】
ストレージ部270は、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性記憶媒体で構成される。ストレージ部270にはドライブレコーダ100からアップロードされた映像情報280が記録される。後述するように、管理装置200からの撮影指示情報を受信したドライブレコーダ100は、映像情報280を管理装置200にアップロード(送信)する。また、ストレージ部270には映像情報280を管理するための映像情報管理テーブルも記録される。
【0028】
計時部290は現在の時間情報を制御部230に供給する。具体的には、計時部290は、現在日時(日付と時刻)の情報を制御部230に供給する。
【0029】
次に、本実施の形態のドライブレコーダ100および管理装置200の処理の詳細を説明する。
【0030】
図1に示した各車両500は走行中、ドライブレコーダ100の制御部50は所定の周期(例えば1秒)で位置情報特定部30から車両500の位置情報(緯度、経度)を取得し、管理装置200へ送信する。なお、制御部50は、位置情報だけでなく、位置情報を測定した測定時刻(測定日時)を位置情報と対応付けて管理装置200に送信してもよい。
【0031】
また、ドライブレコーダ100の制御部50は所定の周期(例えば1分)でカメラ部60より設置されている各カメラの動作状態を取得する。制御部50はカメラ部60から取得した各カメラの動作状態をパケット化し、通信部40を経由して管理装置200へ送信する。本実施の形態では上記パケットを「カメラ情報パケット」と呼ぶ。
【0032】
図4は、ドライブレコーダ100が管理装置200へ送信するカメラ情報パケットの構成例である。
【0033】
車両IDには、本システムで管理されている車両500のID(識別情報)が記載される。前カメラ、後カメラ、左カメラ、右カメラの各フィールドは、車両500内の各車載カメラの設置情報(設置ステータス)である。ここでは、車両500の前方を撮影可能なカメラを「前カメラ」とし、車両500の後方を撮影可能なカメラを「後カメラ」とし、車両500の左方向を撮影可能なカメラを「左カメラ」とし、車両500の右方向を撮影可能なカメラを「右カメラ」としている。カメラが設置されていない場合は「0」、カメラが設置されている場合は「1」が記載される。なお、本図の例では、車両500は最大4つのカメラを設置可能であるが、この例に限定されるものではない。車両500に設置可能なカメラの数は4より多くてもよく、4より少なくてもよい。つまり、ドライブレコーダ100は、車両500の周囲の所定方向を撮影可能な少なくとも1つのカメラの情報をカメラ情報パケットとして送信すればよい。また、「前カメラ」、「後カメラ」といった方向の分類に限らず、車両の周囲の全方向(360度)を撮影可能な「全方位(全方向)カメラ」といった分類を用いてもよい。つまり、車両500の周囲の所定方向は、全方位であってもよい。また、車両500は各車載カメラの動作状況をモニターし、それをもとにカメラ情報パケットを作成してもよい。例えば、各カメラが正常動作している場合は「1」、各カメラが正常に動作していない場合(故障等の場合)は「0」を設置ステータスに記録してもよい。この場合、設置ステータスは、各カメラの動作情報を示すため、動作ステータスと呼んでもよい。カメラの情報として動作ステータスを用いると、各カメラが車両500の周囲の所定の方向を撮影可能であるか否かをより正確に(精度よく)示すことができる。また、カメラの設置情報と動作情報の両方をそれぞれカメラ情報パケットに入れてもよい。また、車両500は、音声入力部の設置状態や動作状態を示す情報をカメラ情報パケットに入れてもよい。
【0034】
管理装置200の制御部230は、通信部220(受信部)を経由して各車両500のドライブレコーダ100から送信されたカメラ情報パケットを受信し、カメラ情報テーブル260に記録する。
【0035】
図5は、
図3のカメラ情報テーブル260の構成例である。カメラ情報テーブル260の各パラメータ(各フィールド)は、
図4で説明した内容と同じである。管理装置200の制御部230はドライブレコーダ100からカメラ情報パケットを受信した際、カメラ情報テーブル260へ受信したカメラ情報パケットの内容で更新(上書き)する。カメラ情報テーブル260に車両500の記録が存在しない場合、新たにカメラ情報のレコードを追加する。すなわち、カメラ情報テーブル260には、車両500毎の最新の車載カメラに関する情報が記録されている。なお、管理装置200が管理する複数の車両500の全てがカメラを設置している(備えている)必要はない。例えば、後述するように、撮影対象と判定された車両(車両X)などは、カメラを設置していない場合がある。つまり、管理装置200が管理する複数の車両500のうち、少なくとも1つの車両500がカメラを備えていればよい。そして、カメラ情報テーブル260は、カメラを備えている車両500(ドライブレコーダ100)についての情報を記録すればよく、カメラを備えていない車両500についての記録を省略してもよい。
【0036】
また、管理装置200の制御部230は、各車両500のドライブレコーダ100から送信された車両500の位置情報(緯度、経度)を通信部220(受信部)を経由して受信した後、車両走行履歴テーブル250に記録する。
【0037】
図6は、
図3の車両走行履歴テーブル250の構成例である。管理装置200の制御部230は通信部220を経由しドライブレコーダ100から位置情報を受信した時、計時部290から現時刻を取得し、車両500毎のテーブルに時刻(受信時刻)と共に車両の位置情報を記録する。なお、制御部230は、ドライブレコーダから位置情報を測定した測定時刻を受信した場合には、それを車両走行履歴テーブル250に記録してもよい。受信時刻の代わりに測定時刻を記録してもよいし、受信時刻と測定時刻を両方記録してもよい。また、
図6では省略しているが、時刻だけでなく日付を記録してもよい。つまり、受信日時や測定日時を車両走行履歴テーブル250に記録してもよい。車両走行履歴テーブル250は、管理装置200が管理する複数の車両500について、車両ごとに時刻と位置情報とを関連付けて記憶する。本図では、車両ID:001、ID:002、ID:003、ID:004、ID:005、及びID:006の6台の車両500それぞれに対応するテーブルの構成例を示す。ただし、車両500ごとにテーブルを分ける構成に限定される訳ではない。例えば、1つのテーブルに、車両IDと時刻と位置情報とを関連付けて記憶してもよい。また当然のことであるが、
図6に示す6台の車両500は、あくまでも例示であって、車両走行履歴テーブル250に記録される車両500の数は、これより多くてもよいし、少なくてもよい。車両走行履歴テーブル250には、複数(2つ以上)の車両500の位置情報が車両500ごとに記録されていればよい。時刻の記載例である「10:10:00」の表記は「10時00分00秒」であることを表す。車両500毎のテーブルは所定期間(例えば1時間分)の時刻と位置情報を記憶する。所定期間を超えて位置情報を記録する場合、時刻が古いレコードから順に削除される。すなわち、車両走行履歴テーブル250には、車両500毎の所定期間分の位置情報が記録されている。車両走行履歴テーブル250は、車両500(移動体)の位置情報の履歴(時系列データ)を記録するため、「位置履歴テーブル」、あるいは「位置情報履歴テーブル」と呼ばれる場合もある。管理装置200は、複数の車両500の位置情報を管理(記録)し、その複数の車両500のうちの少なくとも1つの車両500について、当該車両の周囲の所定方向を撮影する少なくとも1つのカメラの情報を管理(記録)する。
【0038】
管理装置200の制御部230は、所定の周期(例えば1秒間)毎に記憶部240の車両走行履歴テーブル250を参照し、車両の位置情報(緯度、経度)の履歴をもとに、危険な運転を行っている車両が存在するか否かを判定する。すなわち、制御部230は、車両走行履歴テーブル250を参照し、車両の位置情報(緯度、経度)の履歴をもとに、所定の移動状態(運転状態)に合致する(所定の移動条件を満たす)車両が存在するか否かを判定する。
図7は、危険な運転に対応する所定の移動パターンの例、つまり所定の移動状態の例である。本図において、矢印は車両の進行方向を示す。また、矢印の長さは車両の速度を示す。矢印が長いほど、車両の速度が速いことを示す。また、ドット(点線)は、所定時間ごとの車両の位置、つまり車両が移動した軌跡を示しており、ドットの間隔が広いほど車両の速度が速く、ドットの間隔が狭いほど車両の速度が遅いことを示している。
図7(a)に示す様に、ある車両Xの位置情報(緯度、経度)の変化量(単位時間当たりの変化量)が一定値を超えている場合、車両Xは制限スピードを超過して走行していると判断する事が出来る。また、
図7(b)に示す様に、ある車両の後ろを車両Xが走行しており、この車両同士の距離(車間距離)が一定値を下回っている場合、車両Xは煽り運転を行っていると判断する事が出来る。また、
図7(c)に示す様に、複数車線の道路上において、車両の前を車両Xが走行しており、後ろの車両の進路をふさぐ形で(後ろの車両に追い越しをさせないように)車両Xの位置情報(緯度、経度)が進行方向に対してジグザグになっている場合、車両Xは煽り運転を行っていると判断する事が出来る。また、
図7(d)に示す様に、周囲の車両の動きあるいは道路の形状とは無関係に車両Xの位置情報(緯度、経度)が進行方向に対してジグザグになっている場合は、車両Xは居眠り運転されていると判断する事が出来る。また、
図7(e)に示す様に、ある地点において、他の多くの車両が進んでいる方角とは逆に走行している車両Xは、道路を逆走していると判断する事が出来る。つまり、制御部230は、移動情報の時系列データが所定の条件(所定のパターン)を満たす車両500を危険運転を行っている車両(事故を起こす可能性が高い車両)として特定する。
【0039】
また、管理装置200のストレージ部270に記録されている各ドライブレコーダ100から送信された映像情報280を解析し、危険な運転を行っている車両を特定してもよい。例えば、信号無視を繰り返している車両や、違法な改造を行っている車両などを映像認識(画像認識)技術をもとに車両Xとして特定(判定)する。また、映像情報をもとに、過積載の車両や積み荷が落下しそうな車両を特定してもよい。
【0040】
管理装置200の制御部230は、危険運転を行っている車両Xを検出した場合、車両走行履歴テーブル250を参照し、車両Xの近隣(近傍)を同一方向に走行している他の車両を特定する。具体的には、車両Xとの距離が所定距離以内であり、かつ同一方向に走行している他の車両Yを特定する。この所定距離は、車両Yから車両Xがある程度の大きさで撮影可能な距離として定められる。またさらに、一定時間以上、車両Xの近隣を同一方向に走行している車両を特定してもよい。
【0041】
図8は、車両Xの近隣を同一方向に走行している車両ID:001、車両ID:002、車両ID:003、車両ID:005の例である。本図において、車両Xを撮影可能な車両Yとの距離は所定距離Lとしている。車両ID:001、車両ID:003、および車両ID:005は車両Xから所定距離L以内にあるが、車両ID:002は車両から所定距離L以内にはない。ここでは車両Xから所定距離L以内にある車両が車両Xの近隣の車両Yとして特定される。すなわち、本図では車両ID:001、車両ID:003及び車両ID:005が車両Yとして特定される。なお、本図では車両Xを撮影可能な範囲(所定の範囲)として、車両Xを中心とした半径が所定距離Lである円の範囲を用いているが、他の任意の形状であってもよい。例えば、車両Xを中心とし、一辺の長さが所定距離Lである正方形の範囲を所定の範囲としてもよい。
【0042】
次に制御部230は、車両Xと、車両Xの近隣を同一方向に走行している他の車両との位置関係を調査し、各車両において車両Xを撮影する為に使用するカメラを決定する。
【0043】
図8の例では、車両ID:001は車両Xの左前方を走行している。この為、車両ID:001が車両Xの撮影を行う場合は、後方向に設置しているリアカメラを使用する。車両ID:003は車両Xの右後方を走行している。この為、車両ID:003が車両Xの撮影を行う場合は、前方向に設置しているフロントカメラを使用する。車両ID:005は車両Xの右前方を走行している。この為、車両ID:005が車両Xの撮影を行う場合は、後方向に設置しているリアカメラを使用する。
【0044】
次に制御部230は、カメラ情報テーブル260を参照し、車両Xの近隣を同一方向に走行している車両が撮影する方向にカメラが設置されているかを調査し、撮影可能か否かを判定する。
【0045】
図5および
図8の例において、車両ID:001はリアカメラにより車両Xを撮影する為、カメラ情報テーブル260の後カメラの列を参照する。車両ID:001の後カメラは「1」が記録されている為、リアカメラが設置されており、車両ID:001は車両Xを撮影可能と判定される。車両ID:003はフロントカメラにより車両Xを撮影する為、カメラ情報テーブル260の前カメラの列を参照する。車両ID:003の前カメラは「1」が記録されている為、フロントカメラが設置されており、車両ID:003は車両Xを撮影可能と判定される。車両ID:005はリアカメラにより車両Xを撮影する為、カメラ情報テーブル260の後カメラの列を参照する。車両ID:005の後カメラは「0」が記録されている為、リアカメラが設置されていない。この為、車両ID:005は車両Xを撮影するのは不可能と判定される。
【0046】
次に管理装置200の制御部230は、撮影を行う車両Yと車両Xの最新の緯度、経度から、撮影を行う車両Yのカメラにより車両Xを撮影する為に必要となるカメラ回転角度(撮影方向)θを計算する。
【0047】
図9は、本実施の形態におけるカメラ回転角度θの計算方法を説明する図である。本図において、(α1、β1)は車両Yの最新の(経度、緯度)であり、(α2、β2)は車両Xの最新の(経度、緯度)である。カメラ回転角度θは以下の式により求められる。
Δα=α2-α1 (式1)
Δβ=β2-β1 (式2)
Δx=Ax×Δα (式3)
Δy=Ay×Δβ (式4)
θ=tan
-1(Δx/Δy) (式5)
なお、(式3)においてAxは、緯度β1における経度1度当りの距離であり、例えば、β1が北緯35度の場合、約91kmになる。また、(式4)においてAyは、経度α1における緯度1度当りの距離であり、例えば、α1が東経135度の場合、Ayは約111kmになる。
【0048】
次に制御部230は、車両500に設置されているカメラの撮影する方向を変更する指示を示す「撮影方向変更パケット」を、通信部220(送信部)を経由して車両Yへ送信する。
【0049】
図10は、管理装置200からドライブレコーダ100へ送信される撮影方向変更パケットの構成例である。本図は、後方向に設置しているリアカメラを反時計回りに46°回転させる指示の例である。本実施の形態では、時計回りの回転方向を正の角度としているため、「-46」は、反時計回りに「46度」回転させることを示す。なお、撮影方向変更パケットを「撮影方向指示情報」、あるいは「撮影指示情報」、あるいは「撮影制御情報」と呼ぶこともある。つまり、撮影方向変更パケットは、車両Y(撮影車両)に車両X(撮影対象)を撮影させるための制御情報(制御信号)の一例である。すなわち、通信部220(送信部)は、撮影車両に対して、撮影対象を撮影させるための制御情報を送信する。
【0050】
ドライブレコーダ100の制御部50は、通信部40(受信部)を経由して撮影方向変更パケットを受信した場合、設置された各方向のカメラを指示された値で回転させた後、映像情報の撮影を開始する。撮影された映像情報は通信部40を経由してリアルタイムで管理装置200へ送信される。上述したように、この映像情報に音声情報が含まれていてもよい。管理装置200の制御部230は、ドライブレコーダ100から送信された映像情報を通信部220(受信部)を経由して受信した場合、ストレージ部270に記録する。この際、ストレージ部270は、映像情報と、撮影対象である車両Xの車両IDと、撮影を行っている車両である車両Yの車両IDと、車両Xの位置情報と、車両Yの位置情報と、撮影方向変更パケットと、撮影日時とを関連付けて映像情報管理テーブルとして記録する。映像情報管理テーブルの詳細については後述する。なお、本実施の形態では、撮影指示情報(制御情報)を受信したドライブレコーダ100が映像情報を管理装置200に送信するが、これに限定されるものではない。ドライブレコーダ100(車両500)は、撮影指示情報を受信したか否かに関わらず、自車両で撮影した映像情報を管理装置200に送信してもよい。例えば、ドライブレコーダ100は、撮影指示情報の有無に関わらず、所定の時間(例えば、1秒)ごと、あるいは所定容量のデータ(例えば、10MB)が蓄積されるごとに、映像情報を管理装置200に送信してもよい。撮影指示情報を受信せずに映像情報を送信した場合、映像情報管理テーブルにおける撮影対象の車両IDには、該当なしを示す「NULL」を記録するか、あるいは撮影を行った車両(撮影車両)の車両IDを記録すればよい。
【0051】
本実施の形態では、車両ID:001に
図10の撮影方向変更パケットを送信する事により、車両ID:001の後方向に設置されたリアカメラが反時計回りに46°回転し、映像情報の撮影を開始する。また、車両ID:003にもフロントカメラの撮影方向変更パケットが送信される。
【0052】
図11(a)、
図11(b)は、撮影方向変更パケットを受信する前と、受信した後の車両500の撮影範囲の変化の一例を説明するための図である。本図は、車両ID:001及び車両ID:003が車両Xを撮影する例を示しており、撮影方向変更パケットを受信する前と、受信した後の撮影範囲の例を示す。
図11(a)は、撮影方向変更パケット受信前の状態を示している。車両ID:001はリアカメラにて自車両の後方向の映像情報のみを撮影しており、リアカメラの回転角度は「0度」の状態である。車両ID:003はフロントカメラにて自車両の前方向の映像情報のみを撮影しており、フロントカメラの回転角度は「0度」の状態である。
図11(b)は、撮影方向変更パケット受信後の状態を示している。車両ID:001は、
図10に例示した撮影方向変更パケットを受信したため、リアカメラを反時計回りに「46度」回転させた状態である。このため、リアカメラにより、車両Xの状況および車両Xの前方の状況をより詳細に撮影することができる。車両ID:003は、別の撮影方向変更パケット(不図示)を受信し、フロントカメラを反時計回りに撮影方向変更パケットで指定された角度だけ回転させた状態である。このため、フロントカメラにより、車両Xの状況および車両Xの後方の状況をより詳細に撮影することができる。
【0053】
本実施の形態によれば、管理装置200により各車両の走行履歴を管理し、危険な運転を行っている可能性の高い車両については、近隣に存在している車両のカメラにより当該の車両の撮影を行い、管理装置200へ映像情報を送信する。
【0054】
危険な運転を行っている車両Xの走行時の映像情報を、可能な限り管理装置200に記録することにより、当該の車両Xあるいは周囲の車両が事故を起こした場合であっても、管理装置200に記録されている映像情報280により事故原因の分析作業を円滑に行う事が可能となる。また、ドライブレコーダ100を設置していない車両が煽り運転等の被害にあった場合においても証拠となる映像情報280を警察等に提出する事が可能となる。
【0055】
図12は、本実施の形態の管理装置200による管理手順を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS100において、制御部230は記憶部240の車両走行履歴テーブル250、及びストレージ部270の映像情報280を参照し、危険な運転を行っている車両Xが存在するか否かを判定する。例えば、車両500の位置情報の変化のパターンが
図7に示す危険運転のいずれかのパターンに合致する車両が存在するか否かを判定する。すなわち、撮影対象に関する所定条件を満たす車両Xが存在するか否かを判定する。車両Xが存在する場合(S100:Yes)は、ステップS110に進む。車両Xが存在しない場合(S100:No)は、ステップS100に戻って処理を繰り返す。
【0057】
ステップS110 において、制御部230は記憶部240の車両走行履歴テーブル250を参照し、車両Xの近隣(所定距離以内)を同一方向に走行している車両Yが存在するか否かを判定する。すなわち、撮影対象車両Xの位置情報と所定の関係にある撮影候補車両Yが存在する否かを判定する。車両Xの近隣を同一方向に走行している車両Yが1以上存在する場合(S110:Yes)は、ステップS120に進む。車両Xの近隣を同一方向に走行している車両Yが存在しない場合(S110:No)は、処理を終了する。
【0058】
ステップS120において、制御部230はステップS110で特定された車両Xの撮影候補車両Yが、車両Xの方向を撮影する際に必要となるカメラを決定(特定)する。つまり、撮影候補車両Yが車両Xを撮影するための撮影方向を決定する。撮影候補車両Yが複数存在する場合は、それぞれについて、車両Xを撮影するために必要なカメラを特定する。ステップS130に進む。
【0059】
ステップS130において、制御部230は記憶部240のカメラ情報テーブル260を参照し、車両Xの撮影候補車両YがステップS120で決定した撮影方向を撮影可能なカメラを設置しているか否かを判定する。1以上の車両Yがその条件を満たすカメラを設置している場合(S130:Yes)は、ステップS140に進む。全ての車両Yがその条件を満たすカメラを設置していない場合(S130:No)は、処理を終了する。なお、ステップS130でYesと判定される撮影候補車両Yは、車両Xを撮影可能なカメラを搭載している車両であるため、「撮影可能車両Y」とも呼ばれる。
【0060】
ステップS140において、制御部230は車両Xを撮影する為のカメラのカメラ回転角度θを撮影可能車両Y毎に計算する。その後、ステップS150に進む。
【0061】
ステップS150において、制御部230は車両Xの撮影可能車両Yへ通信部220を経由して撮影方向変更パケットを送信する。なお、撮影可能車両Yが複数存在する場合には、それぞれの車両に対して、それぞれの撮影方向変更パケットを送信する。その後処理を終了する。
【0062】
なお上述の説明では、ドライブレコーダ100のカメラの向きは可変であるとしたが、カメラの向きは固定であってもよい。その場合、管理装置200の制御部230はカメラ回転角度θの計算を省略することができる。またその場合、撮影指示情報(撮影方向変更パケット)には、カメラの回転角度に関する情報を省略でき、車両500に搭載されたどのカメラで撮影すべきかを示す情報が含まれていればよい。また、車両500に搭載されたカメラが1つである場合や全方位カメラを搭載している場合には、どのカメラで撮影すべきかを示す情報も省略できる。つまり、撮影指示情報には、回転角度や使用すべきカメラに関する情報が含まれていなくてもよい。
【0063】
また管理装置200から撮影方向変更パケット(撮影指示情報)を受信した車両Y(撮影可能車両)は、実際に車両Xを撮影するか否かを判断してもよい。例えば、車両Yの運転者の運転状態(安全運転をしているか等)、運転者の体調(疲れや眠気を感じる度合い)が良好であれば、車両Xの映像情報を撮影し、これらの条件が悪い場合には車両Xの映像情報を撮影しないと判定してもよい。あるいは、車両Y(自車両)の状態(エンジン等の状態)が悪い場合には、車両Xを撮影しないと判定してもよい。つまり、車両Y(自車両)に関する状態が悪い(リスクが高い)場合には、自車両に関する映像情報を撮影することを優先し、車両Xに関する映像情報を撮影しなくてもよい。このような判断(判定)は、車両Yのドライブレコーダ100が自動的に行ってもよいし、車両Yのドライブレコーダ100の表示部10に、「車両Xを撮影する指示が来ていますが、撮影しますか?」といった車両Yの運転者に向けたメッセージを表示し、車両Yの運転者が判断(選択)してもよい。
【0064】
図13は、ドライブレコーダ100から管理装置200へ送信された映像情報を管理するための映像情報管理テーブルの例である。本テーブルは管理装置200のストレージ部270に映像情報280と共に記録される。各ドライブレコーダ100で撮影された映像情報、撮影日時、撮影対象の車両のID、撮影を行っている車両のID、撮影する為のカメラのID、及びカメラ回転角度は、定期的に通信部40を経由して管理装置200へアップロードされ、制御部230によりストレージ部270の映像情報管理テーブルに記録される。
【0065】
図13は、危険運転を行っている車両ID:003を車両ID:001、車両ID:002、車両ID:004、車両ID:006、車両ID:008が撮影している例を示す。
【0066】
本図に示すように、映像情報管理テーブルは、撮影日時と、対象車両ID(撮影対象となる車両Xの車両ID)と、撮影車両ID(車両Xを撮影した車両Yの車両ID)と、カメラID(カメラ識別情報)と、回転角度と、ファイル名(映像情報が記録されたファイル名)とを関連付けて記憶する。
【0067】
撮影日時は各車両のドライブレコーダ100が撮影を行った日付および時刻である。撮影日時の記載例である「2020/2/1 10:10:00」の表記は「2020年2月1日 10時00分00秒」であることを表す。本図に示す例では、1秒ごとに映像情報を記録している。対象車両IDは撮影対象車両(車両X)の車両IDである。典型的には、危険運転をしていると検出された車両であるが、これに限定されるものではない。例えば、過去に危険運転をした回数が多い車両、つまり危険運転をする可能性が高い車両を撮影対象としてもよい。あるいは、カメラが故障している車両や、カメラを搭載していない車両を撮影対象としてもよい。撮影車両IDはカメラを搭載しており、対象車両の撮影を行っている車両(車両Y)のIDである。カメラIDは撮影車両が撮影に使用しているカメラを識別するIDである。
図13において、「前」は前方向、「後」は後方向、「左」は左方向、「右」は右方向の撮影用に設置されたカメラを表す。つまり、本図の例では、「前」、「後」、「左」、「右」といったカメラの設置位置をカメラIDとして用いているが、これに限定される訳ではなく、任意の数値や文字列をカメラIDとして用いることができる。回転角度は撮影時にカメラを回転させた角度(度数)となる。本実施の形態では、通常のカメラの向きを基準に時計回りに回転させた角度を正(プラス)とし、反時計回りに回転させた角度を負(マイナス)としている。もちろん、角度の表記方法はこれに限定されるものではない。ファイル名は各車両で撮影された映像(映像データ)を管理装置200のストレージ部270へ記録した際のファイル名であり、本図の例では映像データは1秒単位で異なるファイルに記録されている。ただし、これに限らず、映像データを任意の形式でストレージ部270に格納することができる。例えば、映像情報管理テーブルの中に直接映像データ(圧縮された映像データであるバイナリデータ)を記録してもよい。
【0068】
管理装置200は、ストレージ部270に記録された映像情報280を表示部205に表示してもよい。
図14は、管理装置200のストレージ部270に記録された映像情報280、および
図13で説明した映像情報管理テーブルを使用し、対象車両が撮影された映像情報を再生し、表示部205に表示する画面の構成例である。なお、映像情報は、映像そのもののデータである映像データと、映像に付随するメタデータや属性データなどの付加データとを含む。
【0069】
管理装置200のユーザが、画面上部の「再生開始日時」と「再生終了日時」と車両IDを指定し、再生ボタンを押すと、映像データの再生が開始される。例えば、ある車両に関係する事故が発生した場合、その事故の関係者(被害者、警察、保険会社等)が管理装置200のユーザとなることができる。例えば、ユーザは、事故が発生した日時をもとに、その前後の日時を再生開始日時と再生終了日時に指定し、事故に関係する車両の車両IDを指定する。事故に関係する車両が複数存在する場合には、1台ずつ車両IDを指定してもよいし、複数の車両IDをまとめて指定できるようにしてもよい。複数の車両IDが指定された場合、それらを「OR条件」として解釈し、それらの少なくとも1つが映像場管理テーブルの対象車両ID(撮影対象)に一致する映像情報を再生対象とすればよい。また、指定された車両IDが映像場管理テーブルの撮影車両ID(撮影車両)に一致する映像情報を再生対象にしてもよい。
【0070】
ユーザが再生ボタンを押すと、管理装置200は以下の処理を実行する。具体的には、まず制御部230は、映像情報管理テーブルを参照し、対象車両IDが指定された車両IDと一致し、かつ撮影日時が再生開始日時から撮影終了日時までの範囲に含まれるレコード(行)を特定する。次に、制御部230は、特定したレコードのファイル名に記載されているファイルからデータを読み出し、圧縮された映像データのデコード処理等を行って映像情報280を再生し、表示部205(表示装置)の画面に表示する。つまり、制御部230は、入力部210により指定された撮影対象(この場合、再生対象ともいえる)の車両500に関する映像情報を再生する。このように制御部230は、映像情報280を再生する機能をもつため、制御部230は再生処理部(不図示)を含むともいえる。また、再生時間の経過に伴って、画面上部の「経過時間」が更新されて表示される。本図の例では、経過時間は、再生開始日時からの経過時間を示すが、再生中の映像の記録日時を直接表示してもよい。このような処理により、ユーザが指定した時間帯(再生開始日時から再生終了日時まで)において特定の車両が記録された映像を容易に再生できるため、ユーザは事故が発生した場合等の車両の状況を容易に確認できる。
【0071】
また
図14に示すように、同じ日時に1つの撮影対象車両(車両X)を複数の車両(車両Y)が撮影している場合には、複数の車両Yが撮影した全ての映像を同時に再生することができる。つまり、制御部は、映像情報管理テーブルにおいて、1つの対象車両IDに対応する撮影車両IDおよびカメラIDが複数存在する場合には、それらの映像データを同時に読み出して再生し表示する。例えば、車両ID:003を撮影対象として同じ日時に、「車両ID:001のカメラID:後」、「車両ID:002のカメラID:左」、「車両ID:002のカメラID:前」、「車両ID:004のカメラID:前」、「車両ID:004のカメラID:後」、「車両ID:006のカメラID:右」、「車両ID:006のカメラID:後」、「車両ID:008のカメラID:前」、「車両ID:008のカメラID:左」、といった9つの映像が記録されている場合、この9つの映像が同時に再生されて、画面に表示される。また、
図14に示すように、対象車両を撮影したカメラID(カメラの設置場所)ごとに、映像をまとめて配置する。各映像の再生画面(映像ウィンドウ)の右下には映像情報を撮影した車両の車両ID、カメラの回転角度が表示される。例えば、
図14において、「前方向」の映像ウィンドウの列にある「002/-23°」という表示は、「車両ID:002」の車両の前方向に設置されたカメラを「-23°」回転させて撮影した映像情報であることを示す。このように1つの撮影対象車両について、複数の角度から撮影された複数の映像を同時並行的に再生するため、ユーザは撮影対象車両の状況を非常に詳細に確認できる。つまり、撮影対象車両に係る事故に備えて証拠となる詳細なデータを残し、事故が発生した場合には、事故原因を多角的な視点から解明できるという点において、本システムは非常に有効である。
【0072】
本実施の形態によれば、事故を起こす可能性が高い車両がある場合、他の車両から当該車両を撮影した映像情報を管理装置200が収集し保存できる。このため、当該車両に係る事故が発生した場合であっても、証拠となる映像情報を解析し、事故原因の究明等に役立てることができる。
【0073】
(実施の形態2)
実施の形態1では管理装置200から撮影方向変更パケットを送信し、ドライブレコーダ100で対応方向のカメラの撮影方向を変更することにより、事故を起こす可能性が高い車両を撮影する方法を説明した。
【0074】
本実施の形態では管理装置200が各車両に搭載されている各カメラの画角(撮影範囲)に関する情報を用いて処理を行う。管理装置200の記憶部240は、各カメラの画角に関する情報を記憶する。管理装置200は危険運転を行っている車両の周囲に存在する車両に設置されているカメラの画角に関する情報を参照し、危険運転をおこなっている車両を撮影可能な場合、すなわち当該の車両が周囲を走行している車両に搭載されているカメラの画角に入っている場合、ドライブレコーダ100へ映像情報のアップロード(送信)を指示する。ドライブレコーダ100は映像情報のアップロードの指示を受信した場合、管理装置200へ当該の映像情報を送信する。
【0075】
なお、本実施の形態の管理装置200の構成図、ドライブレコーダ100の構成図は実施の形態1と同じである。
【0076】
本実施の形態では、ドライブレコーダ100の制御部50は通信部40を経由して、所定の周期あるいは所定のタイミングで管理装置200へカメラ画角パケットを送信する。例えば、カメラの画角が変更されたタイミングを所定のタイミングとすればよい。あるいは、画角が固定の(画角が変更できない)カメラについては、カメラ画角パケットを1回送信すればよい。管理装置200の制御部230は通信部220を経由してカメラ画角パケットを受信した場合、記憶部240にカメラ画角テーブルを記録する。
【0077】
図15は、管理装置200の記憶部240に記録されるカメラ画角テーブルの構成例である。
【0078】
車両IDには、本システムで管理されている各車両のIDが記録される。前カメラ、後カメラ、左カメラ、右カメラは、各車両内に設置されている車載カメラの画角(撮影可能角度)となる。カメラを設置していない場合は「0」、カメラが設置されている場合はカメラの画角が記載される。例えば、「120」は、カメラで撮影可能な角度がカメラの中心から左右にそれぞれ「60度」の範囲であり、合計「120度」であることを示す。
【0079】
管理装置200の制御部230は、実施の形態1と同様に危険運転を行っている車両Xを検出した場合、近隣(車両Xの位置から所定距離以内)を同一方向に走行している他の車両を撮影候補車両として特定し、撮影候補車両および車両Xの最新の位置情報(緯度、経度)と、カメラ画角テーブルとをもとに、撮影候補車両のカメラにより車両Xが撮影可能か否かを判定する。
図16は、車両Xに関する撮影候補車両の撮影範囲の例を示す。
【0080】
図15および
図16の例において、車両Xは車両ID:001の右後方に位置するため、制御部230は、車両ID:001のリアカメラおよび右カメラを判定対象とし、カメラ画角テーブルの後カメラおよび右カメラの列を参照する。車両ID:001の後カメラの画角は「120」であり、車両Xは車両ID:001の後カメラの画角に入っているため、撮影可能と判定される。一方、車両ID:001の右カメラの画角は「0」であるため、車両ID:001は右カメラを搭載(設置)していないと判定される。この結果、制御部230は、車両ID:001は撮影可能と判定し、車両ID:001のリアカメラ(後カメラ)を車両Xの撮影に使用すると決定する。次に、車両Xは車両ID:003の左前方に位置するため、制御部230は、車両ID:003のフロントカメラおよび左カメラを判定対象とし、カメラ画角テーブルの前カメラおよび左カメラの列を参照する。車両ID:003の前カメラの画角は「80」であり、車両Xは車両ID:003の前カメラの画角に入っていないと判定される。また、車両ID:003の左カメラの画角は「0」であり、車両ID:003は左カメラを搭載していないと判定される。このため、車両ID:003は撮影不可と判定される。車両Xは車両ID:005の左後方に位置するため、制御部230は、車両ID:005のリアカメラおよび左カメラを判定対象とし、カメラ画角テーブルの後カメラおよび左カメラの列を参照する。車両ID:005の後カメラの画角は「0」であり、リアカメラが搭載されていないと判定される。また、車両ID:005の左カメラの画角は「0」であり、左カメラが搭載されていないと判定される。このため車両ID:005は撮影不可と判定される。制御部230は、車両Xを撮影可能な画角をもつカメラに関する情報(撮影候補車両の車両IDおよびカメラID)を判定結果として出力する。車両Xを撮影可能なカメラが存在しない場合には、その旨を示す「NULL」が出力される。つまり、制御部230は、車両Xを撮影可能な場合に「真」、車両Xを撮影不可能な場合に「偽」となる判定結果を出力する。また、制御部230は、判定結果が「真」である場合に、車両Xを撮影可能なカメラの情報を出力する。
【0081】
次に制御部230は、上記の処理で撮影可能と判定されたカメラをもつ車両500(ドライブレコーダ100)に対して、通信部220(送信部)を介して、映像情報の撮影およびアップロード(送信)を指示する情報を送信する。つまり、通信部220(送信部)は、制御部230の判定結果が「真」であるカメラを備える車両500に対して、映像情報送信指示パケット(撮影指示情報)を送信する。
【0082】
図17は、管理装置200からドライブレコーダ100へ送信される映像情報送信指示パケットの構成例である。本パケットは各方向に「0」または「1」が記載される。「1」が記載されている場合、当該の方向に設置されているカメラで撮影した映像情報をアップロードする指示になる。映像情報送信指示パケットは、撮影指示情報の一例である。本実施の形態における撮影指示情報(映像情報送信指示パケット)は、
図10に示す実施の形態1における撮影方向変更パケットとは異なり、カメラの撮影方向(回転角度)を指定する情報を含んでいない。
【0083】
ドライブレコーダ100の制御部50は通信部40を経由して映像情報送信指示パケットを受信した際、「1」が記載されているすべての方向に設置されているカメラで撮影した映像情報を管理装置200へ送信する。
【0084】
本実施の形態では、
図12のフローチャートのS140に相当するS140A(不図示)にて、制御部230は車両Xの近隣の車両(車両Y)について、車両Xとの位置関係および車両Yのカメラの画角をもとに、車両Yが車両Xを撮影可能か否かを判定する。車両Yが車両Xを撮影可能な場合(S140A:Yes)は、ステップS150A(不図示)に遷移する。車両Yが車両Xを撮影不可な場合(S140A:No)は、処理を終了する。
【0085】
ステップS150に相当するステップS150Aにおいて、制御部230は、ステップS140Aにおいて車両Xを撮影可能と判定した車両Yに対して映像情報送信指示パケットを送信する。その後処理を終了する。
【0086】
本実施の形態によれば、管理装置200でドライブレコーダ100のカメラの画角を記録し、危険運転を行っている車両がカメラの画角に入っている場合にドライブレコーダ100から管理装置200へ映像情報を送信させる。カメラの撮影方向を変更しない事により、車両に搭載されているカメラ本来の映像情報、つまり自車両のための映像情報を撮影記録しつつ、危険運転を行っている車両の映像情報も撮影記録することができる。また、カメラの角度や画角を変更する機能を備えていない車両に対しても本実施の形態を適用できるため、より適用範囲を広げることができる。
【0087】
以上説明したドライブレコーダ100および管理装置200の各種の処理は、CPUやメモリ等のハードウェアを用いた装置として実現することができるのは勿論のこと、ROM(リード・オンリ・メモリ)やフラッシュメモリ等に記憶されているファームウェアや、コンピュータ等のソフトウェアによっても実現することができる。そのファームウェアプログラム、ソフトウェアプログラムをコンピュータ等で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することも、有線あるいは無線のネットワークを介してプログラムを記憶するサーバからドライブレコーダ100および管理装置200にプログラムを提供することも可能である。あるいは、地上波あるいは衛星デジタル放送のデータ放送を用いて、ドライブレコーダ100および管理装置200にプログラムを提供することも可能である。
【0088】
以上述べたように、本発明の各実施の形態によれば、事故を起こす可能性が高い車両を特定(判定)し、当該の車両を他の車両が撮影し、その映像情報を管理装置が記録する。したがって、事故を起こす可能性が高いと判定された車両が実際に事故を起こした場合に、証拠となる映像情報が存在するため、事故の検証が容易にできる。
【0089】
管理装置200の機能の一部、たとえば制御部230の機能をドライブレコーダ100に搭載してもよい。上記の実施の形態では、対象車両を撮影した他の車両のドライブレコーダ100が対象車両を撮影した映像情報90を管理装置200に送信し、管理装置200のストレージ部270に映像情報280として記録したが、他の車両のドライブレコーダ100が対象車両を撮影した映像情報90を管理装置200に送信せずに、ドライブレコーダ100のストレージ部80にのみ記録するようにしてもよい。その場合、対象車両の事故等の調査を行う際に、調査関係者は、他の車両のドライブレコーダ100のユーザから映像情報90の提供を受ければよい。
【0090】
上記の実施の形態では、管理装置200は、車両に予備用のカメラが搭載されているか否かを判定していないが、そのような判定処理を行ってもよい。ここで、予備用のカメラとは、例えば、メインカメラが故障した場合に、メインカメラの代替となるバックアップアップ用のカメラであり、その時点において自車両用の映像情報の記録に使用されていないカメラである。つまり、予備用のカメラは、管理装置200の判定処理の際に車両が使用していない未使用のカメラである。例えば、ステップS130に相当するS130A(不図示)において、車両Yが車両Xを撮影可能なカメラを搭載しており、かつそのカメラがバックアップ用であるか否か(未使用であるか否か)を判定する。車両Xを撮影可能なバックアップカメラを搭載している場合、ステップS140に進む。一方、車両Xを撮影可能なカメラを搭載していない場合、あるいは搭載していても、そのカメラがバックアップ用でない場合は、処理を終了する。このような処理を行うことにより、管理装置200は、バックアップ用カメラを搭載している車両のみを対象にして、撮影方向変更パケットを送信できる。このため、自車両用の映像情報の撮影・記録を中断する必要のない車両のみが、他の車両の映像情報を撮影・記録する。これにより、自車両に係る事故が発生した場合に、その映像情報が記録されていない事態を防止することができる。また、管理装置は、車両が予備用のカメラを備えていない場合であっても、車両がカメラ(メインカメラ)を使用しているか否かを判定し、カメラを使用してない場合に、撮影対象を撮影させる制御を行ってもよい。
【0091】
また、各実施の形態においては、車両500に搭載されたドライブレコーダ100のカメラによって映像情報が撮影される例を用いて説明したが、車両500は自動車に限られるものではない。上述したように、自転車、バイク、鉄道車両、ドローン、ヘリコプター、飛行機等であってもよい。また、撮影機能のあるウェアラブルデバイス等を装着した人(歩行者)であってもよい。すなわち、管理装置200は、撮影機能をもつ移動体に対して、各実施の形態で説明した処理を行ってもよい。また、移動体は、撮影機能をもっていればよく、撮影した映像情報を記録する機能は必ずしも必要ない。例えば、撮影した映像情報を移動体内部には記録せずに、移動体から管理装置に送信し、全て管理装置で記憶してもよい。その意味では、移動体はカメラを備えていればよく、いわゆるドライブレコーダを備えていなくてもよい。また、管理装置200は、街頭や店頭に設置されている防犯カメラ等を制御し、撮影対象を撮影させてもよい。
【0092】
また、撮影対象の移動体(車両X)と、撮影を行う移動体(車両Y)の種類(種別)が異なっていてもよい。例えば、事故を起こす可能性が高い自動車やバイクを特定し、その周囲を飛行するドローンに対して撮影指示情報を送信してもよい。その場合、各移動体の位置情報を(緯度、経度、高度)の3次元で管理し、撮影指示情報には、「回転角度30度、仰角-45度」といったように、撮影移動体(ドローン)を基準にした3次元的な撮影方向に関する情報が含まれていてもよい。また、不審な動き(異常な移動)をする歩行者を特定し、その歩行者の周囲に位置する他の歩行者や自転車に対して、撮影指示情報を送信してもよい。このように、各実施の形態で説明した処理を種々の移動体に適用することができる。
【0093】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0094】
10 表示部、 20 入力部、 30 位置情報特定部、 40 通信部、 50 制御部、 60 カメラ部、 70 記憶部、 80 ストレージ部、 90 映像情報、 100 ドライブレコーダ、 200 管理装置、 205 表示部、 210 入力部、 220 通信部、 230 制御部、 240 記憶部、 250 車両走行履歴テーブル、 260 カメラ情報テーブル、 270 ストレージ部、 280 映像情報、 290 計時部、 300 通信網、 400 中継局、 500 車両。