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特許7472584車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/43 20180101AFI20240416BHJP
   F21S 41/141 20180101ALI20240416BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20240416BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240416BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240416BHJP
   F21W 105/00 20180101ALN20240416BHJP
【FI】
F21S41/43
F21S41/141
F21S41/33
F21W102:155
F21W102:13
F21W105:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020054458
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021157879
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 敏広
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059315(JP,A)
【文献】実開平07-025508(JP,U)
【文献】特開2015-046235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/43
F21S 41/141
F21S 41/33
F21W 102/155
F21W 102/13
F21W 105/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、リフレクタと、立壁と、を備え、
前記立壁は、前記リフレクタのうち、前記光源を通る鉛直線に対して、一側に設けられていて、
前記リフレクタは、反射面を有し、
前記反射面は、前記光源からの光を反射光として反射させて所定の配光パターンを形成し、
前記立壁の一部分は、前記光源に近い位置に位置し、かつ、前記光源よりも後方側の位置に位置し、
前記立壁と反対側の反射面は、前記光源からの光であって、前記立壁の一部分で反射した反射光が入射しないように、段差を設けて後方側に配置されている、
ことを特徴とする車両用前照灯のランプユニット。
【請求項2】
前記反射面は、前記光源を焦点とし、かつ、前記焦点を通る光軸を回転軸とする放物面を基本とし、
前記立壁と反対側の反射面の焦点距離は、前記立壁側の反射面の焦点距離よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯のランプユニット。
【請求項3】
前記立壁と反対側の反射面は、左右方向に並んで複数個に分割されていて、
前記光源から離れた前記反射面の焦点距離は、前記光源に近い前記反射面の焦点距離よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯のランプユニット。
【請求項4】
前記光源から離れた前記反射面からの前記反射光の光束は、前記光源に近い前記反射面からの前記反射光の光束と比較して、狭い領域を照射する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用前照灯のランプユニット。
【請求項5】
灯室を形成するランプハウジングおよびランプレンズと、
前記灯室内に配置されている前記の請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用前照灯のランプユニットと、
前記灯室内において、前記ランプユニットと前記立壁を介して隣り合わせに配置されている他のランプユニットと、
を備え、
前記ランプユニットは、前記所定の配光パターンであって、ロービーム配光パターンの中央部分の狭い領域の配光パターンを車両の前方に照射し、
前記他のランプユニットは、ロービーム配光パターンの広い領域の配光パターンを車両の前方に照射し、
前記ランプユニットの水平方向の幅は、前記他のランプユニットの水平方向の幅よりも狭い、
ことを特徴とする車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立壁が設けられている車両用前照灯のランプユニットに関する。また、この発明は、立壁を介して複数のランプユニットが配置されている車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯としては、たとえば、特許文献1に示すものがある。
【0003】
特許文献1の車輌用灯具は、発光素子と、発光素子からの光を所定の方向に向かうように反射させる反射部と、を備え、反射部に仕切部を設け、仕切部に拡散部を設け、発光素子からの光を仕切部の拡散部で拡散光として拡散させるものである。これにより、特許文献1の車輌用灯具は、幻惑光の発生を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-59315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の車輌用灯具は、仕切部の拡散部で拡散された拡散光の一部が反射部に入射する場合がある。すると、反射部に入射した拡散光の一部が、反射部で制御されずに所定の方向と異なった方向に向かって不制御光として反射される。この不制御光は、反射部から所定の方向に向かうように反射された光(所定の配光パターン)に対して、好ましくない。
【0006】
このように、特許文献1の車輌用灯具は、所定の配光パターンに対して好ましくない不制御光の発生を抑制することができない場合がある。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、所定の配光パターンに対して好ましくない不制御光の発生を抑制することができる車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の車両用前照灯のランプユニットは、光源と、リフレクタと、立壁と、を備え、立壁が、リフレクタのうち、光源を通る鉛直線に対して、一側に設けられていて、リフレクタが、反射面を有し、反射面が、光源からの光を反射光として反射させて所定の配光パターンを形成し、立壁の一部分が、光源に近い位置に位置し、かつ、光源よりも後側の位置に位置し、立壁と反対側の反射面が、光源からの光であって、立壁の一部分で反射した反射光が入射しないように、段差を設けて後方側に配置されている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明の車両用前照灯のランプユニットにおいて、反射面が、光源を焦点とし、かつ、焦点を通る光軸を回転軸とする放物面を基本とし、立壁と反対側の反射面の焦点距離が、立壁側の反射面の焦点距離よりも大きい、ことが好ましい。
【0010】
この発明の車両用前照灯のランプユニットにおいて、立壁と反対側の反射面が、左右方向に並んで複数個に分割されていて、光源から離れたセグメントの焦点距離が、光源に近いセグメントの焦点距離よりも大きい、ことが好ましい。
【0011】
この発明の車両用前照灯のランプユニットにおいて、光源から離れた反射面からの反射光の光束が、光源に近い反射面からの反射光の光束と比較して、狭い領域を照射する、ことが好ましい。
【0012】
この発明の車両用前照灯は、灯室を形成するランプハウジングおよびランプレンズと、灯室内に配置されているこの発明の車両用前照灯のランプユニットと、灯室内において、ランプユニットと立壁を介して隣り合わせに配置されている他のランプユニットと、を備え、ランプユニットが、所定の配光パターンであって、ロービーム配光パターンの中央部分の狭い領域の配光パターンを車両の前方に照射し、他のランプユニットが、ロービーム配光パターンの広い領域の配光パターンを車両の前方に照射し、ランプユニットの水平方向の幅が、他のランプユニットの水平方向の幅よりも狭い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯は、所定の配光パターンに対して好ましくない不制御光の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明にかかる車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯の実施形態を示す正面図(車両の前側から後側を見た図)である。
図2図2は、車両用前照灯のランプユニットを示す斜視図である。
図3図3は、車両用前照灯のランプユニットを示す概略横断面図(図2におけるIII-III線概略断面図)である。
図4図4は、立壁と反射面との境界からの反射光の光路を示す説明図である。図4(A)は、図2および図3に示す車両用前照灯のランプユニットにおける立壁と反射面との境界からの反射光の光路を示す説明図である。図4(B)は、既存の車両用前照灯のランプユニットにおける立壁と反射面との境界からの反射光の光路を示す説明図である。
図5図5は、ロービーム配光パターンのうち、中央部分の狭い領域の配光パターンの詳細を示す説明図である。
図6図6は、ロービーム配光パターンを示す説明図である。図6(A)は、ロービーム配光パターンのうち、中央部分の狭い領域の配光パターンを示す説明図(図5に対応する説明図)である。図6(B)は、ロービーム配光パターンのうち、拡散配光パターンを示す説明図である。図6(C)は、中央部分の狭い領域の配光パターンと拡散配光パターンとを重畳したロービーム配光パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明にかかる車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。図面において、符号「F」は「前」、「B」は「後」、「U」は上、「D」は「下」、「L」は「左」、「R」は「右」である。
【0016】
また、図5および図6において、符号「VU-VD」は、スクリーンの上下垂直線を示す。符号「HL-HR」は、スクリーンの左右水平線を示す。
【0017】
なお、図面は、この発明にかかる車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯を示す概略図であるから、この発明にかかる車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯の詳細な部分は、図面においては省略されている。また、図3においては、ハッチングが省略されている。
【0018】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる車両用前照灯のランプユニット、車両用前照灯の構成について説明する。
【0019】
図1中、符号1は、この実施形態にかかる車両用前照灯(以下、単に「車両用前照灯」と称する)である。また、図1図2図3および図4(A)中、符号2は、この実施形態にかかる車両用前照灯のランプユニット(以下、単に「第1ランプユニット」あるいは「ランプユニット」と称する)である。
【0020】
(車両用前照灯1の説明)
車両用前照灯1は、車両(図示せず)の前部の左右両側にそれぞれ装備される。以下、車両の左側に装備される車両用前照灯1について説明する。ここで、車両の左側に装備される車両用前照灯1において、車両の外側は、左側となり、一方、車両の内側(中央側)は、右側となる。なお、車両の右側に装備される車両用前照灯は、車両の左側に装備される車両用前照灯1の構成とほぼ左右対称である。このために、車両の右側に装備される車両用前照灯の説明を省略する。
【0021】
車両用前照灯1は、図1に示すように、ランプハウジング10、ランプレンズ11およびインナーパネル(エクステンション)13と、複数個のランプユニット2、3、4と、を備える。
【0022】
ランプハウジング10は、たとえば、光不透過性の部材(樹脂部材など)から構成されている。ランプレンズ11は、たとえば、光透過性の部材(樹脂部材など)から構成されている。ランプレンズ11の閉塞部分は、意匠面を形成する。ランプレンズ11の意匠面は、車両の前部の意匠面に沿う。
【0023】
ランプハウジング10の開口縁とランプレンズ11の開口縁とは、固定されている。これにより、灯室12が形成されている。灯室12内には、インナーパネル13および複数個のランプユニット2、3、4が配置されている。インナーパネル13は、光不透過性の部材(樹脂部材など)から構成されている。インナーパネル13は、複数個のランプユニット2、3、4の周囲を囲んでいる。
【0024】
(複数個のランプユニット2、3、4の説明)
複数個のランプユニット2、3、4は、第1ランプユニット2、第2ランプユニット3および第3ランプユニット4である。
【0025】
第1ランプユニット2は、この実施形態にかかる車両用前照灯のランプユニットである。第1ランプユニット2は、図5および図6(A)に示すように、所定の配光パターンであって、ロービーム配光パターン(すれ違い用配光パターン)LPのうち、中央部分の狭い領域の配光パターン(集光タイプの配光パターン)の第1配光パターンLP1を車両の前方に照射する。
【0026】
第1配光パターンLP1は、上縁の斜めカットオフラインCL1と、上縁の水平カットオフラインCL2と、エルボー点Eと、を有する。エルボー点Eは、斜めカットオフラインCL1と水平カットオフラインCL2との交点である。
【0027】
第2ランプユニット3は、第1ランプユニット2と立壁7を介して隣り合わせに配置されている。なお、この例においては、第2ランプユニット3は、第1ランプユニット2の右側(車両の中央側)に配置されている。
【0028】
第2ランプユニット3は、図6(B)に示すように、ロービーム配光パターンLPの広い領域の配光パターン(拡散タイプの配光パターン)の第2配光パターンLP2を車両の前方に照射する。第2配光パターンLP2は、上縁の水平カットオフラインCL3を有する。第2配光パターンLP2は、第1配光パターンLP1の大部分(第1配光パターンLP1の水平カットオフラインCL2よりも下側の部分)を包含する。
【0029】
第1ランプユニット2の水平方向の幅W2は、第2ランプユニット3の水平方向の幅W3よりも狭い。
【0030】
第3ランプユニット4は、第2ランプユニット3と立壁8を介して隣り合わせに配置されている。なお、この例においては、第3ランプユニット4は、第2ランプユニット3の右側(車両の中央側)に配置されている。
【0031】
第3ランプユニット4は、図示されていないハイビーム配光パターンを車両の前方に照射する。ハイビーム配光パターンは、中央部分のホットゾーン(最高光度を含む狭い領域)を有する。
【0032】
(その他のランプユニットおよびその他の部材の説明)
灯室12内には、複数個のランプユニット2、3、4以外のその他のランプユニット(図示せず)およびその他の部材(図示せず)が配置されている。
【0033】
その他のランプユニットは、たとえば、ポジションランプユニット、デイタイムランニングランプユニット、ターンシグナルランプユニットなどである。また、その他の部材は、たとえば、インナーパネル、インナーハウジング、インナーレンズ、カバー部材などである。
【0034】
(第1ランプユニット2の説明)
第1ランプユニット2は、図2図3および図4(A)に示すように、光源5と、リフレクタ6と、立壁7と、を備える。
【0035】
(光源5の説明)
光源5は、この例では、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型発光素子(半導体発光素子)タイプの光源である。光源5は、図3に示すように、長方形形状の発光面を有する。なお、図2および図4に示す光源5は、小黒丸にて図示する。
【0036】
(リフレクタ6の説明)
リフレクタ6は、反射面60を有する。反射面60は、図3に示すように、光源5からの光L0を反射光L1、L2、L3、L4、L5として反射させて図5および図6(A)に示す第1配光パターンLP1を形成する。反射面60は、放物面を基本とする自由曲面から構成されている。
【0037】
反射面60の放物面は、光源5を焦点F0とし、かつ、焦点F0を通る光軸Zを回転軸とするものである。なお、焦点F0は、図3に示すように、光源5の長方形形状の発光面の中心とする。
【0038】
反射面60は、セグメント61、62、63、64、65、66、67、68により、左右方向に並んで複数個、この例では、8列に分割されている。なお、8列のセグメント61~68は、左側から右側へ第1セグメント61、第2セグメント62、第3セグメント63、第4セグメント64、第5セグメント65、第6セグメント66、第7セグメント67、第8セグメント68とする。
【0039】
第1セグメント61から第4セグメント64までは、反射面60のうち、光源5(焦点F0)を通る鉛直線V(図2参照)に対して、立壁7と反対側の反射面60である。側方の第1セグメント61から第3セグメント63までは、一つの配光パターンを形成すればよいため、一つの大きなセグメント(上下方向に長いセグメント)から形成されている。一方、第4セグメント64は、光を照射する狙った場所が細かく分かれていて、それぞれ、配光パターンを形成する必要があるため、上下方向において、この例では、3個に分割されている。
【0040】
一方、第5セグメント65から第8セグメント68までは、反射面60のうち、鉛直線Vに対して、立壁7側の反射面60である。第6セグメント66から第8セグメント68までの上側の部分には、立壁7が占有している。これにより、第6セグメント66~第8セグメント68は、光源5から離れれば離れるほど、上下方向が短くなる。一方、第5セグメント65は、前記の第4セグメント64と同様に、上下方向において、3個に分割されている。
【0041】
(反射面60の焦点距離の説明)
立壁7と反対側の反射面60すなわち第1セグメント61~第4セグメント64の焦点距離は、立壁7側の反射面60すなわち第5セグメント65~第8セグメント68の焦点距離よりも大きい。
【0042】
立壁7と反対側の反射面60すなわち第1セグメント61~第4セグメント64の焦点距離において、光源5から離れたセグメントの焦点距離は、光源5に近いセグメントの焦点距離よりも大きい。第4セグメント64の焦点距離と第5セグメント65の焦点距離とは、同等である。
【0043】
すなわち、第1セグメント61の焦点距離は、第2セグメント62の焦点距離よりも大きい。第2セグメント62の焦点距離は、第3セグメント63の焦点距離よりも大きい。第3セグメント63の焦点距離は、第4セグメント64の焦点距離よりも大きい。
【0044】
この結果、第1セグメント61と、第2セグメント62と、第3セグメント63と、第4セグメント64とは、段差69を介して多段、この例では、4段に形成されている。これにより、図4(A)に示すように、第1セグメント61~第4セグメント64は、既存のランプユニット200の反射面600よりも、後側(反射光L1、L2、L3、L4、L5の反射方向と反対側。図3を参照)に位置する。
【0045】
(反射面60の光束の説明)
光源5から離れた反射面60からの反射光の光束は、光源5に近い反射面60からの反射光の光束と比較して、狭い領域に収束されている。
【0046】
すなわち、図3および図5に示すように、光源5から離れた反射面60の第1セグメント61、第2セグメント62、第7セグメント67および第8セグメント68からの反射光L1、L2の光束は、光源5に近い反射面60の第3セグメント63、第4セグメント64、第5セグメント65および第6セグメント66からの反射光L3、L4、L5の光束と比較して、収束されている。
【0047】
また、光源5から離れた反射面60の第3セグメント63および第6セグメント66からの反射光L3の光束は、光源5に近い反射面60の第4セグメント64および第5セグメント65からの反射光L4、L5の光束と比較して、収束されている。
【0048】
なお、図3において、第6セグメント66、第7セグメント67および第8セグメント68からの反射光の図示は、省略されている。
【0049】
この結果、図5に示すように、第1セグメント61、第2セグメント62、第7セグメント67および第8セグメント68からの反射光L1、L2により形成される配光パターンは、第1配光パターンLP1の中央部分の狭い領域を形成する集光タイプの配光パターンPSである。
【0050】
また、第3セグメント63および第6セグメント66からの反射光L3により形成される配光パターンは、第1配光パターンLP1の中間部分の中光度帯を形成する中間タイプの配光パターンPMである。中間タイプの配光パターンPMは、集光タイプの配光パターンPSを包含する。
【0051】
さらに、第4セグメント64および第5セグメント65からの反射光L4、L5により形成される配光パターンは、第1配光パターンLP1の広い領域の低光度帯を形成する拡散タイプの配光パターンPWである。拡散タイプの配光パターンPWは、集光タイプの配光パターンPSおよび中間タイプの配光パターンPMを包含する。
【0052】
(立壁7の説明)
立壁7は、リフレクタ6のうち、光源5を通る鉛直線Vに対して、一側すなわち車両の内側、この例では、右側に、一体に設けられている。立壁7は、上側から下側に行くに従って、第1ランプユニット2側から第2ランプユニット3側に傾斜している。なお、図1に図示されている立壁7は、垂直に図示されている。
【0053】
立壁7の光源5および反射面60側に向いている面には、シリンドリカル凸曲面70が設けられている。シリンドリカル凸曲面70は、前後方向、すなわち、反射光L1~L5の反射方向(光の出射方向)を長手方向として、上下に複数条設けられている。シリンドリカル凸曲面70は、光源5からの光L0を拡散反射光(図示せず)として反射させる。
【0054】
リフレクタ6の底側には、底壁71が一体に設けられている。底壁71には、シリンドリカル凸曲面72が設けられている。底壁71のシリンドリカル凸曲面72は、立壁7のシリンドリカル凸曲面70と同様の構成をなしている。
【0055】
ここで、ランプユニット2は、図1に示すように、配置寸法の制約などにより、水平方向の幅W2を狭くする必要性があるため、リフレクタ6の車両の内側を削ってそこ(リフレクタ6の車両の内側)に立壁7を形成するものである。これにより、立壁7の一部分は、光源5に近い位置に位置し、かつ、光源5よりも後側(反射光L1~L5の反射方向と反対側。図3を参照)の位置に位置する。この立壁7の一部分には、光源5からの光L0であって、強い光が入射する。
【0056】
(立壁7と反対側の反射面の説明)
反射面60のうち、光源5を通る鉛直線Vに対して、立壁7と反対側の反射面、すなわち、第1セグメント61~第4セグメント64は、図4(A)に示すように、所定の直線L6を挟んで、光源5と反対側(後側)に位置する。
【0057】
所定の直線L6は、立壁7と反射面60との境界9であって、光源5よりも反射光L1~L5の反射方向と反対側の位置に位置する所定の境界9から引いた直線であって、光源5からの光L0が所定の境界9において反射した反射光L6の光路である。
【0058】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0059】
第1ランプユニット2の光源5を点灯発光させる。すると、光源5から放射された光L0の大部分は、反射面60の8列のセグメント61~68において反射光L1~L5として制御されて車両の前方に反射される。これにより、第1ランプユニット2は、所定の配光パターン、すなわち、図6(A)に示す第1配光パターンLP1を車両の前方に照射する。
【0060】
第1ランプユニット2の光源5の点灯発光と同時に、第2ランプユニット3の光源(図示せず)を点灯発光させる。すると、第2ランプユニット3は、所定の配光パターン、すなわち、図6(B)に示す第2配光パターンLP2を車両の前方に照射する。第1ランプユニット2からの第1配光パターンLP1と第2ランプユニット3からの第2配光パターンLP2とが重畳されて、図6(C)に示すロービーム配光パターンLPが車両の前方に照射される。
【0061】
第3ランプユニット4の光源(図示せず)を点灯発光させると、第3ランプユニット4は、所定の配光パターン、すなわち、図示しないハイビーム配光パターンを車両の前方に照射する。
【0062】
ランプユニット2において、光源5からの光L0であって、反射面60に入射せずに立壁7に向かった光(図示せず)は、シリンドリカル凸曲面70において、発散光(図示せず)として発散反射する。この発散光は、反射面60に入射しない(図4(A)中の反射光L6を参照)。
【0063】
また、ランプユニット2において、光源5からの光L0であって、反射面60に入射せずに底壁71に向かった光(図示せず)は、シリンドリカル凸曲面72において、発散光(図示せず)として発散反射する。
【0064】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0065】
この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、立壁7と反対側の反射面60(第1セグメント61~第4セグメント64)は、所定の直線L6を挟んで、光源5と反対側(後側)に位置する。ここで、所定の直線L6とは、図4(A)に示すように、立壁7と反射面60との境界9であって、光源5よりも反射光L1~L5の反射方向と反対側(後側)の位置に位置する所定の境界9から引いた直線であって、光源5からの光L0が所定の境界9において反射した反射光L6の光路である。
【0066】
この結果、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、図4(A)、(B)に示すように、光源5からの光L0であって、立壁7のシリンドリカル凸曲面70で反射した反射光が反射面60、すなわち、立壁7と反対側の反射面60(第1セグメント61~第4セグメント64)に入射しない(図4(A)中の反射光L6を参照)。
【0067】
これにより、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、所定の配光パターン、すなわち、図6(A)に示す第1配光パターンLP1(図6(C)に示すロービーム配光パターンLP)に対して好ましくない不制御光の発生を抑制することができる。
【0068】
ちなみに、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、所定の配光パターン(第1配光パターンLP1)のシミュレーションにおいて、所定のゾーンの光度値が約70%減少することを確認できた。
【0069】
以下、既存のランプユニット200、たとえば、特許文献1の車輌用灯具について、図4(B)を参照して説明する。既存のランプユニット200は、放物面(光源5を焦点F0とし、光軸Zを回転軸とする放物面)を基本とする反射面600を有する。
【0070】
これにより、既存のランプユニット200においては、立壁700と反対側の反射面600の一部分(ランプユニット2の第1セグメント61に対応する部分)が所定の直線L6を挟んで、光源5側に位置する(図4(A)中の破線にて示す反射面600を参照)。
【0071】
このため、既存のランプユニット200においては、光源5からの光L0であって、立壁700のシリンドリカル凸曲面70で反射した反射光の一部(図4(B)中の反射光L7を参照)が反射面600の一部分に入射する場合がある。すると、反射面600の一部分に入射した拡散光の一部が反射面600の一部分で制御されずに所定の方向と異なった方向に向かって不制御光として反射される。この不制御光は、反射面600から所定の方向に向かうように反射された光(所定の配光パターン)に対して、好ましくない。
【0072】
これに対して、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、光源5からの光L0であって、立壁7のシリンドリカル凸曲面70で反射した反射光が反射面60に入射しないので、所定の配光パターン(図6(A)に示す第1配光パターンLP1、図6(C)に示すロービーム配光パターンLP)に対して好ましくない不制御光の発生を抑制することができる。
【0073】
また、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、立壁7の一部分が、光源5に近い位置に位置し、かつ、光源5よりも反射光L1~L5の反射方向と反対側(後側)の位置に位置するものである。すなわち、立壁7の一部分には、光源5からの光L0であって、強い光が入射する。
【0074】
この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、光源5からの強い光L0が、立壁7の一部分に入射して、シリンドリカル凸曲面70で発散反射しても、この強い光の発散光が反射面60に入射しない。すなわち、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、強い光による不制御光、特に車両の前方上方に照射される強い光による不制御光の発生を抑制することができる。
【0075】
この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、立壁7と反対側の反射面60(第1セグメント61~第4セグメント64)の焦点距離が、立壁7側の反射面60(第5セグメント65~第8セグメント68)の焦点距離よりも大きい。この結果、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、立壁7と反対側の反射面60を、既存のランプユニット200の反射面600よりも後側に位置させることができる。
【0076】
これにより、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、光源5からの光L0であって、立壁7のシリンドリカル凸曲面70で発散反射した発散光が立壁7と反対側の反射面60に入射しない。すなわち、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、不制御光の発生を抑制することができる。
【0077】
この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、立壁7と反対側の反射面60が、上下方向に長いセグメント(第1セグメント61~第4セグメント64)により、左右方向に並んで複数個(4個)に分割されていて、光源5から離れたセグメントの焦点距離が、光源5に近いセグメントの焦点距離よりも大きい。
【0078】
この結果、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、立壁7と反対側の反射面60を複数段(4段)に形成することができ、図4(A)に示すように、立壁7と反対側の反射面60を、既存のランプユニット200の反射面600よりも後側に位置させることができる。
【0079】
これにより、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、光源5からの光L0であって、立壁7のシリンドリカル凸曲面70で発散反射した発散光が立壁7と反対側の反射面60に入射しない。すなわち、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、不制御光の発生を抑制することができる。
【0080】
この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、光源5から離れた反射面60からの反射光の光束が、光源5に近い反射面からの反射光の光束と比較して、高密度に収束されている。この結果、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、光源5から離れた反射面60からの高密度の収束光(強い光)の反射光により、集光タイプの配光パターンを効率良く形成することができる。一方、この実施形態にかかるランプユニット2、車両用前照灯1は、光源5に近い反射面60からの低密度の収束光(弱い光)の反射光により、拡散タイプの配光パターンを効率良く形成することができる。
【0081】
この実施形態にかかる車両用前照灯1は、第1ランプユニット2の水平方向の幅W2が、第2ランプユニット3の水平方向の幅W3よりも狭い。この結果、この実施形態にかかる車両用前照灯1は、幅W2が狭い第1ランプユニット2が、幅W3が広い第2ランプユニット3と比較して、ロービーム配光パターンLPのうち、中央部分の狭い領域の配光パターン(集光の配光パターン)、すなわち、第1配光パターンLP1を車両の前方に効率良く照射することができる。
【0082】
(実施形態以外の例の説明)
なお、この発明は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0083】
1 車両用前照灯
10 ランプハウジング
11 ランプレンズ
12 灯室
13 インナーパネル
2 第1ランプユニット
200 既存のランプユニット
3 第2ランプユニット
4 第3ランプユニット
5 光源
6 リフレクタ
60 反射面
61 第1セグメント(反射面)
62 第2セグメント(反射面)
63 第3セグメント(反射面)
64 第4セグメント(反射面)
65 第5セグメント(反射面)
66 第6セグメント(反射面)
67 第7セグメント(反射面)
68 第8セグメント(反射面)
69 段差
600 既存のランプユニットの反射面
7 立壁
70 シリンドリカル凸曲面
71 底壁
72 シリンドリカル凸曲面
700 既存のランプユニットの立壁
8 立壁
9 立壁7と反射面60との境界
900 既存のランプユニットの立壁700と反射面600との境界
B 後
CL1 斜めカットオフライン
CL2 水平カットオフライン
CL3 水平カットオフライン
D 下
E エルボー点
F 前
F0 焦点
HL-HR 左右水平線
L 左
L0 光(光源5からの光)
L1 反射光(反射面60、第1セグメント61からの反射光)
L2 反射光(反射面60、第2セグメント62からの反射光)
L3 反射光(反射面60、第3セグメント63からの反射光)
L4 反射光(反射面60、第4セグメント64からの反射光)
L5 反射光(反射面60、第5セグメント65からの反射光)
L6 反射光(不制御光、立壁7と反射面60との境界9からの反射光)
L7 反射光(不制御光、既存のランプユニット200の立壁700と反射面600との境界900からの反射光)
L8 反射光(既存のランプユニット200において、不制御光L7が反射面600において反射された反射光)
LP ロービーム配光パターン
LP1 第1配光パターン(中央部分の狭い領域の配光パターン)
LP2 第2配光パターン(拡散配光パターン)
PM 中間タイプの配光パターン
PS 集光タイプの配光パターン
PW 拡散タイプの配光パターン
R 右
U 上
V 鉛直線
VU-VD 上下垂直線
W2 幅
W3 幅
Z 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6