(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】乗客コンベアのポータブル運転装置および乗客コンベアの保守作業方法
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B66B31/00 D
(21)【出願番号】P 2020054887
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】小出 武秀
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-079875(JP,U)
【文献】特開2007-169023(JP,A)
【文献】特開2002-068658(JP,A)
【文献】実開昭62-083082(JP,U)
【文献】特開2020-196565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの第1乗降口の下方の機械室において電源スイッチに取り付けられ、入力される操作信号に基づいて前記電源スイッチを切り替える第1制御部、および、前記機械室において前記乗客コンベアの制御盤に接続され、入力される操作信号に基づいて制御信号を前記制御盤に出力する第2制御部、を有する取付装置と、
前記乗客コンベアを制御する操作を受け付け、受け付けた操作に基づく操作信号を無線通信によって前記取付装置に送信する本体装置と、
を備えるポータブル運転装置。
【請求項2】
前記本体装置は、前記電源スイッチを入れる操作信号を送信するときに暗証情報の入力を要求し、正当な暗証情報が入力されるまで当該操作信号の送信を保留する
請求項1に記載のポータブル運転装置。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記電源スイッチを機械的に操作して切り替える
請求項1または請求項2に記載のポータブル運転装置。
【請求項4】
前記取付装置は、前記本体装置に着脱可能に装着される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項5】
前記第2制御部は、前記制御盤に蓄積された情報を取得し、取得した情報を無線通信によって前記本体装置に送信する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項6】
前記第2制御部は、前記乗客コンベアに発生する事象を検出する検出部が前記制御盤に入力する検出信号を取得し、取得した検出信号を無線通信によって前記本体装置に送信する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項7】
前記取付装置は、無線通信の通信範囲が前記第1乗降口の大きさに応じて設定される
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項8】
前記取付装置は、前記第1乗降口が他の乗客コンベアの第2乗降口に隣接する場合に、無線通信の通信範囲が前記第1乗降口を含み前記第2乗降口を含まないように設定される
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項9】
前記取付装置は、前記機械室において前記本体装置との間で無線通信を行うことで前記第1制御部および前記第2制御部と前記本体装置との間の通信を中継する中継部を有する
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項10】
前記取付装置は、前記機械室の蓋の閉状態を検知する蓋検知部を有し、前記蓋検知部が閉状態を検知していないときに前記本体装置からの操作信号を受け付けない
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項11】
前記取付装置は、前記機械室の蓋の閉状態を検知する蓋検知部を有し、
前記本体装置は、前記蓋検知部が閉状態を検知していないときに操作信号を前記取付装置に送信しない
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項12】
前記本体装置は、操作を受け付けていない時間が予め設定された時間を超えるときに、前記電源スイッチを切る操作信号を前記取付装置に送信する
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のポータブル運転装置。
【請求項13】
乗客コンベアの乗降口の下方の機械室の蓋を開け、ポータブル運転装置の取付装置の第1制御部および第2制御部を前記機械室に入れ、入力される操作信号に基づいて電源スイッチを切り替える前記第1制御部を前記電源スイッチに取り付け、入力される操作信号に基づいて制御盤に制御信号を出力する第2制御部を前記制御盤に接続させ、その後に前記機械室の蓋を閉める取付工程と、
前記取付工程の後に行われ、前記ポータブル運転装置の本体装置の操作に基づく操作信号を無線通信によって前記取付装置に送信することで行われる前記乗客コンベアの運転制御を含む保守工程と、
前記保守工程の後に行われ、前記機械室の蓋を開け、前記第1制御部を前記電源スイッチから取り外し、前記第2制御部を前記制御盤から取り外し、取り外した前記第1制御部および前記第2制御部を前記機械室から出し、その後に前記機械室の蓋を閉める取外し工程と、
を備える乗客コンベアの保守作業方法。
【請求項14】
前記保守工程の間、前記機械室の蓋は開けられない
請求項13に記載の乗客コンベアの保守作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアのポータブル運転装置および乗客コンベアの保守作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、乗客コンベアの保守運転装置の例を開示する。保守運転装置の操作体は、機械室を覆う床板に設けられた穴を通じて制御盤に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の保守運転装置が制御盤に接続されている間、床板の蓋が開いている。また、操作体から延びる配線が床板の穴に通されている。このため、床板の蓋および操作体から延びる配線などが、乗客コンベアの乗降口における保守作業の妨げになる可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、保守作業の妨げになりにくい乗客コンベアのポータブル運転装置および乗客コンベアの保守作業方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るポータブル運転装置は、乗客コンベアの第1乗降口の下方の機械室において電源スイッチに取り付けられ、入力される操作信号に基づいて電源スイッチを切り替える第1制御部、および、機械室において乗客コンベアの制御盤に接続され、入力される操作信号に基づいて制御信号を制御盤に出力する第2制御部、を有する取付装置と、乗客コンベアを制御する操作を受け付け、受け付けた操作に基づく操作信号を無線通信によって取付装置に送信する本体装置と、を備える。
【0007】
本開示に係る乗客コンベアの保守作業方法は、乗客コンベアの乗降口の下方の機械室の蓋を開け、ポータブル運転装置の取付装置の第1制御部および第2制御部を機械室に入れ、入力される操作信号に基づいて電源スイッチを切り替える第1制御部を電源スイッチに取り付け、入力される操作信号に基づいて制御盤に制御信号を出力する第2制御部を制御盤に接続させ、その後に機械室の蓋を閉める取付工程と、取付工程の後に行われ、ポータブル運転装置の本体装置の操作に基づく操作信号を無線通信によって取付装置に送信することで行われる乗客コンベアの運転制御を含む保守工程と、保守工程の後に行われ、機械室の蓋を開け、第1制御部を電源スイッチから取り外し、第2制御部を制御盤から取り外し、取り外した第1制御部および第2制御部を機械室から出し、その後に機械室の蓋を閉める取外し工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る乗客コンベアのポータブル運転装置または乗客コンベアの保守作業方法であれば、保守作業の妨げになりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
【
図2】実施の形態1に係るポータブル運転装置の構成図である。
【
図3】実施の形態1に係る第1制御部の斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る保守作業の例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る保守作業の例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る保守作業の例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係るポータブル運転装置の主要部のハードウェア構成図である。
【
図8】実施の形態2に係るポータブル運転装置の構成図である。
【
図9】実施の形態3に係るポータブル運転装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベアの構成図である。
【0012】
乗客コンベアは、乗客を輸送する装置である。乗客コンベアは、例えば傾斜式のエスカレーター1である。エスカレーター1は、建物の上階と下階との間において掛け渡される。エスカレーター1は、上階と下階との間で乗客を輸送する装置である。
【0013】
エスカレーター1において、上階側に上部乗降口2aが設けられる。エスカレーター1において、上階側に上部機械室3aが設けられる。上部機械室3aは、上部乗降口2aの下方に設けられる。上部機械室3aにおいて、上部乗降口2aに通じるマンホールが設けられる。上部機械室3aは、マンホールを覆う蓋4を有する。蓋4は、例えば上部乗降口2aの床板である。
【0014】
エスカレーター1において、下階側に下部乗降口2bが設けられる。エスカレーター1において、下階側に下部機械室3bが設けられる。下部機械室3bは、下部乗降口2bの下方に設けられる。下部機械室3bにおいて、下部乗降口2bに通じるマンホールが設けられる。下部機械室3bは、マンホールを覆う蓋4を有する。蓋4は、例えば下部乗降口2bの床板である。
【0015】
エスカレーター1は、駆動装置5と、複数のステップ6と、一対の手摺7と、検出部8と、制御盤9と、を備える。駆動装置5は、駆動力を発生させる装置である。駆動装置5は、例えば上部機械室3aに設けられる。各々のステップ6は、駆動装置5が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。各々の手摺7は、駆動装置5が発生させる駆動力によって循環移動する機器である。ここで、一方の手摺7は、複数のステップ6の左側に設けられる。他方の手摺7は、複数のステップ6の右側に設けられる。検出部8は、エスカレーター1に発生する事象を検出する部分である。検出部8は、例えば安全スイッチを含んでもよい。検出部8は、例えばエスカレーター1のスカートガードへの挟まりを検出するスカートガードスイッチなどを含んでもよい。検出部8は、事象を検出するときに検出信号を制御盤9に出力する。制御盤9は、エスカレーター1の動作を制御する装置である。制御盤9は、例えば上部機械室3aに設けられる。制御盤9は、電源スイッチ10を備える。電源スイッチ10は、エスカレーター1への電力供給を切り替えるスイッチである。
【0016】
通常運転において、乗客は、上部乗降口2aおよび下部乗降口2bの一方から他方に移動するときに、エスカレーター1に乗り込む。エスカレーター1は、例えば一方の手摺7をつかみながらいずれかのステップ6の上に立ち止まっている乗客を、制御盤9の制御に基づいて駆動装置5が発生させる駆動力によって輸送する。
【0017】
エスカレーター1の保守作業において、ポータブル運転装置11が用いられる。保守作業は、例えば点検作業または補修作業などを含む。ポータブル運転装置11は、保守作業においてエスカレーター1の運転制御を行う装置である。ポータブル運転装置11は、保守作業の作業員によって操作される。
【0018】
図2は、実施の形態1に係るポータブル運転装置の構成図である。
【0019】
ポータブル運転装置11は、本体装置12と、取付装置13と、を備える。本体装置12は、保守作業においてエスカレーター1の運転制御の操作を受け付ける部分である。運転制御の操作は、例えばエスカレーター1の電源スイッチ10を切り替える操作、およびエスカレーター1の運転操作などを含む。エスカレーター1の運転操作は、例えば上昇運転または下降運転の切り替え、および、駆動装置5の起動または停止の切り替え、などを含む。取付装置13は、エスカレーター1に取り付けられる部分である。本体装置12および取付装置13は、無線通信の機能を搭載する。取付装置13は、本体装置12に着脱可能に装着される。
【0020】
取付装置13の通信範囲は、例えば取付装置13が受信しうる信号強度または取付装置13が送信する信号強度などによって予め設定される。上部機械室3aにおいてエスカレーター1に取り付けられる取付装置13の通信範囲は、例えば当該エスカレーター1の下部乗降口2bを含まないように設定される。
【0021】
本体装置12は、表示部14と、スイッチ切替ボタン15と、運転操作ボタン16と、入力ボタン17と、を備える。表示部14は、情報を表示する部分である。スイッチ切替ボタン15は、エスカレーター1の電源スイッチ10を切り替える操作を受け付ける部分である。運転操作ボタン16は、エスカレーター1の運転操作を受け付ける部分である。入力ボタン17は、情報を入力する操作を受け付ける部分である。入力ボタン17は、例えばテンキーなどであってもよい。本体装置12は、スイッチ切替ボタン15、運転操作ボタン16、および入力ボタン17などによって受け付けた操作を表す操作信号を、無線通信によって取付装置13に送信する。この例において、本体装置12は、図示されない内蔵のバッテリーから電力の供給を受けて動作する。
【0022】
取付装置13は、第1制御部18および第2制御部19を有する。この例において、第1制御部18および第2制御部19は、互いに分離可能な部分である。
【0023】
第1制御部18は、入力される操作信号に基づいてエスカレーター1の電源スイッチ10を切り替える部分である。第1制御部18は、電源スイッチ10に取り付けられる。この例において、第1制御部18は、無線通信の機能を搭載する。第1制御部18は、本体装置12から無線通信によって送信される操作信号を直接受信してもよい。第1制御部18は、電源スイッチ10に取り付けられていないときに、本体装置12に着脱可能に装着される。第1制御部18は、例えば図示されない内蔵のバッテリーから電力の供給を受けて動作する。あるいは、第1制御部18は、機械室に設けられる電気コンセントを通じて電力の供給を受けてもよい。
【0024】
第2制御部19は、入力される操作信号に基づいて制御信号をエスカレーター1の制御盤9に出力する部分である。第2制御部19は、制御盤9に接続される。この例において、第2制御部19は、無線通信の機能を搭載する。第2制御部19は、本体装置12から無線通信によって送信される操作信号を直接受信してもよい。第2制御部19は、制御盤9に接続されていないときに、本体装置12に着脱可能に装着される。第2制御部19は、例えば図示されない内蔵のバッテリーから電力の供給を受けて動作する。あるいは、第2制御部19は、接続される制御盤9から電力の供給を受けてもよい。
【0025】
図3は、実施の形態1に係る第1制御部の斜視図である。
この例において、電源スイッチ10は、上下に操作されるレバー20を有するトグルスイッチである。
図3において、電源スイッチ10に取り付けられている第1制御部18が示される。
【0026】
第1制御部18は、例えば電源スイッチ10に正面から被せるように取り付けられる。第1制御部18は、キャップ21と、アーム22と、アクチュエータ23と、を備える。キャップ21は、電源スイッチ10のレバー20の先端に取り付けられる部分である。キャップ21は、電源スイッチ10のレバー20の先端に被せられる。アーム22は、キャップ21を支持する部分である。この例において、アーム22は、左右の両側からキャップ21を支持している。アクチュエータ23は、アーム22を駆動する駆動力を発生させる部分である。アクチュエータ23が発生させる駆動力は、アーム22を通じてキャップ21を上下方向に移動させる。電源スイッチ10は、キャップ21が被せられているレバー20が上下方向に移動することで切り替えられる。
【0027】
続いて、
図4から
図6を用いて、ポータブル運転装置11を用いた保守作業の例を説明する。
図4から
図6は、実施の形態1に係る保守作業の例を示す図である。
【0028】
図4において、上部機械室3aにおける保守作業の例が示される。保守作業が行われる上部機械室3aの上方の上部乗降口2aは、第1乗降口の例である。
【0029】
作業員は、エスカレーター1の保守作業の現場まで、取付装置13が本体装置12に装着された状態でポータブル運転装置11を持ち運ぶ。
【0030】
まず、作業員は、取付工程の作業を行う。作業員は、上部機械室3aの蓋4を開ける。作業員は、上部機械室3aにおいて、例えば手動で電源スイッチ10を切る。
【0031】
次に、作業員は、本体装置12から取付装置13の第1制御部18および第2制御部19を取り外す。作業員は、取り外した第1制御部18および第2制御部19を上部機械室3aに持ち込む。作業員は、上部機械室3aにおいて、第1制御部18を電源スイッチ10に取り付ける。作業員は、上部機械室3aにおいて、第2制御部19を制御盤9に接続する。
【0032】
次に、作業員は、上部機械室3aの蓋4を閉める。その後、作業員は、保守工程の作業を行う。
【0033】
図5において、上部機械室3aにおける保守工程の作業の例が示される。
【0034】
保守工程の作業は、エスカレーター1の運転制御を含む。エスカレーター1の運転制御は、例えば複数のステップ6の位置を調整するための運転などを含んでもよい。
【0035】
保守工程において、通常、エスカレーター1の電源スイッチ10は切られている。このため、エスカレーター1の運転制御において、作業員は、本体装置12のスイッチ切替ボタン15によってエスカレーター1の電源スイッチ10を入れる操作を行う。このとき、本体装置12は、暗証情報の入力を要求する。暗証情報の入力の要求は、例えば表示部14に表示される。暗証情報は、例えば4桁の暗証番号などである。作業員は、入力ボタン17によって暗証情報を入力する操作を行う。本体装置12は、入力された暗証情報が正当であるかを検証する。正当な暗証情報が入力されるまで、本体装置12は、電源スイッチ10を入れる操作信号の出力を保留する。一方、正当な暗証情報が入力されるときに、本体装置12は、電源スイッチ10を入れる操作信号を無線通信によって第1制御部18に送信する。第1制御部18は、受信した操作信号に基づいて、アクチュエータ23、アーム22、およびキャップ21によって電源スイッチ10のレバー20を機械的に操作して電源スイッチ10を切り替える。これにより、電源スイッチ10が入れられる。
【0036】
その後、作業員は、本体装置12の運転操作ボタン16によってエスカレーター1の運転制御の操作を行う。作業員は、例えば駆動装置5を起動する操作を行う。本体装置12は、入力された操作を表す操作信号を無線通信によって第2制御部19に送信する。第2制御部19は、受信した操作信号に基づいて、制御信号を制御盤9に出力する。制御盤9は、入力された制御信号に基づいて動作する。この例において、制御盤9は、駆動装置5を起動させる。その後、作業員は、例えば駆動装置5を停止する操作を行う。本体装置12は、入力された操作を表す操作信号を無線通信によって第2制御部19に送信する。第2制御部19は、受信した操作信号に基づいて、制御信号を制御盤9に出力する。制御盤9は、入力された制御信号に基づいて動作する。この例において、制御盤9は、駆動装置5を停止させる。
【0037】
その後、作業員は、本体装置12のスイッチ切替ボタン15によってエスカレーター1の電源スイッチ10を切る操作を行う。本体装置12は、入力された操作を表す操作信号を無線通信によって第1制御部18に送信する。第1制御部18は、受信した操作信号に基づいて、電源スイッチ10のレバー20を機械的に操作して電源スイッチ10を切り替える。これにより、電源スイッチ10が切られる。
【0038】
このようにエスカレーター1の運転制御を行いながら、作業員は、エスカレーター1の点検作業または補修作業などを行う。保守工程の作業が行われている間、上部機械室3aの蓋4は開けられない。
【0039】
保守工程において、作業員は、ポータブル運転装置11によって制御盤9に蓄積された情報を取得してもよい。制御盤9に蓄積された情報は、例えばエスカレーター1の故障履歴を含む。制御盤9に蓄積された情報は、第2制御部19によって読み出される。第2制御部19は、制御盤9に記憶されている情報を読み出してもよい。制御盤9に記憶されている情報は、例えばエスカレーター1を識別する識別情報であってもよい。第2制御部19は、読み出した情報を無線通信によって本体装置12に出力する。本体装置12は、入力された情報を記憶する。本体装置12は、入力された情報または記憶している情報を表示部14に表示してもよい。
【0040】
保守工程において、作業員は、検出部8の動作確認を行ってもよい。検出部8の動作確認は、例えば検出信号が正しく出力されるかの確認を含む。動作確認において、検出部8は、エスカレーター1に発生した事象を検出する。検出部8は、例えば模擬信号などによって模擬的にエスカレーター1に発生した事象を検出してもよい。検出部8は、検出された事象を表す検出信号を制御盤9に出力する。このとき、第2制御部19は、検出信号を制御盤9から取得する。第2制御部19は、取得した情報を無線通信によって本体装置12に出力する。本体装置12は、入力された情報を表示部14に表示する。作業員は、表示部14の表示によって検出部8の動作確認を行う。なお、本体装置12は、入力された検出信号の情報に基づいてブザー音などの音声を発してもよい。作業員は、発せられた音声によって検出部8の動作確認を行う。本体装置12において動作確認が行われた後に、第2制御部19は、事象が検出された状態から制御盤9を復帰させるための復帰信号を制御盤9に出力してもよい。
【0041】
取付装置13の通信範囲は、例えば第1制御部18および第2制御部19の両方が本体装置12と無線通信可能な範囲である。取付装置13の通信範囲は、例えば下部乗降口2bを含まないように設定される。取付装置13の通信範囲は、例えば上部乗降口2aの大きさに応じて設定される。取付装置13の通信範囲は、例えば上部乗降口2aの全体を含むように設定される。あるいは、取付装置13の通信範囲は、例えば上部乗降口2aの左右の幅に収まるように設定されてもよい。あるいは、取付装置13が取り付けられるエスカレーター1が他のエスカレーターに隣接する場合に、取付装置13の通信範囲は、隣接するエスカレーターとの位置関係に応じて設定されてもよい。例えば、取付装置13の通信範囲は、取付装置13が設けられるエスカレーター1の乗降口を含み、隣接するエスカレーターの乗降口を含まないように設定される。隣接するエスカレーターの乗降口は、上部乗降口または下部乗降口のいずれであってもよい。隣接するエスカレーターの乗降口は、第2乗降口の例である。
【0042】
作業員は、保守工程の後に、取外し工程の作業を行う。
【0043】
図6において、上部機械室3aにおける取外し工程の作業の例が示される。
【0044】
まず、作業員は、上部機械室3aの蓋4を開ける。
【0045】
次に、作業員は、上部機械室3aにおいて、第1制御部18を電源スイッチ10から取り外す。作業員は、上部機械室3aにおいて、第2制御部19を制御盤9から取り外す。作業員は、取り外した第1制御部18および第2制御部19を上部機械室3aから取り出す。
【0046】
その後、作業員は、上部機械室3aの蓋4を閉める。作業員は、取付装置13の第1制御部18および第2制御部19を本体装置12に装着する。その後、取外し工程の作業は終了する。
【0047】
以上に説明したように、実施の形態1に係るポータブル運転装置11は、取付装置13と、本体装置12と、を備える。取付装置13は、第1制御部18および第2制御部19を有する。第1制御部18は、乗客コンベアの第1乗降口の下方の機械室において電源スイッチ10に取り付けられる。第1制御部18は、入力される操作信号に基づいて電源スイッチ10を切り替える。第2制御部19は、機械室において乗客コンベアの制御盤9に接続される。第2制御部19は、入力される操作信号に基づいて制御信号を制御盤9に出力する。本体装置12は、乗客コンベアを制御する操作を受け付ける。本体装置12は、受け付けた操作に基づく操作信号を無線通信によって取付装置13に送信する。
また、実施の形態1に係る保守作業方法は、取付工程と、保守工程と、取外し工程と、を備える。取付工程は、機械室の蓋4を開ける手順を含む。取付工程は、第1制御部18および第2制御部19を機械室に入れる手順を含む。取付工程は、第1制御部18を電源スイッチ10に取り付ける手順を含む。取付工程は、第2制御部19を制御盤9に接続させる手順を含む。取付工程は、これらの手順の後に、機械室の蓋4を閉める手順を含む。保守工程は、取付工程の後に行われる工程である。保守工程は、乗客コンベアの運転制御を含む。乗客コンベアの運転制御は、本体装置12の操作に基づく操作信号を無線通信によって取付装置13に送信することで行われる。取外し工程は、保守工程の後に行われる工程である。取外し工程は、機械室の蓋4を開ける手順を含む。取外し工程は、第1制御部18を電源スイッチ10から取り外す手順を含む。取外し工程は、第2制御部19を制御盤9から取り外す手順を含む。取外し工程は、取り外した第1制御部18および第2制御部19を機械室から出す手順を含む。取外し工程は、これらの手順の後に、機械室の蓋4を閉める手順を含む。
また、保守工程の間、機械室の蓋4は開けられない。
本体装置12および取付装置13との間において、操作信号は、無線通信によって通信される。このため、機械室の蓋4を閉じた状態で乗客コンベアの運転制御の操作が行われる。これにより、機械室の蓋4および開口などが保守作業の妨げになりにくい。また、電源スイッチ10が第1制御部18によって外部から切り替えられるので、乗客コンベアの電源投入のために機械室の蓋4を開閉する必要がない。このため、保守工程の間、乗客コンベアの運転制御のために機械室の蓋4を開閉する必要がない。これにより、保守作業の作業効率が低下しにくくなる。
【0048】
また、本体装置12は、電源スイッチ10を入れる操作信号を送信するときに暗証情報の入力を要求する。本体装置12は、正当な暗証情報が入力されるまで当該操作信号の送信を保留する。
電源スイッチ10を入れる場合に、スイッチ切替ボタン15などの操作と、暗証情報の入力と、の二段階の操作が必要となるので、電源スイッチ10を入れる誤操作が防がれる。なお、本体装置12は、電源スイッチ10を入れる操作の他の操作について、暗証情報の入力を要求しなくてもよい。すべての操作について暗証情報の入力が要求されないので、乗客コンベアの運転制御の操作が過度に煩雑にならない。
【0049】
また、第1制御部18は、電源スイッチ10を機械的に操作して切り替える。
電源スイッチ10は、外部からの機械的な操作によって切り替えられる。このため、制御盤9または電源スイッチ10などの電気的な回路構成の変更を必要としないので、ポータブル運転装置11は、既存の乗客コンベアに適用しやすい。
【0050】
また、取付装置13は、本体装置12に着脱可能に装着される。
これにより、ポータブル運転装置11が運搬しやすくなる。
【0051】
また、第2制御部19は、制御盤9に蓄積された情報を取得する。第2制御部19は、取得した情報を無線通信によって本体装置12に送信する。
これにより、例えば保守作業の途中において故障履歴などの情報を参照する場合に、情報の取得のために機械室の蓋4を開閉する必要がない。このため、保守作業の作業効率が低下しにくくなる。
【0052】
また、第2制御部19は、検出部8が制御盤9に入力する検出信号を取得する。検出部8は、乗客コンベアに発生する事象を検出する部分である。第2制御部19は、取得した検出信号を無線通信によって本体装置12に送信する。
これにより、例えば安全スイッチを含む検出部8の動作確認などのために機械室の蓋4を開閉する必要がなくなる。このため、保守作業の作業効率が低下しにくくなる。
【0053】
また、取付装置13における無線通信の通信範囲は、第1乗降口の大きさに応じて設定される。
また、第1乗降口が他の乗客コンベアの第2乗降口に隣接する場合に、取付装置13における無線通信の通信範囲は、第1乗降口を含み第2乗降口を含まないように設定される。
乗降口に応じて通信範囲が制限されるので、操作信号などが干渉しにくい。また、複数の乗客コンベアが設けられている場合に、他の乗客コンベアが誤って操作されることが防がれる。
【0054】
なお、本体装置12は、操作を受け付けていない時間が予め設定された時間を超えるときに、電源スイッチ10を切る操作信号を取付装置13に送信してもよい。
これにより、電源スイッチ10が入ったまま乗客コンベアにおいて点検作業または補修作業などが行われることが防がれる。これにより、点検作業または保守作業などにおいて誤って乗客コンベアが運転されることが防がれる。
【0055】
なお、乗客コンベアにおいて、電源スイッチ10は、制御盤9と独立に設けられていてもよい。電源スイッチ10および制御盤9が下部機械室3bに設けられる場合に、取付装置13は、下部機械室3bにおいて電源スイッチ10および制御盤9などに取り付けられてもよい。
【0056】
また、乗客コンベアは、水平式のエスカレーター1などであってもよい。
【0057】
続いて、
図7を用いて、ポータブル運転装置11のハードウェア構成の例について説明する。
図7は、実施の形態1に係るポータブル運転装置の主要部のハードウェア構成図である。
【0058】
ポータブル運転装置11の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ200aと少なくとも1つのメモリ200bとを備える。処理回路は、プロセッサ200aおよびメモリ200bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用のハードウェア100を備えてもよい。
【0059】
処理回路がプロセッサ200aとメモリ200bとを備える場合、ポータブル運転装置11の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ200bに格納される。プロセッサ200aは、メモリ200bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、ポータブル運転装置11の各機能を実現する。
【0060】
プロセッサ200aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ200bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0061】
処理回路が専用のハードウェア100を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0062】
ポータブル運転装置11の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、ポータブル運転装置11の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。ポータブル運転装置11の各機能について、一部を専用のハードウェア100で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア100、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせでポータブル運転装置11の各機能を実現する。
【0063】
実施の形態2.
実施の形態2において、実施の形態1で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態2で説明しない特徴については、実施の形態1で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0064】
図8は、実施の形態2に係るポータブル運転装置の構成図である。
【0065】
ポータブル運転装置11の取付装置13は、中継部24を備える。中継部24は、無線通信の機能を搭載する。中継部24は、本体装置12から無線通信によって送信される操作信号を直接受信する。中継部24は、受信した操作信号を有線または無線によって第1制御部18に送信することで中継する。中継部24は、受信した操作信号を有線または無線によって第2制御部19に送信することで中継する。取付装置13の通信範囲は、例えば中継部24が本体装置12と無線通信可能な範囲である。
【0066】
中継部24は、取付工程において上部機械室3aに持ち込まれる。中継部24は、取付工程において例えば上部機械室3aの蓋4の裏面に取り付けられる。中継部24は、取外し工程において上部機械室3aの蓋4から取り外される。
【0067】
以上に説明したように、実施の形態2に係るポータブル運転装置11の取付装置13は、中継部24を有する。中継部24は、機械室において本体装置12との間で無線通信を行うことで、第1制御部18および第2制御部19と本体装置12との間の通信を中継する。
これにより、制御盤9および電源スイッチ10などの配置によらずに、中継部24の配置によって取付装置13の通信範囲を設定できる。このため、操作信号の干渉などをより効果的に防止できる。
【0068】
なお、中継部24は、上部機械室3aにおいて乗客コンベアに取り付けられていないときに、本体装置12に着脱可能に装着されていてもよい。
【0069】
実施の形態3.
実施の形態3において、実施の形態1または実施の形態2で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態3で説明しない特徴については、実施の形態1または実施の形態2で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
【0070】
図9は、実施の形態3に係るポータブル運転装置の構成図である。
【0071】
ポータブル運転装置11の取付装置13は、蓋検知部25を備える。蓋検知部25は、取付装置13が持ち込まれる機械室の蓋4の閉状態を検知する部分である。蓋検知部25は、例えばマンホールの縁と蓋4との隙間を計測することで蓋4の閉状態を検知してもよい。蓋検知部25は、例えばマンホールの縁と蓋4との間における接触圧を計測することで蓋4の閉状態を検知してもよい。蓋検知部25は、例えば蓋4が全閉しているときに蓋4の閉状態を検知する。この例において、蓋検知部25は、無線通信の機能を搭載する。蓋検知部25は、閉状態を表す検知信号を無線通信によって本体装置12に直接送信する。蓋検知部25は、有線または無線によって第1制御部18および第2制御部19に検知信号を出力する。
【0072】
本体装置12は、蓋検知部25から閉状態を検知していないときに、操作信号を取付装置13に送信しない。例えば、本体装置12は、蓋検知部25から閉状態を表す検知信号を受信するまで、取付装置13への操作信号の送信を保留する。あるいは、本体装置12は、蓋検知部25から閉状態を表す検知信号を受信していないときに行われた操作信号を出力する操作を無視してもよい。
【0073】
取付装置13は、蓋検知部25から閉状態を検知していないときに、本体装置12からの操作信号を受け付けない。例えば、第1制御部18および第2制御部19は、蓋検知部25から閉状態を表す検知信号を受信するまで、入力された操作信号を無視する。
【0074】
以上に説明したように、実施の形態3に係るポータブル運転装置11の取付装置13は、蓋検知部25を有する。蓋検知部25は、機械室の蓋4の閉状態を検知する。取付装置13は、蓋検知部25が閉状態を検知していないときに、本体装置12からの操作信号を受け付けない。また、本体装置12は、蓋検知部25が閉状態を検知していないときに、操作信号を取付装置13に送信しない。
これにより、機械室の蓋4が閉まっている状態を確認した上で乗客コンベアの運転制御の操作が行われる。このため、機械室の蓋4などは、より保守作業の妨げになりにくくなる。
【0075】
なお、蓋検知部25は、中継部24を通じて検知信号を本体装置12に送信してもよい。蓋検知部25は、第1制御部18または第2制御部19のいずれかを通じて検知信号を本体装置12に送信してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 エスカレーター、 2a 上部乗降口、 2b 下部乗降口、 3a 上部機械室、 3b 下部機械室、 4 蓋、 5 駆動装置、 6 ステップ、 7 手摺、 8 検出部、 9 制御盤、 10 電源スイッチ、 11 ポータブル運転装置、 12 本体装置、 13 取付装置、 14 表示部、 15 スイッチ切替ボタン、 16 運転操作ボタン、 17 入力ボタン、 18 第1制御部、 19 第2制御部、 20 レバー、 21 キャップ、 22 アーム、 23 アクチュエータ、 24 中継部、 25 蓋検知部、 100 専用のハードウェア、 200a プロセッサ、 200b メモリ