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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】配線電極付き基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/26 20060101AFI20240416BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240416BHJP
   H05K 3/28 20060101ALN20240416BHJP
   G03F 7/20 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
G03F7/26
G06F3/041 490
G06F3/041 660
G06F3/041 495
H05K3/28 B
G03F7/20 501
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020062554
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162666
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山村 修平
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 年矢
(72)【発明者】
【氏名】池田 龍太郎
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-264811(JP,A)
【文献】特開平04-221836(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/26
G06F 3/041
H05K 3/28
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板に第1の不透明配線電極を形成する工程、
前記第1の不透明配線電極上に絶縁層を形成する工程、
前記絶縁層上に第2の不透明配線電極を形成する工程、
前記第2の不透明配線電極形成面にポジ型感光性組成物を塗布する工程、
前記ポジ型感光性組成物を露光マスクを用いて当該ポジ型感光性組成物の塗布面側から露光する工程、
前記第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極をマスクとして前記ポジ型感光性組成物を前記塗布面とは反対の面側から露光する工程、
および、両面から露光された前記ポジ型感光性組成物を現像することにより、第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成する工程を有する配線電極付き基板の製造方法。
【請求項2】
透明基板に第1の不透明配線電極を形成する工程、
前記第1の不透明配線電極形成面に第1の絶縁層を形成する工程、
前記第1の絶縁層上に第2の不透明配線電極を形成する工程、
前記第2の不透明配線電極形成面に第2の絶縁層を形成する工程、
前記第2の絶縁層形成面にポジ型感光性組成物を塗布する工程、
前記ポジ型感光性組成物を露光マスクを用いて当該ポジ型感光性組成物の塗布面側から露光する工程、
前記第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極をマスクとして前記ポジ型感光性組成物を前記塗布面とは反対の面側から露光する工程、
および、両面から露光された前記ポジ型感光性組成物を現像することにより、前記第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成する工程を有する配線電極付き基板の製造方法。
【請求項3】
前記不透明配線電極が端子部を含み、前記現像により端子部上のポジ型感光性組成物が除去される、請求項1または2記載の配線電極付き基板の製造方法。
【請求項4】
前記ポジ型感光性組成物を塗布面とは反対の面側から露光する工程において、光源としてLEDランプを用いる、請求項1~3のいずれか一項記載の配線電極付き基板の製造方法。
【請求項5】
前記不透明配線電極の波長365nmにおける透過率が20%以下である請求項1~4のいずれか一項記載の配線電極付き基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線電極付き基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入力手段としてタッチパネルが広く用いられている。タッチパネルは、液晶パネルなどの表示部と、特定の位置に入力された情報を検出するタッチパネルセンサー等から構成される。タッチパネルの方式は、入力位置の検出方法により、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、電磁誘導方式、超音波方式などに大別される。中でも、光学的に明るいこと、意匠性に優れること、構造が簡易であることおよび機能的に優れること等の理由により、静電容量方式のタッチパネルが広く用いられている。
【0003】
静電容量方式のタッチパネルセンサーは、第一電極と絶縁層を介して直交する第二電極を有し、タッチパネル面の電極に電圧をかけて、指などの導電体が触れた際の静電容量変化を検知することにより得られた接触位置を信号として出力する。静電容量方式に用いられるタッチパネルセンサーとしては、例えば、一対の対向する透明基板上に電極および外部接続端子を形成した構造や、一枚の透明基板の両面に電極および外部接続端子をそれぞれ形成した構造などが知られている。タッチパネルセンサーに用いられる配線電極としては、配線電極を見えにくくする観点からITO電極等を用いた透明電極が用いられることが一般的であったが、近年、高感度化や画面の大型化により、金属材料を用いた不透明配線電極が広まっている。
【0004】
金属材料を用いた不透明配線電極を有するタッチパネルセンサーは、不透明配線電極の金属光沢により不透明配線電極が視認される課題があった。不透明配線電極を視認されにくくする方法としては、特許文献1に提案されるように、不透明配線電極上に黒色のポジ型遮光材料を塗布し、不透明配線電極をマスクとして露光、現像することで不透明配線電極上に遮光層を形成するものが提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/168325号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている遮光層の形成方法では、不透明配線電極部上全体に遮光層が形成されるため、例えば端子部など、外部素子との導通を確保する必要がある箇所にも遮光層が形成され、導通を確保できないなどの問題があった。そのため、端子部などの不透明配線電極を露出させたい部分の遮光層を除去しようとした場合、基板を反転して再度露光・現像するといった追加の操作が必要であり、工程や時間を要するため、量産性に課題があった。
【0007】
本発明は、遮光層を有する配線電極付き基板を製造するにあたり、配線電極の一部を露出させる必要がある場合であっても、遮光層形成にかかる時間を従来の製造方法と比較して短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。
【0009】
透明基板に第1の不透明配線電極を形成する工程、
前記第1の不透明配線電極上に絶縁層を形成する工程、
前記絶縁層上に第2の不透明配線電極を形成する工程、
前記第2の不透明配線電極形成面にポジ型感光性組成物を塗布する工程、
前記ポジ型感光性組成物を露光マスクを用いて当該ポジ型感光性組成物の塗布面側から露光する工程、
前記第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極をマスクとして前記ポジ型感光性組成物を前記塗布面とは反対の面側から露光する工程、
および、両面から露光された前記ポジ型感光性組成物を現像することにより、第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成する工程を有する配線電極付き基板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】

本発明によって、遮光層を有する配線電極付き基板を製造するにあたり、配線電極の一部を露出させる必要がある場合であっても、遮光層形成にかかる時間を従来の製造方法と比較して短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一の実施形態に係る配線電極付き基板を示す概略図である。
図2】第一の実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法を示す概略図である。
図3】第二の実施形態に係る配線電極付き基板を示す概略図である。
図4】第三の実施形態に係る配線電極付き基板を示す概略図である。
図5】第四の実施形態に係る配線電極付き基板を示す概略図である。
図6】実施例2に係る配線電極付き基板の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る配線電極付き基板の製造方法を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものである。また、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0013】
[第一の実施形態]
図1は、透明基板1上に不透明配線電極2を有し、不透明配線電極2上の所望の部位に遮光層3を有する配線電極付き基板の概略図である。図2に、本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法の一例の概略図を示す。
【0014】
本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、
透明基板に不透明配線電極を形成する工程(図2(a))、
前記不透明配線電極形成面にポジ型感光性組成物を塗布する工程(図2(b))、
前記ポジ型感光性組成物を露光マスクを用いて当該ポジ型感光性組成物の塗布面側から露光する工程(図2(c))、
前記不透明配線電極をマスクとして前記ポジ型感光性組成物を前記塗布面とは反対の面側から露光する工程(図2(d))、
および、両面から露光された前記ポジ型感光性組成物を現像することにより、前記不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成する工程(図2(e))を有する。
【0015】
ここで「不透明配線電極上の所望の部位」とは、不透明配線電極を視認させたくない部位をいう。例えばタッチパネルセンサーを製造した場合において、不透明配線電極を視認させたくない部位はタッチパネル機能を有する領域などである。一方、画面周辺領域における不透明配線電極が視認される可能性がない部分、外部素子との導通を確保する必要がある部分、アライメントマークを形成する部分などには遮光層が設けられている必要はない。
【0016】
<不透明配線電極を形成する工程>
本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、透明基板に不透明配線電極を形成する工程を有する。
【0017】
不透明配線電極の形成方法としては、例えば、後述の感光性導電性組成物を用いてフォトリソグラフィー法によりパターン形成する方法、導電性組成物(導電ペースト)を用いてスクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット等によりパターン形成する方法、金属、金属複合体、金属と金属化合物との複合体、金属合金等の膜を形成し、レジストを用いてフォトリソグラフィー法により形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、微細配線が形成可能であることから、感光性導電性組成物を用いてフォトリソグラフィー法により形成する方法が好ましい。
【0018】
透明基板は、露光光の照射エネルギーに対して透過性を有することが好ましい。具体的には、透明基板の波長365nmの光の透過率は、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。波長365nmの光の透過率を50%以上とすることにより、ポジ型感光性組成物を効率良く露光することができる。なお、透明基板の波長365nmにおける透過率は、紫外可視分光光度計(U-3310 (株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定することができる。
【0019】
透明基板としては、可撓性を有しない透明基板や可撓性を有する透明基板が挙げられる。可撓性を有しない透明基板としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラス、化学強化ガラス、“パイレックス(登録商標)”ガラス等のガラス基板や、合成石英板、エポキシ樹脂基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等が挙げられる。
【0020】
可撓性を有する透明基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」)、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、アラミドフィルム等の樹脂からなる透明フィルムや光学用樹脂板等が挙げられる。これらを複数重ねて使用してもよく、例えば、粘着層により複数の透明基板を用いて貼り合せて使用することができる。また、これらの透明基板の表面には、絶縁層を有してもよい。
【0021】
透明基板の厚さは、不透明配線電極を安定的に支持することができ、前述の透過性を有する範囲において、材料に応じて適宜選択される。例えば、不透明配線電極をより安定的に支持する観点からは、ガラス等の可撓性を有しない透明基板の場合、0.3mm以上が好ましく、PETフィルム等の可撓性を有する透明基板の場合、25μm以上が好ましい。一方、露光光の透過性をより向上させる観点からは、ガラス等の可撓性を有しない透明基板の場合、1.5mm以下が好ましく、PETフィルム等の可撓性を有する透明基板の場合、300μm以下が好ましい。
【0022】
不透明配線電極は、露光光の照射エネルギーに対して遮光性を有することが好ましい。具体的には、不透明配線電極の波長365nmにおける透過率は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。波長365nmの光の透過率を20%以下とすることにより、不透明配線電極のマスクとしての効果が大きくなり、不透明配線電極に対応する部位に遮光層をより形成しやすくなる。なお、上記透過率は、上記透明基板上の0.1mm角以上の不透明配線電極について、微小面分光色差計(VSS 400:日本電色工業(株)製)により測定することができる。
【0023】
不透明配線電極を構成する材料としては、例えば、銀、金、銅、白金、鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、インジウム等の金属や、これらの合金などの導電粒子が挙げられる。これらの中でも、導電性の観点から、銀、銅、金が好ましい。
【0024】
導電体としては、導電粒子を用いることが好ましくその平均粒径は、導電粒子の分散性を向上させる観点から、0.01μm以上が好ましく、不透明配線電極のパターンの端部をシャープにする観点から、1.0μm以下が好ましい。
【0025】
不透明配線電極は、前述の導電粒子とともに、有機成分を含有してもよい。不透明配線電極は、例えば、導電粒子、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤を含む感光性導電性組成物の硬化物から形成されていてもよく、この場合、不透明配線電極は、光重合開始剤および/またはその光分解物を含有する。感光性導電性組成物は、必要に応じて、熱硬化剤、レベリング剤などの添加剤を含有してもよい。
【0026】
不透明配線電極のパターン形状としては、例えば、メッシュ状、ストライプ状などが挙げられる。メッシュ状としては、例えば、単位形状が三角形、四角形、多角形、円形などの格子状またはこれらの単位形状の組み合わせからなる格子状等が挙げられる。中でも、パターンの導電性を均一にする観点から、メッシュ状が好ましい。不透明配線電極は、前述の金属から構成され、メッシュ状のパターンを有するメタルメッシュであることがより好ましい。
【0027】
不透明配線電極の厚みは、遮光性をより向上させる観点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。一方、不透明配線電極の厚みは、微細な配線を形成する観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
【0028】
配線電極の線幅は、1~10μmが好ましい。配線電極の線幅は、導電性を向上させる観点から、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。一方、配線電極の線幅は、配線電極をより視認されにくくする観点から、10μm以下が好ましく、7μm以下が好ましく、6μm以下がさらに好ましい。
【0029】
<ポジ型感光性組成物を塗布する工程>
本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、不透明配線電極形成面にポジ型感光性組成物を塗布する工程を有する。
【0030】
ポジ型感光性組成物とは、光照射部が現像液に溶解するポジ型感光性を有する組成物を言う。例えば、感光剤(溶解抑制剤)およびアルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。
【0031】
ポジ型感光性組成物は、後述のように遮光層の形成に用いられるものであるから、例えば、着色剤を含有することが好ましい。
【0032】
着色剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0033】
染料としては、例えば、油溶性染料、分散染料、反応性染料、酸性染料、直接染料等が挙げられる。染料の骨格構造としては、例えば、アントラキノン系、アゾ系、フタロシアニン系、メチン系、オキサジン系、これらの含金属錯塩系などが挙げられる。染料の具体例としては、例えば、“SUMIPLAST(登録商標)”染料(商品名、住友化学工業(株)製)、Zapon、“Neozapon(登録商標)”(以上商品名、BASF(株)製)、Kayaset、Kayakalan染料(以上商品名、日本化薬(株)製)、Valifastcolors染料(商品名、オリエント化学工業(株)製)、Savinyl(商品名、クラリアント製)等が挙げられる。
【0034】
有機顔料としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0035】
無機顔料としては、例えば、マンガン酸化物、チタン酸化物、チタン酸窒化物、クロム酸化物、バナジウム酸化物、鉄酸化物、コバルト酸化物、ニオブ酸化物等が挙げられる。
【0036】
ポジ型感光性遮光性組成物中における着色剤の含有量は、遮光層の反射率をより低減して不透明配線電極をより視認されにくくする観点から、全固形分中1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。一方、ポジ型感光性遮光性組成物の光反応を効果的に進め、残渣を抑制する観点から、着色剤の含有量は、全固形分中30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0037】
感光剤(溶解抑制剤)としては、露光エネルギーにより酸が発生するものが好ましい。例えば、ジアゾジスルホン化合物、トリフェニルスルフォニウム化合物、キノンジアジド化合物などが挙げられる。ジアゾジスルホン化合物としては、例えば、ビス(シクロヘキシルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(ターシャルブチルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(4-メチルフェニルスルフォニル)ジアゾメタンなどが挙げられる。トリフェニルスルフォニウム化合物としては、例えば、ジフェニル-4-メチルフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート、ジフェニル-2,4,6-トリメチルフェニルスルフォニウムp-トルエンスルフォネート、ジフェニル(4-メトキシフェニル)スルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネートなどが挙げられる。キノンジアジド化合物としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0038】
ポジ型感光性組成物中における感光剤(溶解抑制剤)の含有量は、未露光部のアルカリ可溶性樹脂の溶解抑制の観点から、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましい。一方、露光部の感光剤(溶解抑制剤)による過剰な光吸収を抑制し、残渣の発生を抑える観点から、感光剤(溶解抑制剤)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0039】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基および/またはカルボキシル基を有する樹脂等が挙げられる。
【0040】
ヒドロキシ基を有する樹脂としては、例えば、フェノール性ヒドロキシ基を有するフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック樹脂、ヒドロキシ基を有するモノマーの重合体、ヒドロキシ基を有するモノマーとスチレン、アクリロニトリル、アクリルモノマー等との共重合体が挙げられる。
【0041】
ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、4-ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートなどのフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メチル-3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの非フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー等が挙げられる。
【0042】
カルボキシル基を有する樹脂としては、例えば、カルボン酸変性エポキシ樹脂、カルボン酸変性フェノール樹脂、ポリアミック酸、カルボン酸変性シロキサン樹脂、カルボキシル基を有するモノマーの重合体、カルボキシル基を有するモノマーとスチレン、アクリロニトリル、アクリルモノマー等との共重合体等が挙げられる。
【0043】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸等が挙げられる。
【0044】
ヒドロキシ基およびカルボキシル基を有する樹脂としては、ヒドロキシ基を有するモノマーとカルボキシル基を有するモノマーの共重合体、ヒドロキシ基を有するモノマーと、カルボキシル基を有するモノマーと、スチレン、アクリロニトリル、アクリルモノマー等との共重合体が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0045】
中でも、フェノール性ヒドロキシ基およびカルボキシル基を含有する樹脂が好ましい。フェノール性ヒドロキシ基を含有することにより、感光剤(溶解抑制剤)としてキノンジアジド化合物を用いる場合、フェノール性ヒドロキシ基とキノンジアジド化合物が水素結合を形成し、ポジ型感光性組成物層の未露光部の現像液への溶解度を低下させることができ、未露光部と、露光部との溶解度差が大きくなり、現像マージンを広げることができる。また、カルボキシル基を含有することにより、現像液への溶解性が向上し、カルボキシル基の含有量により現像時間の調整が容易となる。
【0046】
カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂の酸価は、現像液への溶解性の観点から、50mgKOH/g以上が好ましく、未露光部の過度の溶解を抑制する観点から、250mgKOH/g以下が好ましい。なお、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂の酸価は、JIS K 0070(1992)に準じて測定することができる。
【0047】
ポジ型感光性組成物は、熱硬化性化合物を含有してもよい。熱硬化性化合物を含有することにより、遮光層の硬度が向上することから、他の部材との接触による欠けや剥がれを抑制し、不透明配線電極との密着性を向上させることができる。熱硬化性化合物としては、例えば、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーなどが挙げられる。
【0048】
ポジ型感光性組成物は、溶剤を含有することが好ましく、これにより組成物の粘度を所望の範囲に調整することができる。溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチルラクトン、乳酸エチル、1-メトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0049】
ポジ型感光性組成物は、その所望の特性を損なわない範囲で、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、安定剤等を含有してもよい。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエリレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。レベリング剤としては、例えば、特殊ビニル系重合体または特殊アクリル系重合体などが挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0050】
ポジ型感光性組成物の塗布方法としては、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、活版印刷、フレキソ印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコ-ターまたはバーコーターを用いる方法が挙げられる。
【0051】
ポジ型感光性組成物が溶剤を含有する場合には、塗布したポジ型感光性組成物膜を乾燥して溶剤を揮発除去することが好ましい。乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥などが挙げられる。加熱乾燥装置は、電磁波やマイクロ波により加熱するものでもよく、例えば、オーブン、ホットプレート、電磁波紫外線ランプ、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーターなどが挙げられる。加熱温度は、溶剤の残存を抑制する観点から、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。一方、加熱温度は、感光剤(溶解抑制剤)の失活を抑制する観点から、150℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。加熱時間は、1分間~数時間が好ましく、1分間~50分間がより好ましい。
【0052】
ポジ型感光性組成物の塗布膜厚は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。一方、塗布膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がより好ましい。ここで、ポジ型感光性組成物が溶剤を含有する場合、塗布膜厚とは、乾燥後の膜厚を言う。
【0053】
<露光マスクを用いて露光する工程>
本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、ポジ型感光性組成物を露光マスクを用いて当該ポジ型感光性組成物の塗布面側から露光する工程を有する。
【0054】
具体的には、不透明配線電極上に塗布した遮光層のうち、遮光層を要しない部位を露光マスクの開口部としてポジ型感光性組成物の塗布面側から露光を行う。これにより、後の現像工程を経て遮光層を要しない部位のポジ型感光性組成物が除去されるため、基板を反転するなどして別途露光、現像する工程を省略することができる。
【0055】
露光光は、ポジ型感光性組成物が含有する感光剤(溶解抑制剤)の吸収波長と合致する紫外領域、すなわち、200nm~450nmの波長域に発光を有することが好ましい。そのような露光光を得るための光源としては、例えば、水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、半導体レーザー、KrFまたはArFエキシマレーザーなどが挙げられる。これらの中でも、水銀ランプのi線(波長365nm)が好ましい。露光量は、露光部の現像液への溶解性の観点から、波長365nm換算で50mJ/cm以上が好ましく、100mJ/cm以上がより好ましく、200mJ/cm以上がさらに好ましい。
【0056】
<不透明配線電極をマスクとして露光する工程>
本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、不透明配線電極をマスクとしてポジ型感光性組成物を塗布面とは反対の面側から露光する工程を有する。
【0057】
これにより、不透明配線電極が形成されていない部位のポジ型感光性組成物を後の現像工程により精度よく除去することができる。また、先のポジ型感光性組成物の塗布面側からの露光と合わせることで、不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成することができる。
【0058】
ポジ型感光性組成物を塗布面とは反対の面側から露光する工程において、光源としてLEDランプを用いることが装置の省スペースの観点から好ましい。
【0059】
LEDランプは特性上単一の波長のみ照射するが、一般的な水銀ランプを用いた露光装置で広く用いられるi線(波長365nm)およびh線(波長405nm)に対応する波長を照射するLEDランプを使用するのが、現行の露光機に対して感光性を有する種々の感光性材料加工に対しても汎用性を示すため好ましい。
【0060】
LEDランプは、例えばライン型UV照射機(CKL-500365、CCS製)等の装置を用いるのが好ましい。放射照度は2.5W/cm以上が好ましく、放射照度3.5W/cm以上がより好ましい。
【0061】
LEDランプは、基板搬送ラインの下部に設置することが好ましい。このようにすることで、基板を基板搬送治具にセットした後、基板がLEDランプ設置部を通過するときにLED光を照射することができ、基板を反転することなく、一連の工程でポジ型感光性組成物の露光をすることができる。
【0062】
LEDランプは装置の特性上、照射距離が離れると大きく照射強度が減衰する特徴を持つため、照射する透明基板との距離は20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0063】
<遮光層を形成する工程>
本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、両面から露光されたポジ型感光性組成物を現像することにより、不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成する工程を有する。
【0064】
露光したポジ型感光性組成物の塗布膜を現像することにより、露光部を除去し、不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成することができる。現像液としては、不透明配線電極の導電性を阻害しないものが好ましく、アルカリ現像液が好ましい。
【0065】
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性物質の水溶液が挙げられる。これらの水溶液に、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチルラクトンなどの極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;界面活性剤を添加してもよい。
【0066】
現像方法として、例えば、ポジ型感光性組成物の塗布膜を形成した基板を静置、回転または搬送させながら現像液をポジ型感光性組成物の塗布膜の表面にスプレーする方法、ポジ型感光性組成物の塗布膜を現像液中に浸漬する方法、ポジ型感光性組成物の塗布膜を現像液中に浸漬させながら超音波をかける方法などが挙げられる。
【0067】
現像により得られたパターンに、リンス液によるリンス処理を施してもよい。リンス液としては、例えば、水;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類の水溶液;乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類の水溶液などが挙げられる。
【0068】
不透明配線電極は端子部を含み、現像により端子部上のポジ型感光性組成物が除去されることが好ましい。外部端子との導通を確保することが必要な端子部における不透明配線電極上の遮光層を短時間で除去することができるからである。
【0069】
得られた遮光層をさらに100℃~250℃で加熱してもよい。加熱により、遮光層の硬度を向上させ、他の部材との接触による欠けや剥がれを抑制し、不透明配線電極との密着性を向上させることができる。加熱装置としては、ポジ型感光性組成物膜の加熱乾燥装置として例示したものが挙げられる。
【0070】
遮光層は、着色剤を含有するポジ型感光性遮光性組成物の光硬化物からなることが好ましい。このようにすることで、不透明配線電極が視認されにくくなる。
【0071】
遮光層は、不透明配線電極に対応する部位に形成され、不透明配線電極の反射率を低減させることが好ましい。具体的には、遮光層の波長550nmにおける反射率は、25%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。遮光層の反射率を25%以下とすることにより、不透明配線電極の反射を抑制し、配線電極をより視認されにくくすることができる。なお、遮光層の反射率は、透明基板上の0.1mm角以上の遮光層について、反射率計(VSR-400:日本電色工業(株)製)により測定することができる。
【0072】
遮光層の波長550nmの光の反射率を上記範囲とする方法としては、例えば、前述の好ましい組成のポジ型感光性遮光性組成物を用いる方法や、遮光層の膜厚を後述する好ましい範囲にする方法などが挙げられる。
【0073】
遮光層の膜厚は、不透明配線電極の反射率をより低減する観点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。一方、残渣を抑制し、微細なパターンを形成する観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。
【0074】
[第二の実施形態]
図3は、透明基板1上に不透明配線電極2(第1の不透明配線電極)、遮光層3(第1の遮光層)および絶縁層4を有し、絶縁層4上に不透明配線電極5(第2の不透明配線電極)および遮光層6(第2の遮光層)を有する配線電極付き基板の概略図である。図3に示す配線電極付き基板は、第一の実施形態における透明基板の片面に第1の不透明配線電極および第1の遮光層を形成した後、絶縁層、第2の不透明配線電極をそれぞれ形成し、さらにポジ型感光性組成物を塗布し、1回目と同様に露光および現像する工程を通して得ることができる。
【0075】
すなわち、本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、前記不透明配線電極が第1の不透明配線電極であり、
前記第1の不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成する工程の後に、
前記第1の不透明配線電極形成面に絶縁層を形成する工程、
前記絶縁層上に第2の不透明配線電極を形成する工程、
前記第2の不透明配線電極形成面に第2のポジ型感光性組成物を塗布する工程、
前記第2のポジ型感光性組成物を露光マスクを用いて当該第2のポジ型感光性組成物の塗布面側から露光する工程、
前記第2の不透明配線電極をマスクとして前記第2のポジ型感光性組成物を前記塗布面とは反対の面側から露光する工程、
および、両面から露光された前記第2のポジ型感光性組成物を現像することにより、前記第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極上の所望の部位に第2の遮光層を形成する工程を有する。
【0076】
絶縁層の形成方法としては、例えば、絶縁性組成物(絶縁ペースト)を塗布し、乾燥する方法や、不透明配線電極形成面側に粘着剤を介して透明基板を貼り合わせる方法などが挙げられる。後者の場合、粘着剤と透明基板が絶縁層となる。
【0077】
絶縁ペーストの塗布方法としては、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、活版印刷、フレキソ印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコ-ターまたはバーコーターを用いる方法が挙げられる。絶縁ペーストを塗布し、乾燥する方法において、乾燥膜を紫外線処理および/または熱処理により硬化させることができる。粘着剤を介して透明基板を貼り合わせる方法としては、例えば、粘着剤を不透明配線電極付き基材上に形成し、透明基板を貼り合わせてもよいし、粘着剤付き透明基材を貼り合わせてもよい。貼り合わせる透明基板としては、透明基板として先に例示したものが挙げられる。
【0078】
絶縁ペーストは、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、カルド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂等の絶縁性を付与する樹脂を含有することが好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
【0079】
[第三の実施形態]
図4は、透明基板1上に不透明配線電極2(第1の不透明配線電極)および絶縁層4を有し、絶縁層4上に不透明配線電極5(第2の不透明配線電極)および遮光層6を有する配線電極付き基板の概略図である。図4に示す配線電極付き基板は、第一の実施形態における透明基板の片面に第1の不透明配線電極を形成した後、絶縁層および第2の不透明配線電極を形成し、ポジ型感光性組成物を塗布し、他の実施形態と同様に感光および現像する工程を通して得ることができる。
【0080】
すなわち、本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、透明基板に第1の不透明配線電極を形成する工程、
前記第1の不透明配線電極上に絶縁層を形成する工程、
前記絶縁層上に第2の不透明配線電極を形成する工程、
前記第2の不透明配線電極形成面にポジ型感光性組成物を塗布する工程、
前記ポジ型感光性組成物を露光マスクを用いて当該ポジ型感光性組成物の塗布面側から露光する工程、
前記第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極をマスクとして前記ポジ型感光性組成物を前記塗布面とは反対の面側から露光する工程、
および、両面から露光された前記ポジ型感光性組成物を現像することにより、第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成する工程を有する。
【0081】
[第四の実施形態]
図5は、透明基板1上に不透明配線電極2(第1の不透明配線電極)および絶縁層4を有し、絶縁層4上に不透明配線電極5(第2の不透明配線電極)および第2の絶縁層7を有し、さらに、第2の絶縁層7の上で第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極上の所望の部位に遮光層8を有する配線電極付き基板の概略図である。図5に示す配線電極付き基板は、第一の実施形態における透明基板の片面に第1の不透明配線電極を形成した後、第1の絶縁層、第2の不透明配線電極及び第2の絶縁層を形成し、ポジ型感光性組成物を塗布し、他の実施形態と同様に露光および現像する工程を通して得ることができる。
【0082】
すなわち、本実施形態に係る配線電極付き基板の製造方法は、透明基板に第1の不透明配線電極を形成する工程、
前記第1の不透明配線電極形成面に第1の絶縁層を形成する工程、
前記第1の絶縁層上に第2の不透明配線電極を形成する工程、
前記第2の不透明配線電極形成面に第2の絶縁層を形成する工程、
前記第2の絶縁層形成面にポジ型感光性組成物を塗布する工程、
前記ポジ型感光性組成物を露光マスクを用いて当該ポジ型感光性組成物の塗布面側から露光する工程、
前記第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極をマスクとして前記ポジ型感光性組成物を前記塗布面とは反対の面側から露光する工程、
および、両面から露光された前記ポジ型感光性組成物を現像することにより、前記第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極上の所望の部位に遮光層を形成する工程を有する。
【0083】
以上説明した各実施形態に係る製造方法により得られる配線電極付き基板は、配線電極が視認されにくいことが必要な用途に好適に用いることができる。配線電極の視認抑制が特に要求される用途としては、例えば、タッチパネル用部材、電磁シールド用部材、透明LEDライト用部材などが挙げられる。中でも、微細化および配線電極を視認されにくくすることがより高く要求されるタッチパネル用部材として好適に用いることができる。
【実施例
【0084】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。以下の実施例1-2は参考例1-2と読み替える。
【0085】
各実施例で用いた材料は、以下の通りである。なお、透明基板の波長365nmにおける透過率は、紫外可視分光光度計(U-3310 (株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。
【0086】
(透明基板)
透明基板(ソーダガラス。厚み:1.1mm、波長365nmの光の透過率90%)(a)。
【0087】
(着色剤)
カーボンブラック(MA100 三菱化学(株)製)(b)。
【0088】
(感光性導電ペースト)
感光性導電ペースト(Type:SFAG-M200 東レ(株)製。銀の導電粒子を含有。)(c)。コーター塗布用低粘度(2.7mPa・s)ペースト。
【0089】
(キノンジアジド化合物)
乾燥窒素気流下、α,α,-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシ-α,α-ジメチルジメチルベンジルエチルベンゼン(商品名TrisP-PA 本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5-ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド33.58g(0.125モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にし、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ得られたキノンジアジド化合物(D-1)。
【0090】
(アクリル系共重合体)
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温。これに、20gのエチルアクリレート(以下、「EA」)、40gのメタクリル酸2-エチルへキシル(以下、「2-EHMA」)、20gのスチレン(以下、「St」)、15gのアクリル酸(以下、「AA」)、0.8gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下、終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのグリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで得られたアクリル系共重合体(D-2)。
【0091】
(ポジ型感光性組成物)
100mLクリーンボトルに、3.09gの感光性ポリマーWR-101(DIC(株)製)、0.77gのキノンジアジド化合物(D-1)、40.14gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)((株)クラレ製)を入れ、自転-公転真空ミキサー「あわとり錬太郎ARE-310」((株)シンキー製)で混合して、44.0gの樹脂溶液を得た。44.0gの得られた樹脂溶液、0.6gのカーボンブラック(b)、0.18gのアクリル系共重合体(D-2)及び0.36gのレベリング剤BYK-LP21116(ビックケミー社製)を混ぜ合わせ、0.05mmφジルコニアビーズ(東レ(株)製)を70体積%充填した遠心分離セパレーターを具備した、ウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)を用いて混練し、得られたポジ型感光性組成物(d)。
【0092】
(絶縁ペースト)
絶縁ペースト(Type:OCM-1000 東レ(株)製)(e)。
【0093】
(実施例1)
<不透明配線電極の形成>
透明基板(a)の片面に、感光性導電ペースト(c)を、スピンコーターにより、乾燥後膜厚が1μmとなるように印刷し、90℃にて8分間乾燥した。ピッチ300μm、メッシュ線幅4μmのメッシュ形状および縦500μm、横1000μmの端子部のパターンを有する露光マスクを介して、露光装置(PEM-6M;ユニオン光学(株)製)を用いて露光量200mJ/cm(波長365nm換算)で露光した。その後、0.08質量%水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、「TMAH」)水溶液で80秒スピン現像を行い、さらに、超純水でリンスしてから、240℃のIRヒーター炉内で60分間加熱して、不透明配線電極付き基板を得た。不透明配線電極の線幅を光学顕微鏡で測定した結果、4μmであった。端子部の波長365nmにおける透過率は5%であった。なお、不透明配線電極の透過率は、微小面分光色差計(VSS 400:日本電色工業(株)製)により測定した。
【0094】
<ポジ型感光性組成物の塗布>
得られた不透明配線電極付き基板の不透明配線電極形成面に、ポジ型感光性組成物(d)を、スピンコーターにより、乾燥後の膜厚が1μmとなるように印刷し、80℃にて5分間乾燥し、ポジ型感光性組成物付き基板を得た。得られたポジ型感光性組成物付き基板について、反射率計(VSR-400:日本電色工業(株)製)を用いて反射率を測定したところ、波長550nmでの反射率は7%であった。
【0095】
<マスクを用いた露光>
得られたポジ型感光性組成物付き基板を前述の露光装置を用いて、ポジ型感光性組成物を塗布した面と同じ側に露光マスクを配置し、その上面より露光した。露光条件は露光量200mJ/cm(波長365nm換算)とした。露光マスクは、開口部が端子部上のポジ型感光性組成物のみに照射されるよう、成型したものを用いた。
【0096】
<塗布面とは反対の面側からの露光>
得られたポジ型感光性組成物付き基板を透明基板が下面となるように基板搬送治具にセットした。当該治具には基板搬送ラインの下部の所定の箇所にLEDランプがセットされている。ポジ型感光性組成物付き基板がLEDランプ設置部を通過するときに、LED光を照射した。LEDランプはCCS社製(L037)で、照射波長は365nm、発光面は5mm×190mmであった。
【0097】
<現像>
得られた露光済みポジ型感光性組成物付き基板を0.08%TMAH溶液でシャワー現像し、不透明配線電極のメッシュ形状のパターンの上に遮光層を有し、端子部の上には遮光層を有しない、図1に示す配線電極付き基板を得た。
【0098】
(実施例2)
<絶縁層の形成>
実施例1で得られた配線電極付き基板上に、絶縁ペースト(e)をスピンコーターにより、乾燥後膜厚が0.5μmとなるように印刷し、80℃にて5分間乾燥し、絶縁層を形成した。得られた絶縁層付き基板を、露光マスクを介して前述の露光装置を用い、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で露光した。露光マスクは前述の不透明配線電極(本実施例においては第1の不透明配線電極)の端子部が露光されないように成型したものを用いた。その後、0.08質量%TMAH水溶液で80秒シャワー現像し、絶縁層の現像を行った。
【0099】
<第2の不透明配線電極の形成>
得られた絶縁層上に感光性導電ペースト(c)を用いて、前述の不透明配線電極の形成と同様な方法により、第2の不透明配線電極を形成した。
【0100】
<第2のポジ型感光性組成物の塗布>
得られた不透明配線電極付き基板の第2の不透明配線電極形成面に、ポジ型感光性組成物(d)を、スピンコーターにより、乾燥後の膜厚が1μmとなるように印刷し、80℃にて5分間乾燥し、第2のポジ型感光性組成物付き基板を得た。
【0101】
<マスクを用いた露光>
得られた第2のポジ型感光性組成物付き基板を前述の露光装置を用いて、第2のポジ型感光性組成物を塗布した面と同じ側に露光マスクを配置し、その上面より露光した。露光マスクは、開口部が端子部上の第2のポジ型感光性組成物の部位に位置するよう成形したものを用いた。
【0102】
<塗布面とは反対の面側からの露光>
得られた第2のポジ型感光性組成物付き基板を透明基板側が下面となるように基板搬送治具にセットした。当該治具には基板搬送ラインの下部の所定の箇所にLEDランプがセットされている。第2のポジ型感光性組成物付き基板がLEDランプ設置部を通過するときに、LED光を照射した。LEDランプはCCS社製(L037)で、照射波長は365nm、発光面は5mm×190mmであった。
【0103】
<現像>
得られた露光済み第2のポジ型感光性組成物付き基板を0.08%TMAH溶液でシャワー現像し、第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極のメッシュ形状のパターンの対応する位置に遮光層を有し、端子部の上には遮光層を有しない、図3に示す配線電極付き基板を得た。尚、図6に示す上面図の通り、第1の不透明配線電極の端子部は絶縁ペーストから露出した部分より導通を確保することができる。
【0104】
(実施例3)
<絶縁層の形成>
実施例1において、不透明配線電極(本実施例においては第1の不透明配線電極)を形成した後、絶縁ペースト(e)をスピンコーターにより、乾燥後膜厚が0.5μmとなるように印刷し、80℃にて5分間乾燥し、絶縁層を形成した。得られた絶縁層付き基板を、露光マスクを介して前述の露光装置を用い、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で露光した。露光マスクは第1の不透明配線電極の端子部が露光されないように成型したものを用いた。その後、0.08質量%TMAH水溶液で80秒シャワー現像し、絶縁層の現像を行った。
【0105】
<第2の不透明配線電極の形成>
得られた絶縁層上に感光性導電ペースト(c)を用いて、前述の不透明配線電極の形成と同様な方法により、第2の不透明配線電極を形成した。
【0106】
<ポジ型感光性組成物の塗布>
得られた不透明配線電極付き基板の第2の不透明配線電極形成面に、ポジ型感光性組成物(d)を、スピンコーターにより、乾燥後の膜厚が1μmとなるように印刷し、80℃にて5分間乾燥し、ポジ型感光性組成物付き基板を得た。
【0107】
<マスクを用いた露光>
得られたポジ型感光性組成物付き基板を前述の露光装置を用いて、ポジ型感光性組成物を塗布した面と同じ側に露光マスクを配置し、その上面より露光した。露光マスクは、開口部が端子部上のポジ型感光性組成物の部位に位置するよう成形したものを用いた。
【0108】
<塗布面とは反対の面側からの露光>
得られたポジ型感光性組成物付き基板を透明基板側が下面となるように基板搬送治具にセットした。当該治具には基板搬送ラインの下部の所定の箇所にLEDランプがセットされている。ポジ型感光性組成物付き基板がLEDランプ設置部を通過するときに、LED光を照射した。LEDランプはCCS社製(L037)で、照射波長は365nm、発光面は5mm×190mmであった。
【0109】
<現像>
得られた露光済みポジ型感光性組成物付き基板を0.08%TMAH溶液でシャワー現像し、第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極のメッシュ形状のパターンの対応する位置に遮光層を有し、端子部の上には遮光層を有しない、図4に示す配線電極付き基板を得た。
【0110】
(実施例4)
<絶縁層の形成>
実施例1において、不透明配線電極(本実施例においては第1の不透明配線電極)を形成した後、絶縁ペースト(e)をスピンコーターにより、乾燥後膜厚が0.5μmとなるように印刷し、80℃にて5分間乾燥し、絶縁層を形成した。さらに、露光マスクを介して前述の露光装置を用い、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で露光した。露光マスクは第1の不透明配線電極の端子部が露光されないように成型したものを用いた。その後、0.08質量%TMAH水溶液で80秒シャワー現像し、絶縁層の現像を行った。
【0111】
<第2の不透明配線電極の形成>
得られた絶縁層上に感光性導電ペースト(c)を用いて、前述の不透明配線電極の形成と同様な方法により、第2の不透明配線電極を形成した。
【0112】
<第2の絶縁層の形成>
得られた不透明配線電極付き基板上に、絶縁ペースト(e)をスピンコーターにより、乾燥後膜厚が0.5μmとなるように印刷し、80℃にて5分間乾燥し、第2の絶縁層を形成した。さらに、露光マスクを介して前述の露光装置を用い、露光量100mJ/cm(波長365nm換算)で露光した。露光マスクは第1の不透明配線電極及び第2の不透明配線電極の端子部が露光されないように成型したものを用いた。その後、0.08質量%TMAH水溶液で80秒シャワー現像し、第2の絶縁層の現像を行った。
【0113】
<ポジ型感光性組成物の塗布>
得られた不透明配線電極付き基板の第2の絶縁層形成面に、ポジ型感光性組成物(d)を、スピンコーターにより、乾燥後の膜厚が1μmとなるように印刷し、80℃にて5分間乾燥し、ポジ型感光性組成物付き基板を得た。
【0114】
<マスクを用いた露光>
得られたポジ型感光性組成物付き基板を前述の露光装置を用いて、ポジ型感光性組成物を塗布した面と同じ側に露光マスクを配置し、その上面より露光した。露光マスクは、開口部が端子部上のポジ型感光性組成物の部位に位置するよう成形したものを用いた。
【0115】
<塗布面とは反対の面側からの露光>
得られたポジ型感光性組成物付き基板を基板側が下面となるように基板搬送治具にセットした。当該治具には基板搬送ラインの下部の所定の箇所にLEDランプがセットされている。ポジ型感光性組成物付き基板がLEDランプ設置部を通過するときに、LED光を照射した。LEDランプはCCS社製(L037)で、照射波長は365nm、発光面は5mm×190mmであった。
【0116】
<現像>
得られた露光済みポジ型感光性組成物付き基板を0.08%TMAH溶液でシャワー現像し、第2の絶縁層上の第1の不透明配線電極および第2の不透明配線電極のメッシュ形状のパターンの対応する位置に遮光層を有し、端子部の上には遮光層を有しない、図5に示す配線電極付き基板を得た。
【符号の説明】
【0117】
1 透明基板
2 不透明配線電極
3 遮光層
4 絶縁層
5 不透明配線電極
6 遮光層
7 絶縁層
8 遮光層
図1
図2
図3
図4
図5
図6