(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】蓄電システム及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240416BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240416BHJP
H02J 1/12 20060101ALI20240416BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240416BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240416BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J1/00 306L
H02J1/00 309D
H02J1/00 309L
H02J1/12
H02J7/00 303C
H02J7/02 J
H02J7/34 B
H02J7/34 J
H02J7/35 B
(21)【出願番号】P 2020062867
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛幸
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-146314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0127396(US,A1)
【文献】特開2018-019579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H02J1/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02M3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を蓄電する蓄電池が接続された蓄電装置を基本単位とし、DC接続バスに接続された複数の前記蓄電装置が前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御して電力融通を実行する蓄電システムであって、
複数の前記蓄電装置は、
前記DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータと、
前記双方向DC/DCコンバータを充電用または放電用として設定する融通制御部と、
前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出部と、をそれぞれ備え、
前記双方向DC/DCコンバータは、前記充電用として設定されると、前記グリッド電圧の増加により充電電流が増加する充電特性に基づいて充電を制御し、前記蓄電池の蓄電量が予め設定されたシフト範囲である場合、前記充電電流がゼロになるオフセット電圧が増加する方向に前記充電特性をシフトさせ
、前記グリッド電圧が前記オフセット電圧以上の場合、充電方向の電流が正となる充電領域として動作し、前記グリッド電圧が前記オフセット電圧未満の場合、充電方向の電流が負となる放電領域として動作することを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記双方向DC/DCコンバータは、前記蓄電池の蓄電量が多い程、前記充電特性をシフトさせるシフト量を増加させることを特徴とする請求項1記載の蓄電システム。
【請求項3】
複数の前記蓄電装置は、
太陽電池によって発電された発電電力を受電する電力受電部と、
負荷が消費する消費電力を供給する電力供給部と、をそれぞれ備え、
前記双方向DC/DCコンバータは、前記発電電力から前記消費電力を減算した値が閾値よりも小さい場合、その程度に応じて前記シフト量を減少させることを特徴とする請求項2記載の蓄電システム。
【請求項4】
複数の前記蓄電装置は、保護が必要な異常を検出する異常検出回路をそれぞれ備え、
前記双方向DC/DCコンバータは、前記異常検出回路によって異常が検出された場合、前記オフセット電圧が増加する方向に前記充電特性をシフトさせることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蓄電システム。
【請求項5】
直流電力を蓄電する蓄電池とDC接続バスとの間に接続され、前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御して前記DC接続バスに接続された他の蓄電装置との間で電力融通を実行する蓄電装置であって、
前記DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータと、
前記双方向DC/DCコンバータを充電用または放電用として設定する融通制御部と、
前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出部と、を備え、
前記双方向DC/DCコンバータは、前記充電用として設定されると、前記グリッド電圧の増加により充電電流が増加する充電特性に基づいて充電を制御し、前記蓄電池の蓄電量が予め設定されたシフト範囲である場合、前記充電電流がゼロになるオフセット電圧が増加する方向に前記充電特性をシフトさせ
、前記グリッド電圧が前記オフセット電圧以上の場合、充電方向の電流が正となる充電領域として動作し、前記グリッド電圧が前記オフセット電圧未満の場合、充電方向の電流が負となる放電領域として動作することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散設置された複数の電力蓄電装置間で電力融通を行う蓄電システム及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーの利用方法として、系統連系ではなく自己消費(自家消費)システムへのシフトが予想されている。自己消費システムとしては、例えば、防災拠点において、太陽電池装置で発電された電力を蓄電する蓄電装置が考えられる。
【0003】
そこで、本出願人は、DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータを放電用と充電用とに切り換えるだけで、各蓄電装置間を電力融通制御させることができ、エネルギーの利用効率が高く、リスク低減された安価なシステムを提案した(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、全ての蓄電装置が充電特性で動作する場合、蓄電装置間で電力融通が行われない。従って、負荷(消費電力)が大きい装置ほど早くダウンする虞があり、蓄電システムの安定した運用が困難になってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、従来技術の上記問題を解決し、全ての蓄電装置が充電特性で動作する場合でも、負荷が大きい装置がダウンするリスクが低減し、長期的に安定して運用が可能となる蓄電システム及び蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓄電システムは、直流電力を蓄電する蓄電池が接続された蓄電装置を基本単位とし、DC接続バスに接続された複数の前記蓄電装置が前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御して電力融通を実行する蓄電システムであって、複数の前記蓄電装置は、前記DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータと、前記双方向DC/DCコンバータを充電用または放電用として設定する融通制御部と、前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出部と、をそれぞれ備え、前記双方向DC/DCコンバータは、前記充電用として設定されると、前記グリッド電圧の増加により充電電流が増加する充電特性に基づいて充電を制御し、前記蓄電池の蓄電量が予め設定されたシフト範囲である場合、前記充電電流がゼロになるオフセット電圧が増加する方向に前記充電特性をシフトさせ、前記グリッド電圧が前記オフセット電圧以上の場合、充電方向の電流が正となる充電領域として動作し、前記グリッド電圧が前記オフセット電圧未満の場合、充電方向の電流が負となる放電領域として動作することを特徴とする。
本発明の蓄電装置は、直流電力を蓄電する蓄電池とDC接続バスとの間に接続され、前記DC接続バスのグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御して前記DC接続バスに接続された他の蓄電装置との間で電力融通を実行する蓄電装置であって、前記DC接続バスに接続された双方向DC/DCコンバータと、前記双方向DC/DCコンバータを充電用または放電用として設定する融通制御部と、前記蓄電池の蓄電量を検出する蓄電量検出部と、を備え、前記双方向DC/DCコンバータは、前記充電用として設定されると、前記グリッド電圧の増加により充電電流が増加する充電特性に基づいて充電を制御し、前記蓄電池の蓄電量が予め設定されたシフト範囲である場合、前記充電電流がゼロになるオフセット電圧が増加する方向に前記充電特性をシフトさせ、前記グリッド電圧が前記オフセット電圧以上の場合、充電方向の電流が正となる充電領域として動作し、前記グリッド電圧が前記オフセット電圧未満の場合、充電方向の電流が負となる放電領域として動作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、全ての蓄電装置が充電特性で動作する場合でも、SOCが高い蓄電装置からSOCが低い蓄電装置へ電力を融通することができるため、負荷が大きい蓄電装置がダウンするリスクが低減し、長期的に安定して運用が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る蓄電システムの実施の形態の構成例を示す構成図である。
【
図2】
図1に示す蓄電装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す第1双方向DC/DCコンバータの出力電圧特性を示す図である。
【
図4】
図2に示す融通制御部による第1双方向DC/DCコンバータの設定動作を説明するフローチャートである。
【
図5】
図1に示す蓄電装置による電力融通動作を説明する説明図である。
【
図6】
図5(a)、(b)に示す電力融通動作における出力電圧特性の動作点を示す図である。
【
図7】
図5(c)に示す電力融通動作における出力電圧特性の動作点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0011】
本実施の形態は、
図1を参照すると、蓄電池2が接続された蓄電装置1を1つの基本単位として、複数の蓄電装置1をDC接続バス20で並列に接続し、蓄電装置1間の電力融通を実施する蓄電システムである。なお、DC接続バス20は、無電化地域や防災地区等の安定した電源(電力系統等)に接続されていないDCグリッドを形成する。また、
図1には、3台の蓄電装置1をDC接続バス20に接続した例が示されているが、DC接続バス20に接続する蓄電装置1の台数に制限はない。
【0012】
蓄電装置1は、電力融通端子T1と、蓄電地接続端子T2と、PV接続端子T3と、負荷接続端子T4とをそれぞれ備えている。
【0013】
電力融通端子T1は、DC接続バス20に接続され、直流電力を送受電する端子である。蓄電地接続端子T2は、接続された蓄電池2の充放電用の端子である。PV接続端子T3は、接続箱31を介して接続された太陽電池3によって発電された直流電力を受電する端子である。負荷接続端子T4は、接続された負荷4に電力を供給する端子である。
【0014】
蓄電装置1は、
図2を参照すると、第1双方向DC/DCコンバータ11(以下、第1DC/DC11と称す)と、第2双方向DC/DCコンバータ12(以下、第2DC/DC12と称す)と、MPPTDC/DCコンバータ13と、PCS14と、電流センサ15、16と、蓄電量検出部17と、融通制御部18とを備えている。そして、第1DC/DC11と、第2DC/DC12と、MPPTDC/DCコンバータ13及びPCS14は、DCリンク19を介して接続されている。
【0015】
第2DC/DC12は、蓄電地接続端子T2とDCリンク19との間に接続され、DCリンク19のDCリンク電圧一定制御(固定値制御)で蓄電池2を充放電する充放電器である。第2DC/DC12は、蓄電池2を充電する際、DCリンク19の直流電圧を蓄電池2の充電に適した電圧に変換して蓄電池2への充電を行う。また、第2DC/DC12は、蓄電池2から放電する際、蓄電池2の直流電圧をDCリンク19の直流電圧に変換して蓄電池2からの放電を行う。
【0016】
MPPTDC/DCコンバータ13は、PV接続端子T3とDCリンク19との間に接続され、太陽電池3によって発電された直流電力を受電する最大電力点追従方式(MPPT:Maximum Power Point Tracking)のDC/DCコンバータである。MPPTDC/DCコンバータ13は、太陽電池3から受電した直流電力をDCリンク19に出力する。
【0017】
PCS14は、負荷接続端子T4とDCリンク19との間に接続され、DCリンク19の直流電圧を負荷4に適した電力に変換して負荷4に供給するパワーコンディショナシステムである。
【0018】
電流センサ15は、蓄電池2が充放電される際に検出された充放電電流に基づいて蓄電量を検出する蓄電量検出部17に出力する。
【0019】
電流センサ16は、太陽電池3の発電電流Ipvを検出し、融通制御部18に出力する。
【0020】
蓄電量検出部17は、蓄電池2の蓄電量の検出として、電流センサ15によって検出された蓄電池2の充放電電流に基づいて、蓄電池2のSOC(State of charge)を算出する。蓄電量検出部17は、蓄電池2の充電電流と、放電電流とそれぞれ積算し、その差分値に基づいてSOCを算出する。なお、蓄電量は、蓄電池2の端子電圧等に基づいて検出しても良い。
【0021】
融通制御部18は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。ROMには制御プログラムが記憶されている。融通制御部18のCPUは、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで動作する。
【0022】
融通制御部18は、太陽電池3の発電状態と、SOCとに基づいて、第1DC/DC11を放電用もしくは充電用に設定する。また、融通制御部18は、第1DC/DC11を充電用に設定し、SOCが予め設定されたシフト範囲内である場合、SOCに応じた出力電圧特性(ドループ特性)のシフト量を決定して第1DC/DC11に通知する。
【0023】
第1DC/DC11は、電力融通端子T1とDCリンク19との間に接続され、所定の出力電圧特性(ドループ特性)に基づいて、DC接続バス20の電圧(以下、グリッド電圧と称す)制御で個別に制御する。
【0024】
第1DC/DC11は、放電用として設定されると、
図3(a)に示す放電特性に基づいて、グリッド電圧制御で個別に制御する。
図3(a)に示す放電特性は、放電方向の電流を正とし、グリッド電圧の増加により放電電流が低下する負の傾きを有し、グリッド電圧V
2で放電電流がゼロになるように設定されている。
【0025】
第1DC/DC11は、充電用として設定され、シフト量の通知がない場合、
図3(b)に示す基準充電特性に基づいて、グリッド電圧制御で個別に制御する。
図3(b)に示す充電特性は、充電方向の電流を正とし、グリッド電圧V
2よりも低いグリッド電圧V
1で充電電流がゼロでDC接続バス20のグリッド電圧の増加に従い充電電流が増加する正の傾きに設定されている。
【0026】
第1DC/DC11は、充電用として設定され、シフト量V
Xの通知がある場合、
図3(c)に示すように、通知されたシフト量分、充電電流がゼロになるオフセット電圧V
1が増加する方向に基準充電特性をシフトさせたシフト充電特性に基づいて、グリッド電圧制御で個別に制御する。
図3(c)に示す充電特性は、充電方向の電流を正とし、グリッド電圧V
1にシフト量V
Xを加えたグリッド電圧(V
1+V
X)で充電電流がゼロでDC接続バス20のグリッド電圧の増加により充電電流が増加する正の傾きに設定されている。なお、シフト充電特性では、グリッド電圧が(V
1+V
X)以上の場合、充電方向の電流が正となる充電領域となり、グリッド電圧が(V
1+V
X)未満の場合、充電方向の電流が負となる放電領域となる。
【0027】
以下、融通制御部18による第1DC/DC11の設定動作について
図4を参照して詳細に説明する。
図4を参照すると、融通制御部18は、太陽電池3の発電の有無を判断するため、電流センサ16によって検出される発電電流Ipvが0(A)以下か否かを判断する(ステップS101)。なお、発電電流Ipvではなく、別途に設けた照度計の出力に基づいて発電の有無を判断しても良く、また、時刻によって発電の有無を判断するようにしても良い。
【0028】
融通制御部18は、ステップS101で発電電流Ipvが0(A)以下の場合に太陽電池3が未発電状態と判断する。そして、融通制御部18は、蓄電量検出部17によって算出されたSOCが、電池残量が十分か否かを判断するための下側閾値TH1(例えば、20%)以上か否かを判断する(ステップS102)。
【0029】
融通制御部18は、ステップS101で発電電流Ipvが0(A)を上回る場合に太陽電池3が発電状態と判断する。そして、融通制御部18は、蓄電量検出部17によって算出されたSOCが、電池残量が満充電に近づいているか否かを判断するための上側閾値TH2(例えば、70%)以上か否かを判断する(ステップS103)。なお、上側閾値TH2は、下側閾値TH1よりも大きい値に設定されている。
【0030】
ステップS102でSOCが下側閾値TH
1以上の場合と、ステップS103でSOCが上側閾値TH
2以上の場合とにおいて、融通制御部18は、電池残量が十分であると判断し、第1DC/DC11を放電用に設定し(ステップS104)、設定動作を終了する。これにより、第1DC/DC11は、
図3(a)に示す放電特性に基づいて動作し、DC接続バス20に接続され、充電用に設定された他の蓄電装置1に電力を融通する放電可能状態になる。
【0031】
ステップS102でSOCが下側閾値TH1未満の場合と、ステップS103でSOCが上側閾値TH2未満の場合とにおいて、融通制御部18は、電池残量が不十分であると判断し、第1DC/DC11を充電用に設定する(ステップS105)。
【0032】
これにより、日中、太陽電池3が発電し蓄電池2を充電している状態において、蓄電池2の蓄電量が浅くSOCが上側閾値TH2未満の蓄電装置1は充電可能状態として待機し、SOCが上側閾値TH2以上になった蓄電装置1が充電可能状態から放電可能状態に遷移して、充電可能状態で待機している蓄電装置1へ電力を融通する。
【0033】
そして、太陽電池3が発電していない状態において、蓄電池2の蓄電量が残り少なくSOCが下側閾値TH1未満の蓄電装置1は充電可能状態となると共に、SOCが下側閾値TH1以上の蓄電装置1は放電可能状態となり、充電可能状態の蓄電装置1へ電力を融通する。
【0034】
次に、融通制御部18は、蓄電量検出部17によって算出されたSOCが、下側閾値TH1~上側閾値TH2の間に設定されたシフト範囲(THn以上THP以下)内か否かを判断する(ステップS106)。シフト範囲の下限値THnは、下側閾値TH1以上の値に設定され、シフト範囲の上限値THPは、上側閾値TH2以下の値に設定される。
【0035】
ステップS106でSOCがシフト範囲外である場合、融通制御部18は、シフト量V
Xを通知することなく、設定動作を終了する。これにより、第1DC/DC11は、
図3(b)に示す基準充電特性に基づいて動作し、DC接続バス20に接続され、放電用に設定された他の蓄電装置1から電力を融通される充電可能状態になる。
【0036】
ステップS106でSOCがシフト範囲内である場合、融通制御部18は、シフト量V
Xを決定し(ステップS107)、決定したシフト量V
Xを第1DC/DC11に通知して(ステップS108)、設定動作を終了する。これにより、第1DC/DC11は、
図3(c)に示すシフト充電特性に基づいて動作し、DC接続バス20に接続され、放電用に設定された他の蓄電装置1から電力を融通される充電可能状態になる。
【0037】
シフト量VXは、(グリッド電圧V2-グリッド電圧V1)よりも小さい値に設定される。そして、シフト量VXは、固定値でも良いが、SOCが大きい程、大きい値に決定する好適であり、例えば、次式によって算出する。
VX=(V0-V1)×(SOC-THn)/(THP-THn)
但し、V0は、グリッド電圧V1とグリッド電圧V2との間に設定されたグリッド電圧である。なお、上記の式で算出されるシフト量VXは、SOCが高いほど程、(V0-V1)を上限としてリニアに増加することになるが、シフト量VXを段階的に増加させるようにしても良い。
【0038】
なお、融通制御部18は、ステップS101~S103、S106の判断を定期的に行っており、ステップS101~S103、S106の判断が変化した場合に、上述の設定動作を実行する。これにより、太陽電池3の発電状態や、蓄電池2の蓄電量の変化に対応することができる。
【0039】
これにより、夜間、太陽電池3が発電していない状態においては、蓄電量が十分でSOCが下側閾値TH1以上の蓄電装置1は放電可能状態として待機する。そして、SOCが下側閾値TH1未満になった蓄電装置1から充電可能状態に遷移し、電力の融通を受けることができる。
【0040】
また、日中、太陽電池3が発電し蓄電池2を充電している状態において、蓄電池2の蓄電量が浅くSOCが上側閾値TH2未満の蓄電装置1は充電可能状態として待機する。そして、SOCが下側閾値TH2以上になった蓄電装置1が充電可能状態から放電可能状態に遷移し,充電可能状態で待機している蓄電装置1へ電力を融通する。
【0041】
さらに、日中、太陽電池3が発電し蓄電池2を充電している状態において、蓄電池2の蓄電量がシフト範囲(THn以上THp以下)以内の蓄電装置1はシフト量VX増加したシフト充電特性で動作し、基準充電特性で動作する蓄電装置1と異なる蓄電量で充電することができる。
【0042】
図5(a)には、2台の蓄電装置1がDC接続バス20に接続され、1台目の第1DC/DC11が放電用(放電特性)に、2台目の第1DC/DC11が充電用(基準充電特性)にそれぞれ設定された状態が示されている。この状態では、
図6(a)に示すように、基準充電特性と放電特性との交点が動作点Aとなる。なお、
図6(a)において、基準充電特性では充電方向の電流を正とし、放電特性では放電方向の電流を正としている。
【0043】
動作点Aでのグリッド電圧VAは、グリッド電圧V1よりも大きくグリッド電圧V2よりも低い値となる。そして、放電用(放電特性)に設定された第1DC/DC11からDC接続バス20への放電電流がIA(A)となると共に、DC接続バス20から充電用(基準充電特性)に設定された第1DC/DC11への充電電流がIA(A)となり、放電用(放電特性)に設定された1台の蓄電装置1から充電用(基準充電特性)に設定された1台の蓄電装置1に電力融通が実行される。
【0044】
図5(b)には、2台の蓄電装置1がDC接続バス20に接続され、1台目の第1DC/DC11が充電用(基準充電特性)に、2台目の第1DC/DC11が充電用(シフト充電特性:シフト量V
XB)にそれぞれ設定された状態が示されている。この状態では、
図6(b)に示すように、基準充電特性における正の充電電流とシフト充電特性における負の充電電流とが絶対値で等しくなる箇所が動作点Bとなる。なお、
図6(b)において、基準充電特性及びシフト充電特性では充電方向の電流を正とする。従って、負の領域では、放電方向に電流が流れることを意味する。
【0045】
動作点Bでのグリッド電圧VBは、グリッド電圧と基準充電特性とが正比例の関係である場合、グリッド電圧VBは、グリッド電圧V1にシフト量VXb/2を加えた値となる。そして、充電用(シフト充電特性)に設定された第1DC/DC11からDC接続バス20への放電電流がIB(A)となると共に、DC接続バス20から充電用(基準充電特性)に設定された第1DC/DC11への充電電流がIB(A)となる。これにより、DC接続バス20に接続された全ての蓄電装置1が充電用に設定された場合でも、SOCが高い蓄電装置1からSOCが低い蓄電装置1に電力融通が実行され、各蓄電装置1の蓄電量が平均化され、負荷4が大きい蓄電装置1がダウンするリスクが低減し、長期的に安定して運用が可能となる。
【0046】
図5(c)には、3台の蓄電装置1がDC接続バス20に接続され、1台目の第1DC/DC11が充電用(基準充電特性)に、2台目の第1DC/DC11が充電用(シフト充電特性:シフト量V
XB)に、3台目の第1DC/DC11が放電用(放電特性)にそれぞれ設定された状態が示されている。この状態では、
図7(a)に示すように、充電用に設定された2台の蓄電装置1は、基準充電特性とシフト充電特性とが合成され、グリッド電圧V
B(V
1+V
XB/2)で充電電流がゼロで、基準充電特性(シフト充電特性)の2倍の傾きを有する合成充電特性で動作し、合成充電特性と放電特性との交点が動作点Cとなる。なお、
図7(a)において、合成充電特性では充電方向の電流を正とし、放電特性では放電方向の電流を正としている。
【0047】
なお、充電用に設定されたN台の蓄電装置1がDC接続バス20に接続されている場合には、合成充電特性は、グリッド電圧V1に各シフト量VXの合計をNで除算した値を加えたグリッド電圧で充電電流がゼロで、基準充電特性(シフト充電特性)のN倍の傾きを有する。また、放電用に設定されたM台の蓄電装置1がDC接続バス20に接続されている場合には、合成放電特性は、グリッド電圧V2で放電電流がゼロで、放電特性のM倍の傾きを有する。
【0048】
動作点Cでのグリッド電圧VCは、グリッド電圧V1よりも大きくグリッド電圧V2よりも低い値となる。そして、放電用(放電特性)に設定された第1DC/DC11からDC接続バス20への放電電流がIC(A)となると共に、DC接続バス20から充電用(基準充電特性)に設定された第1DC/DC11と充電用(シフト充電特性)に設定された第1DC/DC11とへの合計の充電電流がIC(A)となる。
【0049】
そして、動作点Cのグリッド電圧V
Cでは、
図7(b)に示すように、DC接続バス20から充電用(基準充電特性)に設定された第1DC/DC11への充電電流がI
C1(A)の方が、DC接続バス20から充電用(シフト充電特性)に設定された第1DC/DC11への充電電流がI
C2(A)よりも大きい値となる。従って、SOCが低い蓄電装置1への電力融通が優先され、各蓄電装置1の蓄電量が平均化され、負荷4が大きい装置蓄電装置1がダウンするリスクが低減し、長期的に安定して運用が可能となる。
【0050】
上述のように動作点A~Cでのグリッド電圧VA~Vcは、いずれもグリッド電圧V1よりも大きくグリッド電圧V2よりも低い値となる。従って、放電特性で放電電流がゼロとなるグリッド電圧V2をグリッド電圧の電圧上限値に、基準充電特性で充電電流がゼロとなるグリッド電圧V1をグリッド電圧の電圧下限値にそれぞれ設定すると、グリッド電圧が適正範囲内で運用されることになる。
【0051】
本実施の形態では、SOCに応じてシフト量VXを算出するように構成したが、さらに太陽電池3での発電電力PPVと負荷4での消費電力POUTとに基づいて、発電電力PPVから消費電力POUTを減算した値の大小で蓄電装置1における電力余裕度を判断し、発電電力PPVから消費電力POUTを減算した値が閾値(例えば、太陽電池3の定格電力Ptyp)より小さく電力余裕度が低い場合には、その程度に応じてSOCに応じて算出されるシフト量VXを減少させても良い。この場合には、蓄電装置1における電力余裕度に応じた電力融通を実現することができる。
【0052】
例えば、電力余裕度を考慮したシフト量VX’は、例えば、次式によって算出する。
VX’=VX×(PPV-POUT)/Ptyp
但し、Ptypは、太陽電池3の定格電力である。
なお、発電電力PPVが消費電力POUTを下回る場合には、シフト量VX’をマイナスとすることなく、シフト量VX’=0でリミットする。これにより、グリッド電圧がV1を下回ることなく適正範囲内で運用できる。
【0053】
さらに、蓄電装置1に過充電や過電流等の保護が必要な異常を検出する異常検出回路を設け、異常検出回路によって異常を検出した場合に、オフセット電圧V1が増加する方向に基準充電特性をシフトさせるようにしても良い。この場合には、蓄電装置1をダウンさせることなく、充電を抑制または中止することが可能となる。
【0054】
なお、本実施の形態では、各蓄電装置1における第1DC/DC11の放電特性、基準充電特性及びシフト充電特性の傾きは同じものとして説明した。しかし、放電特性、基準充電特性及びシフト充電特性は、傾きを制御することにより充放電量の重みづけ制御が可能である。すなわち、放電特性の傾きが異なる第1DC/DC11が並列に接続されている場合、放電特性の傾きが大きい第1DC/DC11の放電量が大きくなる。同様に、基準充電特性及びシフト充電特性の傾きが異なる第1DC/DC11が並列に接続されている場合、基準充電特性及びシフト充電特性の傾きが大きい第1DC/DC11の蓄電量が大きくなる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、直流電力を蓄電する蓄電池2が接続された蓄電装置1を基本単位とし、DC接続バス20に接続された複数の蓄電装置1がDC接続バス20のグリッド電圧の制御で個別に充電または放電を制御して電力融通を実行する蓄電システムであって、複数の蓄電装置1は、DC接続バス20に接続された双方向DC/DCコンバータである第1DC/DC11と、第1DC/DC11を充電用または放電用として設定する融通制御部18と、蓄電池2の蓄電量を検出する蓄電量検出部17と、それぞれ備え、充電用として設定された第1DC/DC11は、DC接続バス20のグリッド電圧の増加により充電電流が増加する充電特性に基づいて充電を制御し、蓄電池2の蓄電量が予め設定されたシフト範囲(THn以上THP以下)である場合、充電電流がゼロになるオフセット電圧V1が増加する方向に充電特性をシフトさせる。
この構成により、全ての蓄電装置1が充電特性で動作する場合でも、SOCが高い蓄電装置1からSOCが低い蓄電装置1へ電力を融通することができるため、負荷4が大きい蓄電装置1がダウンするリスクが低減し、長期的に安定して運用が可能となる。
【0056】
さらに、本実施の形態によれば、第1DC/DC11は、SOCが高い(蓄電池3の蓄電量が多い程)、充電特性をシフトさせるシフト量VXを増加させる。
この構成により、SOCが高い蓄電装置1からSOCが低い蓄電装置1への電力融通を効率的に実行することができる。
【0057】
さらに、本実施の形態によれば、複数の蓄電装置1は、太陽電池3によって発電された発電電力を受電する直流電力受電部であるMPPTDC/DCコンバータ13と、負荷4が消費する消費電力を供給する電力供給部であるPCS14と、をそれぞれ備え、第1DC/DC11は、発電電力PPVから消費電力POUTを減算した値が閾値(例えば、太陽電池3の定格電力Ptyp)よりも小さい場合、その程度に応じてシフト量VXを減少させる。
この構成により、蓄電装置1における電力余裕度に応じた電力融通を実現することができる。
【0058】
さらに、本実施の形態によれば、複数の蓄電装置1は、保護が必要な異常を検出する異常検出回路をそれぞれ備え、第1DC/DC11は、異常検出回路によって異常が検出された場合、オフセット電圧V1が増加する方向に充電特性をシフトさせる。
この構成により、蓄電装置1をダウンさせることなく、充電を抑制または中止することが可能となる。
【0059】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1 蓄電装置
2 蓄電池
3 太陽電池
4 負荷
11 第1双方向DC/DCコンバータ
12 第2双方向DC/DCコンバータ
13 MPPTDC/DCコンバータ
14 PCS
15、16 電流センサ
17 蓄電量検出部
18 融通制御部
19 DCリンク
20 DC接続バス
31 接続箱
T1 電力融通端子
T2 蓄電地接続端子
T3 PV接続端子
T4 負荷接続端子