(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】電池温調装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20240416BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240416BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240416BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240416BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20240416BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240416BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20240416BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20240416BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M10/6568
B60H1/22 671
H01M10/48 301
H01M10/6556
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/6569
H01M10/625
(21)【出願番号】P 2020065853
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 功嗣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】牧原 正径
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】茅野 健太
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】岡村 徹
(72)【発明者】
【氏名】牧本 直也
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆宏
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037881(JP,A)
【文献】特開2019-023059(JP,A)
【文献】特開2019-055704(JP,A)
【文献】特開2018-131023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H1/00-3/06
H01M10/42-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池(B)と熱媒体とを熱交換させる電池用熱交換器(11)と、前記電池用熱交換器に対して並列に接続され、前記熱媒体と外気とを熱交換させる外気熱交換器(12)と、前記熱媒体を圧送して循環させる熱媒体ポンプ(13)と、少なくとも前記外気熱交換器を経由して前記熱媒体が流通する第1径路における前記熱媒体の流量と、前記外気熱交換器を迂回して前記熱媒体が流通する第2径路における前記熱媒体の流量とを調整する流量調整部(14)と、を接続して前記熱媒体を循環させる熱媒体回路(10)と、
前記流量調整部の作動を制御する制御部(50)と、
前記電池の温度である電池温度を取得する電池温度取得部(53a)と、
前記第1径路及び前記第2径路の何れにも共通する共通流路(15c)を流通する前記熱媒体の温度である共通流路温度を取得する共通流路温度取得部(54a)と、を有し、
前記制御部は、前記外気の温度である外気温度が予め定められた基準外気温度よりも低い低温環境である場合に、前記流量調整部の作動を制御して、前記電池温度が予め定められた基準温度になるように、前記第1径路における前記熱媒体の流量と前記第2径路における前記熱媒体の流量との流量比を調整
し、
前記共通流路温度取得部で取得された前記共通流路温度の上昇に伴って、前記第1径路における前記熱媒体の流量が大きくなるように、前記流量調整部の作動を制御する電池温調装置。
【請求項2】
前記熱媒体ポンプ(13)は、前記共通流路(15c)に配置されている
請求項1に記載の電池温調装置。
【請求項3】
前記熱媒体回路(10)の前記共通流路(15c)には、冷凍サイクル(20)を循環する冷媒と前記熱媒体とを熱交換させるチラー(25)が配置されており、
前記冷凍サイクルは、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(21)と、
前記圧縮機から吐出された高圧冷媒を凝縮させる凝縮器(22、27)を備え、前記高圧冷媒を熱源として、空調対象空間へ送風される送風空気を加熱する加熱部(30)と、
前記凝縮器から流出した冷媒を減圧する減圧部(24a)と、
前記減圧部から流出した前記冷媒が流通する前記チラー(25)と、を有している
請求項1又は2に記載の電池温調装置。
【請求項4】
前記制御部(50)は、前記加熱部(30)によって前記送風空気を加熱する場合に、前記共通流路温度取得部(54a)で取得された前記共通流路温度が前記外気温度以下になるように、前記流量調整部(14)の作動を制御する
請求項3に記載の電池温調装置。
【請求項5】
前記制御部(50)は、前記加熱部(30)によって前記送風空気を加熱する場合に、更に、前記外気温度と前記共通流路温度との温度差が予め定められた所定値よりも小さくなるように、前記流量調整部(14)の作動を制御する
請求項4に記載の電池温調装置。
【請求項6】
前記制御部(50)は、前記低温環境にて、前記流量調整部による前記電池温度の調整と共に、前記加熱部による前記送風空気の加熱を行う状況において、
前記共通流路温度取得部(54a)で取得された前記共通流路温度が前記外気温度以上である場合、前記第1径路における前記熱媒体の流量が大きくなるように、前記流量調整部の作動を制御し、
前記共通流路温度が前記外気温度よりも低く、且つ、前記外気温度と前記共通流路温度との温度差が予め定められた所定値よりも大きい場合、前記第1径路における前記熱媒体の流量が小さくなるように、前記流量調整部の作動を制御する請求項3に記載の電池温調装置。
【請求項7】
前記減圧部は、前記凝縮器から前記チラーに向かって流通する前記冷媒を減圧する第1減圧部(24a)と、
前記凝縮器から流出して、前記第1減圧部を迂回して流れる前記冷媒を減圧する第2減圧部(24b)と、を有し、
前記冷凍サイクル(20)
を循環する前記冷媒を冷熱源として、熱交換により前記送風空気を冷却する空調用熱交換部(26)を有し、
前記空調用熱交換部を通過した前記送風空気の温度である送風空気温度を取得する送風空気温度取得部(53b)を有しており、
前記制御部(50)は、前記共通流路温度が前記送風空気温度取得部で取得された前記送風空気温度よりも低くなるように、前記流量調整部(14)の作動を制御する
請求項3ないし6の何れか1つに記載の電池温調装置。
【請求項8】
前記空調用熱交換部は、前記冷凍サイクルの前記第2減圧部で減圧された前記冷媒と、前記送風空気とを熱交換させて、前記送風空気を冷却する空調用蒸発器(26)である請求項7に記載の電池温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱媒体が循環する熱媒体回路を利用して、電池の温度を調整する電池温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱媒体回路を利用した電池温調装置に関する技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1の車載温調装置は、熱媒体として低水温冷却水を循環させる低水温回路を有しており、低水温冷却水を循環させることで、電池の温度調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ここで、特許文献1の技術では、低水温回路にサブラジエータが配置されている。従って、低水温冷却水を介して、電池に生じた熱をサブラジエータに輸送して外気に放熱することによって、電池を冷却することができる。
【0005】
サブラジエータにおける外気との熱交換を利用して、電池の温度調整を行う場合において、外気が低温(例えば、0℃以下)になると、サブラジエータにて低水温冷却水が冷え過ぎてしまい、電池が適正な温度範囲を下回るほど冷却されてしまう。
【0006】
電池が冷え過ぎてしまうと、電池自体の出力が低下する要因になることが考えられる。又、電池と低水温冷却水との温度差が大きくなりすぎると、電池の各セル内の温度にばらつきが生じて、電池を劣化させる要因になると考えられる。
【0007】
更に、外気が極低温(例えば、-10℃以下)になった場合、電池温度が適正温度を大きく下回り、例えば、0℃以下になってしまうと、電池の出力の低下がより顕著になる。加えて、電池と低水温冷却水との温度差がより大きくなり、上述の電池劣化はさらに加速すると考えられる。
【0008】
本開示は、上記点に鑑み、外気が低温な環境において、外気との熱交換を利用した電池の温度調整を行う際に、電池の出力低下等の発生を抑制できる電池温調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本開示の一態様に係る電池温調装置は、熱媒体回路(10)と、制御部(50)と、電池温度取得部(53a)と、共通流路温度取得部(54a)と、を有している。
【0010】
熱媒体回路は、電池用熱交換器(11)と、外気熱交換器(12)と、熱媒体ポンプ(13)と、流量調整部(14)と、を接続して熱媒体を循環させる。電池用熱交換器は、電池(B)と熱媒体とを熱交換させる。外気熱交換器は、電池用熱交換器に対して並列に接続され、熱媒体と外気とを熱交換させる。熱媒体ポンプは、熱媒体を圧送して循環させる。流量調整部は、少なくとも外気熱交換器を経由して熱媒体が流通する第1径路における熱媒体の流量と、外気熱交換器を迂回して熱媒体が流通する第2径路における熱媒体の流量とを調整する。
【0011】
制御部は、流量調整部の作動を制御する。電池温度取得部は、電池の温度である電池温度を取得する。共通流路温度取得部は、第1径路及び第2径路の何れにも共通する共通流路(15c)を流通する熱媒体の温度である共通流路温度を取得する。
【0012】
そして、外気温度が予め定められた基準外気温度よりも低い低温環境である場合に、流量調整部の作動を制御して、電池温度が予め定められた基準温度になるように、第1径路における熱媒体の流量と第2径路における媒体の流量との流量比を調整する。又、共通流路温度取得部で取得された共通流路温度の上昇に伴って、第1径路における熱媒体の流量が大きくなるように、流量調整部の作動を制御する。
【0013】
これによれば、低温環境である場合に、第1径路を流通する熱媒体の流量を調整することで、熱媒体回路を循環する熱媒体のうち、外気との熱交換によって冷却される熱媒体の割合を適切に調整することができる。この結果、電池温調装置は、低温環境においても、電池用熱交換器を流通する熱媒体の過剰な温度低下を抑制して、電池の出力低下や劣化を抑制することができる。
【0014】
尚、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る電池温調装置の全体構成図である。
【
図2】電池セル内部に温度差がある状態におけるリチウムイオンの挙動に関する説明図である。
【
図3】電池セル内部の温度が一様である状態におけるリチウムイオンの挙動に関する説明図である。
【
図4】第1実施形態に係る流量調整弁の制御に関するフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る電池温調装置の全体構成図である。
【
図6】第2実施形態に係る室内空調ユニットの構成図である。
【
図7】第2実施形態に係る電池温調装置の制御系を示すブロック図である。
【
図8】外気温度が低温である場合における流量調整弁の制御に関するフローチャートである。
【
図9】送風空気を冷却する場合における流量調整弁の制御に関するフローチャートである。
【
図10】第3実施形態に係る電池温調装置の全体構成図である。
【
図11】熱媒体回路における電池用熱交換器及び熱媒体ポンプの配置に関する変形例を示す説明図である。
【
図12】熱媒体回路における流量調整部の変形例を示す説明図である。
【
図13】電池温調装置における冷凍サイクルの第1変形例を示す説明図である。
【
図14】電池温調装置における冷凍サイクルの第2変形例を示す説明図である。
【
図15】電池温調装置の熱媒体回路における電池用熱交換器及びチラーの配置に関する第1変形例を示す説明図である。
【
図16】電池温調装置の熱媒体回路における電池用熱交換器及びチラーの配置に関する第2変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0017】
(第1実施形態)
先ず、本開示における第1実施形態について、図面を参照して説明する。第1実施形態では、本開示に係る電池温調装置は、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に配設されている。そして、電池温調装置は、電気自動車に搭載された電池Bを温度調整の対象としている。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態に係る電池温調装置1は、熱媒体回路10を有しており、熱媒体回路10の熱媒体を循環させることによって、電池Bの温度調整を行う。熱媒体回路10の熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
【0019】
熱媒体回路10は、電池用熱交換器11、外気熱交換器12、熱媒体ポンプ13、流量調整弁14を、熱媒体循環流路15で接続して構成されている。熱媒体ポンプ13は、熱媒体回路10において、電池用熱交換器11及び外気熱交換器12の少なくとも一方を通過した熱媒体を流量調整弁14へ圧送する熱媒体ポンプである。熱媒体ポンプ13は、制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
【0020】
熱媒体ポンプ13の吐出口には、流量調整弁14の熱媒体流入口が接続されている。流量調整弁14は、3つの流入出口を有する電気式の三方流量調整弁によって構成されている。流量調整弁14における熱媒体流出口の一方には、外気熱交換器12の熱媒体流入口が接続されている。そして、流量調整弁14における熱媒体流出口の他方には、電池用熱交換器11の熱媒体通路11aにおける流入口側が接続されている。
図1に示すように、第1実施形態に係る熱媒体回路10では、熱媒体の流れに関して、電池用熱交換器11と外気熱交換器12が相互に並列になるように接続されている。
【0021】
そして、流量調整弁14は、制御装置50からの制御信号によって、一方側の熱媒体流出口及び他方側の熱媒体流出口の開口面積を連続的に変更する。従って、流量調整弁14は、熱媒体回路10にて熱媒体ポンプ13から圧送された熱媒体に関し、電池用熱交換器11を流通する熱媒体の流量と、外気熱交換器12を流通する熱媒体の流量との流量比を連続的に調整することができる。
【0022】
電池用熱交換器11は、熱媒体通路11aを流通する熱媒体と、電池Bを構成する電池セルBcとを熱交換させることによって、電池Bの温度を調整する為の熱交換器である。電池用熱交換器11における熱媒体通路11aは、電池Bの専用ケースの内部で複数の通路を並列的に接続した通路構成となっている。
【0023】
ここで、電池Bは、電気自動車における各種電気機器に電力を供給するもので、例えば、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)が採用される。電池Bは、複数の電池セルBcを積層配置し、これらの電池セルBcを電気的に直列或いは並列に接続することによって形成された、いわゆる組電池である。
【0024】
この種の電池Bは、低温になると内部抵抗が増加して出力が低下しやすく、高温になると各電池セルBcの劣化が進行しやすい。そして、電池Bは、充放電に際して発熱する為、電池Bの温度が電池Bの充放電容量を充分に活用できる適切な温度範囲内(例えば、10℃以上かつ40℃以下)に維持されている必要がある。
【0025】
上述したように、電池用熱交換器11の熱媒体通路11aは、並列的に接続した通路構成を採用しているので、電池Bの全域から電池Bの廃熱を均等に吸熱できるように形成されている。
【0026】
このような電池用熱交換器11は、積層配置された電池セルBc同士の間に熱媒体通路11aを配置することによって形成すればよい。又、電池用熱交換器11は、電池Bに一体的に形成されていてもよい。例えば、積層配置された電池セルBcを収容する専用ケースに熱媒体通路11aを設けることによって、電池Bに一体的に形成されていてもよい。
【0027】
そして、外気熱交換器12は、流量調整弁14の一方の流出口から流出した熱媒体と、図示しない外気ファンにより送風された外気OAとを熱交換させる熱交換器である。外気熱交換器12は、電気自動車における駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、外気熱交換器12に走行風を当てることができる。
【0028】
図1に示すように、電池用熱交換器11の熱媒体通路11aにおける流出口と、外気熱交換器12の熱媒体流出口は、何れも熱媒体ポンプ13の吸込口に接続されている。つまり、第1実施形態に係る熱媒体回路10では、電池用熱交換器11から抽出した熱媒体及び外気熱交換器12から流出した熱媒体は、熱媒体ポンプ13へ向かって流れる過程で合流して、熱媒体ポンプ13の吸込口から吸い込まれる。
【0029】
このように構成された熱媒体回路10は、流量調整弁14の作動を制御することで、熱媒体回路10における熱媒体の流れを切り替えることができる。例えば、流量調整弁14は、熱媒体ポンプ13から吐出された熱媒体の流れに関して、外気熱交換器12を通過する熱媒体の流量と、電池用熱交換器11の熱媒体通路11aを通過する熱媒体の流量との流量比を連続的に調整できる。
【0030】
具体的には、熱媒体回路10では、熱媒体ポンプ13側の流入口と電池用熱交換器11側の流出口を連通させ、外気熱交換器12側の流出口を閉塞させるように、流量調整弁14を制御することができる。この場合、熱媒体回路10における熱媒体の流れは、熱媒体ポンプ13から圧送された熱媒体の全量が電池用熱交換器11の熱媒体通路11aを通過するように切り替えられる。
【0031】
この態様で熱媒体の循環を継続させた場合、電池用熱交換器11の通過する際に、電池Bの廃熱によって熱媒体が加熱されるので、電池Bの廃熱を熱媒体に蓄熱しておくことができる。
【0032】
又、熱媒体回路10では、熱媒体ポンプ13側の流入口と外気熱交換器12側の流出口を連通させ、電池用熱交換器11側の流出口を閉塞させるように、流量調整弁14を制御することができる。この場合、熱媒体回路10における熱媒体の流れは、熱媒体ポンプ13から圧送された熱媒体の全量が外気熱交換器12を通過するように切り替えられる。
【0033】
この態様によれば、熱媒体回路10における全ての熱媒体を、外気熱交換器12に供給することができるので、熱媒体の温度が外気温度よりも低ければ、外気OAから熱媒体に吸熱させることができる。これにより、外気OAを熱源として利用することができる。一方、熱媒体の温度が外気温度よりも高ければ、熱媒体の有する熱を、外気OAに対して放熱させることができる。即ち、電池温調装置1は、熱媒体回路10を利用することで、電池Bの温度調整を行うことができる。
【0034】
ここで、第1実施形態に係る熱媒体回路10では、電池用熱交換器11、外気熱交換器12、熱媒体ポンプ13、流量調整弁14が、熱媒体循環流路15を介して接続されている。
図1に示すように、熱媒体循環流路15は、第1流路15aと、第2流路15bと、共通流路15cによって構成されている。
【0035】
第1流路15aとは、流量調整弁14における流出口の一方に接続された熱媒体流路である。従って、第1実施形態に係る熱媒体回路10の第1流路15aには、外気熱交換器12が配置されている。
【0036】
そして、第2流路15bとは、流量調整弁14における流出口の他方に接続された熱媒体流路である。従って、第1実施形態に係る熱媒体回路10の第2流路15bには、電池用熱交換器11が配置されている。
【0037】
図1に示すように、熱媒体回路10における熱媒体ポンプ13の吸入口側において、第1流路15aの端部と、第2流路15bの端部が接続されており、更に、共通流路15cの端部が接続されている。つまり、第1流路15a、第2流路15b及び共通流路15cの接続部が、第1流路15a、第2流路15b及び共通流路15cの夫々における端部を構成している。
【0038】
従って、共通流路15cは、第1流路15a及び第2流路15bとの接続部と、流量調整弁14の流入口とを接続する熱媒体流路ということができる。そして、第1実施形態に係る熱媒体回路10の共通流路15cには、熱媒体ポンプ13が配置されている。
【0039】
第1実施形態に係る熱媒体回路10では、熱媒体は、流量調整弁14の作動を制御することによって、熱媒体ポンプ13、流量調整弁14、外気熱交換器12、熱媒体ポンプ13の順に流れて循環することができる。この場合の熱媒体の循環径路は、第1流路15aと共通流路15cによって構成されており、外気熱交換器12を経由する為、第1径路に相当する。
【0040】
又、熱媒体回路10において、熱媒体は、流量調整弁14の作動を制御することによって、熱媒体ポンプ13、流量調整弁14、電池用熱交換器11、熱媒体ポンプ13の順に流れ、外気熱交換器12を迂回して循環することができる。この場合における熱媒体の循環径路は、第2流路15bと共通流路15cによって構成されており、第2径路に相当する。
【0041】
続いて、第1実施形態に係る電池温調装置1の制御系について、
図1を参照して説明する。制御装置50は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
【0042】
そして、制御装置50は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。制御対象機器には、熱媒体ポンプ13と、流量調整弁14等が含まれている。
【0043】
図1に示すように、制御装置50の入力側には、各構成機器の作動を制御する為の制御用センサ群が接続されている。第1実施形態における制御用センサ群は、外気温センサ52a、電池温度センサ53a、第1熱媒体温度センサ54aを含んでいる。制御装置50には、これらの制御用センサ群の検出信号が入力される。
【0044】
外気温センサ52aは、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。外気温センサ52aは、駆動装置室内の外気熱交換器12に供給される外気OAの温度を検出するように配置されている。
【0045】
電池温度センサ53aは、電池Bの温度である電池温度TBAを検出する電池温度検出部である。電池温度センサ53aは、複数の温度検出部を有し、電池Bにおける複数の箇所の温度を検出している。この為、制御装置50では、電池Bにおける各部の温度差を検出することもできる。電池温度センサ53aは、電池温度取得部の一例に相当する。
【0046】
更に、電池温度TBAとしては、複数の温度検出部における検出値の平均値を採用している。尚、電池温度センサ53aは、電池用熱交換器11を流通する熱媒体の温度を検出し、熱媒体の温度を基にして電池Bの温度を推定しても良い。
【0047】
第1熱媒体温度センサ54aは、熱媒体回路10における共通流路15cを流通する熱媒体の温度を検出する。第1熱媒体温度センサ54aは、共通流路15cにおいて、熱媒体ポンプ13の吐出口と流量調整弁14の流入口の間に配置されている。第1熱媒体温度センサ54aは、共通流路温度取得部の一例に相当し、第1熱媒体温度センサ54aで検出された熱媒体温度は、共通流路温度に対応する。
【0048】
そして、電池温調装置1は、外気温センサ52a、電池温度センサ53a、第1熱媒体温度センサ54aの検出結果を参照して、電池温度が予め定められた基準温度になるように、熱媒体ポンプ13及び流量調整弁14の作動を制御する。これにより、電池温調装置1は、熱媒体回路10を利用して、電池の出力低下及び劣化を抑制することができる。
【0049】
ここで、熱媒体を用いた電池Bの温度調整に関して、各電池セルBcの内部に着目して考察する。
図2に示すように、リチウムイオン電池である電池Bの電池セルBcの内部には、正極Pe、負極Ne、電解質が配置されており、正極Peと負極Neの間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う。
【0050】
正極Peとしては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物を採用できる。又、負極Neとしては、例えば、炭素材料を採用することができ、電解質としては、有機溶媒などの非水電解質を採用することができる。
【0051】
上述したように、電池Bの充放電を行う際には、正極Peと負極Neの間を、電解質を介して、リチウムイオンが移動する。電池セルBcにおける温度差が小さく、所定の温度範囲内になっている場合には、
図2に示すように、リチウムイオンは、正極Peと負極Neの間において均一に移動すると考えられる。
【0052】
この点、熱媒体回路10を利用して電池Bの温度調整を行う場合には、電池用熱交換器11の熱媒体通路11aを流通する熱媒体との熱交換によって、電池セルBcの内部に温度分布が生じる。電池セルBcの内、電池用熱交換器11の熱媒体通路11aに近い部位である程、熱媒体の影響を受けやすく、熱媒体通路11aから離れた部位である程、熱媒体の影響が小さくなる。
【0053】
外気温度が極低温(例えば、-10℃以下)になった場合について考察する。熱媒体回路10の熱媒体は、外気熱交換器12において、極低温の外気OAと熱交換する為、外気OAと同程度となるまで冷却される。極低温に冷却された熱媒体が、電池用熱交換器11の熱媒体通路11aを流通して、電池Bの各電池セルBcから吸熱する。
【0054】
この場合、電池セルBcにおいて、熱媒体通路11aに近い部分から熱媒体に吸熱されていき、熱媒体通路11aから離れた部分における吸熱量は小さくなる。即ち、
図3に示すように、電池セルBcの内部に温度分布が生じ、電池セルBcの内部における温度差が大きくなる。尚、
図3の場合は、
図3における下方側に、極低温の熱媒体が流通する熱媒体通路11aが配置されているものとする。
【0055】
そして、電池セルBcの内部に温度差が生じた状態で、電池セルBcの充放電を行う場合について考察する。電池セルBcの内部に温度差が生じると、電池セルBcの内部の電解質の塩濃度が、電池セルBc内部の温度分布に対応して不均一になると考えられる。
【0056】
この為、電池Bの充放電に際して、リチウムイオンは、
図3に示すように、正極Peと負極Neにおける塩濃度の高い部分に集中して移動すると考えられ、正極Peと負極Neの間における電流集中が生じる。正極Peと負極Neの間において、電流集中が生じてしまうと、電池Bには、局所的な劣化が発生することが想定される。
【0057】
第1実施形態に係る電池温調装置1は、熱媒体回路10による電池Bの温度調整に際して、電池セルBcにおける電流集中に起因する劣化や出力低下を抑制する為に、熱媒体回路10における熱媒体の温度調整に関する制御を行う。
【0058】
図4は、外気OAが低温な環境において、電池Bの局所的な劣化や出力低下を抑制する為の制御内容を示している。この
図4に係る制御プログラムは、電池Bの充放電が行われる前又は電池Bの充放電の開始時において、制御装置50によって実行される。
【0059】
先ず、ステップS1においては、外気温センサ52aで検出された外気温度が予め定められた基準外気温度よりも低いか否かが判定される。ここで、基準外気温度とは、電池Bから十分から十分な出力を得ることができ、電池Bの暖機が不要となる電池温度(例えば、10℃)に対応するように定められた外気温度であり、例えば、0℃である。
【0060】
つまり、ステップS1では、外気が低温である環境であるか否かを判定している。外気温度が基準外気温度よりも低いと判定された場合は、ステップS2に進む。一方、外気温度が基準外気温度よりも低くないと判定された場合には、一度、
図4に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0061】
ステップS2では、外気温センサ52aで検出された外気温度が第1熱媒体温度センサ54aで検出された熱媒体温度よりも低いか否かが判定される。第1熱媒体温度センサ54aで検出される熱媒体温度は、共通流路15cを流れる熱媒体の温度であり、共通流路温度に相当する。
【0062】
外気温度が熱媒体温度よりも低いと判定された場合、ステップS3に進む。一方、外気温度が熱媒体温度よりも低くないと判定された場合には、一度、
図4に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0063】
ステップS3では、第1熱媒体温度センサ54aで検出された熱媒体温度が上昇しているか否かが判定される。例えば、第1熱媒体温度センサ54aの検出結果について、直前の検出結果と今回の検出結果を比較することによって、ステップS3の判定が行われる。換言すると、ステップS3では、共通流路15cを流通する熱媒体の温度が上昇しているか否かが判定されている。
【0064】
第1熱媒体温度センサ54aで検出された熱媒体温度が上昇していると判定された場合は、ステップS4に進む。一方、そうでないと判定された場合は、一度、
図4に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0065】
そして、ステップS4においては、第1流路15a側の外気熱交換器12に対する熱媒体の流量を増加させ、第2流路15b側の電池用熱交換器11に対する熱媒体の流量を減少させるように、流量調整弁14の作動を制御する。これにより、外気熱交換器12を流通する熱媒体の流量が増大するように、流量調整弁14における流量比が調整される。
【0066】
この時、流量調整弁14における外気熱交換器12側の流出口及び電池用熱交換器11側の流出口の開度は、電池温度が予め定められた所定値に近づくように定められる。所定値は、電池Bにおける適切な温度範囲内(例えば、15℃以上かつ55℃以下)に定められた目標値である。
【0067】
具体的に、第1熱媒体温度センサ54aで検出される熱媒体温度の上昇に伴って、流量調整弁14における外気熱交換器12側の流出口の開度が大きくなるように決定される。つまり、熱媒体温度と所定値との温度差が大きくなる程、外気熱交換器12側の流出口の開度は大きく定められる。
【0068】
この時、第1熱媒体温度センサ54aで検出される熱媒体温度の上昇に伴って、流量調整弁14における電池用熱交換器11側の流出口の開度は小さくなるように定められる。即ち、熱媒体温度と所定値との温度差が大きくなるほど、電池用熱交換器11側の流出口の開度は小さく定められる。その後、
図4の制御プログラムを一度終了して、再度実行する。
【0069】
ここで、熱媒体回路10では、外気熱交換器12における低温の外気との熱交換により冷却された熱媒体と、電池用熱交換器11を通過した熱媒体とが共通流路15cを流通する過程で混合される。この為、電池用熱交換器11側の熱媒体の流量と、外気熱交換器12側の熱媒体の流量との流量比に関して、外気熱交換器12側を大きくし、電池用熱交換器11側を小さくするように調整することで、共通流路15cを流れる熱媒体の温度を下げることができる。
【0070】
そして、共通流路15cを通過した熱媒体が、流量調整弁14によって、電池用熱交換器11側と外気熱交換器12側に配分される。従って、共通流路15cを流れる熱媒体の温度を調整することで、電池用熱交換器11を流れる熱媒体と電池Bの各電池セルBcとの温度差の大きさを調整することができる。
【0071】
これにより、電池用熱交換器11における熱媒体の温度と、電池Bの電池温度との温度差を小さくすることができるので、電池Bの各電池セルBcにおける電力集中の発生を抑制することができる。この結果、外気が低温である環境においても、外気OAとの熱交換を利用した電池Bの温度調整に関して、電池セルBc内の温度差に起因する電池Bの出力低下や劣化を抑制することができる。
【0072】
尚、ステップS4において、第1熱媒体温度センサ54aで検出される熱媒体温度の低下に伴って、流量調整弁14における外気熱交換器12側の流出口の開度が小さくなるように決定しても良い。この場合、熱媒体温度の低下に伴って、流量調整弁14における電池用熱交換器11側の流出口の開度が大きくなるように決定される。
【0073】
以上説明したように、第1実施形態に係る電池温調装置1によれば、低温環境にて、外気との熱交換により電池Bの温度調整を行う場合、
図4に示す制御プログラムに従って、流量調整弁14の作動が制御される。
【0074】
これにより、電池温調装置1は、外気温度が基準外気温度よりも低い環境でも、外気熱交換器12側における熱媒体の流量と電池用熱交換器11側における熱媒体の流量との流量比を調整して、電池Bの電池温度が予め定められた基準温度になるように調整できる。
【0075】
この結果、第1実施形態に係る電池温調装置1は、低温環境においても、電池用熱交換器11を流通する熱媒体の温度変動を抑制して、低温の外気OAの影響による電池Bの出力低下や劣化を抑制することができる。
【0076】
又、第1実施形態に係る電池温調装置1は、
図4に示す制御プログラムに従って流量調整弁14の作動を制御する際に、第1熱媒体温度センサ54aで検出される熱媒体温度の上昇に伴って、外気熱交換器12側の熱媒体流量が大きくなるように制御している。
【0077】
これにより、電池温調装置1によれば、共通流路15cを流通する熱媒体温度の状況に応じて、電池用熱交換器11側と外気熱交換器12側との熱媒体の流量比を適切に調整することができ、低温の外気の影響による電池Bの劣化や出力低下を抑制できる。
【0078】
図1に示すように、第1実施形態に係る電池温調装置1の熱媒体回路10において、熱媒体ポンプ13は、電池用熱交換器11を介した熱媒体の循環径路と、外気熱交換器12を介した熱媒体の循環径路に共通する共通流路15cに配置されている。従って、電池温調装置1によれば、電池用熱交換器11を介した熱媒体の循環と、外気熱交換器12を介した熱媒体の循環を、一つの熱媒体ポンプ13の作動によって実現することができる。
【0079】
(第2実施形態)
次に、第1実施形態と異なる第2実施形態について、
図5~
図9を参照して説明する。第2実施形態では、本開示に係る電池温調装置1を、車室内空調機能付きの電池温調装置に適用している。第2実施形態に係る電池温調装置1は、熱媒体回路10、冷凍サイクル20、加熱部30、室内空調ユニット40、制御装置50等を有しており、電気自動車に搭載された電池Bの温度調整に加えて、空調対象空間である車室内の空調を実行する。
【0080】
そして、第2実施形態に係る電池温調装置1は、車室内の空調を行う空調運転モードとして、冷房モードと、暖房モードと、除湿暖房モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
【0081】
又、電池温調装置1は、空調運転モードの状態によらずに、冷凍サイクル20を利用した電池Bの冷却の有無を切り替えることができる。従って、電池温調装置1における冷凍サイクル20の運転モードは、空調運転モードの状態及び電池Bの冷却の有無の組み合わせによって定義することができる。この為、電池温調装置1の運転モードには、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードの7つの運転モードが含まれる。
【0082】
単独冷却モードは、車室内の空調を行うことなく、冷凍サイクル20を利用して電池Bの冷却を行う運転モードである。冷却冷房モードは、冷凍サイクル20を利用して、車室内の冷房を行うと共に、電池Bの冷却を行う運転モードである。冷却暖房モードは、冷凍サイクル20を利用して、車室内の暖房を行うと共に、電池Bの冷却を行う運転モードである。冷却除湿暖房モードは、冷凍サイクル20を利用して、車室内の除湿暖房を行うと共に、電池Bの冷却を行う運転モードである。
【0083】
尚、電池温調装置1の冷凍サイクル20では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機21を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は冷媒と共にサイクルを循環している。
【0084】
次に、第2実施形態に係る電池温調装置1における冷凍サイクル20を構成する各構成機器について説明する。冷凍サイクル20は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。
図5に示すように、冷凍サイクル20は、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第1膨張弁24a、第2膨張弁24b、チラー25、空調用蒸発器26を有している。
【0085】
圧縮機21は、冷凍サイクル20において、冷媒を吸入し圧縮して吐出する。圧縮機21は車両ボンネット内に配置されている。圧縮機21は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機21は、制御装置50から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0086】
そして、圧縮機21の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器22における冷媒通路22aの入口側が接続されている。熱媒体冷媒熱交換器22は、圧縮機21から吐出された高圧冷媒が有する熱を、加熱部30を構成する高温側熱媒体回路31の高温側熱媒体に放熱し、高温側熱媒体を加熱する熱交換器である。
【0087】
熱媒体冷媒熱交換器22は、冷凍サイクル20の冷媒を流通させる冷媒通路22aと、高温側熱媒体回路31の高温側熱媒体を流通させる熱媒体通路22bを有している。熱媒体冷媒熱交換器22は、伝熱性に優れる同種の金属(例えば、アルミニウム合金)で形成されており、各構成部材は、ロウ付け接合によって一体化されている。
【0088】
これにより、冷媒通路22aを流通する高圧冷媒と熱媒体通路22bを流通する高温側熱媒体は、互いに熱交換することができる。熱媒体冷媒熱交換器22は、高圧冷媒の有する熱を放熱させる凝縮器の一例であり、後述する加熱部30の一部を構成する。
【0089】
熱媒体冷媒熱交換器22の冷媒通路22aの出口には、三方継手構造の冷媒分岐部23aが接続されている。冷媒分岐部23aは、熱媒体冷媒熱交換器22から流出した液相冷媒の流れを分岐するものである。冷媒分岐部23aでは、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としている。
【0090】
冷媒分岐部23aの一方の冷媒流出口には、第1膨張弁24aを介して、チラー25の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部23aの他方の冷媒流出口には、第2膨張弁24bを介して、空調用蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。
【0091】
第1膨張弁24aは、少なくとも冷凍サイクル20を利用して電池Bの冷却を行う運転モードや暖房モードにおいて、冷媒分岐部23aの一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第1膨張弁24aは、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第1膨張弁24aは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されており、第1減圧部の一例に相当する。
【0092】
第1膨張弁24aの弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。第1膨張弁24aは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0093】
又、第1膨張弁24aは、絞り開度を全開した際に冷媒通路を全開する全開機能と、絞り開度を全閉した際に冷媒通路を閉塞する全閉機能を有する可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁24aは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。
【0094】
そして、第1膨張弁24aは、冷媒通路を閉塞することで、チラー25に対する冷媒の流入を遮断できる。即ち、第1膨張弁24aは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
【0095】
第1膨張弁24aの出口には、チラー25の冷媒入口側が接続されている。チラー25は、第1膨張弁24aにて減圧された低圧冷媒と、熱媒体回路10を循環する熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。
【0096】
チラー25は、第1膨張弁24aにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路25aと、熱媒体回路10を循環する熱媒体を流通させる熱媒体通路25bとを有している。従って、チラー25は、冷媒通路25aを流通する低圧冷媒と熱媒体通路25bを流通する熱媒体との熱交換によって、低圧冷媒を蒸発させて熱媒体から吸熱する蒸発器である。
【0097】
図1に示すように、冷媒分岐部23aにおける他方の冷媒流出口には、第2膨張弁24bが接続されている。第2膨張弁24bは、少なくとも冷凍サイクル20を用いて送風空気を冷却する運転モードにおいて、冷媒分岐部23aの他方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第2膨張弁24bは第2減圧部の一例に相当する。
【0098】
第2膨張弁24bは、第1膨張弁24aと同様に、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、第2膨張弁24bは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能を有している。
【0099】
つまり、第2膨張弁24bは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。又、第2膨張弁24bは、冷媒通路を閉塞することで、空調用蒸発器26に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、第2膨張弁24bは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える冷媒回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
【0100】
第2膨張弁24bの出口には、空調用蒸発器26の冷媒入口側が接続されている。空調用蒸発器26は、冷房モードや除湿暖房モードにおいて、第2膨張弁24bにて減圧された低圧冷媒と送風空気Wとを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気Wを冷却する蒸発器である。
図6に示すように、空調用蒸発器26は、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。
【0101】
図1に示すように、チラー25の冷媒出口側には、冷媒合流部23bの他方の冷媒入口側が接続されている。又、空調用蒸発器26の冷媒出口には、冷媒合流部23bの一方の冷媒入口側が接続されている。ここで、冷媒合流部23bは、冷媒分岐部23aと同様の三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち2つを冷媒入口とし、残りの1つを冷媒出口としたものである。
【0102】
冷媒合流部23bは、チラー25から流出した冷媒の流れと空調用蒸発器26から流出した冷媒の流れとを合流させる。そして、冷媒合流部23bの冷媒出口には、圧縮機21の吸入口側が接続されている。
【0103】
続いて、第2実施形態に係る電池温調装置1の加熱部30について説明する。加熱部30は、冷凍サイクル20における高圧冷媒を熱源として、空調対象空間に供給される送風空気Wを加熱する為の構成である。
【0104】
第2実施形態に係る加熱部30は、高温側熱媒体回路31を有しており、熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22b、ヒータコア32、高温側ポンプ33等を備えている。高温側熱媒体回路31は、高温側熱媒体を循環させる熱媒体回路であり、高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
【0105】
高温側ポンプ33は、高温側熱媒体回路31における高温側熱媒体を循環させる為に圧送する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ33は、制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。高温側ポンプ33の吐出口には、熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22bにおける流入口が接続されている。
【0106】
上述したように、熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22bにおいては、高温側熱媒体が、冷媒通路22aを流通する高圧冷媒との熱交換によって加熱される。即ち、高温側熱媒体は、冷凍サイクル20で汲み上げられた熱を用いて加熱される。
【0107】
熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22bにおける流出口には、ヒータコア32における熱媒体流入口が接続されている。ヒータコア32は、熱媒体冷媒熱交換器22で加熱された高温側熱媒体と空調用蒸発器26を通過した送風空気Wとを熱交換させて、送風空気Wを加熱する熱交換器である。
図6に示すように、ヒータコア32は、室内空調ユニット40のケーシング41内に配置されている。そして、ヒータコア32の熱媒体流出口には、高温側ポンプ33の吸込口が接続されている。
【0108】
従って、第2実施形態に係る電池温調装置1によれば、冷凍サイクル20にて汲み上げた高圧冷媒の熱を熱源として、高温側熱媒体を介して、送風空気Wを加熱することができる。この為、熱媒体冷媒熱交換器22及び高温側熱媒体回路31は加熱部の一例に相当する。
【0109】
そして、第2実施形態に係る電池温調装置1の熱媒体回路10は、冷凍サイクル20におけるチラー25が配置されている点を除いて、第1実施形態に係る熱媒体回路10と同様に構成されている。
図1に示すように、第2実施形態に係る熱媒体回路10は、第1実施形態と同様に、電池用熱交換器11、外気熱交換器12、熱媒体ポンプ13、流量調整弁14に加えて、チラー25の熱媒体通路25bを有している。
【0110】
第2実施形態において、チラー25の熱媒体通路25bは、熱媒体回路10の共通流路15cに配置されている。チラー25の熱媒体通路25bにおける熱媒体流入口は、熱媒体ポンプ13の吐出口に接続されている。そして、チラー25の熱媒体通路25bにおける熱媒体流出口は、流量調整弁14の流入口に接続されている。
【0111】
従って、第2実施形態における熱媒体回路10では、第1実施形態と同様に、外気熱交換器12における外気OAとの熱交換によって、熱媒体の温度を調整することができる。更に、第2実施形態の熱媒体回路10によれば、冷凍サイクル20のチラー25にて、低圧冷媒に吸熱させることで、熱媒体を冷却することができる。
【0112】
次に、第2実施形態に係る電池温調装置1の室内空調ユニット40について、
図6を参照して説明する。室内空調ユニット40は、電池温調装置1において、冷凍サイクル20によって温度調整された送風空気Wを車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット40は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0113】
室内空調ユニット40は、その外殻を形成するケーシング41の内部に形成される空気通路に、送風機42、空調用蒸発器26、ヒータコア32等を収容している。ケーシング41は、車室内に送風される送風空気Wの空気通路を形成している。ケーシング41は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0114】
図2に示すように、ケーシング41の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置43が配置されている。内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入するものである。
【0115】
内外気切替装置43は、ケーシング41内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0116】
内外気切替装置43の送風空気流れ下流側には、送風機42が配置されている。送風機42は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。送風機42は、内外気切替装置43を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。送風機42は、制御装置50から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
【0117】
送風機42の送風空気流れ下流側には、空調用蒸発器26及びヒータコア32が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、空調用蒸発器26は、ヒータコア32よりも送風空気流れ上流側に配置されている。
【0118】
又、ケーシング41内には、冷風バイパス通路45が形成されている。冷風バイパス通路45は、空調用蒸発器26を通過した送風空気Wを、ヒータコア32を迂回させて下流側へ流す空気通路である。
【0119】
空調用蒸発器26の送風空気流れ下流側であって、且つ、ヒータコア32の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア44が配置されている。エアミックスドア44は、空調用蒸発器26を通過後の送風空気Wのうち、ヒータコア32を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整する。
【0120】
エアミックスドア44は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号により、その作動が制御される。
【0121】
ヒータコア32の送風空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。混合空間では、ヒータコア32にて加熱された送風空気Wと冷風バイパス通路45を通過してヒータコア32にて加熱されていない送風空気Wとが混合される。
【0122】
更に、ケーシング41の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
【0123】
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面の窓ガラスにおける内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0124】
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
【0125】
従って、エアミックスドア44が、ヒータコア32を通過させる風量と冷風バイパス通路45を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
【0126】
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、デフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
【0127】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0128】
続いて、第2実施形態に係る電池温調装置1の制御系について、
図7を参照して説明する。第2実施形態に係る制御装置50は、第1実施形態と同様に、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
【0129】
そして、第2実施形態に係る制御装置50は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。第2実施形態に係る制御対象機器には、熱媒体ポンプ13、流量調整弁14に加えて、圧縮機21、第1膨張弁24a、第2膨張弁24b、高温側ポンプ33、送風機42等が含まれている。
【0130】
図7に示すように、制御装置50の入力側には、制御用センサ群が接続されている。制御用センサ群には、第1実施形態と同様に、外気温センサ52a、電池温度センサ53a、第1熱媒体温度センサ54aが含まれている。外気温センサ52a、電池温度センサ53aは、第1実施形態と同様の構成である。第2実施形態における第1熱媒体温度センサ54aは、共通流路15cにおいて、チラー25の熱媒体通路25bにおける熱媒体出口と流量調整弁14の流入口の間に配置されている。
【0131】
そして、第2実施形態における制御用センサ群には、更に、内気温センサ52b、日射量センサ52c、高圧センサ52d、蒸発器温度センサ52e、送風空気温度センサ53bが含まれている。又、制御用センサ群には、熱媒体回路10の熱媒体や高温側熱媒体回路31の高温側熱媒体の温度を検出する為の第2熱媒体温度センサ54b~第5熱媒体温度センサ54eが含まれている。制御装置50には、第1実施形態と同様に、これらの制御用センサ群の検出信号が入力される。
【0132】
内気温センサ52bは、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。日射量センサ52cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ52dは、圧縮機21の吐出口側から第1膨張弁24a或いは第2膨張弁24bの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
【0133】
蒸発器温度センサ52eは、空調用蒸発器26における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。送風空気温度センサ53bは、車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する送風空気温度検出部である。送風空気温度センサ53bは、送風空気温度取得部の一例に相当する。
【0134】
第2熱媒体温度センサ54bは、電池用熱交換器11における熱媒体通路11aの出口部分に配置されており、電池用熱交換器11を通過した熱媒体の温度を検出する。第3熱媒体温度センサ54cは、外気熱交換器12の熱媒体出口部分に配置されており、外気熱交換器12から流出した熱媒体の温度を検出する。
【0135】
第4熱媒体温度センサ54dは、熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22bにおける出口部分に配置されており、熱媒体冷媒熱交換器22から流出する高温側熱媒体の温度を検出する。第5熱媒体温度センサ54eは、ヒータコア32における熱媒体出口部分に配置されており、ヒータコア32から流出する高温側熱媒体の温度を検出する。
【0136】
そして、電池温調装置1は、第1熱媒体温度センサ54a~第5熱媒体温度センサ54eの検出結果を参照して、熱媒体回路10における熱媒体の流れや、高温側熱媒体回路31における高温側熱媒体の流れを切り替える。これにより、電池温調装置1は、熱媒体回路10や高温側熱媒体回路31を用いて、車両における熱を管理することができる。
【0137】
更に、制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル51が接続されている。操作パネル51には、複数の操作スイッチが配置されている。従って、制御装置50には、この複数の操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル51における各種操作スイッチとしては、オートスイッチ、冷房スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。
【0138】
オートスイッチは、電池温調装置1の自動制御運転を設定或いは解除する際に操作される。冷房スイッチは、車室内の冷房を行うことを要求する際に操作される。風量設定スイッチは、送風機42の風量をマニュアル設定する際に操作される。そして、温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する際に操作される。
【0139】
尚、制御装置50では、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されているが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)がそれぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0140】
例えば、制御装置50のうち、熱媒体回路10における流量調整弁14の作動を制御して、電池用熱交換器11側を流れる熱媒体と外気熱交換器12側を流れる熱媒体の流量比を調整する構成は、流量比調整部50aを構成する。そして、制御装置50のうち、熱媒体回路10における流量調整弁14の圧送量を制御する構成は、圧送能力制御部50bを構成する。
【0141】
又、制御装置50のうち、冷凍サイクル20における圧縮機21の冷媒吐出能力を制御する構成は、圧縮機制御部50cを構成する。そして、制御装置50のうち、冷凍サイクル20における第1膨張弁24a、第2膨張弁24bの減圧量をそれぞれ制御する構成は、減圧制御部50dを構成する。制御装置50のうち、高温側熱媒体回路31における高温側ポンプ33の圧送能力を制御する構成は、高温側制御部50eを構成する。
【0142】
このように構成された電池温調装置1によれば、冷凍サイクル20を停止した状態で、熱媒体回路10の熱媒体ポンプ13及び流量調整弁14の作動を制御することで、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0143】
即ち、第2実施形態に係る電池温調装置1は、外気温度が基準外気温度よりも低い環境でも、電池用熱交換器11を流通する熱媒体の温度変動を抑制して、低温の外気OAの影響による電池Bの出力低下や劣化を抑制することができる。
【0144】
続いて、第2実施形態における電池温調装置1の作動について説明する。上述したように、第2実施形態に係る電池温調装置1では、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、制御装置50に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。
【0145】
上述したように、第2実施形態の電池温調装置1の運転モードには、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モード、単独冷却モード、冷却冷房モード、冷却暖房モード、冷却除湿暖房モードが含まれる。以下に、各運転モードについて説明する。
【0146】
(a)冷房モード
冷房モードは、冷凍サイクル20を利用した電池Bの冷却を行うことなく、空調用蒸発器26により送風空気Wを冷却して車室内に送風する運転モードである。この冷房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁24aを全閉し、第2膨張弁24bを予め定められた絞り開度で開く。
【0147】
従って、冷房モードの冷凍サイクル20では、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第2膨張弁24b、空調用蒸発器26、圧縮機21の順で流れる冷媒の循環回路が構成される。
【0148】
そして、このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機21の冷媒吐出能力、第2膨張弁24bの絞り開度、送風機42の送風能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0149】
尚、冷房モードの熱媒体回路10では、チラー25に低圧冷媒が流入していない為、第1実施形態における熱媒体回路10に作動させることができる。又、冷房モードにおいては、熱媒体回路10における熱媒体の循環を停止させた状態にすることも可能である。
【0150】
従って、冷房モードの電池温調装置1では、空調用蒸発器26にて冷却された送風空気Wを車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。又、電池温調装置1は、外気熱交換器12にて、熱媒体回路10の熱媒体と外気OAとの熱交換を行うことによって、電池Bの温度調整を行うことができる。
【0151】
(b)暖房モード
暖房モードは、冷凍サイクル20を用いた電池Bの冷却を行うことなく、ヒータコア32により送風空気Wを加熱して車室内に送風する運転モードである。暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁24aを所定の絞り開度で開き、第2膨張弁24bを全閉状態にする。従って、暖房モードの冷凍サイクル20では、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第1膨張弁24a、チラー25、圧縮機21の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
【0152】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機21の冷媒吐出能力、第1膨張弁24aの絞り開度、送風機42の送風能力、高温側ポンプ33の圧送能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0153】
又、暖房モードの熱媒体回路10については、制御装置50は、熱媒体ポンプ13、チラー25、流量調整弁14、外気熱交換器12、熱媒体ポンプ13の順で、熱媒体が循環するように、熱媒体ポンプ13及び流量調整弁14を制御する。
【0154】
即ち、暖房モードの電池温調装置1は、熱媒体回路10の外気熱交換器12にて外気OAから吸熱した熱を、冷凍サイクル20で汲み上げて、高温側熱媒体回路31を介して、送風空気Wの加熱に利用した暖房を行うことができる。
【0155】
(c)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、冷凍サイクル20を利用した電池Bの冷却を行うことなく、空調用蒸発器26で冷却された送風空気Wをヒータコア32で加熱して車室内に送風する運転モードである。除湿暖房モードでは、制御装置50は、第2膨張弁24b及び第1膨張弁24aをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
【0156】
従って、除湿暖房モードの冷凍サイクル20では、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第2膨張弁24b、空調用蒸発器26、圧縮機21の順に冷媒が循環する。同時に、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第1膨張弁24a、チラー25、圧縮機21の順で冷媒が循環する。つまり、除湿暖房モードの冷凍サイクル20では、熱媒体冷媒熱交換器22から流出した冷媒の流れに対して、チラー25及び空調用蒸発器26が並列的に接続された冷媒の循環回路が構成される。
【0157】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を除湿暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機21の冷媒吐出能力、第1膨張弁24a及び第2膨張弁24bの絞り開度、送風機42の送風能力、高温側ポンプ33の圧送能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0158】
そして、除湿暖房モードの熱媒体回路10については、制御装置50は、熱媒体ポンプ13、チラー25、流量調整弁14、外気熱交換器12、熱媒体ポンプ13の順で、熱媒体が循環するように、熱媒体ポンプ13及び流量調整弁14を制御する。
【0159】
これにより、除湿暖房モードの電池温調装置1は、熱媒体回路10にて外気OAから吸熱した熱を冷凍サイクル20で汲み上げて、冷却された送風空気Wを、高温側熱媒体回路31を介して加熱する除湿暖房を実現することができる。
【0160】
(d)単独冷却モード
単独冷却モードは、車室内の空調運転を行うことなく、冷凍サイクル20を用いた電池Bの冷却を行う運転モードである。この単独冷却モードでは、制御装置50は、第1膨張弁24aを所定の絞り開度で開き、第2膨張弁24bを全閉状態にする。従って、単独冷却モードの冷凍サイクル20では、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第1膨張弁24a、チラー25、圧縮機21の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
【0161】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を単独冷却モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機21の冷媒吐出能力、第1膨張弁24aの絞り開度、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0162】
そして、単独冷却モードの熱媒体回路10については、制御装置50は、熱媒体ポンプ13、チラー25、流量調整弁14、電池用熱交換器11、熱媒体ポンプ13の順で、熱媒体が循環するように、熱媒体ポンプ13及び流量調整弁14を制御する。
【0163】
これにより、単独冷却モードの電池温調装置1は、チラー25における低圧冷媒との熱交換によって冷却された熱媒体を、電池用熱交換器11の熱媒体通路11aに流通させることができるので、冷凍サイクル20を利用して電池Bを冷却することができる。
【0164】
(e)冷却冷房モード
冷却冷房モードは、冷凍サイクルを利用した電池Bの冷却と並行して、空調用蒸発器26により送風空気Wを冷却して車室内に送風する運転モードである。この冷却冷房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁24a及び第2膨張弁24bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
【0165】
従って、冷却冷房モードの冷凍サイクル20では、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第1膨張弁24a、チラー25、圧縮機21の順で冷媒が循環する。同時に、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第2膨張弁24b、空調用蒸発器26、圧縮機21の順に冷媒が循環する。つまり、冷却冷房モードの冷凍サイクル20では、熱媒体冷媒熱交換器22から流出した冷媒の流れに対して、空調用蒸発器26及びチラー25が並列的に接続された冷媒の循環回路が構成される。
【0166】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷却冷房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機21の冷媒吐出能力、第1膨張弁24a及び第2膨張弁24bの絞り開度、送風機42の送風能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0167】
そして、冷却冷房モードの熱媒体回路10については、制御装置50は、熱媒体ポンプ13、チラー25、流量調整弁14、電池用熱交換器11、熱媒体ポンプ13の順で、熱媒体が循環するように、熱媒体ポンプ13及び流量調整弁14を制御する。
【0168】
これにより、冷却冷房モードの電池温調装置1は、チラー25における低圧冷媒との熱交換によって冷却された熱媒体を、電池用熱交換器11に流通させることができるので、電池Bを冷却することができる。
【0169】
又、冷却冷房モードでは、空調用蒸発器26における送風空気Wとの熱交換により、低圧冷媒を蒸発させて送風空気Wを冷却して車室内の冷房を実現できる。従って、冷却冷房モードの電池温調装置1は、冷凍サイクル20を用いた電池Bの冷却と共に、車室内の冷房によって快適性を向上させることができる。
【0170】
(f)冷却暖房モード
冷却暖房モードは、冷凍サイクル20を利用した電池Bの冷却と並行して、ヒータコア32により送風空気Wを加熱して車室内に送風する運転モードである。この冷却暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁24aを所定の絞り開度で開き、第2膨張弁24bを全閉状態にする。従って、冷却暖房モードの冷凍サイクル20では、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第1膨張弁24a、チラー25、圧縮機21の順で冷媒が循環する冷媒の循環回路が構成される。
【0171】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷却暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機21の冷媒吐出能力、第1膨張弁24aの絞り開度、送風機42の送風能力、高温側ポンプ33の圧送能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0172】
そして、冷却暖房モードの熱媒体回路10については、制御装置50は、熱媒体ポンプ13、チラー25、流量調整弁14、電池用熱交換器11、熱媒体ポンプ13の順で、熱媒体が循環するように、熱媒体ポンプ13及び流量調整弁14を制御する。
【0173】
これにより、冷却暖房モードの電池温調装置1は、チラー25における低圧冷媒との熱交換によって冷却された熱媒体を、電池用熱交換器11に流通させることができるので、電池Bを冷却することができる。
【0174】
又、冷却暖房モードでは、冷凍サイクル20にて電池Bの廃熱を汲み上げて、ヒータコア32にて送風空気Wへ放熱することで、車室内の暖房を実現することができる。従って、冷却暖房モードの電池温調装置1は、冷凍サイクル20を用いた電池Bの冷却と共に、電池Bの廃熱を熱源として利用した車室内の暖房によって快適性を向上させることができる。
【0175】
(g)冷却除湿暖房モード
冷却除湿暖房モードは、冷凍サイクル20を利用した電池Bの冷却と並行して、空調用蒸発器26で冷却された送風空気Wをヒータコア32で加熱して車室内に送風する運転モードである。この冷却除湿暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁24a及び第2膨張弁24bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。
【0176】
従って、冷却除湿暖房モードの冷凍サイクル20では、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第1膨張弁24a、チラー25、圧縮機21の順で冷媒が循環する。同時に、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第2膨張弁24b、空調用蒸発器26、圧縮機21の順に冷媒が循環する。
【0177】
つまり、冷却除湿暖房モードの冷凍サイクル20では、熱媒体冷媒熱交換器22から流出した冷媒の流れに対して、チラー25及び空調用蒸発器26が並列的に接続された冷媒の循環回路が構成される。
【0178】
このサイクル構成で、制御装置50は、制御用センサ群の検出結果等に従って、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を冷却除湿暖房モードに適した態様となるように制御する。具体的には、制御装置50は、圧縮機21の冷媒吐出能力、第1膨張弁24a及び第2膨張弁24bの絞り開度、送風機42の送風能力、高温側ポンプ33の圧送能力、エアミックスドア44の開度等を制御する。
【0179】
そして、冷却除湿暖房モードの熱媒体回路10については、制御装置50は、熱媒体ポンプ13、チラー25、流量調整弁14、電池用熱交換器11、熱媒体ポンプ13の順で、熱媒体が循環するように、熱媒体ポンプ13及び流量調整弁14を制御する。
【0180】
これにより、冷却除湿暖房モードの電池温調装置1は、チラー25における低圧冷媒との熱交換によって冷却された熱媒体を、電池用熱交換器11に流通させることができるので、電池Bを冷却することができる。
【0181】
又、冷却除湿暖房モードでは、冷凍サイクル20にて電池Bの廃熱を汲み上げて、空調用蒸発器26にて冷却された送風空気Wへ放熱することで、車室内の除湿暖房を実現することができる。従って、冷却除湿暖房モードの電池温調装置1は、冷凍サイクル20を用いた電池Bの冷却と共に、電池Bの廃熱を熱源として利用した車室内の除湿暖房によって快適性を向上させることができる。
【0182】
ここで、第2実施形態に係る電池温調装置1は、外気OAが低温な環境において、冷凍サイクル20を用いた電池Bの温度調整と車室内の空調を行う際に、種々の制御プログラムを実行する。
【0183】
外気OAが低温な環境において、冷凍サイクル20を利用して、車室内空調と電池Bの冷却を行う場合には、例えば、
図8に示す制御プログラムが実行される。先ず、ステップS10では、上述したステップS1と同様に、外気温度が基準外気温度よりも低いか否かが判定される。
【0184】
そして、外気温度が基準外気温度よりも低いと判定された場合は、ステップS11に進む。一方、外気温度が基準外気温度よりも低くないと判定された場合には、一度、
図8に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0185】
ステップS11においては、電池温調装置1の運転モードが電池Bの温度調整を行うと同時に、送風空気を加熱する運転モードであるか否かが判定される。つまり、ステップS11では、運転モードとして、冷却暖房モード又は冷却除湿暖房モードの何れかが選択されているか否かが判定される。運転モードが電池Bの温度調整と送風空気の加熱を行う運転モードであると判定された場合、ステップS12に進む。そうでないと判定された場合は、一度、
図8に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0186】
ステップS12では、第1熱媒体温度センサ54aで検出された熱媒体温度が外気温度以上であるか否かが判定される。熱媒体温度が外気温度以上であると判定された場合は、ステップS13に進む。そうでないと判定された場合は、ステップS14に進む。
【0187】
ステップS13においては、第1流路15a側の外気熱交換器12に対する熱媒体の流量を増加させ、第2流路15b側の電池用熱交換器11に対する熱媒体の流量を減少させるように、流量調整弁14の作動を制御する。この時、流量調整弁14における外気熱交換器12側の流出口の開度は、熱媒体温度と外気温度との温度差が大きいほど大きく定められる。その後、
図8に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0188】
ここで、ステップS13に移行する場合とは、熱媒体温度が外気温度以上である場合であり、外気が低温である場合である。従って、ステップS13で、外気熱交換器12側の流量が増加するように、流量調整弁14の作動を制御することで、第1熱媒体温度センサ54aで検出される熱媒体温度を低下させることができる。
【0189】
ステップS14では、第1熱媒体温度センサ54aで検出された熱媒体温度と外気温度との温度差が予め定められた所定値(例えば、5℃)より大きいか否かが判定される。ステップS14に移行する場合、熱媒体温度は外気温度よりも低い状態である為、ステップS14では、共通流路15cを流れる熱媒体が、外気に対して冷え過ぎているか否かを判定している。
【0190】
電池温調装置1において、共通流路15cを流れる熱媒体が外気に対して冷え過ぎている場合、電池Bの廃熱が熱媒体よりも外気に放熱されると考えられる。この為、熱媒体が外気に対して冷え過ぎている場合は、電池Bの廃熱を熱媒体に十分に吸熱させることができない為、送風空気を加熱する為の熱源として、電池Bの廃熱を活用できない状況であると考えらえる。つまり、ステップS14では、熱媒体温度と外気温度との関係から電池Bの廃熱を活用できない状況であるか否かが判定されている。
【0191】
熱媒体温度と外気温度との温度差が所定値より大きいと判定された場合、ステップS15に進む。一方、そうでないと判定された場合、熱媒体回路10を介して、外気OA及び電池Bの廃熱を、送風空気を加熱する為の熱源として効率よく利用できる状態である為、一度、
図8に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0192】
ステップS15においては、第1流路15a側の外気熱交換器12に対する熱媒体の流量を減少させ、第2流路15b側の電池用熱交換器11に対する熱媒体の流量を増加させるように、流量調整弁14の作動を制御する。この時、流量調整弁14における外気熱交換器12側の流出口の開度は、熱媒体温度と外気温度との温度差が大きいほど小さく定められる。その後、
図8に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0193】
ステップS15にて流量調整弁14の作動を制御することで、熱媒体回路10を循環する熱媒体のうちで、外気熱交換器12における外気との熱交換によって冷却される熱媒体の流量が減少する。この為、共通流路15cを流れる熱媒体の温度の低下を抑制して、送風空気を加熱する為の熱源として、電池Bの廃熱を効率よく利用できる状態に近づけることができる。
【0194】
第2実施形態の電池温調装置1によれば、冷却暖房モードや冷却除湿暖房モードに際して、流量調整弁14の作動を制御することで、送風空気を加熱する為の熱源として、外気OA及び電池Bの廃熱を効率良く利用することができる。
【0195】
そして、外気OAが低温な環境において、冷凍サイクル20を利用して、車室内空調と電池Bの冷却を行う場合には、
図9に示す制御プログラムが実行される。先ず、ステップS20では、上述したステップS1等と同様に、外気温度が基準外気温度よりも低いか否かが判定される。
【0196】
そして、外気温度が基準外気温度よりも低いと判定された場合は、ステップS21に進む。一方、外気温度が基準外気温度よりも低くないと判定された場合には、一度、
図9に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0197】
ステップS21においては、電池温調装置1の運転モードが電池Bの温度調整を行うと同時に、送風空気を冷却する運転モードであるか否かが判定される。つまり、ステップS21では、運転モードとして、冷却冷房モード又は冷却除湿暖房モードの何れかが選択されているか否かが判定される。運転モードが電池Bの温度調整と送風空気の冷却を行う運転モードであると判定された場合、ステップS22に進む。そうでないと判定された場合は、一度、
図9に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0198】
ステップS22では、第1熱媒体温度センサ54aで検出された熱媒体温度が送風空気温度センサ53bで検出された送風空気温度以上であるか否かが判定される。熱媒体温度が送風空気温度以上である場合は、冷凍サイクル20における空調用蒸発器26内部の冷媒圧力が上昇して、空調用蒸発器26における冷却能力や除湿能力が低下することが想定される。熱媒体温度が送風空気温度以上であると判定された場合は、ステップS23に進む。そうでないと判定された場合、そのまま、
図9に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0199】
ステップS23においては、第1流路15a側の外気熱交換器12に対する熱媒体の流量を増加させ、第2流路15b側の電池用熱交換器11に対する熱媒体の流量を減少させるように、流量調整弁14の作動を制御する。この時、流量調整弁14における外気熱交換器12側の流出口の開度は、熱媒体温度と送風空気温度との温度差が大きいほど大きく定められる。その後、
図9に示す制御プログラムを終了して、再度実行する。
【0200】
ステップS23にて流量調整弁14の作動を制御すると、熱媒体回路10を循環する熱媒体のうち、外気熱交換器12を経由する熱媒体の流量比が増加する為、共通流路15cを流通する熱媒体温度の温度を低下させることができる。この結果、冷凍サイクル20における空調用蒸発器26内部の冷媒圧力が上昇することを抑制して、空調用蒸発器26における冷却能力や除湿能力の低下を抑制することができる。
【0201】
以上説明したように、第2実施形態に係る電池温調装置1によれば、熱媒体回路10に加えて、冷凍サイクル20、加熱部30等を有している為、外気OAとの熱交換による電池Bの温度調整に加え、空調対象空間である車室内の空調を行うことができる。
【0202】
そして、第2実施形態に係る電池温調装置1によれば、熱媒体回路10で熱交換される電池Bの廃熱や外気を有効に活用して、冷凍サイクル20を用いた車室内の空調に利用することができる。
【0203】
又、第2実施形態に係る電池温調装置1は、
図8に示すように、外気が低温である低温環境にて送風空気を加熱する場合に、共通流路15cを流通する熱媒体の熱媒体温度が外気温度以下になるように、流量調整弁14の作動を制御する。
【0204】
これにより、第2実施形態に係る電池温調装置1は、熱媒体回路10の熱媒体に対し、外気OA及び電池Bの廃熱の両方を吸熱させることができ、送風空気を加熱する為の熱源として、外気OA及び電池Bの廃熱を活用することができる。
【0205】
第2実施形態に係る電池温調装置1は、外気が低温である低温環境にて送風空気を加熱する場合において、
図8に示すように、外気温度と熱媒体温度の温度差が所定値よりも小さくなるように、流量調整弁14の作動を制御する。
【0206】
これにより、第2実施形態に係る電池温調装置1は、流量調整弁14の作動を制御することによって、電池Bに生じた廃熱が外気に放熱されることを抑制して、熱媒体に吸熱させる状況を作りだすことができる。従って、第2実施形態に係る電池温調装置1は、送風空気を加熱する為の熱源として、外気OA及び電池Bの廃熱を、より確実に活用することができる。
【0207】
更に、第2実施形態に係る電池温調装置1は、
図9に示すように、外気が低温である低温環境にて送風空気を冷却する場合に、共通流路15cを流通する熱媒体の熱媒体温度が送風空気温度よりも低くなるように、流量調整弁14の作動を制御する。
【0208】
これにより、第2実施形態に係る電池温調装置1によれば、冷凍サイクル20における空調用蒸発器26内部の冷媒圧力の上昇を抑制することができる為、空調用蒸発器26の冷却能力や除湿能力の低下を抑制することができる。この結果、電池温調装置1は、外気が低温である低温環境にて送風空気を冷却する場合において、空調対象空間である車室内の快適性を良好な状態に維持することができる。
【0209】
(第3実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第3実施形態について、
図10を参照して説明する。第3実施形態では、冷凍サイクル20の構成が、第2実施形態と相違している。電池温調装置1の基本構成等の構成については、第2実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0210】
図10に示すように、第3実施形態の電池温調装置1における冷凍サイクル20は、第2実施形態における第2膨張弁24b及び空調用蒸発器26を有していない。換言すると、第3実施形態の冷凍サイクル20は、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、第1膨張弁24a、チラー25を接続して構成された冷媒循環回路である。
【0211】
従って、第3実施形態に係る電池温調装置1によれば、冷凍サイクル20を利用した電池Bの温度調整、外気OAとの熱交換による電池Bの温度調整、外気OA又は電池Bの廃熱を熱源とした車室内暖房を行うことができる。
【0212】
以上説明したように、第3実施形態に係る電池温調装置1によれば、第2実施形態における冷凍サイクル20の低圧側の構成を変更した場合であっても、上述した第2実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を同様に得ることができる。
【0213】
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
【0214】
(1)熱媒体回路10における電池用熱交換器11の配置は、上述した実施形態に示す位置関係に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態においては、電池用熱交換器11を第2流路15bに配置していたが、この配置に限定されるものではない。例えば、
図11に示すように、電池用熱交換器11を共通流路15cに配置しても良い。
【0215】
又、熱媒体回路10における熱媒体ポンプ13の配置についても、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において、第1流路15aと第2流路15bとの合流部の側の共通流路15cにおいて、合流部に対して熱媒体ポンプ13の吸入口の側を接続していたが、この配置限定されるものではない。例えば、
図11に示すように、共通流路15cにおける流量調整弁14側において、流量調整弁14の流入口に対して熱媒体ポンプ13の吐出口側を接続しても良い。
【0216】
(2)又、上述した実施形態では、流量調整部として、流量調整弁14を採用していたが、第1流路15a側と第2流路15b側との熱媒体の流量をそれぞれ調整できる構成であれば、種々の態様を採用することができる。
【0217】
例えば、
図12に示すように、流量調整部を、第1流路15a側に配置された第1開閉弁14aと、第2流路15b側に配置された第2開閉弁14bによって構成しても良い。第1開閉弁14a、第2開閉弁14bは、第1流路15a等の熱媒体流路の開度を調整可能な開閉弁である。更に、第1流路15a及び第2流路15bの何れか一方に、第1開閉弁と同様の開閉弁を配置して、流量調整部としても良い。
【0218】
(3)そして、上述した第2実施形態においては、送風空気を加熱する為の加熱部30を、熱媒体冷媒熱交換器22と高温側熱媒体回路31にて構成していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、
図13に示すように、高温側熱媒体回路31を廃止すると共に、熱媒体冷媒熱交換器22に替えて、室内凝縮器27を配置しても良い。室内凝縮器27は、室内空調ユニット40におけるヒータコア32の位置に配置される。
【0219】
(4)又、第2実施形態においては、冷凍サイクル20における蒸発器の一つとして、空調用蒸発器26を配置していたが、他の用途に用いられる蒸発器を配置しても良い。例えば、
図13に示すように、空調用蒸発器26に替えて、低圧冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器28を配置しても良い。
【0220】
更に、冷凍サイクル20におけるチラー25と室外熱交換器28の配置は、
図13に示すように、室外熱交換器28とチラー25が並列に接続された構成でも良いし、
図14に示すように、室外熱交換器28とチラー25を直列に接続された構成としても良い。
【0221】
(5)そして、上述した第2実施形態においては、熱媒体回路10の共通流路15cにチラー25の熱媒体通路25bを配置し、第2流路15bに電池用熱交換器11を配置していたが、この態様に限定されるものではない。
【0222】
例えば、
図15に示すように、熱媒体回路10の共通流路15cに電池用熱交換器11を配置し、第2流路15bにチラー25の熱媒体通路25bを配置した構成にすることもできる。又、
図16に示すように、熱媒体回路10の共通流路15cにおいて、電池用熱交換器11とチラー25の熱媒体通路25bを直列に接続した構成にすることも可能である。
【符号の説明】
【0223】
1 電池温調装置
10 熱媒体回路
11 電池用熱交換器
12 外気熱交換器
13 熱媒体ポンプ
14 流量調整弁
50 制御装置
52a 外気温センサ
53a 電池温度センサ
54a 第1熱媒体温度センサ