(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】水性フレキソインキおよび印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/023 20140101AFI20240416BHJP
C09D 11/107 20140101ALI20240416BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240416BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240416BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240416BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20240416BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C09D11/023
C09D11/107
C08L101/00
C08L33/14
C08L33/04
C08L25/08
C08L93/04
(21)【出願番号】P 2020070813
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優大
(72)【発明者】
【氏名】関根 秀和
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-507544(JP,A)
【文献】国際公開第2019/117231(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/190842(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/036416(WO,A1)
【文献】特開2020-007478(JP,A)
【文献】米国特許第06423775(US,B1)
【文献】特表2002-513824(JP,A)
【文献】特開平11-071544(JP,A)
【文献】特開昭58-069270(JP,A)
【文献】特開2021-046522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11/00-13/00
B41M1/00-3/18;7/00-9/04
C08F251/00-283/00;283/02-289/00;291/
00-297/08
C08F283/01;290/00-290/14;299/00-299/
08
C08C19/00-19/44
C08F6/00-246/00;301/00
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)エマルジョン、および、水溶性樹脂(B)を含有する水性フレキソインキであって、
前記樹脂(A)は、多糖類由来の構成成分を有するアクリル系樹脂(a1)および多糖類由来の構成成分を有しない樹脂(a2)を含み、
前記アクリル系樹脂(a1)の水酸基価は、200~500mgKOH/gであり、
前記アクリル系樹脂(a1)は、スチレン-アクリル樹脂を含有し、
前記アクリル系樹脂(a1)は、酸価を有し、
前記樹脂(a2)は、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、およびアクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有
し、
前記樹脂(a2)の酸価は、30~150mgKOH/gであり、
前記水溶性樹脂(B)は、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、および、アクリル樹脂(ただし、スチレン-アクリル樹脂である場合を除く)から選ばれる少なくとも一種を含有し、
前記水溶性樹脂(B)の酸価は、150~300mgKOH/gであり、
前記樹脂(A)エマルジョン及び前記水溶性樹脂(B)は、塩基性化合物を含有してなり、
前記樹脂(A)エマルジョンと前記水溶性樹脂(B)の固形分質量比率は、97:3~50:50であり、
前記アクリル系樹脂(a1)に含まれる多糖類由来の構成単位と、ロジン系樹脂(ただし、ロジン系樹脂(C)を含む場合)との固形分総質量の和は、水性フレキソインキ固形分総質量中50質量%以下である、水性フレキソインキ。
【請求項2】
更に、ロジン系樹脂(C)を含有する、請求項
1に記載の水性フレキソインキ。
【請求項3】
ロジン系樹脂(C)の酸価は、10~260mgKOH/gである、請求項
2に記載の水性フレキソインキ。
【請求項4】
アクリル系樹脂(a1)に含まれる多糖類由来の構成単位と、ロジン系樹脂(ただし、ロジン系樹脂(C)を含む場合)との固形分総質量の和は、水性フレキソインキ固形分総質量中10質量%以上である、請求項
1~3いずれか1項に記載の水性フレキソインキ。
【請求項5】
アクリル系樹脂(a1)と樹脂(a2)との質量比率が、98:2~2:98である、請求項
1~4いずれか1項に記載の水性フレキソインキ。
【請求項6】
基材上に、請求項
1~5いずれか1項に記載の水性フレキソインキにより形成された印刷層を有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性フレキソインキおよびそれを用いた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、段ボール、カートン等の紙器およびショッピングバック等の紙袋を中心とした包装材印刷分野においては、水性フレキソ印刷が主流である。水性フレキソ印刷に用いられる水性フレキソインキは、石油由来の樹脂をバインダー樹脂として用いられているものが大半であった。一方で近年、世界的に地球環境に配慮した製品開発などの取り組みが加速しており、包装業界、印刷インキ業界においても対応が急務となっている。例えば水性フレキソインキにおいても、化石原料に由来しない原材料を利用することで、二酸化炭素排出量を削減可能なインキ、印刷物を提供することが要求されている。
【0003】
従来の技術としては、例えば、バインダー樹脂として、スチレン-アクリル樹脂、並びに、化石原料に由来しない原材料の一つである、ロジン樹脂エマルジョンまたはロジン樹脂の揮発性塩基による中和物を使用した水性フレキソ印刷インキ組成物が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、当該インキ構成では、ロジン樹脂はその骨格であるフェノール樹脂が芳香環を多数有しており、ロジン樹脂を多く使用すると、塗膜物性が脆く、包装薄紙用途で求められる耐折り曲げ性などの物性が不十分という問題を有していた。更に、ロジン樹脂は芳香環による疎水性相互作用が高く、乾燥塗膜が版上に残り水や溶剤で溶けにくいため溶解性や版洗浄性も不十分である問題を有していた。また、包装薄紙用途、特に、ショッピングバック用途や食品パッケージ用途では、印刷物の美粧性への要求が高いが、印刷濃度(発色性)で鮮やかさが劣る点も問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、再溶解性、版洗浄性に優れ、耐水摩擦性、耐折り曲げ性が良好であり、印刷濃度が良好である水性フレキソインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、下記の水性フレキソインキを使用することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、樹脂(A)エマルジョン、および、水溶性樹脂(B)を含有する水性フレキソインキであって、
前記樹脂(A)は、多糖類由来の構成成分を有するアクリル系樹脂(a1)および多糖類由来の構成成分を有しない樹脂(a2)を含み、前記樹脂(a2)は、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、およびアクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する、水性フレキソインキに関する。
【0008】
また、本発明は、アクリル系樹脂(a1)の水酸基価は、200~500mgKOH/gである、上記水性フレキソインキに関する。
【0009】
また、本発明は、更に、ロジン系樹脂(C)を含有する、上記水性フレキソインキに関する。
【0010】
また、本発明は、ロジン系樹脂(C)の酸価は、10~260mgKOH/gである、上記水性フレキソインキに関する。
【0011】
また、本発明は、アクリル系樹脂(a1)に含まれる多糖類由来の構成単位と、ロジン系樹脂(ただし、ロジン系樹脂(C)を含む場合)との固形分総質量の和は、水性フレキソインキ固形分総質量中10質量%以上である、上記水性フレキソインキに関する。
【0012】
また、本発明は、アクリル系樹脂(a1)と樹脂(a2)との質量比率が、98:2~2:98である、上記水性フレキソインキに関する。
【0013】
また、本発明は、水溶性樹脂(B)の酸価が、150~300mgKOH/gである、上記水性フレキソインキに関する。
【0014】
また、本発明は、基材上に、上記水性フレキソインキにより形成された印刷層を有する印刷物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、再溶解性、版洗浄性に優れ、耐水摩擦性、耐折り曲げ性が良好であり、印刷濃度が良好である水性フレキソインキを提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の水性フレキソインキについて詳細に説明する。
本発明は、樹脂(A)エマルジョン、および、水溶性樹脂(B)、を含有する水性フレキソインキであって、前記樹脂(A)は、多糖類由来の構成成分を有するアクリル系樹脂(a1)および多糖類由来の構成成分を有しない樹脂(a2)を含み、前記樹脂(a2)は、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、およびアクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種を含有する、水性フレキソインキに関する。多糖類由来の構成成分を有するアクリル系樹脂(a1)は、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、およびアクリル樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂(a2)と併用することで再溶解性、版洗浄性、印刷濃度(発色性)、耐折り曲げ性、耐水摩擦性向上の効果を奏し、水溶性樹脂(B)により顔料の分散安定性、再溶解性向上の効果を奏する。
【0017】
(樹脂(A)エマルジョン)
本発明の水性フレキソインキに使用される樹脂(A)エマルジョンは、樹脂(A)と水を含む媒体とからなる。樹脂(A)は、多糖類由来の構成成分を有するアクリル樹脂(a1)および多糖類由来の構成成分を有さない樹脂(a2)を含む。ここで、アクリル樹脂(a1)と樹脂(a2)との固形分質量比率は、98:2~2:98であることが好ましく、20:80~80:20であることがなお好ましい。
樹脂(A)エマルジョンにおいて、樹脂(A)は酸価を有していることが好ましく、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。当該塩基性化合物として例えば、アミン化合物、アルカリ金属等を好適に挙げられる。
具体的には、上記アミン化合物としては、アンモニア;ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。
上記アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
なおエマルジョンとは、樹脂そのものは水に不溶もしくは難溶であるが、当該樹脂が小さい粒子状に分散され、安定化された形態をいう。これら樹脂(A)エマルジョンの平均粒子径は、10~500nmであることが好ましく、20~300nmであることがなお好ましく、30~200nmであることが更に好ましい。平均粒子径は、例えば、動的光散乱法で測定できる。
【0018】
(多糖類由来の構成成分を有するアクリル樹脂(a1))
多糖類由来の構成成分を有するアクリル樹脂(a1)は、化石原料に由来しない原材料である多糖類由来の構成成分を含む。多糖類は、例えば、スターチ由来の糖鎖成分(多糖類由来の構成成分)を含む。アクリル樹脂(a1)は、糖構造を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーをビニル重合したアクリル樹脂であっても、糖構造を有しない(メタ)アクリレートをビニル重合した後、糖構造を有する化合物で変性したアクリル樹脂であってもよい。多糖類由来の構成成分はアクリル樹脂(a1)総質量中、1~99質量%含むことが好ましく、5~60質量%含むことがなお好ましく、10~50質量%含むことが更に好ましい。また、アクリル樹脂(a1)の水酸基価は200~500mgKOH/gであることが好ましく、250~400mgKOH/gであることがなお好ましく、更に好ましくは300~350mgKOH/gである。
アクリル樹脂(a1)エマルジョンの平均粒子径は、10~500nmであることが好ましく、20~300nmであることがなお好ましく、30~200nmであることが更に好ましい。
アクリル樹脂(a1)の重量平均分子量は2000~2000000であることが好ましく、5000~1000000であることがなお好ましく、10000~800000であることが更に好ましい。また、アクリル樹脂(a1)はスチレン-アクリル共重合樹脂を含むことが望ましい。
【0019】
アクリル樹脂(a1)は、アクリルモノマーを重合してなる。アクリルモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどが好適に挙げられ、例えば、アクリル酸エステルとしてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシロピルアクリレート、グリシジルアクリレートなどが例示され、メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどが好適に例示される。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのカルボン酸含有モノマー、又はそれらの無水物やハーフエステルも用いることができる。
上記中でも、アクリルモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸を含むことが好ましい。
また、アクリル樹脂(a1)を構成するスチレンモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレンなどが例示される。中でも、スチレンモノマーは、α-メチルスチレンを含むことが好ましい。
多糖類由来の構成成分を有するアクリル樹脂(a1)は、市販品として入手できる。具体的には、BASF社製 ジョンクリル662、669、668、665、667、PDX7198、633-E、LMV7051、90、HPD396等が例示できる。
【0020】
(多糖類由来の構成成分を有しない樹脂(a2))
多糖類由来の構成成分を有しない樹脂(a2)には、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、および、アクリル樹脂(ただし、スチレン-アクリル樹脂である場合を除く)から選ばれる少なくとも一種を含む。スチレン-アクリル樹脂および/またはスチレン-マレイン酸樹脂を含むことが好ましい。
樹脂(a2)の酸価は、30~150mgKOH/gであることが好ましく、40~120mgKOH/gであることがなお好ましく、40~100mgKOH/gであることが更に好ましい。
また、樹脂(a2)エマルジョンの平均粒子径は、10~500nmであることが好ましく、30~200nmであることがなお好ましい。樹脂(a2)エマルジョンの重量平均分子量は2000~2000000であることが好ましく、5000~1000000であることがなお好ましく、10000~800000であることが更に好ましい。
スチレン-アクリル樹脂を構成するモノマーは、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレンモノマーとアクリルモノマーであり、アクリルモノマーとしては上記と同様のものを好適に使用できる。
スチレン-マレイン酸樹脂を構成するモノマーは、スチレンモノマーとマレイン酸であり、マレイン酸は、無水物やモノエステルやジエステルであってもよい。アクリル樹脂を構成するアクリルモノマーは、上記と同様のものを好適に使用できる。
上記スチレン-アクリル樹脂としては、例えば、BASF社製、ジョンクリル74J(酸価51mgKOH/g、固形分45%)、ジョンクリル537J(酸価40mgKOH/g、固形分46%)等を使用することができる。スチレン-マレイン酸樹脂としては、星光PMC社製、ハイロスX-200、ハイロスX-220、XL-112等を使用することができる。また、アクリル樹脂としては、BASF社製、ジョンクリル60J、70J、HPD-196、HPD-96J等を使用することができる。
【0021】
(水溶性樹脂(B))
本発明の水性フレキソインキに使用される水溶性樹脂(B)は、塩基性化合物により可溶化する水溶性樹脂であることが好ましく、例えば、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、および、アクリル樹脂(ただし、スチレン-アクリル樹脂である場合を除く)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等も例示できる。
水溶性樹脂(B)の酸価は150~300mgKOH/gであることが好ましく、180~260mgKOH/gであることがなお好ましい。水溶性樹脂(B)の重量平均分子量は1500~50000であることが好ましく、4000~30000であることがなお好ましい。インキ皮膜の凝集力と分散安定性の効果が向上するためである。
また、樹脂(A)エマルジョンと水溶性樹脂(B)の固形分質量比率は、3:97~50:50であることが好ましく、3:97~40:60であることが好ましく、6:94~30:70であることがなお好ましい。分散安定性と版洗浄性の効果が向上するためである。
塩基性化合物としては、樹脂(A)エマルジョンの説明で記載したものと同様のものを好適に使用できる。その中でも紙製容器等で要求される乾燥性、耐摩擦性、耐水摩擦性の点からアミン化合物であることが好ましく、沸点が低く揮発性が高いアミン化合物が好ましく、アミン化合物の沸点は、150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることが更に好ましい。特に好ましくは0℃以下のものである。例えばアンモニア等が好ましい。
例えば、水溶性樹脂としては、岐阜セラツク社製、アクリスTYS-85、TYS-3000、LH52、BASF社製、BASF社製、ジョンクリル60J、70J、HPD-196、HPD-96J等を使用することができる。また、顔料に対するアルカリ可溶型水溶性樹脂の使用量は、顔料100質量%に対して、5~80質量%であることが好ましく、なお好ましくは15~25質量%である。
【0022】
(ロジン系樹脂(C))
本発明の水性フレキソインキに使用されるロジン系樹脂(C)としては、エマルジョンの形態および/または塩基性化合物で水溶化させた水溶性のロジン系樹脂の形態であることが好ましい。これらは何れの形態でもよいが、エマルジョンであることが好ましい。水溶性のロジン系樹脂は、酸価が5~300mgKOH/gであることが好ましく、10~260mgKOH/gであることがより好ましく、120~260mgKOH/gであることが更に好ましく、120~200mgKOH/gであることが特に好ましい。また、ロジン樹脂の軟化点は10~180℃の範囲が好ましく、より好ましくは30℃~150℃、更により好ましくは50℃~120℃である。
【0023】
エマルジョンの形態のロジン系樹脂(C)としては、松脂等の非化石原料からなる、ロジンエステル等のロジン誘導体やロジンを、低分子乳化剤やアクリル系共重合体からなる高分子乳化剤の存在下で、微粒子として水に分散させてなるものが利用できる。具体的には、ハリマ化成社製 ハリエスターSK218NS、SK370N、SK385NS、SK501NS、LAWTER社製 Snowpack XW-2442、XW-2551、XW-2561、XW-2582、SE780G、100G、荒川化学社製 スーパーエステル NS-121、NS-100H、E-865NT等が例示できる。
【0024】
水溶性のロジン系樹脂(C)は、具体的には、ハリマ化成社製、ハリマックT-80、AS-5、ハリエスターMSR-4、テスポール1150、1154、1158、荒川化学工業社製、マルキード31、32、33等を例示できる。水溶性のロジン系樹脂(C)は、塩基性化合物により中和されて水溶化される。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、有機アミン等を挙げられる。
本発明の水性フレキソインキ総質量中の、ロジン系樹脂(C)の含有量は、アクリル系樹脂(a1)中の多糖類由来の構成成分とロジン系樹脂(C)の和が水性フレキソインキ固形分総質量中に10質量%以上となるように含有させることが好ましく、15以上であることがなお好ましい。また、50質量%以下であることが好ましい。
【0025】
また、アクリル系樹脂(a1)とロジン系樹脂(C)の質量比率は98:2~2:98が好ましく、より好ましくは80:10~10:80、更に更により好ましくは20:70~70:20である。
【0026】
(媒体)
本発明の水性フレキソインキで使用する液状媒体としては、主成分は水であるが、水に加えて、影響ない範囲で、水溶性有機溶剤を使用できる。具体的には、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じてアルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤をインキ全量に対して30質量%以下の範囲で入れることができる。
アルコール系有機溶剤としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、ターシャリブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、が挙げられる。
グリコール系有機溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジブチルグリコール、等を挙げることができる。
【0027】
(顔料)
本発明の水性フレキソインキに使用される顔料としては、従来から水性フレキソ印刷インキで使用されているものを使用できる。具体的には、無機顔料として、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム等の体質顔料を挙げることができる。また、有機顔料として、油溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。上記顔料は、1種でも2種以上でも用いることができる。上記顔料は、水性フレキソインキ総質量中、1~60質量%であることが好ましい。
【0028】
(添加剤)
本発明の水性フレキソインキには、必要に応じて各種添加剤を使用することができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤等である。
具体的には、耐摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等のワックス樹脂微粒子分散体、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるために、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子および粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、造膜助剤等の各種添加剤を挙げることができる。
【0029】
(分散剤)
本発明の水性フレキソインキに使用される分散剤としては、界面活性剤を使用することが好ましい。例えば、共重合されたポリエーテルであり、限定されるものではないがポリプロピレングリコール(プロピレンオキサイド)とポリエチレングリコール(エチレンオキサイド)が共重合された形態の化合物などが好ましい。ポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール共重合樹脂の重量平均分子量は、500~30000が好ましく、重量平均分子量が、500より大きければ顔料分散性が向上し、30000より小さければレベリング性が向上する。当該重量平均分子量は、より好ましくは、1000~5000の範囲とする。また、エチレンオキサイド付加量は、全分子中の10~95質量%であることが好ましい。エチレンオキサイドの付加量が10%より高いと、分散安定性が向上し、95%を下回ると、耐水性と乾燥性が向上する。分散安定性と耐水性、乾燥性の両立を目的に、エチレンオキサイドの付加量は、30~90質量%とすることがより好ましい。
また、アセチレングリコール系化合物も好ましく、アセチレングリコール系化合物としては、サーフィノールシリーズ(エアプロダクツ社製)が市販されている。
分散剤は、インキ総質量中に、0.1~10質量%の範囲で使用することが好ましい。0.3~5質量%の範囲で使用することがなお好ましい。顔料分散体の光沢が向上し、かつ耐ブロッキング性を保つためである。
【0030】
(水性フレキソインキの製造方法)
本発明の水性フレキソインキの製造方法について説明する。本発明の水性フレキソインキを製造する方法としては、例えば、水、顔料、分散剤および水溶性樹脂(B)等を撹拌混合した後に、各種練肉機、例えば、ビーズミル、パールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、ロールミル等を利用して顔料分散し、更に、樹脂(A)エマルジョン、水溶性樹脂(B)、ロジン系樹脂(C)等の所定の材料および添加剤を添加、撹拌混合することで得られる。顔料分散には、ビーズミルを使用することが好ましい。
【0031】
(フレキソ印刷方式)
フレキソ印刷方式としては、2ロール方式、ドクター方式、ドクターチャンバー方式が挙げられる。ドクター方式、ドクターチャンバー方式にも表面にセルが形成されたアニロックスロールに水性フレキソインキを供給し、ドクターブレードによりアニロックスロール表面の余分な水性フレキソインキを掻き落とす工程を経て、樹脂版を通して、最終的に被印刷体に印刷される。本発明の水性フレキソインキをフレキソ印刷方式で印刷すると、表面の粗い紙基材に対しても、美粧性に優れた印刷物が得られる。
【0032】
(フレキソ印刷方法;アニロックスロール)
本発明のフレキソ印刷物の製造方法に使用されるフレキソ印刷に使用されるアニロックスとしては、セル彫刻が施されたセラミックアニロックスロール、クロムメッキアニロックスロール等を使用することができる。セルの形状は、ハニカムパターン、ダイヤパターン、ヘリカルパターン等があり、いずれのパターンを使用することができる。
【0033】
(フレキソ印刷方法;フレキソ版)
本発明のフレキソ印刷物の製造方法に使用されるフレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
【0034】
(フレキソ印刷方法;印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
【0035】
(水性フレキソインキにより形成された印刷層を有する印刷物)
水性フレキソインキにより形成された印刷層を有する印刷物の製造方法としては、紙や樹脂の表面への印刷、特に、紙コップ、紙皿等の紙製容器等の紙器、又は表面が樹脂層で被覆された紙製容器、食品パッケージの薄紙又はそれらの材料に、上記水性フレキソインキを用いてフレキソ印刷機で印刷する方法が例示できる。
このとき、被印刷物としては、包み紙や紙袋等の食品パッケージ、表面にラミネートによるポリオレフィン等の樹脂層を有する紙製容器等の紙製品、表面にポリオレフィン等の樹脂コート層等の樹脂層を有する紙製容器等の紙製品、および表面に樹脂層を有しない未コートの紙製容器等の紙製品等の何れでも良い。
【0036】
(基材)
印刷用の基材(被印刷体)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチックフィルム、セロハン、紙、アルミニウム箔等、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム、シート等が挙げられる。本発明においては、特に紙基材が好ましい。紙基材としては、ノンコート紙、基材の片側が処理されている片艶クラフト紙、晒しクラフト紙、未晒しクラフト紙等から選ばれる紙基材であることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」である。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。水酸基価、酸価の単位はmgKOH/gである。
【0038】
(軟化点)
JIS K5902に従って求めた。
(酸価および水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
【0039】
(実施例1)[水性フレキソインキS1の作製]
水15部、ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製 藍顔料 C.I.ピグメントブルー15:3(リオノールブルーFG7330))15部、PEG-PPG(ポリエチレングリコール(PEG)とポリプロピレングリコール(PPG)の共重合樹脂 重量平均分子量2800 PEG:PPG=40:60 固形分100%)2部、アセチレングリコール(日信化学工業社製 サーフィノールSE 固形分80%)1部の混合物をビーズミルで混練分散後、多糖由来樹脂-1エマルジョン(多糖類由来の構成成分を28質量%含有する、平均粒子径150μmのスチレン-アクリル樹脂エマルジョン 水酸基価300mgKOH/g 酸価50mgKOH/g 固形分47質量%)を23部、スチレン-アクリル樹脂1(平均粒子径100μmのスチレン-アクリル樹脂エマルジョン 水酸基価0mgKOH/g 酸価80mgKOH/g 固形分46質量%)を15部、樹脂B-1(アルカリ可溶型の水溶性アクリル樹脂、水酸基価0mgKOH/g 酸価200mgKOH/g 固形分30質量%)14部、ロジン樹脂-1(ロジン樹脂エマルジョン 軟化点100℃、水酸基価0mgKOH/g、120mgKOH/g、固形分50質量%)12部、ポリエチレンワックス2部、トリエタノールアミン1部となるように添加、撹拌混合して水性フレキソインキをS1得た。
【0040】
(実施例1)[水性フレキソインキS1の印刷]
上記で得られた水性フレキソインキS1を、粘度が10秒(25℃、ザーンカップNo.4)となるように水を用いて希釈し、200線のアニロックスロール、および感光性樹脂製のベタ版を備えた小型フレキシプルファー印刷機により、未晒クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製 両更クラフトK 坪量70g/m2)の基材表面に、印刷速度50m/sで行い、印刷物を得た。
【0041】
(実施例2~16)[水性フレキソインキS2~S16の作製]
表1に記載した原料および配合を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、水性フレキソインキを得た。表中、単位の標記のない数値は、部を表し、空欄は配合していないことを表す。なお、表中の略称は以下を表す。
多糖由来樹脂-2:多糖類由来の構成成分28質量%含有する、平均粒子径150μmのスチレン-アクリル樹脂エマルジョン 水酸基価500mgKOH/g 酸価50mgKOH/g 固形分47質量%
スチレン-マレイン酸樹脂1:平均粒子径100μmのスチレン-マレイン酸樹脂エマルジョン 水酸基価0mgKOH/g 酸価80mgKOH/g 固形分46質量%
アクリル樹脂1:平均粒子径100μmのアクリルエマルジョン 水酸基価0mgKOH/g 酸価120mgKOH/g 固形分46質量%
樹脂B-2:アルカリ可溶型の水溶性アクリル樹脂 水酸基価0mgKOH/g 酸価260mgKOH/g、固形分30質量%
樹脂B-3:アルカリ可溶型の水溶性アクリル樹脂 水酸基価0mgKOH/g 酸価150mgKOH/g、固形分30質量%
ロジン樹脂-2:ロジン樹脂エマルジョン 軟化点100℃、水酸基価0mgKOH/g 酸価260mgKOH/g、固形分50質量%
ロジン樹脂-3:ロジン樹脂エマルジョン 軟化点100℃、水酸基価0mgKOH/g 酸価10mgKOH/g、固形分30質量%
ロジン樹脂-4:ロジン樹脂エマルジョン 軟化点100℃、水酸基価0mgKOH/g 酸価300mgKOH/g、固形分30質量%
ロジン樹脂-5:ロジン樹脂エマルジョン 軟化点100℃、水酸基価0mgKOH/g 酸価5mgKOH/g、固形分30質量%
【0042】
【0043】
表1に記載された水性フレキソインキS2~S16について、実施例1と同様に印刷を行い、フレキシプルファー印刷機による印刷物をそれぞれ得た。
【0044】
(比較例1~3)[水性フレキソインキT1~T3]
表2に記載された原料および配合を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、水性フレキソインキを得た。表中、単位の標記のない数値は、部を表し、空欄は配合していないことを表す。
【0045】
(比較例1~3)[水性フレキソインキT1~T3の印刷]
表2に記載された水性フレキソインキT1~T3について、実施例1と同様に印刷を行い、フレキシプルファー印刷機による印刷物をそれぞれ得た。
【0046】
【0047】
(評価)
上記実施例および比較例にて得られたインキおよび印刷物を用いて以下の評価を行った。なお評価結果は表1および表2に示した。
【0048】
(印刷濃度(発色性))
実施例および比較例で得られたインキをフレキシプルファー印刷機により、未晒クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製 両更クラフトK 坪量70g/m2)に展色、塗膜を形成し、測色計を用いて印刷濃度(発色性)を評価した。測定には、PANTONE社製 X-Rite eXact分光光度計を用いた。測定条件は 、イルミナント/観測者視野:D50/2°、濃度ステータス:ISOステータスE、濃度白色基準:絶対値とし、印刷面のL*、a*、b*を測定した。また、基準となる標準色のL*、a*、b*を測定、それぞれ31.20、-3.20、-22.60とし、色差ΔE*
abを下記の式(1)より求めた。
式(1)ΔE*
ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
5:X-Rite eXact分光光度計で測定したΔE*
abが0.4未満である。
4:ΔE*
abが0.4以上0.8未満である。
3:ΔE*
abが0.8以上1.6未満である。
2:ΔE*
abが1.6以上3.2未満である。
1:ΔE*
abが3.2以上である。
上記で産業上利用できるレベルの評価は3、4および5である。
【0049】
(耐水耐摩性)
実施例および比較例で得られたインキをフレキシプルファー印刷機により、未晒クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製 両更クラフトK 坪量70g/m2)に展色、塗膜を形成し、学振型摩擦堅牢度試験機を用いて耐水摩擦性を評価した。評価条件は荷重200g×往復回数3回、当紙はカナキン布に水を5滴滴下したものとした。
5:塗膜取られがなく、原紙の露出面積比率が1%未満であるもの。
4:当紙にわずかにインキが付着。展色物のインキがわずかに取られて、原紙の露出面積比率が1%以上5%未満であるもの。
3:当紙全面にインキ薄く付着。展色物のインキがわずかに取られて、原紙の露出面積比率が5%以上10%未満であるもの。
2:当紙全面にインキ薄く付着。展色物のインキがほとんど取られて、原紙の露出面積比率が10%以上20%未満であるもの。
1:当紙全面にインキ濃く付着。展色物のインキが取られて、原紙の露出面積比率が20%以上であるもの。
上記で産業上利用できるレベルの評価は3、4および5である。
【0050】
(耐折り曲げ性)
実施例および比較例で得られたインキをフレキシプルファー印刷機により、未晒クラフト紙:未漂白のクラフトパルプを使用したクラフト紙(日本製紙社製 両更クラフトK 坪量70g/m2)に展色、塗膜を形成し、耐折り曲げ性の評価を行った。印刷面を内側に基材を折り曲げ、次に印刷面を外側に基材を折り曲げたのちの、印刷面のインキ塗膜の割れ具合を評価した。
5 :印刷された面において折り目を生じないもの。
4 :5と3の中間のレベルであり、折り曲げ性を持つもの。
3 :印刷された面のうち、折り目部分にのみ印刷層の割れが生じるもの。
2 :3と1の中間のレベルである折り曲げ性を持つもの。
1 :印刷された面のうち、折り目部位以外の印刷層の割れ、欠けを生じるもの。
上記で産業上利用できるレベルの評価は3、4および5である。
【0051】
(再溶解性)
実施例および比較例で得られたインキをバーコーターにより片面コロナ放電処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製 E5100 厚さ12μm)へ展色、塗膜を形成し、塗膜に同一のインキ組成物を滴下して拭き取り、乾燥塗膜の同一のインキ組成物への再溶解性を評価した。
5:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が1%未満であるもの。
4:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が1%以上5%未満であるもの。
3:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が5%以上10%未満であるもの。
2:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が10%以上30%未満であるもの。
1:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が30%以上であるもの。
上記で産業上利用できるレベルの評価は3、4および5である。
【0052】
(版洗浄性)
実施例および比較例で得られたインキをバーコーターにより片面コロナ放電処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製 E5100 厚さ12μm)へ展色して塗膜を形成し、乾燥塗膜に水を滴下して拭き取り、乾燥塗膜の水への溶解性を評価することで、版洗浄性の評価を行った。
5:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が1%未満であるもの。
4:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が1%以上5%未満であるもの。
3:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が5%以上10%未満であるもの。
2:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が10%以上30%未満であるもの。
1:拭き取り後、基材に対するインキ塗膜付着面積比率が30%以上であるもの。
【0053】
本発明により、再溶解性、版洗浄性に優れ、耐水摩擦性、耐折り曲げ性が良好であり、印刷濃度が良好であることを確認した。