(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】クレーン用ブーム
(51)【国際特許分類】
B66C 23/693 20060101AFI20240416BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B66C23/693 Z
B66C23/88 R
(21)【出願番号】P 2020071523
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】福岡 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 健司
(72)【発明者】
【氏名】小林 和宏
(72)【発明者】
【氏名】戸城 雅仁
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227236(JP,A)
【文献】実開昭57-077287(JP,U)
【文献】特開平09-132381(JP,A)
【文献】特開昭50-006052(JP,A)
【文献】特開2015-063402(JP,A)
【文献】実開昭60-137784(JP,U)
【文献】実公昭48-028550(JP,Y1)
【文献】特開2006-282287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/693
B66C 23/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を有する箱状のブーム本体と、
上記上面と対向し且つ上記ブーム本体の幅方向に掛け渡すように配置され
ており、棒状部材であるウインチワイヤガイドと、
上記ブーム本体に設けられ、上記ウインチワイヤガイドの少なくとも一部を自由支持
し、且つクレーン用ブームを吊るためのフック係合孔を有しており、上記ブーム本体の幅方向に沿って配置された一対の支持板からなる支持部とを備え
、
当該一対の支持板のうち少なくとも一方は、上記ウインチワイヤガイドが貫通される貫通孔を有し、
上記フック係合孔は、上記貫通孔を挟んで上記上面と反対側に設けられているクレーン用ブーム。
【請求項2】
上記一対の支持板が上記貫通孔を有する請求項
1に記載のクレーン用ブーム。
【請求項3】
上記一対の支持板の一方に上記ウインチワイヤガイドの一端部が溶接されており、
上記ウインチワイヤガイドの他端部が上記一対の支持板の他方に設けられた貫通孔を貫通している請求項
1に記載のクレーン用ブーム。
【請求項4】
上記フック係合孔及び上記貫通孔は連通している請求項
1から3のいずれかに記載のクレーン用ブーム。
【請求項5】
上記支持部は、当該クレーン用ブームを吊るためのフック係合孔を有する請求項1に記載のクレーン用ブーム。
【請求項6】
上記ブーム本体の上面に、上記ウインチワイヤガイドの中間部を支持する座部が設けられている請求項1から
5のいずれかに記載のクレーン用ブーム。
【請求項7】
上記ウインチワイヤガイドは、上記座部に溶接されている請求項
6に記載のクレーン用ブーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウインチワイヤを支持するワイヤガイドを有するクレーン用ブームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、クレーンは、ウインチワイヤ(以下、単に「ワイヤ」と称される。)を巻き取りあるいは繰り出すウインチを備えている。ウインチドラムから延び出たワイヤは、ブームの上面に沿って延び、ブームの先端部に掛け回される。ブームの先端部から垂下したワイヤの先端に吊下フックが取り付けられる。
【0003】
ワイヤの巻き取りや繰り出しの際にワイヤがブームと摺動し、ブームが摩耗するおそれがある。ワイヤとブームとの接触を防止するために、ワイヤを支持するワイヤガイドがブーム本体に設けられることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、ブームは以下のような手順で製造される。鋼板が溶接などによって箱状に成形され、ブーム本体が組み立てられる。ブーム本体にワイヤガイドなどの部材が溶接される。このとき、溶接の熱で箱状のブーム本体が歪み、ブーム本体の外面に凹凸が生じた状態となる。そのため、溶接の後、ブーム本体の歪みを除去する工程(歪取工程)が実行される。
【0006】
歪取工程では、ブーム本体の内部から外部へ力が付与され、上記外面の凹みが除去される。また、ブーム本体の外側から力が付与され、上記外面の凸部が除去される。このとき、ブーム本体に溶接されたワイヤガイドに軸方向の圧縮力が加わり、座屈してしまうおそれがある。
【0007】
もっとも、歪取工程におけるワイヤガイドの座屈を防止するため、歪取工程の後にワイヤガイドがブーム本体に溶接されればよい。この場合、ワイヤガイド以外の部材がブーム本体に溶接された後に歪取工程が実行され、さらに、その後にワイヤガイドのみがブーム本体に溶接されることになる。しかし、ワイヤガイドの溶接とその他の部材の溶接とが歪取工程を挟んで別工程となった場合、ワイヤガイドの溶接ミス等が生じやすくなる。また、溶接工程、歪取工程、溶接工程と工程を行き来することによって工数が増えてしまう。そのため、溶接工程は一回にまとめて実行したいとの製造現場の要請がある。
【0008】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、ワイヤガイドの座屈を防止することができるクレーン用ブームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係るクレーン用ブームは、上面を有する箱状のブーム本体と、上記上面と対向し且つ上記ブーム本体の幅方向に掛け渡すように配置されたウインチワイヤガイドと、上記ブーム本体に設けられ、上記ウインチワイヤガイドの少なくとも一部を自由支持する支持部とを備える。
【0010】
本構成では、ウインチワイヤガイドの少なくとも一部が、支持部によって自由支持されている。ここで、ウインチワイヤガイドが自由支持されているとは、ウインチワイヤガイドに支点反力のみが作用し、軸力や曲げモーメントが作用しない支持状態をいう。したがって、自由支持とは、ウインチワイヤガイドが単に支持部に載置された状態や、ウインチワイヤガイドが支持部に対して軸方向及びこれに直交する方向に移動可能な状態を含む。そのため、ブーム本体の変位にウインチワイヤガイドが追従し、ウインチワイヤガイドに圧縮力及び引張力が作用しない。
【0011】
(2) 上記ウインチワイヤガイドは棒状部材である。上記支持部は、上記ブーム本体の幅方向に沿って配置された一対の支持板からなる。当該一対の支持板のうち少なくとも一方は、上記ウインチワイヤガイドが貫通される貫通孔を有する。
【0012】
本構成では、ウインチワイヤガイドの幅方向の両端部の少なくとも一方が、支持板に形成された貫通孔に貫通されている。そのため、ブーム本体の変位に伴って支持板も変位するが、ウインチワイヤガイドが相対的に支持板に対してスライドする。したがって、ウインチワイヤガイドに圧縮力は作用しない。
【0013】
(3) 上記一対の支持板が上記貫通孔を有していてもよい。
【0014】
本構成では、ブーム本体及び支持板が変位したとしても、ウインチワイヤガイドが一対の支持板に対して相対的にスライドする。したがって、ウインチワイヤガイドに圧縮力は作用しない。
【0015】
(4) 上記一対の支持板の一方に上記ウインチワイヤガイドの一端部が溶接され、上記ウインチワイヤガイドの他端部が上記一対の支持板の他方に設けられた貫通孔を貫通していてもよい。
【0016】
本構成では、ブーム本体及び支持板が変位したとしても、ウインチワイヤガイドの他端部が他方の支持板に対して相対的にスライドする。したがって、ウインチワイヤガイドに圧縮力は作用しない。加えて、ウインチワイヤガイドの一端側が支持板に溶接されているため、ウインチワイヤガイドの姿勢が安定する。そのため、ウインチワイヤガイドを支持するための部材を支持板以外に設ける必要性を低くすることができる。
【0017】
(5) 上記支持板は、当該クレーン用ブームを吊るためのフック係合孔を有している。上記フック係合孔は、上記貫通孔を挟んで上記ブーム本体の上面と反対側に設けられる。
【0018】
本構成では、支持板が当該クレーン用ブームを吊るための部材として機能する。そのため、当該クレーン用ブームを吊るための専用部品が不要となり、ブーム本体に溶接される部材の数を減らすことができる。
【0019】
他方、支持板が当該クレーン用ブームを吊るための部材として機能する場合、当該支持板に大きな外力が作用する。しかし、前述のように、支持板が変位したとしても、ウインチワイヤガイドが一対の支持板に対して相対的にスライドするから、ウインチワイヤガイドに圧縮力は作用しない。
【0020】
また、フック係合孔が貫通孔を挟んでブーム本体の上面と反対側に設けられているため、支持板の外形(ブーム本体の長手方向の寸法)が小さくなり、当該支持板のコンパクト設計が可能となる。
【0021】
(6) 上記フック係合孔及び上記貫通孔は連通していてもよい。
【0022】
本構成では、フック係合孔と貫通孔とが接近し、その一部同士が重なり合うので、支持板を小型化することができる。
【0023】
また、上記フック係合孔及び貫通孔がたとえばレーザー加工により形成される場合、両者が短時間で形成され、加工効率が向上する。
【0024】
(7) 上記支持部は、当該クレーン用ブームを吊るためのフック係合孔を有している。
【0025】
本構成では、支持部が当該クレーン用ブームを吊るための部材として機能する。そのため、当該クレーン用ブームを吊るための専用部品が不要となり、ブーム本体に溶接される部材の数を減らすことができる。
【0026】
他方、支持部が当該クレーン用ブームを吊るための部材として機能する場合、当該支持部に大きな外力が作用する。しかし、前述のように、ブーム本体の変位にウインチワイヤガイドが追従するため、ウインチワイヤガイドに圧縮力及び引張力が作用しない。
【0027】
(8) 上記ブーム本体の上面に、上記ウインチワイヤガイドの中間部を支持する座部が設けられている。
【0028】
本構成では、ウインチワイヤガイドは、支持部に加えて、座部に支持される。そのため、ウインチワイヤガイドの姿勢が安定する。
【0029】
(9) 上記ウインチワイヤガイドは、上記座部に溶接されている。
【0030】
本構成では、ウインチワイヤガイドと座部とが一体化されている。そのため、ウインチワイヤガイドの姿勢がより一層安定する。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、ウインチワイヤガイドの座屈を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図3】
図3は、
図2における一対の支持板63、64周辺の拡大図である。
【
図4】
図4は、ベースブーム54の支持板64周辺の左側面図である。
【
図6】
図6は、変形例における一対の支持板63、64周辺の斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例における支持板64周辺の左側面図である。
【
図8】
図8は、変形例における支持板64周辺の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは、言うまでもない。
【0034】
図1が示すように、クレーン10は、走行体11と、ブーム装置12と、キャビン13と、ウインチ39とを備える。
【0035】
以下では、クレーン10の進行方向に沿う方向を前後方向として、クレーン10の幅方向を左右方向として説明する。
【0036】
走行体11は、車体20と、車輪21とを備える。車体20は、不図示の車軸を回転可能に支持している。車軸は、車体20の前部及び後部に位置している。車輪21が、車軸の両端に保持されている。車軸及び車輪21は、エンジン(不図示)によって回転駆動される。これにより、走行体11は走行する。
【0037】
ブーム装置12は、旋回フレーム31と、旋回モータ(不図示)と、ブーム50と、伸縮シリンダ(不図示)と、起伏シリンダ36とを備える。旋回フレーム31は、車体20によって上下方向に延びた旋回軸周りに旋回可能に支持されている。旋回フレーム31は、旋回モータによって旋回される。ブーム50は、旋回フレーム31に支持されている。ブーム50は、旋回フレーム31と一体に旋回可能である。
【0038】
図1及び
図2が示すように、ブーム50は、ブーム本体51と、ウインチワイヤガイド60と、一対の支持棒61、62と、一対の支持板63、64と、座部65とを備えている。ブーム50は、特許請求の範囲に記載されたクレーン用ブームの一例である。
【0039】
図1が示すように、ブーム本体51は、テレスコピック構造を構成している。ブーム本体51は、トップブーム52、中間ブーム53、及びベースブーム54を備えている。つまり、ブーム本体51は、3段構成である。これらは、いわゆる閉断面を有する箱状部材からなり、いわゆる入れ子状に組み立てられている。ベースブーム54に対して中間ブーム53及びトップブーム52が、ブーム本体51の長手方向101にスライドするように組み立てられている。ブーム本体51は、内部に配置された伸縮シリンダによって、当該スライドが実行されて伸縮される。なお、
図1は、ブーム本体51が収縮した状態が示されている。また、ブーム本体51が3段構成である必要はなく、ブーム本体51が2つ以上の中間ブーム53を備えていてもよい。
【0040】
また、ブーム本体51は、起伏シリンダ36の伸縮によって、左右方向に延びる軸30周りに、倒伏位置と起立位置とに起伏する。
図1には、倒伏位置のブーム本体51が実線で示されており、起立位置のブーム本体51が破線で示されている。
【0041】
なお、ウインチワイヤガイド60、一対の支持棒61、62、及び一対の支持板63、64については、後に詳細に説明される。
【0042】
キャビン13は、旋回フレーム31に搭載されている。キャビン13は、操作者が着座するシートと、走行体11の運転に用いる運転装置と、ブーム装置12の操縦に用いる操縦装置とを有する。すなわち、クレーン10は、いわゆるラフテレーンクレーンであって、走行体11の運転及びブーム装置12の操縦が1つのキャビン13で行われるクレーンである。但し、クレーン10は、運転装置を有するキャビンと、操縦装置を有するキャビンとの2つのキャビンを備えたオールテレーンクレーンであってもよい。運転装置は、車軸を操舵するステアリングや、アクセルペダルや、ブレーキペダルや、シフトレバー等を有する。操作者は、運転装置を用いて、走行体11を走行させる。操縦装置は、旋回モータや、伸縮シリンダや、起伏シリンダ36や、ウインチモータ(不図示)等を駆動させるための複数のレバー等を有する。操作者は、操縦装置を用いて、ブーム装置12を操作する。
【0043】
ウインチ39は、ワイヤロープ42が巻回された回転自在のドラム41と、ワイヤロープ42に繋がれた吊下フック40とを有する。
【0044】
ドラム41は、旋回フレーム31に回転可能に支持されている。なお、ドラム41は、旋回フレーム31以外、例えばブーム本体51に支持されていてもよい。ドラム41は、ウインチモータによって回転される。回転するドラム41は、ワイヤロープ42を繰り出し、或いはワイヤロープ42を巻き取る。
【0045】
ワイヤロープ42は、ドラム41からブーム50に沿って架け渡されている。詳細には、ワイヤロープ42は、ブーム50の基端部に設けられたワイヤシーブ44に巻き掛けられ、ブーム50の上面の上方を、ブーム50の長手方向101に沿って、ブーム50の基端部から先端部へ架け渡されている。ワイヤロープ42は、ウインチワイヤガイド60(
図2参照)によって支持される。ワイヤロープ42は、ブーム50の先端部に設けられたワイヤシーブ43に巻き掛けられ、垂下している。
【0046】
吊下フック40は、ワイヤロープ42の先端に繋がれている。吊下フック40は、ブーム50の先端部からワイヤロープ42によって吊下される。吊下フック40は、ドラム41が回転することによって昇降する。
【0047】
以下、一対の支持棒61、62、一対の支持板63、64、ウインチワイヤガイド60、及び座部65の構成が説明される。なお、以下において、ブーム本体51が倒伏位置であって前後方向に延びた状態(
図1が示す状態)であるとして、つまりブーム本体51の長手方向101が前後方向と一致し、上下方向が鉛直方向と一致する状態であるとして、各部材の構成が説明される。
【0048】
図2が示すように、ベースブーム54の上端部における右端部及び左端部に、一対の支持棒61、62と、一対の支持板63、64とが溶接されている。一対の支持板63、64は、特許請求の範囲に記載された支持部の一例である。なお、
図2において、ワイヤロープ42は破線で記されている。
【0049】
支持棒61及び支持板63は、ベースブーム54の上端部における右端部に設けられている。支持棒62及び支持板64は、ベースブーム54の上端部における左端部に設けられている。一対の支持棒61、62は、左右方向において対向している。一対の支持板63、64は、左右方向において対向している。つまり、一対の支持棒61、62と一対の支持板63、64とは、それぞれ左右方向に沿って配置されている。
【0050】
二組の一対の支持棒61、62と、一組の一対の支持板63、64とが、長手方向101に間隔を空けてベースブーム54に溶接されている。一対の支持板63、64は、一対の支持棒61、62よりベースブーム54の基端側に溶接されている。
【0051】
なお、一対の支持板63、64は二組以上設けられていてもよいし、一対の支持棒61、62は一組または三組以上設けられていてもよい。また、本実施形態において、一対の支持棒61、62及び一対の支持板63、64は、ベースブーム54にのみ設けられているが、トップブーム52や中間ブーム53に設けられていてもよい。また、本実施形態において、ブーム50は、一対の支持棒61、62と一対の支持板63、64とを備えているが、ブーム50は、一対の支持板63、64のみ備えていてもよい。例えば、上記の二組の一対の支持棒61、62の代わりに、二組の一対の支持板63、64が設けられていてもよい。この場合、ブーム50は三組の一対の支持板63、64を備える一方で、一対の支持棒61、62を備えていない。
【0052】
一対の支持棒61、62は、棒状の部材である。一対の支持棒61、62は、上下方向へ延びている。一対の支持棒61、62の下端部がベースブーム54に溶接されている。一対の支持棒61、62の上端は、ベースブーム54の上面541より上方に位置している。
【0053】
一対の支持棒61、62の間に、ウインチワイヤガイド60が設けられている。ウインチワイヤガイド60は、左右方向に真っ直ぐ延びた棒状の部材である。ウインチワイヤガイド60は、ベースブーム54の上面541より上方に位置しており、上面541と上下方向に対向している。ウインチワイヤガイド60の右端は、支持棒61に溶接されており、ウインチワイヤガイド60の左端は、支持棒62に溶接されている。これにより、ウインチワイヤガイド60は、左右方向にベースブーム54を架け渡すように配置されている。
【0054】
図3が示すように、一対の支持板63、64は、溶接板66と、外板67と、支持台68とが一体化された部材である。溶接板66と、外板67と、支持台68とは、鋳造などの一体成型によって一体化されていてもよいし、溶接などによって一体化されていてもよい。
【0055】
なお、支持板63と支持板64は、同構成である。そのため、以下の説明では、支持板64の構成が説明され、支持板63については必要に応じて言及される。
【0056】
溶接板66は、ベースブーム54の上端部における左端部の湾曲面に合わせて湾曲された板である。溶接板66の外縁部は、全周に亘ってベースブーム54に溶接されている。これにより、溶接板66は、棒状の部材の端部のみがベースブーム54に溶接された支持棒61、62よりも強固にベースブーム54に溶接されている。
【0057】
外板67は、前後方向及び上下方向に拡がる板である。外板67の下端部が溶接板66の下部の上面(ベースブーム54と対面する側と反対側の面)と繋がっている。つまり、外板67は、溶接板66の下部から上方へ延びた板である。外板67の上端は、ベースブーム54の上面541より上方に位置している。
【0058】
図3及び
図4が示すように、貫通孔71、72が、外板67に形成されている。貫通孔71は、特許請求の範囲に記載された貫通孔の一例である。貫通孔72は、特許請求の範囲に記載されたフック係合孔の一例である。
【0059】
貫通孔71は、外板67におけるベースブーム54の上面541より上方に形成されている。貫通孔71は、ウインチワイヤガイド60が貫通されるために設けられた孔である。
【0060】
貫通孔72は、外板67における貫通孔71の上方に貫通孔71と並んで形成されている。つまり、貫通孔72は、貫通孔71を挟んで上面541と反対側に設けられている。
【0061】
貫通孔72は、ブーム50を吊るための孔である。詳述すると、ブーム50が旋回フレーム31に取り付けられるときや取り外されるときなどに、ブーム50は持ち上げられる必要がある。このとき、クレーン10とは別のクレーンの吊下フックが貫通孔72に掛けられて、ブーム50は当該クレーンによって持ち上げられる。
【0062】
貫通孔72の直径は、ブーム50を持ち上げる際に吊下フックが掛けられることが可能な大きさであればよく、特に限定されない。本実施形態において、貫通孔72の直径は、貫通孔71の直径より大きい。
【0063】
貫通孔72は、貫通孔71と連通している。
【0064】
図3及び
図5が示すように、支持台68は、外板67よりも左右方向の内側において、溶接板66と外板67の間に設けられている。支持台68は、溶接板66と外板67の双方と繋がっている。支持台68の上面681は、ベースブーム54の上面541より上方に位置する。また、支持台68の上面681は、外板67の貫通孔71の下端と略同じ高さである。支持台68の上面681は、ウインチワイヤガイド60を支持可能である。本実施形態では、
図5が示すように、上面681が貫通孔71の下端より僅かに下方に位置しているため、ウインチワイヤガイド60と上面681との間に隙間が生じているが、このような構成に限らない。例えば、上面681が貫通孔71の下端と同じ高さに位置しており、上面681が下方からウインチワイヤガイド60に当接してウインチワイヤガイド60を支持していてもよい。
【0065】
ウインチワイヤガイド60は、一対の支持棒61、62に溶接されているものと同構成であり、棒状の部材である。但し、ウインチワイヤガイド60は、一対の支持板63、64に溶接されるのではなく、一対の支持板63、64の外板67に形成された貫通孔71に貫通されている。
【0066】
ウインチワイヤガイド60は、一対の支持板63、64の間に設けられている。ウインチワイヤガイド60は、ベースブーム54の上面541より上方に位置しており、上面541と上下方向に対向している。ウインチワイヤガイド60の右端部は、支持板63の外板67に形成された貫通孔71に貫通されており、ウインチワイヤガイド60の左端部は、支持板64の外板67に形成された貫通孔71に貫通されている。これにより、ウインチワイヤガイド60は、左右方向にベースブーム54を架け渡すように配置されている。
【0067】
ウインチワイヤガイド60は、貫通孔71に貫通されることにより、その左右方向の両端部を一対の支持板63、64の外板67によって自由支持されている。ここで、ウインチワイヤガイド60が自由支持されているとは、ウインチワイヤガイド60に支点反力のみが作用し、軸力や曲げモーメントが作用しない支持状態をいう。したがって、自由支持とは、ウインチワイヤガイド60が単に支持板63、64に載置された状態や、ウインチワイヤガイド60が支持板63、64に対して軸方向及びこれに直交する方向に移動可能な状態を含む。本実施形態では、ウインチワイヤガイド60が貫通孔71に貫通されており、貫通孔71の内径がウインチワイヤガイド60の直径より大きい。これにより、ウインチワイヤガイド60が支持板63、64に対して軸方向(左右方向)及びこれに直交する方向(径方向)に移動可能な状態である。
【0068】
図3及び
図5が示すように、座部65は、ベースブーム54の上面541の左右方向の中間部に設けられている。座部65は、上面541に溶接されている。なお、座部65は、嵌合などの他の手段によって上面541に接続されていてもよい。
【0069】
座部65は、一対の支持棒61、62(
図2参照)の間に設けられており、下方から支持棒61、62に溶接されたウインチワイヤガイド60を支持可能である。
【0070】
また、座部65は、一対の支持板63、64の間に設けられている。一対の支持板63、64の間に設けられ座部65の上面は、外板67の貫通孔71の下端と同じ高さである。これにより、座部65は、下方から貫通孔71に貫通されたウインチワイヤガイド60を支持可能である。つまり、ウインチワイヤガイド60は、左右方向の両端部を一対の支持板63、64に支持され、左右方向の中間部を座部65によって支持されている。なお、座部65の上面の位置は、外板67の貫通孔71の下端と同じ高さでなくてもよく、例えば貫通孔71の下端より僅かに高くてもよいし僅かに低くてもよい。
【0071】
なお、図示されていないが、ウインチワイヤガイド60が貫通孔71から抜けることを防止するためのストッパが設けられている。ストッパは、例えば、ウインチワイヤガイド60に設けられたフランジや、ウインチワイヤガイド60の一部が押しつぶされることなどによって生じた変形部分である。フランジや変形部分では、ウインチワイヤガイド60の直径が大きくなるため、フランジや変形部分は、ストッパとして機能する。なお、後述される変形例では、ウインチワイヤガイド60の右端部が支持板63に溶接された構成や、ウインチワイヤガイド60が座部65に溶接された構成が説明されるが、これらの構成のように、ウインチワイヤガイド60が他の部材に溶接されている場合、上記のストッパは不要である。
【0072】
[実施形態の作用効果]
【0073】
本実施形態では、ウインチワイヤガイド60の少なくとも一部が、一対の支持板63、64によって自由支持されている。そのため、ブーム本体51の変位にウインチワイヤガイド60が追従し、ウインチワイヤガイド60に圧縮力及び引張力が作用しない。
【0074】
また、本実施形態では、ウインチワイヤガイド60の左右方向の両端部の双方が、支持板63、64に形成された貫通孔71に貫通されている。そのため、ブーム本体51の変位に伴って支持板63、64も変位するが、ウインチワイヤガイド60が相対的に支持板63、64に対してスライドする。したがって、ウインチワイヤガイド60に圧縮力は作用しない。
【0075】
また、本実施形態では、一対の支持板63、64が貫通孔72を有していることにより、支持板63、64がブーム50を吊るための部材として機能する。そのため、ブーム50を吊るための専用部品が不要となり、ブーム本体51に溶接される部材の数を減らすことができる。
【0076】
他方、支持板63、64がブーム50を吊るための部材として機能する場合、支持板63、64に大きな外力が作用する。しかし、前述のように、支持板63、64が変位したとしても、ウインチワイヤガイド60が一対の支持板63、64に対して相対的にスライドするから、ウインチワイヤガイド60に圧縮力は作用しない。
【0077】
また、貫通孔72が貫通孔71を挟んでブーム本体51の上面541と反対側に設けられているため、支持板63、64の外形(ブーム本体51の長手方向101の寸法)が小さくなり、支持板63、64のコンパクト設計が可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、貫通孔71と貫通孔72が連通されている。これにより、貫通孔71と貫通孔72とが接近し、その一部同士が重なり合うので、支持板63、64を小型化することができる。
【0079】
また、貫通孔71と貫通孔72がたとえばレーザー加工により形成される場合、両者が短時間で形成され、加工効率が向上する。
【0080】
また、本実施形態では、ウインチワイヤガイド60は、支持板63、64に加えて、座部65に支持される。そのため、ウインチワイヤガイド60の姿勢が安定する。
【0081】
[変形例]
【0082】
上記実施形態では、支持部としての一対の支持板63、64が、ウインチワイヤガイド60の左右方向の両端部を支持していた。しかし、支持部は、一対の支持板63、64に限らない。つまり、支持部がウインチワイヤガイド60を支持するのは、左右方向の両端部に限らない。また、支持部は
図3に示された一対の支持板63、64のような形状に限らない。例えば、支持部は、ベースブーム54の上面541の右端から左端に亘って真っ直ぐ延びたリブであり、当該リブの上面がウインチワイヤガイド60を支持してもよい。この場合、支持部としてのリブが、ウインチワイヤガイド60の左右方向の全部を支持している。つまり、支持部は、ウインチワイヤガイド60の少なくとも一部を支持していればよい。
【0083】
なお、支持部がリブである場合、当該リブは、その上面に、支持しているウインチワイヤガイド60の落下を防止するためにウインチワイヤガイド60が貫通されるリングを有していてもよい。また、当該リブは、その上面から突出しており且つ貫通孔72を有する突部を有していてもよい。
【0084】
上記実施形態では、一対の支持板63、64の双方が貫通孔71を有していた。しかし、一対の支持板63、64の一方のみが貫通孔71を有していてもよい。例えば、
図6が示すように、一対の支持板63、64のうち、支持板64のみが貫通孔71を有していてもよい。そして、ウインチワイヤガイド60の右端部(特許請求の範囲に記載のウインチワイヤガイドの一端部の一例)が支持板63に溶接されており、ウインチワイヤガイド60の左端部(特許請求の範囲に記載のウインチワイヤガイドの他端部の一例)が支持板64の貫通孔71を貫通していてもよい。なお、この場合、支持板63の支持台68の上面681とウインチワイヤガイド60とが溶接されていてもよい。
【0085】
図6が示す構成では、ブーム本体51及び支持板63、64が変位したとしても、ウインチワイヤガイド60の左端部が支持板64に対して相対的にスライドする。したがって、ウインチワイヤガイド60に圧縮力は作用しない。加えて、ウインチワイヤガイド60の右端側が支持板に溶接されているため、ウインチワイヤガイド60の姿勢が安定する。そのため、ウインチワイヤガイド60を支持するための部材を支持板63、64以外に設ける必要性を低くすることができる。
【0086】
上記実施形態では、座部65は、下方からウインチワイヤガイド60に当接することによってウインチワイヤガイド60を支持していた。しかし、座部65は、ウインチワイヤガイド60に溶接されていてもよい。
【0087】
ウインチワイヤガイド60と座部65とが一体化された構成では、ウインチワイヤガイド60と座部65とが一体化されていない構成よりも、ウインチワイヤガイド60の姿勢を安定させることができる。なお、ウインチワイヤガイド60と座部65とが溶接された構成では、座部65とベースブーム54の上面541との溶接の有無は任意であるが、座部65と上面541も溶接されていることが望ましい。つまり、座部65は、ウインチワイヤガイド60及び上面541の双方と溶接されていることが望ましい。
【0088】
上記実施形態では、座部65は、ベースブーム54の左右方向の中間部に1つ設けられていたが、これに限らない。例えば、座部65は、ベースブーム54の左右方向の右部や左部に設けられていてもよい。また、座部65は、左右方向に間隔を空けて複数設けられていてもよい。
【0089】
座部65の形状や大きさは、上記実施形態の各図に示された形状や大きさに限らない。例えば、座部65は、円柱形状であってもよいし、上記実施形態の各図に示されたよりも大きく構成されていてもよい。
【0090】
上記実施形態では、貫通孔71と貫通孔72は連通していた。しかし、貫通孔71と貫通孔72は、
図7が示すように、連通していなくてもよい。
【0091】
上記実施形態では、貫通孔71と貫通孔72は、上下方向に並んでいたが、貫通孔71と貫通孔72の配置はこれに限らない。例えば、
図8が示すように、貫通孔71と貫通孔72は、前後方向(長手方向101)に並んでいてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10・・・クレーン
11・・・走行体
12・・・ブーム装置
13・・・キャビン
20・・・車体
21・・・車輪
30・・・軸
31・・・旋回フレーム
36・・・起伏シリンダ
39・・・ウインチ
40・・・吊下フック
41・・・ドラム
42・・・ワイヤロープ
43・・・ワイヤシーブ
44・・・ワイヤシーブ
50・・・ブーム(クレーン用ブーム)
51・・・ブーム本体
52・・・トップブーム
53・・・中間ブーム
54・・・ベースブーム
60・・・ウインチワイヤガイド
61・・・支持棒
62・・・支持棒
63・・・支持板(支持部)
64・・・支持板(支持部)
65・・・座部
66・・・溶接板
67・・・外板
68・・・支持台
71・・・貫通孔
72・・・貫通孔(フック係合孔)
101・・・長手方向
541・・・上面
681・・・上面