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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/14 20060101AFI20240416BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240416BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20240416BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B65H7/14
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J11/02
B65H5/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020073302
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169358
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】醍醐 宏典
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-196752(JP,A)
【文献】特開2013-228568(JP,A)
【文献】特開平02-081846(JP,A)
【文献】特開2007-057892(JP,A)
【文献】特開2008-207955(JP,A)
【文献】特開平08-123213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0108357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/14
B65H 5/02
B41J 11/02
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材に向けて検知波を発信し、前記検知波が反射した反射波を受信する反射型センサーと、
前記反射波が所定の第1の閾値より小さい場合、前記搬送部材に前記用紙が搬送されていると判定し、前記反射波が前記第1の閾値より大きい第2の閾値以上である場合、前記搬送部材に前記用紙が搬送されていないと判定し、前記反射波が前記第1の閾値以上であり、かつ前記第2の閾値より小さい場合、前記搬送部材に不具合が生じていると判定する制御部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記反射型センサーは、前記反射波を正反射成分と拡散反射成分とに偏向し、
前記制御部は、前記第1の閾値及び前記第2の閾値と比較する前記反射波に対応する値として、前記正反射成分と前記拡散反射成分との差分又は比率に対応していて前記拡散反射成分が減少するほど上昇する値を適用することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送部材に搬送される前記用紙にインクを吐出する記録ヘッドを更に備え、
前記搬送部材は、前記記録ヘッドの下方に設けられた回転可能な搬送ベルトで構成され、
前記反射型センサーは、前記搬送ベルトの回転方向において、前記記録ヘッドに対して上流側又は下流側に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
表示部を更に備え、
前記制御部は、前記搬送部材に不具合が生じていると判定した場合、前記搬送部材のメンテナンスを促す通知を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送部材を清掃する清掃部を更に備え、
前記制御部は、前記搬送部材に不具合が生じていると判定した場合、前記清掃部によって前記搬送部材を自動的に清掃することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を搬送する搬送ベルト等の搬送部材を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置は、用紙を搬送する搬送ベルト等の搬送部材を備え、また、搬送部材上の用紙を検知する用紙センサーを備える。
【0003】
例えば、特許文献1において、画像形成装置は、液滴を吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドに対向して被記録媒体を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルト上の被記録媒体の有無を検知する発光手段及び受光手段で構成される光学センサーとを備える。この画像形成装置は、光学センサーで搬送ベルト表面を読取ったときの光学センサーの出力が予め定めた規定値以上になったときには、光学センサーの出力の増幅度合いを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-019084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置は、搬送部材上の用紙を検知するために、例えば、発光手段及び受光手段からなる反射型センサーを適用して、搬送部材上の用紙に向けて照射光を発光し、照射光が反射した反射光に基づいて搬送部材上の用紙の有無を判定する。用紙で反射した反射光と、搬送部材で反射した反射光とを異ならせるため、搬送部材は、光沢のある材料で形成される。しかしながら、搬送部材が経時的に汚染又は損傷(劣化)することで光沢度が低下すると、用紙を搬送していない搬送部材を、用紙と誤検知することがあり、更にジャム等の不具合を発生させることがある。
【0006】
従来、搬送部材の汚染又は損傷等の不具合が進行してジャム等の不具合が生じてから、搬送部材の清掃や交換を促す通知をしていた。そのため、この通知を受け取った後、ユーザーによるジャム処理やサービスマンによる清掃や交換が完了するまで、画像形成装置が使用不能になっていた。ジャム等の不具合を予測するために搬送部材の汚染又は損傷等の不具合を検知するセンサーを新たに設けると、この新たなセンサーのためのスペースが余分に必要になり、更にコストが上昇してしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記事情を考慮し、簡易な構成で、ジャム等の不具合が生じる前に搬送部材の不具合を事前に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成装置は、用紙を搬送する搬送部材と、前記搬送部材に向けて検知波を発信し、前記検知波が反射した反射波を受信する反射型センサーと、前記反射波が所定の第1の閾値より小さい場合、前記搬送部材に前記用紙が搬送されていると判定し、前記反射波が前記第1の閾値より大きい第2の閾値以上である場合、前記搬送部材に前記用紙が搬送されていないと判定し、前記反射波が前記第1の閾値以上であり、かつ前記第2の閾値より小さい場合、前記搬送部材に不具合が生じていると判定する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で、ジャム等の不具合が生じる前に搬送部材の不具合を事前に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの概要を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプリンターの電気的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、搬送判定動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、照射光を反射する搬送ベルトを示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、照射光を反射する搬送ベルト上の用紙を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、搬送ベルト又は搬送ベルト上の用紙を検知した反射型センサーの出力電圧値の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、インクジェット式の画像形成装置としてのプリンター1の全体の構成について図1を参照しながら説明する。以下、説明の便宜上、図1における紙面手前側をプリンター1の前側とする。各図に適宜付される矢印L、R、U、Loは、それぞれプリンター1の左側、右側、上側、下側を示す。
【0012】
図1に示すように、プリンター1は、箱型形状のプリンター本体2を備える。プリンター本体2内の下部には、用紙を収納する給紙カセット3が引出可能に収容される。
【0013】
プリンター本体2内の右部には、用紙の搬送経路4が設けられ、プリンター本体2内の中央部には、昇降可能な用紙搬送ユニット5が給紙カセット3の上方に設けられる。搬送経路4は、給紙カセット3から用紙搬送ユニット5まで設けられ、搬送経路4の用紙の搬送方向に沿って、上流側から順に、給紙ローラー、搬送ローラー及びレジストローラーが設けられる。
【0014】
用紙搬送ユニット5は、搬送フレーム6と、無端状の搬送ベルト7(搬送部材)とを備える。搬送フレーム6には、駆動ローラー、従動ローラー及びテンションローラーが回転可能に設けられ、搬送ベルト7は、搬送フレーム6に対して交換可能に取り付けられ、駆動ローラー、従動ローラー及びテンションローラーに巻き掛けられる。搬送ベルト7は、例えば、ポリイミド等の樹脂材料で、表面粗さ(凹凸)を小さくすると共に表面の光沢度を高くして、正反射が多くなるように形成される。搬送ベルト7は、駆動ローラーの回転に応じて、例えば、正面視反時計回りに回転し、搬送ベルト7上の用紙を右側から左側へと搬送するように、下記の制御部20によって制御される。
【0015】
また、用紙搬送ユニット5は、搬送フレーム6及び搬送ベルト7を上下方向に昇降可能な昇降機構(図示せず)を備え、搬送フレーム6及び搬送ベルト7を、印字動作時に下記の記録ヘッド13に近接した印字位置に移動させ、非印字動作時に記録ヘッド13から離間した退避位置に移動させる。また、用紙搬送ユニット5は、吸気部5aを搬送ベルト7の内側に備える。搬送ベルト7には多数の吸気孔が設けられ、吸気部5aは、搬送ベルト7の上方から内側へ吸気孔を介して吸気する。
【0016】
プリンター本体2内の左部には、印字後の用紙を排出するために、印字位置の用紙搬送ユニット5の左側に、用紙搬送部8、乾燥装置9及び排出ローラー10が設けられる。プリンター本体2の左側面には、排出口11が排出ローラー10の近傍に形成され、排出口11の下方には、排紙トレイ12が左側に突出して設けられる。
【0017】
また、プリンター本体2内には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクにそれぞれ対応して、4つの記録ヘッド13(13K、13C、13M、13Y)と、4つのインクコンテナ14(14K、14C、14M、14Y)とが設けられる。各記録ヘッド13は、ポンプ13a及びサブインクタンク13bを介して各インクコンテナ14に接続される。なお、図1では、ブラックのインクに対応するポンプ13a及びサブインクタンク13bを図示していて、シアン、マゼンタ、イエローのインクに対応するポンプ13a及びサブインクタンク13bを省略している。
【0018】
記録ヘッド13K、13C、13M、13Yは、プリンター本体2内の中央部で用紙搬送ユニット5の上方に並設され、例えば、用紙の搬送方向における上流側(右側)から順に配置される。記録ヘッド13K、13C、13M、13Yは、印字動作時に用紙搬送ユニット5の搬送ベルト7の上面と対向して、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを搬送ベルト7上の用紙へ吐出する。
【0019】
インクコンテナ14K、14C、14M、14Yは、プリンター本体2内の左下部に並設され、例えば、下側から順に配置される。インクコンテナ14K、14C、14M、14Yは、例えば、プリンター本体2内の左下部に設けられた各コンテナ収納部(図示せず)に対して着脱可能に収納される。インクコンテナ14K、14C、14M、14Yは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを収容する。
【0020】
サブインクタンク13bは、所定量のインクを貯留していて、記録ヘッド13がインクを吐出すると、その吐出量のインクを、記録ヘッド13へ供給する。なお、サブインクタンク13bに常に所定量のインクを貯留するために、下記の制御部20は、ポンプ13aによってインクコンテナ14からサブインクタンク13bへインクを供給するように制御する。
【0021】
搬送ベルト7の回転方向(用紙の搬送方向であり、図1における左方向)において記録ヘッド13に対して上流側及び下流側(右側及び左側)には、それぞれ、搬送ベルト7上の用紙又は搬送ベルト7の状態を検知する反射型センサー15が設けられる。記録ヘッド13の上流側の反射型センサー15は、記録ヘッド13へ供給される用紙を検知して、用紙の供給タイミングを計るために用いられる。記録ヘッド13の下流側の反射型センサー15は、記録ヘッド13で画像形成を終えて出力される用紙を検知して、用紙の出力タイミングを計るために用いられる。反射型センサー15は、搬送ベルト7上の用紙の搬送方向(左右方向)に直交する幅方向(前後方向)において、中央付近に設けられるとよい。
【0022】
反射型センサー15は、例えば、照射光を検知波として発光(発信)する発光ダイオード等の発光部15aと、照射光が反射した反射光を反射波として受光(受信)するフォトトランジスタ等の受光部15bとからなる光学センサーで構成される。反射型センサー15は、偏光ビームスプリッタ等の偏光板15cを受光部15bに設けて、反射光を正反射成分(P波)と拡散反射成分(S波)とに偏向(分離)して受光する。受光部15bは、受光した反射光のP波及びS波の受光量に応じた電気信号を出力する。
【0023】
なお、反射型センサー15は、搬送ベルト7を搬送される用紙のスキューを検知するために更に設けられて、搬送ベルト7上の用紙の搬送方向において、4つの記録ヘッド13を通過する途中(例えば、左右方向の中央)に配置されてもよい。また、反射型センサー15は、記録ヘッド13に対して上流側及び下流側の何れかのみに設けられてもよい。
【0024】
搬送ベルト7の近傍には、搬送ベルト7を清掃するベルトクリーニング部16(清掃部)が設けられる。ベルトクリーニング部16は、例えば、搬送ベルト7の左側若しくは右側、又は下側に設けられる。ベルトクリーニング部16は、ローラーやブレード等の清掃部材(図示せず)を搬送ベルト7に当接させて搬送ベルト7の清掃を行う。清掃部材は、搬送ベルト7に対して当接又は離間するように移動可能に構成され、下記の制御部20に制御されて移動する。
【0025】
プリンター本体2の上面又は前面には、操作表示部17(表示部)が設けられる。操作表示部17は、例えば、テンキー、スタートキー、システムメニューキー等の操作キーと、液晶ディスプレイ等の表示器とを備え、ユーザーからの操作入力を受け付ける。なお、操作表示部17は、タッチパッド等の位置入力装置と表示器とを組み合わせたタッチパネルで構成されて、操作キーをタッチパネルに操作可能に表示してもよい。操作表示部17は、例えば、ベルトクリーニング部16による搬送ベルト7の清掃について操作入力を受け付ける。
【0026】
次に、このような構成を備えたプリンター1の印字動作(画像形成動作)について説明する。プリンター1が外部コンピューター等から画像データを受信すると、給紙カセット3内に収納された用紙が、給紙ローラーによって搬送経路4へ送り出される。搬送経路4に送り出された用紙は、搬送ローラーによって搬送経路4の下流側へ搬送され、レジストローラーによって搬送経路4から印字位置の用紙搬送ユニット5の搬送ベルト7の上面へ送り出される。この用紙は、吸気部5aの吸引力によって搬送ベルト7の上面に吸着される。
【0027】
一方、各記録ヘッド13には、各インクコンテナ14からインクが供給される。各記録ヘッド13は、搬送ベルト7に吸着された用紙に対して、外部コンピューター等から受信した画像データの情報に基づいてインクを吐出する。これにより、カラーインク画像が用紙の表面に形成される。カラーインク画像を形成された用紙は、用紙搬送部8によって搬送されながら乾燥装置9によって表面のインクを乾燥された後、排出ローラー10によって排出口11から排紙トレイ12上に排出される。
【0028】
次に、プリンター1の電気的な構成について図2を参照しながら説明する。プリンター1は、CPU等からなる制御部20と、ROMやRAM、HDD等からなる記憶部21とをプリンター本体2の内部に備える。制御部20は、記憶部21に接続されていて、記憶部21に記憶された制御プログラムや制御用データに基づいて演算処理を実行することにより、制御部20に接続されたプリンター1の各構成要素を制御する。
【0029】
制御部20は、例えば、搬送経路4の各ローラー、用紙搬送ユニット5の昇降機構、用紙搬送部8、乾燥装置9、排出ローラー10、各記録ヘッド13、ポンプ13a、反射型センサー15、ベルトクリーニング部16、操作表示部17等の構成要素に接続されていて、これらの構成要素を制御する。
【0030】
例えば、記憶部21には、上記した印字動作や、用紙搬送ユニット5の搬送ベルト7上の用紙又は搬送ベルト7の状態を判定する搬送判定動作を実現するプログラムが記憶されている。なお、搬送判定動作は、印字動作の実行中に実行されてよく、また、搬送ベルト7のメンテナンスやテスト等において実行されてもよい。
【0031】
次に、図3のフローチャートを参照しながら搬送判定動作について説明する。先ず、制御部20は、反射型センサー15を制御して、発光部15aに照射光を搬送ベルト7上の所定の検知位置に向けて発光させる(ステップS1)。また、制御部20は、反射型センサー15を制御して、照射光が搬送ベルト7又は搬送ベルト7上の用紙で反射した反射光を受光部15bに受光させる。このとき、受光部15bは、偏光板15cを介して反射光を正反射成分(P波)と拡散反射成分(S波)とに偏向して受光する(ステップS2)。反射型センサー15は、反射光に対応する値として、例えば、受光部15bが受光した反射光の正反射成分と拡散反射成分との差分又は比率に対応する電圧値を示す電気信号を出力し、制御部20は、反射型センサー15が出力した電気信号を入力する。
【0032】
次に、制御部20は、搬送ベルト7又は搬送ベルト7上の用紙で反射した反射光の正反射成分(P波)及び拡散反射成分(S波)に基づいて、搬送ベルト7上の所定の検知位置に用紙が搬送されているか否かを判定し、また、搬送ベルト7に不具合が生じているか否かを判定する。このとき、制御部20は、反射型センサー15の出力した電気信号の示す電圧値を所定の閾値、例えば、第1の閾値及び第1の閾値より大きい第2の閾値と比較し(ステップS3、ステップS5)、その比較結果に基づいて上記の判定を行う。なお、第1の閾値及び第2の閾値は予め定められて記憶部21に記憶されていて、実験的に定められてよい。
【0033】
例えば、搬送ベルト7上の所定の検知位置に用紙が搬送されていない場合、照射光は、図4に示すように、光沢のある搬送ベルト7によって正反射する一方、拡散反射しない(若しくは殆どしない)ので、S波に比べてP波を多く含む反射光が受光部15bに受光される。そのため、図6に実線で示すように、P波及びS波の差分及び比率は比較的大きくなり、反射型センサー15は、電圧値の比較的大きい電気信号を制御部20へ出力する。このように、反射型センサー15の出力する電圧値は、S波が減少するほど上昇する
【0034】
この場合、図6に実線で示すように、反射型センサー15の出力した電気信号の示す電圧値(反射光に対応する値)は、第2の閾値以上になり(ステップS3:Yes)、制御部20は、搬送ベルト7に用紙が搬送されていないと判定する(ステップS4)。また、制御部20は、搬送ベルト7に不具合が生じていないと判定する。
【0035】
あるいは、搬送ベルト7上の所定の検知位置に用紙が搬送されている場合、照射光は、図5に示すように、用紙によって正反射及び拡散反射するので、P波及びS波を含む反射光が受光部15bに受光される。そのため、図6に実線で示すように、P波及びS波の差分及び比率は比較的小さくなり、反射型センサー15は、電圧値の比較的小さい電気信号を制御部20へ出力する。
【0036】
この場合、図6に実線で示すように、反射型センサー15の出力した電気信号の示す電圧値(反射光に対応する値)は、第1の閾値よりも小さくなり(ステップS3:No、ステップS5:Yes)、制御部20は、搬送ベルト7に用紙が搬送されていると判定する(ステップS6)。
【0037】
ところで、搬送ベルト7上の所定の検知位置に用紙が搬送されていないが、搬送ベルト7が汚染又は損傷(劣化)している場合、照射光は、搬送ベルト7の光沢のある部分では拡散反射しないが、汚染又は損傷している部分で拡散反射する。これにより、搬送ベルト7が汚染又は損傷していない場合に比べてP波を多く含むが、搬送ベルト7に用紙が搬送されている場合に比べてP波の少ない反射光が受光部15bに受光される。そのため、図6に一点鎖線で示すように、搬送ベルト7が汚染又は損傷していない場合に比べて、P波及びS波の差分及び比率は小さく、かつ搬送ベルト7に用紙が搬送されている場合に比べて、P波及びS波の差分及び比率は大きくなり、反射型センサー15は、P波の量に応じた電圧値の電気信号を制御部20へ出力する。
【0038】
この場合、図6に一点鎖線で示すように、反射型センサー15の出力した電気信号の示す電圧値(反射光に対応する値)は、第1の閾値以上であり、かつ第2の閾値よりも小さくなり(ステップS3:No、ステップS5:No)、制御部20は、搬送ベルト7に汚染又は損傷等の不具合が生じていると判定する(ステップS7)。
【0039】
なお、プリンター1は、搬送ベルト7の不具合を判定した場合に、様々な対応動作のうちの何れを実行するかについて設定可能にするとよい。
【0040】
搬送ベルト7の不具合を判定した場合の対応動作の他の例として、制御部20は、搬送ベルト7のメンテナンスとしてユーザーに清掃を促す清掃メッセージ(通知)を操作表示部17の表示器に表示させる(ステップS8)。ユーザーによる操作に応じて操作表示部17が搬送ベルト7の清掃についての操作入力を受け付けると、制御部20は、この操作表示部17の操作に応じて、ベルトクリーニング部16を稼働して搬送ベルト7の清掃を実行させ、少なくとも搬送ベルト7を1周分清掃するとよい。
【0041】
あるいは、搬送ベルト7の不具合を判定した場合の対応動作の一例として、制御部20は、操作表示部17の操作に拘らず、自動的にベルトクリーニング部16を稼働して搬送ベルト7の清掃を実行させてもよい。
【0042】
また、搬送ベルト7の不具合を判定した場合の対応動作の更なる例として、制御部20は、操作表示部17の操作に応じて又は自動的にベルトクリーニング部16によって搬送ベルト7の清掃を実行した後、用紙を搬送せずに反射型センサー15を稼働して、上記と同様に、反射型センサー15の出力に基づいて搬送ベルト7の状態を判定する。このとき、搬送ベルト7を清掃したにも拘らず、搬送ベルト7の不具合を判定した場合、制御部20は、搬送ベルト7のメンテナンスとしてユーザーに交換を促す交換メッセージ(通知)を操作表示部17の表示器に表示させる。
【0043】
若しくは、搬送ベルト7の不具合を判定した場合の対応動作の他の例として、制御部20は、搬送ベルト7を清掃することなく、搬送ベルト7のメンテナンスとしてユーザーに交換を促す交換メッセージを操作表示部17の表示器に表示させてもよい。
【0044】
なお、上記した実施形態では、搬送ベルト7の不具合を判定した場合に、制御部20が搬送ベルト7のメンテナンスをユーザーに促すメッセージを操作表示部17の表示器に表示させる例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、制御部20は、プリンター1と通信可能に接続されるユーザー端末(図示せず)に対して、搬送ベルト7のメンテナンスを促すメッセージを送信してもよい。
【0045】
本実施形態では上述のように、プリンター1は、用紙を搬送する搬送ベルト7(搬送部材)と、搬送ベルト7に向けて照射光(検知波)を発信し、照射光が反射した反射光(反射波)を受信する反射型センサー15と、搬送ベルト7上の用紙又は搬送ベルト7の状態を判定する搬送判定動作を制御する制御部20とを備える。搬送判定動作として、制御部20は、反射光が所定の第1の閾値より小さい場合、搬送ベルト7に用紙が搬送されていると判定し、反射光が第1の閾値より大きい第2の閾値以上である場合、搬送ベルト7に用紙が搬送されていないと判定し、反射光が第1の閾値以上であり、かつ第2の閾値より小さい場合、搬送ベルト7に不具合が生じていると判定する。
【0046】
これにより、搬送ベルト7の状態を検知するために新たなセンサーを追加することなく、搬送ベルト7上の用紙を検知するために現状使用している反射型センサー15を利用して、搬送ベルト7の状態を判定することができる。このように、簡易な構成で、ジャム等の不具合が生じる前に搬送ベルト7の不具合を事前に検出することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、反射型センサー15は、反射光を正反射成分と拡散反射成分とに偏向し、制御部20は、第1の閾値及び第2の閾値と比較する反射光に対応する値として、正反射成分と拡散反射成分との差分又は比率に対応していて拡散反射成分が減少するほど上昇する値を適用する。これにより、用紙や搬送ベルト7の状態に応じて、反射光の拡散反射成分が変動することを利用して、搬送ベルト7上の用紙又は搬送ベルト7の状態をより正確に判定することができる。なお、第1の閾値及び第2の閾値は、用紙や搬送ベルト7の材料に応じて適宜変更してもよい。
【0048】
更に、本実施形態では、プリンター1は、搬送ベルト7に搬送される用紙にインクを吐出する記録ヘッド13を更に備え、搬送ベルト7は、記録ヘッド13の下方に回転可能に設けられ、反射型センサー15は、搬送ベルト7の回転方向において、記録ヘッド13に対して上流側又は下流側に設けられる、これにより、記録ヘッド13へ供給される用紙を上流側で検知する用紙センサーとしての反射型センサー15を、搬送ベルト7の状態を判定するためのセンサーとして利用することができる。また、記録ヘッド13で画像形成を終えて出力される用紙を下流側で検知する用紙センサーとしての反射型センサー15を、搬送ベルト7の状態を判定するためのセンサーとして利用することもできる。
【0049】
また、本実施形態では、プリンター1は、操作表示部17(表示部)を更に備え、制御部20は、搬送ベルト7に不具合が生じていると判定した場合、搬送ベルト7のメンテナンスを促すメッセージ(通知)を操作表示部17に表示する。これにより、ユーザーは、操作表示部17に表示されたメッセージを視認することにより、搬送ベルト7の不具合を把握することができ、ジャム等の不具合が生じる前に搬送ベルト7のメンテナンスを行うことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、プリンター1は、搬送ベルト7を清掃するベルトクリーニング部16(清掃部)を更に備え、制御部20は、搬送ベルト7に不具合が生じていると判定した場合、ベルトクリーニング部16によって搬送ベルト7を自動的に清掃する。これにより、ユーザーに手間を掛けることなく、搬送ベルト7の不具合を自動的に解消することができる。
【0051】
なお、上記した実施形態では、プリンター1は、搬送ベルト7を搬送部材として搬送判定動作を行う例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、プリンター1は、搬送経路4の給紙ローラー、搬送ローラー又はレジストローラー、用紙搬送部8、排出ローラー10等の用紙の搬送機能を有する部材を搬送部材として搬送判定動作を行うように構成してもよい。この場合、プリンター1は、各搬送部材に対して用紙を検知するための反射型センサー15を設ける。
【0052】
本実施形態では、インクジェット式のプリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、電信写真方式のプリンター、複写機、ファクシミリ、複合機等の、用紙を搬送する搬送部材を備える他の異なる画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 プリンター(画像形成装置)
5 搬送ユニット
7 搬送ベルト(搬送部材)
13 記録ヘッド
15 反射型センサー
16 操作表示部(表示部)
20 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6