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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用導光体及び車両用灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/24 20180101AFI20240416BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20240416BHJP
   F21S 41/155 20180101ALI20240416BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20240416BHJP
   F21S 41/40 20180101ALI20240416BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20240416BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240416BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20240416BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240416BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240416BHJP
【FI】
F21S41/24
F21S41/147
F21S41/155
F21S41/16
F21S41/40
F21V8/00 310
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
F21W102:155
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020073713
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021170505
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野間 慶
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-084556(JP,A)
【文献】特開2014-241220(JP,A)
【文献】特開2004-241349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0041089(US,A1)
【文献】特開2010-205418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 8/00
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を入射する入射面と、
前記光源に対して車両搭載状態における前後方向の前方側に配置される第1前方領域を有し、前記入射面から入射した前記光を内面反射して略平行光とする第1反射面と、
前記第1前方領域で反射される前記光が入射する第2前方領域を前側端部に有し、前記第1反射面で反射される前記光を前方に向けて内面反射する第2反射面と、
前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、
前記第2反射面の前側端部から車両搭載状態における上下方向の上方に折り返された状態で設けられ、前記第2前方領域で反射される光を導光体外部に透過して前方に向ける透過面と、
前記透過面に対して前方かつ前記遮光部に対して下方に配置され、前記透過面から前記導光体外部に透過した前記光を再入射する再入射面と、
前記第2反射面で内面反射された前記光、並びに、前記再入射面から入射した前記光を出射する出射面と
を備える車両用導光体。
【請求項2】
前記第1反射面は、前記光源に対して後方側に配置される第1後方領域を有し、
前記第2反射面は、前記第2前方領域に対して後方側に配置される第2後方領域を有し、
前記透過面の上側端部から前方に向けて延び、前記透過面と前記遮光部とを接続し、前記第2後方領域で内面反射された前記光の一部を内面反射する接続面を更に備える
請求項1に記載の車両用導光体。
【請求項3】
前記第2前方領域は、前記遮光部に対して下方に配置される
請求項1又は請求項2に記載の車両用導光体。
【請求項4】
前記接続面は、前記導光体外部側に突出した状態で配置され前記透過面から前記導光体外部に透過した光の一部を遮光する外部遮光部を有する
請求項に記載の車両用導光体。
【請求項5】
前記出射面は、車両前方に配光パターンを照射する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用導光体。
【請求項6】
前記第1反射面は、前記光源に対して後方側に配置される第1後方領域を有し、
前記第2反射面は、前記第2前方領域に対して後方側に配置される第2後方領域を有し、
前記配光パターンは、前記第2反射面の前記第2後方領域で内面反射された前記光により形成されるメインパターンと、前記第2反射面の前記第2前方領域で内面反射された前記光により形成され前記メインパターンの上方に照射される上方パターンとを含む
請求項5に記載の車両用導光体。
【請求項7】
光源を備え、
前記光源からの光を導光して出射する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両用導光体を複数備える
車両用灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用導光体及び車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
リフレクタ、シェード、投影レンズ等のそれぞれに対応する機能を1つの車両用導光体に集約させた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。つまり、このような車両用導光体は、光源からの光を入射する入射面と、入射した光を内面反射する内面反射面(リフレクタに対応)と、内面反射された光の一部を遮光する遮光部(シェードに対応)と、内面反射されて遮光部を通過する光を出射して車両前方に配光パターンPFを照射する出射面(投影レンズに対応)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6130602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用導光体では、入射面から入射する光をできるだけロスが少なくなるように内面反射して出射面に到達させることができるように、光の利用効率を向上させることが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、光の利用効率を向上させること可能な車両用導光体及び車両用灯具ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用導光体は、光源からの光を入射する入射面と、前記光源に対して車両搭載状態における前後方向の前方側に配置される第1前方領域を有し、前記入射面から入射した前記光を内面反射して略平行光とする第1反射面と、前記第1前方領域で反射される前記光が入射する第2前方領域を前側端部に有し、前記第1反射面で反射される前記光を前方に向けて内面反射する第2反射面と、前記第2反射面で反射された前記光の一部を遮光する遮光部と、前記第2反射面の前側端部から車両搭載状態における上下方向の上方に折り返された状態で設けられ、前記第2前方領域で反射される光を導光体外部に透過して前方に向ける透過面と、前記透過面に対して前方かつ前記遮光部に対して下方に配置され、前記透過面から前記導光体外部に透過した前記光を再入射する再入射面と、前記第2反射面で内面反射された前記光、並びに、前記再入射面から入射した前記光を出射する出射面とを備える。
【0007】
上記の車両用導光体において、前記第1反射面は、前記光源に対して後方側に配置される第1後方領域を有し、前記第2反射面は、前記第2前方領域に対して後方側に配置される第2後方領域を有し、前記透過面の上側端部から前方に向けて延び、前記透過面と前記遮光部とを接続し、前記第2後方領域で内面反射された前記光の一部を内面反射する接続面を更に備えてもよい。
【0008】
上記の車両用導光体において、前記第2前方領域は、前記遮光部に対して下方に配置されてもよい。
【0009】
上記の車両用導光体において、前記接続面は、前記導光体外部側に突出した状態で配置され前記透過面から前記導光体外部に透過した光の一部を遮光する外部遮光部を有してもよい。
【0010】
上記の車両用導光体において、前記出射面は、車両前方に配光パターンを照射してもよい。
【0011】
上記の車両用導光体において、前記配光パターンは、前記第2反射面の前記第2後方領域で内面反射された前記光により形成されるメインパターンと、前記第2反射面の前記第2前方領域で内面反射された前記光により形成され前記メインパターンの上方に照射される上方パターンとを含んでもよい。
【0012】
本発明に係る車両用灯具ユニットは、光源を備え、前記光源からの光を導光して出射する、上記の車両用導光体を複数備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光の利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る車両用灯具の一例を示す平面図である。
図2図2は、本実施形態に係る車両用灯具の一例を示す底面図である。
図3図3は、図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図4図4は、図3の一部を拡大して示す図である。
図5図5は、車両用導光体によって導光される光路の例を示す図である。
図6図6は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンの一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係る車両用灯具ユニットの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用導光体及び車両用灯具ユニットの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。以下の説明において、前後、上下、左右の各方向は、車両用前照灯が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。
【0016】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具100の一例を示す平面図である。図2は、本実施形態に係る車両用灯具100の一例を示す底面図である。図3は、図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。図4は、図3の一部を拡大して示す図である。
【0017】
車両用灯具100は、後述する配光パターンPF(図5参照)を車両前方に照射可能である。本実施形態において、配光パターンPFは、例えばメインパターンであるロービームパターンP1と、上方パターンであるオーバーヘッドパターンP2とを含む。車両用灯具100は、光源10と、車両用導光体20とを備えている。なお、車両用灯具100は、光源、リフレクタ、シェード、投影レンズ等を有する他のユニットをさらに備える構成であってもよい。以下、本実施形態では、左側通行の道路を走行する車両に搭載する車両用灯具100の構成を例に挙げて説明する。
【0018】
[光源]
光源10は、本実施形態において、例えばLEDやOLED(有機EL)などの半導体型光源、レーザ光源等が用いられる。発光面11は、後述の車両用導光体20の入射面21に対向して配置される。発光面11が車両用導光体20に向けられた状態で配置される。本実施形態において、光源10は、左右方向に複数、例えば4つ配置される。なお、光源10の個数は、4つに限定されず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0019】
[車両用導光体]
車両用導光体20は、光源10からの光を導光して車両搭載状態における前方に出射する。本実施形態に係る車両用導光体20は、例えば従来のプロジェクタ型の車両用前照灯におけるリフレクタ、シェード、投影レンズ等のそれぞれに対応する機能を集約させた構成である。図1から図3に示すように、車両用導光体20は、入射面21と、第1反射面22と、第2反射面23と、遮光部24と、透過面25と、接続面26と、再入射面27と、出射面28とを備える。
【0020】
[入射面]
入射面21は、複数、例えば光源10毎に設けられる。なお、入射面21は、光源10とは1対1に対応しない位置に設けられてもよい。例えば、1つの光源10に対して、入射面21が複数設けられる構成であってもよい。複数の入射面21は、車両搭載状態における左右方向に並んで配置される。入射面21は、例えば円錐台状に形成される。本実施形態では、例えば4つの入射面21が配置される。なお、左右方向の中央側に配置される入射面21の径よりも、左右方向の外側に配置される入射面21の径の方が小さくてもよい。本実施形態では、左右方向の中央側の2つの入射面21の径よりも、左右方向の外側に配置される2つの入射面21径の方が小さい。以下、左右方向の中央側の2つの入射面21を中央側入射面21Mと表記し、左右方向の外側の2つの入射面を外側入射面21Nと表記して、両者を区別する場合がある。
【0021】
各入射面21は、図3に示すように、第1面21a及び第2面21bと、を有する。第1面21a及び第2面21bは、光源10からの光が入射する。第1面21aは、発光面11に対向する。第1面21aは、平面又は光源10側に突出する凸面である。第2面21bは、光源10の側方に配置され、光源10の発光面11及び第1面21aを囲うように円筒面状に配置される。
【0022】
[第1反射面]
第1反射面22は、入射面21から入射した光を内面反射して略平行光にする。第1反射面22は、入射面21の第2面21bを囲うように配置され、当該第2面21bから入射した光を第2反射面23に向けて反射する。本実施形態において、第1反射面22は、入射面21に対応して設けられる。第1反射面22は、車両搭載状態における左右方向に複数並んで配置される。複数の第2反射面23は、集光パターン用反射面22Mと、拡散パターン用反射面22Nとを含む。左右方向の中央側に配置される2つの集光パターン用反射面22Mは、互いに一部同士が重なった状態で配置される。
【0023】
第1反射面22のうち例えば集光パターン用反射面22Mは、第1後方領域22aと、第1前方領域22bとを有する。第1後方領域22aは、光源10に対して後方に配置される。本実施形態において、第1後方領域22aは、例えば、光源10の光軸AXを含み前方に向けられた仮想平面Sに対して前後方向の後方に配置される。第1前方領域22bは、光源10に対して前方に配置される。本実施形態において、第1前方領域22bは、例えば、仮想平面Sに対して前方に配置される。
【0024】
[第2反射面]
第2反射面23は、回転放物面を基調とする形状を有する。第2反射面23は、当該回転放物面の焦点に一致又はほぼ一致する焦点Pを有する。焦点Pは、後述する出射面28の焦点の近傍の位置に配置される。第2反射面23は、第1反射面22からの光を焦点P側、つまり車両前方に向けて反射する。第2反射面23は、第1反射面22で反射される光の光軸に平行な軸を有し、当該光を回転放物面の焦点P側に向けて内面反射する。
【0025】
第2反射面23は、図2に示すように、車両搭載状態における左右方向に複数並んで配置される。複数の第2反射面23は、集光パターン形成面23Mと、拡散パターン形成面23Nとを含む。集光パターン形成面23Mは、焦点P及び焦点Pの近傍を通過するように第1反射面22からの光を内面反射する。集光パターン形成面23Mは、左右方向の中央に配置される。集光パターン形成面23Mは、2つの中央側入射面21Mに対応して配置される。集光パターン形成面23Mは、2つの中央側入射面21Mに入射し、第1反射面22で反射された光を反射する。車両用導光体20を下側から見た場合、図2に示すように、集光パターン形成面23Mは、例えば左右方向について仮想直線LMaと仮想直線LMbとの間の領域に光を反射することができる。
【0026】
拡散パターン形成面23Nは、焦点Pを含め当該焦点Pに対して車両搭載状態における水平方向の外側にずれた位置を通過するように第1反射面22からの光を内面反射する。このため、拡散パターン形成面23Nは、例えば左右方向で集光パターン形成面23M側の端部が、回転放物面を基調とする形状に対して、焦点P側(前方)に変形した形状となっている。複数の第2反射面23のうち、集光パターン形成面23Mに対して左右方向の外側に配置される第2反射面23が、拡散パターン形成面23Nである。拡散パターン形成面23Nは、それぞれの外側入射面21Nに対応して配置される。拡散パターン形成面23Nは、それぞれの外側入射面21Nに入射し、第1反射面22で反射された光を反射する。車両用導光体20を下側から見た場合、図2に示すように、それぞれ拡散パターン形成面23Nは、例えば左右方向について仮想直線LNaと仮想直線LNbとの間の領域、及び仮想直線LNcと仮想直線LNdとの間の領域に光を反射することができる。
【0027】
図2に示すように下方から見た場合、左右方向について、集光パターン形成面23Mで内面反射される反射光は、仮想直線LMaと仮想直線LMbとの間の領域を主として通過する。また、拡散パターン形成面23Nで内面反射される反射光は、仮想直線LNaと仮想直線LNbとの間の領域、及び仮想直線LNcと仮想直線LNdとの間の領域を主として通過し、一部の光が仮想直線LNbと仮想直線LNcとの間の領域(前後方向の後側)を通過する。本実施形態では、集光パターン形成面23Mで内面反射される反射光が主として通過し、かつ拡散パターン形成面23Nで内面反射される反射光の一部が通過する領域の一部を領域ARとして設定する。領域ARは、第2反射面23側から前方に向けて先細りとなる形状を有する。また、領域ARは、拡散パターン形成面23Nで内面反射される反射光が主として通過する範囲を示す仮想直線LNbと仮想直線LNcに沿った形状を有する。
【0028】
第2反射面23のうち集光パターン形成面23Mは、第2後方領域23aと、第2前方領域23bとを有する。第2後方領域23aは、第1反射面22の第1後方領域22aに接続される。第2後方領域23aは、第1後方領域22aで反射される光が入射する。第2後方領域23aは、第1後方領域22aで反射される光を前方に向けて内面反射する。
【0029】
第2前方領域23bは、第2後方領域23aの前側端部に接続される。第2前方領域23bは、第1前方領域22bで反射される光が入射する。第2前方領域23bは、第1前方領域22bで反射される光を前方に向けて内面反射する。第2前方領域23bは、例えば第2後方領域23aの前側端部から前方に延長した状態で設けられる。第2前方領域23bは、第2後方領域23aに対して滑らかに接続される。なお、第2前方領域23bは、第2後方領域23aに対して滑らかではない態様で接続されてもよい。例えば、第2前方領域23bと第2後方領域23aとの間に段差が設けられてもよい。第2前方領域23bは、後述する遮光部24に対して上下方向の下方に配置される。第2前方領域23bの後側端部は、集光パターン形成面23Mのうち、遮光部24から後方に延びる仮想直線VL1上又は当該仮想直線VL1よりも下方側に配置される。また、第2前方領域23bの前側端部は、第1前方領域22bの前側端部を通り光源10の光軸AXに平行な仮想直線VL2上に配置される。つまり、第2前方領域23bは、断面視において、集光パターン形成面23Mと仮想直線VL1との交点と、集光パターン形成面23Mと仮想直線VL2との交点との間に配置される。この範囲に第2前方領域23bを設定することにより、第1前方領域22bで反射された光を確実に第2前方領域23bで前方に反射することができる。
【0030】
[遮光部]
遮光部24は、第2反射面23の第2後方領域23aで内面反射される光の一部を遮光する。遮光部24は、後述の接続面26と、再入射面27とで形成される角部20gに設けられる。角部20gは、車両用導光体20を外部側(下方)から見た場合に凹状である。角部20gは、左右方向に線状に延びている。遮光部24は、角部20gにおいて、後述する配光パターンPFのうち、ロービームパターンP1のカットオフラインCL(図6参照)を形成する。カットオフラインCLは、水平カットオフラインと斜めカットオフラインとを含む。角部20gは、水平カットオフラインを形成するための水平部分(不図示)と、斜めカットオフラインを形成するための傾斜面分(不図示)とを有する。
【0031】
遮光部24は、当該角部20gを含む領域に設けられる。遮光部24は、例えば当該遮光部24に到達する光を出射面28の方向とは異なる方向に屈折または内面反射させることで光を遮光してもよいし、角部20gを含む接続面26のうち当該遮光部24に対応する部分に光吸収層を配置しておき、当該光吸収層により光を吸収することで遮光してもよい。なお、遮光部24によって内面反射又は屈折される光は、車両用導光体20の外部に出射され、当該車両用導光体20の外部に配置されるインナーハウジング等によって吸収される。
【0032】
[透過面]
透過面25は、第2前方領域23bの前側端部から上方に折り返され、第2前方領域23bに対向した状態で設けられる。透過面25は、例えば平面状であり、後方から前方に向けて上方に傾いた形状を有する。透過面25と第2前方領域23bとは、図4等に示すように、断面視においてV状に設けられる。透過面25は、第2前方領域23bで反射される光を導光体外部に透過して前方に向ける。
【0033】
透過面25は、第2反射面23からの光を車両用導光体20の外部に透過し、前方に向けて出射する(図5参照)。透過面25から導光体外部に透過して前方に向かう光は、後述する再入射面27に入射され、出射面28から出射されて車両前方に後述するオーバーヘッドパターンP2(図6参照)を形成する。
【0034】
透過面25は、例えば図2に示すように、上下方向の下方から見て、集光パターン形成面23Mで内面反射された反射光が通過する領域内に収まるように配置される。本実施形態において、透過面25は、下方から見た場合、集光パターン形成面23Mの左右方向の両端から焦点Pに向けて前方に先細りとなる領域AR内に収まるように配置される。
【0035】
[接続面]
接続面26は、第2反射面23と遮光部24との間を接続する。接続面26は、車両用導光体20の下側に位置し、水平面に沿って配置される。接続面26は、遮光部24から透過面25の上側端部との接続部分にかけて平坦に設けられる。このため、接続面26では、前後方向の広い範囲に亘って内面反射可能な領域が確保される。接続面26には、外部遮光部29が設けられる。
【0036】
外部遮光部29は、接続面26の一部が下方に突出した構成である。外部遮光部29は、図2に示すように、上下方向から見て、集光パターン形成面23Mで内面反射された光が通過する領域AR内に収まるように配置される。外部遮光部29は、透過面25から導光体外部に透過して前方に向かう光の一部を遮光する。具体的には、外部遮光部29は、オーバーヘッドパターンP2(図6参照)のうち、H-H線付近の領域PAに照射される光を遮光する。
【0037】
外部遮光部29は、例えば外部遮光部29に到達する光を再入射面27の方向とは異なる方向に屈折または内面反射させることで光を遮光してもよいし、外部遮光部29の表面に光吸収層を配置しておき、当該光吸収層により光を吸収することで遮光してもよい。なお、外部遮光部29によって内面反射又は屈折される光は、当該車両用導光体20の外部に配置されるインナーハウジング等によって吸収される。
【0038】
[再入射面]
再入射面27は、接続面26に対して下方に屈曲した状態で設けられる。再入射面27は、上部から下部にかけて前方に傾いた状態で形成される。再入射面27は、透過面25から外部に透過した光を再入射する。再入射面27から再入射する光は、遮光部24の下方側から出射面28に向けて進行する。
【0039】
[出射面]
出射面28は、第2反射面23で内面反射されて遮光部24により遮光されなかった光、及び再入射面27から入射した光を出射して車両前方に配光パターンPF(図6参照)を照射する。本実施形態において、出射面28は、例えば曲面状であり、不図示の焦点と、光軸とを有する。なお、出射面28が例えば平面状であり、出射面28から出射される光を車両前方に照射する他の光学要素が配置された構成であってもよい。出射面28の焦点は、第2反射面23の焦点Pの近傍の位置に配置される。また、本実施形態では、出射面28の左右方向の幅が、第2反射面23の左右方向の幅よりも狭くてもよい。この場合、外部から見た場合の出射面28の寸法を抑制できる。
【0040】
車両用導光体20の上面20hには、プリズム部等の光拡散部が形成されてもよい。光拡散部は、第2反射面23で内面反射された光を拡散する。このため、上面20hから車両用導光体20の外部に出射される光がグレアとなるのを抑制できる。
【0041】
[動作]
次に、上記のように構成された車両用灯具100の動作を説明する。図6は、車両前方の仮想のスクリーンに照射される配光パターンの一例を示す図である。図6では、左側通行の車両に対応するパターンを示している。また、図6において、V-V線がスクリーンの垂直線を示し、H-H線がスクリーンの左右の水平線を示す。また、ここでは、垂直線と水平線との交点が、水平方向の基準位置であるとする。
【0042】
車両用灯具100の光源10を点灯させることにより、発光面11から光が放射される。この光は、入射面21の第1面21a及び第2面21bから車両用導光体20に入射する。第1面21aから入射した光は、第1反射面22側に向けて進行する。第2面21bから入射した光は、第1反射面22において第2反射面23に向けて内面反射される。
【0043】
図5に示すように、例えば、第1反射面22の第1後方領域22aで反射される光L1は、第2反射面23の第2後方領域23aに到達する。第2後方領域23aに到達した光L1は、第2後方領域23aで内面反射されて接続面26に到達する。本実施形態において、接続面26は、遮光部24から透過面25にかけて前後方向の全体に亘って平坦に形成される。このため、接続面26に到達する光L1は、無駄なく車両前方に内面反射される。接続面26によって内面反射された光L1は、遮光部24の上方を通過して出射面28に到達する。出射面に到達した光L1は、出射面28から車両前方に出射される。
【0044】
また、第1反射面22の第1前方領域22bで反射される光L2、L3は、第2反射面23の第2前方領域23bに到達する。第2前方領域23bに到達した光L2、L3は、第2前方領域23bで内面反射されて透過面25に到達する。本実施形態において、透過面25は、第2前方領域23bの前側端部から上方に折り返された状態で当該第2前方領域23bに対向して配置される。このため、第2前方領域23bで反射された光L2、L3は、透過面25から無駄なく導光体外部に透過される。透過面25によって導光体外部に透過した光L2、L3は、導光体外部を前方に向けて進行し、遮光部24の下方を通過して、再入射面27から車両用導光体20の内部に再入射する。再入射した光L2、L3は、出射面28に到達し、出射面28から車両前方に出射される。なお、図5では、導光体外部において光L2と光L3とが交差する場合を例に挙げて示しているが、この場合に限定されない。
【0045】
出射面28から出射された光L1、L2、L3は、図6に示すように、配光パターンPFとして車両前方に照射される。具体的には、遮光部24の上方を通過して出射面28に到達した光L1は、ロービームパターンP1のうちカットオフラインCLを含む集光パターンP1aを形成する。なお、図6では、カットオフラインCLのうち斜めカットオフラインCLaが右側に向けて下方に傾くように形成された状態を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、斜めカットオフラインCLaが左側に向けて下方に傾く場合においても同様の説明が可能である。
【0046】
なお、第2反射面23のうち拡散パターン形成面23Nで反射される拡散光については、図示を省略するが、一部は接続面26を越え、一部は接続面26で反射され、遮光部24の上方を通過して出射面28に到達する。出射面28から出射される拡散光は、ロービームパターンP1のうちの拡散パターンP1bを形成する。
【0047】
また、透過面25により導光体外部に放出されて遮光部24の下方を通過して出射面28に到達した光L2.L3は、オーバーヘッドパターンP2を形成する。第1反射面22の第1前方領域22bで反射される光の一部をオーバーヘッドパターンP2として無駄なく利用することにより、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0048】
[車両用灯具ユニット]
図7は、本実施形態に係る車両用灯具ユニット200の一例を示す図である。図7は、車両搭載状態における前方から見た例を示している。図7に示す車両用灯具ユニット200は、ハウジング201と、アウターレンズ202と、光源10と、複数の車両用導光体20とを有する。車両用灯具ユニット200は、ハウジング201とアウターレンズ202とで囲まれる灯室内に、ここでは例えば2つの車両用導光体20が配置された構成である。なお、灯室内に配置される車両用導光体20は、1つ又は3つ以上であってもよい。また、車両用導光体20は、前方から見た場合において、左右方向に並ぶ配置に限定されず、上下方向に並ぶ配置であってもよいし、斜め方向に並ぶ配置であってもよいし、左右方向、上下方向、斜め方向の2つ以上を組み合わせた状態で並ぶ配置であってもよい。なお、異なる車両用導光体20に対して、光源10の個数及び配置が異なるように構成してもよい。
【0049】
例えば、一つの車両用導光体20については、中央側入射面21Mに対して光を入射させるように光源10を配置した集光用の構成とし、他の車両用導光体20については、外側入射面21Nに対して光を入射させるように光源10を配置した拡散用の構成としてもよい。また、集光用の構成及び拡散用の構成の少なくとも一方を複数設けてもよい。この場合、各車両用導光体20からの発熱を抑制しつつ、車両用灯具ユニット200全体として、車両前方に集光パターンP1a及び拡散パターンP1bを形成できる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る車両用導光体20は、光源10からの光を入射する入射面21と、光源10に対して前方側に配置される第1前方領域22bを有し、入射面21から入射した光を内面反射して略平行光とする第1反射面22と、第1前方領域22bで反射される光が入射する第2前方領域23bを前側端部に有し、第1反射面22で反射される光を前方に向けて内面反射する第2反射面23と、第2反射面23で反射された光の一部を遮光する遮光部24と、第2前方領域23bの前側端部から車両搭載状態における上下方向の上方に折り返され、第2前方領域23bで反射される光を導光体外部に透過して前方に向ける透過面25と、透過面25に対して前方かつ遮光部24に対して下方に配置され、透過面25から導光体外部に透過した光を再入射する再入射面27と、第2反射面23で内面反射された光、並びに、再入射面27から入射した光を出射する出射面28とを備える。
【0051】
この構成によれば、第2反射面23で反射されて遮光部24又は遮光部24の上方を通過して出射面28から出射される光により、主となるパターン(ロービームパターンP1)が形成される。また、透過面25により導光体外部に放出されて遮光部24の下方を通過し、再入射面27から再入射して出射面28から出射される光により、車両前方の上側に別途パターン(オーバーヘッドパターンP2)が形成される。このように、入射面21から入射した光の一部を、主となるパターン(ロービームパターンP1)とは異なるパターン(オーバーヘッドパターンP2)を形成する光として利用することにより、光の利用効率の向上を図ることができる。このとき、第1反射面22のうち第1前方領域22bに到達する光を第2反射面23の第2前方領域23bに到達させ、第2前方領域23bの前方に折り返された透過面25に透過させるため、第1前方領域22bに到達する光を無駄なく効率的に利用可能となる。
【0052】
上記の車両用導光体20において、第1反射面22は、光源10に対して後方側に配置される第1後方領域22aを有し、第2反射面23は、第2前方領域23bに対して後方側に配置される第2後方領域23aを有し、透過面25の上側端部から前方に向けて延び、透過面25と遮光部24とを接続し、第2後方領域23aで内面反射された光の一部を内面反射する接続面26を更に備える。これにより、第2後方領域23aで内面反射された光の一部を内面反射する接続面26において、内面反射可能となる領域を前後方向に広く確保できる。
【0053】
上記の車両用導光体20において、第2前方領域23bは、遮光部24に対して下方に配置される。これにより、第2前方領域23bを広く確保することができるため、第1前方領域22bに到達する光を無駄なく効率的に利用可能となる。
【0054】
上記の車両用導光体20において、接続面26は、導光体外部側に突出した状態で配置され透過面25から導光体外部に透過した光の一部を遮光する外部遮光部29を有してもよい。この構成では、車両前方の上部に形成されるパターン(オーバーヘッドパターンP2)の一部の領域に照射される光が減光される。これにより、例えば先行車側又は対向車側の幻惑を抑制したり、グレア光の発生を抑制したりすることができる。
【0055】
上記の車両用導光体20において、出射面28は、車両前方に配光パターンPFを照射する。この構成では、入射面21から出射面28までが一体の車両用導光体20により光を有効利用しつつ、車両前方に配光パターンPFを形成することができる。
【0056】
上記の車両用導光体20において、配光パターンは、第2反射面23の第2後方領域23aで内面反射された光により形成されるメインパターンと、第2反射面23の第2前方領域23bで内面反射された光により形成されメインパターンの上方に照射される上方パターンとを含む。これにより、第1前方領域22bに到達する光を上方パターンとして無駄なく効率的に利用可能となる。
【0057】
本発明に係る車両用灯具ユニットは、光源10を備え、光源10からの光を導光して出射する、上記の車両用導光体20を複数備える。この構成によれば、車両用灯具ユニット200全体として、複数の車両用導光体20の照射パターンを組み合わせた配光パターンPFを得ることができる。
【0058】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上記実施形態では、左側通行の道路を走行する車両に搭載する車両用灯具100の構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、右側通行の道路を走行する車両に車両用前照灯を搭載する場合においても同様の説明が可能である。
【0059】
また、上記実施形態では、配光パターンPFとして、ロービームパターンを例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えばハイビームパターン等、他のパターンであってもよい。また、複数の車両用導光体20が設けられる車両用灯具ユニット200においては、異なる種類のパターンを形成する車両用導光体20が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0060】
AR,PA…領域、AX…光軸、CL…カットオフライン、CLa…斜めカットオフライン、L1,L2,L3…光、LMa,LMb,LNa,LNb,LNc,LNd,VL1,VL2…仮想直線、P…焦点、P1…ロービームパターン、P2…オーバーヘッドパターン、P1a…集光パターン、P1b…拡散パターン、PF…配光パターン、S…仮想平面、10…光源、11…発光面、20…車両用導光体、20g…角部、20h…上面、21…入射面、21M…中央側入射面、21N…外側入射面、21a…第1面、21b…第2面、22…第1反射面、22M…集光パターン用反射面、22N…拡散パターン用反射面、22a…第1後方領域、22b…第1前方領域、23…第2反射面、23M…集光パターン形成面、23N…拡散パターン形成面、23a…第2後方領域、23b…第2前方領域、24…遮光部、25…透過面、26…接続面、27…再入射面、28…出射面、29…外部遮光部、100…車両用灯具、200…車両用灯具ユニット、201…ハウジング、202…アウターレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7