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特許7472624車両用制御装置、および、車両用空気清浄システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両用制御装置、および、車両用空気清浄システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 3/06 20060101AFI20240416BHJP
   B60H 3/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60H3/06 B
B60H3/00 F
A61L9/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020076336
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021172176
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 千穂
(72)【発明者】
【氏名】桑山 明規
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-314720(JP,A)
【文献】特開2001-246931(JP,A)
【文献】特開2005-138632(JP,A)
【文献】特開2006-224765(JP,A)
【文献】特開2004-122843(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0264361(US,A1)
【文献】特開2021-46997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 3/06
B60H 3/00
A61L 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する乗員判定部(4)が設置された車両に搭載され、光触媒(6)に光を照射して前記車室内の空気を清浄する空気清浄ユニット(3)の駆動を制御する車両用制御装置において、
前記空気清浄ユニットは、前記車室内の空気が流れる空気通路に設けられる前記光触媒と、前記光触媒に光を照射する光源装置(7)とを有しており、
前記車両には前記車室内のにおいの強さを検出するにおいセンサ(10)が搭載されており、
前記車両用制御装置は、前記乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの前記空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、前記乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの前記空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行し、
前記光源装置が照射する光の照度を上げることで、前記光触媒による空気清浄能力を大きくし、前記光源装置が照射する光の照度を下げることで、前記光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行するものであり、
前記においセンサの出力値が所定の閾値より小さい場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、前記光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する、車両用制御装置。
【請求項2】
車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する乗員判定部(4)が設置された車両に搭載され、光触媒(6)に光を照射して前記車室内の空気を清浄する空気清浄ユニット(3)の駆動を制御する車両用制御装置において、
前記空気清浄ユニットは、前記車室内の空気が流れる空気通路に設けられる前記光触媒と、前記光触媒に光を照射する光源装置(7)とを有しており、
前記車両には、前記車室内の温度を検出する温度センサ、前記車室内の湿度を検出する湿度センサ、または、前記車室内の温度および湿度を検出する温湿度センサ(11)の少なくとも1つが搭載されており、
車両用制御装置は、前記乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの前記空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、前記乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの前記空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行し、
前記光源装置が照射する光の照度を上げることで、前記光触媒による空気清浄能力を大きくし、前記光源装置が照射する光の照度を下げることで、前記光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行するものであり、
前記温度センサ、前記湿度センサまたは前記温湿度センサの少なくとも1つの出力値に基づき、乗員の嗅覚感度が所定の嗅覚閾値以下となる温度条件または湿度条件が満たされる場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、前記光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する、車両用制御装置。
【請求項3】
前記車室内の温度が10℃以下、または、前記車室内の相対湿度が20%以下の場合、前記光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する、請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときに前記空気清浄ユニットの前記光触媒による空気清浄能力を最大として作動させ、前記乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときに前記空気清浄ユニットの前記光触媒による空気清浄能力を最大よりも小さくする制御を実行する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記乗員判定部は、座席に設置される着座センサ、シフト操作に用いられるシフトレバー、空調装置を制御する空調制御装置、または、ドアロック装置の少なくとも1つであり、
前記着座センサの出力信号、前記シフトレバーの出力信号、前記空調制御装置による空調装置のオン・オフ信号、前記ドアロック装置の出力信号の少なくとも1つに基づき、前記車室内に乗員が在室しているかまたは不在であるかを判定する、請求項1ないしのいずれか1つに記載の車両用制御装置。
【請求項6】
車両に搭載される車両用空気清浄システムにおいて、
車室内の空気が流れる空気通路に設けられる光触媒(6)、および、前記光触媒に光を照射する光源装置(7)を有する空気清浄ユニット(3)と、
前記車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する乗員判定部(4)と、
前記乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの前記空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、前記乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの前記空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行する車両用制御装置(1)と、を備え、
前記車両には前記車室内のにおいの強さを検出するにおいセンサ(10)が搭載されており、
前記車両用制御装置は、前記光源装置が照射する光の照度を上げることで、前記光触媒による空気清浄能力を大きくし、前記光源装置が照射する光の照度を下げることで、前記光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行するものであり、
前記においセンサの出力値が所定の閾値より小さい場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、前記光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する、車両用空気清浄システム。
【請求項7】
車両に搭載される車両用空気清浄システムにおいて、
車室内の空気が流れる空気通路に設けられる光触媒(6)、および、前記光触媒に光を照射する光源装置(7)を有する空気清浄ユニット(3)と、
前記車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する乗員判定部(4)と、
前記乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの前記空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、前記乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの前記空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行する車両用制御装置(1)と、を備え、
前記車両には、前記車室内の温度を検出する温度センサ、前記車室内の湿度を検出する湿度センサ、または、前記車室内の温度および湿度を検出する温湿度センサ(11)の少なくとも1つが搭載されており、
前記車両用制御装置は、前記光源装置が照射する光の照度を上げることで、前記光触媒による空気清浄能力を大きくし、前記光源装置が照射する光の照度を下げることで、前記光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行するものであり、
前記温度センサ、前記湿度センサまたは前記温湿度センサの少なくとも1つの出力値に基づき、乗員の嗅覚感度が所定の嗅覚閾値以下となる温度条件または湿度条件が満たされる場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、前記光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する、車両用空気清浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄ユニットの駆動を制御する車両用制御装置、および、それを用いた車両用空気清浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒により空気を浄化する空気清浄装置が知られている。特許文献1に記載の装置は、車室内の空気が流れる空気通路に光触媒を担持させた光触媒フィルタを配置し、その光触媒フィルタに光源から光を照射して空気を浄化するものである。その空気通路内で光触媒フィルタを通過した空気は、車室内に吹き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-343427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光触媒による空気清浄装置は、空気に含まれるにおいを有する有機物を光触媒による酸化反応により分解し、最終的に二酸化炭素と水にすることで空気の浄化を行うものである。そのため、においを有する有機物が光触媒により分解される際には、最初のにおいとは異なるにおい(以下、「中間臭」という)を有する中間生成物が生成される。例えば、トルエンが光触媒により分解されると、トルエン→ベンズアルデヒド→サリチルアルデヒド→ベンゼン→プロパン→二酸化炭素および水というように、或いは、トルエン→パラクレゾール→アセトン→エタノール、アセトアルデヒド、メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸→二酸化炭素および水というように、分解過程で様々な中間生成物に変化する。そのため、車室内のような狭小空間の空気を光触媒により浄化する場合、車室内にある最初のにおいが、別のにおいである中間臭に変化したことに乗員が気づきやすく、乗員に不快感を与えてしまうという問題がある。
【0005】
そのような問題に関し、上述した特許文献1に記載の装置は、光触媒による空気浄化能力を高めることを目的としたものであり、光触媒の酸化反応により生成される中間生成物による中間臭に関する考慮がされていない。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、光触媒で発生する中間臭による乗員の不快感を抑制可能な車両用制御装置および車両用空気清浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明による車両用制御装置(以下、単に「制御装置」ということがある)は、車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する乗員判定部(4)が設置された車両に搭載される。この制御装置は、光触媒(6)に光を照射して車室内の空気を清浄する空気清浄ユニット(3)の駆動を制御するものである。空気清浄ユニットは、車室内の空気が流れる空気通路に設けられる光触媒と、光触媒に光を照射する光源装置(7)とを有している。車両には車室内のにおいの強さを検出するにおいセンサ(10)が搭載されている。車両用制御装置は、乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行する。車両用制御装置は、光源装置が照射する光の照度を上げることで、光触媒による空気清浄能力を大きくし、光源装置が照射する光の照度を下げることで、光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行する。車両用制御装置は、においセンサの出力値が所定の閾値より小さい場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
請求項2に係る発明による車両用制御装置は、車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する乗員判定部(4)が設置された車両に搭載される。この車両用制御装置は、光触媒(6)に光を照射して車室内の空気を清浄する空気清浄ユニット(3)の駆動を制御するものである。空気清浄ユニットは、車室内の空気が流れる空気通路に設けられる光触媒と、光触媒に光を照射する光源装置(7)とを有している。車両には、車室内の温度を検出する温度センサ、車室内の湿度を検出する湿度センサ、または、車室内の温度および湿度を検出する温湿度センサ(11)の少なくとも1つが搭載されている。車両用制御装置は、乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行する。車両用制御装置は、光源装置が照射する光の照度を上げることで、光触媒による空気清浄能力を大きくし、光源装置が照射する光の照度を下げることで、光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行する。車両用制御装置は、温度センサ、湿度センサまたは温湿度センサの少なくとも1つの出力値に基づき、乗員の嗅覚感度が所定の嗅覚閾値以下となる温度条件または湿度条件が満たされる場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
【0008】
これによれば、制御装置は、乗員が在室しているときは、乗員が不在のときに比べて、空気清浄ユニットによる空気清浄能力を小さくするように制御する。これにより、車室内に乗員が在室しているときは、においを有する有機物が光触媒により分解されるスピードが遅くなる。そのため、その有機物の分解により中間生成物が生成されるスピードも遅くなり、その中間生成物も光触媒により分解されるため、中間生成物による中間臭のピーク値を下げることが可能である。したがって、この車両用制御装置は、車室内に在室する乗員に中間臭による不快感を与えることなく、または、中間臭による不快感を抑制し、空気清浄を行うことができる。
【0009】
また、請求項に係る発明による車両用空気清浄システムは、車両に搭載されるものであり、次の構成を備える。空気清浄ユニット(3)は、車室内空気が流れる空気通路に設けられる光触媒(6)、および、その光触媒に対して光を照射する光源装置(7)を有する。乗員判定部(4)は、車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する。車両用制御装置(1)は、乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行する。車両には車室内のにおいの強さを検出するにおいセンサ(10)が搭載されている。車両用制御装置は、光源装置が照射する光の照度を上げることで、光触媒による空気清浄能力を大きくし、光源装置が照射する光の照度を下げることで、光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行する。車両用制御装置は、においセンサの出力値が所定の閾値より小さい場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
請求項7に係る発明による車両用空気清浄システムは、車両に搭載されるものであり、次の構成を備える。空気清浄ユニット(3)は、車室内空気が流れる空気通路に設けられる光触媒(6)、および、その光触媒に対して光を照射する光源装置(7)を有する。乗員判定部(4)は、車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する。車両用制御装置(1)は、乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行する。車両には、車室内の温度を検出する温度センサ、車室内の湿度を検出する湿度センサ、または、車室内の温度および湿度を検出する温湿度センサ(11)の少なくとも1つが搭載されている。車両用制御装置は、光源装置が照射する光の照度を上げることで、光触媒による空気清浄能力を大きくし、光源装置が照射する光の照度を下げることで、光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行する。車両用制御装置は、温度センサ、湿度センサまたは温湿度センサの少なくとも1つの出力値に基づき、乗員の嗅覚感度が所定の嗅覚閾値以下となる温度条件または湿度条件が満たされる場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る車両用制御装置および車両用空気清浄システムの概略構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る車両用制御装置による空気清浄処理を説明するためのフローチャートである。
図3】光触媒による空気浄化速度と、光触媒に照射される光の照度との関係を示すグラフである。
図4】光源装置に供給される電流値と、光源装置が照射する光の照度との関係を示すグラフである。
図5】光源装置に供給される電流のデューティ制御を説明するためのグラフである。
図6】浄化対象のにおいと中間臭の挙動イメージを説明するためのグラフである。
図7】第2実施形態に係る車両用制御装置および車両用空気清浄システムの概略構成を示す模式図である。
図8】第2実施形態に係る車両用制御装置による空気清浄処理を説明するためのフローチャートである。
図9】第3実施形態に係る車両用制御装置および車両用空気清浄システムの概略構成を示す模式図である。
図10】第3実施形態に係る車両用制御装置による空気清浄処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る車両用制御装置1(以下、単に「制御装置1」という)は、車両に搭載され、車室内の空気の浄化を行う空気清浄ユニットなどと共に車両用空気清浄システム2を構成するものである。なお、本明細書において、空気の浄化とは、空気に含まれるにおいの除去による空気清浄を含んでいる。
【0014】
まず、車両用空気清浄システム2の構成について説明する。
図1に示すように、車両用空気清浄システム2は、空気清浄ユニット3、乗員判定部4および制御装置1などを備えている。
【0015】
空気清浄ユニット3は、車室内空気が流れる空気通路5に設けられる光触媒6と、その光触媒6に光を照射する光源装置7などを有している。光触媒6は、例えば酸化チタンまたは酸化タングステンなどを含んでおり、添加物(例えばゼオライトや銅などの金属)を含んだものもある。光触媒6は、担体8の表面に担持された状態で空気通路5に設けられる。担体8は、図1に示したように空気通路5の内壁に沿った状態で設けてもよく、または、図示しないが空気通路5の空気流れに対して交差するように設けてもよい。これにより、空気通路5を流れる空気は、担体8の表面に担持された光触媒6に接触する。なお、担体8は、空気を通過させる光触媒フィルタとしてもよい。
【0016】
光源装置7は、例えば発光ダイオード(以下、「LED」と表記する)などにより構成されている。光源装置7は、1個または複数個のLEDを有している。図1では、LEDが光触媒6へ照射する光を破線の矢印Lで示している。LEDが照射する光の種類は、例えば紫外光とされている。なお、光源装置7は、図1に示したように空気通路5の内壁に沿った状態で設けてもよく、または、図示しないが空気通路5内に突出するように設けてもよい。
【0017】
空気通路5には、車室内空気を流すための送風機9が設けられている。送風機9は、図1に示したように空気通路5のうち担体8の上流側に設けてもよく、または、図示しないが空気通路5のうち担体8の下流側に設けてもよい。また、図1に示したように空気通路5の空気流れと、光源装置7による光の照射向きとは交差していてもよく、または、図示しないが空気通路5の空気流れと、光源装置7による光の照射向きとは同じ方向を向いていてもよい。なお、送風機9は、遠心式、軸流式または斜流式など種々の方式のものを採用可能である。
【0018】
送風機9により送風されて空気通路5を流れる空気は、担体8の表面に担持された光触媒6に接触して浄化される。具体的には、空気通路5を流れる空気に含まれる有機物は、光触媒6の酸化反応により、最終的に二酸化炭素と水に分解される。これにより、空気清浄ユニット3による空気の浄化が行われる。なお、図1では、空気通路5を流れる汚染空気(すなわち、においを有する有機物を含んだ空気)をハッチングを付した矢印AF1で示し、浄化後の空気を白抜きの矢印AF2で示している。浄化後の空気は、車室内に吹き出される。
【0019】
上述した空気清浄ユニット3は、車両に搭載される車両用空調装置とは別に独立して構成されたものであってもよく、または、車両用空調装置と一体に構成されたものであってもよい。
空気清浄ユニット3と車両用空調装置とが一体に構成される場合には、上述した空気通路5および送風機9は、車両用空調装置が備えている空気通路5と送風機9を用いてもよい。すなわち、その場合には、車両用空調装置が備えている空気通路5に、光触媒6を担持した担体8と光源装置7を設置することが可能である。
【0020】
乗員判定部4は、車室内に乗員が在室しているか、または不在であるかを判定することの可能な信号を出力する種々の装置を用いることが可能である。乗員判定部4として、例えば、座席に設置される着座センサ、シフト操作に用いられるシフトレバー、空調装置を制御する空調制御装置、または、ドアロック装置の少なくとも1つを用いることができる。乗員判定部4が出力する信号は、制御装置1に入力される。
【0021】
制御装置1は、制御処理や演算処理を行うプロセッサ、プログラムやデータ等を記憶するROM、RAM等の記憶部を含むマイクロコンピュータ、およびその周辺回路で構成された電子制御装置である。なお、制御装置1の記憶部は、非遷移的実体的記憶媒体で構成されている。制御装置1は、記憶部に記憶されたプログラムに基づいて、各種制御処理および演算処理を行い、出力ポートに接続された各機器の作動を制御する。具体的には、制御装置1は、乗員判定部4から入力される信号に基づいて、車室内に乗員が在室しているか、または不在であるかを判定する。そして、制御装置1は、車室内における乗員の在室または不在に応じて、空気清浄ユニット3が有する光源装置7および送風機9などの駆動を制御する。
【0022】
次に、第1実施形態に係る制御装置1が実行する空気清浄処理について、図2のフローチャートなどを参照して説明する。
【0023】
この空気清浄処理は、乗員の指示により開始されるように構成されていてもよく、においの発生を感知して自動的に開始されるように構成されていてもよく、または、車両が駐車されたときに自動的に開始されるように構成されていてもよい。
【0024】
まず、ステップS110で、乗員判定部4から信号が制御装置1に入力される。なお、車両が駐車されている状態で、イグニッションスイッチなどの車両スイッチがオフされている場合には、乗員判定部4への通電がオンされた後、乗員判定部4から信号が制御装置1に入力される。乗員判定部4としては、上述した着座センサ、シフトレバー、空調制御装置、ドアロック装置の少なくとも1つが例示される。
【0025】
次に、ステップS120で制御装置1は、乗員判定部4から入力される信号に基づいて、車室内に乗員が在室しているか、または不在であるかを判定する。乗員判定部4として着座センサが採用されている場合、制御装置1は、着座センサから着座信号が入力されると、車室内に乗員が在室していると判定する。一方、制御装置1は、着座センサから着座信号が入力されていないと、車室内に乗員が不在であると判定する。
【0026】
また、乗員判定部4としてシフトレバーが採用されている場合、制御装置1は、シフトレバーがパーキングを除く位置にあると、車室内に乗員が在室していると判定する。一方、制御装置1は、シフトレバーがパーキングの位置に所定時間以上あると、車室内に乗員が不在であると判定する。
【0027】
また、乗員判定部4として空調制御装置が採用されている場合、制御装置1は、駐車時空調装置の作動信号がオフされていると、車室内に乗員が在室していると判定する。一方、制御装置1は、空調装置の作動信号が入力されると、車室内に乗員が不在であると判定する。
【0028】
また、乗員判定部4としてドアロック装置が採用されている場合、制御装置1は、ドアロックが解除されると、車室内に乗員が在室していると判定する。一方、制御装置1は、車外からドアロックが行われると、車室内に乗員が不在であると判定する。
【0029】
このように、制御装置1は、乗員判定部4として例えば着座センサ、シフトレバー、空調制御装置、またはドアロック装置の少なくとも1つから入力される信号に基づき、車室内に乗員が在室しているかまたは不在であるかを判定することが可能である。制御装置1は、車室内に乗員が不在であると判定した場合(すなわち、ステップS120にて肯定判定の場合)、処理をステップS130に進める。
【0030】
ステップS130で制御装置1は、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大として作動させ、車室内の空気の浄化を実行する。具体的には、制御装置1は、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を最大値とする。また、制御装置1は、送風機9を駆動して空気通路5に車室内空気を送風する。
【0031】
ここで、図3のグラフを参照しつつ、光触媒6による空気浄化速度と、光触媒6に照射される光の照度との関係を説明する。図3は、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を変化させたときに、光触媒6による空気の浄化速度を調べた実験結果である。
【0032】
図3において、横軸は、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を示し、縦軸は、光触媒6による空気の浄化速度を示している。図3に示されるように、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を大きくするほど、光触媒6による空気の浄化速度が速くなることが見てとれる。したがって、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を調整することで、光触媒6による空気の浄化速度をコントロールすることが可能である。
【0033】
次に、図4のグラフを参照しつつ、光源装置7に供給される電流値と、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度との関係を説明する。
図4において、横軸は、光源装置7に供給される電流値を示し、縦軸は、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を示している。図4に示されるように、光源装置7に供給する電流値を大きくするほど、光源装置7が照射する光の照度が大きくなることが判る。したがって、光源装置7に供給する電流値を調整することで、光源装置7が照射する光の照度をコントロールすることが可能である。
【0034】
このことから、図2のステップS130で制御装置1は、空気清浄ユニット3による空気清浄能力を最大で作動するときは、光源装置7に供給する電流値を最大値として、LEDが照射する光の照度を最大とする。そして、制御装置1は、光源装置7が複数個のLEDを有している場合には、全てのLEDを点灯させる。また、制御装置1は、送風機9を駆動して空気通路5に車室内空気を送風する。
【0035】
それに対し、上述したステップS120において制御装置1は、車室内に乗員が在室していると判定した場合(すなわち、ステップS120にて否定判定の場合)、処理をステップS140に進める。
【0036】
ステップS140で制御装置1は、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大よりも小さくして作動させ、車室内の空気の浄化を実行する。言い換えれば、制御装置1は、空気清浄ユニット3による空気清浄能力を、乗員が不在のときに比べて抑制する制御を実行する。具体的には、制御装置1は、光源装置7が照射する光の照度を最大値より下げる制御を実行する。また、制御装置1は、送風機9を駆動して空気通路5に車室内空気を送風する。
【0037】
図3を参照して説明したように、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を小さくすることで、光触媒6による空気の浄化速度を遅くすることができる。また、図4を参照して説明したように、光源装置7に供給する電流値を下げることで、光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を小さくすることができる。
【0038】
例えば、制御装置1は、次の(A)~(F)のいずれかの制御を実行することが可能である。
(A)光源装置7が複数個のLEDを有している場合には、例えば半分の数のLEDをオフにして、それ以外のLEDはオンにする。
(B)光源装置7に供給する電流値を制御し、LEDが照射する光の照度を例えば50%程度にする。
(C)光源装置7が光触媒6へ照射する光の照度を、においの種類や強度に応じて可変する。例えば、においの種類により中間臭の発生量が多いものや、においの強度が大きい場合には、照度を低く設定する。
(D)光源装置7が複数個のLEDを有している場合には、例えば半分未満または半分以上の数のLEDをオフにして、それ以外のLEDはオンにする。
(E)光源装置7に供給する電流値を制御し、光源装置7が照射する光の照度を50%未満または50%以上にする。
(F)図5に示すように、光源装置7への電力供給方法がPWM制御の場合、デューティ比を小さくすることにより、空気清浄ユニット3による空気清浄能力を下げる。
【0039】
ステップS130またはステップS140で制御装置1は、空気清浄ユニット3による空気清浄を所定時間実行した後、光源装置7への電流供給を停止すると共に、送風機9の駆動を停止する。これにより、空気清浄ユニット3による空気清浄が終了する。
【0040】
続いて、上述した制御装置1が実行する空気清浄処理に関し、車室内に乗員が在室しているときは、乗員が不在のときに比べて、光触媒6による空気清浄能力を抑制する意義について、図6のグラフを参照しつつ説明する。
【0041】
図6は、車室内における浄化対象のにおいと中間臭との挙動イメージを説明するためのグラフである。図6において、横軸は、時間の経過を示し、縦軸は、においレベル(すなわち、においの強さ)を示している。また、図6では、一般的な乗員がにおいに気付く最小のレベルを、嗅覚閾値として符号Thを付した実線で示している。
【0042】
図6では、時刻T1で、浄化対象となるにおいが車室内に発生したものとする。時刻T2で、空気清浄ユニット3の光触媒6による車室内の空気清浄処理が開始される。
【0043】
時刻T2以降、実線Aは、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大として作動させた場合の浄化対象となるにおいの挙動を示している。この場合、浄化対象となるにおいは、光触媒6により短時間で浄化され、時刻T3以降、嗅覚閾値より小さくなる。
【0044】
ここで、光触媒6による空気の浄化は、においを有する有機物を光触媒6による酸化反応により分解し、最終的に二酸化炭素と水にすることより行われる。その際、においを有する有機物が光触媒6により分解されてゆく途中で、中間生成物が生成される。中間生成物の中には、最初のにおい(すなわち、浄化対象となるにおい)とは異なるにおい(すなわち、中間臭)を有するものがある。
【0045】
図6では、光触媒6による空気清浄能力を最大として作動させた場合に発生する中間臭の挙動を一点鎖線Bで示している。この場合に発生する中間臭は、時刻T5で嗅覚閾値より大きくなり、時刻T6でピークとなる。それ以降、中間生成物が光触媒6により分解されることで、時刻T7で中間臭は嗅覚閾値より小さくなる。したがって、車室内に乗員が在室しているときに光触媒6による空気清浄能力を最大として空気清浄処理を実行すると、最初のにおいは短時間で脱臭されるものの、最初のにおいとは異なる中間臭が強く発生することで、乗員に不快感を与えてしまう。
【0046】
それに対し、図6の破線Cは、光触媒6による空気清浄能力を抑制して作動させた場合の浄化対象となるにおいの挙動を示している。また、二点鎖線Dは、その場合に発生する中間臭の挙動を示している。
【0047】
図6の破線Cに示したように、光触媒6による空気清浄能力を抑制して作動させた場合、浄化対象となるにおいを有する有機物を光触媒6が分解するスピードが遅くなる。浄化対象となるにおいは、時刻T4以降、嗅覚閾値より小さくなる。それに伴って、浄化対象となるにおいを有する有機物の分解により中間生成物が生成されるスピードも遅くなる。そして、その中間生成物も光触媒6により分解されるため、中間生成物による中間臭は時刻T8でピークとなるものの、その中間臭の強さは嗅覚閾値より小さいものとなる。したがって、車室内に乗員が在室しているときに光触媒6による空気清浄能力を抑制すると、中間臭のピーク値が下がるので、または乗員に対して中間臭による不快感を与えることがないか、または、中間臭による不快感が抑制される。
【0048】
以上説明した第1実施形態の制御装置1および車両用空気清浄システム2は、次の作用効果を奏する。
(1)第1実施形態では、制御装置1は、乗員が在室しているときの空気清浄ユニット3による空気清浄能力を、乗員が不在のときの空気清浄ユニット3による空気清浄能力よりも小さくする。
これにより、車室内に乗員が在室しているときは、空気清浄ユニット3による空気清浄能力を抑制することで、においを有する有機物の分解スピードを下げて、中間生成物による中間臭のピーク値を下げることが可能である。したがって、この制御装置1は、車室内に在室する乗員に中間臭による不快感を与えることなく、または、中間臭による不快感を抑制し、空気清浄を行うことができる。
【0049】
(2)第1実施形態では、制御装置1は、乗員判定部4の出力信号により乗員が不在と判定されたときに空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大とする。一方、制御装置1は、乗員判定部4の出力信号により乗員が在室していると判定されたときに空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大よりも小さくする。
これによれば、車室内に乗員が不在の場合、空気清浄ユニット3による空気清浄能力を最大とすることで、空気清浄を短時間で効率的に行うことができる。一方、車室内に乗員が在室している場合、空気清浄ユニット3による空気清浄能力を最大よりも小さくすることで、中間臭による不快感を乗員に与えることなく、または中間臭による不快感を抑制し、空気清浄を行うことができる。
【0050】
(3)第1実施形態では、制御装置1は、光源装置7が照射する光の照度を上げることで、光触媒6による空気清浄能力を大きくする。一方、制御装置1は、光源装置7が照射する光の照度を下げることで、光触媒6による空気清浄能力を小さくする。
これによれば、空気清浄ユニット3による空気清浄能力と、光触媒6に照射される光の照度とは相関関係を有する。そのため、制御装置1は、光源装置7が照射する光の照度を調整することで、空気清浄ユニット3による空気清浄能力の制御を容易に行うことができる。
【0051】
(4)第1実施形態では、制御装置1は、着座センサの出力信号、シフトレバーの出力信号、空調制御装置による空調装置のオン・オフ信号、ドアロック装置の出力信号の少なくとも1つに基づき、車室内に乗員が在室しているかまたは不在であるかを判定する。
これによれば、一般に車両に搭載されている装置を乗員判定部4として用いることが可能である。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して車両用空気清浄システム2の構成の一部と、制御装置1が実行する空気清浄処理の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
図7に示すように、車両用空気清浄システム2は、においセンサ10を備えている。においセンサ10は、空気に含まれるにおいを有する所定の物質の濃度に応じた信号を出力するセンサである。においセンサ10は、例えば、空気清浄ユニット3が有する空気通路5の吹出口の手前に設けられている。においセンサ10が出力する信号は、制御装置1に入力される。
【0054】
次に、第2実施形態に係る制御装置1が実行する空気清浄処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
まず、ステップS200で、においセンサ10が出力する信号が制御装置1に入力される。なお、車両が駐車されている状態で、イグニッションスイッチなどの車両スイッチがオフされている場合には、においセンサ10への通電がオンされた後、においセンサ10が出力する信号が制御装置1に入力される。
【0056】
次に、ステップS210で、乗員判定部4が出力する信号が制御装置1に入力される。
続いて、ステップS220で制御装置1は、乗員判定部4から入力される信号に基づいて、車室内に乗員が在室しているか、または不在であるかを判定する。この第2実施形態のステップS210とS220の処理は、第1実施形態で説明したステップS110とS120の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0057】
ステップS220において制御装置1は、車室内に乗員が不在であると判定した場合(すなわち、ステップS220にて肯定判定の場合)、処理をステップS230に進める。
ステップS230で制御装置1は、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大として作動させ、車室内の空気の浄化を実行する。この第2実施形態のステップS230の処理は、第1実施形態で説明したステップS130の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0058】
それに対し、上述したステップS220において制御装置1は、車室内に乗員が在室していると判定した場合(すなわち、ステップS220にて否定判定の場合)、処理をステップS225に進める。
【0059】
ステップS225で制御装置1は、においセンサ10が出力する信号が、所定の閾値以下であるか否かを判定する。所定の閾値は、例えば、空気清浄ユニット3による空気清浄能力を最大として空気清浄を行ったときに発生する中間臭がピーク値になるときでも嗅覚閾値未満となる、車室内のにおいの強度(すなわち、においセンサ10が検出するにおい物質の濃度)に設定される。なお、嗅覚閾値とは、第1実施形態で説明したものと同じく、一般的な乗員がにおいに気づく最小のレベルをいう。
【0060】
ステップS225で制御装置1は、においセンサ10が出力する信号が、所定の閾値以下であると判定した場合(すなわち、ステップS225にて肯定判定の場合)、処理をステップS230に進める。
【0061】
ステップS230で制御装置1は、上述したように、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大として作動させ、車室内の空気の浄化を実行する。この場合、においセンサ10の出力値が所定の閾値以下であるので、そのにおいを有する有機物が光触媒6により分解されたときに発生する中間臭がピーク値となるときでも嗅覚閾値未満となる。そのため、車室内に在室している乗員に中間臭による不快感を与えることがない。
【0062】
これに対し、ステップS225で制御装置1は、においセンサ10が出力する信号が、所定の閾値より大きいと判定した場合(すなわち、ステップS225にて否定判定の場合)、処理をステップS240に進める。
ステップS240で制御装置1は、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大よりも小さくして作動させ、車室内の空気の浄化を実行する。この第2実施形態のステップS240の処理は、第1実施形態で説明したステップS140の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0063】
ステップS230またはステップS240で制御装置1は、空気清浄ユニット3による空気清浄を所定時間実行した後、空気清浄ユニット3による空気清浄を終了する。
【0064】
以上説明した第2実施形態の制御装置1は、においセンサ10の出力値が所定の閾値より小さい場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、光源装置7が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
これによれば、においセンサ10の出力値が小さい場合、そのにおいを有する有機物が光触媒6により分解されたときに発生する中間臭も少ないので、車室内に在室している乗員に対して中間臭による不快感を与えることがない。したがって、制御装置1は、光源装置7が照射する光の照度を最大として、空気清浄を短時間で効率的に行うことができる。
【0065】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態も、第1実施形態等に対して車両用空気清浄システム2の構成の一部と、制御装置1が実行する空気清浄処理の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
図9に示すように、車両用空気清浄システム2は、温湿度センサ11を備えている。温湿度センサ11は、車室内の温度および湿度を検出するセンサである。温湿度センサ11が出力する信号は、制御装置1に入力される。
【0067】
なお、車両用空気清浄システム2は、温湿度センサ11に代えて、車室内の温度を検出する温度センサ、または、車室内の湿度を検出する湿度センサの少なくとも一方を備えていてもよい。
【0068】
次に、第3実施形態に係る制御装置1が実行する空気清浄処理について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0069】
まず、ステップS300で、温湿度センサ11が出力する信号が制御装置1に入力される。なお、車両が駐車されている状態で、イグニッションスイッチなどの車両スイッチがオフされている場合には、温湿度センサ11への通電がオンされた後、温湿度センサ11が出力する信号が制御装置1に入力される。
【0070】
次に、ステップS310で、乗員判定部4が出力する信号が制御装置1に入力される。
続いて、ステップS320で制御装置1は、乗員判定部4から入力される信号に基づいて、車室内に乗員が在室しているか、または不在であるかを判定する。この第3実施形態のステップS310とS320の処理は、第1実施形態で説明したステップS110とS120の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0071】
ステップS320において制御装置1は、車室内に乗員が不在であると判定した場合(すなわち、ステップS320にて肯定判定の場合)、処理をステップS330に進める。
ステップS330で制御装置1は、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大として作動させ、車室内の空気の浄化を実行する。この第3実施形態のステップS330の処理は、第1実施形態で説明したステップS130の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0072】
それに対し、上述したステップS320において制御装置1は、車室内に乗員が在室していると判定した場合(すなわち、ステップS320にて否定判定の場合)、処理をステップS325に進める。
【0073】
ステップS325で制御装置1は、温湿度センサ11が出力する信号が、所定の温度条件または所定の湿度条件を満たすか否か判定する。この所定の条件は、乗員の嗅覚感度を低下させる温度または湿度に設定される。
【0074】
ここで、一般に、環境の温度および湿度が人の嗅覚感度に影響を及ぼすことが知られている。具体的には、温度20~30℃、かつ、相対湿度60~70%の環境で人の嗅覚感度は最も高くなる。それに対し、温度10℃以下の環境では、人の嗅覚感度は、最も感度が高いときに比べて0.3倍程度に低下する。また、相対湿度20%以下の環境でも、人の嗅覚感度は、最も感度が高いときに比べて0.3倍程度に低下する。このことから、ステップS325の判定で用いられる所定の温度条件として、例えば、車室内の温度が10℃以下と設定することができる。また、所定の湿度条件として、例えば、車室内の相対湿度が20%以下と設定することができる。なお、所定の条件はこれに限るものでなく、乗員の嗅覚感度が低下する温度または湿度を実験などにより適宜設定することが可能である。
【0075】
ステップS325で制御装置1は、温湿度センサ11が出力する信号が所定の温度条件または湿度条件を満たすと判定した場合(すなわち、ステップS325にて肯定判定の場合)、処理をステップS330に進める。
【0076】
ステップS330で制御装置1は、上述したように、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大として作動させ、車室内の空気の浄化を実行する。この場合、車室内に乗員が在室していても、乗員の嗅覚感度が低下しているので、その乗員は中間臭を感じることが殆ど無い。
【0077】
これに対し、ステップS325で制御装置1は、温湿度センサ11が出力する信号が所定の条件を満たしていないと判定した場合(すなわち、ステップS325にて否定判定の場合)、処理をステップS340に進める。
ステップS340で制御装置1は、空気清浄ユニット3の光触媒6による空気清浄能力を最大よりも小さくして作動させ、車室内の空気の浄化を実行する。この第3実施形態のステップS340の処理は、第1実施形態で説明したステップS140の処理と同一であるので、説明を省略する。
【0078】
ステップS330またはステップS340で制御装置1は、空気清浄ユニット3による空気清浄を所定時間実行した後、空気清浄ユニット3による空気清浄を終了する。
【0079】
以上説明した第3実施形態の制御装置1は、温湿度センサ11の出力値に基づき、乗員の嗅覚感度が所定の嗅覚閾値以下となる温度条件または湿度条件が満たされる場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、光源装置7が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
これによれば、乗員の嗅覚感度が所定の嗅覚閾値以下となる条件が満たされる場合には、乗員が中間臭を感じにくいので、空気清浄ユニット3による空気清浄能力を最大として、空気清浄を短時間で効率的に行うことができる。
【0080】
(他の実施形態)
(1)上記第2実施形態では、においセンサ10を用いてにおいの強さを直接的に検出し、においのレベルが低いときには空気清浄ユニット3による空気清浄能力を最大とした。また、上記第3実施形態では、温湿度センサ11の出力値により乗員の嗅覚感度が低いときには空気清浄ユニット3による空気清浄能力を最大とした。
それに対し、第2実施形態と第3実施形態の組み合わせとして、においセンサ10の出力値によりにおいのレベルが高いときであっても、温湿度センサ11の出力値により乗員の嗅覚感度が低いと判定されるときには空気清浄ユニット3による空気清浄能力を最大としてもよい。
【0081】
(2)例えば、空気清浄ユニット3は光触媒6と光源装置7を有するものに限らず、例えばイオン発生器や脱臭フィルタなど光触媒6とは異なる空気清浄手段を持つ装置と組み合わされていてもよい。
【0082】
(3)例えば、車載用空調装置に内蔵された他の空気清浄機と、独立した光触媒空気清浄ユニット3とが組み合わされていてもよい。
【0083】
(4)例えば、車載用空調装置に内蔵された光触媒空気清浄ユニット3と、独立した他の空気清浄機とが組み合わされていてもよい。
【0084】
(5)上記第3実施形態では、制御装置1は、温湿度センサ11の出力値に基づき、光源装置7が照射する光の照度を制御したが、それに限らず、温度センサまたは湿度センサの出力値に基づき、光源装置7が照射する光の照度を制御してもよい。
【0085】
このように、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0086】
本発明に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本発明に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本発明に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0087】
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、制御装置は、車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する乗員判定部が設置された車両に搭載される。この制御装置は、光触媒に光を照射して車室内の空気を清浄する空気清浄ユニットの駆動を制御するものである。この制御装置は、乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行する。
【0088】
第2の観点によれば、制御装置は、乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときに空気清浄ユニットの光触媒による空気清浄能力を最大として作動させ、乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときに空気清浄ユニットの光触媒による空気清浄能力を最大よりも小さくする制御を実行する。
これによれば、車室内に乗員が不在の場合、空気清浄ユニットによる空気清浄能力を最大とすることで、空気清浄を短時間で効率的に行うことができる。一方、車室内に乗員が在室している場合、空気清浄ユニットによる空気清浄能力を最大よりも小さくすることで、中間臭による不快感を乗員に与えることなく、または中間臭による不快感を抑制し、空気清浄を行うことができる。
【0089】
第3の観点によれば、空気清浄ユニットは、車室内空気が流れる空気通路に設けられる光触媒、および、その光触媒に光を照射する光源装置を有している。制御装置は、光源装置が照射する光の照度を上げることで、光触媒による空気清浄能力を大きくする制御を実行する。一方、制御装置は、光源装置が照射する光の照度を下げることで、光触媒による空気清浄能力を小さくする制御を実行する。
これによれば、空気清浄ユニットによる空気清浄能力と、光触媒に照射される光の照度とは相関関係を有する。そのため、制御装置は、光源装置が照射する光の照度を調整することで、空気清浄ユニットによる空気清浄能力の制御を容易に行うことができる。
【0090】
第4の観点によれば、車両には、車室内のにおいの強さを検出するにおいセンサが搭載されている。制御装置は、においセンサの出力値が所定の閾値より小さい場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
これによれば、においセンサの出力値が小さい場合、そのにおいを有する有機物が光触媒により分解されたときに発生する中間臭も少ないので、車室内に乗員が在室していても、乗員は中間臭を感じることが殆ど無い。したがって、車両用制御装置は、光源装置が照射する光の照度を最大として、空気清浄を短時間で効率的に行うことができる。
なお、所定の閾値は、例えば、空気清浄ユニットによる空気清浄能力を最大として車室内の空気清浄を行ったときに発生する中間臭がピーク値のときでも一般的な乗員がその中間臭に気づかない程度となる、車室内のにおいの強度レベルに設定される。
【0091】
第5の観点によれば、車両には、車室内の温度を検出する温度センサ、車室内の湿度を検出する湿度センサ、または、車室内の温度および湿度を検出する温湿度センサの少なくとも1つが搭載されている。制御装置は、温度センサ、湿度センサまたは温湿度センサの少なくとも1つの出力値に基づき、乗員の嗅覚感度が所定の嗅覚閾値以下となる温度条件または湿度条件が満たされる場合、乗員が在室しているか不在であるかに関わらず、光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
これによれば、一般に、車室内の温度または湿度に応じて乗員の嗅覚感度が低下することが知られている。そのため、乗員の嗅覚感度が所定の嗅覚閾値以下となる条件が満たされる場合には、乗員が中間臭を感じにくいので、空気清浄ユニットによる空気清浄能力を最大として、空気清浄を短時間で効率的に行うことができる。
【0092】
第6の観点によれば、制御装置は、車室内の温度が10℃以下、または、車室内の相対湿度が20%以下の場合、光源装置が照射する光の照度を最大とする制御を実行する。
これによれば、一般に、車室内の温度が10℃以下になると、乗員の嗅覚感度は、最も感度が高いときに比べて0.3倍程度に低下することが知られている。また、車室内の相対湿度が20%以下のときにも、乗員の嗅覚感度は、最も感度が高いときに比べて0.3倍程度に低下することが知られている。そのため、乗員の嗅覚感度がそのように非常に低くなる場合には、乗員が中間臭を感じにくいので、空気清浄ユニットによる空気清浄能力を最大として、空気清浄を短時間で効率的に行うことができる。
【0093】
第7の観点によれば、乗員判定部は、座席に設置される着座センサ、シフト操作に用いられるシフトレバー、空調装置を制御する空調制御装置、または、ドアロック装置の少なくとも1つである。制御装置は、着座センサの出力信号、シフトレバーの出力信号、空調制御装置による空調装置のオン・オフ信号、ドアロック装置の出力信号の少なくとも1つに基づき、車室内に乗員が在室しているかまたは不在であるかを判定する。
これによれば、一般に車両に搭載されている装置を乗員判定部として用いることが可能である。
【0094】
第8の観点によれば、車両用空気清浄システムは、車両に搭載されるものであり、次の構成を備える。空気清浄ユニットは、車室内空気が流れる空気通路に設けられる光触媒、および、その光触媒に対して光を照射する光源装置を有する。乗員判定部は、車室内における乗員の在室または不在を判定可能な信号を出力する。制御装置は、乗員判定部の出力信号により乗員が在室していると判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力を、乗員判定部の出力信号により乗員が不在と判定されたときの空気清浄ユニットによる空気清浄能力よりも小さくする制御を実行する。
これによれば、この車両用空気清浄システムも、第1の観点に記載の制御装置と同様の作用効果を奏することができる。
なお、第8の観点に対し、上記第2~第7の観点を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 車両用制御装置
3 空気清浄ユニット
4 乗員判定部
6 光触媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10