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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】引き戸構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/52 20060101AFI20240416BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20240416BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
E06B1/52
E05F5/00 D
E06B3/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020078988
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021173094
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】太田 聡
(72)【発明者】
【氏名】石川 麻子
(72)【発明者】
【氏名】石松 由依
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025518(JP,A)
【文献】特開2004-238931(JP,A)
【文献】特開2020-016143(JP,A)
【文献】特開平11-159250(JP,A)
【文献】特開平09-268842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
E06B 3/04-3/46,3/50-3/52
E05F 5/00-5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された壁と、
前記壁のうち前記開口部側の縦縁部に鉛直方向に沿って取り付けられ縦枠と、
前記開口部の閉じ位置と前記開口部の開き位置との間で移動可能な引き戸と、
前記閉じ位置において前記引き戸の移動を規制する規制部と、を備え、
前記縦枠は、
前記壁のうち前記開口部側で前記壁の厚さ方向に延びる面に、前記引き戸の移動方向において対向する縦枠本体部と、
前記縦枠本体部に接続され、前記壁よりも前記厚さ方向において外側へ張り出す張出部と、
を含み、
前記規制部は、
前記張出部の前記厚さ方向の外側に配置されるように前記張出部に固定され、前記引き戸の移動方向において前記引き戸の戸先から力を受ける受け部と、
前記移動方向のうち前記開き位置から前記閉じ位置に向かう方向である閉じ方向において前記縦枠本体部よりも先端側に配置されるとともに、前記移動方向において前記張出部に対して前記引き戸と反対側の位置で対向するように、前記受け部から前記壁に向かって延びる延設部と、を含む、引き戸構造。
【請求項2】
前記張出部は、前記移動方向において前記引き戸側に位置する第1面と、前記移動方向において前記第1面と反対側に位置する第2面と、を含み、
前記延設部は、前記第2面に接触している、請求項1に記載の引き戸構造。
【請求項3】
前記延設部は、接着剤により前記第2面に固定されている、請求項2に記載の引き戸構造。
【請求項4】
前記壁は、前記規制部側を向く第1壁面と、前記壁の厚さ方向において前記第1壁面と反対側を向く第2壁面とを含み、
前記張出部は、前記第1壁面よりも外側に張り出しており、
前記延設部は、前記第1壁面に接触している、請求項1~3のいずれか1項に記載の引き戸構造。
【請求項5】
前記延設部は、接着剤により前記第1壁面に固定されている、請求項4に記載の引き戸構造。
【請求項6】
前記縦枠及び前記規制部の外周を囲う化粧枠をさらに備えた、請求項1~5のいずれか1項に記載の引き戸構造。
【請求項7】
前記引き戸は、前記鉛直方向に沿った状態で床面によって支持されており、
前記引き戸の上端部を係止する係止具であって、前記引き戸の前記閉じ位置と前記開き位置との間での移動を許容すると共に前記引き戸の前記床面への倒れ込みを規制する前記係止具をさらに備え、
前記規制部は、前記縦枠及び前記壁に対してのみ固定されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の引き戸構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の住宅等のリフォームにおいて、開き戸が引き戸に変更される場合がある。この場合、開き戸を引き戸に変更する方法としては、壁を壊して出入り枠ごと引き戸仕様のものに交換する方法の他に、既存の出入り枠を残したままで開き戸のみを撤去し、当該出入り枠の外側に引き戸を設置する方法もある(アウトセット引き戸)。後者の方法によれば、壁を壊す場合に比べてリフォームの工事が簡易でコストを抑えることができ、また施工時間も短縮されるというメリットがある。
【0003】
特許文献1には、建物のリフォームにおいて、壁に形成された開口部に引き戸を設けるために用いられる引き戸枠が記載されている。この引き戸枠は、開口部の縁部を被う開口部枠と、引き戸用上枠と、引き戸用上枠の両端に設けられた第1縦枠及び第2縦枠とを備えている。第1縦枠は、引き戸を受ける部分であって開口部枠の溝に嵌め込まれた受部材と、この受部材に設けられた裏部材と、受部材と裏部材との外側に被せられた前面枠とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-238931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された引き戸枠では、第1縦枠(受部材)が開口部枠の溝に嵌め込まれることによって当該開口部枠に取り付けられているが、その強度は必ずしも十分とは言えない。このため、引き戸をスライドさせて壁の開口部を閉じる際に、第1縦枠(受部材)に対して戸先が強く突き当たると、第1縦枠が開口部枠から外れ易くなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、引き戸の突当りに対する強度がより向上した引き戸構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る引き戸構造は、開口部が形成された壁と、前記壁のうち前記開口部側の縦縁部に鉛直方向に沿って取り付けられ、前記壁よりも外側へ張り出す張出部を含む縦枠と、前記開口部の閉じ位置と前記開口部の開き位置との間で移動可能な引き戸と、前記閉じ位置において前記引き戸の移動を規制する規制部と、を備えている。前記規制部は、前記引き戸の移動方向において前記引き戸の戸先から力を受ける受け部と、前記移動方向において前記張出部に対して前記引き戸と反対側の位置で対向するように、前記受け部から前記壁に向かって延びる延設部と、を含む。
【0008】
この引き戸構造によれば、引き戸の戸先が受け部に突き当たることにより、延設部が張出部を押圧する向きの回転モーメントが規制部に対して作用する。これにより、規制部が縦枠の張出部に対して係合するため、引き戸の突当り時に受ける力によって規制部が縦枠から外れるのを防止することができる。したがって、本発明の引き戸構造によれば、規制部が延設部を含まない場合に比べて、引き戸の突当りに対する規制部の取付強度をより向上させることができる。
【0009】
上記引き戸構造において、前記張出部は、前記移動方向において前記引き戸側に位置する第1面と、前記移動方向において前記第1面と反対側に位置する第2面と、を含んでいてもよい。前記延設部は、前記第2面に接触していてもよい。
【0010】
この構成によれば、延設部が張出部の第2面に対して非接触である場合に比べて、引き戸によって開口部を閉じたときの規制部のがたつきを防止することが可能になる。
【0011】
上記引き戸構造において、前記延設部は、接着剤により前記第2面に固定されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、規制部を縦枠に対してより強固に固定することができるため、規制部の取付強度をさらに向上させることができる。
【0013】
上記引き戸構造において、前記壁は、前記規制部側を向く第1壁面と、前記壁の厚さ方向において前記第1壁面と反対側を向く第2壁面とを含んでいてもよい。前記張出部は、前記第1壁面よりも外側に張り出していてもよい。前記延設部は、前記第1壁面に接触していてもよい。
【0014】
この構成によれば、延設部が第1壁面に対して非接触である場合に比べて、引き戸によって開口部を閉じたときの規制部のがたつきを防止することが可能になる。
【0015】
上記引き戸構造において、前記延設部は、接着剤により前記第1壁面に固定されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、規制部を壁にも固定することにより、規制部の取付強度を一層向上させることができる。
【0017】
上記引き戸構造は、前記縦枠及び前記規制部の外周を囲う化粧枠をさらに備えていてもよい。
【0018】
この構成によれば、縦枠と規制部との境界が化粧枠によって遮蔽されるため、出入り枠の外観に一体感を持たせることができる。
【0019】
上記引き戸構造において、前記引き戸は、前記鉛直方向に沿った状態で床面によって支持されていてもよい。上記引き戸構造は、前記引き戸の上端部を係止する係止具であって、前記引き戸の前記閉じ位置と前記開き位置との間での移動を許容すると共に前記引き戸の前記床面への倒れ込みを規制する前記係止具をさらに備えていてもよい。前記規制部は、前記縦枠及び前記壁に対してのみ固定されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、引き戸を上吊り状態で移動可能にするためのレール等を開口部の上縁に沿って設ける必要がなく、引き戸の施工を簡易化することができる。
【0021】
なお、開口部の上縁に沿ってレールが設けられる場合には、当該レールに対して規制部を固定することも可能であるが、上記構成では規制部が縦枠及び壁に対してのみ固定されている。したがって、この場合には、延設部を設けることによる補強効果が、縦枠からの規制部の脱落防止においてより有効に寄与する。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、引き戸の突当りに対する強度がより向上した引き戸構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る引き戸構造の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】引き戸が閉じ位置にあるときの上記引き戸構造の水平断面図である。
図3】引き戸が開き位置にあるときの上記引き戸構造の水平断面図である。
図4】上記引き戸構造の鉛直断面図である。
図5】上記引き戸構造における規制部の取付強度の向上の効果を説明するための模式図である。
図6】上記引き戸構造の施工方法における接着剤の塗布を説明するための模式図である。
図7】上記引き戸構造の施工方法における規制部のビス止めを説明するための模式図である。
図8】上記引き戸構造の施工方法における化粧枠の取り付けを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る引き戸構造を詳細に説明する。
【0025】
まず、本発明の一実施形態に係る引き戸構造1の構成を、図1図4に基づいて説明する。引き戸構造1は、例えば住宅等のリフォームにおいて開き戸が引き戸に変更されたものであり、引き戸30が壁10の開口部11の外側に配置されている。本実施形態に係る引き戸構造1は、住宅内において2つの居住空間を仕切るものである。図1に示すように、引き戸構造1は、壁10と、開口枠20と、引き戸30と、規制部40と、を主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0026】
壁10は、住宅内の空間を第1居住空間S1と第2居住空間S2とに仕切るものである(図2図3)。図1に示すように、壁10には、正面視矩形状の開口部11が形成されている。この開口部11は、第1居住空間S1と第2居住空間S2とを連通させる部分であり、開口枠20によって取り囲まれている。
【0027】
図2及び図3に示すように、壁10は、第1面材15と、第2面材16と、間柱17と、を有する。第1面材15及び第2面材16は、壁厚方向に隙間を空けた状態で、床面F0に対して垂直で且つ互いに平行に配置されている。第1面材15は、例えば石膏ボード等からなり、規制部40側(第1居住空間S1側)を向く第1壁面15Aを含む。第1面材15は、間柱17の一方の側面17A(第1居住空間S1側の側面)に固定されている。
【0028】
第2面材16も、第1面材15と同様に石膏ボード等からなり、第2居住空間S2側を向く第2壁面16Aを含む。第2壁面16Aは、壁厚方向において第1壁面15Aと反対側を向いている。第2面材16は、間柱17の他方の側面17B(第2居住空間S2側の側面)に固定されている。間柱17は、第1面材15と第2面材16との間の隙間に配置された矩形断面の部材であり、鉛直方向に延びている。
【0029】
開口枠20は、上記リフォーム前に開き戸用の枠として用いられていたものである。開口枠20は、開口部11を取り囲む三方枠であり、第1縦枠21と、第2縦枠22と、上枠23と、を含む(図1)。第1縦枠21は、壁10のうち開口部11側の第1縦縁部13に鉛直方向に沿って取り付けられている。図2及び図3に示すように、第1縦枠21は、第1壁面15Aよりも外側(第1居住空間S1側)へ張り出す第1張出部21Aと、第2壁面16Aよりも外側(第2居住空間S2側)へ張り出す第2張出部21Bと、第1張出部21Aと第2張出部21Bとの間に位置する縦枠本体部21Cと、を有する。第1縦枠21は、鉛直方向全体に亘って第1縦縁部13に取り付けられている。
【0030】
第2縦枠22は、壁10のうち開口部11側の第2縦縁部14に鉛直方向に沿って取り付けられている。第2縦縁部14は、第1縦縁部13に対して開口部11を挟んで壁面方向に対向する部分である。図2及び図3に示すように、第2縦枠22は、第1壁面15Aよりも外側(第1居住空間S1側)へ張り出す第1張出部22Aと、第2壁面16Aよりも外側(第2居住空間S2側)へ張り出す第2張出部22Bと、第1張出部22Aと第2張出部22Bとの間に位置する縦枠本体部22Cと、を有する。第2縦枠22は、鉛直方向全体に亘って第2縦縁部14に取り付けられている。また上枠23(図1)は、壁10の上縁部12において水平方向に沿って取り付けられている。
【0031】
引き戸30は、開口部11の閉じ位置と開口部11の開き位置との間で壁10に沿って移動(スライド)可能なものであり、当該開口部11よりも第1居住空間S1側に配置されている(図2図3)。図1に示すように、引き戸30は、正面視矩形状からなり、開口部11よりもやや大きい。上記「閉じ位置」とは、正面視において開口部11の全体が引き戸30により覆われる位置である(図2)。一方、上記「開き位置」とは、引き戸30が壁厚方向において開口部11と重ならず、開口部11の全体が開放される位置である(図3)。
【0032】
図1中において、引き戸30のうち左側端部が戸先31であり、右側端部が戸尻32である。図1に示すように、戸先31のうち鉛直方向の略中央には切欠き31Aが形成されており、当該切欠き31Aに引手80が配置されている。
【0033】
図2の断面に示すように、引手80は、中空柱状に形成された指掛け部81を有しており、当該指掛け部81の前後には第1空間83及び第2空間84がそれぞれ形成されている。また引手80は、戸先31側の端面と面一である摘み部82も有する。
【0034】
これにより、図3に示すように、戸先31側の端面31Bが第2縦枠22の内面(開口部11に臨む面)と面一になるまで引き戸30を開いても、第2居住空間S2側にいる人が引手80に形成された第1空間83に指を入れて摘み部82を摘むことにより、引き戸30の閉操作を行うことができる。この引手80を採用することにより、引き戸30を開く際に、戸先31側の端面31Bを第2縦枠22の内面よりも開口部11側の位置で止める必要がなく、開口部11の全体を開放することができる。したがって、開口部11の有効面積を広く確保することが可能である。なお、この引手80は、本発明の引き戸構造における必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0035】
引き戸30の下端部34には、スライド用の車輪36が設けられている。また図1に示すように、床面F0のうち開口部11よりも第1居住空間S1側(図中手前側)の部分には、床レール60が水平方向(壁面方向)に沿って敷かれている。床レール60は、床面F0のうち規制部40の下端部に隣接する部分から第2縦枠22の下端部に隣接する部分を超えて水平方向に延びており、その延出端にはストッパー61が設けられている。このストッパー61は、上記開き位置において引き戸30の移動(スライド)を規制する。
【0036】
引き戸30は、鉛直方向に沿った状態で下端部34が床面F0によって支持されている。具体的には、図4に示すように、引き戸30は、車輪36が床レール60の溝内に位置するように配置されており、床レール60に沿って上記閉じ位置と上記開き位置との間でスライド可能となっている。なお、図1では、説明上の便宜のため、引き戸30が床レール60から取り外された状態が示されている。
【0037】
引き戸構造1は、引き戸30の上端部33を係止する係止具50をさらに備えている。係止具50は、例えばガイド金物であり、第2縦枠22と上枠23との接続部(図1中の開口枠20における右上の隅部)にビス等の固定具によって固定されている。
【0038】
係止具50は、引き戸30の上記閉じ位置と上記開き位置との間での移動(スライド)を許容すると共に、当該引き戸30の床面F0への倒れ込みを規制する金具である。具体的には、図4の鉛直断面図に示すように、引き戸30の上端部33には鉛直方向下向きに凹む凹溝33Aが形成されており、係止具50は当該凹溝33Aに嵌り込むように屈曲した形状に形成されている。このように、係止具50が引き戸30の凹溝33A内に嵌り込んで上端部33を係止することにより、引き戸30が第1居住空間S1側の床面F0に向かって倒れるのを防止することができる。なお、この係止具50も、本発明の引き戸構造における必須の構成要素ではなく、省略可能である。
【0039】
規制部40は、上記閉じ位置において引き戸30の移動を規制する部材であり、第1縦枠21(第1張出部21A)に取り付けられている。規制部40は、開口部11側において第1縦枠21と略面一になるように設けられている。規制部40は、第1張出部21Aに対してビス等の固定具及び接着剤により固定されると共に、第1壁面15Aに対しても接着剤により固定されている。
【0040】
図1に示すように、規制部40は、第1縦枠21に沿って鉛直方向に延びる柱状の部材であり、第1縦枠21と略同じ高さを有する。また規制部40の厚さ(壁厚方向の幅)は、第1張出部21Aのそれよりも大きい。本実施形態における規制部40は、第1縦枠21(第1張出部21A)及び壁10(第1壁面15A)に対してのみ固定されており、その他の部材に対しては固定されていない。
【0041】
規制部40は、引き戸30の移動方向(壁面方向)において戸先31から力を受ける受け部41と、当該受け部41から壁10(第1壁面15A)に向かって延びる延設部42と、を有する。受け部41及び延設部42は、それぞれ矩形断面を有すると共に、鉛直方向に延びている。図2及び図3に示すように、受け部41は、壁面方向において引き戸30と重なるように位置している。別の観点から説明すると、受け部41は、引き戸30の戸先31を受けることができるように、壁厚方向において第1張出部21Aよりも第1居住空間S1側に位置している(張り出している)。また受け部41のうち引き戸30側を向く面(受け面)には、戸先31の形状に沿った凹部41Aが形成されている。
【0042】
延設部42は、壁面方向において第1張出部21Aに対して引き戸30(開口部11)と反対側の位置で対向している。すなわち、図2及び図3に示すように、延設部42は、壁面方向において第1張出部21Aと重なるように位置している。
【0043】
より具体的には、第1張出部21Aは、壁面方向において引き戸30側(開口部11側)に位置すると共に壁厚方向に延びる第1面26と、当該壁面方向において第1面26と反対側に位置すると共に第1面26と平行に延びる第2面24と、第1面26の規制部40側の端部と第2面24の規制部40側の端部とを繋ぐ面であって壁面方向に延びる第3面25と、を有する。図2及び図3に示すように、受け部41は、規制部40のうち壁厚方向において第3面25よりも第1居住空間S1側に位置する部分である。一方、延設部42は、規制部40のうち壁厚方向において第3面25よりも壁10側に位置する部分である。
【0044】
受け部41は、第3面25に接触すると共に、ビス等の固定具及び接着剤により第3面25に固定されている。このビスは、規制部40の長さ方向(鉛直方向)に間隔を空けて複数設けられている。延設部42は、第2面24に接触すると共に、接着剤により第2面24に固定されている。また延設部42は、第1壁面15Aに接触すると共に、接着剤により第1壁面15Aに固定されている。
【0045】
引き戸構造1は、第1縦枠21及び規制部40の外周を囲う化粧枠70をさらに備えている。図2及び図3に示すように、化粧枠70は、第1縦枠21及び規制部40の外周全体を覆うように、第2壁面16Aとの接触部から第1壁面15Aとの接触部まで至る屈曲形状に形成されている。第1縦枠21と規制部40との境界は、化粧枠70によって遮蔽されている。化粧枠70は、例えば薄いMDFなどからなるものであるが、これに限定されない。なお、図1では、説明上の便宜のため、化粧枠70が省略されている。
【0046】
化粧枠70のうち受け部41の凹部41Aを覆う部分は、当該凹部41Aに沿って凹んでおり、この部分に引き戸30の戸先31が突き当たる。また規制部40のうち受け面に対する反対側の面と化粧枠70との間には隙間が空いており、当該隙間にはスペーサ71が配置されている。このように、規制部40と化粧枠70との間に隙間を設けることにより、施工誤差を吸収することができる。
【0047】
上記の通り、本実施形態に係る引き戸構造1では、規制部40が延設部42を有しており、これにより当該延設部42が設けられない場合に比べて規制部40の取付強度が向上している。具体的には次の通りである。
【0048】
図5は、引き戸30の戸先31の近傍を拡大した図であり、同図では化粧枠70は省略されている。図5に示すように、引き戸30を閉じ位置に移動させると、戸先31から受け部41に対して壁面方向の一方向き(図5中の左向き)に力F1が加わる。この力F1は、規制部40における壁厚方向の中心C1よりも外側(第1居住空間S1側)において作用する成分を含む。
【0049】
このため、規制部40に対して図5中時計回りの回転モーメントM1が加わり、その結果、延設部42が第1張出部21A(第2面24)を力F1と反対向きに押す力F2が発生する。これにより、延設部42が第1張出部21Aを押圧するため、戸先31の突当り時に発生する力F1によって規制部40が第1縦枠21から外れるのを防止することができる。したがって、本実施形態に係る引き戸構造1によれば、規制部40が延設部42を有しない場合に比べて、規制部40の取付強度を向上させることが可能になる。
【0050】
ここで、上記引き戸構造1の施工方法について、図6図8に基づいて説明する。本施工方法を開始する前提として、壁10の開口部11を開閉する開き戸(図示しない)が開口枠20から予め撤去されている。
【0051】
まず、規制部40の接着面40A(第2面24、第3面25及び第1壁面15Aに接着される面)に接着剤A1を塗布する(図6)。このとき、接着面40Aの鉛直方向全体に亘って接着剤A1を塗布することが好ましい。
【0052】
次に、図7に示すように、規制部40の接着面40Aを第2面24、第3面25及び第1壁面15Aに押し当て、さらにビス100を打ち付けることにより、規制部40を第1張出部21Aに固定する。このとき、鉛直方向の複数の箇所においてビス100を打ち付けることが好ましい。
【0053】
次に、第1縦枠21及び規制部40の外面全体に接着剤A2を塗布する(図8)。そして、別途準備された化粧枠70の内面を接着剤A2に押し当て、第1縦枠21及び規制部40の外周全体を囲うように化粧枠70を取り付ける。その後、床レール60の施工、係止具50の取り付け及び引き戸30の設置を順次実施することにより、本施工方法が終了する。
【0054】
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0055】
上記実施形態では、延設部42が第1張出部21Aの第2面24に接触する場合を一例として説明したが、延設部42と第2面24との間に隙間が空いていてもよい。また延設部42と第1壁面15Aとの間にも隙間が空いていてもよい。
【0056】
規制部40は、第1縦枠21にビス止めされるだけでなく、壁10(第1面材15)に対してもビス止めされてもよい。
【0057】
本発明の引き戸構造は、住宅の室内ドア、すなわち住宅内の空間を2つの居住空間に仕切る部分に適用されてもよいが、これに限定されない。例えば、住宅内の収納扉に適用されてもよいし、住宅の出入口(住宅内の空間と住宅外の空間とを仕切る部分)に適用されてもよい。
【0058】
開口枠は、上枠23を含まず、第1縦枠21及び第2縦枠22のみからなる二方枠であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、引き戸30が床面F0によって下方から支持される場合を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、上枠23(図1)から第1居住空間S1側(図1中手前側)へ張り出す水平部材(鴨居)が設けられ、この部材にスライド用のレールが設けられ、当該レールに引き戸30を引っ掛けて上吊りする構成であってもよい。この場合には、規制部40の上端部を当該水平部材に固定可能であるため、規制部40の取付強度をさらに向上させることができる。これに対し、上記実施形態では、当該水平部材が設けられていないため、規制部40の強度不足についての問題が顕著になるが、上記の通り延設部42を設けることによってこれを解決している。
【0060】
化粧枠70は、本発明の引き戸構造における必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0061】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 引き戸構造
10 壁
11 開口部
13 第1縦縁部(縦縁部)
15A 第1壁面
16A 第2壁面
21 第1縦枠
21A 第1張出部(張出部)
24 第2面
26 第1面
30 引き戸
31 戸先
33 上端部
34 下端部
40 規制部
41 受け部
42 延設部
50 係止具
70 化粧枠
A1 接着剤
F0 床面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8