(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】回転電機及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20240416BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20240416BHJP
H02K 15/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K15/04 C
H02K15/06
(21)【出願番号】P 2020079445
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 勇生
(72)【発明者】
【氏名】田村 暁斗
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-061853(JP,A)
【文献】特開2002-330572(JP,A)
【文献】特開2020-028166(JP,A)
【文献】特開2008-220093(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066206(WO,A1)
【文献】特開2007-288933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 15/04
H02K 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁極を有する界磁子(20)と、
複数の部分巻線(151)を含む多相の電機子巻線(61)と、前記電機子巻線の径方向内側及び径方向外側のうち前記界磁子とは逆側に設けられ、前記複数の部分巻線を支持する巻線支持部材(CA)とを有するティースレス構造の電機子(60)と、
を備え、前記界磁子及び前記電機子のうちいずれかが回転子とされている回転電機(10)であって、
前記部分巻線は、軸方向に延びる一対の中間導線部(152)と、軸方向一端側及び他端側に設けられ前記一対の中間導線部を環状に接続する渡り部(153,154)とを有し、
前記一対の中間導線部の間に他2つの前記部分巻線の中間導線部を1つずつ介在させた状態で周方向に並べて配置されており、
全N個(Nは偶数)の前記部分巻線のうちN/2個の部分巻線が第1巻線群(G1)の第1部分巻線(151A)であり、残りのN/2個の部分巻線が第2巻線群(G2)の第2部分巻線(151B)であり、前記第1巻線群において前記第1部分巻線の前記渡り部が軸方向同一の位置で周方向に並ぶとともに、前記第2巻線群において前記第2部分巻線の前記渡り部が軸方向同一の位置で周方向に並び、前記第1部分巻線の前記渡り部と前記第2部分巻線の前記渡り部とが軸方向又は径方向に互いに重複した状態となっており、
前記第1部分巻線と前記第2部分巻線とで、前記中間導線部における横断面形状が相違し、周方向に隣り合う前記中間導線部は、周方向に対向する周方向側面(601,602)が互いに平行になっている回転電機。
【請求項2】
前記第1巻線群において周方向に隣り合う2つの前記中間導線部では、前記部分巻線の環状外側の前記周方向側面(601)が、互いに対向するとともに、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線(LX2)に平行になっており、
前記第2巻線群において周方向に隣り合う2つの前記中間導線部では、前記部分巻線の環状外側の前記周方向側面(601)が、互いに対向するとともに、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線(LX1)に平行になっている請求項
1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第1部分巻線の中間導線部と前記第2部分巻線の中間導線部とが周方向に並んでおり、
周方向に並ぶそれら2つの中間導線部では、前記部分巻線の環状内側の前記周方向側面(602)が、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線(LX3)に非平行になっている請求項
2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記第1巻線群は、前記巻線支持部材に対して先に組み付けられる巻線群であり、前記第2巻線群は、前記第1巻線群の組み付け後に前記巻線支持部材に対して組み付けられる巻線群であり、
前記第1部分巻線の中間導線部と前記第2部分巻線の中間導線部とが周方向に並んでおり、周方向に並ぶそれら2つの中間導線部では、前記部分巻線の環状内側の前記周方向側面(602)が、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線(LX3)に非平行になっている請求項
2に記載の回転電機。
【請求項5】
周方向に並ぶ前記中間導線部の間に絶縁部材(157)が介在している請求項1~
4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
複数の磁極を有する界磁子(20)と、
複数の部分巻線(151)を含む多相の電機子巻線(61)と、前記電機子巻線の径方向内側及び径方向外側のうち前記界磁子とは逆側に設けられ、前記複数の部分巻線を支持する巻線支持部材(CA)とを有するティースレス構造の電機子(60)と、
を備え、前記界磁子及び前記電機子のうちいずれかが回転子とされている回転電機(10)の製造方法であって、
前記部分巻線は、軸方向に延びる一対の中間導線部(152)と、軸方向一端側及び他端側に設けられ前記一対の中間導線部を環状に接続する渡り部(153,154)とを有し、
全N個(Nは偶数)の前記部分巻線のうちN/2個の部分巻線が第1巻線群(G1)の第1部分巻線(151A)であり、残りのN/2個の部分巻線が第2巻線群(G2)の第2部分巻線(151B)であり、
前記第1部分巻線及び前記第2部分巻線は、前記中間導線部における横断面形状が相違しており、周方向に隣り合う前記中間導線部において周方向に対向する周方向側面(601,602)が互いに平行になる状態で周方向に配列されるものであり、
前記第1部分巻線の前記渡り部を軸方向同一の位置で周方向に並べた状態で、前記巻線支持部材に対して前記第1部分巻線の組み付けを行う第1工程と、
その後、前記第1部分巻線における前記一対の中間導線部の間に2つの前記第2部分巻線の中間導線部を1つずつ介在させるとともに、前記第2部分巻線の前記渡り部を軸方向同一の位置で周方向に並べ、かつ前記第1部分巻線の前記渡り部と前記第2部分巻線の前記渡り部とを軸方向又は径方向に互いに重複させた状態で、前記巻線支持部材に対して、径方向又は軸方向から前記第2部分巻線の組み付けを行う第2工程と、
を有する回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、回転電機及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の磁極を有する磁石部を含む界磁子と、多相の電機子巻線を有する電機子とを備える回転電機が知られている。また、特許文献1には、ティースレス構造の電機子(導体収納溝のない電機子)として、空芯状の複数の電磁コイルを用い、電機子コアに対して各電磁コイルを周方向に並べて配置したものが開示されている。かかる構成では、各電磁コイルが、電磁コイルどうしの間に隙間を持たせつつ周方向に並べて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ティースレス構造の電機子では、導体占積率を向上させる上で、周方向に隣り合う導体どうしの間の隙間を小さくすることが望ましいと考えられる。この場合、特許文献1の技術では、導体どうしの間の隙間を小さくすることに関して、何ら具体的な構成は示されておらず、技術改善の余地があると考えられる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ティースレス構造の電機子を用いた回転電機において導体占積率を向上させることを目的とする。また、回転電機の製造方法において、導体占積率の向上を可能とする電機子を好適に作製できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【0007】
手段1は、
複数の磁極を有する界磁子と、
複数の部分巻線を含む多相の電機子巻線と、前記電機子巻線の径方向内側及び径方向外側のうち前記界磁子とは逆側に設けられ、前記複数の部分巻線を支持する巻線支持部材とを有するティースレス構造の電機子と、
を備え、前記界磁子及び前記電機子のうちいずれかが回転子とされている回転電機であって、
前記部分巻線は、軸方向に延びる一対の中間導線部と、軸方向一端側及び他端側に設けられ前記一対の中間導線部を環状に接続する渡り部とを有し、周方向に並べて配置されており、
周方向に隣り合う前記中間導線部は、周方向に対向する周方向側面が互いに平行になっている。
【0008】
上記構成の回転電機はティースレス構造の電機子を有しており、電機子巻線において、複数の部分巻線が周方向に並べて配置されている。そしてその状態で、周方向に隣り合う中間導線部は、周方向に対向する周方向側面が互いに平行になっている。この場合、中間導線部の各周方向側面が互いに平行であるため、それら各周方向側面が互いに非平行である構成に比べて、中間導線部どうしの間の隙間を小さくする上で好都合であり、導体占積率の向上を好適に実現できる。その結果、ティースレス構造の電機子を用いた回転電機において導体占積率を向上させることができる。
【0009】
手段2では、手段1において、周方向に並ぶ前記中間導線部は、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ前記中間導線部の間を通る直線に平行になる前記周方向側面を含む。
【0010】
周方向に並ぶ中間導線部が、電機子の中心点から径方向に延びる直線に平行になる周方向側面を有していることで、中間導線部どうしの間の隙間を小さくしつつ、各中間導線部をそれぞれ均等な状態又は均等に近い状態で配置できる。
【0011】
手段3では、手段1又は2において、前記部分巻線は、前記一対の中間導線部の間に他2つの前記部分巻線の中間導線部を1つずつ介在させた状態で周方向に配列されており、全N個(Nは偶数)の前記部分巻線のうちN/2個の部分巻線が第1巻線群の第1部分巻線であり、残りのN/2個の部分巻線が第2巻線群の第2部分巻線であり、前記第1巻線群において前記第1部分巻線の前記渡り部が軸方向同一の位置で周方向に並ぶとともに、前記第2巻線群において前記第2部分巻線の前記渡り部が軸方向同一の位置で周方向に並び、前記第1部分巻線の前記渡り部と前記第2部分巻線の前記渡り部とが軸方向又は径方向に互いに重複した状態となっており、前記第1部分巻線と前記第2部分巻線とで、前記中間導線部における横断面形状が相違している。
【0012】
上記構成では、複数の部分巻線が、一対の中間導線部の間に他2つの部分巻線の中間導線部を1つずつ介在させた状態で周方向に配列されている。この場合、N個の部分巻線を用いた構成では、2N個の中間導線部が周方向に並ぶこととなる。ここで、全N個の部分巻線は、N/2個ずつの部分巻線を有する第1巻線群と第2巻線群とに区別することができ、それら各巻線群では、部分巻線の渡り部が軸方向又は径方向に分離して設けられる。つまり、第1巻線群の第1部分巻線において渡り部が軸方向同一の位置で周方向に並ぶとともに、第2巻線群の第2部分巻線において渡り部が軸方向同一の位置で周方向に並び、かつそれら各部分巻線どうしで渡り部が軸方向又は径方向に互いに重複した状態となっている。
【0013】
かかる構成では、巻線支持部材に対する各部分巻線の組み付け時に、第1巻線群と第2巻線群とのうち一方の巻線群の各部分巻線が先に組み付けられ、他方の巻線群の各部分巻線が後に組み付けられる。この場合、一方の巻線群の各部分巻線が先付けされた状態では、周方向に並ぶ2N個の中間導線部の設置スペースのうちN個分の設置スペースで中間導線部が設置され、他方の巻線群の各部分巻線が組み付けられる際(後付けされる際)には、残りN個分の設置スペースに中間導線部が設置されるようにして部分巻線の組み付けが行われる。その際、後付けされる部分巻線は、径方向又は軸方向から組み付けられるが、仮に第1部分巻線と第2部分巻線とで中間導線部における横断面形状が同一であると、組み付けが困難になることが懸念される。また、上述したとおり導体占積率を向上させるべく中間導線部どうしの間の隙間を小さくする構成では、組み付けの困難性が顕著になると考えられる。
【0014】
この点、本手段の上記構成では、第1部分巻線と第2部分巻線とで、中間導線部における横断面形状を相違させているため、導体占積率を向上させるべく中間導線部どうしの間の隙間を小さくしつつも、巻線支持部材に先付けされた部分巻線の中間導線部が既に存在していること(すなわち、後付け側の中間導線部の設置場所が規定されていること)を加味した上で、後付けの部分巻線を好適に組み付けることが可能となっている。
【0015】
手段4では、手段3において、前記第1巻線群において周方向に隣り合う2つの前記中間導線部では、前記部分巻線の環状外側の前記周方向側面が、互いに対向するとともに、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線に平行になっており、前記第2巻線群において周方向に隣り合う2つの前記中間導線部では、前記部分巻線の環状外側の前記周方向側面が、互いに対向するとともに、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線に平行になっている。
【0016】
上記構成では、第1巻線群及び第2巻線群の各々において、部分巻線どうしで隣り合う部分で、2つの中間導線部の周方向側面(環状外側の周方向側面)が、電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間の通る直線に平行になっている。この場合、第1巻線群に含まれる各部分巻線は組み付け条件が同じである一方、第2巻線群に含まれる各部分巻線は組み付け条件が同じであり、組み付け条件が同じ部分巻線どうしにおいて、周方向に均等な割り当てで各々が組み付けられるようになっている。
【0017】
手段5では、手段4において、前記第1部分巻線の中間導線部と前記第2部分巻線の中間導線部とが周方向に並んでおり、周方向に並ぶそれら2つの中間導線部では、前記部分巻線の環状内側の前記周方向側面が、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線に非平行になっている。
【0018】
第1巻線群と第2巻線群とでは巻線支持部材に対する部分巻線の組み付け順序が前後異なっており、後付け側の巻線群は、先付け側の部分巻線が設置された状態の残りスペースに中間導線部が入り込むようにして組み付けられる。この場合、周方向に並ぶ2つの中間導線部(第1部分巻線及び第2部分巻線の各中間導線部)において、部分巻線の環状内側の周方向側面が、電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間の通る直線に非平行になっていることで、中間導線部どうしの間の隙間(マージン)が小さい構成であっても、先付けの部分巻線に対して後付けの部分巻線が干渉するといった不都合を抑制できるものとなっている。
【0019】
手段6では、手段4において、前記第1巻線群は、前記巻線支持部材に対して先に組み付けられる巻線群であり、前記第2巻線群は、前記第1巻線群の組み付け後に前記巻線支持部材に対して組み付けられる巻線群であり、前記第1部分巻線の中間導線部と前記第2部分巻線の中間導線部とが周方向に並んでおり、周方向に並ぶそれら2つの中間導線部では、前記部分巻線の環状内側の前記周方向側面が、前記電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線に非平行になっている。
【0020】
第1部分巻線側及び第2部分巻線側の2つの中間導線部が周方向に並び、それら2つの中間導線部において、部分巻線の環状内側の周方向側面が、電機子の中心点から径方向に延びかつ当該2つの中間導線部の間を通る直線に非平行になる構成とした。これにより、中間導線部どうしの間の隙間(マージン)が小さい構成であっても、先付けの部分巻線に対して後付けの部分巻線が干渉するといった不都合を抑制できるものとなっている。
【0021】
手段7では、手段1~6のいずれかにおいて、周方向に並ぶ前記中間導線部の間に絶縁部材(157)が介在している。
【0022】
この構成によれば、中間導線部どうしの絶縁、すなわち相間絶縁を適正に行うことができる。また、電機子巻線において周方向に隣り合う中間導線部は、周方向に対向する周方向側面が互いに平行になっているため、絶縁部材として一定厚さのシート材(フィルム材)を用いる場合に中間導線部どうしの間の隙間を容易に埋めることができ、各中間導線部を好適に固定できるものとなっている。
【0023】
手段8は、
複数の磁極を有する界磁子と、
複数の部分巻線を含む多相の電機子巻線と、前記電機子巻線の径方向内側及び径方向外側のうち前記界磁子とは逆側に設けられ、前記複数の部分巻線を支持する巻線支持部材とを有するティースレス構造の電機子(60)と、
を備え、前記界磁子及び前記電機子のうちいずれかが回転子とされている回転電機の製造方法であって、
前記部分巻線は、軸方向に延びる一対の中間導線部と、軸方向一端側及び他端側に設けられ前記一対の中間導線部を環状に接続する渡り部とを有し、
全N個(Nは偶数)の前記部分巻線のうちN/2個の部分巻線が第1巻線群の第1部分巻線であり、残りのN/2個の部分巻線が第2巻線群の第2部分巻線であり、
前記第1部分巻線及び前記第2部分巻線は、前記中間導線部における横断面形状が相違しており、周方向に隣り合う前記中間導線部において周方向に対向する周方向側面が互いに平行になる状態で周方向に配列されるものであり、
前記第1部分巻線の前記渡り部を軸方向同一の位置で周方向に並べた状態で、前記巻線支持部材に対して前記第1部分巻線の組み付けを行う第1工程と、
その後、前記第1部分巻線における前記一対の中間導線部の間に2つの前記第2部分巻線の中間導線部を1つずつ介在させるとともに、前記第2部分巻線の前記渡り部を軸方向同一の位置で周方向に並べ、かつ前記第1部分巻線の前記渡り部と前記第2部分巻線の前記渡り部とを軸方向又は径方向に互いに重複させた状態で、前記巻線支持部材に対して、径方向又は軸方向から前記第2部分巻線の組み付けを行う第2工程と、
を有する。
【0024】
上記構成の回転電機は、電機子巻線の部分巻線として、第1巻線群に含まれる第1部分巻線と第2巻線群に含まれる第2部分巻線とを有している。第1部分巻線及び第2部分巻線は、中間導線部における横断面形状が相違しており、周方向に隣り合う中間導線部において周方向に対向する周方向側面が互いに平行になる状態で周方向に配列されるものとなっている。
【0025】
ここで、周方向に隣り合う中間導線部において周方向に対向する周方向側面が互いに平行になる構成では、中間導線部どうしの間の隙間を小さくする上で好都合であり、導体占積率の向上を好適に実現できる。ただし、かかる構成では、巻線支持部材に対して第1部分巻線を先に組み付け、その後に第2部分巻線を組み付ける際に、その組み付けが困難になることが懸念される。
【0026】
その点、本手段では、第1部分巻線及び第2部分巻線において中間導線部における横断面形状を相違させておき、その上で、以下の工程で電機子の製造を行うこととした。すなわち、第1工程では、第1部分巻線の渡り部を軸方向同一の位置で周方向に並べた状態で、巻線支持部材に対して第1部分巻線の組み付けを行う。また、その後の第2工程では、第1部分巻線における一対の中間導線部の間に2つの第2部分巻線の中間導線部を1つずつ介在させるとともに、第2部分巻線の渡り部を軸方向同一の位置で周方向に並べ、かつ第1部分巻線の渡り部と第2部分巻線の渡り部とを軸方向又は径方向に互いに重複させた状態で、巻線支持部材に対して、径方向又は軸方向から第2部分巻線の組み付けを行う。
【0027】
この場合、第1部分巻線及び第2部分巻線において中間導線部における横断面形状が互いに異なっていることにより、組み付け順序が前後となる各導線群の部分巻線を、互いの干渉を回避しつつ組み付けることができる。そして、導体占積率の向上を可能とする電機子を好適に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態における回転電機の全体を示す斜視図。
【
図7】磁石ユニットの断面構造を示す部分横断面図。
【
図8】実施形態の磁石について電気角と磁束密度との関係を示す図。
【
図9】比較例の磁石について電気角と磁束密度との関係を示す図。
【
図12】コアアセンブリを軸方向一方側から見た斜視図。
【
図13】コアアセンブリを軸方向他方側から見た斜視図。
【
図16】3相の各相巻線における部分巻線の接続状態を示す回路図。
【
図17】第1コイルモジュールと第2コイルモジュールとを横に並べて対比して示す側面図。
【
図18】第1部分巻線と第2部分巻線とを横に並べて対比して示す側面図。
【
図25】各コイルモジュールを周方向に並べた状態でのフィルム材のオーバーラップ位置を示す図。
【
図26】コアアセンブリに対する第1コイルモジュールの組み付け状態を示す平面図。
【
図27】コアアセンブリに対する第1コイルモジュール及び第2コイルモジュールの組み付け状態を示す平面図。
【
図30】バスバーモジュールの縦断面の一部を示す断面図。
【
図31】固定子ホルダにバスバーモジュールを組み付けた状態を示す斜視図。
【
図32】バスバーモジュールを固定する固定部分における縦断面図。
【
図33】ハウジングカバーに中継部材を取り付けた状態を示す縦断面図。
【
図35】回転電機の制御システムを示す電気回路図。
【
図36】制御装置による電流フィードバック制御処理を示す機能ブロック図。
【
図37】制御装置によるトルクフィードバック制御処理を示す機能ブロック図。
【
図38】変形例において磁石ユニットの断面構造を示す部分横断面図。
【
図39】インナロータ構造の固定子ユニットの構成を示す図。
【
図40】コアアセンブリに対するコイルモジュールの組み付け状態を示す平面図。
【
図41】第2実施形態における固定子ユニットの全体を示す斜視図。
【
図42】(a)は固定子ユニットの平面図、(b)は固定子ユニットの横断面図。
【
図44】コアアセンブリと固定子巻線とを分解して示す分解斜視図。
【
図47】コイルモジュールにおいて構成部品を分解して示す斜視図。
【
図48】(a)は
図46の48-48線断面図、(b)は分解断面図。
【
図49】(a)は
図46の49-49線断面図、(b)は分解断面図。
【
図51】部分巻線とブラケット部との位置関係を示す斜視図。
【
図52】3つの部分巻線を配置した状態を示す平面図。
【
図54】下段側のコイルモジュールを周方向に並べて配置した状態を示す平面図。
【
図55】第3実施形態における固定子ユニットの平面図。
【
図57】コアアセンブリと固定子巻線とを分解して示す分解斜視図。
【
図59】部分巻線とブラケット部との位置関係を示す斜視図。
【
図60】下段側のコイルモジュールを周方向に並べて配置した状態を示す平面図。
【
図64】第4実施形態において、コアアセンブリの径方向外側での中間導線部の配列状態を示す横断面図。
【
図65】(a)は、第1部分巻線の中間導線部の断面形状を示す図、(b)は、第2部分巻線の中間導線部の断面形状を示す図。
【
図66】コアアセンブリに対する各部分巻線の組み付け状態を示す正面図。
【
図67】コアアセンブリに対する各部分巻線の組み付けを説明するための横断面図。
【
図68】(a)は、コアアセンブリに対して第1部分巻線が先付けされた状態を示す横断面図、(b)は、第2部分巻線が後付けされた状態を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0030】
本実施形態における回転電機は、例えば車両動力源として用いられるものとなっている。ただし、回転電機は、産業用、車両用、家電用、OA機器用、遊技機用などとして広く用いられることが可能となっている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0031】
(第1実施形態)
本実施形態に係る回転電機10は、同期式多相交流モータであり、アウタロータ構造(外転構造)のものとなっている。回転電機10の概要を
図1~
図5に示す。
図1は、回転電機10の全体を示す斜視図であり、
図2は、回転電機10の平面図であり、
図3は、回転電機10の縦断面図(
図2の3-3線断面図)であり、
図4は、回転電機10の横断面図(
図3の4-4線断面図)であり、
図5は、回転電機10の構成要素を分解して示す分解断面図である。以下の記載では、回転電機10において、回転軸11が延びる方向を軸方向とし、回転軸11の中心から放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸11を中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0032】
回転電機10は、大別して、回転子20、固定子ユニット50及びバスバーモジュール200を有する回転電機本体と、その回転電機本体を囲むように設けられるハウジング241及びハウジングカバー242とを備えている。これら各部材はいずれも、回転子20に一体に設けられた回転軸11に対して同軸に配置されており、所定順序で軸方向に組み付けられることで回転電機10が構成されている。回転軸11は、固定子ユニット50及びハウジング241にそれぞれ設けられた一対の軸受12,13に支持され、その状態で回転可能となっている。なお、軸受12,13は、例えば内輪と外輪とそれらの間に配置された複数の玉とを有するラジアル玉軸受である。回転軸11の回転により、例えば車両の車軸が回転する。回転電機10は、ハウジング241が車体フレーム等に固定されることにより車両に搭載可能となっている。
【0033】
回転電機10において、固定子ユニット50は回転軸11を囲むように設けられ、その固定子ユニット50の径方向外側に回転子20が配置されている。固定子ユニット50は、固定子60と、その径方向内側に組み付けられた固定子ホルダ70とを有している。回転子20と固定子60とはエアギャップを挟んで径方向に対向配置されており、回転子20が回転軸11と共に一体回転することにより、固定子60の径方向外側にて回転子20が回転する。回転子20が「界磁子」に相当し、固定子60が「電機子」に相当する。
【0034】
図6は、回転子20の縦断面図である。
図6に示すように、回転子20は、略円筒状の回転子キャリア21と、その回転子キャリア21に固定された環状の磁石ユニット22とを有している。回転子キャリア21は、円筒状をなす円筒部23と、その円筒部23の軸方向一端に設けられた端板部24とを有しており、それらが一体化されることで構成されている。回転子キャリア21は、磁石保持部材として機能し、円筒部23の径方向内側に環状に磁石ユニット22が固定されている。端板部24には貫通孔24aが形成されており、その貫通孔24aに挿通された状態で、ボルト等の締結具25により端板部24に回転軸11が固定されている。回転軸11は、軸方向に交差(直交)する向きに延びるフランジ11aを有しており、そのフランジ11aと端板部24とが面接合されている状態で、回転軸11に回転子キャリア21が固定されている。
【0035】
磁石ユニット22は、円筒状の磁石ホルダ31と、その磁石ホルダ31の内周面に固定された複数の磁石32と、軸方向両側のうち回転子キャリア21の端板部24とは逆側に固定されたエンドプレート33とを有している。磁石ホルダ31は、軸方向において磁石32と同じ長さ寸法を有している。磁石32は、磁石ホルダ31に径方向外側から包囲された状態で設けられている。磁石ホルダ31及び磁石32は、軸方向一方側の端部においてエンドプレート33に当接した状態で固定されている。磁石ユニット22が「磁石部」に相当する。
【0036】
図7は、磁石ユニット22の断面構造を示す部分横断面図である。
図7には、磁石32の磁化容易軸の向きを矢印にて示している。
【0037】
磁石ユニット22において、磁石32は、回転子20の周方向に沿って極性が交互に変わるように並べて設けられている。これにより、磁石ユニット22は、周方向に複数の磁極を有する。磁石32は、極異方性の永久磁石であり、固有保磁力が400[kA/m]以上であり、かつ残留磁束密度Brが1.0[T]以上である焼結ネオジム磁石を用いて構成されている。
【0038】
磁石32において径方向内側(固定子60側)の周面が、磁束の授受が行われる磁束作用面34である。磁石ユニット22は、磁石32の磁束作用面34において、磁極中心であるd軸付近の領域に集中的に磁束を生じさせるものとなっている。具体的には、磁石32では、d軸側(d軸寄りの部分)とq軸側(q軸寄りの部分)とで磁化容易軸の向きが相違しており、d軸側では磁化容易軸の向きがd軸に平行する向きとなり、q軸側では磁化容易軸の向きがq軸に直交する向きとなっている。この場合、磁化容易軸の向きに沿って円弧状の磁石磁路が形成されている。要するに、磁石32は、磁極中心であるd軸の側において、磁極境界であるq軸の側に比べて磁化容易軸の向きがd軸に平行となるように配向がなされて構成されている。
【0039】
磁石32において、磁石磁路が円弧状に形成されていることにより、磁石32の径方向の厚さ寸法よりも磁石磁路長が長くなっている。これにより、磁石32のパーミアンスが上昇し、同じ磁石量でありながら、磁石量の多い磁石と同等の能力を発揮させることが可能となっている。
【0040】
磁石32は、周方向に隣り合う2つを1組として1磁極を構成するものとなっている。つまり、磁石ユニット22において周方向に並ぶ複数の磁石32は、d軸及びq軸にそれぞれ割面を有するものとなっており、それら各磁石32が互いに当接又は近接した状態で配置されている。磁石32は、上記のとおり円弧状の磁石磁路を有しており、q軸では周方向に隣り合う磁石32どうしでN極とS極とが向かい合うこととなる。そのため、q軸近傍でのパーミアンスの向上を図ることができる。また、q軸を挟んで両側の磁石32は互いに吸引し合うため、これら各磁石32は互いの接触状態を保持できる。そのため、やはりパーミアンスの向上に寄与するものとなっている。
【0041】
磁石ユニット22では、各磁石32により、隣接するN,S極間を円弧状に磁束が流れるため、例えばラジアル異方性磁石に比べて磁石磁路が長くなっている。このため、
図8に示すように、磁束密度分布が正弦波に近いものとなる。その結果、
図9に比較例として示すラジアル異方性磁石の磁束密度分布とは異なり、磁極の中心側に磁束を集中させることができ、回転電機10のトルクを高めることが可能となっている。また、本実施形態の磁石ユニット22では、従来のハルバッハ配列の磁石と比べても、磁束密度分布の差異があることが確認できる。なお、
図8及び
図9において、横軸は電気角を示し、縦軸は磁束密度を示す。また、
図8及び
図9において、横軸の90°はd軸(すなわち磁極中心)を示し、横軸の0°,180°はq軸を示す。
【0042】
つまり、上記構成の各磁石32によれば、磁石ユニット22においてd軸での磁石磁束が強化され、かつq軸付近での磁束変化が抑えられる。これにより、各磁極においてq軸からd軸にかけての表面磁束変化がなだらかになる磁石ユニット22を好適に実現することができる。
【0043】
磁束密度分布の正弦波整合率は、例えば40%以上の値とされていればよい。このようにすれば、正弦波整合率が30%程度であるラジアル配向磁石、パラレル配向磁石を用いる場合に比べ、確実に波形中央部分の磁束量を向上させることができる。また、正弦波整合率を60%以上とすれば、ハルバッハ配列のような磁束集中配列と比べ、確実に波形中央部分の磁束量を向上させることができる。
【0044】
図9に示すラジアル異方性磁石では、q軸付近において磁束密度が急峻に変化する。磁束密度の変化が急峻なほど、後述する固定子60の固定子巻線61において渦電流が増加してしまう。また、固定子巻線61側での磁束変化も急峻となる。これに対し、本実施形態では、磁束密度分布が正弦波に近い磁束波形となる。このため、q軸付近において、磁束密度の変化が、ラジアル異方性磁石の磁束密度の変化よりも小さい。これにより、渦電流の発生を抑制することができる。
【0045】
磁石32には、径方向外側の外周面に、d軸を含む所定範囲で凹部35が形成されているとともに、径方向内側の内周面に、q軸を含む所定範囲で凹部36が形成されている。この場合、磁石32の磁化容易軸の向きによれば、磁石32の外周面においてd軸付近で磁石磁路が短くなるとともに、磁石32の内周面においてq軸付近で磁石磁路が短くなる。そこで、磁石32において磁石磁路長が短い場所で十分な磁石磁束を生じさせることが困難になることを考慮して、その磁石磁束の弱い場所で磁石が削除されている。
【0046】
なお、磁石ユニット22において、磁極と同じ数の磁石32を用いる構成としてもよい。例えば、磁石32が、周方向に隣り合う2磁極において各磁極の中心であるd軸間を1磁石として設けられるとよい。この場合、磁石32は、周方向の中心がq軸となり、かつd軸に割面を有する構成となっている。また、磁石32が、周方向の中心をq軸とする構成でなく、周方向の中心をd軸とする構成であってもよい。磁石32として、磁極数の2倍の数の磁石、又は磁極数と同じ数の磁石を用いる構成に代えて、円環状に繋がった円環磁石を用いる構成であってもよい。
【0047】
図3に示すように、回転軸11の軸方向両側のうち回転子キャリア21との結合部の逆側の端部(図の上側の端部)には、回転センサとしてのレゾルバ41が設けられている。レゾルバ41は、回転軸11に固定されるレゾルバロータと、そのレゾルバロータの径方向外側に対向配置されたレゾルバステータとを備えている。レゾルバロータは、円板リング状をなしており、回転軸11を挿通させた状態で、回転軸11に同軸に設けられている。レゾルバステータは、ステータコアとステータコイルとを有し、ハウジングカバー242に固定されている。
【0048】
次に、固定子ユニット50の構成を説明する。
図10は、固定子ユニット50の斜視図であり、
図11は、固定子ユニット50の縦断面図である。なお、
図11は、
図3と同じ位置での縦断面図である。
【0049】
固定子ユニット50は、その概要として、固定子60とその径方向内側の固定子ホルダ70とを有している。また、固定子60は、固定子巻線61と固定子コア62とを有している。そして、固定子コア62と固定子ホルダ70とを一体化してコアアセンブリCAとして設け、そのコアアセンブリCAに対して、固定子巻線61を構成する複数の部分巻線151を組み付ける構成としている。なお、固定子巻線61が「電機子巻線」に相当し、固定子コア62が「電機子コア」に相当し、固定子ホルダ70が「電機子保持部材」に相当する。また、コアアセンブリCAが「支持部材」に相当する。
【0050】
ここではまず、コアアセンブリCAについて説明する。
図12は、コアアセンブリCAを軸方向一方側から見た斜視図であり、
図13は、コアアセンブリCAを軸方向他方側から見た斜視図であり、
図14は、コアアセンブリCAの横断面図であり、
図15は、コアアセンブリCAの分解断面図である。
【0051】
コアアセンブリCAは、上述したとおり固定子コア62と、その径方向内側に組み付けられた固定子ホルダ70とを有している。言うなれば、固定子ホルダ70の外周面に固定子コア62が一体に組み付けられて構成されている。
【0052】
固定子コア62は、磁性体である電磁鋼板からなるコアシート62aが軸方向に積層されたコアシート積層体として構成されており、径方向に所定の厚さを有する円筒状をなしている。固定子コア62において回転子20側となる径方向外側には固定子巻線61が組み付けられている。固定子コア62の外周面は凹凸のない曲面状をなしている。固定子コア62はバックヨークとして機能する。固定子コア62は、例えば円環板状に打ち抜き形成された複数枚のコアシート62aが軸方向に積層されて構成されている。ただし、固定子コア62としてヘリカルコア構造を有するものを用いてもよい。ヘリカルコア構造の固定子コア62では、帯状のコアシートが用いられ、このコアシートが環状に巻回形成されるとともに軸方向に積層されることで、全体として円筒状の固定子コア62が構成されている。
【0053】
本実施形態において、固定子60は、スロットを形成するためのティースを有していないスロットレス構造を有するものであるが、その構成は以下の(A)~(C)のいずれかを用いたものであってもよい。
(A)固定子60において、周方向における各導線部(後述する中間導線部152)の間に導線間部材を設け、かつその導線間部材として、1磁極における導線間部材の周方向の幅寸法をWt、導線間部材の飽和磁束密度をBs、1磁極における磁石32の周方向の幅寸法をWm、磁石32の残留磁束密度をBrとした場合に、Wt×Bs≦Wm×Brの関係となる磁性材料を用いている。
(B)固定子60において、周方向における各導線部(中間導線部152)の間に導線間部材を設け、かつその導線間部材として、非磁性材料を用いている。
(C)固定子60において、周方向における各導線部(中間導線部152)の間に導線間部材を設けていない構成となっている。
【0054】
また、
図15に示すように、固定子ホルダ70は、外筒部材71と内筒部材81とを有し、外筒部材71を径方向外側、内筒部材81を径方向内側にしてそれらが一体に組み付けられることにより構成されている。これら各部材71,81は、例えばアルミニウムや鋳鉄等の金属、又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により構成されている。
【0055】
外筒部材71は、外周面及び内周面をいずれも真円状の曲面とする円筒部材であり、軸方向一端側には、径方向内側に延びる環状のフランジ72が形成されている。このフランジ72には、周方向に所定間隔で、径方向内側に延びる複数の突出部73が形成されている(
図13参照)。また、外筒部材71において軸方向一端側及び他端側には、それぞれ内筒部材81に軸方向に対向する対向面74,75が形成されており、その対向面74,75には、環状に延びる環状溝74a,75aが形成されている。
【0056】
また、内筒部材81は、外筒部材71の内径寸法よりも小さい外径寸法を有する円筒部材であり、その外周面は、外筒部材71と同心の真円状の曲面となっている。内筒部材81において軸方向一端側には、径方向外側に延びる環状のフランジ82が形成されている。内筒部材81は、外筒部材71の対向面74,75に軸方向に当接した状態で、外筒部材71に組み付けられるようになっている。
図13に示すように、外筒部材71及び内筒部材81は、ボルト等の締結具84により互いに組み付けられている。具体的には、内筒部材81の内周側には、周方向に所定間隔で、径方向内側に延びる複数の突出部83が形成されており、その突出部83の軸方向端面と外筒部材71の突出部73とが重ね合わされた状態で、その突出部73,83どうしが締結具84により締結されている。
【0057】
図14に示すように、外筒部材71と内筒部材81とが互いに組み付けられた状態において、外筒部材71の内周面と内筒部材81の外周面との間には環状の隙間が形成されており、その隙間空間が、冷却水等の冷媒を流通させる冷媒通路85となっている。冷媒通路85は、固定子ホルダ70の周方向に環状に設けられている。より詳しくは、内筒部材81には、その内周側において径方向内側に突出し、かつその内部に入口側通路86と出口側通路87とが形成された通路形成部88が設けられており、それら各通路86,87は内筒部材81の外周面に開口している。また、内筒部材81の外周面には、冷媒通路85を入口側と出口側とに仕切るための仕切り部89が設けられている。これにより、入口側通路86から流入する冷媒は、冷媒通路85を周方向に流れ、その後、出口側通路87から流出する。
【0058】
入口側通路86及び出口側通路87は、その一端側が径方向に延びて内筒部材81の外周面に開口するとともに、他端側が軸方向に延びて内筒部材81の軸方向端面に開口するようになっている。
図12には、入口側通路86に通じる入口開口86aと、出口側通路87に通じる出口開口87aとが示されている。なお、入口側通路86及び出口側通路87は、ハウジングカバー242に取り付けられた入口ポート244及び出口ポート245(
図1参照)に通じており、それら各ポート244,245を介して冷媒が出入りするようになっている。
【0059】
外筒部材71と内筒部材81との接合部分には、冷媒通路85の冷媒の漏れを抑制するためのシール材101,102が設けられている(
図15参照)。具体的には、シール材101,102は例えばOリングであり、外筒部材71の環状溝74a,75aに収容され、かつ外筒部材71及び内筒部材81により圧縮された状態で設けられている。
【0060】
また、
図12に示すように、内筒部材81は、軸方向一端側に端板部91を有しており、その端板部91には、軸方向に延びる中空筒状のボス部92が設けられている。ボス部92は、回転軸11を挿通させるための挿通孔93を囲むように設けられている。ボス部92には、ハウジングカバー242を固定するための複数の締結部94が設けられている。また、端板部91には、ボス部92の径方向外側に、軸方向に延びる複数の支柱部95が設けられている。この支柱部95は、バスバーモジュール200を固定するための固定部となる部位であるが、その詳細は後述する。また、ボス部92は、軸受12を保持する軸受保持部材となっており、その内周部に設けられた軸受固定部96に軸受12が固定されている(
図3参照)。
【0061】
また、
図12,
図13に示すように、外筒部材71及び内筒部材81には、後述する複数のコイルモジュール150を固定するために用いる凹部105,106が形成されている。
【0062】
具体的には、
図12に示すように、内筒部材81の軸方向端面、詳しくは端板部91においてボス部92の周囲となる軸方向外側端面には、周方向に等間隔で複数の凹部105が形成されている。また、
図13に示すように、外筒部材71の軸方向端面、詳しくはフランジ72の軸方向外側の端面には、周方向に等間隔で複数の凹部106が形成されている。これら凹部105,106は、コアアセンブリCAと同心の仮想円上に並ぶように設けられている。凹部105,106は、周方向において同一となる位置にそれぞれ設けられ、その間隔及び個数も同じである。
【0063】
ところで、固定子コア62は、固定子ホルダ70に対する組み付けの強度を確保すべく、固定子ホルダ70に対する径方向の圧縮力を生じる状態で組み付けられている。具体的には、焼きばめ又は圧入により、固定子ホルダ70に対して所定の締め代で固定子コア62が嵌合固定されている。この場合、固定子コア62及び固定子ホルダ70は、そのうち一方による他方への径方向の応力が生じる状態で組み付けられていると言える。また、回転電機10を高トルク化する場合には、例えば固定子60を大径化することが考えられ、かかる場合には固定子ホルダ70に対する固定子コア62の結合を強固にすべく固定子コア62の締め付け力が増大される。しかしながら、固定子コア62の圧縮応力(換言すれば残留応力)を大きくすると、固定子コア62の破損が生じることが懸念される。
【0064】
そこで本実施形態では、固定子コア62及び固定子ホルダ70が互いに所定の締め代で嵌合固定されている構成において、固定子コア62及び固定子ホルダ70における径方向の互いの対向部分に、周方向の係合により固定子コア62の周方向の変位を規制する規制部を設ける構成としている。つまり、
図12~
図14に示すように、径方向において固定子コア62と固定子ホルダ70の外筒部材71との間には、周方向に所定間隔で、規制部としての複数の係合部材111が設けられており、その係合部材111により、固定子コア62と固定子ホルダ70との周方向の位置ずれが抑制されている。なおこの場合、固定子コア62及び外筒部材71の少なくともいずれかに凹部を設け、その凹部において係合部材111を係合させる構成とするとよい。係合部材111に代えて、固定子コア62及び外筒部材71のいずれかに凸部を設ける構成としてもよい。
【0065】
上記構成では、固定子コア62及び固定子ホルダ70(外筒部材71)は、所定の締め代で嵌合固定されることに加え、係合部材111の規制により相互の周方向変位が規制された状態で設けられている。したがって、仮に固定子コア62及び固定子ホルダ70における締め代が比較的小さくても、固定子コア62の周方向の変位を抑制できる。また、締め代が比較的小さくても所望の変位抑制効果が得られるため、締め代が過剰に大きいことに起因する固定子コア62の破損を抑制できる。その結果、固定子コア62の変位を適正に抑制することができる。
【0066】
内筒部材81の内周側には、回転軸11を囲むようにして環状の内部空間が形成されており、その内部空間に、例えば電力変換器としてのインバータを構成する電気部品が配置される構成としてもよい。電気部品は、例えば半導体スイッチング素子やコンデンサをパッケージ化した電気モジュールである。内筒部材81の内周面に当接した状態で電気モジュールを配置することにより、冷媒通路85を流れる冷媒による電気モジュールの冷却が可能となっている。なお、内筒部材81の内周側において、複数の突出部83を無くし、又は突出部83の突出高さを小さくし、これにより内筒部材81の内周側の内部空間を拡張することも可能である。
【0067】
次に、コアアセンブリCAに対して組み付けられる固定子巻線61の構成を詳しく説明する。コアアセンブリCAに対して固定子巻線61が組み付けられた状態は、
図10,
図11に示すとおりであり、コアアセンブリCAの径方向外側、すなわち固定子コア62の径方向外側に、固定子巻線61を構成する複数の部分巻線151が周方向に並ぶ状態で組み付けられている。
【0068】
固定子巻線61は、複数の相巻線を有し、各相の相巻線が周方向に所定順序で配置されることで円筒状(環状)に形成されている。本実施形態では、U相、V相及びW相の相巻線を用いることで、固定子巻線61が3相の相巻線を有する構成となっている。
【0069】
図11に示すように、固定子60は、軸方向において、回転子20における磁石ユニット22に径方向に対向するコイルサイドCSに相当する部分と、そのコイルサイドCSの軸方向外側であるコイルエンドCEに相当する部分とを有している。この場合、固定子コア62は、軸方向においてコイルサイドCSに相当する範囲で設けられている。
【0070】
固定子巻線61において各相の相巻線は各々複数の部分巻線151を有しており(
図16参照)、その部分巻線151は個別にコイルモジュール150として設けられている。つまり、コイルモジュール150は、各相の相巻線における部分巻線151が一体に設けられて構成されており、極数に応じた所定数のコイルモジュール150により固定子巻線61が構成されている。各相のコイルモジュール150(部分巻線151)が周方向に所定順序で並べて配置されることで、固定子巻線61のコイルサイドCSにおいて各相の導線部が所定順序に並べて配置されるものとなっている。
図10には、コイルサイドCSにおけるU相、V相及びW相の導線部の並び順が示されている。本実施形態では、磁極数を24としているが、その数は任意である。
【0071】
固定子巻線61では、相ごとに各コイルモジュール150の部分巻線151が並列又は直列に接続されることにより、各相の相巻線が構成されている。
図16は、3相の各相巻線における部分巻線151の接続状態を示す回路図である。
図16では、各相の相巻線における部分巻線151がそれぞれ並列に接続された状態が示されている。
【0072】
図11に示すように、コイルモジュール150は固定子コア62の径方向外側に組み付けられている。この場合、コイルモジュール150は、その軸方向両端部分が固定子コア62よりも軸方向外側(すなわちコイルエンドCE側)に突出した状態で組み付けられている。つまり、固定子巻線61は、固定子コア62よりも軸方向外側に突出したコイルエンドCEに相当する部分と、それよりも軸方向内側のコイルサイドCSに相当する部分とを有している。
【0073】
コイルモジュール150は、2種類の形状を有するものとなっており、その一方は、コイルエンドCEにおいて部分巻線151が径方向内側、すなわち固定子コア62側に折り曲げられた形状を有するものであり、他方は、コイルエンドCEにおいて部分巻線151が径方向内側に折り曲げられておらず、軸方向に直線状に延びる形状を有するものである。以下の説明では、便宜を図るべく、軸方向両端側に屈曲形状を有する部分巻線151を「第1部分巻線151A」、その第1部分巻線151Aを有するコイルモジュール150を「第1コイルモジュール150A」とも称する。また、軸方向両端側の屈曲形状を有していない部分巻線151を「第2部分巻線151B」、その第2部分巻線151Bを有するコイルモジュール150を「第2コイルモジュール150B」とも称する。
【0074】
図17は、第1コイルモジュール150Aと第2コイルモジュール150Bとを横に並べて対比して示す側面図であり、
図18は、第1部分巻線151Aと第2部分巻線151Bとを横に並べて対比して示す側面図である。これら各図に示すように、各コイルモジュール150A,150B、各部分巻線151A,151Bは、軸方向長さが互いに異なり、かつ軸方向両側の端部形状が互いに異なるものとなっている。第1部分巻線151Aは、側面視において略C字状をなし、第2部分巻線151Bは、側面視において略I字状をなしている。第1部分巻線151Aには、軸方向両側に「第1絶縁カバー」としての絶縁カバー161,162が装着され、第2部分巻線151Bには、軸方向両側に「第2絶縁カバー」としての絶縁カバー163,164が装着されている。
【0075】
次に、コイルモジュール150A,150Bの構成を詳しく説明する。
【0076】
ここではまず、コイルモジュール150A,150Bのうち第1コイルモジュール150Aについて説明する。
図19(a)は、第1コイルモジュール150Aの構成を示す斜視図であり、
図19(b)は、第1コイルモジュール150Aにおいて構成部品を分解して示す斜視図である。また、
図20は、
図19(a)における20-20線断面図である。
【0077】
図19(a),(b)に示すように、第1コイルモジュール150Aは、導線材CRを多重巻にして構成された第1部分巻線151Aと、その第1部分巻線151Aにおいて軸方向一端側及び他端側に取り付けられた絶縁カバー161,162とを有している。絶縁カバー161,162は合成樹脂等の絶縁材料により成形されている。
【0078】
第1部分巻線151Aは、互いに平行でかつ直線状に設けられる一対の中間導線部152と、一対の中間導線部152を軸方向両端でそれぞれ接続する一対の渡り部153Aとを有しており、これら一対の中間導線部152と一対の渡り部153Aとにより環状に形成されている。一対の中間導線部152は、所定のコイルピッチ分を離して設けられており、周方向において一対の中間導線部152の間に、他相の部分巻線151の中間導線部152が配置可能となっている。本実施形態では、一対の中間導線部152は2コイルピッチ分を離して設けられ、一対の中間導線部152の間に、他2相の部分巻線151における中間導線部152が1つずつ配置される構成となっている。
【0079】
一対の渡り部153Aは、軸方向両側でそれぞれ同じ形状となっており、いずれもコイルエンドCE(
図11参照)に相当する部分として設けられている。各渡り部153Aは、中間導線部152に対して直交する向き、すなわち軸方向に直交する方向に折り曲がるようにして設けられている。
【0080】
図18に示すように、第1部分巻線151Aは、軸方向両側に渡り部153Aを有し、第2部分巻線151Bは、軸方向両側に渡り部153Bを有している。これら各部分巻線151A,151Bの渡り部153A,153Bはその形状が互いに異なっており、その区別を明確にすべく、第1部分巻線151Aの渡り部153Aを「第1渡り部153A」、第2部分巻線151Bの渡り部153Bを「第2渡り部153B」とも記載する。
【0081】
各部分巻線151A,151Bにおいて、中間導線部152は、コイルサイドCSにおいて周方向に1つずつ並ぶコイルサイド導線部として設けられている。また、各渡り部153A,153Bは、コイルエンドCEにおいて、周方向に異なる2位置の同相の中間導線部152どうしを接続するコイルエンド導線部として設けられている。
【0082】
図20に示すように、第1部分巻線151Aは、導線集合部分の横断面が四角形になるように導線材CRが多重に巻回されて形成されている。
図20は、中間導線部152の横断面を示しており、その中間導線部152において周方向及び径方向に並ぶように導線材CRが多重に巻回されている。つまり、第1部分巻線151Aは、中間導線部152において導線材CRが周方向に複数列で並べられ、かつ径方向に複数列で並べられることで、横断面が略矩形状となるように形成されている。なお、第1渡り部153Aの先端部では、径方向への折れ曲がりにより、導線材CRが軸方向及び径方向に並ぶように多重に巻回される構成となっている。本実施形態では、導線材CRを同心巻により巻回することで第1部分巻線151Aが構成されている。ただし、導線材CRの巻き方は任意であり、同心巻に代えて、アルファ巻により導線材CRが多重に巻回されていてもよい。
【0083】
第1部分巻線151Aでは、軸方向両側の第1渡り部153Aのうち、一方の第1渡り部153A(
図19(b)の上側の第1渡り部153A)から導線材CRの端部が引き出されており、その端部が巻線端部154,155となっている。巻線端部154,155は、それぞれ導線材CRの巻き始め及び巻き終わりとなる部分である。巻線端部154,155のうち一方が電流入出力端子に接続され、他方が中性点に接続されるようになっている。
【0084】
第1部分巻線151Aにおいて各中間導線部152には、シート状の絶縁被覆体157が被せられた状態で設けられている。なお、
図19(a)には、第1コイルモジュール150Aが、中間導線部152に絶縁被覆体157が被せられ、かつ絶縁被覆体157の内側に中間導線部152が存在する状態で示されているが、便宜上、その該当部分を中間導線部152としている(後述する
図22(a)も同様)。
【0085】
絶縁被覆体157は、軸方向寸法として少なくとも中間導線部152における軸方向の絶縁被覆範囲の長さを有するフィルム材FMを用い、そのフィルム材FMを中間導線部152の周囲に巻装することで設けられている。フィルム材FMは、例えばPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムよりなる。より具体的には、フィルム材FMは、フィルム基材と、そのフィルム基材の両面のうち片面に設けられ、発泡性を有する接着層とを含む。そして、フィルム材FMは、接着層により接着させた状態で、中間導線部152に対して巻装されている。なお、接着層として非発泡性の接着剤を用いることも可能である。
【0086】
図20に示すように、中間導線部152は、導線材CRが周方向及び径方向に並ぶことで横断面が略矩形状をなしており、中間導線部152の周囲には、フィルム材FMがその周方向の端部をオーバーラップさせた状態で被せられていることで、絶縁被覆体157が設けられている。フィルム材FMは、縦寸法が中間導線部152の軸方向長さよりも長く、かつ横寸法が中間導線部152の1周長さよりも長い矩形シートであり、中間導線部152の断面形状に合わせて折り目を付けた状態で中間導線部152に巻装されている。中間導線部152にフィルム材FMが巻装された状態では、中間導線部152の導線材CRとフィルム基材との間の隙間が接着層での発泡により埋められるようになっている。また、フィルム材FMのオーバーラップ部分OLでは、フィルム材FMの周方向の端部どうしが接着層により接合されている。
【0087】
中間導線部152では、2つの周方向側面及び2つの径方向側面においてそれらの全てを覆うようにして絶縁被覆体157が設けられている。この場合、中間導線部152を囲う絶縁被覆体157には、他相の部分巻線151における中間導線部152との対向部分、すなわち中間導線部152の2つの周方向側面のうち一方に、フィルム材FMがオーバーラップするオーバーラップ部分OLが設けられている。本実施形態では、一対の中間導線部152において、周方向の同じ側にオーバーラップ部分OLがそれぞれ設けられている。
【0088】
第1部分巻線151Aでは、中間導線部152から、軸方向両側の第1渡り部153Aにおいて絶縁カバー161,162により覆われた部分(すなわち絶縁カバー161,162の内側となる部分)までの範囲で、絶縁被覆体157が設けられている。
図17で言えば、第1コイルモジュール150AにおいてAX1の範囲が絶縁カバー161,162により覆われていない部分であり、その範囲AX1よりも上下に拡張した範囲で絶縁被覆体157が設けられている。
【0089】
次に、絶縁カバー161,162の構成を説明する。
【0090】
絶縁カバー161は、第1部分巻線151Aの軸方向一方側の第1渡り部153Aに装着され、絶縁カバー162は、第1部分巻線151Aの軸方向他方側の第1渡り部153Aに装着される。このうち絶縁カバー161の構成を
図21(a),(b)に示す。
図21(a),(b)は、絶縁カバー161を異なる二方向から見た斜視図である。
【0091】
図21(a),(b)に示すように、絶縁カバー161は、周方向の側面となる一対の側面部171と、軸方向外側の外面部172と、軸方向内側の内面部173と、径方向内側の前面部174とを有している。これら各部171~174は、それぞれ板状に形成されており、径方向外側のみが開放されるようにして立体状に互いに結合されている。一対の側面部171はそれぞれ、コアアセンブリCAへの組み付け状態においてコアアセンブリCAの軸心に向けて延びる向きで設けられている。そのため、複数の第1コイルモジュール150Aが周方向に並べて配置された状態では、隣り合う各第1コイルモジュール150Aにおいて絶縁カバー161の側面部171どうしが当接又は接近状態で互いに対向する。これにより、周方向に隣接する各第1コイルモジュール150Aにおいて相互の絶縁が図られつつ好適なる環状配置が可能となっている。
【0092】
絶縁カバー161において、外面部172には、第1部分巻線151Aの巻線端部154を引き出すための開口部175aが設けられ、前面部174には、第1部分巻線151Aの巻線端部155を引き出すための開口部175bが設けられている。この場合、一方の巻線端部154は外面部172から軸方向に引き出されるのに対し、他方の巻線端部155は前面部174から径方向に引き出される構成となっている。
【0093】
また、絶縁カバー161において、一対の側面部171には、前面部174の周方向両端となる位置、すなわち各側面部171と前面部174とが交差する位置に、軸方向に延びる半円状の凹部177が設けられている。さらに、外面部172には、周方向における絶縁カバー161の中心線を基準として周方向両側に対称となる位置に、軸方向に延びる一対の突起部178が設けられている。
【0094】
絶縁カバー161の凹部177について説明を補足する。
図20に示すように、第1部分巻線151Aの第1渡り部153Aは、径方向内外のうち径方向内側、すなわちコアアセンブリCAの側に凸となる湾曲状をなしている。かかる構成では、周方向に隣り合う第1渡り部153Aの間に、第1渡り部153Aの先端側ほど幅広となる隙間が形成される。そこで本実施形態では、周方向に並ぶ第1渡り部153Aの間の隙間を利用して、絶縁カバー161の側面部171において第1渡り部153Aの湾曲部の外側となる位置に凹部177を設ける構成としている。
【0095】
なお、第1部分巻線151Aに温度検出部(サーミスタ)を設ける構成としてもよく、かかる構成では、絶縁カバー161に、温度検出部から延びる信号線を引き出すための開口部を設けるとよい。この場合、絶縁カバー161内に温度検出部を好適に収容できる。
【0096】
図示による詳細な説明は割愛するが、軸方向他方の絶縁カバー162は、絶縁カバー161と概ね同様の構成を有している。絶縁カバー162は、絶縁カバー161と同様に、一対の側面部171と、軸方向外側の外面部172と、軸方向内側の内面部173と、径方向内側の前面部174とを有している。また、絶縁カバー162において、一対の側面部171には前面部174の周方向両端となる位置に半円状の凹部177が設けられるとともに、外面部172に一対の突起部178が設けられている。絶縁カバー161との相違点として、絶縁カバー162は、第1部分巻線151Aの巻線端部154,155を引き出すための開口部を有していない構成となっている。
【0097】
絶縁カバー161,162では、軸方向の高さ寸法(すなわち一対の側面部171及び前面部174における軸方向の幅寸法)が相違している。具体的には、
図17に示すように、絶縁カバー161の軸方向の高さ寸法W11と絶縁カバー162の軸方向の高さ寸法W12は、W11>W12となっている。つまり、導線材CRを多重に巻回する場合には、巻線巻回方向(周回方向)に直交する向きに導線材CRの巻き段を切り替える(レーンチェンジする)必要があり、その切り替えに起因して巻線幅が大きくなることが考えられる。補足すると、絶縁カバー161,162のうち絶縁カバー161は、導線材CRの巻き始め及び巻き終わりを含む側の第1渡り部153Aを覆う部分であり、導線材CRの巻き始め及び巻き終わりを含むことにより、他の部分よりも導線材CRの巻き代(重なり代)が多くなり、その結果として巻線幅が大きくなることが生じうる。この点を加味して、絶縁カバー161の軸方向の高さ寸法W11が、絶縁カバー162の軸方向の高さ寸法W12よりも大きくなっている。これにより、絶縁カバー161,162の高さ寸法W11,W12が互いに同じ寸法である場合とは異なり、絶縁カバー161,162により導線材CRの巻き数が制限されるといった不都合が抑制されるようになっている。
【0098】
次に、第2コイルモジュール150Bについて説明する。
【0099】
図22(a)は、第2コイルモジュール150Bの構成を示す斜視図であり、
図22(b)は、第2コイルモジュール150Bにおいて構成部品を分解して示す斜視図である。また、
図23は、
図22(a)における23-23線断面図である。
【0100】
図22(a),(b)に示すように、第2コイルモジュール150Bは、第1部分巻線151Aと同様に導線材CRを多重巻にして構成された第2部分巻線151Bと、その第2部分巻線151Bにおいて軸方向一端側及び他端側に取り付けられた絶縁カバー163,164とを有している。絶縁カバー163,164は合成樹脂等の絶縁材料により成形されている。
【0101】
第2部分巻線151Bは、互いに平行でかつ直線状に設けられる一対の中間導線部152と、一対の中間導線部152を軸方向両端でそれぞれ接続する一対の第2渡り部153Bとを有しており、これら一対の中間導線部152と一対の第2渡り部153Bとにより環状に形成されている。第2部分巻線151Bにおいて一対の中間導線部152は、第1部分巻線151Aの中間導線部152と構成が同じである。これに対して、一対の第2渡り部153Bは、第1部分巻線151Aの第1渡り部153Aとは構成が異なっている。第2部分巻線151Bの第2渡り部153Bは、径方向に折り曲げられることなく、中間導線部152から直線状に軸方向に延びるようにして設けられている。
図18には、部分巻線151A,151Bの違いが対比して明示されている。
【0102】
第2部分巻線151Bでは、軸方向両側の第2渡り部153Bのうち、一方の第2渡り部153B(
図22(b)の上側の第2渡り部153B)から導線材CRの端部が引き出されており、その端部が巻線端部154,155となっている。そして、第2部分巻線151Bでも、第1部分巻線151Aと同様に、巻線端部154,155のうち一方が電流入出力端子に接続され、他方が中性点に接続されるようになっている。
【0103】
第2部分巻線151Bでは、第1部分巻線151Aと同様に、各中間導線部152に、シート状の絶縁被覆体157が被せられた状態で設けられている。絶縁被覆体157は、軸方向寸法として少なくとも中間導線部152における軸方向の絶縁被覆範囲の長さを有するフィルム材FMを用い、そのフィルム材FMを中間導線部152の周囲に巻装することで設けられている。
【0104】
絶縁被覆体157に関する構成も、各部分巻線151A,151Bで概ね同様である。つまり、
図23に示すように、中間導線部152の周囲には、フィルム材FMがその周方向の端部をオーバーラップさせた状態で被せられている。中間導線部152では、2つの周方向側面及び2つの径方向側面においてそれらの全てを覆うようにして絶縁被覆体157が設けられている。この場合、中間導線部152を囲う絶縁被覆体157には、他相の部分巻線151における中間導線部152との対向部分、すなわち中間導線部152の2つの周方向側面のうち一方に、フィルム材FMがオーバーラップするオーバーラップ部分OLが設けられている。本実施形態では、一対の中間導線部152において、周方向の同じ側にオーバーラップ部分OLがそれぞれ設けられている。
【0105】
第2部分巻線151Bでは、中間導線部152から、軸方向両側の第2渡り部153Bにおいて絶縁カバー163,164により覆われた部分(すなわち絶縁カバー163,164の内側となる部分)までの範囲で、絶縁被覆体157が設けられている。
図17で言えば、第2コイルモジュール150BにおいてAX2の範囲が絶縁カバー163,164により覆われていない部分であり、その範囲AX2よりも上下に拡張した範囲で絶縁被覆体157が設けられている。
【0106】
各部分巻線151A,151Bでは、いずれにおいても絶縁被覆体157が渡り部153A,153Bの一部を含む範囲で設けられている。すなわち、各部分巻線151A,151Bには、中間導線部152と、渡り部153A,153Bのうち中間導線部152に引き続き直線状に延びる部分とに、絶縁被覆体157が設けられている。ただし、各部分巻線151A,151Bではその軸方向長さが相違していることから、絶縁被覆体157の軸方向範囲も異なるものとなっている。
【0107】
次に、絶縁カバー163,164の構成を説明する。
【0108】
絶縁カバー163は、第2部分巻線151Bの軸方向一方側の第2渡り部153Bに装着され、絶縁カバー164は、第2部分巻線151Bの軸方向他方側の第2渡り部153Bに装着される。このうち絶縁カバー163の構成を
図24(a),(b)に示す。
図24(a),(b)は、絶縁カバー163を異なる二方向から見た斜視図である。
【0109】
図24(a),(b)に示すように、絶縁カバー163は、周方向の側面となる一対の側面部181と、軸方向外側の外面部182と、径方向内側の前面部183と、径方向外側の後面部184とを有している。これら各部181~184は、それぞれ板状に形成されており、軸方向内側のみが開放されるようにして立体状に互いに結合されている。一対の側面部181はそれぞれ、コアアセンブリCAへの組み付け状態においてコアアセンブリCAの軸心に向けて延びる向きで設けられている。そのため、複数の第2コイルモジュール150Bが周方向に並べて配置された状態では、隣り合う各第2コイルモジュール150Bにおいて絶縁カバー163の側面部181どうしが当接又は接近状態で互いに対向する。これにより、周方向に隣接する各第2コイルモジュール150Bにおいて相互の絶縁が図られつつ好適なる環状配置が可能となっている。
【0110】
絶縁カバー163において、前面部183には、第2部分巻線151Bの巻線端部154を引き出すための開口部185aが設けられ、外面部182には、第2部分巻線151Bの巻線端部155を引き出すための開口部185bが設けられている。
【0111】
絶縁カバー163の前面部183には、径方向内側に突出する突出部186が設けられている。突出部186は、絶縁カバー163の周方向一端から他端までの間の中央となる位置に、第2渡り部153Bよりも径方向内側に突出するように設けられている。突出部186は、平面視において径方向内側ほど先細りになるテーパ形状をなしており、その先端部に、軸方向に延びる貫通孔187が設けられている。なお、突出部186は、第2渡り部153Bよりも径方向内側に突出し、かつ絶縁カバー163の周方向一端から他端までの間の中央となる位置に貫通孔187を有するものであれば、その構成は任意である。ただし、軸方向内側の絶縁カバー161との重なり状態を想定すると、巻線端部154,155との干渉を回避すべく周方向に幅狭に形成されていることが望ましい。
【0112】
突出部186は、径方向内側の先端部において軸方向の厚さが段差状に薄くなっており、その薄くなっている低段部186aに貫通孔187が設けられている。この低段部186aは、コアアセンブリCAに対する第2コイルモジュール150Bの組み付け状態において、内筒部材81の軸方向端面からの高さが、第2渡り部153Bの高さよりも低くなる部位に相当する。
【0113】
また、
図23に示すように、突出部186には、軸方向に貫通する貫通孔188が設けられている。これにより、絶縁カバー161,163が軸方向に重なる状態において、貫通孔188を通じて、絶縁カバー161,163の間への接着剤の充填が可能となっている。
【0114】
図示による詳細な説明は割愛するが、軸方向他方の絶縁カバー164は、絶縁カバー163と概ね同様の構成を有している。絶縁カバー164は、絶縁カバー163と同様に、一対の側面部181と、軸方向外側の外面部182と、径方向内側の前面部183と、径方向外側の後面部184とを有するとともに、突出部186の先端部に設けられた貫通孔187を有している。また、絶縁カバー163との相違点として、絶縁カバー164は、第2部分巻線151Bの巻線端部154,155を引き出すための開口部を有していない構成となっている。
【0115】
絶縁カバー163,164では、一対の側面部181の径方向の幅寸法が相違している。具体的には、
図17に示すように、絶縁カバー163における側面部181の径方向の幅寸法W21と絶縁カバー164における側面部181の径方向の幅寸法W22は、W21>W22となっている。つまり、絶縁カバー163,164のうち絶縁カバー163は、導線材CRの巻き始め及び巻き終わりを含む側の第2渡り部153Bを覆う部分であり、導線材CRの巻き始め及び巻き終わりを含むことにより、他の部分よりも導線材CRの巻き代(重なり代)が多くなり、その結果として巻線幅が大きくなることが生じうる。この点を加味して、絶縁カバー163の径方向の幅寸法W21が、絶縁カバー164の径方向の幅寸法W22よりも大きくなっている。これにより、絶縁カバー163,164の幅寸法W21,W22が互いに同じ寸法である場合とは異なり、絶縁カバー163,164により導線材CRの巻き数が制限されるといった不都合が抑制されるようになっている。
【0116】
図25は、各コイルモジュール150A,150Bを周方向に並べた状態でのフィルム材FMのオーバーラップ位置を示す図である。上述したとおり各コイルモジュール150A,150Bでは、中間導線部152の周囲に、他相の部分巻線151における中間導線部152との対向部分、すなわち中間導線部152の周方向側面でオーバーラップするようにしてフィルム材FMが被せられている(
図20,
図23参照)。そして、各コイルモジュール150A,150Bを周方向に並べた状態では、フィルム材FMのオーバーラップ部分OLが、周方向両側のうちいずれも同じ側(図の周方向右側)に配置されるものとなっている。これにより、周方向に隣り合う異相の部分巻線151A,151Bにおける各中間導線部152において、フィルム材FMのオーバーラップ部分OLどうしが周方向に重ならない構成となっている。この場合、周方向に並ぶ各中間導線部152の間には、いずれも最多で3枚のフィルム材FMが重なる構成となっている。
【0117】
次に、コアアセンブリCAに対する各コイルモジュール150A,150Bの組み付けに関する構成を説明する。
【0118】
各コイルモジュール150A,150Bは、軸方向長さが互いに異なり、かつ部分巻線151A,151Bの渡り部153A,153Bの形状が互いに異なっており、第1コイルモジュール150Aの第1渡り部153Aを軸方向内側、第2コイルモジュール150Bの第2渡り部153Bを軸方向外側にした状態で、コアアセンブリCAに取り付けられる構成となっている。絶縁カバー161~164について言えば、各コイルモジュール150A,150Bの軸方向一端側において絶縁カバー161,163が軸方向に重ねられ、かつ軸方向他端側において絶縁カバー162,164が軸方向に重ねられた状態で、それら各絶縁カバー161~164がコアアセンブリCAに対して固定されるようになっている。
【0119】
図26は、コアアセンブリCAに対する第1コイルモジュール150Aの組み付け状態において複数の絶縁カバー161が周方向に並ぶ状態を示す平面図であり、
図27は、コアアセンブリCAに対する第1コイルモジュール150A及び第2コイルモジュール150Bの組み付け状態において複数の絶縁カバー161,163が周方向に並ぶ状態を示す平面図である。また、
図28(a)は、コアアセンブリCAに対する各コイルモジュール150A,150Bの組み付け状態において固定ピン191による固定前の状態を示す縦断面図であり、
図28(b)は、コアアセンブリCAに対する各コイルモジュール150A,150Bの組み付け状態において固定ピン191による固定後の状態を示す縦断面図である。
【0120】
図26に示すように、コアアセンブリCAに対して複数の第1コイルモジュール150Aを組み付けた状態では、複数の絶縁カバー161が、側面部171どうしを当接又は接近状態としてそれぞれ配置される。各絶縁カバー161は、側面部171どうしが対向する境界線LBと、内筒部材81の軸方向端面の凹部105とが一致するようにして配置される。この場合、周方向に隣り合う絶縁カバー161の側面部171どうしが当接又は接近状態となることで、それら絶縁カバー161の各凹部177により、軸方向に延びる貫通孔部が形成され、その貫通孔部と凹部105の位置が一致する状態とされる。
【0121】
また、
図27に示すように、コアアセンブリCA及び第1コイルモジュール150Aの一体物に対して、さらに第2コイルモジュール150Bが組み付けられる。この組み付けに伴い、複数の絶縁カバー163が、側面部181どうしを当接又は接近状態としてそれぞれ配置される。この状態では、各渡り部153A,153Bは、周方向に中間導線部152が並ぶ円上で互いに交差するように配置されることとなる。各絶縁カバー163は、突出部186が絶縁カバー161に軸方向に重なり、かつ突出部186の貫通孔187が、絶縁カバー161の各凹部177により形成された貫通孔部に軸方向に連なるようにして配置される。
【0122】
このとき、絶縁カバー163の突出部186が、絶縁カバー161に設けられた一対の突起部178により所定位置に案内されることで、絶縁カバー161側の貫通孔部と内筒部材81の凹部105とに対して絶縁カバー163側の貫通孔187の位置が合致するようになっている。つまり、コアアセンブリCAに対して各コイルモジュール150A,150Bを組み付けた状態では、絶縁カバー163の奥側に絶縁カバー161の凹部177が位置するために、絶縁カバー161の凹部177に対して突出部186の貫通孔187の位置合わせを行うことが困難になるおそれがある。この点、絶縁カバー161の一対の突起部178により絶縁カバー163の突出部186が案内されることで、絶縁カバー161に対する絶縁カバー163の位置合わせが容易となる。
【0123】
そして、
図28(a),(b)に示すように、絶縁カバー161と絶縁カバー163の突出部186との重なり部分においてこれらに係合する状態で、固定部材としての固定ピン191による固定が行われる。より具体的には、内筒部材81の凹部105と、絶縁カバー161の凹部177と、絶縁カバー163の貫通孔187とを位置合わせした状態で、それら凹部105,177及び貫通孔187に固定ピン191が差し入れられる。これにより、内筒部材81に対して絶縁カバー161,163が一体で固定される。本構成によれば、周方向に隣り合う各コイルモジュール150A,150Bが、コイルエンドCEでコアアセンブリCAに対して共通の固定ピン191により固定されるようになっている。固定ピン191は、熱伝導性の良い材料で構成されていることが望ましく、例えば金属ピンである。
【0124】
図28(b)に示すように、固定ピン191は、絶縁カバー163の突出部186のうち低段部186aに組み付けられている。この状態では、固定ピン191の上端部は、低段部186aの上方に突き出ているが、絶縁カバー163の上面(外面部182)よりも上方に突き出ないものとなっている。この場合、固定ピン191は、絶縁カバー161と絶縁カバー163の突出部186(低段部186a)との重なり部分の軸方向高さ寸法よりも長く、上方に突き出る余裕代を有しているため、固定ピン191を凹部105,177及び貫通孔187に差し入れる際(すなわち固定ピン191の固定作業時)にその作業を行いやすくなることが考えられる。また、固定ピン191の上端部が絶縁カバー163の上面(外面部182)よりも上方に突き出ないため、固定ピン191の突き出しに起因して固定子60の軸長が長くなるといった不都合を抑制できるものとなっている。
【0125】
固定ピン191による絶縁カバー161,163の固定後には、絶縁カバー163に設けた貫通孔188を通じて、接着剤の充填が行われる。これにより、軸方向に重なる絶縁カバー161,163が互いに強固に結合されるようになっている。なお、
図28(a),(b)では、便宜上、絶縁カバー163の上面から下面までの範囲で貫通孔188を示すが、実際には肉抜き等により形成された薄板部に貫通孔188が設けられた構成となっている。
【0126】
図28(b)に示すように、固定ピン191による各絶縁カバー161,163の固定位置は、固定子コア62よりも径方向内側(図の左側)の固定子ホルダ70の軸方向端面となっており、その固定子ホルダ70に対して固定ピン191による固定が行われる構成となっている。つまり、第1渡り部153Aが固定子ホルダ70の軸方向端面に対して固定される構成となっている。この場合、固定子ホルダ70には冷媒通路85が設けられているため、第1部分巻線151Aで生じた熱は、第1渡り部153Aから、固定子ホルダ70の冷媒通路85付近に直接的に伝わる。また、固定ピン191は、固定子ホルダ70の凹部105に差し入れられており、その固定ピン191を通じて固定子ホルダ70側への熱の伝達が促されるようになっている。かかる構成により、固定子巻線61の冷却性能の向上が図られている。
【0127】
本実施形態では、コイルエンドCEにおいて18個ずつの絶縁カバー161,163が軸方向内外に重ねて配置される一方、固定子ホルダ70の軸方向端面には、各絶縁カバー161,163と同数の18箇所に凹部105が設けられている。そして、その18箇所の凹部105で固定ピン191による固定が行われる構成となっている。
【0128】
不図示としているが、軸方向逆側の絶縁カバー162,164についても同様である。すなわち、まず第1コイルモジュール150Aの組み付けに際し、周方向に隣り合う絶縁カバー162の側面部171どうしが当接又は接近状態となることで、それら絶縁カバー162の各凹部177により、軸方向に延びる貫通孔部が形成され、その貫通孔部と、外筒部材71の軸方向端面の凹部106の位置が一致する状態とされる。そして、第2コイルモジュール150Bの組み付けにより、絶縁カバー163側の貫通孔部と外筒部材71の凹部106とに対して絶縁カバー164側の貫通孔187の位置が合致し、それら凹部106,177、貫通孔187に固定ピン191が差し入れられることで、外筒部材71に対して絶縁カバー162,164が一体で固定される。
【0129】
コアアセンブリCAに対する各コイルモジュール150A,150Bの組み付け時には、コアアセンブリCAに対して、その外周側に全ての第1コイルモジュール150Aを先付けし、その後に、全ての第2コイルモジュール150Bの組み付けと、固定ピン191による固定とを行うとよい。又は、コアアセンブリCAに対して、先に、2つの第1コイルモジュール150Aと1つの第2コイルモジュール150Bとを1本の固定ピン191で固定し、その後に、第1コイルモジュール150Aの組み付けと、第2コイルモジュール150Bの組み付けと、固定ピン191による固定とをこの順序で繰り返し行うようにしてもよい。
【0130】
次に、バスバーモジュール200について説明する。
【0131】
バスバーモジュール200は、固定子巻線61において各コイルモジュール150の部分巻線151に電気的に接続され、各相の部分巻線151の一端を相ごとに並列接続するとともに、それら各部分巻線151の他端を中性点で接続する巻線接続部材である。
図29は、バスバーモジュール200の斜視図であり、
図30は、バスバーモジュール200の縦断面の一部を示す断面図である。
【0132】
バスバーモジュール200は、円環状をなす環状部201と、その環状部201から延びる複数の接続端子202と、相巻線ごとに設けられる3つの入出力端子203とを有している。環状部201は、例えば樹脂等の絶縁部材により円環状に形成されている。
【0133】
図30に示すように、環状部201は、略円環板状をなし軸方向に多層(本実施形態では5層)に積層された積層板204を有しており、これら各積層板204の間に挟まれた状態で4つのバスバー211~214が設けられている。各バスバー211~214は、いずれも円環状をなしており、U相用のバスバー211と、V相用のバスバー212と、W相用のバスバー213と、中性点用のバスバー214とからなる。これら各バスバー211~214は、環状部201内において、板面を対向させるようにして軸方向に並べて配置されるものとなっている。各積層板204と各バスバー211~214とは、接着剤により互いに接合されている。接着剤として接着シートを用いることが望ましい。ただし液状又は半液状の接着剤を塗布する構成であってもよい。そして、各バスバー211~214には、それぞれ環状部201から径方向外側に突出させるようにして接続端子202が接続されている。
【0134】
環状部201の上面、すなわち5層に設けられた積層板204の最も表層側の積層板204の上面には、環状に延びる突起部201aが設けられている。
【0135】
なお、バスバーモジュール200は、各バスバー211~214が環状部201内に埋設された状態で設けられるものであればよく、所定間隔で配置された各バスバー211~214が一体的にインサート成形されるものであってもよい。また、各バスバー211~214の配置は、全てが軸方向に並びかつ全ての板面が同方向を向く構成に限られず、径方向に並ぶ構成や、軸方向に2列でかつ径方向に2列に並ぶ構成、板面の延びる方向が異なるものを含む構成などであってもよい。
【0136】
図29において、各接続端子202は、環状部201の周方向に並び、かつ径方向外側において軸方向に延びるように設けられている。接続端子202は、U相用のバスバー211に接続された接続端子と、V相用のバスバー212に接続された接続端子と、W相用のバスバー213に接続された接続端子と、中性点用のバスバー214に接続された接続端子とを含む。接続端子202は、コイルモジュール150における各部分巻線151の巻線端部154,155と同数で設けられており、これら各接続端子202には、各部分巻線151の巻線端部154,155が1つずつ接続される。これにより、バスバーモジュール200が、U相の部分巻線151、V相の部分巻線151、W相の部分巻線151に対してそれぞれ接続されるようになっている。
【0137】
入出力端子203は、例えばバスバー材よりなり、軸方向に延びる向きで設けられている。入出力端子203は、U相用の入出力端子203Uと、V相用の入出力端子203Vと、W相用の入出力端子203Wとを含む。これらの入出力端子203は、環状部201内において相ごとに各バスバー211~213にそれぞれ接続されている。これらの各入出力端子203を通じて、固定子巻線61の各相の相巻線に対して、不図示のインバータから電力の入出力が行われるようになっている。
【0138】
なお、バスバーモジュール200に、各相の相電流を検出する電流センサを一体に設ける構成であってもよい。この場合、バスバーモジュール200に電流検出端子を設け、その電流検出端子を通じて、電流センサの検出結果を不図示の制御装置に対して出力するようになっているとよい。
【0139】
また、環状部201は、固定子ホルダ70に対する被固定部として、内周側に突出する複数の突出部205を有しており、その突出部205には軸方向に延びる貫通孔206が形成されている。
【0140】
図31は、固定子ホルダ70にバスバーモジュール200を組み付けた状態を示す斜視図であり、
図32は、バスバーモジュール200を固定する固定部分における縦断面図である。なお、バスバーモジュール200を組み付ける前の固定子ホルダ70の構成は、
図12を参照されたい。
【0141】
図31において、バスバーモジュール200は、内筒部材81のボス部92を囲むようにして端板部91上に設けられている。バスバーモジュール200は、内筒部材81の支柱部95(
図12参照)に対する組み付けにより位置決めがなされた状態で、ボルト等の締結具217の締結により固定子ホルダ70(内筒部材81)に固定されている。
【0142】
より詳しくは、
図32に示すように、内筒部材81の端板部91には軸方向に延びる支柱部95が設けられている。そして、バスバーモジュール200は、複数の突出部205に設けられた貫通孔206に支柱部95を挿通させた状態で、支柱部95に対して締結具217により固定されている。本実施形態では、鉄等の金属材料よりなるリテーナプレート220を用いてバスバーモジュール200を固定することとしている。リテーナプレート220は、締結具217を挿通させる挿通孔221を有する被締結部222と、バスバーモジュール200の環状部201の上面を押圧する押圧部223と、被締結部222と押圧部223との間に設けられるベンド部224とを有している。
【0143】
リテーナプレート220の装着状態では、リテーナプレート220の挿通孔221に締結具217が挿通された状態で、締結具217が内筒部材81の支柱部95に対して螺着されている。また、リテーナプレート220の押圧部223がバスバーモジュール200の環状部201の上面に当接した状態となっている。この場合、締結具217が支柱部95にねじ入れられることに伴いリテーナプレート220が図の下方に押し込まれ、それに応じて押圧部223により環状部201が下方に押圧されている。締結具217の螺着に伴い生じる図の下方への押圧力は、ベンド部224を通じて押圧部223に伝わるため、ベンド部224での弾性力を伴う状態で、押圧部223での押圧が行われている。
【0144】
上述したとおり環状部201の上面には環状の突起部201aが設けられており、リテーナプレート220の押圧部223側の先端は突起部201aに当接可能となっている。これにより、リテーナプレート220の図の下方への押圧力が径方向外側に逃げてしまうことが抑制される。つまり、締結具217の螺着に伴い生じる押圧力が押圧部223の側に適正に伝わる構成となっている。
【0145】
なお、
図31に示すように、固定子ホルダ70に対するバスバーモジュール200の組み付け状態において、入出力端子203は、冷媒通路85に通じる入口開口86a及び出口開口87aに対して周方向に180度反対側となる位置に設けられている。ただし、これら入出力端子203と各開口86a,87aとが同位置(すなわち近接位置)にまとめて設けられていてもよい。
【0146】
次に、バスバーモジュール200の入出力端子203を回転電機10の外部の外部装置に対して電気的に接続する中継部材230について説明する。
【0147】
図1に示すように、回転電機10では、バスバーモジュール200の入出力端子203がハウジングカバー242から外側に突出するように設けられており、そのハウジングカバー242の外側で中継部材230に接続されている。中継部材230は、バスバーモジュール200から延びる相ごとの入出力端子203と、インバータ等の外部装置から延びる相ごとの電力線との接続を中継する部材である。
【0148】
図33は、ハウジングカバー242に中継部材230を取り付けた状態を示す縦断面図であり、
図34は、中継部材230の斜視図である。
図33に示すように、ハウジングカバー242には貫通孔242aが形成されており、その貫通孔242aを通じて入出力端子203の引き出しが可能になっている。
【0149】
中継部材230は、ハウジングカバー242に固定される本体部231と、ハウジングカバー242の貫通孔242aに挿し入れられる端子挿通部232とを有している。端子挿通部232は、各相の入出力端子203を1つずつ挿通させる3つの挿通孔233を有している。それら3つの挿通孔233は、断面開口が長尺状をなしており、長手方向がいずれも略同じとなる向きで並べて形成されている。
【0150】
本体部231には、相ごとに設けられた3つの中継バスバー234が取り付けられている。中継バスバー234は、略L字状に屈曲形成されており、本体部231にボルト等の締結具235により固定されるとともに、端子挿通部232の挿通孔233に挿通された状態の入出力端子203の先端部にボルト及びナット等の締結具236により固定されている。
【0151】
なお、図示は略しているが、中継部材230には外部装置から延びる相ごとの電力線が接続可能となっており、相ごとに入出力端子203に対する電力の入出力が可能となっている。
【0152】
次に、回転電機10を制御する制御システムの構成について説明する。
図35は、回転電機10の制御システムの電気回路図であり、
図36は、制御装置270による制御処理を示す機能ブロック図である。
【0153】
図35に示すように、固定子巻線61はU相巻線、V相巻線及びW相巻線よりなり、その固定子巻線61に、電力変換器に相当するインバータ260が接続されている。インバータ260は、相数と同じ数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されており、相ごとに上アームスイッチ261及び下アームスイッチ262からなる直列接続体が設けられている。これら各スイッチ261,262はドライバ263によりそれぞれオンオフされ、そのオンオフにより各相の相巻線が通電される。各スイッチ261,262は、例えばMOSFETやIGBT等の半導体スイッチング素子により構成されている。また、各相の上下アームには、スイッチ261,262の直列接続体に並列に、スイッチング時に要する電荷を各スイッチ261,262に供給する電荷供給用のコンデンサ264が接続されている。
【0154】
上下アームの各スイッチ261,262の間の中間接続点に、それぞれU相巻線、V相巻線、W相巻線の一端が接続されている。これら各相巻線は星形結線(Y結線)されており、各相巻線の他端は中性点にて互いに接続されている。
【0155】
制御装置270は、CPUや各種メモリからなるマイコンを備えており、回転電機10における各種の検出情報や、力行駆動及び発電の要求に基づいて、各スイッチ261,262のオンオフにより通電制御を実施する。回転電機10の検出情報には、例えば、レゾルバ等の角度検出器により検出される回転子20の回転角度(電気角情報)や、電圧センサにより検出される電源電圧(インバータ入力電圧)、電流センサにより検出される各相の通電電流が含まれる。制御装置270は、例えば所定のスイッチング周波数(キャリア周波数)でのPWM制御や、矩形波制御により各スイッチ261,262のオンオフ制御を実施する。制御装置270は、回転電機10に内蔵された内蔵制御装置であってもよいし、回転電機10の外部に設けられた外部制御装置であってもよい。
【0156】
ちなみに、本実施形態の回転電機10は、スロットレス構造(ティースレス構造)を有していることから、固定子60のインダクタンスが低減されて電気的時定数が小さくなっており、その電気的時定数が小さい状況下では、スイッチング周波数(キャリア周波数)を高くし、かつスイッチング速度を速くすることが望ましい。この点において、各相のスイッチ261,262の直列接続体に並列に電荷供給用のコンデンサ264が接続されていることで配線インダクタンスが低くなり、スイッチング速度を速くした構成であっても適正なサージ対策が可能となる。
【0157】
インバータ260の高電位側端子は直流電源265の正極端子に接続され、低電位側端子は直流電源265の負極端子(グランド)に接続されている。直流電源265は、例えば複数の単電池が直列接続された組電池により構成されている。また、インバータ260の高電位側端子及び低電位側端子には、直流電源265に並列に平滑用のコンデンサ266が接続されている。
【0158】
図36は、U,V,W相の各相電流を制御する電流フィードバック制御処理を示すブロック図である。
【0159】
図36において、電流指令値設定部271は、トルク-dqマップを用い、回転電機10に対する力行トルク指令値又は発電トルク指令値や、電気角θを時間微分して得られる電気角速度ωに基づいて、d軸の電流指令値とq軸の電流指令値とを設定する。なお、発電トルク指令値は、例えば回転電機10が車両用動力源として用いられる場合、回生トルク指令値である。
【0160】
dq変換部272は、相ごとに設けられた電流センサによる電流検出値(3つの相電流)を、界磁方向(direction of an axis of a magnetic field,orfield direction)をd軸とする直交2次元回転座標系の成分であるd軸電流とq軸電流とに変換する。
【0161】
d軸電流フィードバック制御部273は、d軸電流をd軸の電流指令値にフィードバック制御するための操作量としてd軸の指令電圧を算出する。また、q軸電流フィードバック制御部274は、q軸電流をq軸の電流指令値にフィードバック制御するための操作量としてq軸の指令電圧を算出する。これら各フィードバック制御部273,274では、d軸電流及びq軸電流の電流指令値に対する偏差に基づき、PIフィードバック手法を用いて指令電圧が算出される。
【0162】
3相変換部275は、d軸及びq軸の指令電圧を、U相、V相及びW相の指令電圧に変換する。なお、上記の各部271~275が、dq変換理論による基本波電流のフィードバック制御を実施するフィードバック制御部であり、U相、V相及びW相の指令電圧がフィードバック制御値である。
【0163】
操作信号生成部276は、周知の三角波キャリア比較方式を用い、3相の指令電圧に基づいて、インバータ260の操作信号を生成する。具体的には、操作信号生成部276は、3相の指令電圧を電源電圧で規格化した信号と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づくPWM制御により、各相における上下アームのスイッチ操作信号(デューティ信号)を生成する。操作信号生成部276にて生成されたスイッチ操作信号がインバータ260のドライバ263に出力され、ドライバ263により各相のスイッチ261,262がオンオフされる。
【0164】
続いて、トルクフィードバック制御処理について説明する。この処理は、例えば高回転領域及び高出力領域等、インバータ260の出力電圧が大きくなる運転条件において、主に回転電機10の高出力化や損失低減の目的で用いられる。制御装置270は、回転電機10の運転条件に基づいて、トルクフィードバック制御処理及び電流フィードバック制御処理のいずれか一方の処理を選択して実行する。
【0165】
図37は、U,V,W相に対応するトルクフィードバック制御処理を示すブロック図である。
【0166】
電圧振幅算出部281は、回転電機10に対する力行トルク指令値又は発電トルク指令値と、電気角θを時間微分して得られる電気角速度ωとに基づいて、電圧ベクトルの大きさの指令値である電圧振幅指令を算出する。
【0167】
dq変換部282は、dq変換部272と同様に、相ごとに設けられた電流センサによる電流検出値をd軸電流とq軸電流とに変換する。トルク推定部283は、d軸電流とq軸電流とに基づいて、U,V,W相に対応するトルク推定値を算出する。なお、トルク推定部283は、d軸電流、q軸電流及び電圧振幅指令が関係付けられたマップ情報に基づいて、電圧振幅指令を算出すればよい。
【0168】
トルクフィードバック制御部284は、力行トルク指令値又は発電トルク指令値にトルク推定値をフィードバック制御するための操作量として、電圧ベクトルの位相の指令値である電圧位相指令を算出する。トルクフィードバック制御部284では、力行トルク指令値又は発電トルク指令値に対するトルク推定値の偏差に基づき、PIフィードバック手法を用いて電圧位相指令が算出される。
【0169】
操作信号生成部285は、電圧振幅指令、電圧位相指令及び電気角θに基づいて、インバータ260の操作信号を生成する。具体的には、操作信号生成部285は、電圧振幅指令、電圧位相指令及び電気角θに基づいて3相の指令電圧を算出し、算出した3相の指令電圧を電源電圧で規格化した信号と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づくPWM制御により、各相における上下アームのスイッチ操作信号を生成する。操作信号生成部285にて生成されたスイッチ操作信号がインバータ260のドライバ263に出力され、ドライバ263により各相のスイッチ261,262がオンオフされる。
【0170】
ちなみに、操作信号生成部285は、電圧振幅指令、電圧位相指令、電気角θ及びスイッチ操作信号が関係付けられたマップ情報であるパルスパターン情報、電圧振幅指令、電圧位相指令並びに電気角θに基づいて、スイッチ操作信号を生成してもよい。
【0171】
(変形例)
以下に、上記第1実施形態に関する変形例を説明する。
【0172】
・磁石ユニット22における磁石32の構成を以下のように変更してもよい。
図38に示す磁石ユニット22では、磁石32において磁化容易軸の向きが径方向に対して斜めであり、その磁化容易軸の向きに沿って直線状の磁石磁路が形成されている。つまり、磁石32は、固定子60側(径方向内側)の磁束作用面34aと反固定子側(径方向外側)の磁束作用面34bとの間において磁化容易軸の向きがd軸に対して斜めであり、周方向において固定子60側でd軸に近づき、かつ反固定子側でd軸から離れる向きとなるように直線的な配向がなされて構成されている。本構成においても、磁石32の磁石磁路長を径方向の厚さ寸法よりも長くすることができ、パーミアンスの向上を図ることが可能となっている。
【0173】
・磁石ユニット22においてハルバッハ配列の磁石を用いることも可能である。
【0174】
・各部分巻線151において、渡り部153の折り曲げの方向は径方向内外のうちいずれであってもよく、コアアセンブリCAとの関係として、第1渡り部153AがコアアセンブリCAの側に折り曲げられていても、又は第1渡り部153AがコアアセンブリCAの逆側に折り曲げられていてもよい。また、第2渡り部153Bは、第1渡り部153Aの軸方向外側でその第1渡り部153Aの一部を周方向に跨ぐ状態になっているものであれば、径方向内外のいずれかに折り曲げられていてもよい。
【0175】
・部分巻線151として2種類の部分巻線151(第1部分巻線151A、第2部分巻線151B)を有するものとせず、1種類の部分巻線151を有するものとしてもよい。具体的には、部分巻線151を、側面視において略L字状又は略Z字状をなすように形成するとよい。部分巻線151を側面視で略L字状に形成する場合、軸方向一端側では、渡り部153が径方向内外のいずれかに折り曲げられ、軸方向他端側では、渡り部153が径方向に折り曲げられることなく設けられている構成とする。また、部分巻線151を側面視で略Z字状に形成する場合、軸方向一端側及び軸方向他端側において、渡り部153が径方向に互いに逆向きに折り曲げられている構成とする。いずれの場合であっても、上述のように渡り部153を覆う絶縁カバーによりコイルモジュール150がコアアセンブリCAに対して固定される構成であるとよい。
【0176】
・上述した構成では、固定子巻線61において、相巻線ごとに全ての部分巻線151が並列接続される構成を説明したが、これを変更してもよい。例えば、相巻線ごとの全ての部分巻線151を複数の並列接続群に分け、その複数の並列接続群を直列接続する構成でもよい。つまり、各相巻線における全n個の部分巻線151を、n/2個ずつの2組の並列接続群や、n/3個ずつの3組の並列接続群などに分け、それらを直列接続する構成としてもよい。又は、固定子巻線61において相巻線ごとに複数の部分巻線151が全て直列接続される構成としてもよい。
【0177】
・回転電機10における固定子巻線61は2相の相巻線(U相巻線及びV相巻線)を有する構成であってもよい。この場合、例えば部分巻線151では、一対の中間導線部152が1コイルピッチ分を離して設けられ、一対の中間導線部152の間に、他1相の部分巻線151における中間導線部152が1つ配置される構成となっていればよい。
【0178】
・回転電機10を、アウタロータ式の表面磁石型回転電機に代えて、インナロータ式の表面磁石型回転電機として具体化することも可能である。
図39(a),(b)は、インナロータ構造とした場合の固定子ユニット300の構成を示す図である。このうち
図39(a)はコイルモジュール310A,310BをコアアセンブリCAに組み付けた状態を示す斜視図であり、
図39(b)は、各コイルモジュール310A,310Bに含まれる部分巻線311A,311Bを示す斜視図である。本例では、固定子コア62の径方向外側に固定子ホルダ70が組み付けられることでコアアセンブリCAが構成されている。また、固定子コア62の径方向内側に、複数のコイルモジュール310A,310Bが組み付けられる構成となっている。
【0179】
部分巻線311Aは、概ね既述の第1部分巻線151Aと同様の構成を有しており、一対の中間導線部312と、軸方向両側においてコアアセンブリCAの側(径方向外側)に折り曲げ形成された渡り部313Aとを有している。また、部分巻線311Bは、概ね既述の第2部分巻線151Bと同様の構成を有しており、一対の中間導線部312と、軸方向両側において渡り部313Aを軸方向外側で周方向に跨ぐように設けられた渡り部313Bとを有している。部分巻線311Aの渡り部313Aには絶縁カバー315が装着され、部分巻線311Bの渡り部313Bには絶縁カバー316が装着されている。
【0180】
絶縁カバー315には、周方向両側の側面部に、軸方向に延びる半円状の凹部317が設けられている。また、絶縁カバー316には、渡り部313Bよりも径方向外側に突出する突出部318が設けられ、その突出部318の先端部に、軸方向に延びる貫通孔319が設けられている。
【0181】
図40は、コアアセンブリCAに対してコイルモジュール310A,310Bを組み付けた状態を示す平面図である。なお、
図40において、固定子ホルダ70の軸方向端面には周方向に等間隔で複数の凹部105が形成されている。また、固定子ホルダ70は、液状冷媒又は空気による冷却構造を有しており、例えば空冷構造として、外周面に複数の放熱フィンが形成されているとよい。
【0182】
図40では、絶縁カバー315,316が軸方向に重なる状態で配置されている。また、絶縁カバー315の側面部に設けられた凹部317と、絶縁カバー316の突出部318において絶縁カバー316の周方向一端から他端までの間の中央となる位置に設けられた貫通孔319とが軸方向に連なっており、それら各部で、固定ピン321による固定がなされている。
【0183】
また、
図40では、固定ピン321による各絶縁カバー315,316の固定位置が、固定子コア62よりも径方向外側の固定子ホルダ70の軸方向端面となっており、その固定子ホルダ70に対して固定ピン321による固定が行われる構成となっている。この場合、固定子ホルダ70には冷却構造が設けられているため、部分巻線311A,311Bで生じた熱が固定子ホルダ70に伝わり易くなっている。これにより、固定子巻線61の冷却性能を向上させることができる。
【0184】
・回転電機10に用いられる固定子60は、バックヨークから延びる突起部(例えばティース)を有するものであってもよい。この場合にも、固定子コアに対するコイルモジュール150等の組み付けがバックヨークに対して行われるものであればよい。
【0185】
・回転電機としては、星形結線のものに限らず、Δ結線のものであってもよい。
【0186】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における回転電機について説明する。本実施形態の回転電機は、インナロータ式の表面磁石型回転電機であり、周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する回転子(界磁子)と、多相の固定子巻線を有する固定子(電機子)とを備え、固定子の径方向内側に回転子が回転可能に支持されている構成となっている。
【0187】
以下に、本実施形態における固定子410を構成する固定子ユニット400の構成を詳しく説明する。
【0188】
図41は、固定子ユニット400の全体を示す斜視図であり、
図42(a)は、固定子ユニット400の平面図であり、
図42(b)は、固定子ユニット400の横断面図であり、
図43は、固定子ユニット400の縦断面図であり、
図44は、固定子ユニット400においてコアアセンブリCBと固定子巻線411とを分解して示す分解斜視図である。なお、
図43は、
図42(a)における固定子中心点Cを通る43-43線での断面図である。
【0189】
固定子ユニット400は、その概要として、固定子410とその径方向外側の固定子ホルダ420とを有している。また、固定子410は、固定子巻線411と固定子コア412とを有している。そして、固定子コア412と固定子ホルダ420とを一体化してコアアセンブリCBを設け、そのコアアセンブリCBに対して、固定子巻線411を構成する複数の部分巻線451を組み付ける構成としている。なお、固定子巻線411が「電機子巻線」に相当し、固定子コア412が「電機子コア」に相当し、固定子ホルダ420が「電機子保持部材」に相当する。また、コアアセンブリCBが「巻線支持部材」に相当する。
【0190】
図43には、固定子410の径方向内側に設けられる回転子430を仮想線で示しており、回転電機MGは、固定子410と回転子430とを含む構成となっている。回転子430は、回転軸431と一体で回転可能となっている。回転子430は、第1実施形態で説明した回転子20と同様の構成を有するものであるため、ここでは簡単に説明する。
【0191】
回転子430は、回転軸431に固定された磁石保持部材としての回転子キャリアと、その回転子キャリアに固定された磁石部としての環状の磁石ユニットとを有している。ただし本実施形態では、インナロータ構造を有するものであるため、回転子キャリアの径方向外側に磁石ユニットが固定されている。磁石ユニットにおいて、磁石は周方向に複数の磁極を有しており、より具体的には回転子の周方向に沿って極性が交互に変わるように複数の磁石が並べて設けられている。磁石ユニットは、磁石の磁束作用面において、磁極中心であるd軸付近の領域に集中的に磁束を生じさせるものとなっている。具体的には、磁石は、d軸側とq軸側とで磁化容易軸の向きが相違しており、d軸側では磁化容易軸の向きがd軸に平行する向きとなり、q軸側では磁化容易軸の向きがq軸に直交する向きとなっている(
図7参照)。回転電機MGでは、固定子巻線411と回転子430の磁石ユニットとが径方向に対向し、それら両者の間にエアギャップが形成されている。
【0192】
コアアセンブリCBについて説明する。
図45は、コアアセンブリCBの縦断面図である。なお、
図45は、
図43と同様に、
図42(a)の43-43線での断面図としている。
【0193】
図44及び
図45に示すように、コアアセンブリCBは、有底筒状をなす固定子ホルダ420と、固定子ホルダ420の内周側に組み付けられた円筒状の固定子コア412とを有している。固定子コア412は、磁性体である電磁鋼板からなるコアシートが軸方向に積層されたコアシート積層体として構成されている。固定子コア412において回転子側となる径方向内側には固定子巻線411が組み付けられている。固定子コア412は、テークス(内周面の凹凸)を有しておらず、バックヨークとして機能する。本実施形態の固定子コア412は、第1実施形態の固定子コア62と同じ構成であればよく、スロットレス構造についても同様である。
【0194】
図45に示すように、固定子ホルダ420は、円筒部421と、円筒部421の軸方向一端側に設けられた底部422と、円筒部421の軸方向他端側に設けられ径方向外側に延びる環状のフランジ423とを有している。底部422には、回転子430に一体に設けられた回転軸431を挿通させる貫通孔424が設けられている。固定子ホルダ420は、例えばアルミニウムや鋳鉄等の金属、又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により構成されているとよい。なお、底部422及びフランジ423がそれぞれ「台座部」に相当する。
【0195】
また、固定子ホルダ420の円筒部421には、冷却部として、冷却水等の冷媒を流通させる冷媒通路425が形成されている。冷媒通路425は、固定子ホルダ420の周方向に環状に設けられており、詳細は不図示とするが、冷媒を流入口から流入させ、冷媒通路425を周方向に流通させた後、流出口から流出させる構成となっている。
図45に示す構成では、固定子ホルダ420の円筒部421と底部422とを含む範囲で冷媒通路425が設けられている。ただし、冷媒通路425が、さらにフランジ423を含む範囲で設けられていてもよい。冷媒通路425は、少なくとも円筒部421、より詳しくは固定子コア412の径方向外側となる位置に設けられているとよい。
【0196】
図45に示すように、固定子ホルダ420には、後述する複数のコイルモジュール450の固定に用いられる凹部427,428が形成されている。具体的には、固定子ホルダ420のフランジ423には、周方向に等間隔で複数の凹部427が形成されている。また、固定子ホルダ420の底部422には、周方向に等間隔で複数の凹部428が形成されている。これら凹部427,428は、コアアセンブリCBと同心の仮想円上に並ぶように設けられている。なお、本実施形態では、凹部427,428の数を、コイルモジュール450の数の1/2としているが、コイルモジュール450と同数であってもよい。
【0197】
次に、コアアセンブリCBに対して組み付けられる固定子巻線411の構成を詳しく説明する。コアアセンブリCBに対して固定子巻線411が組み付けられた状態は、
図41~
図43に示すとおりであり、コアアセンブリCBの径方向内側、すなわち固定子コア412の径方向内側に、固定子巻線411を構成する複数の部分巻線451が周方向に並ぶ状態で組み付けられている。
【0198】
固定子巻線411は、複数の相巻線を有し、各相の相巻線が周方向に所定順序で配置されることで円筒状(環状)に形成されている。本実施形態では、U相、V相及びW相の相巻線を用いることで、固定子巻線411が3相の相巻線を有する構成となっている。
【0199】
固定子巻線411において各相の相巻線は各々複数の部分巻線451を有しており、その部分巻線451は個別にコイルモジュール450として設けられている。つまり、コイルモジュール450は、各相の相巻線における部分巻線451が一体に設けられて構成されており、極数に応じた所定数のコイルモジュール450により固定子巻線411が構成されている。各相のコイルモジュール450(部分巻線451)が周方向に所定順序で並べて配置されることで、固定子巻線411のコイルサイドCSにおいて各相の導線部が所定順序に並べて配置されるものとなっている。
図44には、複数のコイルモジュール450が周方向に並べて配置された構成が示されている。本実施形態では、磁極数を24としているが、その数は任意である。固定子巻線411では、相ごとに各コイルモジュール450の部分巻線451が並列又は直列に接続されることにより、各相の相巻線が構成されている。
【0200】
図43に示すように、固定子410は、軸方向において、固定子コア412に径方向に対向するコイルサイドCSに相当する部分と、そのコイルサイドCSの軸方向外側であるコイルエンドCEに相当する部分とを有している。コイルサイドCSは、回転子430の磁石ユニットに径方向に対向する部分でもある。コイルモジュール450は固定子コア412の径方向内側に組み付けられている。この場合、コイルモジュール450は、その軸方向両端部分が固定子コア412よりも軸方向外側(すなわちコイルエンドCE側)に突出した状態で組み付けられている。
【0201】
固定子巻線411に用いるコイルモジュール450は、全て同一の形態で構成されており、軸方向に2段にずれた状態で周方向に並べて配置されるものとなっている。本実施形態では、部分巻線451として、軸方向両側のコイルエンドCEで径方向の屈曲の向きが互いに相違するものとを用いており、軸方向一端側では、部分巻線451のコイルエンド部分(渡り部)が径方向内側に屈曲され、軸方向他端側では、部分巻線451のコイルエンド部分(渡り部)が径方向外側に屈曲されるものとなっている。つまり、部分巻線451は、側方から見て略Z形状となっている。
【0202】
固定子巻線411では、その固定子巻線411に用いるN個のコイルモジュール450のうちN/2個ずつが、軸方向に2段に振り分けて段違いに配置されるようになっている。本実施形態では、12個のコイルモジュール450が6個ずつ2つのグループに分けられ、それら各グループのコイルモジュール450が軸方向2段に組み付けられる構成となっている。
【0203】
図46は、コイルモジュール450の構成を示す斜視図であり、
図47は、コイルモジュール450において構成部品を分解して示す斜視図である。
【0204】
図46及び
図47に示すように、コイルモジュール450は、導線材CRを多重巻にして構成された部分巻線451と、その部分巻線451において軸方向一端側及び他端側に取り付けられた絶縁カバー460,470とを有している。
【0205】
部分巻線451は、互いに平行でかつ直線状に設けられる一対の中間導線部452と、一対の中間導線部452を軸方向両端でそれぞれ接続する一対の渡り部453,454とを有しており、これら一対の中間導線部452と一対の渡り部453,454とにより環状に形成されている。一対の中間導線部452は、所定のコイルピッチ分を離して設けられており、周方向において一対の中間導線部452の間に、他相の部分巻線451の中間導線部452が配置可能となっている。本実施形態では、一対の中間導線部452は2コイルピッチ分を離して設けられ、一対の中間導線部452の間に、他2相の部分巻線451における中間導線部452が1つずつ配置される構成となっている。
【0206】
軸方向両側の各渡り部453,454は、いずれもコイルエンドCE(
図43参照)に相当する部分として設けられ、径方向において互いに逆向きに屈曲形成されている。各渡り部453,454は、中間導線部452に対して直交する向き、すなわち軸方向に直交する方向に折り曲がるようにして設けられている。軸方向一端側の渡り部453と軸方向他端側の渡り部454は平面視の形状(軸方向から見た形状)が相違しており、一方の渡り部453は、屈曲先端側で周方向に幅広となる形状となり、他方の渡り部454は、屈曲先端側で周方向に幅狭となる形状となっている。この場合、各渡り部453、454において径方向に延びる部分は、いずれも固定子中心点から放射状に延びる向きで設けられている。
【0207】
各部分巻線451において、中間導線部452は、コイルサイドCSにおいて周方向に1つずつ並ぶコイルサイド導線部として設けられている。また、各渡り部453,454は、コイルエンドCEにおいて、周方向に異なる2位置の同相の中間導線部452どうしを接続するコイルエンド導線部として設けられている。
【0208】
部分巻線451では、上述した第1実施形態の部分巻線151と同様に、導線集合部分の横断面が四角形になるように導線材CRが多重に巻回されて形成されている。中間導線部452で言えば、導線材CRが周方向に複数列で並べられ、かつ径方向に複数列で並べられることで、横断面が略矩形状となるように形成されている(
図20参照)。
【0209】
部分巻線451において各中間導線部452には、シート状の絶縁被覆体455が被せられた状態で設けられている。絶縁被覆体455の構成についても、上述した部分巻線151の絶縁被覆体157と同様である。すなわち、絶縁被覆体455は、軸方向寸法として少なくとも中間導線部452における軸方向の絶縁被覆範囲の長さを有するフィルム材を用い、そのフィルム材を中間導線部452の周囲に巻装することで設けられている。また、絶縁被覆体455は、中間導線部452の周囲に、フィルム材の周方向の端部をオーバーラップさせた状態で設けられている。
【0210】
次に、絶縁カバー460,470の構成を説明する。絶縁カバー460,470は、各渡り部453,454において部分巻線451どうしの絶縁を図るべく設けられた絶縁部材であり、渡り部453,454の全周を包囲するものとなっている。
【0211】
絶縁カバー460は、部分巻線451の軸方向一方側の渡り部453に装着され、絶縁カバー470は、部分巻線451の軸方向他方側の渡り部454に装着されている。これらの各絶縁カバー460,470は合成樹脂等の絶縁材料により成形されており、絶縁カバー460,470よって、部分巻線451の各渡り部453,454での巻線相互の絶縁がなされている。
図48(a)は、コイルモジュール450の渡り部453側を
図46の48-48線で切断した48-48線断面図であり、
図48(b)は、
図48(a)の構成を分解して示す分解断面図である。また、
図49(a)は、コイルモジュール450の渡り部454側を
図46の49-49線で切断した49-49線断面図であり、
図49(b)は、
図49(a)の構成を分解して示す分解断面図である。
【0212】
図48(a),(b)に示すように、絶縁カバー460は、軸方向に分割可能に構成されており、渡り部453を軸方向外側から覆う外側カバー材461と、渡り部453を軸方向内側から覆う内側カバー材462とを有している。このうち、外側カバー材461は、渡り部453の軸方向外側端面に対向する端板部463と、その端板部463から軸方向に延びる周壁部464とを有している。端板部463には、金属板からなるブラケット部465が一体に設けられている。例えば、ブラケット部465は、樹脂成形体である端板部463(外側カバー材461)に埋設された状態で設けられている。
【0213】
なお、外側カバー材461と内側カバー材462は、「分割カバー材」であり、軸方向から装着されるものである以外に、径方向から装着されるものであってもよい(後述する外側カバー材471と内側カバー材472も同様)。
【0214】
ブラケット部465は、コアアセンブリCBに対してコイルモジュール450を組み付けた状態でそのコイルエンド部分を支持する支持部材であり、その構成を
図50(a)に示す。なお、
図50(a)には、外側カバー材461の端板部463を仮想線で示している。
【0215】
ブラケット部465は、その一部が外側カバー材461の端板部463から径方向に突出するものとなっており、その突出部分に貫通孔465a,465bが設けられている。より詳しくは、ブラケット部465は、端板部463の外側において周方向に異なる2位置に突出するように設けられている。一方の突出部分は、平面視において、端板部463の周方向中央位置で径方向外側に突出しており、その突出部分に貫通孔465aが設けられている。また、他方の突出部分は、端板部463から周方向外側に突出しており、その突出部分に貫通孔465bが設けられている。
【0216】
また、ブラケット部465は、軸方向に屈曲された屈曲部465cを有している。屈曲部465cは、絶縁カバー460においてブラケット突出側とは径方向逆側の端部で屈曲されており、絶縁カバー460の組み付け状態では、渡り部453に対して屈曲部465cが径方向に対向するものとなっている。本実施形態では、部分巻線451の渡り部453が径方向外側に折れ曲がっており、その折れ曲がり状態の渡り部453において径方向に凸となる湾曲部分の内側に屈曲部465cが径方向に対向するものとなっている。これにより、屈曲部465c又はその屈曲部465cに一体化された周壁部464は、貫通孔465aの逆側で渡り部453に対して係合可能となっている。
【0217】
屈曲部465cは、周方向両端に径方向内側に延びるように湾曲形成された湾曲部465d,465eを有している。この湾曲部465d,465eは、絶縁カバー460が部分巻線451の渡り部453に組み付けられた状態で、渡り部453に対して屈曲方向内側から係合可能な係合部となっている。つまり、絶縁カバー460は、渡り部453において周方向に離間する2つの導線部(すなわち各中間導線部からコイルエンド側に延びる導線部)の間にブラケット部465が挟まれた状態で設けられるようになっている。
【0218】
また、
図47に示すように、内側カバー材462は、渡り部453の軸方向内側端面に対向する端板部467と、その端板部467から軸方向に延びる2つの起立部468とを有している。起立部468は、渡り部453の先端部において径方向内側及び径方向外側にそれぞれ対向するように設けられている。
【0219】
部分巻線451の渡り部453に対する絶縁カバー460の組み付け時には、渡り部453に内側カバー材462が装着されるとともに、その内側カバー材462に対して外側カバー材461が装着される。渡り部453と各カバー材461,462とは接着等の接合手段により互いに接合されているとよい。ただし、これら各カバー材461,462の装着順序は任意である。
【0220】
図48(a)に示すように、渡り部453に対して絶縁カバー460が装着された状態では、その絶縁カバー460により渡り部453が軸方向及び径方向から包囲され、ブラケット部465の一部が突出した状態となっている。絶縁カバー460内には例えば合成樹脂からなる充填剤REが充填されている。
【0221】
また、
図49(a),(b)に示すように、絶縁カバー470は、軸方向に分割可能に構成されており、渡り部454を軸方向外側から覆う外側カバー材471と、渡り部454を軸方向内側から覆う内側カバー材472とを有している。このうち、外側カバー材471は、渡り部454の軸方向外側端面に対向する端板部473と、その端板部473から軸方向に延びる周壁部474とを有している。端板部473には、金属板からなるブラケット部475が一体に設けられている。例えば、ブラケット部475は、樹脂成形体である端板部473(外側カバー材471)に埋設された状態で設けられている。
【0222】
ブラケット部475は、コアアセンブリCBに対してコイルモジュール450を組み付けた状態でそのコイルエンド部分を支持する支持部材であり、その構成を
図50(b)に示す。なお、
図50(b)には、外側カバー材471の端板部473を仮想線で示している。
【0223】
ブラケット部475は、その一部が外側カバー材471の端板部473から径方向に突出するものとなっており、その突出部分に貫通孔475a,475bが設けられている。より詳しくは、ブラケット部475は、端板部473の外側において端板部473の周方向中央位置で径方向内側に突出しており、その突出部分に貫通孔475a,475bが設けられている。
【0224】
また、ブラケット部475は、軸方向に屈曲された屈曲部475cを有している。屈曲部475cは、絶縁カバー470においてブラケット突出側とは径方向逆側の端部で屈曲されており、絶縁カバー470の組み付け状態では、渡り部454に対して屈曲部475cが径方向に対向するものとなっている。本実施形態では、部分巻線451の渡り部454が径方向内側に折れ曲がっており、その折れ曲がり状態の渡り部454において径方向に凸となる湾曲部分の内側に屈曲部475cが径方向に対向するものとなっている。これにより、屈曲部475c又はその屈曲部475cに一体化された周壁部474は、貫通孔475a,475bの逆側で渡り部454に対して係合可能となっている。
【0225】
屈曲部475cは、周方向両端に径方向内側に延びるように湾曲形成された湾曲部475d,475eを有している。この湾曲部475d,475eは、絶縁カバー470が部分巻線451の渡り部454に組み付けられた状態で、渡り部454に対して屈曲方向内側から係合可能な係合部となっている。つまり、絶縁カバー470は、渡り部454において周方向に離間する2つの導線部(すなわち各中間導線部からコイルエンド側に延びる導線部)の間にブラケット部475が挟まれた状態で設けられるようになっている。
【0226】
また、
図47に示すように、内側カバー材472は、渡り部454の軸方向内側端面に対向する端板部477と、その端板部477から軸方向に延びる2つの起立部478とを有している。起立部478は、渡り部454の先端部において径方向内側及び径方向外側にそれぞれ対向するように設けられている。
【0227】
部分巻線451の渡り部454に対する絶縁カバー470の組み付け時には、渡り部454に内側カバー材472が装着されるとともに、その内側カバー材472に対して外側カバー材471が装着される。渡り部454と各カバー471,472とは接着等の接合手段により互いに接合されているとよい。ただし、これら各カバー471,472の装着順序は任意である。
【0228】
図49(a)に示すように、渡り部454に対して絶縁カバー470が装着された状態では、その絶縁カバー470により渡り部454が軸方向及び径方向から包囲され、ブラケット部475の一部が突出した状態となっている。絶縁カバー470内には例えば合成樹脂からなる充填剤REが充填されている。
【0229】
図51(a),(b)は、固定子巻線411において、部分巻線451とブラケット部465,475との位置関係を示す斜視図であり、同図では、説明の便宜上、コイルモジュール450から、絶縁カバー460,470(外側カバー材461,471及び内側カバー材462,472)と絶縁被覆体455とを除去した状態としている。このうち、
図51(a)は、3つの部分巻線451の組み付け状態を径方向内側から見た斜視図であり、
図51(b)は、同じ3つの部分巻線451の組み付け状態を径方向外側から見た斜視図である。
【0230】
図51(a)に示すように、固定子巻線411の軸方向一端側では、ブラケット部465が、屈曲部465cが部分巻線451の渡り部453の径方向内側に対向し、その屈曲部465cから径方向外側に延びるようにして設けられている。また、
図51(b)に示すように、固定子巻線411の軸方向他端では、ブラケット部475が、屈曲部475cが部分巻線451の渡り部454の径方向外側に対向し、その屈曲部475cから径方向内側に延びるようにして設けられている。
【0231】
ここで、ブラケット部465,475による各部分巻線451(各コイルモジュール450)の固定について具体的な構成を説明する。
図52は、固定子ホルダ420(コアアセンブリCB)に3つの部分巻線451を配置した状態を示す平面図であり、同図には1つの部分巻線451を上段(すなわち紙面手前側)に配置し、2つの部分巻線451を下段(すなわち紙面奥側)に配置した状態が示されている。なお、
図52では、
図51(a),(b)と同様に、コイルモジュール450から、絶縁カバー460,470(外側カバー材461,471及び内側カバー材462,472)と絶縁被覆体455とを除去した状態を示している。
【0232】
図52では、複数の部分巻線451の渡り部453,454が軸方向にそれぞれ重なっており、その重なり状態で、2つずつのブラケット部465,475(すなわち、ブラケット部465,475を含む絶縁カバー460,470)が、固定子ホルダ420に対して結合部材481,482により機械的に結合されるようになっている。これにより、固定子ホルダ420に対する各絶縁カバー460,470の固定が可能になっている。
【0233】
詳しくは、軸方向一端側では、軸方向に重なる2つのブラケット部465において、それら各ブラケット部465に形成された貫通孔465a,465bが軸方向に同一位置となっている。つまり、ブラケット部465には周方向に異なる2位置に貫通孔465a,465bが形成されており、2つのブラケット部465が軸方向に重なる状態では、一方のブラケット部465の貫通孔465aの位置と他方のブラケット部465の貫通孔465bの位置とが一致する。また、上述したとおり固定子ホルダ420のフランジ423には凹部427が形成されており(
図45参照)、固定子ホルダ420に対して各部分巻線451を配置した状態では、各ブラケット部465の貫通孔465a,465bの位置と固定子ホルダ420の凹部427の位置とが一致する。そして、これら各ブラケット部465の貫通孔465a,465bと固定子ホルダ420の凹部427とに対して結合部材481が挿通されることで、各ブラケット部465(各絶縁カバー460)が、固定子ホルダ420に対して機械的に結合されている。
【0234】
渡り部453側の結合部材481は、例えば金属製の固定ピンであり、圧入や螺着により固定子ホルダ420側の凹部427に固定されるようになっている。そして、結合部材481が各ブラケット部465の貫通孔465a,465bに挿通されることで、これら各ブラケット部465が係合状態で結合されるものとなっている。
【0235】
また、軸方向他端側では、軸方向に重なる2つのブラケット部475において、それら各ブラケット部475に形成された貫通孔475a,475bが軸方向に同一位置となっている。つまり、ブラケット部475には周方向に異なる2位置に貫通孔475a,475bが形成されており、2つのブラケット部475が軸方向に重なる状態では、一方のブラケット部475の貫通孔475aの位置と他方のブラケット部475の貫通孔475bの位置とが一致する。また、上述したとおり固定子ホルダ420の底部422には凹部428が形成されており(
図45参照)、固定子ホルダ420に対して各部分巻線451を配置した状態では、各ブラケット部475の貫通孔475a,475bの位置と固定子ホルダ420の凹部428の位置とが一致する。そして、これら各ブラケット部475の貫通孔475a,475bと固定子ホルダ420の凹部427とに対して結合部材482が挿通されることで、各ブラケット部475(各絶縁カバー470)が、固定子ホルダ420に対して機械的に結合される。
【0236】
渡り部454側の結合部材482は、軸方向に分離及び結合可能な連結構造を有している。その具体的な構成を
図53に示す。結合部材482は、金属材料からなり、かつ軸方向に分離及び結合可能な2つの連結ボルト482a,482bにより構成されており、一方の連結ボルト482aは、固定子ホルダ420の底部422に形成された凹部428にねじ込み可能であり、他方の連結ボルト482bは、一方の連結ボルト482aに対してねじ込み可能である。なお、凹部428には雌ねじが形成されている。この場合、連結ボルト482aにより、下段側の絶縁カバー470のブラケット部475が固定され、連結ボルト482bにより、上段側の絶縁カバー470のブラケット部475が固定されるようになっている。なお、結合部材482は、軸方向に分離及び結合可能な2部材がそれぞれ圧入により固定される構成であってもよい。
【0237】
各結合部材481,482は他の形態のものに変更可能であり、軸方向一端側及び他端側で結合構造を相違させることに代えて、軸方向一端側及び他端側で結合構造を同じにしてもよい。また、結合の形態として、溶接や接着によるものを用いてもよい。
【0238】
図52に示すように、各部分巻線451において、渡り部453,454はそれぞれ、周方向一端側と周方向他端側とで互いに異なる部分巻線451の渡り部453,454と軸方向に重なる構成となっている。そして、固定子ホルダ420に対して結合部材481,482により固定される2つの部分巻線451の組み合わせが、軸方向一端側と軸方向他端側とで相違するものとなっている。つまり、本実施形態では、渡り部453側で結合部材481により結合される部分巻線451のペアと、渡り部454側で結合部材482により結合される部分巻線451のペアとを相違させている。
図52で言えば、渡り部453側では、左、中、右の3つの部分巻線451のうち「左及び中」の部分巻線451のペアで結合部材481による結合が行われ、渡り部454側では、左、中、右の3つの部分巻線451のうち「中及び右」の部分巻線451のペアで結合部材482による結合が行われるようになっている。
【0239】
固定子ユニット400の完成状態で言えば、
図42(a)に示すように、軸方向に重なる各絶縁カバー460において周方向の12箇所で、各絶縁カバー460の貫通孔465a,465bが上下に重なっており、周方向に1つ置きとなる各貫通孔465a,465bで結合部材481による結合がそれぞれ行われている。また、軸方向に重なる各絶縁カバー470において周方向の12箇所で、各絶縁カバー470の貫通孔475a,475bが上下に重なっており、周方向に1つ置きとなる各貫通孔475a,475bで結合部材482による結合がそれぞれ行われている。この場合、上記のとおり絶縁カバー460側(渡り部453側)で結合部材481により結合されるコイルモジュール450のペアと、絶縁カバー470側(渡り部454側)で結合部材482により結合されるコイルモジュール450のペアとが相違するものとなっている。
【0240】
ただし、絶縁カバー460側で結合部材481により結合されるコイルモジュール450のペアと、絶縁カバー470側で結合部材482により結合されるコイルモジュール450のペアとが同じであってもよい。また、絶縁カバー460側において周方向の全ての貫通孔465a,465bで結合部材481による結合を行う構成、又は、絶縁カバー470側において周方向の全ての貫通孔475a,475bで結合部材482による結合を行う構成であってもよい。
【0241】
次に、コアアセンブリCBに対する各コイルモジュール450の組み付けに関する構成を説明する。
【0242】
コイルモジュール450の組み付け時には、コアアセンブリCBに対して、下段側の6個のコイルモジュール450が周方向に並べて配置される。その状態を
図54の平面図に示す。この場合、複数(本実施形態では6個)の絶縁カバー460が、軸方向において同一となる位置で周方向に並ぶ状態で配置される。この状態で、固定子ホルダ420の凹部427(
図44,
図45参照)に対して、絶縁カバー460側の貫通孔465a,465bの位置合わせが行われる。
図44に示すように、凹部427の数がコイルモジュール450の全数の1/2である場合には、例えば貫通孔465a,465bのうち貫通孔465bについて、固定子ホルダ420の凹部427に対する位置合わせが行われる。
【0243】
なお、コイルモジュール450の組み付け前に、固定子ホルダ420の凹部427に圧入又は螺着により結合部材481を固定しておき、その状態で、結合部材481にブラケット部465の貫通孔465bを挿通させつつ各コイルモジュール450を配置するとよい。
【0244】
また、複数(本実施形態では6個)の絶縁カバー470が、軸方向において同一となる位置で周方向に並ぶ状態で配置される。この状態で、固定子ホルダ420の凹部428(
図45参照)に対して、絶縁カバー470側の貫通孔475a,475bの位置合わせが行われる。このとき、ブラケット部475の貫通孔475aに連結ボルト482aが挿通されることにより、各絶縁カバー470が固定される。
【0245】
その後、上段側の6個のコイルモジュール450が組み付けられる。その状態が
図42(a),(b)に示す状態である。このとき、軸方向一端側及び他端側において、絶縁カバー460,470がそれぞれ上下2段に配置された状態となる。また、周方向に一列に並ぶ状態で各コイルモジュール450の中間導線部452が配置される状態となる。この状態では、上下2段の各絶縁カバー460が、貫通孔465a,465bに結合部材481が挿通された状態で固定子ホルダ420に対して結合されている。また、上下2段の各絶縁カバー470が、貫通孔475a,475bに結合部材482が挿通された状態で固定子ホルダ420に対して結合されている。
【0246】
図41~
図43に示す完成状態の固定子ユニット400では、コイルモジュール450の絶縁カバー460,470に設けられたブラケット部465,475がコアアセンブリCBに対して結合部材481,482により機械的に結合されることで、各コイルモジュール450の固定がなされている。この場合、各コイルモジュール450では、絶縁カバー460,470によって、部分巻線451どうしの相間絶縁と固定子コア412に対する対地絶縁とが可能となっている。
【0247】
また、各コイルモジュール450は、冷媒通路425を有する固定子ホルダ420に対して結合部材481,482により結合されている。そのため、部分巻線451で生じた熱は、渡り部453,454から、ブラケット部465,475と結合部材481,482とを介して固定子ホルダ420の冷媒通路425付近に直接的に伝わるようになっている。この場合、ブラケット部465,475はその一部がカバー外部に露出しており、かつそのカバー外部で結合部材481,482による結合が行われているため、放熱が促進されるものとなっている。また、ブラケット部465,475や結合部材481,482がいずれも金属製であることから、熱の伝達性が良好になっている。
【0248】
さらに、絶縁カバー460,470内に充填剤REが充填されているため(
図48(a)、
図49(a)参照)、渡り部453,454(部分巻線451)と絶縁カバー460,470との隙間が埋まり、熱伝導率が高められるようになっている。なお、絶縁カバー460,470内の隙間を充填剤REで埋めることにより、各コイルモジュール450の結合強度を上げることも期待できる。
【0249】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0250】
上記構成の回転電機MGでは、固定子巻線411の部分巻線451が一対の中間導線部452と渡り部453,454とを有し、中間導線部452が周方向に並ぶようにして複数の部分巻線451が周方向に配列されている。この場合、部分巻線451(コイルモジュール450)ごとにコアアセンブリCBへの組み付けを行うことにより、固定子410のティースの有無にかかわらず固定子巻線411の組み付けが可能となっている。また、部分巻線451の渡り部453,454に絶縁カバー460,470が取り付けられていることにより、周方向に並ぶ部分巻線451どうしを好適に絶縁できるものとなっている。
【0251】
そしてかかる構成において、絶縁カバー460,470から突出した状態で設けられたブラケット部465,475を用い、絶縁カバー460,470から突出するブラケット突出部分とコアアセンブリCB(固定子ホルダ420)とが機械的に結合されるようにした。この場合、コアアセンブリCBに対する複数の部分巻線451(コイルモジュール450)の取り付けを簡易かつ確実に実施することができる。巻線機などの製造装置を用いて固定子を製造する場合には、その製造装置の小型化が可能となっている。その結果、固定子巻線411線の組み付けを簡易に実現することができる。
【0252】
ブラケット部465,475において、突出側とは径方向逆側の端部に屈曲部465c,475cを設け、その屈曲部465c,475cが、渡り部453,454に径方向に対向する構成とした。この場合、ブラケット部465,475において反突出側の屈曲部465c,475cで渡り部453,454とブラケット部465,475とが径方向に係合可能となり、その状態で、ブラケット部465,475の突出部分でコアアセンブリCBとの機械的な結合が行われる。これにより、部分巻線451の径方向の位置ずれを抑制でき、ひいてはコアアセンブリCBに対する各部分巻線451の組み付け状態を適正な状態で維持できるものとなっている。
【0253】
部分巻線451の渡り部453,454が、径方向に折れ曲がり、かつコアアセンブリCBに軸方向に重なっている構成では、コアアセンブリCBの軸方向端部において、そのコアアセンブリCBに対して絶縁カバー460,470が軸方向に重複した状態で配置される。かかる構成において、ブラケット部465,475の屈曲部465c,475cを、渡り部453,454における湾曲部分の内側に径方向に対向させることで、コアアセンブリCBの軸方向端部に対して絶縁カバー460,470を好適に機械結合させることができる。
【0254】
部分巻線451の渡り部453,454は、周方向に離間する2つの導線部(すなわち各中間導線部452からコイルエンド側に延びる導線部)を有しており、それら各導線部間にブラケット部465,475が挟まれた状態では、渡り部453,454の周方向の位置ずれがブラケット部465,475により規制される。そのため、上記構成によれば、部分巻線451について径方向の位置ずれを抑制できることに加え、周方向の位置ずれを抑制できる。また、ブラケット部465,475が軸方向外側において渡り部453,454に対向する構成であることからすれば、軸方向、径方向及び周方向のいずれの方向についても部分巻線451の位置ずれを抑制できるものとなっている。
【0255】
部分巻線451の渡り部453,454において、部分巻線451どうしの絶縁や部分巻線451とコアアセンブリCB(特に固定子コア412)との絶縁を図るには、渡り部453,454を軸方向及び径方向から包囲する状態で絶縁カバー460,470を設けることが望ましい。この場合、絶縁カバー460,470が、渡り部453,454に対して軸方向から装着される複数の分割カバー材を含む構成とすることで、渡り部453,454に対する絶縁カバー460,470の装着を容易に実施できる。また、複数の分割カバー材のいずれかにブラケット部465,475が一体に設けられている構成とすることで、各分割カバー材の装着に伴いブラケット部465,475の装着を併せて行うことができる。これにより、渡り部453,454を軸方向及び径方向から全周包囲する絶縁カバー460,470を好適に設けることができる。
【0256】
上記構成の固定子巻線411では、周方向に並ぶ各部分巻線451が、周方向に一部を重複させつつ各々配置されており、コイルエンドCEでは異相の部分巻線451における渡り部453,454どうしが軸方向に重なる状態となっている。かかる状態において、各渡り部453,454に取り付けられた絶縁カバー460,470において、重なり状態の各ブラケット部465,475の突出部分が、コアアセンブリCBに対して結合部材481,482により結合されているため、コアアセンブリCBに対する複数の部分巻線451の取り付けを簡易に実施することができる。また、結合部材481,482により、各ブラケット部465,475とコアアセンブリCBとの間の熱の伝達経路が形成されるため、固定子巻線411の放熱の観点からも望ましい構成を実現できる。
【0257】
コアアセンブリCBに対して結合部材481,482により結合される2つの部分巻線451の組み合わせを、軸方向一端側と軸方向他端側とで相違させる構成とした。これにより、周方向に並ぶ全ての部分巻線451について隣り合うものどうしを互いに連結させつつ、コアアセンブリCBに対する結合場所を必要最小限にすることができる。これにより、回転電機MGの製造負担の軽減を図ることができる。
【0258】
絶縁カバー460,470のブラケット部465,475が、冷却部を有するコアアセンブリCBに対して結合される構成とした。この場合、部分巻線451で生じた熱はブラケット部465,475を介して冷却部付近に直接的に伝わるため、固定子巻線411を冷却する冷却性能を向上させることができる。
【0259】
コアアセンブリCBが、固定子コア412と、その固定子コア412の径方向外側の固定子ホルダ420とを備える構成とし、絶縁カバー460,470のブラケット部465,475を、固定子コア412を越えた位置にある固定子ホルダ420に対して結合部材481,482により結合するようにした。この場合、固定子コア412に対して、結合部材481,482の結合を行うことが不要となるため、固定子コア412に、結合部材481,482を結合するための凹部等を設ける必要がなく、コギングトルクの発生等の不都合を抑制できる。
【0260】
固定子ホルダ420において円筒部421と底部422とを含む範囲で冷媒通路425を設ける構成とした。これにより、ブラケット部465,475が固定子ホルダ420の底部422に対して機械的に結合される構成において、ブラケット部465,475から固定子ホルダ420の冷媒通路425への熱の伝達を好適に実施することができる。
【0261】
上記構成では、コアアセンブリCBにおいて径方向に延びる底部422及びフランジ423を、ブラケット部465,475が機械的に結合される結合場所とした。これにより、その結合場所の確保が容易となり、ブラケット部465,475の結合を好適に行わせることができる。
【0262】
部分巻線451の軸方向両端において、各絶縁カバー460,470をそれぞれコアアセンブリCBに対して機械的に結合する構成とした。これにより、部分巻線451を適正に固定でき、例えば部分巻線451において中間導線部452が軸方向に対して非平行になり、それに伴い軸方向でエアギャップ寸法が相違するといった不都合を抑制できる。また、部分巻線451の軸方向両端において、結合部材481,482による結合の形態を互いに異なるものとした。具体的には、一方をねじ結合、他方を係合結合とした。これにより、軸方向一端側及び他端側で結合の余裕度(遊び量)を異ならせることができ、組み付け状態での寸法調整が容易となっている。
【0263】
部分巻線451の中間導線部452(コイルサイド部分)を、フィルム材からなる絶縁被覆体455で覆う構成とした。この構成では、部分巻線451のコイルエンド部分が絶縁カバー460,470により絶縁されるとともに、コイルサイド部分が絶縁被覆体455により絶縁されることとなり、これら各部分で同一の絶縁部材を設ける構成に比べて、各部分での絶縁構造を簡易化することができる。
【0264】
(第2実施形態の変形例)
・絶縁カバー460,470のブラケット部465,475は、端板部463,473に一体に設けられていればよく、端板部463,473に埋設されている構成以外に、端板部463,473の板面に接着等により固定されている構成であってもよい。
【0265】
・ブラケット部465,475は金属材料以外で構成されていてもよく、例えば高強度かつ非伸縮性の樹脂材料により構成されていてもよい。ブラケット部465,475は、絶縁カバー460,470よりも高強度の材料により構成されているとよい。また、ブラケット部465,475は、熱伝導性の高い材料により構成されているとよい。
【0266】
・軸方向両側に設けられる絶縁カバー460,470のうち一方にのみ機械的な結合機構を設ける構成としてもよい。例えば、固定子ホルダ420の底部422側にのみ機械的な結合機構を設ける構成とする。なおこの場合、軸方向逆側では、不図示のバスバーや端子台、ハウジング等による押さえ付けを行う構成としてもよい。
【0267】
・部分巻線451の軸方向一端側及び他端側において、結合部材481,482による結合の形態は互いに同じものであってもよい。例えば、両方をねじ結合、又は両方を係合結合としてもよい。
【0268】
・上記第2実施形態では、巻線支持部材として、固定子コア412と固定子ホルダ420とを含むコアアセンブリCBを用いる構成としたが、これを変更し、巻線支持部材として固定子ホルダ420を用いる構成、すなわち固定子コア412を含まない構成としてもよい。コアアセンブリCB(巻線支持部材)に設けられる冷却部を、冷媒通路425とは異なる構成にしてもよく、冷却部として、例えば円筒部421の外周部側に放熱フィンを設ける構成としてもよい。
【0269】
(第3実施形態)
以下に、本実施形態における固定子ユニット500の構成を説明する。本実施形態の固定子ユニット500は、第2実施形態の固定子ユニット400の一部を変更したものであり、以下には、第2実施形態との相違点を主に説明する。なお、第2実施形態との共通の構成については同じ部材番号を付し、その説明を省略する。
【0270】
図55は、固定子ユニット500の平面図であり、
図56は、固定子ユニット500の縦断面図であり、
図57は、固定子ユニット500においてコアアセンブリCBと固定子巻線411とを分解して示す分解斜視図である。なお、
図56は、
図55における固定子中心点Cを通る56-56線での断面図である。
【0271】
本実施形態の固定子ユニット500では、第2実施形態と比べて、コアアセンブリCBに対して各コイルモジュール450を固定する構成が異なっており、固定子ホルダ420の底部422側ではコイルモジュール450をピン固定し、固定子ホルダ420のフランジ423側ではコイルモジュール450をボルト固定する構成としている。そのため、固定子ホルダ420において、フランジ423に設けた凹部427の形態と底部422に設けた凹部428の形態とが変更されている。
【0272】
固定子巻線411は、既述のとおり複数のコイルモジュール450を有し、そのコイルモジュール450はそれぞれ略Z形状の部分巻線451を有するものであるが、第2実施形態と比べると、絶縁カバー460,470の形態が異なるものとなっている。また、本実施形態では、軸方向に2段で配置される各コイルモジュール450において、上段側と下段側とで絶縁カバー460,470の構成が相違している。そのため、以下の説明では、便宜上、下段側のコイルモジュール450を「下段モジュール450A」、上段側のコイルモジュール450を「上段モジュール450B」とも言う。また、下段モジュール450Aと上段モジュール450Bとの構成の違いを明確にすべく、下段モジュール450Aの絶縁カバー460,470を「絶縁カバー460A,470A」、上段モジュール450Bの絶縁カバー460,470を「絶縁カバー460B,470B」とも言う。各絶縁カバー460,470において、それぞれが外側カバー材461,471と内側カバー材462,472とを有している構成は、上記第2実施形態と同様である。
【0273】
図58(a)は、下段モジュール450Aの斜視図であり、
図58(b)は、上段モジュール450Bの斜視図である。
【0274】
図58(a)に示すように、下段モジュール450Aの絶縁カバー460Aには、一部が周方向に突出した状態でブラケット部501が設けられている。ブラケット部501には、軸方向に延びるボス部502が設けられており、そのボス部502には貫通孔503が設けられている。また、下段モジュール450Aの絶縁カバー470Aには、一部が径方向内側に突出した状態でブラケット部504が設けられている。ブラケット部504には、その突出部分に貫通孔505が設けられている。
【0275】
また、
図58(b)に示すように、上段モジュール450Bの絶縁カバー460Bには、一部が径方向外側に突出した状態でブラケット部511が設けられている。ブラケット部511には、軸方向に延びるボス部512が設けられており、そのボス部512には貫通孔513が設けられている。また、上段モジュール450Bの絶縁カバー470Bには、一部が径方向内側に突出した状態でブラケット部514が設けられている。ブラケット部514には、その突出部分に貫通孔515が設けられている。
【0276】
なお、
図58(a),(b)では、ブラケット部501,504,511,514の一部が絶縁カバー460,470内に隠れて視認できないが、これら各ブラケット部501,504,511,514は、既述の構成と同様に、突出側とは径方向逆側の端部で屈曲された屈曲部を有している。
【0277】
図59(a),(b)は、固定子巻線411において、各モジュール450A,450Bの部分巻線451とブラケット部501,504,511,514との位置関係を示す斜視図である。このうち、
図59(a)は、3つの部分巻線451の組み付け状態を径方向内側から見た斜視図であり、
図59(b)は、同じ3つの部分巻線451の組み付け状態を径方向外側から見た斜視図である。
【0278】
図59(a),(b)に示すように、軸方向一端側(図の上側)では、軸方向に重なる各ブラケット部501,511において、ボス部502,512が互いに結合され、かつこれら各ボス部502,512の貫通孔503,513が連通している。また、軸方向他端側(図の下側)では、軸方向に重なる各ブラケット部504,514において、これら各ブラケット部504,514の貫通孔505,515の位置が一致している。
【0279】
そして、
図55に示すように、軸方向一端側では、軸方向に重なる各ブラケット部501,511が、結合部材521により固定子ホルダ420に対して結合される。より具体的には、各ボス部502,512の貫通孔503,513に結合部材521が挿通された状態で、各ブラケット部501,511が結合される。結合部材521は、例えば金属ボルトであり、そのボルトが各ボス部502,512の貫通孔503,513に、ボス部502側から連通された状態で、各ボス部512の貫通孔513に形成された雌ねじにねじ入れられるようになっている。
【0280】
なお、ボス部502,512は、互いの結合面が凹凸状に設けられ、その凹凸による係合により相互の位置決めが行われるようになっているとよい。これにより、各コイルモジュール450の組み付け時の位置決めが容易となっている。
【0281】
また、軸方向他端側では、軸方向に重なる各ブラケット部504,514が、結合部材522により固定子ホルダ420に対して結合される。より具体的には、各ブラケット部504,514の貫通孔505,515に結合部材522が挿通された状態で、各ブラケット部504,514が結合される。結合部材522は、例えば金属製の固定ピンである。
【0282】
コイルモジュール450の組み付け時には、コアアセンブリCBに対して、下段側の6個のコイルモジュール450が周方向に並べて配置され、その後、上段側の6個のコイルモジュール450が周方向に並べて配置される。下段側のコイルモジュール450が配置された状態が
図60に示す状態であり、その後、上段側のコイルモジュール450が配置された状態が
図55に示す状態である。
図55に示す状態では、軸方向一端側において各絶縁カバー460A,460Bに設けられたブラケット部501,511がコアアセンブリCBに対して結合部材521により機械的に結合されるとともに、軸方向他端側において各絶縁カバー470A,470Bに設けられたブラケット部504,514がコアアセンブリCBに対して結合部材522により機械的に結合されている。これにより、コアアセンブリCBに対する各コイルモジュール450の固定がなされている。
【0283】
本実施形態では、絶縁カバー460A,460Bのブラケット部501,511において、ボス部502,512を軸方向に互いに結合し、かつそれら各ボス部502,512の中空部に結合部材521を挿通した状態で、結合部材521による各ブラケット部501,511の結合を行うものとした。この場合、ボス部502,512の結合により、軸方向における各絶縁カバー460A、460Bの相対距離を一定に保持しつつ、それら各絶縁カバー460,470をコアアセンブリCBに対して適正な状態で結合することができる。
【0284】
以下に、第2実施形態及び第3実施形態における変形例を説明する。
【0285】
・例えば第2実施形態において、絶縁カバー460,470のブラケット部465,475がコアアセンブリCBに対して機械的に結合される構成として、ブラケット部465,475とは別体の結合部材481,482を用いない構成としてもよい。例えば、
図61に示すように、軸方向に重なる各絶縁カバー460がブラケット部465X,465Yを有する構成において、軸方向外側のブラケット部465Xの先端に、軸方向に折り曲げ形成された折曲げ部531を設け、その折曲げ部531を、ブラケット部465Yの貫通孔に挿通させた状態で、固定子ホルダ420側の凹部427に固定するとよい。
【0286】
・上記構成では、各部分巻線451を側方から見て略Z状となる形状とし、その部分巻線451を軸方向の上下2段に重ねて配置する構成としたが、この構成を変更してもよい。例えば、
図62の構成では、部分巻線451が互いに異なる2形態で設けられており、一方は側方から見て略I状となる形状、他方は側方から見て略C状となる形状となっている。そして、これら各部分巻線451が、コアアセンブリCBに対して組み付けられている。なお、
図62では、絶縁カバー460,470に含まれるブラケット部465,475と、結合部材481,482とを簡略的に示している。
【0287】
図62では、一方の部分巻線451は、渡り部453,454が径方向に折り曲げられていない形状となっている。また、非折り曲げ状態の渡り部453,454においても、折り曲げ状態の渡り部453,454と同様に、ブラケット部465,475の屈曲部465c,475cが渡り部453,454に径方向に対向する状態となっている。
【0288】
・
図63には、アウタロータ構造の固定子に適用した構成を示す。
図63においても、既述のとおり絶縁カバー460,470から突出した状態で設けられたブラケット部465,475が、コアアセンブリCBに対して機械的に結合されるものとなっている。
【0289】
・回転電機MGとして、界磁子を回転子、電機子を固定子とする回転界磁形の回転電機に代えて、電機子を回転子、界磁子を固定子とする回転電機子形の回転電機を採用することも可能である。
【0290】
(第4実施形態)
以下には、第4実施形態における回転電機の構成を説明する。本実施形態では、固定子の固定子巻線に特徴的な構成を付加し、ティースレス構造の固定子において導体占積率の向上を図るものとしている。ここでは、第1実施形態で説明した回転電機10の固定子ユニット50を基本構成としつつ、相違点となる構成を中心に説明する。
【0291】
上記
図10や
図11を用いて説明したとおり、固定子ユニット50は、固定子60とその径方向内側の固定子ホルダ70とを有し、固定子60は、固定子巻線61と固定子コア62とを有している。そして、固定子コア62と固定子ホルダ70とを一体化することで巻線支持部材としてのコアアセンブリCAを設け、そのコアアセンブリCAに対して、固定子巻線61を構成する複数の部分巻線151を組み付ける構成としている。
【0292】
固定子60は、アウタロータ式の回転電機10に適用されるものであり、コアアセンブリCAの径方向外側、すなわち固定子コア62の径方向外側に、固定子巻線61を構成する複数の部分巻線151が周方向に並ぶ状態で組み付けられている。部分巻線151は、軸方向に延びる一対の中間導線部152と、軸方向一端側及び他端側に設けられ、一対の中間導線部152を環状に接続する渡り部153,154とを有している。
【0293】
図17,
図18に示すように、部分巻線151は、形状が互いに異なる第1部分巻線151Aと第2部分巻線151Bとを含んでおり、第1部分巻線151Aにより第1コイルモジュール150Aが構成され、第2部分巻線151Bにより第2コイルモジュール150Bが構成されている。より具体的には、コイルモジュール150A,150Bは、各部分巻線151A,151Bにおいて軸方向両端の渡り部153,154にそれぞれ絶縁カバー161~164が装着されるとともに、各中間導線部152にシート状の絶縁被覆体157、具体的には一定厚さのフィルム材からなる絶縁被覆体157が被せられた構成となっている。
【0294】
ただし本実施形態では、
図10等の構成との対比において、固定子巻線61を構成する部分巻線151(コイルモジュール150)の数を変更している。具体的には、
図10等で示す固定子ユニット50では部分巻線151(コイルモジュール150)の数を全36個としているのに対し、本実施形態の固定子ユニット50では部分巻線151(コイルモジュール150)の数を全12個としている。
【0295】
図64は、コアアセンブリCAの径方向外側での中間導線部152の配列状態を示す横断面図である。なお、
図64には、コアアセンブリCAを円筒断面で示している。図中の直線LX1,LX2,LX3は、固定子中心点Cから径方向に延び、かつ中間導線部152の間を通る直線であり、固定子中心点Cから等角度間隔で放射状に延びる等分線である。周方向に並ぶ中間導線部152の個数をM個とした場合、各直線LX1~LX3は「360/M」度ごとに定められている。
【0296】
中間導線部152では、複数の導線材CRが縦横に並べて多重に巻回されており、導線集合体としての横断面は四角形形状をなしている。中間導線部152には絶縁部材としての絶縁被覆体157が被せられており、各中間導線部152は絶縁被覆体157どうしが接触又は近接した状態で設けられている。
【0297】
図64では、周方向に並ぶ各中間導線部152をそれぞれ導線部D1,D2,D3,D4,D5,D6としている。この場合、「導線部D1,D4」が同一の部分巻線151(第2部分巻線151B)における一対の中間導線部152であり、「導線部D3,D6」が同一の部分巻線151(第1部分巻線151A)における一対の中間導線部152である。
【0298】
図65(a)に、第1部分巻線151Aにおける中間導線部152の断面形状を示し、
図65(b)に、第2部分巻線151Bにおける中間導線部152の断面形状を示す。
図65(a),(b)において、直線LX1は、第1部分巻線151Aの周方向中央位置において固定子中心点Cから径方向に延びる直線であり、直線LX2は、第2部分巻線151Bの周方向中央位置において固定子中心点Cから径方向に延びる直線である。なお、第1部分巻線151Aでは、周方向端部位置の直線が「直線LX2」となり、第2部分巻線151Bでは、周方向端部位置の直線が「直線LX1」となっている。
【0299】
第1部分巻線151A及び第2部分巻線151Bは、中間導線部152の断面形状が互いに異なるものとなっている。詳しくは、各部分巻線151A,151Bにおいて、中間導線部152は、周方向に対向する周方向側面601,602を有しており、そのうち周方向側面601は、部分巻線151の環状外側となる側面であり、周方向側面602は、部分巻線151の環状内側となる側面である。なお、以下の説明では、環状外側の周方向側面601を「外側側面601」、環状内側の周方向側面602を「内側側面602」とも言う。
【0300】
図65(a)に示すように、第1部分巻線151Aは、中間導線部152の外側側面601が直線LX2に沿ってこれに平行に延び、かつ中間導線部152の内側側面602が、直線LX2に平行な平行線LYに沿ってこれに平行に延びるように構成されている。この場合、第1部分巻線151Aにおいて、中間導線部152の外側側面601及び内側側面602が互いに平行であり、中間導線部152の断面形状が略平行四辺形になっている。
【0301】
また、
図65(b)に示すように、第2部分巻線151Bは、中間導線部152の外側側面601が直線LX1に沿ってこれに平行に延び、かつ中間導線部152の内側側面602が、直線LX2に平行な平行線LYに沿ってこれに平行に延びるように構成されている。この場合、第2部分巻線151Bにおいて、中間導線部152の外側側面601及び内側側面602が互いに非平行であり、中間導線部152の断面形状が略台形になっている。
【0302】
第1部分巻線151Aと第2部分巻線151Bとを比べると、第1部分巻線151Aの中間導線部152は、径方向外側の周方向幅寸法と径方向内側の周方向幅寸法とが等しいのに対し、第2部分巻線151Bの中間導線部152は、径方向外側の周方向幅寸法が径方向内側の周方向幅寸法よりも大きくなっている。
【0303】
コアアセンブリCAに対して各部分巻線151A,151Bを組み付けた状態では、
図64に示すように、周方向に隣り合う各中間導線部152は、絶縁被覆体157を介在させた状態で、周方向に対向する外側側面601どうし、内側側面602どうしが、互いに対向し、かつ互いに平行になっている。この場合特に、各中間導線部152の外側側面601は、互いに対向する2つの外側側面601の間を通る直線LX1,LX2にそれぞれ平行になっている。これに対し、中間導線部152の内側側面602は、互いに対向する2つの内側側面602の間を通る直線LX3に非平行になっている。
【0304】
以下には、固定子巻線61の構成についてより詳しく説明する。
【0305】
図66(a),(b)は、コアアセンブリCAに対する各部分巻線151A,151Bの組み付け状態を示す正面図であり、そのうち
図66(a)は、各部分巻線151A,151Bを分離させた状態で示し、
図66(b)は、各部分巻線151A,151Bを組み付けた状態で示している。なお、
図66(a),(b)では、説明の便宜上、コイルモジュール150A,150Bの絶縁カバー161~164や絶縁被覆体157を省略し、部分巻線151A,151Bのみを示すものとしている。
【0306】
部分巻線151A,151Bは、軸方向長さが互いに異なり、かつ軸方向両側の端部形状(渡り部形状)が互いに異なるものとなっている。第1部分巻線151Aは、側面視で略C字状をなし、第2部分巻線151Bは、側面視で略I字状をなしている。
図66(a),(b)において、ドット部分は、各部分巻線151A,151Bの渡り部先端における導体部分を示している。部分巻線151A,151Bの組み付け状態では、中間導線部152どうしが周方向に並び、かつ渡り部153どうし、渡り部154どうしがそれぞれ軸方向に重なり合う状態となっている。
【0307】
第1部分巻線151A及び第2部分巻線151Bは、コアアセンブリCAに対する組み付け順序が前後異なっており、軸方向両端の折り曲げ部を有する第1部分巻線151AがコアアセンブリCAに先に組み付けられた後に、軸方向両端の折り曲げ部を有していない第2部分巻線151Bが径方向外側から組み付けられる。複数(本実施形態では6個)の第1部分巻線151Aが、先付けされる第1巻線群G1の部分巻線151であり、複数(本実施形態では6個)の第2部分巻線151Bが、後付けされる第2巻線群G2の部分巻線151である。
【0308】
各巻線群G1,G2では、部分巻線151の渡り部153,153が軸方向に2段に設けられる。つまり、第1巻線群G1の第1部分巻線151Aにおいて渡り部153,154が軸方向同一の位置で周方向に並ぶとともに、第2巻線群G2の第2部分巻線151Bにおいて渡り部153,154が軸方向同一の位置で周方向に並び、かつ各巻線群G1,G2の渡り部が軸方向に互いに重複した状態となっている。
【0309】
図67は、コアアセンブリCAに対する各部分巻線151A,151Bの組み付けを説明するための横断面図である。なお、
図67では、説明の便宜上、部分巻線151A,151Bのみを示し、各部分巻線151A,151Bの中間導線部152にドットを付している。
【0310】
部分巻線151は、一対の中間導線部152の間に他2つの部分巻線151の中間導線部を1つずつ介在させた状態で周方向に配列されるものとなっている。この場合、
図67に示すように、コアアセンブリCAに対して第1部分巻線151Aが先付けされた状態では、周方向に並ぶ24個(2N個)の中間導線部152の設置スペースのうち12個分(N個分)の設置スペースで中間導線部152が設置される。そしてその後、残り12個分(残りN個分)の設置スペースに中間導線部152が設置されるようにして、第2部分巻線151Bの組み付けが行われる。本実施形態では、第2部分巻線151Bは、径方向においてコアアセンブリCAの逆側、すなわち径方向外側から組み付けられる。
【0311】
ところで、仮に第1部分巻線151Aと第2部分巻線151Bとで中間導線部152における横断面形状が同一であると、組み付けが困難になることが懸念される。また、固定子巻線61の導体占積率を向上させるには、周方向に並ぶ中間導線部152どうしの間の隙間を小さくすることが望ましいが、その隙間を小さくすることで組み付けの困難性が顕著になると考えられる。
【0312】
この点、本で実施形態では、第1部分巻線151Aと第2部分巻線151Bとで、中間導線部152における横断面形状を相違させており、これにより導体占積率の向上と部分巻線151の組み付け性の向上とを実現できるものとしている。その構成を、固定子60の製造方法と共に以下に説明する。
【0313】
図68(a)は、コアアセンブリCAに対して第1部分巻線151Aが先付けされた状態を示す横断面図であり、
図68(b)は、さらに第2部分巻線151Bが後付けされた状態を示す横断面図である。
【0314】
図68(a)に示すように、コアアセンブリCAの径方向外側に、第1部分巻線151Aが周方向に並べて配置される(第1工程に相当)。このとき、周方向に隣り合う2つの第1部分巻線151Aの中間導線部152において、その外側側面601どうしが互いに近接した状態(詳しくは、絶縁被覆体157を介して近接した状態)で配置される。また、周方向に隣り合う第1部分巻線151Aの2つの中間導線部152は、外側側面601が、互いに対向するとともに、それら2つの中間導線部152の間を通る直線LX2に平行になっている。第1部分巻線151Aの組み付けにより、第1部分巻線151Aの渡り部153,154が軸方向同一の位置で周方向に並べられる。
【0315】
その後、コアアセンブリCAに対して、径方向外側から第2部分巻線151Bが組み付けられる(第2工程に相当)。このとき、先付けされている第1部分巻線151A側の内側側面602と、後付けされる第2部分巻線151B側の内側側面602とが、いずれも第2部分巻線151Bの周方向中心位置の直線LX2に平行であるため、第1部分巻線151A側の内側側面602に沿わせるようにして、第2部分巻線151Bを組み付けることができる。第2部分巻線151Bの組み付けにより、第2部分巻線151Bの渡り部153,154が軸方向同一の位置で周方向に並べられる。各部分巻線151A,151Bの渡り部153,154が軸方向に互いに重複した状態となる。
【0316】
これにより、
図68(b)に示すように、コアアセンブリCAの径方向外側において、各部分巻線151A,151Bの中間導線部152が一列に並べて配置される。つまり、第1部分巻線151Aにおける一対の中間導線部152の間に、2つの第2部分巻線151Bの中間導線部152が1つずつ介在するようにして、各中間導線部152が一列に並べて配置される。このとき、周方向に隣り合う2つの第2部分巻線151Bの中間導線部152において、その外側側面601どうしが互いに近接した状態(詳しくは、絶縁被覆体157を介して近接した状態)で配置される。また、周方向に隣り合う第2部分巻線151Bの2つの中間導線部152は、外側側面601が、互いに対向するとともに、それら2つの中間導線部152の間を通る直線LX1に平行になっている(
図64参照)。
【0317】
また、第1部分巻線151Aの中間導線部152と第2部分巻線151Bの中間導線部152とが周方向に並ぶ境界部において、それら周方向に並ぶ2つの中間導線部152の内側側面602が、それら2つの中間導線部152の間を通る直線LX3に非平行になっている(
図64参照)。
【0318】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0319】
ティースレス構造の固定子60において、複数の部分巻線151を周方向に並べて配置し、周方向に隣り合う中間導線部152で、周方向に対向する各周方向側面601,602が互いに平行になる構成とした。この場合、それら各周方向側面601,602が互いに非平行である構成に比べて、中間導線部152どうしの間の隙間を小さくする上で好都合であり、導体占積率の向上を好適に実現できる。その結果、ティースレス構造の固定子60を用いた回転電機10において導体占積率を向上させることができる。
【0320】
周方向に並ぶ中間導線部152が、固定子中心点Cから径方向に延びかつ中間導線部152の間を通る直線LX1,LX2に平行になる外側側面601を含んでいる構成とした。これにより、中間導線部152どうしの間の隙間を小さくしつつ、各中間導線部152をそれぞれ均等な状態又は均等に近い状態で配置できる。
【0321】
コアアセンブリCAに対して第1部分巻線151Aが先に組み付けられ、第2部分巻線151Bが後に組み付けられる構成では、仮にこれら各部分巻線151A,151Bで中間導線部152の横断面形状が同一であると、組み付けが困難になることが懸念される。また、上述したとおり導体占積率を向上させるべく中間導線部152どうしの間の隙間を小さくする構成では、組み付けの困難性が顕著になると考えられる。
【0322】
この点、第1部分巻線151Aと第2部分巻線151Bとで、中間導線部152における横断面形状を相違させる構成としたため、導体占積率を向上させるべく中間導線部どうしの間の隙間を小さくしつつも、コアアセンブリCAに先付けされた第1部分巻線151Aの中間導線部152が既に存在していること(すなわち、後付け側の中間導線部152の設置場所が規定されていること)を加味した上で、後付けの第2部分巻線151Bを好適に組み付けることが可能となっている。
【0323】
第1巻線群G1及び第2巻線群G2の各々において、第1部分巻線151Aどうし又は第2部分巻線151Bどうしで隣り合う部分で、2つの中間導線部152の外側側面601が、固定子中心点Cから径方向に延びかつ当該2つの中間導線部152の間の通る直線LX1,LX2に平行になる構成とした。この場合、第1巻線群G1に含まれる各第1部分巻線151Aは組み付け条件が同じである一方、第2巻線群G2に含まれる各第2部分巻線151Bは組み付け条件が同じであり、組み付け条件が同じ部分巻線どうしにおいて、周方向に均等な割り当てで各々が組み付けられるようになっている。
【0324】
周方向に並ぶ第1部分巻線151A及び第2部分巻線151Bの2つの中間導線部152において、その内側側面602が、固定子中心点Cから径方向に延びかつ当該2つの中間導線部152の間の通る直線LX3に非平行になる構成とした。これにより、中間導線部152どうしの間の隙間(マージン)が小さい構成であっても、先付けの第1部分巻線151Aに対して後付けの第2部分巻線151Bが干渉するといった不都合を抑制できるものとなっている。
【0325】
周方向に並ぶ中間導線部152の間に絶縁被覆体157を介在させる構成とした。特に、絶縁被覆体157として、一定厚さのフィルム材を用いる構成とした。この構成によれば、中間導線部152どうしの絶縁、すなわち相間絶縁を適正に行うことができる。また、固定子巻線61において周方向に隣り合う中間導線部152は、周方向に対向する周方向側面が互いに平行になっているため、絶縁被覆体157として一定厚さのフィルム材を用いる場合に中間導線部152どうしの間の隙間を容易に埋めることができ、各中間導線部152を好適に固定できるものとなっている。
【0326】
固定子巻線61の部分巻線151として、側面視で略C字状をなす第1部分巻線151Aと側面視で略I字状をなす第2部分巻線151Bとを用い、これらを互いに一部重複させた状態で周方向に並べて配置する構成とした。本構成では、先付けの第1部分巻線151Aに対して、径方向外側から後付けの第2部分巻線151Bが組み付けられる。この場合、上記のとおり各部分巻線151A,151Bで中間導線部152の横断面形状を相違させる構成とすることで、各部分巻線151A,151Bの組み付け性を良好なものにすることができる。
【0327】
(第4実施形態の変形例)
・固定子巻線61の各部分巻線151A,151Bの構成を以下のように変更してもよい。
【0328】
図69(a),(b)に示す構成では、第1部分巻線151A及び第2部分巻線151Bがいずれも側面視で略C字状をなし、かつ軸方向に長さ(軸長)が相違するものとなっている。つまり、これら各部分巻線151A,151Bは、軸方向両側の渡り部153,154が径方向においてコアアセンブリCA側(回転子20の磁石ユニット22の逆側)に折り曲げ形成されている。また、第2部分巻線151Bの軸長が第1部分巻線151Aの軸長よりも長くなっており、そのため、軸方向一端側及び他端側において、第1部分巻線151Aの渡り部153,154が軸方向内側、第2部分巻線151Bの渡り部153,154が軸方向外側となっている。そして、第1部分巻線151AがコアアセンブリCAに先付けされた状態で、第2部分巻線151Bが径方向外側から組み付けられるようになっている。
【0329】
図70(a),(b)に示す構成では、第1部分巻線151A及び第2部分巻線151Bがいずれも側面視で略Z字状をなすものとなっている。つまり、これら各部分巻線151A,151Bは、軸方向両側の渡り部153,154が径方向において互いに逆側に折り曲げ形成されている。各部分巻線151A,151Bは、側面視においては同一形状であり、軸方向の組み付け位置を互いにずらした状態でコアアセンブリCAに組み付けられる。第2部分巻線151Bは、第1部分巻線151AがコアアセンブリCAに先付けされた状態で、径方向外側から組み付けられるようになっている。
【0330】
図71(a),(b)に示す構成では、第1部分巻線151A及び第2部分巻線151Bがいずれも側面視で略L字状をなすものとなっている。つまり、これら各部分巻線151A,151Bは、軸方向一端側だけが径方向に折り曲げられており、第1部分巻線151Aでは渡り部153がコアアセンブリCA側に折り曲げられ、第2部分巻線151Bでは渡り部154がコアアセンブリCAの逆側に折り曲げられている。そして、第1部分巻線151AがコアアセンブリCAに先付けされた状態で、第2部分巻線151Bが径方向外側から組み付けられるようになっている。
【0331】
図72(a),(b)に示す構成では、第1部分巻線151A及び第2部分巻線151Bがいずれも側面視で略C字状をなし、それらが径方向に互いに逆向きで組み付けられている。つまり、第1部分巻線151Aでは、軸方向両側の各渡り部153,154がコアアセンブリCA側に折り曲げられ、第2部分巻線151Bでは、軸方向両側の各渡り部153,154がコアアセンブリCAの逆側に折り曲げられている。そして、第1部分巻線151AがコアアセンブリCAに先付けされた状態で、第2部分巻線151Bが径方向外側から組み付けられるようになっている。なお、
図72の構成では、第1部分巻線151Aの渡り部153,154と、第2部分巻線151Bの渡り部153,154とが径方向に互いに重複する状態となっている。
【0332】
上述した
図69~
図72の各構成においても、各部分巻線151A,151Bが
図64のような構成を有しているとよい。また、
図70~
図72の構成に関しては、径方向からの第2部分巻線151Bの組み付け以外に、軸方向からの第2部分巻線151Bの組み付けが可能になっている。
【0333】
・例えば
図65(a)に示す構成では、第1部分巻線151Aにおいて、中間導線部152の径方向外側の周方向幅寸法と径方向内側の周方向幅寸法とが等しくなっているが、これを変更してもよい。第1部分巻線151Aにおいて、中間導線部152の径方向外側の周方向幅寸法が径方向内側の周方向幅寸法よりも小さくなっていてもよい。
【0334】
・第2実施形態で説明した固定子ユニット400や、第3実施形態で説明した固定子ユニット500においても、導体占積率を向上させるための本実施形態の構成を採用することが可能である。具体的には、固定子巻線411の各部分巻線451において、周方向に隣り合う中間導線部452は、周方向に対向する周方向側面が互いに平行になっているとよい。また、第1部分巻線に相当する部分巻線451と、第2部分巻線に相当する部分巻線451とで、中間導線部452における横断面形状が相違している構成であるとよい。より詳細な構成は既述のとおりである。
【0335】
・回転電機10として、界磁子を回転子、電機子を固定子とする回転界磁形の回転電機に代えて、電機子を回転子、界磁子を固定子とする回転電機子形の回転電機を採用することも可能である。
【0336】
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【符号の説明】
【0337】
10…回転電機、20…回転子(界磁子)、60…固定子(電機子)、61…固定子巻線(電機子巻線)、151…部分巻線、152…中間導線部、153,154…渡り部、601,602…周方向側面、CA…コアアセンブリ(巻線支持部材)。