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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】シート搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240416BHJP
   B65H 7/02 20060101ALI20240416BHJP
   H02P 6/18 20160101ALI20240416BHJP
【FI】
B65H5/06 J
B65H7/02
H02P6/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020081673
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021176788
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 亜土夢
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-186318(JP,A)
【文献】特開2008-094573(JP,A)
【文献】特開平07-061642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 7/02
H02P 6/18
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の搬送ローラー対を同時に回転駆動する搬送モーターと、
複数の搬送ローラー対のうちシートが噛んでいる搬送ローラー対の個数を判定する個数判定部と、
シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数に応じて、搬送モーターの駆動パラメーターを設定するパラメーター設定部と、
設定された駆動パラメーターで搬送モーターを駆動制御する駆動制御部と、を備え、
搬送モーターの駆動パラメーターは、搬送モーターが停止している状態から定常回転速度に到達するまでの立ち上げ時間の設定値であって、
パラメーター設定部は、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、立ち上げ時間の設定値が短くなるように設定する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
シート搬送経路上におけるシート位置を特定する位置特定部を備え、
個数判定部は、特定されたシート位置から、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記シートは、給紙カセットから搬送されたものであり、
前記位置特定部は、前記給紙カセットにより予め決定された前記シートの搬送タイミングからの経過時間に応じて前記シートの位置を推定する
ことを特徴とする請求項に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
搬送モーターの駆動パラメーターは、さらに、搬送モーターに供給する駆動電流量を含み
パラメーター設定部は、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、駆動電流量が多くなるように設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項5】
搬送モーターの駆動パラメーターは、さらに、搬送モーターの回転速度を含み
パラメーター設定部は、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、回転速度が速くなるように設定する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項6】
搬送モーターの駆動パラメーターは、さらに、搬送モーターの励磁方式を含み
パラメーター設定部は、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、出力トルクが大きくなるように励磁方式を選択する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項7】
搬送モーターはセンサーレスベクトル制御によって駆動されるブラシレスモーターであって、
パラメーター設定部は、さらに、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、励磁電流が多くなるように、電流値の補正係数を設定する
ことを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載のシート搬送装置と、
前記シート搬送装置で搬送されたシートに画像形成する画像形成部と、を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート搬送装置および画像形成装置に関し、特に、共通の駆動モーターを用いて駆動される複数の搬送ローラー対に1枚の記録シートを同時に通紙する際の当該駆動モーターを安定動作させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、記録シートに画像を形成する際に、当該記録シートを搬送する。例えば、電子写真方式の画像形成装置では、記録シートを給紙部から送り出して、転写部で記録シートにトナー像を転写した後、定着部まで記録シートを搬送してトナー像を熱定着し、更に、定着部から装置外へと記録シートを排出する。
【0003】
記録シートを転写部へ搬送する経路を複数有する画像形成装置において、搬送経路どうしで記録シートの搬送抵抗が異なっている場合もある。搬送抵抗の違いに起因して記録シートの搬送速度が変動すると、転写部における転写倍率が変動して画像品質が低下する恐れがある。このため、複数の搬送経路どうしで搬送速度を揃える技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、記録シートの搬送経路が同じであっても、記録シートの種類によって搬送速度が変動する場合にも同様の問題が発生し得る。例えば、記録シートは種類によって坪量に差異があり、搬送抵抗が変動すると搬送速度が変動してしまう。このような場合には、記録シートを搬送する搬送ローラー対を回転駆動する駆動モーターの駆動パラメーターを、あらかじめ記録シートの種類ごとに測定した最大負荷に応じて設定しておき、当該駆動パラメーターを用いて駆動モーターを動作させる対策が考えられる。
【0005】
このようにすれば、ユーザーが選択した記録シートの種類に対応する駆動パラメーターを用いて駆動モーターを動作させるので、記録シートの搬送速度を記録シートの種類に関係なく一定にすることができるので、搬送速度の変動に起因する画像品質の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-118682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数の搬送ローラー対を用いて記録シートを搬送する場合、記録シートの搬送方向における上流側の搬送ローラー対と、下流側の搬送ローラー対との両方に記録シートが噛み込むように、搬送ローラー対を配置しなければ、上流側の搬送ローラー対から下流側の搬送ローラー対へ記録シートを受け渡すことができない。
【0008】
また、画像形成装置の機内空間を有効に活用して装置の小型化を図るために、共通の駆動モーターを用いて複数の搬送ローラー対を回転駆動する構成が広く採用されている。
【0009】
このため、ひとつの駆動モーターが回転駆動する複数の搬送ローラー対のうちの幾つの搬送ローラー対に記録シートが噛み込むかが、記録シートの搬送位置が進むにつれて変動する。この場合において、記録シートが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数が少なければ、駆動モーターにかかる負荷が小さくなり、記録シートが噛み込む搬送ローラー対の個数が多くなれば、駆動モーターにかかる負荷も大きくなる。
【0010】
上記の従来技術のように、最大負荷を考慮して駆動モーターの駆動パラメーターを設定すると、駆動モーターの負荷が低くなったときに搬送ローラー対の回転を適切に制御することができなくなって、記録シートの搬送速度が速くなり過ぎたり、駆動モーターが脱調したりして、記録シートのジャムが発生したり、無駄に電力を消費したりするおそれがある。
【0011】
本開示は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、複数の搬送ローラー対を回転駆動して記録シートを搬送する駆動モーターの動作を安定化することができるシート搬送装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係るシート搬送装置は、複数の搬送ローラー対を同時に回転駆動する搬送モーターと、複数の搬送ローラー対のうちシートが噛んでいる搬送ローラー対の個数を判定する個数判定部と、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数に応じて、搬送モーターの駆動パラメーターを設定するパラメーター設定部と、設定された駆動パラメーターで搬送モーターを駆動制御する駆動制御部と、を備え、搬送モーターの駆動パラメーターは、搬送モーターが停止している状態から定常回転速度に到達するまでの立ち上げ時間の設定値であって、パラメーター設定部は、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、立ち上げ時間の設定値が短くなるように設定することを特徴とする。
【0013】
この場合において、シート搬送経路上におけるシート位置を特定する位置特定部を備え、個数判定部は、特定されたシート位置から、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数を判定してもよい。
【0014】
また、前記シートは、給紙カセットから搬送されたものであり、前記位置特定部は、前記給紙カセットにより予め決定された前記シートの搬送タイミングからの経過時間に応じて前記シートの位置を推定してもよい。
【0015】
また、搬送モーターの駆動パラメーターは、さらに、搬送モーターに供給する駆動電流量を含み、パラメーター設定部は、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、駆動電流量が多くなるように設定してもよい。
【0016】
また、搬送モーターの駆動パラメーターは、さらに、搬送モーターの回転速度を含み、パラメーター設定部は、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、回転速度が速くなるように設定してもよい。
【0018】
また、搬送モーターの駆動パラメーターは、さらに、搬送モーターの励磁方式を含み、パラメーター設定部は、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、出力トルクが大きくなるように励磁方式を選択してもよい。
【0019】
また、搬送モーターはセンサーレスベクトル制御によって駆動されるブラシレスモーターであって、パラメーター設定部は、さらに、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数が増加するに従って、励磁電流が多くなるように、電流値の補正係数を設定してもよい。
【0021】
また、本開示の一形態に係る画像形成装置は、本開示の一形態に係るシート搬送装置と、前記シート搬送装置で搬送されたシートに画像形成する画像形成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
このようにすれば、シートが噛んでいる搬送ローラー対の個数に応じて、搬送モーターに加わる負荷が変化しても、駆動パラメーターを変化させることによって、搬送モーターの駆動状態を安定化するので、シートを安定して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。
図2】画像形成装置1のシート搬送系の主要な構成を示す図である。
図3】(a)は制御部100の主要な構成を示すブロック図であり、(b)はシート搬送装置の主張な構成を示す図である。
図4】制御部100による記録シートSの搬送制御動作を説明するフローチャートである。
図5】(a)は、記録シートSが上流側搬送ローラー対312に到達する前のシート搬送装置の状態を表し、(b)は、記録シートSが上流側搬送ローラー対312に到達したシート搬送装置の状態を表し、(c)は、記録シートSが下流側搬送ローラー対313に到達したシート搬送装置の状態を表す。
図6】シート搬送モーター311の駆動電流量を駆動パラメーターとする駆動パラメーターテーブルを例示する表である。
図7】記録シートSの位置、シート搬送モーター311の駆動電流量並びに駆動状態、および記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数の時間変化を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示に係るシート搬送装置および画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、画像形成装置1はいわゆるタンデム方式のデジタルカラー複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)であって、画像読み取り部110、画像形成部120および給紙部130を備えている。画像読み取り部110は、シートスルー方式で原稿束から1枚ずつ原稿を読み取ったり、プラテンセット方式で不図示のプラテンガラス上に載置された原稿を読み取ったりして画像データを生成する。
【0026】
画像形成部120は、画像読み取り部110が生成した画像データや、LAN(Local Area Network)やインターネットといった通信ネットワークを経由した他の装置から受け付けた画像データを用いて画像を形成する。なお、本実施の形態に係る画像形成部120は、タンデム方式でカラー画像を形成するが、タンデム方式以外の方式でカラー画像を形成してもよいし、カラー画像に代えてモノクロ画像を形成してもよい。
【0027】
給紙部130は、画像形成に使用する記録シートを画像形成部120へ供給する。
【0028】
画像形成部120は、制御部100と操作パネル140とを備えている。制御部100は、画像形成装置1の各部の状態を監視したり動作を制御したりする。特に、画像形成処理の際に画像形成部120および給紙部130において記録シートを搬送するための制御を実行する。また、通信ネットワークを経由して他の装置と通信して、画像形成ジョブや画像読み取りジョブなど各種のジョブを受け付けたり、画像データを送信したりする。
【0029】
操作パネル140は、タッチパネルやハードキー、スピーカー等を備えており、制御部100の制御の下、画像形成装置1のユーザーに対して情報を提示する画面表示や音声出力を行ったり、タッチパネルやハードキーに対するユーザー操作を受け付けたりする。このユーザー操作によって、制御部100は、ジョブの設定内容やジョブの開始、ジョブの中止などのユーザー指示を受け付ける。
[2]シート搬送系の構成
次に、画像形成装置1のシート搬送系の構成について説明する。
【0030】
画像形成装置1は、上述のようにタンデム方式のカラー複合機であって、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびK(ブラック)各色のトナー像を形成する作像部を備えている。図2に示すように、作像部が備える感光体ドラム235は、YMCK各色に対応して4つ設けられており、中間転写ベルト236に沿って配置されている。感光体ドラム235の外周面上に形成されたトナー像は、互いに重なり合うようなタイミングで、中間転写ベルト236の外周面上に静電転写される(一次転写)。
【0031】
中間転写ベルト236は、無端状の回転体であって、駆動ローラー237および従動ローラー238に掛け回されている。駆動ローラー237は、中間転写ベルト236を挟んで2次転写ローラー239が圧接されており、この圧接によって二次転写ニップが形成されている。駆動ローラー237は、また感光体ドラム235とともにメインモーターに回転駆動される。これによって、中間転写ベルト236が周回走行し、トナー像を二次転写ニップまで搬送する。
【0032】
画像形成装置1は、4段の給紙カセットを備えており、中間転写ベルト236によってトナー像が二次転写ニップまで搬送されるのにタイミングを合わせて、記録シートSを二次転写ニップまで搬送する。
【0033】
1段目の給紙カセットは、1段給紙ローラー225と1段給紙センサー224とを備える。1段給紙ローラー225は、ピックアップローラー、給紙ローラーおよび捌きローラーからなっており、1・2段給紙モーター223によって回転駆動される。この回転駆動によって、ピックアップローラーは1段目の給紙カセットに収容されている記録シート束から最上位の記録シートSを送り出す。
【0034】
この記録シートSを給紙ローラーがシート搬送経路へ搬送し、記録シートが重送されている場合には捌きローラーが重送紙(記録シート束で最上位の記録シート以外の記録シート)を分離する。1段給紙センサー224は、1段給紙ローラー225が送り出した記録シートSの先端または後端を検出する。1段給紙ローラー225の回転駆動を開始してから所定の時間内に記録シートSが検出されない場合には紙詰まり(ジャム)が発生したと判断される。
【0035】
2段目の給紙カセットは、2段給紙ローラー219と2段給紙センサー218とを備える。2段給紙ローラー219は、1段給紙ローラー225と同様に、ピックアップローラー、給紙ローラーおよび捌きローラーからなっており、1・2段給紙モーター223によって回転駆動される。この回転駆動によって、2段給紙ローラー219は、1段給紙ローラー225と同様に、2段目の給紙カセットから記録シートSを給紙する。
【0036】
なお、1・2段給紙モーター223から2段給紙ローラー219に至る回転駆動力の伝達経路上には2段給紙クラッチ217が配設されている。2段給紙クラッチ217は、2段目の給紙カセットから記録シートSを給紙する場合にのみ、接続され、1・2段給紙モーター223から回転駆動力を2段給紙ローラー219に伝達する。2段給紙クラッチ217が切断されている場合には、1・2段給紙モーター223から回転駆動力は2段給紙ローラー219に伝達されない。
【0037】
2段給紙センサー218は、2段給紙ローラー219が送り出した記録シートSの紙詰まり(ジャム)が発生したかの判断に用いられる。2段給紙センサー218に検出された記録シートSは、更に、2段縦搬送ローラー対221によって搬送される。2段縦搬送ローラー対221は、2段搬送モーター220によって回転駆動される。
【0038】
2段縦搬送ローラー対221は、2段縦搬送ローラー対221に噛み込んでいる記録シートSが、2段縦搬送ローラー対221の搬送ニップから離脱する前に、その先端がタイミングローラー対233の搬送ニップに到達することができる位置に配設されている。これによって、記録シートSが2段縦搬送ローラー対221からタイミングローラー対233へ受け渡される。
【0039】
シート搬送方向における2段縦搬送ローラー対221の下流側には2段縦搬送センサー222が配設されている。2段給紙センサー218が記録シートSを検出した後、所定の時間内に2段縦搬送センサー222が記録シートSを検出しなかった場合には、2段給紙センサー218から2段縦搬送センサー222に至るシート搬送経路上で紙詰まりが発生したと判断される。
【0040】
3・4段給紙・搬送モーター214は、3段給紙ローラー206、3段搬送ローラー208対、第1水平搬送ローラー210対および4段給紙ローラー201を回転駆動する。3段給紙クラッチ211、3段搬送クラッチ212、水平搬送クラッチ213および4段給紙クラッチ204は、3・4段給紙・搬送モーター214の回転駆動力を、3段給紙ローラー206、3段搬送ローラー対208、第1水平搬送ローラー対210および4段給紙ローラー210へ伝達したり、遮断したりする。
【0041】
3段給紙ローラー206、3段搬送ローラー対208、第1水平搬送ローラー対210については、これらのうちの2つ以上に同時に1枚の記録シートSが噛み込むことがある。
【0042】
3段給紙センサー207および4段給紙センサー202は、それぞれ3段給紙ローラー206および4段給紙ローラー201から給紙された記録シートSの紙詰まりの検出に用いられる。水平搬送センサー209は、3段給紙センサー207によって検出された記録シートSが、3段給紙センサー207から水平搬送センサー209に至るシート搬送経路上で紙詰まりを発生させたかの検出に用いられる。
【0043】
中間モーター205は、搬送ローラー対203、215を回転駆動する。搬送ローラー対203は、4段給紙ローラー201が給紙した記録シートSをシート搬送経路に沿って搬送する。搬送ローラー対203は、記録シートSの後端が搬送ローラー対203の搬送ニップから離脱する前に、その先端が搬送ローラー対215の搬送ニップに到達することができる位置に配設されている。
【0044】
すなわち、1枚の記録シートSが搬送ローラー対203、215に同時に搬送される期間がある。水平搬送ローラー対210と搬送ローラー対215との組み合わせについても同様である。中間ローラーセンサー216は、4段給紙センサー202および水平搬送センサー209から中間ローラーセンサー216に至るシート搬送経路上での記録シートSの紙詰まりを検出するために用いられる。
【0045】
マルチ手差し給紙ユニットは、マルチ手差し給紙ローラー228、マルチ手差し補助ピックアップローラー229、マルチ手差し給紙クラッチ226、マルチ手差し押し上げソレノイド227およびマルチ手差し補助ピックアップローラー圧離ソレノイド230を備えている。
【0046】
マルチ手差しトレイ(図示省略)に載置された記録シートSを給紙する場合には、まずマルチ手差し押し上げソレノイドが、マルチ手差しトレイを押し上げることによって、記録シートSを給紙位置まで持ち上げる。次に、マルチ手差し補助ピックアップローラー圧離ソレノイド230が、マルチ手差し補助ピックアップローラー229を記録シートSの上面に圧接させた後、マルチ手差し補助ピックアップローラー229およびマルチ手差し給紙ローラー228が記録シートSを送り出す。
【0047】
マルチ手差し給紙クラッチ226は、1・2段給紙モーター223の回転駆動力をマルチ手差し補助ピックアップローラー229およびマルチ手差し給紙ローラー228に伝達したり、遮断したりする。タイミング光学センサー231は、記録シートSの紙種を判定するために、記録シートSを照明して、その反射光量や透過光量を検出する。
【0048】
レジスト部は、タイミングセンサー232とタイミングローラー対233を備えている。タイミングセンサー232は、記録シートSの先端を検出する。タイミングローラー対233は、シート搬送方向におけるタイミングセンサー232の下流側に配設されており、タイミングモーター234によって回転駆動される。タイミングセンサー232が記録シートSの先端を検出すると、タイミングモーター234が励磁される。
【0049】
これによって、タイミングローラー対233が回転を停止した状態で、記録シートSの先端がタイミングローター対233の搬送ニップに突き当たり、更に給紙ローラー225、2段縦搬送ローラー対221およびマルチ手差し給紙ローラー228が記録シートSを送り出すことによって、記録シートSがループを形成する。これによって、記録シートSの斜行(スキュー)が補正される。
【0050】
その後、タイミングモーター234は、トナー像の記録シートSへの二次転写タイミングに合わせて、タイミングローラー対233の回転駆動を開始する。これによって、記録シートSが二次転写ニップまで送り出される。
【0051】
2自転車ローラー239には2次転写バイアス電圧が印加されており、中間転写ベルト236の外周面上から記録シートSへトナー像が静電転写される(二次転写)。定着ループセンサー241は、タイミングローラー対233から定着ループセンサー241に至るシート搬送経路上での記録シートSの紙詰まりを検出するために用いられる。
【0052】
定着ローラー対242は、定着ニップを記録シートSが通過する際に、トナー像を当該記録シートSに熱定着する。排紙前ローラー対243は、熱定着後の記録シートSを更に搬送する。排紙センサー245は、定着ループセンサー241から排紙センサー245に至るシート搬送経路上での記録シートSの紙詰まりを検出するために用いられる。
【0053】
切り替え爪247は、反転経路切り替えソレノイド248によって揺動されることによって、記録シートSの搬送方向を切り替える。具体的には、記録シートSを画像形成装置1の外部へ排出する場合には、排紙ローラー246へ向かって記録シートSを案内する。排紙ローラー対246は、記録シートSを画像形成装置1の外部へ排出する。定着排紙モーター244は、定着ローラー対242、排紙前ローラー対243および排紙ローラー対246を回転駆動する。
【0054】
記録シートSの裏面に更に画像を形成する場合には、切り替え爪247は、記録シートSを排紙反転ローラー対249に向かって案内する。排紙反転ローラー対249は、排紙反転モーター250によって回転駆動される。特に、排紙前ローラー対243が送り出した記録シートSを迎え入れるときと、両面反転経路へ記録シートSを送り出すときとで、排紙反転モーター250による排紙反転ローラー対249の回転駆動方向が反転される。
【0055】
ADU(Automatic Duplex Unit)搬送ローラー対251は、排転ローラー対249にてシート搬送方向を反転した記録シートSを搬送する。ADU搬送センサー252は、排紙センサー245からADU搬送センサー252に至るシート搬送経路上での記録シートSの紙詰まりを検出するために使用される。ADU搬送ローラー対252は、シート搬送経路(両面反転経路)に沿って記録シートSを搬送する。ADU搬送ローラー対251、253はADU搬送モーター254によって回転駆動される。
【0056】
ADU搬送ローラー対255、257は、ともにDUM下モーター258によって回転駆動され、シート搬送経路(両面反転経路)に沿って記録シートSを搬送する。ADU搬送ローラー対255からADU搬送ローラー対257に至るシート搬送経路上にはADU搬送センサー256が配設されており、ADU搬送センサー252からADU搬送センサー256に至るシート搬送経路上での記録シートSの紙詰まりの有無を判定するために用いられる。ADU搬送ローラー対257を経由した記録シートは、タイミングローラー対233へ案内される。
[3]制御部100の構成
次に、制御部100の構成について説明する。ただし、制御部100が監視制御するシート搬送駆動系について典型例として、シート搬送モーターが2つの搬送ローラー対を回転駆動する場合のみを示すものとし、この典型例を以て図2に示した様々なシート搬送駆動系(シート搬送装置)について制御部100が実行する監視制御の説明に代える。なお、シート搬送モーターから搬送ローラー対に至る回転駆動力の伝達経路上にはギヤやクラッチ等の伝達機構が設けられていてもよいが、それらの伝達機構については説明を省いた。
【0057】
図3(a)に示すように、制御部100は、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303等を備えており、CPU301は、画像形成装置1に電源が投入される等してリセットされると、ROM302からブートプログラムを読み出して起動し、RAM303を作業用記憶領域として、HDD(Hard Disk Drive)304から読み出したOS(Operating System)や制御プログラムを実行する。
【0058】
NIC(Network Interface Card)305は、画像形成装置1がLAN(Local Area Network)やインターネットといった通信ネットワークを経由して他の装置と相互に通信するための処理を実行する。これによって、画像形成装置1は、他の装置からジョブを受け付けたり、他の装置へ画像データを送信したりすることができる。
【0059】
タイマー306は時間を計測するために用いられる。例えば、タイマー306に所望の時間を設定して計時を開始させると、経時を開始してから設定した時間を経過したタイミングでCPU301にタイマー割り込みを発生させて、割り込み処理プログラムを起動させることができる。
【0060】
ドライバー307は、CPU301からの制御を受けて、シート搬送モーター311へ制御信号を送信する。この制御信号に応じた量の駆動電流がシート搬送モーター311に供給される。シート搬送モーター311は、通電された駆動電流量に応じたトルクを出力して上流側搬送ローラー対312および下流側搬送ローラー対313を回転駆動する。
【0061】
図3(b)に示すように、シート搬送経路331上において、上流側搬送ローラー対312はシート搬送方向Cにおける下流側搬送ローラー対313の上流側に配置されている。上流側搬送ローラー対312並びに下流側搬送ローラー対313はどちらも駆動ローラーに従動ローラーを圧接して搬送ニップを形成したものである。
【0062】
シート搬送モーター311によって、上流側搬送ローラー対312の駆動ローラーは矢印A方向に回転駆動され、下流側搬送ローラー対313の駆動ローラーは矢印B方向に回転駆動される。従動ローラーは駆動ローラーに従動回転する。本実施の形態においては、シート搬送モーター311としてブラシレスモーターを使用するが、他のモーターを使用してもよいことは言うまでもない。
【0063】
上流側シートセンサー321は、シート搬送経路における上流側搬送ローラー対312の上流側の検出位置における記録シートSの有無を検出する。下流側シートセンサー321は、シート搬送経路における下流側搬送ローラー対312の下流側の検出位置における記録シートSの有無を検出する。上流側シートセンサー321および下流側シートセンサー322は、光学的センサーであってもよいし、力学的センサーであってもよい。また、他のセンサーを用いてもよい。
【0064】
光学的センサーは、シート搬送経路を横切るように検出光を照射して、その受光量を検出することによって、記録シートSによる検出光の遮断の有無を判定するものである。力学的センサーは、シート搬送経路内へ進入したり、シート搬送経路外へ退出したりするように揺動可能な腕部の姿勢変化を検出することによって、当該腕部が記録シートSによってシート搬送経路外へ押し出されたかどうかを判定するというものである。
【0065】
なお、CPU301、ROM302、RAM303、HDD304、NIC305、タイマー306、ドライバー307、上流側シートセンサー321および下流側シートセンサー322は内部バス308に接続されており、内部バス308を経由してデータその他の信号をやり取りする。
[4]制御部100の動作
次に、制御部100の動作について説明する。
【0066】
図4に示すように、制御部100は、シート搬送モーター311の駆動を開始する場合には(S401:YES)、まず記録シートSの位置を確認して(S402)、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数を特定する(S403)。
【0067】
本実施の形態においては、上流側シートセンサー321および下流側シートセンサー322の検出状態の組み合わせから記録シートSの位置を確認する。なお、シート搬送経路にそって上流側シートセンサー321の検出位置から下流側シートセンサー322の検出位置に至る距離は、シート搬送方向における記録シートSの長さよりも短くなっている。
【0068】
図5(a)に示すように、上流側シートセンサー321と下流側シートセンサー322とのどちらも記録シートSを検出していない場合には、上流側搬送ローラー対312と下流側搬送ローラー対313とのどちらにも記録シートSが噛んでいないと判断する。従って、記録シートSを噛んでいる搬送ローラー対は0個である。
【0069】
図5(b)に示すように、上流側シートセンサー321は記録シートSを検出している一方、下流側シートセンサー322は記録シートSを検出していない場合には、上流側搬送ローラー対312には記録シートSが噛んでいるが、下流側搬送ローラー対313には記録シートSが噛んでいないと判断する。従って、記録シートSを噛んでいる搬送ローラー対は1個である。
【0070】
図5(c)に示すように、上流側シートセンサー321と下流側シートセンサー322とのどちらも記録シートSを検出している場合には、上流側搬送ローラー対312と下流側搬送ローラー対313とのどちらにも記録シートSが噛んでいると判断する。従って、記録シートSを噛んでいる搬送ローラー対は2個である。
【0071】
記録シートSが更にシート搬送方向(矢印C方向)に搬送され、上流側シートセンサー321は記録シートSを検出していないが、下流側シートセンサー322は記録シートSを検出している場合には、上流側搬送ローラー対312には記録シートSが噛んでいないが、下流側搬送ローラー対313には記録シートSが噛んでいると判断する。従って、記録シートSを噛んでいる搬送ローラー対は1個である。
【0072】
その後、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数に応じてシート搬送モーター311の駆動パラメーターを特定する(S404)。駆動パラメーターは、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数ごとに、シート搬送モーター311に加わる負荷を事前に測定することによって特定した最大負荷を許容できるように設計するのが望ましい。このようにして設計した駆動パラメーターを、例えば、図6に示すような駆動パラメーターテーブルを記憶しておき、この駆動パラメーターテーブルを参照することによって、駆動パラメーターを特定してもよい。
【0073】
本実施の形態に係る駆動パラメーターテーブルは、シート搬送モーター311の起動時と定常回転時とのそれぞれについて、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数ごとにシート搬送モーター311に供給する駆動電流量を記載した表である。シート搬送モーター311の起動時に、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数が0個である場合には、シート搬送モーター311に供給する駆動電流量を1.2Aにする。
【0074】
すなわち、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が最大の場合に発生し得る最大負荷だけを想定して駆動パラメーターを設定すると、記録シートSがどの搬送ローラー対にも噛んでおらず、シート搬送モーター311に加わる負荷が軽い場合に、不適切な駆動パラメーターでシート搬送モーター311が動作してしまう
これに対して、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数に応じて、駆動パラメーターを適切な値に切り替えれば、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が少ない場合であっても、シート搬送モーター311を適切に動作させることができる。
【0075】
また、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数が1個である場合には、シート搬送モーター311に供給する駆動電流量を1.5Aし、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数が2個である場合には、シート搬送モーター311に供給する駆動電流量を2.0Aにする。このようにして特定した電流量の駆動電流をシート搬送モーター311に供給することによって、シート搬送モーター311の駆動を開始する(S405)。
【0076】
シート搬送モーター311の駆動を開始して定常回転状態に移行した後は、上記と同様にして、定期的に記録シートSの位置を検出し(S406)、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数を特定する(S407)。そして、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数が変化していない場合には(S408:NO)、ステップS411へ進む。
【0077】
記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数が変化した場合には(S408:YES)、駆動パラメーターテーブルを参照して駆動パラメーター(駆動電流量)を特定する(S409)。この場合には、駆動パラメーターテーブルの「定常回転時の電流量[A]」の欄を参照して、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数が0個、1個および2個である場合には、シート搬送モーター311に供給する駆動電流量をそれぞれ0.8A、1.0Aおよび1.3A、にする。
【0078】
このようにして、新たに特定した電流量の駆動電流をシート搬送モーター311に供給して、シート搬送モーター311の駆動状態を変更して動作させる(S410)。その後、ステップS406へ進んで、上記の処理を繰り返す。
【0079】
複数枚の記録シートSを用いて連続して画像形成を実行する場合には、シート搬送経路上での記録シートSどうしの間隔(紙間距離)が小さくなり過ぎないようにするために、後続する記録シートSの搬送を一時停止する場合がある。この場合には、搬送ローラー対に記録シートSが噛み込んだ状態であっても、シート搬送モーターによる回転駆動が停止される場合があり得る。
【0080】
このため、シート搬送モーター311を停止させた場合には(S411:YES)、ステップS401へ進んで、上述のような起動時の処理と同様の処理を実行する。また、シート搬送モーター311の駆動を継続する場合には(S411:NO)、ステップS406へ進んで、上記の処理を繰り返す。
【0081】
図7は、シート搬送モーター311の動作を例示するグラフである。上流側搬送ローラー対312と下流側搬送ローラー対313とのどちらにも記録シートSが噛んでいない状態からシート搬送モーター311を起動する場合、図7に示すように、シート搬送モーター311を起動する前は、シート搬送モーター311に供給される駆動電流量は0[A]で、シート搬送モーター311は回転を停止している。
【0082】
記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が「0個」である場合のシート搬送モーター311の起動時の駆動電流量は、図6の駆動パラメーターテーブルを参照すると、1.2[A]になっている。この電流量の駆動電流をシート搬送モーター311に供給すると、シート搬送モーター311が起動する。なお、図7の例では、シート搬送モーター311が起動されるのと同時に、シート搬送モーター311以外の搬送モーターも起動されており、当該他のシート搬送モーターが回転駆動する搬送ローラー対によって記録シートSの搬送が開始される。
【0083】
シート搬送モーター311の回転速度が定常回転時の回転速度に達すると、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が「0個」である場合のシート搬送モーター311の定常回転時の駆動電流量がシート搬送モーター311に供給される。図6の駆動パラメーターテーブルでは0.8[A]である。これによって、シート搬送モーター311の駆動状態が定常回転状態へ遷移する。
【0084】
記録シートSを上流側シートセンサー321が検出して、上流側搬送ローラー対312に記録シートSが噛んだと判定したら、駆動パラメーターテーブルを参照して、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が「1個」である場合のシート搬送モーター311の定常回転時の駆動電流量(1.0[A])を特定し、当該電流量の駆動電流をシート搬送モーター311に供給する。
【0085】
記録シートSを下流側シートセンサー322が検出して、下流側搬送ローラー対313に記録シートSが噛んだと判定したら、駆動パラメーターテーブルを参照して、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が「2個」である場合のシート搬送モーター311の定常回転時の駆動電流量(1.3[A])を特定し、当該電流量の駆動電流をシート搬送モーター311に供給する。
【0086】
その後、記録シートSを上流側シートセンサー321が検出しなくなって、上流側搬送ローラー対312の搬送ニップから記録シートSが離脱したと判定したら、駆動パラメーターテーブルを参照して、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が「1個」である場合のシート搬送モーター311の定常回転時の駆動電流量(1.0[A])を特定し、当該電流量の駆動電流をシート搬送モーター311に供給する。
【0087】
以上の典型例においては、1個のシート搬送モーター311が上流側搬送ローラー対312と下流側搬送ローラー対313との2つを回転駆動する場合について説明したが、1個のシート搬送モーター311が回転駆動する搬送ローラー対の個数が1つである場合や、3つ以上である場合についても、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が多いほど、シート搬送モーター311に供給する駆動電流量を多くすることによって、シート搬送モーター311の動作を安定化して、記録シートSを円滑に搬送することができる。
[5]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(5-1)上記実施の形態においては、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数に応じて切り替えるシート搬送モーター311の駆動パラメーターがシート搬送モーター311に供給する駆動電流量である場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0088】
例えば、駆動電流量に代えてモーターの回転速度を切り替えてもよい。記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が変化すると、搬送ローラー対に加わるトルクが変化するので、搬送ローラー対の回転速度が変化する。具体的には、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が多いほど、搬送ローラー対の回転速度が遅くなる。
【0089】
これに対して、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が多いほど、シート搬送モーター311の回転速度を速くすれば、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数の多寡に関係なく、搬送ローラー対の回転速度を一定に維持することができる。
【0090】
また、シート搬送モーター311の起動時においても、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が多いほど、搬送ローラー対の回転速度が遅くなって、記録シートSの搬送距離が変動する。このような問題に対して、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が多いほど、起動時にシート搬送モーター311の回転速度が停止状態から定常回転時の回転速度に到達するまでの立ち上げ時間を短く設定すれば、搬送距離の変動を抑制することができる。
【0091】
また、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数に応じて、シート搬送モーター311の励磁方式を切り替えてもよい。記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数が多いほど、シート搬送モーター311の出力トルクが大きくなるように励磁方式を切り替えれば、記録シートSを安定して搬送することができる。
【0092】
また、シート搬送モーター311としてブラシレスモーターを使用し、センサーレスベクトル制御を行う場合には次のようにしてもよい。センサーレスベクトル制御においては、ブラシレスモーターを起動する直前に電流を検出して、起動時の磁極位置を推定し、電流値に応じた補正係数を用いることによって、モーターの脱調を抑制する。ブラシレスモーターをシート搬送に用いる場合には、記録シートSの種類(坪量)によってモーターに加わる負荷が異なるので、記録シートSの種類も考慮して補正係数が決定される。
【0093】
この場合においても、あらかじめ想定されたブラシレスモーターに加わる最大負荷に応じて補正係数を決定すると、ブラシレスモーターに加わる負荷が軽かった場合に、電流量を正しく補正することができなくなって、脱調が発生する恐れがある。このため、ブラシレスモーターをセンサーレスベクトル制御する場合においても、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数に応じて、補正係数を設定するのが望ましい。
【0094】
このようにすれば、記録シートSが噛み得る最大数の搬送ローラー対の個数に応じた最大負荷を想定して決定した補正係数を固定的に使用する場合とは異なって、ブラシレスモーターの脱調などの不具合を開扉することができる。
(5-2)1つのシート搬送モーター311で回転駆動する搬送ローラー対の個数が1個だけである場合においても、記録シートSが搬送ローラー対に噛んでいるかどうかに応じて、シート搬送モーター311に加わる負荷が変動するため、記録シートSの可見込みの有無に応じて駆動パラメーターを切り替えるのが望ましい。
(5-3)上記実施の形態においては、上流側シートセンサー321および下流側シートセンサー322が記録シートSを検出しているかどうかに応じて、記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数を推定する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0095】
例えば、画像形成ジョブにおいて指定された記録シートの種類(坪量やサイズ)や給紙カセットにより予め決定された記録シートSの搬送タイミングからの経過時間に応じて記録シートSの位置を推定してもよい。また、画像形成装置1は不図示の操作パネルを備えており、画像形成装置1のユーザーが操作パネルを操作することによって、記録シートSが噛み込んでいる搬送ローラー対の個数を指定してもよい。記録シートSが噛んでいる搬送ローラー対の個数を特定する方法の如何に関わらず本開示の効果を得ることができる。
(5-4)上記実施の形態においては、画像形成装置1がタンデム方式のカラー複合機である場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、タンデム方式以外の方式のカラー複合機であってもよいし、モノクロ複合機であってもよい。また、プリンター装置やコピー装置、ファクシミリ装置、スキャナー装置などの単機能機に本開示を適用しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示に係るシート搬送装置および画像形成装置は、共通の駆動モーターを用いて駆動される複数の搬送ローラー対に1枚の記録シートを同時に通紙する際の当該駆動モーターを安定動作させることができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1………画像形成装置
100…制御部
311…シート搬送モーター
312…上流側搬送ローラー対
313…下流側搬送ローラー対
321…上流側シートセンサー
322…下流側シートセンサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7