(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】危険度推定装置、危険度推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 21/00 20060101AFI20240416BHJP
G08B 31/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G08B21/00 U
G08B31/00 B
(21)【出願番号】P 2020083423
(22)【出願日】2020-05-11
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐川 美也子
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/037612(WO,A1)
【文献】特開2001-285842(JP,A)
【文献】特開2018-147160(JP,A)
【文献】国際公開第2015/140953(WO,A1)
【文献】特開2018-013852(JP,A)
【文献】特開2016-139932(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212568(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108986400(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00
G08B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の人物に関する情報を検知する検知部と、
前記検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、
全員の視野エリア外にいる人物による犯罪行為が発生する危険度を推定する推定部と、
を含む危険度推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記検知された人物毎に前記人物の位置、及び前記顔向き又は視線方向から求められる視野エリアの和の外に位置する人物の各々について、他の人物との距離が小さいほど、高い前記危険度を推定する請求項1記載の危険度推定装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記検知された人物毎に前記人物の位置、及び前記顔向き又は視線方向から求められる視野エリアの和の外に位置する人物の各々について、他の人物との距離が小さいほど、高い前記危険度を推定し、前記危険度の総和を、車室内全体の危険度として推定する請求項1記載の危険度推定装置。
【請求項4】
車室内の人物に関する情報及び物体に関する情報を検知する検知部と、
前記検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、
全員の視野エリア外にいる人物による犯罪行為が発生する危険度を推定する推定部と、
を含む危険度推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記検知された人物毎に前記人物の位置、及び前記顔向き又は視線方向から求められる視野エリアの和の外に位置する人物の各々について、物体との距離が小さいほど、高い前記危険度を推定する請求項4記載の危険度推定装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記検知された人物毎に前記人物の位置、及び前記顔向き又は視線方向から求められる視野エリアの和の外に位置する人物の各々について、物体との距離が小さいほど、高い前記危険度を推定し、前記危険度の総和を、車室内全体の危険度として推定する請求項4記載の危険度推定装置。
【請求項7】
予め定められた反復周期毎に、前記検知された人物に関する情報及び物体に関する情報に基づいて、前記物体の各々について、所有者を特定し、前記特定された所有者の情報を付与する所有者情報付与部と、
前記反復周期毎に付与された前記所有者の情報に基づいて、所有者の異動があったと判定された場合に、報知する報知部を更に含む請求項4~請求項6の何れか1項記載の危険度推定装置。
【請求項8】
前記推定された前記危険度に応じて報知するように制御する報知制御部を更に含む請求項1~請求項7の何れか1項記載の危険度推定装置。
【請求項9】
前記推定部は、予め定められた反復周期毎に、前記危険度を推定し、
前記検知された人物に関する情報から求められる混雑度に応じて、前記反復周期を変化させる周期制御部を更に含む請求項1~請求項8の何れか1項記載の危険度推定装置。
【請求項10】
検知部が、車室内の人物に関する情報を検知し、
推定部が、前記検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、
全員の視野エリア外にいる人物による犯罪行為が発生する危険度を推定する
危険度推定方法。
【請求項11】
検知部が、車室内の人物に関する情報及び物体に関する情報を検知し、
推定部が、前記検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、
全員の視野エリア外にいる人物による犯罪行為が発生する危険度を推定する
危険度推定方法。
【請求項12】
車室内の人物に関する情報を検知し、
前記検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、
全員の視野エリア外にいる人物による犯罪行為が発生する危険度を推定する
ことをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項13】
車室内の人物に関する情報及び物体に関する情報を検知し、
前記検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、
全員の視野エリア外にいる人物による犯罪行為が発生する危険度を推定する
ことをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険度推定装置、危険度推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグ等の通信手段を取り付け、物体の盗難の有無を監視する盗難監視システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の盗難監視システムでは、物体にICタグを取り付け、収納物に収納する。コントローラは、周期的に探知信号を出力し、ICタグは探知信号を受信して応答信号を出力する。コントローラは、ICタグからの応答信号を受信したとき、収納物から物体が持ち出されたと判定する。
【0004】
また、万引きが発生した時点の退店者から万引き犯を特定するセキュリティシステムが知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
特許文献2に記載のセキュリティシステムは、店舗内に配置したRFIDアンテナを定期的に起動することで、店舗内に存在する商品の在庫管理を行い、万引きが発生した時点の退店者から万引き犯を特定しようとする。
【0006】
また、展示品等から離れた場所から威嚇鳴動を行って盗難を抑制する盗難防止システムが知られている(例えば、特許文献3)。
【0007】
特許文献3に記載の盗難防止システムは、各展示品等に取付けられ、展示品等から離脱された状態が生じたとき、異常データ及び個別識別データを無線送信する電池電源を持った盗難防止タグと、手の届かない場所に設置され、異常データ及び個別識別データを受信したとき、外部から警報リセットが入力されるまで異常状態を保持し、威嚇鳴動し、かつ通報する威嚇通報装置と、監視員が常駐する建物に設置され、かつ、個別識別参照データと展示品等特定情報とが対応付けて記憶され、威嚇通報装置から異常データ及び個別識別データを受信したとき、個別識別データと前記個別識別参照データとを比較し、一致した個別識別参照データが存在するとき、外部に鳴動するとともに、個別識別参照データに対応付けられた展示品等特定情報を表示する中央監視装置とを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-284733号公報
【文献】特開2013-134644号公報
【文献】特開2007-206838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のバスでは、車掌が車室内の状況を確認し異常発生予見時に適切な処置を実施する。例えば、従来のバスでは、運転手が、怪しい乗客を見つけたら、注意深く監視したり、有効なアナウンスを実施して、犯罪発生防止に努めている。
【0010】
近年、自動運転で乗客を輸送する自動運転ロボバスが検討されている。運転手および車掌不在の自動運転ロボバス等では、従来車掌が担っていた監視の目がないため、盗難や痴漢などの車内犯罪の防止のための対策が必要となる。すなわち、自動運転ロボバスでも、自動で車室内の状況を確認し、犯罪の発生が予見される場合に注意喚起するようなシステムが必要となる。
【0011】
上記特許文献1に記載の技術では、物体にICタグのような通信手段をつける必要があり、不特定多数が乗降する乗合いバスの乗客所有物に適用するのは困難である。
【0012】
上記特許文献2に記載の技術では、物体にRFIDをつける必要があり、不特定多数が乗降する乗合いバスの乗客所有物に適用するのは困難である。
【0013】
上記特許文献3に記載の技術では、予めタグが必要で、不特定多数が乗降する乗合いバスでは導入が困難である。
【0014】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、不特定多数が乗降する車室内であっても、簡易な構成で、犯罪が発生する危険度を精度よく推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、第1態様に係る危険度推定装置は、車室内の人物に関する情報を検知する検知部と、前記検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定する推定部と、を含んで構成されている。
【0016】
第2態様に係る危険度推定装置は、車室内の人物に関する情報及び物体に関する情報を検知する検知部と、前記検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定する推定部と、を含んで構成されている。
【0017】
また、第3態様に係る危険度推定方法は、検知部が、車室内の人物に関する情報を検知し、推定部が、前記検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定する方法である。
【0018】
また、第4態様に係る危険度推定方法は、検知部が、車室内の人物に関する情報及び物体に関する情報を検知し、推定部が、前記検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定する方法である。
【0019】
また、第5態様に係るプログラムは、車室内の人物に関する情報を検知し、前記検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定することをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0020】
また、第6態様に係るプログラムは、車室内の人物に関する情報及び物体に関する情報を検知し、前記検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置、及び顔向き又は視線方向と、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定することをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る危険度推定装置、方法、及びプログラムによれば、不特定多数が乗降する車室内であっても、簡易な構成で、犯罪が発生する危険度を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る危険度推定装置の機能ブロック図である。
【
図5】各人物の視野エリアの例を示す上面図である。
【
図6】全員の視野エリアの和の例を示す上面図である。
【
図7】本発明の実施の形態における危険度推定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態の詳細を説明する前に、本発明の実施の形態の概要について説明する。
【0024】
<本発明の実施の形態の概要>
従来のバスでは、車掌が車室内の状況を確認し、異常発生が予見される場合にも適切な処置を実施しており、自動運転で乗客を輸送し、かつ、運転手及び車掌不在のバスである自動運転ロボバスでも、自動で車室内の状況を確認できるようなシステムが必要となる。
【0025】
本実施の形態では、カメラなどのセンサから得られる乗客の顔向きや距離情報から、盗難(スリ)や痴漢などの車内犯罪が発生する危険度を導出し、これに基づいて車室内乗客にむけて注意喚起を行う。
【0026】
<危険度推定装置の構成>
本発明の実施の形態に係る危険度推定装置10は、CPUと、RAMと、後述する各種処理を実行するためのプログラムを記憶したROMとを備え、機能的には次に示すように構成されている。危険度推定装置10は、自動運転で乗客を輸送し、かつ、運転手及び車掌不在のバスである自動運転ロボバスに搭載されている。
【0027】
図1に示すように、危険度推定装置10は、センサ12、検知部14、所有者情報付与部16、顔向き検知部18、危険度推定部20、及び報知制御部22を備えている。
【0028】
センサ12は、例えば、カメラや赤外線カメラ、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)などであり、車室内の情報を検知し、センサ情報を出力する。具体的には、カメラによって撮影された画像、赤外線カメラによって撮影された赤外線画像、又はライダーによって得られた点群データを、センサ情報として出力する。
【0029】
検知部14は、センサ12から出力されたセンサ情報に基づいて、車室内の人物に関する情報及び物体に関する情報を検知する。
【0030】
具体的には、車室内の人物の各々について、当該人物の位置を検知すると共に、車室内の物体の各々について、当該物体の位置を検知し、人物の検知結果を、
図2に示す人物管理テーブルに格納し、物体の検知結果を
図3に示す物体管理テーブルに格納する。
図2では、人物管理テーブルが、人物識別ID、位置情報、エリア外フラグ、顔向き情報、エリア外時間の各項目を有している例を示している。人物識別IDは、当該人物が初めて検知されたときに付与される、人物を識別するための識別子である。位置情報は、検知された当該人物の位置であり、位置が検知される度に更新される。エリア外フラグは、後述する危険度推定部20によって全ての人物の視野エリア外に、当該人物が存在するか否かを表すフラグである。顔向き情報は、後述する顔向き検知部18によって検知される当該人物の顔向き情報であり、顔向き方向およびその頻度情報からなる。エリア外時間は、全ての人物の視野エリア外に、当該人物が存在している通算時間である。
【0031】
図3では、物体管理テーブルが、物体識別ID、位置情報、所有者情報、所有者との距離の各項目を有している例を示している。物体識別IDは、当該物体が初めて検知されたときに付与される、物体を識別するための識別子である。位置情報は、検知された当該物体の位置であり、位置が検知される度に更新される。所有者情報は、後述する所有者情報付与部16によって当該物体に対して付与された所有者の情報であり、所有者である人物の人物識別IDである。所有者との距離は、所有者である人物の位置と、当該物体の位置との間の距離である。
【0032】
所有者情報付与部16は、検知された人物に関する情報及び物体に関する情報に基づいて、物体の各々について、当該物体の所有者を特定し、特定された所有者の情報を付与する。
【0033】
具体的には、車室内で物体が初めて検知されたときに、当該物体に対して最も近くにいる人物を、当該物体の所有者として、当該人物の人物識別IDを、当該物体と結び付けて所有者情報として登録する。所有者情報が初めて登録された後、同意のある物体の所有者異動があったと推定される場合は、所有者情報を更新する。例えば、現所有者の視野エリア内にいる他の人物が、所有者となった場合に、同意のある物体の所有者異動があったと推定される。
【0034】
なお、当該物体との距離が閾値未満の人物を、当該物体と接触している人物として、当該物体の所有者であると判断してもよい。あるいは、当該物体に対して、人物の特定部位(例えば、手)との距離が最も近い人物を、当該物体の所有者であると判断してもよい。
【0035】
顔向き検知部18は、検知された人物に関する情報に基づいて、人物の各々について、当該人物の顔向き方向を検知し、検知された顔向き方向およびその頻度情報を、人物管理テーブルに格納する。
【0036】
危険度推定部20は、検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置及び顔向き情報と、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定する。
【0037】
具体的には、検知された人物毎に、当該人物の位置及び顔向きから求められる視野エリアの和の外に位置する人物の各々について、他の人物との距離が小さいほど、高い危険度を推定する。
【0038】
また、危険度推定部20は、検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置及び顔向き情報と、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定する。
【0039】
具体的には、検知された人物毎に人物の位置及び顔向きから求められる視野エリアの和の外に位置する人物の各々について、物体との距離が小さいほど、高い危険度を推定する。
【0040】
以下に危険度の推定方法の一例を示す。
図4に示すように、車室内に5人の人物30がいる場合を例に説明する。
【0041】
まず、各人物30に対して、顔向き方向から視野エリア30Aを求める(
図5)。例えば、頻度が最も大きい顔向き方向の角度を中心に±60度の範囲を視野エリア30Aとして求める。なお、直近の顔向き方向を中心として±60度の範囲を視野エリア30Aとしてもよい。
【0042】
そして、
図6に示すように、各人物30の視野エリア30Aを重畳したものから、各人物30について、何人の視野エリア30Aに入っているかをカウントし、カウント値がゼロの人物30は、全員の視野エリア外にいると判断し、エリア外フラグを1とする。このカウント値は、他の人物30に見られている度合いを示している。
図6では、人物30aが、全員の視野エリア外にいる例を示している。
【0043】
そして、全員の視野エリア外にいる人物による犯罪が発生する危険度Rを、以下の式に従って算出する。
【0044】
【0045】
ただし、dは、全員の視野エリア外の当該人物と、任意の物体あるいは他の人物との最小距離である。
【0046】
なお、車室内が混み合うほど、他人との距離が近くなり、スリおよび痴漢が発生しやすくなることを踏まえ、以下の式に従って危険度Rを算出してもよい。
【0047】
【0048】
ただし、Nは、車室内の人数であり、Sは、車室内の乗車可能領域面積である。
【0049】
また、全員の視野エリア外にいる当該人物のエリア外時間を更に考慮して、以下の式に従って危険度Rを算出してもよい。
【0050】
【0051】
ただし、tは、全員の視野エリア外にいる当該人物が、全員の視野エリア外にいる通算時間である。
【0052】
報知制御部22は、推定された危険度に応じて、スピーカ又は表示装置により報知する。例えば、少なくとも一人に対して推定された危険度が、閾値以上である場合に、スピーカを用いた車室内放送等で乗客へ注意喚起を実施する。
【0053】
また、報知制御部22は、所有者の情報に基づいて、所有者の異動があったと判定された場合に、スピーカ又は表示装置により、注意喚起のためのメッセージを報知する。
【0054】
上記の検知部14、所有者情報付与部16、顔向き検知部18、危険度推定部20、及び報知制御部22の各処理は、予め定められた反復周期毎に繰り返し行われる。
【0055】
<危険度推定装置の作用>
センサ12から、車室内の情報を表すセンサ情報が逐次出力されているときに、危険度推定装置10において、
図7に示す危険度推定処理が実行される。
【0056】
まず、ステップS100において、検知部14は、センサ12から出力されたセンサ情報に基づいて、車室内の人物に関する情報及び物体に関する情報を検知する。
【0057】
ステップS102において、所有者情報付与部16は、上記ステップS100で検知された人物に関する情報及び物体に関する情報に基づいて、物体の各々について、当該物体の所有者を特定し、特定された所有者の情報を付与する。
【0058】
ステップS104では、顔向き検知部18は、上記ステップS100で検知された人物に関する情報に基づいて、人物の各々について、当該人物の顔向き方向を検知し、検知された顔向き方向およびその頻度情報を、人物管理テーブルに格納する。
【0059】
ステップS106では、危険度推定部20は、検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置及び顔向き情報と、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、全員の視野エリア外にいる人物の各々に対して、犯罪行為が発生する危険度を推定する。また、危険度推定部20は、検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置及び顔向き情報と、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、全員の視野エリア外にいる人物の各々に対して、犯罪行為が発生する危険度を推定する。
【0060】
ステップS108では、報知制御部22は、全員の視野エリア外にいる少なくとも一人に対して推定された危険度が、閾値以上である否かを判定する。全員の視野エリア外にいる少なくとも一人に対して推定された危険度が、閾値以上である場合には、ステップS110へ移行する。一方、全員の視野エリア外にいる全ての人に対して推定された危険度が、閾値未満である場合には、ステップS100へ戻る。
【0061】
ステップS110では、報知制御部22は、スピーカを用いた車室内放送等で、所持品を確認することを促すメッセージを音声出力する。例えば、「所持品を今一度ご確認ください」というメッセージを音声出力する。
【0062】
また、犯罪行為が発生する危険度の高い状況であることを、バス管理センター側のオペレータへ通知してもよい。また、上記ステップS100~ステップS120の反復周期を短くしても良いし、カメラ映像をバス管理センターへリアルタイム配信するなどしても良い。
【0063】
ステップS112では、報知制御部22は、物体の所有者情報に基づいて、同意のない所有者の異動があったか否かを判定する。少なくとも一つの物体について、上記ステップS102で付与された所有者情報が、前回付与されたものから変更されており、かつ、現所有者の視野エリア外にいる他の人物が、所有者となった場合に、同意のない所有者の移動があったと判断して、上記ステップS114へ移行する。一方、全ての物体について、上記ステップS102で付与された所有者情報が、前回付与されたものから変更されていない場合、あるいは、現所有者の視野エリア内にいる他の人物が、所有者となった場合に、同意のない所有者の移動がなかったと判断して、上記ステップS100へ戻る。
【0064】
ステップS114では、報知制御部22は、スピーカを用いた車室内放送等で、所持品を確認することを促すメッセージを音声出力する。例えば、「貴重品は目の届く範囲にお持ちください」というメッセージを音声出力する。また、所定期間前からの映像を録画し、バス管理センターへ送信するなどしても良い。
【0065】
ステップS116では、報知制御部22は、車室のドアが開き、かつ、全員の視野エリア外にいる人が、当該ドアから降車したか否かを判定する。車室のドアが開いておらず、又は、全員の視野エリア外にいる人がドアから降車していない場合には、上記ステップS100へ戻る。一方、車室のドアが開き、かつ、全員の視野エリア外にいる人が、当該ドアから降車した場合には、ステップS118へ移行する。
【0066】
ステップS118では、報知制御部22は、スピーカを用いた車室内放送等で、所持品を確認することを促すメッセージを音声出力する。例えば、「お荷物のお取り間違いはありませんか」というメッセージを音声出力する。また、車室外放送でも、当該メッセージを音声出力してもよい。これにより、降車した人に対しても注意喚起を促すことができる。
【0067】
ステップS120では、運行を終了したか否かを判定し、運行を終了していない場合には、上記ステップS100へ戻り、一方、運行を終了した場合には、危険度推定処理を終了する。
【0068】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る危険度推定装置は、検知された人物に関する情報から得られる、人物の位置及び顔向きと、他の人物の位置との関係、並びに人物同士の距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定する。また、危険度推定装置は、検知された人物に関する情報及び物体に関する情報から得られる、人物の位置及び顔向きと、物体の位置との関係、並びに人物と物体との距離に基づいて、犯罪行為が発生する危険度を推定する。これにより、不特定多数が乗降する車室内であっても、簡易な構成で、犯罪が発生する危険度を精度よく推定することができる。
【0069】
また、車室内の人物の顔向きと距離情報に基づいて、車室内で犯罪が発生する危険度を推定し、危険度の高い場合には車内放送等で、車室内の人物へ呼びかけ、犯罪発生を予防する。また、同意のない所有者異動である盗難が発生した可能性が高い場合には、車内放送にて所有物を確認することを促すメッセージを音声出力し、所有者異動が発生する前後の映像を保存し、同時にオペレータへ通知し、保存した映像を送信する。人は死角になる場面で犯罪を犯しやすいので、視野エリア外にいる人物による犯罪行為が発生する危険度を推定し、報知することにより、盗難や痴漢などの犯罪を防止できる。また、犯罪として盗難が発生する危険度だけでなく、視野エリア外の人との距離情報などから、犯罪として痴漢が発生する危険度を推定することもできる。
【0070】
<変形例>
なお、上記の実施の形態では、視野エリア外にする人物毎に危険度を推定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、危険度推定部は、検知された人物毎に人物の位置及び顔向き又は視線方向から求められる視野エリアの和の外に位置する人物の各々について、他の人物との距離が小さいほど、高い危険度を推定し、危険度の総和を、車室内全体の危険度として推定するようにしてもよい。また、検知された人物毎に人物の位置及び顔向き又は視線方向から求められる視野エリアの和の外に位置する人物の各々について、物体との距離が小さいほど、高い危険度を推定し、危険度の総和を、車室内全体の危険度として推定するようにしてもよい。
【0071】
具体的には、以下の式に従って、車室内全体の危険度Rを推定すればよい。
【0072】
【0073】
ただし、nは、全員の視野エリア外のいる人物の数である。diは、全員の視野エリア外の当該人物iと、任意の物体あるいは他の人物との最小距離である。
【0074】
なお、車室内が混み合うほど、他人との距離が近くなり、スリおよび痴漢が発生しやすくなることを踏まえ、以下の式に従って危険度Rを算出してもよい。
【0075】
【0076】
また、全員の視野エリア外にいる人物のエリア外時間を更に考慮して、以下の式に従って危険度Rを算出してもよい。
【0077】
【0078】
ただし、tは、全員の視野エリア外にいる少なくとも一人の人物が、全員の視野エリア外にいる通算時間である。
【0079】
また、以下の式に従って、危険度Rを算出してもよい。
【0080】
【0081】
ただし、dは、全員の視野エリア外の各人物と、任意の物体あるいは他の人物との最小距離のうち、一番小さい距離である。
【0082】
なお、車室内が混み合うほど、他人との距離が近くなり、スリおよび痴漢が発生しやすくなることを踏まえ、以下の式に従って危険度Rを算出してもよい。
【0083】
【0084】
また、全員の視野エリア外にいる人物のエリア外時間を更に考慮して、以下の式に従って危険度Rを算出してもよい。
【0085】
【0086】
また、危険度推定装置に、混雑度によって反復周期を変化させる周期制御部を更に設けてもよい。なお、混雑度は、車室内の人数Nを、車室内の乗車可能領域面積Sで除算したものとすればよい。
【0087】
また、人物の顔向き方向ではなく、視線方向を用いるようにしてもよい。この場合には、センサとして、人物の目画像を撮像するカメラを用いて、人物の各々について、当該人物の視線方向を検知するようにすればよい。
【0088】
また、危険度推定装置10は、自動運転で乗客を輸送し、かつ、運転手及び車掌不在のバスである自動運転ロボバスに搭載されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、危険度推定装置10は、自動運転ロボバス以外の車両に搭載されてもよい。例えば、鉄道車両に危険度推定装置10を搭載してもよい。
【0089】
また、車両に搭載するのではなく、外部のサーバ等によって危険度推定装置を実現してもよい。この場合には、車両に搭載されたセンサから出力されたセンサ情報を、ネットワークを介して危険度推定装置へ送信するようにすればよい。
【0090】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各種処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0091】
また、上記実施形態では、プログラムがROMに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 危険度推定装置
12 センサ
14 検知部
16 所有者情報付与部
18 検知部
20 危険度推定部
22 報知制御部
30 人物
30A 視野エリア