(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】飛行体の給電装置及び給電方法
(51)【国際特許分類】
B64F 1/02 20060101AFI20240416BHJP
B64F 1/36 20240101ALI20240416BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240416BHJP
B64C 25/68 20060101ALI20240416BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240416BHJP
B64U 70/30 20230101ALI20240416BHJP
【FI】
B64F1/02
B64F1/36
B64D27/24
B64C25/68
B64C39/02
B64U70/30
(21)【出願番号】P 2020086599
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東山 佳路
(72)【発明者】
【氏名】阿知波 文高
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-529250(JP,A)
【文献】特開2018-012477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/02
B64F 1/36
B64D 27/24
B64C 25/68
B64C 39/02
B64U 70/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池に蓄電された電力によって飛行する飛行体を着地させ、前記飛行体に給電を行う飛行体の給電装置であって、
前記飛行体は、プロペラを回転駆動するモータと、前記飛行体の姿勢を検出するためのジャイロセンサと、前記ジャイロセンサによって検出された前記飛行体の姿勢の情報に基づいて、前記飛行体が傾いたときに前記飛行体の姿勢を水平に保つよう前記モータを制御する制御部と、を備えており、
前記飛行体が着地する着地台と、
前記飛行体に設けられた鉤部を掛けるためのワイヤと、
前記着地台の上方に前記ワイヤを張架する柱と、
前記飛行体への給電を行う給電部と、
前記着地台の下方に配置され、前記ワイヤを巻き取る巻き取り装置とを備え、
前記鉤部が前記ワイヤに掛かって前記飛行体が減速し
、前記飛行体の姿勢が前記制御部による前記モータの制御によって水平方向に安定した後に
、前記巻き取り装置が前記ワイヤを巻き取ることにより、前記飛行体の受電部が前記給電部に対応する位置に前記飛行体が着地するように前記飛行体を下降させる、
飛行体の給電装置。
【請求項2】
蓄電池に蓄電された電力によって飛行する飛行体を着地させ、前記飛行体に給電を行う飛行体の給電装置であって、
前記飛行体が着地する着地台と、
前記飛行体に設けられた鉤部を掛けるためのワイヤと、
前記着地台の上方に前記ワイヤを張架する柱と、
前記飛行体への給電を行う給電部と、
前記着地台の下方に配置され、前記ワイヤを巻き取る巻き取り装置とを備え、
前記巻き取り装置は、前記ワイヤを巻き取るためのボビンを有し、前記ボビンが前記着地台の下方に配置されており、
前記ワイヤは、前記着地台に設けられたスリット状の導出口から上方に引き出されて前記
柱により張架されて
おり、
前記鉤部が前記ワイヤに掛かって前記飛行体が減速した後に前記巻き取り装置が前記ワイヤを巻き取ることにより、前記飛行体の受電部が前記給電部に対応する位置に前記飛行体が着地するように前記飛行体を下降させる、
飛行体の給電装置。
【請求項3】
前記
柱は、前記鉤部が前記ワイヤに掛かった後、前記着地台に対して傾倒動作又は下降動作を行う、
請求項1又は2に記載の飛行体の給電装置。
【請求項4】
蓄電池に蓄電された電力によって飛行する飛行体を着地させ、前記飛行体に給電を行う飛行体の給電装置であって、
前記飛行体が着地する着地台と、
前記飛行体に設けられた鉤部を掛けるためのワイヤと、
前記着地台の上方に前記ワイヤを張架する柱と、
前記飛行体への給電を行う給電部と、
前記着地台の下方に配置され、前記ワイヤを巻き取る巻き取り装置とを備え、
前記
柱は、上下方向に伸縮可能な弾性体と、前記弾性体を保持すると共に上下方向に延びるスリットが形成された枠体とを有し、
前記ワイヤは、前記枠体内で前記弾性体に支持されると共に前記スリットから導出されており、
前記鉤部が前記ワイヤに掛かって前記飛行体が減速した後に前記巻き取り装置が前記ワイヤを巻き取ることにより、前記飛行体の受電部が前記給電部に対応する位置に前記飛行体が着地するように前記飛行体を下降させ、
前記巻き取り装置が前記ワイヤを巻き取ることにより、前記弾性体が前記ワイヤの張力によって下方に向かって収縮する、
飛行体の給電装置。
【請求項5】
蓄電池に蓄電された電力によって飛行する飛行体を着地させ、前記飛行体に給電を行う飛行体の給電方法であって、
飛行する前記飛行体に設けられた鉤部にワイヤを掛けて前記飛行体を減速させるステップと、
前記飛行体が前記ワイヤに掛かって減速した後に
、前記飛行体の姿勢を水平方向に安定させるステップと、
前記飛行体の姿勢が水平方向に安定した後に、前記ワイヤを巻き取ることにより、前記飛行体を着地台に着地させるステップと、
前記飛行体が前記着地台に着地した状態で前記飛行体に給電するステップと、
を有する飛行体の給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池に蓄電された電力により飛行する飛行体に対して給電を行う給電装置及び給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所謂ドローン等の自律飛行体を着地させて給電を行うための装置として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の充電システムは、ドローン本体から垂れ下がるグリップワイヤの先端に強磁性の重りが取り付けられており、この重りを着陸プラットフォームの電磁石によって捕捉するように構成されている。また、特許文献1には、重りが着陸プラットフォームの中心に到達した後、着陸プラットフォームに配置された牽引アセンブリを用いてグリップワイヤを引き下ろすことにより、ドローンを着陸プラットフォームの中心に引き寄せて充電のための給電を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された充電システムでは、例えば強風時には重りを電磁石によって捕捉させることが難しい場合がある。また、特許文献1では、牽引アセンブリを如何にして構成するかについて記載されていないが、電磁石によって重りが捕捉された後にグリップワイヤを牽引するためには複雑な機構が必要になると考えられ、システムが高コストになると考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成で飛行体を目標位置に着地させ、給電を行うことが可能な給電装置及び給電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するため、蓄電池に蓄電された電力によって飛行する飛行体を着地させ、前記飛行体に給電を行う飛行体の給電装置であって、前記飛行体は、プロペラを回転駆動するモータと、前記飛行体の姿勢を検出するためのジャイロセンサと、前記ジャイロセンサによって検出された前記飛行体の姿勢の情報に基づいて、前記飛行体が傾いたときに前記飛行体の姿勢を水平に保つよう前記モータを制御する制御部と、を備えており、前記飛行体が着地する着地台と、前記飛行体に設けられた鉤部を掛けるためのワイヤと、前記着地台の上方に前記ワイヤを張架する柱と、前記飛行体への給電を行う給電部と、前記着地台の下方に配置され、前記ワイヤを巻き取る巻き取り装置とを備え、前記鉤部が前記ワイヤに掛かって前記飛行体が減速し、前記飛行体の姿勢が前記制御部による前記モータの制御によって水平方向に安定した後に、前記巻き取り装置が前記ワイヤを巻き取ることにより、前記飛行体の受電部が前記給電部に対応する位置に前記飛行体が着地するように前記飛行体を下降させる、飛行体の給電装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、蓄電池に蓄電された電力によって飛行する飛行体を着地させ、前記飛行体に給電を行う飛行体の給電方法であって、飛行する前記飛行体に設けられた鉤部にワイヤを掛けて前記飛行体を減速させるステップと、前記飛行体が前記ワイヤに掛かって減速した後に、前記飛行体の姿勢を水平方向に安定させるステップと、前記飛行体の姿勢が水平方向に安定した後に、前記ワイヤを巻き取ることにより、前記飛行体を着地台に着地させるステップと、前記飛行体が前記着地台に着地した状態で前記飛行体に給電するステップと、を有する飛行体の給電方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る給電装置及び給電方法によれば、簡易な構成で飛行体を目標位置に着地させて給電を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における給電装置の給電対象である飛行体を示し、(a)は進行方向の斜め後方から見た斜視図、(b)は側面図である。
【
図2】飛行体に給電を行う給電装置を示す斜視図である。
【
図3】飛行体に給電を行う給電装置を飛行体と共に示す斜視図である。
【
図4】(a)及び(b)は、飛行体が飛行している状態を示す説明図である。
【
図5】(a)及び(b)は、飛行体の鉤部がワイヤに掛かったときの状態を示す説明図である。
【
図6】(a)及び(b)は、飛行体が柱部よりも上空で水平に停止した状態を示す説明図である。
【
図7】(a)及び(b)は、ワイヤがボビンに巻き取られることによって飛行体の高度が下がり、着地台に着地したときの状態を示す説明図である。
【
図8】第1の変形例に係る鉤部を示す説明図である。
【
図9】第2の変形例に係る鉤部を示す説明図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る給電装置を示し、(a)は斜視図、(b)は飛行体が着地台の上空で停止したときの状態を示す模式図である。
【
図11】第3の実施の形態に係る給電装置を示し、(a)は柱が上昇端にあるときの状態を示す断面図、(b)は柱が下降端にあるときの状態を示す断面図である。
【
図12】第4の実施の形態に係る給電装置を示し、(a)は柱が下降端にあるときの状態を示す斜視図であり、(b)は、柱が上昇端にあるときの状態を示す斜視図である。
【
図13】第5の実施の形態に係る給電装置の柱を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は(b)のA-A線断面図、(e)は柱においてワイヤを支持する弾性体の上端部を示す斜視図である。
【
図14】第5の実施の形態に係る給電装置を示し、(a)は飛行体の鉤部がワイヤに掛かる前の状態を、(b)は飛行体が着地台に着地したときの状態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図7を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。また、以下の説明において、「上」「下」とは、鉛直方向の上下をいうものとする。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施の形態における給電装置の給電対象である飛行体を示し、(a)は進行方向の斜め後方から見た斜視図、(b)は側面図である。この飛行体1は、所謂ドローンであり、自律飛行が可能である。また、飛行体1は、胴部(機体)10と、胴部10から放射状に延びる4本のアーム部111~114と、4本のアーム部111~114のそれぞれの先端部に保持されたモータ121~124と、モータ121~124によってそれぞれ回転駆動されるプロペラ131~134とを有している。
【0012】
また、飛行体1は、円弧状に湾曲した部分を有する釣り針状の鉤部14と、鉤部14に取り付けられた尾翼部15と、鉤部14を胴部10に連結する連結部材16とを有している。尾翼部15は、飛行体1の飛行時において鉤部14の姿勢を安定させ、鉤部14の先端部141を進行方向前方に向ける機能を有している。連結部材16は、例えば撚り線からなる柔軟な金属製ワイヤあるいは紐状体であるが、鋼材からなる棒状体やチェーン等であってもよい。
【0013】
胴部10には、給電を受ける受電部100と、受電部100によって給電された電力を蓄電する蓄電池101と、飛行体1の現在位置を検出する位置検出部102と、飛行体1の姿勢を検出するためのジャイロセンサ103と、位置検出部102によって検出された現在位置やジャイロセンサ103によって検出された飛行体1の姿勢の情報に基づいてモータ121~124を制御する制御部104とが収容されている。飛行体1は、蓄電池101に蓄電された電力によって飛行する。
【0014】
受電部100は、例えば円環状の軟磁性体からなる芯材に導線を巻き回して構成された電磁コイルであり、胴部10の下部に配置されている。蓄電池101は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池等であり、モータ121~124によってプロペラ131~134を回転駆動するための電力を出力する。位置検出部102は、例えばGPSの人工衛星から発信されるGPS信号によって飛行体1の現在位置を検出する。ジャイロセンサ103は、例えば直交三軸の角速度センサ及び加速度センサを組み合わせて構成されている。
【0015】
制御部104は、飛行中に例えば強風にあおられて飛行体1が傾いたとき、ジャイロセンサ103の検出値に基づいて飛行体1を水平に保つためのモータ121~124の出力を計算し、それぞれのモータ121~124を制御して飛行体1の姿勢を安定させる。
【0016】
図2及び
図3は、飛行体1に給電を行う給電装置2を示す斜視図である。
図3では、給電装置2と共に飛行体1を図示している。給電装置2は、飛行体1が着地する着地台3と、飛行体1の鉤部14を掛けるためのワイヤ4と、着地台3の上方にワイヤ4を張架する一対の柱5,5と、飛行体1への給電を行う給電部20と、ワイヤ4を巻き取る一対の巻き取り装置6,6とを備えている。
【0017】
給電装置2は、鉤部14がワイヤ4に掛かって飛行体1が減速した後に巻き取り装置6がワイヤ4を巻き取ることにより、飛行体1の受電部100が給電部20に対応する位置に着地するように飛行体1を下降させる。給電部20は、飛行体1の受電部100に電磁結合する電磁コイルであり、給電装置2は、受電部100に対して給電部20によって誘導給電を行う。
【0018】
着地台3は、平板状であり、着地面3aが水平となるように設置されている。給電部20は、着地台3に埋め込まれて固定されている。また、着地台3には、着地面3aに開口した導出口30が、上下方向に貫通して形成されている。導出口30は、着地面3aに対して垂直な方向から見た形状がスリット状である。ワイヤ4は、導出口30から上方に引き出され、一対の柱5,5によって張架(張り渡されて架線されること)されている。
【0019】
一対の柱5,5は、着地面3aに対して垂直に立設された円柱状であり、導出口30の長手方向に沿って並列している。柱5の上端面5aには、ワイヤ4を掛けるための溝50が形成されている。溝50は、鉛直方向に対して互いに逆向きに傾斜した一対の傾斜面50a,50bを有している。ワイヤ4は、導出口30の長手方向に沿って水平に張架されている。
【0020】
巻き取り装置6は、ワイヤ4を巻き取るためのボビン61と、ボビン61を回転させる電動モータ62とを有しており、ボビン61及び電動モータ62が着地台3の下方に配置されている。ワイヤ4は、その両端部が一対の巻き取り装置6のそれぞれのボビン61に留められており、ボビン61が電動モータ62によって回転駆動されることにより巻き取られる。
【0021】
図4乃至
図7は、飛行体1の鉤部14をワイヤ4に掛けて飛行体1を減速させ、飛行体1を着地台3に着地させて給電を行う際の各状態を示す模式図である。
図4乃至
図7において、それぞれの(a)図は、飛行体1及び給電装置2を飛行体1の飛行方向に対して垂直な水平方向から見た状態を示し、(b)図は、飛行体1の飛行方向の後方から見た状態を示している。
【0022】
図4(a)及び(b)は、飛行体1が飛行している状態を示している。飛行体1は、給電を受けるとき、鉤部14が一対の柱5の間のワイヤ4に掛かる高度で着地台3の上空を水平に飛行する。
【0023】
図5(a)及び(b)は、飛行体1の鉤部14がワイヤ4に掛かったときの状態を示している。このとき、ワイヤ4は柱5の溝50から外れて飛行体1を減速させる。飛行体1は、ワイヤ4に引っ張られて減速して姿勢が乱れ、高度が下がる。飛行体1の制御部104は、この姿勢の乱れをジャイロセンサ103によって検出し、姿勢を水平方向に保つと共に、高度を上げて上昇するようにモータ121~124を制御する。
【0024】
図6(a)及び(b)は、モータ121~124の制御により飛行体1の姿勢が水平となり、柱部5よりも上空で停止した状態を示している。このとき、一対の巻き取り装置6のボビン61と鉤部14とが
図6(b)に示すように二等辺三角形をなし、導出口30の長手方向における飛行体1の位置が、二つのボビン61の間の中央の位置となる。
【0025】
図7(a)及び(b)は、
図6(a)及び(b)に示す状態から一対の巻き取り装置6が作動し、ワイヤ4がボビン61に巻き取られることによって飛行体1の高度が下がり、着地台3に着地したときの状態を示している。一対の巻き取り装置6は、互いに等しい速度でボビン61を回転させてワイヤ4を巻き取る。飛行体1は、姿勢を水平に保ちながらワイヤ4に引っ張られることにより下降する。
【0026】
飛行体1が着地台3に着地したとき、飛行体1の受電部100と給電部20とが上下方向に並ぶ。そして、この状態で飛行体1への給電を行うことにより、誘導給電が効率的に行われる。給電が完了し、飛行体1が着地台3から飛び立つ際には、例えば人の手作業により、鉤部14がワイヤ4から取り外される。なお、飛行体1が自ら連結部材16を切り離して着地台3から飛び立ってもよい。
【0027】
このように、飛行体1への給電は、鉤部14にワイヤ4を掛けて飛行体を減速させるステップと、飛行体1がワイヤ4に掛かって減速した後にワイヤ4を巻き取ることにより、飛行体1を着地台3に着地させるステップと、飛行体1が着地台3に着地した状態で飛行体1に給電するステップとによって行われる。
【0028】
以上説明した第1の実施の形態によれば、簡易な構成で飛行体1を着地台3における目標位置、すなわち受電部100と給電部20とが上下方向に並ぶに位置に着地させて給電を行うことが可能となる。
【0029】
(鉤部の変形例)
図8は、第1の変形例に係る鉤部14Aを示す説明図である。この鉤部14Aは、第1の実施の形態に係る鉤部14を放射状に三つ組み合わせたものであり、尾翼部15は取り付けられていない。このように鉤部14Aを構成することで、鉤部14Aの姿勢にかかわらず、鉤部14がワイヤ4に掛かりやすくなる。
【0030】
図9は、第2の変形例に係る鉤部14Bを示す説明図である。第1の実施の形態では、鉤部14が連結部材16によって胴部10に連結された場合について説明したが、鉤部14Bは、その先端部141Bが胴部10の下方に位置して進行方向前方を向くように、胴部10に直接的に取り付けられている。なお、鉤部14Bは、ワイヤ4に掛かりやすくなるように、第1の実施の形態に係る鉤部14よりも大きく形成されている。
【0031】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る給電装置2Aについて、
図10を参照して説明する。
図10(a)は、給電装置2Aを示す斜視図であり、
図10(b)は、飛行体1が着地台3の上空で停止したときの状態を示す模式図である。
【0032】
本実施の形態では、飛行体1の鉤部14(もしくは上記の変形例に係る鉤部14A又は14B)がワイヤ4に掛かった後、ワイヤ4を張架する一対の柱5Aが着地台3に対して傾倒動作を行うように構成されている。具体的には、一対の柱部5Aの下端部と着地台3との間にそれぞれ蝶番51が取り付けられており、鉤部14がワイヤ4に掛かったときのワイヤ4の張力により、一対の柱部5Aのそれぞれの上端部が互いに接近するように着地台3に対して倒れる。
【0033】
この第2の実施の形態によれば、飛行体1がワイヤ4に引っ張られて下降するとき、例えばプロペラ131~134のうち進行方向に対して後方側にあたるプロペラ133,134が柱部5Aに干渉してしまうことが抑止される。
【0034】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係る給電装置2Bについて、
図11を参照して説明する。給電装置2Bは、ワイヤ4を張架する一対の柱5Bの構成が第1の実施の形態に係る柱5とは異なると共に、柱5Bを着地台3に対して昇降させる昇降機構7を有している。
【0035】
図11(a)は、柱5Bが上昇端にあるときの状態を示す断面図であり、
図11(b)は、柱5Bが下降端にあるときの状態を示す断面図である。なお、
図11(a)及び(b)では、一対の柱5Bのうち一方の柱5Bについて図示しているが、他方の柱5Bも同様に構成されている。
【0036】
柱5Bは、中空部520が中心部に形成された管状の本体部52を有しており、中空部520が本体部52を上下方向に貫通している。中空部520には、ワイヤ4が挿通されている。本体部52は、着地台3に対して上昇したとき、着地台3の導出口30に挿通される。また、柱5Bは、本体部52の外周面から外方に突出する環状のフランジ部53を有しており、フランジ部53が着地台3の下方に配置されている。
【0037】
昇降機構7は、柱5Bを上下方向に案内するガイド部材71と、フランジ部53に当接して柱5Bを上方に付勢する弾性体としてのコイルばね72と、コイルばね72の下端部が当接する平板状の受け部材73とを有している。ガイド部材71は、柱5Bをコイルばね72と共に収容する筒状であり、着地台3と受け部材73との間に配置されている。柱5Bは、ガイド部材71に案内されて円滑に上下方向に移動可能である。受け部材73には、ワイヤ4を挿通させる挿通孔730が上下方向に貫通して形成されている。巻き取り装置6は、受け部材73のさらに下方に配置されている。
【0038】
柱5Bがワイヤ4を張架している状態では、
図11(a)に示すように、フランジ部53がコイルばね72の弾性力によって着地台3の下面3bに当接している。飛行体1の鉤部14がワイヤ4に掛かり、巻き取り装置6がワイヤ4を巻き取ると、ワイヤ4の張力によって柱5Bがコイルばね72の弾性力に抗して下方に移動する。この柱5Bの下降動作により、本体部52の全体が着地台3の下方に位置するように柱5Bが移動する。なお、柱5Bが下降端に位置したとき、本体部52の一部が着地面3aから上方に突出していてもよい。
【0039】
飛行体1への給電が完了した後、ボビン61を反転させて巻き取り装置6がワイヤ4を送り出すと、コイルばね72の弾性力により、柱5Bが上昇してフランジ部53が着地台3の下面3bに当接する。これにより、
図11(a)に示すように、一対の柱5Bによってワイヤ4が張架された状態となる。
【0040】
この第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様に、飛行体1のプロペラ133,134が柱部5Bに干渉してしまうことが抑止される。また、柱部5Bの昇降動作を巻き取り装置6によって自動で行うことができる。
【0041】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態に係る給電装置2Cについて、
図12を参照して説明する。給電装置2Cは、ワイヤ4を張架する一対の柱5Cを着地台3に対して昇降させる昇降機構8を有している。
【0042】
図12(a)は、柱5Cが下降端にあるときの状態を示す斜視図であり、
図12(b)は、柱5Cが上昇端にあるときの状態を示す斜視図である。昇降機構8は、電動モータ81と、電動モータ81によって回転駆動されるピニオンギヤ82とを有している。給電装置2Cは、一対の柱5Cのそれぞれに対応して、二つの昇降機構8を有している。柱5Cは、全体として円柱状であり、着地台3の導出口30に挿通されている。柱5Cには、着地台3よりも下側に配置される部分に、ピニオンギヤ82に噛み合うラック歯部54が設けられている。
【0043】
柱5Cは、図略のガイド部材に支持されて上下方向に移動する。ピニオンギヤ82が正転すると柱5Cが上昇し、ピニオンギヤ82が反転すると柱5Cが下降する。飛行体1の鉤部14をワイヤ4に掛ける際には、柱5Cを上昇端まで上昇させる。鉤部14がワイヤ4に掛かると、ピニオンギヤ82を反転させて柱5Cを下降動作させる。そして、飛行体1が着地台3に着地すると、飛行体1に対する給電を行う。
【0044】
この第4の実施の形態によれば、第2及び第3の実施の形態と同様に、飛行体1のプロペラ133,134が柱部5Cに干渉してしまうことが抑止される。また、柱部5Cの昇降動作を昇降機構8によって自動で行うことができる。
【0045】
なお、柱5Cは、円柱状に限らず、例えば四角柱状であってもよい。また、電動モータ81に替えて、柱5Cの下側に圧縮ばねを配置してもよい。この場合、電動モータ62により、ワイヤ4を介して柱5Cを下方に移動させることができる。またさらに、電動モータ62に替えて、ワイヤ4の両端部に、ワイヤ4を下方に引っ張る引っ張りばねを設けてもよい。この場合、電動モータ81によって柱5Cを上昇させることで、ワイヤ4を引っ張り上げることができる。
【0046】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態に係る給電装置2Dについて、
図13及び
図14を参照して説明する。本実施の形態では、ワイヤ4を張架する一対の柱5Dがワイヤ4を弾性支持している。
【0047】
図13は、柱5Dを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は(b)のA-A線断面図、(e)は柱5Dにおいてワイヤ4を支持する弾性体55の上端部を示す斜視図である。
図14(a)は、飛行体1の鉤部14がワイヤ4に掛かる前の給電装置2Dを示し、
図14(b)は、飛行体1が着地台3に着地したときの給電装置2Dを示している。なお、給電装置2Dは、一対の柱5Dを有しているが、
図14(a)及び(b)では、このうち一方の柱5Dを図示している。
【0048】
柱5Dは、上下方向に伸縮可能な弾性体55と、弾性体55を保持すると共に上下方向に延びるスリット560が形成された枠体56とを有している。弾性体55は、例えばスポンジゴムからなり、枠体56内に収容された断面矩形状の被保持部551と、被保持部551の一側面から突出した突出部552とを一体に有している。突出部552は、枠体56のスリット560から枠体56の外部に突出している。枠体56は、着地台3の下方に配置された平板状の受け部材9に支持されている。受け部材9には、ワイヤ4を挿通させる挿通孔90が上下方向に貫通して形成されている。巻き取り装置6は、受け部材9のさらに下方に配置されている。
【0049】
ワイヤ4は、枠体56内で弾性体55に支持されると共に、スリット560から枠体56の外部に導出されている。より具体的には、弾性体55の被保持部551におけるスリット560とは反対側の側面551aと、この側面551aに対向する枠体56の内面との間にワイヤ4が挿通され、弾性体55の上端面55aを経てワイヤ4がスリット560から導出されている。
【0050】
飛行体1の鉤部14がワイヤ4に掛かった後、巻き取り装置6がワイヤ4を巻き取ることにより、
図14(b)に示すように弾性体55がワイヤ4の張力によって下方に向かって収縮する。これにより、ワイヤ4が下降し、飛行体1が着地台3に着地する。そして、飛行体1に対する給電がなされる。
【0051】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様に、簡易な構成で飛行体1を着地台3における目標位置に着地させて給電を行うことが可能となる。
【0052】
(付記)
以上、本発明を第1乃至第5実施の形態に基づいて説明したが、これら実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0053】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、受電部100と給電部20との間で誘導給電を行う場合について説明したが、これに限らず、例えば接点同士の接触による電気的な結合によって給電を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…飛行体 100…受電部
101…蓄電池 2,2A,2B,2C,2D…給電装置
20…給電部 3…着地台
30…導出口 4…ワイヤ
5,5A,5B,5C,5D…柱 55…弾性体
56…枠体 560…スリット
6…巻き取り装置