(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】電源機器の冷却制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240416BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020088400
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】越智 健次
(72)【発明者】
【氏名】畠中 健太
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-004386(JP,A)
【文献】特開2013-108441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0320061(US,A1)
【文献】特開2005-306197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42 ~7/98
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源機器(11,21)と、その電源機器を冷却する冷却風を生成するブロア(25)とを備える冷却システムに適用され、
前記電源機器の実際の温度を実温度として取得する温度取得部と、
前記温度取得部により取得された前記電源機器の実温度に基づいてブロア制御量(D)を算出する複数の制御量算出部と、
前記複数の制御量算出部により並行して算出されたブロア制御量のいずれかを選択的に用いてブロア風量を制御する風量制御部と、を備え、
前記各制御量算出部は、当該制御量算出部ごとに、前記電源機器の基準温度(Tref)が各々定められ、その基準温度と前記電源機器の実温度とに応じて可変制御量(Dfb)を算出するとともに、その可変制御量を、前記制御量算出部ごとに異なる上限値(Lm)により制限することで前記ブロア制御量を算出するものであり、
前記複数の制御量算出部のうち相対的に前記基準温度が高い制御量算出部である高基準側算出部では、相対的に前記基準温度が低い制御量算出部である低基準側算出部に比べて前記上限値がブロア風量の多い値として定められているとともに、前記高基準側算出部の前記基準温度よりも低温側の温度域において、前記低基準側算出部に比べて前記可変制御量としてブロア風量の少ない制御量が算出されるものとなっており、
前記風量制御部は、
前記各制御量算出部により算出されたブロア制御量のうちブロア風量が最大となるブロア制御量を用いてブロア風量を制御する電源機器の冷却制御装置(23)。
【請求項2】
前記各制御量算出部は、前記可変制御量を、前記基準温度と、前記温度取得部により取得された前記電源機器の実温度との差に基づくフィードバック演算により、前記基準温度からの実温度の変化を抑える制御量として算出する請求項
1に記載の電源機器の冷却制御装置。
【請求項3】
前記制御量算出部ごとの前記ブロア制御量として、当該制御量算出部ごとの前記基準温度に対応する基準制御量が定められており、
前記複数の制御量算出部のうち、前記基準温度が最も低い制御量算出部では、前記基準制御量は、当該制御量算出部に定められた前記上限値よりも小さい制御量であり、
前記複数の制御量算出部のうち、前記基準温度が最も低い制御量算出部を除く制御量算出部では、前記基準制御量は、前記制御量算出部ごとに定められた前記上限値よりも小さい制御量であり、かつ前記複数の制御量算出部で各々定められた前記基準温度の比較において基準温度の低い他の前記制御量算出部の前記上限値に一致する制御量であって、前記他の前記制御量算出部が複数ある場合にはそのうち前記基準温度が最も高い制御量算出部の前記上限値に一致する制御量である請求項1又は2に記載の電源機器の冷却制御装置。
【請求項4】
前記複数の制御量算出部のうち並行して前記ブロア制御量の算出を行う制御量算出部を、前記電源機器の実温度に応じて切り替える構成とした請求項1~
3のいずれか1項に記載の電源機器の冷却制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電源機器の冷却制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両にはバッテリや電力変換器等の電源機器が搭載されており、その電源機器では作動時に発熱を伴うため、電源機器を冷却する技術が各種提案されている。例えば特許文献1には、蓄電機構を冷却するための冷却ファンを搭載した車両の制御装置において、車室内の騒音に関する情報に基づいて冷却ファンの作動を制限するとともに、冷却ファンの作動が制限されている場合に、蓄電機構に関する情報に基づいて温度が高ければブロアからの風量を増やすように制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車両においては、バッテリ等における電力の入出力が頻繁に行われ、それに伴い電力変換器の作動も頻繁となる。そのため、バッテリや電力変換器での温度変化が繰り返し生じることが考えられる。この場合、バッテリや電力変換器に対して送風を行うブロアの風量変化に起因して騒音が生じることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ブロアの作動に伴う騒音を抑制しつつ、電源機器の冷却を適正に実施することができる電源機器の冷却制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
手段1は、
電源機器と、その電源機器を冷却する冷却風を生成するブロアとを備える冷却システムに適用され、
前記電源機器の実際の温度を実温度として取得する温度取得部と、
前記温度取得部により取得された前記電源機器の実温度に基づいてブロア制御量を算出する複数の制御量算出部と、
前記複数の制御量算出部により並行して算出されたブロア制御量のいずれかを選択的に用いてブロア風量を制御する風量制御部と、を備え、
前記各制御量算出部は、当該制御量算出部ごとに、前記電源機器の基準温度が各々定められ、その基準温度と前記電源機器の実温度とに応じて可変制御量を算出するとともに、その可変制御量を、前記制御量算出部ごとに異なる上限値により制限することで前記ブロア制御量を算出するものであり、
前記基準温度が高い制御量算出部では、前記基準温度が低い制御量算出部に比べて、前記可変制御量としてブロア風量の少ない制御量が算出される一方、前記上限値がブロア風量の多い値として定められており、
前記風量制御部は、前記電源機器の実温度に応じて、前記各制御量算出部により算出されたブロア制御量のいずれかを用いてブロア風量を制御する。
【0007】
上記構成では、複数の制御量算出部が設けられており、それら各制御量算出部により電源機器の実温度に基づいて互いに異なるブロア制御量がそれぞれ算出され、同時進行で算出されたブロア制御量のいずれかを選択的に用いてブロア風量が制御される。詳しくは、各制御量算出部では、制御量算出部ごとの基準温度と電源機器の実温度とに応じて可変制御量が算出されるとともに、その可変制御量が、制御量算出部ごとに異なる上限値により制限されることでブロア制御量が算出される。この場合、複数の制御量算出部で算出された各ブロア制御量は、可変制御量により電源機器の実温度に追従して変化する一方で、制御量算出部ごとの上限値により一定値で保持されるものとなる。そのため、ブロア風量を電源機器の温度変化に追従させつつも、ブロア風量の過剰な変動が抑制される。
【0008】
また、各制御量算出部では、電源機器の基準温度が互いに異なり、基準温度が高い制御量算出部では、基準温度が低い制御量算出部に比べて、可変制御量としてブロア風量の少ない制御量が算出される一方、上限値がブロア風量の多い値として定められている。そして、電源機器の実温度に応じて、各制御量算出部により算出されたブロア制御量のいずれかを用いてブロア風量が制御される。これにより、電源機器の温度が上昇変化又は下降変化する場合に、基準温度ごとに段階を持たせてブロア風量を制御することができる。
【0009】
また、電源機器では、通電状況に応じて急な温度変化が生じることが考えられ、その急な温度変化に対応させてブロアの風量制御が行われることが望ましい。この点、上記構成では、複数の制御量算出部でそれぞれブロア制御量が算出され、同時進行で算出された各ブロア制御量が電源機器の実温度に応じて切り替えられつつ使い分けられる。これにより、急な温度変化に際し迅速かつ適切な対応が可能になっている。
【0010】
上記構成によるブロア風量制御について
図9を用いて補足する。
図9には、複数の制御量算出部により算出される各ブロア制御量について電源機器の温度との関係が示されている。ここでは、3つの制御量算出部を用いる構成としており、制御量算出部ごとのブロア制御量Dとして、実線で示すブロア制御量D1と、一点鎖線で示すブロア制御量D2と、二点鎖線で示すブロア制御量D3とが算出される。3つの制御量算出部のうち、ブロア制御量D1を算出する制御量算出部が、最も基準温度の低い制御量算出部であり、ブロア制御量D3を算出する制御量算出部が、最も基準温度の高い制御量算出部である。
【0011】
各ブロア制御量D1~D3は、それぞれ以下に示す制御量である。
・ブロア制御量D1は、所定の低温側温度を基準温度とし電源機器の実温度に応じて算出された可変制御量Dfb1を、上限値Lm1により制限することで求められた制御量である。
・ブロア制御量D2は、所定の中間温度を基準温度とし電源機器の実温度に応じて算出された可変制御量Dfb2を、上限値Lm2により制限することで求められた制御量である。
・ブロア制御量D3は、所定の高温側温度を基準温度とし電源機器の実温度に応じて算出された可変制御量Dfb3を、上限値Lm3により制限することで求められた制御量である。
【0012】
この場合、例えばブロア制御量D1,D2で言えば、適用温度域の高いブロア制御量D2の可変制御量Dfb2が、適用温度域の低いブロア制御量D1の可変制御量Dfb1よりも小さい制御量(ブロア風量の少ない制御量)として算出される。また、ブロア制御量D2の上限値Lm2が、ブロア制御量D1の上限値Lm1よりも大きい制御量(ブロア風量の多い制御量)となっている。ブロア制御量D2,D3についても同様である。そして、ブロア制御量D1~D3ごとの適用温度域に応じて、各ブロア制御量D1~D3が適宜使い分けられる。
【0013】
以上により、ブロアの作動に伴う騒音を抑制しつつ、電源機器の冷却を適正に実施することができる。
【0014】
手段2では、手段1において、前記風量制御部は、前記各制御量算出部により算出されたブロア制御量のうちブロア風量が最大となるブロア制御量を用いてブロア風量を制御する。
【0015】
上記構成では、各制御量算出部により算出されたブロア制御量のうちブロア風量が最大となるブロア制御量によりブロア風量が制御されるため、制御量算出部ごとのブロア制御量の切り替えを要する境界温度域にあってもブロア風量の不足を抑制しつつ、電源機器を適正に冷却することができる。つまり、適正なブロア風量は電源機器の温度変化に伴って逐次変化するが、電源機器の温度変化に対応させつつ適正なブロア風量の設定が可能となっている。
【0016】
手段3では、手段1又は2において、前記各制御量算出部は、前記可変制御量を、前記基準温度と、前記温度取得部により取得された前記電源機器の実温度との差に基づくフィードバック演算により、前記基準温度からの実温度の変化を抑える制御量として算出する。
【0017】
上記構成によれば、電源機器の実温度について基準温度からの温度変化を抑制することができ、その温度変化の抑制により過度な風量変動を抑制することができる。これにより、ブロア風量を安定させ、ひいては騒音抑制を図ることができる。
【0018】
手段4では、手段1~3のいずれかにおいて、前記制御量算出部ごとの前記ブロア制御量として、当該制御量算出部ごとの前記基準温度に対応する基準制御量が定められており、前記基準制御量は、前記各制御量算出部において前記上限値よりも小さい制御量であり、かつ前記基準温度の低い他の前記制御量算出部の前記上限値に一致する制御量である。
【0019】
上記構成によれば、各制御量算出部において、基準温度に対応する基準制御量が、上限値よりも小さく、かつ基準温度の低い他の制御量算出部の上限値に一致する制御量となっている。これにより、各制御量算出部で算出されたブロア制御量が電源機器の実温度に応じて切り替えられる際に、ブロア制御量を段差無くスムーズに変化させることができる。そのため、ブロア風量を好適に管理することができ、ひいてはブロア風量の変動に起因する騒音の抑制が可能になっている。
【0020】
手段5では、手段1~4のいずれかにおいて、前記複数の制御量算出部のうち並行して前記ブロア制御量の算出を行う制御量算出部を、前記電源機器の実温度に応じて切り替える構成とした。
【0021】
複数の制御量算出部においてブロア制御量の算出を全て並行して行う場合には、演算負荷の増加が懸念される。この点、複数の制御量算出部のうち並行してブロア制御量の算出を行う制御量算出部を、電源機器の実温度に応じて切り替えることにより、演算負荷の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】制御部のブロア風量制御に関する構成を示す機能ブロック図。
【
図3】各算出部により算出されるデューティ比を示す図。
【
図4】ブロア風量制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図5】冷却状態監視の処理手順を示すフローチャート。
【
図6】電力変換器の温度変化とブロア風量の推移とを示すタイムチャート。
【
図7】電力変換器の温度変化とブロア風量の推移とを示すタイムチャート。
【
図8】算出部の切り替え手順を示すフローチャート。
【
図9】複数の制御量算出部により算出される各ブロア制御量について電力変換器の温度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、車両に搭載される電源装置において電力変換器の冷却を行う冷却システムを具体化するものとしている。車両は例えば電気自動車であり、高電圧バッテリからの電力供給に伴う回転電機の駆動により車両の走行が可能となっている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0024】
図1は、車両電源装置の概略を示す構成図である。
図1において、高電圧バッテリ11には回転電機ユニット12が接続されている。高電圧バッテリ11は、数100V(例えば300V程度)の高電圧電源である。不図示とするが、回転電機ユニット12は、車両の走行動力源となる回転電機や、高電圧バッテリ11の電圧を昇圧変換する電力変換器、直流と交流との電力変換を行うインバータなどを備えている。
【0025】
また、高電圧バッテリ11には電力変換ユニット20が接続され、その電力変換ユニット20には低電圧電源である低電圧バッテリ31と、車両補機である低電圧負荷32とが接続されている。電力変換ユニット20は、DCDCコンバータである電力変換器21を備えており、電力変換器21により、高電圧バッテリ11の高電圧が降圧変換されて低電圧バッテリ31の充電が行われる。電力変換ユニット20は、車両において車室に隣接する場所に設けられ、例えばリアシート下方に設けられている。本実施形態では、電力変換器21が「電源機器」に相当する。
【0026】
電力変換ユニット20において電力変換器21は、複数の半導体スイッチング素子を有してなるスイッチ駆動部22と、そのスイッチ駆動部22でのスイッチングによる電力変換を制御する制御部23とを備えている。低電圧バッテリ31の充電時には、電力変換器21において制御部23によりスイッチ駆動部22でのスイッチングが制御され、電力変換器21からの電力供給により低電圧バッテリ31が所定電圧に充電される。
【0027】
また、電力変換ユニット20は、冷却装置としてのブロア25と、そのブロア25を駆動する駆動部26とを有しており、ブロア25の駆動に伴い生じる冷却風により電力変換器21が冷却される。ブロア25は、駆動部26の駆動量に応じて風量を可変とする風量可変ブロアである。電力変換ユニット20の作動時にはスイッチ駆動部22でのスイッチングに伴い発熱が生じるため、その発熱による温度上昇を抑えるべく、ブロア25による空気冷却が行われる。
【0028】
制御部23は、電力変換器21に設けられた温度センサ27の温度検出値を入力し、その温度検出値に基づいてブロア25の風量を制御する。温度センサ27は、例えば電力変換器21においてスイッチ駆動部22に一体に、又はスイッチ駆動部22の近傍に設けられている。具体的には、制御部23は、温度検出値(電力変換器21の実温度)に基づいて制御デューティを算出し、その制御デューティに応じて駆動部26によりブロア25を駆動させることでブロア風量を制御する。
【0029】
次に、本実施形態におけるブロア風量制御について詳しく説明する。本実施形態では、制御部23が、電力変換器21の実際の温度を実温度として取得する温度取得部と、その電力変換器21の実温度に基づいてブロア制御量を算出する複数の制御量算出部と、複数の制御量算出部により算出されたブロア制御量のいずれかを選択的に用いてブロア風量を制御する風量制御部と、を備えるものとなっている。
【0030】
図2は、制御部23のブロア風量制御に関する構成を示す機能ブロック図である。
図2の構成では、制御部23は、ブロア風量を制御するブロア制御量Dとして、第1デューティ比D1と第2デューティ比D2と第3デューティ比D3とを算出し、それら各デューティ比D1~D3のいずれかに基づいてブロア25の風量制御を行うものとしている。
【0031】
具体的には、制御部23は、第1デューティ比D1を算出する第1算出部41と、第2デューティ比D2を算出する第2算出部42と、第3デューティ比D3を算出する第3算出部43とを有している。これら各算出部41~43では、算出部41~43ごとに電力変換器21の基準温度Trefが定められており、第1算出部41は、低温基準温度Tref1に基づいて第1デューティ比D1を算出し、第2算出部42は、中温基準温度Tref2に基づいて第2デューティ比D2を算出し、第3算出部43は、高温基準温度Tref3に基づいて第3デューティ比D3を算出する。例えば、低温基準温度Tref1は95℃であり、中温基準温度Tref2は105℃であり、高温基準温度Tref3は110℃である。本実施形態では、3つの算出部41~43が同時進行で各デューティ比D1~D3を算出する。各算出部41~43が「複数の制御量算出部」に相当する。
【0032】
詳しくは、第1算出部41では、電力変換器21の実温度(温度センサ27の検出温度)から低温基準温度Tref1を減算して温度偏差ΔT1を算出する(ΔT1=実温度-Tref1)。そして、その温度偏差ΔT1に基づいてフィードバック演算を実施し、電力変換器21の実温度に対応する可変デューティ比Dfb1を算出する。このとき、フィードバック演算値をデューティ比の増減値として算出し、その演算値を可変デューティ比Dfb1の前回値に加算した値を、可変デューティ比Dfb1の今回値にするとよい。
【0033】
また、第1算出部41では、温度偏差ΔT1に基づき算出した可変デューティ比Dfb1を予め定めた制限値で制限することで、第1デューティ比D1を算出する。本実施形態では、制限値Lmとして4つの制限値Lm0,Lm1,Lm2,Lm3(Lm0<Lm1<Lm2<Lm3)が定められており、第1算出部41では、制限値Lm0を下限値、制限値Lm1を上限値として可変デューティ比Dfb1を制限し、その制限後の値を第1デューティ比D1とする。
【0034】
なお、各制限値Lm0~Lm3は、ブロア25における複数の基準風量に対応して定められている。例えば、制限値Lm0は、ブロア風量=30m^3/hに対応するデューティ比であり、制限値Lm1は、ブロア風量=40m^3/hに対応するデューティ比であり、制限値Lm2は、ブロア風量=60m^3/hに対応するデューティ比であり、制限値Lm3は、最大ブロア風量に対応するデューティ比である。
【0035】
第1算出部41により算出される第1デューティ比D1を
図3(a)に示す。この場合、低温基準温度Tref1を基準とし、かつ電力変換器21の実温度の上昇に応じて単調増加するようにして可変デューティ比Dfb1が算出されるとともに、その可変デューティ比Dfb1が、制限値Lm0を下限値、制限値Lm1を上限値として制限されて、第1デューティ比D1が算出される。なお、可変デューティ比Dfb1は、電力変換器21の実温度と低温基準温度Tref1とが一致する場合、すなわち温度偏差ΔT1がゼロの場合に制限値Lm0となるようにしてフィードバック演算されるようになっている。
【0036】
第1算出部41では、低温基準温度Tref1に対応する基準制御量が制限値Lm0となっており、電力変換器21の実温度が低温基準温度Tref1から高温側に上昇する場合において、少なくとも制限値Lm0から制限値Lm1(第1算出部41での上限値)までを含む範囲で、第1デューティ比D1として可変デューティ比Dfb1が算出される。
【0037】
また、
図2において、第2算出部42では、電力変換器21の実温度から中温基準温度Tref2を減算して温度偏差ΔT2を算出する(ΔT2=実温度-Tref2)。そして、その温度偏差ΔT2に基づいてフィードバック演算を実施し、電力変換器21の実温度に対応する可変デューティ比Dfb2を算出する。このとき、フィードバック演算値をデューティ比の増減値として算出し、その演算値を可変デューティ比Dfb2の前回値に加算した値を、可変デューティ比Dfb2の今回値にするとよい。
【0038】
また、第2算出部42では、温度偏差ΔT2に基づき算出した可変デューティ比Dfb2を予め定めた制限値で制限することで、第2デューティ比D2を算出する。第2算出部42では、制限値Lm0を下限値、制限値Lm2を上限値として可変デューティ比Dfb2を制限し、その制限後の値を第2デューティ比D2とする。
【0039】
第2算出部42により算出される第2デューティ比D2を
図3(b)に示す。この場合、中温基準温度Tref2を基準とし、かつ電力変換器21の実温度の上昇に応じて単調増加するようにして可変デューティ比Dfb2が算出されるとともに、その可変デューティ比Dfb2が、制限値Lm0を下限値、制限値Lm2を上限値として制限されて、第2デューティ比D2が算出される。なお、可変デューティ比Dfb2は、電力変換器21の実温度と中温基準温度Tref2とが一致する場合、すなわち温度偏差ΔT2がゼロの場合に制限値Lm
1となるようにしてフィードバック演算されるようになっている。
【0040】
第2算出部42では、中温基準温度Tref2に対応する基準制御量が制限値Lm1となっており、電力変換器21の実温度が中温基準温度Tref2から高温側に上昇する場合において、少なくとも制限値Lm1から制限値Lm2(第2算出部42での上限値)までを含む範囲で、第2デューティ比D2として可変デューティ比Dfb2が算出される。また、第2算出部42では、中温基準温度Tref2に対応する基準制御量が、その第2算出部42の上限値である制限値Lm2よりも小さく、かつ第1算出部41の上限値である制限値Lm1に一致するものとなっている。
【0041】
また、
図2において、第3算出部43では、電力変換器21の実温度から高温基準温度Tref3を減算して温度偏差ΔT3を算出する(ΔT3=実温度-Tref3)。そして、その温度偏差ΔT3に基づいてフィードバック演算を実施し、電力変換器21の実温度に対応する可変デューティ比Dfb3を算出する。このとき、フィードバック演算値をデューティ比の増減値として算出し、その演算値を可変デューティ比Dfb3の前回値に加算した値を、可変デューティ比Dfb3の今回値にするとよい。
【0042】
また、第3算出部43では、温度偏差ΔT3に基づき算出した可変デューティ比Dfb3を予め定めた制限値で制限することで、第3デューティ比D3を算出する。第3算出部43では、制限値Lm0を下限値、制限値Lm3を上限値として可変デューティ比Dfb3を制限し、その制限後の値を第3デューティ比D3とする。
【0043】
第3算出部43により算出される第3デューティ比D3を
図3(c)に示す。この場合、高温基準温度Tref3を基準とし、かつ電力変換器21の実温度の上昇に応じて単調増加するようにして可変デューティ比Dfb3が算出されるとともに、その可変デューティ比Dfb3が、制限値Lm0を下限値、制限値Lm3を上限値として制限されて、第3デューティ比D3が算出される。なお、可変デューティ比Dfb3は、電力変換器21の実温度と高温基準温度Tref3とが一致する場合、すなわち温度偏差ΔT3がゼロの場合に制限値Lm
2となるようにしてフィードバック演算されるようになっている。
【0044】
第3算出部43では、高温基準温度Tref3に対応する基準制御量が制限値Lm2となっており、電力変換器21の実温度が高温基準温度Tref3から高温側に上昇する場合において、少なくとも制限値Lm2から制限値Lm3(第3算出部43での上限値)までを含む範囲で、第3デューティ比D3として可変デューティ比Dfb3が算出される。
また、第3算出部43では、高温基準温度Tref3に対応する基準制御量が、その第3算出部43の上限値である制限値Lm3よりも小さく、かつ第2算出部42の上限値である制限値Lm2に一致するものとなっている。
【0045】
各算出部41~43のうち基準温度が高い算出部では、基準温度が低い算出部に比べて、可変デューティ比Dfb1~Dfb3として小さいデューティ比(ブロア風量の少ないデューティ比)が算出されるようになっている。また、各算出部41~43のうち基準温度が高い算出部では、基準温度が低い算出部に比べて、デューティ比D1~D3の上限値が大きい値(ブロア風量の多い値)として定められている。
【0046】
なお、第2算出部42において、制限値Lm0を第2デューティ比D2の下限値にすることに代えて、制限値Lm1を第2デューティ比D2の下限値にすることも可能である。また、第3算出部43において、制限値Lm0を第3デューティ比D3の下限値にすることに代えて、制限値Lm1又は制限値Lm2を第3デューティ比D3の下限値にすることも可能である。
【0047】
図2において、各算出部41~43により算出されたデューティ比D1~D3は、駆動部26に対するデューティ指令値DFを設定する指令値設定部44に入力される。指令値設定部44では、デューティ比D1~D3のうち最大値(最大デューティ比)を、デューティ指令値DFとして設定する。駆動部26では、デューティ指令値DFに基づいてブロア25を駆動させる。これにより、ブロア25の風量が適宜調整される。
【0048】
各デューティ比D1~D3はそれぞれ
図3(a)~(c)のように算出され、各デューティ比D1~D3のうち最大値となるデューティ比が電力変換器21の温度範囲に応じて切り替えられる。この場合、電力変換器21の実温度が中温基準温度Tref2未満となる温度範囲では、第1デューティ比D1がデューティ指令値DFとして設定される。また、電力変換器21の実温度が中温基準温度Tref2以上であり、かつ高温基準温度Tref3未満となる温度範囲では、第2デューティ比D2がデューティ指令値DFとして設定される。さらに、電力変換器21の実温度が高温基準温度Tref3以上となる温度範囲では、第3デューティ比D3がデューティ指令値DFとして設定される。
【0049】
なお、各算出部41~43において、可変デューティ比Dfb1~Dfb3を算出するためのフィードバック演算は、例えばPI制御、PD制御、PID制御のいずれかが実施されるとよい。可変デューティ比Dfb1~Dfb3が「可変制御量」に相当する。上記構成では、制御部23が3つの算出部41~43(制御量算出部)を備えるものとしたが、その数は2以上の任意でよく、4つ以上の算出部(制御量算出部)を備えるものであってもよい。
【0050】
図4は、ブロア風量制御の処理手順を示すフローチャートであり、本処理は制御部23により所定周期で繰り返し実施される。
【0051】
図4において、ステップS11では、温度センサ27の検出温度を電力変換器21の実温度として取得する。その後、ステップS12~S14では、互いに同時進行させつつ各デューティ比D1~D3の算出が行われる。つまり、ステップS12では、電力変換器21の実温度と低温基準温度Tref1とに基づいて第1デューティ比D1を算出し、ステップS13では、電力変換器21の実温度と中温基準温度Tref2とに基づいて第2デューティ比D2を算出し、ステップS14では、電力変換器21の実温度と高温基準温度Tref3とに基づいて第3デューティ比D3を算出する。これら各デューティ比D1~D3の算出手順は既述とのとおりである。
【0052】
その後、ステップS15では、デューティ比D1~D3のうち最大値をデューティ指令値DFとして設定する。続くステップS16では、デューティ指令値DFを駆動部26に出力する。
【0053】
また、ブロア25による電力変換器21の冷却時において、ブロア25の送風に関して何らかの異常が生じていると適正な冷却が実施できず、スイッチ駆動部22でのスイッチング素子の破損等が懸念される。そのため、制御部23は、ブロア25による冷却状態を監視し、ブロア25の送風による電力変換器21の冷却が適正に実施されていない場合に、スイッチ駆動部22の保護等を図るべく、電力変換器21の出力制限を実施する。
【0054】
図5は、ブロア風量制御と連動して実施される冷却状態監視の処理手順を示すフローチャートであり、本処理は制御部23により所定周期で繰り返し実施される。
【0055】
図5において、ステップS21では、温度センサ27の検出温度を電力変換器21の実温度として取得する。その後、ステップS22では、ブロア25の風量指令値であるデューティ指令値DFの増加にかかわらず所定の温度上昇が生じている状況であるか否かを判定する。このとき、現時点から遡って過去の所定期間内にデューティ指令値DFが増加し、かつそのデューティ指令値DFの増加にかかわらず電力変換器21の実温度が所定値以上上昇していれば、ステップS22が肯定され、ステップS23に進む。
【0056】
ステップS23では、現時点で電力変換器21の出力制限を実施しているか否かを判定する。そして、電力変換器21の出力制限を実施していなければ、ステップS24に進み、電力変換器21の出力制限を実施する。具体的には、電力変換器21から出力される出力電流を減少させる。このとき、電力変換器21の実温度、又は温度上昇の程度に応じて、電力変換器21の出力制限の度合いを可変に設定するとよく、例えば電力変換器21の実温度が高いほど、又は所定期間内の温度上昇量や温度上昇の傾きが大きいほど、電力変換器21の出力電流の減少幅を大きくする。
【0057】
また、ステップS23において電力変換器21の出力制限を実施していると判定された場合には、ステップS25に進む。ステップS25では、ブロア25の送風に関して何らかの異常が生じていると判定する。例えば、電力変換器21においてブロア25の送風通路が形成されている場合には、その送風通路に詰まりが生じていると判定する。また、続くステップS26では、電力変換器21の作動を停止させるとともに、上位の制御装置に対して電力変換器21において異常が生じている旨を通知する。
【0058】
次に、車両の起動スイッチのオン後(すなわち車両起動後)における電力変換器21の実温度の変化と、その温度変化に応じたブロア風量の推移とについて、
図6及び
図7のタイムチャートを用いてより具体的に説明する。
図6は、電力変換器21の作動開始後において電力変換器21の実温度が基準温度Tref2~Tref3(105~110℃の間)の間で安定する場合の挙動を示すタイムチャートである。また、
図7は、電力変換器21の作動開始後において電力変換器21の実温度が低温基準温度Tref1未満(95℃未満)の温度で安定する場合の挙動を示すタイムチャートである。
【0059】
図6において、タイミングt11では、車両の起動後において電力変換器21の作動が開始され、それに伴い電力変換器21の実温度が徐々に上昇する。本例では、電力変換器21の温度が周囲の環境温度と同じ温度(例えば25℃)から徐々に上昇するものとしている。
【0060】
タイミングt11~t12では、電力変換器21の実温度が低温基準温度Tref1未満になっており、各デューティ比D1~D3のうち第1デューティ比D1がデューティ指令値DFとして設定される。つまり、第1デューティ比D1は制限値Lm0で制限されており、ブロア風量が制限値Lm0に対応する「30m^3/h」となっている。このとき、ブロア風量が一定のまま保持されるため、風量変動により生じるうねり等の騒音が抑制されるものとなっている。
【0061】
その後、タイミングt12では、電力変換器21の実温度が上昇し低温基準温度Tref1(95℃)に到達する。これにより、タイミングt12以降において、実温度と低温基準温度Tref1との温度偏差ΔT1に基づき算出された可変デューティ比Dfb1が制限値Lm0よりも大きくなり、可変デューティ比Dfb1がデューティ指令値DFとして設定される。
【0062】
タイミングt12以降においては、ブロア風量が徐々に増加し、その風量増加に伴い電力変換器21の実温度の上昇率(単位時間当たりの温度上昇量)が減じられる。つまり、電力変換器21の実温度が低温基準温度Tref1から高温側に上昇する。このとき、電力変換器21の実温度に応じてデューティ指令値DFが増加し、低温基準温度Tref1からの温度上昇が抑制されるようにしてブロア風量制御が行われる。
【0063】
その後、タイミングt13では、第1デューティ比D1が制限値Lm1で制限され、そのタイミングt13以降、ブロア風量が制限値Lm1に対応する「40m^3/h」で保持される。これにより、ブロア風量が再び安定する。
【0064】
その後、タイミングt14では、電力変換器21の実温度が中温基準温度Tref2(105℃)に到達する。これにより、タイミングt14以降において、実温度と中温基準温度Tref2との温度偏差ΔT2に基づき算出された可変デューティ比Dfb2が制限値Lm1よりも大きくなり、可変デューティ比Dfb2がデューティ指令値DFとして設定される。
【0065】
タイミングt14では、デューティ指令値DFが第1デューティ比D1から第2デューティ比D2に切り替えられる。このとき、これら各デューティ比D1,D2は、第1算出部41及び第2算出部42により同時進行で算出されており、第1デューティ比D1から第2デューティ比D2への切り替えがスムーズにかつ応答性良く実施される。
【0066】
タイミングt14以降においては、ブロア風量が徐々に増加し、その風量増加に伴い電力変換器21の実温度の上昇率が更に減じられる。つまり、電力変換器21の実温度が中温基準温度Tref2から高温側に上昇する。このとき、電力変換器21の実温度に応じてデューティ指令値DFが増加し、中温基準温度Tref2からの温度上昇が抑制されるようにしてブロア風量制御が行われる。そしてその後、電力変換器21の実温度が基準温度Tref2~Tref3の間で安定する。
【0067】
また、
図7において、タイミングt21では、車両の起動後において電力変換器21の作動が開始され、それに伴い電力変換器21の実温度が徐々に上昇する。タイミングt21~t22では、電力変換器21の実温度が低温基準温度Tref1未満になっており、各デューティ比D1~D3のうち第1デューティ比D1がデューティ指令値DFとして設定される。このとき、ブロア風量が一定量で保持される。
【0068】
その後、タイミングt22以降は、電力変換器21の実温度が低温基準温度Tref1(95℃)以上となる。そのため、実温度と低温基準温度Tref1との温度偏差ΔT1に基づき算出された可変デューティ比Dfb1が制限値Lm0よりも大きくなり、可変デューティ比Dfb1がデューティ指令値DFとして設定される。これにより、ブロア風量が徐々に増加し、その風量増加に伴い電力変換器21の実温度の上昇率が減じられる。また、タイミングt23以降、第1デューティ比D1が制限値Lm1で制限されることで、ブロア風量が一定量で保持される。
【0069】
図7に示す事例では、タイミングt23以降において、電力変換器21の実温度が上昇から下降に転じる。そのため、タイミングt24では、電力変換器21の実温度が再び低温基準温度Tref1未満となり、可変デューティ比Dfb1が制限値Lm1よりも小さくなることで、可変デューティ比Dfb1が再びデューティ指令値DFとして設定される。そしてその後、電力変換器21の実温度が低温基準温度Tref1未満の温度で安定する。
【0070】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0071】
制御部23において、各算出部41~43が、算出部41~43ごとの基準温度Tref1~Tref3と電力変換器21の実温度とに応じて可変デューティ比Dfb1~Dfb3を算出するとともに、その可変デューティ比Dfb1~Dfb3を、算出部41~43ごとに異なる上限値Lm1~Lm3により制限することで、各デューティ比D1~D3を算出するようにした。この場合、複数の算出部41~43で算出された各デューティ比D1~D3は、可変デューティ比Dfb1~Dfb3により電力変換器21の実温度に追従して変化する一方で、算出部41~43ごとの上限値により一定値で保持されるものとなる。そのため、ブロア風量を電力変換器21の温度変化に追従させつつも、ブロア風量の過剰な変動が抑制される。
【0072】
また、各算出部41~43では、電力変換器21の基準温度Tref1~Tref3が互いに異なり、基準温度が高い算出部では、基準温度が低い算出部に比べて、可変デューティ比として小さい値が算出される一方、上限値がブロア風量の多い値として定められている構成とした。そして、電力変換器21の実温度に応じて、各算出部41~43により算出されたデューティ比D1~D3のいずれかを用いてブロア風量を制御する構成とした。これにより、電力変換器21の温度が上昇変化又は下降変化する場合に、基準温度ごとに段階を持たせてブロア風量を制御することができる。
【0073】
また、電力変換器21では、電力変換動作に伴い急な温度変化が生じることが考えられ、その急な温度変化に対応させてブロア25の風量制御が行われることが望ましい。この点、上記構成では、複数の算出部41~43でそれぞれデューティ比D1~D3が算出され、それら各デューティ比D1~D3が電力変換器21の実温度に応じて切り替えられつつ適宜使い分けられる。これにより、急な温度変化に際し迅速かつ適切な対応が可能になっている。
【0074】
以上により、ブロア風量の作動に伴う不快な騒音を抑制しつつ、電力変換器21の冷却を適正に実施することができる。
【0075】
各算出部41~43により算出されたデューティ比D1~D3のうちブロア風量が最大となるデューティ比D1~D3を用いてブロア風量を制御する構成とした。これにより、算出部41~43ごとのデューティ比D1~D3の切り替えを要する境界温度域にあってもブロア風量の不足を抑制しつつ、電力変換器21を適正に冷却することができる。つまり、適正なブロア風量は電力変換器21の温度変化に伴って逐次変化するが、電力変換器21の温度変化に対応させつつ適正なブロア風量の設定が可能となっている。
【0076】
各算出部41~43が、基準温度と電力変換器21の実温度との差に基づくフィードバック演算により可変デューティ比Dfb1~Dfb3を算出する構成とした。この可変デューティ比Dfb1~Dfb3によれば、電力変換器21の実温度について基準温度からの温度変化を抑制することができ、その温度変化の抑制により過度な風量変動を抑制することができる。これにより、ブロア風量を安定させ、ひいては騒音抑制を図ることができる。
【0077】
第2算出部42及び第3算出部43において、基準温度に対応する基準制御量(Lm1,Lm2)を、上限値よりも小さく、かつ基準温度の低い他の算出部の上限値に一致する制御量とした。これにより、各算出部41~43で算出されたデューティ比D1~D3(ブロア制御量)が電力変換器21の実温度に応じて切り替えられる際に、デューティ比D1~D3を段差無くスムーズに変化させることができる。そのため、ブロア風量を好適に管理することができ、ひいてはブロア風量の変動に起因する騒音の抑制が可能になっている。
【0078】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0079】
・上記実施形態では、制御部23において、第1算出部41が制限値Lm0~Lm1の範囲で第1デューティ比D1を制限し、第2算出部42が制限値Lm0~Lm2の範囲で第2デューティ比D2を制限し、第3算出部43が制限値Lm0~Lm3の範囲で第3デューティ比D3を制限する構成としたが(
図3(a)~(c)参照)、これを変更してもよい。例えば、各算出部41~43において、各デューティ比D1~D3の制限として上限制限のみを付与する構成としてもよい。この場合、各デューティ比D1~D3は、
図9に示すように算出されるとよい。
【0080】
・各算出部41~43において、可変制御値である可変デューティ比Dfb1~Dfb1を、フィードバック演算により算出されるフィードバック制御量でなく、マップ等を用いて算出される制御量としてもよい。
【0081】
・3つの算出部41~43のうち、ブロア制御量であるデューティ比を同時進行で算出する算出部を、電力変換器21の実温度に応じて切り替える構成としてもよい。この場合、例えば電力変換器21の温度範囲として、
・基準温度Tref1未満を第1温度範囲、
・基準温度Tref1~Tref2の範囲を第2温度範囲、
・基準温度Tref2~Tref3の範囲を第3温度範囲、
・基準温度Tref3以上を第4温度範囲、
を定めておき、電力変換器21の実温度がいずれの温度範囲に入っているかに応じて算出部の切り替えを行う構成とする。
【0082】
具体的には、
図8に示す切り替え処理が制御部23により実施されるとよい。
図8において、ステップS31では、電力変換器21の実温度が第1温度範囲に入っているか否かを判定し、ステップS32では、電力変換器21の実温度が第2温度範囲に入っているか否かを判定し、ステップS33では、電力変換器21の実温度が第3温度範囲に入っているか否かを判定する。そして、ステップS31がYESであればステップS34に進み、ステップS32がYESであればステップS35に進み、ステップS33がYESであればステップS36に進み、ステップS33がNOであればステップS37に進む。
【0083】
ステップS34では、第1算出部41のみでデューティ比を算出する。ステップS35では、第1算出部41及び第2算出部42でデューティ比を算出する。ステップS36では、第2算出部42及び第3算出部43でデューティ比を算出する。ステップS37では、第3算出部43のみでデューティ比を算出する。
【0084】
複数の算出部41~43においてブロア制御量の算出を全て並行して行う場合には、演算負荷の増加が懸念される。この点、複数の算出部41~43のうち並行してブロア制御量の算出を行う算出部を、電力変換器21の実温度に応じて切り替えることにより、演算負荷の軽減を図ることができる。
【0085】
・上記実施形態では、各算出部41~43により算出されたデューティ比D1~D3のうちブロア風量が最大となるデューティ比をデューティ指令値DFとして用い、そのデューティ指令値DFによりブロア風量を制御する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、制御部23が、電力変換器21の温度に基づいて各デューティ比D1~D3を切り替えて使い分ける構成としてもよい。
【0086】
・上記実施形態では、電力変換器21の温度を、電力変換器21のスイッチ駆動部22に一体に、又はスイッチ駆動部22の近傍に設けた温度センサ27により検出する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、電力変換器21の外部に設けられた温度センサの検出値から電力変換器21の温度を推定する構成であってもよい。また、電力変換器21のスイッチ駆動部22における通電量に基づいて、電力変換器21の温度を推定する構成であってもよい。
【0087】
・電力変換器21において複数箇所で温度を検出し、その複数の温度検出値に基づいてブロア風量制御を実施する構成としてもよい。この場合、複数の温度検出値の平均値に基づいてブロア風量制御を実施する構成や、複数の温度検出値のうち最大温度に基づいてブロア風量制御を実施する構成、複数の温度検出値のうち上昇率が最大となる温度に基づいてブロア風量制御を実施する構成、複数の温度検出値のうち上昇率が最小となる温度以外の温度に基づいてブロア風量制御を実施する構成などを採用することが可能である。
【0088】
・上記実施形態では、電源機器としての電力変換器21を冷却対象としてブロア25の風量制御を実施する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、電源機器としての高電圧バッテリ11を冷却対象としてブロアの風量制御を実施する構成としてもよい。
【0089】
・本発明は、電気自動車以外への適用も可能であり、例えばハイブリッド自動車への適用が可能である。また、車両以外の電源装置への適用も可能である。
【0090】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
11…高電圧バッテリ、21…電力変換器、23…制御部、25…ブロア。