(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】感放射線性組成物、表示装置用絶縁膜、表示装置、表示装置用絶縁膜の形成方法、及び重合体
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20240416BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240416BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240416BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240416BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240416BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240416BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240416BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20240416BHJP
C08G 8/28 20060101ALI20240416BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 501
G03F7/027
H05B33/14 A
H05B33/02
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/00 302
G09F9/00 366A
G09F9/00 338
C08G59/14
C08G8/28 B
C08F290/00
(21)【出願番号】P 2020101164
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋池 利之
(72)【発明者】
【氏名】奥村 佳久
(72)【発明者】
【氏名】田崎 太一
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-116112(JP,A)
【文献】特開2016-191905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/004
H10K 50/10
H05B 33/02
H10K 59/10
H05B 33/10
G09F 9/30
G09F 9/00
C08G 59/14
C08G 8/28
C08F 290/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A
)重量平均分子量が1,000から100,000である重合体であって、下記
式(7)で表される、重合体
(B)感放射線性ラジカル開始剤
(C)有機溶剤
を含む
表示装置の絶縁膜用感放射線
性組成物。
【化1】
(式(7)中、R
8
は、水素原子もしくはメチル基を示す。R
10
は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す。R
12
は、-R
7
-COOHまたは下記式で示される基を示す。R
7
は、メチレン基もしくは炭素数2から12のアルキレン基を示す。)
【化2】
【請求項2】
さらに、(D)重合性化合物を含む
、請求項
1に記載の
表示装置の絶縁膜用感放射線
性組成物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の
表示装置の絶縁膜用感放射線性組成物から形成され
た表示装置用絶縁膜。
【請求項4】
請求項
3の表示装置用絶縁膜を有する表示装置。
【請求項5】
有機エレクトロルミネッセンス装置である
、請求項
4の表示装置。
【請求項6】
タッチパネル付き有機エレクトロルミネッセンス装置である
、請求項
5の表示装置。
【請求項7】
基板上に直接又は間接に塗膜を形成する工程、
上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
上記塗膜を現像する工程、及び
上記塗膜を加熱する工程
をこの順に備え、上記塗膜を請求項1
または2に記載の
表示装置の絶縁膜用感放射線性組成物により形成する表示装置用絶縁膜の形成方法。
【請求項8】
上記基板が有機エレクトロルミネッセンス素子を含む
、請求項
7に記載の表示装置用絶縁膜の形成方法。
【請求項9】
上記加熱を60℃以上120℃以下の温度範囲で行う
、請求項
7又は請求項
8に記載の表示装置用絶縁膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物、表示装置用絶縁膜、表示装置、表示装置用絶縁膜の形成方法、及び重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発が進められている発光素子の一つとして、陽極層、有機発光層及び陰極層を含む積層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が知られている。有機EL素子を有する表示装置として、装置前面にタッチパネルが設けられたタッチパネル付き有機EL装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
タッチパネル付き有機EL装置は、例えば、タッチパネルを、粘着層又は接着層を介して、有機EL素子が形成された基板に貼り合わせて製造されている。タッチパネルは、通常、タッチパネル用支持基板上に、センサ電極等のタッチパネル部材を設けることにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、タッチパネルを、粘着層又は接着層を介して、有機EL素子が形成された基板に貼り合わせる場合、タッチパネル付き有機EL装置全体の厚さが大きくなる。厚さの大きい装置の場合、屈曲させたときに破損又は機能低下が生じやすくなる。また、各種表示装置においては、薄型化自体が望まれている。そこで、有機EL素子が形成された基板上に、直接、リソグラフィ、エッチング等の手法によりタッチパネルを設けることで、タッチパネル付き有機EL装置等の表示装置全体の厚さを小さくすることができると考えられる。しかし、多官能(メタ)アクリレート等を硬化性成分として含む材料を用いた従来の手法では、タッチパネルを形成するための絶縁膜の硬化には100℃超、好ましくは120℃超の温度での加熱が必要である。有機EL素子が形成された基板上に絶縁層を形成する場合、100℃超、特に120℃超の加熱に伴って有機発光層の劣化を招くという不都合がある。一方、絶縁膜を従来の材料を用いて120℃以下、特に100℃以下の加熱で形成した場合には、得られた絶縁膜が、配線形成のためのエッチング薬液や酸素アッシングに耐えられず、タッチパネル構造を作製することが困難となる傾向がある。タッチパネル付き有機EL装置用の絶縁膜に限らず、その他の表示装置用絶縁膜等各種用途において、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができる感放射線性組成物の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、十分なリソグラフィ性能を有し、比較的低温(例えば120℃以下)の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができる感放射線性組成物、上記感放射線性組成物を用いて得られる表示装置用絶縁膜及び表示装置、上記感放射線性組成物を用いた表示装置用絶縁膜の形成方法、並びに上記感放射線性組成物の成分として好適な重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は(A)芳香環または縮合環を含む重量平均分子量が500~100,000である重合体であって、下記式(1a)、(1b)、(2a)及び(2b)の群から選ばれる少なくとも一つの基を有する重合体、(B)感放射線性ラジカル開始剤、(C)有機溶剤を含む感放射線性樹脂組成物である。
【化1】
(式中、Zは硫黄原子、-NR
10-を示し、R
10は水素原子もしくは炭素数1から10のアルキル基を示す。R
1は、水素原子または式(3)で表され、R
5は2価の有機基、R
2は1価の有機基、R
3は2価の有機基を示す。*は結合位を示す。)
【0008】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、当該感放射線性組成物から形成されている表示装置用絶縁膜である。
【0009】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、当該表示装置用絶縁膜を有する表示装置である。
【0010】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基板上に直接又は間接に塗膜を形成する工程、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、上記塗膜を現像する工程、及び上記塗膜を加熱する工程をこの順に備え、上記塗膜を当該感放射線性組成物により形成する表示装置用絶縁膜の形成方法である。
【0011】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、下記式(5a)で表される第1の構造単位と下記式(5b)で表される第2の構造単位とを有する重合体である。
【化2】
(式(5a)、(5b)中、R
7は、メチレン基もしくは炭素数2から12のアルキレン基を示す。R
8は水素原子もしくはメチル基を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、十分なリソグラフィ性能を有し、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができる感放射線性組成物、上記感放射線性組成物を用いて得られる表示装置用絶縁膜及び表示装置、上記感放射線性組成物を用いた表示装置用絶縁膜の形成方法、並びに上記感放射線性組成物の成分として好適な重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタッチパネル付き有機EL装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<感放射線性組成物>
本発明の一実施形態に係る感放射線性組成物は、(A)重合体、(B)感放射線性ラジカル重合開始剤、及び(C)有機溶媒を含む。当該感放射線性組成物は、(D)重合性化合物及びその他の任意成分をさらに含むことができる。各成分等について詳説する。
【0015】
当該感放射線性組成物における(A)重合体は、芳香環または縮合環を含む重量平均分子量が1000~100,000である重合体であって、下記式(1a)、(1b)、(2a)及び(2b)の群から選ばれる少なくとも一つの基を有する重合体である。このような重合体を含むことで、従来の硬化性組成物の硬化温度よりも低い温度で硬化してすぐれた硬化性を示し、かつ十分なリソグラフィ性能を発揮することなどができる。
【0016】
【化3】
(式中、Zは硫黄原子、-NR
10-を示し、R
10は水素原子もしくは炭素数1から10のアルキル基を示す。R
1は、水素原子または式(3)で表され、R
5は2価の有機基、R
2は1価の有機基、R
3は2価の有機基を示す。*は結合位を示す。)
【0017】
当該感放射線性組成物における(A)重合体は、芳香環または縮合環を含み、(メタ)アクリル酸等で酸変性されたエポキシ樹脂に、チオール化合物を付加反応させることで得られる。例えば、以下に示す反応式で得られる重合体を上げることができる。
【0018】
【化4】
式中、R
7は、メチレン基もしくは炭素数2から12のアルキレン基を示す。R
8は水素原子もしくはメチル基を示す。
芳香環または縮合環を含む重量平均分子量が500~100,000である重合体としては、例えば、それぞれ酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、カルド系樹脂が挙げられる。
【0019】
上記(A)重合体のうち、特に酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。酸変性されたクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、重合性単量体は単位構造中にノボラック骨格を有することが好ましい。
上記ノボラック骨格を有する重合性単量体は特に限定されず、例えば、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、o-クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、m-クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、p-クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ナフトール変性ノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ハロゲン化フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート等のノボラックエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。上記ノボラックエポキシ(メタ) アクリレートを表す一般式を下記式(6) に示した。
【化5】
(式(6)中、R
9は水素原子またはメチル基を示し、R
10は水素原子、炭素数1~6のアルキル基を示す。R
11は、多塩基酸無水物に由来しカルボキシル基を有する原子団を表す。また、m 、n は、0 又は正の整数を表す。)
【0020】
上記多塩基酸無水物は特に限定されず、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。なかでも反応性の面から無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水フタル酸が好適である。
【0021】
上記ノボラックエポキシ(メタ)アクリレートがアルカリ可溶性官能基を有する場合、上記ノボラックエポキシ(メタ)アクリレートの酸化の好ましい上限は250mgKOH /gである。上記アルカリ可溶性官能基を有するノボラックエポキシ(メタ)アクリレートの酸化が250mgKOH/gを超えると、密着性が低下することがある。上記アルカリ可溶性官能基を有するノボラックエポキシ(メタ)アクリレートの酸化のより好ましい上限は200mgKOH/gである。
【0022】
上記ノボラックエポキシ(メタ)アクリレートの市販品は特に限定されず、例えば、E A-1020 、EA-1025、EA-1026、EA-1028、EA-6320、EA-6340(以上、いずれも新中村化学工業社製)、Ebecryl150、Eb ecryl1150( 以上、いずれもダイセル・サイテック社製) 、M-208 、M 210(以上、いずれも東亜合成社製)、PNA-161H 、CNA-142H、PCR-1169 H、CCR-1159H、CCR-1358H、CCR―1316H(以上、いずれも日本化薬社製)、エピクロンN -695、エピクロンN-775( 以上、いずれもDIC 社製)、PR-300、PR -310、PR-320 、HRM-1004、HRM-1005、HRM-1011 、HRM-1013、HRM-2019、HRM-2021、HRM-2027、HRM- 2031(以上、いずれも昭和高分子社製)、共栄社の「エポキシエステルEX-5060P」等が挙げられる。
【0023】
付加反応方法としては、マイケル付加反応、エンチオール反応等を挙げることができるが、マイケル付加反応が好ましい。付加反応させる化合物としては、1価のチオール化合物及び1価のアミン化合物を挙げることができるが、1価のチオール化合物が好ましい。具体的には、下記式(SH-1)~(SH-4)で表される化合物を挙げることができ、中でも下記式(SH-1)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【0025】
マイケル付加反応に用いられる塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができ、トリエチルアミンが好ましい。
【0026】
上記酸変性されたノボラックエポキシ(メタ) アクリレート樹脂に、付加反応によって上記式(SH-1)~(SH-3)で表される化合物の少なくとも一つを反応させ、置換基を導入したのが、上記式(1a)、(1b)、(2a)及び(2b)の群から選ばれる少なくとも一つの基である。このような置換基を有することで、従来の硬化性組成物の硬化温度よりも低い温度で硬化してすぐれた硬化性を示し、かつ十分なリソグラフィ性能を発揮することなどができる。
【0027】
上記(A)重合体の重量平均分子量の好ましい下限が1,000 、好ましい上限が100,000である。上記(A)重合体の重量平均分子量が1,000未満であると、樹脂中の未反応の低分子化合物の量が多くなり、残存した低分子化合物が液晶中に溶出してパネルの表示不良を引き起こすことがある。上限が100,000を超えると、現像時に残渣が発生したり、得られる突起がアーチ状とならなかったりすることがある。
【0028】
((B)感放射線性ラジカル重合開始剤)
(B)感放射線性ラジカル重合開始剤としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により、(A)重合体のラジカル重合反応を開始し得る活性種を発生することができる化合物等が挙げられる。(B)感放射線性ラジカル重合開始剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(B)感放射線性ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えばO-アシルオキシム化合物、α-アミノケトン化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0030】
O-アシルオキシム化合物としては、例えば1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-アセタート、1-[9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル]-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-[9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等が挙げられる。
【0031】
α-アミノケトン化合物としては、例えば2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-モルフォリノ)プロパン-1-オン等が挙げられる。
【0032】
α-ヒドロキシケトン化合物としては、例えば1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0033】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0034】
(B)感放射線性ラジカル重合開始剤としては、放射線による硬化反応をより促進させる観点から、O-アシルオキシム化合物、α-アミノケトン化合物及びアシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく、O-アシルオキシム化合物及びα-アミノケトン化合物がより好ましく、O-アシルオキシム化合物がさらに好ましい。
【0035】
当該感放射線性組成物における(B)感放射線性ラジカル重合開始剤の含有量の下限としては、(A)重合体100質量部に対して、5質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましく、20質量部がよりさらに好ましく、30質量部がよりさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、150質量部が好ましく、100質量部がより好ましく、70質量部がさらに好ましく、60質量部がよりさらに好ましく、50質量部がよりさらに好ましい。(B)感放射線性ラジカル重合開始剤の含有量を上記下限以上及び上記上限以下とすることで、より十分なリソグラフィ性能及び硬化性を発揮することなどができる。
【0036】
((C)有機溶媒)
(C)有機溶媒は特に限定されるものではなく、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒等が挙げられる。なお、(C)有機溶媒は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-ノナノール、1-ドデカノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルキルアルコール;
ベンジルアルコール等の芳香族アルコールなどが挙げられる。
【0038】
エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、 エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
エステル系溶媒としては、例えば
酢酸エチル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル;
プロピレングリコールジアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒などが挙げられる。
【0040】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が好ましく、エステル系溶媒がより好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒がさらに好ましい。また、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒の中では、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び3-メトキシプロピオン酸メチルが好ましい。
【0042】
当該感放射線性組成物における(C)有機溶媒の含有量は特に限定されないが、固形分濃度が以下の範囲内となるように調製されることが好ましい。当該感放射線性組成物における固形分濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。一方、この固形分濃度の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。
【0043】
((D)重合性化合物)
当該感放射線性組成物が(D)重合性化合物を含む場合、得られる硬化膜のエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性をより高めることなどができる。(D)重合性化合物は、複数の重合性基を有する化合物である。但し、(A)重合体は、(D)重合性化合物には含まれない。(D)重合性化合物は、単量体、すなわち非重合体であることが好ましい。
【0044】
(D)重合性化合物が有する重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、N-アルコキシメチルアミノ基、オキシラニル基(エポキシ基)、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基及びN-アルコキシメチルアミノ基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。(D)重合性化合物が有する重合性基の数の下限は2である。一方、この上限としては特に限定されず、例えば20であってよく、12が好ましく、8がより好ましい。(D)重合性化合物としては、複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び複数のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましく、複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
【0045】
複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物〔多官能(メタ)アクリレート〕、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートとの反応物〔多官能ウレタン(メタ)アクリレート〕、水酸基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物〔カルボキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート〕等が挙げられる。これらの中でも、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物〔多官能(メタ)アクリレート〕が好ましい。脂肪族ポリヒドロキシ化合物、水酸基を有する(メタ)アクリレート、多官能イソシアネート及び酸無水物の具体例としては、特開2015-232694号公報の段落[0065]に記載された化合物が挙げられ、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート及びアルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレートとしては、同公報の段落[0066]に記載された化合物が挙げられる。
【0046】
複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエタン-1,1,1-トリイルトリスメチレン、イソシアヌル酸トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、トリメチロールプロパンポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
複数のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物としては、例えばメラミン構造、ベンゾグアナミン構造又はウレア構造を有する化合物が挙げられる。これらの具体例としては、特開2015-232694号公報の段落[0067]に記載された化合物が挙げられる。
【0048】
当該感放射線性組成物における(D)重合性化合物の含有量の下限としては、(A)重合体100質量部に対して、30質量部が好ましく、100質量部がより好ましく、200質量部がさらに好ましく、220質量部がよりさらに好ましい。(D)重合性化合物の含有量を上記下限以上とすることで、得られる硬化膜のエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性をより高めることなどができる。一方、この含有量の上限としては、1,000質量部が好ましく、600質量部がより好ましく、400質量部がさらに好ましく、300質量部がよりさらに好ましく、260質量部がよりさらに好ましい。(D)重合性化合物の含有量を上記上限以下とすることで、リソグラフィ性能をより高めることなどができる。
【0049】
(その他の成分)
当該感放射線性組成物は、上述した(A)重合体、(B)感放射線性ラジカル重合開始剤、(C)有機溶媒、(D)重合性化合物以外の他の成分をさらに含有することができる。このような他の成分としては、硬化剤、硬化促進剤、密着助剤、酸化防止剤、界面活性剤等を挙げることができる。但し、当該感放射線性組成物に占める(A)重合体、(B)感放射線性ラジカル重合開始剤、(C)有機溶媒、(D)重合性化合物以外の他の成分の含有割合としては、10質量%以下が好ましいことがあり、1質量%以下がより好ましいこともある。
【0050】
(硬化温度)
当該感放射線性組成物は、上述のように、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができる。当該感放射線性組成物は、例えば60℃以上120℃以下の温度範囲の加熱により硬化可能な組成物であることが好ましく、60℃以上100℃以下の温度範囲の加熱により硬化可能な組成物であることがより好ましい。
【0051】
(感放射線性組成物の調製方法)
当該感放射線性組成物は、各成分を所定の割合で混合し、(C)有機溶媒に溶解させることにより調製できる。調製した組成物は、例えば孔径0.2μm程度のフィルタ等でろ過することが好ましい。
【0052】
<表示装置用絶縁膜>
本発明の一実施形態に係る表示装置用絶縁膜は、当該感放射線性組成物から形成されている硬化膜である。当該表示装置用絶縁膜は、パターニングされた膜であってよい。当該表示装置用絶縁膜は、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができる感放射線性組成物から形成されているため、歩留まりが高く、耐久性等にも優れる。
【0053】
当該表示装置用絶縁膜は、層間絶縁膜として好適であり、その他、平坦化膜、スペーサー、保護膜等に用いられてもよい。当該表示装置用絶縁膜は、液晶表示素子を備える表示装置(液晶表示装置)、有機EL素子を備える表示装置(有機EL装置)、電子ペーパー等の表示装置に用いることができる。また、後述するように、当該表示装置用絶縁膜は、タッチパネル付き有機EL装置等、タッチパネル付き表示装置におけるタッチパネルの層間絶縁膜として好適である。
【0054】
当該表示装置用絶縁膜は、比較的厚い場合も、クラックの発生が生じ難い。従って、当該表示装置用絶縁膜は、厚膜化が可能である。当該表示装置用絶縁膜の平均厚さの下限としては、例えば0.1μmであってよいが、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましく、2μmがさらに好ましいこともある。一方、この平均厚さの上限としては、例えば10μmであり、6μmであってもよく、4μmであってもよい。
【0055】
<表示装置>
本発明の一実施形態に係る表示装置は、当該表示装置用絶縁膜を有する。当該表示装置としては、液晶表示装置、有機EL装置、電子ペーパー等が挙げられる。これらの中でも、本発明の一実施形態に係る表示装置は、有機EL装置であることが好ましい。
【0056】
有機EL装置は、有機EL素子を備える。有機EL素子は、通常、陽極層、有機発光層及び陰極層を含む積層構造を有する。当該有機EL装置は、有機EL素子を有する基板に積層されたタッチパネルを有することが好ましい。このタッチパネルにおける少なくとも一部の絶縁膜に、本発明の一実施形態に係る表示装置用絶縁膜が用いられていることが好ましい。特に、有機EL素子を有する基板に、粘着層や接着層を介することなく積層されるタッチパネルの絶縁膜に、本発明の一実施形態に係る表示装置用絶縁膜が用いられていることが好ましい。このようにすることで、有機EL素子が形成された基板に、タッチパネルを直接積層することができるため、タッチパネル付き有機EL装置の薄型化を可能とする。また、当該感放射線性組成物は、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する硬化膜を得ることができるため、製造工程での有機EL素子の劣化を抑制することができ、歩留まりを高めることなどができる。また、このように、当該感放射線性組成物を用いて比較的低温の加熱で絶縁膜を形成することで製造工程での有機EL素子の劣化を抑制することができるため、タッチパネル付き有機EL装置以外の、有機EL素子を備える各種有機EL装置における絶縁膜の形成に、当該感放射線性組成物は特に好適に用いることができる。
【0057】
図1にタッチパネル付き有機EL装置の一形態を示す。
図1のタッチパネル付き有機EL装置10は、有機EL表示基板20とタッチパネル30とを備える。有機EL表示基板20は、支持基板21、陽極層22、有機発光層23、陰極層24、接着層25及び封止基板26がこの順で積層された構造を有する。なお、少なくとも陽極層22、有機発光層23及び陰極層24が有機EL素子を構成する。有機発光層23としては、例えば、陽極層22側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層及び電子注入層がこの順で積層した構造のものを採用することができる。
【0058】
タッチパネル30は、第1センサ電極31、層間絶縁膜33及び第2センサ電極32がこの順で積層された、静電容量方式のものである。タッチパネル30は、第1センサ電極31、第1センサ電極31に向かい合って配置される第2センサ電極32、層間絶縁膜33、及び最表面に配置される透明基板34を有する。本実施形態において、第1センサ電極31は、有機EL表示基板20の封止基板26上に直接形成されている。層間絶縁膜33は、第1センサ電極31と第2センサ電極32とを絶縁する透明な絶縁膜であり、当該感放射線性組成物から形成されている。なお、タッチパネルは、このような静電容量方式のものに限定されるものではない。
【0059】
<表示装置用絶縁膜の形成方法>
本発明の一実施形態に係る表示装置用絶縁膜の形成方法は、基板上に直接又は間接に塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう。)、上記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射(露光)する工程(以下、「放射線照射工程」ともいう。)、上記塗膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう。)、及び上記塗膜を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう。)をこの順に備え、上記塗膜を本発明の一実施形態に係る感放射線性組成物により形成する。当該形成方法は、任意工程として、放射線照射工程と現像工程との間に、上記塗膜を加熱する工程(以下、「PEB工程」ともいう。)を備えていてもよい。
【0060】
当該形成方法によれば、上述した当該感放射線性組成物を用いているため、良好な形状にパターニング可能であり、比較的低温の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性及び酸素アッシング耐性を有する絶縁膜を得ることができる。また、塗膜を形成する基板が有機EL素子を含むものであっても、加熱工程を比較的低温で行うことで、有機EL素子の劣化を抑制することが可能となる。以下、各工程について説明する。
【0061】
(塗膜形成工程)
本工程では、基板上に直接又は他の層を介して当該感放射線性組成物を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより有機溶媒等を除去して、塗膜を形成する。上記基板の材質としては、例えばガラス、石英、シリコン、樹脂等が挙げられる。上記樹脂の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンの開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0062】
上記基板は、有機EL素子等を含むものであってよい。また、上記基板は、塗布面に電極、配線等が設けられているものであってよい。このような基板としては、上述した
図1中の有機EL表示基板20において、第1センサ電極31が形成されたものを例示することができる。
【0063】
当該感放射線性組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスピンコート法及びスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、例えば60℃以上120℃以下、より好ましくは100℃以下の温度で1分以上10分以下の加熱時間とすればよい。
【0064】
(放射線照射工程)
本工程では、塗膜形成工程で形成された塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する。通常、塗膜の一部に放射線を照射する際には、所定のパターンを有するフォトマスクを介して照射する。上記放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm以上450nm以下の範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
【0065】
本工程における露光量の下限としては、放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI Optical Associates Inc.社の「OAI model356」)により測定した値として、10mJ/cm2が好ましく、50mJ/cm2がより好ましい。また、上記露光量の上限としては、上記照度計により測定した値として、2,000mJ/cm2が好ましく、1,000mJ/cm2がより好ましい。
【0066】
(PEB工程)
PEB工程を設ける場合、PEB条件としては、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、例えば60℃以上120℃以下、より好ましくは100℃以下の温度で1分以上10分以下の加熱時間とすればよい。
【0067】
(現像工程)
本工程では、放射線照射後の塗膜を現像液で現像することにより所定のパターンを形成する。上記現像液としてはアルカリ現像液が好ましい。アルカリ現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液などが挙げられる。また、アルカリ現像液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0068】
現像方法としては、例えば液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、スプレー法等の適宜の方法を採用することができる。現像時間は、感放射線性用組成物の組成によって異なるが、例えば10秒以上180秒以下である。このような現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30秒以上90秒以下の処理時間で行った後、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成することができる。
【0069】
(加熱工程)
本工程では、現像してパターニングされた塗膜を、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて加熱(ポストベーク)することにより、所望のパターンを有する表示装置用絶縁膜を得る。なお、現像工程と加熱工程との間に、塗膜に対して紫外線等放射線の照射を施してもよい。このときの露光量としては、例えば100mJ/cm2以上2,000mJ/cm2以下とすることができる。加熱温度の下限としては、60℃が好ましく、80℃であってもよい。加熱温度を上記下限以上とすることで、十分に硬化された絶縁膜を得ることができる。一方、上記加熱温度の上限としては、120℃が好ましく、100℃がより好ましい。上記加熱温度を上記下限以上とすることにより、例えば基板に備わる有機EL素子の劣化を抑制しつつ、十分に硬化された絶縁膜を得ることができる。また、加熱温度を上記上限以下とすることにより、急激な膜収縮等の過度の応力発生を抑制できるため、クラックの発生を抑制できる。このように、加熱工程においては、加熱を60℃以上120℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えばホットプレート上で加熱する場合には5分以上30分以下、オーブン中で加熱する場合には10分以上90分以下とすればよい。なお、加熱は、空気中で行っても、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法を用いることも可能である。
【0070】
(その他の工程)
当該表示装置用絶縁膜を有するタッチパネル等を製造する場合、表示装置用絶縁膜を形成した後、更なる電極、配線等(例えば、
図1のタッチパネル30における第2センサ電極32)を形成するためなどの他の工程が行われる。このような工程としては、電極形成工程、配線形成工程、エッチング工程、アッシング工程等が挙げられる。電極や配線の形成には、印刷や蒸着等の公知の方法を採用することができる。エッチングは、例えばアミン系溶液等の公知のエッチング薬液を用いて行うことができる。アッシングは、酸素アッシング等の公知のアッシング方法により行うことができる。なお、タッチパネル等を製造する際、絶縁膜の形成や、電極、配線等の形成などは、それぞれ複数回行われてもよい。
【0071】
<重合体>
本発明の重合体は、下記式(5a)、(5b)、(5c)及び(5d)で表される構造単位のうち、少なくとも二つ以上を有する重合体である。
【化7】
式(5a)、(5b)、(5c)、(5d)中、R
7は、メチレン基もしくは炭素数2から12のアルキレン基を示す。R
8は水素原子もしくはメチル基を示す。(5a)、(5b)、(5c)、(5d)中、(5a)、(5b)で示される構造単位の組み合わせ、(5c)、(5d)で示される構造単位の組み合わせが好適である。
【0072】
当該重合体は、表示装置用絶縁膜を形成するための感放射線性組成物の成分として好適に用いることができる。当該重合体は、上述した本発明の一実施形態に係る感放射線性組成物における(A)重合体の好適な一形態である。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[重量平均分子量(Mw)]
下記条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりMwを測定した。
装置:昭和電工社の「GPC-101」
カラム:昭和電工社の「GPC-KF-801」、「GPC-KF-802」、「GPC-KF-803」及び「GPC-KF-804」を連結したもの
移動相:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0075】
以下に(A)重合体の合成例を示す。(A)重合体は酸変性されたエポキシ樹脂に、チオール化合物をマイケル付加反応させてえることができる。酸変性されたエポキシ樹脂を以下に示す。本願発明の(A)重合体は以下の酸変性されたエポキシ樹脂に限定されるものではない。
【0076】
(E-1):日本化薬社の「CCR-1358H」
酸無水物変性されたクレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂
(E-2):日本化薬社の「CCR―1316H」
酸無水物変性されたクレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂
(E-3):共栄社の「エポキシエステルEX-5060P」
アクリロイル基とカルボキシ基とを有する、酸変性されたカルド系樹脂クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂
【0077】
マイケル付加反応に用いたチオール基含有化合物は、以下に示す化合物(SH-1)~化合物(SH-4)である。
【化8】
【0078】
[合成例1](マイケル付加反応)を用いた重合体(A-1-1)の合成
温度計を備えた1Lの三口クラスコにCCR-1358H(日本化薬製、固形分濃度50.5%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液、(メタ)アクリロイル基換算で100mol%)を200g、メルカプトプロピオン酸を8.38g(25mol%)加え、トリエチルアミン16.0g(50mol%)をゆっくり加えた後、50℃で5時間撹拌した。
反応終了後、酢酸エチルを1L、1M塩酸水を1L加えて水層を除去した後、水で3回洗浄した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで2回溶剤置換を行うことで固形分濃度50%の重合体(A-1)を205g得た。1H-NMR、FT-IRにより構造を確認した。
【0079】
[合成例2]~[合成例5]において得られた重合体(A-2)から重合体(A-5)も、 チオール化合物の種類、量を表1のように変えた以外は合成例1と同様の手法で行った。
【0080】
【0081】
[合成例6]
温度計を備えた1Lの三口クラスコにエポキシエステルEX-5060P(共栄社製、固形分濃度59.9%、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液、(メタ)アクリロイル基換算で100mol%)を150g、メルカプトプロピオン酸を16.5g(50mol%)加え、トリエチルアミン31.4g(100mol%)をゆっくり加えた後、50℃で5時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルを1L、1M塩酸水を1L加えて水層を除去した後、水で3回洗浄した。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで2回溶剤置換を行うことで固形分濃度50%の重合体(A-6)を201g得た。1H-NMR、FT-IRにより構造を確認した。
[合成例7]、[合成例8]
チオール化合物の種類、量を表1のように変えた以外は合成例6と同様の手法で行い、
重合体(A-7)から重合体(A-8)を得た。
【0082】
実施例及び比較例の感放射線性組成物の調製に用いた各成分を示す。
(A)重合体
(A-1)~(A-8)
上記合成例1~8で合成した重合体(A-1)~(A-8)
【0083】
(B)感放射線性ラジカル重合開始剤
(B-1):オキシム系光ラジカル重合開始剤(ADEKA社の「NCI-930」
(B-2):BASFジャパン社の「IrgacureOxe01」
(B-3):フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド
(B-4):2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン
(B-5):1-[4-(2-ヒドロキシエチルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-モルフォリノ)プロパン-1-オン
【0084】
(D)重合性化合物
(D-1):トリアクリル酸2-ヒドロキシエタン-1,1,1-トリイルトリスメチレン(D-2):ペンタエリトリトールテトラアクリレート
(D-3):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(D-4):イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)
(D-5):トリメチロールプロパンポリプロピレングリコールトリアクリレート
【0085】
(R)比較例に用いる重合体
(RA-1):日本化薬社の「CCR-1358H」
酸無水物変性されたクレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂
(RA-2):日本化薬社の「CCR―1316H」
酸無水物変性されたクレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂
(RA-3):ADEKA社の「WR-301」
アクリロイル基とカルボキシ基とを有する、酸変性されたカルド系樹脂
【0086】
[調製例1]感放射線性組成物(C-1)の調製
(A)重合体として(A-1)を含有するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)200質量部(樹脂固形分として(A-1)100質量部)、(B)感放射線性ラジカル重合開始剤として(B-1)5質量部、及び界面活性剤(東レ・ダウコーニング社の「DOWSIL 8019 Additive」)0.15質量部を混合した。次いで、全体の固形分濃度が30質量%になるようにPGMEAで希釈した後、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、感放射線性組成物(C-1)を調製した。
【0087】
[調製例2~36、比較調製例1~3]感放射線性組成物(C-2)~(C-36)及び(R-1)~(R-3)の調製
調製例1の(A-1)100質量部及び(B-1)30質量部に替えて、表2に記載の各成分の種類及び量を用いたこと以外は、調製例1と同様にして、調製例2~36及び比較調製例1~3の各感放射線性組成物(C-2)~(C-36)及び(R-1)~(R-3)を調製した。表2中の空欄は、その成分を用いていないことを示す。
【0088】
【0089】
[実施例1]
(絶縁膜の形成)
感放射線性組成物(C-1)をシリコン基板上に2.0μmの膜厚になるようにスピンコートした。その後、ホットプレートを用いて85℃で2分間プレベークし、塗膜を形成した。この塗膜に対し、5μm×5μm角ホールパターンマスクを介してSUSS製「DSC-200」を用い、スキャン方式(照度=500mW、NA=0.10、λ=ghi line、120mJ/cm2)で露光を行った。その後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(濃度2.38%)を用いて25℃、1分間現像した。その後、水で流水洗浄し、乾燥して基板上にパターンを形成した。次いで、TOPCON製「TME-400PRJ」を用いてghi混合線で600mJ/cm2の紫外線を照射し、さらにオーブンにて85℃、60分間加熱して、平均厚さ2.0μmの絶縁膜を得た。
【0090】
(リソグラフィ性能の評価)
上記方法にて得られた絶縁膜(パターン状薄膜)のホールにおける残渣の有無及びボトムの寸法について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、以下の基準で評価した。評価結果を表3に示す。
A:残渣なし、かつボトムの寸法が3μm以上
B:残渣なし、かつボトムの寸法が2μm以上3μm未満
C:残渣なし、かつボトムの寸法が1μm以上2μm未満
D:残渣がある、又は残渣なし、かつボトムの寸法が1μm未満
【0091】
(エッチング薬液耐性の評価)
上記方法にて絶縁膜が形成されたシリコン基板を、アミン系の剥離液(エッチング薬液)に60℃60秒間浸した。浸漬前後の絶縁膜の膜厚比((浸漬後の膜厚/浸漬前の膜厚)×100%)等に基づいて以下の基準で評価した。評価結果を表3に示す。
A:95%以上97%未満、又は103%以上105%未満
B:95%未満、又は105%以上
C:絶縁膜が剥がれる
【0092】
(酸素アッシング耐性の評価)
上記絶縁膜の形成の際、5μm×5μm角ホールパターンマスを使わずに全面露光を行い、平均厚さ2.0μmの絶縁膜を形成した。このようにシリコン基板上に形成した絶縁膜に対して、所定条件(300W、30s、O2 30(SCCM)、25℃)下でアッシングし、残膜率((アッシング後の平均膜厚/アッシング前の平均膜厚)×100%)を測定し、以下の基準で評価した。評価結果を表3に示す。
A:93%以上
B:90%以上93%未満
C:90%未満
【0093】
【0094】
表3に示されるように、実施例1~40は、十分なリソグラフィ性能(A~C)を有し、120℃以下の加熱によっても十分なエッチング薬液耐性(A~C)及び十分な酸素アッシング耐性(A~C)を有する硬化膜(絶縁膜)が形成できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の感放射線性は、表示装置の絶縁膜等の形成材料として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0096】
10 タッチパネル付き有機EL装置
20 有機EL表示基板
21 支持基板
22 陽極層
23 有機発光層
24 陰極層
25 接着層
26 封止基板
30 タッチパネル
31 第1センサ電極
32 第2センサ電極
33 層間絶縁膜
34 透明基板