(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240416BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240416BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240416BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240416BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240416BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240416BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240416BHJP
C08K 5/40 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C11/03 100C
B60C1/00 A
B60C11/00 B
B60C11/13 B
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/54
C08K5/40
(21)【出願番号】P 2020104626
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河地 貴浩
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088284(JP,A)
【文献】特開2018-083944(JP,A)
【文献】特開2010-260980(JP,A)
【文献】特開2008-303332(JP,A)
【文献】特開平09-111042(JP,A)
【文献】特表2008-527150(JP,A)
【文献】特開平03-169719(JP,A)
【文献】特開2012-126300(JP,A)
【文献】特開2005-059803(JP,A)
【文献】特開2009-262646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/03
B60C 1/00
B60C 11/13
C08L 9/00
C08K 3/36
C08K 5/54
C08K 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドが、複数の周方向溝によって仕切られた陸部を有し、
前記陸部の少なくとも1つが、両端が前記周方向溝に開口しておらず、かつ、その溝底の最深部の溝深さがトレッド部全体の厚さの80%以上である1以上の横溝を有し、
前記トレッドが、少なくとも1つのゴム層を有し、
前記トレッド面を構成する第一のゴム層が、ゴム成分、充填剤、シランカップリング剤、およびチウラム系加硫促進剤を含有するゴム組成物により構成され、
前記第一のゴム層を構成するゴム成分が、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、およびブタジエンゴムを含み、
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記充填剤がシリカを含み、
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、前記充填剤を60質量部以上含有し、
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物を80℃で7日間熱劣化させた後に測定した破壊エネルギーが1000以上であるタイヤ。
【請求項2】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、前記充填剤を65質量部以上含有する、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記充填剤中のシリカの含有量が30~95質量%である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、チウラム系加硫促進剤を0.1質量部以上含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、シランカップリング剤を4.8質量部以上含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記シランカップリング剤がメルカプト系シランカップリング剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第一のゴム層を構成するゴム成分が、イソプレン系ゴムを10~20質量%、スチレンブタジエンゴムを45~65質量%、およびブタジエンゴムを25~35質量%含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドが、前記第一のゴム層の半径方向内側に隣接する第二のゴム層を有し、
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδが、前記第二のゴム層を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδよりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率が、前記第二のゴム層を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率よりも大きい、請求項8記載のタイヤ。
【請求項10】
少なくとも1つの前記周方向溝の溝底の最深部が、前記第二のゴム層の最外部よりもタイヤ半径方向内側に位置するように形成されている、請求項8または9記載のタイヤ。
【請求項11】
前記周方向溝の溝底の最深部の溝深さが5.0mm~9.0mmである、請求項1~10のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記周方向溝の溝底の最深部の溝深さが、トレッド部全体の厚さの60~90%である、
請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低燃費性能、耐チッピング性能、および操縦安定性能のバランスに優れたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、主に欧州市場向けのVANタイヤには操縦安定性能を維持させつつ、低燃費性能と耐チッピング性能を両立させる事が求められている。
【0003】
特許文献1には、トレッド部に複数本の周方向主溝と横溝とを有し、低燃費性能および耐チッピング性能が改善された重荷重用空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
主溝に開口しておらず、かつ溝深さが深い横溝を有するタイヤは、不整地路面を走行すると、横溝に石などが挟まって抜けにくくなり、そこを起点に発熱し、トレッドゴムのチップカットやブロック欠けが生じやすくなる。したがって、前記のようなトレッドパターンを有する場合、トレッド部には、通常よりも耐チッピング性能に優れたゴム組成物を使用するが必要となる。
【0006】
ここで、耐チッピング性能を向上させるために充填剤の含有量を増やし、補強性を高めることが考えられるが、ゴムが発熱しやすくなり、低燃費性能が悪化することが懸念される。
【0007】
本発明は、低燃費性能、耐チッピング性能、および操縦安定性能のバランスに優れたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、主溝に開口しておらず、かつ溝深さが深い横溝を有するタイヤにおいて、トレッド面を構成するゴム層に、所定のゴム成分、所定の充填剤、シランカップリング剤、およびチウラム系加硫促進剤を所定の割合で配合し、かつ該ゴム層の熱劣化させた後に測定した破壊エネルギーを所定の範囲とすることで上記課題を解決できること見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
〔1〕トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドが、複数の周方向溝によって仕切られた陸部を有し、前記陸部の少なくとも1つが、両端が前記周方向溝に開口しておらず、かつ、その溝底の最深部の溝深さがトレッド部全体の厚さの80%以上である1以上の横溝を有し、前記トレッドが、少なくとも1つのゴム層を有し、前記トレッド面を構成する第一のゴム層が、ゴム成分、充填剤、シランカップリング剤、およびチウラム系加硫促進剤を含有するゴム組成物により構成され、前記第一のゴム層を構成するゴム成分が、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、およびブタジエンゴムを含み、前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記充填剤がシリカを含み、前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、前記充填剤を60質量部以上含有し、前記第一のゴム層を構成するゴム組成物を80℃で7日間熱劣化させた後に測定した破壊エネルギーが1000以上であるタイヤ、
〔2〕前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、前記充填剤を65質量部以上含有する、〔1〕記載のタイヤ、
〔3〕前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記充填剤中のシリカの含有量が30~95質量%である、〔1〕または〔2〕記載のタイヤ、
〔4〕前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、チウラム系加硫促進剤を0.1質量部以上含有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔5〕前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、シランカップリング剤を4.8質量部以上含有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔6〕前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記シランカップリング剤がメルカプト系シランカップリング剤である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔7〕前記第一のゴム層を構成するゴム成分が、イソプレン系ゴムを10~20質量%、スチレンブタジエンゴムを45~65質量%、およびブタジエンゴムを25~35質量%含有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔8〕前記トレッドが、前記第一のゴム層の半径方向内側に隣接する第二のゴム層を有し、前記第一のゴム層を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδが、前記第二のゴム層を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδよりも大きい、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔9〕前記第一のゴム層を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率が、前記第二のゴム層を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率よりも大きい、請求項8記載のタイヤ、
〔10〕少なくとも1つの前記周方向溝の溝底の最深部が、前記第二のゴム層の最外部よりもタイヤ半径方向内側に位置するように形成されている、〔8〕または〔9〕記載のタイヤ、
〔11〕前記周方向溝の溝底の最深部の溝深さが5.0mm~9.0mmである、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のタイヤ、
〔12〕前記周方向溝の溝底の最深部の溝深さが、トレッド部全体の厚さの60~90%である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載のタイヤ、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低燃費性能、耐チッピング性能、および操縦安定性能のバランスに優れたタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】タイヤのトレッドの一部が模式的に示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一実施形態であるタイヤは、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドが、複数の周方向溝によって仕切られた陸部を有し、前記陸部の少なくとも1つが、両端が前記周方向溝に開口しておらず、かつ、その溝底の最深部の溝深さがトレッド部全体の厚さの80%以上である1以上の横溝を有し、前記トレッドが、少なくとも1つのゴム層を有し、前記トレッド面を構成する第一のゴム層が、ゴム成分、充填剤、シランカップリング剤、およびチウラム系加硫促進剤を含有するゴム組成物により構成され、前記第一のゴム層を構成するゴム成分が、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、およびブタジエンゴムを含み、前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記充填剤がシリカを含み、前記第一のゴム層を構成するゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対し、前記充填剤を60質量部以上含有し、前記第一のゴム層を構成するゴム組成物を80℃で7日間熱劣化させた後に測定した破壊エネルギーが1000以上であるタイヤである。
【0013】
理論に拘束されることは意図しないが、本開示において、タイヤの低燃費性能、耐チッピング性能、および操縦安定性能をバランスよく改善させ得るメカニズムとしては、以下が考えられる。
【0014】
充填剤の含有量を多くすることで、補強性を高めるとともに、ゴム成分を、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、およびブタジエンゴムの3種混合とすることで、異なる硬さの相がミクロに混在することになり、衝撃や亀裂が伝わりにくくなり、補強性と相まって、さらにチップカットやブロック欠けが生じにくくなる。
【0015】
ここで、前記の相乗効果を得るためには、シリカやゴムの均一性が重要となる。シリカの分散が不均一になると、応力の集中によってゴムが発熱しやすくなり、ゴムのチップカット、ブロック欠けが発生しやすくなる。また、ゴム成分間の結合が不十分であると、熱劣化によるゴムの破壊が起きやすくなる。そこで、シランカップリング剤によってシリカの分散性を向上させるとともに、チウラム系加硫促進剤によってゴム間の架橋を促進し、耐熱老化性を高める。これらにより、多成分系のゴムにシリカを含む充填剤を高充填することによる相乗効果をより向上させることができる。
【0016】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、前記充填剤を65質量部以上含有することが好ましい。
【0017】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記充填剤中のシリカの含有量は、30~95質量%であることが好ましい。
【0018】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、チウラム系加硫促進剤を0.1質量部以上含有することが好ましい。
【0019】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、シランカップリング剤を4.8質量部以上含有することが好ましい。
【0020】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物に含まれる前記シランカップリング剤は、メルカプト系シランカップリング剤であることが好ましい。メルカプト系シランカップリング剤を用いることにより、シリカの分散性をより向上させることができる。
【0021】
前記第一のゴム層を構成するゴム成分は、イソプレン系ゴムを10~20質量%、スチレンブタジエンゴムを45~65質量%、およびブタジエンゴムを25~35質量%含有することが好ましい。イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム、およびブタジエンゴムの含有量を前記の範囲内とすることにより、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0022】
前記トレッドが、前記第一のゴム層の半径方向内側に隣接する第二のゴム層を有し、前記第一のゴム層を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδが、前記第二のゴム層を構成するゴム組成物の70℃におけるtanδよりも大きいことが好ましい。
【0023】
前記第一のゴム層を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率は、前記第二のゴム層を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率よりも大きいことが好ましい。
【0024】
本開示の効果をより良好に発揮する観点から、少なくとも1つの前記周方向溝の溝底の最深部が、前記第二のゴム層の最外部よりもタイヤ半径方向内側に位置するように形成されていることが好ましい。
【0025】
前記周方向溝の溝底の最深部の溝深さは、5.0mm~9.0mmであることが好ましい。周方向溝の溝深さをかかる範囲内とすることにより、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0026】
前記周方向溝の溝底の最深部の溝深さが、トレッド部全体の厚さの60~90%であることが好ましい。周方向溝の溝深さをかかる範囲内とすることにより、本開示の効果をより良好に発揮できる。
【0027】
本開示の一実施形態であるタイヤの作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本開示を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0028】
図1は、タイヤのトレッドの一部が示された拡大断面図である。
図1において、上下方向がタイヤ半径方向であり、左右方向がタイヤ幅方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤ周方向である。
【0029】
本開示では、トレッドは、
図1に示されるように、外面がトレッド面3を構成する第一のゴム層6(以下、第一層6と表記することがある)と、第一層6の半径方向内側に隣接する第二のゴム層7(以下、第二層7と表記することがある)とを備えている。第一層6は、典型的にはキャップトレッドに相当する。第二層7は、典型的にはベーストレッドまたはアンダートレッドに相当する。また、本開示の目的が達成される限り、第二層7とベルト層との間に、さらに1または2以上のゴム層を有していてもよい。
【0030】
図1において、両矢印t1は第一層6の厚み、両矢印t2は第二層7の厚みである。
図1には、陸部2のタイヤ幅方向の中点が、記号Pとして示されている。記号Nで示される直線は、点Pを通り、この点Pにおける接平面に垂直な直線(法線)である。本明細書では、厚みt1およびt2は、
図1の断面において、溝が存在しない位置におけるトレッド面上の点Pから引いた法線Nに沿って測定される。
【0031】
本開示において、第一層6の厚みt1は特に限定されないが、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましく、2.5mm以上が特に好ましい。また、第一層6の厚みt1は、10.0mm以下が好ましく、9.0mm以下がより好ましく、8.0mm以下がさらに好ましく、7.0mm以下が特に好ましい。
【0032】
本開示において、第二層7の厚みt2は特に限定されないが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。また、第二層7の厚みt2は、6.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましく、4.0mm以下がさらに好ましく、3.0mm以下が特に好ましい。
【0033】
第一層6の厚みt1に対する第二層7の厚みt2の比(t2/t1)は、低燃費性能の観点から、0.10以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.25以上がさらに好ましく、0.30以上が特に好ましい。一方、ウェットグリップ性能の観点からは、5.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、0.9以下が特に好ましい。
【0034】
トレッド部全体の厚さに対する第二層7の厚みt2は、10~60%が好ましく、13~45%がより好ましく、16~35%がさらに好ましく、20~30%が特に好ましい。なお、本開示におけるトレッド部全体の厚さとは、トレッド部を構成するゴム層の合計厚さを意味し、トレッド面3からベルト層までの最短距離により求められる。
【0035】
本開示のトレッドは、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝1を有している。周方向溝1は、周方向に沿って直線状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、例えば、周方向に沿って波状や正弦波状やジクザク状に延びていてもよい。
【0036】
本開示のトレッドは、タイヤ幅方向で、周方向溝1によって仕切られた陸部2を有している。
【0037】
周方向溝1の溝深さHは、陸部2の延長線4と周方向溝1の溝底の最深部の延長線5との距離によって求められる。なお、溝深さHは、例えば、周方向溝1が複数ある場合、陸部2の延長線4と、複数の周方向溝1のうち最も深い溝深さを有する周方向溝1(
図1においては左側の周方向溝1)の溝底の最深部の延長線5との距離である。
【0038】
周方向溝1の溝深さHは、ウェットグリップ性能の観点から、4.0mm以上が好ましく、4.5mm以上がより好ましく、5.0mm以上がさらに好ましく、5.5mm以上が特に好ましい。また、耐チッピング性能の観点からは、9.0mm以下が好ましく、8.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下がさらに好ましい。
【0039】
周方向溝1の溝深さHは、トレッド部全体の厚さの50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましく、70%以上が特に好ましい。また、周方向溝1の溝深さHは、トレッド部全体の厚さの90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。
【0040】
図1の左側に示された一方の周方向溝1は、周方向溝1の溝底の最深部が、第二層7の最外部に対してタイヤ半径方向内側に位置するように形成されている。具体的には、周方向溝1の直下(タイヤ半径方向内側)では、第二層7は、最外部に対してタイヤ半径方向内側に凹んだ凹部を有し、第一層6の一部が第二層7の当該凹部内に所定の厚さで形成されている。周方向溝1は、第二層7の最外部を越えて第二層7の凹部の内側へ入り込むように形成されている。なお、周方向溝1は、
図1の右側に示される周方向溝1のように、第二層7の最外部に到達しない溝深さで形成されていてもよい。
【0041】
陸部2の少なくとも1つは、両端が周方向溝1に開口しておらず、かつ、その溝底の最深部の溝深さがトレッド部全体の厚さの80%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上)である1以上の横溝を有する。また、これ以外に、片端または両端が周方向溝1に開口している横溝および/またはサイプが設けられていてもよい。なお、本明細書において、周方向溝、横溝を含め「溝」は、少なくとも2.0mmよりも大きい幅の凹みをいう。一方、本明細書において、「サイプ」は、幅が2.0mm以下、好ましくは0.5~2.0mmの細い切り込みをいう。
【0042】
本開示では、特に言及された場合を除き、タイヤの各部材の寸法および角度は、タイヤが正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤに空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤには荷重がかけられない。なお、本明細書において「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”とする。本明細書において「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”とする。
【0043】
本開示における「破壊エネルギー」は、各試験用加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を、80℃雰囲気下で7日間熱老化させた後、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、130℃雰囲気下にて引張試験を実施した。破断時強度(TB)(MPa)、および破断時伸び(EB)(%)を測定し、下記式により求めたものである。数値が大きいほど、耐チッピング性能に優れることを示す。
(破壊エネルギー)=(TB×EB)/2
【0044】
第一層6を構成するゴム組成物の破壊エネルギーは、1000以上であり、1050以上が好ましく、1100以上がより好ましい。破壊エネルギーを前記の範囲とすることにより、ゴムの補強性が担保でき、耐チッピング性能が向上すると考えられる。一方、第一層6を構成するゴム組成物の破壊エネルギーの上限値は、特に制限されない。
【0045】
本開示における「70℃tanδ」は、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下での損失正接tanδを指す。低燃費性能の向上効果をより良好に発揮する観点から、第一層6を構成するゴム組成物の70℃tanδの値は、第二層7を構成するゴム組成物の70℃tanδの値よりも大きいことが好ましい。第一層6を構成するゴム組成物の70℃tanδは、0.08以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.11以上がさらに好ましく、0.12以上がさらに好ましく、0.13以上がさらに好ましく、0.14以上が特に好ましい。また、第二層7を構成するゴム組成物の70℃tanδは、0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.06以上がさらに好ましく、0.07以上が特に好ましい。一方、第一層6および第二層7を構成するゴム組成物の70℃tanδは、低燃費性能の観点から、0.16以下が好ましく、0.14以下がより好ましく、0.13以下がさらに好ましい。第一層6を構成するゴム組成物の70℃tanδと第二層7を構成するゴム組成物の70℃tanδとの差は、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましく、0.04以上が特に好ましい。
【0046】
本開示における「70℃E*」は、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下での複素弾性率E*(MPa)δを指す。第一層6を構成するゴム組成物の70℃E*の値は、第二層7を構成するゴム組成物の70℃E*の値よりも大きいことが好ましい。第一層6を構成するゴム組成物の60℃E’の値を、第二層7を構成するゴム組成物の60℃E’の値より大きくすることにより、第二層7が第一層6に対して、内部に蓄えられた応力を保持する能力(弾性成分)が小さくなり、第二層7による低発熱化の効果が得られやすくなると考えられる。第一層6を構成するゴム組成物の70℃E*は、4.0~15.0MPaが好ましく、5.0~12.0MPaがより好ましく、6.0~10.0MPaがさらに好ましい。また、第二層7を構成するゴム組成物の70℃E*は、3.0~10.0MPaが好ましく、3.5~8.0MPaがより好ましく、4.0~7.0MPaがさらに好ましい。第一層6を構成するゴム組成物の70℃E*と、第二層7を構成するゴム組成物の70℃E*との差は、1.0MPa以上が好ましく、1.5MPa以上がより好ましく、2.0MPa以上がさらに好ましく、2.5MPa以上が特に好ましい。
【0047】
[ゴム組成物]
本開示のタイヤは、前述したタイヤの構造、特にトレッドの形状と、ゴム組成物の前記の物性とが協働することにより、低燃費性能、耐チッピング性能、および操縦安定性能をより効果的に改善することができる。
【0048】
<ゴム成分>
第一層6を構成するゴム組成物は、ゴム成分としてイソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)を必須の成分として含有し、イソプレン系ゴム、SBR、およびBRのみからなるゴム成分としてもよい。第二層7を構成するゴム成分は、イソプレン系ゴムを含むことが好ましく、イソプレン系ゴムおよびBRを含むことがより好ましく、イソプレン系ゴムおよびBRのみからなるゴム成分としてもよい。
【0049】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム等を、変性NRとしてはエポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等を、変性IRとしてはエポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等を挙げることができる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
第一層6を構成するゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム(好ましくはNR)の含有量は、耐チッピング性能の観点から、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましい。一方、第一層6を構成するゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下が特に好ましい。第二層7を構成するゴム組成物がイソプレン系ゴムを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、特に制限されないが、例えば、10質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上とすることができる。
【0051】
(SBR)
SBRとしては特に限定されず、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)等も使用することができる。なかでもS-SBRが好ましく、変性S-SBRがより好ましい。
【0052】
変性SBRとしては、通常この分野で使用される官能基が導入された変性SBRが挙げられる。上記官能基としては、例えば、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、水酸基等の官能基が挙げられる。また、変性SBRとしては、水素添加されたもの、エポキシ化されたもの、スズ変性されたもの等を挙げることができる。
【0053】
SBRとしては油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。油展SBRを用いる場合、SBRの油展量、すなわち、SBRに含まれる油展オイルの含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
【0054】
前記で列挙されたSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記で列挙されたSBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)、ZSエラストマー(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0055】
SBRのスチレン含量は、トレッド部での減衰性の確保およびウェットグリップ性能の観点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。また、グリップ性能の温度依存性および耐摩耗性能の観点からは、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、1H-NMR測定により算出される。
【0056】
SBRのビニル含量は、シリカとの反応性の担保、ゴム強度や耐摩耗性能の観点から10モル%以上が好ましく、13モル%以上がより好ましく、16モル%以上がさらに好ましい。また、SBRのビニル含量は、温度依存性の増大防止、ウェットグリップ性能、破断伸び、および耐摩耗性能の観点から、70モル%以下が好ましく、65モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0057】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から15万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、25万以上がさらに好ましい。また、Mwは、架橋均一性等の観点から、250万以下が好ましく、200万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0058】
第一層6を構成するゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、トレッド部での減衰性の確保の観点から、25質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましい。また、トレッド部の発熱抑制の観点からは、80質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、65質量%以下が特に好ましい。なお、第二層7を構成するゴム組成物がSBRを含有する場合のゴム成分100質量%中の含有量は、特に制限されない。
【0059】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス含量が50%未満のBR(ローシスBR)、シス含量が90%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。変性BRとしては、上記SBRで説明したのと同様の官能基等で変性されたBRが挙げられる。これらのBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)、宇部興産(株)、JSR(株)等より市販されているものを使用することができる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。シス含量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは96質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。なお、本明細書において、シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0061】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル含量が、好ましくは1.8モル%以下、より好ましくは1.0モル%以下、さらに好ましくは0.8%モル以下であり、シス含量が、好ましくは95質量%以上、より好ましくは96質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0062】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0063】
変性BRとしては、末端および/または主鎖がケイ素、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む官能基によって変性された変性ブタジエンゴム(変性BR)が好適に用いられる。
【0064】
その他の変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)等が挙げられる。また、変性BRは、水素添加されていないもの、水素添加されているもののいずれであってもよい。
【0065】
前記で列挙されたBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万以上が好ましく、35万以上がより好ましく、40万以上がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0067】
第一層6および第二層7を構成するゴム成分100質量%中のBRの含有量は、耐チッピング性能の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。また、ウェットグリップ性能の観点からは、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下が特に好ましい。
【0068】
(その他のゴム成分)
本開示に係るゴム成分として、前記のイソプレン系ゴム、SBRおよびBR以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリノルボルネンゴム等のジエン系ゴム;水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらその他のゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
<充填剤>
本開示に係るゴム組成物は、カーボンブラックおよび/またはシリカを含む充填剤が好適に使用される。第一層6を構成するゴム組成物は、充填剤としてシリカを含有し、シリカおよびカーボンブラックを含むことが好ましく、シリカおよびカーボンブラックのみからなる充填剤としてもよい。第二層7を構成するゴム組成物は、充填剤としてカーボンブラックを含むことが好ましく、カーボンブラックのみからなる充填剤としてもよい。
【0070】
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、エボニックデグサ社、ソルベイ社、東ソー・シリカ(株)、(株)トクヤマ等によって製造販売されるものなどを用いることができる。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
シリカの平均一次粒子径は、22nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、18nm以下がさらに好ましく、16nm以下が特に好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上がさらに好ましい。シリカの平均一次粒子径が前期の範囲であることによって、シリカの分散性をより改善でき、補強性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能をさらに改善できる。なお、シリカの平均一次粒子径は、透過型または走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0072】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性およびトレッド部での減衰性の確保の観点から、140m2/g以上が好ましく、150m2/g以上がより好ましく、160m2/g以上がさらに好ましく、170m2/g以上が特に好ましい。また、発熱性および加工性の観点からは、350m2/g以下が好ましく、300m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0073】
シリカの平均一次粒子径は、22nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、18nm以下がさらに好ましく、16nm以下が特に好ましい。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上がさらに好ましい。シリカの平均一次粒子径が前期の範囲であることによって、シリカの分散性をより改善でき、補強性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能をさらに改善できる。なお、シリカの平均一次粒子径は、透過型または走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0074】
第一層6を構成するゴム組成物中における、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、補強性の観点から、25質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、55質量部以上がさらに好ましく、65質量部以上が特に好ましい。また、ゴムの比重を低減させ軽量化を図る観点、またトレッド部の発熱抑制による耐チッピング性能向上の観点からは、120質量部以下が好ましく、105質量部以下がより好ましく、95質量部以下がさらに好ましく、90質量部以下が特に好ましい。なお、第二層7を構成するゴム組成物中における、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、特に制限されない。
【0075】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用でき、具体的にはN110、N115、N120、N125、N134、N135、N219、N220、N231、N234、N293、N299、N326、N330、N339、N343、N347、N351、N356、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N660、N683、N754、N762、N765、N772、N774、N787、N907、N908、N990、N991等を好適に用いることができ、これ以外にも自社合成品等も好適に用いることができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐候性や補強性の観点から、50m2/g以上が好ましく、80m2/g以上がより好ましく、100m2/g以上がさらに好ましい。また、分散性、低燃費性能、破壊特性および耐久性の観点からは、250m2/g以下が好ましく、220m2/g以下がより好ましい。なお、本明細書におけるカーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」のA法に準じて測定される値である。
【0077】
第一層6を構成するゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐候性や補強性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、トレッド部の発熱抑制による耐チッピング性能向上の観点からは、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。第二層7を構成するゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、20~100質量部が好ましく、25~80質量部がより好ましく、30~60質量部がさらに好ましい。
【0078】
本開示に係る充填剤は、シリカおよびカーボンブラック以外の充填剤を含んでいてもよい。シリカおよびカーボンブラック以外の充填剤としては、タイヤ工業で一般的に使用される充填剤をいずれも使用することができ、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、クレー、炭酸カルシウム、マイカ等が挙げられる。
【0079】
第一層6を構成するゴム組成物中における、ゴム成分100質量部に対する充填剤の合計含有量は、補強性の観点から60質量部以上であり、65質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、75質量部以上がさらに好ましい。また、ゴムの比重を低減させ軽量化を図る観点、またトレッド部の発熱抑制による耐チッピング性能向上の観点からは、130質量部以下が好ましく、115質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましく、95質量部以下が特に好ましい。第二層7を構成するゴム組成物中における、ゴム成分100質量部に対する充填剤の合計含有量は、20~100質量部が好ましく、25~80質量部がより好ましく、30~60質量部がさらに好ましい。
【0080】
第一層6を構成するゴム組成物中における、充填剤100質量%中のシリカの含有率は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。また、該シリカの含有率は、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましい。
【0081】
<シランカップリング剤>
本開示に係るゴム組成物は、シリカとともにシランカップリング剤が併用される。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、下記のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤;等が挙げられる。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤および/またはメルカプト系シランカップリング剤が好ましく、メルカプト系シランカップリング剤がより好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
メルカプト系シランカップリング剤は、下記式(1)で表される化合物、および/または下記式(2)で表される結合単位Aと下記式(3)で表される結合単位Bとを含む化合物であることが好ましい。
【化1】
(式中、R
101、R
102、およびR
103は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ、または-O-(R
111-O)
z-R
112(z個のR
111は、それぞれ独立して、炭素数1~30の2価の炭化水素基を表し;R
112は、炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、炭素数6~30のアリール、または炭素数7~30のアラルキルを表し;zは、1~30の整数を表す。)で表される基を表し;R
104は、炭素数1~6のアルキレンを表す。)
【化2】
【化3】
(式中、xは0以上の整数を表し;yは1以上の整数を表し;R
201は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシルもしくはカルボキシルで置換されていてもよい炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、または炭素数2~30のアルキニルを表し;R
202は、炭素数1~30のアルキレン、炭素数2~30のアルケニレン、または炭素数2~30のアルキニレンを表し;ここにおいて、R
201とR
202とで環構造を形成してもよい。)
【0083】
式(1)で表される化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記式(4)で表される化合物(エボニックデグサ社製のSi363)等が挙げられ、下記式(4)で表される化合物を好適に使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化4】
【0084】
式(2)で示される結合単位Aと式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物としては、例えば、モメンティブ社製のNXT-Z30、NXT-Z45、NXT-Z60、NXT-Z100等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
ゴム成分100質量部に対するシランカップリング剤の含有量は、シリカの分散性を高め、低燃費性能を向上させる観点から、2.0質量部以上が好ましく、3.0質量部以上がより好ましく、4.0質量部以上がさらに好ましく、4.8質量部以上が特に好ましい。また、耐チッピング性能の低下を防止する観点からは、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、12質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0086】
シランカップリングのシリカ100質量部に対する含有量は、シリカの分散性を高める観点から、2.0質量部以上が好ましく、4.0質量部以上がより好ましく、6.0質量部以上がさらに好ましく、8.0質量部以上が特に好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0087】
<加硫促進剤>
第一層6を構成するゴム組成物は、加硫促進剤としてチウラム系加硫促進剤を必須の成分として含有し、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤を含んでいてもよい。チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤としては、タイヤ工業で一般的に使用される充填剤をいずれも使用することができ、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系等の加硫促進剤等が挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤がより好ましい。第二層7を構成するゴム組成物は、加硫促進剤として、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上を含むことが好ましい。これらの加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
第一層6を構成するゴム組成物に配合される加硫促進剤は、スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上、並びにチウラム系加硫促進剤を含む加硫促進剤してもよく;スルフェンアミド系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、およびグアニジン系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上、並びにチウラム系加硫促進剤のみからなる加硫促進剤してもよく;チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤を含む加硫促進剤してもよく;チウラム系加硫促進剤およびスルフェンアミド系加硫促進剤のみからなる加硫促進剤としてもよい。
【0089】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等が挙げられる。なかでも、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)が好ましい。チウラム系加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。チアゾール系加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。グアニジン系加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0093】
第一層6を構成するゴム組成物中における、ゴム成分100質量部に対するチウラム系加硫促進剤の含有量は、低燃費性能および操縦安定性能の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。また、操縦安定性能の観点から、2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下がさらに好ましく、0.8質量部以下が特に好ましい。
【0094】
第一層6および第二層7を構成するゴム組成物中における、ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の合計含有量は、1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。また、ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の合計含有量は、8.0質量部以下が好ましく、7.0質量部以下がより好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましく、5.0質量部以下が特に好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0095】
<加硫剤>
本開示に係るゴム組成物は、加硫剤を含有することが好ましい。加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0096】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0097】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレキシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0098】
<その他の配合剤>
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、樹脂成分、オイル、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛等を適宜含有することができる。
【0099】
樹脂成分としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられ、これらが水素添加されたものであってもよい。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
本明細書において「C5系石油樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、シクロペンタジエン系樹脂が好適に用いられる。シクロペンタジエン系樹脂としては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)、シクロペンタジエン樹脂、メチルシクロペンタジエン樹脂(水素添加されていないシクロペンタジエン系樹脂)、ならびにこれらのシクロペンタジエン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたシクロペンタジエン系樹脂)が挙げられる。シクロペンタジエン系樹脂としては、例えば、エクソンモービルケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0101】
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0102】
本明細書において「C5C9系石油樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0103】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。テルペン系樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0104】
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、変性ロジン樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、荒川化学(株)、ハリマ化成(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0105】
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0106】
樹脂成分(特に芳香環含有樹脂)の軟化点は、ウェットグリップ性能の観点から、90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点からは、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度として定義され得る。
【0107】
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、発熱性抑制の観点からは、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。
【0108】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。
【0109】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、油展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0110】
ワックスとしては、特に限定されず、タイヤ工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、石油系ワックス、鉱物系ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。なかでも、石油系ワックスが好ましい。石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。これらのワックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、パラメルト社等より市販されているものを用いることができる。
【0111】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0112】
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤としては、例えば、Schill+Seilacher社、パフォーマンスアディティブス社等より市販されているものを使用することができる。
【0113】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
【0114】
老化防止剤としては、特に限定されず、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0116】
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0117】
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0118】
[ゴム組成物およびタイヤの製造]
本開示に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0119】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0120】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0121】
本開示に係るタイヤは、トレッドを備えるものであり、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わない。また、空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等が挙げられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
【0122】
第一層6および第二層7を含むトレッドを備えたタイヤは、前記のゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機で第一層6および第二層7の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。
【実施例】
【0123】
本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0124】
以下、実施例および比較例において用いる各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
SBR1:後述の製造例1で製造した変性溶液重合SBR(スチレン含量:30質量%、ビニル含量:52モル%、Mw:25万、非油展品)
SBR2:後述の製造例2で製造した変性溶液重合SBR(スチレン含量:38質量%、ビニル含量:39モル%、Mw:80万、SBR100重量部にオイル成分25重量部を添加した油展品)
BR1:日本ゼオン(株)製のNipol BR1220(コバルト系触媒の存在下でブタジエンを重合させて得られたBR、シス含量:96質量%、Tg:-105℃、Mw:46万)
BR2:ランクセス(株)製のCB24(Nd系触媒を用いて合成したBR、ビニル含量:0.7モル%、シス含量:96質量%、Mw:50万)
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のVULCAN10H(N134、N2SA:144m2/g)
カーボンブラック2:三菱ケミカル(株)製のN351(N2SA:71m2/g)
シリカ1:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:18nm)
シリカ2:エボニックデグサ社製のウルトラシル9100GR(N2SA:230m2/g、平均一次粒子径:15nm)
シランカップリング剤:モメンティブ社製のNXT-Z45(メルカプト系シランカップリング剤)
オイル:H&R社製のVivaTec400(TDAEオイル)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
不溶性硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミ硫黄(オイル10%含有)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:パフォーマンスアディティブス社製のTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
【0125】
製造例1:SBR1の合成
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、および1,3-ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整し、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達する。重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて反応を行った。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥し、SBR1を得た。
【0126】
製造例2:SBR2の合成
底部に入口、頭部に出口を有し、攪拌機およびジャケットを付けたオートクレーブを反応器(内容積10L)として2基直列に連結し、窒素雰囲気下で、ブタジエン、スチレン、シクロヘキサンを各々所定の比率で混合した。この混合溶液を、活性アルミナを充填した脱水カラムを経由し、不純物を除去するためにn-ブチルリチウムをスタティックミキサー中で混合した後、1基目の反応器底部より連続的に供給し、さらに極性物質として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを所定の速度でそれぞれ1基目の反応器底部より連続的に供給し、反応器内温を95℃に保持した。反応器頭部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目の反応器へ供給した。2基目の反応器の温度を95℃に保ち、変性剤としてテトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(単量体)とオリゴマー成分との混合物を、所定の速度でシクロヘキサン1000倍希釈液として連続的に加え、変性反応を行なった。この重合体溶液を反応器から連続的に抜き出し、スタティックミキサーで連続的に2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加した。次いで、重合体100質量部に対し伸展油(JXTGエネルギー(株)製のNC-140)を25質量部加えた後、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥し、SBR2を得た。
【0127】
(実施例および比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150~160℃になるまで1~10分間混練りし、混練物を得た。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を用いて、所定の形状の口金を備えた押し出し機でトレッドの第一層(厚さ:5.0mm)、および第二層(厚さ:2.0mm)の形状に合わせて押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて、トレッド部が2つのゴム層からなる未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、表2に記載の各試験用タイヤ(サイズ:205/65R15、リム:15×6JJ、内圧:230kPa)を得た。なお、周方向溝の溝深さ(最深部)は5.6mm、両端が周方向溝に開口していない横溝の溝深さ(最深部)は6.0mmとした。
【0128】
<熱老化後の破壊エネルギー>
各試験用加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を、80℃雰囲気下で7日間熱老化させた後、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、130℃雰囲気下にて引張試験を実施した。破断時強度(TB)(MPa)、および破断時伸び(EB)(%)を測定し、破壊エネルギーを下記式により求めた。数値が大きいほど、耐チッピング性能に優れることを示す。
(破壊エネルギー)=(TB×EB)/2
【0129】
<粘弾性試験>
各試験用タイヤのトレッドの第一層および第二層から加硫ゴムを採取し、幅4mm、長さ40mm、厚さ2mmに切り出し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%、周波数10Hzの条件下で、損失正接(tanδ)および複素弾性率E*(MPa)を測定した。
【0130】
<低燃費性能>
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム15×6JJ、内圧230kPa、荷重3.43kN、速度80km/hで走行させたときの転がり抵抗を測定し、その逆数を、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性能に優れることを示す。
【0131】
<耐チッピング性能>
各試験用タイヤをそれぞれ正規リムに組み込み、正規内圧にまで空気を充填した後、車両に装着して不整地を速度50km/時で4時間走行させた。走行後、タイヤ表面に発生した2mm以上のゴム欠けをカウントし、各タイヤについてチッピング数を求め、下記式にて耐チッピング性能指数を算出した。数値が大きいほど、ゴム欠けが少なく、耐チッピング性に優れることを示す。
(耐チッピング性能指数)=(比較例1のチッピング数)/(各試験用タイヤのチッピング数)×100
【0132】
<操縦安定性能>
各試験用タイヤを排気量2000ccのFF乗用車の四輪に装着し、ドライアスファルト面のテストコースにて実車走行を行った。テストドライバーによる120km/hでの走行時の、直進、車線変更、加減速時の各々のフィーリングに基づき、ハンドリング特性を評価した。評価は1点~10点の整数値で行い、評点が高いほどハンドリング特性に優れる評価基準のもと、テストドライバー10名の合計点を算出した。比較例1の合計点を基準値(100)に換算し、各試験用タイヤの評価結果を合計点に比例するように指数化して表示した。
【0133】
低燃費性能、耐チッピング性能、および操縦安定性能の総合性能(低燃費性能指数、耐チッピング性能指数、および操縦安定性能指数の総和)は、300超を性能目標値とする。
【0134】
【0135】
【0136】
表1および表2の結果より、トレッド面を構成するゴム層に、所定のゴム成分、所定の充填剤、シランカップリング剤、およびチウラム系加硫促進剤を所定の割合で配合し、かつ該ゴム層の熱劣化させた後に測定した破壊エネルギーを所定の範囲とした本開示のタイヤは、低燃費性能、耐チッピング性能、および操縦安定性能の総合性能が改善され、低燃費性能、耐チッピング性能、および操縦安定性能のバランスに優れることがわかる。
【符号の説明】
【0137】
1・・・周方向溝
2・・・陸部
3・・・トレッド面
4・・・陸部の延長線
5・・・周方向溝の溝底の最深部の延長線
6・・・第一層
7・・・第二層
8・・・第二層の最外部の延長線