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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240416BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240416BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/01 Z
B41J2/525
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020106072
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000681
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郡谷 尚知
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-197173(JP,A)
【文献】特開2019-197144(JP,A)
【文献】特開2009-271436(JP,A)
【文献】特開2009-109608(JP,A)
【文献】特開2019-159165(JP,A)
【文献】特開2003-302208(JP,A)
【文献】特開2017-116671(JP,A)
【文献】特開2008-298800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/52-2/525
G03G 13/01-13/02
13/14-13/16
13/34
15/00-15/02
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動する転写体と、
前記転写体の回転駆動方向に沿って基本色ごとに直列に配置され、入力画像データに基づいて各基本色のトナー画像の現像を行う複数の現像部を有し、各基本色の前記トナー画像を位置合わせした状態で重ね合わせたカラートナー画像を前記転写体の表面に形成する画像形成部と、
前記転写体に形成された前記カラートナー画像を用紙に転写する転写部と、
前記カラートナー画像の色補正を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、
読取部が前記用紙上の前記カラートナー画像を読み取って得られた読み取り画像の色情報と、前記入力画像データの色情報との差分を求め、前記色情報の差分から、前記入力画像データの色に対する前記用紙上の前記カラートナー画像の色の変動方向を算出し、前記変動方向の情報を基に、変動方向パターンと凹部判断箇所とを対応付けたテーブルを参照して、前記読み取り画像の1又は複数の画素で構成される分割領域ごとに、用紙表面の形状を解析する用紙表面形状解析部と、
前記用紙表面形状解析部で解析された前記分割領域ごとの前記用紙表面の形状を表す凸部及び凹部の情報と、前記読み取り画像の色情報とを基に、前記画像形成部の前記分割領域ごとに設定可能な作像パラメータの補正量を算出する補正量算出部と、を備え
前記用紙表面形状解析部は、前記凸部及び前記凹部の情報と前記入力画像データとから、前記用紙上の印字部における凹部深さ、及び前記印字部に占める前記凸部の割合を表す凸部比率を算出可能に構成されている
画像形成装置。
【請求項2】
回転駆動する転写体と、
前記転写体の回転駆動方向に沿って基本色ごとに直列に配置され、入力画像データに基づいて各基本色のトナー画像の現像を行う複数の現像部を有し、各基本色の前記トナー画像を位置合わせした状態で重ね合わせたカラートナー画像を前記転写体の表面に形成する画像形成部と、
前記転写体に形成された前記カラートナー画像を用紙に転写する転写部と、
前記カラートナー画像の色補正を行う制御部と、
用紙表面の形状を測定して被測定形状に応じた検出信号を出力する用紙表面形状測定装置と、を有し、
前記制御部は、
読取部が前記用紙上の前記カラートナー画像を読み取って得られた読み取り画像の1又は複数の画素で構成される分割領域ごとに、用紙表面の形状を解析する用紙表面形状解析部と、
前記用紙表面形状解析部で解析された前記用紙表面の形状を表す凸部及び凹部の情報と、読取部が前記用紙上の前記カラートナー画像を読み取って得られた読み取り画像の色情報とを基に、前記画像形成部の前記分割領域ごとに設定可能な作像パラメータの補正量を算出する補正量算出部と、を備え、
前記用紙表面形状解析部は、前記用紙表面形状測定装置の前記検出信号と、前記用紙表面の形状との対応関係から、前記用紙上の印字部における凹部深さを算出し、また、前記用紙表面形状測定装置の前記検出信号と前記入力画像データとから、前記印字部に占める前記凸部の割合を表す凸部比率を算出する
画像形成装置。
【請求項3】
前記補正量算出部は、前記読み取り画像の色情報から求められる前記作像パラメータの補正量に対し、前記凹部深さに応じた重み付けを行う
請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記補正量算出部は、前記読み取り画像の色情報から求められる前記作像パラメータの補正量に対し、所定範囲内の前記凹部深さの連続する面積に応じた重み付けを行う
請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記補正量算出部は、前記読み取り画像の色情報から求められる前記作像パラメータの補正量に対し、前記凸部と前記凹部の境界情報に基づいた重み付けを行う
請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記補正量算出部は、計算対象の位置が、前記凸部と前記凹部の境界から前記凹部の中心方向へ離れるほど前記重み付けを小さくする
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記補正量算出部は、計算対象の位置が、前記凸部と前記凹部の境界から前記凹部の中心方向へ離れるほど前記重み付けを小さくしつつ、計算対象の位置が、前記境界から所定距離以上前記凹部の中心方向へ離れている場合には前記重み付けを大きくする
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記補正量算出部は、前記凸部比率に応じたプリント数分の前記色情報を蓄積して前記作像パラメータの補正量を算出する
請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記補正量算出部は、前記凸部と前記凹部の境界線の量に応じたプリント数分の前記色情報を蓄積して前記作像パラメータの補正量を算出する
請求項又はに記載の画像形成装置。
【請求項10】
回転駆動する転写体と、前記転写体の回転駆動方向に沿って基本色ごとに直列に配置され、入力画像データに基づいて各基本色のトナー画像の現像を行う複数の現像部を有し、各基本色の前記トナー画像を位置合わせした状態で重ね合わせたカラートナー画像を前記転写体の表面に形成する画像形成部と、前記転写体に形成された前記カラートナー画像を用紙に転写する転写部と、前記カラートナー画像の色補正を行う制御部と、を含む画像形成装置が備えるコンピューターに実行させるためのプログラムであって
読取部が前記用紙上の前記カラートナー画像を読み取って得られた読み取り画像の色情報と、前記入力画像データの色情報との差分を求め、前記色情報の差分から、前記入力画像データの色に対する前記用紙上の前記カラートナー画像の色の変動方向を算出し、前記変動方向の情報を基に、変動方向パターンと凹部判断箇所とを対応付けたテーブルを参照して、前記読み取り画像の1又は複数の画素で構成される分割領域ごとに、用紙表面の形状を解析する手順と、
解析により得られた前記分割領域ごとの前記用紙表面の形状を表す凸部及び凹部の情報と、前記読み取り画像の色情報とを基に、前記画像形成部の前記分割領域ごとに設定可能な作像パラメータの補正量を算出する手順と、を含み、
前記用紙表面の形状を解析する手順において、前記凸部及び前記凹部の情報と前記入力画像データとから、前記用紙上の印字部における凹部深さ、及び前記印字部に占める前記凸部の割合を表す凸部比率を算出可能に構成されている
ログラム。
【請求項11】
回転駆動する転写体と、前記転写体の回転駆動方向に沿って基本色ごとに直列に配置され、入力画像データに基づいて各基本色のトナー画像の現像を行う複数の現像部を有し、各基本色の前記トナー画像を位置合わせした状態で重ね合わせたカラートナー画像を前記転写体の表面に形成する画像形成部と、前記転写体に形成された前記カラートナー画像を用紙に転写する転写部と、前記カラートナー画像の色補正を行う制御部と、用紙表面の形状を測定して被測定形状に応じた検出信号を出力する用紙表面形状測定装置と、を含む画像形成装置が備えるコンピューターに実行させるためのプログラムであって、
読取部が前記用紙上の前記カラートナー画像を読み取って得られた読み取り画像の1又は複数の画素で構成される分割領域ごとに、前記用紙表面の形状を解析する手順と、
解析により得られた前記分割領域ごとの前記用紙表面の形状を表す凸部及び凹部の情報と、前記読み取り画像の色情報とを基に、前記画像形成部の前記分割領域ごとに設定可能な作像パラメータの補正量を算出する手順と、
前記用紙表面の形状を解析する手順において、前記用紙表面形状測定装置の前記検出信号と、前記用紙表面の形状との対応関係から、前記用紙上の印字部における凹部深さを算出し、また、前記用紙表面形状測定装置の前記検出信号と前記入力画像データとから、前記印字部に占める前記凸部の割合を表す凸部比率を算出する手順と、を含む
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にカラートナー画像を転写する転写部を備えた画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の分野において、トナー消費の抑制や生産性低下の防止の観点から、補正用に特別に用意された画像パターン(補正パッチ)ではないユーザー実画像を用いた色補正方法が提案されている。
【0003】
表面凹凸形状の用紙(エンボス紙等)において、凹部は転写性が低下することで凸部に比べて同じ画像でも色味が変動しやすい現象がある。したがって、色補正方法では、用紙表面の形状の影響を排除し、実画像の検知結果を用いて色補正などの処理を精度良く行うことが求められる。
【0004】
例えば、特許文献1に、用紙の表面形状(エンボス等)を色相変化から判別し、用紙の凸部における色情報に基づいて色補正を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-197173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、色の均一な部分又は凸部の色情報を用いて色補正を行うため、色補正に使用できる色や階調が少なくなり、色補正の精度が低下する。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、用紙表面の形状の影響を排除し、色補正を精度良く行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の画像形成装置は、回転駆動する転写体と、その転写体の回転駆動方向に沿って基本色ごとに直列に配置され、入力画像データに基づいて各基本色のトナー画像の現像を行う複数の現像部を有し、各基本色のトナー画像を位置合わせした状態で重ね合わせたカラートナー画像を転写体の表面に形成する画像形成部と、転写体に形成されたカラートナー画像を用紙に転写する転写部と、カラートナー画像の色補正を行う制御部と、を有する。
制御部は、用紙表面の形状を解析する用紙表面形状解析部と、その用紙表面形状解析部で解析された用紙表面の形状を表す凸部及び凹部の情報と、読取部が用紙上のカラートナー画像を読み取って得た読み取り画像の色情報とを基に、画像形成部の作像パラメータの補正量を算出する補正量算出部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一態様によれば、画像が形成された用紙の凸部における色情報だけではなく、凹部における色情報も取得して色補正を行うことで、用紙の表面形状の影響を排除し、色補正の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の全体構成例を示す正面模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置本体のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る用紙表面形状解析部の内部構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る制御装置による用紙表面形状に基づく画像補正処理の手順例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施形態に係る変動方向パターンと凹部判断箇所とを対応付けた凹部判断用テーブルの例を示す図である。
図6】入力画像データの例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る用紙表面形状解析の第1の例において、変動方向パターン(1)に該当する入力画像データと検出データの例を示す図である。
図8】検出データの測定ポイント別の色情報の例を示す図である。
図9】用紙表面の凹凸形状による色変化を示すグラフである。
図10】色相角変化と凹部深さとの関係例を示すグラフである。
図11】本発明の第1の実施形態に係る用紙表面形状解析の第2の例において、塗工紙を用いた場合の検出位置とセンサー出力電圧の例を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る用紙表面形状解析の第2の例において、エンボス紙を用いた場合の検出位置とセンサー出力電圧の例を示す図である。
図13】センサー出力電圧と凹部深さとの関係例を示すグラフである。
図14】エンボス紙を用いた場合の検出位置と凹部深さの例を示す図である。
図15図12に示す特性のエンボス紙を用いた場合における用紙表面形状の測定結果を示す図である。
図16】画素数(位置)と凹部深さと転写性の関係例を示すグラフである。
図17】凹部深さと重み付け係数との対応関係を示す重み付け設定テーブルの例を示す図である。
図18】本発明の第2の実施形態に係る所定範囲内の凹部深さの連続する面積に応じた重み付けを説明するための入力画像パターン(1)を示す図である。
図19】本発明の第2の実施形態に係る所定範囲内の凹部深さの連続する面積に応じた重み付けを説明するための入力画像パターン(2)を示す図である。
図20】凹部面積と重み付け係数との対応関係を示す重み付け設定テーブルの例を示す図である。
図21】本発明の第3の実施形態の第1の例における凸部と凹部の境界情報に基づいた重み付けを説明するための図であって、凸部と凹部の境界からの距離と凹部深さとの関係例を示す。
図22】本発明の第3の実施形態の第1の例における凸部と凹部の境界からの距離と重み付け係数の対応関係を示す重み付け設定テーブルの例を示す図である。
図23】本発明の第3の実施形態の第2の例における凸部と凹部の境界情報に基づいた重み付けを説明するための図であって、凸部と凹部の境界からの距離と凹部深さとの関係例を示す。
図24】本発明の第3の実施形態の第2の例における凸部と凹部の境界からの距離と重み付け係数の対応関係を示す重み付け設定テーブルの例を示す図である。
図25】本発明の第4の実施形態に係る凹部比率と蓄積するプリント数の対応関係を示す蓄積枚数設定テーブルの例を示す図である。
図26】5枚分の検出データと色空間の要素ごとの平均値の例を示す図である。
図27】本発明の第5の実施形態に係る境界線の量に応じて数プリント分の情報から補正量を算出する方法を説明するための入力画像パターン(1)を示す図である。
図28】本発明の第5の実施形態に係る境界線の量に応じて数プリント分の情報から補正量を算出する方法を説明するための入力画像パターン(2)を示す図である。
図29】所定深さの凹部の画素数と境界線の量(画素数)の例を示す図である。
図30】境界線の量(画素数)と蓄積するプリント数の対応関係を示す蓄積枚数設定テーブルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照して説明する。説明は下記の順序で行う。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
1.第1の実施形態(凹部深さに応じた重み付けの例)
2.第2の実施形態(所定範囲内の凹部深さの連続する面積に応じた重み付けの例)
3.第3の実施形態(凸部と凹部の境界情報に基づいた重み付けの例)
4.第4の実施形態(凸部比率に応じて数プリント分の情報から補正量を算出する例)
5.第5の実施形態(境界線の量に応じて数プリント分の情報から補正量を算出する例)
6.変形例
【0012】
<1.第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本発明の第1の実施形態では、用紙表面の形状を解析し、解析結果として得られた凸部及び凹部における色情報を色補正に反映する。このとき、読み取り画像の色情報から求める作像パラメータの補正量に対し、凹部深さに応じた重み付けを行う。
【0013】
[画像形成装置の全体構成]
まず、本発明の第1の実施形態に係る画像形成システムの全体構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る画像形成装置の全体構成例を示す正面模式図である。
【0014】
図1に示す画像形成システム1は、画像形成装置本体10と後処理装置60から構成される。画像形成装置本体10は、例えば複写機といった電子写真方式の画像形成装置である。この画像形成装置本体10は、各基本色に対応する複数の感光体ドラム(転写体の一例)を無端状の中間転写ベルト16(転写体の一例)に対面させて縦方向に配列することによりフルカラーの画像を形成する、いわゆるタンデム型カラー画像形成装置である。画像形成装置本体10は、受信したジョブに含まれる原稿画像をページごとに用紙に形成するとともに、画像形成と並行して色補正を行うことができる。
【0015】
画像形成装置本体10は、画像形成部11と、用紙搬送部20と、定着器30と、原稿読取部40と、操作表示部50(操作部の一例)を備える。
【0016】
画像形成部11は画像形成部の一例で、イエロー(Y)の画像を形成する画像形成部11Yと、マゼンタ(M)の画像を形成する画像形成部11Mと、シアン(C)の画像を形成する画像形成部11Cと、ブラック(K)の画像を形成する画像形成部11Kを備える。Y,M,C,Kの各色は本実施形態の基本色である。
【0017】
画像形成部11Yは、感光体ドラムYとその周辺に配置された帯電部12Y、レーザダイオード130Yを有する光書込部13Y、現像装置14Y(現像部の一例)、及びドラムクリーナ15Yを備える。同様に、画像形成部11M,11C,11Kは、感光体ドラムM,C,K及びその周辺に配置された帯電部12M,12C,12K、レーザダイオード130M,130C,130Kを有する光書込部13M,13C,13K、現像装置14M,14C,14K(現像部の一例)、及びドラムクリーナ15M,15C,15Kを備える。
【0018】
感光体ドラムYは、帯電部12Yにより表面が一様に帯電させられており、光書込部13Yのレーザダイオード130Yによる走査露光により、感光体ドラムYには潜像が形成される。さらに、現像装置14Yは、トナーを用いて現像を行うことによって感光体ドラムY上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラムY上には、イエローに対応する所定色の画像(トナー画像)が形成される。
【0019】
同様に、感光体ドラムMは、帯電部12Mにより表面が一様に帯電させられており、光書込部13Mのレーザダイオード130Mによる走査露光により、感光体ドラムMには潜像が形成される。さらに、現像装置14Mは、トナーを用いて現像を行うことによって感光体ドラムM上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラムM上には、マゼンタに対応する所定色のトナー画像が形成される。
【0020】
感光体ドラムCは、帯電部12Cにより表面が一様に帯電させられており、光書込部13Cのレーザダイオード130Cによる走査露光により、感光体ドラムCには潜像が形成される。さらに、現像装置14Cは、トナーを用いて現像を行うことによって感光体ドラムC上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラムC上には、シアンに対応する所定色のトナー画像が形成される。
【0021】
感光体ドラムKは、帯電部12Kにより表面が一様に帯電させられており、光書込部13Kのレーザダイオード130Kによる走査露光により、感光体ドラムKには潜像が形成される。さらに、現像装置14Kは、トナーを用いて現像を行うことによって感光体ドラムK上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラムK上には、ブラックに対応する所定色のトナー画像が形成される。以下の説明において、現像装置14Y,14M,14C,14Kを特に区別する必要がない場合には、「現像装置14」と呼ぶことがある。
【0022】
感光体ドラムY,M,C,K上に形成されたトナー画像は、1次転写ローラ17Y,17M,17C,17Kにより、無端状の中間転写体である中間転写ベルト16上の所定位置へと逐次転写される。中間転写ベルト16上に転写された各色よりなるトナー画像は、用紙搬送部20により所定のタイミングで搬送される用紙Sに対して、2次転写部18で転写される。
【0023】
2次転写部18における用紙の排出側には、定着器30(定着部の一例)が設けられている。この定着器30は、用紙Sを搬送しながら用紙Sを加圧及び加熱して、転写されたトナー画像を用紙Sに定着させる。定着器30は、一対の加熱ローラ31(加熱部材)と加圧ローラ32(加圧部材)から構成される。加熱ローラ31は、該加熱ローラ31を加熱する熱源としてのヒータ33を内蔵している。加熱ローラ31及び加圧ローラ32は、互いに接離可能に構成されており、加熱ローラ31と加圧ローラ32とが接する位置には、圧接部として定着ニップ部が形成される。
【0024】
原稿読取部40は、走査露光装置の光学系により原稿の画像を走査露光し、その反射光をラインイメージセンサーにより読み取って画像信号を得る。なお、画像形成装置本体10は、その上部に、原稿を給紙する図示しない自動原稿搬送装置が備えられる構成でもよい。
【0025】
操作表示部50は、LCD(Liquid Crystal Display)51、LCD51を覆うように設けられたタッチパネル、各種スイッチやボタン、テンキー、操作キー群等から構成される。操作表示部50は、ユーザーの操作を受け付けて操作内容に応じた操作信号を生成する。また操作表示部50は、制御装置100(図2参照)から入力される表示信号に応じた操作画面をLCD51上に表示する。
【0026】
用紙搬送部20は、用紙Sが収納される複数の給紙トレイ21と、給紙トレイ21に収納された用紙Sを繰り出す給紙部21aを備える。また、用紙搬送部20は、給紙トレイ21から繰り出された用紙Sが搬送される主搬送路23と、用紙Sの表裏を反転させる反転搬送路24を備える。
【0027】
用紙搬送部20は、定着器30の下流側で主搬送路23から反転搬送路24が分岐し、主搬送路23と反転搬送路24の分岐箇所に切換ゲート23aを備える。画像形成装置本体10では、主搬送路23を搬送され、2次転写部18及び定着器30を通過した用紙Sの上側を向いた面に、画像が形成される。用紙Sの両面に画像を形成する場合、上側を向いた一の面に画像が形成された用紙Sが主搬送路23から反転搬送路24に搬送され、反転搬送路24から主搬送路23へ搬送されることで、画像形成面が下側を向く。これにより、用紙Sが表裏反転され、上側を向いた他の面に画像を形成することが可能となる。
【0028】
また、主搬送路23の上方には用紙表面形状測定装置22が設けられている。用紙表面形状測定装置22は、主搬送路23を搬送されてきた用紙の表面の形状(状態)を測定し、測定結果として用紙表面形状に応じた検出信号を制御装置100へ出力する。用紙表面形状測定装置22として、例えば反射型光学センサーなどの光学センサーを用いることができる。以下では、用紙表面形状測定装置22を「センサー」と呼ぶことがある。
【0029】
画像形成装置本体10の後段には、主搬送路23と接続する後処理装置60が配置されている。後処理装置60は、定着器30から供給されるトナー画像が形成された用紙Sに、必要に応じて後処理を行う装置である。この後処理装置60は、ソート部、ステープル部、パンチ部、折り部等の各種後処理部(図示略)を有している。後処理装置60は、画像形成装置本体10から排出された用紙Sに対して各種後処理を施し、後処理が施された用紙Sを排紙トレイ25に排出する。
【0030】
また、後処理装置60の用紙Sの搬入口から排紙トレイ25に至る搬送路の途中に、画像形成装置本体10から搬送された用紙Sに形成された画像(出力画像)を読み取るインラインセンサー61(読取部の一例)が設けられている。インラインセンサー61は、搬送路の上方に設置されており、搬送された用紙Sの上面に形成された画像を読み取る。
【0031】
インラインセンサー61としては、不図示の複数の光電変換素子を用紙の搬送方向と直交する方向である用紙幅方向(主走査方向)の全域にわたって直線状に配列したラインセンサーが使用される。もしくは、インラインセンサー61として、光電変換素子をマトリクス状に配置したイメージセンサーを使用してもよい。インラインセンサー61は、用紙Sに形成された出力画像に対し、光電変換素子の各々が備える光源から所定の直径のビームスポットを有するビームを照射する。そして、インラインセンサー61は、反射光を例えばR(赤),G(緑),B(青)に分光してそれぞれの反射率情報を取得することで出力画像を読み取り、読み取った画像の色を検知する。
【0032】
ラインセンサー及びイメージセンサーとしては、CCD型のイメージセンサーやCMOS型(MOS型を含む)のイメージセンサーを利用できる。なお、インラインセンサー61を搬送路の上方に配置したが、搬送路の下方にもインラインセンサーを設置し、用紙Sの両面の画像をワンパスで読み取るようにしてもよい。また、インラインセンサーは、定着器30の用紙搬送方向の下流側に配置されればよく、画像形成装置本体10に配置されてもよい。
【0033】
[画像形成装置のハードウェア構成]
図2は、画像形成装置本体10のハードウェア構成例を示すブロック図である。図2には、本実施形態の説明に必要と考える要素又はその関連要素を記載しており、画像形成装置の制御系はこの例に限られない。
【0034】
画像形成装置本体10は、用紙Sを給紙し、画像を形成して排紙する一連の制御を行う制御装置100(制御部の一例)、及び不揮発性ストレージ110を備える。制御装置100は、不図示のCPU(Central Processing Unit)からなる演算処理装置と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリを備える。ROMには、制御装置100のCPUが実行するプログラム又はプログラムの実行時に使用するデータ等が記憶されている。ROMは、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の内容の書き換えが可能な不揮発メモリでもよい。CPUに代えてMPU(Micro-Processing Unit)を用いてもよい。
【0035】
不揮発性ストレージ110は、不揮発性の記憶部の一例であり、制御装置100のCPUがプログラムを実行する際に使用するパラメータ、又はプログラムを実行して得られたデータなどが記憶される。不揮発性ストレージ110に、制御装置100のCPUが実行するプログラムを記憶してもよい。不揮発性ストレージ110には、例えば半導体メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、ICカード、SDカード、DVD等が適用される。
【0036】
制御装置100は、操作表示部50から操作信号を受信し、該操作信号に応じた制御を行う。また、制御装置100は、操作表示部50に表示信号を出力し、操作表示部50が、各種操作指示や設定情報を入力するための各種設定画面や各種処理結果等を表示する操作画面をLCD51上に表示する。
【0037】
また、制御装置100は、画像形成された用紙Sの表面の形状(凹凸)を解析し、用紙表面形状の解析結果と読み取り画像の色情報とに基づいて、次の用紙Sに形成する画像の色補正(画質調整)を行う。
【0038】
通信I/F102は、LAN等のネットワーク又は専用線を介して操作端末であるパーソナルコンピュータ(PC)120との間でデータを送受信するインターフェースである。通信I/F102には、例えばNIC(Network Interface Card)やモデム等が用いられる。
【0039】
画像形成装置本体10が用紙Sに画像を形成する通常の動作(プリント動作)について説明すると、制御装置100は、用紙搬送部20を制御して用紙Sを搬送する。制御装置100は、原稿読取部40で原稿から取得した画像データ、あるいは、外部から取得した入力画像データに基づき、画像形成部11及び2次転写部18を制御して、用紙Sに出力画像(カラートナー画像)を形成する。そして、制御装置100は、定着器30を制御して出力画像を用紙Sに定着させ、出力画像が形成された用紙Sを後処理装置60へ搬送する。制御装置100は、後処理装置60を制御して用紙Sを排紙トレイ25に排出する。
【0040】
また、制御装置100は、用紙に形成した出力画像をインラインセンサー61により読み取り、読み取り画像の色情報に基づいて基本色ごとに作像パラメータ(画像形成条件)を補正する。
【0041】
制御装置100の構成についてさらに説明する。
制御装置100は、用紙表面形状解析部101、補正量算出部102、及び設定情報管理部103を備える。制御装置100のCPUが、ROM又は不揮発性ストレージ110からプログラムを読み出して実行することにより、各ブロックの機能が実現される。
【0042】
用紙表面形状解析部101は、用紙Sの表面の状態(凹凸形状)を解析する。この用紙の凹部と凸部は、相対的な形状の違いと考えてよい。大きく分けて二つの方法で用紙表面形状を解析することができる。一つ目の方法では、用紙表面形状解析部101は、後処理装置60のインラインセンサー61で検知される読み取り画像の色情報を取得し、読み取り画像の色情報に基づいて用紙表面形状を解析する。二つ目の方法では、用紙表面形状解析部101は、用紙表面形状測定装置22による用紙Sの表面についての測定結果(検出信号)を取得し、用紙表面の測定結果に基づいて用紙表面形状を解析する。そして、用紙表面形状解析部101は、用紙表面形状についての解析結果を、補正量算出部102へ出力する。この二つの方法については、後に図5図15を用いて詳細に説明する。
【0043】
本実施形態では、用紙S上のカラートナー画像から得た読み取り画像を複数の領域に分割する。分割領域は、1又は複数の画素で構成される。例えば、読み取り画像の色情報に基づいて用紙表面形状を解析する際に、同じ階調データ(色相)が同じ形状部(凹部又は凸部の一方のみ)にある場合には、変動方向からはその形状を判断できない。そのため、用紙表面形状解析部101は、対象の分割領域の周囲にある分割領域についての判断結果(形状)に基づいて、対象の分割領域の形状を推定する。この分割領域は、用紙表面形状測定装置22を用いて用紙表面形状を解析する場合にも適用できる。本実施形態では、出力画像(カラートナー画像)の読み取り単位として、格子状の読み取り領域を設定する。例えば、出力画像を、特許文献1のようにx方向(主走査方向)にm分割し、y方向(副走査方向)にn分割する。以下、色の変動を単に「変動」と呼ぶことがある。
【0044】
補正量算出部102は、用紙表面形状解析部101から入力される用紙S表面の形状情報(凹部及び/又は凸部)に応じて、読み取り画像の各分割領域の色情報に重みづけを行い、画像形成部11による画像形成時の作像パラメータの補正量を算出(画質調整)する。補正量の算出方法については、後に図16図30を用いて詳細に説明する。制御装置100は、補正量算出部102で算出された補正量に基づいて色補正を行う。すなわち、制御装置100は、補正量に基づいて基本色ごとに作像パラメータを調整(画質調整)する。
【0045】
設定情報管理部103は、用紙表面形状解析部101による用紙表面形状の解析及び補正量算出部102による補正量算出で使用する、相関データDやテーブルTなどを不図示のROM又は不揮発性ストレージ110に保存して管理する。
【0046】
例えば相関データDとして、後述する相関データD1(図10)、相関データD2(図13)がある。また、例えばテーブルTとして、後述する凹部判断テーブルT0(図6)、重み付け設定テーブルT1~T4(図17図20図22図24)、及び蓄積枚数設定テーブルT5~T6(図25図30)がある。
【0047】
[用紙表面形状解析部]
次に、用紙表面形状解析部101の内部構成について図3を参照して説明する。
図3は、用紙表面形状解析部101の内部構成例を示すブロック図である。
【0048】
用紙表面形状解析部101は、凹凸判定部1011、凹部深さ算出部1012、及び凸部比率算出部1013を備える。凹凸判定部1011は、用紙Sの表面について、その状態(凹凸形状)を分割領域ごとに判定する。また、凹部深さ算出部1012は、用紙Sの表面において凹部と判定された分割領域の深さを算出する。また、凸部比率算出部1013は、用紙Sの表面において凸部と判定された分割領域の、用紙Sに形成された画像に占める比率を計算する。これらの判定方法及び計算方法の詳細については後述する。
【0049】
[画像補正処理の手順]
次に、制御装置100による用紙表面形状に基づく画像補正処理の手順について図4を参照して説明する。
【0050】
図4は、制御装置100による用紙表面形状に基づく画像補正処理の手順例を示すフローチャートである。
まず、制御装置100は、PC105等から入力されたジョブに基づいて、基本色ごとに作像パラメータ(画像形成条件)を設定する(S1)。
次いで、制御装置100は、プリント画像を出力する(S2)。すなわち制御装置100は、作像パラメータに基づいて画像形成部11により用紙Sに画像を形成する。
【0051】
次いで、制御装置100は、用紙表面形状測定装置22により用紙表面形状を測定し、用紙表面形状解析部101により用紙表面形状を解析する(S3)。
【0052】
次いで、制御装置100は、インラインセンサー61により用紙S上の出力画像を読み取り、読み取り画像の色情報を検知する(S4)。
【0053】
次いで、制御装置100は、読み取り画像の色情報に基づいて用紙表面形状解析部101により用紙S表面の形状を解析する(S5)。
【0054】
次いで、制御装置100は、補正量算出部102により作像パラメータの補正量を算出し、その補正量に基づいて作像パラメータを補正する(S6)。そして、制御装置100は、補正した作像パラメータを、次に印刷する画像の作像パラメータに設定する。ステップS7の処理後、本フローチャートの処理を終了する。
【0055】
ステップS3における用紙表面形状測定装置22を用いた用紙表面形状の測定/解析処理と、ステップS5における出力画像の色情報に基づく用紙表面形状の解析処理は、いずれか一方のみを実行すればよい。また、両方の処理を実行してもよい。例えば、ある分割領域について二つの方法で同じ解析結果が出たときに当該解析結果を採用してもよい。または、二つの方法で異なる解析結果が出たときには、予め設定された方法による解析結果を採用するようにしてもよい。あるいは、用紙表面形状測定装置22を用いた用紙表面形状の解析結果を、出力画像の色情報に基づく用紙表面形状の解析結果により検証してもよい。また、その逆の方法で解析及び検証してもよい。このように、二つの方法を組み合わせることで、用紙表面形状についての解析の精度が上がる。
【0056】
[凹部判断用テーブル]
ここで、ステップ5の処理において、用紙表面形状解析部101が参照する凹部判断用テーブルについて図5を参照して説明する。
【0057】
図5は、変動方向パターンと凹部判断箇所とを対応付けた凹部判断用テーブルT0の例を示す。
凹部判断用テーブルT0では、4つの変動方向パターンの各々について凹部判断箇所が設定されている。変動方向パターンは、2箇所の測定ポイント(分割領域に相当)の検出データ(色情報)に対する分析結果の組み合わせで決まる。
【0058】
・変動方向パターン(1)は、2箇所の測定ポイントにおいて、印字下流色側への変動と、変動なしが混在しているパターンである。このパターンの場合には、凹部判断箇所は、印字下流色側に変動している箇所である。
・変動方向パターン(2)は、2箇所の測定ポイントにおいて、印字上流色側への変動と、変動なしが混在しているパターンである。このパターンの場合には、凹部判断箇所は、変動していない箇所である。
【0059】
・変動方向パターン(3)は、2箇所の測定ポイントにおいて、印字下流色側への変動のみであり、かつ変動量に差分があるパターンである。このパターンの場合には、凹部判断箇所は、より印字下流色側へ変動した箇所である。
・変動方向パターン(4)は、2箇所の測定ポイントにおいて、印字下流色側への変動のみであり、かつ変動量に差分がないパターンである。このパターンの場合には、変動方向からは凹部を判別不能であるため、周辺画素情報(周辺領域情報)から推測する。
【0060】
以下に、入力画像データにおいて、検出されたデータから用紙形状を判断する実施例を示す。なお、測定ポイントの色が変動したと判断する閾値などを設けると、色変動の有無の判断の精度向上につながる。
【0061】
[画質調整/補正量算出の基本例]
基本的な画質調整方法では、検出した出力画像の色情報と入力画像データとを対応付け、対象位置において色情報と色目標との差分から作像パラメータ(画像形成条件)の補正量を算出する。補正する作像パラメータとして、プロセスパラメータ(現像DCバイアス、書き込み光量、1次転写電圧など)やガンマテーブルなどを選択する。以下、現像DCバイアスを例に説明する。
【0062】
図6は、入力画像データの例を示す。最大値を100とする。
入力画像データが(Y100,M100,C0,K0)の場合、該当色の色目標と検出した色情報との差分から現像装置14における現像DCバイアスの補正量を求める。彩度Cは、a座標の原点からの距離であり、C=(a+b1/2の関係式が成り立つ。原点からの距離が遠いほど、色彩が強い。Vdcは現像DCバイアスを表し、Vdcの添え字(アルファベット)は基本色を表す。
【0063】
(現像DCバイアス算出方法)
Vdc-Y現在値:500[-V]
Vdc-M現在値:450[-V]
Vdc-Y補正量:現在値×(彩度C目標値/彩度C検出値)-現在値
=500×(82.6/79.1)-500=22[-V]
Vdc-M補正量:現在値×(彩度C目標値/彩度C検出値)-現在値
=450×(82.6/79.1)-450=20[-V]
【0064】
よって、次画像に設定する現像DCバイアスは、以下のようになる。
Vdc-Y=500+22=522[-v]
Vdc-M=450+20=470[-v]
【0065】
本発明では、上述のようにして求めた現像DCバイアス等の作像パラメータの補正量に対し、用紙表面形状に応じて重み付けを行う。重み付けの考え方については後述する。
【0066】
[用紙表面形状解析の第1の例]
次に、第1の実施形態に係る用紙表面形状解析の第1の例について図7図10を参照して説明する。第1の例では、入力画像データが同一の画素における出力画像の検出色情報の変化(色相角Hueの変化)から用紙表面形状を推定する。
【0067】
用紙表面形状解析部101は、インラインセンサー61が用紙S上のカラートナー画像を読み取って得た読み取り画像の色情報と、入力画像データの色情報との差分を求め、色情報の差分から、入力画像データの色に対するカラートナー画像の読み取り画像の色の変動方向を算出する。そして、用紙表面形状解析部101は、色の変動方向の情報を基に、変動方向パターンと凹部判断箇所とを対応付けた凹部判断テーブルT0(図5)を参照して、用紙S表面の形状(状態)を判断する。凹部判断テーブルT0は、不図示のROM又は不揮発性ストレージ110に格納される。
【0068】
ここで、用紙表面形状解析部101の凹凸判定部1011は、入力画像データの色に対する用紙S上のカラートナー画像の色の変動方向が、中間転写ベルト16の回転駆動方向のより上流側に配置された現像装置14の基本色寄り(印字上流色側)か、その反対により下流側に配置された現像装置14の基本色寄り(印字上流色側)かによって、用紙表面の形状を判断する。
【0069】
(変動方向パターン(1)の実施例)
一具体例として、図5に示した変動方向パターン(1)の実施例について図7図9を参照して説明する。
図7は、変動方向パターン(1)に該当する入力画像データと検出データの例を示す。図8は、検出データの測定ポイント別の色情報の例を示す。図9は、用紙表面の凹凸形状による色変化を示すグラフである。
【0070】
図7に示すように、入力画像データ及び検出データ(読み取り画像)ともに、主走査方向に7個の分割領域、及び副走査方向に3個の分割領域を有する場合について説明する。分割領域は、単位画素で構成してもよいし、複数の画素から構成してもよい。以下、主走査方向のn列目を「主走査n」、副走査方向のm行目を「副走査m」のように表現する。測定に用いた用紙表面の形状は、副走査1,3の行が凸部、副走査2の行が凹部である。図7Aにおいて、入力画像データの色情報は、主走査3,7の列の各分割領域がB色(M100%、C100%)、主走査2,6の列、及び主走査3/副走査1~主走査5/副走査1の各分割領域がG色(Y100%、C100%)、残りの各分割領域がR色(Y100%、M100%)である。測定ポイントP1は主走査3/副走査2の位置、測定ポイントP2は主走査3/副走査3の位置である。本実施形態では、プリントエンジン(以下「エンジン」と記す)即ち画像形成部11の色変動なしとする。
【0071】
図7Bでは、読み取り画像の検出データから、副走査2の行の各分割領域に色変動cfが発生している。測定ポイントP1,P2のそれぞれの色情報(本例ではL値)は、図8A図8Bに示すとおりである。測定ポイントP1では、破線で示すように色相角(Hue)が理論値“38.1”から測定値“35.4”へ低下しており、印字下流色側への色変動が検知された。測定ポイントP2については、理論値と測定値に変化がなく色変動なしであった。
【0072】
図9では、L色空間におけるa成分とb成分をグラフ化している。図9のグラフにおいても、下向きの矢印で示すように、測定ポイントP1の色相の測定値が印字下流色側へ変動している。測定ポイントP2については色変動なしである。
【0073】
図7図9に示した2箇所の測定ポイントP1,P2の検出データから、本実施形態では、印字下流色側への変動と、変動なしが混在する場合の変動方向パターン(1)に該当すると判断できる。また、印字下流色側に変動している箇所は測定ポイントP1であるから、測定ポイントP1の形状は凹部であると判断する。もし、画像形成部11に起因する色変動ならば、測定ポイントP1,P2ともに色変動があるはずだが、測定ポイントP1のみ色変動(印字下流色側)している。測定ポイントP2は色変動がないため、凸部であると判断する。用紙表面が平坦である場合、平坦な部分は凹部と比較すると相対的に高いため、凸部と判断できる。
【0074】
(凹部深さ算出方法(1))
次に、凹部深さ算出方法の第1の例について説明する。第1の例では、色相変化量と凹部の深さの相関データを予め記憶しておき、凹部深さ算出部1012は、色相変化量から凹部の深さを算出する。
【0075】
図10は、色相角変化と凹部深さとの関係例を示すグラフとして、相関データD1を示している。ここでは、相関データD1は、Red(Y100,M100)における色相角変化量ΔHue(測定値と理論値の差[°])と凹部深さ[mm]の関係を表している。
測定ポイントP1における色相角変化量ΔHueは2.7°であるから、図10により凹部深さは-1.3mmと求められる。ここでは、凹部深さの絶対値にマイナス符号を付すことで、基準面からの低さを表している。
【0076】
(凸部比率算出方法(1))
次に、凸部比率算出方法の第1の例について説明する。凸部比率算出部1013は、凹凸判定部1011による印字部の分割領域(1以上の画素)ごとの凹凸判定結果を基に、凸部比率[%]を計算式[凸部画素数/印字画素数×100]で求める。
【0077】
例えば、Y100%の印字部の画像サイズが210mm×297mm、解像度が600dpiの場合、印字画素数は34802530pixelであり、凸部と判断した画素数が31500000pixelとすると、凸部比率は、90.5[%]となる。
【0078】
[用紙表面形状解析の第2の例]
次に、第1の実施形態に係る用紙表面形状解析の第2の例について図12図15を参照して説明する。第2の例では、用紙表面形状測定装置22を用いて用紙表面形状を検出する。
【0079】
図11は、塗工紙を用いた場合の検出位置とセンサー出力電圧の例を示す。図11において、横軸は用紙表面形状測定装置22の主走査方向上の位置(センサー位置[pixel])、縦軸は用紙表面形状測定装置22の出力電圧(センサー出力電圧[V])を示す。
塗工紙は、原紙の表面に顔料と接着剤などを混ぜた塗料を塗布したものであり、非塗工紙と比べ、表面が平滑である。よって、図11に示すように、塗工紙の場合には、センサー出力電圧は2[V]でほぼ一定である。
【0080】
図12は、エンボス紙を用いた場合の検出位置とセンサー出力電圧の例を示す。図12において、横軸はセンサー位置[pixel]、縦軸はセンサー出力電圧[V]を示す。
エンボス紙は、紙の表面に浮き出し模様(凹凸)をつけたものである。そのため、図12に示すように、エンボス紙の場合には、センサー位置に応じてセンサー出力電圧が大きく変化する。図12では、センサー出力電圧が約1.970~2.002[V]の間で変化している。
【0081】
用紙表面形状測定装置22が固定式の場合、用紙表面形状測定装置22による用紙表面形状検出は、用紙表面形状測定装置22が配置された位置のみしか用紙表面の凹凸形状を判断できない。しかし、用紙表面形状測定装置22を主走査方向に複数個配置したり、ラインセンサーを配置したりするなどして、印字部の全域を解析することも可能である。また、用紙表面形状測定装置22を主走査方向に移動させることで、印字部の全域を解析するようにしてもよい。
【0082】
(凹部深さ算出方法(2))
次に、凹部深さ算出方法の第2の例について説明する。第2の例では、センサー出力電圧と凹部の深さの相関データを予め記憶しておき、凹部深さ算出部1012は、センサー出力電圧から凹部の深さを算出する。
【0083】
図13は、センサー出力電圧と凹部深さとの相関例を示すグラフとして、相関データD2を示している。図13において、横軸はセンサー出力電圧[V]、縦軸は凹部深さ[mm]を示す。
図13では、センサー出力電圧が大きいほど凹部深さが浅くなり、センサー出力電圧が1.99[V]以上では凹部深さは0[mm]である。用紙表面形状を検知したデータ(センサー出力電圧)と図13に示す相関データD2を基に凹部深さを算出すると、以下の図14のようになる。
【0084】
図14は、エンボス紙を用いた場合の検出位置と凹部深さの例を示す図である。図14において、横軸は用紙表面形状測定装置22の主走査方向上の位置(センサー位置[pixel])、縦軸は凹部深さ[mm]を示す。凹部深さ算出部1012は、図14に基づいてセンサー位置ごとに凹部深さを算出する。
【0085】
また、凹凸判定部1011は、凹部深さ算出部1012で算出された凹部深さが所定値以上の分割領域を“凹部”、凹部深さが所定値未満の分割領域を“凸部”と判断するようにしてもよい。
【0086】
(凸部比率算出方法(2))
次に、凸部比率算出方法の第2の例について説明する。凸部比率算出部1013は、センサー出力電圧に応じて凸部比率を算出する。ここで、例えばセンサー出力電圧=2.00[V]を基準とした場合、1.99[V]以上は凸部と判断し、1.99[V]未満は凹部とみなす。凸部比率は、第1の例と同様に、[凸部比率[%]=凸部画素数/印字画素数×100]の計算式から求められる。なお、凹部での乱反射等を考慮して0.01[V]のマージンを設定したが、凸部と判断する電圧は1.995又は1.985[V]など他の値でもよい。
【0087】
図15に、図12に示す特性のエンボス紙を用いた場合における用紙表面形状の測定結果と入力画像の例を示す。一点鎖線72は、用紙表面形状測定装置22の測定位置である。
用紙70に形成された赤色画像71(Y100%、M100%)において、赤色画像71の副走査方向の長さは1700[pixel]、そのうち凸部(センサー出力電圧1.99V以上)の画素数は1050[pixel]である。よって、凸部比率は、1050/1700=61.8[%]と求まる。
【0088】
[用紙表面形状(凹凸情報)に基づいた画質調整/補正量の算出方法]
次に、用紙表面形状(凹凸情報)に基づいた画質調整/補正量の算出方法について説明する。本実施形態では、色情報(色相)ごとの補正量に対して凹部深さに応じた重み付けを行う。
【0089】
図16は、画素数(センサー位置)と凹部深さと転写性の関係例を示すグラフである。図16において、横軸はある基準位置からの画素数(センサー位置)、縦軸は凹部深さ[mm]を示す。
【0090】
図16では、画素数の小さい順番の4か所の画素数(1)~(4)において、画素数が増えるほど凹部の深さが深くなっている。凹部深さは、画素数(1)では0mm、画素数(2)では約-0.55mm、画素数(3)では約-1.05mm、画素数(4)では約-1.80mmである。凹部が深いほど転写性が悪くなり、同じ画像であっても凸部に比べて色味の変化が大きくなる。4つの画素数(1)~(4)を転写性が良い順に並べると、(1)>(2)>(3)>(4)である。このため、凹部の深さに応じた重み付け計算により補正量を算出する。
【0091】
図17は、凹部深さと重み付け係数との対応関係を示す重み付け設定テーブルT1の例を示す。凹部深さが深いほど色味の変化が大きく、検出データ(色情報)の信頼性が低い。そこで、凹部深さが深いほど重み付け係数を小さい値に設定する。
【0092】
本例の重み付け設定テーブルT1では、凹部深さが0mm以上かつ-0.5mm未満のとき、重み付け係数が“1.0”に設定されている。
また、凹部深さが-0.5mm以上かつ-1.0mm未満のとき、重み付け係数が“0.8”である。
また、凹部深さが-1.0mm以上かつ-1.5mm未満のとき、重み付け係数が“0.5”である。
また、凹部深さが-1.5mm以上かつ-2.0mm未満のとき、重み付け係数が“0.2”に設定されている。
凹部深さ及び重み付け係数の設定は一例であって、この例に限らない。
【0093】
次に、第1の実施形態における作像パラメータの補正量の算出方法について説明する。
ここでは、図10で求めた測定ポイントP1の凹部深さ1.3mmを例に説明する。重み付け設定テーブルT1より、凹部深さが1.3mmのときの重みづけ係数は0.5であるため、0.5を掛けて現像DCバイアスの補正量を求める。
【0094】
(現像DCバイアス算出方法)
Vdc-Y現在値:500[-v]
Vdc-M現在値:450[-v]
Vdc-Y補正量:{現在値×(彩度C目標値/彩度C検出値)-現在値}×重み付け係数
={500×(82.6/79.1)-500}×0.5=11[-V]
Vdc-M補正量:{現在値×(彩度C目標値/彩度C検出値)-現在値}×重み付け係数
={450×(82.6/79.1)-450}×0.5=10[-V]
【0095】
それぞれ、上述の基本例で算出した補正量に重み付け係数を掛けて、最終的な現像DCバイアスを求める。よって、次画像に最終的に設定する現像DCバイアスは、以下のようになる。
Vdc-Y=500+11=511[-V]
Vdc-M=450+10=460[-V]
【0096】
これらの補正量の計算は、先行の用紙に画像形成してから次の用紙へ画像形成を開始するまでの間で行い、計算結果を次の用紙の画像形成に反映する。他の作像パラメータを補正する場合も同様に計算できる。例えば、現像DCバイアスの現在値の代わりに、他の項目の現在値を代入すればよい。
【0097】
以上のとおり第1の実施形態に係る画像形成装置では、用紙表面の形状を解析し、解析結果として得られた凸部及び凹部における色情報を色補正に反映する。具体的には、凹部の深さに応じた重み付け係数を設定し、分割領域ごとに計算した補正量に対し凹部深さに応じて重み付け係数を適用する。これにより、用紙表面の形状の影響を排除し、色補正を精度良く行うことができる。そして、本実施形態は、用紙表面の形状を解析して色補正を精度良く行うため、誤補正を避けて色味の安定した出力が可能となる。
また、本実施形態に係る画像形成装置は、色補正のためにプリント(画像形成処理)を中断することがないので、生産性低下を抑制できる。
また、本実施形態に係る画像形成装置は、用紙に別途補正用の画像パターンを形成しないため、トナー消費量を抑制できる。
【0098】
<2.第2の実施形態>
次に、第2の実施形態として、所定範囲内の凹部深さの連続する面積に応じた重み付けを行う例について説明する。所定範囲内の凹部深さの連続する面積とは、0より大きい所定範囲内の深さを持ち相互に隣接する凹部によって形成される領域の面積である。
【0099】
図18は、所定範囲内の凹部深さの連続する面積に応じた重み付けを説明するための入力画像パターン(1)を示す。入力画像パターン(1)では、凹部深さが-2.0mmの分割領域の連続する面積は、分割領域2(1×2)個分である。
図19は、所定範囲内の凹部深さの連続する面積に応じた重み付けを説明するための入力画像パターン(2)を示す。入力画像パターン(2)では、凹部深さが-2.0mmの分割領域の連続する面積は、分割領域30(5×6)個分である。
【0100】
図18及び図19に示すように、凹部深さが同じでも、連続する面積が大きいほど転写性が良く、色味の変化が小さい。例えば凹部深さが-2.0mmの領域において、入力画像パターン(1)(図18)は、面積が小さいため転写性が悪く、インラインセンサー61で検出されるデータ(色情報)の信頼性が低い。一方、入力画像パターン(2)(図19)は、面積が大きいため転写性が良く、インラインセンサー61で検出される色情報の信頼性は高い。
【0101】
図20は、所定範囲内の深さを持つ凹部の面積(凹部面積[mm])と重み付け係数との対応関係を示す重み付け設定テーブルT2の例を示す。
【0102】
本例の重み付け設定テーブルT2は、深さ-2.0mm以内の凹部の面積に応じて重み付けを設定した例であり、凹部面積が0mm以上かつ-9mm未満のとき、重み付け係数が“0.1”に設定されている。
また、凹部面積が9mm以上かつ-15mm未満のとき、重み付け係数が“0.3”である。
また、凹部面積が15mm以上かつ-100mm未満のとき、重み付け係数が“0.5”である。
また、凹部面積が100mm以上かつ-400mm未満のとき、重み付け係数が“0.8”である。
また、凹部面積が400mm以上のとき、重み付け係数が“1.0”である。
【0103】
凹部面積及び重み付け係数の設定は一例であって、この例に限らない。これらの重み付け係数に基づく作像パラメータの補正量の算出方法は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0104】
以上のとおり第2の実施形態によれば、所定範囲内の凹部深さの連続する面積に応じた重み付けを行うことで、凹部深さだけではなく凹部の面積に応じた色情報の信頼性が、補正量に加味される。そのため、色補正を精度良く行うことができる。
【0105】
また、本実施形態は、第1の実施形態と同様に、生産性低下の抑制及びトナー消費量の抑制といった効果がある。
【0106】
<3.第3の実施形態>
次に、第3の実施形態として、凸部と凹部の境界情報に基づいた重み付けを行う例について説明する。ここでは、第3の実施形態として第1の例と第2の例を説明する。
【0107】
[第3の実施形態の第1の例]
まず、第3の実施形態の第1の例について図21及び図22を参照して説明する。凸部と凹部の境界からの距離に応じて(凹部の中心に近いほど)凹部深さが大きくなり、色味の変化が大きくなる。色味の変化が大きいほど、検出データ(色情報)の信頼性が低い。そこで、第3の実施形態の第1の例では、凸部と凹部の境界からの距離に応じた重み付け計算を行う。
【0108】
図21は、凸部と凹部の境界情報に基づいた重み付けを説明するための図であって、凸部と凹部の境界からの距離と凹部深さとの関係例を示す。図21において、横軸はある基準位置からの画素数(センサー位置)、縦軸は凹部深さ[mm]を示す。境界閾値Thは、凸部と凹部の境界を設定するための凹部深さの値である。ここでは、境界閾値Thは、凹部深さ-0.5[mm]である。図中左側の境界(1)は凸部と凹部の第1の境界であってその座標(画素数)はA、右側の境界(2)は凸部と凹部の第2の境界であってその座標(画素数)はBである。
【0109】
図22は、凸部と凹部の境界からの距離と重み付け係数の対応関係を示す重み付け設定テーブルT3の例を示す。ここで、凸部と凹部の境界(例えば境界(1))からの距離を、境界(1)から境界(2)までの距離に対する割合[%]で示している。
【0110】
本例の重み付け設定テーブルT3では、凸部と凹部の境界(境界(1))からの距離が0以上かつ「(B-A)×20%」未満のとき、重み付け係数が“0.8”に設定されている。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×20%」以上かつ「(B-A)×40%」未満のとき、重み付け係数が“0.5”である。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×40%」以上かつ「(B-A)×60%」未満のとき、重み付け係数が“0.2”である。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×60%」以上かつ「(B-A)×80%」未満のとき、重み付け係数が“0.5”である。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×80%」以上かつ(B-A)以下のとき、重み付け係数が“0.8”である。
境界からの距離及び重み付け係数の設定は一例であって、この例に限らない。
【0111】
以上のとおり第3の実施形態の第1の例では、計算対象の位置が凸部と凹部の境界(境界(1),(2))から凹部側(凹部中心方向)に離れるほど、重み付けを小さくする。すなわち、計算対象の位置が凹部の中心に近いほど、重み付けを小さくする。これにより、第3の実施形態の第1の例では、凹部内での計算対象の位置(深さ)に応じた色情報の信頼性が、補正量に加味される。したがって、色補正を精度良く行うことができる。
【0112】
また、第3の実施形態の第1の例は、第1の実施形態と同様に、生産性低下の抑制及びトナー消費量の抑制といった効果がある。
【0113】
[第3の実施形態の第2の例]
第2の実施形態で述べたように、凹部の所定深さ範囲内における面積が大きい場合、凹部の転写性が向上するため検出データ(色情報)の信頼性が高くなる。そのため、所定深さ範囲内における面積が大きい凹部では、計算対象の位置が境界よりも凹部側に大きく離れた場合には重み付けを大きくすることが望ましい。凹部の面積が大きい場合は、同面積が小さい場合よりも転写性が良く、検出データ(色情報)の信頼度も高い。
【0114】
図23は、凸部と凹部の境界情報に基づいた重み付けを説明するための図であって、凸部と凹部の境界からの距離と凹部深さとの関係例を示す。図23において、横軸はある基準位置からの画素数(センサー位置)、縦軸は凹部深さ[mm]を示す。図23は、図21と比較して、凹部深さが約-1.5mmを超える部分の面積が大きい。
【0115】
図24は、凸部と凹部の境界からの距離と重み付け係数の対応関係を示す重み付けテーブルT4の例を示す。図22と同様に、凸部と凹部の境界(例えば境界(1))からの距離を、境界(1)から境界(2)までの距離に対する割合[%]で示している。
【0116】
本例の重み付け設定テーブルT3では、凸部と凹部の境界(境界(1))からの距離が0以上かつ「(B-A)×5%」未満のとき、重み付け係数が“0.8”に設定されている。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×5%」以上かつ「(B-A)×10%」未満のとき、重み付け係数が“0.5”である。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×10%」以上かつ「(B-A)×20%」未満のとき、重み付け係数が“0.2”である。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×20%」以上かつ「(B-A)×80%」未満のとき、重み付け係数が“0.8”である。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×80%」以上かつ「(B-A)×90%」未満のとき、重み付け係数が“0.2”である。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×90%」以上かつ「(B-A)×95%」未満のとき、重み付け係数が“0.5”である。
また、凸部と凹部の境界からの距離が「(B-A)×95%」以上かつ(B-A)以下のとき、重み付け係数が“0.8”である。
境界からの距離及び重み付け係数の設定は一例であって、この例に限らない。
【0117】
以上のとおり第3の実施形態の第2の例では、凹部の所定深さ範囲内における面積が大きいとき、計算対象の位置が凸部と凹部の境界(境界(1),(2))から凹部側に離れるにつれて重み付けを小さくしつつ、計算対象の位置が凸部と凹部の境界から凹部側に所定距離以上離れている(中心に近い所定範囲内)場合には重み付けを大きくする。すなわち、計算対象の位置が凹部の中心及びその周辺では、重み付けを大きくする。これにより、第3の実施形態の第2の例では、凹部の所定深さ範囲内における面積と、凹部内での計算対象の位置(深さ)とに応じた色情報の信頼性が、補正量に加味される。そのため、色補正を精度良く行うことができる。この第3の実施形態の第2の例は、第3の実施形態の第1の例を改良した構成とも言える。本例が適用される凹部の面積の大きさは、予め実験などにより求めておく。
【0118】
<4.第4の実施形態>
次に、第4の実施形態として、凸部比率に応じて数プリント分の情報を蓄積して作像パラメータの補正量を算出する例について説明する。本実施形態では、凸部比率に応じて検出データ(色情報)の信頼性を次のように考える。
【0119】
(1)凸部比率が高い(例えば80%以上)用紙ほど、検出データに信頼性の高い色情報量が多い。
(2)凸部比率が低い(例えば10%以下)用紙は、第3の実施形態の第2の例で説明したとおり、凹部面積が大きいため信頼性の高い色情報量は多くなる。
(3)凸部比率と凹部比率が同等な領域ほど、信頼性の高い色情報量は少なくなる。ただし、凸部の色情報の信頼性は高い。そのため、凹部比率よりも凸部比率の方がやや少ない状態(凹部比率が50%以上)のとき、用紙全体として色情報の信頼性が低い。凸部比率と凹部比率のいずれかが一方的に多ければ、信頼性は高くなる。
【0120】
よって、本実施形態では、信頼性の高い色情報量が少ない場合、信頼性の高い色情報量が少ないことを補うためにプリント数(すなわち読み取り画像データの数)を多くして検出データ(色情報)を蓄積する。
【0121】
図25は、凹部比率[%]と蓄積するプリント数の対応関係を示す蓄積枚数設定テーブルT5の例を示す。
【0122】
本例の蓄積枚数設定テーブルT5は、凸部比率が0[%]以上かつ10[%]未満のとき、蓄積するプリント数が“1”に設定されている。
また、凸部比率が10[%]以上かつ30[%]未満のとき、蓄積するプリント数が“3”である。
また、凸部比率が30[%]以上かつ50[%]未満のとき、蓄積するプリント数が“5”である。
また、凸部比率が50[%]以上かつ80[%]未満のとき、蓄積するプリント数が“2”である。
また、凸部比率が80[%]以上かつ100[%]以下のとき、蓄積するプリント数が“1”である。
【0123】
凸部比率及び蓄積するプリント数の設定は一例であって、この例に限らない。例えば、凸部の色情報の信頼性は高いことから、凸部比率の階級(区間)に記載した“50”(未満、以上)を“45”などに変更してもよい。
【0124】
図26は、5枚(又はページ)分の検出データとL色空間における要素ごとの平均値の例を示す。L色空間の要素は、L成分、a成分、b成分、及び彩度Cである。図26の例では、凸部比率が40[%]及び入力画像データが黄色(Y100,M0,C0,K0)のときの、ある凹部深さにおける各要素の値が示されている。
【0125】
補正量算出部102は、5枚分の検出データを蓄積し、L成分、a成分、b成分、及び彩度Cの各要素の平均値を求める。そして、補正量算出部102は、平均値(第1の実施形態の検出値に相当)と目標値から補正量を計算する。ここで、計算対象の位置が凹部であれば、補正量算出部102は、求めた補正量に凹部深さ等に応じた重み付け係数をかける。
【0126】
以上のとおり第4の実施形態によれば、凸部比率に応じて数プリント分の情報を蓄積して作像パラメータの補正量を算出することで、信頼性の高い色情報量が少ないことを補うことができる。これにより、用紙表面の形状の影響を排除し、色補正を精度良く行うことができる。
【0127】
<5.第5の実施形態>
次に、第5の実施形態として、境界線の量に応じて数プリント分の情報を蓄積して作像パラメータの補正量を算出する例について説明する。境界線の量(=凹部領域の離散的な数)とは、ある凹部と周囲の凸部の境界を構成する線(境界線)の延長であり、その長さを画素数で表したものである。一つの入力画像パターン内に複数の凹部がある場合、境界線の量は、複数の凹部の境界線の延長の合計である。
【0128】
図27は、境界線の量に応じて数プリント分の情報から補正量を算出する方法を説明するための入力画像パターン(1)を示す。入力画像パターン(1)では、深さが-2.0mmの凹部が3箇所ある。凹部81は、深さ-2.0mmの連続する面積すなわち画素数が12個である。凹部82,83もそれぞれ同画素数が12個である。
【0129】
図28は、境界線の量に応じて数プリント分の情報から補正量を算出する方法を説明するための入力画像パターン(2)を示す。入力画像パターン(2)では、一つの大きな凹部84がある。凹部84は、深さ-2.0mmの連続する面積すなわち画素数が36個である。
【0130】
図29は、所定深さの凹部の画素数と境界線の量(画素数)の例を示す。
深さ-2.0mmの連続する面積すなわち凹部の画素数は、入力画像パターン(1)と入力画像パターン(2)ともに“36”個である。凸部と凹部の境界線の量(画素数)については、入力画像パターン(1)で“42”個、入力画像パターン(2)で“24”個であり、両者で大きく異なる。
【0131】
用紙内における同じ深さの凹部同士の面積が同じであっても、境界線の量が異なれば信頼できる検出データ(色情報量)も異なる。入力画像パターン(1)のように、境界線の量が多いほど凹部領域が離散している、すなわち信頼性の高い検出データが少ない。
反対に、入力画像パターン(2)のように、用紙内の凹部の面積が同じである場合、境界線の量が少ないほど凹部領域が連続している、すなわち信頼性の高い検出データが多い。これは、第2の実施形態及び第3の第2の例で述べた理由による。
【0132】
よって、本実施形態では、用紙内における凹部の境界線の量が多いほど、信頼性の高い色情報量が少ないことを補うためにプリント数を多くして検出データ(色情報)を蓄積する。
【0133】
図30は、境界線の量(画素数)と蓄積するプリント数の対応関係を示す蓄積枚数設定テーブルT6の例を示す。図30では、解像度600dpiの場合の設定例である。
【0134】
本例の蓄積枚数設定テーブルT6は、境界線の量(画素数)が0以上かつ10未満のとき、蓄積するプリント数が“1”に設定されている。
また、境界線の量が10以上かつ10未満のとき、蓄積するプリント数が“2”である。
また、境界線の量が10以上かつ10未満のとき、蓄積するプリント数が“3”である。
また、境界線の量が10以上のとき、蓄積するプリント数が“4”である。
境界線の量及び蓄積するプリント数の設定は一例であって、この例に限らない。
【0135】
以上のとおり第5の実施形態によれば、境界線の量が多いほどプリント数を多くして蓄積する色情報を増やし、当該色情報を基に作像パラメータの補正量を算出することで、信頼性の高い色情報量が少ないことを補うことができる。これにより、用紙表面の形状の影響を排除し、色補正を精度良く行うことができる。
【0136】
<6.変形例>
上述した各実施形態においては、実画像から色情報を検出する例について説明したが、補正用のパッチパターン(補正用チャート画像)においても同様に適用可能である。
【0137】
また、補正量の算出における重み付けは、各実施形態を複合的に実施してもよい。すなわち、複数の実施形態を組み合わせて実施することができる。例えば、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態(第1の例、第2の例)のいずれか一つを、第4の実施形態及び第5の実施形態のいずれか一つと組み合わせてもよい。この組み合わせにより、凹部深さ、凹部面積、又は凸部と凹部の境界からの距離のいずれかの情報を、複数プリント分蓄積して補正量を算出することができる。それゆえ、これらの実施形態を単独で実施する場合と比べて色補正をさらに精度良く行うことが可能となる。
【0138】
さらに、本発明は上述した各実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【0139】
例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために画像形成システム1の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成要素に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成要素を加えることも可能である。
【0140】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0141】
1…画像形成システム、 10…画像形成装置本体、 11…画像形成部、 18…2次転写部、 22…用紙表面形状測定装置、 61…インラインセンサー(読取部)、100…制御装置、 101…用紙表面形状解析部、 102…補正量算出部、 103…メモリ、 1011…凹凸判定部、 1012…凹部深さ算出部、 1013…凸部比率算出部、 T0…凹部判断テーブル、 T1~T4…重み付け設定テーブル、 T5~T6…蓄積枚数設定テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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