IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-口腔内測定装置 図1
  • 特許-口腔内測定装置 図2
  • 特許-口腔内測定装置 図3
  • 特許-口腔内測定装置 図4
  • 特許-口腔内測定装置 図5
  • 特許-口腔内測定装置 図6
  • 特許-口腔内測定装置 図7
  • 特許-口腔内測定装置 図8
  • 特許-口腔内測定装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-15
(45)【発行日】2024-04-23
(54)【発明の名称】口腔内測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20240416BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
G01B11/24 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020106693
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001163
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義弘
(72)【発明者】
【氏名】長岡 敦
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522883(JP,A)
【文献】特開2019-078748(JP,A)
【文献】国際公開第2019/057316(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/140199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/04
A61B 1/24
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源、TOFセンサー、レンズを含む測定光学系を備え、
前記レーザー光源は、前記TOFセンサーと同期して強度変調され、そのレーザー光を測定領域に照射させ、
前記レンズは、前記測定領域内の測定対象で反射された光の一部を、前記TOFセンサーに集光させ
前記測定光学系は、前記レーザー光源からの光を前記レンズに入射させるビームスプリッターを含み、
前記レンズは、前記ビームスプリッターを介して当該レンズに入射した光を、発散光の状態で前記測定領域に照射し、
前記測定光学系は、前記レンズと前記測定領域との間の光路中に配置されたミラーを含み、
前記ミラーは反射型回折光学素子である、
ことを特徴とする口腔内測定装置。
【請求項2】
前記測定光学系は、前記レンズと前記測定領域との間の光路中に配置されたアパーチャーを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の口腔内測定装置。
【請求項3】
前記レンズから前記TOFセンサーまでの光路長が、前記レンズから前記レーザー光源までの光路長よりも長い、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の口腔内測定装置。
【請求項4】
前記ビームスプリッターは、
前記レーザー光源からの光の少なくとも一部を、前記測定領域に向けて反射させ、
前記測定対象で反射された光の少なくとも一部を、前記TOFセンサーに向けて透過させる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の口腔内測定装置。
【請求項5】
前記ビームスプリッターは、偏光ビームスプリッターである、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔内測定装置。
【請求項6】
前記反射型回折光学素子は、等間隔に並設された直線状の複数の溝を有する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔内測定装置。
【請求項7】
前記測定光学系は、前記ビームスプリッターと前記TOFセンサーとの間の光路中に配置された第2のアパーチャーを含む、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の口腔内測定装置。
【請求項8】
前記反射型回折光学素子は、等間隔に並設された直線状の複数の溝を有し、
前記第2のアパーチャーは、前記溝の方向と直交する一方向のみの幅を規制する、
ことを特徴とする請求項7に記載の口腔内測定装置。
【請求項9】
前記反射型回折光学素子は、裏面反射型である、
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔内測定装置。
【請求項10】
前記反射型回折光学素子は、回折次数が2以上である、
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の口腔内測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象に複数の模様を投影し、それらを異なる角度から撮影した画像を用いて測定対象の三次元形状を光学的に測定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の測定では、複数の画像を撮影している間に測定器と測定対象との相対的な位置や角度が変化すると、誤差が生じるという問題がある。
模型などを測定する場合には測定対象を固定しておくことが可能であるが、口腔内を測定する場合、被験者を完全に固定することは多大な負担を強いることになるため現実的でない。また、歯の測定を行う場合、内側と外側、上顎と下顎、噛み合わせなど、必要な個所を全て同時に測定することが難しいため、測定器を移動しつつ測定を行う必要があり、測定器の側も固定しておくことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-165558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、被験者や測定器の姿勢変化に伴う測定誤差を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、口腔内測定装置であって、
レーザー光源、TOFセンサー、レンズを含む測定光学系を備え、
前記レーザー光源は、前記TOFセンサーと同期して強度変調され、そのレーザー光を測定領域に照射させ、
前記レンズは、前記測定領域内の測定対象で反射された光の一部を、前記TOFセンサーに集光させ
前記測定光学系は、前記レーザー光源からの光を前記レンズに入射させるビームスプリッターを含み、
前記レンズは、前記ビームスプリッターを介して当該レンズに入射した光を、発散光の状態で前記測定領域に照射し、
前記測定光学系は、前記レンズと前記測定領域との間の光路中に配置されたミラーを含み、
前記ミラーは反射型回折光学素子である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被験者や測定器の姿勢変化に伴う測定誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る口腔内測定装置の構成を示す図である。
図2】実施形態に係る測定光学系での光路を示す図であり、(a)が投光系の光路図、(b)が受光系の光路図である。
図3】実施形態に係る測定光学系での投光系の光路図であり、(a)が縦断面、(b)が横断面である。
図4】実施形態に係る測定光学系での受光系の光路図であり、(a)が縦断面、(b)が横断面である。
図5】実施形態の変形例に係る測定光学系での投光系の光路図であり、(a)が縦断面、(b)が横断面である。
図6】実施形態の変形例に係る測定光学系での受光系の光路図であり、(a)が縦断面、(b)が横断面である。
図7】実施形態の変形例に係る回折光学素子の微細構造の一例を示す模式図であって、表面反射型のものを示す図である。
図8】実施形態の変形例に係る回折光学素子の微細構造の一例を示す模式図であって、回折次数が1の裏面反射型のものを示す図である。
図9】実施形態の変形例に係る回折光学素子の微細構造の一例を示す模式図であって、回折次数が2の裏面反射型のものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
[口腔内測定装置の構成]
図1は、本実施形態に係る口腔内測定装置1の構成を示す図である。
口腔内測定装置1は、主に人(人体)の口腔内の三次元形状を測定するものであり、図1に示すように、装置本体10と制御装置60を備える。
【0010】
装置本体10は、口腔内に挿入される部分であり、その内部空間Sに、口腔内を三次元測定するための測定光学系40を収容している。
測定光学系40は、レーザー光源41、ビームスプリッター42、レンズ43、アパーチャー44、ミラー45、受光センサー46を含む。このうち、受光センサー46、ビームスプリッター42、レンズ43、アパーチャー44、ミラー45が、装置本体10の長手方向に沿って基端側からこの順に配列され、レーザー光源41が、ビームスプリッター42の側方に配置されている。ミラー45は、装置本体10の先端部に配置され、アパーチャー44からの光を側方に反射させる向きに配置されている。
測定光学系40の詳細については後述する。
【0011】
装置本体10は、長尺な略棒状に形成されており、先に口腔内に挿入される側(先端側)のチップ11と、その反対側(基端側)のベース部12とを備えて構成されている。チップ11には、測定光学系40のうちのミラー45が収容される。ベース部12には、測定光学系40のうち、レーザー光源41、ビームスプリッター42、レンズ43、アパーチャー44、受光センサー46が収容される。
チップ11は、ベース部12から着脱可能に構成されている。装置本体10からチップ11を取り外すと、ベース部12の先端にはアパーチャー44が露出する。
【0012】
制御装置60は、装置本体10と接続されており、ユーザ操作等に基づいて、口腔内測定装置1を中央制御する。具体的に、制御装置60は、制御部61と記憶部62を備える。
記憶部62には、口腔内測定装置1を動作させるための各種プログラムや、測定光学系40により取得された情報等の各種データが格納される。
制御部61は、記憶部62に格納された所定のプログラムに基づいて、装置本体10(測定光学系40)の動作を制御して口腔内の三次元形状を測定する。
【0013】
図2は、測定光学系40での光路を示す図であり、(a)が投光系の光路図、(b)が受光系の光路図である。図3は、測定光学系40での投光系の光路図であり、(a)が縦断面、(b)が横断面である。図4は、測定光学系40での受光系の光路図であり、(a)が縦断面、(b)が横断面である。
図2(a)に示すように、測定光学系40は、上述のとおり、レーザー光源41、ビームスプリッター42、レンズ43、アパーチャー44、ミラー45、受光センサー46を含む。
【0014】
レーザー光源41は、レーザーダイオードである。
ビームスプリッター42は、偏光ビームスプリッターである。
レンズ43は、レーザー光源41及び受光センサー46に対して所定の位置(光路上の位置)に配置されている。具体的には、レンズ43から受光センサー46までの光路長が、レンズ43からレーザー光源41までの光路長よりも長い。
アパーチャー44は、レンズ43と測定領域R1との間の光路中に配置された開口部である。開口形状は円形である。
ミラー45は、レンズ43と測定領域R1との間の光路中に配置された平面ミラーである。
受光センサー46は、TOF(Time of Flight)センサーである。
【0015】
測定光学系40の投光系では、図2(a)及び図3に示すように、まず制御部61により、受光センサー46と同期して正弦波や矩形波で強度変調された光(レーザー光)が、レーザー光源41から出射される。レーザー光源41から出射した光は、ビームスプリッター42によって反射された後、レンズ43によって集光作用を受け、発散光の状態ではあるもののレンズ43の入射前に比べて角度範囲が狭められる。この光は、レンズ43直後のアパーチャー44によって角度範囲が規制された後、ミラー45によって向きを変えられ、装置本体10(チップ11)先端の透光窓11a(図1参照)を通じて、口腔内の測定領域R1に照射される。
なお、図2(a)では、測定光学系40の投光系が光を照射する範囲(測定領域R1)を楕円形で示している。また、アパーチャー44の中央を通る光線と、上下左右のエッジを通る光線との、合わせて5本の光線のみを図示している。
【0016】
測定光学系40の受光系では、図2(b)及び図4に示すように、測定領域R1に測定対象(例えば歯など)が存在した場合、投光系により照射された光が測定対象の表面で拡散反射される。そのうちの少なくとも一部は、装置本体10内に入射してミラー45によって反射され、アパーチャー44を通過する。アパーチャー44を通過した光は、レンズ43によって集光され、ビームスプリッター42を透過して受光センサー46に受光される。
このとき、受光センサー46に受光される光は偏光ビームスプリッターであるビームスプリッター42を透過するので、歯などで正反射した光は偏光方向が維持されてビームスプリッター42を透過せず、測定には使われない。拡散反射した光は偏光方向が乱れており、ビームスプリッター42によって反射する光も透過する光も存在するが、このうち透過したものが測定に使用される。
制御部61は、受光センサー46で時分割測定した強度変化の情報から、出力と入力の位相のずれを算出し、その量から距離を求める。これにより、口腔内の測定対象の形状が測定される。
【0017】
なお、図2(b)では、受光センサー46としてその受光面のみを簡易的に図示した。また、受光センサー46の受光面の中心と四隅との5点の各々に到達する光線のうち、アパーチャー44の中央及び上下左右のエッジを通る5本の光線を図示した。ただし、受光系は、測定領域R1の一点から出た光が受光センサー46上の一点に集光する光学系であるため、投光系と異なり、5本の光線は重なって描画されている。
また、測定領域R1内に四角形で示したものは、受光センサー46で検出可能な範囲(検出領域R2)である。測定光学系40は三次元形状を測定するものであるので、実際には測定領域R1は図の上下方向について幅を持っている。投光系と受光系で周辺の光線の角度がわずかに異なるので、レーザー光の照射範囲(測定領域R1)と受光センサー46の検出可能範囲(検出領域R2)は完全には一致しないが、照射範囲の方が広ければよい。測定領域R1と検出領域R2の形状は特に限定されない。
【0018】
[実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、測定光学系40の受光センサー46がTOFセンサーである。
これにより、タイムオブフライト(TOF)を用いて測定が行われるので、或る視点からの三次元形状の測定が瞬時に完了する。したがって、測定中の被験者や測定器(装置本体10)の姿勢変化に伴う測定誤差を抑制することができる。
【0019】
また、本実施形態によれば、アパーチャー44がレンズ43と測定領域R1との間の光路中に配置されている。
このように、レンズ43よりも測定対象側(先端側)にアパーチャー44を設置することにより、先端部のチップ11を滅菌等のために取り外したときに、ベース部12では絞りが最も外側(露出側)に配置された状態となる。これにより、開口部の広さを最小限にでき、レンズ43等が汚れるおそれを抑制できる。
【0020】
また、本実施形態によれば、レーザー光源41からの光は、ビームスプリッター42を介してレンズ43に入射し、当該レンズ43により発散光の状態で測定領域R1に照射される。
これにより、レーザー光を光量的に効率良く測定領域R1に照射できる。また、レンズ43を受光系にも共用することで、装置本体10をコンパクトに構成できる。さらに、投光系と受光系でレンズ43以降の光路を共通化することで、これが別々の光路になっている場合に比べて、装置本体10の先端部をさらに小型化できる。
【0021】
また、本実施形態によれば、レンズ43から受光センサー46までの光路長が、レンズ43からレーザー光源41までの光路長よりも長い。
このとき、受光系では、測定対象上の一点からの光が受光センサー46上で一点に集光するように設定されるのに対して、投光系では、レーザー光源41の一点からの光が測定領域R1をカバーする範囲に広がって照射される。そのため、レンズ43から受光センサー46までの光路長は、レンズ43からレーザー光源41までの光路長よりも長いことが好ましい。
【0022】
また、本実施形態によれば、ビームスプリッター42は、レーザー光源41からの光の少なくとも一部を測定領域R1に向けて反射させ、測定対象で反射された光の少なくとも一部を受光センサー46に向けて透過させる。
これにより、ビームスプリッターが、測定領域R1に向けて光を透過させ、測定対象で反射された光を受光センサー46に向けて反射させる場合(すなわち、ビームスプリッターの透過と反射を反対にした場合)と異なり、ビームスプリッター42からの距離がより長い受光センサー46をレンズ43からの光路上に配置することができ、装置本体10をよりコンパクトに構成できる。
【0023】
また、本実施形態によれば、ビームスプリッター42が偏光ビームスプリッターであるので、50%の反射率のハーフミラーを使用する場合に比べ、効率を向上できる。
さらに、歯を測定する場合、表面が濡れていると強い正反射光が発生し、面の法線方向と測定器の視線の方向が一致した部分のみ、周囲と比べて明るく見えてしまい、測定上は都合が悪い。この点、偏光ビームスプリッターを用いることで、偏光が乱れている散乱光の約半分を受光センサー46に向かわせつつ、偏光方向が保たれている正反射光を受光センサー46に入射しなくすることができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、レンズ43と測定領域R1との間の光路中にミラー45が配置されている。
歯は凹凸があるので、測定時に斜めから見ようとすると、影になって見えない部分ができてしまう。したがって、各個所を正面から見るように装置の姿勢を変えながら測定することが必要になる。その際、測定領域R1から受光センサー46までが一直線に配置されていると、装置の先端部が大きくなってしまい、被験者の負担が大きくなる。
そこで、装置本体10の先端部にミラー45を配置し、レンズ43からのレーザー光を、ミラー45を介して歯に照射し、また歯からの反射光を、同じミラー45を介してレンズ43側に反射して受光センサー46に導くようにする。これにより、レンズ43から測定領域R1までを一直線に配置する場合に比べて、装置本体10の先端部をコンパクトに構成できる。
さらにこの場合、ミラー45を単純な平面ミラーにすることで、当該ミラー45ごと装置本体10(チップ11)の先端部を滅菌した場合でも、光学性能に及ぼす影響を小さくできる。
【0025】
[変形例]
続いて、本実施形態の変形例に係る測定光学系40Aについて説明する。以下では、主に上記実施形態と異なる点について説明し、上記実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図5は、測定光学系40Aでの投光系の光路図であり、(a)が縦断面、(b)が横断面である。図6は、測定光学系40Aでの受光系の光路図であり、(a)が縦断面、(b)が横断面である。
【0026】
図5及び図6に示すように、本変形例に係る測定光学系40Aは、上記実施形態におけるビームスプリッター42、アパーチャー44及びミラー45に代えて、ビームスプリッター42A、アパーチャー44A及びミラー45Aを備える。測定光学系40Aは、その他の点については、上記実施形態における測定光学系40と同様に構成されている。
ただし、レーザー光源41は、上記実施形態と異なり、ビームスプリッター42Aの下側に配置されている。これは、上記実施形態においては、光路幅が投光系では縦横同じ幅であり受光系では縦長であるため、レーザー光源41をビームスプリッター42の側方に配置していたのに対し、本変形例では、ビームスプリッター42A付近では光路幅が投光系も受光系も横長であるためである。
【0027】
ミラー45Aは、回折光学素子であり、本変形例では裏面反射型の回折光学素子である。ミラー45Aのうち、レンズ43側の表面(図5(a)の左下側の面)は平面状の透過面であり、裏面(図5(a)の右上側の面)は回折反射面である。
また、ミラー45Aは、上記実施形態のミラー45に比べて図5(a)における反時計回りに回転しており、回折光学素子としての作用によって、当該ミラー45Aの中心部に入射する光線を測定領域R1に向けて真っすぐ反射させる。測定領域R1の大きさは上記実施形態とほぼ同一である。
【0028】
このように、ミラー45Aは上記実施形態のミラー45に対して回転されているため、上記実施形態のミラー45に比べて縦断面における上下の幅が小さい。これにより、測定領域R1の大きさを同程度に保ちつつ装置本体10先端部の幅を小さくでき、ひいては被験者の負担を軽減できる。
このことは、換言すれば、装置本体10先端部の幅を上記実施形態と同程度にした場合(そうなるようにミラー45Aの角度を設定した場合)に、回折光学素子のミラー45Aを用いることで測定領域R1を広くできるということである。測定領域R1が広いと一度に測定できる範囲が広くなるため、測定に要する時間を短縮でき、精度面でも有利である。特に歯が抜けている場合、その間の軟組織に対しては測定精度が低くなるので、離れた2つの歯が一視野で測定できれば、精度面での効果は大きい。
【0029】
ミラー45Aの回折光学素子の微細構造について説明する。
図7図9は、回折光学素子の微細構造の一例を示す模式図であり、このうち、図7は表面反射型、図8は回折次数が1の裏面反射型、図9は回折次数が2の裏面反射型の回折光学素子を示す。図中の右上の段付き面は、図7ではミラー45Aの表面に対応し、図8及び図9ではミラー45Aの裏面に対応している。なお、これらの図では、便宜上、波長を極端に長く図示し、同じ比率で溝の幅や高さを拡大して縦断面で示している。また、光は狭い幅の平行光として波のイメージを図示している。
【0030】
図7図9に示すように、ミラー45Aの表面又は裏面には、等間隔の溝が刻まれている。この溝は、図の紙面垂直方向に沿った一様断面の直線状に形成されている。溝が等間隔で直線状であることは、この回折光学素子がパワーを持たないことを意味する。微細構造は、波長オーダーの高さの鋸刃状である。回折光学素子に入射する前と反射した後で、水平の波から垂直の波になっている。
【0031】
図7に示すように、ミラー45Aは、表面反射型の回折光学素子であってもよい。この場合、回折面の溝は、例えば、紙面左右方向に沿った面と、斜め45°の面とから構成され、このうち斜めの面が有効な光学面である。
【0032】
図8に示すように、ミラー45Aは、回折次数が1の裏面反射型の回折光学素子であってもよい。この場合、溝一つが波の位相を1波長分ずらしている。溝の間隔は、図7の表面反射型と同じであるが、鋸刃状は異なる。回折面に有効な光学面と無効な壁とが存在するのは表面反射型と同様であるが、裏面反射型の方が有効な光学面の幅が広くなっているため、効率は高くなる。また、包絡線の垂直方向で見た溝の深さが、裏面反射型の方が浅くなっており、加工が比較的容易になる。
【0033】
図9に示すように、ミラー45Aは、回折次数が2の裏面反射型の回折光学素子であってもよい。この場合、溝一つが波の位相を2波長分ずらしている。これにより、回折次数が1のものに対して微細構造が比例倍で大きくなっており、溝の幅も深さも2倍になっている。溝の幅が広がることにより、加工が容易になり、回折効率も向上する。
なお、ミラー45Aは、回折次数が2以上の裏面反射型の回折光学素子であってもよい。
【0034】
図5に示すように、アパーチャー44Aを通過後に光が飛ぶ角度範囲は、縦断面と横断面で異なっている。アパーチャー44Aは、円形の上下両端を直線で切り落とした小判型の開口部を有している。測定領域R1は、回折光学素子(ミラー45A)によるひずみがあるため、図5(b)の左右方向で歪んだ小判型になっている。
【0035】
図6に示すように、ビームスプリッター42Aは、受光センサー46側の面(図6(a)の左上側の面)が、透過する光のうち、回折光学素子(ミラー45A)の溝の方向と直交する縦断面の上下方向のみの幅を規制する。当該受光センサー46側の面は、本発明に係る第2のアパーチャーの一例である。これにより、受光系では、縦断面の上下方向のみ規制を受けて、光路幅が狭くなる。
これは、受光系で被写界深度を稼ぐための措置である。縦断面では回折光学素子(ミラー45A)の副作用で横断面とは像面が乖離しており、幅を絞ることによって被写界深度を稼ぐ必要が生じる。横断面では回折光学素子の影響を受けないため、上記実施形態と同様の構成となっている(アパーチャー44Aで幅の規制を受ける)。
なお、ビームスプリッター42Aとは別体の第2のアパーチャーを、ビームスプリッター42Aよりもやや受光センサー46側に設けてもよい。この場合、ビームスプリッター42Aは上記実施形態のビームスプリッター42と同様に構成すればよい。
【0036】
以上のように、本変形例によれば、ミラー45Aが反射型回折光学素子であるので、当該ミラー45Aに光学的な作用を付加することができる。例えば、装置本体10先端部の幅を大きくすることなく測定領域R1を広くしたり、測定領域R1の大きさを同程度に保ちつつ装置本体10先端部の幅を小さくしたりできる。
【0037】
また、本変形例によれば、反射型回折光学素子であるミラー45Aが、等間隔に並設された直線状の複数の溝を有する。
これにより、ミラー45Aはパワーのない回折光学素子となる。このような回折光学素子は、集光作用はないが光の角度を変えることはできるため、上述のように、装置本体10の幅を大きくすることなく視野を拡大する光学作用を好適に付与できる。また、このような回折光学素子は、パワーを持った回折光学素子に比べれば製造が容易なため、ガラスのような滅菌の際の高温に耐えられる材料で素子を作成する場合等に都合が良い。また、樹脂のような高温に弱い材料を使って装置本体10の先端部(チップ11)を使い捨てにすることも考えられるが、上述のようなパワーのない回折光学素子は、比較的安価に作成でき、個体差も小さくできる。
【0038】
また、本変形例によれば、第2のアパーチャー(ビームスプリッター42Aの受光センサー46側の面)が、ビームスプリッター42Aと受光センサー46との間の光路中に配置されている。
ミラー45Aはたとえパワーが無かったとしても、回折作用により結像面をずらしてしまうため、回折作用が働く方向については共役な関係を保つことが難しくなる。そこで、受光系のみに作用する第2のアパーチャーを使用することにより、被写界深度を稼ぐことができる。また、TOFで回折光学素子を使用すると光路長の異なる光が混ざってしまうため、測定対象上の一点から出てアパーチャー44Aを通過する光が回折光学素子上を通る幅を広くするほど、距離の測定精度が低下する。この点でも、回折作用を持たせた方向については第2のアパーチャーにより幅を狭くすることが望ましい。また、レンズ43を受光系と投光系で共用する場合、第2のアパーチャーは、ビームスプリッター42Aと受光センサー46との間の光路中に配置することが望ましい
【0039】
また、本変形例によれば、第2のアパーチャー(ビームスプリッター42Aの受光センサー46側の面)が、ミラー45Aの溝の方向と直交する一方向のみの幅を規制する。
像面がずれるのはミラー45A(回折光学素子)によって幅を広げた側のみであるので、第2のアパーチャーについては、溝の方向と直交する一方向のみ光束規制を行うことが望ましい。
【0040】
また、本変形例によれば、ミラー45Aが裏面反射型の回折光学素子である。
反射型回折光学素子は、素子表面で光を回折反射する表面反射型と、素子の表面を透過して裏面で回折反射する裏面反射型とがあるが、後者の裏面反射型の方が溝の深さを浅くできる。また、本変形例のようにミラー45Aの角度を変えて幅を広げようとする場合には、裏面反射型の方が回折面における入射光と反射光の角度差を小さくでき、立壁による遮蔽を抑制できる。
【0041】
また、本変形例によれば、ミラー45Aは、回折次数が2以上の反射型回折光学素子である。
回折光学素子の回折作用を強くすればするほど、溝の間隔が狭くなり、製造上の誤差の影響が相対的に大きくなる。仮に製造誤差が無いとしても、溝の間隔が波長に近くなってくると回折効率が低下する現象が発生する。そこで、回折次数を2以上にして、溝一つで波の位相を2波長分もしくはそれ以上ずらすことにより、回折次数に比例して溝の間隔を広くすることができる。溝の深さも比例倍で増加するが、特に溝が狭すぎる場合は、溝が深くなっても広げたほうが望ましい。
【0042】
[その他]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態及びその変形例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 口腔内測定装置
10 装置本体
11 チップ
12 ベース部
40、40A 測定光学系
41 レーザー光源
42、42A ビームスプリッター
43 レンズ
44、44A アパーチャー
45、45A ミラー
46 受光センサー(TOFセンサー)
60 制御装置
R1 測定領域
R2 検出領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9